説明

3次元仮想空間を利用した感知装置のリアルタイム状態把握、制御の方法

【課題】 感知装置がどのように配置され、どこを感知しようとしているかが不明なため、監視、観察者は、感知された情報から現場の状態を把握するのが難しい。多数の感知装置が設置されればされる程、その難しさは増加する。また、感知装置付近を見るビデオカメラが設置されている場合でも、そのビデオカメラが現場の3次元空間のどこを撮影しているのかの情報が無いため、どこで発生している現象なのか判断がつかない。
【解決手段】 3次元CAD上に、撮影現場の3次元モデルを用意し、仮想3次元空間を表現する。そこに感知装置の位置、感知領域、動作状態を表現する幾何形状立体、及び、ビデオカメラの視線、画角を表現する4角錐の立体を、リアルタイムで、感知装置の状態とビデオカメラの動きに合わせて表示する。感知装置の状態に同期させて、ビデオカメラの撮影場所を決め、撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知装置(センサ)の状態把握、及び、制御をリアルタイムに行うための、3次元仮想空間の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防犯システムや、防災システム、現場監督システム、医療、原発などの遠隔操作システムなど広範囲の分野において、遠距離、近距離問わず、現場と異なる場所で、監視、観察する場合、現場の状態を把握するため、異常検出、危険感知、状況観測などの目的で、多種多様な感知装置(センサ)が設置されている。監視、観察される場所が広く、複雑であればある程、多数の感知装置が設置される。それら感知装置の状態は、信号配信専用ケーブルやコンピュータネットワークケーブルを通り、監視、観察を行う室に送られる。そこで、感知装置の状態が、警告有無ランプ、メータ表示、グラフ表示などに変換され、物理的な装置で表現される。あるいは、コンピュータ画面上の仮想的な装置で表現される。また、各感知装置が実際現場のどこに配置されているかを認識できるように、2次元的な現場の図面を描き、実際の設置位置に対応した箇所に、警告有無ランプなどの状態を表現する装置を置く場合もある。
さらに、現場の状態をより明確に把握するため、ビデオカメラも設置し、感知装置の作動とともに、自動的に感知装置付近を撮影するシステムも出てきている。
なお、ビデオカメラだけの状態を把握するため、3次元仮想空間を利用したものはある。(特許文献1参照)
【特許文献1】 特願2006−196167
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、実際の3次元空間において、感知装置がどのように配置され、どこを感知しようとしているかが不明なため、監視、観察者は、感知された情報から現場の状態を把握するのが難しい。多数の感知装置が設置されればされる程、その難しさは増加する。2次元図面上に感知装置が描かれている場合でも、実際の現場は3次元空間であり、2次元で表現するには無理があり、監視、観察者が熟練者で無ければ、現場の3次元空間のどこで、感知装置が作動しているのかを想像するのは難しい。
また、感知装置は誤動作することがあり、誤動作か、正常動作かの判断が難しい。
現場の状態をより明確に把握するため、感知装置付近を見るビデオカメラが設置されている場合でも、そのビデオカメラが現場の3次元空間のどこを撮影しているのかの情報が無いため、どこで発生している現象なのか判断がつかない。さらに、感知装置は多数設置されることが多く、それぞれの感知装置に一台一台のビデオカメラを対応させることは、費用の面より不可能である。少数のビデオカメラで多数の感知装置を撮影しようとすれば、固定式のビデオカメラでなく、首振り制御できるビデオカメラを設置することになる。その場合、さらに、今どこを撮影しているのかか分からなくなる。また、どの感知装置に対して、どこを撮影するかのティーチングも難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を克服するため、本発明の3次元仮想空間を利用した感知装置のリアルタイム状態把握、制御の方法は、以下のような特徴を持つ。
感知装置の状態通信機能、及び、3次元幾何図形の表示機能を備えたコンピュータシステムにおいて、感知装置の存在位置、感知可能領域を含んだ現実世界を、予め3次元立体画像として準備し、その3次元立体画像を仮想3次元空間として、その仮想3次元空間上に、現実世界の感知装置の位置、感知領域、及び、動作状態をリアルタイムで3次元的に表示することを特徴とする方法。
さらに複数の感知装置に対して、そのことを実現させることを特徴とする方法。
【0005】
感知装置の状態通信機能、3次元幾何図形の表示機能、及び、感知装置の動作制御命令通信機能を備えたコンピュータシステムにおいて、コンピュータ入力装置により、感知装置を遠隔に制御し、その結果をリアルタイムに仮想3次元空間上で表示することを特徴とする方法。さらに複数の感知装置に対してそのことを実現させることを特徴とする方法。
【0006】
感知装置の状態通信機能、3次元幾何図形の表示機能、及び、ビデオカメラへのパンチルト角度、ズーム角度の制御命令通信機能を備えたコンピュータシステムにおいて、感知装置だけでなく、ビデオカメラの存在位置、視野可能領域を含んだ現実世界を、予め3次元立体画像として準備し、その3次元立体画像を仮想3次元空間として、その仮想3次元空間上に、感知装置の位置、感知領域、動作状態と同時に、ビデオカメラの位置と視線、画角領域をリアルタイムで3次元的に表示することを特徴とする方法。さらに複数の感知装置と複数のビデオカメラに対して、そのことを実現させることを特徴とする方法。
【0007】
感知装置の状態通信機能、3次元幾何図形の表示機能、ビデオカメラへのパンチルト角度、ズーム角度の制御命令通信機能を備え、及び、複数の感知装置と複数のビデオカメラを制御するコンピュータシステムにおいて、ある感知装置に複数のヒデオカメラの対応を定義し、感知装置の動作状態による起動条件を決め、その起動条件発生により、複数の方向から同時に、その感知装置付近を撮影することを特徴とする方法。さらに複数の感知装置と複数のビデオカメラに対して、そのことを実現させることを特徴とする方法。
【0008】
感知装置の状態通信機能、3次元幾何図形の表示機能、ビデオカメラへのパンチルト角度、ズーム角度の制御命令通信機能を備えたコンピュータシステムにおいて、予め、感知装置の動作状態による起動条件を決め、その起動条件発生により、ビデオカメラが自動巡回撮影する箇所を、コンピュータのポインティングデバイスなどにより、仮想3次元空間上の任意の位置、範囲を指示することにより、ティーチングすることを特徴とする方法。さらに複数の感知装置と複数のビデオカメラに対して、そのことを実現させることを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0009】
3次元立体画像は、人間が現実世界を把握する場合の立体感や遠近感を的確に表現する方法であり、そのような3次元立体画像の仮想3次元空間上に、感知装置の状態(位置、感知領域、動作状態)を3次元画像で表示することにより感知装置の監視、観察者に、直感的に、現実世界の感知装置の状態を把握させることができる。また、感知装置の動作状態をリアルタイムに3次元画像が対応し、どのような状態であるのかをいつでも把握できる。また、複数の感知装置に対しても状態が3次元空間上で把握できるので、実空間のどこでどのような状態になっているのかを容易に判断できる。
【0010】
3次元仮想空間上に感知装置が配置されているので、お互いの3次元的位置関係が把握でき、感知装置の遠近関係がつかめる。その結果、近隣の感知装置の状態を参考にでき、正常動作による情報か、誤動作による情報かが判断し易くなる。
また、感知装置に対して、コンピュータ側から動作を制御できる場合、誤動作、正常動作の確認も容易にできる。
【0011】
ビデオカメラ状態(位置、視線、画角領域)を3次元画像で表示することにより、ビデオカメラと感知装置の3次元的位置関係が把握でき、ビデオカメラが、同時に表示されている感知装置に対して、どの辺りを表示しているのかが容易に判断できる。また、どの辺りを表示しているのかが容易に判断でき、首振り制御可能な一台のビデオカメラで、複数の感知装置を撮影しても問題か生じない。そのためビデオカメラ設置の費用を軽減できる。
【0012】
複数のビデオカメラが、感知装置付近を同時に異なる方向から撮影する。その結果、感知装置の周りの状況が、容易に、且つ、正確に把握できる。
【0013】
コンピュータ上で、ビデオカメラと感知装置の3次元的位置関係を把握しながら、ビデオカメラの撮影場所を3次元的に指示でき、どの感知装置に対して、どこを撮影するかのティーチングを容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
動作状態を外部のコンピュータ上のソフトウエアで制御できる感知装置、及び、パン角度、チルト角度、画角(ズーム角度)を外部のコンピュータ上のソフトウエアで制御できるビデオカメラを、複数台用意し、それら複数のビデオカメラの撮影した映像を送信し、コンピュータで受信できるデジタルエンコーダ、デコーダシステムを用意する。さらに、遠隔制御可能距離、及び、映像の送受信可能距離の制限を無くすには、コンピュータネットワークシステムを利用できる形態が望ましい。最近の3次元CADは、3次元幾何図形の表示機能、作成機能、任意の3次元位置を指示する機能などはもちろん、3次元立体画像の透視図的表示機能などを有するので、3次元CADをカスタマイズし利用するのが望ましい。
【0015】
予め、3次元CAD上に、撮影現場を模した3次元仮想空間となる3次元モデルを準備する。この3次元モデルは、その3次元CADで作成しても良いし、実3次元空間取り込みソフトウエアにより作成し、この3次元CADに読み込んでも良い。3次元CAD上に、複数の感知装置を制御できるインターフェースを作成する。感知装置の位置を中心として感知領域を表す幾何形状の立体モデルを作成する。感知装置の動作状態にリアルタイムに合わせ、警告色に変化させたりする。複数のビデオカメラのパン角度、チルト角度、ズーム角度の制御を出来るインターフェースを作成する。ビデオカメラの位置を頂点とし、視線を軸する4角錐の立体モデルを作成する。その4角錐底面の辺の長さは、ズーム角度に対応する長さにする。その4角錐の稜線の長さは、3次元モデルを横切る適当な長さとする。その4角錐をビデオカメラの実際の位置、視線のベクターを決めるパン、チルト角度に合わせて表示する。その4角錐の表示をアニメーション的に変化させ、ビデオカメラの現在のパン角度、チルト角度、ズーム角度にリアルタイムに合わせる。また、3次元仮想空間である3次元モデルの表示を妨げないように、その4角錐は半透明に表示する。複数のビデオカメラに対応させて、4角錐を準備する。色などを変えて同時に全部の4角錐を表示しても良いし、注目ビデオカメラのみの4角錐を表示しても良い。3次元仮想空間である3次元CAD上での仮想ビデオカメラの位置、視線、画角を表現する4角錐を、現実世界のビデオカメラの位置、視線、画角の3次元的位置関係と合わせるために、3次元CADにビデオカメラのホームポジション(原点、0度視線)を最初に定義する。また、画角は、ビデオカメラのレンズ特性などでズーム角度と単純な比例関係に無い場合は、現実の画角とズーム角度に補正係数を施す。以上で、3次元CAD上に、感知装置の位置、感知領域、動作状態、及び、ビデオカメラの位置、視線、画角を視覚的に表現した4角錐と3次元仮想空間である3次元モデルが共存し、監視、観察者に、直感的に、感知装置とビデオカメラの状態を把握させることができる。
【0016】
3次元モデル上の任意の位置をビデオカメラの撮影する場所とするには、任意の位置とビデオカメラを表現する4角錐の頂点の2点が作るベクターと、その4角錐の軸ベクターのなす角度を計算し、振るべきパン、チルトの角度を得、それをビデオカメラへ制御命令として送ればよい。それにより、実世界のビデオカメラが指示された任意の場所を向くことになる。
【0017】
予め、感知装置に関連させた巡回場所を決める場合は、3次元モデル上に、その巡回経路として、3次元自由曲線や3次元折れ線で書き込む。感知装置の動作状態を常時モニターし、ある条件により巡回開始をはじめるように設定する。巡回経路を自動的にたどりながら、ある間隔で連続的にビデオカメラに撮影場所として制御命令を送り続けることにより、容易に自動巡回を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 3次元CADのテレビ画面を模式的に表した簡易的な図。撮影現場の3次元モデルを用意し、仮想3次元空間を表示している。そこに、感知装置を表現する細長い直方体、及び、ビデオカメラの視線、画角を表現する4角錐の立体を表示している。
【符号の説明】
1 3次元CADのテレビ画面
2 3次元モデルによる仮想3次元空間
3 ビデオカメラの視線、画角を表現する4角錐
4 感知装置を表現する細長い直方体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知装置の状態通信機能、及び、3次元幾何図形の表示機能を備えたコンピュータシステムにおいて、感知装置の存在位置、感知可能領域を含んだ現実世界を、予め3次元立体画像として準備し、その3次元立体画像を仮想3次元空間として、その仮想3次元空間上に、現実世界の感知装置の位置、動作領域、及び、感知状態をリアルタイムで3次元的に表示する方法。
さらに複数の感知装置に対して、そのことを実現させる方法。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにさらに追加して、感知装置の動作制御命令通信機能を備えたコンピュータシステムにおいて、コンピュータ入力装置により、感知装置を遠隔に制御し、その結果をリアルタイムに仮想3次元空間上で表示する方法。さらに複数の感知装置に対してそのことを実現させる方法。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにさらに追加して、ビデオカメラへのパンチルト角度、ズーム角度の制御命令通信機能を備えたコンピュータシステムにおいて、感知装置だけでなく、ビデオカメラの存在位置、視野可能領域を含んだ現実世界を、予め3次元立体画像として準備し、その3次元立体画像を仮想3次元空間として、その仮想3次元空間上に、感知装置の位置、感知領域、動作状態と同時に、ビデオカメラの位置と視線、画角領域をリアルタイムで3次元的に表示する方法。さらに複数の感知装置と複数のビデオカメラに対して、そのことを実現させる方法。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにさらに追加して、複数の感知装置と複数のビデオカメラを制御するコンピュータシステムにおいて、ある感知装置に複数のビデオカメラの対応を定義し、感知装置の動作状態による起動条件を決め、その起動条件発生により、複数の方向から同時に、その感知装置付近を撮影する方法。さらに複数の感知装置と複数のビデオカメラに対して、そのことを実現させる方法。
【請求項5】
感知装置の状態通信機能、3次元幾何図形の表示機能、及び、ビデオカメラへのパンチルト角度、ズーム角度の制御命令通信機能を備えたコンピュータシステムにおいて、予め、感知装置の動作状態による起動条件を決め、その起動条件発生により、ビデオカメラが自動巡回撮影する箇所を、コンピュータのポインティングデバイスなどにより、仮想3次元空間上の任意の位置、範囲を指示することにより、ティーチングする方法。さらに複数の感知装置と複数のビデオカメラに対して、そのことを実現させる方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−259154(P2008−259154A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123941(P2007−123941)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(597082795)クボテック株式会社 (3)
【出願人】(598068987)
【Fターム(参考)】