説明

4級アンモニウム塩及びそれを用いたシクロプロパン化合物の製造方法

【課題】塩基性条件下での安定性に優れ、4級アンモニウム塩を有する不斉触媒の提供。
【解決手段】式(5)の化合物。


(式中、R、R、R、Rは、アルキル基を表し、Rは、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Xは、ハロゲン化物イオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4級アンモニウム塩及びそれを用いたシクロプロパン化合物の製造方法に関し、より具体的には、不斉触媒として有用な光学活性な4級アンモニウム塩及び光学活性な4級アンモニウム塩を不斉触媒として用いた光学活性シクロプロパン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エステル等のシクロプロパン化合物は、抗C型肝炎薬等の医薬品の製造中間体として有用であることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)
【0003】
シクロプロパン化合物の製造方法として、例えば、非特許文献1には、N−フェニルメチレングリシンエステルと(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテンとを、N−ベンジルシンコニジン化合物及び水酸化ナトリウムの存在下で反応させ、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エステルを得る方法が記載されている。かかる方法では、N−フェニルメチレングリシンエステル1モルに対して、0.03モルのN−ベンジルシンコニジン化合物が不斉触媒として用いられ、さらに水酸化ナトリウムの存在下で反応が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Organic Process Research & Development 2010年,第14巻,第692〜700頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法において不斉触媒として用いられているN−ベンジルシンコニジン化合物は、塩基性条件下での安定性が必ずしも十分に満足できるものではない。このため、水酸化ナトリウム存在下での反応にN−ベンジルシンコニジン化合物を用いると、反応中にN−ベンジルシンコニジン化合物が分解していく場合がある。この場合、必要量を超えるN−ベンジルシンコニジン化合物を用いなければならないという問題があった。
そこで、塩基性条件下での安定性に優れた新たな触媒の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは鋭意検討し、下式(5)で示される4級アンモニウム塩が、触媒として用いられ、且つ塩基性条件下での安定性に優れることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 式(5)
【0008】
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、フェニル基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基;又は炭素数1〜10のアルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Cは、不斉炭素原子を表し、Xは、ハロゲン化物イオンを表す。)
で示される4級アンモニウム塩。
〔2〕 式(5)で示される4級アンモニウム塩が光学活性である前記〔1〕記載の4級アンモニウム塩。
〔3〕 式(5)におけるR及びRが共にメチル基である前記〔1〕又は〔2〕記載の4級アンモニウム塩。
〔4〕 式(5)におけるR及びRが共にメチル基である前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の4級アンモニウム塩。
〔5〕 式(5)におけるRがエチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−フェニルエチル基又はp−トリル基である前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の4級アンモニウム塩。
〔6〕 式(5)
【0009】
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、フェニル基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基;又は炭素数1〜10のアルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Cは、不斉炭素原子を表し、Xは、ハロゲン化物イオンを表す。)
で示される4級アンモニウム塩及び塩基の存在下、式(1)
【0010】
【化3】

(式中、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を表す。)
で示される化合物と、
式(2)
【0011】
【化4】

(式中、Y及びYはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基、炭素数1〜6のペルフルオロアルカンスルホニルオキシ基又はベンゼンスルホニルオキシ基を表す。ここで、該ベンゼンスルホニルオキシ基に含まれる水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい。)
で示される化合物と
を反応させる工程を含む
式(3)
【0012】
【化5】

(式中、Ar及びRは上記と同義である。C*1及びC*2は不斉炭素原子を表し、C*1がR配置である場合はC*2はS配置であり、C*1がS配置である場合はC*2はR配置である。)
で示されるシクロプロパン化合物の製造方法。
〔7〕 式(5)で示される4級アンモニウム塩及び式(3)で示されるシクロプロパン化合物が共に光学活性である前記〔6〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塩基性条件下での安定性に優れた新たな触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
式(5)におけるRは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。
は、好ましくは、メチル基である。
【0015】
式(5)におけるRは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基が挙げられる。
は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はイソブチル基であり、より好ましくは、メチル基である。
【0016】
式(5)におけるRは、フェニル基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基;又は炭素数1〜10のアルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる基を有していてもよいフェニル基を表す。
フェニル基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基及び2−フェニルエチル基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基及び2−メチル−3−トリフルオロメチルフェニル基が挙げられる。
は、好ましくは、フェニル基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基または炭素数1〜10のアルキル基を有するフェニル基であり、より好ましくは、2−フェニルエチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基であり、さらに好ましくは、2−フェニルエチル基である。
【0017】
式(5)におけるRは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。
は、好ましくは、メチル基である。
【0018】
式(5)におけるRは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基が挙げられる。
は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はイソブチル基であり、より好ましくは、メチル基である。
【0019】
式(5)におけるXはハロゲン化物イオンを表す。ハロゲン化物イオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられる。
は、好ましくは、塩化物イオン又は臭化物イオンであり、より好ましくは、臭化物イオンである。
【0020】
式(5)で示される4級アンモニウム塩(以下、化合物(5)と記すことがある。)としては、具体的には、例えば、以下の式(5-1)〜(5-12)で示される4級アンモニウム塩、並びにこれらの鏡像異性体が挙げられる。
【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
化合物(5)は、好ましくは、式(5-1)で示される4級アンモニウム塩、式(5-5)で示される4級アンモニウム塩、式(5-6)で示される4級アンモニウム塩、式(5-7)で示される4級アンモニウム塩、式(5-8)で示される4級アンモニウム塩、式(5-9)で示される4級アンモニウム塩、式(5-10)で示される4級アンモニウム塩、式(5-11)で示される4級アンモニウム塩、式(5-12)で示される塩又はこれらの鏡像異性体であり、より好ましくは、式(5-5)で示される4級アンモニウム塩、式(5-8)で示される4級アンモニウム塩、式(5-9)で示される4級アンモニウム塩、式(5-10)で示される4級アンモニウム塩、式(5-11)で示される4級アンモニウム塩、式(5-12)で示される4級アンモニウム塩又はこれらの鏡像異性体であり、さらに好ましくは、式(5-5)で示される4級アンモニウム塩又はその鏡像異性体である。
【0026】
化合物(5)は、式(6)
【0027】
【化10】

(式中、Rは上記と同義であり、Xは。ハロゲン原子を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(6)と記すことがある。)と式(7)
【0028】
【化11】

(式中、R、R及びCは上記と同義である。)
で示される化合物(以下、化合物(7)と記すことがある。)とを反応させる工程により製造される。以下、かかる工程を本アンモニウム塩化反応と記すことがある。
【0029】
式(6)におけるXはハロゲン原子を表し、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
Xは、好ましくは、塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは、臭素原子である。
【0030】
化合物(6)は、例えば、Tetrahedron Letters,第44巻,2003年,第5629−5632頁に記載の方法により製造される。
【0031】
化合物(7)は、例えば、以下に例示される方法により製造される。
まず、式(7−1)
【0032】
【化12】

(式中、Rは上記と同義である。)
で示される化合物(以下、化合物(7−1−1)と記すことがある。)と、式(7−1−2)
【0033】
【化13】

(式中、Rは上記と同義であり、Rは、例えば、メチル基、エチル基、ベンジル基等の炭化水素基を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(7−1−2)と記すことがある。)又はその酸付加塩とを、トリエチルアミン等の第3アミンの存在下又は非存在下で反応させ、得られた式(7−2)
【0034】
【化14】

(式中、R、R及びCは上記と同義である。)
で示される化合物(以下、化合物(7−2)と記すことがある。)に含まれるアミノ基(−NH)を保護し、得られた式(7−3)
【0035】
【化15】

(式中、R、R及びCは上記と同義であり、Pは、例えば、ベンジル基、2,4−ジメトキシベンジル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の保護基を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(7−3)と記すことがある。)と、水素化ナトリウム等の塩基と、アルキル化剤(当該アルキル化剤は、Rで表される炭素数1〜4のアルキル基及びRで表される炭素数1〜10のアルキル基を化合物(7−3)に導入しうるアルキル化剤であり、具体的には、例えば、ヨードメタン、ヨードエタン、1−ヨードブタン及びジメチル硫酸が挙げられる。)と反応させ、得られた式(7−4)
【0036】
【化16】

(式中、R、R、R、R、P及びCは上記と同義である。)
で示される化合物(以下、化合物(7−4)と記すことがある。)に含まれるアミノ基を脱保護することにより、化合物(7)を得ることができる。
【0037】
本アンモニウム塩化反応は、好ましくは、塩基の存在下で行われる。かかる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸化合物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素化合物、並びにトリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン等の第3アミンが挙げられる。
塩基は、好ましくは、アルカリ金属炭酸化合物またはアルカリ金属炭酸水素化合物であり、より好ましくは、炭酸水素ナトリウムである。
【0038】
本アンモニウム塩化反応は、好ましくは、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、ニトリル溶媒、ケトン溶媒、塩素化脂肪族炭化水素溶媒及び非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
脂肪族炭化水素溶媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン及び石油エーテルが挙げられ、
【0040】
芳香族溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン及び1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられ、
【0041】
エーテル溶媒としては例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール及びジフェニルエーテルが挙げられ、
【0042】
アルコール溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、イソペプチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル及びジエチレングリコールモノt−ブチルエーテルが挙げられ、
【0043】
ニトリル溶媒としては例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリルが挙げられ、
ケトン溶媒としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが挙げられ、
塩素化脂肪族炭化水素溶媒としては例えば、ジクロロメタン、クロロホルム及び1,2−ジクロロエタンが挙げられ、
【0044】
非プロトン性極性溶媒としては例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリジノン
が挙げられる。
【0045】
本アンモニウム塩化反応における溶媒は、好ましくはニトリル溶媒又はケトン溶媒であり、より好ましくはケトン溶媒である。
【0046】
本アンモニウム塩化反応は、例えば、次の方法により行われる。
(i)化合物(7)と溶媒との混合物に、化合物(6)及び塩基を添加し、得られた混合物を後述する反応温度に調節することにより、化合物(6)と化合物(7)とを反応させる方法;
(ii)化合物(6)と溶媒との混合物に、化合物(7)及び塩基を添加し、得られた混合物を後述する反応温度に調節することにより、化合物(6)と化合物(7)とを反応させる方法;
(iii)化合物(7)と溶媒との混合物を後述する反応温度に調節し、そこへ化合物(6)及び塩基を添加することにより、化合物(6)と化合物(7)とを反応させる方法;
(iv)化合物(6)と溶媒との混合物を後述する反応温度に調節し、そこへ化合物(7)及び塩基を添加することにより、化合物(6)と化合物(7)とを反応させる方法;
(v)溶媒及び塩基を後述する反応温度に調節し、そこへ化合物(6)及び化合物(7)を添加することにより、化合物(6)と化合物(7)とを反応させる方法。
【0047】
本アンモニウム塩化反応における化合物(7)の使用量は、化合物(6)1モルに対して、例えば0.8〜4モルの範囲であり、好ましくは1〜2モルの範囲であり、より好ましくは1.0〜1.5モルの範囲である。化合物(7)の使用量が0.8モル未満である場合は化合物(5)の収率が低下する傾向にある。
本アンモニウム塩化反応における塩基の使用量は、化合物(6)1モルに対して、例えば0.5〜2モルの範囲であり、好ましくは0.8〜1.5モルの範囲であり、より好ましくは1.0〜1.3モルの範囲である。塩基の使用量が0.8モル未満である場合は化合物(5)の収率が低下する傾向にある。
本アンモニウム塩化反応を溶媒の存在下で行う場合には、溶媒の使用量は、化合物(6)1gに対して、例えば1〜50mLの範囲であり、好ましくは2〜20mLの範囲である。
本アンモニウム塩化反応における反応温度は、例えば40℃〜100℃の範囲から選択から選択される温度であり、好ましくは45℃〜80℃の範囲から選択される温度である。反応温度が45℃未満である場合は本アンモニウム塩化反応の速度が遅くなる傾向にあり、反応温度が100℃を超える場合は化合物(5)の収率が低下する傾向にある。
【0048】
本アンモニウム塩化反応終了後、得られた化合物(5)は、単離してもよいし、単離しなくてもよい。化合物(5)は、本アンモニウム塩化反応終了後の反応混合物を、必要に応じて、例えば、中和、抽出洗浄、水洗等の後処理に付した後、例えば冷却晶析、濃縮晶析等の晶析処理に付し、析出物を回収することにより、単離することができる。単離した化合物(5)を、例えば再結晶により精製することで、化合物(5)の化学純度を向上させることができ、化合物(5)が光学活性である場合、光学純度を向上させることもできる。化合物(5)が光学活性である場合、その光学純度は限定されないが、例えば90%e.e.(以下、e.e.は鏡像体過剰率を表す。)以上であり、好ましくは95%e.e.以上であり、さらに好ましくは98%e.e.以上である。
【0049】
かくして得られる化合物(5)は、触媒として用いることができる。化合物(5)が光学活性である場合、かかる化合物(5)は不斉触媒として用いることができる。また、化合物(5)は、例えば、N−ベンジルシンコニジン化合物等と比較して、塩基性条件下での安定性に優れている。このため、化合物(5)は、塩基存在下での反応に触媒として用いられた場合であっても、かかる反応中の分解が抑制され、N−ベンジルシンコニジン化合物を用いた場合と比較して、使用量を削減することができる。
以下、化合物(5)を触媒として用いた光学活性シクロプロパン化合物の製造方法を詳細に説明する。
【0050】
化合物(5)及び塩基の存在下、式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある。)と、式(2)で示される化合物(以下、化合物(2)と記すことがある。)とを反応させる工程を行うことにより、式(3)で示されるシクロプロパン化合物(以下、化合物(3)と記すことがある。)を製造することができる。かかる工程を、本触媒反応と記すことがある。
【0051】
式(1)におけるArは、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す。ここで、ナフチル基は、1−ナフチル基及び2−ナフチル基のいずれであってもよい。フェニル基及びナフチル基が有していてもよい置換基としては、例えば、下記群P1から選ばれる置換基が挙げられる。
【0052】
<群P1>
炭素数1〜12のアルキル基、
炭素数1〜12のアルコキシ基、
ハロゲン原子、
ニトロ基、
シアノ基
及び
トリフルオロメチル基。
【0053】
群P1において、
炭素数1〜12のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基及びドデシル基等の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、並びにシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等の炭素数3〜12の環状のアルキル基が挙げられ、
炭素数1〜12のアルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基及びオクチルオキシ基等の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、並びにシクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基及びシクロオクチルオキシ基等の炭素数3〜12の環状のアルキルオキシ基が挙げられ、
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
【0054】
Arとしては、具体的には、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−ニトロフェニル基、2−シアノフェニル基、2−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−フルオロフェニル基、3−クロロフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−ニトロフェニル基、3−シアノフェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基及び3,4,5−トリクロロフェニル基が挙げられる。
【0055】
Arは、好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくはハロゲン原子を有していてもよいフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基又は4−クロロフェニル基である。
【0056】
式(1)におけるRは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を表す。炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基及びドデシル基等の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、並びにシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等の炭素数3〜12の環状のアルキル基が挙げられる。Rで表される炭素数2〜12のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基及び3−メチル−2−ブテニル基等の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、並びに1−シクロヘキセニル基等の環状のアルケニル基が挙げられる。
【0057】
Rは、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくはエチル基又はt−ブチル基であり、さらに好ましくはエチル基である。
【0058】
化合物(1)としては、例えば、N−フェニルメチレングリシン エチルエステル、N−ナフタレン−1−イルメチレングリシン エチルエステル、N−ナフタレン−2−イルメチレングリシン エチルエステル、N−(4−メチルフェニル)メチレングリシン エチルエステル、N−(4−メトキシフェニル)メチレングリシン エチルエステル、N−(4−フルオロフェニル)メチレングリシン エチルエステル、N−(4−クロロフェニル)メチレングリシン エチルエステル、N−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチレングリシン エチルエステル、N−(3−クロロフェニル)メチレングリシン エチルエステル、N−(4−クロロフェニル)メチレングリシン エチルエステル、N−フェニルメチレングリシン t−ブチルエステル、N−(4−クロロフェニル)メチレングリシン t−ブチルエステル、N−フェニルメチレングリシン メチルエステル及びN−(4−クロロフェニル)メチレングリシン メチルエステルが挙げられる。
化合物(1)は、好ましくは、N−フェニルメチレングリシン エチルエステル、N−ナフタレン−1−イルメチレングリシン エチルエステル又はN−(4−クロロフェニル)メチレングリシン エチルエステルである。
【0059】
化合物(1)は、例えば、グリシン エチルエステル塩酸塩等のグリシンエステルを原料として、非特許文献1に記載される方法等により製造できる。また、N−フェニルメチレングリシン エチルエステル等の市販品を用いることもできる。
【0060】
式(2)におけるY及びYは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基、炭素数1〜6のペルフルオロアルカンスルホニルオキシ基又はベンゼンスルホニルオキシ基を表す。ハロゲン原子としては例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、
炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基としては例えば、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、プロパンスルホニルオキシ基、ブタンスルホニルオキシ基、ペンタンスルホニルオキシ基及びヘキサンスルホニルオキシ基が挙げられ、
炭素数1〜6のペルフルオロアルカンスルホニルオキシ基としては例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ペンタフルオロエタンスルホニルオキシ基、ペルフルオロプロパンスルホニルオキシ基及びペルフルオロヘキサンスルホニルオキシ基が挙げられる。
ここで、ベンゼンスルホニルオキシ基に含まれる水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい。炭素数1〜6のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基及びt−ブチルが挙げられ、ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。かかる置換基を有するベンゼンスルホニルオキシ基としては例えば、4−メチルベンゼンスルホニルオキシ基、2−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、3−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、4−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルオキシ基、4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ基及びペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ基が挙げられる。
及びYはそれぞれ独立に、好ましくは塩素原子、臭素原子又はメタンスルホニルオキシ基であり、より好ましくは臭素原子である。
【0061】
化合物(2)としては例えば、(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテン、(E)−1,4−ジクロロ−2−ブテン、(E)−1,4−ジメタンスルホニルオキシ−2−ブテン及び(E)−1−ブロモ−4−クロロ−2−ブテンが挙げられる。化合物(2)は、好ましくは(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテン又は(E)−1,4−ジクロロ−2−ブテンであり、より好ましくは(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテンである。
化合物(2)は公知の方法により製造することができ、また、市販品を用いることもできる。
【0062】
式(3)におけるAr及びRは、式(1)におけるAr及びRと同義である。
【0063】
化合物(3)は、−N=CH−Arで示されるアリールメチリデンアミノ基と−CH=CHで示されるエテニル基とを、シクロプロパン環平面に対して互いに異なる面側に有する化合物である。
【0064】
化合物(3)には、その光学異性体として、アリールメチリデンアミノ基とエテニル基とを、シクロプロパン環平面に対して同じ面側に有する式(3c)
【0065】
【化17】

(式中、Ar及びRは、上記と同義である。)及び式(3d)
【0066】
【化18】

(式中、Ar及びRは、上記と同義である。)
で示される異性体が存在する。以下これら異性体を総称して、ジアステレオマー(3c−d)と記すことがある。
【0067】
化合物(3)としては例えば、(1S,2R)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1S,2R)−1−[N−(4−クロロフェニル)メチレン]アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1S,2R)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル、(1S,2R)−1−[N−(4−クロロフェニル)メチレン]アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル、(1S,2R)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル、(1S,2R)−1−[N−(4−クロロフェニル)メチレン]アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル、(1S,2R)−1−(N−ナフタレン−1−イルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1R,2S)−1−[N−(4−クロロフェニル)メチレン]アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル、(1R,2S)−1−[N−(4−クロロフェニル)メチレン]アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル、(1R,2S)−1−[N−(4−クロロフェニル)メチレン]アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル及び(1R,2S)−1−(N−ナフタレン−1−イルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルが挙げられる。
【0068】
本触媒反応に用いる塩基としては例えば、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸化合物、
並びに
トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン等の第3アミン
が挙げられる。
塩基は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化カリウムである。
【0069】
本触媒反応は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。溶媒としては例えば、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、ニトリル溶媒、エステル溶媒、塩素化脂肪族炭化水素溶媒、非プロトン性極性溶媒及び水が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
脂肪族炭化水素溶媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン及び石油エーテルが挙げられ、
芳香族溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン及び1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられ、
エーテル溶媒としては例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール及びジフェニルエーテルが挙げられ、
【0071】
アルコール溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、イソペプチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル及びジエチレングリコールモノt−ブチルエーテルが挙げられ、
【0072】
ニトリル溶媒としては例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリルが挙げられ、
エステル溶媒としては例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸アミル及び酢酸イソアミルが挙げられ、
塩素化脂肪族炭化水素溶媒としては例えば、ジクロロメタン、クロロホルム及び1,2−ジクロロエタンが挙げられ、
非プロトン性極性溶媒としては例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリジノン
が挙げられる。
【0073】
本触媒反応に用いる溶媒は、水と、水以外の溶媒とを混合して用いることが好ましく、水と、芳香族溶媒又はエーテル溶媒とを混合して用いることがより好ましく、水と、トルエン又はt−ブチルメチルエーテルとを混合して用いることがさらに好ましい。
【0074】
本触媒反応において、化合物(2)の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは0.8〜20モルの範囲であり、より好ましくは0.9〜5モルの範囲である。
【0075】
本触反応において、化合物(5)の使用量は限定されないが、化合物(1)1モルに対して、好ましくは0.00001〜0.2モルの範囲であり、より好ましくは0.0005〜0.01モルの範囲である。
【0076】
本触媒反応において、塩基の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは2〜30モルの範囲であり、より好ましくは4〜15モルの範囲である。
【0077】
本触媒反応が溶媒の存在下で行われる場合、溶媒の使用量は限定されず、化合物(1)1gに対して、好ましくは1〜100mLの範囲であり、より好ましくは3〜30mLの範囲である。
【0078】
本触媒反応の反応温度は、好ましくは−30〜70℃の範囲、より好ましくは−10〜40℃の範囲から選択される。
【0079】
本触媒反応の反応時間は、化合物(5)の使用量や反応温度等により調節することができるが、好ましくは1〜120時間の範囲である。
【0080】
本触媒反応の進行度合いは、例えば、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0081】
本触媒反応における反応試剤の混合方法は規定されず、例えば、化合物(1)を必要に応じて溶媒と混合し、そこへ化合物(2)及び化合物(5)を添加した後、得られる混合物を反応温度に調整し、反応温度に調整した混合物に塩基を添加する方法が挙げられる。
【0082】
光学苛性な化合物(5)を用いた場合、本触媒反応の終了後、得られる化合物(3)は光学活性であり、その光学純度は、例えば60%e.e.程度〜95%e.e.程度の範囲である。
【0083】
化合物(3)がジアステレオマー(3c−d)との混合物として得られる場合には、化合物(3)の精製を容易にする点において、ジアステレオマー(3c−d)を式(8)
【0084】
【化19】

(式中、Ar及びRは、上記と同義である。)で示される7員環化合物(以下、化合物(8)と記すことがある。)へと変換することが好ましい。ジアステレオマー(3c−d)から7員環化合物(7)への変換は、上述した本反応の条件において行うことができる(非特許文献1参照。)が、ジアステレオマー(3c−d)が化合物(8)へ変換されていない場合や化合物(8)への変換が不十分な場合には、例えば50℃程度〜80℃程度に加熱することにより、ジアステレオマー(3c−d)を化合物(8)へ変換することができる。加熱時間は、好ましくは1分程度〜10時間程度である。
【0085】
ジアステレオマー(3c−d)から化合物(8)への変換後、化合物(3)と化合物(8)との比は、例えば化合物(3):化合物(8)=8:1程度〜40:1程度の範囲である。
【0086】
得られた化合物(3)は、単離してもよいし、単離しなくてもよい。単離する場合には、本触媒反応終了後の反応混合物を、例えば、中和、抽出洗浄、水洗、濃縮等の後処理に付し、必要に応じて、活性炭処理、シリカ処理、アルミナ処理等の吸着処理、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理に付せばよい。
【0087】
かくして得られる化合物(3)をイミン加水分解することで、式(4)
【0088】
【化20】

(式中、R、C*1及びC*2は、上記と同義である。)
で示される化合物(以下、化合物(4)と記すことがある。)が得られる。ここで、イミン加水分解は、化合物(3)に含まれるアリールメチリデンアミノ基をアミノ基へと変換することを意味する。
【0089】
イミン加水分解は、化合物(3)に含まれるエステル部位が加水分解されない方法であれば限定されず、好ましくは、化合物(3)と酸とを混合することにより行われる。
【0090】
イミン加水分解用いられる酸としては例えば、
塩酸、硫酸、りん酸、硝酸及び過塩素酸等の無機酸が挙げられる。
酸は、単独であってもよいし、後述する溶媒との混合物であってもよい。
酸は、好ましくは無機酸であり、より好ましくは塩酸である。酸として塩酸を用いる場合、水と混合する等によりその濃度を適宜調節して用いればよい。
【0091】
イミン加水分解において、好ましくは、酸と混合後に得られる混合物が、pH0〜pH4の範囲となるように、酸の使用量を調節する。かかる範囲へpHを調節するためには、酸が塩酸である場合、化合物(3)1モルに対して、例えば0.8〜1.5モルの酸を用いればよい。
【0092】
イミン加水分解は、好ましくは溶媒の存在下に行われる。イミン加水分解に用いられる溶媒としては例えば、上述の本不斉触媒反応に用いられる溶媒と同様のものが挙げられる。
溶媒は単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
溶媒は、好ましくは水、芳香族溶媒又はエーテル溶媒である。
溶媒の使用量は、化合物(3)1gに対して、好ましくは1〜100mLの範囲であり、より好ましくは3〜30mLの範囲である。
【0093】
イミン加水分解を行う温度は、例えば0〜80℃の範囲、好ましくは5〜60℃の範囲、より好ましくは10〜40℃の範囲から選択される。
【0094】
イミン加水分解を行う時間は、用いる酸の種類・濃度やイミン加水分解を行う温度により調節できるが、好ましくは1分〜20時間の範囲であり、より好ましくは10分〜10時間の範囲である。
【0095】
イミン加水分解における混合方法は限定されないが、例えば、化合物(3)と溶媒とを混合し、得られる混合物に酸を添加する方法が挙げられる。
【0096】
光学活性な化合物(3)をイミン加水分解した場合、イミン加水分解終了後、得られる化合物(4)の光学純度は、イミン加水分解に付した化合物(3)の光学純度と同程度であり、例えば60%e.e.程度〜95%e.e.程度の範囲である。
【0097】
得られる化合物(4)は、単離してもよいし、単離しなくてもよい。単離する場合には、イミン加水分解により得られる反応混合物を、例えば、中和、抽出洗浄、水洗、濃縮等の後処理に付し、必要に応じて、活性炭処理、シリカ処理、アルミナ処理等の吸着処理、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理に付せばよい。
【0098】
化合物(4)としては例えば、(1S,2R)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1S,2R)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル、(1S,2R)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル、(1S,2R)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステル、(1R,2S)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル、(1R,2S)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸t−ブチルエステル及び(1R,2S)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸メチルエステルが挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0100】
化合物(7−2):(S)−2−アミノ−1,1−ジp−トリル−1−プロパノールの製造
p−トリルマグネシウムブロミド(1.0mol/L−テトラヒドロフラン溶液)35mL(35.0mmol)を5℃に冷却し、そこに(S)−アラニンベンジルエステル−トルエン溶液7.66g((S)−アラニンベンジルエステル純分1.79g,10.0mmol)とトルエン35mLとの混合液を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を5℃で30分間攪拌し、さらに、室温に昇温して2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を氷冷し、そこに2mol/L塩酸水17.5mL(HCl35.0mmol)を滴下した。攪拌を停止して分液を行い、得られた有機層を20%食塩水20mLで2回洗浄した。洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで脱水した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、(S)−2−アミノ−1,1−ジp−トリル−1−プロパノール1.61g(6.32mmol)を得た。収率63%。
【0101】
化合物(7−3):(S)−2−(ベンジルアミノ)−1,1−ジp−トリル−1−プロパノールの製造
上記で得た(S)−2−アミノ−1,1−ジp−トリル−1−プロパノール1.60g(6.25mmol)とトルエン10mLとを混合し、その混合物に室温でベンズアルデヒド0.66g(6.25mmol)と硫酸マグネシウム1.60gとを加えて2時間攪拌した。得られた混合物をろ過して硫酸マグネシウムを取り除き、ろ液を濃縮してイミン体を得た。
得られたイミン体0.87g(2.5mmol)を分取し、分取したイミン体とアセトニトリル10mLとを混合し、その混合物に室温で水素化ホウ素ナトリウム0.19g(5.0mmol)を加えた。その混合物に5重量%重曹水を滴下し、トルエン10mLと酢酸エチル10mLとを流入した。得られた混合物に1mol/L塩酸水を加えてその水層のpHを8〜9に調整した後、攪拌を停止して分液し、得られた有機層を20重量%食塩水5mLで洗浄した。それぞれ得られた水層を混合し、酢酸エチル10mLで抽出した。先に得られた有機層と、酢酸エチルでの抽出によって得られた有機層とを混合し、硫酸ナトリウムで脱水した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、(S)−2−(ベンジルアミノ)−1,1−ジp−トリル−1−プロパノール0.84g(2.44mmol)を得た。収率97%。
【0102】
化合物(7−4):(S)−N−ベンジル−N−メチル−1−メトキシ−1,1−ジp−トリル−2−プロピルアミンの製造
上記で得た(S)−2−(ベンジルアミノ)−1,1−ジp−トリル−1−プロパノール0.84g(2.4mmol)とテトラヒドロフラン10mLとを混合し、氷冷した。そこへ、ヨードメタン1.04g(7.32mmol)と、水素化ナトリウム0.22g(含量60%、6.1mmol)とを加えた。得られた混合物を室温まで昇温して2時間ほど攪拌した後、ジメチルホルムアミド5mLを流入してさらに13時間攪拌した。得られた混合物にトルエン10mLを流入し、氷冷後、水10mLを滴下した。攪拌を停止して分液し、水層をトルエン10mLで抽出した。それぞれ得られた有機層を混合した後、20重量%食塩水5mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより(S)−N−ベンジル−N−メチル−1−メトキシ−1,1−ジp−トリル−2−プロピルアミンを得た。収率81%。
【0103】
化合物(7):(S)−N−メチル−1−メトキシ−1,1−ジp−トリル−2−プロピルアミンの製造
オートクレーブ容器に上記で得た(S)−N−ベンジル−N−メチル−1−メトキシ−1,1−ジp−トリル−2−プロピルアミン0.83g(2.2mmol)とエタノール10mLとを流入し、その溶液に10%パラジウム炭素0.80g(川研ファインケミカル製、NX型、50%wet)を室温で添加した。このオートクレーブ容器内を0.2MPaの窒素圧で3回窒素置換した後、この容器内を0.4MPaの水素圧で3回水素置換し、0.5MPaの水素圧条件下、得られた混合物を40℃で2時間攪拌した。反応後、0.2MPaの窒素圧で容器内を3回窒素置換した後、常圧に戻し、得られた反応混合物をろ過してパラジウム炭素を取り除いた。得られたろ液を濃縮して、(S)−N−メチル−1−メトキシ−1,1−ジトリル−2−プロピルアミン0.62gを得た。収率100%として次反応を行った。
【0104】
<実施例1>
化合物(5):(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2,2−ジp−トリルエチル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミドの製造
上記で得た(S)−N−メチル−1−メトキシ−1,1−ジp−トリル−2−プロピルアミン0.62g(2.2mmol)とアセトン10mLとを混合し、得られた混合物に、5,5’−ジt−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビスジブロモメチル−3,3’−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−ビフェニル1.73g(1.85mmol)と炭酸水素ナトリウム0.17g(2.01mmol)とを添加した。得られた混合物を57℃のオイルバスで加熱し、28時間反応させた。反応終了後、オイルバス温度を50℃に冷却し、シクロヘキサン10mLを流入し、水5mLで2回洗浄した。得られた有機層を濃縮した後、残渣にシクロヘキサンを添加し、得られた混合物を50℃のオイルバスで加熱しながら攪拌するとスラリーとなった。このスラリーを室温まで冷却し、ろ過により結晶粉末を取り出し、減圧乾燥して(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2,2−ジp−トリルエチル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド1.34g(1.18mmol)を得た。収率64%。
【0105】
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm: 8.20(1H,s),8.15(1H,s),8.10(1H,s),8.06(1H,s),7.90(1H,s),7.74(1H,s),7.61(1H,s),7.54(1H,s),7.14(2H,d,J=7.8Hz),6.91(2H,d,J=7.8Hz),6.85(2H,d,J=8.3Hz),6.73(2H,d,J=8.3Hz),5.30(1H,d,J=15.1Hz),4.62−4.50(1H,m),4.20(1H,d,J=12.7Hz),4.02−3.90(2H,m),3.12(3H,s),3.01(3H,s),2.58(3H,s),2.35(3H,s),2.29(3H,s),2.23(3H,s),1.57(9H,s),1.49(9H,s),0.58(3H,d,J=6.8Hz).
【0106】
<実施例2〜6>
(S)−2−アミノ−1,1−ジp−トリル−1−プロパノールの製造におけるトリルマグネシウムブロミドを、以下の表1に示す有機マグネシウムハライドに変更し、以下の表1に示す化合物(5)を製造した。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例2で得た化合物(5):(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2−エチルブチル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm: 8.35(1H,s),8.19(1H,s),8.01(1H,s),8.00(1H,s),7.84(1H,s),7.71(1H,s),7.63(1H,s),7.57(1H,s),5.41(1H,d,J=15.1Hz),4.42(1H,d,J=13.7Hz),3.90(1H,d,J=15.1Hz),3.82(1H,d,J=13.7Hz),3.24(3H,s),3.03(3H,s),3.02−2.95(1H,m),2.90(3H,s),2.83(3H,s),1.80−1.20(3H,m),1.57(9H,s),1.49(9H,s),1.02−0.90(1H,m),0.77−0.68(5H,m),0.57(3H,t,J=7.3Hz).
【0109】
実施例3で得た化合物(5):(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2−ブチルヘキシル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm: 8.34(1H,s),8.18(1H,s),8.01(1H,s),7.99(1H,s),7.82(1H,s),7.70(1H,s),7.62(1H,s),7.57(1H,s),5.45(1H,d,J=15.1Hz),4.52(1H,d,J=13.2Hz),3.89(1H,d,J=15.1Hz),3.77(1H,d,J=13.2Hz),3.19(3H,s),3.04(3H,s),3.09−2.99(1H,m),2.87(3H,s),2.76(3H,s),1.60−0.77(12H,m),1.53(9H,s),1.50(9H,s),0.83(3H,t,J=7.3Hz),0.78−0.66(5H,m).
【0110】
実施例4で得た化合物(5):(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2−ヘキシルオクチル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm: 8.36(1H,s),8.17(1H,s),8.02(1H,s),7.98(1H,s),7.81(1H,s),7.70(1H,s),7.62(1H,s),7.57(1H,s),5.50(1H,d,J=15.1Hz),4.53(1H,d,J=13.2Hz),3.87(1H,d,J=15.1Hz),3.75(1H,d,J=13.2Hz),3.19(3H,s),3.05(3H,s),3.08−2.98(1H,m),2.85(3H,s),2.74(3H,s),1.52(9H,s),1.49(9H,s),1.40−0.66(20H,m),0.87(3H,t,J=7.3Hz),0.86(3H,t,J=7.3Hz),0.72(3H,d,J=6.8Hz).
【0111】
実施例5で得た化合物(5):(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2−オクチルデカニル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm: 8.36(1H,s),8.16(1H,s),8.01(1H,s),7.97(1H,s),7.80(1H,s),7.70(1H,s),7.62(1H,s),7.57(1H,s),5.51(1H,d,J=15.1Hz),4.53(1H,d,J=13.2Hz),3.86(1H,d,J=15.1Hz),3.74(1H,d,J=13.2Hz),3.19(3H,s),3.05(3H,s),3.08−3.00(1H,m),2.85(3H,s),2.74(3H,s),1.52(9H,s),1.49(9H,s),1.40−0.65(28H,m),0.90(3H,t,J=6.8Hz),0.88(3H,t,J=6.8Hz),0.72(3H,d,J=6.8Hz).
【0112】
実施例6で得た化合物(5):(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−[4−フェニル−1−メチル−2−メトキシ−2−(2−フェニルエチル)ブチル]−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド
H−NMR(CDCl,400MHz)δppm: 8.39(1H,s),8.11(1H,s),7.99(1H,s),7.84(1H,s),7.62(1H,s),7.60(1H,s),7.59(1H,s),7.49(1H,s),7.40−7.22(6H,m),7.06−7.00(2H,m),6.83−6.75(2H,m),5.64(1H,d,J=15.1Hz),4.59(1H,d,J=13.7Hz),3.96−83(2H,m),3.25−3.12(1H,m),3.11(3H,s),3.03(3H,s),2.97(3H,s),2.92(3H,s),2.58−2.24(4H,m),1.80−1.10(4H,m),1.52(9H,s),1.50(9H,s),0.90(3H,d,J=6.8Hz).
【0113】
化合物(1):(E)−N−フェニルメチレングリシン エチルエステルの製造
グリシンエチルエステル塩酸塩13.8g(98.9mmol)とトルエン50gとを混合し、そこにジメチルスルホシキド10gを室温で流入した。得られた混合物にベンズアルデヒド10.0g(94.2mmol)を流入した。得られた混合物を12℃に調整し、25%水酸化ナトリウム水溶液16.5g(水酸化ナトリウム104mmol)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を11℃〜13℃の温度範囲で20時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を5℃まで冷却し、そこへ水11.4mLを滴下した。その後、攪拌を停止して分液を行い、得られた有機層を20重量%食塩水19gで洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水処理した後、溶媒を減圧留去して(E)−N−フェニルメチレングリシン エチルエステルのトルエン溶液43.6g((E)−N−フェニルメチレングリシン エチルエステル純分16.5g)を得た。収率92%。
【0114】
<実施例7>
化合物(3):(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルの製造
(E)−N−フェニルメチレングリシン エチルエステルのトルエン溶液2.60g((E)−N−フェニルメチレングリシン エチルエステル純分:0.98g、5.14mmol)とトルエン10mLとを混合し、そこに(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテン1.00g(4.68mmol)と実施例1で得られた(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2,2−ジp−トリルエチル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミド0.027g(0.023mmol)とを室温で加えた。得られた混合物を0℃に冷却し、そこに50%水酸化カリウム水溶液5.25g(水酸化カリウム46.8mmol)を滴下し、0℃で攪拌することで(E)−N−フェニルメチレングリシン エチルエステルと(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテンとを反応させた。反応時間20時間であった。反応終了後、得られた混合物に水3mLを加え、攪拌を停止して分液し、得られた有機層を20%食塩水3mLで洗浄した。分液後、表題の(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルを含む有機層を得た。
【0115】
得られた有機層に含まれる(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルを、下記の高速液体クロマトグラフィー分析条件により分析し、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルと化合物(8)であるエチル 7−フェニル−6,7−ジヒドロ−1H−アゼピン−2−カルボキシレートとの比を算出した。(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル:エチル 7−フェニル−6,7−ジヒドロ−1H−アゼピン−2−カルボキシレート=10:1。
(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルのジアステレオマーは検出されなかった。
【0116】
<高速液体クロマトグラフィー分析条件>
カラム:YMC Pack ODS−A−302(4.6×150mm,5μm)
移動相:A=40mMKHPO水(pH3.5−HPO)、
B=メタノール
A/B=10%(0min)→10%(5min)→70%(25min)
→70%(45min)
流量:1.0mL/分
検出器:波長220nm
保持時間:11.7分 ((1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2
−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル)
31.2分 (エチル 7−フェニル−6,7−ジヒドロ−1H−アゼピン
−2−カルボキシレート)
【0117】
<収率・光学純度の決定>
続いて、得られた有機層に1M−塩酸水4.7mLを加えて、室温で2時間攪拌し加水分解反応を行い、反応終了後、分液して得られた有機層に水3mLを加え抽出を行った。得られた水層を合一し、(1R,2S)−1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステル塩酸塩を水溶液として7.93g得た。得られた水溶液を上記の分析条件で定量分析を行い、収率を算出した。収率59%。また、光学純度は下記の光学純度分析条件により分析し、光学純度を求めた。光学純度81%e.e.。
【0118】
<光学純度分析条件>
カラム:CHIRALPAK(ダイセル化学工業登録商標)AD−RH
(4.6×150mm,5μm)
移動相:A=20mMリン酸水素二カリウム水溶液(リン酸でpH8.0に調製)、
B=アセトニトリル
A/B=80/20
流量:0.5mL/分
検出器:波長215nm
保持時間:(1R,2S)体=14.7分、(1S,2R)体=16.2分
【0119】
<実施例8〜12>
(S)−2,10−ジt−ブチル−3,9−ジメトキシ−6−メチル−6−(1−メチル−2−メトキシ−2,2−ジp−トリルエチル)−4,8−ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[c,e]−アゼピニウムブロミドの代わりに、実施例2〜6で得られた化合物(5)を用いた以外は実施例7の方法に従い、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エチルエステルを得た。化合物(5)の使用量は、(E)−1,4−ジブロモ−2−ブテン1モルに対して、0.005モルであった。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0121】
(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エステル等のシクロプロパン化合物は、抗C型肝炎薬等の医薬品の製造中間体として有用である。
本発明は、(1R,2S)−1−(N−フェニルメチレン)アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸エステル等のシクロプロパン化合物の製造方法及びその製造方法に用いられる化合物(5)を提供することから、産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(5)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、フェニル基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基;又は炭素数1〜10のアルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Cは、不斉炭素原子を表し、Xは、ハロゲン化物イオンを表す。)
で示される4級アンモニウム塩。
【請求項2】
式(5)で示される4級アンモニウム塩が光学活性である請求項1記載の4級アンモニウム塩。
【請求項3】
式(5)におけるR及びRが共にメチル基である請求項1又は2記載の4級アンモニウム塩。
【請求項4】
式(5)におけるR及びRが共にメチル基である請求項1〜3のいずれか記載の4級アンモニウム塩。
【請求項5】
式(5)におけるRがエチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−フェニルエチル基又はp−トリル基である請求項1〜4のいずれか記載の4級アンモニウム塩。
【請求項6】
式(5)
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、フェニル基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基;又は炭素数1〜10のアルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる基を有していてもよいフェニル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Cは、不斉炭素原子を表し、Xは、ハロゲン化物イオンを表す。)
で示される4級アンモニウム塩及び塩基の存在下、式(1)
【化3】

(式中、Arは、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を表す。)
で示される化合物と、
式(2)
【化4】

(式中、Y及びYはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルカンスルホニルオキシ基、炭素数1〜6のペルフルオロアルカンスルホニルオキシ基又はベンゼンスルホニルオキシ基を表す。ここで、該ベンゼンスルホニルオキシ基に含まれる水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子及びニトロ基からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい。)
で示される化合物と
を反応させる工程を含む
式(3)
【化5】

(式中、Ar及びRは上記と同義である。C*1及びC*2は不斉炭素原子を表し、C*1がR配置である場合はC*2はS配置であり、C*1がS配置である場合はC*2はR配置である。)
で示されるシクロプロパン化合物の製造方法。
【請求項7】
式(5)で示される4級アンモニウム塩及び式(3)で示されるシクロプロパン化合物が共に光学活性である請求項6記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−162494(P2012−162494A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24654(P2011−24654)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】