説明

3D画像表示用光学フィルム、3D画像表示装置及び3D画像表示システム

【課題】3D画像表示装置の視野角特性の改善に寄与する新規な3D画像表示装置用光学フィルムの提供。
【解決手段】重合性液晶を主成分とする組成物から形成されているパターン光学異方性層と偏光膜とを含み、前記偏光膜の前記一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材のRth(550)の合計値、又は前記光学異方性層及び該光学異方性層の前記偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置されている全ての部材のRth(550)の合計値が、−100〜100nmであることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で輝度低下率などの表示性能や耐光性が改善された3D画像表示用光学フィルム、3D画像表示装置及び3D画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する3D画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる領域が規則的に面内に配置されたパターン位相差膜が利用されている。
【0003】
パターン位相差膜を使用しているものとして、例えば、特許文献1には、光配向膜を利用してパターンを形成し、光学異方性層には棒状液晶を含む光学フィルムが提案されており、この光学フィルムは、3D用のパターンドリターダーとして使用することが提案されている。また、特許文献2には、基板の最表面に複数の溝をパターニング又は金型でパターンを形成し、該パターンを形成した基板上に液晶性モノマーを含む液晶材料を塗布し重合させることで光学異方性層を形成させることが提案されているが、特許文献1及び2には、パターン位相差膜を構成する材料のRth及びパターン位相差膜を構成する材料全体のRthを調整することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/090429号A2公報
【特許文献2】特許第4547641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液晶材料を利用して作製されたパターン位相差板を実際に3D画像表示装置に利用すると、斜め方向の輝度が低下する、即ち視野角特性が低下することがわかった。
本発明は、3D画像表示装置の視野角特性の改善に寄与する新規な3D画像表示装置用光学フィルム、及びそれを利用した3D画像表示装置、及び3D画像表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 重合性液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層と偏光膜とを少なくとも含み、
前記偏光膜が、任意の辺に対して45°の方向に吸収軸を有し、
前記光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であり、
前記光学異方性層は、前記偏光膜の一方の面上に配置されており、
前記偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材であって、前記第1及び第2位相差領域の少なくとも一方に対応する領域に配置されている前記全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmであり、
前記偏光膜の前記一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−100〜100nmであることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルム。
[2] 重合性液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層と偏光膜とを少なくとも含み、
前記偏光膜が、任意の辺に対して90°の方向に吸収軸を有し、
前記光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であり、
前記光学異方性層は、前記偏光膜の一方の面上に配置されており、
前記偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材であって、前記第1及び第2位相差領域の少なくとも一方に対応する領域に配置されている前記全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmであり、
前記光学異方性層、及び該光学異方性層の前記偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置されている全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−100〜100nmであることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルム。
[3] 前記第1及び第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜の透過軸とがそれぞれ±45°の角度をなす[1]又は[2]の光学フィルム。
[4] 前記光学異方性層の前記偏光膜を有する表面と反対側の表面上に、紫外線吸収剤を含有する層を有する[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム。
[5] 前記重合性液晶が重合性棒状液晶である[1]〜[4]のいずれかの光学フィルム。
[6] 前記重合性棒状液晶が水平配向状態に固定されている[5]の光学フィルム。
[7] 前記光学異方性層と前記偏光膜との間に、波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が、−200〜0nmであるポリマーフィルムを有する[1]〜[6]のいずれかの光学フィルム。
[8] 前記光学異方性層の前記偏光膜を有する表面と反対側の表面上に光反射防止層を有し、前記光学異方性層と前記光反射防止層との間に、波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が、−200〜0nmであるポリマーフィルムを有する[1]〜[7]のいずれかの光学フィルム。
[9] 画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルの視認側に配置される[1]〜[8]のいずれかの光学フィルムとを少なくとも有する3D用画像表示装置。
[10] 前記表示パネルが液晶セルを有する[9]の3D用画像表示装置。
[11] [1]又は[3]〜[8]のいずれかの光学フィルムを有し、前記液晶セルが、TNモードである[10]の3D用画像表示装置。
[12] [2]〜[8]のいずれかの光学フィルムを有し、前記液晶セルが、VAモード又はIPSモードである[10]の3D用画像表示装置。
[13] [9]〜[12]のいずれかの3D用画像表示装置と、該3D用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる3D画像表示システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、3D画像表示装置の視野角特性の改善に寄与する新規な3D画像表示装置用光学フィルム、及びそれを利用した3D画像表示装置、及び3D画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の3D画像表示装置用光学フィルムの一例の断面模式図である。
【図2】偏光膜と光学異方性層との関係の一例の概略図である。
【図3】偏光膜と光学異方性層との関係の一例の概略図である。
【図4】本発明に係わるパターン光学異方性層の一例の上面模式図である。
【図5】本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図である。
【図6】本発明の3D画像表示装置の構成例の一例の断面模式図である。
【図7】パターン形成に用いられるフレキソ版の断面の一例を示す概略図である。
【図8】フレキソ印刷の方法の一例を示す概略図である。
【図9】実施例で作製した位相差板の光学特性の評価結果を示す図である。
【図10】露光マスクの一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0010】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中の棒状液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0011】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは測定フィルムの厚みを示す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0012】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0013】
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、「45°」及び「90°」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0014】
1.3D画像表示装置用光学フィルム
本発明は、重合性液晶を主成分とする組成物から形成されているパターン光学異方性層と偏光膜とを少なくとも含む3D画像表示装置用光学フィルムに関する。
【0015】
液晶組成物からなるパターン光学異方性層と偏光膜とを有するパターン円偏光板等を、3D表示装置に利用した際に生じる斜め方向の輝度の低下について、本発明者が種々検討したところ、偏光膜より視認側外側に配置される、パターン光学異方性層を含む種々の部材が有するRthがその原因であることがわかった。液晶組成物を利用して形成されるパターン光学異方性層は、通常、それを支持するポリマーフィルム等の支持体や、またそれを保護する保護フィルム等と積層した状態で使用されるのが一般的である。支持体として利用されるポリマーフィルム等にもある程度のレターデーションがあり、積層体全体として、円偏光画像等を形成するための適切なReに調整する必要がある。Reが発現された光学異方性層やポリマーフィルム等について、Rthを完全にゼロにするのは困難であり、ある程度のRthを有するのが一般的である。液晶組成物からなる光学異方性層にも、及びそれに積層されるポリマーフィルムにもRthがあり、積層体全体としてRthが正又は負に大きくなってしまう場合もある。特に、3D表示装置に利用するパターン位相差板は、表示パネルの視認側面外側に配置される部材であり、外光に曝されることによる劣化を防止するための保護部材や、又は外光が映り込むことを防止するための反射防止部材等を配置する必要があり、ポリマーフィルムの積層等は必須であり、Rthが過度に高くなる場合もある。この積層部材全体としての高Rthが、斜め方向の輝度低下の一因になっている。
【0016】
本発明者がさらに鋭意検討した結果、偏光膜より視認側外側に配置される、パターン光学異方性層を含む部材のRthの合計が、−100〜100nmであれば、斜め方向の輝度の低下を軽減でき、斜め方向においても、十分な輝度の3D画像を表示可能であることを見出した。さらに、偏光膜の透過軸方向によって、同一の部材が配置され、同一のRthであっても、視野角特性に影響する程度が異なることがわかった。具体的には、図2に示す態様、即ち、偏光膜の透過軸方向が、任意の辺に対して45°(即ち、表示面左右方向を0°とした場合に、45°又は135°)の方向である態様では、偏光膜より視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響するが、一方で、図3に示す態様、即ち、偏光膜の透過軸方向が、任意の辺に対して90°(即ち、表示面左右方向を0°とした場合に、0°又は90°)の方向である態様では、偏光膜と光学異方性層との間に配置される部材のRthはほとんど影響せず、光学異方性層及びさらにその視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響することがわかった。
【0017】
本発明では、
前記偏光膜が、任意の辺に対して45°の方向に吸収軸を有する態様では、前記偏光膜の前記一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値を、−100〜100nm(好ましくは−60〜60nm、より好ましくは−60〜20nm)とし、
前記偏光膜が任意の辺に対して90°の方向に吸収軸を有する態様では、前記光学異方性層、及び該光学異方性層の前記偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置されている全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値を、−100〜100nm(好ましくは−60〜60nm、より好ましくは−60〜20nm)とすることで、斜め方向の輝度の低下を軽減している。
【0018】
なお、「任意の辺」とは、矩形状の形態のフィルムでは、長辺又は短辺を意味し、矩形状以外の形態のフィルムでは、矩形状に近似して辺を特定するものとする。楕円形状では、任意の辺は長辺又は短辺になり、円形状では、円の4つの接線によって形成される正方形の一辺となる。また、本発明では、面内遅相軸の方向が、厳密に45°又は90°であることを要求するものではなく、上記誤差範囲が許容される。
【0019】
パターン光学異方性層の形成に利用する液晶材料の中には、正の複屈折性を示す液晶材料(例えば、棒状液晶)及び負の複屈折性を示す液晶材料(例えば、ディスコティック液晶)がある。例えば、正の複屈折性を示す棒状液晶材料を利用して形成したRthが正のパターン光学異方性層に、Rthが負のポリマーフィルムを支持体として組み合わせること等により、互いのRthを相殺し、積層体全体としてのRthを上記範囲内にすることができる。
【0020】
本発明の3D画像装置用光学フィルムは、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層を有する。本発明の3D画像装置用光学フィルムは、表示パネルの視認側外側(表示パネルが視認側に偏光膜を有する場合には、表示パネルの視認側偏光膜のさらに外側)に配置され、当該位相差板の第1及び第2位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光眼鏡等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
【0021】
本発明では、偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材であって、前記第1及び第2位相差領域の少なくとも一方に対応する領域に配置されている前記全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmであり、即ち、実質的にλ/4である。なお、ここで、前記全ての部材のうち、第1及び第2位相差領域のうちの少なくとも一方に対応する領域に配置されている前記全ての部材の合計のRe(550)が、実質的にλ/4であればよい。例えば、一方が実質的にλ/4で、他方が実質的に3/4λ(具体的には375nm〜435nm)であってもよい。勿論、双方がλ/4であってもよく、その場合は、遅相軸を互いに直交させる必要がある。
【0022】
以下の表に、可能な態様をまとめる。なお、表中の位相差領域A及びBはそれぞれ、第1及び第2位相差領域それぞれに対応する領域に配置されている前記全ての部材を意味するものとする。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明の3D画像装置用光学フィルムの一例の断面模式図を図1に示す。図1に示す光学フィルム10は、偏光膜16、光学異方性層12、及び光学異方性層12を支持する透明支持体14を有し、光学異方性層12は、画像表示装置内に、第1及び第2位相差領域12a及び12bが、均等且つ対称に配置されたパターン光学異方性層である。一例は、第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度であり、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有する光学異方性層である。この例では、図2及び図3に示す通り、光学異方性層12を、第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、偏光膜16の透過軸Pと±45°にして配置する。この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。
【0025】
第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4である光学異方性層を利用しても同様に円偏光画像を分離することができる。また、第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4である光学異方性層を利用することで、右眼用及び左眼用の直線偏光画像を分離してもよい。
【0026】
さらに、第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/2であり、且つ他方の面内レターデーションが0である光学異方性層を利用し、これを面内レターデーションがλ/4の支持体と各々の遅相軸を平行又は直交して積層しても同様に円偏光画像を分離することができる。
【0027】
また、第1及び第2位相差領域12a及び12bの形状及び配置パターンは、図2及び3に示すストライプ状のパターンを交互に配置した態様に限定されるものではない。図4に示す様に、矩形状のパターンを格子状に配置してもよい。
【0028】
また、光学フィルムは他の部材を含んでいてもよく、図1に示す例では、透明支持体14と光学異方性層12との間に配向膜を有していてもよいし、光学異方性層12のさらに外側に反射防止層を含む表面フィルムを配置してもよい。また、透明支持体14と偏光膜16との間に、偏光膜16の保護フィルムが配置されていてもよい。また、偏光膜16の裏面に、保護フィルムがさらに配置されていてもよい。また、上記した通り、表示パネルが視認側表面に偏光膜を有する場合は、本発明の光学フィルムは偏光膜を有さず、表示パネルの偏光膜と組み合わされることで、円偏光画像等の分離機能を示す態様であってもよい。使用可能なこれらの部材の詳細については、後述する。図5(a)〜(d)に、本発明の光学フィルムの他の例の断面模式図を示す。
【0029】
透明支持体14のRe(550)は、特に制限はないが、表面フィルムが支持体を有さない場合、もしくは表面フィルムが配置されていない場合、−5〜10nmが好ましく、
−2〜7nmがより好ましく、0〜5nmが特に好ましい。また、透明支持体14のRth(550)は、−200〜0nmが好ましく、−170〜0nmがより好ましく、−150〜0nmが特に好ましい。
なお、表面フィルムが支持体を有する場合、透明支持体14のRe(550)は、−5〜10nmが好ましく、−2〜7nmがより好ましく、0〜5nmが特に好ましい。また、透明支持体14のRth(550)は、−200〜0nmが好ましく、−170〜0nmがより好ましく、−150〜0nmが特に好ましい。
【0030】
光学異方性層12は、重合性液晶を主成分とする組成物から形成される。重合性液晶の例として、重合性棒状液晶が挙げられる。棒状液晶を利用する態様では、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。なお、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の長軸と層面が平行であることをいう。厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。棒状液晶の詳細及び棒状液晶を利用した光学異方性層の形成方法については後述する。
【0031】
第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度である態様では、面内遅相軸a及びbは、偏光膜の透過軸とそれぞれ±45°の角度をなすことが好ましい。本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域12a及び12bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。
なお、光学異方性層12のReが単独でλ/4である必要はなく、偏光膜16の一方の表面上に配置される光学異方性層12を含む全ての部材のReの総和、例えば、図6(a)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのReの総和、図6(b)の態様では、偏光膜保護フィルム、光学異方性層、及び支持体のReの総和が、図6(c)の態様では、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのReの総和、図6(d)の態様では、光学異方性層、及び支持体のReの総和が、110〜160nmであり、120〜150nmが好ましく、125〜145nmがより好ましい。
【0032】
一方、光学フィルムを表示パネルに配置した場合に、偏光膜より視認側外側に配置される部材のRthは、視野角特性に影響するので、その絶対値が小さいほうが好ましく、具体的には、Rthは−100nm〜100nmであり、−60〜60nmが好ましく、−60〜20nmがより好ましい。但し、上記した通り、偏光膜の透過軸方向によって、同一の部材が配置され、同一のRthであっても、視野角特性に影響する程度が異なる。具体的には、図2に示す態様、即ち、偏光膜の透過軸方向が、表示面左右方向を0°とした場合に、45°又は135°方向である態様では、偏光膜より視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響するが、一方で、図3に示す態様、即ち、偏光膜の透過軸方向が、表示面左右方向を0°とした場合に、0°又は90°方向である態様では、偏光膜と光学異方性層との間に配置される部材のRthはほとんど影響せず、光学異方性層及びさらにその視認面外側に配置される全ての部材のRthが視野角特性に影響する。
【0033】
図6(a)〜(d)の態様を例に挙げれば、図2の配置において、図6(a)の態様では、偏光膜保護フィルム、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和が、図6(b)の態様では、偏光膜保護フィルム、光学異方性層及び支持体全てのRthの総和が、図6(c)の態様では、支持体、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和が、図6(d)の態様では、光学異方性層及び支持体の全てのRthの総和が、−100nm〜100nmであり、−60〜60nmが好ましく、−60〜20nmがより好ましく;図3の配置において、図6(a)及び(c)の態様では、光学異方性層及び基材フィルム全てのRthの総和、図6(b)及び(d)の態様では、光学異方性層及び支持体のRthの総和が、−100nm〜100nmであり、−60〜60nmが好ましく、−60〜20nmがより好ましい。
【0034】
2.3D画像表示装置及び3D画像表示システム
本発明は、本発明の光学フィルムを有する3D画像表示装置及び3D画像表示システムにも関する。本発明の光学フィルムは、表示パネルの視認側に配置され、表示パネルが表示する画像を右眼用及び左眼用の円偏光画像又は直線偏光画像等の偏光画像に変換する機能を有する。観察者は、これらの画像を円偏光又は直線偏光眼鏡等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
【0035】
本発明では、表示パネルについてはなんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、透過モードの液晶パネル等は、視認側表面に画像表示のための偏光膜を有するので、本発明の光学フィルムが有する偏光膜を、液晶表示パネルの視認側の偏光膜としても利用してもよい。勿論、本発明の光学フィルムを、別途視認側表面に偏光膜を有する表示パネルの表面に配置してもよく、その態様では、本発明の光学フィルムの偏光膜の透過軸と、表示パネルが別途視認側表面に有する偏光膜の透過軸とを一致させて配置する。
【0036】
図6(a)〜(d)、及び図5(a)〜(d)に示す本発明の光学フィルムと、表示パネルとして液晶パネルとを有する3D画像表示装置の構成例を断面模式図として示すが、これらの構成に限定されるものではない。なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の液晶表示装置の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。図6(a)〜(d)に示す態様では、液晶セルの後方には、バックライトが配置され、バックライトと液晶セルとの間に偏光膜が配置された、透過モードとして構成されている。
【0037】
液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セルは、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。TNモードでは、一般的に、偏光膜の透過軸は、表示面左右方向0°に対して45°又は135°に配置されるので、TNモード液晶パネルとは、図2に示す態様の位相差板と組み合わせるのが好ましい。また、VAモード及びIPSモードでは、一般的に、偏光膜の透過軸は、表示面左右方向0°に対して0°又は90°に配置されるので、VAモード及びIPSモード液晶パネルとは、図3に示す態様の位相差板と組み合わせるのが好ましい。
【0038】
以下、本発明の3D画像表示装置用光学フィルムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0039】
光学異方性層:
本発明における光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層である。一例は、第1及び第2位相差領域がそれぞれλ/4程度のReを有し、且つ面内遅相軸が互いに直交している光学異方性層である。また、他の例は、一方が、λ/4程度、他方が3/4λ程度のReを有し、面内遅相軸が互いに平行な光学異方性層である。また、他の例は、一方がλ/2程度(具体的には250nm〜290nm)、他方はReが0の光学異方性層である。
【0040】
光学異方性層は単独でReがλ/4程度であってもよく、その場合はRe(550)が、110〜160nmであることが好ましく、120〜150nmであることがより好ましく、125〜145nmであることがさらに好ましく、125〜140nmであるこが特に好ましい。また、前記光学異方性層のRth(550)は55〜80nmであることが好ましく、60〜75nmであることがより好ましい。
【0041】
本発明では、前記光学異方性層の形成に、重合性液晶を用いる。一例は、重合性棒状液晶である。棒状液晶を水平配向させた状態で重合させ、その配向状態を固定化して形成することが好ましい。棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。上記高分子液晶化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
【0042】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0043】
【化1】

【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
また、前記重合性液晶化合物は、重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有していてもよい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む位相差層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0050】
通常、棒状液晶は波長が長くなるほどレターデーションが小さくなるので、波長G(550nm)におけるレターデーションがλ/4の137.5nmのものを使用する場合、波長R(600nm)に対してはそれより小さく、逆に波長B(450nm)に対してはそれよりも大きくなってしまう。この問題を解決するためには、△nd(450nm)<△nd(550nm)<△nd(650nm)を満足する、即ち、可視光域において、位相差が波長に対して逆分散特性(波長が長いほど位相差が大きくなる性質)の棒状液晶を用いることも好ましい。このような棒状液晶の例には、特開2007−279688号公報記載の一般式(I)、一般式(II)の化合物が含まれる。
【0051】
前記光学異方性層の形成方法の一例は、重合性棒状液晶を含む組成物(例えば塗布液)を、後述する光配向層やラビング配向層の表面に塗布すること、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定すること、を含む方法である。
【0052】
光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0053】
前記組成物には、重合性液晶化合物とともに、後述する重合開始剤や増感剤、及び配向剤等を添加してもよい。また、前記組成物は、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。
【0054】
配向膜等の表面に塗布された前記重合性棒状液晶を所望の配向状態とする。本発明では、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。なお、前記光学異方性層中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。
【0055】
次に、配向させた前記重合性棒状液晶を、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0057】
パターン光学異方性層は、種々の方法で形成でき、その製法については特に制限はない。
一例は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。
【0058】
また、水平配向膜(配向処理(例えばラビング処理)方向に液晶分子の長軸を配向規制する配向膜)と、直交配向膜(配向処理(例えばラビング処理)方向と直交する方向に液晶分子の長軸を配向規制する配向膜)とを、パターン形成し、その上で、前記重合性棒状液晶を配向させることによって、遅相軸が互いに直交するドメインからなる例えば1/4波長のパターン光学異方性層を形成することができる。水平配向膜と直交配向膜からなるパターン配向膜は、例えば、一方を一様に塗布等により形成した後、その表面上に印刷法等を利用して、他方をパターン状に形成し、同一の方向に一様にラビング処理することで形成できる。例えば、ゴム状フレキソ版を利用した印刷法を利用することができる。
【0059】
なお、本発明に利用可能な光配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。本発明の配向膜では、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルが好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルである。
【0060】
他の例は、パターン露光を利用する方法である。この例では、Reが0の領域と、Reが所定の範囲である領域とを有するパターン光学異方性層が形成できる。具体的には、棒状液晶を所定の配向状態にした後、パターン露光し、その配向状態を固定して、一方の位相差領域(Reが所定の範囲の位相差領域)を形成する。次に、等方相温度以上に加熱し、未露光部分を等方相とし、その後、露光して、等方相を固定し、Reが0の領域を形成する。異なる重合性基を有する棒状液晶を利用しても、同様にパターン光学異方性層を形成できる。
【0061】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0062】
透明支持体:
前記光学異方性層は、透明ポリマーフィルム等によって支持されていてもよい。該ポリマーフィルムが、前記光学異方性層と偏光膜との間に配置される場合は、該ポリマーフィルムは偏光膜の保護フィルムとして利用してもよい。また、該ポリマーフィルムが、光学異方性層の偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置される場合は、該ポリマーフィルムは、他の機能層、例えば光反射防止層等の支持体として利用してもよい。支持体としては、低Re及び低Rthのポリマーフィルムを用いるのも好ましい。また、光学異方性層が棒状液晶組成物からなる態様では、該光学異方性層のRthが正になるので、それを相殺するRthが負のポリマーフィルムを用いることも好ましい。
【0063】
前記支持体として利用するポリマーフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0064】
また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0065】
また、前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
【0066】
偏光膜:
偏光膜は、一般的な偏光膜を用いることができる。例えば、ヨウ素や二色性色素によって染色されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子膜を用いることができる。
【0067】
粘着層:
光学異方性層と偏光膜との間には、粘着層が配置されていてもよい。光学異方性層と偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001〜1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。粘着剤については特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いることができる。
【0068】
反射防止層:
前記光学異方性層の液晶セルと反対側に配置される側の表面には、反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では基材フィルム(表面フィルム支持体)上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層又は基材フィルム上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。これは、特に3D画像を表示する場合に、外光反射によるフリッカが発生してしまうのを効果的に防ぐことができるからである。上記反射防止層は、さらにハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を有していてもよい。上記反射防止層を構成する各層の詳細については、特開2007−254699号公報の[0182]〜[0220]に記載があり、本発明に利用可能な反射防止層についても好ましい特性、好ましい材料等について、同様である。
【0069】
前記基材フィルムは、光学異方性層の透明支持体を兼ねていてもよい。基材フィルムとして利用可能なポリマーフィルムの例については、前記光学異方性層の透明支持体の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0070】
前記基材フィルムのRe(550)は、−5〜10nmが好ましく、−2〜7nmがより好ましく、0〜5nmが特に好ましい。また、基材フィルムのRth(550)は、−200〜0nmが好ましく、−170〜0nmがより好ましく、−150〜0nmが特に好ましい。
【0071】
液晶セル:
本発明の3D用画像表示システムに用いられる3D用画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0072】
3D画像表示システム用偏光板:
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、偏光板を通して画像を認識する。偏光板の一態様は、偏光眼鏡である。前記位相差板によって右眼用及び左眼用の円偏光画像を形成する態様では、円偏光眼鏡が用いられ、直線偏光画像を形成する態様では、直線眼鏡が用いられる。光学異方性層の前記第1及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され、前記第1及び第2位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
【0073】
偏光眼鏡を含め、本発明の3D用画像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、位相差板は、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1位相差領域と前記第2位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
【0074】
円偏光を利用する場合、前記第1位相差領域と前記第2位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
【0075】
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
【0076】
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM−M220Wの付属品を挙げることができる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0078】
(実施例1)
<透明支持体Aの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアシレート溶液Aの組成
────────────────────────────────────
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
────────────────────────────────────
【0079】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
────────────────────────────────────
添加剤溶液Bの組成
────────────────────────────────────
下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
────────────────────────────────────
【0080】
【化7】

【0081】
<<セルロースアセテート透明支持体の作製>>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルム(透明支持体A)を作製した。透明支持体Aは紫外線吸収剤を含有しておらず、Re(550)は0nmであり、Rth(550)は12.3nmであった。
【0082】
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアセテート透明支持体Aを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体Aを作製した。
【0083】
────────────────────────────────────
アルカリ溶液の組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0084】
<光配向膜付透明支持体Aの作製>
実施例1で作製した透明支持体Aの鹸化処理を施した面に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を図10(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、図10(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
【0085】
【化8】

【0086】
<パターン化された光学異方性層Aの作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付透明支持体A上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、透明支持体A上にパターン化された光学異方性層Aの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
【0087】
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成
────────────────────────────────────────
棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────────
【0088】
【化9】

【0089】
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Aから剥離した後、第1位相差領域又は第2位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図9に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は白色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜の露光方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、棒状液晶を光配向膜上で配向させて露光することによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0090】
次に、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面の棒状液晶のチルト角、空気界面の棒状液晶のチルト角、遅相軸の方向、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表2に示す。下記表中、水平とは、チルト角0°〜20°を表す。
【0091】
表2に示す結果から、棒状液晶を、水平配向剤の存在下で、光配向膜にマスク偏光露光した後、該光配向膜上で配向させることによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0092】
<表面フィルムAの作製>
<<反射防止膜の作製>>
[ハードコート層用塗布液の調製]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK−ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0093】
[中屈折率層用塗布液Aの調製]
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0094】
[中屈折率層用塗布液Bの調製]
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)4.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.14質量部、メチルエチルケトン66.5質量部、メチルイソブチルケトン9.5質量部及びシクロヘキサノン19.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して中屈折率層用塗布液Bを調製した。
【0095】
屈折率1.36、膜厚90μmとなるように、中屈折率用塗布液Aと中屈折率用塗布液Bとを適量混合し、中屈折率塗布液を調製した。
【0096】
[高屈折率層用塗布液の調製]
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、光重合開始剤含有、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])14.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)0.75質量部、メチルエチルケトン62.0質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して高屈折率層用塗布液Cを調製した。
【0097】
[低屈折率層用塗布液の調製]
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0098】
【化10】

上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0099】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった。
【0100】
[中空シリカ粒子分散液Aの調製]
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0101】
[低屈折率層用塗布液の調製]
各成分を下記のように混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分濃度5質量%の低屈折率層用塗布液Ln6を作製した。下記各成分の質量%は、塗布液の全固形分に対する、各成分の固形分の比率である。
【0102】
────────────────────────────────────────
・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1) 15質量%
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリト
ールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製) 7質量%
・MF1:国際公開第2003/022906号パンフレットの実施例記載の下
記含フッ素不飽和化合物(重量平均分子量1600) 5質量%
・M−1:日本化薬(株)製KAYARAD DPHA 20質量%
・分散液A:前記中空シリカ粒子分散液A(アクリロイルオキシプロピルトリメ
トキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%) 50質量%
・Irg127:光重合開始剤イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・
ケミカルズ(株)製) 3質量%
────────────────────────────────────────
【0103】
【化11】

【化12】

【0104】
<透明支持体Bの作製>
<<セルロースアセテート透明支持体Bの作製>>
下記の組成でセルロースアシレート溶液(ドープ)を調整した。
【0105】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチレンクロライド 435質量部
メタノール 65質量部
セルロースアシレートベンゾエート(CBZ) 100質量部
(アセチル置換度2.45、ベンゾイル置換度0.55、質量平均分子量180000)
二酸化ケイ素微粒子(平均粒径20nm、モース硬度 約7) 0.25質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0106】
得られたドープを、製膜バンド上に流延し、室温で1分間乾燥後、45℃で5分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は30質量%であった。セルロースアシレートフィルムをバンドから剥離し、100℃で10分間乾燥した後、130℃で20分間乾燥し、セルロースアセテートフィルム透明支持体B(透明支持体B)を得た。溶剤残留量は0.1質量%であった。透明支持体Bは紫外線吸収剤を含有しておらず、膜厚は45μmであり、Re(550)は0nmであり、Rth(550)は−75nmであった。
【0107】
<表面フィルムAの作製>
透明支持体Bを表面フィルム用支持体として使用し、表面フィルム用支持体B上に、前記組成のハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Aを形成した。
更に中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。このようにして、表面フィルムAを作製した。
【0108】
<光学フィルムAの作製>
上記作製した表面フィルムAの透明支持体B面とパターン化された光学異方性層Aの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムAを作製した。
【0109】
<偏光板Aの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板A用保護フィルムAとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULと、同様のアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の間に挟んで貼り合せ、TD80ULとVA用位相差フィルムが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Aを作製した。このときVA用位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度を直交にした。
【0110】
<光学フィルムA付偏光板Aの作製>
上記作製した光学フィルムAの透明支持体A面と偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムA付偏光板Aを作製した。このときパターン化された光学異方性層Aの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度を±45度にした。
【0111】
<立体表示装置Aの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムA付偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(a)の構成の立体表示装置Aを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは、図3と同様である。
【0112】
(実施例2)
<パターン化された光学異方性層Bの作製>
上記透明支持体Aを上記透明支持体Bに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、透明支持体B上にパターン化された光学異方性層Bの作製を行った。なお、光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
【0113】
(光学異方性層Bの評価)
表2に示す結果から、棒状液晶を、水平配向剤の存在下で、光配向膜にマスク偏光露光した後、該光配向膜上で配向させることによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域とを有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0114】
<光学フィルムBの作製>
透明支持体B上にパターン化された光学異方性層Bを有するフィルムにおいて、透明支持体Bの光学異方性が形成されていない側の表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムBを作製した。
【0115】
<光学フィルムB付偏光板Bの作製>
上記作製した光学フィルムBのパターン化された光学異方性層B面と実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムB付偏光板Bを作製した。このときパターン化された光学異方性層Bの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度を±45度にした。
【0116】
<立体表示装置Bの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムB付偏光板BのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(b)の構成の立体表示装置Bを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
【0117】
(実施例3)
<透明支持体Cの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
────────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液の組成
────────────────────────────────────────
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
────────────────────────────────────────
【0118】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤(A)16質量部、メチレンクロライド92質量部及びメタノール8質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部にレターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、6.0質量部であった。
【0119】
【化13】

【0120】
得られたドープを、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムを140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%の透明支持体Cを作製した。
【0121】
得られた透明支持体Cの厚さは80μmであった。また、面内レターデーション(Re)は8nm、厚み方向のレターデーション(Rth)は78nmであった。
【0122】
<パターン化された光学異方性層Cの作製>
透明支持体Aを上記透明支持体Cに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、透明支持体C上にパターン化された光学異方性層Cの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
【0123】
(光学異方性層Cの評価)
表2に示す結果から、棒状液晶を、水平配向剤の存在下で、光配向膜にマスク偏光露光した後、該光配向膜上で配向させることによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0124】
<偏光板Cの作製>
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。実施例1と同様の方法にて、透明支持体C上にパターン化された光学異方性層Cを有するフィルムの透明支持体C面をアルカリ鹸化処理し、同様にアルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を、偏光膜を間に挟んで接着剤で貼り合せ、VA用位相差フィルムと透明支持体Cが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Cを作製した。このときVA用位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度を直交にした。また、偏光膜の他方の表面上に配置されているパターン化された光学異方性層Cの遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度を±45度にした。
【0125】
<表面フィルムB付偏光板Cの作製>
<<セルロースアシレートの調製>>
全置換度2.97(内訳:アセチル置換度0.45、プロピオニル置換度2.52)のセルロースアシレートを調製した。触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及びその量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。
【0126】
<<セルロースアシレート溶液の調製>>
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
2)溶媒
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)を溶媒として用いた。なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
3)添加剤
全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度 約7)0.25質量部を添加した。
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、更に絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
【0127】
<<透明支持体Dの作製>>
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延用ダイ(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルム透明支持体Dを得た(膜厚41μm)。
透明支持体Dは紫外線吸収剤を含有しておらず、このフィルムのReは0nm、Rthは−40nmであった。
【0128】
上記透明支持体Dを表面フィルム用支持体として使用し、表面フィルム用支持体D上に、実施例1と同様の方法にて表面フィルムBを作製した。
【0129】
表面フィルムBの透明支持体D面と上記偏光板Cのパターン化された光学異方性層C面を接着剤で貼り合せ、表面フィルムB付偏光板Cを作製した。
【0130】
<立体表示装置Cの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した表面フィルムB付偏光板CのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(c)の構成の立体表示装置Cを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図3と同様であった。
【0131】
(実施例4)
<光配向膜付透明支持体の作製>
光学フィルムB付偏光板Bの作製において、光学フィルムBの透明支持体BをTD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)に変更し、偏光板BのTD80ULを透明支持体Bに変更し、且つ、VA用位相差フィルムをWV−EA(富士フイルム社製)に変更し、光配向膜への偏光露光方法を下記のように変更した以外、光学フィルムB付偏光板Bと同様の方法にて、光学フィルムD付偏光板Dを作製した。光配向膜への偏光露光については、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)をマスクのストライプと平行にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、ワイヤーグリッド偏光子をストライプに直交にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。
また、パターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度を±45度にした。
【0132】
<立体表示装置Dの作製>
円偏光眼鏡方式の3DモニターW220S(Hyundai製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合し、図6(b)の構成の立体表示装置Dを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
【0133】
(実施例5)
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
(1)平行配向膜(第一の配向膜)の作製
実施例1で作製した透明支持体Bの、鹸化処理を施した面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水/メタノール溶液(PVA103(4.0g)を水72g及びメタノール24gに溶解させた、粘度4.35cp、表面張力44.8dyne)を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。
【0134】
(2)パターニング直交配向膜(第二の配向膜)の作製
下記配向膜ポリマーA(Mw25000)2.0gを水1.12g/プロパノール5.09g/3−メトキシ−1−ブタノール5.09gに溶解させ、塗布液を調製した。
【0135】
【化14】

【0136】
次に、フレキソ版として、図7に示す形状の凹凸を有する合成ゴム状フレキソ版を作製した。
【0137】
図8に記載のフレキソ印刷装置として、フレキシプルーフ100(RK Print Coat Instruments Ltd. UK)を使用した。アニロックスローラはセル400線/cm(容積3cm3/m2)を使用した。上記フレキソ版をフレキシプルーフ100の圧胴に感圧テープをつけて貼り合わせた。印圧ローラに前記平行配向膜を貼り付けた後、前記パターニング直交配向膜用塗布液をドクターブレードに入れ、印刷速度30m/minで直交配向膜を平行配向膜の上にパターン印刷した。
【0138】
(3)ラビング配向層の作製
80℃で5分間乾燥させた後に、パターンのストライプラインに対して平行方向に、1000rpmで1往復ラビング処理を行い、ラビング配向層を作製した。
【0139】
<パターン化された光学異方性層Eの作製>
実施例1で作製した光学異方性用塗布液を透明支持体B上に塗布、膜面温度105℃で1分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、パターン化された光学異方性層Eの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
【0140】
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Bから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表2に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向との関係を示す。表1に示す結果から、棒状液晶を、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜(第一の配向膜)/配向膜ポリマーA系ラビング配向膜(第二の配向膜)上で配向させて露光することによって、水平配向であるとともに、遅相軸が互いに直交した第1位相差領域と第2位相差領域とを有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0141】
<光学フィルムEの作製>
パターン化された光学異方性層Eの透明支持体Bの表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムEを作製した。
【0142】
<光学フィルムE付偏光板Eの作製>
WV−EA(富士フイルム社製)の表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜をえた。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したWV−EAを、鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の片面に貼り合せ、さらにもう片面には、光学フィルムEのパターン化された光学異方性層E面を接着剤を介して貼り合せた。このようにして、WV−EAと光学フィルムEが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Eを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度を±45度にした。
【0143】
<立体表示装置Eの作製>
円偏光眼鏡方式の3DモニターW220S(Hyundai製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合し、図6(d)の構成の立体表示装置Fを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
【0144】
(実施例6)
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
Re(550)が138nm、Rth(550)が69nmの帝人化成社製ピュアエースフィルムの表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。その後に、ピュアエースの遅相軸と平行方向に400rpmで1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。配向膜の厚みは0.5μmであった。
【0145】
<パターン化された光学異方性層Gの作製>
実施例1で作製した光学異方性層用組成物を、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、1/2波長用塗布液として用いた。該塗布液を塗布、膜面温度105℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、75℃まで冷却した。次に、横ストライプ幅285μmのマスクを1/2波長層用塗布液を塗布した基板上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1位相差領域を形成した。続いて、膜面温度130℃まで昇温し、一旦等方相にした後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2位相差領域を形成した。この様にしてパターニング1/2波長層を作製した。なお、マスクは、ストライプ方向とラビング処理方向が平行になるように配置した。膜厚は、2.7μmであり、チルト角は、ほぼ0°であることを確認した。別途ガラス基板上に同様の光学異方性層を形成し、測定波長550nmにおけるReを測定したところ、第1位相差領域のReは275nmであり、遅相軸はピュアエースの遅相軸と平行であり、第2位相差領域のReは0nmであった。パターン化された光学異方性層Gの第1位相差領域のReと透明支持体のReとの合計値は413nm、第2位相差領域のReと透明支持体のReとの合計値は138nmであり、第1位相差領域と第2位相差領域の遅相軸は平行であった。
【0146】
<光学フィルムGの作製>
前記表面フィルムAにおいて、透明支持体Bを2枚積層した後、透明支持体B面とパターン化された光学異方性層Gの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムGを作製した。
【0147】
<偏光板Gの作製>
WV‐EA(富士フイルム社製)の支持体面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。前記のアルカリ鹸化処理したWV‐EAの鹸化した支持体面が偏光膜側となるようしてポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として偏光膜の片面に貼り合せ、さらにもう片面には、光学フィルムGの支持体面を接着剤を介して貼り合せた。このようにして、WV‐EAと光学フィルムGが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Gを作製した。このときパターン化された光学異方性層Gの遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度を45度にした。
【0148】
<立体表示装置Gの作製>
円偏光眼鏡方式の3DモニターW220S(Hyundai製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合し、図6(c)の構成の立体表示装置Gを作製した。なお、偏光膜の吸収軸の向きは図2と同様であった。
【0149】
(実施例7)
<パターン化された光学異方性層Jの作製>
マスクを、ストライプ方向とラビング処理方向が45°となるように配置した以外、実施例6と同様の方法にて光学異方性層Jを作製した。
【0150】
<光学フィルムJの作製>
透明支持体Bを2枚積層するのを、透明支持体Bを1枚とした以外は、実施例6と同様の方法にて光学フィルムJを作製した。
【0151】
<偏光板Jの作製>
偏光板Gの作製において、WV‐EA(富士フイルム社製)の代わりにVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を使用した以外は、偏光板Gの作製と同様にして、偏光板Jを作製した。
【0152】
<立体表示装置Jの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した偏光板JのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼合した。続いて、光源側の偏光板をはがし、偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せた。このような手順で、図6(c)の構成の立体表示装置Jを作製した。
【0153】
(比較例1)
<光配向膜付透明支持体Kの作製>
国際公開2010/090429号パンフレットに記載の棒状液晶及び配向膜を使用して立体表示装置Kを作製した。
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)の鹸化処理を施した面に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を図10(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、図10(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
【0154】
【化15】

【0155】
<パターン化された光学異方性層Kの作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付透明支持体K上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、パターン化された光学異方性層Kの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
【0156】
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成
────────────────────────────────────────
棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────────
【0157】
【化16】

【0158】
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層をTD80ULから剥離した後、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表2に、光学異方性層の遅相軸と配向膜の露光方向の方向との関係を示す。表2に示す結果から、棒状液晶を光配向膜上で配向させて露光することによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0159】
<光学フィルムKの作製>
パターン化された光学異方性層Kを有するTD80ULの光学異方性層のない側の表面に、実施例1と同様の方法にて反射防止膜を形成し、光学フィルムKを作製した。
【0160】
<光学フィルムK付偏光板Aの作製>
上記作製した光学フィルムKのパターン化された光学異方性層K面と実施例1で作製した偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムK付偏光板Aを作製した。このときパターン化された光学異方性層Kの遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度を±45度にした。
【0161】
<立体表示装置Kの作製>
ナナオ社製FlexScan S2231Wの視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムK付偏光板AのVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せ、図6(b)の構成の立体表示装置Kを作製した。なお、偏光膜の透過軸の向きは図3と同様であった。
【0162】
(比較例2)
<パターン化された光学異方性層Iの作製>
比較例1のパターン化された光学異方性層Kの作製において、ワイヤーグリッド偏光子をマスクのストライプと平行に設置した以外は、同様の方法で、TD80UL上にパターン化された光学異方性層Iを有するフィルムを作製した。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
<光学フィルムIの作製>
実施例1で作製した表面フィルムAの透明支持体Bを、市販のセルロースアセテートフィルムTD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)に変更し、このTD80UL面と、上記と同様にして作製したパターン化された光学異方性層Kを形成したフィルムTD80ULの光学異方性層K面とを接着剤で貼り合せ、光学フィルムIを作製した。
【0163】
<偏光板Iの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)とWV‐EA(富士フイルム社製)を偏光板I用保護フィルムとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULと支持体面に前記のアルカリ鹸化処理を施したWV‐EAとを、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の間に挟んで貼り合せ、TD80ULとWV‐EAが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Iを作製した。
【0164】
<光学フィルムI付偏光板Iの作製>
上記作製した光学フィルムIのTD80UL面と偏光板IのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムI付偏光板Iを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸とのなす角度を±45度にした。
【0165】
<立体表示装置Iの作製>
円偏光眼鏡方式の3DモニターW220S(Hyundai製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板Iを貼合し、図6(a)の構成の立体表示装置Iを作製した。なお、偏光膜の透過軸の向きは図2と同様であった。
【0166】
(実施例8)
上記作製した立体表示装置Aにおいて、フロント偏光板の偏光膜とパターン化された光学異方性層の間にある透明支持体AとTD80ULを、いずれもZ−TAC(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=−1/−1)に変更した以外は同様の方法で、立体表示装置A’を作製した。
【0167】
(実施例9)
<透明支持体Lの作製>
透明支持体Dの作製において、溶媒にセルロースアシレートを溶解する際に、セルロースアシレートとともに、下記UV吸収剤Aを3.0%を投入して撹拌、分散させた以外は同様の方法で透明支持体Lを作製した。得られた透明支持体LのRe(550)は0nm、Rth(550)は−75nmであった。
【0168】
【化17】

【0169】
上記作製した立体表示装置Aにおいて、表面フィルムAの透明支持体Bを透明支持体Lに変更した以外は同様の方法で、立体表示装置A”を作製した。
【0170】
(実施例10)
実施例2において、上記作製した立体表示装置Bにおいて、フロント偏光板の偏光膜とパターン化された光学異方性層の間にあるTD80ULを、Z−TAC(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=−1/−1)に変更した以外は同様の方法で、立体表示装置B’を作製した。
【0171】
(実施例11)
上記作製した立体表示装置Cにおいて、フロント偏光板の偏光膜とパターン化された光学異方性層の間にある透明支持体Cを、Z−TAC(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=−1/−1)に変更した以外は同様の方法で、立体表示装置C’を作製した。
【0172】
(比較例3)
上記作製した立体表示装置Dにおいて、フロント偏光板の偏光膜とパターン化された光学異方性層の間にある透明支持体Bを、Z−TAC(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=−1/−1)に変更した以外は同様の方法で、立体表示装置D’を作製した。
【0173】
表2に実施例1〜11及び比較例1〜3の光学異方性層の物性値、表3、4に偏光膜よりも視認側に配置された部材のレターデーションをまとめた。
【0174】
【表2】

【0175】
【表3】

【0176】
【表4】

【0177】
(評価)
<立体表示装置の評価>
作製した各立体表示装置について、TN型液晶表示装置についてはW220S(Hyundai製)に付属の3Dメガネを、VA型液晶表示装置については55LW5700(LG製)に付属の3Dメガネを用いて以下の評価を行った。なお、基準形態については、VA型液晶表示装置では比較例1の立体表示装置Kとし、TN型液晶表示装置では比較例2の立体表示装置Iとした。結果を表5、6に示す。
【0178】
(1)正面輝度比および正面平均輝度比の測定
上下方向に白と黒が交互に並んだストライプ画像を表示した液晶表示装置の正面に3Dメガネと測定器(BM−5A トプコン製)を配置し、白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて白表示における正面輝度Aを測定した。続いて、白と黒の位置を入れ替えたストライプ画像を表示し、同様に白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて正面輝度Bを測定し、正面輝度Aと正面輝度Bの平均値を立体表示装置の正面輝度とした。
(1−a)正面輝度比
正面輝度比は3Dメガネと地面が平行の場合の正面輝度の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の正面輝度比(%)=各立体表示装置の正面輝度/基準形態の正面輝度
(1−b)正面平均輝度比
正面平均輝度比は3Dメガネを回転させたときの正面輝度平均値の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の正面平均輝度比(%)
=各立体表示装置の正面輝度平均値/基準形態の正面輝度平均値
【0179】
(2)視野角輝度比および視野角平均輝度比の測定
上下方向に白と黒が交互に並んだストライプ画像を表示した液晶表示装置の対し、方位角0度の極角60度に3Dメガネと測定器(BM−5A トプコン製)を配置し、白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて白表示における視野角輝度Cを測定した。続いて、白と黒の位置を入れ替えたストライプ画像を表示し、同様に白のストライプが視認できる方のメガネを通した位置に測定器をおいて視野角輝度Dを測定した。さらに、液晶表示装置に対して方位角180度の極角60度に3Dメガネと測定器を配置した場合についても同様の方法で視野角輝度E、視野角輝度Fを測定し、視野角輝度C〜Fの平均値を立体表示装置の視野角輝度とした。
(2−a)視野角輝度比
視野角輝度比は3Dメガネと地面が平行の場合の視野角輝度の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の視野角輝度比(%)
=各立体表示装置の視野角輝度/基準形態の視野角輝度
(2−b)視野角平均輝度比
視野角平均輝度比は3Dメガネを回転させたときの視野角輝度平均値の相対値であり、次の式で算出した。
各立体表示装置の視野角平均輝度比(%)
=各立体表示装置の視野角輝度平均値/基準形態の視野角輝度平均値
【0180】
(3)耐光性
耐光性試験装置(スーパーキセノンウェザーメーターSX120型(ロングライフキセノンランプ)、スガ試験機(株)製)を用い、放射照度100±25W/m2(波長310nm〜400nm)、試験槽内温度35±5℃、ブラックパネル温度50±5℃、相対湿度65±15%の条件で、JIS K 5600−7−5に準じて耐光性試験25hrを実施した前後に、位相差板の光学異方性の変化や偏光板の偏光度の変化を調べた。変化率が10%以内である場合を○、それより大きい場合を×とした。
【0181】
【表5】

【0182】
上記表から、比較例1は、Rthの合計値が大きく視野角における輝度低下が実施例と比較して大きいことがわかる。特にVAモードの態様では、λ/4層(パターン化された光学異方性層やλ/4フィルム)よりも視認側にある部材の合計Rthが視野角輝度において重要であることがわかる。すなわち、通常では支持体の面内遅相軸は視認側偏光膜と直交または平行に配置されるが、このような配置においては、λ/4層と視認側偏光膜との間に配置された部材(支持体)のRthは視野角輝度に効かないと理解できる。
なお、IPSモードの場合もVAモードと同様の試験を行ったところ、同様の結果であった。
【0183】
【表6】

【0184】
上記表から、比較例2及び比較例3は、Rthの合計値が大きく視野角における輝度低下が実施例と比較して大きいことがわかる。特に、TNモードの態様では、VAモードとは異なり、視認側偏光膜よりも視認側にある部材すべてのRthが視野角輝度に影響すると理解できる。
【0185】
また、パターン化された光学異方性層より視認側外側に、紫外線吸収剤を含有する支持体等が配置されている立体表示装置、実施例4及び実施例9は、パターン化された光学異方性層より視認側外側に紫外線吸収剤を含有する支持体等が配置されていないそれ以外の実施例と比較して、耐光性が改善していることが理解できる。
【符号の説明】
【0186】
10 位相差板
12 パターン光学異方性層
12a 第1の位相差領域
12b 第2の位相差領域
a 面内遅相軸
b 面内遅相軸
14 透明支持体
16 偏光膜
31 フレキソ板
32 平行配向膜(または直交配向膜)
33 パターン印刷用直交配向膜液(またはパターン印刷用平行配向膜液)
40 フレキソ印刷装置
41 圧胴
42 印圧ローラ
43 アニックスローラ
44 ドクターブレード
p 偏光板の吸収軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層と偏光膜とを少なくとも含み、
前記偏光膜が、任意の辺に対して45°の方向に吸収軸を有し、
前記光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であり、
前記光学異方性層は、前記偏光膜の一方の面上に配置されており、
前記偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材であって、前記第1及び第2位相差領域の少なくとも一方に対応する領域に配置されている前記全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmであり、
前記偏光膜の前記一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−100〜100nmであることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルム。
【請求項2】
重合性液晶を主成分とする組成物から形成されている光学異方性層と偏光膜とを少なくとも含み、
前記偏光膜が、任意の辺に対して90°の方向に吸収軸を有し、
前記光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であり、
前記光学異方性層は、前記偏光膜の一方の面上に配置されており、
前記偏光膜の一方の面上に配置されている前記光学異方性層を含む全ての部材であって、前記第1及び第2位相差領域の少なくとも一方に対応する領域に配置されている前記全ての部材の波長550nmの面内レターデーションRe(550)の合計値が、110〜160nmであり、
前記光学異方性層、及び該光学異方性層の前記偏光膜が配置されている表面と反対の表面上に配置されている全ての部材の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)の合計値が、−100〜100nmであることを特徴とする3D画像表示装置用光学フィルム。
【請求項3】
前記第1及び第2位相差領域の面内遅相軸と、前記偏光膜の透過軸とがそれぞれ±45°の角度をなす請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学異方性層の前記偏光膜を有する表面と反対側の表面上に、紫外線吸収剤を含有する層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記重合性液晶が重合性棒状液晶である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記重合性棒状液晶が水平配向状態に固定されている請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記光学異方性層と前記偏光膜との間に、波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が、−200〜0nmであるポリマーフィルムを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記光学異方性層の前記偏光膜を有する表面と反対側の表面上に光反射防止層を有し、前記光学異方性層と前記光反射防止層との間に、波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が、−200〜0nmであるポリマーフィルムを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルの視認側に配置される請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムとを少なくとも有する3D用画像表示装置。
【請求項10】
前記表示パネルが液晶セルを有する請求項9に記載の3D用画像表示装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項3〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムを有し、前記液晶セルが、TNモードである請求項10に記載の3D用画像表示装置。
【請求項12】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムを有し、前記液晶セルが、VAモード又はIPSモードである請求項10に記載の3D用画像表示装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の3D用画像表示装置と、該3D用画像表示装置の視認側に配置される偏光板とを少なくとも備え、該偏光板を通じて立体画像を視認させる3D画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−41213(P2013−41213A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179732(P2011−179732)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】