説明

7α−アルコキシカルボニル置換ステロイドを調製する方法

好ましくは塩基の存在下に、基質とアルコキシ基源とを反応させることにより、4,7−カルボニル橋を有するステロイド基質を7α−アルコキシカルボニル置換基を含む構造に変換するための方法が記載されている。いくつかの追加の方法変更が記載されている。約70℃より高い温度で、より低い温度で必要な時間よりもかなり短い滞留時間で、反応を行うことができる。けん化ターゲットを反応媒体に導入して、遊離水酸化物化合物を消費することができる。結晶化により、生成物7α−アルコキシカルボニル化合物を回収することができ、抽出により、残留ステロイドを結晶化母液から回収することができ、抽出物を処理して、リパルプ溶液を生産することができ、そこで、ステロイドを再平衡させて、追加の7α−アルコキシカルボニル置換されているステロイド生成物を製造することができる。あるいは、リパルプ溶液を一次反応器に再循環させることができるステップであって、4,7−カルボニル橋基質が7α−アルコキシカルボニル生成物に変換される。方法は特に、エプレレノンを調製する際に有用であり、4,7−カルボニル橋を含むジケトン中間体をアルカリ金属メトキシドと反応させると、11α−ヒドロキシ−7α−メトキシカルボニル化合物(ヒドロキシエステル)を得ることができ、その11α−ヒドロキシ基を脱離基に変換し、次いでこれを取り出して、Δ−9,11エンエステルを製造し、このエンエステルをエポキシド化して、エプレレノンにする。相対的に低い過酸化水素とエンエステル基質との比で行われるエポキシド化反応も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、いずれもそのまま参照により本願明細書に援用される2004年9月9日に提出された米国特許仮出願第60/608425号明細書、2005年9月22日に提出された米国特許仮出願第60/612133号明細書の一部継続である。
【0002】
本出願は、ステロイド中間体の調製、さらに詳細には、下記に示されている式6000に対応するジケトン化合物を、下記に示されている式5000の7−アルコキシカルボニル化合物に変換する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5981744号明細書、同第6331622号明細書および同第6586591号明細書には、式VI:
【0004】
【化1】

の化合物を式V:
【0005】
【化2】

の7−アルコキシカルボニル化合物に変換する方法が記載されている
[式中、
12は、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、R、RおよびR12は独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【0006】
【化3】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aおよびR17bは、R15およびR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
は、アルコキシカルボニル、さらに好ましくは7α−アルコキシカルボニルを含む]。
【0007】
前記特許に記載されている方法では、式VIのジケトンを塩基、好ましくは金属アルコキシドと反応させて、4位と7位との間のケトン橋を開き、カルボニル基と4−炭素との結合を切り、7位にα配置されたアルコキシカルボニル置換基を形成させる一方で、5−炭素の所のシアン化物を除去する。
【0008】
式VIの化合物から式Vの化合物への変換は、前記特許中では、エプレレノンまたは関連7α−アルコキシカルボニルステロイドを調製するための任意のいくつかのスキームでのステップとして記載されている。典型的には、このステップでの収率は一貫して、望ましい程には高くない。一定のスキームでは、式VI中間体の調製は、2つまたはそれ以上のプロセスステップを必要とし、その結果として、これは、調製のその経費に基づき、かなりの高価である。結果として、この中間体から式Vの化合物への変換における低い収率は、製造経費全体におけるかなりの経済的不利益を意味している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、このステップにおいて改善された収率をもたらしうる方法には、かなりの価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、塩基の存在下にアルコキシ基の源と反応させることにより、下記に記載されている式6000で定義される化合物を、下記に記載されている式5000の化合物に変換する。式VIおよびVの化合物は十分に、それぞれ式6000および5000の範囲内であるが、下記で明らかなように、後者の定義の方がある点においてより広い。様々な好ましい実施形態で、この方法は、前記特許第5981744号明細書、第6331622号明細書および第6586591号明細書に記載されている方法に比較して、式5000の化合物の高い収率および/またはこの方法の実施に関する他の利点をもたらすことができる。
【0011】
本願明細書に記載されているように、前記米国特許の方法の変更は、反応条件、金属アルコキシド試薬の調製、望ましい場合に式5000の化合物を回収する手順および/またはこのような変更の任意の組合せに関する。本方法の様々な実施形態では、このような変更により、操作的および経済的利点がもたらされる。本発明の方法はさらに、Δ−9,11ステロイドを酸化して9,11−エポキシステロイドにすることを含み、エプレレノンなどの3−ケト−7α−アルコキシカルボニル−Δ9,11−17−スピロラクトンステロイドを調製する際に任意に他のステップを含んでもよい。
【0012】
本発明の様々な態様うちの1つは、式5000に対応する化合物を調製する方法である:
【0013】
【化4】

式5000構造では、Rは、α配置されている低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表す。置換基R10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される。置換基R17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aまたはR17bはR15またはR16(下記で定義)と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成する。構造−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、置換基RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成する。構造−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【0014】
【化5】

を表し、置換基R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、R15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成する。構造−G−J−は、基:
【0015】
【化6】

を表し、RおよびR11は独立に、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびR11は一緒になって、エポキシ基を形成する。最後に、構造−C−Cは、基:
【0016】
【化7】

により表される。
【0017】
前記で定義された式5000を調製する方法は、約70℃より高い温度で式6000の化合物をアルコキシ基の源と反応させるステップを含み、アルコキシ基は、R71O−に対応し、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応する。式6000の化合物は、次の構造:
【0018】
【化8】

を有する。R、R、R3a、R3b、R、R10、R11、R12、R13、R15、R16、−A−A−、−B−B−および−G−J−のアイデンティティは、式5000に関して前記で定義された通りである。
【0019】
本発明の他の態様は、式5000の化合物を調製する方法を含み、この方法は、式6000の化合物をアルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドを含む試薬と接触させることを含む。遊離アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物(前記試薬中に含有されうるか形成されうる、および/または式6000の化合物が試薬と接触する反応媒体中に含有されうるか、形成されうる)を犠牲的けん化ターゲット化合物と反応させ、このことにより、式5000の生成物のけん化を阻害する。アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドは式(R71O)Mを有し、ここで、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mがアルカリ金属である場合、xは1であり、Mがアルカリ土類金属である場合、xは2であり、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応する。式5000および6000に対応する化合物は、前記されている。
【0020】
本発明の他の態様は、式5000の化合物を調製する方法を含み、ここで、この方法は、反応で変換される式6000の化合物1モル当たり0.2当量以下の遊離アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する反応媒体中で、式6000の化合物をアルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドと接触させるステップを含む。
【0021】
本発明のさらに他の態様は、式5000に対応する化合物を調製する方法を含み、ここで、この方法は、式6000の化合物およびアルコキシ基の源を連続的または断続的に連続反応ゾーンに導入するステップと、式5000の前記化合物を含む反応混合物を連続的または断続的に反応ゾーンから取り出すステップとを含む。
【0022】
本発明のさらに他の態様は、式5000の構造を有する化合物を調製する方法を含み、この方法は、塩基の存在下に式6000の化合物をアルコキシ基の源と接触させるステップを含む。生じた反応により、式5000の化合物、他のステロイド成分およびシアン化物を含む反応混合物が生じる。式5000の生成物化合物を、反応混合物中で生じた式5000生成物、他のステロイド成分、シアン化物および結晶化溶媒を含有する結晶化媒体から結晶化させることにより回収する。結晶生成物を、結晶化母液から分離する。母液は、残留ステロイドおよびシアン化物を含み、残留ステロイドは、式5000の化合物および式5000の化合物に変換することができる他のステロイドを含む。この方法はさらに、残留ステロイドを含む実質的に水不混和性の溶液を水性抽出媒体と液/液抽出ゾーンで接触させるステップを含む。このステップにより、2相抽出混合物が生じるが、これは、シアン化物イオンを含有する水性ラフィネート相と式5000の化合物および他のステロイドを含む有機抽出物相とを含む。さらに、この方法は、有機抽出物相と水性ラフィネート相とを分離するステップと、有機抽出物相からステロイドを回収するステップとを含む。
【0023】
本発明の他の態様は、式5600に対応する化合物を調製する方法を含む:
【0024】
【化9】

置換基Rは、低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表す。構造−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される。置換基R12は、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される。この方法は、塩基の存在下、約70℃より高い温度で、式6600に対応する化合物をアルコキシ基の源と反応させるステップを含む。アルコキシ基は、R71O−に対応し、R71O−はRのアルコキシ置換基に対応する。式6600に対応する化合物は、構造:
【0025】
【化10】

を有する
[式中、R、R、R12および−A−A−は、式5600に関する前記で定義された通りである]。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、式5600に対応する化合物を調製する方法を含み、この方法は、塩基の存在下に、式6600に対応する化合物をアルコキシ基の源と接触させるステップを含む。生じた反応により、式5600に対応する化合物、他のステロイド成分およびシアン化物を含む反応混合物が生成される。この生成に続いて、式5600の化合物を結晶化媒体から結晶化させる。結晶化媒体は、前記反応混合物中で生じた式5600生成物、他のステロイド成分、シアン化物および結晶化溶媒を含有する。さらに、式5600の化合物を、結晶化母液から分離する。母液は、残留ステロイドおよびシアン化物を含む。残留ステロイドは、式5600の化合物および式5600の化合物に変換することができる他のステロイドを含む。残留ステロイドを含む実質的に水不混和性の溶液と、水性抽出媒体とを液/液抽出ゾーンで接触させる。このステップにより、2相抽出混合物が生じるが、これは、シアン化物イオンを含有する水性ラフィネート相と式5600に対応する化合物および他のステロイドを含む有機抽出物相とを含む。2相抽出混合物を有機抽出物相と水性ラフィネート相とに分離し、ステロイドを有機抽出物相から回収する。
【0027】
本発明のさらに他の態様は、式5600に対応する化合物を調製する方法を含み、この方法は、式6600に対応する化合物を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドを含む試薬と接触させるステップとを含む。試薬中および/または式6600に対応する化合物が試薬と接触する反応媒体中に含有されているか、形成されている遊離アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を、犠牲的けん化ターゲット化合物と反応させる。この反応により、式5600に対応する生成物のけん化を阻害する。アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドは、前記で定義された通りである。
【0028】
本発明の他の態様は、式1600に対応する化合物を調製する方法である:
【0029】
【化11】

置換基Rは、低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表す。構造−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される。置換基R12は、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される。方法は、エポキシド化反応ゾーン内で、過酸化物活性化剤の存在下に式2600のステロイド基質を過酸化化合物と接触させるステップを含む。過酸化化合物およびステロイド基質を、ステロイド基質1モル当たり約1から約7モルの過酸化化合物の割合で反応ゾーンに導入する。反応ゾーン中で過酸化化合物をステロイド基質と反応させ、エポキシステロイドを含む反応混合物を生じさせる。式2600のステロイド基質は、次の構造:
【0030】
【化12】

に対応する
[式中、−A−A−、RおよびR12は、式1600に関して前記で定義された通りである]。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、式1600に対応する化合物を調製する方法であり、この方法は、液体反応媒体中で式2600のΔ9,11ステロイド基質を過酸化化合物と接触させるステップを含む。過酸化化合物を反応媒体中でステロイド基質と反応させて、式1600の9,11−エポキシステロイドを含む反応混合物を生じさせる。ステロイド基質に対する化学量論的当量を上回る反応媒体の過酸化物含量の分解が、過酸化化合物の制御できない自触媒的分解をもたらすために有効な発熱量をもたらさないような絶対および相対割合ならびに温度で、ステロイド基質を過酸化化合物と接触させる。
【0032】
本発明の他の態様は、式1600に対応する化合物を調製する方法を含み、この方法は、液体反応媒体中で、式2600のΔ9,11ステロイド基質を過酸化水素と接触させるステップを含む。ステロイド基質を液体反応媒体中で過酸化水素と反応させて、式1600の9,11−エポキシステロイドを含む反応混合物を生じさせ、水をこの反応混合物に加えて、水希釈されている反応混合物を生じさせる。水希釈されている反応混合物の組成は、反応混合物中に含まれている未反応の過酸化化合物全てが分解しても、過酸化化合物の制御できない自触媒的分解をもたらすために有効な発熱量を発生させることができない組成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
エプレレノンを調製するために、様々なスキームが米国特許第5981744号明細書、米国特許第6331622号明細書および米国特許第6586591号明細書に記載されている。これらのスキームのうちのいくつかは、式6000の化合物を式5000の化合物に変換することを必要とする。本発明の方法は、式5000の化合物を調製するために米国特許第5981744号明細書、米国特許第6331622号明細書および米国特許第6586591号明細書に一般的に記載されている方法および/または反応混合物から式5000化合物を回収するために記載されているステップに対する変更を含む。このような変更により、生産性、収率または他の性能特性を増強することができる。ある適用、例えば、エプレレノンを調製するための方法では、本願明細書に記載されている方法変更により、その調製には典型的には、2つまたはそれ以上の付随的な方法操作が必要となりうる価値の高い式6000の中間体の生産において節約することができる。
【0034】
式5000の化合物を調製するための方法の好ましい実施形態では、式6000のジケトンをアルコキシ基の源と反応させることにより、4位と7位との間のケトン橋を開き、カルボニル基と4−炭素との結合を切り、7位のα配置されているアルコキシカルボニル置換基を形成させる一方で、5−炭素のシアン化物を除去する。あるいはこの方法を、ケトン橋を開き、7α−アルコキシカルボニル基を形成させるが、シアノ基が5−炭素に結合したままである条件下に操作することもできる。
【0035】
反応を好ましくは、塩基の存在下に行う。様々な好ましい実施形態では、アルコキシ基源は、金属アルコキシドを含み、これは、塩基としても作用し、簡便には試薬中に供給するステップであって、これを、アルコール溶媒中に溶解または分散させる。このような実施形態では、アルコキシカルボニル基のアルコキシ部分は、金属アルコキシド試薬のアルコキシド成分に対応し、金属アルコキシド試薬は、反応において2つの機能を果たす。即ち、これは、アルコキシ基の源を含み、その存在下に反応が進行する塩基を供給する。したがって例えば、C−7にメトキシカルボニル基を形成させるためには、式6000の化合物を金属メトキシド、好ましくは、メタノール中にKメトキシドの溶液を含む試薬で提供されるKメトキシドなどのアルカリ金属メトキシドと反応させる。
【0036】
特定の理論にこの開示を限定しないが、式6000の化合物と金属アルコキシドとの反応による式5000の化合物の形成は可逆的であり、これも可逆的であるか、可逆的でありうる一定の中間体および副反応により、複雑であることが理解される。例えば、エプレレノンの具体的なケースでは、反応メカニズム全体は下記により示されうると想定されている:
【0037】
【化13】


上記の平衡は、米国特許第5981744号明細書の反応スキーム1によるエプレレノンの合成で通常使用される記載の3−ケト−Δ4,5−11α−ヒドロキシ−17−スピロ−ブチロラクトン中間体の調製に関するが、12−および17−炭素に他の置換基、前記の一般式の他の構造−A−A−および/または−B−B−、および/または7−炭素に形成されているメチルエステル以外のエステルが存在する場合には、同等の平衡が通常、優勢であることが理解されるであろう。さらに、Δ−4,5と5β−シアノ種との平衡は、反応媒体に供給されている過剰のアルコキシ源に相当な部分依存していると理解される。
【0038】
塩基試薬がアルカリ金属メトキシドである場合には、反応を、Rのアルコキシ基に対応するアルコール、即ち、R71OH、例えばメタノールを好ましくは含む液体有機溶媒媒体中で実施することができる。反応平衡は低い濃度でより好適であると理解され、例えば、この方法を好ましくは、高希釈で、例えば、試薬がNaメトキシドであれば40:1ほどの高さで、あるいはKメトキシドの場合には20:1の範囲内で実施する(式6000基質1kg当たりの溶媒リットルで表示)。参照特許に記載されているように、対応するシアン化物よりも可溶性であるZnI、Fe(SOまたはアルカリ土類もしくは遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩または他の塩などの、シアン化物沈殿剤の存在下に、反応を行うことにより、逆シアン化反応を阻害することができる。
【0039】
前記米国特許に記載されているように、反応の温度は、厳密ではないとされており、簡便には、大気圧還流温度である。実施例では、67℃、大気圧還流下での反応が示される。本発明の一定の実施形態は、この比較的低い温度範囲の温度での操作を包含する。他の実施形態は、反応をより高い温度で行うことにより、かなりの改善を達成している。
【0040】
式5000の生成物が結晶沈殿物を形成するまで、反応媒体を直接冷却することにより、生成物回収を簡便に行うことができることが判明している。反応混合物からの結晶化による回収を、下記でさらに詳述する。
【0041】
前記米国特許に記載されているように、生成物回収のために他の選択肢も役立ち、使用することができる。例えば、式5000の生成物を含有する反応溶液を鉱酸で、例えば濃HCl、典型的には4NのHClでクエンチすることができる。酸性化反応混合物を周囲温度まで冷却し、式5000の反応生成物を塩化メチレンまたは酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出することができる。式5000の生成物を反応混合物から回収するためのこのスキームおよび他のスキームを、以下でさらに詳述する。
【0042】
下記の他の好ましい実施形態では、HCNを除去するための蒸留は不要であり、好ましくは、除かれる。
【0043】
前記特許に記載されているエプレレノンを調製するための、即ち、式5000の化合物を式4000:
【0044】
【化14】

と本願明細書では名付けられている化合物に変換するための反応スキーム1の次のプロセスステップで、式5000の3−ケト−Δ4,5−7α−メトキシカルボニル中間体をそのまま使用することができる
[式中、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【0045】
【化15】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aおよびR17bはR15またはR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
は、α配置されている低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
11は、脱離基を表す]。
【0046】
米国特許第5981744号明細書、同第6331622号明細書および同第6586591号明細書は特に、参照により本願明細書に援用される。特に、米国特許第5981744号明細書の第31欄33行から第34欄14行参照。これらの特許の実施例59〜61には、ジケトン基質が9,11−エポキシ基を有し、反応の生成物が対応する5−シアノ−7α−アルコキシカルボニル−9,11−エポキシ化合物である方法が記載されていることを特記することができる。これらの実施例の条件下では、5−シアノ基は、9,11−エポキシ基質の核から分離されていない。
【0047】
本願明細書に記載の方法の様々な実施形態では、反応の生産性を高め、および/またはステロイド基質の高い収率のための基礎を用意する目的で、反応の条件および/または反応溶液の処理を変化させる。
【0048】
高温反応
1つの変更では、アルコキシ基源と式6000の基質との反応を、米国特許第5981744号明細書、同第6331622号明細書および同第6586591号明細書に開示されている温度と比較して高い、好ましくはかなり高い温度で行う。70℃を超えて、例えば、約70℃と約150℃の間で、反応を行う。反応平衡および反応速度の観点から、好ましい反応温度は、70℃よりも相当に高い、例えば、≧80℃、さらに好ましくは≧90℃である。しかしながら、下記で検討されるように、最適な温度は、反応混合物を迅速に冷却する能力に依存しており、したがって、後者の目的のために利用可能な設備によって変化する。多くの工業適用では、最適な温度は、約80℃から約95℃の範囲内に該当しうる。下記の連続反応設備での例の場合のように、非常に迅速な冷却が実行できる場合には、最適な反応温度は、約90℃から約120℃などの比較的高い範囲であってよい。
【0049】
この方法を実施する際には、反応容器に、式6000基質をメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはn−ブタノールなどの溶媒と共に、生じる液体反応媒体が当初は約1と約10重量%の間、さらに典型的には約2と約3重量%の間のステロイド基質を含有するような相対割合で充填することができる。好ましくは、溶媒は、式R71OHに対応するアルコールを含み、ここで、R71O−は、前記で定義された通りである。即ち、例えば、Rがメトキシカルボニルである場合、アルコールは好ましくはメタノールであり、Rがエトキシカルボニルである場合、アルコールは好ましくはエタノールである。さらに塩基を反応媒体に導入する。簡便には、塩基は、式(R71O)Mに対応する金属アルコキシドを含み、ここで、Mは、x=1である場合、アルカリ金属であり、x=2である場合、アルカリ土類金属である。金属アルコキシドを好ましくは、式R71OHに対応するアルコール中の溶液または分散液として導入する。このような溶液または分散液は、アルコキシ基R71O−の源として役立ちうる。特定の理論には拘束されないが、Rのアルコキシ部分は主に、金属アルコキシド成分に由来しうるが、一部のアルコキシ置換基は、アルコールR71OHに最終的に由来してもよい。いずれの場合でも、金属アルコキシドは、塩基としても役立つので、反応メカニズムにおいて2つの機能を提供する。
【0050】
多くの適用では、塩基成分は好ましくは、NaOR71またはKOR71などのアルカリ金属アルコキシドを含む。しかしながら、代わりに反応をCa(OR71、Mg(OR71、またはBa(OR71などのアルカリ土類金属アルコキシドの存在下に行うこともできる。前記のように、アルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドは、アルコキシ基源と塩基との両方として役立つ。他の選択肢では、反応を、トリエチルアミン、ピリジンまたはN−シクロヘキシル−N,N’,N”,N’’’−テトラメチルグアニジンなどの窒素有機塩基の存在下に行うこともできる。後者の実施形態では、アルコキシ基源は主に、または専ら、アルコールR71OHからなってよいが、金属アルコキシド(R71O)Mも望ましい場合には含んでよい。アルコールが反応のための主な溶媒として作用し、有機窒素化合物が主な塩基として作用する場合、アルコキシ基源の十分な供給を、本願明細書の他の部分で記載されている好ましい高い希釈比を適合するために通常は供給される過剰な溶媒から得ることができる。
【0051】
塩基が主に、式(R71O)Mに対応するアルカリ金属アルコキシドからなる場合、これを好ましくは、基質1モル当たり約1.25モルを上回る、さらに好ましくは基質1モル当たり約1.5モルを上回る割合で反応媒体に導入するが、目的が、5−CN−7α−アルコキシカルボニル生成物(「シアノエステル」)を製造する代わりに5−ニトリル基の加水分解を回避することである場合には、1.25を下回る割合が、これらの実施形態で好ましいこともある。バッチ反応系では、基質1モル当たり少なくとも0.5モルの金属アルコキシド試薬を好ましくは、反応サイクルの開始時点で反応媒体に導入し、維持的金属アルコキシド充填を、反応経過にわたって連続的または断続的に増大させて導入する。多くの場合に、反応媒体への金属アルコキシド添加の量およびタイミングを調節して、媒体中に未溶解の金属アルコキシドがかなり存在することを回避することが望ましい。
【0052】
本発明の他の変更に関して下記でさらに詳細に検討するように、液体反応媒体に導入されるアルコキシド溶液は好ましくは、実質的に無水であり、ヒドロキシルイオン、アルカリ金属水酸化物または部分的に水和されたアルカリ土類金属アルコキシドを実質的に含まない。技術的には、反応媒体は、本質的に無水であると理解される。なぜならば、この媒体に入ったいかなる水分も本質的に直ちに金属アルコキシドと反応して、金属水酸化物または水和金属アルコキシド、即ち(R71O)M(OH)(この場合、Mはアルカリ土類金属である)をもたらすためである。しかしながら、水分との接触により生じているか、他の源に由来する任意の部分的に水和されたアルカリ土類金属アルコキシドを含む金属水酸化物は、7α−アルコキシカルボニルを7α−カルボン酸にする加水分解による脱アルキル化をもたらすことにより、式5000の生成物に対して有害な作用を有するので、可能ならば、水分の侵入を最小化または排除することが重要である。水酸化物には遊離ヒドロキシルイオンと解離していない金属水酸化物とが含まれるとみなすと、反応媒体の全水酸化物含量は反応サイクルの間のいずれの時点でも、好ましくは約0.05重量%以下であり、さらに好ましくは約0.03重量%以下であり、さらに一層好ましくは約0.01重量%以下である。反応媒体の水酸化物含量を制御するために、金属アルコキシド試薬溶液または分散液の全金属水酸化物含量は、金属アルコキシド1当量当たり約0.12当量以下である。さらに好ましくは、試薬溶液または分散液の金属水酸化物含量は、金属アルコキシド1当量当たり約0.035当量以下であり、さらに一層好ましくは金属アルコキシド1当量当たり約0.012当量以下であり、最も好ましくは金属アルコキシド1当量当たり約0.006モル当量以下である。大部分の試薬での重量ベースでは、これは、金属アルコキシドに対して金属水酸化物約10重量%以下であり、さらに好ましくは、約3重量%以下であり、さらに一層好ましくは約1.5重量%以下である。したがって、例えば、Kメトキシドの25〜32重量%メタノール溶液では、KOH含量は好ましくは、約3重量%以下であり、さらに好ましくは約1重量%以下であり、さらに一層好ましくは約0.5重量%以下である。さらに、これらの好ましい重量%限界は通常、他の金属アルコキシド、例えば、Naメトキシド、Kエトキシド、Naエトキシド、Mg(OMe)、Ca(OEt)などのアルコール溶液または分散液にも適用される。
【0053】
水分と酸素の両方を排除するために、反応は好ましくは、窒素ガスマントルなどの不活性雰囲気下に行う。反応を溶媒媒体の大気圧沸点より高い温度で行う場合には、反応を窒素ブランケット下に開始することができるが、この窒素ブランケットは、反応が進行するにつれて、溶媒蒸気に実質的に代えられる。
【0054】
式6000基質を含む液体反応媒体を、高温、即ち>70℃の温度に加熱する。好ましくは、ステロイド基質を含有する媒体を、アルカリ金属アルコキシドを加える前に>70℃にするが、所望の反応温度までの加熱を、望ましい場合には添加の間またはその後に行うこともできる。いずれの場合でも、温度を好ましくは、実質的に反応経過を通して、70℃より高いレベルに維持する。好ましくは反応サイクルの少なくとも60%を通して、さらに好ましくは少なくとも80%を通して、さらに一層好ましくは実質的に反応サイクルを通して、温度を70℃より高く維持する。しかしながら、下記のように、反応が完了した後の反応混合物の冷却が重要であるため、特定の設備では、バッチ反応サイクルの間の時間を関数として、または連続反応系の流路に沿って、反応温度が変化するスケジュールで操作することが有用であろう。式5000反応生成物のRがメトキシカルボニル、エトキシカルボニルまたはイソプロポキシカルボニルであり、反応のための溶媒が主に、対応するアルコールを含む場合、反応容器内の圧力は大気圧を相当超えてよい。例えば、溶媒がメタノールである場合、100℃での反応圧力は、約60psig(414kPa)である。
【0055】
タンク形反応器では、反応の所望の温度を、反応器上のジャケットを流れる熱媒液から、または反応マスに浸漬しているコイルを介して熱を供給することにより生じさせ、維持することができる。あるいは、反応マスを、外部熱交換器に循環させることもできる。式6000の化合物から式5000の化合物への変換は、穏やかな吸熱性であるので、タンク形反応器中での温度制御を、還流下で操作しながら、反応の圧力を制御することにより、簡便に行うことができる。反応媒体を所望の反応温度にすることを容易にするために、不活性雰囲気を反応器ヘッドスペースに最初に生じさせてよく、その後、所望の反応温度を反応圧力を制御することにより生じさせ、維持する。還流凝縮器からのベント流を調節することにより、反応器圧力を制御することができる。
【0056】
低級アルコール(例えばCからC)を主に含む液体反応媒体にアルカリ金属アルコキシドを導入する前に、式6000基質の溶液を好ましい高い反応温度にすると、反応生成物を沈殿させることなく、M(OR71/R71OH充填物を一度に導入することができることが判明している。
【0057】
式6000の化合物から式5000の化合物への変換は、温度と共に上昇する平衡定数を伴う平衡反応であると理解されるので、収率は、高温で操作することにより改善される。高い反応温度は、反応が進行する速度もかなり促進する。したがって、バッチ反応サイクルを、米国特許第5981744号明細書、同第6331622号明細書および同第6586591号明細書に記載されている大気下での還流での操作に比較してかなり短縮することができる。例えば、これらの参照文献に記載されているように、メタノール中でのVI−Iの化合物(下記で記載)とKメトキシドとの反応は、67℃では反応を完了させるまでに16時間を必要とする。これに対して、試薬の選択、試薬の濃度、試薬と基質との比および基質ステロイド濃度の同等の条件下で、少なくとも0.5のアルコキシド/基質モル比で式6000の化合物が金属アルコキシドと接触した時点(バッチ反応では、少なくとも0.5モル/モルの基質に対する比で、金属アルコキシドを反応媒体に加えた時点)と、所望の変換が達成され、および/または冷却が開始されるまでの期間として反応サイクルを考えると、72℃で約6時間以内、85度で約4時間以内、90℃で約1.5時間以内または100℃で約0.5時間以内に、バッチ反応を完了させることができることが今や発見された。通常、所望の変換は、基質の少なくとも95%の消費に等しい。さらに通常、反応に関して考慮される条件の幅広い範囲および90から95%の範囲の基質消費に等しいターゲット変換の幅を考えると、バッチ反応サイクルは典型的には、約70℃より高い温度で約0.25から約6時間、約100℃の温度で約20分から約45分である。
【0058】
国際公開第98/25948号パンフレットに記載されているように、反応平衡は、高い希釈により、例えば、約40:1の溶媒と基質との重量比で促進されるが、国際公開第98/25948号パンフレットに記載されている比較的低い温度での操作では、高希釈に伴う収率における利点は、生産性における不利益をもたらす。十分な生産性を達成するために、50℃から65℃の範囲で行われる反応での最適な希釈は、特には例えば、アルカリ金属アルコキシドがカリウムメトキシドである場合には、より典型的には、約20:1であってよい。
【0059】
反応平衡に対する高温の好ましい効果および反応温度への反応速度の鮮明な依存性により、高温反応は、溶媒/ステロイド希釈比に関して、対照的な選択的可能性を示している。1つの選択肢は、高い希釈で操作することにより、徹底的に短縮された反応時間を利用して、生産性を犠牲にすることなく、式6000基質から式5000生成物への平衡変換に対する温度と希釈の両方の好ましい作用を得ることである。実際に、反応をステロイド基質1kg当たり溶媒約数リットルから約60:1、典型的には少なくとも約40:1の範囲の溶媒とステロイドとの比で行う場合には、反応マス1単位体積当たりのより低い生成物濃度がもたらす生産性に対するその作用(比較的低いバッチ反応器荷重で生じる)は、バッチサイクルの短縮により相殺されるので、約65℃の先行技術温度範囲での反応に比べて、生産性と収率の両方を改善することができる。
【0060】
逆の選択肢は、高温でのステロイドの高い可溶性を利用し、国際公開第98/25948号パンフレットの開示により例示されているものよりも低い希釈で操作することである。この選択肢では、溶媒とステロイドとの比は、15:1またはそれ以下の低さであってよい。例えば、操作を、約10:1から約18:1の範囲内の希釈比で行うことができる。このような高いステロイド濃度による反応平衡における不利益は、平衡に対する温度の好ましい作用により実質的に相殺される。反応速度に対する高温と、高いバッチ反応荷重と解釈される反応混合物中での式5000生成物の高い濃度と、連続反応器からの高い生成物流出流との複合的な作用により、生産性はかなり高くなる。単離収率も改善されうる。溶媒媒体中での式5000生成物の所定の可溶性では、反応混合物中に含まれる式5000生成物をより高い割合で、所定の結晶化温度での結晶化により回収することができる。
【0061】
通常、溶媒とステロイドとの比は、比較的低い溶媒とステロイドとの比により支持される生産性と、比較的高い溶媒とステロイドとの比により支持される式5000の化合物に対する選択性との経済的に最適なバランスを元に選択されうる。しかしながら、希釈比の選択における間違いによる不利益は、好ましい反応平衡をもたらすとともに、高い生産性を保証する高温での操作により減ぜられる。
【0062】
式5000の生成物が副生成物に変換することによるか、他の反応によりそれが消費されることによる収率の不必要な低下を回避するために、反応サイクルを好ましくは、十分な収率を達成するために必要な期間を超えて延長しない。いずれの場合も、反応サイクルの終了時の最終収率が、反応の間に達成された最大収率から過度に低下する前に、反応サイクルを停止することが好ましい。好ましくは、最終反応収率が、反応経過の間に達成される最大収率から10%を超えて低下する前に、さらに好ましくは、最終収率が、達成された最大収率から5%を超えて低下する前に、反応を終了させる。いくつかの操作では、インライン分析器、例えば、フーリエ変換赤外分析器を備えて、反応の進行を追い、最適な反応収率で、またはその付近で終了することが、有利である。あるいは、またはそれに加えて、式6000基質の変換および式5000生成物の収率を時間および温度の関数として予測する確立された関係を参照することにより、反応サイクルは制御されうる。例えば、いくつかの操作では、最適な変換と時間および反応温度とを関連させるアルゴリズムを確立し、そのアルゴリズムにより予測された最適な収率の点で、またはその付近で反応サイクルを停止することが有用でありうる。実験反応データに基づき、当業者であれば、このようなアルゴリズムを開発することができる。有用なアルゴリズムは、完全に経験的であってもよいし、運動および平衡式を含んでもよいし、経験的関係および理論的関係の両方のいくつかの組合せを含んでもよい。
【0063】
基質、溶媒、金属アルコキシド試薬およびそれらの濃度の多くの組合せに関して、約95℃から約115℃の範囲の反応温度で、最も好ましい全体性能を達成することができる。この範囲の温度では、基質の95%変換率までの反応サイクル時間は典型的には、約0.25から約2時間、さらに典型的には約20分から約40分であってよい。
【0064】
反応サイクルが完了したら、反応混合物を好ましくは、約60℃より低い温度まで迅速に冷却する。好ましくは、冷却速度は、冷却された反応マス中の式5000生成物の収率(最終収率)が反応サイクルの終了時に達成された最終収率から約10%を超えるまで、好ましくは約5%超えるまで低下しないために十分な速度である。好ましくは1分当たり少なくとも1.25℃の積分平均速度、さらに好ましくは1分当たり少なくとも2℃の速度で、反応混合物を60℃より低くまで冷却する。冷却の積分平均速度が、1分当たり約4℃、5℃、10℃またはさらに20℃を上回ると、さらに好ましい最終収率を達成することができる。しかしながら、本発明方法の所定の適用では、所定の冷却速度で達成することができる収率平均は、冷却速度の達成に関係する装置、操作および維持コストと釣り合う。当業者であれば、生産される生成物、原材料の経費、エネルギー、労働および資本、生成物の値、製造が行われる場所および利用可能な設備に特有なこれらのファクターおよび他のファクターに基づき、最適な冷却速度を迅速に決定することができる。
【0065】
反応サイクルの延長による収率の低下と、冷却の際の収率損失とを考慮して、反応を好ましくは停止し、冷却の後の最終収率が反応経過の間に達成された最大収率よりも15%を超えて、好ましくは10%を超えて、最も好ましくは5%を超えて低下しない十分な速度で、反応混合物を冷却する。70℃より高い温度の関数としての反応速度の急激な上昇および反応サイクルの結果的に急激な短縮の簡単な開示に基づき、当業者であれば、その精度に関して、フーリエ変換赤外などのオンライン分析またはHPLCなどのオフライン分析により支援される直接的な試行錯誤により、最適な反応サイクルに容易に達することができる。反応混合物を冷却するために利用可能な熱交換系の体積に応じて、反応の温度スケジュールを最適化し、一体型反応/熱移動系に関する最適な収率に近づくか達成することができるステップであって、反応成分濃度、達成可能な冷却速度および望ましい変換率などのファクターを考慮する。例えば、限られた熱移動体積を備えた既存の設備で方法を実施する場合には、反応サイクルの間の最高最大収率は、100℃、場合によっては110℃または120℃でも達成されるであろうが、理論的最適値未満、例えば80℃または90℃で、反応を行うことが有利である。
【0066】
いくつかの適用では、特に溶媒がメタノールまたはエタノールであり、溶媒の大気圧沸点を上回る温度で密閉容器中で反応を行う適用では、反応圧力を放出することにより、実質的に瞬間的な冷却を達成することができる。反応容器に真空を掛けることにより、付加的な瞬間的な冷却を行うこともできる。
【0067】
高温で達成可能な迅速な反応速度により、式6000基質と金属アルコキシドとの、または他のアルコキシ基源および塩基との比較的短い接触時間で、反応を連続的に行うことが可能になる。逆反応および副反応が実質的にクエンチされる温度まで、反応生成物混合物を迅速に冷却することを容易にするので、連続的な反応が有利である。連続的な方法では、式6000基質の基質および金属アルコキシドを連続反応ゾーンに連続的または断続的に導入し、式5000生成物を含む反応混合物を反応ゾーンから連続的または断続的に取り出し、瞬間冷却器および/または表面熱交換器に通過させる。このような方法では、規定の期間内での反応系の温度の所定の低減(「冷却温度傾斜」)が、バッチ反応系で製造される反応混合物の全体積に関して同じ冷却温度傾斜を達成するために必要とされる即時冷却負荷よりもかなり低い即時冷却負荷で得られる。結果として、バッチ反応系で必要とされる容量の一部でしかない冷却容量を有する冷却系を使用して、同一の冷却傾斜で、同じ全反応器生産性を実現することができる。
【0068】
連続反応を、攪拌タンクまたはフロー反応器内で行うことができる。式6000基質から式5000生成物への変換は、ゼロ次反応以外であるので、単一連続攪拌タンク反応器のみを備えた反応系は、バッチ反応のサイクルよりもかなり長い反応滞留時間を必要とするはずである。結果として、連続戻し混合反応器の使用は、高温への長期暴露による反応生成物の劣化により、収率損失をもたらしうる。一連の連続攪拌タンク型反応器をカスケード状にすることにより、必要な全反応滞留時間を低減することができる。反応は吸熱反応であるが、正味のエネルギー入力要求は低いので、プラグフローでの反応も実行可能である。この開示の目的に関して、「プラグフロー」とは、実質的な軸逆混合を伴わない管、カラムまたは他の縦方向フロー通路を介してのフローを意味していることを理解されたい。工業的適用では、例えば、管のエルボ、カラムパッキンなどにおいてのように、限局的な軸逆混合を完全に回避することはできないが、フロー反応がもたらす利点を著しく帳消しするには足りない。滞留時間は、バッチ反応サイクルよりも長い必要はなく、逆反応および副生成物反応のための時間積分駆動力が最小化されるので、フロー反応は特に魅力的である。エネルギー要求は低いので、吸熱反応熱を、管状反応器に単にジャケットを備えさせることにより供給することができる。さらに熱媒液を、反応混合物の温度よりもほんの僅か温かい温度でジャケットに通過させることにより、さもなければ方法側面で過剰な壁温度から生じるであろう生成物分解を回避することができる。連続反応モードでの操作はさらに、反応体積に対する生産性の依存性を減らすので、高希釈、例えば、式5000基質1kg当たりの溶媒のリットルとして30:1、40:1またはさらに60:1での操作を容易にする。したがって連続反応系では、資本的要求または維持経費に過剰な影響を及ぼすことなく、反応平衡に対する高希釈のさらなる利点を実現することができる。
【0069】
当業者であれば、最適な操作では、反応温度の選択は、反応平衡に対する温度の相対的作用、式6000基質から式5000の生成物への変換速度および副生成物CNイオンとの反応による7α−アルコキシカルボニルの脱アルキル化などの副生成物反応の速度に左右されることは認めるであろう。さらに、最適な反応温度は、利用可能な即時冷却体積にも左右されうる。したがって、比較的急な冷却温度傾斜を達成することができる設備では、最適な反応温度は、即時冷却体積がそれほど高くない設備においてよりも多少高くなりうる。最適な温度は、反応平衡および動力学自体を関数とし、それと同時に、達成可能な冷却温度傾斜における反応モードの選択を関数として、バッチと連続反応とで、連続戻し混合と連続フロー反応とで変化しうる。しかしながら、反応モードと反応マス冷却設備に関わらず、前記のような好ましい反応温度は、かなり改善された生産性で、式5000生成物の改善された収率を通常はもたらしうることが判明している。例えば、反応の1シリーズでは、
【0070】
【化16】

から生成物:
【0071】
【化17】

のバッチ変換では、62℃から100℃への反応温度の上昇は、式5000生成物の収率を64%から73%に上昇させ、反応サイクルを10時間から約30分に短縮することが判明している。
【0072】
低い水および水酸化物含量;けん化ターゲット
反応が行われる温度に関わらず、反応経過の間に変換される式6000基質1モル当たり約0.2当量以下である水酸化物化合物を含有する反応媒体中で、式6000基質を式5000生成物に変換することが好ましい。典型的には、水酸化物化合物含量は、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の合計を含む。場合によって、水酸化物成分は、水和アルカリ土類金属アルコキシド、即ち(R71O)M(OH)を含んでもよい。水も、望ましくない水酸化化合物に該当し、下記で検討されるように往々にして、他の水酸化物の源であるが、金属アルコキシドの加水分解を介して、その形成の際に直ちに消費される。さらに好ましくは、反応媒体は、反応の間に変換される式6000基質1モル当たり約0.08当量以下、さらに一層好ましくは約0.02当量以下の全水酸化物化合物を含有する。さらに、反応媒体および金属アルコキシド試薬の水酸化物化合物含量と金属アルコキシド含量との関係を前記範囲内に維持することが好ましい。
【0073】
反応媒体または金属アルコキシド試薬溶液に水が混在している場合、水は、金属アルコキシドと反応して、アルコールを遊離させ、遊離金属水酸化物化合物をもたらす。この反応は典型的には、迅速である。アルコキシドと水との反応によって生じているか、さもなければ、アルコキシドの当初形成の際の金属水酸化物とアルコールとの不完全な反応により存在しているかに関わらず、金属水酸化物化合物は、式5000生成物、式6000基質または様々な中間体のいずれかと反応して、望ましくない副生成物を生じさせ得る。遊離金属水酸化物の特に不利な作用の1つは、所望の7α−アルコキシカルボニルを遊離7α−カルボン酸またはその塩にけん化することである。
【0074】
反応媒体からの水分を排除するために、金属アルコキシド試薬を好ましくは、不活性無水雰囲気下で調製し、そのような雰囲気を、式6000基質を含む反応媒体に試薬を、混合または導入する反応ゾーンで維持する。不活性雰囲気を、さらに下記で詳述する生成物回収ステップで維持すると、さらに好ましい。式5000生成物を抽出または結晶化するための貧溶媒として水を使用するステップを除き、生成物回収ステップを無水条件下に行うことが好ましい。
【0075】
様々な好ましい実施形態では、金属アルコキシド試薬および/または反応媒体中の遊離水酸化物を有効に捕捉する犠牲的けん化ターゲットを使用することにより、反応媒体中の遊離金属水酸化物の存在を最小化することができる。好ましいけん化ターゲットには、例えばギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、オルトギ酸トリメチルなどの低分子量のカルボン酸エステルが含まれる。
【0076】
けん化ターゲットは、遊離金属水酸化物と反応して、けん化ターゲットのカルボン酸成分の金属塩と遊離無水アルコールとをもたらす。けん化ターゲットが金属水酸化物と反応する媒体中に、水が存在しているか、その中に侵入している場合、水は、金属アルコキシドが金属水酸化物に変換する際に消費され、次いで金属水酸化物は、けん化ターゲット化合物との反応により消費される。好ましくは、けん化ターゲットを、金属アルコキシド反応成分を含む試薬に導入して、試薬が式6000の基質と接触する前に、全ての水分および遊離金属水酸化物が、試薬から除去されるようにする。しかしながら、けん化ターゲットが、式6000の基質と金属アルコキシドとが反応する反応媒体中にも存在して、溶媒、式6000化合物源またはその他を介して媒体中に導入される何らかの水分を処理し、さらに特には、このような水分が金属水酸化物反応成分と接触すると生じる金属水酸化物を排除することがさらに望ましい。
【0077】
好ましくは、けん化ターゲットは、アルコキシカルボニル基Rに対応するアルコールのエステルを含む。即ち、けん化ターゲットは好ましくは、R71OHのエステルである。エステルのカルボキシレート成分は、好ましくはホルメートまたはオルトホルメートである。したがって、例えば、エプレレノンを調製する際には、けん化ターゲットは最も好ましくは、ギ酸メチルまたはオルトギ酸トリメチルである。
【0078】
好ましくは、金属アルコキシドのアルコール溶液を生じさせるために有効な比で、アルカリ金属水酸化物をアルコールと接触させることにより、試薬溶液または分散液を調製する。好ましくは、反応を実質的に無水条件下で行う。適切には、試薬溶液中で生じる金属アルコキシド濃度は、約7から約25モル%、典型的には、約15から約50重量%である。したがって、金属水酸化物に対して過剰のアルコールを使用して、水酸化物が十分に反応することを保証する。好ましくは、アルコキシドが実質的にまたは完全に溶解すれば、アルコールの割合は十分である。アルコール分解反応が完了したら、ギ酸メチルまたは他のけん化ターゲット化合物をアルコキシド溶液または分散液に導入することができる。あるいは、またはそれに加えて、けん化ターゲット化合物を、式6000基質化合物を金属アルコキシド試薬と接触させる反応媒体に別に導入することもできる。いずれの場合でも、アルコールと金属水酸化物との不完全な反応、金属水酸化物を介して導入された水分、試薬溶液を調製する際のアルコールおよび/または他の源、反応媒体がそれから調製されたステロイドおよび/または溶媒中の水分または周囲からの水分の侵入に由来するかに関わらず、任意および全部の源に由来する水酸化物成分に対して化学量論的に過剰に、けん化ターゲットを好ましくは導入する。全ての源からの水酸化物に対して50%のけん化ターゲット過剰が、全ての遊離水酸化物の完全な消費を保証するためには好ましい。金属水酸化物およびアルコールの無水源を使用するかどうかに関わらず、試薬溶液の金属アルコキシド含量に対して約2から約25重量%、さらに典型的には約5から15重量%の割合で、けん化ターゲットを導入すれば、通常は十分である。
【0079】
ステロイド基質を含む反応媒体に試薬を導入する前に、けん化ターゲット化合物を金属アルコキシド試薬溶液または分散液に加える際、試薬溶液/分散液を好ましくは、一定期間、周囲温度またはやや高めた温度に維持して、製造の際に試薬溶液に含まれるか、時間に伴って水分の消費により形成される全ての残留水酸化物を捕捉する。したがって、式6000基質を式5000に変換する際には、使用前に、けん化ターゲット化合物を含有する試薬溶液を、好ましくは少なくとも約8時間、さらに好ましくは少なくとも約24時間、さらに一層好ましくは少なくとも約48時間、最も好ましくは少なくとも約72時間、穏やかな攪拌下に維持する。
【0080】
式6000基質から式5000生成物への変換を実施する際には、反応容器に好ましくは、ステロイド基質および溶媒、好ましくはR71OHに対応するアルコールならびに金属アルコキシドをアルコール中に含む試薬溶液を充填する。有利には、ギ酸メチルまたは他のけん化ターゲット化合物を、生じた混合物に導入する。試薬溶液を調製する際に過剰のけん化ターゲットを使用すること、および/またはけん化ターゲット化合物を、式6000基質と共に充填されている溶媒を含む反応媒体に加えることにより、この作用を達成することができる。前記のように、アルカリ金属アルコキシドを好ましくは、式6000基質に対して少なくとも約1.25、好ましくは約1.5から約1.8のモル比で加える。次いで反応を、周囲温度から150℃、好ましくは少なくとも約50℃、さらに好ましくは少なくとも約70℃の温度で行うことができる。最も好ましくは、好ましい範囲内で、前記制御原則に従って、高い反応温度を選択する。国際公開第98/25948号パンフレットに記載されているように、金属アルコキシドを好ましくは、2回の増量で、基質に対して約1.6の正味モル比で加える。第1の増量を例えば、基質に対して約1のモル比で加え、その約90分後に、第2の増量を基質に対して約0.6のモル比で加えることができる。しかしながら、そこに溶解または分散されている式6000基質を含む溶媒を含有する反応媒体が初めに、反応に好ましい範囲の高温に加熱されている場合には、全金属アルコキシド充填物を一度に加えることができることが今では判明している。いずれの場合にも、アルコキシドを典型的には、当初は基質に対して少なくとも約0.5の比で、任意の残りの充填分は、その後、増量させながら加えることができる。
【0081】
ギ酸メチルなどのエステルは、KOHと反応して、エステルが由来する酸の塩を形成し、遊離のアルコールを放出する。したがって、エステルがギ酸メチルである場合、けん化ターゲット反応の生成物は、ギ酸カリウムおよびメタノールである。下記で検討するように、反応混合物から式5000の生成物を回収するために、様々なスキームを利用することができる。これらの多くは最終的に、その溶液から式5000生成物を結晶化させることを必要とする。ギ酸カリウムまたはけん化ターゲットエステルの酸成分の他の塩は、母液に残留し、最終的に、液相パージで除去される。メタノールは、液相と混合して、さらに、溶媒成分の一部として機能する。これは、反応混合物および/または結晶化母液を処理する間に除去される。
【0082】
反応混合物からの式5000生成物の回収
式5000の生成物を結晶化により回収する。結晶化および回収を行うために、複数のスキームを利用することができる。
【0083】
最も簡単には、何らの付随的調節ステップを伴うことなく、反応混合物を結晶化温度まで冷却させる。収率を最大化するために、結晶化を好ましくは、低温、例えば、5℃より低い、さらに好ましくは約0℃より低い、さらに一層好ましくは約−5℃より低い温度で行う。例えば、エプレレノンのための3−ケト−11α−7α−メトキシカルボニル−17−スピロブチロラクトン(「ヒドロキシエステル」)中間体の場合には、結晶化を簡便には、約−25℃から約−10℃で行う。次いで、結晶式5000生成物を、遠心分離または濾過により結晶化母液から分離する。フィルターケークを好ましくは、適切な溶媒、簡便には、反応のために使用される溶媒と同じ溶媒で洗浄する。
【0084】
式5000生成物を反応混合物から直接結晶化させ、濾過または遠心分離により回収する場合、フィルターまたは遠心ケークは実質的に、シアン化物塩および他の無機汚染物質を含まないので、水洗浄は、このような汚染物質を除去するためには必要ないことが判明している。無水または実質的に無水のアルコールを洗浄のために使用すると、洗浄されたケークは、水分を実質的に含まないので、これにより、乾燥ステップが簡単になり、乾燥の間にケークが加水分解により分解されることが回避される。さらに、実質的に無水の母液が得られ、ここから、下記の方法で、ステロイドを抽出により回収することができるが、水性抽出剤と任意に接触させる前にステロイドを水不混和性溶媒に場合により加えることもできる。
【0085】
様々な選択的方法回収スキームは、濃縮、水添加および/または反応混合物からの抽出を含む。
【0086】
例えば、反応溶液を例えば水性HClまたは硫酸などの鉱酸で酸性化し、蒸留し、酸性化混合物を濃縮し、その間に、酸性化により生じたHCNをストリッピング除去し、周囲温度まで冷却することにより、式5000の化合物を単離することができる。次いで、ストリッピングされた濃縮物をさらに冷却して、生成物を結晶化させることにより、または水および塩化メチレンまたは酢酸エチルなどの有機溶媒を加えて、ステロイドを含む有機抽出物およびシアン化物塩を含むラフィネートを生じさせることにより、式5000生成物を回収することができる。アルコール性反応溶媒は典型的には、2つの相のいずれかに有意に分配される。
【0087】
反応媒体が低級アルコールを含む場合、水を濃縮および酸性化された反応混合物に加えて、その中の式5000生成物の可溶性を低下させ、生成物を水性アルコール媒体から結晶化させることにより、生成物回収を行うこともできる。この選択肢での生成物の回収では、反応期間が終了した後に、蒸留により反応溶媒(例えばメタノール)およびHCNを除去するステップであって、蒸留の前に鉱酸(塩酸または流酸など)を加え、蒸留の後に水を加える。鉱酸を1回ステップで、複数回ステップで、または連続して加えることができる。好ましい実施形態では、鉱酸を連続的に約10から約40分間、さらに好ましくは約15から約30分間にわたって加える。同様に、水を蒸留器底部に1回ステップで、複数回ステップでまたは連続的に加えることができる。水を加える前に、濃縮反応混合物を好ましくは、約50℃から約70℃、典型的には約60℃から約70℃の温度まで冷却させる。次いで、水を、好ましくは約15分から約3時間、さらに好ましくは約60分から約90分にわたって連続的に、加え、その間、温度をほぼ一定に維持する。水の添加が進むにつれて、式5000の生成物は、蒸留器底部から結晶化し始める。水を混合物に加えたら、希釈反応混合物をほぼ同じ温度に約1時間維持し、次いで、さらに約4から約5時間掛けて約15℃まで冷却する。混合物を約15℃に約1から2時間維持する。15℃でのより長い保持期間は、ステロイド種の平衡をシフトさせて、混合物中での5−CN−7α−アルコキシカルボニル種(「シアノエステル」)の高い収率をもたらす。この回収モードにより、抽出操作なしに、高品質の結晶生成物が得られる。
【0088】
生成物回収が貧溶媒としての水の使用を含む場合、HCNをストリッピングするための蒸留の前または間に、水および酸を加えることができる。蒸留前の水および酸の添加により、操作が簡単になるが、蒸留の間に徐々に添加することにより、蒸留器内の体積を実質的に一定に維持することができる。蒸留が進行するにつれて、式5000の生成物は、蒸留器底部から結晶化する。
【0089】
式5000の化合物が本願明細書に記載されているようにエポキシメクスレノン(epoxymexrenone)を調製する方法での中間体として使われる場合には、式5000の化合物を精製するための複数回の溶媒抽出は必要ないことが判明している。実際に、このような抽出を往々にして完全に省くことができる。溶媒抽出を生成物精製のために用いる場合には、溶媒洗浄液にブラインおよび苛性洗浄液を補足することが望ましい。しかし、溶媒抽出が省かれる場合には、ブライン洗浄液も省かれる。抽出および洗浄を省くことにより、方法の生産性が相当に増強されるが、収率または生成物品質が犠牲になることもなく、洗浄された溶液を硫酸ナトリウムなどの乾燥剤で乾燥させる必要も省かれる。
【0090】
結晶化母液からのステロイドの回収
前記で記載したように、式5000の生成物を好ましくは、結晶化により反応混合物から回収する。結晶化の前に、反応溶液を前記のように酸性化し、濃縮することもできる。
【0091】
母液を結晶化した固体から分離する温度で、結晶化母液を式5000の化合物で本質的に飽和させる。5−炭素が非置換である典型的には好ましい式5000の生成物化合物に加えて、母液は、未変換の式6000基質および、式5000の生成物および残留シアン化物イオンと典型的には平衡しうる式Cの5β−シアノ−7α−アルコキシカルボニル副生成物を含む他のステロイドを含む。これらのステロイドを回収することができない限り、このことは、式6000の化合物の収率においてかなりの不利益を示している。本願明細書でさらに記載するように、いくつかの任意選択のかなり有利な実施形態では、ステロイドを母液から回収し、式5000生成物の収率を増強することができる。
【0092】
ステロイドを回収するステップを、平衡をシフトさせて、未変換の式6000基質、式C副生成物および/または他の中間体および副生成物をC−5で非置換の式5000の好ましい生成物に変換する手段と組み合わせることができる。ステロイドを回収し、および/または平衡をシフトさせるために使用することができる手順では、(i)母液からステロイドを抽出し、(ii)前記対応する一次生成物回収スキームに一般に同等な方法で、酸性化し、水を加えて、ステロイドを結晶化させ、(iii)母液に含まれるシアン化物イオンを消費するためにケトンを加え、(iv)母液を加熱することにより再平衡させ、(v)シアン化物を沈殿させるために金属化合物を加える。
【0093】
母液抽出
好ましい実施形態では、一次結晶化母液に残留したステロイドを、抽出により回収する。例えば、反応を、低級アルコールなどの水混和性溶媒中で行う場合に、この方法は有効であり、一次回収プロセスは、結晶化溶媒を含み、生成物の式5000化合物のフラクション、未反応の式6000化合物、式5000の化合物に変換することができる他のステロイドおよびシアン化物イオンなどの成分がその中に残留している母液をもたらす。このようなステロイドを含む実質的に水不混和性の溶液を調製する。抽出ステップでは、この水不混和性溶液を、液/液抽出ゾーン中で水性抽出媒体と接触させる。シアン化物イオンを含む水性ラフィネートと、式5000の化合物、式6000の化合物および他のステロイドを含む有機抽出物相とを含む2相抽出混合物が生じる。水混和性溶媒を含み、有機抽出物から得られるステロイドを含む抽出物と溶媒交換することにより典型的には、リパルプ溶液が生じる。このリパルプ溶液を処理すると、そこに含まれるステロイドを回収することができる。さらに詳細には、リパルプ溶液を処理して、式6000の化合物を式5000の化合物に変換し、追加の式5000生成物を回収することもできる。
【0094】
抽出のために、母液中に残留している成分を、典型的には、母液自体を含むか、母液に由来する抽出供給溶液に供給する。好ましい実施形態では、抽出供給溶液は、母液から結晶化溶媒を蒸発または蒸留させることにより生じさせた濃縮物を含む。抽出供給溶液は実質的に、それ自体水混和性であるが、水不混和性溶媒と混合して、ステロイドの実質的に水不混和性溶液をもたらし、これを、抽出ゾーンで水性抽出媒体と接触させる。水性媒体の存在下に抽出ゾーン内で、または水性媒体と接触させる前に、例えば、抽出ゾーンの外側での予備混合ステップで、水不混和性溶媒と抽出供給溶液とを混合することにより、水不混和性ステロイド溶液を調製する。水不混和性ステロイド溶液と水性媒体との接触により、シアン化物イオンが水性相に移動し、式5000および式6000の化合物を含むステロイドが有機相に移動する(または、このようなステロイドの有機相への残留)。典型的な水混和性結晶化溶媒での分配係数は、この溶媒の大部分が通常は、相のいずれかに通常は分布するような分配係数である。好ましくは、抽出ゾーンを攪拌して、相間での物質移動の速度を増強する。相の分離により、ステロイドを含有する有機抽出物および存在しうるシアン化物および他の塩を含有する水性ラフィネートが得られる。
【0095】
好ましい抽出およびステロイド回収スキームを下記でさらに詳述する。
【0096】
抽出の前に、過剰の溶媒を除去するために蒸留または蒸発により、母液を好ましくは濃縮する。ステロイドの回収を最大化するために、母液を好ましくは、その当初体積の半分以下まで、好ましくは当初体積の1/3まで、典型的には、当初体積の約1/4から1/6まで、例えば、蒸留器底部での最少攪拌体積まで、即ち、攪拌機インペラの浸漬を保証し、および/または攪拌の空洞形成または機械的不安定性を回避する最少体積まで濃縮する。しかしながら、母液を濃縮する規模がステロイドのかなりの沈殿をもたらすには不十分であることが望ましい。シアン化物イオンによる式5000ステロイドの脱アルキル化を最小化するために、母液を好ましくは、減圧下に約60℃未満、さらに好ましくは約40℃未満、最も適切には約20℃から約40℃の温度で濃縮する。このような温度で蒸留または蒸発を行うためは、母液を減圧下に濃縮すればよい。例えば、結晶化溶媒がメタノールである場合には、母液の濃縮を約100から約500mmHgの範囲内、さらに典型的には約200から約400mmHgの範囲内の絶対圧力で行えばよい。相対的に低い温度での蒸留により、7α−アルコキシカルボニル置換基の脱アルキル化の規模は小さくなる。
【0097】
次いで、濃縮された母液を、抽出供給溶液のためのステロイド源として使用するが、これが、抽出供給溶液を実際に構成している。典型的には、濃縮された母液は、式5000生成物(C−5で非置換)約1から約3重量%ならびに、例えば式6000基質約0.3から約0.6重量%および式Cの5β−シアノ−7α−アルコキシカルボニル副生成物約0.2から約1.0重量%を含む他のステロイド約0.5から約1.5重量%を含有する。さらにこれは典型的には、シアン化物イオン約0.5から約1.5重量%および金属Mカチオン約0.5重量%から約1.5重量%を含有することもある。
【0098】
好ましくは、一方を、水性媒体と接触させる前に、濃縮された母液(抽出供給溶液)を水不混和性溶媒と混合する。この予備混合ステップを簡便には、抽出ゾーンの外側で行うこともでき、その後、生じた実質的に水不混和性ステロイド溶液を、抽出ゾーンに導入することができる。好ましくは、抽出供給溶液および水不混和性溶媒を、濃縮される母液1体積部当たり、溶媒約0.2から約1.0、さらに好ましくは約0.3から約0.6体積部の体積比で混合する。生じたステロイドの水不混和性溶液は典型的には、水不混和性溶媒約10%から約80重量%、さらに典型的には約25%から約75%、低級アルコール約20から約90重量%、さらに通常は約30%から約80%、式5000生成物(C−5で非置換)0.5から約4重量%、例えば、式6000基質約0.02から約0.2重量%および式Cの5β−シアノ−7α−アルコキシカルボニル副生成物約0.03から約5.0重量%を含む他のステロイド約0.2から約3重量%を含有する。
【0099】
濃縮された母液と水不混和性溶媒とを予備混合することにより、ステロイドを抽出を通して有機相に優先的に分配することができ、そのことにより、これらを、加水分解攻撃から、特に7α−アルコキシカルボニルから7α−カルボキシへの分解から保護することができる。
【0100】
あるいは、抽出供給溶液、水性抽出媒体および水不混和性溶媒を全て直接に、かつ独立に、液/液抽出ゾーンに導入することができ、この例では、抽出供給溶液および水不混和性溶媒を混合して、このゾーン内で水不混和性ステロイド溶液を形成させる。一般にはあまり望ましくない別の選択肢では、生じた混合物と水不混和性溶媒とを抽出ゾーンで接触させる前に、水および抽出供給溶液を合わせてもよい。抽出が進行するにつれて、抽出供給溶液と水性媒体との組合せにより生じている液相は、水性抽出媒体として機能し、物質移動が進行するにつれて、水不混和性ステロイド溶液が、抽出ゾーン中で形成される。加水分解攻撃にステロイドが不必要にさらされ、水不混和性溶媒と接触する前にステロイドの沈殿が生じうるので、この選択肢は一般に、あまり好ましくない。しかしながら、これは、抽出供給溶液および水性媒体とを組み合わせた後に抽出が合理的に即時に進行する場合、特に抽出を下記の条件下に行う場合には、便利な手法である。
【0101】
混合順序に関わらず、抽出を好ましくは、抽出の間のステロイドの加水分解を最小化するために役立つ冷却下に行う。例えば、約15℃以下、さらに好ましくは約10℃より低い、最も好ましくは約5℃より低い、最も典型的には約−15℃から約10℃の範囲内の温度で抽出を行うことができる。水性抽出媒体を好ましくは、抽出ゾーンで水不混和性ステロイド溶液と接触させる前にこのような範囲の温度まで冷却する。水性抽出媒体が、電解質を実質的に含まない水からなる場合、これを最適には、約0℃より高い、例えば、0.5℃から5℃の温度まで冷却する。結晶化溶媒およびシアン化物イオンは、抽出の間に水性相に移動するので、さらに0℃より低い、例えば0℃から−10℃の温度で、抽出を操作することが典型的には便利である。水不混和性ステロイド溶液を、前記範囲内の温度にし、その後、これを水性抽出媒体に接触させると、さらに好ましい。抽出供給溶液および水不混和性溶媒を独立に抽出ゾーンに導入する場合、それぞれを、抽出ゾーンで相互に接触させる前に、抽出ゾーン温度に、またはその付近まで温度を予備的に冷却することがさらに好ましい。抽出を好ましい条件下で行う場合、抽出供給溶液中に含まれる式5000の化合物の10%以下が、抽出の間に加水分解される。典型的には、式5000の化合物の加水分解規模は、5%未満、さらに典型的には1%未満である。
【0102】
ステロイドを有機相に移動させ、シアン化物を無機相に移動させるには、ほんの数分の混合のみが必要である。好ましくは、約75分以下、さらに好ましくは1時間以下、さらに好ましくは、30分以下の混合の後に、相を分離する。接触時間を最少化することはさらに、加水分解攻撃からステロイドを保護するために役立つ。したがって、抽出ゾーンで水性抽出媒体と接触させる前に、抽出供給溶液および水不混和性溶媒を好ましくは予備混合する一方で、抽出を前記接触時間限界内で冷却下に行う場合には、水性抽出媒体、水不混和性溶媒および抽出供給溶液を独立に同時に、抽出ゾーンに導入する場合であっても、ステロイドへの加水分解攻撃は通常、最少である。
【0103】
抽出の際に使用することができる水不混和性溶媒には例えば、塩化メチレン、酢酸エチル、トルエン、およびキシレンが含まれる。塩化メチレンが特に有効である。抽出物からのステロイドの回収を容易にするために、特に、式5000生成物にさらにそれを変換させるための再平衡のために、水不混和性溶媒は、ステロイドの後続の再平衡が行われる低級アルコール溶媒よりも揮発性で、さらに、一次結晶化が行われる(反応も典型的には行われる)溶媒よりも揮発性であることが好ましい。例えば、好ましい水不混和性抽出溶媒は、大気圧で、または簡便な準大気圧蒸留圧力で、再平衡反応ステップのための媒体として使用されるアルコールよりも少なくとも10℃低い、好ましくは少なくとも15℃低い沸点を有する。下記でさらに記載するように、このような差により、水不混和性溶媒と有機抽出物との分離が容易になる。抽出溶媒の大気圧沸点が、約70℃以下、好ましくは約50℃以下であると、特に好ましい。有機溶媒と水性ラフィネートとの分離を容易にするために、水不混和性溶媒と水性抽出媒体との比重差が、少なくとも約0.05、さらに好ましくは少なくとも約0.10、さらに好ましくは少なくとも約0.20であると、さらに好ましい。
【0104】
好ましくは、抽出のために組み合わされる水性抽出媒体と抽出供給溶液と水混和性溶媒との相対量または割合は、水性媒体と、抽出供給溶液および水不混和性溶媒の合計との体積比が、約0.3から約1.5、好ましくは約0.4から約0.8であり、水性ラフィネートと有機抽出物との体積比が、約0.5から約5、典型的には約0.8から約3、さらに典型的には約1から約2.5であるような割合である。このために、水不混和性溶媒と抽出供給溶液との比は典型的には、約0.3から約1.0であり、水性媒体と水不混和性溶媒との比は典型的には、約1から約3であり、水性媒体と抽出供給溶液との比は典型的には、約0.5から約1.5である。抽出ゾーンは、攪拌タンク形混合機または、例えば向流多段抽出カラムなどの液/液接触手段を含んでいてもよい。
【0105】
前記のように、母液中のステロイドは、実質的に有機相に分配される一方で、シアン化物および他の無機塩は、ほぼ当量的に水性相に分配される。水不混和性溶媒が塩化メチレンである場合、ステロイドでの分配係数は典型的には、約3から約8の範囲内である。通常低級アルコールを有する水混和性結晶化溶媒は、有機および水性相の間に分布しており、各相にかなりの成分を伴う。水不混和性溶媒が、塩化メチレンの特性に匹敵する特性を有する場合、有機抽出物は通常、低級アルコール約10から約40重量%、シアン化物約0.3重量%未満、式5000生成物(5−炭素で非置換)約0.5から約8重量%、式6000基質約0.1から約1.2重量%および式Cの5β−シアノ−7α−アルコキシカルボニル副生成物約0.2から約5重量%を含むステロイド約0.5から約10重量%を含有する。有機抽出物はさらに、溶解および混入水を約1%未満の割合で含有してもよい。
【0106】
一段階抽出では、水性ラフィネートは典型的には、シアン化物イオン約0.3から約2重量%およびMカチオン約0.3から約2重量%を含有する。水性ラフィネートを追加の体積の水不混和性溶媒と接触させる第2抽出ステップにより、ステロイドの回収を僅かに改善することができる。しかしながら、僅かに改善されたステロイド回収の値は、抽出の第2段階で水性ラフィネートから抽出することができる不純物がリパルプ溶液中に存在することから生じうる欠点を補い得ない。第2抽出ステップを行う場合にはさらに、約0.5から約1.5の水不混和性溶媒と水性ラフィネートとの比で、冷却下に行うことが好ましい。第2有機抽出物のステロイド含量は通常、非常に低い。これを、1つまたは複数の追加の抽出段階に掛けて、または掛けずに、水性ラフィネートを、プロセスから、シアン化物および他の無機不純物のパージとして除去する。
【0107】
ステロイドを回収する準備として、任意の第2有機抽出物を好ましくは、一次有機抽出物と合わせる。一段階でも組合せ段階でも、有機抽出物を蒸留して、水不混和性有機溶媒を除去し、水混和性溶媒を主に含む媒体中にステロイドを含む濃縮物を生じさせる。有機抽出物が、通常のように、重要ではない割合を超えて結晶化溶媒を有する場合、濃縮物の水混和性溶媒成分は結晶化溶媒を含む。好ましくは、有機抽出物の蒸留を、約50℃以下、さらに好ましくは約40℃以下の温度で行う。例えば、一次結晶化溶媒がメタノールであり、水不混和性溶媒が塩化メチレンである場合には(または2種の溶媒の揮発性が、メタノールおよび塩化メチレンにそれぞれ匹敵する場合には)、蒸留を好ましくは、約300mmHgから大気圧の範囲内の頭部圧力および約20から約40℃の範囲内の底部温度で行う。直通引継ぎ蒸留(straight takeover distillation)が、必要な分離に有効である。精留は必要ない。これに関して、蒸留ステップを単純な蒸発と同一視することができる。
【0108】
蒸留は、有機抽出物から残留水分をストリッピングするためにも有効である。この方法で使用されるメタノールおよび塩化メチレンなどの好ましい溶媒のいくつかは、大気圧で水の沸点未満の温度で沸騰するが、塩化メチレンなどの溶媒のいくつかは、水と低沸点共沸混合物を形成し、これは、抽出物から残留水分を除去するために有効である。
【0109】
場合によっては、水不混和性溶媒の一部を除去した後に、水混和性溶媒を有機抽出物に蒸留の前に、または底部フラクションに蒸留の間に導入する。このような水混和性溶媒は好ましくは、水不混和性溶媒よりも低い揮発性を有する。メタノールが特に適している。水不混和性溶媒の一部を除去した後に、水混和性溶媒を導入する場合には、水不混和性溶媒およびステロイド残留物の最少攪拌体積が蒸留容器中で達成されるまで、当初蒸留を適切に続けることができる。次いで、水混和性溶媒を加え、水混和性溶媒が蒸留物の主なフラクションとして生じるまで、典型的には、ポット温度が優勢な圧力(簡便には、水不混和性溶媒が塩化メチレンを含むこれらの実施形態では大気圧)で水混和性溶媒の沸点にほぼ達する点まで、蒸留を再び続ける。蒸留が完了した後では、底部フラクションはリパルプ溶液を構成しており、これは、ステロイドを回収するためのさらなる処理を受ける。好ましくは、蒸留の前または間に加えられる水混和性溶媒は、一次結晶化溶媒と同じであり、さらにこれは、好ましくは反応溶媒と同じである。本発明の特に好ましい実施形態では、いずれの場合の水混和性溶媒も、メタノールを含み、水不混和性抽出溶媒は、塩化メチレンを含む。
【0110】
底部フラクション中の水混和性溶媒とステロイドとの比がステロイドを再平衡させて、式5000の追加の生成物を生じさせるために適するまで、蒸留を適切に継続することができる。例えば、残留物中の溶媒とステロイドの比が約10:1から約30:1、好ましくは約15:1から約22:1(溶媒リットル/全ステロイドkg)の範囲内になるまで、水混和性溶媒を除去することができる。蒸留器ポット中での溶媒/ステロイド比が、ステロイド再平衡に望ましい比未満のレベルまで低下したら、水混和性溶媒を再び加えて、適切な組成のリパルプ溶液を供給する。
【0111】
抽出物蒸留からの濃縮物を、抽出で使用するために再循環することもできる。場合によって、これを冷却し、抽出ゾーンに直接通すか、または抽出供給溶液と混合する予備混合ステップに通して、ステロイドの水不混和性溶液を生じさせ、次いでこれを、抽出ゾーンで水性抽出媒体と接触させることができる。
【0112】
溶媒交換を行うためのさらに別の選択肢では、有機抽出物蒸留からの底部フラクションを、追加の水混和性溶媒で希釈し、残留物からのさらに完全な水不混和性溶媒の除去を保証するための第2の蒸留処理に掛けることができる。この選択肢を実施する際には、ステロイド全てが、有機抽出物の当初蒸留の残留物中に溶液の形態で残ることは、必須ではない。望ましい場合には、実質的に全ての溶媒を、第1蒸留操作で除去し、水混和性溶媒を残留物に加えて、これを溶液に戻すこともできる。第2の蒸留操作を行う場合には、溶媒を再び、望ましい程度まで除去することができる。残留溶媒が、ステロイドを溶液の形態に維持するために十分である場合には、第2蒸留の底部フラクションは、ステロイドをさらに処理するためのリパルプ溶液として役立つ。さもなければ、残留物に水混和性溶媒を加えることにより、リパルプ溶液を調製することもできる。
【0113】
リパルプ溶液に含まれるステロイドを、ステロイド供給の一部として反応ステップに再循環させることもできるし、式5000生成物の収率を増大させるために再平衡ステップに掛けることもできる。いずれのケースでも、リパルプ溶液は典型的には、式5000生成物(5−炭素が非置換である)約0.5から約6重量%、式6000基質約0.1から約5重量%および式Cの5β−シアノ−7α−アルコキシカルボニル中間体約0.01から約5重量%を含むステロイド約1から約10重量%を含有してよい。
【0114】
一定の好ましい実施形態では、一次結晶化溶媒は、低級アルコールであり、ステロイド回収率は、アルゴリズム:
R=KD/(1+D(K−1))
から決定することができ、式中:
=母液中の利用可能なステロイドの濃度、
M=母液体積、
f=母液を濃縮する際に除去される低級アルコールのフラクション、
d=加えられる水不混和性溶媒の体積、
h=加えられる水性抽出媒体の体積、
mfh=水−濃縮母液相中の利用可能なステロイドの濃度、
=相分離後の有機抽出物相中の利用可能なステロイドの濃度、
=分配係数;有機抽出物相中の利用可能なステロイドの濃度と水性相中での濃度の平衡比、
R=回収率=有機抽出物相中のステロイドのモル/(母液中のステロイドのモル)、および
Mf=h+d、
/f=Cmf
=C/Cmfh
(M(1−f)+h)Cmfh+dCMcm
D=d/M、
H=h/M。
【0115】
このアルゴリズムに基づき、母液を濃縮する際に除去される低級アルコールの体積割合および抽出供給溶液と混合される水および水不混和性溶媒の体積割合を選択して、実質的に最大の回収率(R)を得る。
【0116】
再平衡
リパルプ溶液を処理して、そこに含有されるステロイドを、式5000の化合物に、好ましくは5−炭素で非置換の式5000種に変換することができる。こうして変換することができる最も顕著なステロイド成分は、式6000の化合物および式Cのシアノエステルである。このリパルプ処理は、本願明細書では再平衡と記載されているが、通常これは、アルコキシ源および塩基をリパルプ溶液に加え、ステロイドを式5000化合物に変換することを伴うか、必要とする。
【0117】
好ましくは、リパルプ溶液を、新たなアルコキシ基源と混合して、未反応の式6000基質から式5000生成物への変換を促進する。アルコキシ基源が塩基以外である場合、塩基を通常は、リパルプ溶液にさらに加える。それというのも、一次反応に導入された塩基は大抵、抽出プロセスで除去されているか、一次反応ステップで消費されているためである。好ましくは、金属アルコキシド試薬溶液をリパルプ溶液に、リパルプ溶液の組成に左右されうる相対的な割合で加える。金属アルコキシド試薬溶液の組成は慣用的には、式6000基質から式5000生成物への当初変換で使用するために前記された組成と同じか、同等である。アルコキシド試薬を好ましくは、溶液中の式6000基質と5−シアノヒドロキシエステルとの合計に対して金属アルコキシド少なくとも約1.25当量、さらに好ましくは少なくとも約1.5当量の比でリパルプ溶液に充填する。再平衡を好ましくは50℃を上回る、さらに好ましくは少なくとも約70℃、最も典型的には約80℃から約95℃の温度で、約0.5から約6の期間行うが、反応期間は、一次反応ステップに関して前記で検討されたように温度に反比例して変化する。
【0118】
新たな平衡に達したら、リパルプ再平衡反応溶液を冷却し、そこから、追加の式5000生成物を結晶化させる。冷却を好ましくは、一次反応ステップに関して前記した迅速な速度で行って、冷却ステップの間の式5000生成物から式6000基質への逆反応を最小化する。結晶化も、本来の反応混合物から式5000生成物を回収するために前記した方法で実質的に行う。場合によっては、再平衡の生成物をリパルプ反応溶液の誘導体、例えばその濃縮物から結晶化させることもできる。
【0119】
犠牲的けん化ターゲット化合物を、リパルプ溶液に導入して、金属アルコキシド試薬またはその他の汚染物質として溶液中に導入されているかもしれない遊離ヒドロキシドを捕捉することもできる。例えば、抽出ステップからの有機抽出物中に混入された水分は、特に、選択された水不混和性溶媒が水と低沸点共沸混合物を形成しない場合には、抽出濃縮ステップで完全に除去されなければならない。使用することができる犠牲的けん化ターゲットは、一次反応ステップに関して前記したものと同じであり、リパルプ再平衡溶液中での濃度は好ましくは、一次反応ステップに関して前記した濃度とほぼ同じである。ギ酸メチルおよびオルトギ酸トリメチルが、特に好ましい。
【0120】
さらに別のステロイド回収スキームでは、ステロイドを式5000生成物にさらに変換するために、リパルプ溶液を当初反応ステップに再循環させることができる。この場合、プロセス全体は、一次反応ゾーンで式6000化合物をアルコキシ基源と接触させる当初反応ステップを含む。回収されたステロイドをリパルプ溶液中で一次反応ゾーンに再循環させ、そこで、追加の式5000の化合物(C−5で非置換)を、回収されたステロイド中に含まれる式6000の化合物または式Cの化合物を変換することにより製造する。この実施形態の変法では、反応を一次反応ゾーン中で部分的な変換率までしか進行させないこともできる。即ち、式6000化合物の変換率が、反応を終了させる温度で平衡まで進む前に、反応を終了させる。前記任意の回収スキームに従い、好ましくは、酸性化することなく、反応溶液から直接的に結晶化させることにより、式5000生成物を反応溶液から回収する。次いで、典型的には前記母液抽出法に従い、未反応の式6000化合物および他のステロイドを結晶化母液から回収し、好ましくは水不混和性抽出溶媒を水混和性溶媒、好ましくは一次反応ゾーンで使用される溶媒と同じ溶媒に代える溶媒交換により、ステロイドを有機抽出物から回収する。前記のように未反応の式6000基質を式5000生成物に変換するための一次反応ゾーンに、生じたリパルプ溶液を再循環させることができる。
【0121】
式6000基質、塩基およびアルコキシ基源が連続的または断続的に導入され、式5000反応混合物が連続的または断続的に除去されうる連続一次反応ゾーンで、部分的な変換を有利に行うことができる。プラグフロー反応器を変換のために使用することができる。即ち、一次反応ゾーンは、プラグフロー反応経路を含む。アルコキシ基源は好ましくは、対応するアルコール溶媒中に金属アルコキシドを含むエステル化試薬を含む。エステル化試薬の組成は好ましくは、一次反応ステップに関して前記した組成と同じか、匹敵し、金属アルコキシドと式6000基質との比も好ましくは、一次反応に関して前記した範囲である。式6000基質から式5000生成物への変換を好ましくは、一次反応に関して前記した範囲の高温で行う。反応経過の間に達成された最大収率から10%を超えて最終反応収率が悪化する前に、反応を好ましくは終了させ、一次反応に関して前記した速度で、さらに、いずれの場合でも、冷却後の最終反応収率が反応の終了時の最終収率を10%を超えて下回らないような十分な速度で、反応混合物を冷却することが好ましい。
【0122】
前記のように、プラグフローまたは他の連続反応器を部分的な変換ではなく完全な平衡変換まで操作してもよい。いずれの場合にも、ステロイドを、前記方法で母液から回収することができる。回収されたステロイドを、リパルプ溶液中で再平衡させることもできるし、リパルプ溶液を、式6000基質および他のステロイドを式5000生成物化合物に変換するために一次反応ゾーンに再循環させることもできる。
【0123】
プロセスフローシートの説明
図1は、エプレレノンまたは関連化合物を調製する際に有用なヒドロキシエステル中間体へのジケトン中間体の変換に、本願明細書に記載の改善を組み入れる方法を示すフローシートを描いている。
【0124】
メタノールを含む反応媒体中にジケトンを含む溶液を調製する。ジケトンは通常、式VI−1に対応する:
【0125】
【化18】

【0126】
還流凝縮器3および内部冷却コイル(図示せず)または、容器の内容物をそれを介して循環させることができる外部熱交換器5を備えている一次反応容器1に、溶液を導入する。次いで、メタノール中にカリウムメトキシドの溶液または分散液を含むエステル化試薬を、一次反応容器1内の反応媒体に導入し、反応媒体を70℃より高く、最も典型的には約80℃から約110℃の温度に加熱する。ギ酸メチル、オルトギ酸トリメチルまたは他のけん化ターゲットを、エステル化試薬に導入し、および/または反応器1中の反応混合物に加えることもできる。反応のための熱を、コイルおよび/または外部熱交換器により供給する。反応の進行を簡便には、定期的なHPLC分析により追跡する。典型的には、温度が85℃から90℃の場合には2時間未満で、温度が95℃から110℃の場合には約30から45分以内に、変換率が実質的に平衡に達したら、実施可能な限り迅速に、反応マスを約60℃以下の温度まで冷却することにより、反応を終了させる。自己圧がこの反応温度で生じる場合には、冷却の一部を、圧力放出およびその結果のメタノールのフラッシングにより達成する。蒸気または他の加熱流体の代わりに、冷却流体をコイルおよび/または外部熱交換器に供給して、温度を所望のレベルまで下げる。
【0127】
冷却された反応マスを、一次結晶化器7に移し、ここで、これをさらに、約15℃以下、好ましくは約−5℃から約5℃まで冷却すると、式V−1に対応するヒドロキシエステル反応生成物:
【0128】
【化19】

が結晶化し、溶液からそのヒドロキシエステルが沈殿する。
【0129】
生じたスラリーを遠心分離器9に移し、そこで、結晶生成物を結晶化母液から分離する。遠心分離器ケークを好ましくは、新たなメタノールで洗浄し、洗浄液を母液と合わせる。結晶ヒドロキシエステル生成物を除去し、エプレレノンに変換するために本願明細書に記載されているようにさらに処理することもできる。
【0130】
遠心分離器から排出された母液を蒸留器または蒸発器11に導入し、ここで、メタノールを除去することにより、母液をその当初体積の半分以下まで濃縮する。典型的には、母液を1/4または1/5まで濃縮する。しかしながら、濃縮の規模は好ましくは、液相からステロイドを沈殿させるには足りない。
【0131】
溶媒調節予備混合容器13中で、塩化メチレンまたは他の水不混和性溶媒を母液濃縮物に加えることにより、ステロイドの水不混和性溶液を生じさせ、これを、抽出容器15の抽出ゾーンに移す。有機抽出物からのステロイドの回収を容易にするために、水不混和性溶媒は好ましくは、反応および結晶化ステップで使用される水混和性溶媒よりも揮発性である。場合によって、抽出容器15は、多段階向流または並流抽出カラムを含んでもよい。抽出系では、ステロイドは優先的に有機相に分配され、シアン化物および他の無機物は水性相に分配される。メタノールは実質的に、相の間に分割される。シアン化物イオン、カリウムイオンおよび一部のメタノールを含む抽出からの水性ラフィネートは、プロセスから除去する。有機抽出物は、未反応のジケトン、残留生成物ヒドロキシエステル、5β−シアノヒドロキシエステル(式Cに対応する)および他のステロイドを含むステロイドを含む。抽出物はさらに、かなりの割合のメタノールを含有する。
【0132】
抽出系15から除去された有機抽出物を溶媒交換に掛けて、水不混和性溶媒を除去し、水混和性溶媒、好ましくはメタノール中のステロイドのリパルプ溶液を生じさせる。このために、有機抽出物を初めに、蒸留器または蒸発器17に導入して、そこで、水不混和性抽出溶媒を実質的に除去する。抽出物がかなりのフラクションのメタノールまたは他の水不混和性結晶化溶媒を含有する場合、抽出蒸留の底部フラクションは、回収されたステロイドをさらに処理するためにそのままで適しているリパルプ溶液を構成しうる。あるいは、前記で検討したように、蒸留底部は、ステロイドスラリーまたは実質的に固体のステロイド残留物を含むことがあり、これに、メタノールまたは他の水混和性溶媒を加えて、ステロイドを再溶解する。生じた溶液を、さらなる蒸留に掛けて、残留している塩化メチレンまたは他の水不混和性溶媒を除去することができる。さらなる選択肢では、前記でも検討したように、メタノールまたは他の水混和性溶媒を蒸留の間に加えることができる。抽出溶媒が塩化メチレンである場合、有機抽出物中に溶解または混入している水分を、抽出蒸留の間に低沸点水/塩化メチレン共沸混合物として除去することができる。
【0133】
蒸留器または蒸発器17からの塔頂留出物を、塔頂凝縮器19中で凝縮し、凝縮物を、受器21に排出する。塩化メチレンまたは他の水不混和性溶媒を含む凝縮物を、抽出ステップに、典型的にはトランスファーにより予備混合容器13に再循環させることができる。
【0134】
図1は、水混和性溶媒、好ましくはメタノールを加えて、ステロイドのリパルプ溶液を生じさせるリパルプタンク23への、溶液、スラリーまたは湿潤固体に関わらず、抽出蒸留底部フラクションの移動を示している。リパルプ溶液を好ましくは、二次反応容器25に移動させる。カリウムメトキシドのメタノール溶液を二次反応容器に加え、未反応のジケトン化合物、5β−ヒドロキシエステルおよび他のステロイドが所望のヒドロキシエステル生成物に変換しうる平衡反応を生じさせる。再平衡反応を反応器1での一次反応の条件に匹敵する条件下に行う。ギ酸メチルまたは他のけん化ターゲットが、カリウムメトキシド/メタノール溶液に含まれていてもよく、および/または二次反応容器に導入されてもよい。再平衡の後に、リパルプ反応マスを二次結晶化器27に移し、ここで、冷却して、ヒドロキシエステルを結晶化させる。生じたスラリーを遠心分離29に移し、二次ヒドロキシエステル結晶化収穫を二次母液から分離する。遠心分離器ケークのメタノール洗浄液を二次母液と合わせる。洗浄液を含む二次母液を再循環させ、抽出のための一次母液と合わせる。望ましい場合には、一部の二次母液を有機不純物を除去するために排除する。
【0135】
他の選択肢では、リパルプ溶液を一次反応容器に再循環させて、リパルプ溶液に含まれるステロイドを所望のヒドロキシエステルに変換することができる。しかしながら、有機不純物または残留シアン化物イオンが一次反応ゾーンに再循環されることを回避するために、別の二次反応器を使用することが好ましい。
【0136】
反応スキーム1
式Iの化合物を調製するための好ましい方法スキームの1つは有利には、カンレノンまたは式13600に対応する関連出発原料で開始される(あるいは、この方法は、アンドロステンジオンまたは関連出発原料で開始することができる):
【0137】
【化20】

[式中、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
12は、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される]。
【0138】
生物変換方法を使用して、α配置の11−ヒドロキシ基を、式13600の化合物に導入し、それにより、式8600の化合物を生じさせる:
【0139】
【化21】

[式中、R12および−A−A−は、式13600に関して前記で定義された通りである]。
【0140】
この水酸化ステップで使用することができる好ましい生物および生物変換のための条件は、そのまま参照により本願明細書に援用される米国特許第5981744号明細書に記載されている。
【0141】
好ましくは、式13600および8600の化合物は、式中の−A−A−が−CH−CH−であり、R12が水素、低級アルキルまたは低級アルコキシである式VIIIAに対応する。
【0142】
さらにスキーム1の方法では、式8600の化合物をアルカリ条件下にシアン化物イオンの源と反応させて、式7600のエナミン化合物を生じさせる:
【0143】
【化22】

[式中、−A−A−およびR12は、式13600に関する前記で定義された通りである]。
【0144】
塩基およびアルカリ金属塩、最も好ましくはLiClの存在下に、式8600の11α−ヒドロキシル基質を、ケトンシアノヒドリン、最も好ましくはアセトンシアノヒドリンなどのシアン化物イオン源と反応させることにより、式8600の11α−ヒドロキシル基質のシアン化を実施することができる。あるいは、シアノヒドリンを用いずに、酸の存在下にアルカリ金属シアン化物を使用することにより、シアン化を行うこともできる。
【0145】
好ましくは、化合物は、−A−A−が−CH−CH−であり、R12が水素、低級アルキルまたは低級アルコキシである式7600に対応する。
【0146】
最も好ましくは、式7600の化合物は、5’R(5’α),7’β−20’−アミノヘキサデカヒドロ−11’β−ヒドロキシ−10’α,13’α−ジメチル−3’,5−ジオキソスピロ[フラン−2(3H),17’α(5’H)−[7,4]メテノ[4H]シクロペンタ[a]フェナントレン]−5’−カルボニトリルである。
【0147】
スキーム1合成の次のステップでは、式7600のエナミンを加水分解して、式6600のジケトン化合物を生じさせる:
【0148】
【化23】

[式中、−A−A−およびR12は、式13600に関して前記で定義された通りである]。任意の水性有機または無機酸を加水分解のために使用することができる。塩酸が好ましい。生産性を増強するために、低級アルカノールなどの水混和性有機溶媒を好ましくは、補助溶媒として使用する。好ましくは、化合物は、−A−A−が−CH−CH−であり、R12が水素、低級アルキルまたは低級アルコキシである式6600に対応する。
【0149】
最も好ましくは、式6600の化合物は、4’S(4’α),7’α−ヘキサデカヒドロ−11’α−ヒドロキシ−10’β,13’β−ジメチル−3’,5,20’−トリオキソスピロ[フラン−2(3H),17’β−[4,7]メタノ[17H]シクロペンタ[a]フェナントレン]−5’β(2’H)−カルボニトリルである。
【0150】
本発明の特に好ましい実施形態では、式7600の生成物エナミンを、米国特許第5981744号明細書に記載されている方法で式8600の化合物から生じさせ、式6600のジケトンにその場で変換する。
【0151】
スキーム1合成の次のステップでは、式6600のジケトン化合物を金属アルコキシドと反応させて、4位と7位とのケトン橋を開かせ、カルボニル基と4−炭素との結合を切り、7位にα配置されたアルコキシカルボニル置換基を形成させ、5−炭素のシアン化物を除去する。この反応の生成物は、式5600に対応するヒドロキシエステル化合物である:
【0152】
【化24】

[式中、Rは、低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を示し、−A−A−およびR12は式13600において定義された通りである]。この反応での特別な反応条件は、高温改善、母液抽出条件およびギ酸メチルの使用を説明している前記段落に開示されている。
【0153】
好ましくは、この化合物は、−A−A−が−CH−CH−であり、R12が水素、低級アルキルまたは低級アルコキシであり、Rが低級アルコキシカルボニルである式5600に対応する。
【0154】
最も好ましくは、式5600の化合物は、11α,17α−ジヒドロキシ−3−オキソプレグナ(oxopregn)−4−エン−7α,21−ジカルボン酸メチル水素、γ−ラクトンである。
【0155】
式5600の化合物は、式5000の化合物に関して前記された方法により単離することができる。
【0156】
粗製11α−ヒドロキシ−7α−アルカノイルオキシカルボニル生成物を再び、方法の次の反応ステップのための溶媒に入れるが、この方法は、11位で良好な脱離基への11−ヒドロキシ基の変換、これによる、式4600の化合物の生成である:
【0157】
【化25】

[式中、R111は、低級アリールスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アシルオキシまたはハライドであり、−A−A−およびR12は、式13600において定義された通りであり、Rは式5600において定義された通りである]。好ましくは、式5600の中間体生成物を含有する溶液に加えられる低級アルキルスルホニルハライド、アシルハライドまたは酸無水物と反応させることにより、11α−ヒドロキシルをエステル化させる。この反応は、米国特許第5981744号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0158】
好ましくは、この化合物は、−A−A−が−CH−CHであり、R12が水素、
低級アルキルまたは低級アルコキシである式4600に対応する。
【0159】
最も好ましくは、式4600の化合物は、17α−ヒドロキシ−11α−(メチルスルホニル)オキシ−3−オキソプレグナ−4−エン−7α,21−ジカルボン酸メチル水素、γ−ラクトンである。アシルオキシ脱離基が望ましい場合には、式4600の化合物は好ましくは、17−ヒドロキシ−3−オキソ−11α−(2,2,2−トリフルオロ−1−オキソエトキシ)−17α−プレグナ−4−エン−7α,21−ジカルボン酸7−メチル水素、γ−ラクトン、または11α−(アセチルオキシ)−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレン−4−エン−7α,21−ジカルボン酸7−メチル、γラクトンである。
【0160】
本発明の別の好ましい実施形態では、式4600の生成物化合物を、一部の溶媒を除去することにより濃縮された溶液として、粗製の形態で回収する。この濃縮された溶液をそのまま、方法の次のステップで使用するが、この方法は、式4600の化合物からの11α−脱離基の除去、それによる式2600のエンエステル(enester)の製造である:
【0161】
【化26】

−A−A−およびR12が式13600において定義された通りであるところで、Rは、式5600において定義された通りである。この反応のために、式4600の化合物のR111置換基は、任意の脱離基であってよく、その抜き取りは、9−炭素と11−炭素との間に二重結合を生じさせるために有効である。好ましくは、脱離基は、低級アルキルスルホニルオキシまたはアシルオキシ置換基であり、これは、酸およびアルカリ金属塩との反応により除去される。鉱酸を使用することもできるが、低級アルカノール酸が好ましい。有利には、反応のための試薬にはさらに、使用されるアルカノール酸のアルカリ金属塩が含まれる。脱離基がメシルオキシを含み、反応のための試薬がギ酸または酢酸およびこれらの酸のアルカリ金属塩または他の低級アルカノール酸を含むことが、特に好ましい。脱離基がメシルオキシであり、除去試薬がギ酸およびギ酸カリウムである場合、9,11対11,12−オレフィンの相対的に高い比が観察される。
【0162】
式2600の基質から式1600の生成物への変換を、明確に参照により本願明細書に援用される米国特許第4559332号明細書に記載されている方法で、さらに好ましくは、下記に記載のハロアセトアミド促進剤を使用する新規の反応により、行うことができる。
【0163】
本発明の他の実施形態では、式5600のヒドロキシエステルを、式4600の中間体化合物を単離することなく、式2600のエンエステルに変換することができる。この方法では、ヒドロキシエステルを、塩化メチレンなどの有機溶媒に入れ、アシル化剤、例えば塩化メタンスルホニルまたはハロゲン化試薬、例えば塩化スルフリルをこの溶液に加える。混合物を攪拌し、ハロゲン化が必要な場合には、イミダゾールなどのHCl捕捉剤を加える。この一連の化学変換を、本願明細書に、または米国特許第5981744号明細書に記載の方法を使用して行うことができる。
【0164】
方法の最終ステップでは、式2600の化合物をエポキシド化剤と接触させて、式1600に対応する化合物を形成させる:
【0165】
【化27】

[式中、−A−A−およびR12は式13600に関して前記で定義された通りであり、Rは、式5600に関して前記で定義された通りである]。
【0166】
米国特許第5981744号明細書に記載されている方法を使用して、または本願明細書に記載されている改善エポキシド化方法を使用して、このエポキシド化反応を実施することができ、スキーム1の合成の終結ステップとしてかなり有用である。様々な実施形態の多くで、本発明の方法を、式6600の化合物から式5600の化合物への変換を伴うステップ3に関して記載された改善および式2600の化合物から式1600の化合物への変換を伴うエポキシド化ステップに関して記載された改善と結びつけることができる。式13600の化合物、特にカンレノンを式1600の化合物、特にエプレレノンに変換するプロセス全体では、ステップ3への方法改善をそれぞれ個々に、または合わせて、エポキシド化ステップ改善に結びつけることができる。特に好ましい実施形態では、スキーム1のプロセス全体を次のように進める:
【0167】
【化28】

【0168】
改善エポキシド化方法
本願明細書に記載の方法によるエポキシド化は、ステロイド核内の不飽和の側で実施することができる。本願明細書に記載されているように、9,11−オレフィンなどのトリ置換されている結合をエポキシド化する場合に、この方法は特に有利である。
【0169】
本方法のプロセスで有用なΔ9,11−基質には、例えば:
【0170】
【化29】

が含まれる
[式中、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロアルキル基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【0171】
【化30】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、R15およびR16は、それらがそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基(例えばシクロプロピレン)を形成する]。
【0172】
およびRは独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルキニル、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、RおよびRは、RまたはRと一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し:
−G−J−は、基:
【0173】
【化31】

を表し、
ここで、R11は、水素、アルキル、置換アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
−D−D−は、基:
【0174】
【化32】

を表し、ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロアルキル基を形成し、
−E−E−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
は、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
は、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アセチルチオ、フリルおよび置換フリルからなる群から選択されるか、
およびRは、それらがそれぞれ結合しているステロイド核のC−6およびC−7炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成するか、
およびRは、ステロイド核のC−5、C−6およびC−7と一緒になって、ステロイド核に縮合していて、構造:
【0175】
【化33】

に対応する5,7−ラクトール、5,7−ヘミアセタールまたは5,7−ラクトンを含む五環式環を形成しており、
ここで、R72は、=CH(OH)、=CH(OR73)または=CH=Oを含む。
【0176】
11は好ましくは水素であるが、アルキル、置換アルキルまたはアリールであってもよい。R11が置換アルキルである場合、置換基には、ハライドおよびエポキシド環を不安定にしない他の成分が含まれうる。R11がアリールである場合、これには、強電子吸引性ではない置換基が含まれうる。
【0177】
様々な好ましい実施形態、式1599に対応する3−ケト構造では、R12、R10およびR13は独立に、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロプロピル、フルオロブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、クロロブチル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモプロピル、ブロモブチル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨードプロピル、ヨードブチル、ヒドロキシ、メチル、エチル、直鎖、分枝鎖または環式プロピルおよびブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、シアノ、フェノキシ、ベンジルオキシからなる群から選択され、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
およびRは独立に、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択されるか、
およびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレンまたはシクロヘプチレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【0178】
【化34】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、それらがそれぞれ結合しているステロイド核C−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレンまたはシクロヘプチレン基を形成し、
−D−D−は、基:
【0179】
【化35】

を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレン基を形成し、
【0180】
【化36】

ここで、R11は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、5−フルオロペンチル、6−クロロヘキシル、フェニル、p−トリル、o−トリルからなる群から選択され、
−E−E−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、ここで、Rは、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択され、
は、水素、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシ、ベンゾキシ、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、オキサゾリル、アセチルチオ、フリル、置換フリル、チエニルおよび置換チエニルからなる群から選択されるか、
およびRは、RおよびRがそれぞれ結合しているステロイド核のC−6およびC−7炭素と一緒になって、(飽和)シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレン基を形成する。
【0181】
多くの実施形態では、
12は、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロプロピル、フルオロブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、クロロブチル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモプロピル、ブロモブチル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨードプロピル、ヨードブチル、ヒドロキシ、メチル、エチル、直鎖、分枝鎖または環式プロピルおよびブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され、
10およびR13は、メチル、典型的にはβ−メチルであり、
−A−A−は、基−CH−CH−または−CH=CH−を表し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−またはβ−配置されている基:
【0182】
【化37】

を表し、ここで、R15およびR16は独立に、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択されるか、
【0183】
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16と一緒になって、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレン基を形成し、
−D−D−は、基:
【0184】
【化38】

を表し、ここで、RおよびRは独立に、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され、
−E−E−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、ここで、Rは、水素、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され、
は、水素、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、シアノ、フリル、チエニル、置換フリルおよび置換チエニルからなる群から選択されるか、
およびRは、RおよびRがそれぞれ結合しているステロイド核のC−6およびC−7炭素と一緒になって、(飽和)シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレン基を形成する。
【0185】
様々な好ましい実施形態では、R12は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
10およびR13は、メチル、特にβ−メチルであり、
−A−A−は、基−CH−CH−を表し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−を表し、ここで、R15およびR16は、水素であるか、
15およびR16は、これらがそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−D−D−は基:
【0186】
【化39】

を表し、ここで、Rは、水素であり、
−E−E−は、基−CHR−CHR−を表し、ここで、Rは水素であり、
は、水素、フリル、置換フリル、チエニル、置換チエニルおよびアセチルチオからなる群から選択されるか、
およびRは、それらがそれぞれ結合しているステロイド核のC−6およびC−7炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−J−G−は、基:
【0187】
【化40】

を表し、ここで、R11は水素である。
【0188】
他に記載のない限り、本開示中で「低級」と言及されている有機ラジカルは、多くは7個、好ましくは1から4個の炭素原子を含む。
【0189】
低級アルコキシカルボニル基は好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルなどの1から4個の炭素原子を有するアルキル基に由来するものであり、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルおよびイソプロポキシカルボニルが特に好ましい。低級アルコキシ基は好ましくは、前記C〜Cアルキル基のいずれか、特に、第1級C〜Cアルキル基に由来するものであり、メトキシが特に好ましい。低級アルカノイル基は好ましくは、1から7個の炭素原子を有する直鎖アルキルに由来するものであり、ホルミルおよびアセチルが特に好ましい。
【0190】
15,16−位のメチレン橋は好ましくは、β配置されている。
【0191】
本発明の方法に従い製造することができる化合物の好ましい群は、米国特許第4559332号明細書に記載されている20−スピロキサン、即ち、式IAに対応するものである:
【0192】
【化41】

【0193】
好ましくは、本発明の新規方法により製造された20−スピロキサン化合物は、式中のYおよびYが一緒になって酸素橋−O−を表す式Iのものである。
【0194】
式Iの特に好ましい化合物は、式中のXがオキソを表すものである。式中のXがオキソを表す式IAの20−スピロキサン化合物の化合物のうち、式中のYがYと一緒になって、酸素橋−O−を表すものが最も特に好ましいものである。
【0195】
式IおよびIAの特に好ましい化合物は例えば、次のものである:
9α,11α−エポキシ−7α−メトキシカルボニル−20−スピロキサ−4−エン−3,21−ジオン、
9α,11α−エポキシ−7α−エトキシカルボニル−20−スピロキサ−4−エン−3,21−ジオン、
9α,11α−エポキシ−7α−イソプロポキシカルボニル−20−スピロキサ−4−エン−3,21−ジオン
およびこれらの化合物それぞれの1,2−デヒドロ類似体、
9α,11α−エポキシ−6α,7α−メチレン−20−スピロキサ−4−エン−3,21−ジオン、
9α,11α−エポキシ−6β,7β−メチレン−20−スピロキサ−4−エン−3,21−ジオン、
9α,11α−エポキシ−6β,7β;15β,16β−ビスメチレン−20−スピロキサ−4−エン−3,21−ジオン
およびこれらの化合物それぞれの1,2−デヒドロ類似体、
9α,11α−エポキシ−7α−メトキシカルボニル−17β−ヒドロキシ−3−オキソ−プレグナ−4−エン−21−カルボン酸、
9α,11α−エポキシ−7α−エトキシカルボニル−17β−ヒドロキシ−3−オキソ−プレグナ−4−エン−21−カルボン酸、
9α,11α−エポキシ−7α−イソプロポキシカルボニル−17β−ヒドロキシ−3−オキソ−プレグナ−4−エン−21−カルボン酸、
9α,11α−エポキシ−17β−ヒドロキシ−6α,7α−メチレン−3−オキソ−プレグナ−4−エン−21−カルボン酸、
9α,11α−エポキシ−17β−ヒドロキシ−6β,7β−メチレン−3−オキソ−プレグナ−4−エン−21−カルボン酸、
9α,11α−エポキシ−17β−ヒドロキシ−6β,7β;15β,16β−ビスメチレン−3−オキソ−プレグナ−4−エン−21−カルボン酸、
およびこれらの酸のそれぞれのアルカリ金属塩、特にカリウム塩またアンモニウム塩、さらに、前記カルボン酸それぞれの対応する1,2−デヒドロ類似体またはそれらの塩、
9α,11α−エポキシ−15β,16β−メチレン−3,21−ジオキソ−20−スピロキサ−4−エン−7α−カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α−エポキシ−15β,16β−メチレン−3,21−ジオキソ−20−スピロキサ−1,4−ジエン−7α−カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α−エポキシ−3−オキソ−20−スピロキサ−4−エン−7α−カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α−エポキシ−6β,6β−メチレン−20−スピロキサ−4−エン−3−オン、
9α,11α−エポキシ−6β,7β;15β,16β−ビスメチレン−20−スピロキサ−4−エン−3−オン、
9α,11α−エポキシ、17β−ヒドロキシ−17α(3−ヒドロキシ−プロピル)−3−オキソ−アンドロスタ−4−エン−7α−カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α−エポキシ、17β−ヒドロキシ−17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6α,7α−メチレン−アンドロスタ−4−エン−3−オン、
9α,11α−エポキシ−17β−ヒドロキシ−17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β−メチレン−アンドロスタ−4−エン−3−オン、
9α,11α−エポキシ−17β−ヒドロキシ−17α−(3−ヒドロキシプロピル)−6β,7β;15β,16β−ビスメチレン−アンドロスタ−4−エン−3−オン、
前記アンドロスタン化合物の17α−(3−アセトキシプロピル)および17α−(3−ホルミルオキシプロピル)類似体および
さらに、挙げられた一連のアンドロスタ−4−エン−3−オンおよび20−スピロキス−4−エン−3オン化合物の全ての1,2−デヒドロ類似体も含まれる。
【0196】
式IおよびIAの化合物および同じ特徴的な構造形態を有する類似化合物の化学的名称は、現在の命名法に従い次の方法で、式中のYがYと共に−O−を表す場合には、20−スピロキサンに(例えば、式中のXがオキソを表し、YがYと共に−O−を表す式IAの化合物は、20−スピロキサン−21−オンに由来する);YおよびYがそれぞれヒドロキシを表し、Xがオキソを表す化合物では、17β−ヒドロキシ−17α−プレグネン−21−カルボン酸に;YおよびYがそれぞれヒドロキシを表し、Xが2個の水素原子を表す化合物では、17β−ヒドロキシ−17α−(3−ヒドロキシプロピル)−アンドロスタンに由来する。それぞれラクトンおよび17β−ヒドロキシ−21−カルボン酸ならびにそれらの塩と言える環式および開鎖形態は、後者を、前者の単なる水和形態とみなすこともできるほど相互に近い関係にあるので、特に他に記載のない限り、前記および後記において、式Iの最終生成物においても、類似構造の出発原料および中間体においても、いずれの場合でも、挙げられている形態は全て一緒に理解されるべきである。
【0197】
この反応のための基質例には、Δ−9,11−カンレノンおよび:
【0198】
【化42】

が含まれる。
【0199】
通常、本発明のエポキシド化方法は、米国特許第4559332号明細書に、さらに詳細には米国特許第5981744号明細書40欄38行から45欄15行までおよび実施例26〜28および42〜51に記載されている手順に従い行う。米国特許第6610844号明細書も参照。米国特許第4559332号明細書、米国特許第5981744号明細書および米国特許第6610844号明細書は明らかに、参照により本願明細書に援用される。
【0200】
これらの参考文献に記載されているエポキシド化方法では、Δ9.11基質の適切な溶媒中の溶液を過酸化水素水溶液組成物と、例えばトリクロロアセトニトリルまたは好ましくはトリクロロアセトアミドなどの活性化剤の存在下に接触させる。基質から9,11−エポキシドへの完全な変換を保証する目的で、前記参照文献に記載されているエポキシド化反応は典型的には、ステロイド基質1モル当たり過酸化水素10モルのモル充填比で行われる。
【0201】
さて、エポキシド化反応は、米国特許第4559332号明細書、同第5981744号明細書または米国特許第6610844号明細書に教示または例示されているよりもかなり低い過酸化水素とΔ9,11基質との比で行うことができることが発見された。比較的低い過酸化物と基質との比での操作により、下記で検討するように、いくつかの潜在的な利点のうちのいくつかが達成されるというオプションがもたらされる。
【0202】
反応を実施する際に、好ましくは基質の溶液を活性化剤および緩衝剤と共に先ず、エポキシド化反応ゾーンを備えた反応容器に充填し、それに、過酸化水素の水溶液を加える。好ましくは、ステロイド基質およびエポキシド化ステロイド生成物の可溶性は、かなり高い、好ましくは、少なくとも約10重量%、さらに好ましくは少なくとも約20重量%であるが、水の可溶性は低い、好ましくは約1重量%未満、さらに好ましくは約0.5重量%未満である溶媒をステロイド基質のために選択する。このような実施形態では、2相液体反応媒体を含むエポキシド化反応ゾーンが、反応容器内に確立され、有機相には基質、水性相には過酸化水素を伴う。2相媒体での基質のエポキシド化により、実質的に溶媒相内にエポキシド化ステロイド反応生成物を含有する反応マスが製造される。特定の理論には拘束されないが、反応は、有機相中で、または相間の界面で生じ、有機相中の非常に少量の水でも、反応を遅らせると考えられる。
【0203】
ステロイドの溶液を反応器に導入した後に、過酸化物溶液全部を短期間で加えることができ、その後、反応が例えば2から30分、さらに通常は5から20分以内に開始される。反応器に供給される過酸化物溶液の強さが、反応の開始時に生じるべき濃度よりも高い場合には、水を充填して、過酸化物を加える前に有機相と混合することもできるが、その後では、水を、反応の開始時に望ましいレベルまで過酸化物濃度を希釈する体積で加える。過酸化水素を反応サイクルの開始時に導入する実施形態では、溶媒相および加えられる過酸化物水溶液を好ましくは、過酸化物を導入する際のような比較的低い温度、さらに好ましくは約25℃未満、典型的には約20℃未満、さらに典型的には約−5℃から約15℃の範囲内に維持する。
【0204】
次いで、反応を攪拌下に進行させる。反応を、好ましくは反応器ヘッドスペースの窒素パージによる不活性雰囲気下に行うことが好ましい。
【0205】
通常、過酸化物活性化剤は、式:
C(O)NH
に対応しうる
[式中、Rは、モノクロロメチル基の電子求引強度と少なくとも同じ高さの電子求引強度(シグマ定数により測定)を有する基である]。好ましくは、促進剤は、トリクロロアセトニトリル、トリクロロアセトアミドまたは式:
【0206】
【化43】

に対応する関連化合物を含む
[式中、X、XおよびXは独立に、ハロ、水素、アルキル、ハロアルキルおよびシアノおよびシクロアルキルの中から選択され、Rは、アリーレンおよび−(CX−の中から選択され、ここでnは、0または1であり、X、X、X、XおよびXのうちの少なくとも1個は、ハロまたはペルハロアルキルである]。X、X、X、XまたはXのうちのいずれかがハロでない場合、これは好ましくは、ハロアルキル、最も好ましくはペルハロアルキルである。特に好ましい活性化剤には、nが0であり、X、XおよびXのうちの少なくとも2個がハロであるか、X、X、X、XおよびXの全てがハロまたはペルハロアルキルであるものが含まれる。X、X、X、XおよびXはそれぞれ好ましくはClまたはF、最も好ましくはClであるが、混合ハライドも適することがあり、同様に、ペルクロロアルキルまたはペルブロモアルキルならびにそれらの組合せも適することがある。
【0207】
他の適切な促進剤には、ヘキサフルオロアセトンジシクロヘキシルカルボジイミドが含まれる。
【0208】
緩衝剤は、反応マスのpHを安定化させる。特定の理論には結びつけられないが、さらに緩衝剤は、ペルオキシドアニオンと、Δ9,11基質と反応する形態の促進剤とを結びつけて9,11−エポキシドを形成させるためのプロトン移動剤として機能すると考えられる。通常、この反応は、約5から約8、好ましくは約6から約7の範囲内のpHで行われることが望ましい。緩衝剤およびプロトン移動剤の両方として機能しうる適切な化合物には、ジアルカリ金属ホスフェートならびにクエン酸Naまたは酒石酸Kなどの二塩基有機酸のアルカリ金属塩が含まれる。
【0209】
リン酸水素二カリウムを含む緩衝剤を用いると、および/または約1:4から約2:1、最も好ましくは約2:3の範囲内の相対割合でリン酸水素二カリウムとリン酸二水素カリウムとの組合せを含む緩衝剤を用いると、特に有利な結果が得られる。ボレート緩衝剤を使用することもできるが、通常、リン酸二カリウムまたはKHPOまたはKHPO/KHPO混合物よりも遅い変換をもたらす。緩衝剤のどのような構成でも、前記範囲内のpHを生じさせるべきである。緩衝剤の全体組成またはそれが与えうる正確なpHとは別に、少なくとも一部の緩衝剤が二塩基性水素ホスフェートイオンを含む場合に、反応はかなり有効に進行することが観察された。このイオンは、促進剤およびヒドロペルオキシドイオンを含む付加生成物または複合体を形成させる際に、均一系触媒として必ず関与しうると考えられ、その付加生成物または複合体の発生は次いで、エポキシド化反応メカニズム全体に必須となりうる。したがって、二塩基性水素ホスフェート(好ましくはKHPOから)の定量的要求は、低い触媒濃度のみであってよい。通常、二塩基性水素ホスフェートは、基質1当量当たり少なくとも約0.1当量、例えば約0.1から約0.3当量の割合で存在すると好ましい。
【0210】
過酸化物溶液の添加が実質的に完了した後に、温度を例えば、15℃から50℃、さらに典型的には20℃から40℃に高めて、基質からエポキシドへの反応速度および変換率を増強することができる。場合によっては、過酸化物溶液を徐々に反応経過にわたって加えることもできるが、この場合、反応マスの温度を好ましくは、反応が進行している間、約15℃から約50℃、さらに好ましくは約20℃から約40℃の範囲内に維持する。いずれの場合も、2相反応媒体中での反応速度は通常、物質移動に限られ、十分な反応速度を維持するためには中程度から激しい攪拌を必要とする。バッチ反応器では、反応の完了には、温度および攪拌強度に応じて3から24時間が必要となりうる。
【0211】
過酸化水素の分解は、発熱反応である。通常の反応温度では、分解速度は、無視できるほど遅く、生じる熱は、温度制御下に反応マスを冷却することにより容易に除去される。しかしながら、反応冷却系または温度制御系が、例えば攪拌されないことにより欠けている場合、分解速度は、生じた反応マスの温度上昇により促進されることがあり、次いでこれは、自己反応加熱の速度を促進しうる。過酸化物とステロイド基質との当初モル比が米国特許第4559332号明細書、米国特許第5981744号明細書または米国特許第6610844号明細書に記載されている範囲内、即ち、10:1以上の範囲内である場合、冷却がないことから生じる自己加熱は、分解が自己触媒的で、非常に迅速で、制御できなくなる温度に達して、反応マスの噴出の可能性をもたらしうる。温度が十分に高いと、ステロイド基質の破壊的酸化は、別な反応熱を生じさせ、さらに、温度上昇の速度および生じる噴出の深刻度を促進しうる。攪拌を行わないこと以外の事象も、過酸化物の脱安定化をもたらし、制御できない分解をもたらす発熱をもたらしうる。例えば、過酸化物または基質溶液中の遷移金属の錆または他の源などの汚染物質が、水性相からの酸素の迅速で制御できない放出を触媒することもある。
【0212】
さて、エポキシド化反応を、米国特許第4559332号明細書、米国特許第5981744号明細書または米国特許第6610844号明細書に教示または例示されている比よりもかなり低いペルオキシドとΔ9.11基質との比で行うことができ、これにより、過酸化物の制御できない分解のリスクを低減することができることが判明した。さらに詳細には、反応を、Δ9.11基質1モル当たり過酸化水素約2から約7モル、好ましくは約2から約6モル、さらに好ましくは約3から約5モルの充填比で行うことができることが判明した。このような比較的低い過酸化物と基質との比での処理により、過酸化物の自己分解により反応マスが加熱される規模が低減される。好ましくは、過酸化物と基質との比を十分に低くして、自己加熱により達成される最大温度が、自己触媒分解のための閾値温度よりも低いようにすると、過酸化物の分解が反応マスの噴出が生じうるであろう段階に達することを完全に妨げることができる。前記充填比での処理によりこれを実行することができる。
【0213】
エポキシド化反応を、過酸化物の初期分解の温度未満の比較的低い温度で行うか、分解の速度が比較的遅い場合に、制御できない反応に対するさらなる保護が得られる。したがって、未反応の過酸化水素の蓄積をもたらすプロセス不調の事象でも、少なくとも当初にはほとんど自己加熱は生じ得ないので、攪拌をやめた後でも、反応器冷却能は、そのままの循環下で十分なままであり、安全範囲内で反応マスの温度は維持されるか、少なくとも、制御できない自己触媒分解のための条件に近づく前に、矯正的な手段を取るために十分な時間が、方法処理者に与えられる。このために、約0℃から50℃の範囲内、さらに好ましくは、約20℃から約40℃の範囲内の温度で、エポキシド化反応を実施することが好ましい。
【0214】
過酸化物の自己触媒分解温度よりも十分に低く、好ましくは、反応温度よりも僅かのみ高い、反応圧力での沸点を有する溶媒を含む液体反応媒体中で、エポキシド化反応を行うことにより、制御できない反応に対するさらなる保護が得られる。好ましくは、反応混合物の有機相の沸点は、約60℃以下、好ましくは約50℃以下である。好ましくは、選択される溶媒は、反応温度で反応マスから沸騰しないが、温度を約10℃から約50℃にやや上昇させると、容易に蒸発し、それにより、蒸発の熱は、溶媒が反応ゾーンから実質的に駆除されるまで、反応マスの実質的な加熱を排除する吸熱源として役立つ。反応を前記範囲の温度で大気圧下行う場合、これらの基準に合い、さらに、エポキシド化反応に適している様々な溶媒を、利用することができる。これらには、塩化メチレン(大気圧沸点=39.75℃)、ジクロロエタン(大気圧沸点=83℃、およびメチルt−ブチルエーテル(沸点=55℃)が含まれる。
【0215】
反応マスの水含量も、実質的にかなりの吸熱源として役立つ。反応を大気圧で、その付近またはそれ未満で行う場合、過酸化水素水溶液の水含量は、潜在的にかなり大きな吸熱源として役立つが、過酸化物化合物の自己触媒分解から生じる激しさよりもかなり低い激しさにも関わらず、反応マスの噴出をもたらしうるので、かなりの蒸気が発生する条件は回避することが通常は好ましい。
【0216】
したがって一態様では、本発明は、基質チャージに対して化学量論的に過剰な反応マスの過酸化物含量の分解が、過酸化物化合物の自己触媒分解を開始するために有効な発熱をもたらさない、好ましくはもたらし得ないか、少なくともその制御できない自己触媒分解をもたらさないような絶対および相対割合でステロイド基質および過酸化物を含み、ステロイドのための溶媒を好ましくは含む液体反応媒体中で、相対的に低い当初エポキシド化反応温度で、エポキシド化反応を行うことを含む。エポキシド化サイクルの間のいずれの時点でも、制御できない分解に対して保護するために、条件の前記組合せが、反応マスの全過酸化物含量の分解が反応経過の間のいずれの時点でも、過酸化化合物の自己触媒分解を開始するために有効な発熱をもたらし得ないか、少なくとも、その制御できない自己触媒分解をもたらし得ないような組合せであることがさらに好ましい。最適には、基質濃度、過酸化物化合物濃度および当初温度の組合せは、化学量論的過剰または過酸化物化合物充填全体の分解が、断熱条件でも、即ち、十分に断熱された反応器中で冷却しなくても、自己触媒分解を開始させるために十分な発熱を生じ得ないか、少なくとも制御できない自己触媒分解をもたらさないような組合せである。
【0217】
エポキシド化反応の開始時に確立される水性相の過酸化物含量は、好ましくは約25重量%から約50重量%、さらに好ましくは約25重量%から約35重量%であり、有機相中のΔ9.11ステロイド基質の当初濃度は、約3重量%から約25重量%、さらに好ましくは約7重量%から約15重量%である。好ましくは、例えばトリクロロアセトニトリルまたはトリクロロアセトアミドなどのエポキシド化反応を促進するために有効な成分とジアルカリ金属水素リン酸塩などのリン酸塩とを、水性過酸化物を加える前に、ステロイド溶液を備えた反応器に充填する。過酸化物とリン酸塩とのモル比を、好ましくは約10:1から約100:1、さらに好ましくは約20:1から約40:1の範囲内に維持する。当初トリクロロアセトアミドまたはトリクロロアセトニトリル濃度を好ましくは、有機相では約2から約5重量%、さらに好ましくは約3から約4重量%;またはステロイド基質に対するモル比で約1.1から約2.5、さらに好ましくは約1.2から約1.6に維持する。反応器に最終的に導入される水性相と有機相との体積比は好ましくは約10:1から約0.5:1、さらに好ましくは約7:1から約4:1である。前記のように、この場合にも特定の理論に拘束されないが、エポキシド化反応は、有機相で、または相間の界面で生じると考えられる。いずれの場合でも反応マスを好ましくは、激しく攪拌して、過酸化物の有機相への、または少なくとも界面への移動を促進する。反応の進行を促進して、バッチ反応サイクルを短縮し、生産性を増強するためにも、反応マスへの過酸化物水溶液の所定の添加速度で、反応容器中の過酸化物の残量を最小化するためにも、高速の物質移動が望ましい。したがって、本発明の様々な好ましい実施形態では、攪拌強度は好ましくは、少なくとも約10hp/1000gal(約2ワット/リットル)、典型的には約15から約25hp/1000gal(約3から約5ワット/リットル)である。エポキシド化反応器はさらに、冷却コイル、冷却ジャケットまたは反応マスを循環させる外部熱交換器を、エポキシド化反応の熱、さらに過酸化物の分解から生じる熱の増分を除去するために備えている。
【0218】
エポキシド反応の完了後に、水性相中の未反応の過酸化水素を好ましくは、分子酸素の放出が最小化されるか完全に回避される制御条件下に分解する。アルカリ金属亜硫酸塩またアルカリ金属チオ硫酸塩などの還元剤は、分解を促進するために有効である。好ましくは、未反応の過酸化物を含む最終反応マスの水性相を、反応溶媒中の9,11−エポキシド化ステロイド生成物溶液を含む有機相から分離する。水性相は、その中に含まれている過酸化物を還元剤と接触させることにより「クエンチ」することができる。
【0219】
過酸化物とステロイド基質とのモル充填比が例えば、3から5の範囲内であり、水性相中の過酸化物の当初濃度が約7から約9モルの範囲内である場合(即ち、過酸化水素の場合では25重量%から30重量%)、反応の終了時に消費された過酸化物水溶液は、過酸化物で約4〜6モルである(過酸化水素では約15から約21重量%)。相分離の前に、水性相を水で希釈して、過酸化物濃度を低下させ、それにより相分離および/または還元剤でクエンチするための他の容器への移動などの水性相の移動の間に分解から生じる何らかの発熱の可能性および規模を低減することができる。例えば、十分な水を加えて、消費された水性相中の過酸化水素の濃度を約2重量%から約10重量%、さらに好ましくは約2重量%から約5重量%まで低減することができる。
【0220】
消費された過酸化物水溶液またはその希釈物を、還元剤の水溶液を含む容器に加えることにより、またはその逆により、クエンチを行うことができる。一選択肢では、水性相から分離する際に、有機相を別の容器に移し、水性相は、反応容器に残したままにする。次いで、還元剤の溶液を、反応容器中の希釈または未希釈水性相に加えて、残留過酸化物の還元を行うことができる。あるいは、希釈または未希釈過酸化物溶液を時間を掛けて、適切な体積の還元剤溶液が初めに充填されている容器に加えることもできる。還元剤がアルカリ金属亜硫酸塩である場合には、スルファイトイオンは、過酸化物と反応して、スルフェートイオンおよび水を形成する。
【0221】
分解反応は高度に発熱性である。分解が進行する水性マスから熱を移動することにより、分解を好ましくは、約20℃から約50℃の範囲内に制御されている温度で行う。このために、クエンチ反応器は、分解反応熱を冷却液に移動するするための冷却コイル、冷却ジャケットまたはクエンチ反応マスが循環しうる外部熱交換器を備えていてよい。クエンチマスを好ましくは、穏やかに攪拌して、還元剤の均一な分布、均一な温度分布および迅速な熱移動を維持する。
【0222】
還元剤を消費された過酸化物溶液に加える場合には、添加を、クエンチ反応マスの温度を前記範囲に維持することにより、過酸化物の制御分解を行うために制御されている速度で実施する。
【0223】
別のプロセス、即ち、過酸化物溶液を還元剤溶液に加えるプロセスにより、さもなければ、それに分解剤を加えることにより誘発されるような自己触媒分解を受けるであろう大規模な過酸化物残量の存在が回避される。しかしながら、この選択肢は、消費された過酸化物溶液の移動を必要とする一方で、逆の選択肢は、過酸化物反応器に過酸化物溶液を残すことを可能にし、反応マスの有機相および還元剤溶液のみを移すことを必要とする。どちらの選択肢を続けるかに関わらず、クエンチ反応を好ましくは、前記温度範囲で行う。
【0224】
クエンチ反応のために、クエンチ反応ゾーンに充填されるクエンチ水溶液は、亜硫酸Na、亜硫酸水素Na、亜硫酸K、亜硫酸水素Kなどの還元剤を好ましくは約12重量%から約24重量%、さらに好ましくは約15重量%から約20重量%含有する。クエンチ溶液の体積は好ましくは、その中に含有される還元剤がクエンチされるべき水性相の過酸化物含有率に関して化学量論的に過剰であれば十分である。過酸化物溶液と混合されるクエンチ溶液の体積比は、消費過酸化物水溶液を予備希釈した後に、典型的には約1.2から約2.8、さらに典型的には約1.4から約1.9である。
【0225】
典型的には、残留有機溶媒を、当初相分離の後に反応器中に残してもよく、クエンチ反応の間の水性相中に混入してもよい。さらに、クエンチされた水性相は、トリクロロアセトアミドを促進剤として使用する場合にエポキシド化反応の副生成物として形成されるトリクロロ酢酸の塩を含有してもよい。クエンチされた水性相を廃棄する前に、混入した反応溶媒を好ましくはそこから、例えば溶媒ストリッピングにより除去する。塩化メチレンなどの溶媒がクエンチ反応混合物に混入していて、その水性相がトリクロロ酢酸塩を含有する場合、トリクロロ酢酸塩を脱カルボキシル化するために、溶媒をストリッピングする前に、水性相を好ましくは加熱する。例えば、70℃またはそれ以上の温度に加熱することにより、トリクロロ酢酸塩の脱カルボキシル化を達成することができる。トリクロロ酢酸塩を除去しない場合、これは、溶媒ストリッピングの間に分解して、クロロホルムおよび二酸化炭素をもたらしうる。
【0226】
反応マスを水性相から分離した後に、有機相を好ましくは水で洗浄して、未反応の過酸化物および何らかの無機汚染物質を除去する。残留過酸化物を除去するために、洗浄水が還元剤を含むことが有用である。例えば、有機相を、4から10の範囲内のpHを有し、典型的には還元剤は0.1から5モル%、好ましくは還元剤約0.2から約0.6モル%(例えば亜硫酸Na水溶液6から18%)を含む洗浄水溶液と、約0.05:1から約0.3:1の簡便な洗浄液と有機相体積との比で接触させることができる。消費された還元剤洗浄液を有機相から分離した後に、有機相を好ましくは、希釈苛性アルカリ溶液(例えば、有機相に対して約0.1から約0.3の体積比で、0.2重量%から6重量%のNaOH)、続いて水洗浄液または希酸溶液(例えば、有機相に対して約0.1から約0.4の体積比で、0.5から2重量%のHCl溶液)で順次洗浄する。さらなる亜硫酸水素Naまたはメタ亜硫酸水素Naまたは亜硫酸Na溶液での最終洗浄を行うこともできる。
【0227】
生成物エポキシドのR11置換基が水素以外である場合には、生成物を1またはそれ未満のpHを有する水性相にさらしうるHCl洗浄液などの高度酸性洗浄液を回避することが通常は望ましい。C−11炭素にアルキル置換基が存在する場合、エポキシ基は、高度酸性条件下に不安定化しうる。
【0228】
塩化メチレンなどの溶媒が希釈苛性アルカリ洗浄液中に混入している場合、その水性相は、残留トリクロロアセトアミドの塩基性加水分解から生じたトリクロロナトリウム酢酸塩を含有し、この水性相を好ましくは、溶媒ストリッピングの前に加熱して、トリクロロナトリウム酢酸塩を脱カルボキシル化する。トリクロロナトリウム酢酸塩の脱カルボキシル化は、例えば、70℃またはそれ以上の温度まで加熱することにより達成することができる。脱カルボキシル化および残留溶媒ストリッピングのために、苛性アルカリ洗浄液を、反応混合物のクエンチされた水性相と組み合わせることもできる。
【0229】
溶媒の蒸発により、例えば、大気圧蒸留により、洗浄された有機相を濃縮して、ステロイドを沈殿させ、含有ステロイド約40重量%から約75重量%を有する比較的濃いスラリーを形成させる。再結晶化ステップからの母液を下記のように再循環させる場合、母液をステロイドスラリーと混合し、母液の溶媒成分を真空により除去して、反応溶媒を除去することにより得られるスラリーと通常は同じ範囲の固体濃度を有する濃厚なスラリーを再び生じさせることができる。ステロイド生成物の可溶性が比較的低い溶媒、例えば、エタノールなどの極性溶媒を、反応溶媒の除去から得られたスラリーに、または再結晶化母液溶媒の除去により得られた第2スラリーに加える。別の溶媒には、トルエン、アセトン、アセトニトリルおよびアセトニトリル/水が含まれる。このステップでは、不純物を溶媒相に温浸して、固体相ステロイド生成物を精製し、そのアッセイを高める。温浸溶媒がエタノールなどのアルコールである場合、これを、6から約20のエタノールと含まれるステロイドとの体積比で加えることができる。一部のエタノールおよび残留有機溶媒を蒸留により、生じた混合物から除去すると、ステロイド生成物約10重量%から約20重量%を典型的には含有するスラリーが得られるが、不純物および副生成物は実質的に、溶媒相に残留する。溶媒がエタノールである場合、蒸留を、大気圧またはそれよりわずかに高い圧力で行うことが好ましい。
【0230】
温浸溶媒を蒸留した後に、ステロイド生成物固体を、残留スラリーから例えば濾過により分離する。固体生成物を好ましくは温浸溶媒で洗浄し、乾燥させると、9,11−エポキシステロイドを実質的に含む固体生成物を得ることができる。乾燥は有利には、圧力または真空を用いて、不活性担体ガスを使用し、約35から約90℃の範囲内の温度で行うことができる。
【0231】
温浸溶媒を蒸発させた後に得られる乾燥された固体、湿潤な濾過固体または残留スラリーを、エポキシステロイド生成物が適度に可溶性である溶媒、例えば、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、メタノール、イソプロパノール−水またはアセトン−水に入れることができる。生じた溶液は典型的には、ステロイド約3重量%から約20重量%、さらに典型的には約5重量%から約10重量%を含有しうる。生じた溶液を濾過し、望ましい場合には次いで、蒸発させて、極性溶媒を除去し、9,11−エポキシステロイドを再結晶化させる。溶媒が2−ブタノンである場合、蒸発を簡便には、大気圧で行うが、他の圧力条件を使用することもできる。生じたスラリーを徐々に冷却させて、追加のステロイドを結晶化させる。例えばスラリーを、蒸留温度(大気圧では2−ブタノンの場合に約80℃)から、ステロイド生成物の収率が十分だと思われる温度まで冷却することができる。適切な結晶サイズの高純度9,11−エポキシステロイド生成物の製造は、段階的に冷却し、各冷却段階の間の期間、温度を保持することにより得ることができる。冷却スケジュールの例は、第1段階で60℃から70℃の範囲内に温度を冷却すること、第2段階で約45℃から約55℃の範囲内に温度を冷却すること、第3段階で約30℃から約40℃に温度を冷却すること、最終段階で約10℃から約20℃の温度に冷却することと共に、冷却段階の間の30から120分間の実質的な一定の温度保持期間を含む。
【0232】
次いで、再結晶化生成物を濾過により回収し、乾燥させることができる。乾燥は周囲温度付近で有効に行うことができる。乾燥された生成物は、生成物回収プロトコルで初めに使用される極性溶媒、典型的にはエタノールで溶媒和されているままである。乾燥および脱溶媒を、圧力下または真空下に高温で、例えば75℃から95℃で行うことができる。
【0233】
前記のように、エポキシド化反応溶媒の蒸発除去から得られたステロイド生成物スラリーを精製する際に使用するために、再結晶化ステップからの母液を再循環させることができる。
【0234】
Δ9,11前駆体をエプレレノンに酸化させる際の、基質1モル当たり過酸化物7モルの充填比では、過酸化物の分解は、エプレレノン1kg当たり分子酸素約280リットルしか放出しない。基質1モル当たり過酸化物4モルの充填比では、酸素放出は、約160リットル/エプレレノンkgのみである。このことは、基質1モル当たり過酸化物10モルの充填比での400リットル/エプレレノン1kgの放出と対照的である。さらなる例では、基質1モル当たり過酸化物4モルの充填比、塩化メチレン溶媒中12%の基質濃度、水性相中30%の過酸化物濃度、30℃の当初反応温度、不活性ガスパージ下での実質的大気圧および15%の反応器ヘッドスペース体積割合では、過酸化物充填物全体の発熱分解の際にエポキシド化反応器中で生じうる最大内部圧力は、約682psig(4706kPa)である。さらに、この場合でも、当初発熱は、適切に熟練した操作者が、攪拌がないことまたはさもなければ制御されない反応をもたらすであろう他の方法の不調を安全に処理するための十分な時間を有するために十分に適している。
【0235】
本願明細書に記載の比較的低い過酸化物と基質との比では、酸素のかなり低いであろう発生を、10またはそれ以上の過酸化物/基質比を達成しうる同じ反応器荷重で保証することができるか、同じ酸素放出体積で、より高い反応器荷重を達成することができる。エポキシド化反応器中の一定の処理体積では、荷重の増大と酸素放出の低減を同時に達成することができる。
【0236】
前記エポキシド化方法は、エポキシメクスレノン(epoxymexrenone)を調製するための様々なスキームを超える用途を有し、実際に、液相で反応を受ける様々な範囲の基質中で、9,11−オレフィン系二重結合にわたるエポキシドを形成する際に使用することができる。この反応のための基質の例には、Δ−9,11−カンレノンおよび:
【0237】
【化44】

が含まれる。
【0238】
反応は、トリ置換およびテトラ置換二重結合で、より迅速かつ完全に進行するので、これは、化合物中のこのような二重結合にわたる選択的エポキシド化で、特に有効であるが、その化合物は、オレフィン系炭素がモノ置換、さらにはジ置換されている他の二重結合を含んでもよい。
【0239】
これは、さらに高度に置換されている二重結合、例えば9,11−オレフィンを高い選択性で優先的にエポキシド化するので、本発明の方法は、本願明細書に記載されている様々な反応スキームのエポキシド化ステップで高い収率および生産性を達成するために特に有効である。
【0240】
改善方法は、
【0241】
【化45】

を、
【0242】
【化46】

をエポキシド化することにより調製するために特に有利な適用を示すことが判明している。
【0243】
次の実施例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0244】
(実施例1)
32重量%のKOMe濃度で、カリウムメトキシドをメタノールに溶かすことにより、カリウムメトキシド試薬溶液を調製した。ギ酸メチルを試薬溶液に10重量%の割合で加えた(例えば、正味ギ酸メチル(8g)をKOMeのMeOH中32重量%溶液(80g)に加えた)。ギ酸メチルを含有する試薬溶液を室温で3日間保持した。
【0245】
RC1反応器(HP60、ハステロイC、Mettler−Toledo、公称1400ml)に、メタノール(1105g;<0.005重量%)および式VI−1:
【0246】
【化47】

に対応するジケトン化合物(80.0g)を充填した。
【0247】
次いで、反応器を閉じ、窒素(約1atm)でフラッシュ処理した。生じたスラリーを62℃に高め、その後、カリウムメトキシド試薬含有ギ酸メチル溶液(44.4g;1当量のKOMe)の第1充填物を反応器に導入した。反応媒体を窒素雰囲気下に攪拌し、KOMeを式VI−1の化合物と反応させて、式V−1の化合物を生じさせた:
【0248】
【化48】

【0249】
反応を1.5時間進行させた後に、KOMe含有ギ酸メチル溶液(26.7g;0.6当量のKOMe)の追加の充填物を反応媒体に導入した。62℃での反応混合物の攪拌を、約10時間継続した。
【0250】
その後、反応溶液を0℃に冷却し、少なくとも1時間保持し、次いで、粗いガラス濾過器で真空下に濾過した。フィルターケークをメタノールで2回(各洗浄液100g)洗浄した。
【0251】
追加のランを、前記と同様に行ったが、ただし、反応温度を、1回の操作では80℃に維持し、他の操作では100℃に維持し、さらに他では115℃に維持した。高温では、KOMe/MeOH試薬を全て1回の充填で加えることができたが、これを、薄膜ポンプを使用して48g/分の速度で行った。反応温度が上昇するにつれて、反応時間がかなり短縮された。100℃での反応を、約0.5時間だけ継続した。100℃から60℃への冷却は、約4分を要した。
【0252】
(実施例2)
追加の反応ランを実施例1に記載されている方法で、ただし、より小さい規模で実施した。この一連の反応の各ランでは、メタノール(175mL)および式VI−1化合物(9.60g)をParr反応器ヘッドを備えたジャケット付き175ml(6オンス)Fischer−Porterボトルに充填した。反応時間は実施例1においてと実質的に同じであるが、100℃反応混合物を僅か3分で60℃に冷却した。一定のランでは、ビフェニルスルホンを内標準として加え、試料を、反応経過の間に採った。短期HPLC法を使用する分析の前に、試料をHPLC移動相で約21倍に希釈した。この規模では、10mlシリンジを使用して、KOMe/MeOH試薬溶液を加える。様々な反応温度での反応の相対的進行は、図2に記載のプロファイルに示されている。反応混合物から式V−1ヒドロキシエステルを結晶化させ、結晶化マスを濾過した後に、母液を、残留反応器含量のためのすすぎ液として反応器に戻した。ヒドロキシエステルをさらに回収するために、生じたすすぎ溶液を再び濾過した。
【0253】
反応温度62℃および100℃で製造された反応マスの結晶化からの固体ヒドロキシエステル生成物の収率を、表1に示す。
【0254】
【表1】

【0255】
100℃反応は、175ml規模では62℃反応に対して11パーセンテージポイントの最終結晶化収率の上昇をもたらし、1400ml規模では13パーセンテージポイントの上昇をもたらす。ヒドロキシエステル生成物をベースとすると、収率の改善は、175ml規模で17%および1400ml規模で20%である。母液のヒドロキシエステル含量を考慮すると、100℃での収率は、90%の範囲まで上昇した。
【0256】
(実施例3)
追加の反応ランを、実施例1および実施例2に記載の方法で行ったが、ただし、冷却速度を計画的に遅くして、最終収率に対する冷却速度の効果を決定した。結果を表2に記載する。
【0257】
【表2】

【0258】
反応混合物を100℃で2時間保持した実験は、全体および単離反応収率において著しい低下を示したことを特記する。保持期間の間の反応混合物の試料は、不純物の数または濃度において上昇を示したが、生成物ヒドロキシエステル濃度の大きな低下は示さなかった。これらのデータは、式Vのヒドロキシエステルよりも可溶性である開放ラクトン(C(17)で)の濃度の上昇を反映していると考えられるが、この式Vのヒドロキシエステルは、使用された酸性試料の調製法により式V−1ヒドロキシエステルとして分析する。
【0259】
(実施例4)
さらなる反応および結晶化ランを、実施例2のランCに記載されている方法で行うが、ただし、式VI−1基質の負荷(2×6.8%)を実施例2で使用した負荷の2倍にした。KOMe濃度も2倍にした。反応時間を1時間まで延長した。それというのも、式VI−1ジケトン濃度が、反応がより短い時間で完了するために十分なほど迅速に低下していないようであったためである。しかしながらこの場合、追加の反応時間は、収率を著しくは改善しなかった。式V−1ヒドロキシエステルの単離収率は、65%であった。
【0260】
(実施例5)
さらなる反応および結晶化ランを、高い式VI−1基質負荷で、実施例5に記載の方法で、ただし175ml規模ではなく1400mlで115℃の温度で行った。「未処理」KOMe/MeOH溶液を使用して、このランを行った。即ち、ギ酸メチルも、他のけん化ターゲット化合物も、反応溶液または反応媒体に加えなかった。単離結晶化収率は、68%であった。
【0261】
(実施例6)
式VI−1ジケトンとカリウムメトキシドとのさらなる反応を、実施例1に一般的に記載されている方法で行った。これらのうちの1つ(ランJ)は、62℃の反応温度で実施し、他の2つ(ランKおよびL)は、100℃で実施した。KOMe/MeOH試薬または反応媒体のギ酸メチル処理を伴うことなく、ランJを行った。他のランでは、KOMe/MeOH試薬を、10重量%レベルのギ酸メチルで、実施例1に一般的に記載されている方法で処理した。様々なランで異なるステロイドロットを使用した。結果を表3に記載する。
【0262】
【表3】

【0263】
(実施例7)
式VI−1ジケトンから式V−1ヒドロキシエステルへの変換および式V−1生成物の結晶化を、前記実施例に一般的に記載されている方法で行った。結晶化からの母液試料を制御温度で規定の期間保持し、次いで、式V−1生成物の濃度に関して分析した。母液からシアン化物イオンを除去することは試みなかった。1つを除く全ての実験で、母液試料を規定の温度に記載の期間保持し、次いで、式V−1ヒドロキシエステル生成物に関して分析した。結果を表4に記載する。保持時間が6時間であった60℃での最後の項目を除き、各項目での保持時間は30分であった。
【0264】
【表4】

【0265】
これらのデータから2つの観察を導くことができる。第一には、平衡に近づくまでの速度は遅く、30分の保持時間は、平衡を達成するには不十分であった。第二には、母液試料を60℃で6時間保持すると、式V−1生成物濃度のかなりの上昇(14%)が存在した。
【0266】
しかしながら、ランML−7の平衡した母液を冷却する試みを行っても、結晶化は観察されなかった。式V−1生成物アッセイの14%上昇にも関わらず、濃度は、過飽和を開始するためには全く十分ではなかった。
【0267】
(実施例8)
式V−1生成物の加水分解による分解に対する二塩化メチレン/水抽出スキームの作用を評価するために、代表の母液試料(40ml)および水の量(40ml)をそれぞれ1.5℃に冷却し、次いで、相互に接触させた。試料中のステロイドの濃度を、時間を追って監視した。利用可能なステロイドの低減は、21時間にわたって13.6%だけであった。
【0268】
(実施例9)
式VI−1ジケトン(40g)の試料を無水メタノール(700ml;131mM)に反応容器中で加えた。生じた混合物を65℃に加熱し、温度が60℃に達したら、水酸化カリウム試薬溶液(12.2g、MeOH中32重量%のKOMeを含む)を反応媒体に加えた。これを、ゼロ時点として記録した。反応溶液を8時間攪拌し、試料を定期的に取り出して、HPLCによりステロイド濃度を測定した。ステロイド成分濃度と時間とのプロファイルを、図3に示す。8時間後に、反応器を−10℃に冷却し一晩保持した。固体を濾過し、乾燥させた。固体からの式V−1のヒドロキシエステルの収率は62.6モル%であった。
【0269】
結晶化母液(400ml)の一部を1.5℃に冷却し、塩化メチレン(150ml)を母液に加え、生じたステロイドの水不混和性溶液を1.5℃に冷却した。1.5℃に予備冷却された水(330ml)を水不混和性ステロイド溶液に加え、2相混合物を5分間攪拌して、相の間の物質移動を促進し、有機抽出物(塩化メチレン)相を水性ラフィネート相から分離し、反応器底部バルブから除去した。両方の相を、ステロイド含量に関してサンプリングした。分析を表5に示す。
【0270】
【表5】

【0271】
これらのデータから、利用可能なステロイドはほぼ定量的に、母液から塩化メチレン相に単一抽出段階で抽出されうることが分かる。データから、分配係数(K)を容易に算出することができる:
=([S]/V)/([S]/V
ここで、
[S]=有機相中のステロイドの濃度、
=有機相の体積
[S]=水性相中のステロイドの濃度および
=水性相の体積
である。
表5のデータから、K=5.2。同様の算出を、シアン化物イオンに関して実施することができ、水性相に対して93.5のシアン化物イオンでのKが得られる。有機抽出物中の利用可能なステロイドの全回収率は、47.4%であると決定することができ、これは、一次結晶化ステップからの結晶化収穫、即ち、反応混合物からの式V−1ヒドロキシエステルの結晶化で得られる収率に対して、モル収率で11.2パーセンテージポイントの上昇に等しい。
【0272】
(実施例10)
一連の反応ランを100℃で1400ml規模で、実質的に実施例1に記載されているように実施し、式V−1生成物を反応溶液から、この場合にも実質的に本願明細書に記載されているように結晶化させた。母液を真空下での蒸留により、その元の体積の約1/5まで濃縮させた。蒸留を約30℃のポット温度で行って、母液中に含まれる式V−1生成物の7α−メトキシカルボニル基の脱アルキル化を最小化した。濃縮された母液を1.5℃に冷却し、塩化メチレンと混合し、生じた水不混和性ステロイド溶液を1.5℃まで冷却し、1.5℃の水と混合した。生じた2相混合物を攪拌し、次いで、実質的に実施例9に記載されているように分離した。これらの反応、結晶化および母液濃縮物抽出ランからのデータを、表6に記載する。
【0273】
【表6】

【0274】
表6に記載の回収率パーセンテージは、有機抽出物に由来するリパルプ溶液中での式V−1ヒドロキシエステル、式VI−1ジケトンおよび/またはシアノエステルへの85%の変換率の達成を仮定して算出する。
【0275】
抽出供給溶液(母液濃縮物)中でのメタノールの体積に対する水体積の上昇は、有機相への分配係数(K)を上昇させるが、水性ラフィネート相でのステロイドの所定の濃度で、ステロイド損失のフラクションも上昇させることを特記することができる。したがって、下記の実施例11に示されているように、ステロイドの最大回収率が実現される水と、水不混和性有機溶媒と、濃縮母液との理論的に最適な比が存在しうる。しかしながら、実際には、利用される比は、方法容器体積限界ならびに操作安定性および制御の考慮により主に規定されうる。抽出供給溶液、水および水不混和性溶媒の好ましい比は実質的に、前記と同様である。
【0276】
(実施例11)
実施例10の反応バッチの母液から回収された固体を貯留し(全部で45.9g)、メタノールおよびカリウムメトキシド(利用可能なステロイドに対して1.6当量)を加え、再平衡反応を、生じたリパルプ溶液中、65℃で8時間、実質的に実施例1に記載されているように行った。反応媒体中のステロイド濃度を、HPLC分析により時間を関数として監視した。図4に示されているプロファイルは、反応の進行および再平衡を示している。リパルプ溶液中の式V−1ヒドロキシエステルの濃度は相対的に高いので、再平衡は実際に僅か約4時間で達成されることが判明する。
【0277】
平衡の8時間後に、反応溶液を−10℃に冷却し、平衡で形成された式V−1ヒドロキシエステルを二次結晶化ステップで結晶化させ、二次結晶化母液から分離し、アッセイした。固体生成物は、所望のヒドロキシエステルに関して93〜95重量%の純度範囲内にあることが判明した。
【0278】
母液濃度および抽出ステップの操作を記載する前記式を元に、回収率を、母液の体積(M)、母液濃縮係数(f)、抽出で使用された塩化メチレンの体積(d)および抽出で使用された水の体積(h)の関数として算出することができる。これらを表7で表にするが、D=d/MおよびH=h/M:
【0279】
【表7】

【0280】
場合によって、母液から回収されるステロイドを、次の反応バッチのための出発原料として使用されるように再循環させることにより、反応器充填に必要な新鮮なジケトンの量を低減することができる。しかしながら、前記のように、回収されるステロイドを、一次反応ステップに再循環させるよりも、分離平衡反応に掛けることが好ましい。
【0281】
(実施例12)
9,11α−エポキシ−17α−ヒドロキシ−3−オキソプレグナ−4−エン−7α,21−ジカルボン酸水素メチル、γ−ラクトンの合成
粗製Δ9,11−エプレレノン前駆体(1628g、78.7%エンエステルをアッセイ)を、塩化メチレン(6890mL)を伴う反応容器に加え、攪拌した。固体を溶かした後に、トリクロロアセトアミド(1039g)およびリン酸二カリウム(111.5g)を混合物に加えた。温度を25℃に調節し、混合物を320RPMで90分間攪拌した。30%の過酸化水素(1452g)を10分間掛けて加えた。
【0282】
反応混合物を放置して20℃にし、この温度で6時間攪拌し、この時点で、変換率をHPLCによりチェックした。残留エンエステルは、1重量%未満であると決定された。
【0283】
反応混合物を水(100mL)に加え、相を分離し、塩化メチレン層を除去した。水酸化ナトリウム(0.5N;50mL)を塩化メチレン層に加えた。20分後に、これらの相を分離し、HCl(0.5N;50mL)を塩化メチレン層に加え、その後、相を分離して、有機相を飽和ブライン(50mL)で洗浄した。塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。白色の固体(5.7g)が得られた。水性水酸化ナトリウム層を酸性化し、抽出し、抽出物を後処理すると、追加の生成物0.2gが得られた。エポキシメクスレノンの収率は、90.2%であった。
【0284】
(実施例13)
反応器に粗製Δ9、11−エプレレノン前駆体(1628g)および塩化メチレン(6890mL)を充填した。混合物を攪拌して固体を溶かし、次いで、リン酸二カリウム(111.5g)およびトリクロロアセトアミド(1039g)をハッチを介して充填した。温度および攪拌をそれぞれ、25℃および320RPMに調節した。混合物を90分間攪拌し、次いで30%過酸化水素(1452g)を10〜15分間掛けて加えた。定期的なHPLC評価により決定して、エプレレノン前駆体の当初充填のうちの4%未満が残るまで、攪拌を29〜31℃で継続した。これは、約8時間を必要とした。反応の終了時に、水(2400mL)を加え、塩化メチレンポーションを分離した。塩化メチレン層を硫酸ナトリウム(72.6g)の水(1140mL)溶液で洗浄した。ヨウ化カリウム紙を用いる過酸化物に関しての陰性試験の後に、水(2570mL)中で希釈された50%水酸化ナトリウム(256g)から調製された苛性アルカリ溶液と共に、塩化メチレンフラクションを45分間攪拌して、未反応のトリクロロアセトアミドを除去した。塩化メチレンフラクションを水(2700mL)、次いで亜硫酸水素ナトリウム(190g)の水(3060mL)溶液で順次洗浄した。
【0285】
エプレレノンの塩化メチレン溶液を大気圧で約2500mLの最終体積まで蒸留した。メチルエチルケトン(5000mL)を充填した。混合物を真空蒸留下に置き、溶媒を約2500mLの最終体積まで除去した。エタノール(18.0L)を充填し、約3500mLを大気圧蒸留を介して除去した。混合物を3時間掛けて20℃まで冷却し、次いで、4時間攪拌した。固体をフィルター上に集め、各回エタノール1170mLで2回洗浄した。固体をフィルター上で窒素下に少なくとも30分間乾燥させた。最後に、固体を真空炉中、75℃で、<5.0%LODまで乾燥させた。すると、半純粋なエプレレノン1100gが得られた。
【0286】
メチルエチルケトン8体積(含有に対して)から半純粋なエプレレノンを再結晶化させることにより、純粋なエプレレノンが約82%の回収率で得られる。
【0287】
(実施例14)
Δ9.11−エプレレノン前駆体(粗製160g)をトリクロロアセトアミド(96.1g)、リン酸二カリウム(6.9g)および塩化メチレン(1004mLまたは6.4ml/g)と組み合わせた。
【0288】
水(25.6mL)を塩化メチレン混合物に加えた。量を調節して、次の操作で導入される過酸化水素の濃度に合わせた。この場合、水は、30重量%の所望のレベルまで、次いで加えられる水性過酸化水素(35重量%)の濃度を希釈するために十分であった。
【0289】
水、ステロイド基質、トリクロロアセトアミドおよびリン酸二カリウムの混合物を、400RPMで攪拌し、温度調節器に接続されている加熱マントを用いて、30から45分間にわたって25℃に調節した。
【0290】
この後、35重量%過酸化水素(138.4mL)を5分未満で加えた。この例は、35%過酸化水素を使用したが、より高い濃度、例えば、50重量%を使用することもできる。記載のように、反応に望ましいよりも高い濃度を有する水性過酸化水素の導入には、通常は先行するステップで水を加えて、反応を開始するために望ましい濃度を維持することが必要である。
【0291】
反応を通して、温度を28から31℃に維持した。
【0292】
反応マスの有機部分を定期的にサンプリングして、240nmでのHPLC評価を介して、変換率を監視した。エンエステル前駆体の消失速度と時間とのプロットにより、R=0.996を伴う直線トレンドが得られた。このトレンドは、712分で98%の変換率を予測した。反応は、変換率95から98%をターゲットとしていた。反応を240nmで監視したが、不純物の全てが、この波長で観察されたわけではない。反応および不純物の実際のプロファイルを得るために、アッセイを210nmで再び操作した。
【0293】
660分後に、水(392mL)を混合物に加えた(変換率97.7%)。この実施例の調製では、水の全量を、後処理での他の水充填の体積に等しいように調製した。水の添加により、過酸化物の濃度が低くなり、ステロイド成分に対する反応性が低下する。しかしながら、低レベルの酸素が発生する可能性も存在した。層を分離し、下部塩化メチレン層を除去した(水性pH=6.5〜7.0)。典型的には、過酸化水素は、約5から6重量%でアッセイされた。この濃度レベルは、変換されたエンエステル1モル当たり過酸化物1.5モルの消費および30%の出発濃度と関係していた。
【0294】
操作の好ましいモードでは、不用の過酸化物溶液を、スルファイトクエンチを介して処理する。この操作は非常に発熱性であり、好ましくは、これを、成分をゆっくりと制御して組み合わせることで実施して(順または逆クエンチモードを使用することができる)、発熱を制御する。この手順の間に、過酸化物水素は水に還元され、スルファイトは酸化されて、スルフェートになる。スルファイトクエンチの後に、クエンチされた水相を蒸気ストリッピング操作に掛けて、混入している塩化メチレンを除去する。蒸気ストリッピングの前に、水性相を加熱して、エポキシド化反応経過の間にトリクロロアセトアミドの変換から生じる副生成物として生じているトリクロロアセテート塩を脱カルボキシル化する。蒸気ストリッピングの前の脱カルボキシル化により、ストリッピング操作の間にトリクロロアセテート塩が塩化メチレンと反応することが妨げられるが、このことはさもなければ、クロロホルムの形成をもたらしうる。例えば、水性相を100℃に、トリクロロアセテート塩を実質的に除去するために十分な時間加熱することにより、脱カルボキシル化を行うことができる。
【0295】
エプレレノンの塩化メチレン溶液を含む反応混合物の有機相をNaSO(7.4g)および水(122.4mL)を含有する水溶液(pH7〜8)で25℃で約15分間洗浄した。陰性のヨウ化デンプン試験(KI紙を用いて紫色呈色なし)が、攪拌期間の終了時に有機相で観察された。陽性試験が観察されたら、処理を繰り返す。
【0296】
塩化メチレンフラクションをペレット(7.88g)および水(392mL)から調製された希釈水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。混合物を25℃で35分間攪拌し、次いで、層を分離した(水性pH=13)。この短い接触時間で、トリクロロアセトアミドは完全には加水分解されないが、塩として除去される。これに関して、アンモニアを放出しながら、対応する酸塩へとトリクロロアセトアミドを加水分解するには典型的には、少なくとも2時間が必要である。
【0297】
塩化メチレン部分をさらに水(392mL)で洗浄した。これは、塩基性界面を逃した場合のバックアップ洗浄として意図された。トリクロロアセトアミドが30分の接触時間の間に完全には加水分解されないので、pHを調節すれば(水性pH=10)、有機相に再び分配する可能性がある。
【0298】
塩化メチレン部分を濃塩酸(4.1mL)の水(352mL)溶液(pH1)で約45分間洗浄した。この時間の終了時に、亜硫酸ナトリウム(12.4g)および水(40mL)(pH6〜7)から調製された溶液を加えて、pHを中性に調節した。
【0299】
塩化メチレン溶液を、大気圧蒸留を介して、ほぼ容器最少攪拌体積(〜240mL)に濃縮した。塩化メチレン蒸留液約1024mLを集めた。この実施例の調製は「バージン操作」であるので、即ち、再循環するために利用可能な再結晶化母液はないので、新鮮なMEK(1000mL)を、エプレレノンの塩化メチレン溶液に、母液の再循環を模倣するような割合(この場合には1546mL)で加えた。再び、溶媒を大気圧蒸留を介して、ほぼ最少攪拌体積(〜240mL)まで除去した。あるいは、これの蒸留を、真空下に行うこともできた。
【0300】
エタノール(2440mL)を残留物に加えた。エタノール充填は、通常体積のMEK再結晶化母液(162.7g)と組み合わされる粗製生成物での推定含有エプレレノン15mL/gと関係していた。バージンバッチ(144.8g)では、差は生じなかった。したがって、一連の処理におけるバージン操作は、回収のためにMEK母液を含む操作よりもやや高い体積比で処理する。
【0301】
488mLが除去されるまで、エタノールをスラリー(均一な溶液はこの処理では得られない)から大気圧圧力で蒸留した。除去されるエタノールの量を、粗製生成物中に含まれる化合物エプレレノンの推定量の12体積倍までの単離比に合わせた(1.5mL/gの最少攪拌体積はカウントしない)。バージン操作で、差は生じなかったので、この操作での単離体積をやや膨らませた。最終混合物を、大気圧還流で約1時間維持した。
【0302】
蒸留ポットの混合物の温度を、15℃まで低下させ、この温度で4時間攪拌した後に、固体を濾過した。エタノールすすぎ液を用いて、移動を完了した。通常、含まれるエプレレノン(155から310mL)に対して1〜2体積を、製造操作で使用した。
【0303】
固体を真空炉中、45℃で乾燥させ、アッセイ89.2%を伴う半純粋な原料(150.8g)をバージンランの産出として得た(調節されたアッセイ154.6gは、MEK再結晶化母液回収を含む操作での予測産出である)。通常、利用可能なエプレレノンの94〜95%が、粗製生成物のこの第一段階アップグレードの後に回収された。乾燥の設計レベルにより、半純粋なエプレレノンがエタノール溶媒和物として単離された。これに関して、温度が約90℃に達するまで、溶媒和物は、容易にはエタノールを放出しない。脱溶媒された原料は、次の操作でMEKと混合すると、集まる傾向を有するので、さらなる処理には、溶媒和物が好ましい。
【0304】
固体を、2−ブタノン(MEK)(2164mL)と組み合わせる。このMEKの量は、含まれるエプレレノンの推定値に対して14mL/gの体積比と関連している(MEK母液部分を含む)。
【0305】
MEK溶液中でのエプレレノンの温濾過を、再結晶化の前に実施することが好ましいが、実験室操作では使用されなかった。濾過の後に通常は、含まれるエプレレノンに対してMEK2体積と関連しているすすぎ量、例えば310mLを続ける。これにより、16mL/gと関連している2474mLの全MEK体積が得られる。温濾過は、12mL/gの比未満で操作すべきではない。それというのもこれは、80℃のMEK中でのエプレレノンの推定飽和レベルであるためである。
【0306】
1237mLが除去されるまで、MEKを大気圧で溶液から蒸留した。これは、8体積に関しており、結晶化比を、半純粋な生成物で推測されるエプレレノンの量に対して8mL/gの体積に調節した。反応器中に残っている実際の体積は、8mL/gと、9〜9.5mL/gの全体単離ターゲット体積では1〜1.5体積で推測される固体ボイドとである。
【0307】
溶液(混合物は、この時点で過飽和されていて、冷却が開始する前に核形成が起こりうる)を次のスケジュールに従って冷却する。この段階的なストラテジーは一貫して、多形IIをもたらした。
【0308】
65℃に冷却し、1時間保持する。
【0309】
50℃に冷却し、1.5時間保持する。
【0310】
35℃に冷却し、1時間保持する。
【0311】
15℃に冷却し、1時間保持する。
【0312】
次いで、固体を濾過し、MEK(310mL)ですすぐ。
【0313】
固体を最初、濾過器上で25℃で一晩乾燥させた。次いで、乾燥および脱溶媒を真空中、80〜90℃で約4時間完了させた。予測された乾燥固体重量は、バージンランでは119.7gであり、MEK母液包含を伴う操作では134.5gである。当初生成物のLODは、<0.1%であるべきである。濾液(1546mL)はエプレレノン約17.9gを含有した。これは、エプレレノン前駆体の調節投入11.5重量%と関連した。母液を、後続のエタノール処理との組合せを介して、回収のために蓄えた。データは、生成物エプレレノンが、MEK中、40℃で63日間まで安定であったことを示していた。
【0314】
全体アッセイ調節重量収率は、76.9%であった。この全体収率は、反応、エタノールアップグレートおよびMEK再結晶化でそれぞれ、93、95および87アッセイ調節重量%収率からなる。NaOH処理および随伴水性洗浄液に関して、1から2%の収率損失の可能性がある。後続のランでのMEK母液の包含は、86.4%の調節合計で9.5%(11.5×0.95×0.87)ほど全体収率を上昇させると予測される。
【0315】
MEK母液を、次のエポキシド化反応からの塩化メチレン溶液と合わせて、手順を前記のように繰り返すことができる。
【0316】
前記を考慮すると、本発明のいくつかの対象が達成され、他の有利な結果が達成されることが分かるであろう。本発明の範囲を逸脱することなく、前記方法および組成を様々に変化させることができるので、前記に含まれる全ての事項は、説明として解釈されるべきであり、限定の意味で解釈されるべきではないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0317】
【図1】式6000のジケトン基質をアルカリ金属アルコキシドと反応させると得られる反応マスから式5000のヒドロキシエステルを結晶化させると得られる母液から、ステロイドを回収するための方法を図示する図式的フローシートである。
【図2】実施例2に記載されている様々な反応温度で、式VI−1のジケトンをカリウムメトキシドと反応させることによる、式V−1のヒドロキシエステルの形成速度のグラフである。
【図3】実施例9に記載されているような式VI−1のジケトンとカリウムメトキシドとの反応が進行する間の、様々なステロイド成分の濃度プロファイルのグラフである。
【図4】実施例11の反応が進行する間の、反応混合物のステロイド成分の濃度プロファイルのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式5000に対応する化合物を調製する方法であって:
【化1】

−C−Cは、
【化2】

であり、
[式中、
は、アルファ配置された低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aまたはR17bはR15またはR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【化3】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し、
−G−J−は、基:
【化4】

を表し、
ここで、RおよびR11は独立に、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびR11は一緒になって、エポキシ基を形成し、
−C−Cは、
【化5】

である]、
約70℃より高い温度で、式6000の化合物をアルコキシ基の源と反応させるステップを含み、前記アルコキシ基は、式R71O−に対応し、ここで、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応し、式6000の前記化合物は、構造:
【化6】

[式中、
、R、R3a、R3b、R、R10、R11、R12、R13、R15、R16、R17a、R17b、−A−A−、−B−B−および−G−J−は、式5000に関して前記で定義された通りである]
を有する、方法。
【請求項2】
式5000の化合物を調製する方法であって:
【化7】

−C−Cは、
【化8】

であり、
[式中、
3aおよびR3bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R3aおよびR3bは、それらが結合しているC−3原子と一緒になって、ヘテロシクロを形成するか、R3aおよびR3bは一緒になって、オキソを形成し、
は、アルファ配置された低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aまたはR17bはR15またはR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【化9】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し、
−G−J−は、基:
【化10】

を表し、
ここで、RおよびR11は独立に、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびR11は一緒になって、エポキシ基を形成し、
−C−Cは、
【化11】

である]、
式6000の化合物を、式(R71O)M(式中、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mがアルカリ金属である場合、xは1であり、Mがアルカリ土類金属である場合、xは2であり、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応する)に対応するアルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドを含む試薬と接触させるステップを含み、式6000の前記化合物は、構造:
【化12】

[式中、
、R、R3a、R3b、R、R10、R11、R12、R13、R15、R16、R17a、R17b、−A−A−、−B−B−および−G−J−は、式5000に関して前記で定義された通りである]
を有し、前記試薬中および/または式6000の前記化合物を前記試薬と接触させる反応媒体中に含まれているか、形成されている遊離アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を、犠牲的けん化ターゲット化合物と反応させることにより、式6000の生成物のけん化を阻害する方法。
【請求項3】
式5000の化合物を調製する方法であって:
【化13】

−C−Cは、
【化14】

であり、
[式中、
3aおよびR3bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R3aおよびR3bは、それらが結合しているC−3原子と一緒になって、ヘテロシクロを形成するか、R3aおよびR3bは一緒になって、オキソを形成し、
は、アルファ配置された低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aまたはR17bはR15またはR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【化15】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し、
−G−J−は、基:
【化16】

を表し、
ここで、RおよびR11は独立に、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびR11は一緒になって、エポキシ基を形成し、
−C−Cは、
【化17】

である]、
式6000の化合物を、式(R71O)M(式中、Mは、アルカリまたはアルカリ土類金属であり、xは1または2であり、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応する)に対応するアルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドと、反応で変換される式6000の前記化合物1モル当たり0.2当量以下のアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を含有する反応媒体中で接触させるステップを含み、式6000の前記化合物は、構造:
【化18】

[式中、
、R、R3a、R3b、R、R10、R11、R12、R13、R15、R16、R17a、R17b、−A−A−、−B−B−および−G−J−は、式5000に関して前記で定義された通りである]
を有する方法。
【請求項4】
式5000に対応する化合物を調製する方法であって:
【化19】

−C−Cは、
【化20】

であり、
[式中、
は、アルファ配置された低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aまたはR17bはR15またはR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【化21】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し、
−G−J−は、基:
【化22】

を表し、
ここで、RおよびR11は独立に、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびR11は一緒になって、エポキシ基を形成し、
−C−Cは、
【化23】

である]、
式6000の化合物およびアルコキシ基の源を連続反応ゾーンに連続的または断続的に導入するステップと、式5000の前記化合物を含む反応混合物を反応ゾーンから連続的または断続的に取り出すステップとを含み、前記アルコキシ基は、式R71O−に対応し、ここで、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応し、式6000の前記化合物は、構造:
【化24】

[式中、
、R、R3a、R3b、R、R10、R11、R12、R13、R15、R16、R17a、R17b、−A−A−、−B−B−および−G−J−は、式5000に関して前記で定義された通りである]
を有する方法。
【請求項5】
式5000の構造を有する化合物を調製する方法であって:
【化25】

−C−Cは、
【化26】

であり、
[式中、
は、アルファ配置された低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
10、R12およびR13は独立に、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
17aおよびR17bは独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシからなる群から選択されるか、R17aおよびR17bは一緒になって、オキソを形成するか、R17aおよびR17bはC(17)と一緒になって、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、R17aまたはR17bはR15またはR16と一緒になって、五環式D環に縮合している炭素環式または複素環式環構造を構成し、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびRは、それらが結合しているステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し、
−B−B−は、基−CHR15−CHR16−、−CR15=CR16−またはα−もしくはβ−配置されている基:
【化27】

を表し、
ここで、R15およびR16は独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、
15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合しているステロイド核のC−15およびC−16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し、
−G−J−は、基:
【化28】

を表し、
ここで、RおよびR11は独立に、水素、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、RおよびR11は一緒になって、エポキシ基を形成し、
−C−Cは、
【化29】

である]、
式6000の化合物をアルコキシ基の源(ここで、前記アルコキシ基は、式R71O−に対応し、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応する)と塩基の存在下に接触させて、式5000の前記化合物、他のステロイド成分およびシアン化物を含む反応混合物を生じさせるステップ(ここで式6000の前記化合物は、構造:
【化30】

[式中、
、R、R3a、R3b、R、R10、R11、R12、R13、R15、R16、R17a、R17b、−A−A−、−B−B−および−G−J−は、式5000に関して前記で定義された通りである]
を有する)と、
結晶化媒体から式5000の生成物化合物を結晶化させるステップ(ここで前記結晶化媒体は前記反応混合物中で生成された式5000生成物、前記他のステロイド成分、前記シアン化物および結晶化溶媒を含む)と、
結晶化母液から結晶生成物を分離するステップ(ここで前記母液は残留ステロイドおよび前記シアン化物を含み、前記残留ステロイドは式5000の前記化合物および式5000の前記化合物に変換することができる他のステロイドを含む)と、
前記残留ステロイドを含む実質的に水不混和性である溶液を水性抽出媒体と液/液抽出ゾーンで接触させることにより、シアン化物イオンを含有する水性ラフィネート相と、式5000の前記化合物および前記他のステロイドを含む有機抽出物相とを含む2相抽出混合物を生じさせるステップと、
有機抽出物相と水性ラフィネート相とを分離するステップと、
有機抽出物相からステロイドを回収するステップとを含む方法。
【請求項6】
式5600に対応する化合物を調製する方法であって:
【化31】

[式中、
は、低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニル基を表し、
−A−A−は、基−CHR−CHR−または−CR=CR−を表し、
ここで、RおよびRは独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され、
12は、水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される]、
約70℃より高い温度で、塩基の存在下に、式6600に対応する化合物をアルコキシ基の源(ここで、前記アルコキシ基は、式R71O−に対応し、R71O−は、Rのアルコキシ置換基に対応する)と反応させるステップを含み、式6600に対応する前記化合物は、構造:
【化32】

[式中、
71は、低級アルキルであり、R、R、R12および−A−A−は、前記で定義された通りである]
を有し、
式6600に対応する前記化合物の調製は、式7600に対応する化合物を加水分解するステップを含み、式7600に対応する前記化合物は、構造:
【化33】

[式中、
、R、R12および−A−A−は、前記で定義された通りである]
を有する方法。
【請求項7】
式7600に対応する前記化合物の調製が、アルカリ金属塩の存在下に式8600に対応する化合物をシアン化物イオンの源と接触させるステップを含み、式8600に対応する前記化合物は構造:
【化34】

[式中、
、R、R12および−A−A−は、前記で定義された通りである]
を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式8600に対応する前記化合物の調製が、式13600に対応する基質化合物にα−配置で11−ヒドロキシ基を導入するために有効な微生物の存在下に発酵させることにより、前記基質化合物を酸化させるステップを含み、式13600に対応する前記基質が構造:
【化35】

[式中、
、R、R12および−A−A−は、前記で定義された通りである]
を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式4600:
【化36】

[式中、
111は、低級アリールスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アシルオキシまたはハライドであり、
、R、R、R12および−A−A−は、前記で定義された通りである]
に対応する化合物を調製するステップをさらに含み、式4600に対応する前記化合物の調製は、低級アルキルスルホニル化もしくはアシル化試薬またはハライド発生剤を式5600に対応する化合物と反応させるステップを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式2600:
【化37】

[式中、
−A−A−、R、R、RおよびR12は、前記で定義された通りである]
に対応する化合物を調製するステップをさらに含み、式2600に対応する前記化合物の調製が、式4600に対応する化合物から11α−脱離基を除去するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式1600:
【化38】

[式中、
−A−A−、R、R、RおよびR12は、前記で定義された通りである]
に対応する化合物を調製するステップをさらに含み、式1600に対応する前記化合物の調製が、エポキシド化剤を式2600に対応する化合物と接触させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
がメトキシカルボニルであり、R71がメチルであり、R111がメチルスルホニルオキシであり、−A−A−が−CH−CH−であり、R12が水素である、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アルコキシ基の前記源中および/または式6600の前記化合物をアルコキシ基の前記源と接触させる反応媒体中に含まれているか、形成されている遊離アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を犠牲的けん化ターゲット化合物と反応させることにより、式6600の生成物のけん化を阻害する、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式5600の生成物化合物を結晶化媒体から結晶化させるステップ(ここで前記結晶化媒体は前記反応混合物中で生成された式5600生成物、前記他のステロイド成分、前記シアン化物および結晶化溶媒を含む)と、
結晶生成物を結晶化母液から分離するステップ(ここで前記母液は残留ステロイドおよび前記シアン化物を含み、前記残留ステロイドは式5600の前記化合物および式5600の前記化合物に変換することができる他のステロイドを含む)と、
前記残留ステロイドを含む実質的に水不混和性である溶液を水性抽出媒体と液/液抽出ゾーンで接触させることにより、シアン化物イオンを含有する水性ラフィネート相と、式5600の前記化合物および前記他のステロイドを含む有機抽出物相とを含む2相抽出混合物を生じさせるステップと、
有機抽出物相と水性ラフィネート相とを分離するステップと、
ステロイドを有機抽出物相から回収するステップとをさらに含む、請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式2600に対応する化合物とエポキシド化剤との接触が、
エポキシド化反応ゾーン中、過酸化物活性化剤の存在下に、式2600のステロイド基質を過酸化化合物と接触させるステップ(ここで前記過酸化化合物および前記ステロイド基質は前記反応ゾーンに、ステロイド基質1モル当たり過酸化化合物約1から約7モルの比で導入される)と、
前記反応ゾーン中で前記過酸化化合物を前記ステロイド基質と反応させて、式1600のエポキシステロイドを含む反応混合物を生じさせるステップとを含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−512439(P2008−512439A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530794(P2007−530794)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002757
【国際公開番号】WO2006/032970
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(304048436)ファルマシア コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】