説明

3次元大型造形物の作製方法

【課題】従来の作製範囲を超えるサイズの造形物を作製することができ、材料の消耗を減らすとともに、パート間の堅固な組立てが可能になる3次元大型造形物の作製方法を提供する。
【解決手段】3次元造形物に対する3次元形状データを取得する第1段階S110と、3次元形状データを最終的な造形物の作製に必要なサイズに変換する第2段階S120と、サイズが変換されたデータを造形物の内部を空洞化する空洞形態シェルデータに変換する第3段階S130と、シェルデータを従来の高速プロトタイピングによって作製することのできるパートデータのサイズ範囲に分割する第4段階S140と、それぞれのパートデータを高速プロトタイピングによって造形して、各造形パート物に作製する第5段階S150,S160と、作製された各造形パート物を組立てて造形物を完成する第6段階S170を包含してなる3次元大型造形物の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元大型造形物の作製方法に関する。より詳細には、データの変換を通じて従来の一般高速プロトタイピングによって作製することのできるサイズに分割するとともに、材料の消耗を減らすためにシェルデータ(Shell data)化して分割し、それぞれのシェルパートデータ(Shell parts data)間の連接部位に対する接合形状の概念を導入することによって、従来の高速プロトタイピングによっても作製することのできるサイズの範囲を超える大型造形物を3次元的に作製することのできる3次元大型造形物の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速プロトタイピング(Rapid Prototyping)と呼ばれる従来の3次元形状大型造形物の作製方法は、装置から与えられたプラットフォーム上に光硬化性レジンなどのような液相や、プラスターまたは澱粉成分などからなる粉末形態の材料を噴射・塗布して光硬化、冷却、選択的焼結などの方法により最終的な3次元形状を得る方法がある。また、紙や発泡スチレンのような板材を、与えられた3次元形状の断面データに従ってレーザーや熱線などで切断して各層を接着させて造形する方法がある。
【0003】
しかし、前記従来の3次元形状の造形方法は、装置から与えられたプラットフォームや切断の材料になる板材のサイズを超える形状の作製が不可能であり、大部分の方式が形状の内部を造形するパートの材料によって充填することになるので、材料の消耗が必要以上になる問題がある。
【0004】
特許文献1には、“逆設計技法を利用した大型造形物の作製方法”が開示されている。特許文献1には、3次元スキャナーを利用して参照造形物の3次元形状をスキャニングし、これをデータ化した後、参照造形物の3次元形状のデータを拡大して、これを分割する造形の概念を記述している。このような従来の大型造形物の作製技術においては、3次元全体形状の単純分割を通じて各パートを造形し、これを組立てる方法を提案している。
【特許文献1】韓国特許出願公開第2003-0071100号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように単純分割された固形パートデータにおいては、パート物組立の際、不要の部分である全体形状の内部部分まで作製することになるため、過多な材料の消耗と作製時間とが所要される問題がある。さらに、従来技術の文献には、作製された固形パート物の組立方法に対して全く記載されていないため、各固形パート物の組立の際、各パート物間の連接部位における寸法の誤差によって、最終的な組立体の堅固性に問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題を解決するために案出された発明であって、全体の3次元モデリングデータを分割する前に、これをシェルデータ化して分割し、それぞれのシェルパートデータ間の連接部位に接合形状を導入することによって、従来の作製範囲を超えるサイズの形状を作製することができ、材料の消耗を減らすとともに、各パート間の堅固な接合と組立てが可能になる3次元大型造形物の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の作製方法は、3次元造形物に対する3次元形状データを取得する第1段階と、3次元形状データを最終的な造形物の作製に必要なサイズに変換させる第2段階と、サイズが変換されたデータをその内部を空洞化する空洞形態シェルデータに変換させる第3段階と、シェルデータを高速プロトタイピングによって作製することのできる各パートデータ(parts data)のサイズ範囲に分割する第4段階と、それぞれのパートデータを高速プロトタイピングによって造形し、各造形パート物に作製する第5段階と、作製された各造形パート物を組立てて造形物を完成する第6段階を包含してなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の前記第3段階では、サイズが変換されたデータの表面データにおいて、必要とする厚さだけを内側にオフセットすることにより空洞形態のシェルデータに変換させることができる。
【0009】
本発明は、前記第4段階と第5段階との間に、分割された各パートデータ間の当接面に対する接合形状を付加する段階をさらに包含することができる。
前記の接合形状は、各パートデータ間の当接面に沿ってブレード状に形成するか、パートデータ間の当接面に沿って所定の間隔を置いて設けたピンによる接合形態に形成することができる。
【0010】
また、本発明の接合形状は、各パートデータ間の当接面に沿って所定の間隔を置いて設けた凹部と凸部とが嵌合する接合形態に形成することができる。このときの凸部はくさび状に形成するか、対応するパートデータとの当接面に接する根元部分に溝部を形成することができる。
【0011】
また、前記の凹部と凸部との間に液相の接着物質を塗布して接合させることができる。また、凸部を凹部より大きく作製するとともに、凸部の内部を空洞にして弾性的に結合させることができる。また、本発明は各パートデータ間の当接面にそれぞれ対応する結合孔を形成し、これらの結合孔に造形物と異なる材料のピンを挿入・固定させて接合することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、任意の3次元形状のデータ内部を空洞にして外郭表面の一定厚さの要素だけを造形することによって、大型の形状を造形する時に問題となる、不要な材料の消耗を減らすことができ、造形物自体の軽量化が可能になる。
【0013】
また、本発明によれば、分割造形方式を利用することによって、従来の一般高速プロトタイピングを利用して造形範囲以上の大型形状の造形物を作製することができ、分割造形の際、データに多様な接合形状を付加することによって、堅固な組立体にすることができる。また、本発明は、分割造形と組立方式を採択することによって、作製の過程において、一部データに欠陥があった場合でも、最初から改めて作製をやり直す必要なしに、欠陥のあるパートだけを改めて作製して組立てることもできるので効率的な作製が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による3次元大型造形物の作製方法を実施するための好適な実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の1実施形態による3次元大型造形物の作製工程を段階別に示したフローチャートである。図2は、図1に示した3次元大型造形物の作製工程を説明するための任意の3次元形状の一例と、これをシェルデータ化して分割する工程と、分割されたシェル形状のデータを示す概念模型図である。また、図3は、図1に示した3次元大型造形物の作製工程において、シェルデータ化した後、分割された各パートデータの接合形状をそれぞれ示した概念模型図である。
【0016】
図1並びに図2を同時に参照して説明する。まず、作製しようとする3次元大型造形物に対する3次元形状データ210を一般的な方式で取得する(S110)。その後、3次元形状データ210を最終的な造形物に作製するために必要とするサイズに変換させる工程を実施した後(S120)、サイズが変換されたデータをデータの外郭表面部分を基準にして、一定の厚さだけを有する空洞形態にしたシェルデータ220に変換させる(S130)。
【0017】
本実施形態においては、このように空洞形態にしたシェルデータ220に変換する工程を“シェルデータ化”と記する。このようなシェルデータ化工程における内部面の形状は、本来の外郭データの表面データにおいて必要とする厚さだけを内側にオフセットする方法と、単純縮小する方法とをその一例として挙げることができる。シェルデータ化の工程は、最終的な造形物として組立てたときに、形状の歪みや機械的強度、剛性面において欠陥の生じない範囲内で、自由に内部部分を空洞にする工程として特徴付けることができる。即ち、その内部部分の形状が、外部の形状を縮小した形状に限らず、多様な空洞の形状にすることができる。
【0018】
次いで、シェルデータ220を分割面230に沿って分割する工程を行うが、このとき、シェルデータ220は、一般の高速プロトタイピングが作製することのできるパートデータ240のサイズ範囲にそれぞれ分割する(S140)。通常、高速プロトタイピングが作製することのできるサイズは、種類によって数十cm程度に制限されている。
したがって、本実施形態においては、シェルデータが高速プロトタイピングによって作製することのできるサイズ以上のサイズのデータを有している場合、高速プロトタイピングで作製可能の範囲に分割することになるが、このときの分割する方式は、図2に図示したように、8等分にするか、その他、全体の形状と高速プロトタイピングの作製可能の範囲、さらに、それぞれの細部形状の分布及び形態を考慮して、分割する個数や分割する形態を自由に変換させることができる。
即ち、本実施形態においては、全体形状のデータの中で分割された、例えば各パートデータ240のサイズが、高速プロトタイピングの作製可能のサイズを外れない範囲内において自由に分割することができることを特徴とするものである。
【0019】
次は、分割されたパートデータ240と互いに当接させる他方のパートデータ240a間の当接面に対する接合形状を付加する工程を実施する(S150)。図3に図示のように、各パートデータ240間の接合構造は、それぞれの分割パート間の当接面の形状によってブレード形状に形成することができる(図3(a))。
即ち、分割された一方のパートデータ240には、ブレード形状の突条部241が形成されるとともに、互いに当接する他方のパートデータ240aには、突条部241の嵌め込みによって固定されるブレード形状の嵌合溝部241aとが形成される。
【0020】
また、各パートデータ240間の接合構造は、前記ブレードタイプの他に分割された各パート間の当接面に沿って、所定の間隔を置いてピン形態の突起を設けてピン体の嵌合によって接合が可能になるように構成することができる(図3(b))。
即ち、分割された一方のパートデータ250には、所定の間隔でピン251を突出形成し、互いに当接する他方のパートデータ250aには、ピン251の嵌め込みによって固定される嵌合孔251aが形成される。このようなピン形態の接合構造は、接合強度や接合効率の側面を考慮してピンの個数や配列、間隔などを自由に調節することができる。
【0021】
このように当接面に対する接合形状を付加するデータ変形の工程(S150)が実施された後、 各パートデータを通常の高速プロトタイピングを使用し、かつ通常の方法によって各パートデータの3次元造形物を作製する(S160)。以上の工程によって作製された各パート物を作業者の手作業などによって最終的に組立てることによって3次元大型造形物が完成される(S170)。
【0022】
図4は、図1のフローチャートで示した3次元大型造形物の作製工程において、分割されたパートデータの接合当接面に対するいろいろな接合形状の付加工程(S150)における接合構造の断面をそれぞれ示した概念模型図である。図4に図示のように、本実施形態においては、接合構造を単純な円筒型や角棒の型に作製するだけではなく、最終の組立形態や組立ての時に要求される材質の機械的性質によって多様に構成することにより接合状態をさらに堅固にするとともに組立てを容易にすることができる。
【0023】
このために、まず、接合部分の凸部と凹部が互いに当接・嵌合う部分、即ち、凸部のパートデータの面が当接する部分の縁に溝部320、或は330を形成して組立てる場合、組立て時の公差による最終形状における造形物の変形を減少させるとともに、堅固性を維持することができる。このような溝部320、或は330を形成する場合は、図4に示すように、断面が半円の形態だけでなく、四角、或は三角形態で多様に形成することができる。
【0024】
また、凸部の根元部分に溝部320、或は330を形成する他に、凸部310をくさび状に形成することによって、さらに堅固な組立体を具現することができる。また、前記のような接合構造において、凹部や凸部の嵌合によって公差が生じる部分に、液相の接着物質340を塗布して凸部と凹部との相互接合の後、硬化させることによって造形物を堅固に組立てることができる。なお、このような接着物質340は、凹部と凸部との相互結合を堅固に維持することのできる十分な機械的接合強度を有せしめることは当然のことである。したがって、前記接着物質340は、例えば、エポキシのような化学反応型の接着剤、またはホットメルト用の熱溶融型接着剤を使用することが好ましい。
【0025】
また、本実施形態においては接着物質340による接合ではなく、弾性設計を通じて組立てることができる。例えば、凸部350を凹部より大きく作製するとともに、凸部の内部を空洞にして凸部を弾性的に結合させることができる。このとき、凸部350の末端にかぎ形状の突起を形成するなど若干の変形を与えながら、凹部の奥部にはかぎ状の突起先端が嵌め込む溝を有するように構成することによって、凸部が凹部との結合位置まで到達して組立を完成する構成にすることができる。
【0026】
また、本実施形態においては、それぞれの分割データの当接面に一定の結合孔360を形成し、異種の材料棒370を両側の結合孔360に挿入して固定することもできる。このとき、前記異種の材料棒370としては、例えば、熱可塑性のプラスチック接着剤を使用することができる。即ち、前記異種材料370が前記当接面の両側に形成された結合孔360に挿入された状態で前記異種材料370を加熱するなどの方法によって溶融させた後、冷却させることにより、前記結合孔360が接合面に固着されることによって対応する両パートを相互堅固に結合させるようになる。
なお、前記異種材料370として固形の接着剤を使用する場合には、接着後の機械的強度及び剛性が造形される材料より優れた特徴を有している材料を利用することが好ましい。
【0027】
前記のような図4の断面図を通じて説明した接合形態の特徴は、それ自体の形態が図2および図3のようなピンやブレード形態だけでなく、本実施形態のように、凹凸形状による接合の場合、部分的な溝部を形成することもでき、凸部の側面をくさび状にする方法、接着物質を凹凸部に塗布する方法、または弾性設計など、多様な結合手段を採択することができる。
【0028】
以上、本発明の3次元大型造形物の作製方法に対する技術事項を添付図面とともに説明したが、これは本発明の好適な実施形態を例示しただけであり、本発明をこれに限定するものではない。
【0029】
また、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当技術分野の当業者であれば、特許請求範囲に記載の本発明の思想及び領域の範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態による3次元大型造形物の作製工程を示す各段階のフローチャートである。
【図2】図1に示した3次元大型造形物の作製工程を説明するための任意の3次元形状の一例と、これをシェルデータ化して分割する工程と、分割されたシェル形状データを示す概念模型図である。
【図3】図1に示した3次元大型造形物の作製工程において、シェルデータ化した後、分割されたパートデータの接合形状をそれぞれ示した概念模型図である。
【図4】図1に示した3次元大型造形物の作製工程において、分割されたパートデータのいろいろな接合形状をそれぞれ拡大して示した概念模型の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
210 3次元形状データ
220 シェルデータ
230 分割面
240 パートデータ
240a 対応パートデータ
241 ブレード状突条部
241a 突条部の嵌合溝部
250 パートデータ
250a 対応パートデータ
251 ピン
251a ピン嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形物に対する3次元形状データを取得する第1段階と、
前記3次元形状データを最終的な造形物の作製に必要なサイズに変換させる第2段階と、
前記サイズが変換されたデータをその内部を空洞化する空洞形態シェルデータ(Shell data)に変換させる第3段階と、
前記シェルデータを高速プロトタイピングによって作製可能にする各パートデータ(parts data)のサイズ範囲に分割する第4段階と、
前記それぞれのパートデータを前記高速プロトタイピングによって造形して、各造形パート物に作製する第5段階と、
前記作製された各造形パート物を組立てて造形物を完成する第6段階を包含してなることを特徴とする3次元大型造形物の作製方法。
【請求項2】
前記第3段階では、前記サイズが変換されたデータの表面データにおいて、必要とする厚さだけを内側にオフセットすることにより、前記空洞形態のシェルデータに変換させることを特徴とする請求項1に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項3】
前記第4段階と前記5段階との間に、分割された前記各パートデータ間の当接面に対する接合形状を付加する段階をさらに包含することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項4】
前記接合形状は、前記各パートデータ間の当接面に沿ってブレード状に形成することを特徴とする請求項3に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項5】
前記接合形状は、前記各パートデータ間の当接面に沿って所定の間隔を置いて設けたピンによる接合形態に形成することを特徴とする請求項3に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項6】
前記接合形状は、前記各パートデータ間の当接面に沿って所定の間隔を置いて設けた凹部と凸部とが嵌合する接合形態に形成されることを特徴とする請求項3に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項7】
前記凸部を、くさび状に形成することを特徴とする請求項6に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項8】
前記凸部には、対応するパートデータとの当接面に接する根元部分に溝部を形成することを特徴とする請求項6に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項9】
前記凹部と前記凸部との間に液相の接着物質を塗布して接合させることを特徴とする請求項6に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項10】
前記凸部を前記凹部より大きく作製するとともに、前記凸部の内部を空洞化して前記凸部を弾性的に結合させることを特徴とする請求項6に記載の3次元大型造形物の作製方法。
【請求項11】
前記各パートデータ間の当接面にそれぞれ対向する結合孔を形成し、これらの結合孔に造形物と異なる材料のピンを挿入および固定させて接合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元大型造形物の作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−83491(P2009−83491A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248806(P2008−248806)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】