説明

6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体:薬物誘導神経筋遮断回復薬

【課題】薬物誘導神経筋遮断の回復用製剤へ使用できる6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体の提供。
【解決手段】mが0〜7、nが1〜8、m+n=7か8;Rが、1〜3個のOH基で置換された(C1〜6)アルキレン又は(CH−フェニレン−(CH;Xが、COOH、OH又はテトラゾール−5−イル等;である一般式(I)を有する誘導体。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体、薬物誘導神経筋遮断の回復用製剤へのそれらの使用、および神経筋遮断およびその回復を提供するキットに関する。
【0002】
神経筋遮断薬(NMBA、筋弛緩剤とも呼ぶ)は、麻酔剤投与中に日常的に使用されて気管内挿管を容易にし、随意筋または反射筋の動きによる妨害を受けることなく体腔、特に腹部、胸部に対する外科手術の利用を可能にする。NMBA類はまた、集中治療を受けている重症患者の介護に用いられ、鎮静剤および鎮痛剤だけでは不適切であることが判明した場合に、機械呼吸の受け入れを容易にし、電気ショック療法の治療に関連する激しい筋肉運動を防止する。
【0003】
それらの作用機序に基づいて、NMBA類は二つのカテゴリー、すなわち脱分極性および非脱分極性に分けられる。脱分極性神経筋遮断薬は、内在性神経伝達物質のアセチルコリンと同様な方法で、神経筋接合部におけるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)に結合する。それらは、線維束性収縮として知られている収縮を生じて、イオンチャネルの最初の開口を刺激する。しかし、アセチルコリンエステラーゼによるアセチルコリンの極めて迅速な加水分解と比較して、これらの薬物は、コリンエステラーゼ酵素により比較的ゆっくりとしか分解されないので、それらは、アセチルコリンよりもはるかに長い期間結合し、神経筋の終板の持続的脱分極およびこれによる神経筋遮断を生じさせる。スクシニルコリン(スクサメトニウム)は、脱分極性NMBAの最もよく知られた例である。
【0004】
非脱分極性神経筋遮断薬は、筋肉nAChRsへの結合に関し、アセチルコリンと競合するが、脱分極性NMBA類と違って、それらはこのチャネルを活性化しない。それらは、アセチルコリンによる該チャネルの活性化を遮断して、それにより細胞膜の脱分極を防止し、その結果、筋肉は弛緩性となる。臨床使用のNMBA類の大部分は、非脱分極性カテゴリーに属する。これらには、ツボクラリン、アトラクリウム、(シス)アトラクリウム、ミバクリウム、パンクロニウム、ベクロニウム、ロクロニウムおよびラパクロニウム(Org9487)が挙げられる。
【0005】
手術終了時または集中治療期間において、NMBA類の拮抗薬は、筋肉機能の回復を助長するために患者に投与することが多い。最も一般に用いられる回復剤(reversal agent)は、ネオスチグミン、エドロホニウムおよびピリドスチグミンなどのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の阻害剤である。これら薬物の作用機序は、アセチルコリンの分解を阻害することにより、神経筋接合部におけるアセチルコリン濃度を増加させるので、それらは、スクシニルコリンなどの脱分極性NMBA類の拮抗に適さない。神経伝達物質のアセチルコリンに関与する全シナプス(体性および自律性)に対する神経伝達性がこれらの薬剤により高まることから、回復剤としてAChE阻害剤を使用することは選択性に関する問題を生じる。この非選択性は、ムスカリン性およびニコチン性アセチルコリン受容体の非選択的活性化による徐脈、低血圧、唾液分泌過多、悪心、嘔吐、腹部痙攣、下痢および気管支収縮などの多くの副作用をもたらす可能性がある。したがって、実際にはこれらの薬剤は、アトロピン(すなわちグリコピロラート)の投与後またはその投与と一緒にのみ使用することができ、自律性副交感神経効果器接合部(例えば、心臓)のムスカリン性受容体におけるアセチルコリンのムスカリン様効果と拮抗させる。アトロピンなどのムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)拮抗剤の使用は、多くの副作用、例えば頻脈、口渇、霧視、排尿困難を生じ、さらに心伝導に影響を与える恐れがある。
【0006】
抗コリンエステラーゼ剤のさらなる問題は、神経筋機能の迅速な回復を可能にするために、神経筋活性を残存させなければならないこと(>10%の単収縮活性)である。時折、患者の過敏症または偶発的過剰用量により、NMBA類の投与は、神経筋機能の完全かつ長期遮断(「深度遮断」)を引き起こす可能性がある。現在のところ、このような「深度遮断」に拮抗する信頼できる処置はない。AChE阻害剤の高用量による「深度遮断」を克服する試みには「コリン作用発症」を誘導する危険性が有り、ニコチン性およびムスカリン性受容体の増強刺激に関連する広範囲な症状を招くことになる。
【0007】
ヨーロッパ特許出願第99,306,411号(AKZO NOBEL N.V.)において、拮抗剤として化学キレート化剤(または金属イオン封鎖剤)の使用が開示されている。
【0008】
薬物誘導神経筋遮断拮抗薬製造のためのゲスト−ホスト複合体を形成できる化学キレート化剤が記載された。NMBA類の回復剤としての化学キレート化剤の使用は、それらが、脱分極性および非脱分極性NMBA類双方の作用に拮抗するのに効果的であるという利点を有する。それらの使用は、アセチルコリン濃度を増加させないので、副作用の発生を減らし、AChE拮抗剤に見られたムスカリン性およびニコチン性受容体の刺激に関連した副作用を発生させない。さらに、AChE阻害剤とmAChR拮抗剤(例えばアトロピン)との併用を必要とせず、化学キレート化剤はさらに、「深度遮断」の拮抗に安全に使用できる。このような化学キレート化剤の例としてはヨーロッパ特許第99、306、411号に開示されているように、水溶液中種々の有機化合物と包接複合体を形成する能力が知られている大部分は環式の有機化合物であって、例えば環式オリゴ糖類、シクロファン類、環式ペプチド類、カリキサレン類、クラウンエーテル類およびアザクラウンエーテル類の種々の分類から選ばれた。
【0009】
シクロデキストリン類、
【0010】
【化3】

【0011】
アミロースにおけるように、α−結合による1,4−位に結合した6つ以上のα−D−グルコピラノースを含有する環式分子の種類およびその誘導体は、多くの一般に用いられる神経筋遮断剤の拮抗、またはロクロニウム、パンクロニウム、ベクロニウム、ラパクロニウム、ミバクリウム、アトラクリウム、(シス)アトラクリウム、スクシニルコリンおよびツボクラリンなどの筋弛緩剤の拮抗に特に有用なものとしてヨーロッパ特許第99、306、411号に同定された。
【0012】
一般式I:
【0013】
【化4】

を有し、
式中、mは0〜7およびnは1〜8およびm+n=7または8であり;
Rは、場合によっては1〜3個のOH基で置換された(C1〜6)アルキレン、または(CH−フェニレン−(CHであり;
oおよびpは、独立して0〜4であり;
Xは、COOH、CONHR、NHCOR、SOOH、PO(OH)、O(CH−CH−O)−H、OHまたはテトラゾール−5−イルであり;
は、Hまたは(C1〜3)アルキルであり;
は、カルボキシフェニルであり;
qは、1〜3である6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体、
または、製剤上許容し得るその塩類が
神経筋遮断剤作用の拮抗においてインビボ活性が高いことが知られている。
【0014】
以下の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体自体は特許を求めるものではない。
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−ヒドロキシエチルチオ)−β−シクロデキストリンおよび
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−ヒドロキシエチルチオ)−γ−シクロデキストリンは、Ling,C.およびDarcy,R.(J.Chem.Soc.ChemComm.1993、(2)、203〜205)により記載され;
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(2−ヒドロキシエチルチオ)−β−シクロデキストリンは、Fujita,K.ら(Tetr.Letters21、1541〜1544、1980)により開示され;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(カルボキシメチルチオ)−β−シクロデキストリンは、Guillo,F.ら(Bull.Chem.Soc.Chim.Fr.132(8)、857〜866、1995)により記載され;
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(カルボキシメチルチオ)−β−シクロデキストリンは、Akiie,T.ら(Ckem.Lett.1994(6)、1089〜1092)により記載され;
6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ビス[(o−カルボキシフェニル)チオ)]−β−シクロデキストリンおよび6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ビス(カルボキシメチルチオール)−β−シクロデキストリンは、Tubashi,I.ら(J.Am.Chem.Soc.108、4514〜4518、1986)により記載され;および
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)−β−シクロデキストリンは、Baer,H.H.およびSantoyo−Gonzalez,F.(Carb.Res.280、315〜321、1996)により記載されている。これら先行技術の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体は、各々の例において、異なった用途に関して記載されていた。
【0015】
しかしながら、上記先行技術の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体は、薬物誘導神経筋遮断の回復用薬剤の製造のための一般式Iによる6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体の使用に関する本発明の主たる態様には属している。
【0016】
一実施形態において本発明は、一般式Iを有し、
式中、mは0〜7およびnは1〜8およびm+n=7または8であり;
Xは、COOH、OHまたはCONHCHであり;
Rは、(C1〜6)アルキレンまたは(CH−フェニレン−(CHであり;
oおよびpは、独立して0〜4である6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体であって;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−ヒドロキシエチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(2−ヒドロキシエチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−ヒドロキシエチルチオ)−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(カルボキシメチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(カルボキシメチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ビス[(o−カルボキシフェニル)チオ)]−β−シクロデキストリン;および
6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ビス(カルボキシメチルチオール)−β−シクロデキストリンを除く6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体、または製剤上許容し得るその塩に関する。
【0017】
式Iの定義に用いられる用語の(C1〜6)アルキレンとは、メチレン、エチレン(1,2−エタンジイル)、プロピレン(1−メチル−1,2−エタンジイル)、2−メチル−1,2−エタンジイル、2,2−ジメチル−1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイルおよび1,6−ヘキサンジイルなどの1〜6個の炭素原子を含有する分枝鎖または直鎖の二価炭素基を意味する。用語のフェニレンとは、互いにオルト、メタまたはパラのいずれかに位置することができる自由原子価の二価の部分を意味する。用語の(C1〜3)アルキルとは、1〜3個の炭素原子を含む分枝鎖または直鎖アルキル基、すなわちメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルを意味する。用語のカルボキシフェニルとは、オルト、メタまたはパラのいずれかでカルボキシ基により置換されるフェニル基を意味する。オルト−カルボキシフェニル基が好ましい。n+mが7である式Iによる化合物は、β−シクロデキストリンの誘導体であり、n+mが8である化合物は、γ−シクロデキストリンから誘導される。
【0018】
XがCOOHまたは製剤上許容し得るその塩である式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体が好ましい。nが8であり、Rが(C1〜6)アルキレンであり、XがCOOHである式Iの6−メルカプト−γ−シクロデキストリン誘導体がさらに好ましい。
【0019】
本発明の特に好ましい6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体は、
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−カルボキシエチル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(3−カルボキシプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシフェニルメチル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−カルボキシプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン;および
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−スルホエチル)チオ−γ−シクロデキストリンである。
【0020】
式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体は、式IIのC6−活性化シクロデキストリン誘導体を、無機または有機塩基存在下、RおよびXが前記に定義された意味を有するH−S−R−Xに対応するアルキルチオール、アリールアルキルチオールまたはアリールチオール誘導体と反応させることにより調製できる。
【0021】
【化5】

式II。式中mが0〜7であり、nが1〜8であり、m+nが7または8であり、Yが、ハロゲン化物(Cl、BrまたはI)、トシル酸エステル、ナフタレンスルホン酸エステルまたはトリフル酸エステルなどの硫酸エステル官能基またはスルホン酸エステル官能基であり得る脱離基である。
【0022】
逆に、式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体は、式IIIの6−チオールγ−またはβ−シクロデキストリン誘導体を、無機または有機塩基存在下、アルキル化剤、例えばハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールアルキル、Y、XおよびRが前記に定義された意味を有するY−X−Rに対応するスルホン酸アルキル、スルホン酸アリールアルキルと、または二重結合含有試薬、例えばビニルアルカン、アクリル酸エステルなど、またはエポキシドと反応させることにより調製できる。
【0023】
【化6】

式III。式中mが0〜7であり、nが1〜8であり、m+nが7または8である。
【0024】
本発明の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体を調製する他の合成経路は当業者に知られている。シクロデキストリン誘導化化学は、文書でよく公表されている(例えば、Comprehensive Supramolecular Chemistry、1〜11巻、Atwood J.L.、Davies J.E.D.、MacNicol D.D.、Vogtle F.編;Elsevier Science社、英国オックスフォード、1996年を参照)。
【0025】
Xがカルボン酸基COOH、スルホン酸基SOOH、ホスホン酸基PO(OH)またはテトラゾール−5−イル基である式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体の製剤上許容し得る塩類は、該酸を、有機塩基または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムのような無機塩基と反応させることにより得ることができる。
【0026】
本発明に使用するための6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体または製剤上許容し得るその塩類または溶媒和体は、非経口的に投与される。注射経路は、静脈内、皮下、皮内、筋肉内または動脈内であり得る。静脈内経路は好ましいものである。使用される正確な用量は、その薬物が投与される予定の個々の対象の必要性、回復されるべき筋肉活性度、および麻酔医/応急措置医の判断に依存するであろう。例えば、化学キレート化剤と人工透析中またはプラズマフェレシス中の血液と混合することによる本発明の該化学キレート化剤の体外適用も、また考慮されている。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、(a)神経筋遮断薬および(b)神経筋遮断剤とゲスト−ホスト複合体を形成できる一般式Iに記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体を含む神経筋遮断およびその拮抗を提供するキットに関する。本発明によるキットは、別々の薬剤組成物、すなわち神経筋遮断剤および式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体、すなわち回復剤を含有する製剤を意味する。このようなキット部品の成分は、連続的に、すなわち神経筋遮断剤を必要とする被験者に投与し、それに続いて、筋肉機能の回復が必要とされる時点で、回復剤、すなわち本発明の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体を投与することにより使用されることになる。
【0028】
本発明による好ましいキットは、式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体およびロクロニウム、ベクロニウム、パンクロニウム、ラパクロニウム、ミバクリウム、アトラクリウム、(シス)アトラクリウム、ツボクラリンおよびスクサメトニウムから成る群から選ばれる神経筋遮断剤を含有する。本発明の特に好ましいキットは、神経筋遮断剤としてロクロニウムを含んで成る。
【0029】
6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体は、例えば標準的参照文献であるGennaroら、Remington’s Pharmaceutical Sciences、(第18版、Mack出版社、1990年、第8部:医薬品製剤およびそれらの製造;「Parenteral Preparations」に関する84章、pp.1545〜1569;および「Intravenous admixtures」に関する85章、pp.1570〜1580を特に参照)に記載されているような製剤上好適な補助剤および製剤上好適な液体と混合して、例えば注射製剤としての使用目的で溶液形態において適用できる。
【0030】
他に、該薬剤組成物は、単位服用量容器または多服用量容器、例えば密封バイアルおよびアンプルで提供でき、また、使用前に無菌液体担体、例えば水の添加だけを必要とする凍結乾燥された(凍結乾燥)状態で保存してもよい。
【0031】
本発明はさらに、前記組成物に好適な包装材料であって、以前に記載した使用目的の組成物使用の指示を含む前記包装材料と組み合わせた以前に記載の薬物製剤を含む。
【0032】
本発明を以下の実施例により説明する。
【0033】
実施例1.
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(4−カルボキシフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0034】
【化7】

【0035】
ピリジン(120ml)を含む丸底フラスコに、乾燥γ−シクロデキストリン(2.0g、1.54mmol)を窒素下室温で加えた。溶解後、ピリジン(20ml)中の塩化2−ナフタレンスルホニル(1.05g、4.64mmol)を加えて、この混合液を24時間攪拌した。水(50ml)でクエンチし、蒸発乾固すると粗製の6−モノ−O−(2’−ナフタレンスルホニル)−γ−シクロデキストリンが残った。
【0036】
水素化ナトリウム(0.38g、15.83mmol)を乾燥ジメチルホルムアミド(20ml)に懸濁した。次に4−メルカプト安息香酸(0.7g、4.55mmol)をこの懸濁液に加えて生じた混合物を20分間攪拌した。ノシル酸γ−シクロデキストリン(3.2g、2.12mmol)を該混合液に加えて、反応液を100℃で90分間加熱した。冷却後、アセトンを加えると固体が沈殿し、これを水/アセトンから再沈殿させた。次にこれを、水(20ml)に溶かし、2N塩酸を加えてpHを7.0に調整してから、セファデックスDEAE A−25カラムのクロマトグラフィで分離した。適当なフラクションを合わせて、透析してから、水/アセトンから2回沈殿させて400mgの標題化合物を得た。DMSO中のH NMR δ7.4から7.8(ArH)、5.0から5.2(8H)、4.13(1H)、3.7から4.0(29H)、3.7から3.4(17H)、3.25(1H)ppm。DMSO中の13C NMR δ129.9および127.5(ArC)、103.3および102.9(C1およびC1’)、85.0(C4’)、81.6(C4)、73.8(C3)、73.5(C2)、72.2(C5)、70.8(C5’)、60.6(C6)、34.3(C6’)ppm。電子スプレーMS[M+H]=1455.7および[M+Na]=1477.7。
【0037】
実施例2.
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(2−カルボキシフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0038】
【化8】

【0039】
水素化ナトリウム(オイル中60%分散、0.18g、4.5mmol)を、DMF(25ml)中のチオサリチル酸(0.34g、2.2mmol)に一度に加えて、室温で30分間攪拌した。次いでこれに、DMF(15ml)中の粗製6−モノ−O−(2’−ナフタレンスルホニル)−γ−シクロデキストリン(2.5g、1.45mmol)を加えて、70℃に24時間加熱した。該混合液を冷却してから、水(20ml)でクエンチ後蒸発乾固した。次にこの残渣に水を加えて得た溶液をアセトン(250ml)に注いで沈殿させた。生じた固体をろ過により採取し、水(10ml)に溶かしてから、セファデックスDEAE A−25カラムを通し、水に次いで0.2N NaOHで溶出した。生成物を含むフラクションを合わせて低体積まで蒸発させて、4回外側の水を取り替えることにより透析(MWCO1000)した。内部溶液を低体積まで蒸発させてアセトン(100ml)に注いだ。固体をろ過により採取し、70℃で減圧乾燥すると標題化合物(235mg)が白色固体として残った。H NMR(DO)δ7.50〜7.10(4H,m,Ar−H)、5.14(8H,m,CyD,1−H)、4.16(1H,m,CyD 5−H)、3.98〜3.85(26H,m,CyD 3,5,2,4,−H)、3.70〜3.61(20H,m,CyD 2,3,4,6−H)、3.15(1H,m,CyD 6−H)ppm;[M+Na]として電子スプレーMS m/z 1477.6、C5583NaO41S M 1455.304の計算値。
【0040】
実施例3.
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(3−カルボキシフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0041】
【化9】

【0042】
トリフェニルホスフィン(30.1g、15当量)を乾燥DMF(160ml)に攪拌しながら溶かした。これに、ヨウ素(30.5g、15.6当量)を10分かけて加え、発熱を伴った。次に乾燥γ−シクロデキストリン(10g、7.7mmol)を加え、混合液を70℃で24時間加熱した。混合液を冷却して、これにナトリウムメトキシド(50mlメタノール中3.1gのナトリウム)を加え、混合液を30分間攪拌してから、メタノール(800ml)に注いで蒸発乾固した。この残渣に、水(500ml)を加えて、固体をろ過により採取して水(3×100ml)次いでアセトン(3×100ml)により洗浄し、70℃で減圧乾燥して6−ペル−デオキシ−6−ペル−ヨード−γ−シクロデキストリンを黄色固体(16.2g)として得、これをさらに精製することなく用いた。
【0043】
3−メルカプト安息香酸(1.0g、10当量)のDMF(30ml)溶液に、オイル中60%分散水素化ナトリウム(476mg、22当量)を少しづつ30分かけて加えた。この混合液を冷却して、DMF(30ml)中の6−ペル−デオキシ−6−ペル−ヨード−γ−シクロデキストリン(1.4g)を加えた。次いでこの混合液を70℃で24時間攪拌した。混合液を室温まで冷却して、水(20ml)の添加によりクエンチ後、低体積まで蒸発した。この溶液をアセトン(500ml)に注いで、沈殿をろ過により採取し、水(20ml)に溶かして外側の水を4回取り替えることにより透析(MWCO1000)した。内部溶液を低体積まで蒸発させてアセトン(250ml)に注いだ。固体沈殿物をろ過により採取し、70℃で減圧乾燥して標題化合物(1.45g)を白色固体として得た。H NMR(DO)δ7.77(8H,br s,Ar−H)、7.55(8H,d,J=6.0Hz,Ar−H)、7.71(16H,m,Ar−H)、5.16(8H,s,CyD 1−H)、4.00〜3.94(16H,m,CyD 3,5−H)、3.58〜3.53(16H,m,CyD 4,2−H)、3.43〜3.40(8H,m,CyD 6−H)、3.24〜3.20(8H,m,CyD 6−H);[M−8Na+6H]2−として電子スプレーm/z 1190.6、C104104Na48M 2562.39の計算値。
【0044】
実施例4.
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−カルボキシエチル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0045】
【化10】

【0046】
3−メルカプトプロピオン酸(1.22ml、14.0mmol)を、乾燥DMF(45ml)にN下室温で溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(1.23g、30.8mmol;60%)を3回に分けて加え、混合液をさらに30分間攪拌した。この混合液に、6−ペル−デオキシ−6−ペル−ヨード−γ−シクロデキストリン(3.12g、1.40mmol)の45ml乾燥DMF溶液を滴下により加えた。添加後、反応混合液を70℃で12時間加熱した。冷却後、水(10ml)を混合液に加え、この体積を減圧により40mlまで減じ、これにエタノール(250ml)を加えると沈殿した。固体沈殿物をろ過により採取し、36時間透析した。次にこの体積を減圧により20mlまで減じた。これにエタノールを加えて、沈殿物をろ過により採取し乾燥して標題化合物を白色固体(1.3g、43%)として得た。H−NMR(DO)δ2.47〜2.51(m,16H);2.84〜2.88(m,16H);3.00〜3.02(t,8H);3.11〜3.14(t,8H);3.62〜3.68(m,16H);3.92〜3.97(m,8H);4.04〜4.06(m,8H);5.19(m,8H)ppm。2024.9m/zにおけるMS FIA +イオン。
【0047】
実施例5.
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(5−カルボキシペンチル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0048】
【化11】

【0049】
標題化合物を、実施例4に記載されたのと同様の方法で6−メルカプトヘキサン酸(1.34g、0.90mmol)と6−ペル−デオキシ−6−ペル−ヨード−γ−シクロデキストリンとを反応させることにより調製した。H−NMR DO δ1.40(s,16H);1.57〜1.64(m,32H);2.17〜2.21(m,16H);2.67〜3.00(m,16H);2.85〜2.90(m,8H);3.15〜3.20(m,8H);3.52〜3.59(m,8H);3.60〜3.63(m,8H);3.87〜3.93(m,16H);5.16(s,8H)ppm。2362.2、2213、2065および1919m/zにおけるMS FIA +イオン
実施例6.
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(3−カルボキシプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0050】
【化12】

【0051】
標題化合物を、実施例4に記載されたのと同様の方法で4−メルカプト酪酸(1.10g、0.009mmol)と6−ペル−デオキシ−6−ペル−ヨード−γ−シクロデキストリンとを反応させることにより調製した。H−NMR DO δ1.87〜1.88(m,16H);2.27〜2.30(m,16H);2.67〜2.71(m,16H);2.98〜3.00(m,8H);3.13〜3.16(m,8H);3.61〜3.63(m,16H);3.94〜4.03(m,16H);5.21(s,8H)ppm。2138.8m/zにおけるMS FIA +イオン。
【0052】
実施例7
6−ペル−デオキシ−6−ペル−カルボキシメチルチオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0053】
【化13】

【0054】
水素化ナトリウム(60%分散、0.34g、8.60mmol)を、窒素下、2−メルカプト酢酸エチル(0.92ml、8.40mmol)のDMF(20ml)攪拌溶液に室温で加えた。泡立ちが終った(15分)後、ペル−デオキシ−ペル−6−ヨード−γ−シクロデキストリン(2.17g、1.00mmol)をこの系に加えた。さらに5分後、温度を70℃まで上昇させ、この反応液を17時間攪拌のまま置いた。冷却後、DMFを減圧留去した。メタノール(50ml)を加えると、クリーム状の白色固体が徐々に溶媒から結晶化した。これを吸引ろ過して、メタノールで洗浄、乾燥して6−ペル−デオキシ−6−ペル−カルボキシメチルチオ−γ−シクロデキストリンを固体(1.74g、82%)として得た。δ(d6−dmso)4.95〜4.85(8H,m,8 xアノマーC)、4.05(16H,q,8 x CCH)、3.85〜3.75(8H,m)、3.60〜3.50(8H,m)、3.40〜3.20(32H,bs,8 x CHSCH)、3.20〜3.10(8H,m)、2.95〜2.85(8H,m)、1.20(24H,t,8 x CH)。
【0055】
1M水酸化ナトリウム溶液(7ml)に、6−ペル−デオキシ−6−ペル−カルボキシメチルチオ−γ−シクロデキストリン(1.00g、0.47mmol)を加えて、反応液を室温で攪拌させた。18時間後、水(2L)を2時間ごとに交換しながら透明溶液を8時間透析した。この時間の後、透析管の内容物をフラスコにあけて水を減圧留去して、標題化合物を白色固体(0.62g、64%)として得た。δ(DO)5.21(8H,d,8 xアノマーC)、4.18〜4.05(8H,m)、4.00(8H,dd)、3.78(8H,dd)、3.70(8H,dd)、3.40(16H,dd)、3.20(8H,d)、3.02(8H,dd)。δ(DO)178.1、101.6、82.8、73.0、72.7、71.8、39.0、34.1 LC/MS TOF 1889m/z
実施例8.
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0056】
【化14】

【0057】
4−メルカプト安息香酸(856mg)のDMF(30ml)溶液に、60%オイル中水素化ナトリウム(372mg)を30分かけて少しずつ加えた。この混合液を冷却して、ペル−6−デオキシ−ペル−6−ブロモ−γ−シクロデキストリン(1.0g)を一度に加え、混合液を70℃で24時間攪拌した。該混合液を室温まで冷却して、水(20ml)を添加してクエンチ後、低体積まで蒸発させた。この溶液をエタノール(250ml)に注ぎ、沈殿物をろ過により採取し、水(20ml)に溶かし、外側の水を4回代えて透析(MWCO1000)した。内部溶液を低体積まで蒸発してアセトン(250ml)に注いだ。固体沈殿物をろ過により採取し、70℃で減圧乾燥して標題化合物(1.2g)を白色固体として得た。H NMR(DO,343K)δ7.70(16H,d,J=8.1Hz,Ar−H)、7.23(16H,d,J=7.3Hz,Ar−H)、5.15(8H,s,CyD 1−H)、4.00〜3.96(16H,m,CyD 3,5−H)、3.55〜3.53(24H,m,CyD 6’,4,2−H)、3.15(8H,m,CyD 6−H);[M−Na+H]としてMALDI−TOF m/z 2383.7、C104104Na48 M 2562.39の計算値。
【0058】
実施例9.
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシメチルフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0059】
【化15】

【0060】
4−メルカプトフェニル酢酸(10当量)のDMF(50ml)溶液に、オイル中の60%水素化ナトリウム(22当量)を30分かけて少しずつ加えた。この混合液を冷却して、ペル−6−デオキシ−ペル−6−ブロモ−γ−シクロデキストリン(1.0g)を一度に加え、混合液を70℃で24時間攪拌した。該混合液を室温まで冷却して、水(20ml)を添加してクエンチ後、低体積まで蒸発させた。次にこの溶液をアセトン(250ml)に注いで、沈殿物をろ過により採取し、水(20ml)に懸濁し、4回外側の水を代えて透析(MWCO1000)した。内部溶液を低体積まで蒸発させてアセトン(250ml)に注いだ。固体沈殿物をろ過により採取し、70℃で減圧乾燥して標題化合物(1.44g)を白色固体として得た。H NMR(DO,343K)δ7.15(16H,d,J=8.0Hz,Ar−H)、6.99(16H,d,J=8.0Hz,Ar−H)、4.98(8H,s,CyD 1−H)、3.90〜3.72(16H,m,CyD 3,5−H)、3.51〜3.43(16H,m,CyD 4,2−H)、3.28(24H,m,CH−Ar,CyD 6’−H)、3.15〜3.10(1H,m,CyD 6−H);[M−Na+H]としてMALDI−TOF m/z 2495.8、C112120Na48 M 2674.6の計算値。
【0061】
実施例10.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(3−アミドプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン
【0062】
【化16】

【0063】
6−ペル−デオキシ−6−ペル−チオ−γ−シクロデキストリン(500mg;実施例17に記載されたとおり調製した)およびヨウ化カリウム(5mg)のDMF(10ml)混合液に、4−クロロブタミド(673mg;Friesら、Biochemistry 1975、14、5233)を加えた。炭酸セシウム(1.8g)を加えて、この混合液を60℃で一晩加熱した。生じた混合液をアセトン(250ml)に注ぎ、ろ過、エタノールと水で洗浄してから、減圧乾燥した(118mg;16.2%)。H NMR(DMSO/DO)δ4.9(1H,s)、3.8(1H,m)、3.6(1H,m)3.4(2H,m)、3.05(1H,m)、2.85(1H,m)、2.2(2H,m)、1.75(2H,m)。電子スプレー質量スペクトラムM−H(m/z)2105。
【0064】
実施例11.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(5−ヒドロキシ−3−オキサ−ペンチル)チオ−γ−シクロデキストリン
【0065】
【化17】

【0066】
2−(2−メルカプトエトキシ)エタノール(1.4g、11.6mmol)をDMF(20ml)に溶解して、窒素雰囲気下、室温で攪拌を開始した。次にペル−6−ブロモ−γ−シクロデキストリン(2g、1.12mmol)および炭酸セシウム(3.2g、9.86mmol)を加えて、生じた懸濁液を窒素雰囲気下、60℃で一晩攪拌した。室温まで冷却して、懸濁液をアセトン(200ml)に注いで、不溶物をろ過により単離し、アセトン(×3)で洗浄し、減圧乾燥した。粗製物を脱イオン水(20ml)に溶かして透析(10時間)した。透析膜の内容物を減圧濃縮して1gの所望の生成物をクリーム色固体として得た。
【0067】
H NMR(DO,400MHz):δ2.81.3.00(m,24H)、3.21〜3.31(d,8H)、3.49(t,8H)、3.55〜3.75(m,56H)、3.82(t,8H)、3.89(t,8H)、5.11(d,8H)。ESI−MS:2175(M−H)
実施例12.
6−ペル−デオキシ−6−ペル[(2(2−カルボキシベンゾイル)アミノ)エチル]チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0068】
【化18】

【0069】
ペル−6−メルカプト−γ−シクロデキストリン(1g、0.7mmol;実施例17参照)をDMF(10ml)に溶かし、窒素雰囲気下、室温で攪拌を開始した。N−(2−ブロモエチル)フタールイミド(1.57g、6.17mmol)および炭酸セシウム(2g、6.17mmol)を加えて、生じた懸濁液を窒素雰囲気下、60℃で一晩攪拌した。室温に冷却後、DMFを減圧留去し、激しく攪拌しながら水(100ml)を加えた。沈殿物をろ過により単離し、水(×3)で洗浄し、減圧乾燥して1.67gのクリーム色固体を得た。次に水酸化ナトリウム水(1M、20ml)を粗製生成物(600mg)に加えて生じた溶液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。次いでpHが一定になるまで脱イオン水によりこの溶液を透析して、透析膜の内容物を減圧濃縮して500mgの所望の生成物をガラス状固体として得た。
【0070】
H NMR(DO,400MHz):δ2.76〜2.96(m,24H)、3.10〜3.30(m,8H)、3.35〜3.62(m,32H)、3.78〜3.95(m,16H)、5.02(d,8H)、7.30〜7.62(m,32H);ESI−MS:1477(M−2H)2−
実施例13.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(2−ヒドロキシエチル)チオ−γ−シクロデキストリン
【0071】
【化19】

【0072】
2−メルカプトエタノール(10.85g、10当量)のDMF(500ml)攪拌溶液に、窒素雰囲気下、60%オイル分散水素化ナトリウム(11.7g、21当量)を30分かけて少量づつ加えた。この混合液を室温で90分間攪拌した。ペル−6−デオキシ−6−ペル−ブロモ−γ−シクロデキストリン(25.0g)を加えて、この混合液を70℃で24時間加熱した。該混合液を室温まで冷却して、水(50ml)の添加によりクエンチしてから低体積まで蒸発させた。残渣を水(100ml)に溶かし、1:1メタノール/アセトン(500ml)に注いだ。形成した固体をろ過により採取し、水(500ml)に溶かして外側の水を4回代えて透析(MWCO1000)した。内部溶液を低体積まで蒸発し、熱湯から再結晶して標題化合物(8.5g)を白色交差形結晶として得た。
【0073】
H NMR(400MHz;DMSO)δ5.91(16H,br s,2,3−OH)、4.92(8H,s,1−H)、4.71(8H,t,J 4.4Hz,SCHCHOH)、3.75[8H,t,J 8.0Hz,3−H(または5−H)]、3.60〜3.50[24H,m,5−H(or 3−H),SCHCHOH]、3.40〜3.30(16H,m,4−H,2−H)、3.08(8H,d,J 13.6Hz,6−H)、2.82(8H,dd,J13.6,6.8Hz,6−H)、2.66(16H,t,J 6.8Hz,SCHCHOH);[M−H]としてm/z(電子スプレー)1775.4、C6411240 M 1776.45の計算値。
【0074】
同様の方法によるこの化合物の調製は、以前に公表されている:J.Chem.Soc.、Chem.Commun.、203(1993)。
【0075】
実施例14.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(N−メチルアミドメチル)チオ−γ−シクロデキストリン
【0076】
【化20】

【0077】
N−メチルメルカプトアセトアミド(0.58g、10当量)のDMF(30ml)攪拌溶液に、窒素雰囲気下、60%オイル分散水素化ナトリウム(0.22g、10当量)を30分かけて少量づつ加えた。この混合液を室温で30分間攪拌した。ペル−6−デオキシ−6−ペル−ブロモ−γ−シクロデキストリン(1.0g)を加えて、この混合液を60〜70℃で48時間加熱した。該混合液を室温まで冷却して、水(20ml)の添加によりクエンチしてから低体積まで蒸発させた。残渣溶液をエタノール(100ml)に注いだ。形成した固体をろ過により採取し、水(200ml)に溶かして4回外側の水を代えて透析(MWCO1000)した。内部溶液を低体積まで蒸発させ、エタノール(100ml)に注いだ。沈殿物をろ過により採取し、減圧乾燥して標題化合物(0.55g)を白色固体として得た。
【0078】
H NMR(400MHz;DO)δ5.29(8H,d,J 4.0Hz,1−H)、4.10(8H,br t,J9.6Hz,5−H)、4.05(8H,t,J 9.8Hz,3−H)、3.83(8H,dd,J 10.0,3.6Hz,2−H)、3.74(8H,t,J 9.2Hz,4−H)、3.58〜3.49[16H,AB系,SCHC(O)NHCH]、3.36(8H,br d,J12.8Hz,6−H)、3.07(8H,dd,J 14.0,8.4Hz,6−H)、2.94(24H,s,SCHC(O)NHCH);[M−H]としてm/z(電子スプレー)1991.7、C7212040 M 1992.54の計算値。
【0079】
実施例15.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(2−カルボキシプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0080】
【化21】

【0081】
水素化ナトリウム(オイル中60%)(0.44g)を、ジメチルホルムアミド(25ml)中の3−メルカプト−2−メチル−プロピオン酸メチル(1.474g;J.Med.Chem.、1994、1159)に加えた。30分後、ジメチルホルムアミド(25ml)に溶かしたペル−6−デオキシ−ペル−6−ブロモ−γ−シクロデキストリン(2.25g)を加えた。ヨウ化ナトリウムの結晶を加えた混合物を75℃で一晩加熱した。溶媒を留去し、残渣をメタノールから結晶化させてメチルエステル体(1.3g)を得た。質量スペクトラム(M−H)2224;
H NMR(dmso D):δ1.41(d,24H)、2.68(m,16H)、2.80(m,16H)、3.00(m,8H)、3.61(3,24H)、3.79(m,8H)、4.95(s,8H)。
【0082】
次にこの生成物を水酸化ナトリウム溶液(M、13ml)と共に一晩攪拌した。生じた混合物をろ過し、中性になるまで透析して蒸発乾固して標題化合物(1.13g)を得た。質量スペクトラム(M−H)2112;
H NMR(DO):δ1.15(d,24H)、2.5(m,8H)、2.65(m,8H)、2.8〜3.1(m,24H)、3.65(m,16H)、4.0(m,16H)、5.2(s,8H)。
【0083】
実施例16.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(3−カルボキシプロピル)チオ−β−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0084】
【化22】

【0085】
ペル−6−デオキシ−ペル−6−ブロモ−β−シクロデキストリン(2.25g)、4−メルカプト酪酸メチル(1.7g;Tetrahedron1998、2652)、炭酸セシウム(4.24g)およびジメチルホルムアミド(25ml)を一緒に、3日間攪拌し加熱した。この混合物を冷却し、水に注ぎ、ろ過した。固体をメタノールで洗浄し乾燥した(2.1g)。これを水酸化ナトリウム溶液(M、21ml)と共に一晩攪拌し、ろ過し、ろ液を中性になるまで透析した。これを蒸発乾固して標題化合物(1.7g)を得た。質量スペクトラム(M−H)1848.8。H NMR(DO):δ1.75(m,16H)、2.15(m,16H)、2.6(m,16H)、2.85(m,8H)、3.05(m,8H)、3.55(m,16H)3.87(m,16H)、5.07(s,8H)
実施例17.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(2−スルホエチル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0086】
【化23】

【0087】
A:ペル−6−デオキシ−ペル−6−チオ−γ−シクロデキストリン
ペル−6−デオキシ−ペル−6−ブロモ−γ−シクロデキストリン(20g)、チオ尿素(13.5g)およびジメチルホルムアミド(100ml)を一緒に、65℃で3日間加熱し、エタノールアミン(20ml)を加えて、加熱を2時間続けた。この混合物を冷却し、氷水で希釈して生成物を遠心分離した。固体を水で2回洗浄、65℃で減圧乾燥してチオール体(7.34g)を得た。質量スペクトラム(M−H)1424。
【0088】
H NMR(dmso D):δ2.82(m,8H)、3.20(d,8H)、3.35(m,16H)、6.65(t,8H)、7.75(t,8H)、5.0(s,8H)。
【0089】
B:6−ペル−デオキシ−6−ペル(2−スルホエチル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
上記のペル−チオール(1g)、2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム塩(1.42g)、炭酸セシウム(2.2g)およびジメチルホルムアミド(10ml)を一晩64℃で攪拌し加熱した。大部分の溶媒を減圧留去し、残渣を水に溶解した。重曹水(5重量%、5ml)を加えた溶液を水で3回透析した。この溶液を蒸発乾固して、残渣を重曹水(10ml)に溶かし、前記のように透析して蒸発させた。この方法を繰返して得た固体を少量の水に溶かし、生成物をメタノールにより沈殿させた。これを水に溶かし、蒸発乾固して標題化合物を得た(1.18g)。
【0090】
H NMR(DO):δ3.9(m,24H)、3.2(m,24H)、3.55〜3.65(m,16H)、3.9(m,8H)4.05(m,8H)、5.15(s,8H)
実施例18.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシ−プロピル)チオ−γ−シクロデキストリン
【0091】
【化24】

【0092】
ペル−6−デオキシ−ペル−6−チオ−γ−シクロデキストリン(500mg;実施例17)、3−ブロモ−2,2−ジヒドロキシメチルプロパノール(670mg)、炭酸セシウム(550mg)およびジメチルホルムアミド(10ml)を、LCMSが所望の生成物への変換を示すまで、65℃で35日間加熱攪拌した。この混合液を蒸発乾固して、水に溶かし、水に対して透析し、低体積まで蒸発させ、アセトンにより沈殿させた。減圧乾燥により標題化合物(550mg)を得た。質量スペクトラムFIA(M−H)2369。
【0093】
H NMR(DO):δ2.84(m,16H)、3.15(m,8H)、3.24(m,8H)、3.69(s,64H)、3.85〜4.19(m,16H)、5.25(s,8H)。
【0094】
実施例19.
6−ペル−デオキシ−6−ペル(3−(テトラゾール−5−イル)プロピル)チオ−γ−シクロデキストリン、ナトリウム塩
【0095】
【化25】

【0096】
ペル−6−デオキシ−ペル−6−チオ−γ−シクロデキストリン(1g)、4−ブロモブチロニトリル(1g)、炭酸セシウム(1g)およびジメチルホルムアミド(10ml)を一緒に、週末の間60℃で攪拌した。この混合物を冷却し、水を加え、沈殿物を遠心分離した。洗浄および乾燥後、ペル−ブチロニトリル(1.4g)を得た。この生成物(1g)、アジ化ナトリウム(1.3g)、塩酸トリエチルアミン(2.8g)およびジメチルホルムアミド(13ml)を一緒に、100℃で7日間攪拌した。この混合物を冷却し、水で希釈し、酸性にして沈殿物をろ過した。これを水で洗浄、メタノールで音波処理、遠心分離、乾燥して、水酸化ナトリウム液(M、10ml)に溶かし、ろ過して中性になるまで透析した。この溶液を蒸発乾固して標題化合物(600mg)を得た。質量スペクトラム(M−2H)1152.8。
【0097】
H NMR(DO):δ1.95(m,16H)、2.55(m,16H)、2.85(m,24H)、3.05(d,8H)、3.5(m,8H)、3.6(m,8H)、3.9(m,16H)、5.06(s,8H)。
【0098】
実施例20.
麻酔モルモットにおけるインビボ神経遮断の拮抗
オスDunkin−Hartleyモルモット(体重:600〜900kg)を10mg/kgペントバルビトンおよび1000mg/kgウレタンの腹腔内注射により麻酔した。気管切開後、このモルモットをハーバード小型動物呼吸器を用いて人工呼吸にかけた。動脈血圧の連続的モニタリングと血液ガス分析用の血液試料採取のため頚動脈内にカテーテルを入れた。心拍数は血圧信号から導出した。座骨神経を刺激し(Grass S88 スティミュレーターを用い、超最高電圧で0.5ms持続の直角パルスを10秒間隔(0.1Hz)で)、およびM.腓腹筋収縮力を、Grass FT03力置換変換器を用いて測定した。収縮率、血圧および心拍数を多チャネルGrass 7Dレコーダーに記録した。カテーテルを両方の頚動脈に入れた。1本のカテーテルは、神経筋遮断剤の連続注入のために用いた。神経筋遮断剤の注入速度は、85〜90%の定常状態の遮断が得られるまで増加した。他方のカテーテルは拮抗薬の増用量投与のために用いられた。神経筋遮断剤の連続注入の間、拮抗剤濃度を増加した単回投与がなされた。実験の終了時に、筋収縮力の測定値を拮抗剤濃度に対してプロットし、回帰分析法を用いて50%拮抗濃度が計算された。実施例1〜19の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体の筋弛緩剤臭化ロクロニウム(Roc)により誘導された神経筋遮断に対する回復結果を表1に示す。比較のために、親化合物のβ−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンのの拮抗活性も同様に挙げてある。
【0099】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

[式中、mは0〜7およびnは1〜8およびm+n=7または8であり;
Rは、場合によっては1〜3個のOH基で置換された(C1〜6)アルキレン、または(CH−フェニレン−(CHであり;
oおよびpは、独立して0〜4であり;
Xは、COOH、CONHR、NHCOR、SOOH、PO(OH)、O(CH−CH−O)−H、OHまたはテトラゾール−5−イルであり;
は、Hまたは(C1〜3)アルキルであり;
は、カルボキシフェニルであり;
qは、1〜3である]
を有する6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体又は製剤上許容し得るその塩類であって、;
但し、6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−ヒドロキシエチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(2−ヒドロキシエチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−ヒドロキシエチルチオ)−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(カルボキシメチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6−モノ−デオキシ−6−モノ−(カルボキシメチルチオ)−β−シクロデキストリン;
6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ビス[(o−カルボキシフェニル)チオ)]−β−シクロデキストリン;
6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ビス(カルボキシメチルチオル)−β−シクロデキストリン;および
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2,3−ジヒドロキシプロピルチオ)−β−シクロデキストリンを除く、前記6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体、または製剤上許容し得るその塩類。
【請求項2】
R、mおよびnが請求項1に定義されるとおりであり、Xは、COOHまたはSOOHである請求項1に記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体;または製剤上許容し得るその塩。
【請求項3】
mは0であり;nは8であり;Rは(C1〜6)アルキレンまたは(CH−フェニレン−(CHであり;oおよびpは独立して0〜4であり;およびXは、COOHまたはSOOHである請求項1に記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体;または製剤上許容し得るその塩。
【請求項4】
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−カルボキシエチル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(3−カルボキシプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシフェニル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシフェニルメチル)チオ−γ−シクロデキストリン;
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−カルボキシプロピル)チオ−γ−シクロデキストリン;および
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(2−スルホエチル)チオ−γ−シクロデキストリン;
から選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体または製剤上許容し得るその塩。
【請求項5】
治療に使用するための請求項1の一般式Iに記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体。
【請求項6】
薬物誘導神経筋遮断を回復する医薬の製造のための請求項1の一般式Iに記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体の使用。
【請求項7】
(a)神経筋遮断薬および(b)請求項1の一般式Iに記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体を含む、神経筋遮断およびその回復を提供するキット。
【請求項8】
神経筋遮断薬が、ロクロニウム、ベクロニウム、パンクロニウム、ラパクロニウム、ミバクリウム、(シス)アトラクリウム、ツボクラリンおよびスキサメトニウムから成る群から選ばれる請求項6に記載のキット。
【請求項9】
神経筋遮断薬が、ロクロニウムである請求項7に記載のキット。
【請求項10】
製剤上許容し得る補助剤と混合した、一般式I:
【化2】

[式中、mは0〜7およびnは1〜8およびm+n=7または8であり;
Rは、場合によっては1〜3個のOH基で置換された(C1〜6)アルキレン、または(CH−フェニレン−(CHであり;
oおよびpは、独立して0〜4であり;
Xは、COOH、CONHR、NHCOR、SOOH、PO(OH)、O(CH−CH−O)−H、OHまたはテトラゾール−5−イルであり;
は、Hまたは(C1〜3)アルキルであり;
は、カルボキシフェニルであり;
qは、1〜3である]
を有する6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体;
または、製剤上許容し得るその塩を含んで成る医薬組成物。
【請求項11】
患者における薬物誘導神経筋遮断の回復方法であって、請求項1の一般式Iに記載の6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体の有効量を前記患者に非経口的に投与することを含んで成る方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−ペル−デオキシ−6−ペル−(4−カルボキシメチルフェニル)チオ−γ−シクロデキストリンまたは製剤上許容し得るその塩。
【請求項2】
一般式I:
【化1】

[式中、mは0〜7およびnは1〜8およびm+n=7または8であり;
Rは、場合によっては1〜3個のOH基で置換された(C1〜6)アルキレン、またはフェニレンであり;
Xは、COOH、CONHR、NHCOR、SOOH、O(CH−CH−O)−H、OHまたはテトラゾール−5−イルであり;
は、Hまたは(C1〜3)アルキルであり;
は、カルボキシフェニルであり;
qは、1〜3である]
を有する6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体または製剤上許容し得るその塩の、非脱分極性神経筋遮断薬で誘導された神経筋遮断の回復用薬剤の製造における使用。
【請求項3】
(a)非脱分極性神経筋遮断薬および(b)請求項2に記載の一般式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体を含む、神経筋遮断およびその回復を提供するキット。
【請求項4】
神経筋遮断薬がロクロニウム、ベクロニウム、パンクロニウムおよびラパクロニウムから成る群から選ばれ、請求項2に記載の一般式Iの6−メルカプト−シクロデキストリン誘導体が6−メルカプト−γ−シクロデキストリン誘導体(m+n=8)である、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
神経筋遮断薬がロクロニウムである、請求項3に記載のキット。

【公開番号】特開2006−348301(P2006−348301A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−195089(P2006−195089)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【分割の表示】特願2001−541070(P2001−541070)の分割
【原出願日】平成12年11月23日(2000.11.23)
【出願人】(394010986)アクゾ・ノベル・エヌ・ベー (31)
【Fターム(参考)】