3次元造形装置、3次元造形方法及び造形物
【課題】造形物を構成する領域のうち、造形物を割れやすくさせる領域が形成されることを抑制し、その割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる3次元造形装置、3次元造形方法及びその造形物を提供すること。
【解決手段】Xヘッド41X及びYヘッド41Yが互いに直交する方向に沿って移動しながら、粉体Pの1層ごとに交互に液体を吐出する。したがって、仮にXヘッド41X及び/またはYヘッド41Yにおける複数のノズルうちのうち少なくとも1つに吐出欠陥が発生していても、その欠陥領域は異方的となる。すなわち、粉体Pの積層方向(Z軸方向)で同じ位置に連続して欠陥領域が形成されることを抑制できる。これにより、割れやすい方向での造形物Tの損壊を防止することができる。
【解決手段】Xヘッド41X及びYヘッド41Yが互いに直交する方向に沿って移動しながら、粉体Pの1層ごとに交互に液体を吐出する。したがって、仮にXヘッド41X及び/またはYヘッド41Yにおける複数のノズルうちのうち少なくとも1つに吐出欠陥が発生していても、その欠陥領域は異方的となる。すなわち、粉体Pの積層方向(Z軸方向)で同じ位置に連続して欠陥領域が形成されることを抑制できる。これにより、割れやすい方向での造形物Tの損壊を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面画像データに基づいて積層により3次元形状の造形物を形成する3次元造形装置、3次元造形方法及びその造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の3次元造形装置は、ラピッドプロトタイピングと呼ばれる装置として知られており、業務用として広く使われている。3次元造形装置の主な方式として、光造形方式、シート積層造形方式、そして、粉体造形方式がある。
【0003】
光造形方式は、光硬化型の樹脂に高出力レーザを照射して、断面形状を形成し、その積層によって3次元形状を造るものである。シート積層造形方式は、薄厚シートを層状に切り抜き、接着して積層して、3次元形状を造るものである。粉体造形方式は、粉体材料を層状に敷き詰めて、断面形状を作り、それを積層して3次元形状を造るものである。
【0004】
粉体造形方式は、更に、粉体を溶融または焼結するものと、接着剤を使って粉体を固化させるものに大分される。後者は、石膏を主成分とする粉末に、印刷機等に用いられるインクジェットのヘッドを用いて、接着剤や結合剤等の液体を吐出して固化させ、断面層を形成し、それを積層することによって3次元形状を造るものである。
【0005】
インクジェットヘッドを利用した粉体造形では、例えば市販のインクジェットプリンタのヘッドを用いて、あたかも印刷するように、粉体が敷き詰められたシート上に、粉体を固化させるべき領域に応じて選択的に接着剤等の液体を吐出する。特許文献1に記載された三次元造形装置は、粉体造形方式でインクジェットヘッドを採用した装置である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−101651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粉体造形方式でインクジェットヘッドを用いた造形装置では、例えばインクジェットヘッドが有する複数のノズルのうち一部に、目詰まり等の吐出欠陥が生じた場合、欠陥部分を含む粉体層が積層されることになる。つまり、インクジェットヘッドは所定の方向にスキャンされるので、吐出部の吐出欠陥が生じた場合、形成された造形物に直線状の未結合部分が生じ、造形物が一方向に割れやすい、という致命的な問題が起こる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の課題は、造形物を構成する領域のうち、造形物を割れやすくさせる領域が形成されることを抑制し、その割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる3次元造形装置、3次元造形方法及びその造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る3次元造形装置は、ステージと、供給機構と、複数のヘッドと、移動機構とを具備する。
前記ステージには、粉体材料が積層するように堆積される。
前記供給機構は、前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する。
前記複数のヘッドは、造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルをそれぞれ有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能である。
前記移動機構は、前記複数のヘッドを異なる方向で、前記ステージに相対的にそれぞれ移動させる。
【0010】
少なくとも1つのヘッドのうちの複数のノズルのうちの1つに吐出欠陥が生じている場合であっても、移動機構によって、複数のヘッドが異なる方向でステージに相対的に移動する。すなわち、本発明によれば、ヘッドが1つのみ設けられている場合に起こり得る、造形物を割れやすくさせる一方向に集中した境界領域である欠陥領域が形成されることを抑制できる。したがって、割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる。
【0011】
前記移動機構は、前記複数のヘッドである2つのヘッドの移動方向が直交するように、前記2つのヘッドを移動させてもよい。2つのヘッドの移動方向が直交することにより、直交でない場合に比べ、ヘッドや移動機構の構造を単純化することができる。
【0012】
前記移動機構は、前記供給機構により1層の前記粉体材料が供給されるごとに、前記複数のヘッドを交互に移動させてもよい。これにより、吐出欠陥が生じている場合に、粉体材料の積層方向で同じ位置に連続して欠陥領域が形成されることを抑制できる。あるいは、次請求項でもよい。
【0013】
前記移動機構は、前記供給機構により連続する第1の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち第1のヘッドを移動させ、前記供給機構により連続する第2の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち前記第1のヘッドとは異なる第2のヘッドを移動させてもよい。
【0014】
この場合に、前記第1の層数と前記第2の層数とが異なってもよい。例えば各ヘッドから吐出される液体がそれぞれ異なる場合や、ヘッドごとに供給機構により供給される材料がそれぞれ異なる場合に、本発明は有用である。
【0015】
前記供給機構は、前記複数のヘッドにそれぞれ対応する複数の異なる粉体材料を前記ステージに供給してもよい。あるいは、上記のように前記複数のヘッドは、異なる液体をそれぞれ吐出する。これらの発明により、造形物を構成する1層または複数層ごとに異なる特性を持つ造形物を形成することができる。
【0016】
本発明の他の形態に係る3次元造形装置は、ステージと、供給機構と、ヘッドと、移動機構とを具備する。
前記ステージには、粉体材料が積層するように堆積される。
前記供給機構は、前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する。
前記ヘッドは、造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルを有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能である。
前記移動機構は、前記供給機構により供給される異なる層の前記粉体材料に前記液体をそれぞれ吐出する時に、前記ヘッドをそれぞれ異なる方向で、前記ステージに相対的に移動させる。
【0017】
ヘッドが有する複数のノズルのうちの1つに吐出欠陥が生じている場合であっても、移動機構によって、ヘッドが異なる方向でステージに相対的に移動する。すなわち、ヘッドが1つのみ設けられている場合に起こり得る、造形物が割れやすくなる一方向に集中した境界領域である欠陥領域が形成されることを抑制でき、造形物の損壊を防止することができる。
この場合に、前記3次元造形装置は、前記粉体材料の積層方向に沿った軸の周りに、前記ヘッドを回転させる回転機構をさらに具備してもよい。これにより、ヘッドの移動方向を変えることができる。
【0018】
本発明に係る3次元造形方法は、1層分の前記粉体材料をステージ上に供給することを含む。
前記第1のヘッドが前記ステージと相対的に第1の方向に移動しながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記ヘッドから、造形物を形成するための液体が吐出される。
前記第1のヘッドからの液体の吐出後、1層分の前記粉体材料が前記ステージ上に供給される。
第2のヘッドが前記ステージと相対的に第1の方向とは異なる第2の方向に移動しながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第2のヘッドから造形物を形成するための液体が吐出される。
【0019】
本発明に係る造形物は、上記3次元造形方法により形成された造形物である。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によれば、造形物を構成する領域のうち、造形物を割れやすくさせる領域が形成されることを抑制し、その割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す図である。
【図2】図2は、3次元造形装置の本体ボックスの内部の構造を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示した3次元造形装置の平面図である。
【図4】図4は、3次元造形装置の側面から見た断面図であり、本体ボックスからトップカバーが外された3次元造形装置の状態を示している。
【図5】図5Aは、Xヘッド及びYヘッドを示す模式的な平面図である。図5Bは、その変形例である。
【図6】3次元造形装置の動作を説明する。図6A〜Eは、その動作を順に示す、3次元造形装置の主要部を示す模式的な平面図である。
【図7】図7A及びBは、本実施形態と比較の対象とされる方法で形成された造形物を収容した造形ボックスを示す平面図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す3次元造形装置であって、トッププレート及びプリントベースプレートを外した状態の3次元造形装置を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
【0024】
(3次元造形装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す図である。
【0025】
3次元造形装置100は、ほぼ直方体形状の本体ボックス1と、この本体ボックス1に接続された制御回路ボックス3とを備える。本体ボックス1は、サイドカバー5と、これに装着された本体カバー7と、本体カバー7に対して着脱可能なトップカバー6とを有する。
【0026】
図2は、3次元造形装置100の本体ボックス1の内部の構造を示す斜視図である。図3は、図2に示した3次元造形装置100の平面図である。図4は、この3次元造形装置100の側面から見た断面図であり、本体ボックス1からトップカバー6が外された、3次元造形装置100の状態を示している。
【0027】
3次元造形装置100は、下から順に、ベースプレート2、プリントベースプレート4及びトッププレート8を有し、これらは、複数の柱部材9により接続されている。図3及び4に示すように、ベースプレート2及びプリントベースプレート4の間には、Y軸方向に沿って配列された、供給ユニット10及び造形ユニット20が設けられている。造形ユニット20は、X及びY軸方向で実質的に中央位置に配置されている。
【0028】
供給機構として機能する供給ユニット10は、粉体材料P(以下、単に粉体Pという。)(図4参照)を造形ユニット20に供給する。供給ユニット10は、粉体Pが貯留される供給ボックス11と、供給ボックス11内に配置された昇降プレート12と、この供給ボックス11の始端から後述する造形ボックス21の終端にわたっての上面付近をY軸方向に沿って移動可能に設けられた供給ローラ13とを有する。供給ローラ13は、例えばボールネジ等の図示しない移動機構によってY軸方向に移動可能となっている。
【0029】
図2及び4に示すように、プリントベースプレート4、トッププレート8及び本体カバー7は、Z軸方向で見てほぼ同じ位置に開口部4a、8a及び7aをそれぞれ有している。本体カバー7のこの開口部7aに上記トップカバー6(図1参照)が装着される。トップカバー6が本体カバー7から外された状態で、ユーザがトッププレート8の上方からそれらの開口部4a、8a及び7aを介して、供給ボックス11内の昇降プレート12上に粉体Pを供給する。
【0030】
昇降プレート12は、昇降モータ14により昇降可能となっている。供給ローラ13は、例えば図4に示すような待機位置から、反時計回りに回転(自転)しながら右方向へ移動可能となっている。これにより、供給ローラ13が昇降プレート12上に堆積された粉体Pの表面を擦りながら右方向へ移動することで、粉体Pを造形ユニット20の方へ押し進め、1層分の量の粉体Pが造形ユニット20に供給される。
【0031】
造形ユニット20は、造形ボックス21と、この造形ボックス21内に配置され、粉体Pが積層するように堆積される造形ステージ22と、この造形ステージ22を造形ボックス21内で昇降移動させる昇降モータ23とを有する。上記のように供給ローラ13によって供給された粉体Pは、造形ボックス21内に(造形ステージ22上)に堆積される。造形物処理時には、1層分の量の粉体Pが供給ローラ13により供給されるごとに、造形ステージ22が1層分の粉体Pの厚さ分下降するように、昇降モータ23により駆動される。
【0032】
なお、造形ユニット20の、供給ユニット10が設けられる側とはY軸方向で反対側には、余剰の粉体Pが収容される収容ボックス30が配置されている。これら余剰の粉体Pは、廃棄されたり、再利用されたりする。
【0033】
プリントベースプレート4上には、造形ボックス21内の造形ステージ22上の粉体Pに液体をそれぞれ吐出する複数のヘッドとして、2つのヘッドであるXヘッド41X及びYヘッド41Yが設けられている。これらXヘッド41X及びYヘッド41Yは、互いに直交する方向に沿って造形ボックス21上を移動可能となっている。
【0034】
例えば図2及び3に示すように、Xヘッド41Xは、X軸移動機構40XによりX軸方向に沿って移動可能とされている。Yヘッド41Yは、Y軸移動機構40YによりY軸方向に沿って移動可能とされている。X軸移動機構40Xは、X軸方向に沿って設けられたガイドレール43Xと、Xヘッド41Xを保持し、このガイドレール43Xに沿って図示しないモータにより移動可能に設けられたヘッドホルダ42Xとを有する。Y軸移動機構40YもX軸移動機構40Xと同様に、Y軸方向に沿って設けられたガイドレール43Yと、Yヘッド41Yを保持し、このガイドレール43Yに沿って図示しないモータにより移動可能に設けられたヘッドホルダ42Yとを有する。X軸移動機構40X及びY軸移動機構40Yは、例えばボールネジ、あるいはラックアンドピニオン等の機構により移動機構を構成している。
【0035】
なお、3次元造形装置100が図3等に示すように待機状態にある時の2つのヘッド41X及び41Yのホーム位置は、造形ボックス21の側部の上方にある。
【0036】
図5Aは、Xヘッド41X及びYヘッド41Yを示す模式的な平面図である。Xヘッド41X及びYヘッド41Yによる液体の吐出原理は、典型的には公知のインクジェットプリンタのヘッドと同様である。Xヘッド41X及びYヘッド41Yは、それぞれライン型のヘッドである。すなわち図3に示すように、Xヘッド41XのY軸方向の長さは、造形ボックス21内の少なくとも所定の造形領域のY軸方向に沿った長さ以上とされている。
【0037】
図5Aに示すように、Xヘッド41Xは、Y軸方向に配列された液体を吐出する複数のノズルnXを有する。また、Yヘッド41YのX軸方向の長さは、造形ボックス21内の所定の造形領域22aのX軸方向に沿った長さ以上とされている。そして、Yヘッド41Yは、図示しない、X軸方向に配列された液体を吐出する複数のノズルnYを有する。ノズルnX及びnYは、1つのヘッドで例えば3000〜5000個設けられている。
なお、図5Bに示すように、造形ステージ22及び造形領域22aのZ軸方向で見た形状が長方形であってもよい。この場合も、Xヘッド41X及びYヘッド41Yのそれぞれの長さは、その造形領域22aの各辺に応じた長さに形成される。
【0038】
粉体Pとしては、例えば石膏が用いられる。他にも、例えば、食塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの水溶性の無機物が用いられる。塩化ナトリウムとにがり成分(硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなど)が混合されたものが用いられてもよい。すなわち、これは塩化ナトリウムを主成分とするものである。あるいは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸アンモニウム、メタアクリル酸ナトリウムやその共重合体などの有機物を用いることもできる。粉体Pの平均粒子径は、典型的には10μm以上100μm以下である。
【0039】
Xヘッド41X及びYヘッド41Yから吐出される液体は、造形物を形成するために、粉体P同士を接着あるいは結合させる成分を含む。あるいは、粉体Pが予めバインダ(例えば上記PVP等の接着剤)を含む場合、液体は水等の、バインダを溶解させる液体が用いられる。
【0040】
造形物の外面あるいは造形物の内部に色付けを行う場合、液体としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各染料または顔料インクが用いられる。色付けをしない場合には、透明インクでもよい。
【0041】
X軸移動機構40X及びY軸移動機構40Yの、Z軸方向でのそれぞれの配置位置は、互いの機械的干渉を避けるため、トッププレート8のZ軸方向での位置を基準としている。例えばX軸移動機構40Xのガイドレール43Xは、トッププレート8の上面からZ軸方向で所定距離の位置に配置されている。Y軸移動機構40Yのガイドレール43Yは、トッププレート8の下面からZ軸方向で所定距離の位置に配置されている。
【0042】
図1に示した制御回路ボックス3には、図示しない制御回路が内蔵されている。この制御回路は、図示しないが、上記の各ユニット及び移動機構のモータのドライバを含むコントローラ、これらのコントローラを統括制御するメインコントローラ等を含む。メインコントローラは、制御回路ボックス3の外に配置される場合もある。これらのコントローラは、ハードウェア、または、ハードウェア及びソフトウェア(つまり、コンピュータ)により構成される。メインコントローラは、メモリ等に記憶された、造形対象物を構成する積層された断面画像データに基づき、その画像データ1つごとに1層分ずつ粉体Pを供給して造形物を形成するように、各ユニット及び移動機構を制御する。
【0043】
(3次元造形装置の動作)
以上の構成された3次元造形装置100の動作を説明する。図6A〜Eは、その動作を順に示す、3次元造形装置100の主要部を示す模式的な平面図である。
【0044】
最初、造形ボックス21内の造形ステージ22は、Z軸方向で造形時における最も高い位置に配置され、造形処理が開始されると、例えば粉体Pの1層分の距離分Z軸方向に沿って下降する。この粉体Pの1層分の距離は、例えば0.1mmであるが、これに限られない。
【0045】
供給ボックス11内に粉体Pが供給される。造形ステージ22上に少なくとも1層分の粉体Pを造形ステージ22上に供給できるような距離分、昇降プレート12が上昇する。そして、図6Aに示すように、供給ローラ13が回転しながらY軸方向に沿って移動する。これにより、昇降プレート12上にある粉体Pが造形ボックス21内に押し出され、引き続き造形ステージ22上で供給ローラ13が回転しながらY軸方向に沿って移動することにより、平坦な1層分の粉体Pが造形ステージ22上に堆積される。
【0046】
なお、このような造形ステージ22上での粉体Pの平坦化のために、造形ステージ22上で回転しながらY軸方向に沿って移動する図示しないローラが、供給ローラ13とは別に設けられていてもよい。
【0047】
図6Bに示すように、Yヘッド41YがY軸方向に沿って移動しながら、あたかも通常のプリンタによる印刷を行うように、造形領域22a(図5A及びB参照)全体のうち、断面画像データに応じた領域に選択的に液体を吐出する。これにより、液体が吐出された領域にある粉体P同士が結合し、固化する。
【0048】
図6Cに示すように、前回と同じように昇降プレート12が上昇し、また、粉体Pの1層分、造形ステージ22が下降する。そして、供給ローラ13により1層分の粉体Pが造形ステージ22上(先ほど造形処理された1層目の粉体P上)に供給される。
【0049】
図6Dに示すように、Xヘッド41XがX軸方向に沿って移動しながら、あたかも通常のプリンタによる印刷を行うように、造形領域22a全体のうち、断面画像データに応じた領域に選択的に液体を吐出する。このように2層目の粉体Pには、Xヘッド41Xを用いて液体が供給される。
【0050】
次に供給ローラ13により供給された3層目の粉体Pには、再度Yヘッド41Yが用いられて液体が吐出される。このように、以下、Xヘッド41Xからの吐出、Yヘッド41Yからの吐出、Xヘッド41Xからの吐出、・・・というように交互に液体の吐出が行われる。
【0051】
そして、最後の層の粉体Pに液体の吐出が行われた後、図6Eに示すように、形成された造形物Tが造形ボックス21から取り出される。
【0052】
図7Aは、本実施形態と比較の対象とされる方法で形成された造形物を収容した造形ボックス21を示す平面図である。この例は、Y軸方向に沿って移動可能な1つのライン型のヘッドを用いて、人の顎骨(歯を含む)を造形対象物として造形物T’を形成したものである。図7Aに示すように、ヘッド141内でX軸方向に配列された複数のノズルnXのうち少なくとも1つのノズルnX’に目詰まり等の吐出欠陥が生じた場合、そのノズルnX’が通るライン上には液体が適切に吐出されない。そうすると、造形物T’を割れやすくさせる、等方的にY軸方向に集中した境界領域である欠陥領域Dが形成される。造形物T’にこのような欠陥領域Dが形成されると、図7Bに示すように、形成された造形物T’に筋状の裂け目による欠陥Ta’が発生する。
【0053】
また、吐出欠陥が生じていなくても、例えば各ノズルnXの吐出量にばらつきがある場合、図7Aにおいて、X軸方向に造形物T’が割れやすい、Y軸方向には割れにくい、などといった問題も発生する。
【0054】
これに対して本実施形態に係る3次元造形装置100によれば、Xヘッド41X及びYヘッド41Yが互いに直交する方向に沿って移動しながら、粉体Pの1層ごとに交互に液体を吐出する。したがって、仮にXヘッド41X及び/またはYヘッド41Yにおける複数のノズルnX及びnYうちのうち少なくとも1つに吐出欠陥が発生していても、あるいはそれらのノズルnX及びnYからの吐出量にばらつきがあったとしても、その欠陥領域Dやそのばらつきは異方的となる。すなわち、図7で示したような、粉体Pの積層方向(Z軸方向)で同じ位置に連続して欠陥領域Dが形成されることを抑制できる。これにより、割れやすい方向での造形物Tの損壊を防止することができる。
【0055】
また、本実施形態では、Xヘッド41X及びYヘッド41Yが直交するように移動するので、それらが例えば直交でない場合に比べ、それらヘッド41X及び41Yや移動機構40X及び40Yの構造を単純化することができる。
【0056】
本実施形態では、Xヘッド41X及びYヘッド41Yが1層ごとに交互に用いられるのではなく、複数層ごとに交互に用いられてもよい。
【0057】
[第2の実施形態]
【0058】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す斜視図である。図9は、図8に示す3次元造形装置200であって、トッププレート28及びプリントベースプレート24を外した状態の3次元造形装置200を示す斜視図である。これ以降の説明では、上記第1の実施形態に係る3次元造形装置200が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0059】
本実施形態に係る3次元造形装置200は、2つの供給ユニット10X及び10Yを備えている。これらの供給ユニット10X及び10Yの基本的な構造及び機能は、第1の実施形態に係る供給ユニット10とそれぞれ同様である。本実施形態では、Y供給ユニット10Yに、X供給ユニット10Xが新たに加えられている。図9に示すように、X供給ユニット10Xは、造形ユニット20とX軸方向で並ぶように設けられている。
【0060】
X供給ユニット10Xは、回転しながらX軸方向へ移動可能なX供給ローラ13Xを有する。各供給ユニット10には、それぞれ異なる粉体が供給される。異なる粉体とは、例えば形状、大きさ、または材料等の違い、あるいは、磁性、硬度等の特性の違いにより分けられる。
【0061】
本実施形態の場合は、典型的には、X供給ユニット10Xにより供給された粉体には、Xヘッド41Xにより液体が供給され、Y供給ユニット10Yにより供給された粉体には、Yヘッド41Yにより液体が供給される。あるいは、X供給ユニット10Xにより供給された粉体には、Yヘッド41Yにより液体が供給され、Y供給ユニット10Yにより供給された粉体には、Xヘッド41Xにより液体が供給されてもよい。
【0062】
また、本実施形態でも上記第1の実施形態と同様に、1層ごとに、または複数層ごとに、交互にXヘッド41X及びYヘッド41Yを用いて液体が吐出される。
【0063】
以上のように、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、等方的にかつ層方向で連続して欠陥領域Dが形成されることを抑制できる。また、異なる2種類の粉体により造形物が形成されることにより、1つの造形物に、異なる材料や特性を含む領域を含ませることができる。
【0064】
本実施形態の場合、Xヘッド41X及びYヘッド41Yから異なる液体が吐出されてもよい。その場合、例えば2つの供給ユニット10X及び10Yのうち1つの供給ユニットからは、PVP等のバインダを含む第1の粉体が造形ボックス21に供給され、他の1つの供給ユニットからは、石膏等の第2の粉体(バインダを含まない粉体)が造形ボックス21に供給されてもよい。そして、2つのヘッド41X及び41Yのうち、1つのヘッドが水溶性インク等のバインダを含まない液体を第1の粉体に吐出し、他の1つのヘッドが、バインダを含む第2の液体を第2の粉体に吐出してもよい。
【0065】
本実施形態では、X供給ユニット10X及びY供給ユニット10Yから同じ粉体が供給されてもよい。この場合、2つの供給ボックス11X及び11Yにそれぞれ収容される粉体量を、1つの供給ボックス11の場合に比べ半分とすることができるので、2つの供給ボックス11X及び11Yの各厚さもその半分とすることができる。これにより、3次元造形装置200の薄型化を実現することができる。
【0066】
[第3の実施形態]
【0067】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【0068】
本実施形態に係る造形ボックス121は、例えば6角形の外形を有する。この造形ボックス121の周囲の3辺に沿った位置、例えばZ軸を中心とした回転角度で互いに120°離れた位置に、液体を吐出するヘッド44、45及び46がそれぞれ配置されている。これらのヘッド44、45及び46は、図示しない移動機構により、互いに120°ずつ異なる角度でX−Y平面に沿ってそれぞれ移動可能となっている。
【0069】
このように、ヘッドの数が増えるほど、移動機構は複雑になるが、より異方性の高い造形物を形成することができる。
【0070】
なお、造形ボックス21は、6角形に限られず、上記のように4角形でもよいし、3角形や円形でもよい。
【0071】
[第4の実施形態]
【0072】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【0073】
本実施形態に係る3次元造形装置は、液体を吐出する1つのヘッド47を有し、ヘッド47をZ軸周りに回転させる回転機構を備えている。例えば、回転機構の回転軸a1は、ノズル47の一端部付近に設けられている。また、このヘッド47は、図示しないX−Y移動機構によりX軸及びY軸方向に沿って移動可能とされている。X−Y移動機構としては、例えば公知のXYステージの機構が用いられればよい。
【0074】
このような構成された3次元造形装置では、1層ごと、または複数層ごとに、ヘッド47の回転角度が90°ずつ変えられ、それぞれX軸方向及びY軸方向に交互に移動しながら、造形ボックス21内の粉体に液体が吐出される。
【0075】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0076】
上記各実施形態では、粉体の同じ層数ごとにヘッドが交互に液体を吐出した。しかし、異なる層数ごとに、あるいはランダムの層数で、それらヘッドが交互に液体を吐出してもよい。異なる層数ごととは、例えば1つのヘッドが第1の層数(例えば1層)ごと、他の1つのヘッドは第1の層数とは異なる第2の層数(例えば2、3層)ごとに液体を吐出するパターンなどである。
【0077】
あるいは、粉体の1層に対して、1つのヘッドが液体を吐出した後、その同じ粉体の層に対して別のヘッドが液体を吐出するようにしてもよい。
【0078】
上記第1及び3の実施形態では、複数のヘッドが同じ液体を吐出する形態を示した。しかし、それらのヘッドのうち少なくとも2つは異なる液体を吐出してもよい。例えば液体がカラーインクであれば、異なる組成、つまり異なる色のインクが吐出されてもよい。
【0079】
上記各実施形態に係る3次元造形装置は、1つのヘッドが一方向に移動するライン型のヘッドを備えていた。しかし、複数のヘッドのうち少なくとも1つのヘッドが、ライン型ヘッドではなく、複数のノズルを有し、造形ボックス21内の造形幅より狭い長さを有する短ヘッドであってもよい。この場合、この短ヘッドを、そのノズルの配列方向と直交する方向に移動させながら、粉体上の局所的な1ライン分に液体を吐出後、ノズルの配列方向にヘッドを移動させ、粉体上の次の局所的な1ライン分に液体を吐出させる。この場合、1つのヘッドごとに、そのヘッドを移動させる2軸の移動機構が設けられる。
【0080】
ライン型のヘッドを1つのみ用いる場合に、粉体1層または複数層ごとに、そのノズルの配列方向に所定の距離(例えば複数のノズル数分)だけヘッドの位置をずらして、用いるようにしてもよい。これにより、粉体の積層方向に沿って連続した多数の欠陥領域Dが発生することを避けることができる。
【0081】
形成された造形物を加熱処理するヒータが上述した各3次元造形装置に設けられていてもよい。
【0082】
複数のヘッドを洗浄するクリーニング機構が上述した各3次元造形装置に設けられていてもよい。この場合、第1のヘッドにより液体が吐出されている間に、第2のヘッドがそのクリーニング機構により洗浄されることにより、時間効率を向上させることができる。クリーニング機構としては、ブラシやワイパーによる機械的なクリーニング、洗浄液による化学的なクリーニング等、あるいは、これらの組合せ等がある。
【0083】
上記実施形態では、複数のヘッドを移動させる移動機構が設けられていた。しかし、複数のヘッドは固定で、造形ボックス(造形ステージ)を移動させる移動機構が上記各3次元造形装置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
P…粉体材料(粉体)
nX、nY…ノズル
T…造形物
10…供給ユニット
10X…X供給ユニット
10Y…Y供給ユニット
20…造形ユニット
22…造形ステージ
40X…X軸移動機構
40Y…Y軸移動機構
41X…Xヘッド
41Y…Yヘッド
44〜47、141…ヘッド
100、200…3次元造形装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面画像データに基づいて積層により3次元形状の造形物を形成する3次元造形装置、3次元造形方法及びその造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の3次元造形装置は、ラピッドプロトタイピングと呼ばれる装置として知られており、業務用として広く使われている。3次元造形装置の主な方式として、光造形方式、シート積層造形方式、そして、粉体造形方式がある。
【0003】
光造形方式は、光硬化型の樹脂に高出力レーザを照射して、断面形状を形成し、その積層によって3次元形状を造るものである。シート積層造形方式は、薄厚シートを層状に切り抜き、接着して積層して、3次元形状を造るものである。粉体造形方式は、粉体材料を層状に敷き詰めて、断面形状を作り、それを積層して3次元形状を造るものである。
【0004】
粉体造形方式は、更に、粉体を溶融または焼結するものと、接着剤を使って粉体を固化させるものに大分される。後者は、石膏を主成分とする粉末に、印刷機等に用いられるインクジェットのヘッドを用いて、接着剤や結合剤等の液体を吐出して固化させ、断面層を形成し、それを積層することによって3次元形状を造るものである。
【0005】
インクジェットヘッドを利用した粉体造形では、例えば市販のインクジェットプリンタのヘッドを用いて、あたかも印刷するように、粉体が敷き詰められたシート上に、粉体を固化させるべき領域に応じて選択的に接着剤等の液体を吐出する。特許文献1に記載された三次元造形装置は、粉体造形方式でインクジェットヘッドを採用した装置である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−101651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粉体造形方式でインクジェットヘッドを用いた造形装置では、例えばインクジェットヘッドが有する複数のノズルのうち一部に、目詰まり等の吐出欠陥が生じた場合、欠陥部分を含む粉体層が積層されることになる。つまり、インクジェットヘッドは所定の方向にスキャンされるので、吐出部の吐出欠陥が生じた場合、形成された造形物に直線状の未結合部分が生じ、造形物が一方向に割れやすい、という致命的な問題が起こる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の課題は、造形物を構成する領域のうち、造形物を割れやすくさせる領域が形成されることを抑制し、その割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる3次元造形装置、3次元造形方法及びその造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る3次元造形装置は、ステージと、供給機構と、複数のヘッドと、移動機構とを具備する。
前記ステージには、粉体材料が積層するように堆積される。
前記供給機構は、前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する。
前記複数のヘッドは、造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルをそれぞれ有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能である。
前記移動機構は、前記複数のヘッドを異なる方向で、前記ステージに相対的にそれぞれ移動させる。
【0010】
少なくとも1つのヘッドのうちの複数のノズルのうちの1つに吐出欠陥が生じている場合であっても、移動機構によって、複数のヘッドが異なる方向でステージに相対的に移動する。すなわち、本発明によれば、ヘッドが1つのみ設けられている場合に起こり得る、造形物を割れやすくさせる一方向に集中した境界領域である欠陥領域が形成されることを抑制できる。したがって、割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる。
【0011】
前記移動機構は、前記複数のヘッドである2つのヘッドの移動方向が直交するように、前記2つのヘッドを移動させてもよい。2つのヘッドの移動方向が直交することにより、直交でない場合に比べ、ヘッドや移動機構の構造を単純化することができる。
【0012】
前記移動機構は、前記供給機構により1層の前記粉体材料が供給されるごとに、前記複数のヘッドを交互に移動させてもよい。これにより、吐出欠陥が生じている場合に、粉体材料の積層方向で同じ位置に連続して欠陥領域が形成されることを抑制できる。あるいは、次請求項でもよい。
【0013】
前記移動機構は、前記供給機構により連続する第1の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち第1のヘッドを移動させ、前記供給機構により連続する第2の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち前記第1のヘッドとは異なる第2のヘッドを移動させてもよい。
【0014】
この場合に、前記第1の層数と前記第2の層数とが異なってもよい。例えば各ヘッドから吐出される液体がそれぞれ異なる場合や、ヘッドごとに供給機構により供給される材料がそれぞれ異なる場合に、本発明は有用である。
【0015】
前記供給機構は、前記複数のヘッドにそれぞれ対応する複数の異なる粉体材料を前記ステージに供給してもよい。あるいは、上記のように前記複数のヘッドは、異なる液体をそれぞれ吐出する。これらの発明により、造形物を構成する1層または複数層ごとに異なる特性を持つ造形物を形成することができる。
【0016】
本発明の他の形態に係る3次元造形装置は、ステージと、供給機構と、ヘッドと、移動機構とを具備する。
前記ステージには、粉体材料が積層するように堆積される。
前記供給機構は、前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する。
前記ヘッドは、造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルを有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能である。
前記移動機構は、前記供給機構により供給される異なる層の前記粉体材料に前記液体をそれぞれ吐出する時に、前記ヘッドをそれぞれ異なる方向で、前記ステージに相対的に移動させる。
【0017】
ヘッドが有する複数のノズルのうちの1つに吐出欠陥が生じている場合であっても、移動機構によって、ヘッドが異なる方向でステージに相対的に移動する。すなわち、ヘッドが1つのみ設けられている場合に起こり得る、造形物が割れやすくなる一方向に集中した境界領域である欠陥領域が形成されることを抑制でき、造形物の損壊を防止することができる。
この場合に、前記3次元造形装置は、前記粉体材料の積層方向に沿った軸の周りに、前記ヘッドを回転させる回転機構をさらに具備してもよい。これにより、ヘッドの移動方向を変えることができる。
【0018】
本発明に係る3次元造形方法は、1層分の前記粉体材料をステージ上に供給することを含む。
前記第1のヘッドが前記ステージと相対的に第1の方向に移動しながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記ヘッドから、造形物を形成するための液体が吐出される。
前記第1のヘッドからの液体の吐出後、1層分の前記粉体材料が前記ステージ上に供給される。
第2のヘッドが前記ステージと相対的に第1の方向とは異なる第2の方向に移動しながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第2のヘッドから造形物を形成するための液体が吐出される。
【0019】
本発明に係る造形物は、上記3次元造形方法により形成された造形物である。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によれば、造形物を構成する領域のうち、造形物を割れやすくさせる領域が形成されることを抑制し、その割れやすい方向での造形物の損壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す図である。
【図2】図2は、3次元造形装置の本体ボックスの内部の構造を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示した3次元造形装置の平面図である。
【図4】図4は、3次元造形装置の側面から見た断面図であり、本体ボックスからトップカバーが外された3次元造形装置の状態を示している。
【図5】図5Aは、Xヘッド及びYヘッドを示す模式的な平面図である。図5Bは、その変形例である。
【図6】3次元造形装置の動作を説明する。図6A〜Eは、その動作を順に示す、3次元造形装置の主要部を示す模式的な平面図である。
【図7】図7A及びBは、本実施形態と比較の対象とされる方法で形成された造形物を収容した造形ボックスを示す平面図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す3次元造形装置であって、トッププレート及びプリントベースプレートを外した状態の3次元造形装置を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
【0024】
(3次元造形装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す図である。
【0025】
3次元造形装置100は、ほぼ直方体形状の本体ボックス1と、この本体ボックス1に接続された制御回路ボックス3とを備える。本体ボックス1は、サイドカバー5と、これに装着された本体カバー7と、本体カバー7に対して着脱可能なトップカバー6とを有する。
【0026】
図2は、3次元造形装置100の本体ボックス1の内部の構造を示す斜視図である。図3は、図2に示した3次元造形装置100の平面図である。図4は、この3次元造形装置100の側面から見た断面図であり、本体ボックス1からトップカバー6が外された、3次元造形装置100の状態を示している。
【0027】
3次元造形装置100は、下から順に、ベースプレート2、プリントベースプレート4及びトッププレート8を有し、これらは、複数の柱部材9により接続されている。図3及び4に示すように、ベースプレート2及びプリントベースプレート4の間には、Y軸方向に沿って配列された、供給ユニット10及び造形ユニット20が設けられている。造形ユニット20は、X及びY軸方向で実質的に中央位置に配置されている。
【0028】
供給機構として機能する供給ユニット10は、粉体材料P(以下、単に粉体Pという。)(図4参照)を造形ユニット20に供給する。供給ユニット10は、粉体Pが貯留される供給ボックス11と、供給ボックス11内に配置された昇降プレート12と、この供給ボックス11の始端から後述する造形ボックス21の終端にわたっての上面付近をY軸方向に沿って移動可能に設けられた供給ローラ13とを有する。供給ローラ13は、例えばボールネジ等の図示しない移動機構によってY軸方向に移動可能となっている。
【0029】
図2及び4に示すように、プリントベースプレート4、トッププレート8及び本体カバー7は、Z軸方向で見てほぼ同じ位置に開口部4a、8a及び7aをそれぞれ有している。本体カバー7のこの開口部7aに上記トップカバー6(図1参照)が装着される。トップカバー6が本体カバー7から外された状態で、ユーザがトッププレート8の上方からそれらの開口部4a、8a及び7aを介して、供給ボックス11内の昇降プレート12上に粉体Pを供給する。
【0030】
昇降プレート12は、昇降モータ14により昇降可能となっている。供給ローラ13は、例えば図4に示すような待機位置から、反時計回りに回転(自転)しながら右方向へ移動可能となっている。これにより、供給ローラ13が昇降プレート12上に堆積された粉体Pの表面を擦りながら右方向へ移動することで、粉体Pを造形ユニット20の方へ押し進め、1層分の量の粉体Pが造形ユニット20に供給される。
【0031】
造形ユニット20は、造形ボックス21と、この造形ボックス21内に配置され、粉体Pが積層するように堆積される造形ステージ22と、この造形ステージ22を造形ボックス21内で昇降移動させる昇降モータ23とを有する。上記のように供給ローラ13によって供給された粉体Pは、造形ボックス21内に(造形ステージ22上)に堆積される。造形物処理時には、1層分の量の粉体Pが供給ローラ13により供給されるごとに、造形ステージ22が1層分の粉体Pの厚さ分下降するように、昇降モータ23により駆動される。
【0032】
なお、造形ユニット20の、供給ユニット10が設けられる側とはY軸方向で反対側には、余剰の粉体Pが収容される収容ボックス30が配置されている。これら余剰の粉体Pは、廃棄されたり、再利用されたりする。
【0033】
プリントベースプレート4上には、造形ボックス21内の造形ステージ22上の粉体Pに液体をそれぞれ吐出する複数のヘッドとして、2つのヘッドであるXヘッド41X及びYヘッド41Yが設けられている。これらXヘッド41X及びYヘッド41Yは、互いに直交する方向に沿って造形ボックス21上を移動可能となっている。
【0034】
例えば図2及び3に示すように、Xヘッド41Xは、X軸移動機構40XによりX軸方向に沿って移動可能とされている。Yヘッド41Yは、Y軸移動機構40YによりY軸方向に沿って移動可能とされている。X軸移動機構40Xは、X軸方向に沿って設けられたガイドレール43Xと、Xヘッド41Xを保持し、このガイドレール43Xに沿って図示しないモータにより移動可能に設けられたヘッドホルダ42Xとを有する。Y軸移動機構40YもX軸移動機構40Xと同様に、Y軸方向に沿って設けられたガイドレール43Yと、Yヘッド41Yを保持し、このガイドレール43Yに沿って図示しないモータにより移動可能に設けられたヘッドホルダ42Yとを有する。X軸移動機構40X及びY軸移動機構40Yは、例えばボールネジ、あるいはラックアンドピニオン等の機構により移動機構を構成している。
【0035】
なお、3次元造形装置100が図3等に示すように待機状態にある時の2つのヘッド41X及び41Yのホーム位置は、造形ボックス21の側部の上方にある。
【0036】
図5Aは、Xヘッド41X及びYヘッド41Yを示す模式的な平面図である。Xヘッド41X及びYヘッド41Yによる液体の吐出原理は、典型的には公知のインクジェットプリンタのヘッドと同様である。Xヘッド41X及びYヘッド41Yは、それぞれライン型のヘッドである。すなわち図3に示すように、Xヘッド41XのY軸方向の長さは、造形ボックス21内の少なくとも所定の造形領域のY軸方向に沿った長さ以上とされている。
【0037】
図5Aに示すように、Xヘッド41Xは、Y軸方向に配列された液体を吐出する複数のノズルnXを有する。また、Yヘッド41YのX軸方向の長さは、造形ボックス21内の所定の造形領域22aのX軸方向に沿った長さ以上とされている。そして、Yヘッド41Yは、図示しない、X軸方向に配列された液体を吐出する複数のノズルnYを有する。ノズルnX及びnYは、1つのヘッドで例えば3000〜5000個設けられている。
なお、図5Bに示すように、造形ステージ22及び造形領域22aのZ軸方向で見た形状が長方形であってもよい。この場合も、Xヘッド41X及びYヘッド41Yのそれぞれの長さは、その造形領域22aの各辺に応じた長さに形成される。
【0038】
粉体Pとしては、例えば石膏が用いられる。他にも、例えば、食塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの水溶性の無機物が用いられる。塩化ナトリウムとにがり成分(硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなど)が混合されたものが用いられてもよい。すなわち、これは塩化ナトリウムを主成分とするものである。あるいは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸アンモニウム、メタアクリル酸ナトリウムやその共重合体などの有機物を用いることもできる。粉体Pの平均粒子径は、典型的には10μm以上100μm以下である。
【0039】
Xヘッド41X及びYヘッド41Yから吐出される液体は、造形物を形成するために、粉体P同士を接着あるいは結合させる成分を含む。あるいは、粉体Pが予めバインダ(例えば上記PVP等の接着剤)を含む場合、液体は水等の、バインダを溶解させる液体が用いられる。
【0040】
造形物の外面あるいは造形物の内部に色付けを行う場合、液体としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各染料または顔料インクが用いられる。色付けをしない場合には、透明インクでもよい。
【0041】
X軸移動機構40X及びY軸移動機構40Yの、Z軸方向でのそれぞれの配置位置は、互いの機械的干渉を避けるため、トッププレート8のZ軸方向での位置を基準としている。例えばX軸移動機構40Xのガイドレール43Xは、トッププレート8の上面からZ軸方向で所定距離の位置に配置されている。Y軸移動機構40Yのガイドレール43Yは、トッププレート8の下面からZ軸方向で所定距離の位置に配置されている。
【0042】
図1に示した制御回路ボックス3には、図示しない制御回路が内蔵されている。この制御回路は、図示しないが、上記の各ユニット及び移動機構のモータのドライバを含むコントローラ、これらのコントローラを統括制御するメインコントローラ等を含む。メインコントローラは、制御回路ボックス3の外に配置される場合もある。これらのコントローラは、ハードウェア、または、ハードウェア及びソフトウェア(つまり、コンピュータ)により構成される。メインコントローラは、メモリ等に記憶された、造形対象物を構成する積層された断面画像データに基づき、その画像データ1つごとに1層分ずつ粉体Pを供給して造形物を形成するように、各ユニット及び移動機構を制御する。
【0043】
(3次元造形装置の動作)
以上の構成された3次元造形装置100の動作を説明する。図6A〜Eは、その動作を順に示す、3次元造形装置100の主要部を示す模式的な平面図である。
【0044】
最初、造形ボックス21内の造形ステージ22は、Z軸方向で造形時における最も高い位置に配置され、造形処理が開始されると、例えば粉体Pの1層分の距離分Z軸方向に沿って下降する。この粉体Pの1層分の距離は、例えば0.1mmであるが、これに限られない。
【0045】
供給ボックス11内に粉体Pが供給される。造形ステージ22上に少なくとも1層分の粉体Pを造形ステージ22上に供給できるような距離分、昇降プレート12が上昇する。そして、図6Aに示すように、供給ローラ13が回転しながらY軸方向に沿って移動する。これにより、昇降プレート12上にある粉体Pが造形ボックス21内に押し出され、引き続き造形ステージ22上で供給ローラ13が回転しながらY軸方向に沿って移動することにより、平坦な1層分の粉体Pが造形ステージ22上に堆積される。
【0046】
なお、このような造形ステージ22上での粉体Pの平坦化のために、造形ステージ22上で回転しながらY軸方向に沿って移動する図示しないローラが、供給ローラ13とは別に設けられていてもよい。
【0047】
図6Bに示すように、Yヘッド41YがY軸方向に沿って移動しながら、あたかも通常のプリンタによる印刷を行うように、造形領域22a(図5A及びB参照)全体のうち、断面画像データに応じた領域に選択的に液体を吐出する。これにより、液体が吐出された領域にある粉体P同士が結合し、固化する。
【0048】
図6Cに示すように、前回と同じように昇降プレート12が上昇し、また、粉体Pの1層分、造形ステージ22が下降する。そして、供給ローラ13により1層分の粉体Pが造形ステージ22上(先ほど造形処理された1層目の粉体P上)に供給される。
【0049】
図6Dに示すように、Xヘッド41XがX軸方向に沿って移動しながら、あたかも通常のプリンタによる印刷を行うように、造形領域22a全体のうち、断面画像データに応じた領域に選択的に液体を吐出する。このように2層目の粉体Pには、Xヘッド41Xを用いて液体が供給される。
【0050】
次に供給ローラ13により供給された3層目の粉体Pには、再度Yヘッド41Yが用いられて液体が吐出される。このように、以下、Xヘッド41Xからの吐出、Yヘッド41Yからの吐出、Xヘッド41Xからの吐出、・・・というように交互に液体の吐出が行われる。
【0051】
そして、最後の層の粉体Pに液体の吐出が行われた後、図6Eに示すように、形成された造形物Tが造形ボックス21から取り出される。
【0052】
図7Aは、本実施形態と比較の対象とされる方法で形成された造形物を収容した造形ボックス21を示す平面図である。この例は、Y軸方向に沿って移動可能な1つのライン型のヘッドを用いて、人の顎骨(歯を含む)を造形対象物として造形物T’を形成したものである。図7Aに示すように、ヘッド141内でX軸方向に配列された複数のノズルnXのうち少なくとも1つのノズルnX’に目詰まり等の吐出欠陥が生じた場合、そのノズルnX’が通るライン上には液体が適切に吐出されない。そうすると、造形物T’を割れやすくさせる、等方的にY軸方向に集中した境界領域である欠陥領域Dが形成される。造形物T’にこのような欠陥領域Dが形成されると、図7Bに示すように、形成された造形物T’に筋状の裂け目による欠陥Ta’が発生する。
【0053】
また、吐出欠陥が生じていなくても、例えば各ノズルnXの吐出量にばらつきがある場合、図7Aにおいて、X軸方向に造形物T’が割れやすい、Y軸方向には割れにくい、などといった問題も発生する。
【0054】
これに対して本実施形態に係る3次元造形装置100によれば、Xヘッド41X及びYヘッド41Yが互いに直交する方向に沿って移動しながら、粉体Pの1層ごとに交互に液体を吐出する。したがって、仮にXヘッド41X及び/またはYヘッド41Yにおける複数のノズルnX及びnYうちのうち少なくとも1つに吐出欠陥が発生していても、あるいはそれらのノズルnX及びnYからの吐出量にばらつきがあったとしても、その欠陥領域Dやそのばらつきは異方的となる。すなわち、図7で示したような、粉体Pの積層方向(Z軸方向)で同じ位置に連続して欠陥領域Dが形成されることを抑制できる。これにより、割れやすい方向での造形物Tの損壊を防止することができる。
【0055】
また、本実施形態では、Xヘッド41X及びYヘッド41Yが直交するように移動するので、それらが例えば直交でない場合に比べ、それらヘッド41X及び41Yや移動機構40X及び40Yの構造を単純化することができる。
【0056】
本実施形態では、Xヘッド41X及びYヘッド41Yが1層ごとに交互に用いられるのではなく、複数層ごとに交互に用いられてもよい。
【0057】
[第2の実施形態]
【0058】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す斜視図である。図9は、図8に示す3次元造形装置200であって、トッププレート28及びプリントベースプレート24を外した状態の3次元造形装置200を示す斜視図である。これ以降の説明では、上記第1の実施形態に係る3次元造形装置200が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0059】
本実施形態に係る3次元造形装置200は、2つの供給ユニット10X及び10Yを備えている。これらの供給ユニット10X及び10Yの基本的な構造及び機能は、第1の実施形態に係る供給ユニット10とそれぞれ同様である。本実施形態では、Y供給ユニット10Yに、X供給ユニット10Xが新たに加えられている。図9に示すように、X供給ユニット10Xは、造形ユニット20とX軸方向で並ぶように設けられている。
【0060】
X供給ユニット10Xは、回転しながらX軸方向へ移動可能なX供給ローラ13Xを有する。各供給ユニット10には、それぞれ異なる粉体が供給される。異なる粉体とは、例えば形状、大きさ、または材料等の違い、あるいは、磁性、硬度等の特性の違いにより分けられる。
【0061】
本実施形態の場合は、典型的には、X供給ユニット10Xにより供給された粉体には、Xヘッド41Xにより液体が供給され、Y供給ユニット10Yにより供給された粉体には、Yヘッド41Yにより液体が供給される。あるいは、X供給ユニット10Xにより供給された粉体には、Yヘッド41Yにより液体が供給され、Y供給ユニット10Yにより供給された粉体には、Xヘッド41Xにより液体が供給されてもよい。
【0062】
また、本実施形態でも上記第1の実施形態と同様に、1層ごとに、または複数層ごとに、交互にXヘッド41X及びYヘッド41Yを用いて液体が吐出される。
【0063】
以上のように、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、等方的にかつ層方向で連続して欠陥領域Dが形成されることを抑制できる。また、異なる2種類の粉体により造形物が形成されることにより、1つの造形物に、異なる材料や特性を含む領域を含ませることができる。
【0064】
本実施形態の場合、Xヘッド41X及びYヘッド41Yから異なる液体が吐出されてもよい。その場合、例えば2つの供給ユニット10X及び10Yのうち1つの供給ユニットからは、PVP等のバインダを含む第1の粉体が造形ボックス21に供給され、他の1つの供給ユニットからは、石膏等の第2の粉体(バインダを含まない粉体)が造形ボックス21に供給されてもよい。そして、2つのヘッド41X及び41Yのうち、1つのヘッドが水溶性インク等のバインダを含まない液体を第1の粉体に吐出し、他の1つのヘッドが、バインダを含む第2の液体を第2の粉体に吐出してもよい。
【0065】
本実施形態では、X供給ユニット10X及びY供給ユニット10Yから同じ粉体が供給されてもよい。この場合、2つの供給ボックス11X及び11Yにそれぞれ収容される粉体量を、1つの供給ボックス11の場合に比べ半分とすることができるので、2つの供給ボックス11X及び11Yの各厚さもその半分とすることができる。これにより、3次元造形装置200の薄型化を実現することができる。
【0066】
[第3の実施形態]
【0067】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【0068】
本実施形態に係る造形ボックス121は、例えば6角形の外形を有する。この造形ボックス121の周囲の3辺に沿った位置、例えばZ軸を中心とした回転角度で互いに120°離れた位置に、液体を吐出するヘッド44、45及び46がそれぞれ配置されている。これらのヘッド44、45及び46は、図示しない移動機構により、互いに120°ずつ異なる角度でX−Y平面に沿ってそれぞれ移動可能となっている。
【0069】
このように、ヘッドの数が増えるほど、移動機構は複雑になるが、より異方性の高い造形物を形成することができる。
【0070】
なお、造形ボックス21は、6角形に限られず、上記のように4角形でもよいし、3角形や円形でもよい。
【0071】
[第4の実施形態]
【0072】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る3次元造形装置の主要部を示す図であり、造形ボックス及びヘッドを示す平面図である。
【0073】
本実施形態に係る3次元造形装置は、液体を吐出する1つのヘッド47を有し、ヘッド47をZ軸周りに回転させる回転機構を備えている。例えば、回転機構の回転軸a1は、ノズル47の一端部付近に設けられている。また、このヘッド47は、図示しないX−Y移動機構によりX軸及びY軸方向に沿って移動可能とされている。X−Y移動機構としては、例えば公知のXYステージの機構が用いられればよい。
【0074】
このような構成された3次元造形装置では、1層ごと、または複数層ごとに、ヘッド47の回転角度が90°ずつ変えられ、それぞれX軸方向及びY軸方向に交互に移動しながら、造形ボックス21内の粉体に液体が吐出される。
【0075】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0076】
上記各実施形態では、粉体の同じ層数ごとにヘッドが交互に液体を吐出した。しかし、異なる層数ごとに、あるいはランダムの層数で、それらヘッドが交互に液体を吐出してもよい。異なる層数ごととは、例えば1つのヘッドが第1の層数(例えば1層)ごと、他の1つのヘッドは第1の層数とは異なる第2の層数(例えば2、3層)ごとに液体を吐出するパターンなどである。
【0077】
あるいは、粉体の1層に対して、1つのヘッドが液体を吐出した後、その同じ粉体の層に対して別のヘッドが液体を吐出するようにしてもよい。
【0078】
上記第1及び3の実施形態では、複数のヘッドが同じ液体を吐出する形態を示した。しかし、それらのヘッドのうち少なくとも2つは異なる液体を吐出してもよい。例えば液体がカラーインクであれば、異なる組成、つまり異なる色のインクが吐出されてもよい。
【0079】
上記各実施形態に係る3次元造形装置は、1つのヘッドが一方向に移動するライン型のヘッドを備えていた。しかし、複数のヘッドのうち少なくとも1つのヘッドが、ライン型ヘッドではなく、複数のノズルを有し、造形ボックス21内の造形幅より狭い長さを有する短ヘッドであってもよい。この場合、この短ヘッドを、そのノズルの配列方向と直交する方向に移動させながら、粉体上の局所的な1ライン分に液体を吐出後、ノズルの配列方向にヘッドを移動させ、粉体上の次の局所的な1ライン分に液体を吐出させる。この場合、1つのヘッドごとに、そのヘッドを移動させる2軸の移動機構が設けられる。
【0080】
ライン型のヘッドを1つのみ用いる場合に、粉体1層または複数層ごとに、そのノズルの配列方向に所定の距離(例えば複数のノズル数分)だけヘッドの位置をずらして、用いるようにしてもよい。これにより、粉体の積層方向に沿って連続した多数の欠陥領域Dが発生することを避けることができる。
【0081】
形成された造形物を加熱処理するヒータが上述した各3次元造形装置に設けられていてもよい。
【0082】
複数のヘッドを洗浄するクリーニング機構が上述した各3次元造形装置に設けられていてもよい。この場合、第1のヘッドにより液体が吐出されている間に、第2のヘッドがそのクリーニング機構により洗浄されることにより、時間効率を向上させることができる。クリーニング機構としては、ブラシやワイパーによる機械的なクリーニング、洗浄液による化学的なクリーニング等、あるいは、これらの組合せ等がある。
【0083】
上記実施形態では、複数のヘッドを移動させる移動機構が設けられていた。しかし、複数のヘッドは固定で、造形ボックス(造形ステージ)を移動させる移動機構が上記各3次元造形装置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
P…粉体材料(粉体)
nX、nY…ノズル
T…造形物
10…供給ユニット
10X…X供給ユニット
10Y…Y供給ユニット
20…造形ユニット
22…造形ステージ
40X…X軸移動機構
40Y…Y軸移動機構
41X…Xヘッド
41Y…Yヘッド
44〜47、141…ヘッド
100、200…3次元造形装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体材料が積層するように堆積されるステージと、
前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する供給機構と、
造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルをそれぞれ有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能な複数のヘッドと、
前記複数のヘッドを異なる方向で、前記ステージに相対的にそれぞれ移動させる移動機構と
を具備する3次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記移動機構は、前記複数のヘッドである2つのヘッドの移動方向が直交するように、前記2つのヘッドを移動させる
3次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の3次元造形装置であって、
前記移動機構は、前記供給機構により1層の前記粉体材料が供給されるごとに、前記複数のヘッドを交互に移動させる
3次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の3次元造形装置であって、
前記移動機構は、前記供給機構により連続する第1の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち第1のヘッドを移動させ、前記供給機構により連続する第2の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち前記第1のヘッドとは異なる第2のヘッドを移動させる
3次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の3次元造形装置であって、
前記第1の層数と前記第2の層数とが異なる
3次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、前記複数のヘッドにそれぞれ対応する複数の異なる粉体材料を前記ステージに供給する
3次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記複数のヘッドは、異なる液体をそれぞれ吐出する
3次元造形装置。
【請求項8】
粉体材料が積層するように堆積されるステージと、
前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する供給機構と、
造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルを有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能なヘッドと、
前記供給機構により供給される異なる層の前記粉体材料に前記液体をそれぞれ吐出する時に、前記ヘッドをそれぞれ異なる方向で、前記ステージに相対的に移動させる移動機構と
を具備する3次元造形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の3次元造形装置であって、
前記粉体材料の積層方向に沿った軸の周りに、前記ヘッドを回転させる回転機構をさらに具備する3次元造形装置。
【請求項10】
1層分の前記粉体材料をステージ上に供給し、
前記第1のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記ヘッドから、造形物を形成するための液体を吐出させ、
前記第1のヘッドからの液体の吐出後、1層分の前記粉体材料を前記ステージ上に供給し、
第2のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向とは異なる第2の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第2のヘッドから造形物を形成するための液体を吐出させる
3次元造形方法。
【請求項11】
1層分の前記粉体材料をステージ上に供給し、
第1のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第1のヘッドから、造形物を形成するための液体を吐出させ、
前記第1のヘッドからの液体の吐出後、1層分の前記粉体材料を前記ステージ上に供給し、
第2のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向とは異なる第2の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第2のヘッドから造形物を形成するための液体を吐出させる
3次元造形方法により形成された造形物。
【請求項1】
粉体材料が積層するように堆積されるステージと、
前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する供給機構と、
造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルをそれぞれ有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能な複数のヘッドと、
前記複数のヘッドを異なる方向で、前記ステージに相対的にそれぞれ移動させる移動機構と
を具備する3次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記移動機構は、前記複数のヘッドである2つのヘッドの移動方向が直交するように、前記2つのヘッドを移動させる
3次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の3次元造形装置であって、
前記移動機構は、前記供給機構により1層の前記粉体材料が供給されるごとに、前記複数のヘッドを交互に移動させる
3次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の3次元造形装置であって、
前記移動機構は、前記供給機構により連続する第1の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち第1のヘッドを移動させ、前記供給機構により連続する第2の層数の前記粉体材料が供給される時に、前記複数のヘッドのうち前記第1のヘッドとは異なる第2のヘッドを移動させる
3次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の3次元造形装置であって、
前記第1の層数と前記第2の層数とが異なる
3次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、前記複数のヘッドにそれぞれ対応する複数の異なる粉体材料を前記ステージに供給する
3次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記複数のヘッドは、異なる液体をそれぞれ吐出する
3次元造形装置。
【請求項8】
粉体材料が積層するように堆積されるステージと、
前記ステージ上に1層ごとに前記粉体材料を供給する供給機構と、
造形物を形成するための液体を吐出する複数のノズルを有し、前記供給機構により前記ステージ上に供給された前記粉体材料に前記液体を吐出可能なヘッドと、
前記供給機構により供給される異なる層の前記粉体材料に前記液体をそれぞれ吐出する時に、前記ヘッドをそれぞれ異なる方向で、前記ステージに相対的に移動させる移動機構と
を具備する3次元造形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の3次元造形装置であって、
前記粉体材料の積層方向に沿った軸の周りに、前記ヘッドを回転させる回転機構をさらに具備する3次元造形装置。
【請求項10】
1層分の前記粉体材料をステージ上に供給し、
前記第1のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記ヘッドから、造形物を形成するための液体を吐出させ、
前記第1のヘッドからの液体の吐出後、1層分の前記粉体材料を前記ステージ上に供給し、
第2のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向とは異なる第2の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第2のヘッドから造形物を形成するための液体を吐出させる
3次元造形方法。
【請求項11】
1層分の前記粉体材料をステージ上に供給し、
第1のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第1のヘッドから、造形物を形成するための液体を吐出させ、
前記第1のヘッドからの液体の吐出後、1層分の前記粉体材料を前記ステージ上に供給し、
第2のヘッドを前記ステージと相対的に第1の方向とは異なる第2の方向に移動させながら、前記ステージ上に供給された前記粉体材料に、前記第2のヘッドから造形物を形成するための液体を吐出させる
3次元造形方法により形成された造形物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−131094(P2012−131094A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284440(P2010−284440)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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