説明

3次元環境復元装置、その処理方法、及びプログラム

【課題】マップ情報の精度を維持しつつ、マップ情報のメモリ消費量を効果的に低減すること。
【解決手段】3次元環境復元装置は、所定空間内の対象物体の3次元計測を行う計測手段と、計測手段により計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、配置された直方体内に3次元点群データを含むマップ情報を生成するマップ情報生成手段と、マップ情報生成手段により生成されたマップ情報の直方体内の3次元点群データに基づいて、3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成する芯線情報生成手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、配置された直方体に3次元点群データを含むマップ情報を生成する3次元環境復元装置、その処理方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロボットなどが周囲環境に接触しないようにアームを移動させるためには、周囲の3次元環境をマップ化する必要がある。3次元環境を効率的にマップ化する手法として、例えば、多段マップ法やボクセルマップ法を用いた手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−25248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記手法において、マップ情報の空間を所定幅毎で区切り、データの離散化を行っている。一般に、各区切りを小さくするとマップ情報の精度が向上するが、マップ情報のメモリ消費量が増加することとなる。一方で、各区切りを大きくするとメモリ消費量の低減に繋がるが、マップ情報の精度が低下することとなる。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、マップ情報の精度を維持しつつ、マップ情報のメモリ消費量を効果的に低減することができる3次元環境復元装置、その処理方法、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、所定空間内の対象物体の3次元計測を行う計測手段と、前記計測手段により計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて前記対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、前記配置された直方体内に3次元点群データを含むマップ情報を生成するマップ情報生成手段と、前記マップ情報生成手段により生成された前記マップ情報の直方体内の3次元点群データに基づいて、前記3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成する芯線情報生成手段と、を備える、ことを特徴とする3次元環境復元装置である。この一態様によれば、マップ情報の精度を維持しつつ、マップ情報のメモリ消費量を効果的に低減することができる。
【0007】
この一態様において、前記芯線情報生成手段は、前記マップ情報生成手段により生成された前記マップ情報の直方体内の3次元点群データの分布情報を算出し、前記算出した分布情報に基づいて、前記3次元点群データを楕円近似し、前記近似した楕円の長軸を算出することで、前記芯線情報を算出してもよい。これにより、マップ情報の直方体内の3次元点群を線分近似した芯線情報を算出することができる。
【0008】
この一態様において、前記芯線情報生成手段により生成された前記芯線情報に基づいて、前記所定空間内の対象物体形状を復元する復元手段を更に備えていてもよい。これにより、芯線情報を用いて、所定空間内の対象物体形状を高精度に復元することができる。
【0009】
この一態様において、前記復元手段は、前記芯線情報生成手段により生成された前記芯線情報に基づいて、前記所定空間内の平面を検出してもよい。これにより、芯線情報を用いて、所定空間内の平面を高精度かつ高速に検出することができる。
【0010】
この一態様において、前記復元手段は、前記マップ情報の中から、複数の前記芯線情報を選択して平面を構成し、前記構成した平面の平面方程式に前記マップ情報の他の芯線情報をあてはめ、所定条件を満たすか否かを判断することで、前記平面を構成する前記芯線情報のグループを推定してもよい。これにより、芯線情報を用いて、所定空間内の平面を高精度かつ高速に検出することができる。
【0011】
この一態様において、前記マップ情報生成手段は、前記計測手段により計測された3次元計測データに基づいて、前記配置された直方体に3次元点群データを含む時分割され多段状で構成された時分割多段マップ情報を生成し、生成した前記時分割多段マップ情報を全て加算した全体の時分割多段マップ情報を生成しており、前記マップ情報生成手段により生成された前記全体の時分割多段マップ情報に、最新の前記時分割多段マップ情報を加算し、最古の前記時分割多段マップ情報を減算することで、前記全体の時分割多段マップ情報及び芯線情報の更新を行う更新手段を更に備えていてもよい。これにより、時分割多段マップ情報を更新すると共に、その芯線情報も更新することができる。
【0012】
この一態様において、前記更新手段は、前記加算において、前記最新の時分割多段マップ情報の直方体を用いて、過去の前記時分割多段マップの直方体を分割してもよい。これにより、加算処理における整合性を図ることができる。
【0013】
この一態様において、前記更新手段は、前記減算において、前記全体の時分割多段マップ情報の直方体から前記最古の時分割多段マップ情報を減算することで分割を行うと共に、前記分割されたマップ情報の直方体の分布情報を夫々算出してもよい。これにより、減算処理における整合性を図ることができる。
【0014】
この一態様において、前記復元手段は、前記芯線情報生成手段により生成された所定領域近傍の前記芯線情報を選択し、前記選択した芯線情報の統計的な特徴量を算出し、前記算出した特徴量と、所定モデルの特徴量と、を比較することで、前記対象物体の形状を検出してもよい。これにより、芯線情報を用いて、所定空間の対象物体の形状を高精度かつ高速に検出することができる。
【0015】
この一態様において、前記復元手段は、前記芯線情報生成手段により生成された前記芯線情報群の中から、所定モデルの少なくとも一部の曲面を示す所定数式にあてはまる、前記芯線情報を選択し、前記選択した芯線情報を含むマップ情報と、前記所定モデルとを比較し、評価することで、前記対象物体の形状を検出してもよい。これにより、芯線情報を用いて、所定空間の対象物体の形状を高精度かつ高速に検出することができる。
【0016】
この一態様において、前記マップ情報は、例えば、多段状に構成された多段マップ情報、又はボクセルマップ情報であってもよい。
【0017】
この一態様において、前記復元手段により復元された前記所定空間の対象物体形状と前記マップ情報とに基づいて、移動体の経路を設定する経路設定手段を更に備えていてもよい。これにより、例えば、所定空間の対象物体の形状を考慮して、移動体の最適な経路を設定することができる。
【0018】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、所定空間内の対象物体の3次元計測を行うステップと、前記計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて前記対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、前記配置された直方体に3次元点群データを含むマップ情報を生成するステップと、前記生成されたマップ情報の3次元点群データに基づいて、前記3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成するステップと、を含む、ことを特徴とする3次元環境復元装置の処理方法であってもよい。
【0019】
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて前記対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、前記配置された直方体に3次元点群データを含むマップ情報を生成する処理と、前記生成されたマップ情報の3次元点群データに基づいて、前記3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マップ情報の精度を維持しつつ、マップ情報のメモリ消費量を効果的に低減することができる3次元環境復元装置、その処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る3次元環境復元装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図2】マップ情報生成部により生成されるボクセルマップ情報の一例を示す図である。
【図3】(a)マップ情報の構成要素における3次元点群データの一例を示す図である。(b)マップ情報の構成要素における芯線情報の一例を示す図である。
【図4】選択した芯線で平面領域が構成可能か否かの判断を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る3次元環境復元装置による復元方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係る3次元環境復元装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る3次元環境復元装置による処理フローの一例を示す概念図である。
【図8】分布情報の加減算を示す図である。
【図9】(a)更新部による分割処理を説明するための図である。(b)更新部による分割処理を説明するための図である。
【図10】(a)更新部による分割処理を説明するための図である。(b)更新部による分割処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る3次元環境復元装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態1に係る3次元環境復元装置10は、所定空間内に存在する任意の対象物体の形状を検出、復元することができるものである。
【0023】
3次元環境復元装置10は、所定空間内の対象物体の3次元計測を行う環境認識センサ1と、環境認識センサ1により計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、所定空間内の対象物体形状(環境形状)を正確に検出、復元する演算装置2と、を備えている。
【0024】
環境認識センサ1は、計測手段の一具体例であり、例えば、カメラ、超音波センサ、レーザレンジファインダなどから構成されており、所定空間内の対象物体の3次元計測を行なうことができる。例えば、レーザレンジファインダは、前方に向けてレーザを放射し、そのレーザを左右方向へと走査することで対象物体までの距離データを取得して、3次元計測を行う。環境認識センサ1は、演算装置2に接続されており、計測した3次元計測データを演算装置2に対して出力する。
【0025】
演算装置2は、環境認識センサ1により計測された3次元計測データに基づいて、所定空間のマップ情報を生成する。なお、演算装置2は、例えば、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによって実行される演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)と、処理データ等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、を有するマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。また、これらCPU、ROM、及びRAMは、データバス等によって相互に接続されている。演算装置2は、環境認識センサ1から出力された3次元計測データを、例えば、RAM等を用いて逐次記憶する。
【0026】
演算装置2は、マップ情報を生成するマップ情報生成部3と、芯線情報を生成する芯線情報生成部4と、所定空間内の対象物体を復元する復元部5と、を有している。
【0027】
マップ情報生成部3は、マップ情報生成手段の一具体例であり、環境認識センサ1により計測された3次元計測データに基づいて、対象物体の3次元点群データを含む多段マップ情報やボクセルマップ情報などの、マップ情報を生成する。
【0028】
より具体的には、マップ情報生成部3は、環境認識センサ1により計測された3次元計測データに基づいて対象物体の3次元点群データを生成し、3次元環境の基準平面が格子状に区切られて対象物体が存在する格子領域に直方体(キューボイド(cuboid))が配置され、その配置された直方体内に3次元点群データを含むマップ情報(例えば、図2に示す3次元座標系のボクセルマップ情報)を生成する。
【0029】
図2に示すように、例えば、ボクセルマップ情報において、環境の基準平面を格子状に区切り、対象物体が存在する領域に対して直方体が割り当てられる。直方体の上面の位置を示す値及び高さを示す値は、任意の実数値を取ることができ、各直方体は、上面の位置Top及び高さDepthのデータを保持している。また、マップ情報では、環境内に複数の対象物体が存在する場合において、その配置状況に応じて高さ方向(z方向)に複数の直方体を多段状に設定することができる。
【0030】
マップ情報生成部3は、芯線情報生成部4に接続されており、生成したマップ情報を芯線情報生成部4に対して出力する。
【0031】
芯線情報生成部4は、芯線情報生成手段の一具体例であり、マップ情報生成部3により生成されたマップ情報の構成要素(直方体)内の3次元点群データ(図3(a))に基づいて、その構成要素に対する、3次元点群を局所的に線分近似した芯線情報を生成する。
【0032】
芯線情報生成部4は、例えば、生成されたマップ情報の3次元点群データの平均値P及び分散値Σなどの分布情報を下記(1)式を用いて算出することで、平均値P及び分散値Σの逐次更新することができる。なお、下記(1)式においてXを計測点とする。
平均値P=m/n
分散値Σ=(S+P)/n (1)式
=(n−1)Pn−1+X
=Sn−1+X
【0033】
そして、芯線情報生成部4は、算出した3次元点群データの平均値P及び分散値Σを用いて、3次元点群データを楕円体近似した際の長軸(芯線)を算出し、その中心点及び方向ベクトルを算出することで、その3次元点群データの芯線情報を生成する(図3(b))。芯線情報生成部4は、マップ情報の構成要素毎に、算出した芯線情報を対応させて記憶する。
【0034】
このように、マップ情報内の対象物体を、芯線情報を用いて表し保持することで、マップ情報の解像度を疑似的に向上させることができる。すなわち、マップ情報の精度を維持しつつ、そのメモリ消費量を効果的に低減することができる。芯線情報生成部4は、復元部5に接続されており、算出したマップ情報の構成要素毎の芯線情報を復元部5に対して出力する。
【0035】
復元部5は、復元手段の一具体例であり、芯線情報生成部4により生成された芯線情報に基づいて、所定空間内の対象物体形状を復元する。
【0036】
復元部5は、マップ情報生成部3により生成されたマップ情報の中から、任意に、n個の芯線情報を選択して組を生成し、これら選択した芯線情報で平面領域を構成できるか否かを判断する。
【0037】
復元部5は、例えば、図4に示すように、3つの芯線情報を選択し(n=3)、各芯線の始点p〜p(直方体内の点群の平均)間を結ぶベクトルaを算出する。復元部5は、算出したベクトルaと、芯線の方向ベクトルn、n(芯線の固有ベクトル)とで外積を取り、垂直ベクトルb(b=n×a)、b(b=n×a)を夫々算出する。復元部5は、選択した芯線に対する垂直ベクトルb、bの角度が予め設定された所定角度以内となっていれば、その選択した3つの芯線で平面領域が構成可能と判断する。
【0038】
復元部5は、選択した芯線情報で平面領域が構成可能と判断した場合、その平面領域の平面方程式(ax+by+cz+d=0)を算出する。
【0039】
復元部5は、マップ情報の他の芯線情報をその算出した平面方程式にあてはめ、下記所定条件(2)式を満たすか否かを判断することで平面探索を行い、その平面領域を構成する芯線情報のグループ(平面構成要素)を推定し、平面領域を検出する。なお、下記(2)式において、b=(a、b、c)、及びb=(n、n、n)(入力芯線の方向ベクトル)とする。また、上記所定角度、下記第1及び第2所定閾値は、例えば、ROMやRAMなどに予め設定されている。
距離閾値||ax+by+cz+d||<第1所定閾値
角度閾値|cos−1(b・b/|b||b|)−π/2|≦第2所定閾値 (2)式
【0040】
なお、復元部5は、所定領域近傍の3次元点群の芯線のペアを構成し、その構成した芯線のペアに基づいて、同属領域を拡張する所謂region growingアプローチ手法を用いて、上記平面領域の検出を行っても良く、芯線情報を用いた任意の検出方法を適用することができる。
【0041】
以上のようにして、復元部5は、多段マップ法においては水平面、ボクセルマップ法においては水平面及び垂直面、などの特定の傾きの平面領域に制限されることなく、それ以外の任意の傾きを有する平面領域に対しても、離散化の影響を受けることなく、高精度に検出し、復元することができる。さらに、マップ情報の3次元点群を局所的に線分近似した芯線情報を利用し、情報処理量を低下させることで、平面領域の検出を高精度かつ高速に行うことができる。
【0042】
次に、本実施の形態1に係る3次元環境復元装置10の処理方法について、詳細に説明する。図5は、本実施の形態1に係る3次元環境復元装置による復元方法の一例を示すフローチャートである。
【0043】
環境認識センサ1は、所定空間内の対象物体の3次元計測を行ない(ステップS101)、計測した3次元計測データを演算装置2のマップ情報生成部3に対して出力する。
【0044】
マップ情報生成部3は、環境認識センサ1からの3次元計測データに基づいて、対象物体の3次元点群データを生成し、対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、その配置された直方体に3次元点群データを含むマップ情報を生成し(ステップS102)、生成したマップ情報を芯線情報生成部4に対して出力する。
【0045】
芯線情報生成部4は、マップ情報生成部3からのマップ情報の直方体内の3次元点群データに基づいて、マップ情報の構成要素(直方体)毎に、3次元点群データの芯線情報を生成し(ステップS103)、生成した芯線情報を復元部5に対して出力する。
【0046】
復元部5は、芯線情報生成部4により生成された芯線情報に基づいて、マップ情報の平面領域を検出する(ステップS104)。
【0047】
以上、本実施の形態1に係る3次元環境復元装置10によれば、マップ情報の構成要素毎に、3次元点群を局所的に線分近似した芯線情報を対応させて記憶することで、マップ情報の精度を維持しつつ、そのメモリ消費量を効果的に低減することができる。さらに、芯線情報を利用することで、所定空間内の平面領域の検出を高精度かつ高速に行うことができる。
【0048】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る3次元環境復元装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施の形態2に係る3次元環境復元装置20は、時系列拡張が行われ、時分割されかつ多段で構成された時分割多段マップ情報を用いて平面領域の検出を行う。なお、時分割多段マップの詳細な説明は、特願2010−25248号に詳細に記載されており、これを援用できるものとする。
【0049】
3次元環境復元装置20は、環境認識センサ1と、マップ情報生成部3、芯線情報生成部4、復元部5、及び更新部6、を有する演算装置21と、を備えている。
【0050】
演算装置21のマップ情報生成部3は、環境認識センサ1により計測された3次元計測データに基づいて、対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、その配置された直方体に3次元点群データを含む複数の時分割多段マップ情報を生成する。ここで、時分割多段マップ情報の各構成要素の基となった3次元点群データは、構成要素毎に分布情報として保持される。
【0051】
マップ情報生成部3は、生成した時分割多段マップ情報群を全て加算することで、全体の時分割多段マップ情報(以下、全時分割多段マップ情報)を生成する(図7(1))。なお、この処理は、初回のみ実行される。マップ情報生成部3は、生成した全時分割多段マップ情報を更新部6に対して出力する。
【0052】
更新部6は、更新手段の一具体例であり、マップ情報生成部3により生成された全時分割多段マップ情報に、最新の時分割多段マップ情報を加算し(図7の(2))、続いて、最古の時分割多段マップ情報を減算する(図7(3))ことで、全時分割多段マップ情報の更新を行う。すなわち、更新部6は、全時分割多段マップ情報の更新毎に、FIFO(First-In-First-Out)のように、全時分割多段マップ情報に、最新の時分割多段マップ情報を加算し、続いて、最古の時分割多段マップ情報を減算することを繰り返す。
【0053】
このとき、更新部6は、時分割多段マップ情報の3次元点群データの分布情報についても、上記同様に減算及び加算を行い、分布情報の整合性を図る(図8)。例えば、構成要素Cの内部分布N(P、Σ)と、構成要素Cの内部分布N(P、Σ)とを、下記(3)式を用いて加算及び減算することができる。
加算: P=(m+m)/(n+n
Σ=(S+S)/(n+n)−m
減算: P=(m−m)/(n−n) (3)式
Σ=(S−S)/(n−n)−m
【0054】
なお、上記加算及び減算は、上述のようにして行うことが可能であるが、その際、1つの直方体が2つに分かれる「分割」について、状況に応じた適切な対応が必要となる。以下、その分割方法について説明する。
【0055】
更新部6は、全時分割多段マップ情報に対して最新の時分割多段マップ情報を加算する場合(図7の(2))に、最新の時分割多段マップ情報を参照して、過去の全ての時分割多段マップ情報を下記のように変形する。
【0056】
例えば、更新部6は、最新の時分割多段マップ情報Partmap4の直方体(cuboid)を用いて、時分割多段マップ情報Partmap2、3の直方体を分割する(図9(a))。その直方体表現において、図9(a)に示すように加算処理により、直方体に分離が生じているが、内部の芯線(点分布)は繋がった状態となる(図9(b))。なお、直方体を所定の比率で分割することなく、便宜的に2分割するだけでもよい。
【0057】
また、更新部6は、全時分割多段マップ情報の直方体から最古の時分割多段マップ情報の直方体を減算する場合(図7の(3))において、例えば、全時分割多段マップ情報の直方体から最古の時分割多段マップ情報Partmap1の直方体を減算して、全時分割多段マップ情報の直方体を2分割する。このとき、更新部6は、全時分割多段マップ情報の直方体の分布情報(平均P及び分散Σ)から、最古の時系列多段マップ情報の直方体の分布情報を減算し、さらに、時系列多段マップ情報Partmap3の直方体の分布情報と、時系列多段マップ情報Partmap4の直方体の分布情報と、を加算する。更新部6は、以上の処理を行うことで、時分割多段マップ情報の整合性を図ることができる。
【0058】
復元部5は、上述のように、更新部6により更新された全時分割多段マップ情報の中から、任意に、n個の芯線情報を選択して組を生成し、これら芯線情報で平面領域を構成できるか否かを判断する。復元部5は、選択した芯線情報で平面領域が構成可能と判断した場合、その平面領域の平面方程式を算出する。復元部5は、全時分割多段マップ情報の他の芯線情報を、算出した平面方程式にあてはめ、上記所定条件(2)式を満たすか否かを判断することで平面探索を行い、その平面領域を構成する芯線情報のグループを推定し、平面領域を検出する。
【0059】
なお、本実施の形態2に係る3次元環境復元装置20において、上記実施の形態1に係る3次元環境復元装置10と同一部分に同一符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0060】
以上、本実施の形態2に係る3次元環境復元装置20によれば、時分割多段マップ情報において、芯線情報を更新しつつ、その更新した芯線情報を用いて所定空間内の平面領域の検出を高精度かつ高速に行うことができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態において、復元部5は、所定空間内の平面領域の検出を行っているが、これに限らず、例えば、曲面などの任意形状を検出することができる。
【0062】
復元部5は、芯線情報生成部4により生成された所定領域近傍(曲面近傍)の芯線情報を選択し、選択した芯線情報のヒストグラム(例えば、Point Feature Histogram)に基づいた特徴量を算出する。そして、復元部5は、算出した特徴量と、予め設定された所定モデルの特徴量と、を比較することで、所定空間内の任意形状を検出する。このように、芯線情報を用いることで、例えば、法線ベクトルを算出する際に、法線ベクトルの存在領域を「芯線と直交する軸周り」に限定できるため、上記算出処理を簡略化することができる。
【0063】
また、以下のようにして、復元部5は、所定空間内の任意形状を検出してもよい。なお、所定モデルは、例えば、CAD(Computer Aided Design)などの3次元メッシュ表現で表面点群(パッチ)の位置及び法線の両方が取れるものとする。
【0064】
復元部5は、芯線情報生成部4により生成された芯線情報群のうち、予め設定された所定モデルの少なくとも一部の曲面を表す所定数式(例えば、(x−a)+(y−b)+(z−c)=0)にあてはまる芯線情報を選択する。ここで、復元部5は、所定モデルの形状が小さい場合、選択した芯線情報の近傍から、別の芯線情報を選択する。また、復元部5は、所定モデルの形状の大きさに応じて、選択した芯線情報の近傍から選択範囲を広げて別の芯線情報を選択してもよい。
【0065】
次に、復元部5は、上記選択した芯線情報を含むマップ情報と所定モデルとを比較し、その差分を算出し、算出した差分を評価することで、所定空間内の任意形状の検出を行う。
【0066】
上記実施の形態において、3次元環境復元装置10、20は、復元部5により復元された所定空間内の対象物体形状とマップ情報とに基づいて、ロボットなどの移動体の経路を設定する経路設定部を備えていてもよい。経路設定部は、例えば、復元部5により復元された対象物体を最適に回避するような移動体の経路を設定してもよい。
【0067】
また、上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、演算装置2、21のマップ情報生成部3、芯線情報生成部4、復元部5、及び更新部6が実行する処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0068】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0069】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば、生活環境で物体操作などを行う支援型ロボットに搭載され、3次元環境の対象物体を復元する3次元環境復元装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 環境認識センサ
2 演算装置
3 マップ情報生成部
4 芯線情報生成部
5 復元部
6 更新部
10、20 3次元環境復元装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間内の対象物体の3次元計測を行う計測手段と、
前記計測手段により計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて前記対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、前記配置された直方体内に3次元点群データを含むマップ情報を生成するマップ情報生成手段と、
前記マップ情報生成手段により生成された前記マップ情報の直方体内の3次元点群データに基づいて、前記3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成する芯線情報生成手段と、
を備える、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項2】
請求項1記載の3次元環境復元装置であって、
前記芯線情報生成手段は、前記マップ情報生成手段により生成された前記マップ情報の直方体内の3次元点群データの分布情報を算出し、前記算出した分布情報に基づいて、前記3次元点群データを楕円近似し、前記近似した楕円の長軸を算出することで、前記芯線情報を算出する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の3次元環境復元装置であって、
前記芯線情報生成手段により生成された前記芯線情報に基づいて、前記所定空間内の対象物体形状を復元する復元手段を更に備える、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項4】
請求項3記載の3次元環境復元装置であって、
前記復元手段は、前記芯線情報生成手段により生成された前記芯線情報に基づいて、前記所定空間内の平面を検出する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の3次元環境復元装置であって、
前記復元手段は、前記マップ情報の中から、複数の前記芯線情報を選択して平面を構成し、前記構成した平面の平面方程式に前記マップ情報の他の芯線情報をあてはめ、所定条件を満たすか否かを判断することで、前記平面を構成する前記芯線情報のグループを推定する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載の3次元環境復元装置であって、
前記マップ情報生成手段は、前記計測手段により計測された3次元計測データに基づいて、前記配置された直方体に3次元点群データを含む時分割され多段状で構成された時分割多段マップ情報を生成し、生成した前記時分割多段マップ情報を全て加算した全体の時分割多段マップ情報を生成しており、
前記マップ情報生成手段により生成された前記全体の時分割多段マップ情報に、最新の前記時分割多段マップ情報を加算し、最古の前記時分割多段マップ情報を減算することで、前記全体の時分割多段マップ情報及び芯線情報の更新を行う更新手段を更に備える、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項7】
請求項6記載の3次元環境復元装置であって、
前記更新手段は、前記加算において、前記最新の時分割多段マップ情報の直方体を用いて、過去の前記時分割多段マップの直方体を分割する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の3次元環境復元装置であって、
前記更新手段は、前記減算において、前記全体の時分割多段マップ情報の直方体から前記最古の時分割多段マップ情報を減算することで分割を行うと共に、前記分割されたマップ情報の直方体の分布情報を夫々算出する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項9】
請求項3乃至8のうちいずれか1項記載の3次元環境復元装置であって、
前記復元手段は、
前記芯線情報生成手段により生成された所定領域近傍の前記芯線情報を選択し、前記選択した芯線情報の統計的な特徴量を算出し、前記算出した特徴量と、所定モデルの特徴量と、を比較することで、前記対象物体の形状を検出する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項10】
請求項3乃至8のうちいずれか1項記載の3次元環境復元装置であって、
前記復元手段は、前記芯線情報生成手段により生成された前記芯線情報群の中から、所定モデルの少なくとも一部の曲面を示す所定数式にあてはまる、前記芯線情報を選択し、
前記選択した芯線情報を含むマップ情報と、前記所定モデルとを比較し、評価することで、前記対象物体の形状を検出する、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちいずれか1項記載の3次元環境復元装置であって、
前記マップ情報は、多段状に構成された多段マップ情報、又はボクセルマップ情報である、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項12】
請求項3乃至11のうちいずれか1項記載の3次元環境復元装置であって、
前記復元手段により復元された前記所定空間の対象物体形状と前記マップ情報とに基づいて、移動体の経路を設定する経路設定手段を更に備える、ことを特徴とする3次元環境復元装置。
【請求項13】
所定空間内の対象物体の3次元計測を行うステップと、
前記計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて前記対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、前記配置された直方体内に3次元点群データを含むマップ情報を生成するステップと、
前記生成されたマップ情報の直方体内の3次元点群データに基づいて、前記3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成するステップと、
を含む、ことを特徴とする3次元環境復元装置の処理方法。
【請求項14】
計測された対象物体の3次元計測データに基づいて、3次元環境が格子領域に区切られて前記対象物体が存在する格子領域に直方体が配置され、前記配置された直方体内に3次元点群データを含むマップ情報を生成する処理と、
前記生成されたマップ情報の直方体内の3次元点群データに基づいて、前記3次元点群データを線分近似した芯線情報を生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−185534(P2012−185534A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46279(P2011−46279)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】