説明

3次元造形装置、3次元造形物の製造方法及び3次元造形物

【課題】造形材料供給機構の移動による振動に影響されることなく、均一な厚さの造形材料層を形成することができる3次元造形装置及びそれを用いて得られた造形物を提供する。
【解決手段】3次元造形装置100は、ステージ22と、移動機構26と、第1供給機構10a及び第2供給機構10bと、ヘッド32とを具備する。ステージ22には、造形材料が堆積される。移動機構26は、ステージ22を所定方向に移動させる。第1供給機構10a及び第2供給機構10bは、移動機構26によって移動するステージ22上に造形材料を供給し、所定方向に沿って配置される。ヘッド32は、第1供給機構10a及び第2供給機構10bの少なくとも一方の供給機構から供給される造形材料を硬化させることが可能な液剤を、ステージ22上の造形材料に吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面画像データの積層により3次元形状を形成する3次元造形装置、3次元造形物の製造方法及び3次元造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の3次元造形装置は、ラピッドプロトタイピングと呼ばれる装置として知られており、業務用として広く使われている。3次元造形装置の主な方式として、光造形方式、シート積層造形方式、そして、粉体造形方式がある。
【0003】
光造形方式は、光硬化型の樹脂に高出力レーザを照射して、断面形状を形成し、その積層によって3次元形状を造るものである。シート積層造形方式は、薄厚シートを層状に切り抜き、接着して積層して、3次元形状を造るものである。粉体造形方式は、粉体材料を層状に敷き詰めて、断面形状を作り、それを積層して3次元形状を造るものである。
【0004】
粉体造形方式は、更に、粉体を溶融または焼結するものと、接着剤を使って粉体を固化させるものに大分される。後者は、石膏を主成分とする粉末に、印刷機等に用いられるインクジェットのヘッドを用いて、接着剤を吐出して固化させ、断面層を形成し、それを積層することによって3次元形状を造るものである。
【0005】
インクジェットヘッドを利用した粉体造形方式では、インクジェットプリンタのヘッドが、石膏の粉体が敷き詰められたシート上であたかも印刷をするように移動しながら、粉体を結合させる結合剤溶液を吐出する。
【0006】
このような粉体造形方式を採用した装置が開示されている。特許文献1では、その図1に示されるように、2つの粉末供給機構(22a、22b)が設けられ、この粉末供給機構を移動させて粉末供給機構から連続的に造形ステージ(50)上に粉末材料を供給して粉末層を形成する(例えば、特許文献1の段落[0020]〜[0028]、図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−334581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の装置においては、粉末供給機構を移動させるので、移動による振動で粉末が供給機構内で動き、粉末を供給する際に筋むらなどの不具合が発生しやすい。また、造形がすすむと、粉末供給機構内の粉末量が減ってくるので、移動に伴って内部の粉末が動きやすくなり、偏りが発生して、粉末の供給が更に不安定となる。このため、造形ステージ上に面内で均一な厚さで粉末層を形成することができないという問題がある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、造形材料の供給機構の移動による振動に影響されることなく、均一な厚さの造形材料層を形成することができる3次元造形装置、3次元造形物の製造方法及び3次元造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る3次元造形装置は、ステージと、移動機構と、第1供給機構及び第2供給機構と、ヘッドとを具備する。
上記ステージには、造形材料が堆積される。
上記移動機構は、上記ステージを所定方向に移動させる。
上記第1供給機構及び第2供給機構は、上記移動機構によって移動する上記ステージ上に上記造形材料を供給し、上記所定方向に沿って配置される。
上記ヘッドは、上記第1供給機構及び上記第2供給機構の少なくとも一方の供給機構から供給される上記造形材料を硬化させることが可能な液剤を、上記ステージ上の上記造形材料に吐出する。
【0011】
本発明では、ステージが移動機構により移動するので、第1供給機構及び第2供給機構が、ステージの移動方向に平行な方向で移動しなくても、造形材料の供給を行うことができる。従って、第1供給機構及び第2供給機構を固定することができ、第1供給機構及び第2供給機構の移動による振動がないため、第1供給機構及び第2供給機構からの造形材料の供給を、供給量一定の状態で安定して行うことができ、面内均一の厚さで造形材料をステージ上に堆積することができる。また、ステージの移動方向に沿って2つの第1供給機構及び第2供給機構を設けているので、1回のステージの往復移動で、第1供給機構から供給された造形材料からなる堆積層と第2供給機構から供給された造形材料からなる堆積層の計2層を形成することができる。従って、1つの供給機構を設けた3次元造形装置と比較して、造形時間を短縮することができる。
【0012】
上記ヘッドは、上記液剤を、上記移動機構によって移動する上記ステージ上の上記造形材料に吐出してもよい。
【0013】
ステージが移動機構により移動するので、ヘッドを、ステージの移動方向に平行な方向で移動しなくても、液剤の吐出を行うことができる。従って、ヘッドを固定することができ、ヘッドの移動による振動がないため、ステージ上の造形材料への溶材の吐出を、吐出量一定の状態で安定して行うことができ、面内均一の厚さで液剤を吐出することができる。
【0014】
上記ヘッドは上記所定方向に沿って上記第1供給機構と上記第2供給機構との間に配置されていてもよい。
【0015】
これにより、1つのヘッドから、第1供給機構から供給された造形材料及び第2供給機構から供給された造形材料それぞれへの液剤吐出が可能となる。
【0016】
第1供給機構及び第2供給機構の少なくとも一方は、供給ボックスと、堆積面と、落下機構とを有していて良い。
上記供給ボックスは、上記造形材料を貯留することが可能であり、上記ステージの移動経路上にある上記ステージの上方側に配置される。
上記堆積面は、上記第1供給ボックス内で傾斜するように配置され、上記造形材料が堆積される。
上記落下機構は、上記ステージが移動しているときに、上記堆積面に堆積された上記造形材料を、上記造形材料の自重を利用して上記ステージ上に落下させる。
【0017】
ステージが移動機構により移動しているときに、堆積面から造形材料が少なくともその自重を利用してステージ上に供給されるので、造形材料をステージ上に1層分積層させるための移動を、供給機構に行わせなくてもよい。つまり、供給機構は3次元造形装置に固定とすることができ、移動系の構造がシンプルとなる。
【0018】
上記第1供給機構により供給される造形材料と上記第2供給機構により供給される造形材料とは同じ材料であってもよい。
【0019】
上記第1供給機構により供給される造形材料と上記第2供給機構により供給される造形材料とは異なる材料であってもよい。
【0020】
上記第1供給機構により供給される造形材料と上記第2供給機構により供給される造形材料は粉体であってもよい。
【0021】
上記ステージは複数設けられていても良い。
【0022】
これにより、1つの3次元造形装置で同時に複数の造形物を形成することができる。
【0023】
本発明に係る3次元造形物の製造方法では、所定方向にステージが移動させられる。
前記ステージを移動させている間に、前記所定方向に沿って配置された第1供給機構及び第2供給機構により、前記ステージ上に造形材料が供給される。
前記第1供給機構及び前記第2供給機構の少なくとも一方の供給機構から供給される前記造形材料を硬化させることが可能な液剤が、前記ステージ上の前記造形材料に吐出される。
また、本発明に係る3次元造形物は、上記製造方法により得られるものである。
【発明の効果】
【0024】
以上、本発明によれば、造形材料供給機構の移動による振動に影響されることなく、ステージ上に均一な厚さの造形材料層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置のを示す斜視図である。
【図2】図1の3次元造形装置の側面から見た斜視図である。
【図3】図1におけるY方向に平行な面で3次元造形装置のほぼ中央を切断したときの、3次元造形装置の内部構造を示す斜視図である。
【図4】図3を正面から見た図(断面図)である。
【図5】図1においてすべてのカバーが取り外された状態の3次元造形装置を示す斜視図である。
【図6】図5に示す3次元造形装置の平面図である。
【図7】図5に示す3次元造形装置からプリントベースプレートが取り外された3次元造形装置を示す斜視図である。
【図8】主に3次元造形装置の制御系を示すブロック図である。
【図9】第1実施形態に係る3次元造形装置の動作を順に示す断面図(その1)である。
【図10】図9に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その2)である。
【図11】図10に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その3)である。
【図12】図11に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その4)である。
【図13】図12に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その5)である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置におけるY方向に平行な面で3次元造形装置のほぼ中央を切断したときの、3次元造形装置の内部構造を示す斜視図である。
【図15】図14を正面から見た図(断面図)である。
【図16】第2実施形態に係る3次元造形装置の動作を順に示す断面図(その1)である。
【図17】図16に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その2)である。
【図18】図17に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その3)である。
【図19】図18に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その4)である。
【図20】図19に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その5)である。
【図21】図20に示す動作に続く動作を順に示す断面図(その6)である。
【図22】他の実施形態に係る3次元造形装置の概略図である。
【図23】更に他の実施形態に係る3次元造形装置の概略図である。
【図24】更に他の実施形態に係る3次元造形装置の概略図である。
【図25】更に他の実施形態に係る3次元造形装置の概略図である。
【図26】更に他の実施形態に係る3次元造形装置の概略図である。
【図27】更に他の実施形態に係る3次元造形装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
(3次元造形装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す図である。
【0028】
3次元造形装置100は、いくつかのカバーで構成されるほぼ直方体形状でなる筐体を備えている。筐体の上部はトップカバー1、トップカバー1を両側から挟むように右カバー15及び左カバー16により構成される。また、正面カバー4、中央カバー17、両側面カバー5及び図1では現れない背面カバーが設けられている。トップカバー1には取っ手1aが取り付けられ、トップカバー1を右カバー2及び左カバー3に対して取り外しが可能となっている。
【0029】
図2(A)及び(B)は、3次元造形装置100の側面から見た斜視図である。図1及び図2に示すように、双方の側面カバー5には、形成された造形物を取り出すための取り出し口5aが設けられ、取り出しカバー6がこの取り出し口5aに開閉可能に設けられている。
【0030】
図3は、例えば図1におけるY方向に平行な面で3次元造形装置100のほぼ中央を切断したときの、3次元造形装置100の内部構造を示す斜視図である。図4は、図3を正面から見た図(断面図)である。図5は、図1においてすべてのカバーが取り外された状態の3次元造形装置100を示す斜視図である。
【0031】
図5に示すように、3次元造形装置100は、例えば4角にそれぞれ設けられた4つの支柱28を備え、これらの支柱28に、順に所定の間隔をおいてZ軸方向に配置され接続された、ベースプレート9、プリントベースプレート8及びトッププレート7を備えている。これら3つのプレートの間には、複数の柱部材29が適宜設けられている。
【0032】
図6は、図5に示す3次元造形装置100の平面図である。図7は、図5に示す3次元造形装置100からプリントベースプレート8が取り外された3次元造形装置100を示す斜視図である。図4〜図7に示すように、プリントベースプレート8上には、第1ヒータ40a、第1供給機構としての第1供給ユニット10a、ヘッドユニット30、第2供給機構としての第2供給ユニット10b及び第2ヒータ40bが、3次元造形装置100の長手方向であるY方向に沿って順に配置されている。第1供給ユニット10a(第2供給ユニット10b)は、造形材料としての粉体材料(以下、単に粉体という。)を第1造形ユニット11a(第2造形ユニット11b)の第2造形箱12a(第2造形箱12b)に供給する。
【0033】
粉体としては、水溶性の材料が用いられ、例えば、食塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの無機物が用いられる。塩化ナトリウムとにがり成分(硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなど)が混合されたものが用いられてもよい。すなわち、これは塩化ナトリウムを主成分とするものである。あるいは、上記無機物を主成分とした、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸アンモニウム、メタアクリル酸ナトリウムや、その共重合体などの有機物を用いることもできる。ポリビニルピロリドン等は、水分が加えられ、加熱されることにより、良好な接着性を示す。粉体の平均粒子径は、典型的には10μm以上100μm以下である。食塩が用いられることにより、例えば金属またはプラスチック等の粉体材料を用いる場合に比べ、粉体材料の抽出や加工等に要するエネルギーが低いので環境に良い。また、食塩や上記ポリビニルピロリドン等の食用の材料が用いられることにより、この材料が廃棄されても環境に悪影響を及ぼさない。
【0034】
トッププレート7には、作業者または作業用ロボットが各第1供給ユニット10a、第2供給ユニット10bに粉体を供給するための材料の開口7a、7bが設けられている。また、トッププレート7には、その開口7a、7bに隣接し、開口7aと開口7bとの間に、例えば作業者が、ヘッドユニット30における後述するインクタンクユニット33を出し入れするための出し入れ口7cが設けられている。
【0035】
図6に示すように、プリントベースプレート8の、各第1供給ユニット10a、第2供給ユニット10bの下部に四角の穴8a、8bが形成されている。この穴8aの形状や大きさは適宜設計することができる。例えば、後述するように粉体が第1造形箱21a内、第2造形箱21b内に落下することが可能であれば、穴8a、8bの形状は、Y方向に直交するX方向に長いスリット状であってもよい。
【0036】
図4に示すように、プリントベースプレート8の、各第1ヒータ40a、第2ヒータ40bの下方側には、形成された造形物が取り出される取り出し口8cが設けられている。
【0037】
プリントベースプレート8の下部には、粉体による造形物が形成される造形ユニット20が配置されている。造形ユニット20は、第1供給ユニット10a、第2供給ユニット10bから供給された粉体を貯留する造形箱21、この造形箱21内に配置された、粉体が堆積される造形ステージ22を有する。また、造形ユニット20は、これら造形箱21及び造形ステージ22を支持し、造形箱21内で造形ステージ22を昇降させる昇降ユニット(昇降機構)23を有する。
【0038】
第1供給ユニット10a(第2供給ユニット10b)は、粉体を貯留することが可能な第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)、第1供給ボックス11a内で傾斜して配置された第1堆積板12a(第2堆積板12b)、この第1堆積板12a(第2堆積板12b)の下端部に配置された落下機構としての第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)を有する。第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)の上部は、トッププレート7の開口7a(開口7b)に面した開口部を有し、第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)は、例えば立方体に近い形状を有している。第1堆積板12aは、例えば水平面(X−Y平面)から40〜50度程度に傾斜し、かつ、粉体が堆積される面となる堆積面(上面)が、ヘッドユニット30側に向くように、つまりY方向の正の方向に向くように配置されている。第2堆積板12bは、例えば水平面(X−Y平面)から40〜50度程度に傾斜し、かつ、粉体が堆積される面となる堆積面(上面)が、ヘッドユニット30側に向くように、つまりY方向の負の方向に向くように配置されている。粉体は、第1堆積板12a(第2堆積板12b)に堆積されることで、第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)内の三角柱状の領域に貯留される。
【0039】
第1堆積板12a(第2堆積板12b)の傾きは、40〜50度に限られず、後述するように、粉体が堆積面に摩擦により貼りつかずに造形ユニット20の造形箱21に流れ落ちるような角度に設定されていればよい。すなわち、第1堆積板12a、第2堆積板12bの傾きは、粉体の材料の種類、その形状、あるいは堆積面の材質等により適宜設定可能である。
【0040】
第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)は、X方向に沿った回転軸を有し、少なくとも造形箱21内のX方向で造形物が形成される範囲で、そのX方向に長い形状となっている。ヘッドユニット30側の第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)の側壁は、その側壁の下端が第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)の表面上に所定の隙間をあけて位置するように配置されている。第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)が回転すると、第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)内に貯留された粉体がこの所定の隙間を介して、上記造形箱21に供給される。また、この隙間は、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)が回転しないで静止した状態では、第1堆積板12a(第2堆積板12b)上の粉体が造形箱21内に落ちない程度のわずかな隙間とされる。
【0041】
第1供給ユニット10a(第2供給ユニット10b)は、第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)及びヘッドユニット30の間であって、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)にY方向で並ぶように配置された第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)を備えている。第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)は、回転することで、造形ステージ22に貯留された粉体の表面を平面状にならす。これら第1供給ボックス11a(第2供給ボックス11b)、第1堆積板12a(第2堆積板12b)、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)、第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)等は供給機構として機能する。第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)も第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)と同様に、少なくとも造形箱21内のX方向で造形物が形成される範囲で、そのX方向に長い形状となっている。このように、本実施形態の3次元造形装置100は、2つの供給機構を備えている。
【0042】
ベースプレート9上には、図3に示すように、造形ユニット20をY方向に移動させる移動機構26が設けられている。造形箱21の、ヘッドユニット30側とは反対側には、余剰の粉体を回収する回収ボックスが配置され、回収ボックスは昇降ユニット23上または造形箱21の下部に取り付けられている。
【0043】
昇降ユニット23は、例えば図示しない、ラックアンドピニオン、ベルト駆動機構、電磁気的な作用により駆動するリニアモータ等により構成される。昇降ユニット23の代わりに、例えば流体圧を利用する昇降シリンダが用いられてもよい。
【0044】
図3及び図4に示すように、移動機構26は、ベースプレート9上にY方向に延設されたガイドレール25、このガイドレール25に沿って昇降ユニット23をY方向に移動させるための駆動機構を有する。駆動機構は、移動モータ、この移動モータにより駆動されるピニオンギア、このピニオンギアと噛み合うラックギア等を備える。移動モータは、造形ユニット20の例えば昇降ユニット23に取り付けられている。駆動機構は、ラックアンドピニオンに限られず、ボールネジ、ベルト駆動、または、電磁的に作用により駆動されるリニアモータ等の各種の機構を用いることができる。このような移動機構26により、造形箱21、造形ステージ22、昇降ユニット23及び回収ボックスが一体的にY方向に移動する。
【0045】
移動機構26による造形ユニット20のY方向の移動経路上であって、その移動経路上にある造形ユニット20の上方側に、第1ヒータ40a、第1供給ユニット10a、ヘッドユニット30、第2供給ユニット10b、第2ヒータ40bが配置される。
【0046】
造形箱21は、第1供給ボックス11a及び第2供給ボックス11bと実質的に同じフットプリントの大きさを有している。図6に示すように、プリントベースプレート8の、第1ならしローラ14a及び第2ならしローラ14bそれぞれが配置される位置には、第1ならしローラ14a及び第2ならしローラ14bそれぞれの表面の一部を、プリントベースプレート8から下方に露出させるための露出穴が設けられている。
【0047】
図5及び図6に示すように、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)及び第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)を駆動する駆動源として、第1回転モータ38a(第2回転モータ38b)がプリントベースプレート8上に設けられている。第1回転モータ38a(第2回転モータ38b)の駆動出力軸には伝達ギアが接続され、この伝達ギアに、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)の回転軸及び第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)の回転軸にそれぞれ接続された2つのギアが所定のギア比で噛み合っている。伝達ギアによる、ギア及びに対するそれぞれのギア比は同じでもよいし異なっていてもよい。第1回転モータ38a(第2回転モータ38b)の駆動により伝達ギアが回転し、その回転力が2つのギアに伝達され、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)及び第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)が同じ方向に回転する。このように、1つの駆動源により第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)及び第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)が駆動されるので、3次元造形装置100の小型化を実現することができる。また、コストも削減することができる。
【0048】
図3に示すように、ヘッドユニット30は、複数のインクタンク31を搭載したインクタンクユニット33、インクタンク31に図示しないチューブを介して接続されたインクジェットヘッド32を有する。インクジェットヘッド32は、インクタンク31に貯留されたインクを造形ステージ22上の粉体に吐出する。図6等に示すように、インクジェットヘッド32はプリントベースプレート8に設置された支持台37に固定され、インクタンクユニット33はその支持台37上に設置される。
【0049】
インクジェットヘッド32は、例えば図7に示すようにX方向に長いライン型ヘッドが用いられる。そのX方向のインクの吐出幅は、少なくとも造形ステージ22上のX方向で造形物が形成される範囲で設計される。インクジェットの発生機構としては、ピエゾ型やサーマル型が挙げられ、公知の吐出原理が用いられればよい。
【0050】
インク(液剤)としては、例えばシアン、マゼンダ及びイエローの各色(以下CMY)のカラーインクが用いられてもよいし、これらのカラーインクに加えて、黒、白、無色等のインクが用いられてもよい。特に、黒、白または無色のインクタンク31は、粉体自体の色に応じて適宜設置されればよい。本実施形態では、例えばインク中の水分により粉体が硬化するような、インク及び粉体の各材料が選定される。粉体が白である場合であって、造形物に白色を着色したい(白色を残したい)場合には、その残したい箇所に、無色のインクか、または白色のインクが吐出される。
【0051】
また、インクの材料としては、例えば水性インクが用いられ、市販のインクジェットプリンタ用のインクを用いることも可能である。インクは、粉体の材料に応じて油性であってもよい。無色インクには、例えば、純水とエチルアルコールを重量比で1対1で混合したもの、純水にグリセリンを重量比5%〜20%程度混合したもの、これらの混合物にさらに微量の界面活性剤を混合したものが用いられる。
【0052】
あるいは、インクの材料として、色付けを主目的とするものに限られず、例えば粉体粒子同士を結合するための結合剤を含む薬液であってもよい。
【0053】
第1ヒータ40a(第2ヒータ40b)は、例えば第1赤外線ランプ41a(第2赤外線ランプ41b)及び第1リフレクタ42a(第2リフレクタ42b)を備える。第1赤外線ランプ41a(第2赤外線ランプ41b)による加熱に限られず、電熱線、または後述する赤外線レーザであってもよい。
【0054】
(制御系)
図8は、主に上述した3次元造形装置100の制御系を示すブロック図である。
【0055】
この制御系は、ホストコンピュータ51、メモリ52、画像処理コンピュータ90、造形箱移動モータコントローラ54、造形ステージコントローラ53、第1ローラ回転モータコントローラ55a、第2ローラ回転モータコントローラ55b、プリントヘッドコントローラ58、第1ヒータコントローラ57a、第2ヒータコントローラ57bを備える。
【0056】
ホストコンピュータ51は、上記メモリ52及び各種コントローラの駆動を統括的に制御する。メモリ52は、ホストコンピュータ51に接続され、揮発性または不揮発性のどちらでもよい。
【0057】
画像処理コンピュータ90は、後述するように造形の対象物体の断層化画像として、例えばCT(Computed Tomography)の画像データ59を取り込む。このCT画像データ59についてBMP(ビットマップ)形式またはその他の形式に変換する等の画像処理を実行する。画像処理コンピュータ90は、典型的には3次元造形装置100とは別体のコンピュータであり、ホストコンピュータ51に例えばUSB(Universal Serial Bus)により接続され、記憶された画像処理後の画像データをホストコンピュータ51に送信する。
【0058】
CTとは、X線を用いたCTに限られず、SPECT(Single Photon Emission CT)、PET(Positron Emission Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等を含む広義のCTを意味する。
【0059】
ホストコンピュータ51と画像処理コンピュータ90の接続形態は、USBに限られず、SCSI(Small Computer System Interface)、その他の形態でもよい。また、有線及び無線のどちらでもよい。なお、画像処理コンピュータ90は、3次元造形装置100内に搭載された画像処理用のデバイスであってもよい。また、画像処理コンピュータ90が3次元造形装置100と別体の装置である場合、画像処理コンピュータ90は、CT装置であってもよい。
【0060】
造形ステージコントローラ53は、インクジェットヘッド32による粉体200へのインク印刷時に、後述するように造形ステージ22を所定の高さ単位で下降させていくために、昇降ユニットの昇降駆動量を制御する。
【0061】
造形箱移動モータコントローラ54は、移動機構26の移動モータ38の駆動を制御することにより、造形ユニット20の移動の開始、停止及び移動速度等を制御する。
【0062】
第1ローラ回転モータコントローラ55a(第2ローラ回転モータコントローラ55b)は、第1回転モータ38a(第2回転モータ38b)の駆動を制御することにより、第1供給ローラ13a(第2供給ローラ13b)及び第1ならしローラ14a(第2ならしローラ14b)の回転の開始、停止及び回転速度等を制御する。
【0063】
プリントヘッドコントローラ58は、インクの吐出量を制御するために、インクジェットヘッド32内のインクジェットの発生機構に駆動信号を出力する。
【0064】
第1ヒータコントローラ57a(第2ヒータコントローラ57b)は、第1ヒータ40a(第2ヒータ40b)による加熱の開始、停止、加熱温度及び加熱時間等を制御する。
【0065】
上記ホストコンピュータ51、画像処理コンピュータ90、造形ステージコントローラ53、第1ローラ回転モータコントローラ55a、第2ローラ回転モータコントローラ55b、造形箱移動モータコントローラ54、第1ヒータコントローラ57a、第2ヒータコントローラ57bは、例えば次のようなハードウェア、または、そのハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されればよい。そのハードウェアは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、あるいはこれらに類するものが用いられる。
【0066】
メモリ52は、固体(半導体、誘電体または磁気抵抗)メモリのほか、磁気ディスク、光ディスク等の記憶デバイスでもよい。
【0067】
(3次元造形装置100の動作)
以上のように構成された3次元造形装置100(及び画像処理コンピュータ90)の動作について説明する。図9〜図13は、その動作を摸式的に示す概略断面図である。本実施形態においては、第1供給ユニット10aの第1供給ボックス11a内に貯留される粉体材料と第2供給ユニット10bの第2供給ボックス11b内に貯留される粉体材料とを同一の材料とした。
【0068】
画像処理コンピュータ90により、CT画像データが読み込まれる。造形の対象となる物体は、医療分野では生物体、特に人体である。医療分野に限られず、建築分野、機械工学分野等、医療分野以外のCT画像データを扱うことも可能である。
【0069】
まず、作業者が、画像処理コンピュータ90またはホストコンピュータ51を操作して、造形対象のファイル、つまり、例えば1つの対象物体に対応するCT画像データ群を選択する。
【0070】
画像処理コンピュータ90は、選択されたCT画像の輝度情報に基づいて、その輝度に関して2値化処理、あるいは3値化以上の処理を実行してもよい。その場合、画像処理コンピュータ90は、その2値化以上の多値化処理が実行された画像に対して、その多値化に対応した段階的な各輝度に対応した着色処理を実行してもよい。このような多値化処理やそれら各輝度に応じた着色処理により、3次元造形装置100は内部まで色分けされた、あるいは内部までカラー化された造形物を造ることができる。
【0071】
ホストコンピュータ51は、画像処理コンピュータ90からCT画像データ群、または、上記のように画像処理(多値化処理、着色処理等)が実行された画像データ群を取り込む。以下、説明の便宜上、CT画像データ及び画像処理された画像データを、包括的に「断層化画像データ」という。
【0072】
次に、作業者は、例えば画像処理コンピュータ90を操作することにより、その断層化画像データの断層ごとの厚みを指定する。この断層化画像データの断層の厚みは、後述するように、造形ステージ22上で粉体200に印刷処理が実行されるときの、粉体200の1層分の厚みとなる。
【0073】
この粉体200の1層分の厚みは、元の断層化画像データの断層ごとの厚みより小さくてもよいし、大きくてもよい。例えば元の断層化画像データの断層ごとの厚みが1mmである場合に、粉体200の1層分の厚みが0.1mmに設定されてもよい。この場合、3次元造形装置100は、同じ1つの断層化画像データに応じて、粉体200の10層分(0.1mm×10)にそれぞれ同じ画像を印刷すればよい。あるいは、粉体200の1層分の厚みは、元の断層化画像データの断層ごとの厚みと同じに設定されてもよい。
【0074】
次に、例えば作業者が図示しないスタートボタンを押すと、3次元造形装置100は動作を開始する。
【0075】
図9(A)に示すように、造形ユニット20の造形ステージ22には、粉体が供給されていない状態となっており、この状態から、硬化層を1層形成する工程が開始される。
【0076】
まず、昇降ユニット23が駆動されることにより、図9(B)に示すように造形ステージ22が所定の層厚分下降する。次に、図9(C)に示すように、第1回転モータ38aが駆動されることにより、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転する。これらの回転方向は、図9において第1供給ローラ13aは時計回り、第1ならしローラ14aは反時計回りである。これらの第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転することにより、その第1供給ローラ13aの回転力及び粉体200の自重により、第1供給ユニット10aの第1供給ボックス11aの第1堆積板12a上に堆積された粉体200が、第1供給ボックス11aの側壁の下端と第1供給ローラ13aの表面との隙間を介して流れ落ちる。
【0077】
このように、造形ステージ22がY方向(図上、右方向)に移動しているときに、堆積面から粉体200が少なくともその自重を利用して造形ステージ22上に供給される。したがって、粉体200を造形ステージ22上に1層分積層させるための、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aの移動を必要としない。つまり、第1供給ユニット10aを3次元造形装置100に固定することができ、移動系の構造がシンプルとなる。
【0078】
また、移動機構26の駆動により、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aの回転が開始されるタイミングとほぼ同時、またはそのタイミングから所定時間経過後に、造形ユニット20がインクジェットヘッド32側へ向かって移動を開始する。造形ユニット20が移動している途中においても第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aは回転し続け、粉体200が造形箱21内に供給され続ける。
【0079】
図10(A)に示すように、造形ユニット20の移動により造形箱21上に第1ならしローラ14aが来ると、粉体200の表面が均一にならされる。これにより、1層分の第1粉体層210aが、造形ステージ22上に堆積される。この1層分の厚みuが、上記したように例えば0.1mmとされる。
【0080】
次に、造形ユニット20の移動により、造形箱21が所定の位置まで移動すると、インクジェットヘッド32が、プリントヘッドコントローラ58の制御に応じてインクの吐出を開始する。これにより、造形ステージ22上に堆積された1層分の第1粉体層210aの所定の選択領域が硬化された第1硬化層210が形成される。粉体粒子同士の結合を可能にするための、粉体200の材料及びインクの種類が適宜選択されることにより、硬化層を形成することができる。市販されている水性インクは、例えば塩化ナトリウムを主成分として含む粉体200、粉体200を硬化させるための液剤となり得る。また、粉体200の材料によっては、例えば粉体200が上記した有機物との共重合体の場合は、水がその粉体200の材料を硬化させるための液剤となる。
【0081】
移動している造形箱21の後端部(左端部)が、第1ならしローラ14aの下部付近を過ぎると、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが停止する。これにより、造形箱21への粉体200の供給が停止する。
【0082】
また、造形ユニット20が移動を続けることにより、造形箱21からこぼれ落ちる余剰の粉体200が回収ボックスに回収される。これにより、回収された粉体200を再利用することができる。
【0083】
そして、インクジェットヘッド32は、粉体層の所定の選択領域のすべてにインクを供給すると、その吐出を停止する。なお、造形ステージ22上への粉体200の供給工程とインク吐出工程とは実質的に同時になる場合もある。
【0084】
さらに造形ユニット20がY方向(図上右方向)に移動し続けると、図10(B)に示すように、造形箱21が第2ヒータ40bの直下位置まで移動する。ここで、造形ステージ22上の1層分の第1硬化層210がヒータ40により加熱される。加熱温度は、例えば100〜200℃であるが、この範囲に限られない。この加熱処理により、第1硬化層の硬化された領域の粉体200の硬度が増し、焼き固められる。ヘッドから吐出されるインクによる粉体粒子同士の結合力が不十分で、造形物の硬度が足りない場合、このような第2ヒータ40bの加熱により所望の硬度を得ることができる。
【0085】
次に、昇降ユニット23が駆動されることにより、図10(C)に示すように造形ステージ22が所定の層厚分下降する。次に、図11(A)に示すように、第2回転モータ38bが駆動されることにより、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bが回転する。これらの回転方向は、図11において第2供給ローラ13bは反時計回り、第2ならしローラ14bは時計回りである。これらの第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bが回転することにより、その第2供給ローラ13bの回転力及び粉体200の自重により、第2供給ユニット10bの第2供給ボックス11bの第2堆積板12b上に堆積された粉体200が、第2供給ボックス11bの側壁の下端と第2供給ローラ13bの表面との隙間を介して流れ落ちる。
【0086】
このように、造形ステージ22がY方向の負方向(図上左方向)に移動しているときに、堆積面から粉体200が少なくともその自重を利用して造形ステージ22上に供給される。したがって、粉体200を造形ステージ22上に1層分積層させるための、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bの移動を必要としない。つまり、第2供給ユニット10bを3次元造形装置100に固定することができ、移動系の構造がシンプルとなる。
【0087】
また、移動機構26の駆動により、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bの回転が開始されるタイミングとほぼ同時、またはそのタイミングから所定時間経過後に、造形ユニット20がインクジェットヘッド32側へ向かって移動を開始する。造形ユニット20が移動している途中においても第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bは回転し続け、粉体200が造形箱21内に供給され続ける。
【0088】
図11(B)に示すように、造形ユニット20の移動により造形箱21上に第2ならしローラ14bが来ると、粉体200の表面が均一にならされる。これにより、1層分の第2粉体層211aが、造形ステージ22上に堆積される。この1層分の厚みuが、上記したように例えば0.1mmとされる。
【0089】
次に、造形ユニット20の移動により、造形箱21が所定の位置まで移動すると、インクジェットヘッド32が、プリントヘッドコントローラ58の制御に応じてインクの吐出を開始する。これにより、造形ステージ22上に堆積された1層分の第2粉体層211aの所定の選択領域が硬化された第2硬化層211が形成される。
【0090】
移動している造形箱21の後端部(右端部)が、第2ならしローラ14bの下部付近を過ぎると、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bが停止する。これにより、造形箱21への粉体200の供給が停止する。
【0091】
また、造形ユニット20が移動を続けることにより、造形箱21からこぼれ落ちる余剰の粉体200が回収ボックスに回収される。これにより、回収された粉体200を再利用することができる。
【0092】
そして、インクジェットヘッド32は、粉体層の所定の選択領域のすべてにインクを供給すると、その吐出を停止する。なお、造形ステージ22上への粉体200の供給工程とインク吐出工程とは実質的に同時になる場合もある。
【0093】
さらに造形ユニット20がY方向の負方向(図上左方向)に移動し続けると、図11(C)に示すように、造形箱21が第1ヒータ40aの直下位置まで移動する。ここで、造形ステージ22上の1層分の第2硬化層211が第1ヒータ40aにより加熱される。加熱温度は、例えば100〜200℃であるが、この範囲に限られない。この加熱処理により、第2硬化層211の硬化した領域の粉体200の硬度が増し、焼き固められる。ヘッドから吐出されるインクによる粉体粒子同士の結合力が不十分で、造形物の硬度が足りない場合、このような第1ヒータ40aの加熱により所望の硬度を得ることができる。
【0094】
次に、昇降ユニット23が駆動されることにより、図12(A)に示すように造形ステージ22が所定の層厚分下降する。次に、第2回転モータ38bが駆動されることにより、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転する。これらの回転方向は、図12において時計回りである。これらの第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転することにより、その第1供給ローラ13aの回転力及び粉体200の自重により、第1供給ユニット10aの第1供給ボックス11aの第1堆積板12a上に堆積された粉体200が、第1供給ボックス11aの側壁の下端と第1供給ローラ13aの表面との隙間を介して流れ落ち、造形ステージ22上の第2硬化層211上に第3粉体層212aが堆積される。
【0095】
このように、造形ステージ22がのY方向(図上右方向)に移動しているときに、堆積面から粉体200が少なくともその自重を利用して造形ステージ22上に供給される。
【0096】
また、移動機構26の駆動により、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aの回転が開始されるタイミングとほぼ同時、またはそのタイミングから所定時間経過後に、造形ユニット20がインクジェットヘッド32側へ向かって移動を開始する。造形ユニット20が移動している途中においても第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aは回転し続け、粉体200が造形箱21内に供給され続ける。
【0097】
図12(B)に示すように、造形ユニット20の移動により造形箱21上に第1ならしローラ14aが来ると、粉体200の表面が均一にならされる。
【0098】
次に、造形ユニット20の移動により、造形箱21が所定の位置まで移動すると、インクジェットヘッド32が、ヘッドスキャンコントローラ56の制御に応じてインクの吐出を開始する。これにより、造形ステージ22上に堆積された1層分の第3粉体層212aの所定の選択領域が硬化された第3硬化層212が形成される。
【0099】
移動している造形箱21の後端部(左端部)が、第1ならしローラ14aの下部付近を過ぎると、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが停止する。これにより、造形箱21への粉体200の供給が停止する。
【0100】
また、造形ユニット20が移動を続けることにより、造形箱21からこぼれ落ちる余剰の粉体200が回収ボックスに回収される。これにより、回収された粉体200を再利用することができる。
【0101】
そして、インクジェットヘッド32は、粉体層の所定の選択領域のすべてにインクを供給すると、その吐出を停止する。なお、造形ステージ22上への粉体200の供給工程とインク吐出工程とは実質的に同時になる場合もある。
【0102】
さらに造形ユニット20がY方向(図上右方向)に移動し続けると、図12(C)に示すように、造形箱21が第2ヒータ40bの直下位置まで移動する。ここで、造形ステージ22上の第3硬化層212が第2ヒータ40bにより加熱される。この加熱処理により、第3硬化層212の硬化した領域の粉体200の硬度が増し、焼き固められる。
【0103】
次に、第2ヒータ40bの直下位置まで戻った造形ステージ22は、昇降ユニット23が駆動されることにより、所定の層厚分下降する。そして、造形ユニット20をY方向の負方向(図上左方向)に移動させ、供給ボックスからの粉体供給、インク吐出、ヒータによる加熱といった一連の処理が、上述と同様に行われる。これにより、図13(A)に示すように第4硬化層213が形成される。造形ユニット20は第1ヒータ40aの直下に位置する。
【0104】
次に、第1ヒータ40aの直下位置まで戻った造形ステージ22は、昇降ユニット23が駆動されることにより、所定の層厚分下降する。そして、造形ユニット20をY方向(図上右方向)に移動させ、供給ボックスからの粉体供給、インク吐出、ヒータによる加熱といった一連の処理が上述と同様に行われる。これにより、図13(B)に示すように最終層である第5硬化層214が形成される。尚、本実施形態では、5層目を最終層としたが、実際には、例えば300〜500層もしくはそれ以上であり、造形データの所望造形層数に至るまで一連の処理が繰り返される。
【0105】
加熱処理が終了すると、ホストコンピュータ51は、対象物体に対応するすべての断層化画像の印刷が終了したか否かを判定する。終了の場合、造形物の周囲は未硬化の粉体層に覆われており、造形箱21内の余分な粉体200が除去され、造形物が完成する。そして、図13(C)に示すように、人手または図示しないロボットにより、3次元造形装置100から造形物215が取り出される。
【0106】
対象物体に対応するすべての断層化画像の印刷が終了していない場合、造形ユニット20は、第1供給ボックス11aの直下位置又は第2供給ボックス11bの直下位置から、Y方向又はY方向の負方向に移動し、粉体供給、インク吐出、ヒータによる加熱といった一連の処理が繰り返される。
【0107】
以上のように、本実施形態では、造形ユニット20が移動機構26により移動するので、供給ユニット10及びインクジェットヘッド32が、Y方向に移動しなくても粉体200の供給及びインクの吐出を行うことができる。つまり、粉体200及びインクの供給のを、移動機構26による造形ユニット20の移動だけで行うことができ、移動系の構造がシンプルとなる。移動系とは、粉体200の所定の層厚分の造形物を形成するために必要な、各部材を移動させるための機構である。
【0108】
本実施形態では、Y軸に沿って造形ステージ22が移動可能に設けられ、この移動方向に沿って2つの第1供給ボックス11a及び第2供給ボックス11bが配置されている。これにより、造形ステージ22をY方向に移動させて第1供給ボックス11aから粉体を造形ステージ22上に供給でき、造形ステージ22をY方向の負方向に移動させて第2供給ボックス11bから粉体を造形ステージ上22に供給できる。従って、造形ステージ22の1回の往復移動で2層の粉体層を堆積することができ、供給ボックスを1つ設けた場合と比較して、造形時間を短縮することができる。すなわち、造形箱を1つ設けた場合では、ホームポジションからY方向の正方向に造形ステージを移動させることにより粉体層を堆積させるが、次の粉体層を堆積するには、正方向に移動した造形ステージを負方向に移動させて再度ホームポジションに戻す必要がある。すなわち、造形ステージの往復移動において、往路でのみ粉体層の堆積が行われる。これに対し、本実施形態では、供給ボックスを2つ設けているので、造形ステージの移動における往路、復路それぞれで粉体層を堆積することができ、造形時間を大幅に短縮することができる。したがって、本実施形態に係る3次元造形装置100は、製品の量産に適している。
【0109】
本実施形態では、造形時間の短縮が可能となることにより、インク乾燥による吐出不良の発生を防止できる。すなわち、供給ボックスを1つ設けた場合では、造形ステージの移動の復路ではインク吐出が行われないため、インク乾燥が生じやすく、インク吐出不良の原因となりやすい。これに対し、本実施形態では、造形ステージの移動の復路でもインク吐出が行われるので、インク乾燥を極力防止することができる。
【0110】
本実施形態では、粉体が貯留される供給ボックスを固定し、造形ステージを移動させることによって造形を行う。これにより、供給ボックスの移動による振動がないため、供給ボックスからの粉体の供給を、供給量一定の状態で安定して行うことができ、面内均一の厚さで粉体層を造形ステージ上に堆積することができる。造形ステージを固定し、粉体が供給される供給ボックスを移動させて粉体層を供給する場合、供給ボックスの移動による振動で、粉体供給量が不安定となり、造形ステージ上に堆積される粉体層の厚さが面内でばらつきやすい。これに対し、本実施形態では、供給ボックスは固定されているため、所望の量で安定して粉体供給を行うことができる。
【0111】
本実施形態において、移動機構26による造形ユニット20の移動速度は一定でよいが、途中で加速または減速されてもよい。
【0112】
本実施形態では、例えば食塩等を含む粉体材料により造形物が造られ、従来のように接着剤が含まれないインクにより印刷される。したがって、インクのコストを削減することができる。接着剤が用いられないので、接着剤がインクジェットヘッドの吐出口で固まる、という問題も解消することができ、吐出口の目詰まりを防止することができる。
【0113】
[第2の実施形態]
(3次元造形装置の構成)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置1100を、Y方向に平行な面で3次元造形装置のほぼ中央を切断したときの、3次元造形装置1100の内部構造を示す斜視図である。図15は、図14を正面から見た図(断面図)である。第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0114】
本実施形態に係る3次元造形装置1100は、第1実施形態における3次元造形装置100と比較して、造形ユニットが1つではなく2つある点で大きく異なる。
【0115】
図14及び図15に示すように、3次元造形装置1100は、2つの第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bを備えている。第1造形ユニット1020a(第2造形ユニット1020b)は、第1造形箱1021a(第2造形箱1021b)、第1造形ステージ1022a(第2造形ステージ1022b)を有する。第1造形ユニット1020a(第2造形ユニット1020b)は、第1供給ユニット10a、第2供給ユニット10bから供給された粉体を貯留する。粉体が堆積される第1造形ステージ1022a(第2造形ステージ1022b)は、第1造形箱1021a(第2造形箱1021b)内に配置される。また、第1造形ユニット1020a(第2造形ユニット1020b)は、第1昇降ユニット1023a(第2昇降ユニット1023b)を有する。第1昇降ユニット1023a(第2昇降ユニット1023b)は、第1造形箱1021a(第2造形箱1021b)及び第1造形ステージ1022a(第2造形ステージ1022b)を支持し、第1造形箱1021a(第2造形箱1021b)内で第1造形ステージ1022a(第2造形ステージ1022b)を昇降させる。
【0116】
(3次元造形装置1100の動作)
以上のように構成された3次元造形装置1100の一動作例について説明する。図16〜図21は、その動作を摸式的に示す概略断面図である。本実施形態においては、第1供給ユニット10aの第1供給ボックス11a内に貯留される粉体材料と第2供給ユニット10bの第2供給ボックス11b内に貯留される粉体材料とを同一の材料とした。
【0117】
まず、画像処理コンピュータにより、CT画像データが読み込まれる。造形の対象となる物体は、医療分野では生物体、特に人体である。医療分野に限られず、建築分野、機械工学分野等、医療分野以外のCT画像データを扱うことも可能である。
【0118】
まず、作業者が、画像処理コンピュータまたはホストコンピュータを操作して、造形対象のファイル、つまり、例えば1つの対象物体に対応するCT画像データ群を選択する。
【0119】
次に、作業者は、例えば画像処理コンピュータを操作することにより、その断層化画像データの断層ごとの厚みを指定する。この断層化画像データの断層の厚みは、造形ステージ22上で粉体200に印刷処理が実行されるときの、粉体200の1層分の厚みとなる。
【0120】
次に、例えば作業者が図示しないスタートボタンを押すと、3次元造形装置1100は動作を開始する。
【0121】
図16(A)に示すように、第1造形ユニット1020aの第1造形ステージ1022a、第2造形ユニット1020bの第2造形ステージ1022bには、粉体がまだ供給されていない状態となっており、この状態から、硬化層を1層形成する工程が開始される。図16(A)において、第1造形ユニット1020a、第2造形ユニット1020bが示されている位置が、各造形ユニットのホームポジションとなる。
【0122】
まず、第1昇降ユニット1023a(第2昇降ユニット1023b)が駆動されることにより、図16(B)に示すように第1造形ステージ1022a(第2造形ステージ1022b)が所定の層厚分下降する。次に、図16(C)に示すように、第1回転モータ38aが駆動されることにより、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転する。これらの回転方向は、図16において第1供給ローラ13aは時計回り、第1ならしローラ14aは反時計回りである。これらの第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転することにより、その第1供給ローラ13aの回転力及び粉体200の自重により、第1供給ユニット10aの第1供給ボックス11aの第1堆積板12a上に堆積された粉体200が、第1供給ボックス11aの側壁の下端と第1供給ローラ13aの表面との隙間を介して流れ落ちる。
【0123】
このように、第1造形ステージ1022aがY方向(図上、右方向)に移動しているときに、第1堆積面12aから粉体200が少なくともその自重を利用して造形ステージ22上に供給される。
【0124】
また、移動機構26の駆動により、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aの回転が開始されるタイミングとほぼ同時、またはそのタイミングから所定時間経過後に、造形ユニット20がインクジェットヘッド32側へ向かって移動を開始する。第1造形ユニット1020aが移動している途中においても第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aは回転し続け、粉体200が造形箱21内に供給され続ける。
【0125】
図17(A)に示すように、第1造形ユニット1020aの移動により第1造形箱1021a上に第1ならしローラ14aが来ると、粉体200の表面が均一にならされる。これにより、1層分の第1粉体層310aが、第1造形ステージ1022a上に堆積される。
【0126】
次に、第1造形ユニット1020aの移動により、第1造形箱1021aが所定の位置まで移動すると、インクジェットヘッド32が、ヘッドスキャンコントローラの制御に応じてインクの吐出を開始する。これにより、造形ステージ22上に堆積された1層分の第1粉体層310aの所定の選択領域が硬化された第1硬化層310が形成される。
【0127】
移動している第1造形箱1021aの後端部(左端部)が、第1ならしローラ14aの下部付近を過ぎると、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが停止する。これにより、第1造形箱1021aへの粉体200の供給が停止する。
【0128】
そして、インクジェットヘッド32は、粉体層の所定の選択領域のすべてにインクを供給すると、その吐出を停止する。なお、第1造形ステージ1022a上への粉体200の供給工程とインク吐出工程とは実質的に同時になる場合もある。
【0129】
さらに第1造形ユニット1020aがY方向(図上右方向)に移動し続けると、図17(B)に示すように、第1造形箱1021aが第2ヒータ40bの直下位置まで移動する。ここで、第1造形ステージ1022a上の1層分の第1硬化層310が第2ヒータ40bにより加熱される。加熱温度は、例えば100〜200℃であるが、この範囲に限られない。この加熱処理により、第1硬化層の硬化された領域の粉体200の硬度が増し、焼き固められる。ヘッドから吐出されるインクによる粉体粒子同士の結合力が不十分で、造形物の硬度が足りない場合、このような第2ヒータ40bの加熱により所望の硬度を得ることができる。
【0130】
次に、第1昇降ユニット1023aが駆動されることにより、図17(C)に示すように第1造形ステージ1022aが所定の層厚分下降する。次に、図18(A)に示すように、第2回転モータ38bが駆動されることにより、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bが回転する。これらの回転方向は、図18において第2供給ローラ13bは反時計回り、第2ならしローラ14bは時計回りである。これらの第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bが回転することにより、その第2供給ローラ13bの回転力及び粉体200の自重により、第2供給ユニット10bの第2供給ボックス11bの第2堆積板12b上に堆積された粉体200が、第2供給ボックス11bの側壁の下端と第2供給ローラ13bの表面との隙間を介して流れ落ちる。
【0131】
このように、第1造形ステージ1022a及び第2造形ステージ1022bがY方向の負方向(図上左方向)に移動しているときに、第2堆積面12bから粉体200が少なくともその自重を利用して第1造形ステージ1022a上、第2造形ステージ1022b上に連続して供給される。
【0132】
また、移動機構26の駆動により、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bの回転が開始されるタイミングとほぼ同時、またはそのタイミングから所定時間経過後に、第1造形ユニット1020a、第2造形ユニット1020bがインクジェットヘッド32側へ向かって移動を開始する。第1造形ユニット1020a、第2造形ユニット1020bが移動している途中においても第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bは回転し続け、粉体200が第1造形箱1021a、第2造形箱1021b内に供給され続ける。
【0133】
図18(B)に示すように、第1造形ユニット1020aの移動により第2造形箱1021a上に第2ならしローラ14bが来ると、粉体200の表面が均一にならされる。これにより、第2粉体層311aが、第1造形ステージ1022a上に堆積される。続いて、図18(C)に示されるように、第1粉体層410aが、第2造形ステージ1022b上に堆積される。
【0134】
第1造形ユニット1020aの移動により、第1造形箱1021aが所定の位置まで移動すると、インクジェットヘッド32が、ヘッドスキャンコントローラの制御に応じてインクの吐出を開始する。これにより、第1造形ステージ1022a上に堆積された第2粉体層311aの所定の選択領域が硬化された第2硬化層311が形成される。続いて、インクの吐出により、第2造形ステージ1022b上に堆積された第1粉体層410aの所定の選択領域が硬化された第1硬化層410が形成される。
【0135】
移動している第2造形箱1021bの後端部(右端部)が、第2ならしローラ14bの下部付近を過ぎると、第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bが停止する。これにより、第1造形箱1021a及び第2造形箱1021bへの粉体200の供給が停止する。
【0136】
そして、インクジェットヘッド32は、粉体層の所定の選択領域のすべてにインクを供給すると、その吐出を停止する。
【0137】
さらに第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bが負のY方向(図上左方向)に移動し続け、図19(A)に示すように、第1造形箱1021a及び第2造形箱1021bが第1ヒータ40aの直下位置まで移動する。ここで、第1造形ステージ1022a上の第2硬化層311及び第2造形ステージ1022b上の第1硬化層410が、第1ヒータ40aにより加熱される。加熱温度は、例えば100〜200℃であるが、この範囲に限られない。この加熱処理により、第2硬化層311の硬化した領域の粉体200、第1硬化層410の硬化した領域の粉体200の硬度が増し、焼き固められる。ヘッドから吐出されるインクによる粉体粒子同士の結合力が不十分で、造形物の硬度が足りない場合、このような第1ヒータ40aの加熱により所望の硬度を得ることができる。
【0138】
次に、第1昇降ユニット1023a及び第2昇降ユニット1023bが駆動されることにより、図19(B)に示すように第1造形ステージ1022a及び第2造形ステージ1022bが所定の層厚分下降する。次に、第1回転モータ38aが駆動されることにより、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転する。これらの回転方向は、図19において時計回りである。これらの第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが回転することにより、その第1供給ローラ13aの回転力及び粉体200の自重により、第1供給ユニット10aの第1供給ボックス11aの第1堆積板12a上に堆積された粉体200が、第1供給ボックス11aの側壁の下端と第1供給ローラ13aの表面との隙間を介して流れ落ちる。図19(C)に示すように、流れおちた粉体200は、第2造形ステージ1022b上の第1硬化層410上に第2粉体層411aとして堆積され、第1造形ステージ1022a上の第2硬化層311上に第3粉体層312aとして堆積される。
【0139】
移動機構26の駆動により、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aの回転が開始されるタイミングとほぼ同時、またはそのタイミングから所定時間経過後に、第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bがインクジェットヘッド32側へ向かって移動を開始する。第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bが移動している途中においても第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aは回転し続け、粉体200が第1造形箱1021a及び第2造形箱1021b内に供給され続ける。
【0140】
第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bの移動により第1造形箱1021a上及び第2造形箱1021b上に第1ならしローラ14aが来ると、粉体200の表面が均一にならされる。
【0141】
次に、第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bの移動により、第1造形箱1021a及び第2造形箱1021bが所定の位置まで移動すると、インクジェットヘッド32が、ヘッドスキャンコントローラの制御に応じてインクの吐出を開始する。これにより、第2造形ステージ1022b上に堆積された第2粉体層411aの所定の選択領域が硬化された第2硬化層411が形成される。続いて、インク吐出により、第1造形ステージ1022a上に堆積された第3粉体層312aの所定の選択領域が硬化された第3硬化層312が形成される。
【0142】
移動している第1造形箱1021aの後端部(左端部)が、第1ならしローラ14aの下部付近を過ぎると、第1供給ローラ13a及び第1ならしローラ14aが停止する。これにより、第1造形箱1021aへの粉体200の供給が停止する。
【0143】
そして、インクジェットヘッド32は、粉体層の所定の選択領域のすべてにインクを供給すると、その吐出を停止する。
【0144】
さらに造形ユニット20がY方向(図上右方向)に移動し続け、図20(A)に示すように、第1造形箱1021a及び第2造形箱1021bが第2ヒータ40bの直下位置まで移動する。ここで、第1造形ステージ1022a上の第3硬化層312及び第2造形ステージ1022b上の第2硬化層411が第2ヒータ40bにより加熱される。この加熱処理により、第3硬化層312の硬化した領域の粉体200及び第2硬化層411の硬化した領域の粉体の硬度が増し、焼き固められる。
【0145】
次に、第2ヒータ40bの直下位置まで戻った第1造形ステージ1022a及び第2造形ステージ1022bは、第1昇降ユニット1023a及び第2昇降ユニット1023bが駆動されることにより、所定の層厚分下降する。そして、上述と同様に、第1造形ユニット1020a及び第2造形ユニット1020bを負のY方向(図上左方向)に移動させ、供給ボックスからの粉体供給、インク吐出、ヒータによる加熱といった一連の処理が行われる。これにより、図20(B)に示すように第1造形ステージ1022a上に最終層である第4硬化層313が形成され、第2造形ステージ1022b上に第3硬化層412が形成される。
【0146】
次に、第1ヒータ40aの直下位置まで戻った第2造形ステージ1022bは、第2昇降ユニット1023bが駆動されることにより、所定の層厚分下降する。そして、第2造形ユニット1020bをY方向(図上右方向)に移動させ、供給ボックスからの粉体供給、インク吐出、ヒータによる加熱といった一連の処理が行われ、図20(C)に示すように、第2造形ステージ1022b上に第4硬化層413が形成される。第2造形ステージ1022bが第2ヒータ40bの直下に位置するとき、第1造形ステージ1022aは第1ヒータ40aの直下に位置する。尚、第1造形ステージ1022a上の硬化層313の第1ヒータ40aによる加熱と第2造形ステージ1022b上の硬化層413の第2ヒータ40bによる加熱を同時に行っても良い。これにより、図13(B)に示すように、第2造形ステージ1022b上に最終層である第4硬化層413が形成される。尚、本実施形態では、4層目を最終層としたが、実際には、例えば300〜500層もしくはそれ以上であり、造形データの所望造形層数に至るまで一連の処理が繰り返される。
【0147】
加熱処理が終了すると、ホストコンピュータ51は、対象物体に対応するすべての断層化画像の印刷が終了したか否かを判定する。終了の場合、造形物の周囲は未硬化の粉体層に覆われており、造形箱21内の余分な粉体200が除去され、造形物が完成する。そして、図21(A)に示すように、ホームポジションに第1造形ステージ1022a及び第2造形ステージ1022bが戻され、図21(B)に示すように、人手または図示しないロボットにより、3次元造形装置100から造形物315、415が取り出される。
【0148】
対象物体に対応するすべての断層化画像の印刷が終了していない場合、第1造形ユニット1020a(第2造形ユニット1020b)は、第1ヒータ40aの直下位置又は第2ヒータ40bの直下位置まで戻り、Y方向又はY方向の負方向に移動して、粉体供給、インク吐出、ヒータによる加熱といった一連の処理が繰り返される。
【0149】
以上のように、造形ユニットを2つ設けてもよく、1つの3次元造形装置で同時に2つの同じ造形物を得ることができ、造形時間の短縮を実現することができる。尚、ここでは、各造形ユニットで形成される造形物が同じであるが、インクジェットヘッド32からのインクの吐出を制御して、異なる形状の造形物を2つ形成するようにすることも可能である。
【0150】
[他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。図22〜図27を用いて他の実施形態について説明する。図22〜図24はそれぞれ他の3次元造形装置を示す模式図である。尚、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0151】
上記実施形態では、第1ヒータ40a及び第2ヒータ40bが設けられる構成を示したが、図22に示すように、ヒータ40a及び40bは必ずしも設けられていなくてもよい。ヒータ40a及び40bを備えていない3次元造形装置により得られた造形物を加熱する加熱装置が、3次元造形装置とは別個設けられていてもよい。
【0152】
第1実施形態においては、第1供給ボックス11a、第2供給ボックス11bそれぞれに貯留される粉体が同一材料であったが、図23に示すように、第1供給ボックス11a、第2供給ボックス11bそれぞれに貯留される粉体200a、200bが異なる材料からなるものであってもよい。また、同じ材料であっても粒径が異なるものをそれぞれ貯留しても良い。
【0153】
上述の実施形態においては、2つの第1供給ボックス11a、第2供給ボックス11bそれぞれに貯留される造形材料は粉体であったが、これに限られるものではない。例えば、図24に示すように、一方に粉体200c、他方に例えばUV硬化樹脂などからなる液体200dを貯留してもよい。液体200dがヒータ以外の加熱機構、例えばレーザによる加熱で硬化する場合、第1実施形態における3次元造形装置100の第1ヒータ40aの代わりに、レーザ発生器201を配置し、液体を貯留する方の第2供給ユニット10bの第2供給ローラ13b及び第2ならしローラ14bを除く構成とすればよい。すなわち、図24に示すように、造形ユニット20の移動方向に沿って、図面左側から順にレーザ発生器201、第1供給ユニット10a、インクジェットヘッド32、第2供給ユニット10b、第2ヒータ40bを配置する。これにより、図面上右方向に造形ユニット20が移動する際には、造形ステージ22上に粉体200cが供給されて粉体層が形成され、この粉体層はインクジェットヘッド32から吐出されるインクにより硬化されて硬化層が形成される。更に第2ヒータ40bで硬化層が加熱される。また、図面上左方向に造形ユニット20が移動する際には、造形ステージ22上に液体200dが供給されて液体層が形成され、レーザ発生器201で液体層が硬化される。本実施形態のように造形材料として液体を用いる場合、供給機構を固定し、ステージを移動させて造形することは非常に有効である。なぜなら、液体材料の場合には、液体を貯留する供給機構が移動すると、液面が動くため、液体が供給機構外に飛び散るという不具合が生じるからである。
【0154】
第2実施形態においては、第1供給ボックス11a、第2供給ボックス11bそれぞれに貯留される粉体が同一材料であったが、図25に示すように、第1供給ボックス11a、第2供給ボックス11bそれぞれに貯留される粉体200e、200fが、異なる材料や粒径が異なる同じ材料であってもよい。
【0155】
第1実施形態においては、粉体供給機構である第1供給ユニット10a及び第2供給ユニット10bが、造形ステージ22の上方に位置していたが、図26に示すように、造形ステージ22と同じ高さから粉体を供給する形態を有する粉体供給機構としてもよい。図26に示すように、本実施形態における3次元造形装置では、第1供給ユニット10aのかわりに粉体が貯留された第1材料供給ボックス300a及び第1材料供給ローラ301aが、第2供給ユニット10bのかわりに粉体が貯留された第2材料供給ボックス300b及び第2材料供給ローラ301bが、設けられる。第1材料供給ボックス300a(第2材料供給ボックス300b)内には、図示しない昇降可能な第1材料供給ステージ(第2材料供給ステージ)が配置されている。この3次元造形装置における硬化層形成工程では、まず造形ステージ22が所定量押し下げられる。次に、第1材料供給ボックス300a(第2材料供給ボックス300b)の第1材料供給ステージ(第2材料供給ステージ)が所定量押し上げられる。第1材料供給ローラ301a(第2材料供給ローラ301b)が回転して第1材料供給ボックス300a(第2材料供給ボックス300b)に貯留されている粉体を造形箱21側に押しやり、造形箱21を粉体で満たすようにする。造形箱21内に粉体材料が充填されると、第1材料供給ステージ(第2材料供給ステージ)が移動しインクジェットヘッド32からのインク吐出が行われ、硬化層が形成される。このように、粉体供給機構を異ならせても良い。また、一方の粉体供給機構を第1実施形態の供給ユニットの如く造形ステージの上方におき、他方の粉体供給機構を本実施形態のように造形ステージと同じ高さから粉体を供給する形態としてもよい。
【0156】
第2実施形態においては、粉体供給機構である第1供給ユニット10a及び第2供給ユニット10bが、造形ステージ22の上方に位置していたが、一方の粉体供給機構を、図27に示すように、造形ステージ22と同じ高さから粉体を供給する形態としてもよい。図27に示すように、本実施形態における3次元造形装置では、第1供給ユニット10aのかわりに、粉体が貯留された材料供給ボックス300及び第1材料供給ローラ301が設けられる。材料供給ボックス300内には、図示しない昇降可能な材料供給ステージが配置されている。材料供給ボックス300からの粉体供給は、図26に示した材料供給ボックス300a及び300bらの粉体供給と同じである。このように、粉体供給機構を異ならせても良い。
【0157】
以上のように、他の実施形態においても、Y軸に沿って造形ステージ22が移動可能に設けられ、この移動方向に沿って2つの材料供給機構が配置されている。これにより、造形ステージ22の1回の往復移動で2層を堆積することができ、材料供給機構を1つ設けた場合と比較して、造形時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0158】
10a…第1供給ユニット
10b…第2供給ユニット
11a…第1供給ボックス
11b…第2供給ボックス
22…造形ステージ
23…昇降ユニット
26…移動機構
32…インクジェットヘッド
100、1100…3次元造形装置
200、200a、200b、200c、200e、200f…粉体
200d…液体
215、315、415…造形物
1022a…第1造形ステージ
1022b…第2造形ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料が供給されるステージと、
前記ステージを所定方向に移動させる移動機構と、
前記移動機構によって移動する前記ステージ上に前記造形材料を供給する、前記所定方向に沿って配置された第1供給機構及び第2供給機構と、
前記第1供給機構及び前記第2供給機構の少なくとも一方の供給機構から供給される前記造形材料を硬化させることが可能な液剤を、前記ステージ上の前記造形材料に吐出するヘッドと
を具備する3次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記ヘッドは、前記液剤を、前記移動機構によって移動する前記ステージ上の前記造形材料に吐出する3次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元造形装置であって、
前記ヘッドは前記所定方向に沿って前記第1供給機構と前記第2供給機構との間に配置される3次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元造形装置であって、
前記第1供給機構及び前記第2供給機構の少なくとも一方は、
前記造形材料を貯留することが可能であり、前記ステージの移動経路上にある前記ステージの上方側に配置された供給ボックスと、
前記第1供給ボックス内で傾斜するように配置され、前記造形材料が堆積される堆積面と、
前記ステージが移動しているときに、前記堆積面に堆積された前記造形材料を、前記造形材料の自重を利用して前記ステージ上に落下させる機構と
を有する3次元造形装置。
【請求項5】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記第1供給機構により供給される造形材料と前記第2供給機構により供給される造形材料とは同じ材料である3次元造形装置。
【請求項6】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記第1供給機構により供給される造形材料と前記第2供給機構により供給される造形材料とは異なる材料である3次元造形装置。
【請求項7】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記第1供給機構により供給される造形材料と前記第2供給機構により供給される造形材料は粉体である3次元造形装置。
【請求項8】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記ステージは複数設けられる3次元造形装置。
【請求項9】
所定方向にステージを移動させ、
前記ステージを移動させている間に、前記所定方向に沿って配置された第1供給機構及び第2供給機構により、前記ステージ上に造形材料を供給し、
前記第1供給機構及び前記第2供給機構の少なくとも一方の供給機構から供給される前記造形材料を硬化させることが可能な液剤を、前記ステージ上の前記造形材料に吐出する
3次元造形物の製造方法。
【請求項10】
所定方向にステージを移動させ、
前記ステージを移動させている間に、前記所定方向に沿って配置された第1供給機構及び第2供給機構により、前記ステージ上に造形材料を供給し、
前記第1供給機構及び前記第2供給機構の少なくとも一方の供給機構から供給される前記造形材料を硬化させることが可能な液剤を、前記ステージ上の前記造形材料に吐出する
製造方法により得られる3次元造形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図26】
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【図23】
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【図25】
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【図27】
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