説明

2電源方式の車両用電源装置

【課題】設置が容易なうえ車重及び配線電力損失の増大の抑止と安全性の向上とが可能な2電源方式の車両用電源装置を提供すること。
【解決手段】一体化された発電機側バッテリ2又は回路モジュール(電力伝送装置)10を冷却するための冷却用金属体としての冷却フィン741、751、710を、共通カバー(バッテリカバー)15により囲覆する。このバッテリカバー15は、内部の発電機側バッテリ2及び回路モジュール(電力伝送装置)10を機械的、電気的に保護するとともにそれらを冷却する車両走行風又は強制冷却風が流れる冷却風通路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに電圧が異なる複数バッテリを有する2電源方式の車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電圧が異なる二つのバッテリを用いた2電源方式の車両用電源装置がハイブリッド車やエンジン車やハイブリッド車において種々提案されている。この2電源方式の車両用電源装置では、エンジン駆動の発電機と発電機側バッテリとをもつ高電圧の発電機側電源系と、車載電気負荷とそれに給電する負荷側バッテリとをもつ低電圧の負荷側電源系と、発電機側電源系から負荷側電源系へ電圧変換して送電する電力伝送装置を設けるのが通常である。この2電源方式の車両用電源装置によれば、車載電気負荷へ印加する電源電圧レベルの変動を抑止しつつ、走行動力発生、回生電力充電、トルクアシスト電力放電などのために発電機側バッテリの充電レベル(SOC)を大幅に変動させることが可能となる。また、エンジン車では、エンジン停止中における車載電気負荷への給電を発電機側バッテリから行うことにより、負荷側電源系の電圧変動を抑止することが可能となる。車載電気負荷の一例として、照明負荷やラジオや制御装置など電圧低下を嫌う負荷が挙げられる。この種の2電源方式の車両用電源装置の例として、たとえば本出願人の出願になる下記の特許文献1が知られている。
【0003】
なお、発電機側バッテリの容量不足を補償するために負荷側バッテリから発電機側電源系への給電も提案されている。発電機側バッテリとしては充放電の繰り返しに対する耐久性に優れたリチウム二次電池、水素吸蔵合金二次電池、電気二重層コンデンサの採用が提案されており、負荷側バッテリとしては経済性に優れた鉛二次電池の採用が好適である。特に、リチウム二次電池は、重量当たりの蓄電エネルギーに優れ、車両軽量化による燃費低減を実現することができる利点をもつ。
【特許文献1】特開2002−345161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した2電源方式の車両用電源装置は、単一バッテリを用いた従来のエンジン車用電源装置に比較して、発電機側バッテリと電力伝送装置との追加が必要となる。このため、これらを車両前部の狭小なエンジンルームに収容する場合、エンジンルーム内の機器配置が難しくなった。また、これら発電機側バッテリと電力伝送装置とをエンジンルーム外たとえば車両後部のトランクルーム内などに配置することも考えられるが、トランクルームのラッゲジスペースが減少する点では同じである。
【0005】
また、発電機側バッテリと電力伝送装置との追加に伴って、配線が複雑化し、配線電力損失の増大、配線のための必要スペースの増大も生じた。
【0006】
更に、発電機側バッテリとして、高エネルギー蓄電が可能又は充放電のサイクル寿命に優れたリチウム二次電池や水素吸蔵合金二次電池を発電機側バッテリとして用いることが好適であるが、これらのバッテリは、従来の鉛バッテリに比べて格段に高エネルギーを蓄積するため、車両衝突などによる破壊を防止するための耐衝撃性を向上させる必要があった。
【0007】
更に、それぞれ発熱体である発電機側バッテリ及び電力伝送装置の冷却が装置の全体必要スペースの増大を招くという問題と、発電機側バッテリから排出される高温ガスによる対人被害を生じるおそれがあるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、設置が容易なうえ車重及び配線電力損失の増大の抑止と安全性の向上とが可能な2電源方式の車両用電源装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する下記の二つの発明は、
エンジン駆動の発電機と、前記発電機により充電される発電機側バッテリとを含む発電機側電源系と、車載の電気負荷と、前記電気負荷に給電する負荷側バッテリとを含む負荷側電源系と、前記発電機側電源系から前記負荷側電源系に送電する電力伝送装置と、前記電力伝送装置を制御して前記送電を調節する制御回路とを備える2電源方式の車両用電源装置に適用される。
【0010】
第1発明では特に、前記発電機側バッテリ又は電力伝送装置を冷却するための冷却用金属体と、互いに一体結合された前記発電機側バッテリ、電力伝送装置及び冷却用金属体を覆う共通カバーとを有し、前記共通カバーは、前記冷却用金属体に沿いつつ車両走行風又は強制冷却風を案内する冷却風通路と、外部から前記冷却風通路に冷却風を導入する冷却風吸入口と、前記冷却風通路から外部に冷却風を排出する冷却風吐出口とを有することを特徴としている。
【0011】
すなわち、この発明は、発電機側バッテリと電力伝送装置とそれらの冷却のための冷却用金属体とを一体に結合したアセンブリを、内部に冷却風通路をもち、表面に冷却風吸入口及び冷却風吐出口をもつ共通カバーにより囲包することを特徴としている。なお、この共通カバーは、少なくとも冷却風が冷却用金属体に接する冷却風通路に冷却風吸入口から導入され、冷却風通路から冷却風吐出口に排出されるのであれば、発電機側バッテリ、電力伝送装置及び冷却用金属体を部分的に囲覆するだけでもよい。このように構成した本発明の2電源方式の車両用電源装置によれば、次の効果を奏することができる。
【0012】
まず、車両走行風又は強制冷却風は、共通カバーによりその内部に区画形成された冷却風通路に容易に導入され、この冷却風通路から容易に排出されることができるので、発電機側バッテリや電力伝送装置を良好に冷却することができる。すなわち上記冷却風通路を容易に区画形成できるとともに、冷却風吸入口から冷却用金属体までの冷却風通路や冷却用金属体から冷却風吐出口までの冷却風通路も容易に区画形成することができ、少ない流体損失で高速の冷却風を冷却用金属体や電力伝送装置や発電機側バッテリに接触させることができる。
【0013】
次に、共通カバーは、少ない部品点数増加により発電機側バッテリや電力伝送装置を電気的又は機械的に外部から隔離するため、電気的又は機械的な安全性が向上する。
【0014】
次に、それぞれ発熱体である電力伝送装置と発電機側バッテリとを冷却問題の発生を抑止しつつコンパクトに集積することができ、その配置自由度を増大し、必要スペースを縮小し、配線抵抗電力損失も低減することができ、装置の組み付けも容易となる。
【0015】
次に、発電機側バッテリからガスが排出されても、点検者に悪影響を与えるこのガスの上方拡散を共通カバーにより良好に阻止することができ、安全性を向上することもできる。たとえば点検者がエンジンルームなどを覗き込んでいた場合においても対人安全性を確保することができる。なお、この場合、共通カバーの上面は、電力伝送装置と冷却用金属体と発電機側バッテリを含むアセンブリの上方を覆うものとする。
【0016】
なお、上記した発電機側バッテリとしては、充放電の繰り返しに対する耐久性に優れたリチウム二次電池、水素吸蔵合金二次電池、電気二重層コンデンサなどが好適である。また、電力伝送装置としては、インバータ型やチョッパ型のDC−DCコンバータやシリーズレギュレータを採用することができる。更に、電力伝送装置は、必要時に発電機側バッテリを発電機側電源系から遮断するスイッチをもつこともできる。このスイッチは発電機及び電力伝送装置と発電機側バッテリとの間や、発電機側バッテリの低位電極端子と接地ラインとの間に配置されることができる。冷却用金属体は、発電機側バッテリ又は電力伝送装置のヒートシンク又は冷却フィンとしての機能をもつ。これにより、発電機側バッテリ又は電力伝送装置の温度上昇を良好に行うことができる。
【0017】
好適な態様において、前記冷却用金属体は、前記電力伝送装置及び前記発電機側バッテリの両方を冷却する。このようにすれば、電力伝送装置と発電機側バッテリとを冷却するための送風経路を共用化することができるため、送風機構の簡素化を実現することができる。
【0018】
好適な態様において、前記冷却用金属体は、前記発電機側バッテリと前記電力伝送装置との間にて前記発電機側バッテリ側に配置されるとともに車両走行風又は強制冷却風により冷却されて前記発電機側バッテリを冷却する第1の冷却用金属体と、前記第1の冷却用金属体と前記前記電力伝送装置との間にて前記電力伝送装置側に配置されるとともに車両走行風又は強制冷却風により冷却されて前記電力伝送装置を冷却する第2の冷却用金属体とを有する。このようにすれば、既述した理由により高温化が可能な電力伝送装置用の第2の冷却用金属体と、更なる低温化が必要な発電機側バッテリの第1の冷却用金属体とを温度を変更することができ、第2の冷却用金属体の小型化と、第1の冷却用金属体の低温化とを実現することができる。なお、この態様において、冷却風通路において、第1の冷却用金属体と第2の冷却用金属体とを直列に配置することにより、第1の冷却用金属体を冷却した車両走行風又は強制冷却風により第2の冷却用金属体を冷却するようにすることができ、この場合には車両走行風又は強制冷却風の全量を発電機側バッテリ及び電力伝送装置の冷却に用いることができるうえ、発電機側バッテリを低温化する冷却系を簡素に構成することができる。
【0019】
好適な態様において、前記共通カバーは、前記発電機側バッテリの端子と前記直流電力伝送装置の発電機側端子とを接続するバスバーを囲覆する。このようにすれば、バスバーの電気的絶縁性を向上し接触危険を低減することができる。
【0020】
好適な態様において、前記バスバーは、前記共通カバー内に形成された冷却風通路に露出して車両走行風又は強制冷却風により冷却される。すなわち、この態様によれば、発電機側バッテリの端子と電力伝送装置の発電機側端子とを接続するバスバーは冷却風通路に露出する。これにより車両走行風又は強制冷却風によりバスバーを良好に冷却することができる。更に説明すると、バスバーは、電力伝送装置の半導体スイッチング素子や発電機側バッテリ内部の電極体に熱的に良好に結合しているために、バスバーの冷却はそれらの冷却に大きな効果がある。そのうえ、高温の半導体スイッチング素子から発電機側バッテリへの熱伝導を車両走行風又は強制冷却風によるバスバー冷却により良好に阻止して発電機側バッテリの温度上昇阻止も実現することができる。好適な態様において、このバスバーは、一体に形成されるか又は後で装着された冷却フィンをもつことができ、実質的に上記した冷却用金属体を兼ねることができる。このようにすれば、発電機側バッテリや電力伝送装置の一層の冷却が可能となる。
【0021】
好適な態様において、前記共通カバーは、前記冷却用金属体を兼ねるか又は前記冷却用金属体に熱伝導良好に結合された金属板を含む。これにより、発電機側バッテリ又は電力伝送装置の冷却のための冷却用金属体が冷却風に接触する表面積を大幅に増大することができ、発電機側バッテリ及び電力伝送装置の温度上昇を良好に低減することができる。なお、共通カバーのすべてが金属板により構成される必要はなく、熱伝達性や剛性を要する部分だけ金属板とし、他の部位を樹脂製としてもよい。
【0022】
好適な態様において、前記共通カバーは、車体をなす金属板に熱伝導良好に結合される。これにより、発電機側バッテリ又は電力伝送装置が発生した熱を冷却用金属体、共通カバーを通じて車体に放散することができ、発電機側バッテリ又は電力伝送装置の良好な冷却が可能となる。なお、車体をなす金属板は日射に曝される部位の温度は夏期に高温となるが、その他の部位の温度はそれほど高くならないため、共通カバーは日射に曝されない車体部位に接触することが好適である。
【0023】
好適な態様において、前記共通カバーは、接地用バスバーを兼ねる。これにより、発電機側バッテリや電力伝送装置の電極端子のうち、接地電極端子は冷却用金属体及び共通カバーを通じて車体に接地することができ、接地配線が簡単となる。なお、冷却用金属体はこの接地用バスバーを兼ねることもできる。
【0024】
好適な態様において、前記共通カバーは、前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置の上方に位置して側方に延在する天板部を有し、前記天板部は、前記発電機側バッテリのガス排出用安全弁から排出される内部発生ガスの上方への漏出を阻止する。これにより、共通カバーは上方に拡散して点検者などに被害を与えるのを良好に阻止することができる。なお、リチウム二次電池などにおいて、このガスの温度は非常に高温(たとえば500℃)となる。なお、共通カバーが樹脂製の場合には、発電機側バッテリから噴出するガスは最初に熱容量が大きい冷却用金属体にて冷却された後、共通カバーに接触することが好適である。たとえばアルミ合金などからなる冷却用金属体は大きな熱容量と良好な放熱面積と良好な熱伝導性とをもつため、電力伝送装置が上記ガスにより高温となったり、熱的に不良となったりするのを良好に阻止することができる。
【0025】
好適な態様において、前記共通カバーは、側面に前記冷却風吸入口を有する。このようにすれば、発電機側バッテリからガスが噴出したとしてもこのガスが冷却風吸入口から上方へ漏出するのを良好に防止することができ、対人安全性を向上することができる。
【0026】
好適な態様において、前記共通カバーは、側面に冷却風吐出口を有する。このようにすれば、発電機側バッテリからガスが噴出したとしてもこのガスが冷却風吐出口から上方へ漏出するのを良好に防止することができ、対人安全性を向上することができる。
【0027】
好適な態様において、前記発電機側バッテリは、リチウム二次電池又は水素吸蔵合金二次電池又は電気二重層コンデンサのいずれかを含む。これにより、発電機側バッテリの頻繁な充放電の繰り返しが可能となる。
【0028】
第2発明では特に、車両前部のエンジンルームに配設されて前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置の双方に車両走行風を案内する共用ダクトを有することを特徴としている。
【0029】
すなわち、この発明は、一体に配置された発電機側バッテリと電力伝送装置を有し、この発電機側バッテリと電力伝送装置との双方に単一の共用ダクトにより車両走行風を案内するため、発電機側バッテリ及び電力伝送装置を車両走行風が当たりにくい部位に配置しても発電機側バッテリ及び電力伝送装置の両方を単一の共用ダクトからの車両走行風により良好に冷却することができる。その結果、それぞれ発熱体であり、集積配置することにより温度上昇の加速が懸念される発電機側バッテリと電力伝送装置とをコンパクトに実装することが可能となり、更にダクトを発電機側バッテリと電力伝送装置とで共用するため冷却系の構造を簡素化することもできる。これにより、設置必要スペースの縮小と配置自由度の向上、配線の簡素化と配線抵抗損失の低減なども実現することができる。
【0030】
好適には、発電機側バッテリと電力伝送装置とは共通カバーにより囲覆され、この共通カバーに設けられた冷却風吸入口に共用ダクトの出口が結合される。これにより、車両走行風を良好に発電機側バッテリ及び電力伝送装置に案内することができる。好適には、この共通カバーは、内部に冷却風通路をもち、表面に冷却風吸入口及び冷却風吐出口をもつことが好適である。
【0031】
好適な態様において、前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置と一体に形成されて前記発電機側バッテリ又は前記電力伝送装置を冷却する冷却用金属体を有し、前記共用ダクトは、前記冷却用金属体に前記車両走行風を案内する。このようにすれば、構造が簡素な冷却系により発電機側バッテリと電力伝送装置の両方を車両走行風により良好に冷却することができる。なお、冷却用金属体は、前記電力伝送装置及び前記発電機側バッテリの両方を冷却するようにすることにより、電力伝送装置と発電機側バッテリとを冷却するための送風経路の一層の共用化を実現することができる。
【0032】
好適な態様において、前記共用ダクト内に配置された電動冷却ファンと、前記共用ダクトの前記電動冷却ファンより上流部位と前記電動冷却ファンより下流部位とを連通して電動冷却ファンをバイパスするバイパスダクトと、前記バイパスダクトに配置されて前記上流部位の圧力が前記下流部位の圧力より低い場合に開き、前記上流部位の圧力が前記下流部位の圧力より高い場合に閉じる逆止ダンパとを有する。このようにすれば、簡素な構造により、この共用ダクト内のファンにより強制冷却風が形成されないときには、このファンを迂回して車両走行風を良好に発電機側バッテリ及び電力伝送装置に導入することができる。なお、逆止ダンパは、たとえば樹脂により共用ダクトと一体に形成し、逆止ダンパと共用ダクトとの接続部を薄肉化するだけでも構成することができる。
【0033】
好適な態様において、前記共用ダクトは、前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置から略前方に延設されるとともに、前記エンジンルームの後部に配置された前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置まで前記エンジンルームの前部から車両走行風を案内する。この態様によれば、車両走行風による発電機側バッテリ及び電力伝送装置の冷却を良好に確保しつつ、発電機側バッテリ及び電力伝送装置をエンジンルーム後部に配置することができるため、エンジンルーム内における機器配置自由度を向上することができるとともに、高エネルギーを蓄積する発電機側バッテリを車両正面衝突時の被害から良好に保護することができる。
【0034】
好適な態様において、前記共用ダクトは、前記冷却用金属体に熱伝達良好に結合された金属ダクトからなる。このようにすれば、車両走行風との接触面積が非常に大きい冷却用金属体として、共用ダクトをみなすことができ、冷却用金属体の小型軽量化と発電機側バッテリ及び電力伝送装置の冷却性向上を実現することができる。なお、共用ダクトのすべてを金属ダクトとする必要はなく、たとえば、温度が上昇しやすい電力伝送装置と発電機側バッテリとの近傍のみを金属板製とすることができる。また、共用ダクトのうち、電力伝送装置と発電機側バッテリとの近傍部分をこれら電力伝送装置や発電機側バッテリを囲包する共通カバーを兼ねるようにしてもよい。更にこの共通カバーを冷却用金属体と一体に形成したり、接触させたりすることにより、上記と同様に冷却用金属体の放熱能力の向上を図ることができる。
【0035】
好適な態様において、前記共用ダクトの一部は、車体をなす金属板により構成されている。このようにすれば、共用ダクトを製造するための材料を節減することができる。なお、車体をなす金属板のうち日射が直接当たらない部位を共用ダクトの一部として用いることが好適である。
【0036】
好適な態様において、前記共用ダクトは、前記電力伝送装置の入力端子と前記発電機とを結ぶケーブル、又は前記電力伝送装置の出力端子と前記負荷側バッテリ又は前記電気負荷とを接続するケーブルを収容するケーブル延設通路をなす。すなわち、共用ダクトをケーブルダクトとして用いるので、ケーブルの電気的又は機械的保護を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の2電源方式の車両用電源装置の好適な実施態様を図面を参照して以下に説明する。なお、この発明は下記の実施例に限定解釈されるものではなく、本発明の技術思想を他の公知技術又はそれと同等の技術を組み合わせて実現してもよいことはもちろんである。
【0038】
この実施例の車両用電源装置の回路構成を図1に示すブロック回路図を参照して説明する。
【0039】
1は図示しないエンジンにより駆動される発電機であり、整流器を内蔵している。発電機1は発電機側バッテリ2に電源ライン3を通じて給電している。発電機側バッテリ2は定格電圧が14.8Vのリチウム二次電池により構成されており、4セルを直列接続して構成されている。リチウムに二次電池は温度や過充電や過放電に対する保護が重要であり、実際には種々の保護回路を有するが、それについては説明を省略する。発電機1、発電機側バッテリ2及び電源ライン3は本発明で言う発電機側電源系を構成している。
【0040】
4は負荷側バッテリであり、複数の電気負荷5に負荷給電ライン6を通じて給電している。負荷側バッテリ4は定格電圧が12.7Vの鉛バッテリであり、車両用バッテリとして広く市販されているものが称されている。負荷側バッテリ4、電気負荷5及び負荷給電ライン6は本発明で言う負荷側電源系を構成している。
【0041】
7は、負荷側電源系が必要とする電力を電源ライン3から負荷給電ライン6に送電する電力伝送装置であり、チョッパ型など種々の回路形式のDC−DCコンバータの他、両電源系間の電圧差に等しい電圧降下を発生するシリーズレギュレータなどを用いて構成されている。その他、電力伝送装置7は、発電機側バッテリ2の正極端子と電源ライン3との間又は発電機側バッテリ2の負極端子と接地との間にMOSトランジスタなどのスイッチを有してもよい。このスイッチの開放により必要に応じて発電機側バッテリ2を発電機側電源系から分離することができる。
【0042】
8は、電力伝送装置7などを制御するマイコン内蔵のコントローラ(制御回路)8であり、電力伝送装置7とコントローラ8とは系間送電回路を構成している。コントローラ8は、読み込んだ負荷側バッテリ4の電圧Vpbと所定の目標電圧値Vthとの偏差ΔVが0となるように電力伝送装置7に制御電圧を出力して、いわゆるネガティブフィードバック制御を行う。これにより、通常状態においては、負荷給電ライン6の電圧は負荷側バッテリ4の所定の電位レベルに安定に保持されるとともに、発電機側電源系から負荷側電源系への給電停止時などにおいて、負荷側バッテリ4は電気負荷5に給電する。なお、発電機側電源系に電気負荷を接続することも可能であり、電力伝送装置7の逆方向送電動作により負荷側バッテリ4から発電機側電源系に逆送電することも可能である。また、コントローラ8は、車両減速時に発電機1の発電量を増大させる。増加した発電電流は発電機側バッテリ2のSOCが許容する範囲にて発電機側バッテリ2を充電する。コントローラ8は、発電電流が発電電流を増大すれば、過剰な発電電力は発電機側バッテリ2の充電に消費される。コントローラ8は、この回生制動が終了した後、発電機側バッテリ2に蓄電された回生蓄電電力量を電力伝送装置7を通じて負荷側電源系側に放電し、所定のSOCレベルに復帰する。所定のSOCレベルとしてはたとえば50乃至60%の採用が好適である。その他、発電機側バッテリ2の蓄電電力量は、エンジン始動時やトルクアシスト時やアイドルストップ時における電気負荷5への給電に使用される。上記説明したように、発電機側バッテリ2には頻繁な充放電が要求されるため充放電サイクルの繰り返しに対する劣化が少ないリチウム二次電池が採用され、負荷側バッテリ4には電気負荷5の電源電圧変動を抑止する機能をもてばよいため鉛二次電池が採用される。
【0043】
なお、上記説明では、2電源方式の車両用電源装置をもつエンジン車を説明したが、2電源方式の車両用電源装置を有するハイブリッド車においても本質的に同じ構成、動作を採用することができる。
【0044】
電力伝送装置7及びコントローラ8を実装した系間送電回路としての回路モジュール10の形状を図2を参照して説明する。この回路モジュール10は、ベースプレート71、パワーMOSトランジスタを内蔵する両面電極型のカードモジュール72、73、半導体モジュールにより構成されるコントローラ8、ヒートシンク74、75、樹脂モールド部76、絶縁シート77を有している。78はカードモジュール72、73の制御電極端子をなすリード電極であり、コントローラ8の電極端子と接続されている。79は後述する電池ガス案内するための金属製のガス案内部材であり、樹脂モールド部76の下面中央に固定されている。
【0045】
ベースプレート71には絶縁シート77を挟んでカードモジュール72、73及びコントローラ8が実装、固定されている。カードモジュール72、73の下面720、730にはヒートシンク74、75が個別に固定され、樹脂モールド部76はこれらの部材を一体化するとともに、カードモジュール72、73及びコントローラ8間の電気絶縁を実現している。
【0046】
カードモジュール72の両面720、721は内蔵のパワーMOSトランジスタの一対の主電極を構成し、カードモジュール73の両面730、731は内蔵のパワーMOSトランジスタの一対の主電極を構成している。この実施例では、カードモジュール72の下面720はヒートシンク74を通じて発電機側電源系の電源ライン3に接続され、カードモジュール73の下面730はヒートシンク75を通じて接地ラインに接続されている。また、カードモジュール72の上面は主電極721をなし、カードモジュール73の上面は主電極731をなす。カードモジュール72、73は、図示しない配線に接続されてDC−DCコンバータを構成している。ベースプレート71は、このDC−DCコンバータの高電位側の出力端子を構成している。
【0047】
もちろん、電力伝送装置7をなすDC−DCコンバータとしては、種々の回路形式があり、図2はそのモジュール化の一例を示す。また、ヒートシンク74、75やベースプレート71は、電極端子を兼ねないようにしてもよい。電力伝送装置7としては、DC−DCコンバータの他、シリーズレギュレータを採用することができる。
【0048】
この回路モジュール10を用いた系間送電回路と発電機側バッテリ2とにより構成した電池アセンブリ100、すなわち電力伝送装置付き発電機側バッテリの例を図3、図4に示す。図3は、電池アセンブリ100を車両前方から後方へみた正面図を示し、図4は電池アセンブリ100を車両側方からみた側面図を示す。この電池アセンブリ100は車両のエンジンルーム後部に配置されている。図3、図4において、電池アセンブリ100は車体に公知の種々の方法で固定された底板11上に固定されている。
【0049】
電池アセンブリ100は、底板11上に固定された発電機側バッテリ2と、発電機側バッテリ2上に固定された回路モジュール10と、発電機側バッテリ2及び回路モジュール10を囲覆する樹脂製のバッテリカバー12とからなる。710はベースプレート71の複数の冷却フィンであり、上方へ突出している。各冷却フィン710は、互いに車両左右方向に所定間隔を隔ててそれぞれ車両前後方向に延設されている。隣接する冷却フィン710の間のスペースは冷却風が車両前後方向に流れる冷却風通路を構成している。741はヒートシンク74の複数の冷却フィンであり、下方へ突出している。各冷却フィン741は、互いに車両左右方向に所定間隔を隔ててそれぞれ車両前後方向に延設されている。隣接する冷却フィン741の間のスペースは冷却風が車両前後方向に流れる冷却風通路を構成している。751はヒートシンク75の複数の冷却フィンであり、下方へ突出している。各冷却フィン751は、互いに車両左右方向に所定間隔を隔ててそれぞれ車両前後方向に延設されている。隣接する冷却フィン751の間のスペースは冷却風が車両前後方向に流れる冷却風通路を構成している。
【0050】
発電機側バッテリ2は、その上面にガス排出用安全弁20と、+電極端子21と−電極端子22とを有している。+電極端子21はヒートシンク74の冷却フィン741に電気伝導良好に密着あるいは固定されており、−電極端子22はヒートシンク75の冷却フィン751に電気伝導良好に密着あるいは固定されて、発電機側バッテリ2と回路モジュール10との電気接続がなされている。
【0051】
ガス排出用安全弁20は、ガス案内部材79の直下に配置されており、発電機側バッテリ2の内部が高圧となってガス排出用安全弁20から上方へガスが噴出した場合でも、このガスの流れを前後方向へ偏向することにより、高温のガスが樹脂モールド部76に接触しないようにしている。
【0052】
なお、回路モジュール10の天地を逆転すれば、ガス排出用安全弁20から噴出した高温ガスは、熱容量が大きいベースプレート71に衝突して冷却されるため、ガス案内部材79を省略することができる。ただし、この場合、発電機側バッテリ2の+電極端子21と回路モジュール10の電極端子を兼ねるヒートシンク74との電気接続のためのバスバー、並びに、発電機側バッテリ2の−電極端子22と回路モジュール10の電極端子を兼ねるヒートシンク75との電気接続のためのバスバーを追加する必要がある。なお、この実施例ではヒートシンク74、75は発電機側バッテリ2を冷却するための冷却用金属体を兼ねている。
【0053】
もちろん、回路モジュール10とその下の発電機側バッテリ2との間の空間に回路モジュール10を冷却するための冷却フィン付きの冷却用金属体と、発電機側バッテリ2を冷却するための冷却フィン付きの冷却用金属体と別々に配置することもできる。これら両冷却フィン付きの冷却用金属体は電気的に同電位とできる他、必要に応じて分離などにより相互の電気絶縁を図っても良い。
【0054】
バッテリカバー12は、車両左右方向において、図3に示すように発電機側バッテリ2の左右側面に略接触しており、図4に示すように発電機側バッテリ2の前端面と後端面との間に所定隙間を維持して対面している。これらの隙間は、バッテリカバー12内に車両走行風又は強制冷却風を流すための冷却風通路(矢印にて図示)を構成している。バッテリカバー12の前端面下部には冷却風案内ダクト13の下流端に連結された冷却風吸入口121が設けられ、バッテリカバー12の後端面下部には冷却風をエンジンルーム内に排出するための冷却風吐出口122が形成されている。
【0055】
冷却風の流れを説明すると、冷却風案内ダクト13の上流端は車両前部のエンジンルームの前部に開口しており、車両走行風を取り込む。冷却風案内ダクト13の途中部分には冷却ファン機構200が介設されている。冷却ファン機構200を図5を参照して説明する。
【0056】
131は冷却風案内ダクト13の上流部、132は冷却風案内ダクト13の下流部であり、14は遠心ファンでいる。上流部131の下流端は遠心ファン14の吸入口に連結され、下流部132の上流端は遠心ファン14の吹き出し口に連結されている。Mは遠心ファン14を駆動するモータである。15は、冷却風案内ダクト13の上流部131と下流部132とを連結するバイパスダクトであり、遠心ファン14をバイパスしている。16はバイパスダクト15の入り口部分に樹脂ヒンジにより回動自在に設けられた逆止ダンパである。逆止ダンパ16は、冷却風案内ダクト13の上流部131が下流部132よりも正圧となる場合に差圧により開き、冷却風案内ダクト13の上流部131が下流部132よりも負圧となる場合に差圧により閉じる。遠心ファン14を駆動する場合には強制冷却風がバッテリカバー12に導入され、遠心ファン14を駆動せず、車両走行風が強い場合には車両走行風がバッテリカバー12に導入される。遠心ファン14は発電機側バッテリ2又は回路モジュール10の温度が所定のしきい値レベルを超える場合に駆動される。このようにすれば、非常に簡素な構成により、車両走行風及び強制冷却風をバッテリカバー12内に必要に応じて導入して発電機側バッテリ2や回路モジュール10を冷却することができる。なお、上記した樹脂ヒンジの代わりに金属回転軸を用いて逆止ダンパ16をバイパスダクト15に固定してもよく、冷却ファン機構200として図5以外の機構を採用しても良い。また、この冷却ファン機構200が吹き出す冷却風を他の機器の冷却に用いても良い。
【0057】
バッテリカバー12の冷却風吸入口121からバッテリカバー12内に流入した冷却風は、発電機側バッテリ2の前壁面を冷却しつつベースプレート71やヒートシンク74、75を冷却し、その後、発電機側バッテリ2の後壁面を冷却しつつ冷却風吐出口122から排出される。発電機側バッテリ2の冷却性を向上するために、その前壁面や後壁面に冷却フィンを追設してもよい。
【0058】
(変形態様)
上記実施例では、回路モジュール10は発電機側バッテリ2の上部に搭載、固定されたが、回路モジュール10をなんらかの支持部材を通じて底板11に固定しても良い。
【0059】
その他の変形態様を図6、図7を参照して説明する。図6は電池アセンブリ100を車両前方から後方へみた正面図を示し、図7はバッテリカバー12を破断した電池アセンブリ100の平面図を示す。この変形態様では回路モジュール10は、発電機側バッテリ2の上に密着固定されており、回路モジュール10はガス排出用安全弁20の周囲を囲む孔29が設けられている。バッテリカバー12は金属板により形成されているが、バッテリカバー12は図示しない絶縁シートを介してヒートシンク74、75の冷却フィン741、751から電気絶縁されつつヒートシンク74、75に密着している。このようにすれば、バッテリカバー12はガス排出用安全弁20から上方へのガス排出を阻止するとともに、ヒートシンク74、75とともに本発明で言う冷却用金属体を構成することができる。また、この変形態様では、回路モジュール10は発電機側バッテリ2よりも左右及び前後に幅広に形成されているので、車両衝突に対する衝撃を発電 機側バッテリ2に先んじて負担することができる。
【0060】
その他の変形態様を説明する。バッテリカバー(共通カバー)12を金属板製とする場合、このバッテリカバー12は、発電機側バッテリ2又は回路モジュール10の接地電極端子に接続される接地用バスバーを兼ねるようにしてもよい。この時、回路モジュール10から素子冷却のために突出するヒートシンク74、75やベースプレート71を素子の電極端子にそれに対して電気導通可能に接続するか、熱伝導性が良好な絶縁シートを用いて電気絶縁可能に接触させるかは適宜選択できる事項にすぎない。
【0061】
その他の変形態様を図8を参照して説明する。この変形態様は、バッテリカバー12が、バッテリ2の上面のみを覆う形状としたものである。400は発電機側バッテリ2の電極端子に固定される冷却フィンであり、この冷却フィン400の上に回路モジュール10が搭載されている。回路モジュール10はその上面から突出する冷却フィン500を有し、冷却フィン500は回路モジュール10の内部の素子を冷却する。冷却風案内ダクト13からバッテリカバー12内に導入された車両走行風又は強制冷却風はまず冷却フィン400を冷却した後、上方に反転して冷却フィン500を冷却する。バッテリカバー12は、内部に冷却風通路を形成するとともに回路モジュール10を保護し、更に、回路モジュール10及びバッテリカバー12は上方からの機械的衝撃に対して発電機側バッテリ2を保護するとともに、発電機側バッテリ2の上面のガス排出用安全弁からガスが上方へ噴出するのを防止する。なお、この変形態様においても回路モジュール10又はバッテリカバー12を発電機側バッテリ2よりも前後方向又は左右方向へ突出させて水平方向の機械的衝撃が発電機側バッテリ2に加えられるのを邪魔するようにしてもよい。
【0062】
その他の変形態様を図9、図10を参照して説明する。この変形態様は、実施例1の回路モジュール10を発電機側バッテリ2の前端面に隣接形状としたものである。図9は、電池アセンブリ100を下方から上方へ見上げた断面平面図を示し、図10は電池アセンブリ100を車両側方からみた断面側面図を示す。ただし、図9、図10において、発電機側バッテリ2は断面図示されていない。電池アセンブリ100は車両のエンジンルーム後部に配置されている。図9、図10において、電池アセンブリ100は車体に公知の種々の方法で固定された底板11上に固定されている。
【0063】
電池アセンブリ100は、図10に示す底板11上に固定された発電機側バッテリ2と、発電機側バッテリ2の前端面に固定された回路モジュール10と、発電機側バッテリ2及び回路モジュール10を囲覆する樹脂製のバッテリカバー12とからなる。710はベースプレート71の複数の冷却フィンであり、回路モジュール10から前方へ突出している。各冷却フィン710は、互いに車両左右方向に所定間隔を隔ててそれぞれ上下方向に延設されている。隣接する冷却フィン710の間のスペースは冷却風が上下方向に流れる冷却風通路を構成している。741はヒートシンク74の複数の冷却フィンであり、後方へ突出している。各冷却フィン741は、互いに車両左右方向に所定間隔を隔ててそれぞれ上下方向に延設されている。隣接する冷却フィン741の間のスペースは冷却風が上下方向に流れる冷却風通路を構成している。751はヒートシンク75の複数の冷却フィンであり、後方へ突出している。各冷却フィン751は、互いに車両左右方向に所定間隔を隔ててそれぞれ上下方向に延設されている。隣接する冷却フィン751の間のスペースは冷却風が上下方向に流れる冷却風通路を構成している。
【0064】
発電機側バッテリ2は、図10に示すようにその上面にガス排出用安全弁20と、+電極端子21と−電極端子22とを有している。+電極端子21とガス排出用安全弁20と−電極端子22とは車両左右方向に一列に並んでいるため、図10においてガス排出用安全弁20は破線で示され、−電極端子22を示す線は明示されていない。+電極端子21と−電極端子22は、ヒートシンク74、75と同様の冷却フィン付きのヒートシンク構造を有している。+電極端子21はヒートシンク74の冷却フィン741に図示しないバスバーにより接続されており、−電極端子22もヒートシンク74の冷却フィン741にバスバー1000により接続されている。これにより、発電機側バッテリ2と回路モジュール10との電気接続がなされている。
【0065】
なお、電極端子21のヒートシンク部分とヒートシンク74とをL字上に一体化し、電極端子22のヒートシンク部分とヒートシンク75とをL字上に一体化すればバスバー1000を省略することができる。その他、電極端子22とヒートシンク75とを接地できる場合には、それらを後述するバッテリカバー12を金属製とし、バッテリカバー12を通じて車体に接地することもできる。樹脂製のバッテリカバー12の下面には、図10に示すように、金属板製のガス案内部材79が固定されている。このガス案内部材79は発電機側バッテリ2から高温のガスが噴出する場合に、このガスによりバッテリカバー12が悪影響を受けるのを防止するために設けられたものである。
【0066】
ガス排出用安全弁20は、図10に示すように発電機側バッテリ2の上部においてガス案内部材79の直下に配置されており、発電機側バッテリ2の内部が高圧となってガス排出用安全弁20から上方へガスが噴出した場合でも、このガスの流れを前後方向へ偏向することにより、高温のガスが上方へ噴出しないようにしている。
【0067】
バッテリカバー12は、樹脂製であって、発電機側バッテリ2の前端面に隣接する回路モジュール10と発電機側バッテリ2の上面とを覆っており、ベースプレート71の冷却フィン710の隙間やヒートシンク74、75の冷却フィン741、751の隙間や電極端子21の冷却フィンの隙間に車両走行風又は強制冷却風を送風する冷却風通路を区画形成している。
【0068】
バッテリカバー12の前端面下部には冷却風案内ダクト13の下流端に連結された冷却風吸入口121が設けられ、バッテリカバー12の後端面下部には冷却風をエンジンルーム内に排出するための冷却風吐出口122が形成されている。
【0069】
冷却風の流れを説明すると、冷却風案内ダクト13の上流端は車両前部のエンジンルームの前部に開口しており、車両走行風を取り込む。バッテリカバー12の冷却風吸入口121からバッテリカバー12内に流入した冷却風は、ベースプレート71やヒートシンク74、75を冷却し、その後、発電機側バッテリ2の電極端子21、22を冷却しつつ冷却風吐出口122から発電機側バッテリ2の後側面に沿いつつ下方に排出される。回路モジュール10を発電機側バッテリ2の前端面ではなく発電機側バッテリ2の側方外側に配置しても良い。このようにすれば、車両の側方衝突が生じた場合における発電機側バッテリ2の損傷を減らせる。
【0070】
その他、冷却風案内ダクト13とバッテリカバー12とをベースプレート71やヒートシンク74、75に熱伝達良好に結合された金属板により形成してもよい。このようにすれば、発電機側バッテリ2や回路モジュール10の冷却効果を更に改善することができる。また、冷却風案内ダクト13の一部又は前部を車体をなす金属板により構成してもよい。具体的には、樋状の冷却風案内ダクト13を車体をなす金属板に被せてダクトとすればよい。この冷却風案内ダクト13内に回路モジュール10や発電機側バッテリ2と外部の発電機又は負荷側バッテリ4とを接続するためのケーブルや制御配線を延設してもよい。
【0071】
(実施効果)
この実施例によれば、回路モジュール10を発電機側バッテリ2の上部に一体に固定した構造を採用したために、装置をコンパクトに構成できるとともに、両者間の配線距離を最小化することができ、車重増加及び配線電力損失増大を回避することができる。また、この電池アセンブリ100に上部から圧力が加えられても、回路モジュール10が緩衝効果をもつため発電機側バッテリ2の機械的安全性を改善することができる。更に、回路モジュール10によりガス排出用安全弁20から上方へのガスの噴出を防止することができ、対人被害の発生を防止することができる。
【0072】
また、回路モジュール10のカードモジュール72、73と発電機側バッテリ2との間に冷却用金属体としてのヒートシンク74、75を配置したので、冷却風により冷却されるカードモジュール72、73の発熱が発電機側バッテリ2に伝達されるのを防止することができる。すなわち、ヒートシンク74、75はカードモジュール72、73と発電機側バッテリ2との両方を冷却することができる。したがって、回路モジュール10よりも温度上昇制限が厳しい発電機側バッテリ2を、冷却用金属体すなわちヒートシンク74、75により発熱体である回路モジュール10から熱的に隔離することができ、回路モジュール10の熱が発電機側バッテリ2に悪影響を与えるのを阻止することができる。
【0073】
また、ヒートシンク74、75はバスバーを兼ねるため構成の簡素化と重量軽減を図ることができる。更に、バッテリカバー12は、冷却風通路の創成とともに回路モジュール10と発電機側バッテリ2との機械的、電気的保護の効果を生じさせるという利点をもつ。なお、バッテリカバー12は発電機側バッテリ2を介することなく車体に固定することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例の車両用電源装置の回路構成を示すブロック回路図である。
【図2】電力伝送装置及びコントローラを実装した系間送電回路としての回路モジュールの形状を示す縦断面図である。
【図3】回路モジュールと発電機側バッテリ2とを一体化した電池アセンブリを車両前方から後方へみた正面図である。
【図4】図3の電池アセンブリを車両側方からみた側面図である。
【図5】冷却ファン機構を示す模式平面図である。
【図6】変形態様の電池アセンブリを車両前方から後方へみた正面図である。
【図7】図6の電池アセンブリの平面図である。
【図8】変形態様の電池アセンブリを車両側方からみた側面図である。
【図9】変形態様の電池アセンブリを下から上に見上げた状態を示す断面平面図である。
【図10】図9の電池アセンブリを車両側方からみた断面側面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 発電機
2 発電機側バッテリ
3 電源ライン
4 負荷側バッテリ
5 電気負荷
6 負荷給電ライン
7 電力伝送装置
8 コントローラ
10 回路モジュール
11 底板
12 バッテリカバー
13 冷却風案内ダクト
14 遠心ファン
15 バイパスダクト
16 逆止ダンパ
20 ガス排出用安全弁
21 電極端子
22 電極端子
29 孔
71 ベースプレート
72 カードモジュール
73 カードモジュール
74 ヒートシンク
75 ヒートシンク
76 樹脂モールド部
78 制御端子
77 絶縁シート
79 ガス案内部材
100 電池アセンブリ
121 冷却風吸入口
122 冷却風吐出口
200 冷却ファン機構
710 冷却フィン
741 冷却フィン
751 冷却フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動の発電機と、前記発電機により充電される発電機側バッテリとを含む発電機側電源系と、車載の電気負荷と、前記電気負荷に給電する負荷側バッテリとを含む負荷側電源系と、前記発電機側電源系から前記負荷側電源系に送電する直流電力伝送装置と、前記直流電力伝送装置を制御して前記送電を調節する送電制御回路とを備える2電源方式の車両用電源装置において、
前記発電機側バッテリ又は電力伝送装置を冷却するための冷却用金属体と、互いに一体結合された前記発電機側バッテリ、電力伝送装置及び冷却用金属体を覆う共通カバーとを有し、
前記共通カバーは、
前記冷却用金属体に沿いつつ車両走行風又は強制冷却風を案内する冷却風通路と、外部から前記冷却風通路に冷却風を導入する冷却風吸入口と、前記冷却風通路から外部に冷却風を排出する冷却風吐出口とを有することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記冷却用金属体は、前記直流電力伝送装置及び前記発電機側バッテリの両方を冷却することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、
前記発電機側バッテリの端子と前記直流電力伝送装置の発電機側端子とを接続するバスバーを囲覆することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項4】
請求項3記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記バスバーは、前記共通カバー内に形成された冷却風通路に露出して車両走行風又は強制冷却風により冷却されることを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項5】
請求項1記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、前記冷却用金属体を兼ねるか又は前記冷却用金属体に熱伝導良好に結合された金属板を含むことを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項6】
請求項5記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、車体をなす金属板に熱伝導良好に結合されることを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項7】
請求項6記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、接地用バスバーを兼ねることを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項8】
請求項1記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置の上方に位置して側方に延在する天板部を有し、前記天板部は、前記発電機側バッテリのガス排出用安全弁から排出される内部発生ガスの上方への漏出を阻止することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項9】
請求項8記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、側面に前記冷却風吸入口を有することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項10】
請求項8記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共通カバーは、側面に冷却風吐出口を有することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項11】
エンジン駆動の発電機と、前記発電機により充電される発電機側バッテリとを含む発電機側電源系と、車載の電気負荷と、前記電気負荷に給電する負荷側バッテリとを含む負荷側電源系と、前記発電機側電源系から前記負荷側電源系に送電する電力伝送装置と、前記電力伝送装置を制御して前記送電を調節する送電制御回路とを備える2電源方式の車両用電源装置において、
車両前部のエンジンルームに配設されて前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置の双方に車両走行風を案内する共用ダクトを有することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項12】
請求項11記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置と一体に形成されて前記発電機側バッテリ又は前記電力伝送装置を冷却する冷却用金属体を有し、
前記共用ダクトは、前記冷却用金属体に前記車両走行風を案内することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項13】
請求項11記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共用ダクト内に配置された電動冷却ファンと、
前記共用ダクトの前記電動冷却ファンより上流部位と前記電動冷却ファンより下流部位とを連通して電動冷却ファンをバイパスするバイパスダクトと、
前記バイパスダクトに配置されて前記上流部位の圧力が前記下流部位の圧力より低い場合に開き、前記上流部位の圧力が前記下流部位の圧力より高い場合に閉じる逆止ダンパと、
を有することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項14】
請求項11記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共用ダクトは、前記電力伝送装置の入力端子と前記発電機とを結ぶケーブル、又は前記電力伝送装置の出力端子と前記負荷側バッテリ又は前記電気負荷とを接続するケーブルを収容するケーブル延設通路をなすことを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。
【請求項15】
請求項11記載の2電源方式の車両用電源装置において、
前記共用ダクトは、前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置から略前方に延設されるとともに、前記エンジンルームの後部に配置された前記発電機側バッテリ及び前記電力伝送装置まで前記エンジンルームの前部から車両走行風を案内することを特徴とする2電源方式の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−259530(P2007−259530A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77618(P2006−77618)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】