説明

5環液晶化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、液晶相の広い温度範囲、高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、大きな屈折率異方性、および大きな誘電率異方性を有する液晶化合物、特に高い透明点および大きな誘電率異方性を有する液晶化合物を提供する。
【解決手段】 式(1)で表される化合物。



例えば、Rは炭素数1〜20のアルキルであり;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは単結合であり;L、L、L、およびLは、水素またはハロゲンであり;Xは水素またはハロゲンであり;l、m、n、o、p、およびqは0または1であり、これらの和は3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示素子用の材料として有用な新規液晶化合物、液晶組成物に関する。詳しくは液晶相の広い温度範囲、高い透明点を有し、大きな誘電率異方性、屈折率異方性、他の液晶化合物との良好な相溶性を持ち、加えて、液晶表示素子に使用した場合には幅広い温度範囲で使用可能で、低電圧駆動が可能であり、急峻な電気光学特性を得ることができる新規液晶化合物およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物(本願において、液晶化合物なる用語は、液晶相を有する化合物および液晶相を有さないが液晶組成物の構成成分として有用である化合物の総称として用いられる。)を用いた表示素子は、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用されている。これらの表示素子は液晶化合物の屈折率異方性、誘電率異方性などを利用したものである。
【0003】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(opticallycompensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
【0004】
これらの液晶表示素子は、適切な物性を有する液晶組成物を含有する。液晶表示素子の特性を向上させるには、この液晶組成物が適切な物性を有するのが好ましい。液晶組成物の成分である液晶化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること、
(2)高い透明点(液晶相−等方相の相転移温度)を有すること、
(3)液晶相(ネマチック相、スメクチック相等)の下限温度、特にネマチック相の下限温度が低いこと、
(4)他の液晶化合物との相溶性に優れること、
(5)適切な大きさの誘電率異方性を有すること、
(6)適切な大きさの光学異方性を有すること、
である。
【0005】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶化合物を含む組成物を表示素子に用いると、電圧保持率を高くすることができる。
また、(2)および(3)のように、高い透明点、あるいは液晶相の低い下限温度を有する液晶化合物を含む組成物ではネマチック相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。
【0006】
液晶化合物は、単一の化合物では発揮することが困難な特性を発現させるために、他の多くの液晶化合物と混合して調製した組成物として用いることが一般的である。したがって、表示素子に用いる液晶化合物は、(4)のように、他の液晶化合物等との相溶性が良好であることが好ましい。
【0007】
近年は特に表示性能、例えばコントラスト、表示容量、応答時間特性等のより高い液晶表示素子が要求されている。さらに使用される液晶材料には駆動電圧の低いもの、すなわちしきい値電圧の低下を可能とする液晶化合物およびこれを含む低駆動電圧の液晶組成物が要求されている。
【0008】
しきい値電圧(Vth)はよく知られているように、下式により示される(H.J.Deuling, et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst.,27 (1975)81)。

th=π(K/εΔε)1/2

上式において、Kは弾性定数、εは真空の誘電率である。該式から判るように、Vthを低下させるには、Δε(誘電率異方性)の値を大きくするかまたはKを小さくするかの2通りの方法が考えられる。しかし、現在の技術では未だ実際にKをコントロールすることは困難であるため、通常はΔεの大きな液晶材料を用いて要求に対処しているのが現状である。このような事情から(5)のように適切な大きさの誘電率異方性を有する液晶化合物、特に大きな誘電率異方性を有する液晶化合物の開発が盛んに行われている。
【0009】
さらに、良好な液晶表示を行うためにはそれを構成する液晶表示素子のセルの厚みと使用される液晶材料のΔn(屈折率異方性)の値は一定であることが好ましい ( E.Jakeman, et al., Pyhs.Lett., 39A. 69 ( 1972 ) )。また、液晶表示素子の応答速度は用いられるセルの厚みの二乗に反比例する。その為、動画等の表示にも応用できる高速応答可能な液晶表示素子を製造するには、大きな屈折率異方性を有する液晶組成物を用いなくてはならない。したがって(6)のように適切な大きさの屈折率異方性を有する液晶化合物、特に大きな屈折率異方性を有する液晶化合物が要求されている。
【0010】
これまでに、大きな誘電率異方性および屈折率異方性を有する液晶化合物が種々合成されており、そのうちのいくつかは実用的に用いられている。例えば、特許文献1〜6にはCFO結合基を有する4環の化合物が示されている。しかし、これらの化合物は透明点が十分に高くない為、それを液晶組成物にしたとき表示素子として使用できる温度範囲が十分に広くない。
【0011】
さらに、特許文献7〜10には、テトラヒドロピラン環を含有した、CFO結合基を有する5環の化合物(化合物(S−1)〜(S−3))が示されている。しかし、これらの化合物も透明点が十分に高くない。


【0012】
【特許文献1】国際公開第96/11897パンフレット
【特許文献2】特開平10−204016号公報
【特許文献3】英国特許第2229438号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第4023106号明細書
【特許文献5】特開平10−251186号公報
【特許文献6】国際公開第2004/035710パンフレット
【特許文献7】国際公開第2004/048501パンフレット
【特許文献8】特開2004−352721公報
【特許文献9】国際公開第2005/019378パンフレット
【特許文献10】国際公開第2005/019381パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の第一の目的は、化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、液晶相の広い温度範囲、高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、大きな誘電率異方性および大きな屈折率異方性を有する液晶化合物であり、特に高い透明点および大きな誘電率異方性を有する液晶化合物を提供することである。第二の目的は、この化合物を含有し、液晶相の広い温度範囲、小さな粘度、大きな屈折率異方性、および低いしきい値電圧を有する液晶組成物であり、特にネマチック相の広い温度範囲を有する液晶組成物を提供することである。第三の目的は、この組成物を含有し、使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト、および低い駆動電圧を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下のような液晶化合物、液晶組成物、および液晶組成物を含有する液晶表示素子等を提供する。また、以下に、式(1)で表わされる化合物における末端基、環および結合基等に関して好ましい例も述べる。
【0015】
[1] 式(1)で表される化合物。



式(1)において、Rは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−により置き換えられてもよく;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CF=CF−、−(CH−、−(CHCFO−、−(CHOCF−、−CFO(CH−、−OCF(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であり;L1、L2、L3、およびL4は独立して、水素またはハロゲンであり;Xは水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−SF、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−または−CH=CH−により置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよく;l、m、n、o、p、およびqは独立して、0または1であり、l+m+n+o+p+q=3である。
【0016】
[2] 式(1)において、Rが炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜21のアルケニル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、または炭素数1〜19のアルキルチオであり;Xが水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−SF、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜10のアルケニルオキシ、炭素数1〜9のアルキルチオ、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、−(CF−F、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、または−CH=CHCFCFである項[1]に記載の化合物。
[3] 式(1)において、Z、Z、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−である項[1]または[2]に記載の化合物。
【0017】
[4] 式(1−1)〜(1−4)のいずれか一つで表される項[1]に記載の化合物。



これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、それぞれの式において環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;L1、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。
【0018】
[5] 式(1−5)〜(1−8)のいずれか1つで表される項[1]に記載の化合物。



これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、それぞれの式において環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;L1、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。
【0019】
[6] 式(1−9)〜(1−16)のいずれか1つで表される項[1]に記載の化合物。


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルであり;L1、L2、L、L、Y、Y、YおよびYは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素または−OCFである。
【0020】
[7] 式(1−17)〜(1−32)のいずれか1つで表される項[1]に記載の化合物。





これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルであり;L1、Y、Y、YおよびYは独立して、水素またはフッ素である。
【0021】
[8] 項[1]〜[7]のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有することを特徴とする、2成分以上からなる液晶組成物。
【0022】
[9] 一般式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、[8]に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0023】
[10] 一般式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、[8]に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは1または2であり、sは0または1であり、r+s=0、1または2である。
【0024】
[11] 一般式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、[8]に記載の液晶組成物。



これらの式において中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;Z10、Z11、Z12、およびZ13は独立して、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;LおよびL10は独立して、フッ素または塩素であり;t、u、x、y、およびzは独立して0または1であり、u+x+y+zは1または2である。
【0025】
[12] 一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、[8]に記載の液晶組成物。



これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z14およびZ15は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【0026】
[13] 項[10]記載の一般式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。
【0027】
[14] 一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。
【0028】
[15] 一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[10]に記載の液晶組成物。
【0029】
[16] 一般式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[11]に記載の液晶組成物。
【0030】
[17] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、項[8]〜[16]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
[18] 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含む項[8]〜[17]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0032】
[19] 項[8]〜[18]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0033】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(13)において、六角形で囲んだB、D、Eなどの記号はそれぞれ環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A、Y、Bなど複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらはそれぞれが同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0034】
「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH−が−O−で置き換えられることも好ましくない。以下に本発明をさらに説明する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の化合物は、化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、液晶相の広い温度範囲、他の化合物との良好な相溶性、大きな誘電率異方性および屈折率異方性を有する。本発明の液晶組成物は、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな屈折率異方性および低いしきい値電圧を有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト比、および低い駆動電圧を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
1−1 本発明の化合物
本発明の第1の態様は、式(1)で表される化合物に関する。


式(1)においてRは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−により置き換えられてもよい。例えば、CH(CH−において任意の−CH−を−O−、−S−、または−CH=CH−で置き換えた基の例は、CH(CHO−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、CH(CHS−、CH−S−(CH−、CH−S−CH−S−、CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−CHO−などである。
【0037】
このようなRの例は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル等である。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。Rが分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0038】
アルキルとしては、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルキルの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0039】
アルコキシとしては、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルコキシの具体的な例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13および−OC15、−OC17、−OC19、−OC1021、−OC1123、−OC1225、−OC1327、および−OC1429である。
【0040】
アルコキシアルキルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CH−OCH、−(CH−OC、−(CH−OC、−(CH−OCH、−(CH−OCH、および−(CH−OCHである。
【0041】
アルケニルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルの具体的な例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHである。
【0042】
アルケニルオキシとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。
【0043】
は、炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルが好ましい。またRの最も好ましい例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0044】
式(1)において環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン(14−1)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(14−2)、1,4−フェニレン(14−3)、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンの例は、下記の式(14−4)〜(14−20)である。好ましい例は、式(14−4)〜(14−9)で表される基である。
【0045】

【0046】
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aの好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン(14−1)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(14−2)、1,4−フェニレン(14−3)、2−フルオロ−1,4−フェニレン(14−4)(14−5)、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン(14−6)、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン(14−8)、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン(14−7)(14−9)である。
【0047】
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aの最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、および2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0048】
式(1)においてZ、Z、Z、Z、ZおよびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CF=CF−、−(CH−、−(CH−CFO−、−(CH−OCF−、−CFO−(CH−、−OCF(CH−、−CH=CH−(CH−または−(CH−CH=CH−である。
【0049】
、Z、Z、Z、ZおよびZの好ましい例は、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−または−OCH−である。これらの結合において、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−(CH−、および−(CH−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。最も好ましいZ、Z、Z、Z、ZおよびZは、単結合である。
【0050】
式(1)においてL1、L2、L3およびL4は独立して、水素またはハロゲンである。また、L1、L2、L3およびL4は独立して水素またはフッ素であることが好ましい。
【0051】
式(1)においてXは水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−SF、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−により置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよい。
【0052】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、および−(CF−Fである。
【0053】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、および−O−(CF−Fである。
【0054】
任意の水素がハロゲンにより置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0055】
の具体的な例は、水素、フッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、−(CF−F、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0056】
好ましいXの例は、フッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFおよび−OCHFである。最も好ましいXの例は、フッ素、および−OCFである。
【0057】
式(1)においてl、m、n、o、pおよびqは独立して0または1であり、l+m+n+o+p+q=3である。l、m、n、o、pおよびqの好ましい組み合わせは、(l=o=p=1,m=n=q=0)、(l=m=o=1,n=p=q=0)、および(l=m=n=1,o=p=q=0)である。
【0058】
1−2 本発明の化合物の性質およびその調整方法
本発明の化合物(1)をさらに詳細に説明する。化合物(1)はCFO結合基を有する5環の液晶化合物である。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶化合物との相溶性がよい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、5環化合物であり液晶相の温度範囲が広く透明点が高い。したがって組成物においてネマチック相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。さらにこの化合物は誘電率異方性が大きい為、組成物のしきい値電圧を下げるための成分として有用である。
【0059】
化合物(1)のl、m、n、o、pおよびqの組み合わせと、環A〜Aの種類、左末端基R、一番右側のベンゼン環上の基およびその置換位置(L、LおよびX)、あるいは結合基Z〜Zを適切に選択することによって、透明点、屈折率異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。l、m、n、o、pおよびqの組み合わせ、環A〜A、左末端基R、右末端基X、結合基Z〜Z、LおよびLの種類が、化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0060】
l、m、n、o、pおよびqの組み合わせが(l=m=n=1,o=p=q=0)であるときは液晶相の温度範囲が広く透明点が高い。(l=m=o=1,n=p=q=0)であるときは他の化合物との相溶性が高い。
【0061】
環Aが1,4−シクロヘキシレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルで、環A、環Aが1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり(l=m=n=1,o=p=q=0)であるときは透明点が高く屈折率異方性が大きい。環Aが1,4−シクロヘキシレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルで、環A、環Aが1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり(l=m=o=1,n=p=q=0)であるときは他の化合物との相溶性が高く屈折率異方性、誘電率異方性が大きい。環Aが1,4−シクロヘキシレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルで、環A、環Aが1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり(l=o=p=1,m=n=q=0)であるときは屈折率異方性、誘電率異方性が大きい。環A〜Aに1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを含んでいるときは誘電率異方性が特に大きい。
【0062】
が直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。Rが分岐鎖であるときは他の液晶化合物との相溶性がよい。Rが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。Rが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。Rがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0063】
結合基Z、Z、Z、Z、ZおよびZが単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CH2O−、−OCH2−、−CF=CF−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CH−CFO−、−OCF−(CH−、または−(CH−であるときは粘度が小さい。結合基が単結合、−(CH−、−CFO−、−OCF−、または−CH=CH−であるときは粘度がより小さい。結合基が−CH=CH−であるときは液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が大きい。結合基が−C≡C−のときは光学異方性が大きい。Z、Z、Z、Z、ZおよびZが単結合、−(CH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−(CH−であるときは化学的に比較的安定であって、比較的劣化をおこしにくい。
【0064】
右末端基Xがフッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであるときは誘電率異方性が大きい。Xが−C≡N、−N=C=Sまたはアルケニルであるときは光学異方性が大きい。Xがフッ素、−OCF、またはアルキルであるときは、化学的に安定である。
【0065】
およびLが共にフッ素であり、Xがフッ素、塩素、−C≡N、−N=C=S、−SF、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであるときは、誘電率異方性が大きい。Lがフッ素でありXが−OCFであるとき、LおよびLが共にフッ素でありXが−OCFであるとき、またはL、LおよびXが全てフッ素であるときは誘電率異方性値が大きく、液晶相の温度範囲が広いうえ、化学的に安定であり劣化を起こしにくい。
【0066】
以上のように、環構造、末端基、結合基などの種類を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0067】
1−3 化合物(1)の具体例
化合物(1)の好ましい例は、項[5]に示した式(1−5)〜(1−8)である。より好ましい例は、項[6]に示した式(1−9)〜(1−16)である。さらに好ましい例は、項[7]に示した式(1−17)〜(1−32)である。


(これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、それぞれの式において環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;L1、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。)
【0068】



(これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルであり;L1、L2、L、L、Y、Y、YおよびYは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素または−OCFである。)
【0069】


【0070】


(これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルであり;L1、Y、Y、YおよびYは独立して、水素またはフッ素である。)
【0071】
1−4 化合物(1)の合成
次に、化合物(1)の合成について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0072】
1−4−1 結合基Z〜Zを生成する方法
化合物(1)における結合基Z〜Zを生成する方法の一例は、下記のスキームの通りである。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1J)は、化合物(1)に相当する。


【0073】


【0074】
次に、化合物(1)における結合基Z〜Zについて、各種の結合の生成方法について、以下の(I)〜(XI)項で説明する。
【0075】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(15)と公知の方法で合成される化合物(16)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(17)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(16)を反応させることによっても合成される。
【0076】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(17)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(18)を得る。化合物(18)と、公知の方法で合成されるフェノール(19)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
【0077】
(III)−CFO−と−OCF−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(20)を得る。化合物(20)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CFO−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(20)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0078】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(17)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(22)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(21)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(22)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0079】
(V)−(CH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0080】
(VI)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(21)の代わりにホスホニウム塩(23)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0081】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(17)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(24)を得る。ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(24)を化合物(16)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0082】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(17)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(25)を得る。化合物(16)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(25)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0083】
(IX)−CHO−または−OCH−の生成
化合物(22)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(26)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(27)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(27)を化合物(19)と反応させて化合物(1I)を合成する。
【0084】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(22)の代わりに化合物(28)を用いて、前項(IX)と同様な方法にて化合物(1J)を合成する。
【0085】
1−4−2 環A、環A、環A、環A、環Aおよび環Aを合成する方法
1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0086】
1−4−3−1 化合物(1)を合成する方法
式(1)で表される化合物を合成する方法は複数あるが、ここにその例を示す。カルボン酸誘導体(31)とアルコール誘導体(32)をDCC、DMAPなどの存在下で脱水縮合させてエステル誘導体(33)に導いた後、ローソン試薬のような硫黄化剤で処理してチオン−O−エステル誘導体(34)に導き、次いでフッ化水素ピリジン錯体とNBSでフッ素化して化合物(1)へと導くことができる。


(これらの式において、環A〜A、Z〜Z6、L1〜L4、R、X1、l、m、n、o、p、およびqは前記と同一の意味である。)
【0087】
式(1)で表される化合物のうち、(l=m=n=1,o=p=q=0)である場合あるいは、o=1で環Aが1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンである場合は以下に示す2つの方法でも合成できる。
【0088】
US6231785B1に記載された方法に従い、化合物(35)にn−ブチルリチウム、次いでジブロモジフルオロメタンを反応させて、ブロモジフルオロメタン誘導体(36)を得る。このブロモジフルオロメタン誘導体(36)とフェノール誘導体(37)とを炭酸カリウムなどの塩基の存在下で反応させて化合物(1)を合成することができる。


(これらの式において、環Aは1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、環A、環A、環A、環A、環A、Z〜Z6、L1〜L4、R、X1、l、m、n、o、p、およびqは前記と同一の意味である。)
【0089】
P. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 1480.に記載された方法に従いカルボン酸誘導体(31)にアルカンジチオールとトリフルオロメタンスルホン酸を反応させてジチアニリウム塩(38)を得る。フェノール誘導体(37)にジチアニリウム塩(38)、次いでEtN・3HFを反応させ、臭素で処理して化合物(1)を得ることができる。


(これらの式において、環Aは1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、環A、環A、環A、環A、環A、Z〜Z6、L1〜L4、R、X1、l、m、n、o、p、およびqは前記と同一の意味である。)
【0090】
1−4−3−2 1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを環構造に有する化合物(1)を合成する方法
1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを環構造に有する化合物(1)は、例えば以下の手法に従って合成する。プロパンジオール誘導体(39)に対しp−トルエンスルホン酸等の酸触媒の存在下でアルデヒド誘導体(40)を作用させジオキサン環を有する中間体(41)を合成する。これを化合物(35)に替えて用い、上記の化合物(1)を合成する方法に従って目的物へと導くことができる。


(これらの式において、環A、環A、Z、Z、L、L4、R、m、およびnは前記と同一の意味である。)
【0091】
化合物(1)において環Aまたは環Aが1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである場合は、以下の方法に従って合成する。臭化物(42)に対して、ナトリウムエトキシドの存在下、マロン酸ジエチルを作用させマロン酸ジエチル誘導体(43)とした後、還元してプロパンジオール誘導体(44)に導く。上記と同様の手法によりジオキサン環を構築した後、目的物へと導くことができる。


(これらの式において、環A、環A、Z、Z、L、L4、R、l、およびmは前記と同一の意味である。)
【0092】
1−4−3−3 合成原料であるフェノール誘導体(37)を合成する方法
化合物(1)の合成原料であるフェノール誘導体(37)は、例えば以下の手法に従って合成する。式(37)において、o=p=q=0である場合はブロモベンゼン誘導体(47)から調製したグリニャール試薬にほう酸トリアルキルを作用させ得られるボロン酸エステル誘導体を過酢酸にて酸化するか(R.L. Kidwell等、オーガニックシンセシス、5巻、P918(1973))またはボロン酸エステルの酸加水分解にて容易に得られるボロン酸誘導体(48)を過酢酸にて酸化することにより、目的のフェノール誘導体(37−1)を容易に製造することができる。
【0093】


(この式において、LおよびLは前記と同一の意味であり、X1は水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロアルキル、またはトリフルオロメトキシである。)
【0094】
式(37)において、Z、Z5およびZ6が共に単結合であり、o=p=0、q=1である場合、o=0、p=q=1である場合、またはo=p=q=1である場合は、例えばボロン酸誘導体(48)に対し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を触媒として塩基存在下アニソール誘導体(49)を作用させ、カップリングすることにより化合物(50)を得る(鈴木章等、有機合成化学協会誌、第46巻第9号、848(1988))。次いでこのものに三臭化ホウ素を作用させて脱メチル化することにより、目的のフェノール誘導体(37−2)を合成することができる。
【0095】


(この式において、環A〜環A、L、L、o、pおよびqは前記と同一の意味であり、Xは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロアルキル、またはトリフルオロメトキシである。)
【0096】
式(37)において、Z、ZおよびZが共に単結合であり、o=p=q=0である場合は、以下の手法によっても合成することができる。ベンジルエーテル誘導体(51)に対しn−またはsec−ブチルリチウムをTHF中、−70℃以下で作用させ、次いでホウ酸トリアルキルを作用させ、得られるホウ酸エステル誘導体またはこのものを酸加水分解して得られるボロン酸誘導体を過酢酸で酸化することによりフェノール誘導体(52)を得て、これを水素化ナトリウムでフェノーラートとした後フルオロアルキルブロミドを作用させエーテル化した後、接触水素還元に付して脱保護することにより、目的のフェノール誘導体(37−3)を合成することができる。
【0097】


(式中、LおよびLは前記と同一の意味を表し、Rfはトリフルオロメチル基を除くフルオロアルキル基を示す。)
【0098】
化合物(1)のうち、CFO結合基を挟んで右側の部位がビフェニル構造を有する誘導体、例えばl=m=q=1、n=o=p=0でZが単結合であるもの、ターフェニル構造を有する誘導体、例えばl=p=q=1でZおよびZが共に単結合であるもの、クオーターフェニル構造を有する誘導体、例えばo=p=q=1でZ、ZおよびZが共に単結合である誘導体(1−33)については、特に以下に示す方法により合成することができる。すなわち、前記の化合物(35)とフェノール誘導体(37−1)または(37−2)から一般式(1)で表される化合物を製造する方法と同様にして化合物(53)を得、これにn−またはsec−ブチルリチウムを作用させてリチオ化し、次いで塩化亜鉛を添加して有機金属化合物に変換した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等の触媒の存在下、前記のブロモベンゼン誘導体(47)またはブロモベンゼン誘導体(55)(化合物(54)とフルオロアルキルのエーテル化で得られる)を作用させることにより合成することができる。
【0099】

(この式において、環A〜環A、Z〜Z、L〜L、R、Xは前記と同一の意味を表し、YおよびYは水素またはフッ素であり、Rfはトリフルオロメチルを除くフルオロアルキルである。)
【0100】
2 本発明の組成物
本発明の第2の態様は、式(1)で表される化合物を含む組成物であり、好ましくは、液晶材料に用いることのできる液晶組成物である。本発明の液晶組成物は、前記本発明の式(1)で表される化合物を成分Aとして含む必要がある。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分B、C、DおよびEから選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する本発明の液晶組成物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)などが提供できる。
【0101】
成分Aに加える成分として、前記式(2)、(3)および(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分B、または前記式(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分C、または前記式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Dを混合したものが好ましい〔前記液晶組成物(b)、(c)および(d)〕。
さらに式(11)、(12)および(13)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Eを混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値および粘度等を調整することができる〔前記液晶組成物(e)〕。
【0102】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0103】
上記成分Bのうち、式(2)で表される化合物の好適例として式(2−1)〜(2−16)、式(3)で表される化合物の好適例として式(3−1)〜(3−112)、式(4)で表される化合物の好適例として式(4−1)〜(4−52)をそれぞれ挙げることができる。
【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】

【0109】

【0110】

【0111】


(式中、R、Xは前記と同じ意味を表す)
【0112】
これらの式(2)〜(4)で表される化合物すなわち成分Bは、誘電率異方性値が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。本発明の液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また式(11)〜(13)で表される化合物(成分E)をさらに含有させることにより粘度調整をすることができる。
前記、式(5)で表される化合物すなわち成分Cのうちの好適例として、式(5−1)〜(5−62)を挙げることができる。
【0113】

【0114】

【0115】


(これらの式において、RおよびXは前記と同じ意味である)
【0116】
これらの式(5)で表される化合物すなわち成分Cは、誘電率異方性値が正でその値が非常に大きいのでSTN,TN用の液晶組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを含有させることにより、組成物のしきい値電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、屈折率異方性値の調整および液晶相温度範囲を広げることができる。さらに急峻性の改良にも利用できる。
【0117】
成分Cの含有量は、STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは0.1〜99.9重量%の範囲、より好ましくは10〜97重量%の範囲、さらに好ましくは40〜95重量%の範囲である。また、後述の成分を混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値および粘度などを調整できる。
【0118】
式(6)〜(8)および式(10)からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)などに用いられる誘電率異方性が負の本発明の液晶組成物を調製する場合に、好ましい成分である。
【0119】
この式(6)〜(8)および式(10)で表される化合物(成分D)の好適例として、それぞれ式(6−1)〜(6−5)、式(7−1)〜(7−9)、式(8−1)〜(8−3)および式(10−1)〜(10−11)を挙げることができる。
【0120】


(式中、R,Rは前記と同じ意味を表す)
【0121】
これら成分Dの化合物は主として誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド用の液晶組成物に用いられる。その含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、誘電率異方性値の絶対値が5程度であるので、含有量が40重量%より少なくなると電圧駆動ができなくなる場合がある。
【0122】
成分Dのうち式(6)で表される化合物は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果がある。また、式(7)および式(8)で表される化合物は3環化合物であるので透明点を高くする、ネマチックレンジを広くする、しきい値電圧を低くする、屈折率異方性値を大きくするなどの効果が得られる。
【0123】
成分Dの含有量は、VAモ−ド用の組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、組成物の電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性値が正である組成物に混合する場合はその含有量が組成物全量に対して30重量%以下が好ましい。
【0124】
式(11)、(12)および(13)で表わされる化合物(成分E)の好適例として、それぞれ式(11−1)〜(11−11)、式(12−1)〜(12−18)および式(13−1)〜(13−6)を挙げることができる。
【0125】

【0126】


(式中、RおよびRは前記と同じ意味を表す)
【0127】
式(11)〜(13)で表される化合物(成分E)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。式(11)で表される化合物は主として粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果があり、また式(12)および(13)で表される化合物は透明点を高くするなどのネマチックレンジを広げる効果、または屈折率異方性値の調整の効果がある。
【0128】
成分Eで表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。TFT用の液晶組成物を調製する場合に、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。また、STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは70重量%以下より好ましくは60重量%以下である。
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で表される化合物の少なくとも1種類を0.1〜99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
【0129】
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を添加して、例えばつぎに述べるような光学活性化合物を含む本発明の液晶組成物(e)、染料を添加したGH型用の液晶組成物を調製することができる。通常、添加物は当該業者によく知られており、文献などに詳細に記載されている。
【0130】
本発明の液晶組成物(e)は、前述の本発明の液晶組成物にさらに1種以上の光学活性化合物を含有する。
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0131】

【0132】
本発明の液晶組成物(e)は、通常これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチはTFT用およびTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(Bistable TN)モ−ド用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で2種以上の光学活性化合物を添加しても良い。
【0133】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
【0134】
また、本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0135】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0136】
得られた化合物は、1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0137】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0138】
GC分析:測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0139】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0140】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0141】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0142】
液晶化合物等の物性値の測定試料
液晶化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0143】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記式に示す式に基づく外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0144】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈液晶化合物の重量%〉
【0145】
液晶化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定し上記式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶化合物の物性値とする。
【0146】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、例えば、母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。
母液晶A:

【0147】
液晶化合物等の物性値の測定方法
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0148】
測定値のうち、液晶化合物そのものを試料とした場合は、得られた値を実験データとして記載した。液晶化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、外挿法で得られた値を実験データとして記載した。
【0149】
相構造および相転移温度(℃):以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0150】
以下、結晶はCと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれS、またはSと表した。相転移温度の表記として、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0151】
ネマチック相の上限温度(TNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0152】
低温相溶性:母液晶と液晶化合物とを、液晶化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0153】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):液晶化合物と母液晶との混合物を、E型回転粘度計を用いて測定した。
【0154】
屈折率異方性(Δn):測定は25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0155】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【実施例1】
【0156】
4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5−テトラフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル (No.1−4−5)の合成


【0157】

【0158】
化合物(T−2)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、良く乾燥させたマグネシウム 16.7gとTHF 20.0mlとを加えて、50℃まで加熱した。そこへ、THF 100mlに溶解した3−ブロモフルオロベンゼン(T−1) 100gを、40℃から60℃の温度範囲でゆっくり滴下し、さらに60分攪拌した。得られたグリニャール試薬に、4−ペンチルシクロヘキサノン 115gのTHF 230ml溶液を20℃から30℃の温度範囲で滴下し、さらに180分攪拌した。反応混合物を氷浴下で1N塩酸に注ぎ込み混合した後、トルエン800mlを加えて、有機層と水層とに分離させ抽出操作を行った。得られた有機層を分取して水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧下、溶媒を留去し、1−(3−フルオロフェニル)−4−ペンチルシクロヘキサノール(T−2) 168gを得た。
【0159】
化合物(T−3)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−2) 168g、p−トルエンスルホン酸一水和物 5.04gおよびトルエン 500mlを加え、留去してくる水を除きつつ加熱還流下で120分反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物にトルエン200mlを加え、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。溶媒を留去し乾燥させ、1−フルオロ−3−(4−ペンチルシクロヘキセン−1−イル)ベンゼン(T−3) 117gを得た。化合物(T−1)からの収率は84%であった。
【0160】
化合物(T−4)の合成
反応器へ化合物(T−3) 117g、Pd/C(NXタイプ) 5.85g、トルエン 200mlおよびソルミックスA−11 400mlを加え、水素雰囲気下室温で8時間攪拌した。濾過により触媒を除去した後、減圧下で濃縮した。残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、1−フルオロ−3−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼン(T−4) 80.3gを得た。化合物(T−3)からの収率は68%であった。
【0161】
化合物(T−5)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−4) 50.0gとTHF 300mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.0M sec−ブチルリチウム, シクロヘキサン,n−ヘキサン溶液 237mlを−74℃から−68℃の温度範囲で滴下し、さらに120分攪拌した。続いてヨウ素 66.3gのTHF 350ml溶液を−75℃から−68℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。得られた反応混合物を25℃に戻した後、氷水 650mlに注ぎ込み、混合した。トルエン 500mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、チオ硫酸ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、2−フルオロ−1−ヨード−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼン(T−5) 69.3gを得た。化合物(T−4)からの収率は92%であった。
【0162】
化合物(T−6)の合成
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(T−5) 20.0g、3−フルオロフェニルボロン酸 8.20g、炭酸カリウム 22.1g、Pd/C(NXタイプ) 0.114g、トルエン 100ml、ソルミックスA−11 100mlおよび水 100mlを加え、5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 300mlおよびトルエン 300mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、2,3'−ジフルオロ−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1'−ビフェニル(T−6) 14.2gを得た。化合物(T−5)からの収率は78%であった。
【0163】
化合物(T−7)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−6) 10.0gとTHF 140mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.0M sec−ブチルリチウム, シクロヘキサン,n−ヘキサン溶液 34.4mlを−74℃から−68℃の温度範囲で滴下し、さらに120分攪拌した。続いてヨウ素 9.63gのTHF 60.0ml溶液を−75℃から−68℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。得られた反応混合物を25℃に戻した後、氷水 200mlに注ぎ込み、混合した。トルエン 100mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、チオ硫酸ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、2,3'−ジフルオロ−4'−ヨード−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1'−ビフェニル(T−7) 10.2gを得た。化合物(T−6)からの収率は75%であった。
【0164】
化合物(T−8)の合成
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(T−7) 10.0g、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸 3.71g、炭酸カリウム 8.87g、Pd/C(NXタイプ) 0.0455g、トルエン 100ml、ソルミックスA−11 100mlおよび水 100mlを加え、5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 300mlおよびトルエン 300mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2,3',3'',5''−テトラフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(T−8) 8.20gを得た。化合物(T−7)からの収率は84%であった。
【0165】
化合物(T−9)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−8) 5.00gとTHF 130mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.60M n−ブチルリチウム,n−ヘキサン溶液 7.00mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。続いてジブロモジフルオロメタン 2.77gのTHF 20.0ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ60分攪拌した。得られた反応混合物を氷水 150mlに注ぎ込み、混合した。トルエン 100mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。溶媒を留去し乾燥させ、4−ブロモジフルオロメチル−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5−テトラフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(T−9) 6.22gを得た。化合物(T−8)からの収率は97%であった。
【0166】
化合物(No.1−4−5)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−9) 6.22g、3,4,5−トリフルオロフェノール 1.43g、炭酸カリウム 4.44g、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 95.0mlを加え、90℃で120分攪拌した。反応混合物を25℃に戻した後、氷水 100mlに注ぎ込み混合させ、トルエン 100mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、0.5N水酸化ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5−テトラフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(No.1−4−5) 3.94gを得た。化合物(T−9)からの収率は57%であった。
【0167】
得られた化合物(No.1−4−5)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :C 78.6 N 255 I 。
【0168】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5−テトラフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0169】
化学シフトδ(ppm);7.52−7.34(m,4H),7.26(d,J=8.80Hz,2H),7.09(dd,J=8.05Hz,J=1.45Hz,1H),7.07−6.95(m,3H),2.52(tt,J=12.1Hz,J=3.15Hz,1H),1.98−1.86(m,4H),1.53−1.41(m,2H),1.39−1.19(m,9H),1.14−1.02(m,2H),0.90(t,J=7.20Hz,3H).
【実施例2】
【0170】
液晶化合物(No.1−4−5)の物性
前述した母液晶Aとして記載された4つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。この母液晶Aの物性は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=71.7℃;誘電率異方性(Δε)=11.0;屈折率異方性(Δn)=0.137。
【0171】
母液晶A 85重量%と、実施例1で得られた4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5−テトラフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(No.1−4−5)の15重量%とからなる液晶組成物Bを調製した。得られた液晶組成物Bの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(No.1−4−5 )の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=166℃;誘電率異方性(Δε)=30.3;屈折率異方性(Δn)=0.204。
これらのことから液晶化合物(No.1−4−5)は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、ネマチック相の温度範囲が広く、上限温度(TNI)が高いうえに、誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることがわかった。
【実施例3】
【0172】
4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル (No.1−4−19)の合成


【0173】

【0174】
化合物(T−11)の合成
1−ヨード−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼン(T−10) 30.0gを原料として用い、実施例1の(T−6)の合成と同様の手法により、3−フルオロ−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1'−ビフェニル(T−11) 22.6gを得た。化合物(T−10)からの収率は83%であった。
【0175】
化合物(T−12)の合成
化合物(T−11) 15.0gを原料として用い、実施例1の(T−7)の合成と同様の手法により、3−フルオロ−4−ヨード−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−1,1'−ビフェニル(T−12) 20.1gを得た。化合物(T−11)からの収率は97%であった。
【0176】
化合物(T−13)の合成
化合物(T−12) 10.0gを原料として用い、実施例1の(T−8)の合成と同様の手法により、4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(T−13) 7.47gを得た。化合物(T−12)からの収率は77%であった。
【0177】
化合物(T−14)の合成
化合物(T−13) 5.00gを原料として用い、実施例1の(T−9)の合成と同様の手法により、4−ブロモジフルオロメチル−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(T−14) 5.30gを得た。化合物(T−13)からの収率は84%であった。
【0178】
化合物(No.1−4−19)の合成
化合物(T−14) 5.30gを原料として用い、実施例1の(1−4−5)の合成と同様の手法により、4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(No.1−4−19) 2.65gを得た。化合物(T−14)からの収率は45%であった。
【0179】
得られた化合物(No.1−4−19)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :C 87.5 N 271 I 。
【0180】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0181】
化学シフトδ(ppm);7.54(d,J=8.30Hz,2H),7.51−7.45(m,2H),7.41(d,J=12.2Hz,1H),7.32(d,J=8.20Hz,2H),7.26(d,J=8.10Hz,2H),7.03−6.95(m,2H),2.53(tt,J=12.1Hz,J=3.00Hz,1H),2.00−1.86(m,4H),1.55−1.44(m,2H),1.40−1.21(m,9H),1.14−1.02(m,2H),0.91(t,J=7.10Hz,3H).
【実施例4】
【0182】
液晶化合物(No.1−4−19)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例3で得られた4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(No.1−4−19)の15重量%とからなる液晶組成物Cを調製した。得られた液晶組成物Cの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(No.1−4−19)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0183】
上限温度(TNI)=189℃;誘電率異方性(Δε)=22.9;屈折率異方性(Δn)=0.210。
これらのことから液晶化合物(No.1−4−19 )は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、ネマチック相の温度範囲が広く、上限温度(TNI)が高い化合物であることがわかった。
【実施例5】
【0184】
4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5,6'−ペンタフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル


【0185】

【0186】
化合物(T−15)の合成
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(T−5) 30.0g、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸 13.9g、炭酸カリウム 33.3g、Pd/C(NXタイプ) 0.171g、トルエン 150ml、ソルミックスA−11 150mlおよび水 150mlを加え、5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 500mlおよびトルエン 300mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、乾燥させ、4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(T−15) 25.0gを得た。化合物(T−5)からの収率は87%であった。
【0187】
化合物(T−16)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−15) 7.00gとTHF 85.0mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.58M n−ブチルリチウム, n−ヘキサン溶液 14.7mlを−74℃から−68℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。続いてヨウ素 6.40gのTHF 45.0ml溶液を−75℃から−68℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。得られた反応混合物を25℃に戻した後、氷水 150mlに注ぎ込み、混合した。トルエン 75mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、チオ硫酸ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製し、乾燥させ、4−ヨード−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5,−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(T−16) 9.36gを得た。化合物(T−15)からの収率は99%であった。
【0188】
化合物(T−17)の合成
化合物(T−16) 9.36gを原料として用い、実施例1の(T−8)の合成と同様の手法により、4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5,6'−ペンタフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(T−17) 6.54gを得た。化合物(T−16)からの収率は72%であった。
【0189】
化合物(T−18)の合成
化合物(T−17) 5.00gを原料として用い、実施例1の(T−9)の合成と同様の手法により、4−ブロモジフルオロメチル−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5,6'−ペンタフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(T−18) 6.12gを得た。化合物(T−17)からの収率は96%であった。
【0190】
化合物(No.1−4−33)の合成
化合物(T−18) 6.12gを原料として用い、実施例1の(1−4−5)の合成と同様の手法により、4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5,6'−ペンタフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(No.1−4−33) 3.89gを得た。化合物(T−18)からの収率は57%であった。
【0191】
得られた化合物(No.1−4−33)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :C 116 N 246 I 。
【0192】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5,6'−ペンタフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0193】
化学シフトδ(ppm);7.37(dd,J=8.15Hz,J=8.15Hz,1H),7.27−7.17(m,4H),7.11(dd,J=8.05Hz,J=1.60Hz,1H),7.08−6.97(m,3H),2.53(tt,J=12.1Hz,J=3.15Hz,1H),1.98−1.86(m,4H),1.53−1.41(m,2H),1.39−1.20(m,9H),1.14−1.02(m,2H),0.90(t,J=7.35Hz,3H).
【実施例6】
【0194】
液晶化合物(No.1−4−33)の物性
母液晶A 95重量%と、実施例5で得られた4−[ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル]−4''−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',2'',3,5,6'−ペンタフルオロ−1,1',4',1''−ターフェニル(No.1−4−33)の5重量%とからなる液晶組成物Dを調製した。得られた液晶組成物Dの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(No.1−4−33)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0195】
上限温度(TNI)=146℃;誘電率異方性(Δε)=39.6;屈折率異方性(Δn)=0.197。
これらのことから液晶化合物(No.1−4−33 )は、ネマチック相の温度範囲が広く、上限温度(TNI)が高いうえに、誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることがわかった。
【実施例7】
【0196】
4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(化合物No.1−3−5)の合成


【0197】


【0198】
化合物(T−19)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−15) 8.00gとTHF 140mlとを加えて、−74℃まで冷却した。そこへ、1.58M n−ブチルリチウム,n−ヘキサン溶液 14.9mlを−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに60分攪拌した。続いてジブロモジフルオロメタン 5.89gのTHF 20.0ml溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ60分攪拌した。得られた反応混合物を氷水 160mlに注ぎ込み、混合した。トルエン 120mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。溶媒を留去し乾燥させ、4−ブロモジフルオロメチル−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(T−19) 10.0gを得た。化合物(T−15)からの収率は87%であった。
【0199】
化合物(T−21)の合成
窒素雰囲気下、反応器へ4−ブロモ−3−フルオロフェノール(T−20) 5.00g、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸 5.07g、炭酸カリウム 10.9g、Pd(PhP)Cl 0.552g、2−プロパノールを加え5時間加熱還流させた。反応液を25℃まで冷却後、水 100mlおよびトルエン 100mlへ注ぎ込み、混合した。その後、静置して有機層と水層の2層に分離させて、有機層への抽出操作を行った。得られた有機層を分取して、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下、濃縮し、残渣をトルエンを展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/トルエンの混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、4−ヒドキシ−2,3',4',5'−テトラフルオロ−1,1'−ビフェニル(T−21) 4.79gを得た。化合物(T−1)からの収率は74%であった。
【0200】
化合物(No.1−3−5)の合成
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−19) 5.00g、化合物(T−21) 2.23g、炭酸カリウム 4.23g、DMF 75.0mlを加え、90℃で120分攪拌した。反応混合物を25℃に戻した後、氷水 75.0mlに注ぎ込み混合させ、トルエン 75.0mlを加え有機層と水層とに分離させ抽出操作を行い得られた有機層を分取し、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、0.5N水酸化ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をヘプタン/酢酸エチルの混合溶媒を展開溶媒、シリカゲルを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーによる分取操作で精製した。さらにヘプタン/ソルミックスA−11の混合溶媒からの再結晶により精製し、乾燥させ、4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(No.1−3−5) 3.90gを得た。化合物(T−19)からの収率は59%であった。
【0201】
得られた化合物(No.1−3−5)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :C 86.9 N 230 I 。
【0202】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0203】
化学シフトδ(ppm);7.41−7.31(m,2H),7.25−7.13(m,6H),7.10(dd,J=8.05Hz,J=1.55Hz,1H),7.04(dd,J=12.2Hz,J=1.20Hz,1H),2.52(tt,J=12.1Hz,J=3.00Hz,1H),1.97−1.86(m,4H),1.51−1.40(m,2H),1.38−1.20(m,9H),1.13−1.01(m,2H),0.90(t,J=7.10Hz,3H).
【実施例8】
【0204】
液晶化合物(No.1−3−5)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例7で得られた4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(4−ペンチルシクロヘキシル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(No.1−3−5)の15重量%とからなる液晶組成物Eを調製した。得られた液晶組成物Eの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(No.1−3−5 )の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0205】
上限温度(TNI)=146℃;誘電率異方性(Δε)=34.3;屈折率異方性(Δn)=0.184。
これらのことから液晶化合物(No.1−3−5 )は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、ネマチック相の温度範囲が広く、上限温度(TNI)が高いうえに、誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることがわかった。
【実施例9】
【0206】
4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(化合物No.1−3−199)の合成


【0207】

【0208】
化合物(T−23)の合成
2−(3−フルオロ−4−ヨードフェニル)−5−ペンチル−1,3−ジオキサン(T−22) 6.00gを原料として用い、実施例5の化合物(T−15)の合成と同様の手法により、4'−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(T−23) 4.60gを得た。化合物(T−22)からの収率は79%であった。
【0209】
化合物(T−24)の合成
化合物(T−23) 4.60gを原料として用い、実施例7の化合物(T−19)の合成と同様の手法により、4−ブロモジフルオロメチル−4'−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(T−24) 6.10gを得た。化合物(T−23)からの収率は98%であった。
【0210】
化合物(No.1−3−199)の合成
化合物(T−24) 6.10gを原料として用い、実施例7の化合物(No.1−3−5)の合成と同様の手法により、4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(No.1−3−199)4.10gを得た。化合物(T−24)からの収率は48%であった。
【0211】
得られた化合物(No.1−3−199)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度 :C 72.7 N 203 I 。
【0212】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニルであることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0213】
化学シフトδ(ppm);7.48−7.33(m,4H),7.25−7.13(m,6H),5.44(s,1H),4.26(dd,J=11.4Hz,J=4.70Hz,2H),3.55(dd,11.4Hz,11.4Hz,2H),2.22−2.09(m,1H),1.40−1.27(m,6H),1.20−1.08(m,2H),0.90(t,J=6.90Hz,3H).
【実施例10】
【0214】
液晶化合物(No.1−3−199)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例9で得られた4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(5−ペンチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2',3,5−トリフルオロ−1,1'−ビフェニル(No.1−3−199)の15重量%とからなる液晶組成物Fを調製した。得られた液晶組成物Fの物性値を測定し、測定値を外挿することで液晶化合物(No.1−3−199 )の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0215】
上限温度(TNI)=141℃;誘電率異方性(Δε)=44.1;屈折率異方性(Δn)=0.184。
これらのことから液晶化合物(No.1−3−199 )は、他の液晶化合物との優れた相溶性を有し、ネマチック相の温度範囲が広く、上限温度(TNI)が高いうえに、誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることがわかった。
【実施例11】
【0216】
実施例1、3、5、7および9、さらに記載した合成法をもとに、以下に示す化合物(No.1−1−1)〜(No.1−1−224)、(No.1−2−1)〜(No.1−2−392)、(No.1−3−1)〜(No.1−3−366)および(No.1−4−1)〜(No.1−4−552)を合成することができる。付記したデータは前記した手法に従い、求めた値である。相転移温度は化合物自体の測定値である。上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)、および光学異方性(Δn)は、実施例2、4、6、8および10に記載したように化合物を母液晶(A)に混合した試料の測定値を、外挿法に従って換算した外挿値である。
【0217】

【0218】

【0219】

【0220】

【0221】

【0222】

【0223】

【0224】

【0225】

【0226】

【0227】

【0228】

【0229】

【0230】

【0231】

【0232】

【0233】

【0234】

【0235】

【0236】

【0237】

【0238】

【0239】

【0240】

【0241】

【0242】

【0243】

【0244】

【0245】

【0246】

【0247】

【0248】

【0249】

【0250】

【0251】

【0252】

【0253】

【0254】

【0255】

【0256】

【0257】

【0258】

【0259】

【0260】

【0261】

【0262】

【0263】

【0264】

【0265】

【0266】

【0267】

【0268】

【0269】

【0270】

【0271】

【0272】

【0273】

【0274】

【0275】

【0276】
[比較例]
比較例としてWO2005/019378A1に掲載されている、テトラヒドロピラン環を含有する5環液晶化合物の4−[ジフルオロ[(2,3',4',5'−テトラフルオロ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)オキシ]メチル]−4'−(5−ペンチルテトラヒドロピラン−2−イル)−2',3,5,6'−テトラフルオロ−1,1'−ビフェニル(S−1−1)を合成した。


【0277】
得られた比較例化合物(S−1−1)の相転移温度は以下の通りであった。
相転移温度:C 101 N 198 I 。
【0278】
母液晶A 85重量%と、比較例化合物(S−1−1)の15重量%とからなる液晶組成物Gを調製した。得られた液晶組成物 Gの物性値を測定し、測定値を外挿することで比較例化合物(S−1−1)の物性の外挿値を算出した。その値は以下のとおりであった。
【0279】
上限温度(TNI)=118℃;誘電率異方性(Δε)=52.3;屈折率異方性(Δn)=0.177。
【0280】
比較例化合物(S−1−1)と実施例に示した本発明の化合物(No.1−4−5、No.1−4−19、No.1−4−33、No.1−3−5およびNo.1−3−199)とを比較する。まず、それぞれの相転移温度を比較すると化合物(No.1−4−5、No.1−4−19、No.1−4−33、No.1−3−5およびNo.1−3−199)の方がネマチック相の温度範囲が広い。
【0281】
さらに、比較例化合物(S−1−1)と化合物(No.1−4−5、No.1−4−19、No.1−4−33、No.1−3−5およびNo.1−3−199)との物性の外挿値を比較すると、化合物(No.1−4−5、No.1−4−19、No.1−4−33、No.1−3−5およびNo.1−3−199)の方が高い透明点を有している。よって化合物(No.1−4−5、No.1−4−19、No.1−4−33、No.1−3−5およびNo.1−3−199)の方が幅広い温度領域で使用可能な優れた液晶化合物であるといえる。
【実施例12】
【0282】
さらに本発明の代表的な組成物を組成例1〜組成例14にまとめた。最初に、組成物の成分である化合物とその量(重量%)を示した。化合物は表1の取り決めに従い、左末端基、結合基、環構造、および右末端基の記号によって表示した。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスである。末端基の記号がない場合は、末端基が水素であることを意味する。次に組成物の物性値を示した。ここでの物性値は測定値そのままの値である。
【0283】

【0284】
特性値の測定は下記の方法にしたがって行うことができる。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0285】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0286】
ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、TCを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0287】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0288】
回転粘度(γ1;25℃で測定;mPa・s):
1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルトから19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0289】
2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0290】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって光学異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと光学異方性を測定した。化合物の光学異方性は外挿値である。
【0291】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0292】
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0293】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した光学異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0294】
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0295】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0296】
らせんピッチ(20℃で測定;μm):らせんピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。らせんピッチ(P)は、式P=2・a・tanθから算出した。θは、くさび型セルにおける2枚のガラス板の間の角度である。
【0297】
成分または液晶化合物の割合(百分率)は、液晶化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。
【0298】
[組成例1]
5−HBB(F)B(F,F)XB(F,F)−F 5%
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 5%

2−BEB(F)−C 5%
3−BEB(F)−C 4%
4−BEB(F)−C 12%
1V2−BEB(F,F)−C 12%
3−HB−O2 10%
3−HH−4 3%
3−HHB−F 3%
3−HHB−1 4%
3−HHB−O1 4%
3−HBEB−F 4%
3−HHEB−F 6%
5−HHEB−F 6%
3−H2BTB−2 4%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
3−HB(F)TB−2 5%
NI=96.1℃;Δn=0.150;Δε=28.0;Vth=1.04V.
【0299】
[組成例2]
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F,F)−F 5%
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 5%

2−HB−C 5%
3−HB−C 10%
3−HB−O2 15%
2−BTB−1 3%
3−HHB−F 4%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
3−HHB−3 6%
3−HHEB−F 4%
5−HHEB−F 4%
2−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 7%
3−HHB(F,F)−F 5%
NI=103.6℃;Δn=0.108;Δε=7.4;Vth=2.07V.
【0300】
[組成例3]
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F,F)−F 5%
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 5%

3−BEB(F)−C 8%
3−HB−C 8%
V−HB−C 8%
1V−HB−C 8%
3−HB−O2 3%
3−HH−2V 11%
3−HH−2V1 7%
V2−HHB−1 8%
3−HHB−1 5%
3−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 6%
3−H2BTB−3 6%
3−H2BTB−4 5%
NI=100.1℃;Δn=0.142;Δε=11.8;Vth=1.05V.
【0301】
[組成例4]
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F,F)−F 6%
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F)−OCF3 6%

5−BEB(F)−C 5%
V−HB−C 11%
5−PyB−C 6%
4−BB−3 11%
3−HH−2V 10%
5−HH−V 11%
V−HHB−1 7%
V2−HHB−1 9%
3−HHB−1 9%
1V2−HBB−2 4%
3−HHEBH−3 5%
【0302】
[組成例5]
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F,F)−F 4%
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F)−OCF3 4%

1V2−BEB(F,F)−C 6%
3−HB−C 18%
2−BTB−1 10%
5−HH−VFF 22%
3−HHB−1 4%
VFF−HHB−1 8%
VFF2−HHB−1 11%
3−H2BTB−2 5%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
【0303】
[組成例6]
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 3%
5−HHB(F,F)XB(F)B(F,F)−F 3%
5−HHB(F)XB(F)B(F,F)−F 3%

5−HB−CL 19%
3−HH−4 12%
3−HH−5 4%
3−HHB−F 4%
3−HHB−CL 3%
4−HHB−CL 4%
3−HHB(F)−F 6%
4−HHB(F)−F 6%
5−HHB(F)−F 6%
7−HHB(F)−F 6%
5−HBB(F)−F 4%
1O1−HBBH−5 3%
3−HHBB(F,F)−F 2%
4−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
4−HH2BB(F,F)−F 3%

【0304】
[組成例7]
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 5%
5−HB(F,F)XB(F)B(F)B(F,F)−F 5%

3−HHB(F,F)−F 9%
3−H2HB(F,F)−F 8%
4−H2HB(F,F)−F 8%
5−H2HB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 21%
5−HBB(F,F)−F 15%
3−H2BB(F,F)−F 5%
5−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHEBB−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 2%
1O1−HBBH−4 4%
1O1−HBBH−5 4%
【0305】
[組成例8]
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F)−OCF3 5%
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F)−OCF3 5%

5−HB−F 12%
6−HB−F 9%
7−HB−F 7%
2−HHB−OCF3 7%
3−HHB−OCF3 7%
4−HHB−OCF3 7%
5−HHB−OCF3 5%
3−HH2B−OCF3 4%
5−HH2B−OCF3 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 5%
3−HH2B(F)−F 3%
3−HBB(F)−F 5%
5−HBB(F)−F 5%
5−HBBH−3 3%
3−HB(F)BH−3 3%
【0306】
[組成例9]
5−GB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 4%
5−GBB(F)B(F,F)XB(F,F)−F 4%

5−HB−CL 11%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 5%
3−HHB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 20%
5−HBB(F,F)−F 7%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 3%
5−HHEB(F,F)−F 3%
2−HBEB(F,F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
5−HBEB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 6%
【0307】
[組成例10]
5−HHB(F,F)XB(F)B(F,F)−F 5%
5−HHB(F)XB(F)B(F,F)−F 5%

3−HB−CL 6%
5−HB−CL 4%
3−HHB−OCF3 5%
3−H2HB−OCF3 5%
5−H4HB−OCF3 15%
V−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 5%
5−HHB(F)−F 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 10%
5−H2HB(F,F)−F 5%
5−H4HB(F,F)−F 7%
2−H2BB(F)−F 2%
3−H2BB(F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
【0308】
[組成例11]
5−HBB(F)B(F,F)XB(F,F)−F 5%
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F,F)−F 5%
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F,F)−F 5%

5−HB−CL 17%
7−HB(F,F)−F 3%
3−HH−4 10%
3−HH−5 5%
3−HB−O2 15%
3−HHB−1 5%
3−HHB−O1 4%
2−HHB(F)−F 4%
3−HHB(F)−F 3%
5−HHB(F)−F 3%
3−HHB(F,F)−F 6%
3−H2HB(F,F)−F 5%
4−H2HB(F,F)−F 5%
NI=79.3℃;Δn=0.092;Δε=6.1;Vth=1.56V.
【0309】
[組成例12]
5−HBB(F)B(F,F)XB(F,F)−F 4%
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F,F)−F 4%
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 4%

5−HB−CL 3%
7−HB(F)−F 7%
3−HH−4 9%
3−HH−EMe 23%
3−HHEB−F 6%
5−HHEB−F 6%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 5%
4−HGB(F,F)−F 5%
5−HGB(F,F)−F 6%
2−H2GB(F,F)−F 2%
3−H2GB(F,F)−F 3%
5−GHB(F,F)−F 3%
NI=91.2℃;Δn=0.081;Δε=7.4;Vth=1.40V.
【0310】
[組成例13]
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 3%
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F)−OCF3 4%
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F)−OCF3 3%

3−HH−4 8%
3−HHB−1 6%
3−HHB(F,F)−F 10%
3−H2HB(F,F)−F 9%
3−HBB(F,F)−F 15%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F 25%
1O1−HBBH−5 7%
2−HHBB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 4%
【0311】
[組成例14]
5−HB(F)B(F)B(F,F)−XB(F,F)−F 4%
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F 4%
5−HB(F,F)XB(F)B(F)B(F,F)−F 4%

5−HB−CL 13%
3−HB−O2 10%
3−PyB(F)−F 10%
5−PyB(F)−F 10%
3−HBB(F,F)−F 7%
3−PyBB−F 6%
4−PyBB−F 6%
5−PyBB−F 6%
5−HBB(F)B−2 10%
5−HBB(F)B−3 10%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。



式(1)において、Rは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−により置き換えられてもよく;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がハロゲンにより置き換えられた1,4−フェニレンであり、環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CF=CF−、−(CH−、−(CHCFO−、−(CHOCF−、−CFO(CH−、−OCF(CH−、−CH=CH−(CH−、または−(CH−CH=CH−であり;L1、L2、L3、およびL4は独立して、水素またはハロゲンであり;Xは水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−SF、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は、−O−、−S−または−CH=CH−により置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンにより置き換えられてもよく;l、m、n、o、p、およびqは独立して、0または1であり、l+m+n+o+p+q=3である。
【請求項2】
式(1)において、Rが炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜21のアルケニル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニルオキシ、または炭素数1〜19のアルキルチオであり;Xが水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=S、−SF、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜11のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜10のアルケニルオキシ、炭素数1〜9のアルキルチオ、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、−(CF−F、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、または−CH=CHCFCFである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、Z、Z、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
式(1−1)〜(1−4)のいずれか一つで表される請求項1に記載の化合物。



これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、炭素数2〜15のアルケニル、炭素数1〜15のアルコキシ、または炭素数2〜15のアルケニルオキシであり;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、それぞれの式において環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;Z、Z、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−CHO−、または−OCH−であり;L1、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。
【請求項5】
式(1−5)〜(1−8)のいずれか1つで表される請求項1に記載の化合物。



これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、;環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素により置き換えられた1,4−フェニレンであり、それぞれの式において環A、環A、環A、環A、環A、および環Aのうち少なくとも1つは1,4−シクロヘキシレン、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり;L1、L、L、およびLは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素、塩素、−C≡N、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。
【請求項6】
式(1−9)〜(1−16)のいずれか1つで表される請求項1に記載の化合物。


これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルであり;L1、L2、L、L、Y、Y、YおよびYは独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素または−OCFである。
【請求項7】
式(1−17)〜(1−32)のいずれか1つで表される請求項1に記載の化合物。





これらの式において、Rは炭素数1〜15のアルキルであり;L1、Y、Y、YおよびYは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有することを特徴とする、2成分以上からなる液晶組成物。
【請求項9】
式(2)、(3)および(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項8に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、または任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項10】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項8に記載の液晶組成物。



これらの式において、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは0、1または2であり、sは0または1であり、r+s=0、1または2である。
【請求項11】
式(6)、(7)、(8)、(9)および(10)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項8に記載の液晶組成物。



これらの式において中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;Z10、Z11、Z12、およびZ13は独立して、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH22−、または単結合であり;LおよびL10は独立して、フッ素または塩素であり;t、u、x、y、およびzは独立して0または1であり、u+x+y+zは1または2である。
【請求項12】
式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を1成分として含有する、請求項8に記載の液晶組成物。



これらの式において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z14およびZ15は独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項13】
請求項10記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項14】
請求項12記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項15】
請求項12記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項16】
請求項12記載の式(11)、(12)および(13)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、請求項8〜16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含む請求項8〜17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項19】
請求項8〜18のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2009−292730(P2009−292730A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108285(P2007−108285)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】