説明

6軸力計測装置、及び6軸力計測方法

【課題】製作や小型化が容易であり、物体との接触面に柔軟性を持ち、更に柔軟素材が持つ複雑な応力歪み特性に依存せずに6軸力の計を測可能とする6軸力計測装置及びそのシステムを提供する。また、他の光学式触覚センサへ応用し、光学式触覚センサ自体の機能を失わずに同時に6軸力の計測が可能になるような、力学量計測装置及びそのシステムを提供する。
【解決手段】6軸力計測装置1は、タッチパッド3の他に、形状抽出手段としてのCCDカメラ4及び照明5と、圧力抽出手段としての圧力センサ10あるいは圧縮性流体19及び箱20を備える。CPU15は、CCDカメラ4によって撮影された画像から膜6の形状及び膜6の端に作用する張力の方向を抽出し、膜6の形状から物体W1が膜6に接触していない非接触領域を抽出する。さらに、CPU15は圧力センサ10からのアナログ信号を入力し、液体11の圧力を抽出する。最後にCPU15は、これらの情報から板7に作用する(任意の軸方向の力及びモーメント)6軸力を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6軸力計測装置、6軸力計測方法、6軸力計測システム、光学式触覚センサ、力学量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボット事業において、人と協調し、環境に適応できる自律型ロボットの開発に力を注がれ、その実用化も少しずつ近づいている。産業用ロボットとは異なり、ロボットが自律して行動するためには、人と同様に環境を認識する能力が必要となり、触覚センサの開発が数多く進められている。中でも、ロボットが対象物と接触した際の接触力を計測するタイプのセンサは最も多く存在し、その原理は抵抗式、静電容量式、圧電式、超音波式等、様々である。しかし、これらの原理のセンサは、多数の素子を接触表面に配列するものが多く、構造の簡易化や小型化が困難であり、ロボットに搭載する上で課題を多く残している。
【0003】
一方で、接触表面を弾性体で構成し、弾性体の変形情報から接触力の情報を取得するセンサも存在する。多くの素子を必要としないため、構造の簡略化や小型化をする上で有利であり、さらに、接触表面が弾性体であるため、周囲の環境や接触物に対して馴染み易いことは大きな利点と考えられる。例えば、平面形状を持つ接触表面の弾性体内部に二層のマーカを設け、そのマーカを撮像手段で撮影することで、マーカの位置情報から三軸力分布を取得するセンサが開発されている。(例えば、特許文献1参照)また、接触部が複数の柱状の突起が設けられた弾性体で構成され、対象物が接触することで弾性体が内部のアクリル板と接触し、板内部に照射される光の散乱現象を撮像手段で撮影し解析することで、三軸力分布を取得するセンサが開発されている。(例えば、特許文献2参照)他にも、対象物の接触によって変形する弾性体膜を、数種類の色を持つ光を照射し撮像手段で撮影することで、弾性体膜の変形状態を抽出し接触力の大きさや方向を算出するセンサも存在する。(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2005/029028広報
【特許文献2】特開平7−128163号広報
【特許文献3】特開2009−145085号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記で述べたセンサは、接触力の計測は可能であるものの、法線力やせん断力のみの計測に限定し、モーメントの計測を考慮していないものも多い。ロボットが周囲の環境をより正確に認識するためには、多次元の力情報を取得可能なセンサであることが望ましい。また、多くの素子を接触表面に使用するセンサや、弾性体表面の内部に比較的固い板が配置されている構造のセンサ(例えば、特許文献2参照)の殆どは、対象物の接触に対して接触表面が十分に変形することが困難であり、すなわち対象物に馴染みにくい構造を持つ。例えば、ロボットの指のように対象物との安定した接触状態を要求される分野へセンサを適用する場合、十分な接触領域を確保できないため困難であると言える。
【0006】
接触表面の弾性体の変形情報を利用するセンサの場合、これらの問題を解決できる可能性があるが、弾性体の変形情報から力の情報を取得する方法に問題が生じる場合が多い。弾性体の応力と歪みの関係は一般に解析が複雑であるため、応力と歪みの間に線形関係を仮定する手法や、予め取得した変形情報と力の情報から、実験的に応力と歪みの関係を推定する手法があるが、これらの手法では弾性体が大変形や複雑な変形を生じた場合に、使用した応力・歪み関係が本来の関係から離れていき、計測精度が悪化してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、対象物との接触部分を弾性体で構成することで対象物に対して馴染み易い構造を実現し、弾性体の変形情報から力の情報を取得する際に、応力と歪みの関係の使用しないことで弾性体の持つ複雑な変形特性の影響を受けにくい手法を使用し、さらに対象物の形状に依存せず6軸方向の力の計測を可能とする、6軸力計測装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、従来の触覚センサの能力を備えたまま、同時に6軸力の計測を可能とする新しい触覚センサ、力学量計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜(6)と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を固定する部材(7、8)と、前記膜の形状を抽出する形状抽出手段(4、5、11)と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側の空間の圧力を抽出する圧力抽出手段(10、19、20)とを含む6軸力計測装置をその要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の発明によると、変形可能な膜と、それを保持する部材と、形状抽出手段と、圧力抽出手段の4つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の6軸力計測装置よりも容易に応用可能となる。
【0010】
また、対象物との接触部である膜は、対象物の形状に応じて変形可能であるため、対象物に馴染みやすいことが挙げられる。したがって、対象物との安定した接触の維持や対象物を傷つけない接触が可能となる。
【0011】
なお、「変形可能な膜」は、シリコ−ンゴムなどのシリコ−ン樹脂から形成されることが好ましいが、他のゴム類やエラストマ−などの他の弾性体から形成されていてもよい。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記膜と前記部材が、前記膜の対象物が接触する側とは反対側に前記膜と前記部材で構成される閉空間を有することをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項2に記載の発明によると、前記膜と前記部材が、前記膜と前記部材で構成される閉空間を有するため、前記圧力抽出手段によって圧力を抽出する際に、閉空間であれば抽出が比較的容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記圧力抽出手段が、任意の時点の前記閉空間の圧力を求める際に、前記任意の時点における前記閉空間の体積と、前記任意の時点よりも前の時点における前記閉空間の圧力と体積を利用し、それらの物理量を含んだ関数から前記任意の時点における前記閉空間の圧力を抽出することをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項3に記載の発明によると、前記圧力抽出手段によって圧力を抽出する際に、圧力センサなどの専用の装置が不要となる。従って、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記閉空間の体積が、前記膜の形状から求めた体積であることをその要旨とする。
従って、請求項4に記載の発明によると、前記閉空間の体積を前記膜の形状から求めることが可能なため、前記閉空間の体積を求めるための手段や装置を新たに必要としない。従って、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記閉空間の体積が、前記閉空間の一部あるいは全てを撮像手段(4)で撮影することによって抽出した体積であることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項5に記載の発明によると、前記閉空間の体積を撮像手段で撮影することによって抽出可能なため、比較的小型な装置によって実現される。従って、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
【0018】
「撮像手段」としては、画像情報を電気信号として出力するカメラを用いることが好ましく、特にデジタルカメラを用いることが好ましい。ここで、「デジタル式カメラ」としては、CCDカメラや、C−MOS式イメ−ジセンサを用いたデジタルカメラなどが挙げられる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、請求項1〜5のいずれか1項に記載の6軸力計測装置を利用して、前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを計測する方法であって、前記形状抽出手段によって前記膜の形状を抽出するステップと、前記圧力抽出手段によって前記膜の対象物が接触する側とは反対側の空間の圧力を抽出するステップと、前記膜の形状から前記膜をいくつかの要素に分割するステップと、一つあるいは複数の前記要素に対して力学量に関する式を導出するステップと、前記力学量に関する式と前記反対側の空間の圧力から前記膜に作用する張力を求めるステップと、前記膜に作用する張力と前記反対側の空間の圧力から前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメント抽出するステップとを含むことをその要旨とする。
【0020】
従って、請求項6に記載の発明によると、前記形状抽出手段によって前記膜の形状を抽出し、次に前記圧力抽出手段によって前記膜の対象物が接触する側とは反対側の空間の圧力を抽出し、さらに前記膜の形状から前記膜をいくつかの要素に分割し、それを用いて一つあるいは複数の前記要素に対して力学量に関する式を導出した後に、前記力学量に関する式と前記反対側の空間の圧力から前記膜に作用する張力を求め、最後に前記膜に作用する張力と前記反対側の空間の圧力から前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを抽出する。即ち、単純な装置と手段によって6軸力の計測が可能となり、リアルタイムでの6軸力計測が可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記力学量に関する式が、前記要素に作用する力及びモーメントのつり合いの式であることをその要旨とする。
従って、請求項7に記載の発明によると、前記力学量に関する式が、前記要素に作用する力及びモーメントのつり合いの式であるため、前記膜が有する複雑な応力歪み関係を使用としない。したがって、前記膜が大変形や複雑な変形をしても、計測精度を保持したまま計測可能である。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7において、前記力学量に関する式が、非接触領域抽出手段によって抽出した前記膜が対象物に接触していない非接触領域に関する情報を用いて求めた式であることをその要旨とする。
【0023】
従って、請求項8に記載の発明によると、前記力学量に関する式が、非接触領域抽出手段によって抽出した前記膜が対象物に接触していない非接触領域に関する情報を用いて求めた式であるため、本来前記力学量に関する式は、前記膜に対して前記膜の張力及び圧力のみを考慮し、対象物の接触によって生じる接触力の影響が問題となるが、その影響を防ぐことが可能となる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか1項において、前記力学量に関する式が、張力方向抽出手段によって求めた前記膜に作用する張力方向に関する情報を用いて求めた式であることをその要旨とする。
【0025】
従って、請求項9に記載の発明によると、前記力学量に関する式が、張力方向抽出手段によって求めた前記膜に作用する張力方向に関する情報を用いて求めた式であるため、実際に前記膜に作用している張力の挙動をより正確に考慮することが可能となる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9のいずれか1項において、前記非接触領域抽出手段が、前記膜と前記部材の接触部からある距離以内に含まれる領域を前記非接触領域とすることをその要旨とする。
【0027】
従って、請求項10に記載の発明によると、前記非接触領域抽出手段が、前記膜と前記部材の接触部からある距離以内に含まれる領域を前記非接触領域とするため、このような条件を設けることで、前記非接触領域の抽出を簡略化することが可能となる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、請求項6〜10のいずれか1項において、前記張力方向抽出手段が、前記膜にマーカ(12)を設け、前記マーカの位置情報から前記張力方向に関する情報を抽出する手段であることをその要旨とする。
【0029】
従って、請求項11に記載の発明によると、前記膜に設けられたマーカによって、前記膜に作用する張力方向を抽出可能であるため、複雑な装置や手段を必要とせず比較的容易な方法で実現できる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、請求項6〜11のいずれか1項において、前記マーカの位置情報が、前記マーカを撮像手段で撮影することによって抽出した前記マーカの位置情報であることをその要旨とする。
【0031】
従って、請求項12に記載の発明によると、前記マーカの位置情報を撮像手段で撮影することによって抽出可能であるため、比較的小型な装置によって実現される。従って、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
【0032】
「撮像手段」としては、画像情報を電気信号として出力するカメラを用いることが好ましく、特にデジタルカメラを用いることが好ましい。ここで、「デジタル式カメラ」としては、CCDカメラや、C−MOS式イメ−ジセンサを用いたデジタルカメラなどが挙げられる。
【0033】
請求項13に記載の発明は、対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を固定する部材と、前記膜の形状を抽出する形状抽出手段と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側の空間の圧力を抽出する圧力抽出手段とを含む6軸力計測装置と、前記膜の形状を抽出する前記形状抽出手段と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側の空間の圧力を抽出する前記圧力抽出手段と、前記膜の形状から前記膜をいくつかの要素に分割するステップと膜要素分割手段と、一つあるいは複数の前記要素に対して力学量に関する式を導出する力学式導出手段と、前記力学量に関する式と前記反対側の空間の圧力から前記膜に作用する張力を求める張力抽出手段と、前記膜に作用する張力と前記反対側の空間の圧力から前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを抽出する6軸力抽出手段とを備えることを特徴とする6軸力計測装置を利用した6軸力計測システムをその要旨とする。
【0034】
従って、請求項13に記載の発明によると、前記形状抽出手段によって前記膜の形状を抽出し、次に前記圧力抽出手段によって前記膜の対象物が接触する側とは反対側の空間の圧力を抽出し、さらに前記膜の形状から前記膜をいくつかの要素に分割し、それを用いて一つあるいは複数の前記要素に対して力学量に関する式を導出した後に、前記力学量に関する式と前記反対側の空間の圧力から前記膜に作用する張力を求め、最後に前記膜に作用する張力と前記反対側の空間の圧力から前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを抽出する。即ち、単純な装置と手段によって6軸力の計測が可能となり、リアルタイムでの6軸力計測が可能となる。
【0035】
請求項14に記載の発明は、前記6軸力計測装置が備える前記膜(接触部)の対象物が接触する側とは反対側に配置されたマーカ部と、前記膜に対象物が接触した際の前記マーカ部の挙動を撮影する撮像手段とを備えたことを特徴とする触覚情報抽出手段と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の6軸力計測装置からなる光学式触覚センサをその要旨とする。
【0036】
従って、請求項14に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカ部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の6軸力計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカ部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカ部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この6軸力計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま6軸力計測を可能とする装置を実現できる。
【0037】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の光学式触覚センサを利用して、力学量及び前記光学式触覚センサに作用する任意の軸方向の力及びモーメントを計測する方法であって、前記触覚情報抽出手段を用いて力学量を計測するステップと、前記6軸力計測方法を用いて前記光学式触覚センサに作用する任意の軸方向の力及びモーメントを計測するステップとを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量計測方法をその要旨とする。
【0038】
従って、請求項15に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカ部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の6軸力計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカ部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカ部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この6軸力計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま6軸力計測を可能とする方法を実現できる。
【0039】
前記力学量としては、例えば、滑り、摩擦係数、形状、対象物の位置、対象物の姿勢からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
(発明の効果)
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、6軸力計測装置の製作が容易になり、形状計測装置の小型化が容易になる。また,従来の光学式触覚センサのシステムやその他の分野への応用が容易になる。
【0040】
請求項2に記載の発明によれば、前記圧力抽出手段によって圧力を抽出する際に、閉空間であるため抽出が比較的容易となる。
請求項3に記載の発明によれば、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
【0041】
請求項4に記載の発明によれば、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
請求項6に記載の発明によれば、単純な装置と手段によって6軸力の計測が可能となり、リアルタイムでの6軸力計測が可能となる。
【0042】
請求項7に記載の発明によれば、前記膜が大変形や複雑な変形をしても、計測精度を保持したまま計測可能である。
請求項8に記載の発明によれば、前記力学量に関する式に対して、対象物の接触によって生じる接触力の影響を防ぐことが可能となる。
【0043】
請求項9に記載の発明によれば、実際に前記膜に作用している張力の挙動をより正確に考慮することが可能となる。
請求項10に記載の発明によれば、前記非接触領域の抽出を簡略化することが可能となる。
【0044】
請求項11に記載の発明によれば、複雑な装置や手段を必要とせず比較的容易な方法で、前記膜に作用する張力方向を抽出可能である。
請求項12に記載の発明によれば、装置の更なる簡略化や小型化が可能となる。
【0045】
請求項13に記載の発明によれば、単純な装置と手段によって6軸力の計測が可能となり、リアルタイムでの6軸力計測が可能となる。
請求項14に記載の発明によれば、6軸力計測装置及び6軸力計測装置を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま6軸力計測を可能とする方法を装置できる。
【0046】
請求項15に記載の発明によれば、6軸力計測装置及び6軸力計測装置を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま6軸力計測を可能とする方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明における6軸力計測装置を示す全体斜視図。
【図2】圧力センサを用いたタッチパッドの全体斜視図。
【図3】膜が有するマーカ位置を示す図。
【図4】6軸力計測システムの構成を示すブロック図。
【図5】6軸力計測システムによる処理の概略を示すフローチャート。
【図6】張力方向抽出手段における、マーカ位置及びその他の記号を示す図。
【図7】6軸力抽出時における、膜の分割方法とその記号を示す図。
【図8】6軸力抽出時における、一つの膜に作用する張力とその記号を示す全体斜視図。
【図9】6軸力抽出時における、一つの膜に作用する張力とその記号を示す側面図。
【図10】6軸力抽出時における、複数の膜に作用する張力とその記号を示す側面図。
【図11】6軸力抽出時における、膜の端に作用する張力の関係を示す図。
【図12】6軸力抽出時における、膜の端に作用する張力と作用する6軸力の関係を示す図。
【図13】タッチパッドに対して物体がZ軸と平行に接触してきた時の、力のZ軸方向成分を示す図。
【図14】タッチパッドに対して物体がX軸と平行に接触してきた時の、力のX軸方向成分を示す図。
【図15】タッチパッドに対して物体がX軸と平行に接触してきた時の、力のZ軸方向成分を示す図。
【図16】タッチパッドに対して物体がZ軸と平行に接触してきた後にZ軸周りに回転した時の、力のZ軸方向成分を示す図。
【図17】タッチパッドに対して物体がZ軸と平行に接触してきた後にZ軸周りに回転した時の、Z軸周りのモーメントを示す図。
【図18】圧縮性流体及び箱を用いたタッチパッドの全体斜視図。
【図19】膜が有するドットパターンを示す図。
【図20】光学式触覚センサによる処理の概略を示すフローチャート。
【図21】6軸力計測装置の半球状のタッチパッドに対して操作者の指が接触する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[第1の実施形態]
以下、本発明を6軸力計測システムに具体化した第1の実施形態を、図1〜図17に基づき詳細に説明する。
【0049】
図1に示されるように、6軸力計測装置1を構成するケ−シング2の先端側には、平板と半球を接合したような形状を持つタッチパッド3(接触部)が設けられている。ケ−シング2内には、撮像手段としてのCCDカメラ4が配置されている。
CCDカメラ4は、タッチパッド3を中心として、物体W1と接触する側とは反対側に配置されている。
【0050】
ケ−シング2内には、照明5が配置されている。照明5は、タッチパッド3において、物体W1と接触する側とは反対側に配置されている。CCDカメラ4は、タッチパッド3の背面側から撮影するようになっている。
【0051】
図2に示されるように、タッチパッド3は、接触部としての弾性変形可能な膜6、膜6の端が全て密着している光透過性の板7、膜6と板7を固定するための固定具8で構成されており、板7と固定具8で膜6を挟んで固定した状態になっている。
【0052】
膜6は、半球状の部分6aと、その周囲を囲む平板状の部分6bとを備える。半球状の部分6aは、物体W1と接触する側(図1における下側)に突出している。
板7は、膜6における「物体W1と接触する側とは反対側」に位置し、平板状の部分6bと当接しているが、半球状の部分6aとの間には、閉空間が存在する。
【0053】
板7には管9が接続されており、管9の他方の端には圧力抽出手段としての圧力センサ10が接続されている。ここで、膜6、板7、管9、圧力センサ10で囲まれた空間は外気との行き来が遮断された閉空間となり、液体11で満たされている。
【0054】
図2及び図3に示されるように、膜6の物体W1と接触する側とは反対側にはマーカ12が配置されている。
ここで、CCDカメラ4、照明5、液体11は形状抽出手段の一部としての役割を果たしている。したがって、他の形状抽出手段を使用する場合は、CCDカメラ4、照明5、液体11は無くても良い。また、CCDカメラ4、マーカ12は張力方向抽出手段の一部としての役割を果たしている。したがって、他の張力方向抽出手段を使用する場合は、CCDカメラ4、マーカ12は設けなくても良い。
【0055】
CCDカメラ4は、赤、緑、青の3チャンネルのCCDカメラである。2チャンネル以上のカメラであれば良く、CCDカメラでなくC−MOSカメラであっても良い。
照明5は、同軸落射照明(CCS製:LFV−50SW2)を使用した。また、照明5から照射された光が板7で反射した際に、その成分がCCDカメラ4内に進入するのを防ぐために、照明5に偏光板(CCS製:PL−LFV−50SW2)を装着し、CCDカメラ4に偏光フィルタ−を装着した。また、照明5は、光が照射される位置(光源位置)と光が照射される方向が分かるものであれば、他の点光源や面光源であっても良い。
【0056】
膜6の厚さは、膜6の曲げモーメントが計測する力と比較して十分小さくなる程度まで薄くなっていることが望ましい。膜6の形状は物体W1と接触する側から見て半球状であるが、物体W1と接触する側から見て凸形状となっていれば、他の形状であっても良い。そして、タッチパッド3に物体W1が接触していない状態では、膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)には、せん断力は作用していないように膜6を設けている。
【0057】
また、膜6は透明シリコ−ンゴム(信越シリコ−ン製:KE−1950−10)に黒色の着色剤を混ぜて形成した厚さ0.5mmの黒色の膜と、透明シリコ−ンゴム(信越シリコ−ン製:KE−1950−10)に白色の着色剤を混ぜて形成した厚さ0.5mmの白色の膜を張り合わせて形成したものである。従って、膜6は物体W1と接触する側は黒色を有し、その反対側は白色を有する。
【0058】
板7は透明なアクリル板であるが、光透過性であり計測時に変形しない程の硬さを持っていれば他の材質でも良い。
固定具8は金属製にタッチパッドの大きさの円形の穴を空けた板であるが、計測時に変形しない程の硬さを持っていれば他の材質でも良い。
【0059】
管9は、内径2mm、外径4mmのシリコーンゴム製チューブであるが、閉空間の圧力変化に対して大きく変化しないものであれば、他の形状や材質であっても良い。ただし、内径は大きいほど望ましい。圧力センサ10は、ダイアフラム式の圧力変換器で計測範囲がゲージ圧で0Pa〜200kPaの圧力センサを使用したが、他の種類や他の計測範囲を有するセンサであっても良い。
液体11は水道水に赤色顔料(ZEBRA製:JK−05)を溶かした赤色半透明の水であるが、特許文献(特願2010−180928)に適するものであれば、他の材料で構成されていても良い。
【0060】
マーカ12は、半径0.5mm程度の円形であり黒色を有しているが、CCDカメラ4によって撮影した際にその位置情報が取得できるものであれば、他の色や形状を有していても良い。また、マーカ12は膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)に沿って2mm程度離れた位置に等間隔に36個設けられているが、他の個数や間隔で設けられていても良い。
【0061】
図4に示されるように、6軸力計測装置1を備える6軸力計測システム13は、6軸力計測システム13全体を制御する制御部14を備えている。制御部14はCPU15を備えており、CPU15には、ROM16、RAM17及び入出力ポ−ト(I/Oポ−ト)18が接続されている。CPU15は、6軸力計測システム13全体を制御するための各種処理を実行し、その処理結果を所定の制御信号として出力するようになっている。ROM16には、6軸力計測システム13を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。また、RAM17には、6軸力計測システム13の動作に必要な各種の情報が一時的に記憶されるようになっている。さらに、入出力ポ−ト18には、前記CCDカメラ4、前記照明5及び前記圧力センサ10が接続されている。CPU15には、前記タッチパッド3を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報が、入出力ポ−ト18を介して入力されるようになっている。それとともに、CPU15は、照明5を点灯させるための信号を、入出力ポ−ト18を介して照明5に対して出力するようになっている。
【0062】
図4に示されるCPU15は、入出力ポ−ト18を介して一定時間ごと(本実施形態では100msごと)に入力されたCCDカメラ4からの画像情報を画像処理するようになっている。なお、一定時間ごとに取得した画像情報は、RAM17の記憶領域に一定期間記憶されるとともに、古いものから順次消去されるようになっている。また、画像処理ソフトウェアとしては、市販のもの(MVTec社製:HALCON)が用いられている。そして、CPU15は、撮影された画像から膜6の形状及び膜6の端に作用する張力の方向を抽出し、膜6の形状から物体W1が膜6に接触していない非接触領域を抽出する。さらに、CPU15は圧力センサ10からのアナログ信号を入力し、液体11の圧力を抽出する。最後にCPU15は、これらの情報から板7に作用する6軸力を計算し抽出する。即ち、CPU15は、情報抽出手段としての機能を有している。
【0063】
次に、6軸力計測システム13による板7に作用する6軸力の計測方法を説明する。
図5に示されるように、ステップS110においてタッチパッド3が物体W1に接触すると(ステップS110)タッチパッド3を通して撮影した画像の変化で接触を判断する。CPU15は、タッチパッド3の挙動を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報を取り込み(ステップS120)、形状抽出手段を用いて膜6の形状を抽出し(ステップS130)、画像情報から用いてマーカ12の位置情報を算出し、膜6の端に作用する張力の方向を抽出する(ステップS140)。次にCPU15は、取得した膜6の形状情報を用いて非接触領域抽出手段によって物体W1が膜6に接触していない非接触領域を抽出する(ステップS150)そして、CPU15は、圧力センサ10からのアナログ信号を入力し、液体11の圧力を抽出する(ステップS160)。最後にCPU15は、得られた膜6の形状情報、膜6の端に作用する張力の方向、膜6の非接触領域及び膜6と板7の間の空間に作用する圧力情報を基に、板7に作用する6軸力を計算し抽出する(ステップS170)。
【0064】
このように、ステップS110からステップS170までの処理を行うことで、板7に作用する6軸力が計測可能となる。
ここで、撮影された画像から膜6の形状を、単体のカメラを使い、カメラに写る異なる二つチャンネルの光の強度の解析に基づいて抽出する方法(ステップS130)は、特許文献(特願2010−180928)あるいは非特許文献(Y. Ito, Y. Kim , C. Nagai and G. Obinata, “Shape Sensing by Vision-based Tactile Sensor for Dexterous Handling of Robot Hands” In Proceedings of 2020 IEEE Conference on Automation Science and Engineering, Aug, 2010)に記載の形状抽出手段による方法である。
【0065】
また、画像情報から用いてマーカ12の位置情報を算出し、膜6の端に作用する張力の方向を抽出する方法(ステップS140)は以下の通りである。
まず、図6に示すように板7の中心Q1を原点にX、Y、Z軸を定義する。次に、X―Y面上にあり、X軸と2π(i+1/2)/N1(rad)の角を成す軸をU1(i)(i=1,2,...N1)と定義する。ただしN1はマーカ12の個数である。ではそして、膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)とU1(i)軸の交点の位置ベクトルをE(i)と定義する。
タッチパッド3に物体W1が接触していない状態では、タッチパッド3は半球状の形状を保っており、膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)にはせん断力は作用していない。したがって、この状態におけるN1個のマーカ12の位置ベクトルをD1(i)(i=1,2,...N1)と定義し記憶しておく。次に、タッチパッド3に物体W1が接触すると、マーカ12の位置が変化し、この時のマーカ12の位置ベクトルをD2(i)(i=1,2,...N1)と定義する。ここで、各E(i)の位置に作用する張力の方向はベクトル(D1(i)―E(i))に対して∠D1(i)E(i)D2(i)の角を成すものとし、この角をφ1(i)(i=1,2,...N1)とする。さらに、膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)上でE(i)とE(i+1)の間の任意の点D3に作用する張力の方向は、その点からE(i)までの距離をL1(i)とし、その点からE(i+1)までの距離をL2(i)としたとき、その点に作用する張力の方向は、φ1(i)とφ1(i+1)の一次結合として次のように与えられるφ2を用いて表す。
【0066】
φ2=(φ1(i)・L2(i)+φ1(i+1)・L1(i))/(L1(i)+L2(i))(式1)
φ2は、膜6に物体W1が接触していない状態における張力の方向と、物体W1が接触した状態における張力の方向が成す角を表現している。したがって、φ2によって膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)に作用する張力の方向を表すことが出来る。
【0067】
次に、取得した膜6の形状情報を用いて非接触領域抽出手段によって物体W1が膜6に接触していない非接触領域を抽出する方法(ステップS150)は、非特許文献(Y. Ito, Y. Kim , C. Nagai and G. Obinata, “Acquisition of Tactile Information by Vision-based Tactile Sensor for Dexterous Handling of Robot Hands” In Proceedings of IEEE/RSJ 2010 International Conference on Intelligent Robots and Systems, Oct, 2010)に記載の触領域抽出手段を利用し、膜6の形状の物体W1が接触する側から見て凸の領域を非接触領域として抽出する。さらに、膜6上の領域において、Z軸方向に対してδ1以下の範囲の領域も非接触領域として抽出する。本実施例ではδ1=4.62mmとしたが、他の値でも良い。
【0068】
また、圧力センサ10からのアナログ信号を入力し、液体11の圧力を抽出する際に(ステップS160)、液体11の圧力は全領域において一定であると仮定する。すなわち、液体11の体積力は無いものとして扱う。
【0069】
なお、CPU15が得られた膜6の形状情報、膜6の端に作用する張力の方向、膜6の非接触領域及び膜6と板7の間の空間に作用する圧力情報を基に、板7に作用する6軸力を計算し抽出する方法(ステップS170)は以下の通りである。
【0070】
図7に示すように、膜6上に上記で定義したZ軸に対して一定の間隔δ2を持つ等高線を引いていき、それを順にA1(1)、A1(2)、A1(3)、...と定義していく。本実施例ではδ2=0.154mmとしたが、他の値でも良い。次に、X―Y面上にあり、X軸と2πi/N2(rad)の角を成す軸をU2(i)(i=1,2,...N2)と定義する。本実施例ではN2=72としたが、他の値でも良い。そして、膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)とU2(i)軸の交点をB1(i)と定義する。ここで、B1(i)から各A1(i)と垂直に交わるように膜6上に線B2(i)を引いていき、この線B2(i)の傾きのZ方向成分が0になる時の地点をB3(i)とする。また、B3(i)とB3(i+1)を結ぶ線分をA2(i)(i=1,2,...N2−1)と定義し、B3(N2)とB3(1)を結ぶ線分をA2(N2)とする。
【0071】
次に、膜6を複数の要素に分割していく。A1(j)、A1(j+1)、B2(i)、B2(i+1)の4本の線で囲まれた要素をM(i,j)と定義する(ただし、i=N2の場合は、上記の定義においてi+1の代わりに1を挿入する)。ここで、N3(i)を、A2(i)よりもZ軸方向に低い位置にある等高線A1(i)の中で、最もZ軸方向に高い位置にある等高線がA1(N3(i))となるように定義する。そして、A1(N3(i))、A2(i)、B2(i)、B2(i+1)の4本の線で囲まれた要素をM(i,N3(i))と定義する(ただし、i=N2の場合は、上記の定義においてi+1の代わりに1を挿入する)。
【0072】
次に、分割された各要素M(i,j)(i=1,2,...N2)(j=1,2,...N3(i))に対して力の釣り合いの式を立てる。図8に示すように、要素M(i,j)の各辺に作用している張力をF1(i,j)、F1(i,j+1)、F2(i,j)、F2(i+1,j)と定義する。さらに、各要素は十分小さいので、各張力の作用する点は要素M(i,j)の各辺の中点に作用するもの仮定する。
【0073】
ここで、各要素に作用するせん断力を考えると、一般にせん断力は各要素に対して殆ど対称的に作用し、さらに張力F2のせん断成分は構造上作用しにくいので、張力F2のせん断方向は0と近似する。この近似により、張力F2の方向は、等高線A1と平行な方向、すなわちZ軸とは垂直な方向となる。
【0074】
これらの仮定と近似を使用しながら、各要素M(i,j)をU3(i)−Z平面に投影した図9について考える、ただしU3(i)(i=1,2,...N2)はX―Y面上にあり、X軸と2π(i+1/2)/N2(rad)の角を成す軸であると定義する。M(i,j)をU3(i)−Z平面に投影した際、F1(i,j)及びF1(i,j+1)のU3(i)−Z平面成分をそれぞれF3(i,j)及びF3(i,j+1)とし、F2(i,j)及びF2(i+1,j)の合力をF4(i,j)とする。この時、上記の近似によりZ軸とは垂直な方向に作用しているので、F4(i,j)はU3(i)方向成分のみとなる。以上により、Z方向及びU3(i)方向の釣り合いの式はそれぞれ次の(式2)及び(式3)によって与えられる。
【0075】
F3(i,j+1)・sinΘ(i,j+1)=F3(i,j)・sinΘ(i,j)−P・S1(i,j)(式2)
F4(i,j)=F3(i,j)・cosΘ(i,j)−F3(i,j+1)・cosΘ(i,j+1)+P・S2(i,j)(式3)
ここで、Pは膜6と板7の間の空間に作用している圧力であり、S1(i,j)は要素M(i,j)をZ軸に垂直な面に投影した時の面積であり、S2(i,j)は要素M(i,j)をU3(i)軸に垂直な面に投影した時の面積である。Θ(i,j)及びΘ(i,j+1)は、図9に示すように要素M(i,j)の両端の、U3(i)軸に対する角である。また、S1(i,j)、S2(i,j)、Θ(i,j)、Θ(i,j+1)は、形状抽出手段によって得られた膜6の形状情報を基に取得可能であり、圧力Pは圧力センサ10によって取得している。
【0076】
次に、図10に示すように、要素M(i,j)(j=1,2,...N3(i))を組み合わせて一つの要素として考える。ここでN3(i)は、M(i,j)(j=1,2,...N3(i))は物体W1が接触していない非接触領域内の要素であり、M(i,N3(i)+1)は接触領域内の要素であるように定義する。ここで、非接触領域及び接触領域は非接触領域抽出手段を用いて抽出した領域である。図10に示すように、M(i,j)(j=1,2,...N3(i))を結合した要素に関して、Z方向及びU3(i)方向の釣り合いの式はそれぞれ次の(式4)及び(式5)によって与えられる。
【0077】
F3(i,N3(i)+1)・sinΘ(i,N3(i)+1)=F3(i,1)・sinΘ(i,1)−P・(S1(i,1)+S1(i,2)+...+S1(i,N3(i)))(式4)
F4(i,1)+F4(i,2)+...+F4(i,N3(i))=F3(i,1)・cosΘ(i,1)−F3(i,N3(i)+1)・cosΘ(i,N3(i)+1)+P・(S2(i,1)+S2(i,2)+...+S2(i,N3(i)))(式5)
また、(式2)及び(式3)を連立して解くことによって、F4(i,j)(j=1,2,...N3(i))をF3(i,1)と既知数であるP、S1及びΘによって次の(式6)の様に表すことが出来る。
【0078】
F4(i,j)=(sinΘ(i,1)/tanΘ(i,j)−sinΘ(i,1)/tanΘ(i,j+1))・F3(i,1)+P・(1/tanΘ(i,j+1)・(S1(i,1)+S1(i,2)+...+S1(i,j))−1/tanΘ(i,j)・(S1(i,1)+S1(i,2)+...+S1(i,j−1))+S2(i,j))(j=1,2,...N3(i))(式6)
次に、F3(i,N3(i)+1)の作用する点C1を支点として、U3(i)−Z面上でのモーメントの釣り合いを考える。モーメントの釣り合いを導出するために、要素に作用する各力の作用点と点C1までの距離を求める必要がある。F4(i,j)(j=1,2,...N3(i))はZ軸に対して垂直であり、要素M(i,j)の辺の中点に作用していると上記で近似したので、F4(i,j)の作用点から点C1までの距離L3(i,j)は次の(式7)のように与えられる。
【0079】
L3(i,j)=δ2・(N3(i)−i+1/2)(式7)
(式7)より、点C1を支点としたU3(i)−Z面上でのモーメントの釣り合いは、次の(式8)で与えられる。
L4(i,j)・F5(i,1)=(L3(i,1)・F4(i,1)−L5(i,1)・P・S1(i,1)−L6(i,1)・P・S2(i,1))+(L3(i,2)・F4(i,2)−L5(i,2)・P・S1(i,2)−L6(i,2)・P・S2(i,2))+...+(L3(i,N3(i))・F4(i,N3(i))−L5(i,N3(i))・P・S1(i,N3(i))−L6(i,N3(i))・P・S2(i,N3(i)))(式8)
ここで、F5(i,1)はスカラーであるF3(i,1)にその方向も含めたベクトルであり、L4(i,j)は点C1からF5(i,1)の作用点までのベクトルである。L5(i,j)は点C1から要素M(i,j)の重心位置までのU3(i)方向成分の距離であり、L6(i,j)は点C1から要素M(i,j)の重心位置までのZ方向成分の距離である。L4(i,j)、L5(i,j)及びL6(i,j)は、形状抽出手段によって得られた膜6の形状情報を基に取得可能であり、F5(i,1)はF3(i,1)と膜6の形状情報を基に取得可能である。
【0080】
以上の導出により、(式4)、(式5)、(式6)、(式8)を連立することで、膜6の端に作用する張力であるF5(i,1)(i=1,2,...N2)を代数的に求めることが出来る。ただし、F5(i,1)(i=1,2,...N2)は膜6の端に作用する張力のU3(i)−Z面上成分であり、すなわちせん断方向成分が含まれていない。ここで、図11に示すように、膜6の端(膜6と固定具8の接触部分の境界)に作用する張力の方向を表すφ2を利用することで、せん断方向の張力ベクトルF6(i)の大きさは次の(式9)のように与えられるものとする。
【0081】
F6(i)=(F3(i,1)・cosΘ(i,1)・tanφ3)(式9)
ただし、φ3は角φ2をX−Y面上に投影した時の角度である。さらに、張力ベクトルF6(i)の方向はU3(i)軸とZ軸に垂直であると仮定する。したがって、せん断方向成分も含んだ膜6の端に作用する張力ベクトルF7(i)が、次の(式10)のように表される。
【0082】
F7(i)=F5(i,1)+F6(i)(式10)
最後に、導出された膜6の端に作用する張力ベクトルF7(i)(i=1,2,...N2)と、圧力Pを用いて、板7の中心Q1作用するに6軸力を計算し抽出する。
【0083】
F8=F7(1)+F7(2)+...+F7(N2)+P・S3(式11)
M1=L7(1)・F7(1)+L7(2)・F7(2)+...+L7(N2)・F7(N2)(式12)
ここで、F8は板7の中心Q1作用する力ベクトル(X、Y、Z軸方向成分)であり、M1は板7の中心Q1作用するモーメントベクトル(X、Y、Z軸周りの成分)である。L7(i)(i=1,2,...N2)は、図12に示すようにQ1からF7(i)の作用点までのベクトルである。 S3は、板7に液体11が接触している領域の面積である。
【0084】
以上の過程により、板7の中心Q1作用するに6軸力の抽出が完了した。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の6軸力計測装置1および6軸力計測システム13では、タッチパッド3と、CCDカメラ4と、照明5及び圧力センサ10の4つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。ロボットへ搭載する光学式触覚センサやその他の分野への応用の際に、比較的容易に応用可能となる。
【0085】
(2)本実施形態では、タッチパッド3に作用する6軸力を抽出可能であるため、多次元の力情報を必要とする分野においても応用可能である。
(3)本実施形態では、タッチパッド3は弾性体の膜6と板7、及びそれらの間の空間を満たす液体11によって構成されているため、物体W1に馴染みやすく、接触の際に十分な接触領域を確保できる。したがって、例えばロボットハンドの指先などのように物体W1と安定した接触を維持するような部分への応用も可能である。
【0086】
(4)本実施形態では、弾性体が持つ応力と歪みの関係は非常に複雑であるが、この関係を使用せずに6軸力を抽出可能であるため、弾性体が大変形や複雑な変形をした場合においても、その影響を比較的受けずに6軸力の抽出が可能となる。
【0087】
(5)本実施形態では、6軸力計測システム13による計測は実用性のある精度を達成可能であると考えられる。図13、図14、図15、図16及び図17に、6軸力計測システム13による板7に作用する力の計測結果を示す。図13は、タッチパッド3に対して、物体W1がZ軸と平行に接触してきた時の、板7に作用する力のZ軸方向成分であり、最大誤差は0.8N程度である。図14及び図15は、タッチパッド3に対して、物体W1がX軸と平行に接触してきた時の、板7に作用する力のX軸方向成分及びZ軸方向成分であり、最大誤差はそれぞれ0.8N、0.7N程度である。図16及び図17は、タッチパッド3に対して、物体W1がZ軸と平行に接触してきた後にZ軸周りに回転した時の、板7に作用する力のZ軸方向成分及びZ軸周りのモーメントであり、最大誤差はそれぞれ1N、4Nmm程度である。これらの誤差の原因は、形状計測手段によって得られた膜6の形状の計測誤差によって、その後の力の抽出にも誤差が生じたからであると考えられる。従って、CCDカメラ4の空間分解能を上げる等によって形状計測手段の計測精度を向上させることによって、6軸力の計測精度も向上すると考えられる。以上の結果から、6軸力計測システム13による計測は実用性のある精度を十分に達成可能であることを示している。
[第2の実施形態]
次に、図1〜17に基づき第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
本実施形態は、前記第1の実施形態内における液体11の圧力の抽出(ステップS160)を別の方法で行う実施形態である。
【0088】
タッチパッド3において、図18に示すように、圧力センサ10の代わりに、圧縮性流体19の封入された箱20を装着させる。
ここで、管9と箱20の接続部は、液体11の移動は可能であるが、タッチパッド3の姿勢の変化によって圧縮性流体19が管9を通過して反対側へ侵入しない程度まで管9を狭くする。また、箱20は外気に対して圧縮性流体19が移動できないように密閉されているものである。
【0089】
次に、本実施形態における液体11の圧力の抽出方法は以下の通りである。(ステップS160)ある時刻T1において、箱20に封入された圧縮性流体19の体積をV1とし、その時の液体11の圧力をP1として、P1は予め計測しておく。次にそれ以降の時刻における任意の時刻T2での圧縮性流体19の体積をV2とし、その時の液体11の圧力をP2とすると、P2はP1、V1及びV2の関数G1によって与えられるとする。
【0090】
本実施例では関数G1として、以下のボイルの法則(式13)あるいはファンデルワールス式(式14)を使用して導出する。
P2=P1・V1/V2(式13)
(P2+H1/V2)・(V2−H2)=(P1+H1/V1)・(V1−H2)(式14)
ここで、H1及びH2は係数であり、予め実測値を使用して同定することが可能である。あるいは、関数G1として予め実測値を使用して推定した関数を使用しても良い。
【0091】
次に、上記の圧力抽出方法において、体積V1及びV2を求める方法は以下の第一の方法及び第二の方法の通りである。ここで、膜6、板7、管9及び箱20によって囲まれた空間の、時刻T1における体積をV3とし、時刻T2における体積をV4とする。
【0092】
第一の方法として、液体11を非圧縮性流体にすることで、以下の関係式(式15)が成り立つ。
V3−V1=V4−V2(式15)
したがって、(式15)よりV1を予め計測しておくことで、任意の時刻T2における体積V2が抽出される。
【0093】
次に、第二の方法として、箱20を光透過性の材料によって構成し、圧縮性流体19の色は液体11と異なる色にすることで、箱20の内部をCCDカメラ4によって撮影し、画像処理を行うことによって、任意の時刻T1、T2において、V1及びV2を推定することが可能である。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0094】
(1)本実施形態の6軸力計測装置1および6軸力計測システム13では、圧力センサ10を使用せずに液体11の圧力を抽出するため、6軸力計測装置1の構造をさらに簡略化可能となり、小型化の面でも有利となる。
[第3の実施形態]
次に、図1〜19に基づき第3の実施形態を説明する。
【0095】
なお、第1又は第2の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
本実施形態は、前記第1又は第2の実施形態を光学式触覚センサへ応用したシステムである。
【0096】
図19に示されるように、膜6の半球状の部分において物体W1と接触する側とは反対側に、マーカ部としてのドットパタ−ン21を配置する。
ここで、ドットパターン21は、格子状の模様や、三角形の網目状、六角形の網目状(ハニカム状)などの他の模様であってもよい。
【0097】
これによって、6軸力計測装置1は6軸力計測システム13を可能とした状態で、マーカ部(12)の配置された膜と撮像手段からなる力学量抽出装置及び力学量抽出方法と組み合わせた光学式触覚センサ22としても成立する。
【0098】
本実施例では、力学量抽出装置及び力学量抽出方法として特許文献(特願2005−257343広報)に記載の光学式触覚センサ、光学式触覚センサを利用したセンシング方法を使用したが、他の力学量抽出装置及び力学量抽出方法でも良い。
【0099】
次に、光学式触覚センサ22による6軸力及び他の触覚情報の同時計測方法を説明する。
図20に示されるように、ステップS180においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU15は、タッチパッド3の挙動を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報を取り込み(ステップS190)、画像処理を行う(ステップS200)。次に、CPU15は、ドットパタ−ン21の挙動から触覚情報を抽出する(ステップS210)。そして、CPU15は、取得された画像を用いてステップS130〜S170と同一の方法で板7に作用する6軸力を抽出する(ステップS220)。
【0100】
ステップS200及びステップS210において触覚情報を抽出する例としては、特許文献(特願2005−257343広報)に記載の触覚情報抽出手段によって接触力や滑りが抽出可能であり、特許文献(特願2010−180928)あるいは非特許文献(Y. Ito, Y. Kim , C. Nagai and G. Obinata, “Shape Sensing by Vision-based Tactile Sensor for Dexterous Handling of Robot Hands” In Proceedings of 2020 IEEE Conference on Automation Science and Engineering, Aug, 2010)に記載の形状抽出手段を利用することで、物体W1の形状情報が抽出可能であり、非特許文献(Y. Ito, Y. Kim , C. Nagai and G. Obinata, “Acquisition of Tactile Information by Vision-based Tactile Sensor for Dexterous Handling of Robot Hands” In Proceedings of IEEE/RSJ 2010 International Conference on Intelligent Robots and Systems, Oct, 2010)に記載の触領域抽出手段及び物体姿勢抽出手段を利用することで、物体W1とタッチパッド3の間の接触領域及び、物体W1のタッチパッド3に対する位置及び角度の変化に関する情報が抽出可能である。
【0101】
以上のステップ180〜220によって、光学式触覚センサ22による6軸力及び他の触覚情報の同時計測が可能となる。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0102】
(1)本実施形態の6軸力計測装置1および6軸力計測システム13では、タッチパッド3と、CCDカメラ4と、照明5、管9及び圧力センサ10で構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の6軸力計測装置よりも容易に応用可能となる。例えば、膜6にマーカ部を配置したことで、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の6軸力計測方法・装置を組み合わせることが可能である。即ち、この6軸力計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま6軸力計測を可能とする装置及びシステムを実現できる。
[第4の実施形態]
次に、図1〜21に基づき第4の実施形態を説明する。
【0103】
なお、第1、第2又は第3の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
本実施形態は、前記第1、第2又は第3の実施形態をヒューマンインターフェースへ応用したシステムである。
【0104】
図21に、6軸力計測装置1のタッチパッド3が有する膜6の半球状の部分に対して操作者の指W2が接触するようなヒューマンインターフェース22を示す。タッチパッド3に指W2が接触している際、前記第1、第2又は第3の実施形態と同様の方法を用いることで、タッチパッド3及び指W2に作用する6軸力、タッチパッド3及びは指W2の形状、タッチパッド3と指W2の間の接触領域、タッチパッド3と指W2の間の滑りに関する情報、タッチパッド3に対する指W2の位置及び角度の変化に関する情報を抽出する。これにより操作者が作用する様々な情報を、タッチパッド3を介して様々な機器へ伝達する。
【0105】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のヒューマンインターフェース22では、6軸力計測装置1のみで構成されているため、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。また、タッチパッド3が有する柔軟性により、操作者への馴染み易さを実現できる。そして、操作者が作用する6軸力、形状、接触領域、滑り、位置及び角度の変化、等の多くの情報を伝達可能であり、多くの情報を様々な機器へ伝達可能である。したがって、マウス、タッチパネル、タッチペン、ジョイスティック等の従来のヒューマンインターフェースよりも多機能であるため、より柔軟且つ快適な情報伝達が期待される。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0106】
・上記各実施形態では、膜6は異なる2色の膜を張り合わせてあるが、光の遮断性が強ければ、1色の膜であってもよい。また、膜には特に模様が着色されていないが、何か着色されていても良い。
【0107】
・上記各実施形態では、照明5は同軸落射照明であったが、光が照射される位置(光源位置)と光が照射される方向が分かるものであれば、他の点光源や面光源であっても良い。
【0108】
・上記各実施形態では、タッチパッド3の形状が板と半球を張り合わせた形状を有しているが、内部に液体11を封入可能で、CCDカメラ4から膜6が重なって見えなければ、他の形状でも良い。
【0109】
・上記各実施形態では、形状抽出手段として特許文献(特願2010−180928)あるいは非特許文献(Y. Ito, Y. Kim , C. Nagai and G. Obinata, “Shape Sensing by Vision-based Tactile Sensor for Dexterous Handling of Robot Hands” In Proceedings of 2020 IEEE Conference on Automation Science and Engineering, Aug, 2010)に記載の形状抽出手段を使用したが、膜6の形状を抽出可能であれば、他の方法でも良い。
【0110】
・上記各実施形態では、圧力抽出手段として圧力センサ10、箱20あるいはCCDカメラ4を使用して抽出したが、液体11の圧力を抽出可能であれば、他の方法でも良い。
・上記各実施形態では、非接触領域抽出手段として非特許文献(Y. Ito, Y. Kim , C. Nagai and G. Obinata, “Acquisition of Tactile Information by Vision-based Tactile Sensor for Dexterous Handling of Robot Hands” In Proceedings of IEEE/RSJ 2010 International Conference on Intelligent Robots and Systems, Oct, 2010)に記載の非接触領域抽出手段を使用したが、膜6の非接触領域を抽出可能であれば、他の方法でも良い。
(産業上の利用可能性)
例えば、本発明の6軸力計測システムを用いれば、接触部が弾性体と液体で構成されており、多次元の力の計測が可能であるため、環境に対応し人と協調するようなロボットへの応用が期待される。また、6軸力計測装置は比較的簡易な構造であり、必要となる構成材料も少ないため、例えば弾性体と撮像手段を使用した触覚センサへ組み合わせて応用することも可能である。さらに、6軸力計測装置は構造の簡易性から更なる小型化も期待でき、接触部の馴染み易さもあるため、医療分野への応用も考えられる。内視鏡の先端部へ搭載することで、人体の内側から接触力の情報を抽出が可能となり、また、手術ロボットの指先や、癌検診用の器具の接触部等にも応用できる可能性がある。他にも、多次元の力情報が抽出可能であることを活かし、ヒューマンインターフェースとして様々な機器の操作部へ応用することも可能である。
【符号の説明】
【0111】
1…形状計測装置
2…ケ−シング
3…接触部としてのタッチパッド
4…CCDカメラ
5…照明
6…接触部としての膜
7…板
8…固定具としての金属板
9…管
10…圧力センサ
11…光減衰手段としての液体
12…張力方向を抽出するためのマーカ
13…6軸力計測システム
19…圧縮性流体
20…箱
21…ドットパターン
22…ヒューマンインターフェース
W1…物体
W2…操作者の指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜(6)と、
前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を保持する部材(7、8)と、
前記膜の形状に関する情報を抽出する形状抽出手段(4、5、11)と、
前記膜を基準としたとき、前記対象物が接触する側とは反対側にある空間の圧力に関する情報を抽出する圧力抽出手段(10、19、20)と、
前記膜の形状に関する情報及び前記圧力に関する情報を用いて力に関する情報を計測する力計測手段と、
を備えることを特徴とする6軸力計測装置。
【請求項2】
前記空間が、前記膜と前記部材とで構成される閉空間であることを特徴とする請求項1に記載の6軸力計測装置。
【請求項3】
前記圧力抽出手段が、任意の時点の前記閉空間の圧力を求める際に、前記任意の時点における前記閉空間の体積と、前記任意の時点よりも前の時点における前記閉空間の圧力と体積を利用し、それらの物理量を含んだ関数から前記任意の時点における前記閉空間の圧力を抽出することを特徴とする請求項2に記載の6軸力計測装置。
【請求項4】
前記閉空間の体積が、前記膜の形状から求めた体積であることを特徴とする請求項2又は3に記載の6軸力計測装置。
【請求項5】
前記膜の一部あるいは全てを撮像可能な撮像手段を備え、
前記閉空間の体積は、前記撮像手段で撮像した、前記膜の一部あるいは全てから抽出した体積であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の6軸力計測装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の6軸力計測装置を利用して、前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを計測する6軸力計測方法であって、
前記形状抽出手段によって前記膜の形状を抽出するステップと、
前記圧力抽出手段によって前記空間の圧力を抽出するステップと、
前記膜の形状から前記膜をいくつかの要素に分割するステップと、
一つあるいは複数の前記要素に対して力学量に関する式を導出するステップと、
前記力学量に関する式と前記空間の圧力から前記膜に作用する張力を求めるステップと、
前記膜に作用する張力と前記空間の圧力から前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを抽出するステップと
を含むことを特徴とする6軸力計測方法。
【請求項7】
前記力学量に関する式が、前記要素に作用する力及びモーメントのつり合いの式であることを特徴とする請求項6に記載の6軸力計測方法。
【請求項8】
前記膜の形状に基づき、前記膜が対象物に接触していない非接触領域に関する情報を抽出するステップを含み、
前記力学量に関する式が、前記膜が対象物に接触していない非接触領域に関する情報を用いて求めた式であることを特徴とする請求項6又は7に記載の6軸力計測方法。
【請求項9】
前記非接触領域に関する情報を抽出するステップでは、前記膜と前記部材の接触部からある距離以内に含まれる領域を前記非接触領域とすることを特徴とする請求項8に記載の6軸力計測方法。
【請求項10】
前記膜に作用する張力方向に関する情報を抽出するステップを含み、
前記力学量に関する式が、前記膜に作用する張力方向に関する情報を用いて求めた式であることを特徴とする請求項6又は7に記載の6軸力計測方法。
【請求項11】
前記膜に作用する張力方向に関する情報を抽出するステップは、前記膜に設けたマーカ(12)の位置情報から前記張力方向に関する情報を抽出するステップであることを特徴とする請求項10に記載の6軸力計測方法。
【請求項12】
前記マーカの位置情報が、前記マーカを撮像手段で撮影することによって抽出した前記マーカの位置情報であることを特徴とする請求項11に記載の6軸力計測方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の6軸力計測装置と、
前記膜の形状から前記膜をいくつかの要素に分割する膜要素分割手段と、
一つあるいは複数の前記要素に対して力学量に関する式を導出する力学式導出手段と、
前記力学量に関する式と前記反対側の空間の圧力から前記膜に作用する張力を求める張力抽出手段と、
前記膜に作用する張力と前記反対側の空間の圧力から前記6軸力計測装置に作用する任意の軸方向の力及びモーメントを抽出する6軸力抽出手段と
を備えることを特徴とする6軸力計測システム。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の6軸力計測装置と、
前記膜のうち、前記反対側の面に配置されたマーカ部と、
前記膜に対象物が接触した際の前記マーカ部の挙動を撮影するマーカ部撮像手段と、
光の強度の解析による3次元形状情報の取得手段と、
光の明るさの解析による触覚情報を抽出する触覚情報抽出手段と
を備えることを特徴とする光学式触覚センサ。
【請求項15】
請求項14に記載の光学式触覚センサを利用して、力学量及び前記光学式触覚センサに作用する任意の軸方向の力及びモーメントを計測する力学量計測方法であって、
前記触覚情報抽出手段を用いて力学量を計測するステップと、
前記6軸力計測装置を用いて前記光学式触覚センサに作用する任意の軸方向の力及びモーメントを計測するステップと
を含むことを特徴とする力学量計測方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−61223(P2013−61223A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199425(P2011−199425)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】