説明

3D表示装置の照明装置用の光デバイス

【課題】表示装置、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器に向かって照明光を導光する光デバイスに関する。
【解決手段】光デバイス2は、凹面鏡の原理に従って動作し、表示装置1の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器5に向かって照明光3を導光する多数の反射素子6を備えること、および/または表示装置の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器に向かって照明光3を導光するホログラフィック光学素子(HOE)の態様で、特にホログラフィック体積格子の態様で設計された少なくとも1つの透過素子を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器に向けて照明光を導光する光デバイスに関する。
【0002】
更に、本発明は、表示装置の照明装置、特にバックライトユニットと、表示装置、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置とに関する。
【背景技術】
【0003】
3次元シーンのホログラフィック再構成装置は、国際公開第2006/119920号から周知である。この装置は複数の光源を備え、光源からの光は、レンズにより平行光に変換され、その後空間光変調器に向けて導光される。このような装置は、照明装置が広いスペースを必要とするという欠点を有する。従って、このような構成で特に薄型の表示装置を製造することは不可能である。
【0004】
更に、表示装置で使用されるバックライトユニットは、国際公開第2007/002796号から周知である。バックライトユニットは、反射層に形成されたアパーチャアレイと、アパーチャアレイの前方に配設されたマイクロレンズアレイとを備える。しかし、この種のバックライトも、非常に広いスペースを必要とする。更に、アパーチャアレイのアパーチャを透過しなかった光の部分は、使用されないまま失われてしまう。
【0005】
国際公開第2008/036640号は、別の種類のバックライトを開示する。この場合、光源として発光ダイオード(LED)が使用される。発光ダイオードは、反射平面と発光面との間に配設された透明光学膜に装着される。この装置には2つの大きな欠点がある。第1に、放射された光は平行光に変換されない。第2に、発光ダイオードによって反射層の大部分が陰になるので、放射光の一部が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/119920号(特表2008−541145)
【特許文献2】国際公開第2007/002796号(特表2009−500662)
【特許文献3】国際公開第2008/036640号(特表2010−504617)
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の目的は、必要とするスペースが従来の光デバイスより狭く、表示装置、特に3D表示装置の画素マトリックス部および/または空間光変調器を平行光によって均一に照明できる光デバイスを提供することである。
【0008】
本発明によれば、凹面鏡の原理に従って動作し、表示装置の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器に向けて照明光を導光する多数の反射素子を備えること、および/または表示装置の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器に向けて照明光を好ましくは平行光として導光するホログラフィック光学素子(HOE)の態様で、特にホログラフィック体積格子の態様で設計された少なくとも1つの透過素子を備えることを特徴とする光デバイスにより、上記の目的は達成される。
【0009】
本発明に係る光デバイスは、必要とされるスペースがごく狭くて済むように製造可能であるという利点を有する。これにより、表示装置用の非常に薄型の照明装置を製造でき、その結果、非常に平坦な表示装置を実現できるのが更に好ましい。
【0010】
本発明に係る光デバイスの好適な一実施態様において、反射素子および/または少なくとも1つの透過素子は、平面の中に且つ/又はマトリックス状に並列して配設される。詳細には、本発明に係る表示装置において、制御可能空間光変調器の画素は、マトリックス状に配列された複数の画素群として配列され、各反射素子および/または少なくとも1つの透過素子が1つの画素群に割り当てられるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る光デバイスの特に好適な一実施態様において、反射素子は凹面鏡の態様で、特に放物面鏡の態様で設計される。詳細には、反射素子は非点収差鏡の態様で、特に円筒鏡の態様で構成される。このような構成は、光ファイバなどの細長い光源が使用される場合に特に好ましい。
【0012】
しかし、反射素子が球面鏡の態様で設計されることも可能である。このような構成は、実光源又は仮想光源、あるいは光ファイバの個別のデカップリングサイトなどの少なくとも大半の点状光源が使用される場合に特に好ましい。
【0013】
容易に製造可能な本発明に係る光デバイスの一実施態様において、複数の反射素子および/または少なくとも1つの透過素子は共通の基板を有する。あるいは、各反射素子は個別の基板を有することも可能である。
【0014】
特に薄型で頑丈な実施態様において、光デバイスは反射素子を支持する板、特に透明且つ/又はクリアなガラス板又はプラスチック板を備える。その代わりに又はそれに加えて、反射素子は、特に高温スタンピング処理により板に反射素子構造をエンボス加工することによって形成されるのが好ましい。
【0015】
例えば、反射素子は、板、特にガラス板又はプラスチック板に反射素子を成形することによって、あるいはそのような板を高温スタンピングすることによって形成される。その代わりに又はそれに加えて、例えばダイアモンドフライスカッタを使用して、フライス削りによって反射素子構造を形成することも可能である。
【0016】
本発明に係る光デバイスの特定の一実施態様において、反射素子は、反射層を備えるか又は反射層によって被覆された少なくとも1つの基板、特に透明な基板を備える。その代わりに又はそれに加えて、反射素子は、外側凸面が反射層を備えるか又は外側凸面が反射層によって被覆されている少なくとも1つの透明基板を備えるのが好ましい。
【0017】
実際の用途の光学境界条件に非常に厳密に適合可能であり、非常に精密に動作する特に好適な一実施態様において、反射素子は、ホログラフィック光学素子(HOE)の態様で、特に反射型体積ホログラムの態様で設計される。本発明によれば、反射素子は、ホログラフィック光学素子(HOE)、特に反射型体積ホログラムを備えるのが少なくとも好ましい。このような実施態様は、照明装置、特にバックライトユニットおよび/または表示装置において頑丈で省スペースの積層設計を簡単に実現できるという特定の利点を有する。
【0018】
反射素子は、5mmより小さく、特に4mmより小さく、更に詳細には3mmより小さいアパーチャを少なくとも1つの開口方向に備えるのが好ましい。特に、表示装置が観察者の瞳の実際の位置に従って制御される3D表示に適用される場合、このような反射素子では、発生する可能性がある回折アーティファクトは最小限に抑えられるので、観察者がアーティファクトを知覚しないという利点が得られる。この点に関して、隣接する反射素子の光のコヒーレント干渉を防止するために又は個別の画素の間のクロストークのような望ましくないコヒーレント重畳を最小限に抑えるために、空間コヒーレンスを絶対必要な最小値まで制限することが不可欠である。
【0019】
更に、スペックルのような妨害アーティファクトを防止するために、隣接する反射素子と隣接する透過素子の光のコヒーレント重畳を回避するように、隣接する反射素子の離間距離および/または隣接する透過素子の離間距離は、照明光のコヒーレンス長より長いのが好ましい。
【0020】
画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器の大部分について均一な照明を可能にする本発明に係る光デバイスの好適な一実施態様において、反射素子および/または少なくとも1つの透過素子は、照明光を平行光に変換するように配設される。本発明に係る光デバイスを備えた照明装置において、これは、例えば反射素子および/または透過素子の実焦点又は仮想焦点に少なくとも1つの光源が配設されることによって実現可能である。その代わりに又はそれに加えて、反射素子および/または透過素子の実焦点又は仮想焦点に配設される少なくとも1つの光源を含む複数の光源が設けられるのが好ましい。
【0021】
前述のように、本発明に係る光デバイスは、表示装置、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置の照明装置、特にバックライトユニットで使用されるのが好ましい。
【0022】
そのような照明装置の一実施態様において、各反射素子および/または各透過素子に、互いに離間して配置された複数の光源が割り当てられる。その代わりに又はそれに加えて、互いに離間して配置される複数の光源は、各反射素子および/または各透過素子の実焦点面又は仮想焦点面にそれぞれ配置されるのが好ましい。
【0023】
例えば、複数の光導波路構造が並列して又は交互配列として配設される。各反射素子又は各透過素子に、互いに側方にわずかに離間して配設された複数の光源、例えば3つの光源が割り当てられる。詳細には、それらの複数の光源のうち、(任意に)1つの光源のみが動作する。これにより、表示装置における3つの異なる放射角度、例えば水平方向に0°、−10°、+10°という放射角度のうち1つの角度を選択できる。例えば、画素マトリックス部の背後に又は制御可能空間光変調器の背後に配設された追跡素子、例えばLC格子、すなわち国際公開第2010/149587A2号に回折素子として説明されている構成に似た構成を支持し、特にそのような追跡素子の「角度負荷」を減少させるために、この構成が使用されるのが好ましい。
【0024】
本発明に係る照明装置の好適な一実施態様において、光源は少なくとも1つの光導波路を備える。詳細には、光源は、互いに並列して配設された反射素子の行および/または透過素子の実焦点又は仮想焦点を通る少なくとも1つの光導波路を備える。
【0025】
例えば、光導波路のデカップリングサイトは光源としてそれぞれ使用され且つ/又は1つ以上の光導波路の多数のデカップリングサイトの各々が光源として使用される。デカップリングサイトは、例えば光導波路のクラッド材の切れ目および/または刻み目により形成される。以下に更に詳細に説明されるように、その代わりに又はそれに加えて、例えばホログラフィック素子および/またはホログラフィック体積格子および/またはホログラフィックレンズのような追加の光学素子がデカップリングデバイスとして使用される。例えば、非常に小さなHOE(例えば、直径30μm)をデカップリングサイトとして利用可能である。
【0026】
光導波路は、光ファイバの態様で、特にシングルモードファイバの態様で提供されるのが好ましい。このような実施態様は、ほぼ理想の点光源又は線光源を表す(デカップリングの実際の設計による)。これにより、大きなコリメーション角度が規定されるのが好ましい。あるいは、光導波路は平面光導波路であるか、又は光導波路は縞状設計である。このような実施態様は、仮想点光源又は仮想線光源が形成される場合、特に以下に更に詳細に説明されるように、表示装置において、観察者が表示装置を見ている方向に見て仮想点光源又は仮想線光源が画素マトリックス部の前方又は制御可能空間光変調器の前方に配置されるべきである場合に特に好ましい。
【0027】
光導波路を使用する上記のような設計は、実現されるべき照明装置および/または表示装置の特に好適な積層設計である。この場合、例えば平行に配列された多数の光導波路又は光導波路の格子が提供されるのが好ましい。
【0028】
特に好適な照明装置において、光源と反射素子のうち少なくとも1つの反射素子との間および/または光源と反射層との間の光路に、少なくとも1つの光学素子、特にホログラフィック素子および/またはホログラフィック体積格子および/またはホログラフィックレンズおよび/またはシュミット補正板が配設される。このような実施態様は、例えば光導波路のデカップリングサイトによって引き起こされる妨害回折効果を最小限に抑えるという特定の利点を有する。
【0029】
照明装置の特に非常に好適な実施態様において、隣接する反射素子および/または隣接する透過素子に割り当てられる隣接する光源の離間距離は、隣接する反射素子および/または隣接する透過素子自体の離間距離とは異なる。このような設計を採用しない場合に反射素子および/または透過素子により放射される光を観察者平面の共通点又は指定可能な領域に向けて導光するために、照明装置の前方、特に照明装置を備えた表示装置の前方に配設する必要があると考えられる視野レンズは不要になるのが好ましい。例えば、隣接する光源の離間距離は、好ましくは照明装置の中心から開始して照明装置の縁部に向かって徐々に増加するのが好ましい。詳細には、隣接する光源の離間距離は、好ましくは照明装置の中心から開始して照明装置の縁部に向かって徐々に増加するが、割り当てられた反射素子および/または透過素子の離間距離は一定のままであるか又は減少するのが好ましい。以上説明した効果は、隣接する光源の離間距離が好ましくは照明装置の中心から開始して隣接する光源の離間距離が照明装置の縁部に向かって、割り当てられた反射素子の離間距離より急速に増加することによっても実現可能である。
【0030】
ほとんどスペースを必要としない本発明に係る照明装置の一実施態様において、光学素子は、光源により放射される光が(実)光源から離間して配置された仮想光源、特に点状仮想光源又は線状仮想光源から発生しているように見えるように、光源により放射される光を整形する。詳細には、光源により放射される光が仮想光源から発生しているように見えるように、仮想光源の光路に光源、特に平坦で面積の広い光源が配設される。このような実施態様は、特に薄型の照明装置および/または特に薄型の表示装置を製造する場合の基礎を成す。
【0031】
この点に関して特に好適である一実施態様は、光源により放射される光が反射素子の焦点又は焦線に配置された仮想光源、特に点状仮想光源又は線状仮想光源から発生しているように見えるように、光源により放射される光を整形する光学素子を特徴とする。
【0032】
特に好適な一実施態様において、光学素子は、他の機能に加えて、光導波路からの光、特にエバネッセント光(近接場光)を、外部にカップルさせるためのデカップリングデバイスとして使用される。詳細には、光学素子は、光導波路外へと、光、特にエバネッセント光を「外カップル」(couple out)させる。
【0033】
本発明に係る照明装置の別の好適な実施態様において、反射素子および/または少なくとも1つの透過素子は、光導波路からの光、特にエバネッセント光を「外カップル」させるデカップリングデバイスとして使用される。詳細には、反射素子および/または少なくとも1つの透過素子は、光導波路から、光、特にエバネッセント光を「外カップル」させる。
【0034】
上述の光デバイスのうち少なくとも1つを備え且つ/又は上述の照明装置のうち少なくとも1つを備えた表示装置および/または3D表示装置、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置が特に好適である。
【0035】
そのような表示装置は積層設計であるのが好ましく、その場合、光デバイスは1つの層を形成し、制御可能空間光変調器および/または画素マトリックス部は別の層を形成する。本発明に係るこのような実施態様は、非常に薄型である。更に、積層設計は、特に機械的剛性を確保する。例えば、本発明に係るバックライトユニットは、いくつかの層、特に透明材料から成る層を備える。画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器を含めて、個別の構成要素を表す層は、サンドイッチ構造を形成するように一体に接着されるのが好ましい。これは、小型で剛性に優れた設計である。
【0036】
省スペースを実現するために、デバイスは、表示装置を見ている観察者の位置から見て空間的に制御可能空間光変調器および/または画素マトリックス部の背後に配設されるのが好ましく、表示装置は、空間的に制御可能空間光変調器および/または画素マトリックス部の前方に配置された少なくとも1つの仮想光源を備えるのが好ましい。詳細には、例えば、光源と反射素子との間および/または光源と反射層との間の光路に配設された少なくとも1つの光学素子、特にホログラフィック素子および/またはホログラフィック体積格子および/またはホログラフィックレンズを含む本発明に係る光デバイスは、観察者の観察方向に見て空間的に制御可能空間光変調器の背後に配設され、更に、光学素子は、光源により放射される光が空間的に制御可能空間光変調器の前方に配置された仮想光源、特に点状仮想光源又は線状仮想光源から発生しているように見えるように、光源により放射される光を整形する。
【0037】
本発明の目的は、図面に概略的に示される。本発明の目的は、以下に添付の図面を参照して説明される。図中、同一の機能を有する同一の素子は、同一の図中符号により示される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、反射素子のマトリックスを備えた本発明に係る表示装置の一実施態様を示す図である。
【図2】図2は、反射素子のマトリックスを備えた本発明に係る表示装置の一実施態様を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る表示装置の一実施態様の詳細を示す図である。
【図4】図4は、光源と反射素子との間に光学素子10が配設されている本発明に係る表示装置の別の実施態様を示す図である。
【図5】図5は、仮想光源を備えた本発明に係る表示装置の別の実施態様を示す図である。
【図6】図6は、表示装置の前方に配置された仮想光源を備えた本発明に係る表示装置の別の実施態様を示す図である。
【図7】図7は、平面光導波路を備えた本発明に係る表示装置の別の実施態様を示す図である。
【図8】図8は、体積ホログラムの形の反射素子を備えた本発明に係る表示装置の別の実施態様を示す図である。
【図9】図9は、透過素子を備えた本発明に係る表示装置の更なる実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、複数の光源4により放射される照明光3を制御可能空間光変調器5に向けて導光する光デバイス2を有する表示装置1を示す。光デバイス2は、凹面鏡、すなわち放物面鏡の原理に従って動作する多数の反射素子6を備える。反射素子6は、照明光3を平行光として制御可能空間光変調器5に向けて導光する。
【0040】
図1の図面平面に対して垂直に走る光導波路7から照明光3が「外カップル」される場所である複数のデカップリングサイトは、光源4として使用される。
【0041】
光デバイス1と光導波路7とを主な構成要素とするバックライトユニットは、サンドイッチ構造を形成するように一体に接着された複数の透明材料の層から形成されるのが好ましい。これは、小型で剛性に優れた設計である。
【0042】
図2は、反射素子6のマトリックスを備えた本発明に係る別の表示装置1を示す。図1に示される表示装置1とは対照的に、光導波路は、制御可能空間光変調器5にすぐ隣接して配設される。
【0043】
「外カップル」され、反射素子により反射され、制御可能空間光変調器5に向かって伝播する平行照明光3が光導波路で回折された影響による問題は、これにより最小限に抑えられる。
【0044】
図2の理想化された態様では、制御可能空間光変調器5までの距離が短縮されている様子が示される。この距離を0にすることは実際には不可能である。光導波路においてエバネッセント場の伝播を可能にするために、光導波路の屈折率を低く抑える環境が不可欠である。しかし、低屈折率材料に必要とされる層厚を2μmまで減少できる。この点に関連して、幾何学的には漏れ全反射構造に相当する光導波路モードが考慮される。屈折率がより高くなる光導波路のコアの外側の場分布はエバネッセントであり、放射される際に必ず妨害効果又は所望の効果を伴うだろう。
【0045】
図3は、本発明に係る表示装置1の詳細を示す。
【0046】
図2の表示装置1を参照すると、光導波路7が自由アパーチャを完全に充填しない場合又は光導波路7が制御可能空間光変調器5の隣接画素8の全横断面領域に対応しない場合、画素8に入射する位相プロファイルが平面にならないことを予測しなければならない。制御可能空間光変調器5を符号化し、アドレス指定すれば、その他の画素9、すなわち前方に光導波路7が存在していない画素に対する一定の位相ずれを考慮に入れることができるだろう。
【0047】
図3に示されるように、光導波路が隣接画素8の自由アパーチャを完全に覆うように光導波路が設計されることによっても、1つの画素に沿った位相プロファイルの湾曲は最小限に抑えられる。
【0048】
更に、光導波路7が複数の画素、例えば、3つの画素の自由アパーチャを覆うように光導波路7の幅を設定することも可能である(図3には図示せず)。これにより、デカップリングサイトによる構造化されない光導波路の影響を適切に補償できるという効果が得られる。制御可能空間光変調器5に対向するデカップリングサイトの妨害の影響が大きすぎる場合、割り当てられた画素を無効化できる(不活性画素)。
【0049】
図4は、光導波路7と反射素子6との間の光路に光学素子10、すなわちホログラフィック体積格子が配設されている表示装置1の一実施態様を示す。光学素子10は、第1にエバネッセント照明光3を光導波路7から「外カップル」させるデカップリングデバイスとして作用する。
【0050】
その一方で、光学素子10は、反射素子6から制御可能空間光変調器5に向かって伝播する平行照明光に対するデカップリングサイトの影響を低減するという効果も有する。光学素子10が配設されない場合、デカップリングサイトは、平行照明光の光波場を妨害し、環状干渉パターンを発生すると考えられる。光学素子10は、ホログラフィックデカップリングサイトである。それらの素子は、妨害の影響を最小限に保持するために角度選択性が十分に低くなるように選択された厚さを有する体積ホログラムであるのが好ましい。
【0051】
反射素子6は、ガラス基板17をエンボス加工することにより形成される。
【0052】
図5は、表示装置に必要とされるスペース又は奥行を更に減少させるために、光源4により放射される光が仮想光源11から発生しているように見えるように、光源4により放射される光が光学素子10により整形される表示装置1の一実施態様を示す。仮想光源11は、(実)光源4、すなわち光導波路7のデカップリングサイトから空間距離をおいた場所に配置される。これにより、光源4の位置は観察者に向かって仮にずらされる。
【0053】
その結果、図5に明確に示されるように光導波路7の幅が広がるのが好ましい。これは、本来の位置で露光され且つ中心から反射素子6に向かって光を放射する体積格子に適合する平面導波管へと更に展開される。
【0054】
光学素子10は、例えば収束球面波と光導波路のエバネッセント場とを重ね合わせることによって体積格子として本来の位置に形成される。ホログラフィック記録材料としては、重合収縮が無視できるほど小さいことと、高い透明度とを特徴とする材料が特に適している。
【0055】
図6は表示装置を示す。図中、光導波路7を含む光デバイス1は、制御可能空間光変調器5の背後に空間的に配置され(観察者が制御可能空間光変調器5の右側の位置から表示装置を見る方向で見た場合)、表示装置1は、少なくとも制御可能空間光変調器5および/または画素マトリックス部の前方に空間的に配置される仮想光源11を備える。
【0056】
本実施態様において、光学素子10は、(実)光源4から放射される照明光3が空間的に制御可能空間光変調器5の前方に配置された仮想光源11から発生しているように見えるように、照明光3を整形する。
【0057】
図6に示される実施態様において、光は、当初光導波路7の中を平行に、図面の平面の面法線に対してはアンチパラレルに伝播する。光学素子10は、光を「外カップル」させるように作用し、ホログラフィックレンズの態様で設計されるので軸外しレンズを形成する。回折効率ηが1に近い場合でも必要である屈折率変化は、ホログラフィックRGBマルチプレクスレンズを形成するのに十分なほど小さい。この場合、RGBマルチプレクスは、原色ごとに本来の位置で1回の露光を実行することを意味する。
【0058】
図7は、本発明に係る表示装置1の別の実施態様を示す。本実施態様において、表示装置に必要とされるスペース又は奥行を更に縮小するために、複数の光導波路から成る縞パターン又は格子の代わりに平面光導波路7が使用され、光学素子10として平面構造化(面取り)体積格子12が使用される。本実施態様において、仮想光源11は、同様に表示装置を見ている観察者の位置から見て制御可能空間光変調器の前方に配置される。構造化体積格子12の個別の面取り部分は、例えば表示装置1がホログラフィック3D表示装置である場合には可能最大限の部分ホログラムの大きさに相当する直径を有する透過ホログラフィック軸外しレンズを表す。
【0059】
光学素子10の本来の位置での場露光は、平面導波路のエバネッセント場と、仮想光源11の場所に中心位置がある球面波の場とを利用して実行されるのが好ましい。反射素子6のマトリックスと、制御可能空間光変調器5とがその後に装着される。従って、各反射素子6は、光学素子10として各反射素子6により平行光に変換される球面波、すなわち平面波に変換される球面波を発生する透過ホログラフィック軸外しHOEを割り当てられる。
【0060】
図8は、平面構造化(面取り)体積ホログラム13の形の反射素子6を備えた本発明に係る表示装置1の別の実施態様を示す。
【0061】
図7に示される表示装置1を参照すると、デカップリング方向は、制御可能空間光変調器5に向かって更に回転されるので、反射素子6は、ホログラフィック素子、例えば平面構造化(面取り)体積ホログラム7により形成される。
【0062】
図9は、平面光導波路7と制御可能空間光変調器5との間に配設された透過素子14を備えた本発明に係る別の表示装置1を示す。光導波路7は、クラッド層15とコア層16と備える。透過素子14は、平面構造化(面取り)ホログラフィック体積格子の態様で設計され、光導波路7からエバネッセント光を「外カップル」させ、照明光3を制御可能空間光変調器5に向けて導光する。この表示装置1は特に薄い。一般に、透過素子と同一の機能又はそれに匹敵する機能を実現する単一の透過素子を提供できるだろう。
【0063】
特定の実施態様を参照して本発明を説明した。しかし、添付の特許請求の範囲により定義される保護の範囲を逸脱することなく変形や修正を考えることができるのは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置など、の表示装置(1)の画素マトリックス部および/または制御可能空間光変調器(5)に向けて照明光(3)を導光する光デバイス(2)であって、
凹面鏡の原理に従って動作し、前記表示装置(1)の前記画素マトリックス部および/または前記制御可能空間光変調器(5)に向けて、前記照明光(3)を導光する多数の反射素子(6)を具備すること、および/または、
ホログラフィック光学素子(HOE)の態様で、特定的には、ホログラフィック体積格子の態様で設計された少なくとも1つの透過素子(14)であって、前記表示装置の前記画素マトリックス部および/または前記制御可能空間光変調器(5)に向けて前記照明光(3)を導光する、前記少なくとも1つの透過素子(14)を備えること、
を特徴とした光デバイス(2)。
【請求項2】
前記反射素子(6)および/または前記少なくとも1つの透過素子(14)は、1つの平面の中に、且つ/又は、マトリックス状に並列して、配設されている、ことを特徴とする請求項1記載の光学素子(2)。
【請求項3】
前記反射素子(6)は、凹面鏡の態様で、特に放物面鏡の態様で設計されている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の光デバイス(2)。
【請求項4】
前記反射素子(6)は、非点収差鏡の態様で、特に円筒鏡の態様で設計されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項5】
前記反射素子(6)は、球面鏡の態様で設計されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項6】
前記複数の反射素子(6)および/または前記少なくとも1つの透過素子は共通の基板を有すること、又は各反射素子は個別の基板を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項7】
透明であり、且つ/又は、クリアなガラス板又はプラスチック板などの、板であって、
この板が、前記反射素子(6)を支持し、且つ/又は、
前記反射素子が、前記反射素子の構造を、特に高温スタンピング処理によるエンボス加工により、前記板に形成されている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項8】
前記反射素子(6)は、反射層を備えた少なくとも1つの基板、特に透明な基板を備えおよび/または前記反射素子(6)は、凸形の外面が反射層で被覆されている少なくとも1つの透明基板を備えている、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項9】
前記反射素子(6)は、ホログラフィック光学素子(HOE)の態様で、特に反射型体積ホログラムの態様で設計されている、および/または、
前記反射素子は、ホログラフィック光学素子(HOE)、特に反射型体積ホログラムを備えている、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項10】
前記反射素子(6)は、5mmより小さく、特に4mmより小さく、更に詳細には3mmより小さいアパーチャを少なくとも1つの開口方向に備えている、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項11】
隣接する反射素子(6)間の離間距離、および/または、隣接する透過素子間の離間距離は、前記照明光(3)のコヒーレンス長より長いことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項12】
前記反射素子(6)、および/または、前記少なくとも1つの透過素子は、前記照明光(3)を平行光に変換する、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光デバイス(2)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の光デバイスを有してなる、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置などの表示装置(1)用のバックライト装置などの照明装置。
【請求項14】
反射素子(6)および/または透過素子の実焦点又は仮想焦点に配置された少なくとも1つの光源(4)を備えること、および/または、
複数の光源(4)であって、そのうち少なくとも1つの光源(4)が、反射素子(6)および/または透過素子の実焦点又は仮想焦点にそれぞれ配置されている、
ことを特徴とする請求項13記載の照明装置。
【請求項15】
前記反射素子(6)の各々におよび/または前記透過素子(14)の各々に、互いに離間して配置された複数の光源(4)が割り当てられていること、および/または、
互いに離間して配置された複数の光源(4)が、前記反射素子(6)の各々の、および/または、前記透過素子(14)の各々の、実焦点又は仮想焦点にそれぞれ配置されている、ことを特徴とする請求項13又は14記載の照明装置。
【請求項16】
前記光源(4)が、少なくとも1つの光導波路(7)を備えること、および/または、
前記光源(4)が少なくとも1つの光導波路(7)を備え、この少なくとも1つの光導波路が、一列に並列に配設された前記反射素子(6)の、および/または、前記少なくとも1つの透過素子(14)の、実焦点又は仮想焦点を通っている、ことを特徴とする請求項14又は15記載の照明装置。
【請求項17】
光導波路(7)のデカップリングサイトを光源(4)として使用する、および/または、
1つ以上の光導波路(7)の多数のデカップリングサイトの各々を光源(4)としてそれぞれ使用する、ことを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項18】
前記光導波路(7)は、光ファイバの態様で、特にシングルモード光ファイバの態様で設けられている、あるいは、
前記光導波路(7)は、平面光導波路の態様で設けられるか、あるいは、
前記光導波路は縞状形状の設計である、ことを特徴とする請求項16又は17記載の照明装置。
【請求項19】
隣接する反射素子(6)および/または隣接する透過素子に割り当てられる隣接する光源(4)の離間距離は、前記隣接する反射素子(6)および/または前記隣接する透過素子自体の離間距離とは異なる、ことを特徴とする請求項13から18のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項20】
a.隣接する光源(4)の離間距離は、好ましくは前記照明装置の中心から開始して前記照明装置の縁部に向かって徐々に増加すること、および/または
b.隣接する光源(4)の離間距離は、好ましくは前記照明装置の中心から開始して前記照明装置の縁部に向かって徐々に増加するが、前記割り当てられた反射素子(6)および/または前記透過素子の離間距離は、一定のままであるか又は徐々に減少すること、および/または
c.隣接する光源(4)の離間距離は、好ましくは前記照明装置の中心から開始して前記照明装置の縁部に向かって、前記割り当てられた反射素子(6)の離間距離より急速に増加する、
ことを特徴とする請求項13から18のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項21】
前記光源(4)と前記反射素子(6)のうち少なくとも1つの反射素子との間の、および/または、前記光源(4)と前記反射層との間の、光路中に、特にホログラフィック素子および/またはホログラフィック体積格子および/またはホログラフィックレンズおよび/またはシュミット補正板などの少なくとも1つの光学素子(10)が配設されている、ことを特徴とする請求項13から20のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項22】
a.前記光学素子(10)は、前記光源(4)から放射される光が前記(実)光源から離間して配置された仮想光源(11)、特に仮想点光源又は仮想線光源から発生しているように見えるように、前記光源(4)から放射される光を整形すること、および/または
b.前記光学素子(10)は、前記光源(4)から放射される光が前記反射素子の焦点又は焦線に配置された仮想光源(11)、特に仮想点光源又は仮想線光源から発生しているように見えるように、前記光源(4)から放射される光を整形することを特徴とする請求項21記載の照明装置。
【請求項23】
前記光学素子(10)は、光導波路(7)から、光、特にエバネッセント光を「外カップル」させるためのデカップリングデバイスとして使用されること、および/または前記光学素子は、光導波路(7)から光、特にエバネッセント光を「外カップル」することを特徴とする請求項21又は22記載の照明装置。
【請求項24】
前記反射素子(6)および/または前記少なくとも1つの透過素子(14)は、光導波路から光、特にエバネッセント光を「外カップル」するためのデカップリングデバイスとして使用され、且つ/又は、
前記少なくとも1つの透過素子は、光導波路から光、特にエバネッセント光を「外カップル」する、ことを特徴とする請求項21又は22記載の照明装置。
【請求項25】
請求項1から12のいずれか1項に記載の光デバイス(2)、および/または、請求項13から24のいずれか1項に記載の照明装置を備える、ことを特徴とする表示装置および/または3D表示装置、特に立体3D表示装置又はホログラフィック3D表示装置。
【請求項26】
積層設計を備え、前記光デバイス(2)は1つの層を形成し、制御可能空間光変調器(5)および/または画素マトリックス部は別の層を形成することを特徴とする請求項25記載の表示装置。
【請求項27】
前記光学デバイス(2)は、空間的に制御可能空間光変調器(5)および/または画素マトリックス部の背後に配設されること、および/または前記表示装置は、空間的に前記制御可能空間光変調器(5)および/または前記画素マトリックス部の前方に配置された少なくとも1つの仮想光源(11)を備えることを特徴とする請求項25又は26記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48087(P2013−48087A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−157882(P2012−157882)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(507230267)シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム (89)
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】