説明

5,5−二置換2−イソオキサゾリンの製造方法

本発明は、式(I)〔式中、R1、R2は、独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロゲンアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されうるおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在しうるC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンの製造方法に関する。本発明に係る方法によれば、式(II)で示されるオキシムは、酸触媒または酸塩基触媒の存在下でかつ場合により有機溶媒の存在下で、式(III)で示されるカルボニル化合物と反応させる(スキーム2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】

【0002】
〔式中、
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2-イソオキサゾリンは、典型的には、アルケン上へのニトリルオキシドの1,3-双極子付加環化(1)またはα,β-不飽和ケトンとヒドロキシルアミンとの反応(2)により調製される(Lang, S. A.; Lin, Y.-I. in Comprehensive Heterocyclic Chemistry, Vol. 6, Katritzky, A. R.; Rees, C. W., Eds.; Pergamon: Oxford, 1984, 88-98)。方法(1)の場合の欠点は、ニトリルオキシドの二量化傾向であることが明らかにされた。合成戦略(2)では、多くの場合、生成物混合物を生じる。
【0004】
2-イソオキサゾリンのさらなる調製方法は、O-プロパルギルヒドロキシルアミンの分子内転位であるが、しかしながら、出発化合物の複雑な合成を必要とする(Synlett 2006 (3), 463)。
【0005】
β-ハロケトンオキシムの環化は、同様に、多段階合成による出発材料の生成を必要とし、限られた用途があるにすぎない(J. Org. Chem. 1970 (35), 2065)。
【0006】
とくに、方法(1)による3-無置換2-イソオキサゾリンの合成は、付加環化に必要とされる雷酸が低温でのみ安定であるにすぎず容易に重合するので、困難であることが判明している。ニトリルオキシドを得るためのイソシアネートによるニトロメタンの活性化は、うまくいかず(Chem. Ber. 106 (1973), 3291)、トリメチルシリルクロリドによるニトロメタンの活性化は、わずかな報告例で、中程度の収率が得られているにすぎない(J. Org. Chem. 66 (2001), 2296 および Tetrahedron 39 (1983), 2247)。
【0007】
方法(2)によりα,β-不飽和アルデヒドとヒドロキシルアミンとの直接反応を行って2-イソオキサゾリンを得ることは、知られていない。二段階の代替法は、水性メタノール性溶液中でN-ヒドロキシウレアをα,β-不飽和アルデヒドに付加することと、続いてカルバミン酸の酸性脱離を行って2-イソオキサゾリンを得ることと、で構成される(Tetrahedron Lett. 28 (1975), 2337、Bull. Soc. Chim. 5-6 Pt. 2 (1979), 281)。
【0008】
報告されている一段階反応は、酸または酸と窒素含有塩基との組合せの存在下でα,β-不飽和アルデヒドとオキシムとの反応を行って5-一置換2-イソオキサゾリンを得るものであるが、空時収量が低くしかもβ-一置換アルデヒドのみが対象となる(Synlett 2008 (6), 827)。α-分岐状α,β-不飽和アルデヒドへのオキシムの付加がうまくいかないことから、この反応では立体因子が重要であることが示唆される。
【0009】
有機触媒作用を利用したα,β-不飽和アルデヒドへのアルコールの類似のMichael付加は、基質のβ位の立体的要件への収率の依存性が大きく、大きい置換基では最小の収率を生じることが明らかにされている(Tetrahedron Let. 47 (2006) 3039-3041)。また、α,β-不飽和ケトンへのアルコールの酸触媒付加では、末端またはβ-一置換のエノンの場合にのみ満足すべき収率が得られるにすぎない(Org. Lett., Vol.5, No. 12, 2141-44)。
【0010】
式(I)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、活性農業化学化合物および活性医薬化合物の調製の重要な中間体である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lang, S. A.; Lin, Y.-I. in Comprehensive Heterocyclic Chemistry, Vol. 6, Katritzky, A. R.; Rees, C. W., Eds.; Pergamon: Oxford, 1984, 88-98
【非特許文献2】Synlett 2006 (3), 463
【非特許文献3】J. Org. Chem. 1970 (35), 2065
【非特許文献4】Chem. Ber. 106 (1973), 3291
【非特許文献5】J. Org. Chem. 66 (2001), 2296
【非特許文献6】Tetrahedron 39 (1983), 2247
【非特許文献7】Tetrahedron Lett. 28 (1975), 2337
【非特許文献8】Bull. Soc. Chim. 5-6 Pt. 2 (1979), 281
【非特許文献9】Synlett 2008 (6), 827
【非特許文献10】Tetrahedron Let. 47 (2006) 3039-3041
【非特許文献11】Org. Lett., Vol.5, No. 12, 2141-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、式(I)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンを製造するための工業規模の使用に好適である安価で採算の合う安全な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、式(I)
【化2】

【0014】
〔式中、
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、β-二置換アルデヒドから非常に良好な収率で、一段階プロセスで得られることを見いだした。この方法は、酸触媒または酸塩基触媒の存在下でかつ場合により有機溶媒の存在下で、式(II)
【化3】

【0015】
〔式中、
R3、R4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキル、フェニル、フェニル-C1〜C4-アルキル、もしくはフェニル-C2〜C4-アルケニルであり{ここで、フェニル環は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、ジ-C1〜C4-アルキルアミノ、ハロゲン、ヒドロキシル、もしくはニトロにより一置換もしくは多置換されていてもよい}、またはR3とR4は、一緒になって、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示されるオキシムを式(III)
【化4】

【0016】
〔式中、R1およびR2は、それぞれ、以上に定義したとおりである〕
で示されるカルボニル化合物と反応させることを含む。
【0017】
したがって、本出願は、式(I)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンを製造するための本発明に係る方法を提供する。
【0018】
5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、式(IV)
【化5】

【0019】
〔式中、変数は、それぞれ、以下のように定義される:
nは、0、1、または2であり、
X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立して、水素、フッ素、または塩素であり、かつ
Yは、フェニル、1〜3個の窒素原子を有する六員ヘテロアリール、または酸素、窒素、および硫黄の群から選択される1〜3個のヘテロ原子を有する五員ヘテロアリールであり、ここで、フェニルおよびヘテロアリールは、それぞれ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、スルホニル-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、およびC1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜5個の置換基により置換されていてもよく、かつ
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体である。
【0020】
式(IV)で示されるオキサゾール系除草剤は、国際公開第02/062770号パンフレットおよび国際公開第01/012613号パンフレットから公知である。
【0021】
したがって、本出願はまた、本発明に係る方法による式(I)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンの製造を含む、式(IV)で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法に関する。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、および実施例から推測可能である。以上に明記された本発明の内容の特徴およびさらに以下で説明されることは、特定の場合で指定された組合せだけでなく他の組合せでも本発明の範囲から逸脱することなく使用可能であることはわかるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
置換基に対して指定された有機分子部分は、個別の基のメンバーの個別のリストに対する総称名に相当する。炭化水素鎖は、直線状または分岐状でありうる。とくに明記されていないかぎり、ハロゲン化置換基は、好ましくは、1〜5個の同一のまたは異なるハロゲン原子を有する。
【0024】
「ハロゲン」の定義は、いずれの場合も、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくはフッ素または塩素である。
【0025】
さらなる定義の例としては、以下のものが挙げられる。
【0026】
アルキル、ならびにカルボキシアルキル、スルホニルアルキル、フェニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノアルキル、アルキルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルシリル、およびアルキルシリルオキシのアルキル部分とは、それぞれ、1〜6または1〜4個の炭素原子を有する飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基のことであり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、およびそれらの異性体である。C1〜C4-アルキルとしては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、または1,1-ジメチルエチルが挙げられる。
【0027】
シクロアルキルとは、3個以上の炭素原子たとえば3〜6個の環員炭素を有する単環式飽和炭化水素基、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを意味する。
【0028】
ハロアルキルおよびハロアルコキシのハロアルキル部分とは、それぞれ、ハロゲン原子が特定的にはフッ素、塩素、および/または臭素である部分的または完全ハロゲン化アルキル、たとえば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、1,1,2,2-テトラクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロピル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル、ヘプタフルオロ-1-プロピル、ヘプタフルオロ-2-プロピル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブチル、またはノナフルオロ-1-ブチルを意味する。
【0029】
アルケニルならびにフェニルアルケニルおよびアルケニルオキシのアルケニル部分とは、それぞれ、2〜6または2〜4個の炭素原子と任意の位置に1個の二重結合とを有するモノ不飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基のことであり、たとえば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルである。
【0030】
アルキニルおよびアルキニルオキシのアルキニル部分とは、それぞれ、2個以上の炭素原子、たとえば、2〜4、2〜6、または3〜6個の炭素原子と、隣接位置は対象外として任意の位置に1または2個の三重結合と、を有する直鎖状または分岐状の炭化水素基、たとえば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-メチル-2-ブチニル、1-メチル-3-ブチニル、2-メチル-3-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-エチル-2-プロピニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-メチル-2-ペンチニル、1-メチル-3-ペンチニル、1-メチル-4-ペンチニル、2-メチル-3-ペンチニル、2-メチル-4-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-メチル-4-ペンチニル、4-メチル-1-ペンチニル、4-メチル-2-ペンチニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル、1,1-ジメチル-3-ブチニル、1,2-ジメチル-3-ブチニル、2,2-ジメチル-3-ブチニル、3,3-ジメチル-1-ブチニル、1-エチル-2-ブチニル、1-エチル-3-ブチニル、2-エチル-3-ブチニル、1-エチル-1-メチル-2-プロピニルを意味する。
【0031】
アリールとは、6〜14個の環員を有する単環式〜三環式の芳香族炭素環、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニルを意味する。
【0032】
ヘテロアリールとは、1〜4個の窒素原子を有するまたは1〜3個の窒素原子と1個の酸素原子もしくは硫黄原子とを有するまたは1個の酸素原子もしくは硫黄原子を有する五員または六員の芳香環系を意味する。
【0033】
ヘテロシクリルとは、3個以上の炭素原子を有する飽和、部分不飽和、または芳香族のヘテロ環式環、たとえば、酸素、硫黄、および窒素の群から選択される1〜4個の同一のまたは異なるヘテロ原子を含みかつCまたはNを介して結合されうる三員、四員、五員、または六員のヘテロ環式環を意味し、ただし、ヘテロシクリル中の硫黄は、S=OまたはS(=O)2に酸化されていてもよく、また、縮合フェニル環またはC3〜C6-炭素環またはさらなる五員もしくは六員のヘテロ環と共に二環式環系を形成してもよい。
【0034】
本発明に係る方法では、好ましい選択肢としては、変数がいずれの場合も単独でまたは組合せでそれぞれ以下のように定義される式(II)および(III)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1は、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R2は、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R3は、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキルであり、かつ
R4は、C1〜C6-アルキルであり、またはR3とR4は、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する。
【0035】
とくに好ましい選択肢としては、変数がいずれの場合も単独でまたは組合せでそれぞれ以下のように定義される式(II)および(III)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルであり、
R2は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルであり、
R3は、水素、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチル、エチル、イソプロピル、もしくはイソブチル、より好ましくはメチルおよびエチルであり、かつ
R4は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルもしくはエチルであり、またはR3とR4は、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する。
【0036】
とりわけ好ましい選択肢としては、変数がいずれの場合も単独でまたは組合せでそれぞれ以下のように定義される式(II)および(III)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1はメチルであり、
R2はメチルであり、
R3はメチルまたはエチルであり、
R4はメチルまたはエチルである。
【0037】
本発明に係る方法により調製される式(I)で示されるとくに好ましい5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、式(I)中のR1およびR2がそれぞれメチルである5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリン(Ia)である。
【化6】

【0038】
R1およびR2がそれぞれメチルとして定義される式(Ia)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、好ましくは、式(IVB)
【化7】

【0039】
〔式中、
nは、1または2であり、
X1、X2は、それぞれ独立して、水素またはフッ素であり、かつ
Yは、フェニルであり、ここで、フェニルは、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、およびC1〜C4-アルコキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい〕
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体として使用される。
【0040】
より特定的には、R1およびR2がそれぞれメチルとして定義される式(Ia)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンはまた、式(IVA)
【化8】

【0041】
〔式中、
nは、1または2であり、
X1、X2は、それぞれ独立して、水素またはフッ素であり、かつ
Yは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、およびC1〜C4-ハロアルコキシの群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいピラゾリルである〕
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体として使用される。
【0042】
とりわけ好ましくは、式(Ia)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、式(IVa)および(IVb)
【化9】

【0043】
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体として使用される。
【0044】
式(I)で示される中間体から出発する式(IV)で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法のさらなる工程は、それ自体すでに当業者に公知であるか、または文献に記載されている。
【0045】
式(IVa)で示される化合物の場合、利用可能な一合成法は、次のように示すことが可能である。
【化10】

【0046】
塩素ガスによる3-無置換イソオキサゾリンの塩素化(a)は、当業者に公知である(J. Org. Chem. 53 (1988), 4074-81)。チオカルボキサミジン塩を生成するチオウレアとの後続反応(b)は、欧州特許第1829868号明細書に記載されている。ジカルボニル化合物とヒドラジンとからのピラゾールの調製(c)は、たとえば、特開2007-031342号公報に示されている。ヒドロキシル置換ピラゾールとホルムアルデヒドとの反応およびそれに続くチオカルボキサミジン塩との反応(d)は、カナダ国特許第2560936号明細書(国際公開第2005/095352号パンフレット)に記載されている。ヒドロキシル基のアルキル化(e)は、特開2007-246396号公報から当業者に公知である。スルホンへの硫黄の最終酸化(f)は、たとえば、欧州特許第1405853号明細書で利用されている。
【0047】
式(IVb)で示される化合物の場合、利用可能な一合成法は、次のように示すことが可能である。
【化11】

【0048】
塩素ガスによる3-無置換イソオキサゾリンの塩素化(a)は、当業者に公知である(J. Org. Chem. 53 (1988), 4074-81)。チオカルボキサミジン塩を生成するチオウレアとの後続反応(b)は、欧州特許第1829868号明細書に記載されている。ベンジルブロミドの求核置換(g)は、たとえば、国際公開第2007/096576号パンフレットに示された。スルホンを生成する硫黄の最終酸化(h)は、たとえば、欧州特許第1405853号明細書で適用されている。
【0049】
本発明に係る方法では、式(II)で示されるオキシムは、酸触媒または酸塩基触媒の存在下でかつ場合により有機溶媒の存在下で、式(III)で示されるカルボニル化合物と反応させる(スキーム2)。
【化12】

【0050】
式(II)で示されるオキシムは、市販品として入手可能であるか、またはたとえば、Yamane, M.; Narasaka, K., in Science of Synthesis, 27 (2004), p. 605に従って調製可能である。式(III)で示されるカルボニル化合物は、同様に市販品として入手可能であるか、またはたとえば、Escher, I.; Glorius, F., in Science of Synthesis, 25 (2006), p. 733に従って調製可能である。
【0051】
一般的には、式(I)で示される化合物を調製するための本発明に係る方法は、以下の条件下で行われる。
【0052】
式(II)で示されるオキシムおよび式(III)で示されるカルボニル化合物は、本発明に係る方法では3:1〜1:3のモル比で使用される。2つの成分の一方の過剰分、特定的には式(III)で示されるカルボニル化合物の過剰分は、好ましくは20mol%までである。それに対応して、オキシム(II)対カルボニル化合物(III)の好ましいモル比は、1.0:0.8〜1.0:1.2、より好ましくは約1.0:1.0〜1.0:1.1である。
【0053】
式(II)で示されるオキシムと式(III)で示されるカルボニル化合物との反応は、触媒の存在下で行われる。好適な触媒は、特定の酸(酸触媒)または特定の酸と特定の塩基との混合物(酸塩基触媒)である。
【0054】
本発明に係る酸触媒プロセスは、以下のように図式的に示すことが可能である。
【化13】

【0055】
好適な酸触媒は、プロトン供与体(ブレンステッド酸)、たとえば、無機酸および有機酸である。無機酸の例は、ハロゲン化水素酸および酸素酸、特定的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、およびホスフィン酸である。
【0056】
有機酸の例は、脂肪族酸および芳香族酸、たとえば、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、モノ-C1〜C6-アルキルホスフェート、ジ-C1〜C6-アルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアリールホスフェート、アルキルカルボン酸、ハロアルキルカルボン酸、およびヘテロシクリルカルボン酸、特定的には、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸、およびプロリンである。
【0057】
一般的には、反応は、pKaが3.5未満である酸を用いて良好な収率で酸触媒作用下で進行する。
【0058】
本発明に係る方法が酸触媒のみを用いて行われる場合、好ましい選択肢としては、リン酸、モノ-C1〜C6-アルキルホスフェート、ジ-C1〜C6-アルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアリールホスフェート、硫酸、スルホン酸、またはトリフルオロ酢酸などの強酸を使用することが挙げられる。
【0059】
本発明に係る酸塩基触媒プロセスは、以下のスキームに従って進行可能である。
【化14】

【0060】
好適な酸塩基触媒は、以上に記載の酸と特定の塩基との混合物であり、この場合、酸および塩基は、それぞれ別々にまたは酸付加塩として使用可能である。
【0061】
好適な塩基は、1個以上のヘテロ原子、たとえば、窒素、酸素、硫黄、またはリンを含む化合物であることが判明した。この場合、窒素は、好ましいヘテロ原子である。
【0062】
そのような塩基の例は、式(V)
【化15】

【0063】
〔式中、
R5およびR6は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、トリ-C1〜C6-アルキルシリル、アリール、アリール-C1〜C6-アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール-C1〜C6-アルキルであり、ここで、置換基のアリール部分およびヘテロアリール部分はそれ自体、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、C1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく、かつ
R5は、そのほかに水素であってもよい〕
で示される第一級または第二級のアミンである。
【0064】
好ましい選択肢としては、式(V)〔式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、トリ-C1〜C6-アルキルシリル、アリール、またはアリール-C1〜C6-アルキルであり、ここで、置換基のアリール部分はそれ自体、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、C1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく、かつR5は、そのほかに水素であってもよい〕で示される化合物が挙げられる。
【0065】
とくに好ましい選択肢としては、式(V)〔式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、ベンジル、またはトリメチルシリルであり、かつR5は、そのほかに水素であってもよい〕で示される化合物、たとえば、N-メチルアニリンが挙げられる。
【0066】
他の選択肢としては、R5およびR6は、一緒になって、式(VI)
【化16】

【0067】
〔式中、
X5は、O、S、NR15、またはCR16R17であり、
qは、0または1であり、
tは、0または1であり、かつ
R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R16、R17は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、アミノカルボニル、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C6-アルキルカルボニル、モノ-C1〜C6-アルキルアミノ、ジ-C1〜C6-アルキルアミノ、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1〜C6-アルコキシから選択され、ここで、C1〜C6-アルキルはそれ自体、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはトリメチルシリルオキシにより置換されていてもよく、置換基のアリール部分、ヘテロシクリル部分、およびヘテロアリール部分はそれ自体、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、およびC1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく、
またはR11とR12および/またはR13とR14は、それらが結合されている炭素原子と一緒になって、ケト基を形成し、かつR15は、水素、C1〜C6-アルキル、アリール-C1〜C6-アルキルから選択される〕
で示される環構造を形成してもよい。
【0068】
好ましい選択肢としては、R5およびR6がNH基と一緒になって式(VII)
【化17】

【0069】
〔式中、置換基は、それぞれ、以上に定義したとおりである〕
で示されるイミダゾリン-5-オン環を形成する式(V)または(VI)で示されるアミンが挙げられる。
【0070】
とくに好ましい選択肢としては、R7およびR9がそれぞれ独立してC1〜C6-アルキルおよびアリール-C1〜C6-アルキルから、好ましくはメチル、エチル、1-メチルエチル、1,1-ジメチルエチル、およびフェニルメチルから選択される化合物が挙げられる。
【0071】
一般的には、触媒は、触媒量で反応混合物に添加される。本発明の一実施形態では、式(II)で示される化合物と酸触媒または酸塩基触媒とのモル比は、1:0.1未満である。好ましい実施形態では、モル比は、1:0.05未満であり、とくに好ましい実施形態では、1:0.02未満である。
【0072】
式(II)で示されるオキシムおよび式(III)で示されるカルボニル化合物は、溶媒の添加無しまたは好適な溶媒の添加有りのいずれかで本発明に従って反応させることが可能である。
【0073】
本発明に係る方法の一実施形態では、式(II)で示されるオキシムおよび式(III)で示されるカルボニル化合物は、溶媒を添加して互いに反応させる。
【0074】
好適な溶媒は、有機溶媒、たとえば、芳香族炭化水素、たとえば、トルエン、o-、m-、p-ジメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o-、m-、p-ジクロロベンゼン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、たとえば、テトラクロロエタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、およびジクロロエテン、脂肪族炭化水素、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、およびシクロヘキサン、エーテル、たとえば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン、アルコール、たとえば、メタノールおよびエタノール、エステル、たとえば、酢酸エチル、ニトリル、たとえば、アセトニトリル、または挙げられた溶媒の混合物である。
【0075】
好ましい溶媒は、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテル、およびアルコールである。
【0076】
とくに好ましい溶媒は、芳香族炭化水素、特定的には、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびこれらの溶媒の混合物である。
【0077】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、反応混合物中の溶媒の割合すなわち反応開始前の割合は、80重量%未満である。とくに好ましい実施形態では、溶媒の割合は、50重量%未満、最も好ましくは10重量%未満である。
【0078】
本発明に係る方法のさらなるとくに好ましい実施形態では、式(II)で示されるオキシムおよび式(III)で示されるカルボニル化合物は、溶媒を添加せずに互いに反応させる。
【0079】
一般的には、式(II)で示されるオキシム、式(III)で示されるカルボニル化合物、触媒、および場合により溶媒を反応槽に最初に仕込むまたは添加する順序は、重要でない。本発明の一実施形態では、式(II)で示されるオキシムおよび式(III)で示されるカルボニル化合物および場合により溶媒が、最初に仕込まれ、所望の温度に設定される。次いで、触媒が添加される。
【0080】
本発明の他の実施形態では、式(II)で示されるオキシム、触媒、および場合により溶媒が、最初に仕込まれ、所望の温度に設定される。次いで、式(III)で示されるカルボニル化合物が添加される。
【0081】
添加とは、少しずつ何回かに分けてまたは連続的のいずれかで物質を添加することを意味するものとみなされる。触媒および式(III)で示されるカルボニル化合物は、好ましくは、反応の過程で溶媒無しでまたは以上に規定された有機溶媒に溶解して添加される。
【0082】
-40〜100℃、好ましくは-20〜60℃、特定的には0〜30℃の反応温度で操作するのが一般的である。反応混合物は、さらなる後処理を行わずに他の方法に直接供給可能である。また、反応生成物すなわち式(I)で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンは、たとえば、直接蒸留、抽出、またはクロマトグラフィーにより、好ましくは蒸留により、反応混合物から取り出すことが可能である。
【実施例】
【0083】
実施例1:(酸塩基触媒作用)
5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンの合成
10.0g(0.137mol、100mol%)のアセトンオキシムを12.7g(0.151mol、110mol%)の3-メチル-2-ブテナールと混合し、10℃に冷却した。3時間にわたり、この混合物に0.13g(1.2mmol、0.9mol%)のN-メチルアニリンと0.14g(1.2mmol、0.9mol%)のトリフルオロ酢酸との混合物を少しずつ何回かに分けて添加し、20%添加後、温度を22℃に上昇させた。3時間後、価値ある生成物を減圧下で分別蒸留により反応混合物から単離した。17〜18mbarでの沸点44〜48℃。1H NMRに基づいて純度89%の10.0gの5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンを得た(66%)。
【0084】
1H NMR (CDCl3): 1.40 (s, 6H), 2.75 (d, 2H), 7.06 (br s, 1H)。
【0085】
実施例2:(酸塩基触媒作用)
5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンの合成
50.0g(0.684mol、100mol%)のアセトンオキシムを62.6g(0.744mol、109mol%)の3-メチル-2-ブテナールと混合し、10〜15℃に冷却した。48時間にわたり、この混合物に1.5g(6.8mmol、1mol%)のN-メチルアニリニウムトリフルオロアセテートを0.1gずつ添加した。続いて、価値ある生成物を減圧下で分別蒸留により反応混合物から単離した。17〜18mbarでの沸点44〜48℃。1H NMRに基づいて純度>91%の56.9gの5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンを得た(76%)。
【0086】
1H NMR (CDCl3): 1.40 (s, 6H), 2.75 (d, 2H), 7.06 (br s, 1H)。
【0087】
実施例3:(酸触媒作用)
5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンの合成
4.35gのアセトンオキシム(59.5mmol、100mol%)および5.27gの3-メチル-2-ブテナール(62.6mmol、105mol%)を混合し、さらに0.13gのトリフルオロ酢酸(1.1mmol、1.9mol%)と混合した。混合物を室温で60時間攪拌し、減圧下(46℃、18mbar)で生成物を蒸留した。NMRに基づいて純度>95%の4.7gの無色油を得た(45.0mmol、76%)。
【0088】
実施例4:(酸塩基触媒作用)
5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンの合成
0.4gの(2S,5S)-2-tert-ブチル-3-メチル-5-ベンジル-4-イミダゾリノン(1.6mmol、1mol%)を50mlのn-ペンタン中に最初に仕込み、0.19gのトリフルオロ酢酸(1.6mmol、1mol%)と0℃で混合した。混合物を-3〜0℃で30分間攪拌した。得られた懸濁液に11.9gのアセトンオキシム(0.163mol、100mol%)を0℃で添加し、混合物を20℃に加温し、16.5gの3-メチル-2-ブテナール(0.196mol、120mol%)を5分間以内で滴下した。混合物をこの温度で16時間撹拌し、生成物を蒸留により単離した。純度88%(GC)の15.5gの5,5-ジメチル-2-イソオキサゾリンが得られた。これは84%の収率に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示される5,5-二置換2-イソオキサゾリンの製造方法であって、
酸触媒または酸塩基触媒の存在下でかつ場合により有機溶媒の存在下で、式(II)
【化2】

〔式中、
R3、R4は、それぞれ独立して、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキル、フェニル、フェニル-C1〜C4-アルキル、もしくはフェニル-C2〜C4-アルケニルであり{ここで、フェニル環は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、ジ-C1〜C4-アルキルアミノ、ハロゲン、ヒドロキシル、もしくはニトロにより一置換もしくは多置換されていてもよい}、またはR3とR4は、一緒になって、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示されるオキシムを式(III)
【化3】

〔式中、R1およびR2は、それぞれ、以上に定義したとおりである〕
で示されるカルボニル化合物と反応させることを含む、上記方法。
【請求項2】
R1が、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R2が、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R3が、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキルであり、かつ
R4が、C1〜C6-アルキルであり、またはR3とR4は、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1およびR2がそれぞれメチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R3およびR4がそれぞれ独立してメチルまたはエチルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式(II)および(III)で示される化合物の反応が、反応混合物中で80重量%未満の有機溶媒を用いて開始される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)および(III)で示される化合物の反応が、反応混合物中に有機溶媒を添加せずに開始される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記触媒が酸触媒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用される前記触媒が酸塩基触媒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式(II)で示される化合物対触媒のモル比が1:0.1未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
式(II)で示される化合物対触媒のモル比が1:0.02未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−512202(P2013−512202A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540291(P2012−540291)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065927
【国際公開番号】WO2011/063843
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】