説明

6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホン誘導体及び農園芸用の有害生物防除剤

【課題】本発明の課題は、新規な農園芸用の有害生物防除剤を提供することである。
【解決手段】下式(1)及び/又は(2)で表される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホン誘導体を有効成分とする農園芸用の有害生物防除剤。
【化1】


(式中、Rはアリール基、アラルキル基、アニリノ基、ベンゾイルアミノ基、ピリジル基置換アルキル基及びピリジルアミノ基、シクロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基を表す。)
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用の有害生物防除剤として有用である下式(1)及び(2)で表される新規な6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホン誘導体に関するものである。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、Rはアリール基、アラルキル基、アニリノ基、ベンゾイルアミノ基、ピリジル基置換アルキル基、ピリジルアミノ基、シクロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基を表す。)
【0004】
【化2】

【背景技術】
【0005】
6,6−ジフルオロ−5−ヘキセン誘導体は、例えば、特許文献1から特許文献5に種々記載されているが、上式(1)及び上式(2)で表される本発明の6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホン誘導体は新規化合物であり、農園芸用の有害生物防除活性を示すことも知られていない。
【特許文献1】特開平11−349557号公報
【特許文献2】特開2001−288142号公報
【特許文献3】特開2004−504310号公報
【特許文献4】特開2004−504311号公報
【特許文献5】特開2004−504312号公報
【特許文献6】特開平15−176247号公報
【非特許文献1】Organic Reaction,5,1949,p.301
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上式(1)及び(2)表される新規な6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホン誘導体及びそれを有効成分とする農園芸用の有害生物防除剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するために検討した結果、新規な6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホンアミド誘導体(前記式(1))及びその合成原料である新規な6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライド(前記式(2))が農園芸用の有害生物防除剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は次の通りである。
第1の発明は、次式(1)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホンアミド誘導体に関するものである。
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、Rは前記と同義である。)
【0011】
第2の発明は、次式(2)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライドに関するものである。
【0012】
【化4】

【0013】
第3の発明は、前記式(1)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホンアミド誘導体及び/又は前記式(2)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライドを有効成分とする農園芸用の有害生物防除剤に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホンアミド誘導体及び6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライドは、優れた農園芸用の有害生物防除効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
前記の化合物で表した各種の置換基などは、次の通りである。
なお、本発明の説明において、化学式に付した括弧付き数字,記号などをもって、「化合物(数字,記号など)」とも称する〔例えば、式(1)で示されるものを化合物(1)とも称する。〕。
【0016】
〔化合物(1)におけるR〕
Rとしては、アリール基、アラルキル基、アニリノ基、ベンゾイルアミノ基、ピリジル基置換アルキル基、ピリジルアミノ基、シクロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基である。
【0017】
アリール基としては、無置換又は置換基を有しても良いフェニル基が好ましく、置換基を有しても良いフェニル基としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良いフェニル基を挙げることができる。この内、4−メトキシフェニル基が好ましい。
【0018】
アラルキル基としては、フェニル環上に置換基を有しても良い1−フェニルエチル基、又はフェニル環上に置換基を有しても良い2−フェニルエチル基が好ましい。
フェニル環上に置換基を有しても良い1−フェニルエチル基としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良い1−フェニルエチル基を挙げることができるが、1−(4−ジフルオロメトキシフェニル)エチル基が好ましい。
【0019】
フェニル環上に置換基を有しても良い2−フェニルエチル基としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良い2−フェニルエチル基を挙げることができるが、2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル基が好ましい。
【0020】
アニリノ基としては、ベンゼン環上に置換基を有しても良いアニリノ基が好ましく、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良いアニリノ基を挙げることができる。この内、フェニルアミノ基が好ましい。
【0021】
ベンゾイルアミノ基としては、無置換、又はベンゼン環上に置換基を有しても良いベンゾイルアミノ基が好ましく、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良いベンゾイルアミノ基を挙げることができる。この内、ベンゾイルアミノが好ましい。
【0022】
ピリジル基置換アルキル基としては、ピリジン環上に置換基を有しても良いピリジルメチル基が好ましく、例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良いピリジルメチル基を挙げることができる。この内、ピリジルメチルが好ましい。
【0023】
ピリジルアミノ基としては、ピリジン環上に置換基を有しても良いピリジルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基(トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基など)、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状の低級ハロアルコキシ基(ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2―トリフルオエトキシ基、3,3,3―トリフルオロプロポキシ基、4,4,4―トリフルオロブトキシ基など)などの置換基を有しても良いピリジルアミノ基を挙げることができる。この内、ピリジルアミノが好ましい。
【0024】
シクロアルキル基としては、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基を挙げることができる。この内、シクロヘキシル基が好ましい。
【0025】
アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。この内、n−ヘキシル基が好ましい。
【0026】
アルコキシカルボニルメチル基としては、炭素数3〜8の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルコキシカルボニルメチル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、i−プロポキシカルボニルメチル基、n−ブトキシカルボニルメチル基、n−ブトキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、n−ペンチルオキシカルボニルメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基などが挙げられる。この内、エトキシカルボニルメチル基が好ましい。
【0027】
前記の本発明の化合物(1)及び化合物(2)の合成法を、さらに詳細に述べる。
化合物(1)は、下式に示すように、化合物(2)と化合物(3)とを、溶媒中、塩基の存在下で反応させることによって合成することができる。
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、Rは前記と同義である。)
【0030】
原料のモル比は任意に設定できるが、通常、化合物(2)1モルに対して化合物(3)は0.5〜2モルであり、好ましくは1.0〜1.2モルである。
【0031】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、クロルベンゼン、ヘキサン、ジクロルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素化された又はされていない芳香族の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状のエーテル類、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類及び前期溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0032】
溶媒の使用量は、化合物(3)が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0033】
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、ポタシュウムブトキサイド、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基を挙げることができるが、好ましくは、トリエチルアミン又はピリジンである。
塩基の使用量は、化合物(2)1モルに対して0.8〜2モルであるが、好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0034】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、好ましくは0〜30℃である。
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.1〜6時間である。
【0035】
化合物(2)は、下式に示すように、化合物(4)とベンジルメルカプタンを溶媒中、塩基の存在下で反応させ、化合物(5)を合成し、次いで化合物(5)を酢酸と水の混合溶媒中塩素を導入することによって合成することができる。
【0036】
【化6】

【0037】
〔化合物(5)の合成〕
化合物(5)の合成法を、さらに詳細に述べる。
原料のモル比は任意に設定できるが、通常、化合物(4)1モルに対してベンジルメルカプタンは0.5〜2モルであり、好ましくは1.0〜1.2モルである。
【0038】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、クロルベンゼン、ヘキサン、ジクロルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素化された又はされていない芳香族の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類及び前期溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0039】
溶媒の使用量は、化合物(4)が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0040】
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、ポタシュウムブトキサイド、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基を挙げることができるが、好ましくは炭酸カリウムである。
塩基の使用量は、化合物(4)1モルに対して0.8〜2モルであるが、好ましくは1.0〜1.2モルである。
【0041】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、好ましくは10〜80℃である。
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常3〜12時間である。
【0042】
〔化合物(2)の合成〕
化合物(2)は、化合物(5)を酢酸と水の混合溶媒中で、塩素を導入することにより得られる。
【0043】
塩素の導入量は、化合物(5)1モルに対して、0.8〜4モルであるが、好ましくは1.5〜2倍モルである。
【0044】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、好ましくは10〜40℃である。
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.5〜2時間である。
【0045】
化合物(4)は、下式に示すように、特許文献1に記載されている方法に従って製造することができる。
【0046】
【化7】

【0047】
化合物(3)は、市販品を用いるか、以下に示す方法で製造したものが使用できる。
【0048】
Rがアリール基の場合、市販のアニリン類を用いることができる。
Rが、アラルキル基の場合、市販のアラルキルアミン類を用いることができるが、フェニル環上に置換基を有しても良い1−フェニルエチル基の場合は、非特許文献1に記載されているようなロイカルト法で製造することができる。
また、Rが、フェニル環上に置換基を有しても良い2−フェニルエチル基の場合は、市販の2−フェニルエチルアミン類を用いるか特許文献6に記載されている方法に従って製造することができる。
Rが、アニリノ基の場合、市販のフェニルヒドラジン類を使用することができる。
Rが、ベンゾイルアミノ基の場合、市販のベンゾイルヒドラジン類を用いることができる。
Rが、ピリジル基置換アルキル基の場合、市販のピリジルメチルアミン類を用いることができる。
Rが、ピリジルアミノ基の場合、市販のピリジルヒドラジン類を用いることができる。
Rが、シクロアルキル基の場合、市販のシクロアルキルアミン類を用いることができる。
Rが、アルキル基の場合、市販のアルキルアミン類を用いることができる。
Rが、アルコキシカルボニルメチル基の場合は、市販のグリシンエチルエステルなどのグリシンアルキルエステルを用いることができる。
【0049】
〔防除効果〕
本発明の化合物(1)及び(2)で防除効果が認められる農園芸用有害生物としては、農園芸害虫[例えば、半し目(ウンカ類、ヨコバイ類、アブラムシ類、コナジラミ類など)、鱗し目(ヨトウムシ類、コナガ、ハマキムシ類、メイガ類、シンクイムシ類、モンシロチョウなど)、鞘し目(ゴミムシダマシ類、ゾウムシ類、ハムシ類、コガネムシ類など)、ダニ目(ハダニ科のミカンハダニ、ナミハダニなど、フシダニ科のミカンサビダニなど)]、センチュウ(ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シンガレセンチュ、マツノザイセンチュウなど)、ネダニ、衛生害虫(ハエ、カ、ゴキブリなど)、貯蔵害虫(コクヌストモドキ類、マメゾウムシ類など)木材害虫(イエシロアリ、ヤマトシロアリ、ダイコクシロアリなどのシロアリ類、ヒラタキクイムシ類、シバンムシ類、シンクイムシ類、カミキリムシ類、カミキリムシ類、キクイムシ類など)などを挙げることができ、また、農園芸用病原菌(コムギ赤さび病、大麦うどんこ病、キュウリべと病、イネいもち病、トマト疫病など)などを挙げることができる。
【0050】
本発明の有害生物防除剤は、特に、殺虫、殺ダニ及び殺センチュウ効果が顕著であり、化合物(1)及び/又は(2)を有効成分として含有するものである。
化合物(1)及び/又は(2)は、単独で使用することもできるが、通常は常法によって、固体希釈剤、液体希釈剤、界面活性剤、分散剤、固着剤などを配合し、例えば、粉剤、乳剤、微粒剤、粒剤、水和剤、顆粒水和剤、水性懸濁剤、油性の懸濁剤、乳濁剤、可溶化製剤、油剤、マイクロカプセル剤、エアゾールなどの組成物として調整して使用することが好ましい。
【0051】
個体希釈剤としては、例えば、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、ケイ砂、硫安、尿素などが挙げられる。
【0052】
液体希釈剤としては、例えば、炭化水素類(ケロシン、鉱油など)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルナフタレン、ジメチルキシリルエタンなど)、塩素化炭化水素類(クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、イソホロンなど)、エステル類(酢酸エチル、エチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチルなど)、アルコール類(メタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコールなど)、極性溶媒類(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなど)、水などが挙げられる。
【0053】
個着剤及び分散剤としては、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ベントナイト、ザンサンガム、アラビアガムなどが挙げられる。
エアゾール噴射剤としては、空気、窒素、炭酸ガス、プロパン、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0054】
界面活性剤としては、アルコール硫酸エステル類、アルキルサルフェート塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどを挙げることができる。
【0055】
本剤の製造では、前記の希釈剤、界面活性剤、分散剤及び固着剤をそれぞれの目的に応じて、各々単独で又は適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の化合物(1)及び/又は(2)を製剤化した場合の有効成分濃度は、乳剤では通常1〜50重量%、粉剤では通常0.3〜25重量%、水和剤及び顆粒水和剤では通常1〜90重量%、粒剤では通常0.5〜10重量%、懸濁剤では通常0.5〜40重量%、乳濁剤では通常1〜30重量%、可溶化製剤では通常0.5〜20重量%、エアゾールでは通常0.1〜5重量%である。
これらの製剤を適当な濃度に希釈して、それぞれの目的に応じて施用することによって各種の用途に供することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を参考例及び実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0057】
実施例1〔化合物(2)の合成〕
【0058】
(1)6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライドの合成
6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンメタンスルホネート(20.0g)とベンジルメルカプタン(11.6g)をアセトン(150ml)に溶かし、炭酸カリウム(13.5g)を添加し、約40℃で7時間した。反応終了後、無機物を濾別し、減圧下でアセトンを留去し、得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/20)で精製することによって、無色油状液の中間体である6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンベンジルチオエーテルを18.5g得た。
得られた6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンベンジルチオエーテル(18.5g)を酢酸(75ml)と水(15ml)の混液に溶解し、氷冷(30℃以下)攪拌下に塩素ガス(約6.7g)を導入した。
反応終了後、水を加え、塩化メチレンで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。次いで、水洗、乾燥後、減圧下で塩化メチレンを留去し、得られた油状物をカラムクロマトグラフィ(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/20)で精製することによって、無色油状液である目的化合物を16.0g得た。
【0059】

【0060】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.55〜1.65(2H,m)、2.02〜2.12(4H,m)
3.65〜3.70(2H,m)、4.08〜4.22(1H,q―q)、
【0061】
実施例2〔化合物(1)の合成〕
(2)N−(4−メトキシフェニル)−6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルアミド〔表1中、化合物番号1で示される化合物(1)〕の合成
p−アニシジン(0.6g)とピリジン(0.4g)を塩化メチレン(20ml)に溶解し、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライド(1.1g)を加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、水を加え塩化メチレンで抽出した。抽出液を水洗、乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3)で精製することによって、無色結晶である目的化合物を1.2g得た。
【0062】
m.p.:61〜62℃
H−NMR(CDCl,δppm)
1.44〜1.51(2H,m)、1.79〜1.87(2H,m)、
1.94〜2.02(2H,m)、3.01〜3.04(2H,m)、
3.80(3H,s)、4.03〜4.14(1H,q―q)、
6.36(1H,s)、6.87〜7.19(4H,m)
【0063】
実施例3〔化合物(1)の合成〕
(3)N−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニル)ーN'―フェニルヒドラジン〔表1中、化合物番号9で示される化合物(1)〕の合成
フェニルヒドラジン(0.6g)とトリエチルアミン(0.6g)を塩化メチレン(20ml)に溶解し、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライド(1.1g)を加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、水を加え塩化メチレンで抽出した。抽出液を水洗、乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3)で精製することによって、無色結晶である目的物を1.1g得た。
【0064】
m.p.:106〜108℃
H−NMR(CDCl,δppm)
1.39〜1.47(2H,m)、1.77〜1.83(2H,m)、
1.85〜1.99(2H,m)、2.93〜2.98(2H,m)、
4.00〜4.15(1H,q―q)、5.89(1H,s)、
5.92(1H,s)、6.93〜7.30(5H,m)
【0065】
(4)表1中のその他の化合物(1)の合成
前記(3)及び(4)の合成方法に準じて、表1中のその他の化合物(1)を合成した。
以上のように合成した化合物(1)について、その物性を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例2〔製剤の調整〕
(1)粒剤の調整
化合物(1)5重量部、ベントナイト35重量部、タルク57重量部、ネオペレッツクスパウダー(商品名;花王株式会社製)1重量部及びリグニンスルホン酸2重量部を均一に混合し、次いで少量の水を添加して混練した後、造粒、乾燥して粒剤を得た。
(2)粒剤の調整
化合物(1)10重量部、カオリン70重量部、ホワイトカーボン18重量部、ネオペレッツクスパウダー(商品名;花王株式会社製)1.5重量部及びデモール(商品名;花王株式会社製)0.5重量部を均一に混合し、次いで粉砕して水和剤を得た。
(3)乳剤の調整
化合物(1)20重量部及びキシレン70重量部に、トキサノン(商品名;三洋化成工業株式会社製)10重量部を均一に混合し、溶解して乳剤を得た。
(4)粉剤の調整
化合物(1)5重量部、タルク50重量部及びカオリン45重量部を均一に混合し粉剤を得た。
【0068】
実施例3〔効力試験〕
(1)サツマイモネコブセンチュウに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が1000ppmになるように希釈し、これらの薬液をそれぞれ0.1mlずつ試験管にとり、各試験管にサツマイモネコブセンチュウ500頭を含む水0.9mlを加えた。
次に、これらの試験管を25℃の定温室に放置し、2日後に顕微鏡下で観察して殺センチュウ率を求めた。
【0069】
この結果、化合物(2)と表1に示される化合物(1)の内、化合物番号1、9、14及び17が、80%以上の殺虫活性を示した。
【0070】
(2)コナガに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にキャベツ葉片(5×5cm)を30秒間浸漬し、それぞれプラスチックカップに1枚ずつ入れて風乾した。各カップにコナガ3齢幼虫10頭を放って蓋をして、25℃低温室に放置し、2日後に生死虫数を数えて死虫率を求めた。
【0071】
この結果、表1に示される化合物(1)の内、化合物番号1、6、8、9、12、14及び17が、80%以上の殺虫活性を示した。
【0072】
(3)トビイロウンカに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にイネ稚苗をそれぞれ30秒間浸漬し、風乾後、ガラス円筒に挿入した。各ガラス円筒にトビイロウンカ4齢幼虫10頭を放ち、多孔質の栓をし、25℃低温室に放置し、4日後にガラス円筒の生死虫数を数えて死虫率を求めた。
【0073】
この結果、表1に示される化合物(1)の内、化合物番号9、11及び14が、80%以上の殺虫活性を示した。
【0074】
(4)ツマグロヨコバイに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にイネ稚苗をそれぞれ30秒間浸漬し、風乾後、ガラス円筒に挿入した。各ガラス円筒にツマグロヨコバイ4齢幼虫10頭を放ち、多孔質の栓をし、25℃低温室に放置し、4日後にガラス円筒の生死虫数を数えて死虫率を求めた。
【0075】
この結果、化合物(2)及び表1に示される化合物(1)の内、化合物番号9が、80%以上の殺虫活性を示した。
【0076】
(5)ナミハダニ雌成虫に対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中に10頭のナミハダニ雌成虫を寄生させたインゲン葉片(直径20mm)を10秒間浸漬し、風乾した。これらの葉片を25℃低温室に放置し、3日後に各葉片における生死虫数を数えて死ダニ率を求めた。
【0077】
この結果、化合物(2)及び表1に示される化合物(1)の内、化合物番号6、9、11及び20が、80%以上の殺虫活性を示した。
【0078】
(6)ナミハダ殺卵効力試験
実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中に5頭のナミハダニ雌成虫を24時間寄生産卵させた後、成虫を除去したインゲン葉片(直径20mm)を15秒間浸漬し、風乾した。これらの葉片を25℃低温室に放置し、7日後に各葉片における孵化幼虫数を数えて死卵率を求めた。
【0079】
この結果、化合物(2)及び表1に示される化合物(1)の内、化合物番号9、11及び14が、80%以上の殺卵活性を示した。
【0080】
(7)キュウリべと病に対する防除効力試験(予防効果)
直径6cmのプラスチック植木鉢に1鉢あたり1本のキュウリ(品種;相模半白)を育成し、1.5葉期の幼植物体に、実施例2の(2)に準じて調整した表1に示される化合物(1)及び化合物(2)のそれぞれの水和剤を、界面活性剤0.01%を含む水で該化合物が500ppmになるように希釈し、1鉢あたり20ml散布した。
散布後、2日間ガラス温室で栽培し、次いで、キュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)の遊走子嚢を罹病葉から調整し、これを植物葉の裏面にまんべんなく噴霧接種した。
接種後、2日間20℃で暗黒下に保った後、5日間ガラス温室で育成し、第一葉に現れたキュウリべと病病斑の程度を調査した。
【0081】
殺菌効果の判定は、無処理区の病斑と比較して、5:病斑なし、4:病斑面積10%以下、3:病斑面積20%程度、2:病斑面積40%程度、1:病斑面積60%程度、0:全体が罹病の6段階で示した。
【0082】
この結果、表1に示される化合物(1)の内、化合物番号1、6、9及び14が、評価4以上の効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホンアミド誘導体。
【化1】

(式中、Rはアリール基、アラルキル基、アニリノ基、ベンゾイルアミノ基、ピリジル基置換アルキル基、ピリジルアミノ基、シクロアルキル基、アルキル基又はアルコキシカルボニルメチル基を表す。)
【請求項2】
下式(2)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライド。
【化2】

【請求項3】
請求項1の式(1)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホンアミド誘導体及び/又は請求項2の式(2)で示される6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニルクロライドを有効成分とする農園芸用の有害生物防除剤に関するものである。

【公開番号】特開2006−8541(P2006−8541A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184444(P2004−184444)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】