説明

4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法

【課題】セメントモルタルグラウティング工法により地下空洞に対する地盤補強がなされる場合、地盤補強効果を少ない費用で全体的な補強領域に亘って効果的に判定できる新たな方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、セメントモルタルグラウティング工法による地下空洞の地盤補強効果を判定する方法であって、(a)地盤補強領域に長期間電気比抵抗を測定できる測線(Survey Line)を設けるステップと、(b)上記測線を用いてモルタル注入前に補強領域に対する電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化するステップと、(c)上記測線を用いてモルタル注入途中またはモルタル注入後、各特定状態別に電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化するステップと、(d)上記(b)ステップで測定された電気比抵抗と上記(c)ステップで測定された電気比抵抗の変化比を算出し、これを用いて補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化して地盤補強効果を判定するステップと、を含んでなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法に関し、より詳しくは、4−D電気比抵抗モニタリングを適用してセメントモルタルグラウティング工法による地下空洞の地盤補強効果を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石灰岩地帯の溶蝕空洞及び廃鉱山の採掘跡など、地下に存在する不特定多数の空洞により、道路、鉄道、橋梁のような地上構造物をはじめとする社会間接資本と人命に対する被害事例が増加している。特に、建設現場では地下空洞により既存の設計変更及び新たな対策工法の用意により過多な工事費が支出される等、多くの困難性をなめており、このような地盤沈下地域に対する地盤補強が重要な問題として提起されている。
【0003】
石灰岩地帯の地盤補強は空洞全体に対する地盤補強よりは経済的に既存の施設物や新規に建設される構造物の安定性を確保できる範囲内で設計及び施工されている。このような危険地域の地盤沈下を防止し、構造物の安定性を確保するために、国内では大部分セメントモルタルグラウティングによる地下空洞充填工法が適用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化学的溶蝕作用により生成された石灰岩空洞は大部分不規則的に発達されているので、セメントモルタルグラウティングの場合、地盤補強途中と補強後の効果を判定することに多くの困難性がある。一般的に、地盤補強の後、試錐調査及び試錐孔を用いて地盤補強効果を確認しているが、試錐地点に限定された効果判定に止めるだけでなく、試錐費用が非常に高く、時間がたくさんかかる短所がある。
【0005】
このような問題を解決するために、本発明はセメントモルタルグラウティング工法により地下空洞に対する地盤補強がなされる場合、地盤補強効果を少ない費用で全体的な補強領域に亘って効果的に判定できる新たな方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための本発明の4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法は、セメントモルタルグラウティング工法による地下空洞の地盤補強効果を判定する方法であって、(a)地盤補強領域に長期間電気比抵抗を測定できる測線(Survey Line)を設けるステップと、(b)上記測線を用いてモルタル注入前、補強領域に対する電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化するステップと、(c)上記測線を用いてモルタル注入途中またはモルタル注入後、各特定状態別に電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化するステップと、(d)上記(b)ステップで測定された注入前の電気比抵抗を基準にして上記(c)ステップで測定された注入途中または注入後の電気比抵抗に対する変化比を算出し、これを用いて補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化して地盤補強効果を判定するステップと、を含んでなることを特徴とする。
【0007】
この際、上記地盤補強効果判定は、補強されたモルタルの電気比抵抗が石灰岩空洞に存在する地下水の電気比抵抗より低いという特性を用いて補強前及び補強後の電気比抵抗を比較することによって、補強領域に対する補強効果を判定することを特徴とする。
【0008】
また、上記測線は、地表から一定の深さで掘削した底に電極を一定間隔で設けて、上記各電極に電線を連結して電線保護管を通じてターミナルボードに接地させることが好ましくて、上記電極と上記電線との連結部は、シリコンで絶縁及び防水処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、セメントモルタルグラウティング工法により地下空洞に対する地盤補強がなされる場合、地盤補強効果を少ない費用で全体的な補強領域に亘って効果的に判定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法の構成を既存の方式と対比して示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による電気比抵抗計測システムを示す図である。
【図3】地盤補強効果判定のための電気比抵抗測線設置領域を示す図である。
【図4】道路拡張区間の地盤補強のためのセメントモルタル注入孔の位置を示す図である。
【図5】グラウティング注入孔のセメントモルタル注入量の表示を示す図である。
【図6】電気比抵抗モニタリング測線6番から獲得した資料を4−D逆算で解釈した電気比抵抗分布図である。
【図7】電気比抵抗モニタリング測線6番から獲得した資料を4−D逆算で解釈した電気比抵抗分布図である。
【図8】最もセメントモルタル注入の影響を受けた測線6を対象にしてセメントモルタル注入前のphase1を基準にして求めた各ステップの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図9】最もセメントモルタル注入の影響を受けた測線6を対象にしてセメントモルタル注入前のphase1を基準にして求めた各ステップの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図10】最もセメントモルタル注入の影響を受けた測線6を対象にしてセメントモルタル注入前のphase1を基準にして求めた各ステップの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図11】最もセメントモルタル注入の影響を受けた測線6を対象にしてセメントモルタル注入前のphase1を基準にして求めた各ステップの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図12】殆どセメントモルタル注入の影響を受けていない測線4を対象にしてセメントモルタル注入前のPhase1を基準にして求めた各ステップの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図13】殆どセメントモルタル注入の影響を受けていない測線4を対象にしてセメントモルタル注入前のPhase1を基準にして求めた各ステップの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図14】セメントモルタルの注入前と注入後の電気比抵抗モニタリング資料から求めた3次元逆解釈結果とこれらの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図15】セメントモルタルの注入前と注入後の電気比抵抗モニタリング資料から求めた3次元逆解釈結果とこれらの電気比抵抗変化比を示す図である。
【図16】セメントモルタルの注入前と注入後の電気比抵抗モニタリング資料から求めた3次元逆解釈結果とこれらの電気比抵抗変化比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付された図面を参考しつつ本発明の一実施形態による4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、ここに説明される実施形態に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。むしろ、ここに紹介される実施形態は開示された内容が徹底し、かつ完全になるように、そして当業者に本発明の思想が十分伝えられるようにするために提供されるものである。
【0013】
図1は、本発明の地盤補強効果判定方法を示す構成図である。
【0014】
図示したように、従来には石灰岩空洞による地盤沈下地域にセメントモルタルグラウティング工法による地盤補強を遂行した後、その補強効果を検査するために検査孔を試錐して補強効果を判定する方法を使用した。しかしながら、このような従来の方法は試錐地点に限定された効果判定に止めるだけでなく、試錐費用が非常に高く、時間がたくさんかかる短所があった。
【0015】
このような問題を解決するために、本発明では、補強領域に対し、補強前後に電気比抵抗を測定して電気比抵抗の変化比にて地盤補強効果を判定する新たな技術を開発した。
【0016】
本発明の地盤補強効果判定方法は、次のような方法により遂行される。
【0017】
まず、地盤補強領域に長期間電気比抵抗を測定できる測線を設ける(S10)。次に、上記測線を用いてモルタル注入前の補強領域に対する電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化する(S20)。
【0018】
次に、上記測線を用いてモルタル注入途中またはモルタル注入後、各特定状態別に電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化する(S30)。
【0019】
最後に、補強前に測定された電気比抵抗と補強途中または補強後に測定された電気比抵抗の変化比を算出し(S40)、それを用いて補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化する(S50)。
【0020】
セメントモルタルは配合比の構成によって電気比抵抗の差はあるが、石灰岩空洞に詰められている地下水よりは電気比抵抗が低いので(室内実験結果モルタルの電気比抵抗は10ohm−m以下である)、モルタル注入後に電気比抵抗が低くなった部分を映像化すればセメントモルタルによる地盤補強効果を3次元的に判定できるようになる。即ち、補強前後の電気比抵抗変化比は補強前の電気比抵抗を基準にして補強後の電気比抵抗を割ったものであって、1より低い場合は注入前の電気比抵抗より注入後の電気比抵抗が低くなったということを意味し、これはセメントモルタル注入による影響であると判断できるので、該当領域のモルタルによる補強状態が分かるようになる。
【0021】
図2は、地盤補強地域に設けた電気比抵抗計測システムを示す図である。本発明において、電気比抵抗を測定するための測線(Survey line)は、地表から一定の深さで掘削した底に電極を一定の間隔で設けて、上記各電極に電線を連結して電線保護管を通じてターミナルボードに接地させることが好ましい。実際のシステム設置においては、地表から深さ30cmに掘削して、その底に電極を5m間隔で設けて、各電極に電線を連結して電線保護管を通じてターミナルボードに接地させた。電極と電線との連結部は空気と水による腐食を防止するためにシリコンで絶縁及び防水処理をしたし、全ての電極が設けられた後に掘削した土で埋め戻しを行う。
【0022】
以下、本発明の4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法を適用して実際の地盤補強領域に対する補強効果判定過程を具体的に説明する。
【0023】
実験地域は過去に地盤沈下が発生した履歴があり、基盤岩として石灰珪酸塩岩が分布し、その上部に田土壌を含んだ第4期沖積堆積層で覆われてある地域である。この地域は断層破砕帯に沿って流動している地下水の作用により石灰珪酸塩岩が溶蝕されて形成された空洞が比較的小規模で、多様な深度で広い地域に亘って発達しており、このような地下水の流れが容易であるので、容易に侵食できる地質構造的特徴を持っている。実験地域に分布している石灰珪酸塩岩空洞は、既存の調査結果によると、網構造でなされており、広い範囲に亘って分布していることと知られている。実験地域の近くには農業用水のための管井が開発されていて、農作物の用水供給のために地下水を揚水して使用している。農繁期にはこの地域の農業用水の相当量を地下水に依存しており、地下水の過剰揚水により地下空洞内に詰められている地下水位が下降するので、地表部で数回の地盤陥没が発生した。
【0024】
石灰珪酸塩岩の空洞が発達されている地域を通過する道路拡張区間の安定性を確保するために、地盤補強設計のために、試錐調査及び物理探査を行った結果、道路拡張区間の下部に地下空洞が発達していることが分かった。この結果に基づいて、道路拡張区間の下部地盤補強のためにセメントモルタルグラウティング工法により設計及び施工された。
【0025】
道路拡張区間での試錐結果、地下空洞が地表付近で深度18mまで分布しているが、これは3次元の電気比抵抗映像の低比抵抗帯と一致している。
【0026】
本実験例において、電気比抵抗モニタリングシステムは、石灰珪酸塩岩の地下空洞が最も発達されている道路拡張区間を中心に9個の測線を設け、長期間のモニタリングのために電極棒と電線などを特別に製作した。図3は、地盤補強領域を中心に設けた電気比抵抗測線を示している。図3乃至図5において、横軸及び縦軸はTM座標を表したものである。図3において、電気比抵抗測線は北東−南西方向に9個の測線を設けたし、電極間隔は5m、測線間隔は道路拡張区間を中心に5mと10mにした。
【0027】
9個の電気比抵抗測線のうち、測線4、5、6は地中に埋設して長期間電気比抵抗をモニタリングできるように深さ30cmに掘削して、その底に電極を5m間隔で設け、各電極に電線を連結して電線保護管を通じてターミナルボードに接地させた。電極と電線との連結部は空気と水による腐食を防止するためにシリコンで絶縁及び防水処理をしたし、全ての電極が設けられた後に掘削した土で埋め戻した。その他の測線は田の底面に測線の始点と終点を表示して農作物がない時に測線を設けて電気比抵抗をモニタリングした。
【0028】
電気比抵抗測定時期は、表1に表したように、地盤補強のためのセメントモルタル注入前に1回測定をしたし、セメントモルタル注入途中と注入後に数回電気比抵抗を反復測定した。測定に使用した電極配列はdipole-dipole電極配列とmodify pole-pole電極配列を利用したのであり、電気比抵抗を測定する前に電極棒と地盤の接地抵抗をチェックして断線及び接地状態を把握し、同一な電流(100mA)及び電極配列を用いて各測線別の電気比抵抗を測定した。
【0029】
【表1】

【0030】
石灰岩空洞が発達されている道路の下部をセメントモルタル注入材で補強するために試錐調査及び電気比抵抗探査を行った。その結果、電気比抵抗モニタリング測線6番の周辺では多くの地下空洞が不規則に存在しており、測線7、8番方向に地下空洞が分布していることと判断して、図4のようにセメントモルタル注入孔の位置を定めた。注入孔の位置を見ると、道路のきわを中心に試錐調査で石灰岩空洞が発見された電気比抵抗モニタリング測線6番の付近に集中されており、測線7、8番がある田の底面にも注入孔が位置している。
【0031】
このような注入孔を用いて注入初期には水、セメント、ベントナイトを混合したセメント懸濁液を一定の圧力で注入した。しかしながら、この地域に石灰岩空洞が網構造で発達しているので、流動性の良いセメント懸濁液が遠くまで流動されていることが分かった。その理由は、セメント懸濁液を注入する時、注入によって圧力が増加することが一般的であるが、この地域は注入によって注入圧力が増加してからまた減少する傾向を示している。したがって、注入材をセメント懸濁液に砂を混合してセメントモルタルに注入を実施したし、各注入孔に対する注入量は注入圧力により決めた。
【0032】
図5は、グラウティング注入孔のセメントモルタルの注入量を示したものである。全体的な注入量を見ると、石灰岩空洞が発見された試錐孔で注入量が多いことと表れたし、石灰岩空洞が網構造で発達されているので、広い範囲に注入材が流動したことと判断される。
【0033】
道路拡張区間の周辺に設けられた電気比抵抗測線から数回資料を獲得して分析することによって、地盤補強効果判定の適用性を検討した。
【0034】
図6及び図7は、電気比抵抗モニタリング測線6番から獲得した資料を4−D 逆算で解釈した結果である。図6乃至図16において、縦軸及び横軸は距離(単位:m)を示し、同一電気比抵抗(単位:ohm−m)を線で連結したし、同一電気比抵抗線上に記入された数字は電気比抵抗を示す。測線6番は拡張道路のきわに設けた測線であって、最も地盤補強によるセメントモルタル注入の影響を受けることと考えられる。図6はセメントモルタルを注入する前のphase1の電気比抵抗分布図であり、図7はセメントモルタル注入の以後のphase6の電気比抵抗分布図である。Phase1とphase6の電気比抵抗分布パターンは殆ど類似しているが、phase1よりphase6の20ohm−m以下の低比抵抗分布領域が拡張されていることが分かる。このような原因はグラウト材であるセメントモルタル注入によることと判断される。
【0035】
基礎的な実験でグラウト材の注入量に従う電気比抵抗の変化を観察した結果、注入量が増加するほど電気比抵抗が減少することが分かった。したがって、地盤補強において、セメントモルタル注入に対する効果の評価のためには、各注入ステップで測定した電気比抵抗の変化比を求めて、注入領域だけでなく注入挙動を評価した。図8〜図11は、電気比抵抗モニタリング測線6を対象にしてセメントモルタル注入前のphase1を基準にして各ステップの電気比抵抗の変化比を示したものである。図8、図9、図10、及び図11は、各々phase2、3、4、及び6の電気比抵抗の変化比を示している。図8は、グラウティングを始めるステップであって、phase1と比較して電気比抵抗の変化が殆どない。しかしながら、グラウティング途中のphase3、4、及び6の場合は、電気比抵抗が低くなっている領域が拡張されていることが分かり、図9から図11のステップに行くほど、低比抵抗が地表の付近に拡張されていることが分かる。実際のphase6ステップでは、セメントモルタル注入によりアスファルト舗装道路の表面に屈曲が発生したし、このような現場を電気比抵抗の変化比から立証することができる。
【0036】
一方、図12及び図13は、拡張道路のきわに設けた電気比抵抗モニタリング測線4番を対象にしてセメントモルタル注入前のPhase1を基準にしてPhase2と4の電気比抵抗の変化比を示したものである。図12及び図13は、各phase2と4の電気比抵抗の変化比を示している。図8乃至図11と同様に、図12はグラウティングを始めるステップであって、Phase1と比較して電気比抵抗の変化が殆どない。図13はPhase4の電気比抵抗の変化比を示しているが、電気比抵抗の変化が殆どないことと見える。このような理由は、測線4番は試錐調査で石灰岩空洞が発見されなかったし、セメントモルタルが注入されていないことと見える。
【0037】
地盤補強のためのセメントモルタルの注入領域及び挙動を空間的に把握するために、電気比抵抗モニタリング測線9個を用いて3次元逆解釈を試みた。図14乃至図16は、セメントモルタルの注入前と注入後の電気比抵抗モニタリング資料から3次元逆解釈結果とこれらの電気比抵抗の変化比を示している。図14はphase1の3次元逆解釈結果のうち、深さ15mの電気比抵抗の映像を示したものであり、図15はphase7の深さ15mの電気比抵抗の映像を示したものである。図16はphase1を基準にしてphase7を単純に割ったものであって、青色系列の色が分布する箇所は注入前より注入後に電気比抵抗が低くなった領域である。この結果からセメントモルタル注入材の流動方向及び分布を空間的に把握することができる。
【0038】
本実験例は、道路拡張区間の地盤補強のためにセメントモルタルグラウティング工法を施工している現場に4−D電気比抵抗モニタリングを行って地盤改良の効果判定を試みた。セメントモルタルを注入する前に得た電気比抵抗を基準にして注入途中または注入後に数回電気比抵抗を測定して電気比抵抗の変化比にて注入材の流動方向及び注入範囲を把握した。その結果、石灰岩空洞が発達した周辺の注入孔では電気比抵抗が格段に低くなっていることが分かり、これは注入材の影響によることと考えられる。しかしながら、試錐調査で石灰岩空洞が発見されていない電気比抵抗モニタリング測線4の場合は、殆ど電気比抵抗の変化が観察されておらず、実際の注入孔での注入量も格段に少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
このような結果から石灰岩空洞による地盤沈下地域のセメントグラウティングによる地盤補強効果評価に4−D電気比抵抗モニタリングの有用性が立証できた。また、地盤沈下地域グラウト注入前と注入後の電気比抵抗の変化比から地盤補強領域を3次元的に映像化できるので、本発明で開発された地盤物性変化モニタリング技術が地盤調査分野に有用に適用できることと判断される。
【0040】
以上のように図面と明細書で実施形態が開示された。ここで、特定の用語が使われたが、これは単に本発明を説明するために使われたものであり、意味限定や特許請求範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使われたのではない。したがって、本技術分野の通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するはずである。したがって、本発明の本当の技術的保護範囲は添付された特許請求範囲の技術的思想により定まるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントモルタルグラウティング工法による地下空洞の地盤補強効果を判定する方法であって、
(a)地盤補強領域に電気比抵抗を測定できる測線(Survey Line)を設けるステップと、
(b)前記測線を用いてモルタル注入前に補強領域に対する電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化するステップと、
(c)前記測線を用いてモルタル注入途中またはモルタル注入後、各特定状態別に電気比抵抗を測定し、その測定結果を用いて3次元電気比抵抗逆算を遂行して補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化するステップと、
(d)前記(b)ステップで測定された注入前の電気比抵抗を基準にして前記(c)ステップで測定された注入途中または注入後の電気比抵抗に対する変化比を算出し、これを用いて補強領域に対する3次元電気比抵抗分布を映像化して地盤補強効果を判定するステップと、
を含んでなることを特徴とする4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法。
【請求項2】
前記測線は、
地表から一定の深さで掘削した底に電極を一定の間隔で設けて、前記各電極に電線を連結して電線保護管を通じてターミナルボードに接地させることを特徴とする請求項1に記載の4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法。
【請求項3】
前記電極と前記電線との連結部は、
シリコンで絶縁及び防水処理することを特徴とする請求項2に記載の4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法。
【請求項4】
前記地盤補強効果判定は、
補強されたモルタルの電気比抵抗が石灰岩空洞に存在する地下水の電気比抵抗より低いという特性を用いて補強前及び補強後の電気比抵抗を比較することによって、補強領域に対する補強効果を判定することを特徴とする請求項1に記載の4−D電気比抵抗モニタリングによる地盤補強効果判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−526955(P2010−526955A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508320(P2010−508320)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001570
【国際公開番号】WO2009/120035
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(506081530)コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ (21)
【Fターム(参考)】