説明

2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を持つ液晶化合物及び液晶組成物

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、大きなΔεと比較的低い粘度を同時に併せ持つ材料を提供し、併せて当該化合物を構成部材とする液晶組成物を提供することである。また、当該液晶組成物を使用した液晶表示素子を提供することである。
【解決手段】 一般式(I)で表される2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2,2,2]オクタン骨格を持つ化合物を提供し、併せて当該化合物を構成部材とする液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した液晶表示素子を提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電子材料や医農薬、特に電気光学的液晶表示用ネマチック液晶材料として有用な2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を持つ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ、時計、広告表示板等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、TFT(薄膜トランジスタ)を用いた垂直配向型やIPS(イン・プレーン・スイッチング)型等がある。これらの液晶表示素子に用いられる液晶組成物は水分、空気、熱、光などの外的要因に対して安定であること、また、室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示し、低粘性であり、かつ低い駆動電圧であることが求められる。さらに個々の表示素子に対して最適な誘電率異方性(Δε)または屈折率異方性(Δn)等の最適な物性値を持つ液晶組成物を得るために、数種類から数十種類の液晶性化合物から構成されている。
【0003】
TN型、STN型又はIPS型等の水平配向型ではΔεが正の液晶組成物が用いられている。また、Δεが正の液晶組成物を電圧無印加時に垂直に配向させ、横電界を印加する事で表示する駆動方式も報告されており、Δεが正の液晶組成物の必要性はさらに高まっている。更に、全ての駆動方式において応答速度の改善が求められており、この課題を解決するために現行よりも低粘度な液晶組成物が必要とされている。低粘度な液晶組成物を得るためには、大きなΔεを持つ化合物と、Δεをほとんど持たないが非常に低い粘度を持つ化合物(減粘材料)を併用する方法が有効である。すなわち、多少高い粘度を持つが非常に大きなΔεを持つ化合物を使用することが出来れば、併用できる減粘材料の量を増やせるため、結果的に低粘度な液晶組成物を得ることが可能となる。
【0004】
Δεが正の化合物において、Δεを大きくするためには分子長軸方向に導入したフッ素原子やシアノ基のような極性基の導入量を増やすことが有効である。しかながら、分子内の極性基導入量を高くすることにより、粘度上昇や液晶組成物への相溶性低下など、好ましくない影響を与えることが多い。従って、液晶化合物にフッ素原子やシアノ基のような極性置換基の導入量を単純に高くするだけでは、飛躍的に大きなΔεと比較的低い粘度を併せ持つ材料を得ることは困難である。この事から、極性置換基の導入だけに頼ることなく、大きなΔεを示す新規な骨格が必要である。
【0005】
近年においては、比較的大きなΔεと低粘度を併せ持つ下記の化合物が報告されている(特許文献1)。
【0006】
【化1】

【0007】
上記化合物の液晶組成物を調製し各種物性値を測定した結果、そのΔεの大きさは不十分であり、さらなる改善が必要である。
【0008】
また、2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を持つ液晶性化合物として、下記の化合物が報告されている(特許文献2)。
【0009】
【化2】

【0010】
しかしながら、同文献においては、これらの化合物の合成方法及び化合物単体の相転移温度のみが記載されており、Δεや粘度等の液晶組成物として構成する上における重要な物性値に関しての記載は一切無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5032313号明細書
【特許文献2】東独国特許第248122号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、大きなΔεと比較的低い粘度を併せ持つ材料を提供し、併せて当該化合物を構成部材とする液晶組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本願発明者らは種々の化合物の検討を行った結果、2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を持つ化合物が効果的に課題を解決できることを見出し本願発明の完成に至った。
【0014】
本願発明は、一般式(I)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rは炭素原子数1から15のアルキル基又は炭素原子数2から15のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−、−S−又は−CO−により置き換えられても良く、
及びA
(a)1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられても良い。)
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良く、この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されても良い。)
からなる群より選ばれる基であり、
及びZは各々独立して−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表し、Zは−OCH−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は単結合を表し、Zは−CHO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表し、W及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Wは水素原子、フッ素原子、塩素原子、−OCHF、−OCHF又は−OCFを表し、m及びnは各々独立して0から2の整数を表すが、m+nは0以上かつ3以下である。)で表される化合物を提供し、併せて当該化合物を含有する液晶組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により提供される、一般式(I)で表される新規液晶化合物は工業的にも容易に製造することができ、得られた一般式(I)で表される化合物は、大きなΔε、比較的低い粘度を示す。
【0018】
従って、併用できる減粘剤の量を増やすことができるため、結果として低粘度な液晶組成物を得ることができる。このため、高速での応答が求められる液晶表示素子用の液晶材料の構成成分として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般式(I)において、Rは炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数2〜15のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−、−S−又は−CO−により置き換えられても良いが、液晶組成物への相溶性を改善するには、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基が好ましく、特に粘度を低下させるためには、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基が特に好ましい。
【0020】
及びAは各々独立して、(a)1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられても良い)(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良く、この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されても良い)からなる群より選ばれる基であるが、粘度を低下させるためには1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基が好ましく、1,4−シクロヘキシレン基が更に好ましく、大きなΔεを示すためには3-フルオロ−1,4−フェニレン基又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基が好ましい。
【0021】
及びZは各々独立に−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表すが、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合が好ましく、−OCH−、−CFO−又は単結合が更に好ましい。
【0022】
は−OCH−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−又は単結合を表すが、粘度を低下させるためには単結合であることが特に好ましい。
【0023】
は−CHO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表すが、粘度を低下させるためには−CHO−又は単結合であることが好ましく、単結合であることが更に好ましい。
【0024】
及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、大きなΔεを示すためにはW又はWの少なくともどちらか一方がフッ素原子であることが好ましく、W及びWが共にフッ素原子である事が更に好ましく、粘度を低下させるためには水素原子又はフッ素原子であることが好ましく、W及びWが共に水素原子であることが更に好ましい。
【0025】
は水素原子、フッ素原子、塩素原子、−OCHF、−OCHF又は−OCFを表すが、大きなΔεを示すためにはフッ素原子、−OCHF、−OCHF又は−OCFであることが好ましく、−OCHF又は−OCFであることが更に好ましく、粘度を低下させるためには水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
【0026】
m及びnは各々独立して0から2でありm+nは0以上かつ3以下であるが、粘度を低下させるためには1又は0であることが好ましく、0であることが更に好ましい。
【0027】
一般式(I)においてR、A、A、Z〜Z、W〜W、m及びnの選択により、多種類の化合物を含みうるわけであるが、これらの中では以下の一般式(I−1)〜一般式(I−106)で表される各化合物が好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
(式中、Rは独立的に炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基又は炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表す。)
本発明の液晶組成物において一般式(I)で表される化合物の含有量が少ないとその効果が現れないため、組成物中に下限値として、1質量%(以下組成物中の%は質量%を表す。)以上含有することが好ましく、2%以上含有することが好ましく、5%以上含有することが更に好ましい。又、含有量が多いと析出等の問題を引き起こすため、上限値としては、50%以下含有することが好ましく、30%以下含有することがより好ましく、20%以下含有することが更に好ましく、10%以下含有することが特に好ましい。
【0038】
液晶組成物の物性値を調整するために液晶相を持つ化合物以外にも必要に応じて液晶相を持たない化合物を添加することもできる。
【0039】
このように、一般式(I)で表される化合物と混合して使用することのできるネマチック液晶化合物の好ましい代表例としては、本発明の提供する組成物においては、その第一成分として一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有するが、その他の成分として特に以下の第二から第四成分から少なくとも1種含有することが好ましい。
【0040】
即ち、第二成分はいわゆるハロゲン系のp型液晶化合物であって、以下の一般式(A1)から(A3)で示される化合物からなるものである。
【0041】
【化13】

【0042】
上式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチルまたはエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−により置換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子またはトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましい。また、分岐により不斉炭素が生じる場合には、化合物として光学活性であってもラセミ体であってもよい。
【0043】
環A、環B及び環Cはそれぞれ独立的に1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基を表すが、1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基又は1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基が好ましい。特に環Bが1,4−シクロへキシレン基またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基である場合に、環Aは1,4−シクロへキシレン基であることが好ましく、環Cが1,4−シクロへキシレン基またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基である場合に環B及び環Aは1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。また、(A3)において環Aは1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
、L及びLは連結基であって、それぞれ独立的に単結合、−CHCH−、1,−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CH(CH)CH(CH)−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は−CH=NN=CH−を表すが、単結合、−CHCH−、−CH(CH)CH(CH)−、−COO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−又は−C≡C−が好ましく、単結合又は−CHCH−が特に好ましい。また、(A2)においてはその少なくとも1個が、(A3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0044】
環Zは芳香環であり以下の一般式(La)〜(Lc)で表すことができる。
【0045】
【化14】

【0046】
式中、Y〜Yは各々独立して水素原子あるいはフッ素原子を表すが、(La)において、Y及びYの少なくとも1個はフッ素原子であることが好ましく、(Lb)において、Y〜Yの少なくとも1個はフッ素原子であることが好ましく、特にYはフッ素原子であることがさらに好ましい。
【0047】
末端基Pはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基又はジフルオロメチル基あるいは2個以上のフッ素原子により置換された炭素原子数2又は3のアルコキシル基、アルキル基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表すが、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0048】
第三成分はいわゆるシアノ系のp型液晶化合物であって、以下の一般式(B1)〜(B3)で示される化合物からなるものである。
【0049】
【化15】

【0050】
上式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチル又はエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−により交換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子又はトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1-アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましい。又、分岐により不斉炭素が生じる場合には、化合物として光学活性であってもラセミ体であってもよい。
【0051】
環D、環E及び環Fは各々独立して1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基を表すが、1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基又は1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基が好ましい。特に環Eが1,4−シクロへキシレン基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基である場合には、環Dは1,4−シクロへキシレン基であることが好ましく、環Fが1,4−シクロへキシレン基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基である場合には、環D及び環Eは1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。又、(B3)において環Dは1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
【0052】
、L及びLは連結基であって、各々独立して単結合、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CH(CH)CH(CH)−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−OCH−、−CHO−又は−CH=NN=CH−を表すが、単結合、−CHCH−、−COO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−又は−C≡C−が好ましく、単結合、−CHCH−又は−COO−が特に好ましい。又、(B2)においてはその少なくとも1個が、(B3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0053】
環Yは芳香環であり以下の一般式(Ld)〜(Lf)で表すことができる。
【0054】
【化16】

【0055】
式中、Y〜Yは各々独立して水素原子あるいはフッ素原子を表すが、(Le)において、Y及びYは水素原子であることが好ましい。
【0056】
末端基Pはシアノ基、シアナト基又は−C≡CCNを表すが、シアノ基が好ましい。
【0057】
第四成分は誘電率異方性が0程度である、いわゆるn型液晶であり、以下の一般式(C1)〜(C3)で示される化合物からなるものである。
【0058】
【化17】

【0059】
上式中、R及びPは各々独立して炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチル又はエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−により交換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子又はトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基又は末端が炭素原子数1〜3アルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基が好ましく、更に少なくとも一方は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基又は炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基であることが特に好ましい。
【0060】
環G、環H、環I及び環Jは各々独立して1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基を表すが、各化合物において、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、他の環は1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることが好ましい。
【0061】
、L及びLは連結基であって、各々独立して単結合、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CH(CH)CH(CH)−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は−CH=NN=CH−を表すが、単結合、−CHCH−、−CH(CH)CH(CH)−、−COO−、−OCO−、−OCF−、−CFO−、−CF=CF−、−C≡C−又は−CH=NN=CH−が好ましく、(C2)においてはその少なくとも1個が、(C3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0062】
(C1)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C1a)〜(C1h)で表すことができる。
【0063】
【化18】

【0064】
上記各式中、R及びRは各々独立して炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基又は末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表すが、少なくとも一方は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基又は炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基を表す。ただし、環G1〜環G8が芳香環の場合、対応するRは1−アルケニル基及びアルコキシル基を除き、環H1〜環H8が芳香環の場合、対応するRは1-アルケニル基及びアルコキシル基を除く。
【0065】
環G1及び環H1は各々独立して1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基を表すが、各化合物において、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環は1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。環G2及び環H2は各々独立して1,4−シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、各化合物において、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環は1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。環G3及び環H3は各々独立して1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、各化合物において1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は1個以内であることが好ましい。
【0066】
(C2)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C2a)〜(C2m)で表すことができる。
【0067】
【化19】

【0068】
上式中、環G1、環G2、環G3、環H1、環H2及び環H3は前述の意味を表し、環I1は環G1と、環I2は環G2と、環I3は環G3とそれぞれおなじ意味を表す。又、上記各化合物において、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環は1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0069】
次に(C3)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C3a)〜(C3f)で表すことができる。
【0070】
【化20】

【0071】
上式中、環G1、環G2、環H1、環H2、環I1及び環I2は前述の意味を表し、環J1は環G1又環J2は環G2とそれぞれおなじ意味を表す。又、上記各化合物において、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環は1,4−シクロへキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子又はメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0072】
本発明において、一般式(I)の化合物は、以下のようにして製造することができる。勿論本発明の趣旨及び適用範囲は、これら製造例により制限されるものではない。
(製法1)
一般式(II)
【0073】
【化21】

【0074】
(式中R及びZは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表される化合物と一般式(III)
【0075】
【化22】

【0076】
(式中W、W、W、Z、Z、A及びnは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表される化合物を、脱水縮合剤及び塩基性化合物存在下反応させる事で、一般式(IV)
【0077】
【化23】

【0078】
(式中R、W、W、W、Z、Z、Z、A及びnは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表されるエステル化合物を得る事が出来る。
【0079】
溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒が好ましい。反応温度としては、反応を好適に進行させる温度であればいずれでも構わないが、0℃から30℃程度が好ましい。脱水縮合剤としては、反応を好適に進行させるものでればいずれでも構わないが、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド系脱水剤が好ましい。塩基性化合物としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン等のピリジン系化合物が好ましい。
また、一般式(IV)で表される化合物を得る別法として、一般式(V)
【0080】
【化24】

【0081】
(式中W、W、W、Z、Z、A及びnはそれぞれ独立に一般式(I)と同じ意味を表す。)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物を、塩基性化合物の存在下反応させることで、一般式(IV)で表されるエステル化合物を得ることが出来る。
【0082】
溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。反応温度としては、反応を好適に進行させる温度であればいずれでも構わないが、0℃から30℃までが好ましい。塩基性化合物としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の3級か2級の脂肪族アミン系化合物、又は4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン等のピリジン系化合物が好ましい。
次に、一般式(IV)で表せられる化合物にルイス酸を作用させる事で、一般式(I)で表される化合物を得ることが出来る。
溶媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒が好ましい。反応温度としては、反応を好適に進行させる温度であればいずれでも構わないが、15℃から30℃までが好ましい。ルイス酸としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。
(製法2)
トリフェニル(メトキシメチル)ホスホニウムブロミドと塩基を反応させる事によりリンイリドを調製した後、一般式(VI)
【0083】
【化25】

【0084】
(式中R、Z、Z、A及びmは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表される化合物を反応させる事により一般式(VII)
【0085】
【化26】

【0086】
(式中R、Z、Z、A及びmは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表されるビニルエーテル化合物を得ることが出来る。
【0087】
溶媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が好ましい。反応温度は、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、−10℃以下であることが望ましい。塩基としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ターシャリーブトキシカリウム等のアルコキシド類、ノルマルブチルリチウム等が好ましい。
【0088】
次に、一般式(VII)で表される化合物を、水存在下酸処理する事で一般式(VIII)
【0089】
【化27】

【0090】
(式中R、Z、Z、A及びmは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表されるアセトアルデヒド誘導体を得る事が出来る。
【0091】
溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、テトラヒドロフラン、エタノール、メタノール等の水溶性溶媒が好ましい。反応温度としては、反応を好適に進行させる温度であればいずれでも構わないが、室温から溶媒の沸点までの温度が好ましい。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類等が好ましい。
【0092】
次に、一般式(VIII)で表される化合物と塩基存在下においてパラホルムアルデヒド又は1,3,5−トリオキサンと反応させる事で一般式(IX)
【0093】
【化28】

【0094】
(式中R、Z、Z、A及びmは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表される化合物を得る事が出来る。
【0095】
溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系溶媒が好ましい。反応温度としては、反応を好適に進行させる温度であればいずれでも構わないが、50℃から溶媒の沸点までの温度が好ましい。塩基としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
【0096】
次に、一般式(IX)で表される化合物を塩基存在下炭酸ジエチルと反応させた後、生成物を単離することなく加熱分解する事で一般式(X)
【0097】
【化29】

【0098】
(式中R、Z、Z、A及びmは各々独立して一般式(I)と同じ意味を表す。)で表されるオキセタン誘導体を得ることが出来る。
【0099】
溶媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、溶媒を使用しないかエタノールを用いることが好ましい。温度としては、反応を好適に進行させる温度であればいずれでも構わないが、熱分解前の工程では80℃程度が好ましく、熱分解工程では130℃から200℃までの温度が好ましい。塩基としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物等が好ましい。
【0100】
以降の工程は(製法1)の一般式(II)で表される化合物の代わりに、一般式(X)で表される化合物を用いて同様に行う事で、一般式(I)で表される化合物を得ることが出来る。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、相転移温度の測定は温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡及び示差走査熱量計(DSC)を併用して行った。
【0102】
以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0103】
N−Iはネマチック相を示す上限の温度を表す。
【0104】
化合物記載に下記の略号を使用する。
【0105】
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
Et:エチル基、Pr:n−プロピル基、Bu:n−ブチル基
(実施例1)4−エチル−1−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−1)の製造

【0106】
窒素雰囲気下、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン8g、3,4,5−トリフルオロ安息香酸10g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン70mgをジクロロメタン30mL中にて混合し、氷冷した。氷冷下、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド7.2gのジクロロメタン(14mL)の溶液を30分かけて加え、室温にて2時間攪拌した。有機層を10%塩酸80mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液80mL、飽和食塩水80mLにて洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィーにより精製することで、3−エチル−3−(3,4,5−トリフルオロフェニルカルボニルオキシメチル)オキセタンを15.5g得た。次に、窒素雰囲気下、3−エチル−3−(3,4,5−トリフルオロフェニルカルボニルオキシメチル)オキセタン14.5gをジクロロメタン135mLに溶解させ、トリフルオロボランジエチルエーテル錯体0.75gを加え、室温にて1時間攪拌した。続いてトリエチルアミン0.8gを加えて30分撹拌した後、10%炭酸カリウム水溶液50mLを加え、有機層を分取した。有機層を飽和食塩水50mLで洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、ヘキサンにて再結晶する事で、4−エチル−1−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを7.7g得た。
MS m/z:274[M
相転移温度(℃):Cr 113 Iso
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ=7.29−7.21(2H,m),4.08(6H,s),1.32(2H,q,J=7.6Hz),0.88(3H,t,J=7.6Hz)
(実施例2)4−エチル−1−(3,4−ジフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−2)の製造
実施例1で使用した3,4,5−ジフルオロ安息香酸の替わりに3,4−ジフルオロ安息香酸を使用する以外は、実施例1と同様な方法により、4−エチル−1−(3,4−ジフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを2.4g得た。
【0107】
MS m/z:256[M+]
相転移温度(℃):Cr 72 Iso
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ=7.47−7.42(1H,m),7.38−7.33(1H,m),7.15−7.09(1H,m),4.09(6H,s),1.33(2H,q,J=7.6Hz),0.89(3H,t,J=7.6Hz)
(実施例3)4−エチル−1−{4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)フェニル}−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−20)の製造

【0108】
窒素雰囲気下、4−−ブロモ安息香酸25g、炭酸カリウム21.1g、エタノール100mL、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.3gを混合し、70℃に加熱した。70℃にて3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸19gをゆっくりと加え、72時間撹拌した。放冷後、吸引濾過により炭酸カリウムを除去し、溶液を減圧濃縮した。トルエンを加え、飽和食塩水にて洗浄した後、硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにメタノールにて再結晶することで4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)安息香酸エチル20gを得た。続いて、4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)安息香酸エチル20gをTHF100mL、エタノール140mLに溶解させ、水酸化ナトリウム4.4gを15mLの水に溶解させた溶液を加えた。室温にて2時間撹拌した後、10%塩酸を加えて系内のpH値が1となるまで加えた。析出した沈殿を濾過し、沈殿をさらにアセトニトリルで洗浄する事で、4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)安息香酸16.5gを得た。これ以降の工程は、実施例1で使用した3,4,5−トリフルオロ安息香酸の代わりに4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)安息香酸を用いる事以外は実施例1と同様な方法により、4−エチル−1−{4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)フェニル}−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを4g得た。
【0109】
MS m/z:350[M
相転移温度(℃) Cr 152 Iso
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ=8.13−8.10(2H,m),7.60−7.56(2H,m),7.19−7.14(2H,m),4.13(6H,s),1.34(2H,q,J=7.6Hz),0.90(3H,t,J=7.6Hz)
(実施例4)4−エチル−1−{3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)フェニル}−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−71)の製造

【0110】
窒素雰囲気下、マグネシウム2.0gをTHF40mLに懸濁させた溶液に3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)ブロモベンゼン30g(特表2003−525286に記載の方法にて製造した)のTHF60mLの溶液を、穏やかに還流する速度で加えた。引き続き50℃にて1時間撹拌したのち、氷冷下二酸化炭素ガスを吹き込み、そのままの温度で1時間撹拌した。10%塩酸を系内が酸性となるまで加え、有機層を分取した。水層に酢酸エチルを加え、有機層を分取し、先ほどの有機層と併せた。続いて有機溶媒を減圧留去する事で3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)安息香酸23.8gを得た。続いて、窒素雰囲気下、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン7.8g、3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)安息香酸23.8g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.41gをジクロロメタン240mL中にて混合し、氷冷した。氷冷下、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド8.7gをジクロロメタン16mLに溶解させた溶液を30分かけて加え、室温にて2時間攪拌した。有機層を10%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、3−エチル−3−{3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)フェニル−オキセタンを25.8g得た。
次に、窒素雰囲気下、3−エチル−3−{3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)フェニル−オキセタン25.8gをジクロロメタン260mLに溶解させ、トリフルオロボランジエチルエーテル錯体0.8gを加え、室温にて1時間攪拌した。続いてトリエチルアミン0.9gを加えて30分撹拌した後、10%炭酸カリウム水溶液を加え、有機層を分取した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、ヘキサンにて再結晶する事で、4−エチル−1−{3,5−ジフルオロ−4−(3,4,5−トリフルオロフェニルオキシジフルオロメチル)フェニル}−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを19.0g得た。
【0111】
MS m/z:452[M
(実施例5)4−(trans−4−エチルシクロヘキシル)−1−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−29)の製造

【0112】
窒素雰囲気下、トリフェニル(メトキシメチル)ホスホニウムブロマイド338gをTHF340mLに懸濁させ、−10℃に冷却した。−5℃を超えない速度で、ターシャリーブトキシカリウム97.8gを固体のまま加え、その後30分間−10℃にて撹拌し、リンイリドを調製した。窒素雰囲気下、別の容器に4−エチルシクロヘキサノン100gをTHF200mLに溶解させた溶液を−10℃に冷却し、先に調製したリンイリド溶液を溶液温度が−5℃を超えない速度で加えた。−10℃にて1時間撹拌した後、水100mLを加えて析出したトリフェニルホスフィンオキシドをろ過により除去し、ろ過液を減圧濃縮した。ヘキサンと水を加えて有機層を分取した。水層にヘキサンを加えて有機層を分取し、先ほどの有機層と併せた。有機溶媒を減圧留去により除去し、4−エチルシクロヘキサン−1−イリデンメチルエーテルを118g得た。
【0113】
次に、4−エチルシクロヘキサン−1−イリデンメチルエーテル118gをTHF560mLに溶解させ、10%塩酸360mLを加えた。有機溶媒が還流する温度にて4時間撹拌した。放冷後、有機層を分取し、水層にトルエンを加えて有機層を分取し、先ほどの有機層と併せた。硫酸ナトリウムにより乾燥後、有機溶媒を減圧留去する事により、4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド106gを得た。
【0114】
次に、窒素雰囲気下、トリフェニル(メトキシメチル)ホスホニウムブロマイド322gをTHF1.6Lに懸濁させ、−10℃に冷却した。−5℃を超えない速度で、ターシャリーブトキシカリウム93gを固体のまま加え、その後30分間−10℃にて撹拌し、リンイリドを調製した。窒素雰囲気下、別の容器に4−エチルシクロヘキサンカルバルデヒド106gをTHF220mLに溶解させた溶液を−10℃に冷却し、先に調製したリンイリド溶液を溶液温度が−5℃を超えない速度で加えた。−10℃にて1時間撹拌した後、水を加えて析出したトリフェニルホスフィンオキシドをろ過により除去し、ろ過液を減圧濃縮した。ヘキサンと水を加えて有機層を分取した。水層にヘキサンを加えて有機層を分取し、先ほどの有機層と併せた。有機溶媒を減圧留去により除去し、2−(4−エチルシクロヘキシル)−1−メトキシエテンを119g得た。
【0115】
次に、2−(4−エチルシクロヘキシル)−1−メトキシエテン119gをTHF480mLに溶解させ、10%塩酸240mLを加えた。有機溶媒が還流する温度にて4時間撹拌した。放冷後、有機層を分取し、水層にトルエンを加えて有機層を分取し、先ほどの有機層と併せた。硫酸ナトリウムにより乾燥後、有機溶媒を減圧留去する事により、4−エチルシクロヘキシルアセトアルデヒド108gを得た。
【0116】
次に、窒素雰囲気下、4−エチルシクロヘキシルアセトアルデヒド108g、パラホルムアルデヒド151g及び水酸化カルシウム50gをTHF480mLに溶解させ、還流温度まで加熱した。還流下70時間撹拌した後、室温まで冷却し不溶物をセライトろ過により除去した。通過液の有機溶媒を減圧留去する事により、2−(4−エチルシクロヘキシル)−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール75gを得た。
【0117】
次に、窒素雰囲気下、炭酸ジエチル120gと金属ナトリウム4.4gを80℃に加熱した混合物を撹拌ながら、2−(4−エチルシクロヘキシル)−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール75gをゆっくりと加えた。その後、155℃にて3.5時間撹拌し、生成するエタノールを留去した。エタノールの留去が完了した後減圧下200℃に加熱し、そのまま蒸留する事により3−(4−エチルシクロヘキシル)−3−ヒドロキシメチルオキセタンを29g得た。
【0118】
次に、窒素雰囲気下、3−(4−エチルシクロヘキシル)−3−ヒドロキシメチルオキセタン29g、3,4,5−トリフルオロフェニル安息香酸26g、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.9gをジクロロメタン145mL中にて混合し、氷冷した。氷冷下、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド20.4gをジクロロメタン40mLに溶解させた溶液を30分かけて加え、室温にて2時間攪拌した。有機層を10%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィーにより精製することで、3−(4−エチルシクロヘキシル)−3−(3,4,5−トリフルオロフェニルカルボニルオキシメチル)−オキセタンを52g得た。
次に、窒素雰囲気下、3−(4−エチルシクロヘキシル)−3−(3,4,5−トリフルオロフェニルカルボニルオキシメチル)−オキセタン52gをジクロロメタン260mLに溶解させ、トリフルオロボランジエチルエーテル錯体2.1gを加え、室温にて1時間攪拌した。続いてトリエチルアミン2.7gを加えて30分撹拌した後、10%炭酸カリウム水溶液を加え、有機層を分取した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、ヘキサンにて再結晶する事で、4−(4−エチルシクロヘキシル)−1−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタンを39g得た。
【0119】
MS m/z:356[M
(実施例6) 液晶組成物の調製−1
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H)
【0120】
【化30】

【0121】
を調製した。ここで、(H)の物性値は以下の通りである。
【0122】
ネマチック相上限温度(TN−I):103.2℃
誘電率異方性(Δε):0.04
屈折率異方性(Δn):0.098
粘度(η20):20.3mPa・s
この母体液晶(H)95%と、実施例1で得られた4−エチル−1−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−1)5%からなる液晶組成物(M−A)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0123】
N−I:94.7℃
Δε:1.98
Δn:0.0985
η20:22.2mPa・s
(実施例7)液晶組成物の調製−2
母体液晶(H)95%と実施例2で得られた4−エチル−1−(3,4−ジフルオロフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−2)5%からなる液晶組成物(M−B)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0124】
N−I:94.3℃
Δε:1.38
Δn:0.0987
η20:22.9mPa・s
(実施例8)液晶組成物の調製−3
母体液晶(H)98%と実施例3で得られた4−エチル−1−{4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)フェニル}−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(I−20)2%からなる液晶組成物(M−C)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0125】
N−I:103.0℃
Δε:0.991
Δn:0.1070
η20:21.8mPa・s
(比較例1)液晶組成物の調製−4
母体液晶(H)95%とUS5032313(特許文献1)に記載のtrans−4−ペンチルシクロヘキシル−3,4,5−トリフルオロベンゼン5%からなる液晶組成物(M−D)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0126】
N−I:97.3℃
Δε:0.65
Δn:0.103
η20:21.8mPa・s
(比較例2)
母体液晶(H)95%と東独国特許第248122号明細書(特許文献2)に記載の1−(4−ヘキシルフェニル)−2,6,7−トリオキサ−4−ペンチル−ビシクロ[2.2.2]オクタン5%からなる液晶組成物(M−E)調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0127】
N−I:94.3℃
Δε:0.27
Δn:0.104
η20:23.1mPa・s
(比較例3)
母体液晶(H)95%とDD東独国特許第248122号明細書(特許文献2)に記載の4−(4−シアノフェニルオキシ)メチル−1−(4−ヘキシルフェニル)−2,6,7−トリオキサ−ビシクロ[2.2.2]オクタン5%からなる液晶組成物(M−E)調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0128】
N−I:100.0℃
Δε:0.05
Δn:0.1068
η20:24.8mPa・s
実施例6〜8と比較例1〜3を比較する事により、本願化合物を含む液晶組成物は比較例1〜3で示した液晶組成物よりも極めて大きなΔεを示すにも関わらず、大幅な粘度上昇を抑える事が判明した。従って、一般式(I)で表される化合物は極めて大きなΔεを示しながら、比較的低い粘度を示すことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1から15のアルキル基又は炭素原子数2から15のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−、−S−又は−CO−により置き換えられても良く、
及びA
(a)1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられても良い。)
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられても良く、この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されても良い。)からなる群より選ばれる基であり、
及びZは各々独立して−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表し、Zは−OCH−、−OCF−、−CHCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は単結合を表し、Zは−CHO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表し、W及びWは各々独立して水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を表し、Wは水素原子、フッ素原子、塩素原子、−OCHF、−OCHF又は−OCFを表し、m及びnは各々独立して0から2の整数を表すが、m+nは0以上かつ3以下である。)で表される化合物。
【請求項2】
一般式(I)において、A及びAが各々独立して1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基及び3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、Z及びZが各々独立して−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表す請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I)において、Zが−CHO−又は単結合を表す請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(I)において、Zが単結合を表す請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(I)において、W及びWが各々独立して水素原子又はフッ素原子を表す請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(I)において、Wがフッ素原子、−OCHF、−OCHF又は−OCFを表す請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物。
【請求項9】
請求項8記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。
【請求項10】
請求項8記載の液晶組成物を使用したアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。

【公開番号】特開2013−1683(P2013−1683A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135144(P2011−135144)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】