3ピース缶の密閉方法
【課題】 缶胴接合部の段差部分から不活性ガスが漏洩しないようにして3ピース缶の気密性を向上させる。
【解決手段】 本発明に係る3ピース缶の密閉方法は、蓋4の 嵌合凹部で缶胴接合部7を押圧した状態で、蓋4のかしめ部を缶胴1にかしめて密閉することを特徴とし、3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、缶胴接合部7と対向する位置にある缶胴1の上端部を支点8として蓋4の開閉を行うようにする。これにより、蓋4の 嵌合凹部に配設されたシーリング材が缶胴接合部7に密着し、缶胴接合部7の段差部分から不活性ガスが漏洩せず、3ピース缶の気密性が向上する。
【解決手段】 本発明に係る3ピース缶の密閉方法は、蓋4の 嵌合凹部で缶胴接合部7を押圧した状態で、蓋4のかしめ部を缶胴1にかしめて密閉することを特徴とし、3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、缶胴接合部7と対向する位置にある缶胴1の上端部を支点8として蓋4の開閉を行うようにする。これにより、蓋4の 嵌合凹部に配設されたシーリング材が缶胴接合部7に密着し、缶胴接合部7の段差部分から不活性ガスが漏洩せず、3ピース缶の気密性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキなど各種の液状またはペースト状等の内容物を気密に保管する3ピース缶の密閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化重合型のインキなど、 空気に触れると酸化するなどして変質する内容物 を密閉容器に 保管する場合 、内容物を充填した容器内の空気を 窒素などの不活性ガスに置換した後、蓋を閉めて密閉している(例えば、特許文献1参照)。そして、この種の密閉 容器として 、いわゆる2ピース缶もしくは 3ピース缶が用いられている。
2ピース缶は、打ち抜き で缶胴と底部を 一体成形した 容器本体と蓋の2部品で構成される。一方、 3ピース缶は、容器本体が、平板を筒状に 丸めて両端縁部 を接合した缶胴 と当該缶胴の一方の開口部 を閉塞する 底部とからなり、蓋を加えた 3部品で構成される(例えば、特許文献2参照) 。
【特許文献1】特開2005−104569号公報
【特許文献2】特開2005−75355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、3ピース缶では、 平板を筒状に 丸めて端部同士 を接合することにより缶胴が形成されるが、図11に示すように、平板の端部同士を重ね合わせて溶接し、さらに上端部をカールするため、缶胴カール部の接合部には最大100μm程度の段差d1、d2が発生する。このため、缶胴と蓋を同芯に配置させてかしめる従来の3ピース缶の密閉方法では、段差d1、d2部分から不活性ガスが漏れ出るおそれがある。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、缶胴接合部の段差部分から不活性ガスが漏洩しないようにして3ピース缶の気密性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、板体の 両端縁部を 重ね合わせて接合してなる筒状の缶胴と、当該缶胴の一方の開口部を閉塞する底部と、当該缶胴の他方の開口部を封止する蓋とからなる3ピース缶の密閉方法であって、前記缶胴に前記蓋を嵌合し、前記蓋の周縁部で前記缶胴接合部を押圧した状態で、前記蓋の周縁部を前記缶胴にかしめて密閉することを特徴とする。
本発明では、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉することにより、蓋の周縁部に装着されたシーリング材が缶胴接合部に密着する。これにより、缶胴接合部の段差がシーリング材によって塞がれ、段差部分から不活性ガスが漏洩することがない。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る3ピース缶の密閉方法によれば、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉するので、蓋の周縁部に装着されたシーリング材が缶胴接合部に密着し、缶胴接合部の段差部分から不活性ガスが漏洩せず、3ピース缶の気密性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る3ピース缶の密閉方法は、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉する、即ち、蓋に対して缶胴を缶胴接合部の方向(平面視で缶胴の中心から缶胴接合部に向かう方向)に相対移動させ、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉することを特徴とするものであるが、以下に示す方法により実現することができる。
【0008】
3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉することにより、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧することができる。
内容物が充填され、仮置きされた3ピース缶の蓋を開けて不活性ガスを封入する際に、缶胴の上端部を支点として蓋を開けると、缶胴は支点と対向する側へ僅かに移動する。従って、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉すれば、缶胴は缶胴接合部の方向に移動し、蓋の周縁部が缶胴接合部を押圧することになる。
【0009】
また、3ピース缶内に不活性ガスを封入し、缶胴に蓋を嵌合した状態で、蓋に対して缶胴を缶胴接合部の方向に相対移動させることにより、蓋の周縁部が缶胴接合部を押圧するようにしてもよい。
【0010】
あるいは、3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、缶胴の上方で蓋を水平に保持した状態で、蓋に対して缶胴を缶胴接合部の方向に相対移動させた後、閉蓋することにより、蓋の周縁部が缶胴接合部を押圧するようにしてもよい。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係る3ピース缶の密閉方法の実施例について図面に基いて説明する。
図1に3ピース缶の缶本体、図2に3ピース缶の蓋それぞれの形状を示す。また、図3に3ピース缶の密閉方法を説明するための図を、図4に3ピース缶内に不活性ガスを充填する方法を説明するための図を示す。
【0012】
缶本体3は、金属板の 両端縁部を 重ね合わせて溶接により 接合した筒状の缶胴1と、当該缶胴1の一方の開口部を閉塞する底部2から構成されており、缶胴1と底部2とは巻き締め接合などにより一体化されている。
【0013】
缶胴1は、 底部2 から上端縁1 aの開口部に向かって漸次内径が拡径するテーパ筒状に形成されており 、上端縁1 aの外部側には、 外側にカールした 缶胴カール部1b が全周に亘って形成されている。また、 缶胴カール部1bの下方 には、 外側に略V字状に突出するビード部1c が全周に亘って形成されており、 ビード部1cを支点として 開蓋工具(オープナ)を用いて 蓋4 を開けることができるようになっている 。
【0014】
他方、蓋4は、 円形平面部からなる天面4a と、 その周囲に形成された天面凹部4bと、さらに その周り に形成された リング状の嵌合凹部(周縁部)5 とから 構成されている。嵌合凹部5 は天面凹部4b と上下逆方向に凹陥部を形成した略逆U字状を呈しており、その内奥部にはシーリング材6 が嵌合凹部5 に沿ってリング状に配設されている。また、 嵌合凹部5 の外側側部は天面凹部4b より下方に延びており、その端部には 外側にカールした 蓋カール部5a が全周に亘って 形成されている。嵌合凹部5 の外側側部のうち、シーリング材6 と蓋カール部5a との間の領域がかしめ部5b に相当する。
シーリング材6は、 適宜の硬度および弾性を備え、閉蓋されたとき缶胴 カール部1b に押圧されることにより気密を保つ部材であり、例えば適宜の合成樹脂または合成ゴムの発泡体を採用することができる。
【0015】
次に、 上述の構成を有する 3ピース缶の密閉工程について 説明する。
先ず、 予め所要量の内容物 が充填された缶本体3に対し、蓋4の嵌合凹部5を缶胴1 の缶胴カール部1b に配置させて 仮置きする(図3(a)、(b)参照 )。この状態で、3ピース缶は 不活性ガス充填装置に搬送され、常圧下で3ピース缶 内の空気が窒素などの 不活性ガスに置換される 。
図4に示すように 、不活性ガス充填装置11の 基軸11b を降下させて、 缶本体3に仮置きした状態の蓋4にチャッキングヘッド11a を密着させて磁石11cで 吸着させる。そして、缶胴1の上端部を支点として斜めに蓋4を開いて、蓋4と缶胴1の間隙から不活性ガスノズル1 0を缶本体3内に 挿入し 、アーム10bの先端に取り付けられた円板状の本体10a から不活性ガスG を吐出する。 不活性ガスGは、 缶本体3内の内容物S に向けて斜め下方に放射状に放出され 、内容物S に接触して流れ方向を変え、缶胴1 の内壁面に沿って蓋4方向に流れる。このようにして、缶本体3内の空気は間隙 から外部へ押し出され 不活性ガスG に置換される 。
その後 、チャッキングヘッド11aにより 蓋4を閉め、 かしめ手段(図示省略)を作動して 、蓋4の周縁部 全周に亘ってかしめ部5b をかしめて、 蓋4を缶本体3にかしめ固定する (図3 (c)参照)。
【0016】
さて、本発明に係る3ピース缶の密閉方法では、蓋4の 嵌合凹部(周縁部)5で缶胴接合部を側方に押圧した状態で、蓋4のかしめ部5bを缶胴1にかしめて密閉することを特徴としており、3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、図5に示すように、缶胴接合部7と対向する位置にある缶胴1の上端部を支点8として蓋4の開閉を行うものである。
このようにすると、図6に示すように、蓋4の 嵌合凹部5に配設されたシーリング材6が押圧されて缶胴接合部7の段差部分Lに入り込むため、段差部分Lに隙間が発生することがない。その結果、段差部分Lから不活性ガスが漏洩せず、3ピース缶の気密性が向上する。
【0017】
なお、平面視で缶胴1の中心回りに180度の位置に缶胴接合部7と支点8が配置されている場合が最も気密性が向上するが、缶胴接合部7が 嵌合凹部5で押圧されていれば、その近傍位置でもよい。
【0018】
(耐圧試験)
本発明の効果を確認するために、缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉して不活性ガスを封入した場合と、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉して不活性ガスを封入した場合(本発明)について、それぞれ20サンプルとってその初期耐圧を計測した。
密閉した3ピース缶の外部から内部へリークする空気の測定は困難であるため、以下の方法によって3ピース缶の初期耐圧を測定した。図7に示すように、気密に密閉した3ピース缶の蓋4に圧縮空気注入用のチューブ20を貫通させて気密状態に保持するとともに、蓋4と缶胴1とのシーリング材6による嵌合部分の周囲全周に亘って石けん水21を塗布しておく。そして、0.005MPa刻みで加圧した圧縮空気をチューブ20を通して3ピース缶内に順次注入して、チューブ20の途中に取り付けた圧力メータ(図示省略)で圧縮空気の圧力を測定し、石けん水21の表面に気泡が発生した時点の圧力を3ピース缶の初期耐圧とした。
【0019】
その結果を、縦軸を初期耐圧分布、横軸を度数とするヒストグラムにして示したのが図8である。ここで、(a)は缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉した場合、(b)は缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉した場合(本発明)である。
図8より、缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉した場合は、0.0386〜0.0418MPaの初期耐圧を有するサンプルが最も多く、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉した場合は、0.0480〜0.0511MPaの初期耐圧を有するサンプルが最も多いことがわかる。即ち、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点としたほうが初期耐圧が高く、気密性が高いことがわかる。
なお、(a)と(b)のデータについて有意な差があるかどうか明らかにするためにt検定(二群の平均値の差の検定)を行ったところ、95%の確率で二 群の平均値に有意 差があることが示された。
【0020】
図9は、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部7の方向(平面視で缶胴の中心から缶胴接合部に向かう方向)に相対移動させて、蓋4の周縁部で缶胴接合部7を側方に押圧している状態を示した3ピース缶の平面図であり、このような状態は、上述した方法に限らず、図10に示した方法によっても実現することができる。
図10(a)の方法は、従来の方法で3ピース缶内に不活性ガスを封入した後、蓋4を閉め、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部の方向Hに相対移動させることにより、蓋4の周縁部で缶胴接合部7を押圧するものである。
一方、図10(b)の方法は、缶胴1の上方で蓋4を水平に保持した状態で、3ピース缶内に不活性ガスを封入し、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部の方向Hに相対移動させた後、閉蓋するものである。あるいは、缶胴1の上方で蓋4を水平に保持した状態で、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部の方向Hに相対移動させた後、3ピース缶内に不活性ガスを封入した後、閉蓋する。
なお、上記実施形態では、蓋4の位置を固定して缶胴1を水平移動させたが、缶胴1の位置を固定して蓋4を水平移動させてもよい。要は、蓋4の周縁部で缶胴接合部を押圧できればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】3ピース缶の缶本体を示し、(a)は一部破断側面図、(b)はA部拡大図である。
【図2】3ピース缶の蓋を示し、(a)は部分平面図、(b)は一部破断側面図、(c)はB部拡大図である。
【図3】3ピース缶の密閉工程を説明するための図であり、(a)は蓋を開けた状態、(b)は嵌合した状態、(c)は蓋をかしめた状態をそれぞれ示している。
【図4】3ピース缶内に不活性ガスを充填する方法を説明するための図である。
【図5】蓋の開閉時における支点と缶胴接合部との位置関係を示す図である。
【図6】缶胴接合部について蓋をかしめた状態を示したものであり、(a)は部分側断面図、(b)はD−D矢視断面図である。
【図7】3ピース缶の耐圧試験の方法を説明するための図である。
【図8】3ピース缶の耐圧試験結果を示したヒストグラムであり、(a)は缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉した場合、(b)は缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉した場合である。
【図9】缶胴接合部を蓋の周縁部で側方に押圧している状態を示した3ピース缶の平面図である。
【図10】缶胴接合部を蓋の周縁部で押圧する他の方法を示した3ピース缶の側面図である。
【図11】缶胴接合部に形成された段差を説明するための図である。
【符号の説明】
【0022】
1 缶胴
1a 上端縁
1b 缶胴カール部
1c ビード部
2 底部
3 缶本体
4 蓋
4a 天面
4b 天面凹部
5 嵌合凹部(周縁部)
5a 蓋カール部
5b かしめ部
6 シーリング材
7 缶胴接合部
8 支点
10 不活性ガスノズル
11 不活性ガス充填装置
S 内容物
G 不活性ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキなど各種の液状またはペースト状等の内容物を気密に保管する3ピース缶の密閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化重合型のインキなど、 空気に触れると酸化するなどして変質する内容物 を密閉容器に 保管する場合 、内容物を充填した容器内の空気を 窒素などの不活性ガスに置換した後、蓋を閉めて密閉している(例えば、特許文献1参照)。そして、この種の密閉 容器として 、いわゆる2ピース缶もしくは 3ピース缶が用いられている。
2ピース缶は、打ち抜き で缶胴と底部を 一体成形した 容器本体と蓋の2部品で構成される。一方、 3ピース缶は、容器本体が、平板を筒状に 丸めて両端縁部 を接合した缶胴 と当該缶胴の一方の開口部 を閉塞する 底部とからなり、蓋を加えた 3部品で構成される(例えば、特許文献2参照) 。
【特許文献1】特開2005−104569号公報
【特許文献2】特開2005−75355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、3ピース缶では、 平板を筒状に 丸めて端部同士 を接合することにより缶胴が形成されるが、図11に示すように、平板の端部同士を重ね合わせて溶接し、さらに上端部をカールするため、缶胴カール部の接合部には最大100μm程度の段差d1、d2が発生する。このため、缶胴と蓋を同芯に配置させてかしめる従来の3ピース缶の密閉方法では、段差d1、d2部分から不活性ガスが漏れ出るおそれがある。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、缶胴接合部の段差部分から不活性ガスが漏洩しないようにして3ピース缶の気密性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、板体の 両端縁部を 重ね合わせて接合してなる筒状の缶胴と、当該缶胴の一方の開口部を閉塞する底部と、当該缶胴の他方の開口部を封止する蓋とからなる3ピース缶の密閉方法であって、前記缶胴に前記蓋を嵌合し、前記蓋の周縁部で前記缶胴接合部を押圧した状態で、前記蓋の周縁部を前記缶胴にかしめて密閉することを特徴とする。
本発明では、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉することにより、蓋の周縁部に装着されたシーリング材が缶胴接合部に密着する。これにより、缶胴接合部の段差がシーリング材によって塞がれ、段差部分から不活性ガスが漏洩することがない。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る3ピース缶の密閉方法によれば、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉するので、蓋の周縁部に装着されたシーリング材が缶胴接合部に密着し、缶胴接合部の段差部分から不活性ガスが漏洩せず、3ピース缶の気密性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る3ピース缶の密閉方法は、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉する、即ち、蓋に対して缶胴を缶胴接合部の方向(平面視で缶胴の中心から缶胴接合部に向かう方向)に相対移動させ、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧した状態で、蓋の周縁部を缶胴にかしめて密閉することを特徴とするものであるが、以下に示す方法により実現することができる。
【0008】
3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉することにより、蓋の周縁部で缶胴接合部を押圧することができる。
内容物が充填され、仮置きされた3ピース缶の蓋を開けて不活性ガスを封入する際に、缶胴の上端部を支点として蓋を開けると、缶胴は支点と対向する側へ僅かに移動する。従って、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉すれば、缶胴は缶胴接合部の方向に移動し、蓋の周縁部が缶胴接合部を押圧することになる。
【0009】
また、3ピース缶内に不活性ガスを封入し、缶胴に蓋を嵌合した状態で、蓋に対して缶胴を缶胴接合部の方向に相対移動させることにより、蓋の周縁部が缶胴接合部を押圧するようにしてもよい。
【0010】
あるいは、3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、缶胴の上方で蓋を水平に保持した状態で、蓋に対して缶胴を缶胴接合部の方向に相対移動させた後、閉蓋することにより、蓋の周縁部が缶胴接合部を押圧するようにしてもよい。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係る3ピース缶の密閉方法の実施例について図面に基いて説明する。
図1に3ピース缶の缶本体、図2に3ピース缶の蓋それぞれの形状を示す。また、図3に3ピース缶の密閉方法を説明するための図を、図4に3ピース缶内に不活性ガスを充填する方法を説明するための図を示す。
【0012】
缶本体3は、金属板の 両端縁部を 重ね合わせて溶接により 接合した筒状の缶胴1と、当該缶胴1の一方の開口部を閉塞する底部2から構成されており、缶胴1と底部2とは巻き締め接合などにより一体化されている。
【0013】
缶胴1は、 底部2 から上端縁1 aの開口部に向かって漸次内径が拡径するテーパ筒状に形成されており 、上端縁1 aの外部側には、 外側にカールした 缶胴カール部1b が全周に亘って形成されている。また、 缶胴カール部1bの下方 には、 外側に略V字状に突出するビード部1c が全周に亘って形成されており、 ビード部1cを支点として 開蓋工具(オープナ)を用いて 蓋4 を開けることができるようになっている 。
【0014】
他方、蓋4は、 円形平面部からなる天面4a と、 その周囲に形成された天面凹部4bと、さらに その周り に形成された リング状の嵌合凹部(周縁部)5 とから 構成されている。嵌合凹部5 は天面凹部4b と上下逆方向に凹陥部を形成した略逆U字状を呈しており、その内奥部にはシーリング材6 が嵌合凹部5 に沿ってリング状に配設されている。また、 嵌合凹部5 の外側側部は天面凹部4b より下方に延びており、その端部には 外側にカールした 蓋カール部5a が全周に亘って 形成されている。嵌合凹部5 の外側側部のうち、シーリング材6 と蓋カール部5a との間の領域がかしめ部5b に相当する。
シーリング材6は、 適宜の硬度および弾性を備え、閉蓋されたとき缶胴 カール部1b に押圧されることにより気密を保つ部材であり、例えば適宜の合成樹脂または合成ゴムの発泡体を採用することができる。
【0015】
次に、 上述の構成を有する 3ピース缶の密閉工程について 説明する。
先ず、 予め所要量の内容物 が充填された缶本体3に対し、蓋4の嵌合凹部5を缶胴1 の缶胴カール部1b に配置させて 仮置きする(図3(a)、(b)参照 )。この状態で、3ピース缶は 不活性ガス充填装置に搬送され、常圧下で3ピース缶 内の空気が窒素などの 不活性ガスに置換される 。
図4に示すように 、不活性ガス充填装置11の 基軸11b を降下させて、 缶本体3に仮置きした状態の蓋4にチャッキングヘッド11a を密着させて磁石11cで 吸着させる。そして、缶胴1の上端部を支点として斜めに蓋4を開いて、蓋4と缶胴1の間隙から不活性ガスノズル1 0を缶本体3内に 挿入し 、アーム10bの先端に取り付けられた円板状の本体10a から不活性ガスG を吐出する。 不活性ガスGは、 缶本体3内の内容物S に向けて斜め下方に放射状に放出され 、内容物S に接触して流れ方向を変え、缶胴1 の内壁面に沿って蓋4方向に流れる。このようにして、缶本体3内の空気は間隙 から外部へ押し出され 不活性ガスG に置換される 。
その後 、チャッキングヘッド11aにより 蓋4を閉め、 かしめ手段(図示省略)を作動して 、蓋4の周縁部 全周に亘ってかしめ部5b をかしめて、 蓋4を缶本体3にかしめ固定する (図3 (c)参照)。
【0016】
さて、本発明に係る3ピース缶の密閉方法では、蓋4の 嵌合凹部(周縁部)5で缶胴接合部を側方に押圧した状態で、蓋4のかしめ部5bを缶胴1にかしめて密閉することを特徴としており、3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、図5に示すように、缶胴接合部7と対向する位置にある缶胴1の上端部を支点8として蓋4の開閉を行うものである。
このようにすると、図6に示すように、蓋4の 嵌合凹部5に配設されたシーリング材6が押圧されて缶胴接合部7の段差部分Lに入り込むため、段差部分Lに隙間が発生することがない。その結果、段差部分Lから不活性ガスが漏洩せず、3ピース缶の気密性が向上する。
【0017】
なお、平面視で缶胴1の中心回りに180度の位置に缶胴接合部7と支点8が配置されている場合が最も気密性が向上するが、缶胴接合部7が 嵌合凹部5で押圧されていれば、その近傍位置でもよい。
【0018】
(耐圧試験)
本発明の効果を確認するために、缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉して不活性ガスを封入した場合と、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉して不活性ガスを封入した場合(本発明)について、それぞれ20サンプルとってその初期耐圧を計測した。
密閉した3ピース缶の外部から内部へリークする空気の測定は困難であるため、以下の方法によって3ピース缶の初期耐圧を測定した。図7に示すように、気密に密閉した3ピース缶の蓋4に圧縮空気注入用のチューブ20を貫通させて気密状態に保持するとともに、蓋4と缶胴1とのシーリング材6による嵌合部分の周囲全周に亘って石けん水21を塗布しておく。そして、0.005MPa刻みで加圧した圧縮空気をチューブ20を通して3ピース缶内に順次注入して、チューブ20の途中に取り付けた圧力メータ(図示省略)で圧縮空気の圧力を測定し、石けん水21の表面に気泡が発生した時点の圧力を3ピース缶の初期耐圧とした。
【0019】
その結果を、縦軸を初期耐圧分布、横軸を度数とするヒストグラムにして示したのが図8である。ここで、(a)は缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉した場合、(b)は缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉した場合(本発明)である。
図8より、缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉した場合は、0.0386〜0.0418MPaの初期耐圧を有するサンプルが最も多く、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉した場合は、0.0480〜0.0511MPaの初期耐圧を有するサンプルが最も多いことがわかる。即ち、缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点としたほうが初期耐圧が高く、気密性が高いことがわかる。
なお、(a)と(b)のデータについて有意な差があるかどうか明らかにするためにt検定(二群の平均値の差の検定)を行ったところ、95%の確率で二 群の平均値に有意 差があることが示された。
【0020】
図9は、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部7の方向(平面視で缶胴の中心から缶胴接合部に向かう方向)に相対移動させて、蓋4の周縁部で缶胴接合部7を側方に押圧している状態を示した3ピース缶の平面図であり、このような状態は、上述した方法に限らず、図10に示した方法によっても実現することができる。
図10(a)の方法は、従来の方法で3ピース缶内に不活性ガスを封入した後、蓋4を閉め、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部の方向Hに相対移動させることにより、蓋4の周縁部で缶胴接合部7を押圧するものである。
一方、図10(b)の方法は、缶胴1の上方で蓋4を水平に保持した状態で、3ピース缶内に不活性ガスを封入し、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部の方向Hに相対移動させた後、閉蓋するものである。あるいは、缶胴1の上方で蓋4を水平に保持した状態で、蓋4に対して缶胴1を缶胴接合部の方向Hに相対移動させた後、3ピース缶内に不活性ガスを封入した後、閉蓋する。
なお、上記実施形態では、蓋4の位置を固定して缶胴1を水平移動させたが、缶胴1の位置を固定して蓋4を水平移動させてもよい。要は、蓋4の周縁部で缶胴接合部を押圧できればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】3ピース缶の缶本体を示し、(a)は一部破断側面図、(b)はA部拡大図である。
【図2】3ピース缶の蓋を示し、(a)は部分平面図、(b)は一部破断側面図、(c)はB部拡大図である。
【図3】3ピース缶の密閉工程を説明するための図であり、(a)は蓋を開けた状態、(b)は嵌合した状態、(c)は蓋をかしめた状態をそれぞれ示している。
【図4】3ピース缶内に不活性ガスを充填する方法を説明するための図である。
【図5】蓋の開閉時における支点と缶胴接合部との位置関係を示す図である。
【図6】缶胴接合部について蓋をかしめた状態を示したものであり、(a)は部分側断面図、(b)はD−D矢視断面図である。
【図7】3ピース缶の耐圧試験の方法を説明するための図である。
【図8】3ピース缶の耐圧試験結果を示したヒストグラムであり、(a)は缶胴接合部の上端部を支点として蓋を開閉した場合、(b)は缶胴接合部と対向する位置にある缶胴の上端部を支点として蓋を開閉した場合である。
【図9】缶胴接合部を蓋の周縁部で側方に押圧している状態を示した3ピース缶の平面図である。
【図10】缶胴接合部を蓋の周縁部で押圧する他の方法を示した3ピース缶の側面図である。
【図11】缶胴接合部に形成された段差を説明するための図である。
【符号の説明】
【0022】
1 缶胴
1a 上端縁
1b 缶胴カール部
1c ビード部
2 底部
3 缶本体
4 蓋
4a 天面
4b 天面凹部
5 嵌合凹部(周縁部)
5a 蓋カール部
5b かしめ部
6 シーリング材
7 缶胴接合部
8 支点
10 不活性ガスノズル
11 不活性ガス充填装置
S 内容物
G 不活性ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体の両端縁部を重ね合わせて接合してなる筒状の缶胴と、当該缶胴の一方の開口部を閉塞する底部と、当該缶胴の他方の開口部を封止する蓋とからなる3ピース缶の密閉方法であって、
前記缶胴に前記蓋を嵌合し、前記蓋の周縁部で前記缶胴接合部を押圧した状態で、前記蓋の周縁部を前記缶胴にかしめて密閉することを特徴とする3ピース缶の密閉方法。
【請求項2】
前記3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、前記缶胴接合部と対向する位置にある前記缶胴の上端部を支点として前記蓋を開閉することにより、前記蓋の周縁部が前記缶胴接合部を押圧するようにした請求項1に記載の3ピース缶の密閉方法。
【請求項3】
前記3ピース缶内に不活性ガスを封入し、前記缶胴に前記蓋を嵌合した状態で、前記蓋に対して前記缶胴を前記缶胴接合部の方向に相対移動させることにより、前記蓋の周縁部が前記缶胴接合部を押圧するようにした請求項1に記載の3ピース缶の密閉方法。
【請求項4】
前記3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、前記缶胴の上方で前記蓋を水平に保持した状態で、前記蓋に対して前記缶胴を前記缶胴接合部の方向に相対移動させた後、閉蓋することにより、前記蓋の周縁部が前記缶胴接合部を押圧するようにした請求項1に記載の3ピース缶の密閉方法。
【請求項1】
板体の両端縁部を重ね合わせて接合してなる筒状の缶胴と、当該缶胴の一方の開口部を閉塞する底部と、当該缶胴の他方の開口部を封止する蓋とからなる3ピース缶の密閉方法であって、
前記缶胴に前記蓋を嵌合し、前記蓋の周縁部で前記缶胴接合部を押圧した状態で、前記蓋の周縁部を前記缶胴にかしめて密閉することを特徴とする3ピース缶の密閉方法。
【請求項2】
前記3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、前記缶胴接合部と対向する位置にある前記缶胴の上端部を支点として前記蓋を開閉することにより、前記蓋の周縁部が前記缶胴接合部を押圧するようにした請求項1に記載の3ピース缶の密閉方法。
【請求項3】
前記3ピース缶内に不活性ガスを封入し、前記缶胴に前記蓋を嵌合した状態で、前記蓋に対して前記缶胴を前記缶胴接合部の方向に相対移動させることにより、前記蓋の周縁部が前記缶胴接合部を押圧するようにした請求項1に記載の3ピース缶の密閉方法。
【請求項4】
前記3ピース缶内に不活性ガスを封入する際、前記缶胴の上方で前記蓋を水平に保持した状態で、前記蓋に対して前記缶胴を前記缶胴接合部の方向に相対移動させた後、閉蓋することにより、前記蓋の周縁部が前記缶胴接合部を押圧するようにした請求項1に記載の3ピース缶の密閉方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−91258(P2007−91258A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281624(P2005−281624)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(599132580)ディックテクノ株式会社 (20)
【出願人】(000207540)大日製罐株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(599132580)ディックテクノ株式会社 (20)
【出願人】(000207540)大日製罐株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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