説明

5−(4−フルオロフェニル)−1−[2−((2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)エチル]−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミドの調製方法

【課題】効率的であり、安価であり、最小限の転換数で進行し、そして、高い収率及び高いレベルのジアステレオ選択性で起こる、アトルバスタチンカルシウム合成の鍵となる中間体の調製方法。
【解決手段】アトルバスタチンカルシウム合成の鍵となる中間体である、5−(4−フルオロフェニル)−1−[((2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)エチル]−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロ−ル−3−カルボン酸フェニルアミド(I)の調製方法。


【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
この出願は、2003年4月14日出願の、U.S.仮出願No.60/462,613の優先権を主張するものである。
アトルバスタチンカルシウム合成の鍵となる中間体である、5−(4−フルオロフェニル)−1−[2−((2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−エチル]−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミドを調製する方法が記載される。
【発明の背景】
【0002】
5−(4−フルオロフェニル)−1−[2−((2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソ−テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−エチル]−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミド(I)はアトルバスタチンカルシウム(LipitorR)合成の鍵となる中間体であり、化学名、[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)三水和物としても知られる。アトルバスタチンカルシウムは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムAリダクターゼ(HMG−CoAリダクターゼ)を阻害し、かくして、脂質低下剤、及び/又はコレステロール低下剤として有用である。
【0003】
【化1】

【0004】
アトルバスタチンカルシウム、並びに様々な類似物の、化合物(I)のような中間体を介した調製方法を開示する、多くの特許が発行されている。これらの特許には、米国特許No.4,681,893;5,273,995;5,003,080;5,097,045;5,103,024;5,124,482;5,149,837;5,155,251;5,216,174;5,245,047;5,248,793;5,280,126;5,397,792;5,342,952;5,298,627;5,446,054;5,470,981;5,489,690;5,489,691;5,510,488;5,998,633;及び6,087,511;5,969,156;6,121,461;5,273,995;6,476,235;米国出願Ser. No. 60/401,707(2002年8月6日出願)が含まれる。
【0005】
鍵となる中間体(I)の調製の現行方法にはいくつかの欠点がある。例えば、ある方法は、高価なキラル原材料((R)−4−シアノ−3−ヒドロキシ−酪酸エチルエステル)の使用と、低温ジアステレオ選択性ボラン還元に依拠していた。
【0006】
スキーム1は、米国特許No.6,476,235で開示された代替方法を纏めたものである。キラルルテニウム触媒の存在下、酸性条件下で、β,δジケトエステル2の水素化を進行させて、ジオ−ル3を、低収率で、C−3及びC−5キラル中心に関して1:1のシン:アンチジアステレオ選択性で得た。
【0007】
【化2】

【0008】
前提事項として、上記の2から3への転換のようなケトン類の不斉水素化は公知である。しかし、この反応の複雑さは、2のような1,3,5−トリカルボニル系の場合に増加し、低収率及び低い立体選択性に行き着くことが多い。事実、Saburi (Tetrahedron, 1997, 1993; 49) 及びCarpentier (Eur. J. Org. Chem. 1999; 3421)による諸研究論文は、それぞれ独立に、ジケトエステルの不斉水素化は、低度〜中程度のジアステレオ選択性及び/又はエナンチオ選択性でしかないことを示した。その上さらに、その文献で開示された方法が、高圧水素化及び長時間反応を必要とする事実は、その操作を、概して非実用的なものとし、かつ、安全性、効率、コストが重視される大規模製造方法に順応しないものする。
【0009】
スキーム1を再び参照すると、ジオ−ル3のC−3中心の立体化学を組み直して、鍵となる中間体(I)を提供するために、多くのさらなる転換が必要である。これらの工程は:(a)3の分子内環化をして、ラクトン4を提供すること;(b)酸を用いてラクトン4から水を脱離させて、α,β不飽和ラクトン5を提供すること;(c)アリル又はベンジルアルコ−ルをα,β不飽和ラクトン5へ面選択性マイケル付加して、飽和ラクトン6を提供すること;及び、水素化分解を介して、ラクトン6のアリル又はベンジル部分を除去して、鍵となる中間体(I)を提供することを含む。
【0010】
結果として、効率的であり、安価であり、最小限の転換数で進行し、そして、高い収率及び高いレベルのジアステレオ選択性で起こる、鍵となる中間体(I)の調製方法の必要性が存在している。
【発明の要旨】
【0011】
これら及び他の必要性は、式(I)
【0012】
【化3】

【0013】
の化合物の調製方法に向けられた本発明により満たされ、その方法は、
(a)ルイス酸の存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Mは、SiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(III)の化合物を得ること;
【0016】
【化5】

【0017】
(b)該式(III)の化合物を、塩基存在下で、
【0018】
【化6】

【0019】
[式中、Xは、Cl,Br,I,又は
【0020】
【化7】

【0021】
(Rは、H,(C1〜C6)アルキル,又はフェニルである。)である。]又はアクリロイル活性化エステル同等物を用いて、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【0022】
【化8】

【0023】
(c)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【0024】
【化9】

【0025】
(d)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物へと転化させること;
【0026】
【化10】

【0027】
及び、
(e)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去し、式I
【0028】
【化11】

【0029】
の化合物を得ること
を含んでなる。
やはり開示されているのは、式(I)
【0030】
【化12】

【0031】
の化合物の調製方法であって、その方法は:
(a)ルイス酸存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【0032】
【化13】

【0033】
(式中、Mは、SiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(VII)の化合物を得ること;
【0034】
【化14】

【0035】
(b)該式(VII)の化合物を、アクリル酸又はアクリル酸の類似物
【0036】
【化15】

【0037】
(式中、Rは、H,(C1〜C6)アルキル又はフェニルである。)の存在下、塩基の存在下で、ミツノブ反応を介して、ホモアリルアルコール中心の立体化学反転を同時に生じさせながら、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【0038】
【化16】

【0039】
(c)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【0040】
【化17】

【0041】
(d)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物へと転化させること;
【0042】
【化18】

【0043】
及び、
(e)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去して、式I
【0044】
【化19】

【0045】
の化合物を得ること
を含んでなる。
さらに開示されているのは、式(I)
【0046】
【化20】

【0047】
の化合物の調製方法であって、その方法は:
(a)ルイス酸の存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【0048】
【化21】

【0049】
(式中、MはSiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(VIII)の化合物を得ること;
【0050】
【化22】

【0051】
(b)該エナンチオマー混合物から、望まれるエナンチオマー(III)を単離すること;
【0052】
【化23】

【0053】
(c)該式(III)の化合物を、塩基の存在下、
【0054】
【化24】

【0055】
[式中、Xは、Cl,Br,I,又は
【0056】
【化25】

【0057】
(式中、Rは、H,(C1〜C6)アルキル又はフェニルである。)である。]又はアクリロイル活性化エステル同等物を用いて、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【0058】
【化26】

【0059】
(d)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【0060】
【化27】

【0061】
(e)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物に転化させること;
【0062】
【化28】

【0063】
及び、
(f)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去して、式I
【0064】
【化29】

【0065】
の化合物を得ること
を含んでなる。
やはり提供されているのは、式III
【0066】
【化30】

【0067】
の化合物を調製方法であって、その方法は:
(a)式(II)の化合物を、アレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XI)の化合物を得ること;
【0068】
【化31】

【0069】
及び、
(b)該式(XI)の化合物を水素化し、式IIIの化合物を提供すること
を含んでなる。
【0070】
【化32】

【0071】
さらに提供されているのは、式VII
【0072】
【化33】

【0073】
の化合物の調製方法であって、その方法は:
(a)式(II)の化合物をアレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XII)の化合物を得ること;
【0074】
【化34】

【0075】
及び、
(b)式(XII)の化合物を水素化して、式(VII)の化合物を提供すること
を含んでなる。
【0076】
【化35】

【0077】
やはり提供されているのは、式VIII
【0078】
【化36】

【0079】
の化合物の調製方法であって、その方法は:
(a)式(II)の化合物をアレニルボロン酸又はアレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XIII)の化合物を得ること;
【0080】
【化37】

【0081】
及び、
(b)該式(XIII)の化合物を水素化して、VIIを提供すること
を含んでなる。
【0082】
【化38】

【0083】
やはり提供されているのは、式III
【0084】
【化39】

【0085】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式VIII
【0086】
【化40】

【0087】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式VII
【0088】
【化41】

【0089】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式IXの化合物である。
やはり提供されているのは、式IV
【0090】
【化42】

【0091】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式X
【0092】
【化43】

【0093】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式XI
【0094】
【化44】

【0095】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式XII
【0096】
【化45】

【0097】
の化合物である。
やはり提供されているのは、式XIII
【0098】
【化46】

【0099】
の化合物である。
この明細書中で開示する通り、本発明者らは、驚くべきことにそして予期せぬことに、均一触媒の存在下で、穏やかで効率的な一段階閉環メタセシス反応を介して、アクリロイルエステル(IV)から、簡便に、5,6−ジヒドロピラン−2−オン(V)が得られることを見出した。この反応は、約60℃以下の温度及び大気圧下で、良好な収率で進行する。かくして、本発明方法は、専用高圧装置の必要性を回避するので、従前の方法に比べ、大規模時でもより安全でかつより効率的である。加えて、C−3水酸基を組み入れるのに最小回数の転換しか必要としないので、式(II)の化合物を鍵となる中間体(I)に転化するのに必要な工程の全体数が最小化される。さらに、本発明方法は、鍵となる中間体(I)を調製するために従前の方法では必要とされていた、高価なキラル原材料((R)−4−シアノ−3−ヒドロキシ酪酸エチルエステル)の使用、及び低温ジアステレオ選択性ボラン還元を回避する。
【発明の詳細な説明】
【0100】
定義
(C1〜C6)アルキルは直鎖及び分岐基の両方を意味する;但し、“プロピル”のようなそれぞれの基についての言及は、直鎖基のみを包含し、“イソプロピル”のような分岐鎖異性体は、その都度言及される。かくして、(C1〜C6)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、又はヘキシルであることができる。
【0101】
この明細書中で、品質、条件、又は量に関連して用いられる“約”という用語は、品質、条件、又は量について特定された値が、ほぼ正確に特定された通りであるか、その辺であるか、又はそれよりやや多いか少ないことを意味する。
【0102】
明細書中で開示した特定の値(例えば、反応温度、時間、濃度、又は化学量に関するもの)について、2つの端点で定義された範囲が提供されている場合は、その範囲は、上限下限を含み、かつ、その上限下限間の分数も整数も含むすべての実数を包含することを意図する。
【0103】
本発明方法
前提事項として、この明細書中で開示した本発明方法により調製される化合物は、1つ又はそれを超えるキラル中心を有することができるので、光学活性体及びラセミ体として存在しても、用いられても、単離されてもよい。かくして、本発明の方法は、この明細書中で示した通り、あらゆるラセミ体、光学活性体、又はそれらの混合物も生じさせることができることが理解されるべきである。さらに、本発明方法による生成物は、ラセミ体、エナンチオ異性体、ジアステレオ異性体、又はそれらの混合物として単離することができることが理解されるべきである。そのような生成物の精製及び特性決定方法は、当業者に知られており、再結晶技術、キラルクロマトグラフィー分離法、並びに他の方法を包含する。
【0104】
この明細書中で開示された本発明方法について、スキーム2に概略を示す。望まれる一連のキラル合成について書くが、スキーム2で開示された反応の順序は、必要により(すなわち、反応のタイプに依存して、キラル対非キラル補助物、ルイス酸、又はリガンドを使用することにより)変更することができ、キラル及び非キラルの両方の生成物を提供する。
【0105】
【化47】

【0106】
本発明方法は、工程(a)又は工程(a−1)/(a−2)で開始する。工程(a)では、アルデヒド(II)をアリル化して、ホモアリルアルコールIIIを提供する。工程(a−1)/(a−2)では、アレニルボロン酸エステルをアルデヒド(II)に付加して、ホモプロパルギルアルコールXIを提供する。工程(a−2)では、ホモプロパルギルアルコール(XI)を水素化して、ホモアリルアルコールIIIを提供する。
【0107】
工程(b)では、化合物(III)の水酸基が、塩化アクリロイルと反応して、アクリロイルエステルIVが提供される。工程(c)では、閉環メタセシス反応をして、鍵となる中間体Vを提供する。工程(d)では、対応するベンジル又はアリルエーテルとして保護されたC−3水酸基が、化合物Vに立体選択的に付加される。この保護基の除去と水素化分解を行い、化合物Iが提供される。
【0108】
スキーム2で開示した合成の流れについて、次の節で、より詳細に述べる。
工程(a)
本発明方法の工程(a)では、アルデヒド(II)は、
【0109】
【化48】

【0110】
(式中、Mは、SiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)を用いてアリル化され、ホモアリルアルコールIIIを提供する。アルデヒド類のアリル化を行う方法は、当業者によく知られかつ広く利用されており、典型的には、グリニャール試薬(例えば、臭化アリルマグネシウム)、又は、アリル亜鉛、アリルボラン(アリルジヒドロキシボラン等)、アリルボロン酸エステル、アリル銅、アリルスズ(アリル−トリ−n−ブチルスタナン等)、アリルシラン(アリルトリクロロシラン又はアリルトリメチルシラン等)、又はアリルインジウム試薬のような、グリニャール試薬の同等物の使用に依拠する。これらの試薬の調製及び使用方法は、化学文献の報告に基づき、当業者に広く知られている。これらの多くは、商業的に入手可能でもある。
【0111】
ルイス酸は、不斉誘導を媒介し、及び/又は、アリル化反応を媒介するために、使用されてもよい。ルイス酸の使用は、有機合成において広く知られている。Hisashi Yamamoto,Lewis acids in Organic Synthesis(2002)を参照のこと。本発明方法の非キラルの態様としては、非キラルルイス酸は、スキーム3に描かれるように、アリル化方法を触媒するために使用されて、ホモアリルアルコール(VIII)をラセミ混合物として提供することができる。この流れでは、望まれるエナンチオマー(III)は、当業者が利用できる手順、例えば、キラル固定相を用いたクロマトグラフィー分離、又は確立された再結晶技術によるラセミ体の分割により、単離することができる。
【0112】
【化49】

【0113】
スキーム2の工程(a)の別態様では、キラルルイス酸は、エナンチオ選択性を制御するために、並びに、そのプロセスを媒介するために使用されることができる。本発明方法の一態様では、スキーム2に示すように、ボロン三臭化物と(S,S)−1,2−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンビストルエンスルホンアミドから誘導されたin situで生成したルイス酸を使用して、94.4%エナンチオマー過剰の望まれるS異性体を提供した。
【0114】
スキーム2の工程(a)の、さらに別の態様では、スキーム4に描かれるように、適切なキラルルイス酸を選択することにより、反対のエナンチオマー(VII)も合成できる。この変形反応では、当業者に利用可能な条件下で、化合物(VII)が、容易に、好ましいエナンチオマー(III)に転化される。例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等、アゾジカルボン酸ジエチル又は、ジイソプロピルアゾジカルボン酸又は1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジンのようなそれと同等の試薬、及び安息香酸、ギ酸又は酢酸のようなカルボン酸の存在下の、(VII)のミツノブ型反応が、エステルIIIaを提供することになる。エステルIIIaは、当業者に利用可能な還元又は水素化分解条件下で、容易に、ホモアリルアルコール(III)に転化されることができる。また、アクリル酸を、ワンポットでホモアリルエステル(III)を提供するために、ミツノブ試薬系の酸成分として用いることができる。
【0115】
【化50】

【0116】
化合物(VII)を化合物(III)へと転化する代替方法も、スキーム4に描かれており、この方法は、化合物(VII)のアルコール部分を、例えば、メシル化又はトシル化等により、メシレート又はトシレートのような脱離基に転化した後、酢酸のような適切な酸素求核体で求核置換を行って、エステルを提供する必要がある。このエステルを還元又は水素化分解して、化合物IIIを提供する。この転換の流れを行うための方法は、当業者は容易に利用可能である。
【0117】
アミノアルコール又はジアミンの存在下でアリルトリクロロシランが用いられる時のようないくつかのケースでは、ルイス酸が必要な反応成分ではない点に注目すべきである。Kinnaird等,J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 7920を参照のこと。アリルトリクロロシランが用いられる時は、ルイス塩基の存在下で反応が進行する点にも注目すべきである。Denmark等,J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 9488を参照のこと。
【0118】
本発明方法の工程(a)の一態様では、アリル化反応成分の化学量が、典型的には、約:
1.0当量のアルデヒド;
1.05〜1.5当量のルイス酸;及び
1.05〜1.5当量のアリルグリニャ−ル試薬又はアリルグリニャール試薬の同等物
である。
【0119】
本発明方法の別態様では、アリル化反応成分の化学量が、典型的には、約:
1.0当量のアルデヒド;
1.05〜1.3当量のルイス酸;及び
1.05〜1.3当量のアリルグリニャ−ル試薬又はアリルグリニャール試薬の同等物
である。
【0120】
本発明方法のやはり別の態様では、アリル化反応成分の化学量が、典型的には、約:
1.0当量のアルデヒド;
1.05〜1.2当量のルイス酸;及び
1.05〜1.2当量のアリルグリニャ−ル試薬又はアリルグリニャール試薬の同等物
である。
【0121】
本発明方法の一態様では、ジクロロメタン中のアルデヒド濃度が、典型的には、約0.05〜0.125mMである。
本発明方法の別態様では、ジクロロメタン中のアルデヒド濃度が、典型的には、約0.075〜0.10mMである。
【0122】
本発明方法のやはり別の態様では、ジクロロメタン中のアルデヒド濃度が、典型的には、約0.08〜0.09mMである。
アリル化反応温度は、典型的には、約−78℃〜ほぼ室温又は25℃の範囲である。
【0123】
アリル化反応に要する時間は、典型的には、約12分〜約24時間、又は反応が完了したことがTLC又はHPLCのような慣用分析技術により示されるまでである。
一般的に、アリル化反応の時間と温度についてのパラメーターは、反応濃度と化学量に依存して、多少変動するものである。当業者は、実験ごとに、反応収率を最大化するために必要な反応パラメーターを容易に調節できる。
【0124】
in situで生成したキラルルイス酸を使用する典型的な手順では、(S,S)−1,2−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンビストルエンスルホンアミドが極性の非プロトン性溶媒中に溶解される。本発明方法の最初の工程で有用な極性の非プロトン性溶媒には、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン等が含まれる。典型的には、ジクロロメタンが使われる。次いで、溶媒中のキラル補助物の混合液は、0℃まで冷却されて、BBr3が、0℃の反応温度を維持するのに十分な速度で滴下される。得られた混合液を0℃で10分間撹拌し、次いで、室温まで温まったら、さらに40分間撹拌し、次いで、減圧濃縮する。その残存物を、ジクロロメタンのような溶媒中に溶解して、再び減圧濃縮して、過剰なボロン三臭化物を除去する。次いで、その残存物をジクロロメタン中に溶解して、得られた混合液を0℃まで冷却する。この冷却した反応混合液にトリブチルスタナンのようなアリル金属試薬を加えた後、得られた混合液を周囲の温度まで温めて、約1〜約4時間撹拌する。その混合液を、−78℃まで冷却して、ジクロロメタン中に溶解しているアルデヒド(II)を滴下する。次いで、その混合液を、さらに12〜24時間撹拌する。慣用的な処理と精製によって、望まれる生成物が得られる。
【0125】
工程(a)の代替:工程(a−1)及び(a−2)
工程(a)の代替が、工程(a−1)及び(a−2)に描かれており、この工程は、アレニルボロン酸エステルをアルデヒド(II)に付加させて、ホモプロパルギルアルコールXIを提供した後、水素化することを包含する。
【0126】
工程(a−1)
アレニルボロン酸エステルのアルデヒドとの反応、特に、エナンチオ選択的合成におけるキラルアレニルボロン酸エステルの使用は、当業者によく知られている。R.Haruta, M.Ishiguro, N.Ikeda及びH.Yamamoto., J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 7667; N.Ikeda及びH.Yamamoto., J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 483; E.J.Corey, C.-M.Yu及びD.-H.Lee., J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 878を参照のこと。
【0127】
非キラル状況下では、アルデヒド(II)の、N.Ikeda及びH.Yamamoto., J. Am. Chem. Soc. 1986, 108に記載されているように調製されたアレニルボロン酸での処理は、スキーム5に描かれるように、ホモプロパルギルアルコールXIIIを生じることとなる。
【0128】
【化51】

【0129】
キラル状況下では、スキーム6に示されるように、用いられるキラル補助物に依存して、ホモプロパルギル酸(XI)又は(XII)のいずれかが調製されることができる。例えば、R.Haruta, M.Ishiguro, N.Ikeda, 及びH.Yamamoto., J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 7667又はN.Ikeda及びH.Yamamoto., J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 483に記載されているように、アレニルボロン酸から、ジエチル、ジイソプロピル、ジシクロペンチル、ジメチル、ジシクロドデシル又はジ−2,4−ジメチル−3−ペンチル酒石酸エステルのような(+)−ジアルキル酒石酸エステルを用いて生じたキラルアレニルボロン酸エステルを加えると、ホモプロパルギル酸XIが生じることとなる。(−)−ジアルキル酒石酸エステルの使用は、ホモプロパルギル酸XIIを提供することとなる。その他の変形方法は、当業者に知られており、例えば、E.J.Corey, C.-M.Yu及びD.-H.Lee., J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 878に記載された手順が含まれる。
【0130】
【化52】

【0131】
典型的な手順では、N.Ikeda及びH.Yamamoto., J. Am. Chem. Soc. 1986, 108に記載されているように、アレニルボロン酸は、テトラヒドロフラン中で(+)−ジエチル酒石酸エステルと混合することができる。このテトラヒドロフランは、減圧留去されて、アレニルボロン酸エステルが残ることができ、これは、さらなる精製をせずに用いることができる。アルデヒド(II)は、約−80℃〜約−10℃で、トルエン等中のアレニルボロン酸エステルの溶液へ加えることができる。慣用的な処理(ジエチルエーテル中に抽出、硫酸マグネシウムで乾燥、及び減圧濃縮)及び精製(シリカゲルカラムクロマトグラフィー)で、ホモプロパルギルアルコールXIが生じることとなる。(−)−ジエチル酒石酸エステルを用いること以外は同じ手順で、ホモプロパルギルアルコールXIIが生じることとなる。
【0132】
工程(a−2)
ホモプロパルギルアルコール(XI)の水素化で、ホモアリルアルコールIIIが提供される。水素化が行われる条件は、当業者によく知られており、不均一条件下でも均一条件下でも行われることができる。鉛修飾されたパラジウム−CaCO3触媒であるリンドラー触媒として知られる不均一触媒が、この転換に広く用いられる(H.Lindlar及びR. Dubis., Org. Synth. 1973, V, 880を参照のこと)。
【0133】
工程(b)
本発明方法の工程(b)では、ホモアリルアルコール(III)が、塩基の存在下で、
【0134】
【化53】

【0135】
(式中、Xは、Cl,Br,I又は
【0136】
【化54】

【0137】
であって、ここで、Rは、H,(C1〜C6)アルキル又はフェニルである。)と反応して、又は、アクリロイル活性化エステル同等物と反応して、アクリロイルエステル(IV)に転化される。“アクリロイル活性化エステル同等物”とは、Xが、
【0138】
【化55】

【0139】
のように、立体障害のある部分であるアクリロイル混合無水物を意味する。それは、クロロホーメート又はカルボニルジイミダゾールから生じたアクリロイル混合無水物も意味する。アルコールを、酸塩化物、無水物、又は混合無水物と反応させることは、当業者によく知られている(例えば、Junzo Otera, Esterification: Methods, Reactions, and Applications, Wiley-VCH, Weinheim, 2003を参照のこと)。一般的には、この反応は、触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、又はDBN等のようなアミン塩基を使用することを必要とする。この転換は、アミド窒素の保護がなくても、なめらかに進行する。カルボジイミドカップリング試薬の利用に依拠するような、代替方法も用いることができる。
【0140】
本発明方法の一態様では、エステル化反応の反応成分の化学量は、典型的には、約:
1.0当量のホモアリルアルコール;
1.05〜1.5当量の塩化アクリロイル;
1.05〜1.5当量のアミン塩基;及び、
0.1〜0.5当量DMAP
である。
【0141】
本発明方法の別態様では、この反応成分の化学量は、典型的には、約:
1.0当量のホモアリルアルコール;
1.1〜1.4当量の塩化アクリロイル;
1.1〜1.4当量のアミン塩基;及び、
0.15〜0.4当量DMAP
である。
【0142】
本発明方法のさらに別の態様では、この反応成分の化学量は、典型的には、約:
1.0当量のホモアリルアルコール;
1.15〜1.3当量の塩化アクリロイル;
1.15〜1.3当量のアミン塩基;及び、
0.2〜0.3当量DMAP
である。
【0143】
本発明方法の一態様では、ジクロロメタン中のアクリル酸エステルの濃度は、典型的には、約0.01〜0.05mMである。
本発明方法の別態様では、ジクロロメタン中のアクリル酸エステルの濃度は、典型的には、約0.015〜0.045mMである。
【0144】
本発明方法のやはり別の態様では、ジクロロメタン中のアルデヒドの濃度は、典型的には、約0.02〜0.04mMである。
エステル化反応の温度は、典型的には、ほぼ室温又は、約−5℃〜約20℃の範囲である。
【0145】
反応に要する時間は、典型的には、約4〜約24時間の範囲、又は、TLC又はHPLCのような慣用分析技術により反応の完了が示されるまでである。
一般には、この反応の時間と温度のパラメーターは、反応濃度と化学量に依存して多少変動するものとなる。当業者は、実験ごとに、反応収率を最大化するために必要な反応パラメーターを、容易に調節することができる。
【0146】
典型的な手順では、5−(4−フルオロ−フェニル)−1−(3−ヒドロキシ−ヘキサ−5−エニル)−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミド(III)を、ジクロロメタンのような極性の非プロトン性溶媒中に溶解する。この反応液を−5℃まで冷却して、トリエチルアミンのようなアミン塩基を、触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)と一緒に加える。この冷却した反応混合液に、ジクロロメタン中に溶解した塩化アクリロイルを、ゆっくりと加える。反応を完了させるのに必要な場合には、更なるトリエチルアミン及び/又はDMAPを加えてもよい。この反応混合液の反応を停止させ、処理し、慣用条件下で精製して、IVを提供する。
【0147】
工程(c)
本発明方法の工程(c)では、アクリロイルエステル(IV)が、均一有機金属触媒の存在下で、閉環メタセシスを受けて、5,6ジヒドロピラン−2−オンIVが提供される。多くの金属触媒が、閉環メタセシス反応を行う目的のために利用可能であり、それらには、例えば、Ti(O−iPr)4の存在下又は非存在下の商業的に入手可能なビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロライドA(グラブ触媒)が含まれる(G. C. Fu 及びR. H. Grubbs, J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 5426;A. K. Ghosh及びH. Lei, J. Org. Chem., 2000, 65, 4779とそこで引用された文献; Grubbs, R. H. 及びChang, S., Tetrahedron Lett., 1998, 54, 4413; Cossy, J., Pradaux, F. 及びBouzBouz, S., Org. Lett., 2001, 3, 2233; Held, C., Frohlich, R.及び Metz, P., Ang. Chem. Int. Ed. Eng., 2001, 40, 1058; Reddy, M. V., Rearick, J. P., Hoch. N.及びRamachandran, P. V., Org. Lett., 2001, 3, 19; P. V. Ramachandran, M. V. Reddy及び H. C. Brown, J. Indian. Chem. Soc., 1999, 76, 739; Greer, P. B.及びDonaldson, W. A., Tetrahedron Lett., 2000, 41, 3801; Ghosh, A.及びWang, Y. Tetrahedron Lett., 2000, 41, 2319; Ghosh, A.及び Bilcer, G., Tetrahedron Lett., 2000, 41, 1003; Ramachandran, P. V., Reddy, M. V.及びBrown, H. C., Ghosh, A.及びWang, Y. Tetrahedron Lett., 2000, 41, 583; Ghosh, A.及びLiu, C., Chem. Commun., 1999, 1743; Ghosh, A. K., Capiello, J.及びShin, D. Ghosh, A.及びWang, Y. Tetrahedron Lett., 1998, 39, 4651; Reddy, M. V., Yucel, A., Ramachandran, P. V., J. Org. Chem., 2001, 66, 2512も参照のこと)。
【0148】
【化56】

【0149】
本発明方法のメタセシス反応で用いられる代替触媒は、Bである。
【0150】
【化57】

【0151】
例えば、Schrock, R. R., Murdzek, J. S., Bazan, G. C., Robbins, J., DiMare, M.及び O'Regan, M. B., J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 3875; Bazan, C., Khosravi, E., Schrock R. R., Feast, W. J., Gibson, V. C., O'Regan, M. B., Thomas, J. K., Davis, W. M., J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 8378; Bazan, C., Oskam, J. H., Cho, H. N., Park, L. Y., Schrock, R. R., J. Am. Chem. Soc., 1991, 113, 6899.を参照のこと。
【0152】
さらなる代替反応方法は、Morgan, J. P.及びGrubbs, R. H., Org. Lett., 2000, 2, 3153; Huang, J., Stevens, E. D., Nolan, S. P., Petersen, J. L., J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 2674; Furstner, A., Thiel, 0., Ackerman, L., Schanz, H.-J.及びNolan, S. P. J. Org. Chem., 2000, 65, 2204で与えられているように、in situで触媒を生成させることである。そのような触媒には、例えば、
【0153】
【化58】

【0154】
等が含まれる。
本発明方法の一態様では、反応成分の化学量は、典型的には、約:
1.0当量のアクリル酸エステル;及び、
0.025〜0.075当量の触媒である。
【0155】
本発明方法の別態様では、反応の化学量は、典型的には、約:
1.0当量のアクリル酸エステル;及び、
0.04〜0.06当量の触媒である。
【0156】
本発明方法のやはり別の態様では、反応の化学量は、典型的には、約:
1.0当量のアクリル酸エステル;及び、
0.045〜0.055当量の触媒である。
【0157】
本発明方法の一態様では、ジクロロメタン中のアクリル酸エステルの濃度が、典型的には約0.05〜0.125mMである。
本発明方法の別態様では、ジクロロメタン中のアクリル酸エステルの濃度が、典型的には約0.08〜0.11mMである。
【0158】
本発明方法のやはり別の態様では、ジクロロメタン中のアクリル酸エステル濃度が、典型的には約0.09〜0.10mMである。
メタセシス反応の温度は、典型的には、約25℃〜約50℃の範囲である。
【0159】
この反応に要する時間は、典型的には、約4〜24時間の範囲、又は、TLC又はGCのような慣用分析技術により反応が完了したことが示されるまでである。
一般的には、反応の時間と温度のパラメーターは、反応濃度と化学量に依存して、多少変動するものとなる。当業者は、実験ごとに、反応収率を最大化するために必要な反応パラメーターを、容易に調節できる。
【0160】
典型的な手順では、(IV)はジクロロメタン中に溶解される。この混合液を減圧下で脱気し、次いで、窒素で満たす。次いで、この混合液を、温めて還流して、脱気したジクロロメタン中のグラブ触媒A
【0161】
【化59】

【0162】
(CAS#1246047−72−3)を加える。この混合液を、約12〜約24時間還流しながら撹拌させておく。慣用手順で処理及び精製をして、Vを提供する。
この閉環反応を介したVへのアプローチ、特に、均一触媒を用いたときの恩恵には:
・均一触媒の典型的に高い回転数の故により少量の触媒しか必要とされないので、効率が向上し、転換の全体コストが少なくなること;
・最少量の溶媒中で製造スケールの反応を行うことができるので、廃棄物管理の必要性と環境的懸念が減少すること;
・室温及び大気圧下で反応を行うことができるので、製造スケールの専用加圧装置の使用の必要性が減少し、処理手順が簡略化されること;及び、
・化合物を立体選択的に製造するのに必要な合成工程数が全体的に減少すること
が含まれる。
【0163】
工程(d)
本発明方法の工程(d)は、米国特許No.6,476,235(米国出願番号10/015,558に対応する,2002年7月22日に許可されたもの)で開示されている。
【0164】
工程(e)
本発明方法の工程(e)は、米国特許No.6,476,235(米国出願番号10/015,558に対応する,2002年7月22日に許可されたもの)に開示されており、アトバルスタチンへの便利な前駆体である1を提供する。
【実施例】
【0165】
次の実施例は、本発明の様々な態様を示すことが意図されており、その範囲を限定することが意図されるものではない。
実施例1
5−(4−フルオロ−フェニル)−1−(3−ヒドロキシ−ヘキサ−5−エニル)−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミド(III)の調製
【0166】
【化60】

【0167】
フラスコに、1.25g(2.4mmol,1.14当量)の(S,S)−1,2−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンビストルエンスルホンアミドを入れた後、20mLのCH2Cl2を入れた。
【0168】
得られた混合液を0℃まで冷却して、2.0mL(2.33mmol,1.1当量)のBBr3を滴下した。この反応液を0℃で10分間撹拌し、次いで、周囲の温度まで温まったら、さらに40分間撹拌した。この反応混合液を減圧濃縮して、8mLのCH2Cl2に溶解させて、減圧濃縮した。再び、20mLのCH2Cl2をその反応混合液に加えて、得られた溶液を0℃まで冷却した。この冷却した反応混合液に、0.75mL(2.31mmol,1.1当量)のアリルトリブチルスタナンを加えた後、その混合液を、周囲の温度まで温めて、2時間撹拌した。この反応を−78℃まで冷却して、2.5mLのCH2Cl2に溶解した0.96g(2.1mmol,1.0当量)のアルデヒド(II)を滴下した。3時間後、2.5mLのCH2Cl2に溶解した0.5gのアルデヒドをさらに滴下して、一晩撹拌した。この反応を、10mLのpH6.2リン酸バッファーを加えることにより停止させた。有機相は、10mLの飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、次いで、濃縮した。得られた混合物を、10mLのCH2Cl2に溶解して、40mLのへプタンで希釈した。このキラルジアミノ補助物は、97%の収率で回収された。この濾液を、20mLの33%水性KFと撹拌して、スズ塩を除去した。この有機相を、MgSO4で乾燥して、濃縮した後、50mLのEtOAcに溶解し、濾過し、そして再び濃縮した。これを、さらなる12mLのEtOAcで繰り返して、最終的には濃縮して、0.98g(収率95%)のオイルを得た。LC−MS API−ES陰イオン化M496.3、及びM−1 495.3;LC−MS API−ES陽イオン化M496.3、及びM+1 497.3
【0169】
実施例2
アクリル酸1−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4−フェニルカルバモイル−ピロール−1−イル]−エチル}−ブタ−3−エニルエステル(IV)の調製
【0170】
【化61】

【0171】
フラスコに、0.98g(1.98mmol,1当量)の5−(4−フルオロ−フェニル)−1−(3−ヒドロキシ−ヘキサ−5−エニル)−2−イソプロピル−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミド(III)と、10mLのCH2Cl2を加えた。この反応液を、−5℃まで冷却して、0.33mL(2.38mmol,1.2当量)のトリエチルアミンと、0.048g(0.396mmol,0.2当量)の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを加えた。この冷却した反応混合液に、10mLのCH2Cl2に溶解した0.19mL(2.38mmol,1.2当量)の塩化アクリロイルをゆっくりと加えた。さらなる0.33mLのトリエチルアミンと0.048gの4−(ジメチルアミノ)ピリジンをその反応混合液に加えた後、3mLのCH2Cl2に溶解した0.19mLの塩化アクリロイルを加えた。この反応を、20mLの水性NaHCO3で停止させた。有機相を、20mLの水性NaHCO3で洗浄した後、飽和水性NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして減圧濃縮して、橙色固体として0.9g(88%収率)の(IV)を得た。
【0172】
HPLC保持時間17.0分,波長254nm,
アセトニトリル:水 w/0.1%ギ酸60:40(0〜5分)100:0(15〜22分)60:40(25分),YMC ODS−AQ S5;120A;4.6x250mm;流速1ml/min,カラム温度30℃
【0173】
実施例3
5−(4−フルオロ−フェニル)−2−イソプロピル−1−[2−(6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−エチル]−4−フェニル−1H−ピロール−3−カルボン酸フェニルアミド(V)の調製
【0174】
【化62】

【0175】
フラスコに、45mLのCH2Cl2中の0.9g(0.8mmol,1当量)のアクリル酸エステルを加えた。この混合液を減圧下で1回脱気した後、窒素で満たした。この反応液を温めて還流させた。この反応混合液に、5mLの脱気溶媒中の0.035g(0.04mmol,0.05当量)のグラブ触媒(CAS#1246047−72−3)を加えた。この反応液は、19時間還流させながら撹拌させておいた。この混合液を濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィーにかけ、10%EtOAc/へプタンで、40%EtOAc/へプタンまで濃度勾配を高めながら溶出させた。適するフラクションを濃縮した後、0.3gの白色固体(72%収率)が単離された。
【0176】
HPLC保持時間13.3分,波長254nm,
アセトニトリル:水 w/0.1%ギ酸60:40(0〜5分)100:0(15〜22分)60:40(25分),YMC ODS−AQ S5;120A;4.6x250mm;流速1ml/min,カラム温度30℃
キラルHPLC分析,ヘキサン:イソプロパノール90:10,Chirapak AD;4.6x250mm;流速1ml/min,カラム温度30℃
(S)保持時間16.6min
(R)保持時間19.1min
割合97.22:2.78
94.4%エナンチオマー過剰
【0177】
すべての特許及び特許文献は、あたかも個別に参照により組み込まれるように、この明細書中の参照により組み込まれる。本発明は、様々な具体的で好ましい態様及び技術に言及しながら説明されている。しかし、本発明の精神及び範囲内に入る多くの変形や修飾が行われ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物の製造方法であって:
(a)ルイス酸の存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【化2】

(式中、Mは、SiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(III)の化合物を得ること;
【化3】

(b)該式(III)の化合物を、塩基存在下で、
【化4】

[式中、Xは、Cl,Br,I,又は
【化5】

(Rは、H,(C1〜C6)アルキル,又はフェニルである。)である。]又はアクリロイル活性化エステル同等物を用いて、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【化6】

(c)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【化7】

(d)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物へと転化させること;
【化8】

及び、
(e)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去し、式I
【化9】

の化合物を得ること
を含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1の方法の工程(a)であって、
【化10】

が、アミノアルコール、ジアミン又はルイス塩基の存在下で使われてもよいアリルトリ−n−ブチルスタナン、アリルトリメチルシラン、アリルトリクロロシラン、臭化アリルマグネシウム又は臭化アリル亜鉛である方法。
【請求項3】
請求項1の方法の工程(a)であって、ボロン三臭化物及び(S,S)−1,2−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンビストルエンスルホンアミドからin situで生成してもよい非キラル又はキラルルイス酸の存在下で行われる方法。
【請求項4】
請求項1の方法の工程(b)であって、該塩基が、トリエチルアミン、N,Nジメチルアミノピリジン、DBU、及びDBNからなる群から選ばれたアミン塩基である方法であって、触媒量のDMAPの存在下であってもよく、及び、極性の非プロトン性溶媒がジクロロメタンである方法。
【請求項5】
請求項1の方法の工程(c)であって、該触媒が、
【化11】

又は、ベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムである方法。
【請求項6】
式(I)
【化12】

の化合物の製造方法であって:
(a)ルイス酸存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【化13】

(式中、Mは、SiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、Rは(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(III)の化合物を得ること;
【化14】

(b)該式(VII)の化合物を、アクリル酸又はアクリル酸の類似物
【化15】

(式中、Rは、H,(C1〜C6)アルキル又はフェニルである。)の存在下、及び、塩基の存在下で、ミツノブ反応を介して、ホモアリルアルコール中心の立体化学反転を同時に生じさせながら、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【化16】

(c)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【化17】

(d)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物へと転化させること;
【化18】

及び、
(e)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去して、式I
【化19】

の化合物を得ること
を含んでなる方法。
【請求項7】
式(I)
【化20】

の化合物の製造方法であって:
(a)ルイス酸の存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【化21】

(式中、MはSiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(VIII)の化合物を得ること;
【化22】

(b)該エナンチオマー混合物から、望まれるエナンチオマー(VIII)を単離すること;
【化23】

(c)該式(III)の化合物を、塩基の存在下、
【化24】

[式中、Xは、Cl,Br,I,又は
【化25】

(式中、Rは、H,(C1〜C6)アルキル又はフェニルである。)である。]又はアクリロイル活性化エステル同等物を用いて、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【化26】

(d)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【化27】

(e)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物に転化させること;
【化28】

及び、
(f)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去して、式I
【化29】

の化合物を得ること
を含んでなる方法。
【請求項8】
式III
【化30】

の化合物の製造方法であって:
(a)式(II)の化合物を、アレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XI)の化合物を得ること;
【化31】

及び、
(b)該式(XI)の化合物を水素化して、式IIIの化合物を提供すること
【化32】

を含んでなる方法。
【請求項9】
式VII
【化33】

の化合物の製造方法であって:
(a)式(II)の化合物をアレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XII)の化合物を得ること;
【化34】

及び、
(b)該式(XII)の化合物を水素化して、式(VII)の化合物を提供すること
【化35】

を含んでなる方法。
【請求項10】
式VIII
【化36】

の化合物の製造方法であって:
(a)式(II)の化合物をアレニルボロン酸又はアレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XIII)の化合物を得ること;
【化37】

及び、
(b)該式(XII)の化合物を水素化して、式VIIの化合物を提供すること
【化38】

を含んでなる方法。
【請求項11】
次の式で表される化合物:
【化39】

【化40】

【化41】

(式中、RはH,(C1〜C6)アルキル又はフェニルである。)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物の製造方法であって:
(a)ルイス酸の存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【化2】

(式中、Mは、SiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式(III)の化合物を得ること;
【化3】

(b)該式(III)の化合物を、塩基存在下で、
【化4】

[式中、Xは、Cl,Br,I,又は
【化5】

(Rは、H,(C1〜C6)アルキル,又はフェニルである。)である。]又はアクリロイル活性化エステル同等物を用いて、式(IV)のアクリロイルエステルに転化させること;
【化6】

(c)該アクリロイルエステル(IV)を、溶媒中で、触媒と接触させて、5,6ジヒドロピラン−2−オンVを提供すること;
【化7】

(d)該式(V)の化合物を、アリル又はベンジルアルコールの面選択的1,4付加を介して、式(VI)の化合物へと転化させること;
【化8】

及び、
(e)該式(VI)の化合物中のアリル又はベンジル部分を、水素化分解を介して除去し、式I
【化9】

の化合物を得ること
を含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1の方法の工程(a)であって、
【化10】

が、アミノアルコール、ジアミン又はルイス塩基の存在下で使われてもよいアリルトリ−n−ブチルスタナン、アリルトリメチルシラン、アリルトリクロロシラン、臭化アリルマグネシウム又は臭化アリル亜鉛である方法。
【請求項3】
請求項1の方法の工程(a)であって、ボロン三臭化物及び(S,S)−1,2−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタンビストルエンスルホンアミドからin situで生成してもよいキラルルイス酸の存在下で行われる方法。
【請求項4】
請求項1の方法の工程(b)であって、該塩基が、トリエチルアミン、N,Nジメチルアミノピリジン、DBU、及びDBNからなる群から選ばれたアミン塩基である方法であって、触媒量のDMAPの存在下であってもよく、及び、極性の非プロトン性溶媒がジクロロメタンである方法。
【請求項5】
請求項1の方法の工程(c)であって、該触媒が、
【化11】

又は、ベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムである方法。
【請求項6】
式IVの化合物の製造方法であって、置換反応を介して、式VIIの化合物を転化することを含んでなる方法。
【化12】

【請求項7】
式IIIの化合物の製造方法であって:
(a)非キラルルイス酸の存在下であってもよい溶媒中で、式(II)の化合物を、
【化13】

(式中、MはSiCl3,SiMe3,B(OH)2,CuLi,MgBr,ZnBr,InBr,SnR3であって、ここで、R3は(C1〜C6)アルキルである。)と接触させて、式VIIIの化合物を得た後、クロマトグラフィー分離又は分割を介して、式IIIの化合物を単離すること
を含んでなる方法。
【化14】

【請求項8】
請求項1に記載した式IIIの化合物の製造方法であって:
(a)(II)を、キラル補助物の存在下で、アレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XI)の化合物を得ること;
【化15】

及び、
(b)該式(XI)の化合物を水素化して、IIIを提供すること
【化16】

を含んでなる方法。
【請求項9】
請求項6に記載した式VIIの化合物の製造方法であって:
(a)式(II)の化合物を、キラル補助物の存在下で、アレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XII)の化合物を得ること;
【化17】

及び、
(b)該式(XII)の化合物を水素化して、VIIを提供すること
【化18】

を含んでなる方法。
【請求項10】
請求項7に記載した式VIIIの化合物の製造方法であって:
(a)(II)をアレニルボロン酸又はアレニルボロン酸エステルと接触させて、式(XIII)の化合物を得ること;
【化19】

及び、
(b)該式(XIII)の化合物を水素化して、VIIIを提供すること
【化20】

を含んでなる方法。
【請求項11】
次の式で表される化合物:
【化21】

【化22】

(式中、Rは、H、(C1〜C6)アルキル、又はフェニル);
【化23】

(式中、Rは、H、(C1〜C6)アルキル、又はフェニル);
【化24】

(式中、Rは、H、(C1〜C6)アルキル、又はフェニル);
【化25】

及び、
【化26】



【公表番号】特表2006−523670(P2006−523670A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506465(P2006−506465)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001120
【国際公開番号】WO2004/089894
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】