説明

4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーおよびその調製法と利用

【解決手段】 本発明は、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーを対象としている。前記単一ジアステレオマーを調整する方法も説明し、放射性標識4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーを造影剤として使用する方法についても説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願書類の相互参照
本出願書類では、2009年8月14日に提出された米国の仮出願番号61/233,875の利点を請求し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願書類は4−フルオログルタミンの改良された調製法に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素置換されたアミノ酸はペプチド系薬物のデザインおよびタンパク質工学に有用であり、癌の診断を目的としたPET画像診断にも有用であることが証明されている。2−[18F]フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(FDG)はポジトロン放出断層撮影(PET)のトレーサーとしての開発が成功し、ルーティンな癌画像診断に利用されたため、様々な疾患の診断を目的としたフッ素−18放射性標識薬物のデザインおよび開発は、非常に盛んに研究が行われている分野として浮かび上がった。例えば、Mercer, J. R., Molecular imaging agents for clinical positron emission tomography in oncology other than fluorodeoxyglucose (FDG): applications, limitations and potential. Journal of Pharmacy & Pharmaceutical Sciences 2007, 10, (2), 180−202、Couturier, O.; Luxen, A.; Chatal, J. −F.; Vuillez, J. −P.; Rigo, P.; Hustinx, R., Fluorinated tracers for imaging cancer with positron emission tomography. European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging 2004, 31, (8), 1182−1206.;およびMiller, P. W.; Long, N. J.; Vilar, R.; Gee, A. D., Synthesis of 11C, 18F, 15O, and 13N radiolabels for positron emission tomography. Angewandte Chemie, International Edition 2008, 47, (47), 8998−9033を参照。
【0004】
FDGによる癌画像診断のメカニズムは、腫瘍細胞のエネルギー源であるグルコースに向かう結合力、すなわち腫瘍細胞の解糖系亢進に基づくものである。最近の報告では、グルタミン(NHC(O)CHCHCHNHC(O)OH)、Gln)もストレス下での細胞の代謝、つまりグルタミノリシスのエネルギー源と考えられることが指摘された。Wise, D. R.; Deberardinis, R. J.; Mancuso, A.; Sayed, N.; Zhang, X. Y.; Pfeiffer, H. K.; Nissim, L; Daikhin, E.; Yudkoff, M.; McMahon, S. B.; Thompson, C. B., Myc regulates a transcriptional program that stimulates mitochondrial glutaminolysis and leads to glutamine addiction. Proc Natl Acad Sci USA 2008。従って、Glnおよびその類似体を腫瘍代謝の亢進を研究するための代謝トレーサーとして開発する必要がある。
【0005】
18F−放射性標識4−フルオロ−L−グルタミン(4−FGln)の4つのジアステレオマー([18F]1、2、3、および4)を合成し、さらに、様々なタイプの腫瘍細胞でその生物学的特性を評価することに関心が向けられている。
【0006】
【化1】

【0007】
しかし、[18F]1〜4調製の妥当性を確認するため、非放射性分子、いわゆる「冷標準物質(cold standard)」の実用的合成を最初に達成する必要がある。最近、様々な立体特異的フッ素化α−アミノ酸(F−α−AA)を合成する試みが報告された。Dave, R.; Badet, B.; Meffre, P., gamma −Fluorinated analogs of glutamic acid and glutamine. Amino Acids 2003, 24, (3), 245−261。Tolman, V.; Sedmera, P., Chemistry of 4−fluoroglutamic acid. Part 3. Preparation of the diastereomers of 4−fluoroglutamine and 4−fluoroisoglutamine. An enzymatic access to the antipodes of 4−amino−2−fluorobutyric acid. Journal of Fluorine Chemistry 2000, 101, (1), 5−10。これらの合成については、以下のスキーム1および2にまとめている。
【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
スキーム1で説明した合成順序では、4−フルオログルタミン酸の混合物から開始し、4つのジアステレオマーの混合物として4−フルオログルタミンのみを提供する。4−フルオログルタミン酸のジアステレオマーの調製には、最高11工程を要する可能性がある。スキーム2で説明した合成順序では、エリスロまたはトレオ4−フルオログルタミン酸いずれかのラセミ混合物から開始する。前記ラセミ化合物は、次にラセミエリスロまたはラセミトレオ4−FGlnに変換する。スキーム2の方法では、単一の異性体を調製することはできない。興味深いことに、Daveらは、「4−フルオログルタミン酸の4つのステレオマーすべての調製法が利用できるにもかかわらず、[スキーム2と]同一の変換は、まだ鏡像異性的に純粋な4−フルオログルタミンの合成には応用されていない点に注目すべきである」と述べている。
【0011】
WO2008/052788では、グリシン含有シッフ塩基と(S)−2−[N−(N−ベンジルプロピル)アミノ]ベンゾフェノン(BPB)のニッケル複合体および3−ブロモブタ−3−エン酸メチルエステルを用いた金属触媒合成により調製した、4−フルオロ−L−グルタミンのジアステレオマー混合物の調製:WO2008/−62799の例1および2について説明している。
【0012】
【化4】

【0013】
それにもかかわらず、4−フルオログルタミンの4つの各ジアステレオマーの単一異性体の合成についてはまだ報告されていない。さらに、最終目的が放射性化合物の合成であることを考えると、スキーム1および2に説明した合成順序と対照的に、合成段階の後半でフッ素原子を導入する合成は、18F原子の半減期が短いために有利である(t1/2=109.7分)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はジアステレオマー過剰率80%以上の4−フルオログルタミン
【0015】
【化5】

【0016】
の単一ジアステレオマーおよび4−フルオログルタミンの単一異性体の前駆体を対象としている。
【0017】
本発明は、4−フルオログルタミンの単一のジアステレオマーを調整する方法も対象とし、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式Iの化合物の単一ジアステレオマーとフッ素化剤とを反応させる工程であって、
【0018】
【化6】

【0019】
式中、
1は酸に不安定な窒素保護基であり、
はC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、
各Rは個別に−OC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、
ORは脱離基であり、
nは0,1、2、3、または4であり、
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式IIの化合物の単一ジアステレオマーを形成するために効果的な時間および条件で行うものである、前記反応させる工程と、
【0020】
【化7】

【0021】
4−フルオログルタミンの単一のジアステレオマーを作成するために効果的な時間および条件下、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーと酸とを反応させる工程とを有する。
【0022】
癌を撮像するため、放射性標識4−フルオログルタミンの単一異性体を利用する方法についても報告する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、9L細胞における化合物1、2、3、および4の取り込みを示す。
【図2】図2は、1のタンパク質100ugあたりの取り込み率(%)を示している。x軸がタンパク質100ugあたりの取り込み率(%)である。
【図3】図3は、化合物1を注入したマウスの小動物ダイナミックPETを示している。
【図4】図4は、マウスにおける化合物1の取り込みを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−フルオログルタミンジアステレオマーの単一ジアステレオマーを対象としている。各単一ジアステレオマーの再取り込みプロフィールは、すでに調製されているジアステレオマー混合物と異なることが発見された。前記4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーは、以下に化合物1〜4と表す。本発明は、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する18F−標識4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーも対象としている。4−フルオログルタミンの言及には、非標識フルオログルタミン、および標識、つまり18F−標識4−フルオログルタミンの両方を含むことは、当業者に理解されるだろう。
【0025】
【化8】

【0026】
4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーのジアステレオマー過剰率は100%であることが好ましい。ただし、本発明の範囲内で、4−フルオログルタミンの他の1、2、または3つのジアステレオマーが4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーと共存することもある。他の実施形態では、前記単一のジアステレオマーはジアステレオマー過剰率80%以上を有する。他の実施形態では、前記単一のジアステレオマーはジアステレオマー過剰率90%以上を有する。他の実施形態では、前記単一のジアステレオマーはジアステレオマー過剰率98%以上を有する。
【0027】
本明細書に用いるとおり、「ジアステレオマー過剰率」は組成中の残りのジアステレオマーと比較した、望みの単一ジアステレオマーのモル分率の差を指す。ジアステレオマー過剰率は以下のとおり計算される:
(単一ジアステレオマーの量)−(他のジアステレオマーの量)/1
例えば、90%の1および10%の2、3、4またはその混合物を含む組成は、ジアステレオマー過剰率80%[(90−10)/1]を有する。95%の1および5%の2、3、4またはその混合物を含む組成は、ジアステレオマー過剰率90%[(95−5)/1]を有する。99%の1および1%の2、3、4またはその混合物を含む組成は、ジアステレオマー過剰率98%[(99−1)/1]を有する。前記ジアステレオマー過剰率は同様に、1、2、3、または4のいずれか1つについて計算することができる。
【0028】
4−フルオログルタミンの各ジアステレオマーの量を定量する方法は、当該分野で既知である。最も好ましい方法には、好ましくはキラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含み、各ジアステレオマーの各ピークの曲線下面積がサンプル中に存在する各ジアステレオマーの量に相当する。
【0029】
特に興味深いのは、4−フルオロ−L−グルタミンの単一ジアステレオマー1および2、また対応する18F−標識化合物[18F]1および[18F]2を調製する方法である。
【0030】
本発明の方法には、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式Iの化合物の単一ジアステレオマーとフッ素化剤とを反応させる工程であって、
【0031】
【化9】

【0032】
式中、Rは酸に不安定な窒素保護基であり、RはC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、各Rは個別に−OC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、ORは脱離基であり、nは0、1、2、3、または4であり、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式IIの化合物の対応する単一ジアステレオマーを形成するために効果的な時間および条件で行うものである、前記反応させる工程と、
【0033】
【化10】

【0034】
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−フルオログルタミンの単一のジアステレオマーを作成するために効果的な時間および条件下、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーと酸とを反応させる工程とを有する。1つの典型的な酸はトリフルオロ酢酸である。
【0035】
好ましくは、式Iの化合物が他の3つのジアステレオマーが存在していない単一のジアステレオマーとして提供される。好適な実施形態では、式Iの化合物の単一ジアステレオマーがジアステレオマー過剰率80%以上を有する。好ましくは、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーがジアステレオマー過剰率90%以上を有する。最も好ましくは、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーがジアステレオマー過剰率98%以上を有する。
【0036】
一部の実施形態では、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式Iaである。
【0037】
【化11】

【0038】
本発明の範囲内で、「基本的に」とは、ジアステレオマー過剰率90%以上、より好ましくは98%以上を有する唯一のジアステレオマーが存在することを指す。
【0039】
他の実施形態では、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式Ibである。
【0040】
【化12】

【0041】
さらに他の実施形態では、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式Icである。
【0042】
【化13】

【0043】
さらに他の実施形態では、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式Idである。
【0044】
【化14】

【0045】
ジアステレオマー過剰率80%、好ましくは90%、最も好ましくは98%以上を有する前記式Iの化合物の単一ジアステレオマー、特に化合物Ia、Ib、Ic、およびIdも、本発明の範囲内である。
【0046】
好ましくは、−ORは−Oトシレート(−OSO−pCH)である。
【0047】
好ましくは、前記式IIの化合物が他の3つのジアステレオマーが存在していない単一のジアステレオマーとして提供される。ジアステレオマー純度が前記式IIの化合物の構成で保存されていない場合、前記ジアステレオマーは、HPLCを含む、当該分野で既知の方法に従って分離し、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式IIの化合物の単一ジアステレオマーを提供することができる。好適な実施形態では、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーがジアステレオマー過剰率80%以上を有する。好ましくは、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーがジアステレオマー過剰率90%以上を有する。最も好ましくは、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーがジアステレオマー過剰率98%以上を有する。
【0048】
一部の実施形態では、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式IIaである。
【0049】
【化15】

【0050】
他の実施形態では、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式IIbである。
【0051】
【化16】

【0052】
さらに他の実施形態では、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式IIcである。
【0053】
【化17】

【0054】
さらに他の実施形態では、前記式IIの化合物の単一ジアステレオマーが基本的に下記式IIdである。
【0055】
【化18】

【0056】
本来、フッ素化剤は当該分野で既知であり、適切なフッ素化剤は当業者が特定することができる。特に好ましいフッ素化剤の例には、例えば、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルシリケート(TBAT)、[BuN][PhSnF]、ペルフルオロ−1−ブタンスルホニルフルオライド(PBSF)、トリ(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(TASF)などの超原子価ケイ酸フッ素化剤(hypervalent silicate fluorinating agents)を含む。
【0057】
フッ素化中、C(2)位のエピマー化が起こる可能性があり、ジアステレオマー過剰率が低下する。そのような状況では、前記ジアステレオマーは、例えばHPLCなどの従来の方法により容易に分離することができる。フッ素化試薬の塩基性度を調節すると、エピマー化の量が減少あるいはなくなる可能性があることが発見された。フッ素化剤の塩基性度の調節に使用可能な試薬の例には、2−メシチレンスルホン酸およびEtN−(HF)を含む。好ましくは、前記フッ素化剤を漸増し、pHを約7〜8に調節する。特に好ましいフッ素化試薬はTASFであり、pHはEtN(HF)により調節する。
【0058】
フッ素化反応の好ましい溶媒には、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル、およびその混合物を含む。
【0059】
18F標識フッ素化試薬を使用すると、式IIa、IIb、IIc、およびIIdの対応する18F標識化合物が形成する。
【0060】
特定のフッ素化反応の条件を利用すると、フッ素を組み込むことに成功しても、ジアステレオマー過剰率が低下する。そのような状況では、前記ジアステレオマーは、例えばHPLCなどの従来の方法により容易に分離することができる。
【0061】
本明細書に用いるとおり、「酸に不安定な窒素保護基」は、酸で外れ、−NH−を提供することのできる、窒素原子の保護基を指す。そのような保護基は当該分野で周知である。例えば、Greene,T.W.,Wuts,P.G.M.Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.,2007を参照。特に好ましい酸に不安定な窒素保護基には、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)などのカルボキシを基本とした保護基などがある。
【0062】
本明細書で用いるとおり、「アルキル」は、1〜30炭素、好ましくは1〜6炭素を有する、分岐した、または分岐していない飽和炭化水素を指す。好ましいアルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、およびヘキシルを含む。
【0063】
本明細書で用いるとおり、「シクロアルキル」は、3〜8炭素原子、好ましくは3〜6炭素を有する環状飽和炭化水素を指す。好ましいアルキル基には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0064】
本明細書で用いるとおり、ORは脱離基であり、フッ化物イオンにより求核置換を受ける官能基を指す。特に好ましいのは、ORが−Oトシレート(−OTos、−OSO−C−CH)である、これらの実施形態である。
【0065】
本発明の好適な方法では、前記式Iの化合物の単一ジアステレオマーが式IIIaまたはIIIbの化合物を接触させることで調製され、
【0066】
【化19】

【0067】
下記式IVの化合物を用い、
【0068】
【化20】

【0069】
クロロ酢酸存在下、式Vの化合物のジアステレオマー混合物を形成させる。
【0070】
【化21】

【0071】
出発物質が式IIIaの化合物間の場合、前記式Vの化合物のジアステレオマー混合物が好ましくは式VaおよびVbの化合物を有することは、当業者が容易に理解するだろう。
【0072】
【化22】

【0073】
同様に、出発物質が式IIIbの化合物の場合、前記式Vの化合物のジアステレオマー混合物は、好ましくは式VcおよびVdの化合物を有する。
【0074】
【化23】

【0075】
式Vの化合物のジアステレオマー混合物は、式VIの化合物のジアステレオマー混合物を形成させるために効果的な時間および条件下で反応させる。
【0076】
【化24】

【0077】
前記式Vの化合物のジアステレオマー混合物が式VaおよびVbの化合物を有する場合、前記式VIの化合物のジアステレオマー混合物が好ましくは式VIaおよびVIbの化合物を有することは、当業者が容易に理解するだろう。
【0078】
【化25】

【0079】
同様に、前記式Vの化合物のジアステレオマー混合物が式VcおよびVdの化合物を有する場合、前記式VIの化合物のジアステレオマー混合物は好ましくは式VIcおよびVIdの化合物を有する。
【0080】
【化26】

【0081】
好適な実施形態では、前記式VIの化合物のジアステレオマー混合物が式VIaおよびVIbの化合物の混合物である。
【0082】
【化27】

【0083】
次に、前記式VIの化合物のジアステレオマー混合物は、好ましくは物理的分離により分離する。ジアステレオマーの物理的分離法は当該分野で既知であり、例えばフラッシュ・カラム・クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを含む。本発明によれば、前記式VIの化合物のジアステレオマー混合物は分離され、ジアステレオマー過剰率80%以上を有し、好ましくはジアステレオマー過剰率90%以上を有し、最も好ましくはジアステレオマー過剰率98%以上を有する前記式VIの化合物の単一ジアステレオマーを提供する。
【0084】
好適な実施形態では、Rが−C(O)O−C1−6アルキルまたは−C(O)O−C1−6シクロアルキルである。他の実施形態では、Rが−C(O)O−C1−6アルキルである。好ましくは、Rが−C(O)O−t−ブチルである。
【0085】
他の実施形態では、Rはt−ブチルである。さらに他の実施形態では、Rは−OCHである。他の実施形態では、nは3である。
【0086】
本発明の放射性標識化合物の単一ジアステレオマーは、好ましくは18Fで標識され、患者の疾患、特に癌を診断するために有用な組成に製剤化することができる。放射性標識化合物1、2、3、または4は本発明の診断用組成に利用することができ、診断用組成において最も好ましいものは化合物1または2を使用したものである。これらの診断用組成は、例えば注射による非経口投与により、当業者に周知の基材および/または希釈剤を用いた組成を製剤化することで、患者への投与を目的として製剤化することができる。
【0087】
患者に本発明の診断用組成を投与後、前記患者の癌を画像化する方法として、単一ジアステレオマーのγ線を検出することができる。そのような検出の1つの典型的方法は、ポジトロン放射断層法(PET)である。
【0088】
以下の説明は、請求された発明を説明するものであり、制限する意図はない。
【0089】
2,4,6−トリメトキシベンジルイソシアニド(Tmob−IC)は2,4,6−トリメトキシベンジルアミンから調製された。スキーム4を参照。対応するホルムアミドに変換後、トリホスゲンを処理すると、全収率70%で望みのイソシアニドが得られた。
【0090】
【化28】

【0091】
アルデヒド8の調製については、スキーム5に示す。BF触媒下、tert−ブチルトリクロロアセトイミデートを用いて部分的に保護されたL−アスパラギン酸誘導体Aをエステル化すると、完全に保護されたL−アスパラギン酸誘導体5が97%得られた。接触水素化によりベンジル基を外した後、2工程を組み合わせた還元により、ホモセリン6が全収率87%で得られた。その後、デス・マーチン・ペルヨージナン試薬により酸化すると、86%の収率でアルデヒド8が得られた。
【0092】
【化29】

【0093】
Tmob−ICおよび8両方の中間体を調整後、パッセリーニ反応を行い、グルタミン骨格を組み立て、4−アシルオキシ置換Gln誘導体9を優れた収率で得た。
【0094】
チオ尿素を用いてクロロアセチル基を外すと化合物10が得られた。スキーム6。2つのジアステレオ異性体であるアルコール10’および10’’(HPLC解析では1:1の比率)は極性が明確に異なることが示され、フラッシュクロマトグラフィーにより分離することができる。スキーム7。これら2つのアルコールの絶対配置はモッシャーエステル解析により決定された。割り当てられた立体配置は両アルコールの物理的性質と同等である。(2S,4R)の立体配置を持つアルコール(10’)は融点が高いことが示されるが(143〜145℃)、(2S,4S)の立体配置を持つアルコール(10’’)は融点が低いことが示される(58〜61℃)。水酸基のトシル化では96%の収率でトシレート11が得られた。超原子価ケイ酸フッ素化剤のトリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(TASF)を用いたフッ素化では、60〜70%の収率で化合物12(12’および12’’)が得られた。TFAを処理すると、望みの4−フルオログルタミン(1および2)が生成した。
【0095】
【化30】

【0096】
【化31】

【0097】
アルデヒド8の鏡像異性体である化合物8aの調製は、スキーム8に示した合成順序に沿って達成することができ、市販のD−アスパラギン酸誘導体Bから開始する。
【0098】
【化32】

【0099】
次に、パッセリーニ反応の条件下、アルデヒド8aをイソシアニドおよびクロロ酢酸と反応させた。チオ尿素およびNaHCOを併用した条件を用い、得られた中間体9aを脱アセチル化した後、慎重にフラッシュクロマトグラフィーを行うと、2つの立体特異的4−ヒドロキシ基置換D−グルタミン誘導体10a’および10a’’が得られた。スキーム9。トシル化、フッ素化、および酸性脱保護反応を含むさらなる変換を行い、別の2つの4−FGlnジアステレオマーであるフッ素化D−グルタミン類似体3および4が同等の収率で得られた。さらに、低速で留去する方法により、中間体10a’、12a’、および最終生成物3の高品質血漿サンプルが得られた。X線結晶学的解析では、さらにこれらの化合物の絶対的配置が同定された。
【0100】
【化33】

【0101】
4−フルオログルタミンを調製する方法も本発明の範囲内であり、
【化34】

【0102】
式Iの化合物において、
【0103】
【化35】

【0104】
式中
1は酸に不安定な窒素保護基であり、
はC1−6アルキルであり、
各Rは個別に−OC1−6アルキルであり、
ORは脱離基であり、
nは0、1、2、3、または4である化合物と、
フッ素化剤を用い、式IIの化合物を形成させるために効果的な時間および条件下反応させる工程と、
【0105】
【化36】

【0106】
前記式IIの化合物を4−フルオロ−グルタミンを生成させるために効果的な時間および条件下反応させる工程とを有する。
【0107】
好ましい方法において、前記式Iの化合物は式IIIの化合物を
【0108】
【化37】

【0109】
式IVの化合物と
【0110】
【化38】

【0111】
クロロ酢酸存在下接触させ、式Vの化合物を形成させ、
【0112】
【化39】

【0113】
前記式Vの化合物を式VIの化合物を形成させるために効果的な時間および条件下反応させることにより調製される。
【0114】
【化40】

【0115】
特定の実施形態では、式VIの化合物が下記式VIyおよびVIzの化合物の混合物である。
【0116】
【化41】

【0117】
好ましくは、前記式VIyおよびVIzの化合物が物理的に分離されている。物理的分離の好ましい方法にはクロマトグラフィーを含む。
【0118】
好適な実施形態では、Rが−C(O)O−C1−6アルキルである。より好ましくは、Rが−C(O)O−t−ブチルである。また好ましいのは、Rがt−ブチルの場合である。いくつかの実施形態では、Rが−OCHである。さらに他の実施形態では、ORがOトシレートである。さらに他の実施形態では、nは3である。
【0119】
本発明で使用するために好ましいフッ素化剤は、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケートである。好ましくは、前記フッ素化剤が18Fを有する。
【0120】
好ましくは、式IIIの化合物が下記式である。
【0121】
【化42】

【0122】
好ましくは、前記4−フルオログルタミンが下記式である。
【0123】
【化43】

【0124】
また好ましいのは、前記4−フルオログルタミンが下記式の場合である。
【0125】
【化44】

【0126】
また、下記式Iの化合物も本発明の範囲内であり、
【0127】
【化45】

【0128】
式中
1は酸に不安定な窒素保護基であり、
はC1−6アルキルであり、
各Rは個別に−OC1−6アルキルであり、
ORは脱離基であり、
nは0,1、2、3、または4である。
【0129】
好ましくは、前記式Iの化合物が
【0130】
【化46】

【0131】
である。
【実施例】
【0132】
当業者は、以下の手順が説明のためのみに示されているものであり、本発明の範囲を制限する意図はないことは容易に理解するだろう。さらに、1つの鏡像異性体またはジアステレオマーまたはジアステレオマーのペアについて手順を示す場合、同様の手順を利用し、他の鏡像異性体またはジアステレオマーまたはジアステレオマーのペアを調製することができる。
【0133】
一般情報。使用したすべての試薬は市販の製品であり、他に指示がない限り、それ以上精製せずに使用した。フラッシュクロマトグラフィー(FC)はシリカゲル60(230〜400メッシュ、Sigma−Aldrich)を使用して行った。各手順について、「標準的な後処理」とは、等量の水を含む分液漏斗に反応混合物を注ぎ、この混合物を等量の指示された有機溶媒で3回抽出し、前記有機層を合わせ、この有機層を食塩水で洗い、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムで乾燥させ、固体を濾取し、濾液を減圧下濃縮する工程を指す。融点(mp)はMEL−TEMP(非補正)で確認した。H NMRスペクトルは200MHzで取得し、13C NMRスペクトルは50MHzで記録し、19F NMRスペクトルは282MHzで記録した(Bruker DPX 200およびDMX 300スペクトロメータ)。化学シフトは、重水素化溶媒に残ったプロトンと比較したδ値(100万分の1)として記録している。結合定数はヘルツで報告している。多重度は、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、p(ペンテット)、br(ブロード)、またはm(マルチプレット)で定義する。HPLC分析はAglient LC 1100シリーズで行った。高解像度MS実験はAgilent Technologies LC/MSD TOF質量分析計を使用し、Radiopharmaceutical Chemistry Section, Department of Radiology, University of Pennsylvaniaにて行った。旋光度値はPerkin Elmer Model 243B旋光計で測定した。
【0134】
2−(イソシアノメチル)−1,3,5−トリメトキシベンゼン Tmob−IC
N−(2,4,6−トリメトキシベンジル)ホルムアミド
【0135】
【化47】

【0136】
ギ酸エチル(7.5mL、93mmol)を2,4,6−トリメトキシベンジルアミン(0.985g、5.0mmol)を含む25mL丸底フラスコに加えた。反応混合物は室温で3日間攪拌し、濾過した。濾取した白色固体を回収し、減圧乾燥し、粗生成物を得た(1.09g、97%):H NMR(200MHz、CDCl)δ8.19(s,0.3H),8.14(s,0.7H),6.13(d,2H,J=3.0Hz),6.00(br s,1H),4.51(d,1H,J=5.2Hz),4.35(d,1H,J=6.4Hz),3.83(s,3H),3.82(s,6H)。
参考:F. Christopher Pigge, John J. Coniglio, Shiyue Fang. Organometallics 2002, 21, 4504−4512
2−(イソシアノメチル)−1,3,5−トリメトキシベンゼン
【0137】
【化48】

【0138】
事前に調整したホルムアミド(0.675g、3.0mmol)およびトリエチルアミン(1mL)を氷浴で冷却した5mL CHClに入れ、攪拌した溶液に、トリホスゲン溶液(0.356g、1.2mmolを5mL CHClに溶解)を1滴ずつ加えた。追加し、発熱現象が弱くなった後、前記反応混合物を室温で放置し、サンプルをTLCで回収した。前記反応物質のホルムアミドが消費された場合は、前記反応混合物にCHClを用いた標準的な後処理を行った。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(FC)(ヘキサン溶媒中EtOAc 20%〜25%)で精製し、淡黄色の結晶固体生成物が得られた(0.435g、70%):mp 107〜109℃;H NMR(200MHz、CDCl)δ6.13(s,1H),4.55(t,2H,J=1.7Hz),3.86(s,6H),3.83(s,3H);13C NMR(50MHz,CDCl)δ162.2,159.2,153,18,153.08,152.98,102.6,90.6,55.9,55.5,34.3,34.1,34.0;HRMS C1114NO(M+H)の計算値:208.0974、実測値:208.0961;C1113NaNO(M+Na):230.0793、実測値:
230.0778。
参考:Susana P. G. Costa, Hernani L. S. Maia, Silvia M. M. A. Pereira−Lima. Org. Biomol. Chem. 2003, 1, 1475−1479
中間体(S)−4−tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−オキソブタノエート(8)
(S)−4−ベンジル1−tert−ブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)コハク酸塩(5)
【0139】
【化49】

【0140】
化合物A(0.969g、3.0mmol)は50mL丸底フラスコに入れた10mL CHClに溶解した。この溶液にtert−ブチル2,2,2−トリクロロアセトアミデート(1.31g、6mmol)およびBF・EtO(37μL、0.3mmol)を追加した。室温で2時間攪拌後、前記反応混合物を氷浴で冷却し、固体NaHCO(0.84g、10mmol)を一度に追加した。この混合物を10分間攪拌し、シリカプラグ上で濾過した。濾液を減圧留去し、残渣をFC(EtOAc/ヘキサン、15/85、vol/vol)で精製すると、白色固体5が得られた(1.10g、97%):mp 63〜64℃(文献 64〜65℃、文献 61〜63℃);[α]24=+20.0(c=1.0、CHCl)および[α]24=−8.1(c=2.0、MeOH)[文献[α]22=+19.6(c=1.0、CHCl);文献[α]25=−7.4(c=2.0、MeOH)];H NMR(200MHz、CDCl)δ7.35(s,5H),5.45(d,1H,J=8.0Hz),5.13(d,2H,J=2.6Hz),4.46(ペンテット,1H,J=4.4Hz),3.00(dd,1H,J=16.8Hz,J=4.6Hz),2.83(dd,1H,J=16.8Hz,J=4.8Hz),1.45(s,9H),1.42(s,9H);13C NMR(50MHz,CDCl)δ170.6,169.8,155.3,135.6,128.4,128.2,82.0,79.6,66.4,50.6,37.0,28.2,27.7;HRMS C2029NaNOの計算値(M+Na):402.1893、実測値:402.1886。
参考:tert−ブチルのエステル化について:A. Armstrong, I. Brackenridge, R. F. W. Jackson, J. M. Kirk. Tetrahedron Lett. 1988, 29, 2483−2486
生成物の同定について(融点および旋光度):
1. Stephen C. Bergmeir, Agustin A. Cobas, Henry Rapoport. The Journal of Organic Chemistry 1993, 58, 2369−2376
2. Robert M. Adlington, Jack E. Baldwin, David Catterick, Gareth J. Pareth J. Pritchard. J. Chem. Soc, Perkin Trans. 1, 1999, 855−866
3. Madhup K. Dhaon, Richard K. Olsen, K. Ramasamy. The Journal of Organic Chemistry 1982, 47, 1962−1965
(S)−4−tert−ブトキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−オキソブタン酸(6)
【0141】
【化50】

【0142】
エステル5(1.04g、2.74mmol)と10% Pd/C(0.2g)の混合物を無水EtOH(20mL)に溶解し、水素により50psiで3時間振盪した。次にこの混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮し、白色結晶固体6が得られた(0.79g、100%):mp 97〜99℃(文献 97〜98℃、文献 98〜100℃);[α]24=−16.9(c=1.0、EtOH)および[α]23.5=−23.6(c=1.5、MeOH)[文献[α]22=+19.6(c=1.0、CHCl);文献[α]25=−7.4(c=2.0、MeOH)];H NMR(200MHz、CDCl)δ10.33(br s,1H),5.48(d,1H,J=8.0Hz),4.45(t,1H,J=4.0Hz),3.02(dd,1H,J=17.0Hz,J=4.0Hz),2.81(dd,1H,J=111Hz,J=4.6Hz),1.45(br s,18H);13C NMR(50MHz,CDCl)δ175.8,169.9,155.7,82.4,80.2,50.5,36.8,28.3,27.9;HRMS C1323NaNOの計算値(M+Na):312.1423、実測値:312.1420。
参考:1. C. C. Yang, R. B. Merrif?eld. The Journal of Organic Chemistry 1976, 41, 1032−1041 2. Robert M. Adlington, Jack E. Baldwin, David Catterick, Gareth J. Pareth J. Pritchard. J. Chem. Soc, Perkin Trans. 1, 1999, 855−866
(S)−4−tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−ヒドロキシブタノエート(7)
【0143】
【化51】

【0144】
酸6(0.733g、2.54mmol)を50mLの丸底フラスコに入れた5mL THF中に溶解し、前記溶液を−10℃に冷却した。この溶液にEtN(0.39mL、2.79mmol)およびクロロギ酸エチル(0.27mL、2.79mmol)を1滴ずつ追加した。−10〜−5℃で30分間攪拌後、前記反応混合物を濾取した。氷浴で冷却した100mLの二口フラスコに入れたNaBH(0.203g、5.33mmol)と2mL HOの混合物に上記濾液をゆっくりと加えた。前記混合物をさらに4時間室温で攪拌した後、氷浴で冷却しながらpH=2〜3まで1M HClで酸性化した。有機層を回収し、水層をEtOAcで抽出した(20ML×3)。前記有機層を合わせ、飽和NaHCO(20mL)および食塩水(20mL)で洗い、MgSOで乾燥させた。濾液を減圧留去し、残渣をFC(EtOAc/ヘキサン、35/65〜45/55、vol/vol)で精製すると、7が得られた(0.618g、87%):[α]25=−39.9(c=1.0,EtOH)[文献[α]25=−37.5(c=1.0,EtOH)];H NMR(200MHz,CDCl)δ5.35(br s,1H),4.36(br s,1H),3.77−3.57(m,2H),2.92(br s,1H),2.20−2.05(m,2H),1,48(s,9H),1.45(s,9H);13C NMR(50MHz,CDCl)δ172.1,156.6,82.3,80.3,58.5,51.3,36.44,28.4,28.1;HRMS C1325NaNOの計算値(M+Na):298.1630、実測値:298.1632。
参考: K. Ramsamy, Richard K. Olsen, Thomas Emary. Synthesis, 1982, 42−43
(S)−4−tert−ブトキシ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−オキソブタノエート(8)
【0145】
【化52】

【0146】
アルコール7(0.284g、1.03mmol)のCHCl(5mL)溶液に固体NaHCO(0.861g、10.25mmol)およびデス・マーチン・ペルヨージナン試薬(5.1mL 0.3M CHCl溶液、1.53mmol)を加えた。前記溶液を室温で1時間撹拌した。チオ硫酸ナトリウム溶液(1.0M、5mL)を追加し、得られた二相性混合物を5分間激しく攪拌した後、飽和NaHCO(5mL)を追加した。次に、前記混合物をCHCl(15mL×3)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧濃縮すると、粗生成物が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン、20/80、V/V)により、白色結晶固体としてアルデヒド8(0.243g、86%)が得られた:mp 61.5〜63℃(文献60〜62℃;文献66〜67℃);[α]23.5=+18.6(c=1.95,CHCl)および[α]25=−26.1(c=1.5,無水EtOH)[文献[α]21=+20.7(c=1.95,CHCl);文献[α]25=−21.6(c=1.5,EtOH)];H NMR(200MHz,CDCl)δ9.73(s,1H),5.35(d,1H,J=6Hz),4.47(m,1H),2.97(t,2H,J=4.4Hz),1.45(s,9H),1.44(s,9H);13C NMR(50MHz,CDCl)δ199.4,170.1,155.5,82.8,80.2,49.6,46.5,28.4,28.0;HRMS C1323NaNOの計算値(M+Na):296.1474、実測値:286.1469。
参考:D−M試薬酸化について: D. B. Dess, J. C. Martin. The Journal of Organic Chemistry 1983, 48, 4155−4156
生成物の同定について(融点および旋光度):
1. R. Marshall Werner, Ori Shokek, Jeffery T. Davis. The Journal of Organic Chemistry 1997, 62, 8243−8246
2. Domink Werinik, John Dimaio, Julian Adams. The Journal of Organic Chemistry 1989, 54, 4224−4228
3. K. Ramsamy, Richard K. Olsen, Thomas Emary. Synthesis, 1982, 42−43
(2S)−tert−ブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2−クロロアセトキシ)−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(9)
【0147】
【化53】

【0148】
8(0.366g、1.33mmol)のCHCl(10mL)溶液を攪拌し、これに2−(イソシアノメチル)−1,3,5−トリメトキシベンゼン(0.303g、1.46mmol)およびクロロ酢酸(0.138g、1.46mmol)を加えた。前記反応液を室温で24時間撹拌した。前記溶媒を減圧留去し、残渣のシリカゲルクロマトグラフィーを行うと(EtOAc/ヘキサン、30/70〜40/60、V/V)、ろう状白色固体として9が得られた(0.727g、95%):H NMR(200MHz、CDCl)δ6.79(br s,0.5H),6.48(t,0.5H,J=5.1Hz),5.26−5.03(m,2H),4.65−4.22(m,3H),4.13(d,2H,J=13.4Hz),3.81(s,9H),2.51−2.05(m,2H),1.46(s,9H),1.42(d,9H,J=5.8Hz)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ171.1,171.0,168.0,167.6,166.4,166.2,161.2,159.4,155.5,106.3,106.1,90.8,82.6,82.5,80.2,72.5,71.9,55.9,55.5,51.1,50.5,40.9,40.7,34.9,34.7,32.5,28.4,28.1。HRMS C2640ClN10の計算値(M+H):575.2371、実測値:575.2360。
参考:パッセリーニ反応について:Alexander Domling. Chem. Rev. 2006, 106, 17−89およびその中の参考文献
(2S)−tert−ブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−ヒドロキシ−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(10)
【0149】
【化54】

【0150】
9(0.678g、1.18mmol)のEtOH/THF(5/5 mL)溶液を攪拌し、これにチオ尿素(0.269g、3.54mmol)およびNaHCO(0.297g、3.54mmol)を加えた。前記反応混合物を攪拌し、50℃で1.5時間加熱した。次に前記溶媒を減圧留去し、残渣のシリカゲルFCを行い(EtOAc/ヘキサン、45/55〜60/40、V/V)、ろう状白色固体のC(4)ジアステレオマー混合物として10が得られた(0.543g、91%):H NMR(200MHz,CDCl)δ7.26(br s,1H),6.13(s,1H),6.12(s,1H),5.45(d,1H,J=5.6Hz),4.63−4.03(m,5H),3.82,3.81(s,s,合計9H),2.43−1.84(m,2H),1.45(d,9H,J=1.2Hz),1.43(s,9H);13C NMR(50MHz,CDCl)δ172.6,172.0,171.5,171.3,161.0,159.5,157.3,156.1,106.7,90.8,82.7,82.4,80.8,80.3,69.6,68.5,55.9,55.4,52.0,51.0,39.1,38.5,32.2,31.9,28.3,28.0;HRMS C2439の計算値(M+H):499.2656、実測値:499.2669,499.2662。
参考: 1. Mitsuo Masaki, Takeshi Kitahara, Hideaki Kurita, Masaki Ohta. Journal of the American Chemical Society 1968, 90, 4508−4509
2. M. Naruto, K. Ohno, N. Naruse, and H. Takeuchi. Tetrahedron Lett. 1979, 251
(2S,4S)−tert−ブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−ヒドロキシ−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(10’)および(2S,4R)−tert−ブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−ヒドロキシ−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(10’’)
【0151】
【化55】

【0152】
上記で得られた2つのジアステレオマー混合物10はFCを行い(シリカゲル60、EtOAc/ヘキサン、30/70〜60/40、V/V)、2つのジアステレオマーであるアルコール10’および10’’を提示した。アルコール10’:白色固体:mp 143〜145℃、[α]26=−28.7(c=1.06,MeOH);10’のHPLC:>99%[Rt=9.45分;カラム:Lux 3uセルロース−1(150×4.6mm)、Chiralcel OD(250×4.6mm)と直列に連結、UV検出器、210nm、15% 2−プロパノールのヘキサン溶液;流速:1.0mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ7.23(br s,1H),6.09(s,2H),5.47(d,1H,J=7.6Hz),4.89(d,1H,J=4.2Hz),4.54−4.22(m,2H),4.03(dt,1H,J=11.8Hz,J=3.6Hz),3.78(s,6H),3.77(s,3H),2.27−1.86(m,2H),1.42(s,9H),1.39(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ171.9,171.3,161.0,159.5,157.3,106.8,90.8,82.6,80.7,68.5,55.9,55.4,51.0,39.1,31.9,28.3,28.0。HRMS C2439の計算値(M+H):499.2656、実測値:499.2643。アルコール10’’:白色固体:mp 58〜61℃、[α]26=−10.5(c=1.0,MeOH);10’’のHPLC:>99%。[Rt=9.36分;カラム:Lux 3uセルロース−1(150×4.6mm)、Chiralcel OD(250×4.6mm)と直列に連結、UV検出器、210nm、15% 2−プロパノールのヘキサン溶液;流速:1.0mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ7.24(br s,1H),6.12(s,2H),5.42(d,1H,J=7.0Hz),4.89(d,1H,J=4.2Hz),4.58(dd,1H,J=13.6Hz,J=5.8Hz),4.39(dd,1H,J=13.6Hz,J=5.0Hz),4,26−4.11(m,2H),4.02(br s,1H),3.814(s,6H),3.808(s,3H),2.36(dt,1H,J=14.4Hz,J=5.0Hz),1.91(dt,1H,J=14.4Hz,J=7.6Hz),1.46(s,9H),1.43(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ172.5,171.6,161.1,159.6,156.3,106.9,90.9,82.6,80.4,69.8,56.0,55.5,52.2,38.7,32.3,28.4,28.1。HRMS C2439の計算値(M+H):499.2656、実測値: 499.2638。
【0153】
(2S)−tert−ブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−オキソ−4−(トシルオキシ)−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(11)
【0154】
【化56】

【0155】
氷浴で冷却し(0℃)、攪拌した10(0.546g、1.09mmol)のCHCl(10mL)溶液にEtN(0.76mL、5.45mmol)、p−トルエンスルホニルクロライド(TsCl、0.416g、2.18mmol)および触媒量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.11mmol、0.013g)を加えた。0℃で15分間維持した後、氷浴を外し、前記反応液を一晩室温に維持し、CHClを用いた標準的な後処理を行った。粗生成物をFCにより精製し(EtOAc/ヘキサン、40/60〜50/50、V/V)、淡白色の固体11が得られた(0.68g、96%)。11のHPLC:異性体1:50%、Rt=12.53分;異性体2:50%、Rt=18.72分;[カラム:Lux 3uセルロース−1(150×4.6mm)、UV検出器、210nm、5% 2−プロパノールのヘキサン溶液;流速:1.0mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ7.72(d,2H,J=8.2Hz),7.28(d,2H,J=8.2Hz),6.79(d,1H,J=20.6Hz),6.15(s,2H),5.14(br s,1H),4.83(t,1H,J=6.8Hz),4.50−3.94(m,3H),3.82(s,6H),3.81(s,3H),2.41(s,3H),2.28−2.11(m,2H),1.43(s,9H),1.42(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ171.0,167.3,161.8,159.9,155.8,146.3,133.3,130.6,128.5,128.4,106.6,106.4,91.3,82.8,82.5,80.2,78.0,77.7,56.4,56.0,35.7,35.3,32.9,28.7,28.3,22.0。HRMS C314511Sの計算値(M+H):653.2744、実測値: 653.2734、653.2739。
【0156】
(2S,4R)−tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−オキソ−4−(トシルオキシ)−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(11’)
【0157】
【化57】

【0158】
11の調製手順の後、化合物11’はアルコール10’(2.010g、4.04mmol)から淡白色の泡状固体として調製した(2.599g、収率99%):[α]26=−30.5(c=1.04、MeOH);11’のHPLC純度:98.0%、[主要ピーク:Rt=15.9分;微小ピーク:19.0分および24.6分;カラム:Chiralcel ODH(250×4.6mm)、UV検出器、210nm、5% 2−プロパノールのヘキサン溶液;流速:1.0mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ7.72(d,2H,J=8.4Hz),7.28(d,2H,J=8.2Hz),6.73(br s,1H),6.15(s,2H),5.12(br s,1H),4.84(t,1H,J=6.0Hz),4.39(dd,1H,J=13.9Hz,J=5.7Hz),4.27(dd,1H,J=13.9Hz,J=5.3Hz),3.96(q,1H,J=7.4Hz),3.821(s,3H),3.817(s,6H),2.41(s,3H),2.20(t,2H,J=6.4Hz),1.43(s,9H),1.42(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ170.6,167.1,161.2,159.4,155.4,145.5,132.9,130.1,128.1,106.1,90.9,82.1,79.9,77.5,56.0,55.5,51.6,34.8,32.6,28.4,28.1,21.8。HRMS C314511Sの計算値(M+H):653.2744、実測値: 653.2740。
【0159】
(2S,4S)−tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−オキソ−4−(トシルオキシ)−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(11’’)
【0160】
【化58】

【0161】
11の調製手順の後、化合物11’’はアルコール10’’(1.69g、3.40mmol)から淡白色の泡状固体として調製した(2.12g、収率96%):[α]26=+14.1(c=1.04、MeOH);11’’のHPLC純度:97.7%、[主要ピーク:Rt=23.7分;微小ピーク:16.2分;カラム:Chiralcel ODH(250×4.6mm)、UV検出器、210nm、5% 2−プロパノールのヘキサン溶液;流速:1.0mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ7.75(d,2H,J=8.4Hz),7.25(d,2H,J=8.4Hz),6.91(br s,1H),6.14(s,2H),5.12(br s,1H),4.94(t,1H,J=6.0Hz),4.52(dd,1H,J=14.0Hz,J=6.0Hz),4.30(dd,1H,J=14.4Hz,J=5.2Hz),4.18(br s,1H),3.84(s,3H),3.82(s,6H),2.42(s,3H),2.32−2.22(m,2H),1.45(s,9H),1.43(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ170.7,167.1,161.2,159.5,155.5,145.5,133.1,130.1,128.2,106.3,90.9,82.4,79.9,56.0,55.6,50.8,35.0,32.7,28.5,28.1,21.8。HRMS C314511Sの計算値(M+H):653.2744、実測値:653.2729。
【0162】
TASFによるフッ素化法:tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)4−フルオロ−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(12)の合成
【0163】
【化59】

【0164】
11(0.340g、0.52mmol)を氷浴で冷却した(0℃)CHCl(7mL)に入れ、攪拌した溶液に、CHCl(3mL)に溶解したトリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(TASF、0.287g、1.04mmol)を1滴ずつ追加した。0℃で1時間維持した後、前記氷浴を外し、反応液は室温で12時間維持した。TASF試薬の2回目の分(0.287g、1.04mmol、1mLのCHClに溶解)を追加し、前記反応液を室温でさらに12時間維持した。前記反応液は氷冷した水(5mL)を追加してクエンチした後、CHClを用いて標準的な後処理を行った。粗生成物をFCにより精製し(EtOAc/ヘキサン、35/65〜45/55、V/V)、淡黄色の固体12が得られた(0.158g、61%)。H NMR(200MHz,CDCl)δ6.70(br s,1H),6.11(s,2H),5.34−5.17(m,1H),5.14−5.00(m,0.5H),4.89−4.75(m,0.5H),4.63−4.32(m,3H),3.80(s,9H),2.63−2.05(m,2H),1.44(s,9H),1.42(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ171.0,170.9,168.8,168.4,161.3,159.5,155.6,155.3,106.2,106.1,91.1,91.0,90.8,87.4,87.3,82.41,82.36,80.0,77.4,55.9,55.5,51.1,36.1,35.6,35.2,32.2,28.4,28.1。HRMS C2438FNの計算値(M+H):501.2612、実測値: 501.2591。
参考: RajanBabu, T. V.; Middleton, W. J.; Tortorelli, V. J., Tris(dimethylamino)sulfonium Difluorotrimethylsilicate. e−EROS Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis 2001.
「中和化」TASFによるフッ素化法:(2S,4R)−tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フルオロ−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(12’)の合成
【0165】
【化60】

【0166】
トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(TASF、1.38g、5.0mmol)のCHC1/THF(1.5mL/1.5mL)溶液を攪拌し、これにEtN・(HF)(0.25mL)を1滴ずつ追加した。この後、トシレート11’(0.391g、0.6mmol)、THF(1mL)、および上述の「中和化」TASF(2.7mL、3.0mmol)を還流冷却器を備えた25mL二口フラスコに1つずつ追加した。前記混合物を10時間油浴で50℃に加熱し、前記油浴を外し、前記反応混合物はEtOAcで希釈し、半飽和NaHCO、水、食塩水で順次洗った。EtOAc層を回収し、MgSOで乾燥させ、濾過、減圧濃縮した。残った残渣をFCで精製し(EtOAc/ヘキサン、25/75〜40/60、V/V)、淡白色の泡状固体12’が得られた(0.232g、77%)、[α]24=+1.70(c=1.14、MeOH);12’のHPLC:[99%、主要ピーク:Rt=22.8分;1%、微小ピーク:Rt=25.2分;カラム:Chiralcel OD(250×4.6mm)、UV検出器、210nm、1.5% EtOHのヘキサン溶液;流速:1.2mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ6.69(br s,1H),6.12(s,2H),5.32(d,1H,J=8.6Hz),5.13(dd,0.5H,J=8.8Hz,J=3.2Hz),4.88(dd,0.5H,J=8.8Hz,J=3.2Hz),4.60(dd,1H,J=13.6Hz,J=6.0Hz),4.42−4.34(m,2H),3.81(s,9H),2.64−2.06(m,2H),1.45(s,9H),1.43(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ170.9,168.8,168.4,161.3,159.5,155.3,106.2,91.2,90.8,87.5,82.5,80.0,56.0,55.6,51.2,35.7,35.3,32.2,28.5,28.1。HRMS C2438FNの計算値(M+H):501.2612、実測値:501.2613。
X線結晶構造解析に適した結晶12’は、12’のCHC1/ヘキサン溶液を低速で溶媒留去することにより得られた。
【0167】
中間体12’の結晶構造:
【0168】
【化61】

【0169】
(2S,4S)−tert−ブチル−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フルオロ−5−オキソ−5−(2,4,6−トリメトキシベンジルアミノ)ペンタノエート(12’’)
【0170】
【化62】

【0171】
トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート(TASF、1.43g、5.2mmol)のCHC1/THF(1.5mL/1.5mL)溶液を攪拌し、これにEtN・(HF)(0.26mL)を1滴ずつ追加した。この後、トシレート11’’(0.434g、0.66mmol)、THF(1mL)、および上述の「中和化」TASF(4.4mL、5.2mmol)を還流冷却器を備えた25mL二口フラスコに1つずつ追加した。前記混合物を24時間油浴で45℃に加熱し、前記油浴を外し、前記反応混合物はEtOAcで希釈し、半飽和NaHCO、水、食塩水で順次洗った。EtOAc層を回収し、MgSOで乾燥させ、濾過、減圧濃縮した。残った残渣をFCで精製し(EtOAc/ヘキサン、25/75〜40/60、V/V)、淡白色の泡状固体12’’が得られた(0.101g、30%)、[α]22=−18.4(c=1.10、MeOH);12’’のHPLC:[96.6%、主要ピーク:Rt=20.5分;3.4%、微小ピーク:Rt=19.0分;カラム:Chiralcel OD(250×4.6mm)、UV検出器、210nm、1.5% EtOHのヘキサン溶液;流速:1.2mL/分]。H NMR(200MHz,CDCl)δ6.73(d,1H,J=3.8Hz),6.14(s,2H),5.15(d,1H,J=8.8Hz),5.06(dd,0.5H,J=9.2Hz,J=3.0Hz),4.81(t,0.5H,J=6.4Hz),4.61−4.35(m,3H),3.83(s,9H),2.41−2.18(m,2H),1.46(s,9H),1.44(s,9H)。13C NMR(50MHz,CDCl)δ171.1,168.8,168.4,161.3,159.5,155.7,106.0,91.0,90.7,87.3,82.4,80.0,56.0,55.5,51.02,36.2,35.8,32.2,28.4,28.1。HRMS C2438FNの計算値(M+H):501.2612、実測値:501.2615。
【0172】
(2S,4R)−2,5−ジアミノ−4−フルオロ−5−オキソペンタン酸(1)
【0173】
【化63】

【0174】
12’(0.192g、0.384mmol)とジメチルスルフィド(0.1mL)の混合物を氷浴で冷却し(0℃)、これにトリフルオロ酢酸(TFA、5mL)を1滴ずつ加えた。追加後、前記氷浴を外し、前記反応液を室温で2.5時間維持した。前記溶液を減圧留去し、ほとんどのTFAを取り除いた。残渣はHO(5mL)に溶解し、CHCl(3mL×2)で洗った。水層を氷浴で冷却し、氷冷した5%アンモニア水をゆっくりと追加してpH=7に中和した。中和した溶液はダウエックス50WX8−200(H+型、10g)の小カラムに入れ、水で洗い、さらに5%アンモニア水で溶出した。生成物を含む分画をプール、減圧濃縮し、高真空条件で一晩乾燥させ、白色固体として粗生成物が得られた。EtOH/HOから再結晶によりさらに精製すると、白色固体が得られた(0.045g、収率71%):mp 175℃(分解)、[α]25=+46.2(c=0.16,HO);1のHPLC:[98.8%、主要ピーク:Rt=1.98分;1.22%、微小ピーク:Rt=9.29分;カラム:Chirex 3126(D)−ペニシラミン(150×4.6mm)、UV検出器、254nm、1.0mM CuSO溶液;流速:1.0mL/分、カラム温度10℃];H NMR(200MHz、DO)δ5.41(dd,0.5H,J=10.0Hz,J=3.0Hz),5.17(dd,0.5H,J=10.0Hz,J=3.0Hz),3.97(t,1H,J=6.6Hz),2.74−2.24(m,2H);13C NMR(50MHz,DO+微量のCDOD)δ175.1,174.7,174.2,91.8,88.2,53.2,34.7,34.3;19F NMR(282MHz,DO+微量のCDOD)δ−188.2(H−Fデカップリング);HRMS C10FNの計算値(M+H):165.0675、実測値: 165.0683。
X線結晶構造解析に適した4−FGln1の結晶は、1のHO溶液を低速で溶媒留去することにより得られた。
【0175】
最終的な4−FGln(2S,4R)、1の結晶構造:
【0176】
【化64】

【0177】
参考: Vladimir Tolman, Petr Sedmera. Journal of Fluorine Chemistry 2000, 101, 5−10
(2S,4S)−2,5−ジアミノ−4−フルオロ−5−オキソペンタン酸(2)
【0178】
【化65】

【0179】
1の調製手順の後、化合物2はフッ化物12’’(0.090g、0.18mmol)から白色固体として調製した(0.019g、収率67%):mp 160℃(分解)、[α]25=−14.6(c=0.15,HO);2のHPLC:[94.9%、主要ピーク:Rt=10.8分;5.1%、微小ピーク1:Rt=8.42分;カラム:Chirex 3126(D)−ペニシラミン(150×4.6mm)、UV検出器、254nm、1.0mM CuSO溶液;流速:1.0mL/分、カラム温度10℃];H NMR(200MHz、D2O)δ5.36(t,0.5H,J=6.2Hz),5.12(dd,0.5H,J=7.8Hz,J=4.6Hz),4.02(t,1H,J=5.8Hz),2.63(t,1H,J=6.0Hz),2.49(ペンテット,1H,J=3.8Hz);13C NMR(50MHz,DO+微量のCDOD)δ174.9,174.5,174.0,91.4,88.2,87.8,52.8,34.3,33.9;19F NMR(282MHz,DO+微量のCDOD)δ−188.13(H−Fデカップリング);HRMS C10FN(M+H):165.0675、実測値: 165.0664。
【0180】
放射性フッ素化法(Radiofluorination Methods)。18Fラベリング反応中のラセミ化を回避するため、「激しい」フッ素化反応を行うことを念頭に、弱塩基性試薬である炭酸水素カリウム(KHCO)と中性相間移動触媒18−Crown−6との併用を検討した。トシレートの前駆体を使用し、望みの(2S,4R)異性体[18F]12’を主要生成物として作成することに成功し、これに伴い、炭素2の位置がエピ化した(2R,4R)ジアステレオマー[18F]12a’’が少量生成した。その後、望みの脱保護生成物[18F]1は、60℃で5分間、中間体[18F]12a’にTFA/アニソールを処理することで最終的に調製した。4−FGlnは実質的にUV/Vis吸光度を示さないため、HPLCで共溶出させることにより[18F]1を直接同定することには問題がある。前記生成物は(9−フルオレニルメチル)カルバメートクロライド(Fmoc−Cl)で処理し、アミノ−Fmoc保護を行った。このさらに誘導体化した放射性化合物のFmoc−[18F]1は、「冷」Fmoc−4−FGlnの標準物質を共溶出させることによりHPLCプロフィールで同定した。最終的に、キラルカラムPhenomenex(登録商標)Chiral Chirex3126(D−ペニシラミン)(150×4.6mm)に1mM CuSO水溶液を溶出剤として使用し(1mL/分、カラム温度10℃)、さらに誘導体化する必要もなく、放射性標識4F−Glnの4つすべておよび冷4F−Gln 1、2、3、および4を分離、同定することができた(Cu−4−FGln複合体はUV吸収性である)。[18F]1は実際に主要生成物であり、少量のジアステレオマー[18F]4が同時に生成した(<5%)。
【0181】
4つの放射性標識4F−Glnおよび前記「冷」標準物質すべてのHPLCプロフィールは、Chiral Chirex3126(D−ペニシラミン)(150×4.6mm)を使用し、1mM CuSO、1mL/分、10℃で確認することができる。これらの条件では、化合物2が最初に溶出し、続いて化合物1、3、および4が溶出する。
【0182】
【化66】

【0183】
11’を出発原料とした[l8F]1((2S,4R)−4−FGln)の放射性合成
【0184】
【化67】

【0185】
活性化SepPak(登録商標)Light QMA CarbにF18(20〜40mCi)を充填し、1mL 18−c−6/KHCO(18.6mLのACN中160mg 18−c−6/3.4mLの水中29mg KHCO)で溶出した。溶液はアルゴンを吹き付けて乾固し、アルゴン流下80℃で1mLのアセトニトリルを用い、2回共沸乾燥させた。乾燥させたF18を氷浴で冷却し、5mgの11’を0.5mlアセトニトリルに溶解し、前記乾燥F18に加えた。前記混合物を70℃の油浴で15分間加熱した。前記混合物は氷浴中で冷却し、0.5mLのアセトニトリルおよび8mLの水を加えた。前記混合物を活性化Oasis(登録商標)HLB 3ccに充填し、押し流し、3mLの水で2回洗った。望みの放射性標識化合物は0.5mLのエタノールで溶出した(全放射能の約20%)。放射化学的純度は逆相HPLC(Gemini C18(250×4.6mm)、MeOH/0.1%ギ酸8/2、1mL/分、保持時間約6分、>95%)により決定し、立体化学的純度はキラルHPLC(Chiralpak ODカラム(250×4.6mm)、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5、1.2mL/分、保持時間約22分、>95%)により決定した。
【0186】
前記エタノール溶液は吹き付けて乾固し、氷浴で冷却し、595μL TFA/5μLアニソール混合物を加えた。前記溶液は5分間60℃で加熱した。まだ暖かいうちにアルゴン流下TFAおよびアニソールを除去し、残渣は1mLの水で粉砕し、前記水溶液を0.45μのフィルターで濾過すると、単離収率約10%(非崩壊生成物に換算、RCP 99%、乾燥重量96%)で望みの放射性[18F]1((2S,4R)−4−FGln)が得られた。放射化学的純度および立体化学的純度はキラルHPLCにより決定した(Chirex 3126(d)−ペニシラミン、1mM CuSO溶液、1mL/分、2S,4R異性体の保持時間約11分、2R,4R異性体約18分)。
【0187】
【化68】

【0188】
中間体12’の逆相HPLCにおけるHPLCプロフィール(Gemini C18(250×4.6mm)、MeOH/0.1%ギ酸8/2、1mL/分、保持時間約6分、>95%。
【0189】
【化69】

【0190】
中間体12’のChiralpak ODカラム(250×4.6mm)におけるHPLCプロフィール、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5、1.2mL/分、保持時間約22分、乾燥重量約96%)。
【0191】
【化70】

【0192】
キラルカラムにおける[18F]1((2S,4R)−4−FGln)のHPLCプロフィール(Chirex 3126(d)−ペニシラミン、1mM CuSO溶液、1mL/分、2S,4R異性体の保持時間約11分、2R,4R異性体約18分)。
【0193】
11a’を出発原料とした[l8F]3((2R,4S)−4−FGln)の放射性合成
【0194】
【化71】

【0195】
活性化SepPak(登録商標)Light QMA CarbにF18(39.8mCi)を充填し、1mL 18−c−6/KHCO(18.6mLのACN中160mg 18−c−6/3.4mLの水中29mg KHCO)で溶出した。前記溶液はアルゴンを吹き付けて乾固し、アルゴン流下80℃で1mLのアセトニトリルを用い、2回共沸乾燥させた。乾燥させたF18を氷浴で冷却し、5mgの11a’を0.5mlアセトニトリルに溶解し、前記乾燥F18に加えた。前記混合物は70℃の油浴で15分間加熱した。前記混合物は氷浴中で冷却し、0.5mLのアセトニトリルおよび8mLの水を加えた。前記混合物を活性化Oasis(登録商標)HLB 3ccに充填し、押し流し、3mLの水で2回洗った。望みの放射性標識化合物は0.5mLのエタノールで溶出した(全放射能の約20%)。放射化学的純度は逆相HPLC(Gemini C18(250×4.6mm)、MeOH/0.1%ギ酸8/2、1mL/分、保持時間約6分、RCP>95%)により決定し、立体化学的純度はキラルHPLC(Chiralpak ODカラム(250×4.6mm)、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5、1.2mL/分、保持時間約22分、乾燥重量>90%)により決定した。
【0196】
前記エタノール溶液は吹き付け乾固し、氷浴で冷却し、595μL TFA/5μLアニソール混合物を加えた。前記溶液は5分間60℃で加熱した。まだ暖かいうちにアルゴン流下TFAおよびアニソールを除去し、残渣は1mLの水で粉砕し、前記水溶液を0.45μのフィルターで濾過すると、単離収率約10%(非崩壊生成物に換算、RCP 97%、乾燥重量90%)で望みの放射性[18F]3((2R,4S)−4−FGln)が得られた。放射化学的純度および立体化学的純度はキラルHPLCにより決定した(Chirex 3126(d)−ペニシラミン、1mM CuSO溶液、1mL/分、2R,4S異性体の保持時間約15分、2S,4S異性体約10分)。
【0197】
【化72】

【0198】
中間体12a’の逆相HPLCにおけるHPLCプロフィール(Gemini C18(250×4.6mm)、MeOH/0.1%ギ酸8/2、1mL/分、保持時間約6分、>95%。
【0199】
【化73】

【0200】
中間体12a’のChiralpak ODカラム(250×4.6mm)におけるHPLCプロフィール、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5、1.2mL/分、保持時間約22分、乾燥重量約96%)。
【0201】
【化74】

【0202】
キラルカラムにおける[18F]3((2R,4S)−4−FGln)のHPLCプロフィール(Chirex 3126(d)−ペニシラミン、1mM CuSO溶液、1mL/分、2R,4S異性体の保持時間約15分、2S,4S異性体約10分)。
18F]2((2S,4S)−4−FGln)の放射性合成
【0203】
【化75】

【0204】
活性化SepPak(登録商標)QMAにF18(46.9mCi)を充填し、1mLのK222/KCO(18.6mLのアセトニトリル中220mg K222/3.4mLの水中40mg KCO)で溶出した(45.5mCi)。溶液はアルゴンを吹き付けて乾固し、アルゴン流下80℃で1mLのアセトニトリルを用い、2回共沸乾燥させた。乾燥させたF18を氷浴で冷却し、5.31mgの11’’を1mlアセトニトリルに溶解し、前記乾燥F18に加えた。前記混合物は70℃の油浴で20分間加熱した。前記混合物は氷浴中で冷却し、8mLの水を加えた。前記混合物を活性化Oasis(登録商標)HLB 3ccに充填し、押し流し、3mLの水で2回洗った。望みの放射性標識化合物は0.5mLのエタノールで溶出した(全放射能の約14%)。
【0205】
エタノール溶液を容積約200μLまで濃縮し、5μLをキラルHPLC(ODカラム、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5 1.2mL/分)に注入し、第2のピーク(約20分)を単離した。2S,4S異性体に対応する第2のピークを単離した(56μCi)(回収した分画は保持時間20分前後であった:それぞれ45/4/56μCi)。
【0206】
【化76】

【0207】
キラルODカラム、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5、流速1.2mL/分における放射性HPLCトレースのエタノール溶液([18F]12’’と[18F]12a’との混合物)
望みの分画のヘキサン/エタノール溶液を吹き付けて乾固し、219μL TFA/1μLアニソールを追加し、60℃で5分間加熱した。揮発性物質はまだ暖かいうちにアルゴン下で除去した。残渣は0.5mLの水で処理し、新しいバイアルに移し、46μCi(RCP>99%、E>98%)の用量が得られた。
放射化学純度、同一性、ジアステレオマー純度はHPLCで決定した:
【0208】
【化77】

【0209】
キラルカラムにおける精製[18F]2((2S,4S)−4−FGlnのHPLC(Chirex 3126(d)−ペニシラミン、1mM CuSO溶液、1mL/分。同一性は冷標準物質と同時に注入することで確定した。
【0210】
18F]4((2R,4R)−4−FGln)の放射性合成
【0211】
【化78】

【0212】
活性化SepPak(登録商標)QMAにF18(82.8mCi)を充填し、1mLのK222/KCO(18.6mLのアセトニトリル中220mg K222/3.4mLの水中40mg KCO)で溶出した(78.9mCi)。溶液はアルゴンを吹き付けて乾固し、アルゴン流下80℃で1mLのアセトニトリルを用い、2回共沸乾燥させた。乾燥させたF18を氷浴で冷却し、8.28mgの11a’’を1mlアセトニトリルに溶解し、前記乾燥F18に加えた。前記混合物は70℃の油浴で20分間加熱した。前記混合物は氷浴中で冷却し、8mLの水を加えた。前記混合物を活性化Oasis(登録商標)HLB 3ccに充填し、押し流し、3mLの水で2回洗った。望みの放射性標識化合物は0.5mLのエタノールで溶出した(全放射能の約14%)。
【0213】
エタノール溶液を容積約200μLまで濃縮し、5μLをキラルHPLC(ODカラム、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5 1.2mL/分)に注入し、第2のピーク(約24分)を単離した。2R,4R異性体に相当する第2のピークを単離した(106μCi)。
【0214】
【化79】

【0215】
キラルODカラム、ヘキサン/EtOH 98.5/1.5、流速1.2mL/分における放射性HPLCトレースのエタノール溶液([18F]12’と[18F]12a’’との混合物)
望みの分画のヘキサン/エタノール溶液を吹き付けて乾固し、219μL TFA/1μLアニソールを追加し、60℃で5分間加熱した。揮発性物質はまだ暖かいうちにアルゴン下で除去した。残渣に0.5mLの水を処理し、新しいバイアルに移し、用量103μCi(RCP>99%、乾燥重量>99%)が得られた。
【0216】
放射化学純度、同一性、ジアステレオマー純度はHPLCで決定した:
【0217】
【化80】

【0218】
キラルカラムにおける精製[18F]2((2S,4S)−4−FGlnのHPLC(Chirex 3126(d)−ペニシラミン、1mM CuSO溶液、1mL/分。同一性は冷標準物質と同時に注入することで決定した。
【0219】
生物学的研究の手順:
in vitroにおける細胞取り込みの検討
考えられる4つの異性体の細胞取り込みは、9L腫瘍細胞株を用いて評価した。細胞取り込みの結果(%用量/μgタンパク質)は[H]グルタミンと比較した。4−フルオロ−グルタミン異性体の取り込みでは、異性体間で際立った差が示された(図4)。天然Lグルタミン誘導体の2S異性体がもっとも高い取り込みを示した。4−FGln(2S,4R)は9L細胞で高い取り込みを示し、検討した最高時間の2時間、絶えず取り込みを続けた。4−FGln(2S,4R)異性体も(2S,4R)異性体と同様に優れた取り込みを示したが、取り込みの値は2時間で急激に落ち込むようであった。非天然型D−グルタミン異性体の(2R,4R)および(2R,4S)4−FGlnは、すべて(2S,4R)および(2S,4S)4−FGln、また前記[H]−L−グルタミンと比較して細胞の取り込みが少ないことが示され、C−2位置の配置が腫瘍細胞の取り込みにおいて非常に重要であり、グルタミンの2S配置(一般的にL−異性体として知られる)は細胞膜を貫通する輸送において重要であることが示唆された。図1を参照。
【0220】
18F]4−FGlnの腫瘍細胞における取り込みは非常に選択的なプロセスであり、2種類の天然4−フルオロ−L−グルタミン誘導体が非天然4−フルオロ−D−グルタミン誘導体よりも高い取り込みを示した。
【0221】
18F]4−FGln(2S,4R)、1異性体は、他の[18F]4−FGln異性体の中で9L腫瘍細胞に最も多く取り込まれることが示された。この所見のため、我々は、[18F]4−FGlnの(2S,4R)異性体1のみをさらに検討することにした。[18F]4−FGln(2S,4R)、1の特異性を検討するため、in vitroでの細胞取り込み阻害研究は9L細胞で行った。冷L−グルタミンおよびL−セリンをグルタミン輸送体の陽性対照阻害剤とした。L−グルタミンはシステムNトランスポーターを阻害し、L−セリンはASCトランスポーターを阻害する。0.5mM〜5mMの範囲で3種類の濃度を検討した。L−グルタミンと[18F](2S,4R)−4−FGln、1を同時に30分間インキュベーションした後、システムNトランスポーターは明らかに阻害された。結果からは、約90%阻害されることが示された(対照3.56%用量/100ugタンパク質に対し0.49%用量/100ugタンパク質が阻害された)。L−セリンもASCトランスポーターをかなり阻害することが示された(対照3.56%用量/100ugタンパク質に対して1.41%阻害)。冷MeAIBは陰性対照とし、これはシステムAトランスポーターを阻害する。5mMの濃度では、システムA輸送系にほとんどまたは全く効果がなかった(対照3.56%用量/100ugタンパク質に対して3.69%阻害)。結果は、明らかにL−グルタミンおよびL−セリンに対して用量依存性の反応を示しており、MeAIBはシステムA輸送系に対する阻害作用を示さないことが証明される。図2を参照。
【0222】
4つの4−[18F]F−グルタミン異性体(2S,4R)、(2S,4S)、(2R,4S)、および(2R,4R)それぞれの細胞取り込みは、(9L)ラット脳神経膠肉腫細胞で研究した。L−[3,4−H(N)]−グルタミン、>97%、250μCi(9.25MBq)はPerkin Elmerから購入し、実施した細胞取り込み実験すべての対照として使用した。L−[3,4−H(N)]−グルタミンの純度はTLC法により決定した(TLCシリカゲル60 F254、溶媒CHCl:MeOH:NH:HO(20:20:5))。前記L−[3,4−H(N)]−グルタミンはR値が0.3〜0.4であることが示された。齧歯類(9L)細胞はDulbecco変法イーグル培地(DMEM)、ウシ胎仔血清、および100単位/mLのペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンで培養した。リガンドをインキュベートする前に、腫瘍細胞を培地で24時間播種した(2.0×10細胞/ウェル)。実験当日、前記培地を吸引し、前記細胞を1mLの温リン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.90mMのCa2+および1.05mMのMg2+を含む)で3回洗った。4−[18F]F−グルタミン異性体およびL−[3,4−H(N)]−グルタミンの4つすべてをPBS溶液に溶解し、各ウェルに追加し(約500,000cpm/mL/ウェル)、37℃で5、30、60、120分間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、前記ウェルを吸引し、残った細胞は1mLの氷冷したPBS(Ca2+およびMg2+)で3回洗った。冷PBSで洗った後、350μLの1M NaOHを使用し、前記細胞を溶解させた。前記溶解した細胞は濾紙に回収した。前記濾紙をシンチレーションバイアルに入れ、計測用液(7mLエコライト+)を加え、前記バイアルは18〜24時間後にβカウンターで計測した。4−[18F]F−グルタミン異性体およびL−[3,4−H(N)]−グルタミンを用いた二重アイソトープ研究では、前記バイアルをまずγカウンターにより計測し、18Fを計測した。次に、18Fが完全に崩壊した1日後、β計測を行った。細胞溶解物100μLを用い、Lowry法によりタンパク質濃度を決定した。
【0223】
in vitroにおける阻害研究:
4−[18F]F−グルタミン(2S,4R)異性体の特異性を検討するため、阻害研究は9L細胞を用いて行った。トレーサーは37℃で30分間インキュベートした。細胞は上述の通り処理した。冷L−グルタミンおよびL−セリンをグルタミン輸送体の陽性対照阻害剤とした。L−グルタミンはシステムNのトランスポーターを阻害し、L−セリンはASCトランスポーターを阻害する。冷MeAIBは陰性対照とし、これはシステムAトランスポーターを阻害する。0.5mM〜5mMの範囲で3種類の濃度を検討した。データからは、各阻害剤に用量依存的反応が示され、L−グルタミンに最も強い阻害作用が示された([5mM]で約90%)。
【0224】
microPETを利用した小動物の画像化
ダイナミック小動物PET(A−PET)の画像研究は4−[18F]F−グルタミン(2S,4R)異性体を用いて行った。すべての撮像は専用の動物PETスキャナー(PhillipsのMosaic)で行った(Surti、2005)。本研究には、M/tomND自発性ヒト乳腺腫瘍を有するトランスジェニックマウスを用いた。このトランスジェニックマウスモデルを使用する利点は多数ある。ドキシサイクリン感受性プロモーターは、これらのマウスを遺伝的に操作し、myc遺伝子を発現させる。これらの腫瘍は従来の異種移植腫瘍に対して自発的に生じる。飲用水(2mg/kg)から前記マウスにドキシサイクリンを投与すると、myc遺伝子の発現はアップレギュレートされる。ドキシサイクリンを除去すると、前記myc遺伝子はダウンレギュレートされる。このモデルを選択したのは、これらの化合物では、真のグルタミン取り込みとmyc遺伝子の発現レベルとの間で直接的な関係がみられるためであった。
M/tomND腫瘍内のグルタミン取り込みは、外側尾静脈から[18F]−4F−グルタミン(2S,4R)異性体を約300μCi注入することにより検討した。トレーサーを注入した直後に画像化を開始し、120分間継続した。腫瘍取り込みの画像化と動力学計算からは、前記myc遺伝子がアップレギュレートされていると、前記[18F]−4F−グルタミン(2S,4R)(1)が腫瘍部位に取り込まれることが明確に証明された。図3および4を参照。
【0225】
マウスにおけるin vivo体内分布研究
18F]−4F−グルタミン異性体を新規の腫瘍PET造影剤として検討するため、我々は[18F]−4F−グルタミン(2S,4R)(1)を体重20〜25グラムの正常ICRマウスにおいて検討した。体内分布研究では、1群あたり5匹のマウスを用いた。イソフルランを使用してマウスを麻酔し、各異性体25μCiを含む生理食塩水溶液0.15mLを外側尾静脈から注入した。イソフルラン麻酔下心臓を切除し、注入後2、30、60、120、および240分でマウスを殺処分した。対象臓器を切除し、重量を量り、γカウンター(Packard Cobra)で放射能を計測した。1グラムあたりの%用量は、初期用量の1.0%の計測まで組織の放射能値を比較することで計算した。初期用量は、同率で測定した注入物質を100倍希釈した分量である。
【0226】
【表1】

【0227】
【表2】

【0228】
主要臓器すべてで急速な取り込みが観察され、静脈内注入後にトレーサーが細胞膜を急速に浸透したことが示唆された。心臓では大幅な取り込みがみられ、心臓組織からの消失は比較的ゆっくりであった。腎臓では初期の取り込み値が高く、消失が速いことが明らかであり、尿中排泄が速かった可能性がある。膵臓が最も顕著な取り込みおよび貯留を示した。30分後に膵臓と肝臓の比が4:1に達し、膵臓では選択時な取り込みおよび貯留が行われていたことが示唆される。膵臓細胞の外分泌細胞では、グルタミンの代謝回転率が高い可能性がある。脳の取り込みは中等度であるが、脳の取り込みは注入後4時間まで一定のままであった。結合剤の取り込みは後になって大幅に増加した。in vivoで脱フッ素化が行われた可能性があり、この場合、循環血液中に遊離フッ化物イオンが形成する。従って、骨の取り込みが増加したことは、このトレーサーのin vivo脱フッ素化を反映しているのかもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の単一ジアステレオマーであって、
【化81】

ジアステレオマー過剰率80%以上を有し、
1は酸に不安定な窒素保護基であり、
はC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、各Rは個別に−OC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、
ORは脱離基であり、
nは0,1、2、3、または4である
単一ジアステレオマー。
【請求項2】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、ジアステレオマー過剰率90%以上を有するものである、単一ジアステレオマー。
【請求項3】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、ジアステレオマー過剰率98%以上を有するものである、単一ジアステレオマー。
【請求項4】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化82】

【請求項5】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化83】

【請求項6】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化84】

【請求項7】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化85】

【請求項8】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、RはBocである、単一ジアステレオマー。
【請求項9】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、Rはt−ブチルである、単一ジアステレオマー。
【請求項10】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、Rは−OCHである、単一ジアステレオマー。
【請求項11】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、nは3である、単一ジアステレオマー。
【請求項12】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、ORは−Oトシレートである、単一ジアステレオマー。
【請求項13】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化86】

【請求項14】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化87】

【請求項15】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化88】

【請求項16】
請求項1記載の単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化89】

【請求項17】
式IIの化合物の単一ジアステレオマーであって、
【化90】

ジアステレオマー過剰率80%以上を有し、
1は酸に不安定な窒素保護基であり、
はC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、各Rは個別に−OC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、
nは0,1、2、3、または4である
単一ジアステレオマー。
【請求項18】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、RはBocである、単一ジアステレオマー。
【請求項19】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、Rはt−ブチルである、単一ジアステレオマー。
【請求項20】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、Rは−OCHである、単一ジアステレオマー。
【請求項21】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、nは3である、単一ジアステレオマー。
【請求項22】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、Fは18Fである、単一ジアステレオマー。
【請求項23】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化91】

【請求項24】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化92】

【請求項25】
請求項17記載の単一ジアステレオマーにおいて、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化93】

【請求項26】
癌を撮像するための診断用組成物であって、ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーおよび薬学的に許容される担体又は賦形剤を有するものである、診断用組成物。
【請求項27】
請求項26記載の診断用組成物において、前記単一ジアステレオマーは基本的に下記式である、診断用組成物。
【化94】

【請求項28】
請求項26記載の診断用組成物において、前記単一ジアステレオマーは基本的に下記式である、診断用組成物。
【化95】

【請求項29】
請求項26記載の診断用組成物において、前記単一ジアステレオマーは基本的に下記式である、診断用組成物。
【化96】

【請求項30】
請求項26記載の診断用組成物において、前記単一ジアステレオマーは基本的に下記式である、診断用組成物。
【化97】

【請求項31】
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーを調整する方法であって、
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式Iの化合物の単一ジアステレオマーとフッ素化剤とを反応させる工程であって、
【化98】

式中、
1は酸に不安定な窒素保護基であり、
はC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、
各Rは個別に−OC1−6アルキルまたはC1−6シクロアルキルであり、
ORは脱離基であり、
nは0,1、2、3、または4であり、
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する式IIの化合物の単一ジアステレオマーを形成するために効果的な時間および条件で行うものである、前記反応させる工程と、
【化99】

前記4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーを生成させるために効果的な時間および条件下、前記式IIの化合物と酸とを反応させる工程と
を有する方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記酸はトリフルオロ酢酸である、方法。
【請求項33】
請求項31記載の方法において、RはBocである、方法。
【請求項34】
請求項31記載の方法において、Rはt−ブチルである、方法。
【請求項35】
請求項31記載の方法において、各Rは−OCHである、方法。
【請求項36】
請求項31記載の方法において、nは3である、方法。
【請求項37】
請求項31記載の方法において、ORは−Oトシレートである、方法。
【請求項38】
請求項31記載の方法において、前記式Iの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化100】

【請求項39】
請求項31記載の方法において、前記式Iの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化101】

【請求項40】
請求項31記載の方法において、前記式Iの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化102】

【請求項41】
請求項31記載の方法において、前記式Iの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化103】

【請求項42】
請求項31記載の方法において、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化104】

【請求項43】
請求項31記載の方法において、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化105】

【請求項44】
請求項31記載の方法において、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化106】

【請求項45】
請求項31記載の方法において、前記式IIの化合物は基本的に下記式である、方法。
【化107】

【請求項46】
患者において癌を撮像する方法であって、
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーを患者に投与する工程と、
前記4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーから放射されるガンマ線を検出する工程と
を有する方法。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、前記4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーが基本的に下記式である、方法。
【化108】

【請求項48】
請求項46記載の方法において、前記4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーが基本的に下記式である、方法。
【化109】

【請求項49】
請求項46記載の方法において、前記4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーが基本的に下記式である、方法。
【化110】

【請求項50】
請求項46記載の方法において、前記4−[18F]フルオログルタミンの単一ジアステレオマーが基本的に下記式である、方法。
【化111】

【請求項51】
ジアステレオマー過剰率80%以上を有する4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマー。
【請求項52】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、ジアステレオマー過剰率90%以上を有するものである、単一ジアステレオマー。
【請求項53】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、ジアステレオマー過剰率98%以上を有するものである、単一ジアステレオマー。
【請求項54】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に4−[18F]フルオログルタミンである、単一ジアステレオマー。
【請求項55】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化112】

【請求項56】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化113】

【請求項57】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化114】

【請求項58】
請求項51記載の4−フルオログルタミンの単一ジアステレオマーにおいて、このジアステレオマーは、基本的に下記式である、単一ジアステレオマー。
【化115】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501813(P2013−501813A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524902(P2012−524902)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045470
【国際公開番号】WO2011/020018
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】