説明

90度位相回転とビームフォーマ確認を用いた閉ループ・モードを持つ符号分割多元接続無線システム

【課題】CDMA方式に送信アンテナ・ダイバーシティを用いるとき、ドップラ・フェージング速度に応じて比較的簡単なアルゴリズムで精度よく信号を復号する装置を提供する。
【解決手段】無線通信システム10のユーザ局12は、送信局14の少なくとも2本の送信アンテナから送られる複数のスロットを受信して逆拡散する逆拡散回路22を備える。複数のスロットはそれぞれ異なるパイロット記号を含む第1および第2のチャンネルを含む。ユーザ局14は第1および第2の送信アンテナからの所定のスロット毎にそれぞれ第1および第2のチャンネル測定値を測定する回路50を備える。またユーザ局14は、所定のスロットについての第1および第2のチャンネル測定値に応じて、また所定のスロットの直前に逆拡散回路22が受信したスロットに対して所定のスロットが90度回転するとこれに応じて所定のスロット毎に位相差値を測定する回路52を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信システムに関するもので、特にかかるシステムの閉ループ動作モードに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信はビジネス、個人、その他の応用に広く使われるようになり、無線通信技術は多くの分野で絶えず発達している。かかる発達の1つに、符号分割多元接続(CDMA)を含むスペクトラム拡散通信がある。この通信では、ユーザ局(例えば、ハンドヘルド・セルラ電話)は基地局と通信する。一般に基地局は「セル」に対応する。またCDMAシステムの特徴は、各信号に特有の符号を割り当てることにより共通チャンネル上で異なるデータ信号を同時に伝送することである。この特有の符号とセル内の選択されたユーザ局の符号とが一致したときに、データ信号の正しい受信者が決まる。CDMAが発展を続けた結果、次世代の広帯域CDMA(WCDMA)が出現した。WCDMAはデータ転送の2つの方式を含む。1つは周波数分割二重(FDD)方式であり、もう1つは時分割二重(TDD)方式である。
【0003】
CDMA通信は無線媒体を通ることなどの種々の要因があるので、最初に基地局からユーザ局に送信された信号は多重の異なる時刻にユーザ局に到着する。元は同じ信号であるが到着時刻が異なる各信号は、同じ信号であるが到着時刻の異なる他の信号に関してダイバーシティを有する、と言う。またCDMA通信には種々の型のダイバーシティが起こる。そしてCDMA技術は、信号に影響を与える1つ以上のダイバーシティに起因する各信号への影響を利用して元のデータを受信し識別するよう努める。
【0004】
CDMAダイバーシティの1つの型は、基地局から送信された信号が、接触する地面や、山や、建物や、その他の物体により反射されることから起こる。その結果、同じ1つの伝送信号は多くの異なる時刻に受信ユーザ局に到着する。かかる到着が時間的に十分離れていると仮定すると、それぞれの異なる到着信号は、異なるチャンネルを進んで異なる「パス」として到着する、と言う。かかる多重信号をこの技術では多重パスまたはマルチパスと呼ぶ。結局複数のマルチパスがユーザ局に到着し、各パスが進むチャンネルに従って各パスの位相、振幅、信号対雑音比(SNR)は異なる。したがって、1つの基地局から1つのユーザ局への1つの通信毎に、各マルチパスは元の送信データと同じものであり、各パスは到着時刻の差に起因する他のマルチパスに対して時間ダイバーシティを有する、と言う。到着時刻が異なると、マルチパス毎の(相関のない)フェージング/雑音特性は異なる。マルチパスは同じユーザ・データを受信機に運ぶが、受信機は各マルチパスの到着のタイミングに基づいてこれらを別々に認識する。詳しく述べると、CDMA通信では拡散符号を用いて変調する。拡散符号は一連の2進パルスから成り、記号データより高速で進み、実際の伝送帯域幅を決定する。この符号に従って伝送されるCDMA信号の各片を「チップ」と呼出し、各チップはCDMA符号内の或る要素に対応する。したがって、チップ周波数はCDMA符号の速度を定義する。チップを用いるCDMA信号の伝送を用いると、1つ以上のこれらチップにより時間的に分離されたマルチパスを受信機は識別することができる。なぜなら、この技術で知られているようにCDMAの自己相関は低いからである。
【0005】
自然現象であるマルチパス・ダイバーシティの他に、SNRを向上させることにより他のデータ精度の測度(例えば、ビット誤り率(BER)や、フレーム誤り率(FER)や、記号誤り率(SER))を改善するために、他の型のダイバーシティをCDMAシステムに組み込むことができる。かかる組み込まれたダイバーシティ方式の例としてアンテナ・ダイバーシティがある。これを挙げた理由は、後で説明する好ましい実施の形態に用いられる通信方式に関係するからである。まずアンテナ・ダイバーシティを一般的に説明すると、これはアンテナ・アレイ・ダイバーシティとも呼び、同じ局が2本以上のアンテナを用いる無線システムを指す。アンテナ・ダイバーシティが有用である理由は、異なるアンテナの間ではフェージングが独立だからである。また多重アンテナを用いる局とは、単一アンテナの移動体ユーザ局から送られる信号を多重アンテナを用いて受信する基地局を指すことが多い。ただし、最近では基地局が多重アンテナを用いて単一アンテナ移動局に信号を送るシステムも提案されている。本発明はむしろ多重送信アンテナを用いる基地局に関係するので、この場合について以下に詳細に説明する。
【0006】
基地局が2本以上の送信アンテナを用いる方式を送信アンテナ・ダイバーシティと呼ぶ。移動体通信の分野での例として、或る基地局の送信機は単一アンテナの移動局に送信するための2本のアンテナを備える。基地局が送信用に多重アンテナを用いる方が、移動局が多重アンテナを用いるより良いと考えられる。その理由は、一般に移動局はハンドヘルドまたはこれと同程度の装置であって、かかる装置は基地局に比べて低電力であり、また必要な処理が少ないことが望ましいからである。このように、移動局では資源を減らしたいので多重アンテナは好ましくなく、比較的高電力の基地局ではアンテナ・ダイバーシティが容易である。いずれにしても、送信アンテナ・ダイバーシティもダイバーシティの1つの形であり、受信機でのデータの精度を高めるため種々の信号を別々に処理した後に組み合わせるので、SNRは単一アンテナ通信より改善される。また送信アンテナ・ダイバーシティでは上に述べたマルチパス・ダイバーシティとは異なり、1つの局での多重送信アンテナは一般に互いに数メートル(例えば、3乃至4メートル)以内にある。この空間関係を空間ダイバーシティを与えるとも言う。空間ダイバーシティの距離が決まると、各アンテナが送信する同じ信号は送信アンテナの間の距離に関係する各時刻に宛先に到着する(他のダイバーシティがないと仮定する)。しかしこれらの時間差はチップの幅よりかなり小さいので、上に述べたマルチパスと同じ方法では、到着する信号を別々に識別することができない。
【0007】
送信アンテナダイバーシティ方式が発展した結果、所定の送信アンテナ・ダイバーシティにおいて受信機でのデータの認識を改善するための2つの信号通信方式が開発された。すなわち、閉ループ送信ダイバーシティと開ループ送信ダイバーシティである。閉ループ送信ダイバーシティと開ループ送信ダイバーシティは共に種々の形で実現されているが、この2つの方式の違いはフィードバックにある。特定して述べると、閉ループ送信ダイバーシティ方式はフィードバック通信チャンネルを含むが、開ループ送信ダイバーシティ方式は含まない。詳しく述べると、閉ループ送信ダイバーシティ方式の場合は、受信機は送信機から通信を受けて、受信した信号に加えられたチャンネルの影響の1つ以上の値を決定する、すなわち推定する。次に受信機はチャンネルの影響の1つ以上の表現を送信機に送信する(すなわち、フィードバックする)ので、送信機はそのチャンネルの影響に応じてその後の通信を修正することができる。本発明ではフィードバック値をビームフォーマ係数と呼ぶ。送信機はこの係数を利用して、ユーザ局に送る通信「ビーム」を形成する。
【0008】
CDMAとWCDMAが発展するに従って、対応する多くの標準が開発された。例えば、WCDMAに関して開発され現在も開発途中である多くの標準は、無線通信用の第三世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)であり、これは3GPP内の2システムにも反映されている。3GPPでは、WCDMA用の閉ループ・アンテナ・ダイバーシティが支援されなければならない。また過去において、3GPPは3つの異なる通信モードのどれかを用いる閉ループ動作方式を設定した。所定の時刻にどのモードを選択するかは或るユーザ局の受信機のドップラー・フェージング速度によって決まる。言い換えると、ユーザ局は移動体のことが多く、移動性やその他の要因のために、かかるユーザ局が基地局から受信する信号内には或る量のドップラー・フェージングが存在する可能性があるので、このフェージングが閉ループ方式の選択に影響する。フェージング速度によって3つの従来技術の動作モードの中から1つを選択するわけであるが、各モードはいくつかの点で異なる。1つの違いはユーザ局がビームフォーマ係数を量子化する方法であるが、他にもモードによる違いがある。かかる相違については後で説明する。いずれにしてもここで背景として注意すべきは、3つのモードの間には一般にトレードオフが存在し、フィードバック情報の分解度が大きいほど(従ってビームフォーマの制御のレベルが大きいほど)フィードバックと処理の遅れは大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行する3つのモードは、BER、FER、SNRなどの種々の測度から見た性能においてかなりのレベルに達している。しかし本発明者は、3つの方式はどれも種々の欠点を有することを確認した。例えば、ドップラー・フェージングの変化に応じて3つの異なるモードを切り替えるためのアルゴリズムはかなり複雑である。別の例として、ドップラー周波数全体にわたって従来のモード1とモード2を用いて得られるのと同等のまたはより優れた結果を、1つのモードを用いる別の方式により実現することができる。以下に述べる詳細な説明を参照して好ましい実施の形態を良く理解することにより、当業者は更に別の利点を確認することができよう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
好ましい実施の形態はユーザ局を含む無線通信システムである。ユーザ局は、送信局の少なくとも第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから送られる複数のスロットを受信して逆拡散するための逆拡散回路を備える。複数のスロットはそれぞれパイロット記号の第1の集合を含む第1のチャンネルと、パイロット記号の第2の集合を含む第2のチャンネルを含む。またユーザ局は第1の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第1のチャンネル測定値を測定する回路を備える。またユーザ局は、第2の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第2のチャンネル測定値を測定する回路を備える。またユーザ局は、所定のスロットの第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値に応じて、また所定のスロットの直前に逆拡散回路が受信したスロットに対する所定のスロットの90度回転に応じて、複数のスロット内の所定のスロット毎に位相差値を測定する回路を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】好ましい実施の形態を実現することのできる閉ループ送信アンテナ・ダイバーシティ・システムの図。
【図2】図1のユーザ局14の選択されたブロックの拡張図。
【図3】従来技術のモード1による、2つの異なる位相シフト値の一方に対するチャンネル測定値のマッピングを示すグラフ。
【図4】従来技術のモード2による、それぞれ45度回転して回転毎に2つの異なる位相シフト値の一方に対してチャンネル測定値をマッピングするチャンネル測定値のマッピングを示すグラフ。
【図5】好ましい実施の形態の広範囲閉ループ・モードによる、それぞれ90度回転して回転毎に2つの異なる位相シフト値の一方に対してチャンネル測定値をマッピングするチャンネル測定値のマッピングを示すグラフ。
【図6】図2の、また好ましい実施の形態における、ビームフォーマ係数計算ブロック52とビームフォーマ係数2進符号化ブロック54の機能的動作のブロック図。
【図7】図2の、また好ましい実施の形態における、チャンネル推定およびビームフォーマ確認ブロック56のブロック図。
【図8】図7のビームフォーマ確認ブロック100として容易に実現され、また2回転仮説試験法に従って動作する、ビームフォーマ確認ブロック1001の第1の実現のブロック図。
【図9】これも図7のビームフォーマ確認ブロック100として実現され、また4仮説単一ショット試験に従って動作する、ビームフォーマ確認ブロック1002の第2の実現のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、好ましい実施の形態を実現することのできる、閉ループ送信アンテナ・ダイバーシティ・システム10を示す。また図1は先行方式をブロック形式で表す。したがって以下の説明では、まず好ましい実施の形態と従来の方式の両方に適用されるシステム10を一般的に検討し、次にシステム10に特定の修正を加えて好ましい実施の形態を実現する場合について説明する。
図1のシステム10は送信機12と受信機14を備える。例えば、送信機12を基地局12、受信機14を移動体ユーザ局14とする。また説明を簡単にするために、これらの各構成要素を以下に別々に説明する。システム10で実現される閉ループ方式をこの技術では送信適応アレイ(TxAA)と呼ぶことがあるが、別の閉ループ方式も当業者に知られている。
【0013】
基地局12は情報ビットBiをチャンネル・エンコーダ13の入力に受信する。ビット誤り率を改善するため、チャンネル・エンコーダ13は情報ビットBiを符号化する。チャンネル・エンコーダ13は種々の符号化方式を用いてよく、ビットBiに適用されるのは例えば、畳込み符号、ブロック符号、ターボ符号、連結符号、またはこれらの符号の任意の組合せなどを用いる方式である。チャンネル・エンコーダ13の符号化された出力はインターリーバ15の入力に入る。インターリーバ15は符号化されたビットのブロックに作用してこれらのビットの順序を組み替え、この操作とチャンネル・エンコーダ13の符号化とを組み合わせて情報の時間ダイバーシティを活用できるようにする。例えばインターリーバ15が行う1つの組替え方法ではビットをマトリクス状に受信する。すなわち、ビットを行毎に受けてマトリクスにし、次にこれらのビットをマトリクスから記号マッパ16に列毎に出力する。記号マッパ16はこの入力ビットとを記号(一般にSiで示す)に変換する。変換された記号Siは、例えば4相位相偏移変調(QPSK)記号、2進位相偏移変調(BPSK)記号、4相振幅変調(QAM)記号など、種々の形をとることができる。
【0014】
いずれにしても記号Siは、ユーザ・データ記号や、パイロット記号や、送信電力制御(TPC)記号などの制御記号や、速度情報(RI)記号などの種々の情報を表してよい。記号Siは変調器18に入る。変調器18は各データ記号を変調する。すなわち、データ記号と、疑似雑音(PN)ディジタル信号すなわちPN符号またはその他の拡散符号などのCDMA拡散シーケンスとを結合する、すなわち掛ける(すなわち、スペクトラム拡散方式を用いる)。いずれにしても、伝送される記号に伝送中に特有の符号を割り当てることにより、拡散シーケンスは共通チャンネルでの情報の同時伝送を容易にする。またこの特有の符号を用いることにより、同じ帯域幅で同時に伝送される信号をユーザ局14(またはその他の受信機)で識別することができる。変調器18は2つの出力を有する。1つは乗算器201に接続する第1の出力181であり、1つは乗算器202に接続する第2の出力182である。一般に乗算器201と202はフィードバック復号および処理ブロック21から、1つの通信スロットnについて、スロット毎に復号された対応する重み値w1,T(n)とw2,T(n)をそれぞれ受ける。
【0015】
フィードバック復号および処理ブロック21は、次に説明するように値w1(n)とw2(n)に応じて値w1,T(n)とw2,T(n)を生成する。乗算器201と202は値w1,T(n)とw2,T(n)を、変調器18からの対応する出力181と182にそれぞれ掛け、これに応じて、乗算器201と202は送信アンテナA121とA122にそれぞれ出力を与える。ただしアンテナA121とA122は互いに約3乃至4メートル離れている。後で詳細に説明するように、従来技術の種々の動作モードを適用する際に、乗算器201の動作は基準化された値(すなわち、w1,T(n)は基準化されている)を用いるが、乗算器202の動作は或る動作モードでは単一スロットのw2,T(n)の値を用い、他の動作モードでは逐次受信したw2,T(n)の値の平均値を用いる。いずれの場合も、w2,T(n)はw1,T(n)の基準化された値に対して相対的である。
【0016】
受信機14は送信アンテナA121とA122からの通信を受信するための受信アンテナA141を含む。前に説明したように、かかる通信は種々のマルチパスを通り、送信アンテナA121とA122の空間的関係から、各マルチパスは送信アンテナA121と送信アンテナA122の両方からの通信を含む。図1の例は全部でP個のマルチパスを示す。受信機14内では、アンテナA141が受信した信号は逆拡散器22に入る。逆拡散器22は、例えばCDMA信号にユーザ局14のCDMA符号を掛けまた任意のマルチパスを分解するなど、多くの点で既知の原理に従って動作し、その出力に逆拡散された記号ストリームを記号速度で生成する。逆拡散器22に関する詳細は、アンテナA141が受信する情報の異なるチャンネルを分解する機能に関して後で説明する。
【0017】
逆拡散器22からの逆拡散信号出力は最大比結合(MRC)ブロック23とチャンネル評価器24に入る。後で詳細に説明するように、チャンネル評価器24は2つの異なるチャンネル決定を行う。混乱を避けるために、一方の決定をチャンネル測定と呼び、他方をチャンネル推定と呼ぶ。両決定とも、少なくとも到着する逆拡散データに基づいて行う。チャンネル評価器24は2つの出力を出す。チャンネル評価器24からの第1の出力241はチャンネル推定値


(以下hn(山バー)と表記する)で、MRCブロック23に出力される。MRCブロックはチャンネル推定値を受けると、レーキ受信機を用いる逆拡散器22から受ける逆拡散データ記号にこの推定値を与える。しかし推定値をデータに与えるには異なる信号結合方法を用いてよい。チャンネル評価器24からの第2の出力242は前に導入した値w1(n)とw2(n)を、フィードバック・チャンネルを介して基地局12に送り返す。後で詳細に説明するように、値w1(n)とw2(n)は、チャンネル評価器24が行ったチャンネル測定に応じてチャンネル評価器24が決定する。いずれにしても、上の説明から当業者が理解するように、値w1(n)とw2(n)は上に導入した閉ループ・ビームフォーマ係数である。
【0018】
ユーザ局14のMRCブロック23に戻って、チャンネル推定値を逆拡散データに与えた後、その結果をデインターリーバ25に出力する。デインターリーバ25はインターリーバ15の逆の動作を行い、その出力はチャンネル復号器26に接続する。チャンネル復号器26は、ビタビ復号器、ターバ復号器、ブロック復号器(例えば、リード・ソロモン復号)、またはこの技術で知られている他の適当な復号方式でよい。いずれにしても、チャンネル復号器26はその入力に受けたデータを(一般に或る誤り訂正更符号と共に)復号し、復号された記号のストリームを出力する。注意すべきであるが、チャンネル復号器26へのデータ入力の誤りの確率は、チャンネル復号器26で処理し出力した後の誤りの確率よりもはるかに大きい。例えば現在の標準では、チャンネル復号器26の出力の誤りの確率は10-3から10-6の間である。最後に、チャンネル復号器26からの復号された記号ストリーム出力は、ユーザ局14内の別の回路がこれを受けて処理する。ただしかかる回路は、この例示と説明を簡単にするために図1には示していない。
【0019】
システム10について詳細に説明したので、次に閉ループ・システムとしての動作を説明する。特定して述べると、システム10は閉ループシステムと呼ばれるが、その理由は、基地局12からユーザ局14までのデータ通信チャンネルの他に、システム10はビームフォーマ係数w1(n)とw2(n)をユーザ局14から基地局12に伝達するためのフィードバック通信チャンネルを含むからである。このように、データ通信とフィードバック通信チャンネルは環状の、したがって「閉じた」ループ・システムを生成する。また注意すべきであるが、ビームフォーマ係数w1(n)とw2(n)は種々のチャンネルの影響を反映する。例えば、ユーザ局14は基地局12から受信した信号内に或るレベルのフェージングがあることを確かめる。例えば、局所の干渉によるものやユーザ局14のドップラー速度による(移動局だから)ものなどで、いずれにしてもフェージングはレイリー・フェージングの特性を有する。その結果、ユーザ局14がビームフォーマ係数w1(n)とw2(n)をフィードバックすると、フィードバック復号および処理ブロック21はこれらの値を処理して対応する値w1,T(n)とw2,T(n)を生成し、乗算器201と202はこれらの値を種々の記号に与え、送信機アンテナA122(w2,T(n)に応じて)と送信機アンテナA121(w1,T(n)に応じて)からそれぞれの送信信号を出す。したがって、基地局12から送信される最初の記号S1は、送信機アンテナA121から積w1,T(n)S1の一部として、また送信機アンテナA122から積w2,T(n)S1の一部として送信される。これらの重み付き積もそれぞれのアンテナと共に図1に示す。
【0020】
閉ループ送信アンテナ・ダイバーシティ・システムについて詳細に説明したので、次に上に述べた3GPP標準と、或るユーザ局受信機のドップラー・フェージング速度に応じて所定のときに閉ループ・モードを選択することについて説明する。特定して述べると、次の表1は3つの異なる従来の3GPP閉ダイバーシティ・モードを示し、また各モードと概略のドップラー・フェージング速度(すなわち、周波数)との関係を示す。
【表1】


異なるフェージング速度に応じて表1の従来技術の3つの動作モードから1つを選択するのであるが、その他に各モードの方法はいくつかの点において異なる。1つの違いはビームフォーマ係数(例えば、図1のw1(n)とw2(n))を量子化する方法であるが、他にもモードによる違いがある。かかる違いについて以下に詳細に説明する。
【0021】
表1の従来技術の動作モード1は、基地局12と通信する或る移動体ユーザ局14が比較的高速で移動しているときに生じるような、比較的高いドップラー・フェージング速度に用いる。高いドップラー・フェージングに対して、モード1は量子化の量を少なくしたビームフォーマ係数を用いる。すなわちモード1では、これらの係数を表すのにユーザ局は少な目の情報量をフィードバックする。詳しく述べると、モード1ではユーザ局は或るビームフォーマ係数ベクトル


(以下Wと表記する)をフィードバックする。2アンテナの基地局ではこの係数ベクトルを次の式1で表す。
【数1】

【0022】
式1で、係数w1(n)は基地局送信アンテナA121に与えられ、係数w2(n)は基地局送信アンテナA122に与えられる。実際にはフィードバックする情報の量を更に減らすために、w1(n)を基準化して或る固定値にする。したがって、基地局12がこの基準化された値を知っている限りはこれをフィードバックする必要はない。つまり、w1(n)が基準化されているときはw2(n)の値だけが変わり、またこれは固定の値w1(n)に関連しているので、w2(n)をユーザ局14から基地局12にフィードバックする。また従来技術のモード1では、w2(n)は2つの値の一方だけとる。したがってベクトルWの量子化は次の式2と3で表される。
【数2】


このように、モード1では2つの値(すなわち、w2(n)の値)の一方だけフィードバックすればよい。また注意すべきであるが式2と式3の約束では2進値を用い、また当業者が理解するように、2進0の場合は実際には−1の値が物理的フィードバック・チャンネルに与えられ、2進1の場合は実際には+1の値が物理的フィードバック・チャンネルに与えられる。最後に、w2(n)の値(すなわち、2進の0か1)を選択する従来の方法について以下に説明する。
【0023】
2(n)を決定する従来技術のモード1は図2の拡大図を見ると理解しやすい。図2には、図1のユーザ局14のいくつかのブロックの詳細を示す。図2に、逆拡散器22に信号を与えるアンテナA141を再び示す。図2では逆拡散器22を拡大して、逆拡散および分解マルチパス・ブロック40を示す。ブロック40は2つの異なるチャンネルから到着する信号を逆拡散する。前に述べたように、逆拡散器22はアンテナA141が受信する情報の異なるチャンネルを処理する。図2では、これらの異なるチャンネルを主共通制御物理チャンネル(PCCPCH)と専用物理チャンネル(DPCH)で示す。従来技術では、PCCPCHは基地局12から全てのユーザ局(すなわち、基地局12と通信するユーザ14およびその他の局)に同じチャンネルとして送信され、w1(n)とw2(n)に応じた重み付けはされていない。しかしDPCHはユーザ局に特有であって、w1(n)とw2(n)に応じた重み付けがされている。PCCPCHもDPCHもフレーム書式で通信され、各フレームは多数のスロットを含む。例えばWCDMAでは、各フレームは16スロットを含む。またPCCPCHでもDPCHでも、これらのチャンネルの各スロットは同じパイロット記号で始まり、また情報記号を含む。このように、ブロック40は各受信スロットを処理し、DPCH記号ストリームとPCCPCH記号ストリームを出力する。これらのストリームの処理について以下に説明する。
【0024】
ブロック40からのDPCH記号ストリームは情報記号抽出器42とパイロット記号抽出器44に入る。ブロック42と44はその名の示すように動作して、DPCH記号ストリームからDPCH情報記号とDPCHパイロット記号をそれぞれ取り出す。本発明ではDPCH情報記号を


(以下x(n)と表記する)で表し、DPCHパイロット記号を


(以下y(n)と表記する)で表す。太字は本明細書の種々の値がベクトルであることを表す。DPCH情報記号x(n)は抽出器42からMRCブロック23に出力され、DPCHパイロット記号y(n)は抽出器44からチャンネル評価器24に出力される。これについては後で詳細に説明する。
【0025】
逆拡散および分解マルチパス・ブロック40とその出力であるPCCPCH記号ストリームに戻ると、このストリームはPCCPCHパイロット記号抽出器46に入る。PCCPCHパイロット記号抽出器46はPCCPCH記号ストリームからPCCPCHパイロット記号を取り出す。本明細書ではPCCPCHパイロット記号を


(以下z(n)と表記する)で表す。PCCPCHパイロット記号z(n)は抽出器46からチャンネル評価器24に出力される。これについて次に詳細に説明する。
【0026】
図2のチャンネル評価器24は、抽出器46からPCCPCHパイロット記号z(n)を受けるチャンネル測定ブロック50を含む。前に述べたように、チャンネル評価器24は少なくとも到着する逆拡散データに基づいてチャンネル測定とチャンネル推定を行うが、ここでブロック50がチャンネル測定を行う態様を詳細に検討する。特定して述べると、従来の方法ではPCCPCHパイロット記号は基地局の異なる送信アンテナ毎に異なる。この例では、抽出されたPCCPCHパイロット記号z(n)は基地局アンテナA121に対応するパイロット記号の1つの集合と、基地局アンテナA122に対応するパイロット記号の別の集合を含む。定義によりユーザ局14は基地局12が送信するパイロット記号の値を知っているので、ブロック50は実際に受信したパイロット記号と既知の送信パイロット記号との差から、送信アンテナ毎に実際に受信したパイロット記号の変化を反映してチャンネル測定値を決定する。本明細書では、アンテナA121に対応するチャンネル測定値を


(以下


はαと表記する)で表し、アンテナA122に対応するチャンネル測定値をα2,nで表す。α1,nとα2,nはチャンネル測定ブロック50からビームフォーマ係数計算ブロック52に出力される。
【0027】
ビームフォーマ係数計算ブロック52は値α1,nとα2,nに応じて位相差値(φ1(n)とφ2(n)で示す)を計算する。ここでφ1(n)とφ2(n)は後で説明するように角位相差であり、2進値形式に符号化されたw1(n)とw2(n)の値(またはw1(n)が基準化された値のときはw2(n)の値だけ)をそれぞれ生成する。前に述べたように従来技術のモード1ではw2(n)の値は2つの状態の一方だけをとる。したがって、ブロック52はα2,nの値をこれらの2つの状態の一方にマッピングする。このマッピング機能を図3のグラフ52gに、虚軸と実軸に沿ってプロットして示す。詳しく述べると、グラフ52gはw2(n)の2つの可能な値に対応する2つの陰をつけた部分521と522を示す。これらの2つの値はφ2(n)の2つの対応する値にマッピングする。特定して述べると、チャンネル測定値


が領域521内にあるときはφ2(n)の値は0度である。φ2(n)のこの0度という値はビームフォーマ係数2進符号化ブロック54に出力され、ブロック54は0度というφ2(n)の角度値を対応する2進値w2(n)=0に変換し、w2(n)=0の値を基地局12にフィードバックする。他方で、チャンネル測定値


が領域522内にあるときはφ2(n)の値はπ度である。φ2(n)のこのπ度という値はビームフォーマ係数2進符号ブロック54に出力され、ブロック54はπ度というφ2(n)の角度値を対応する2進値w2(n)=1に変換し、w2(n)=1の値を基地局12にフィードバックする。
【0028】
次に従来技術のモード1の別の態様に注目する。特定して述べると、ユーザ局14はw2(n)の値を基地局12に送信するが、この送信に種々の影響が与えられることは明らかである。すなわち、ユーザ局14から基地局12へのフィードバック信号にはチャンネルの影響がある。基地局12から見たとき、ユーザ局14からのw2(n)のフィードバック送信に対応する、基地局12が実際に受信した信号を表す値を


(以下w2(波バー)(n)と表記する)とする。フィードバック復号および処理ブロック21はw2(波バー)(n)を復号し処理してこれに対応する値w2,T(n)を出力する。次に、これに乗数182を掛ける。基地局12が正しい値w2(n)を用いてw2,T(n)を決定し、これにより積信号(すなわち、w2,T(n)Si)を生成するのが理想的であるが、フィードバック・チャンネルの影響のために基地局12はw2(n)の違う値を用いることがある。例えば、ユーザ局14がw2(n)=0という値を基地局12に送信しても、フィードバック・チャンネルのために、受信する値はw2(波バー)(n)=1かも知れない。逆に、ユーザ局14がw2(n)=1という値を基地局12に送信しても、フィードバック・チャンネルのために、受信する値はw2(波バー)(n)=0かも知れない。このような可能性があるので、従来技術のモード1を用いるときはユーザ局14は、この技術でビームフォーマ確認またはアンテナ確認と呼ぶ過程を更に行う。これについて次に詳細に説明する。
【0029】
図2の拡張ブロック図に戻って、ビームフォーマ確認について更に説明する。特定して述べると、前に述べたようにDPCHパイロット記号y(n)は抽出器44からチャンネル評価器24に出力され、またこれも前に述べたが、DPCHパイロット記号はw1,T(n)とw2,T(n)に応じて基地局12により修正されている。図2を参照して以下に説明するように、DPCHパイロット記号y(n)はチャンネル推定およびビームフォーマ確認ブロック56に接続する。ブロック56は、チャンネル測定ブロック50からチャンネル測定値α1,nとα2,nを、またビームフォーマ係数計算ブロック52から位相差値φ1(n)とφ2(n)を受ける。これらの入力に応じて、ブロック56はチャンネル推定値(前にhn(山バー)の記号で導入した)をMRCブロック23に出力するが、そのときビームフォーマ確認過程は、前にフィードバックされたビームフォーマ係数を考慮してhn(山バー)が正しく推定されたことを確かめる。特定して述べると、hn(山バー)は次の式4により定義される。
【数3】

【0030】
式4は、ユーザ局14が受信する信号内の全体の変化(すなわち、チャンネル推定hn(山バー))がチャンネル測定係数α1,nおよびα2,nと、重み係数w1,T(n)およびw2,T(n)(基地局12がユーザ局14に送信する前の信号に対して基地局12で掛ける係数)で反映されていることを数学的に示す。このように、ビームフォーマ確認は、基地局12が用いるw1,T(n)とw2,T(n)をユーザ局14が確認し、これらの値を用いてhn(山バー)を決定する過程である。
【0031】
また、ブロック56はチャンネル測定値α1,nとα2,nを受信するので、ビームフォーマ係数計算ブロック52からの位相差値φ1(n)とφ2(n)からw1,T(n)とw2,T(n)を識別することができると仮定すれば、式4は1つの方式においてチャンネル推定hn(山バー)が直接計算から得られることを示す。しかし基地局12はw2(n)ではなくw2(波バー)(n)に応答するので、ビームフォーマ確認は、基地局12がw2(波バー)(n)のどんな値を受信したかをユーザ局14が予測し、次にその予測値を用いて式4の対応値w2,T(n)を識別してhn(山バー)を決定する過程である。この考え方を更に理解するには、ビームフォーマ確認の例を見るのがよい。スロットn=1において、ユーザ局14はw2(1)というフィードバック値を基地局12に送信すると仮定する。これに応じて、基地局12は値w2(波バー)(1)を受信し、ブロック21は対応する値w2,T(1)を生成し、積w2,T(1)Siを形成して、ユーザ局14に送信する。従来技術のモード1で用いられるビームフォーマ確認では、ユーザ局14は信号w2,T(1)Siを受信し、この信号から基地局12がその対応する送信に実際にw2,T(1)のどんな値を用いたかを決定しようと試みる。この試みは、仮説試験と呼ぶ方法を用いてブロック56で行う。ブロック56は、ユーザ局14からフィードバックされた実際の値w2(1)ではなくこの決定された値を用いてhn(山バー)を決定し、MRCブロック23はhn(山バー)のこの値を用いて信号を更に処理する。
【0032】
従来技術のモード1の説明を終わるに当たって注意すべきことは、仮説試験に関する操作と共にw2(n)の2つの可能なデータ値だけを用いれば、妥当なレベルの性能速度での誤り率は実用可能な程度になることである。以下に説明する従来技術のモード2およびモード3に比べて従来技術のモード1のフィードバック遅れは比較的小さいので、一定レベルの性能を達成することができる。しかし後で説明するように、モード1における2状態レベルの量子化により得られる分解度は、従来技術のモード2とモード3に比べて低い。
【0033】
表1の従来技術のモード2の動作を見ると、これは比較的中位のドップラー・フェージング速度(例えば、基地局12と通信する或る移動体ユーザ局14がモード1の通信の場合より低い速度で移動しているときなど)で用いられる。またモード2は式1の約束を用いてw1(n)を(そしてその対応値のφ1(n)を)基準化するが、ビームフォーマ係数計算ブロック52でのφ2(n)とw2(n)の計算の分解度は高くなる。特定して述べると、モード2ではブロック52は2値ビームフォーマ係数にスロット当たり45度のコンステレーション(constellation)回転を与える。すなわち、逐次のスロット毎に、前のスロットに対して45度回転させてφ2(n)とw2(n)を決定する。特に、かかる回転を4回行うと全体で180度に相当するので、45度のコンステレーション回転を用いる場合は、ユーザ局14は各連続する4スロット内の各逐次スロットに45度回転を加えてスロットを一般的に分析する。この回転をユーザ局14で行うには、対象とするスロットを受信したタイム・スロットに部分的に基づいてφ2(n)とw2(n)の値を決定し、次に4スロットのグループiの所定のスロットに与える回転に関してw2(n)の値を選択する。この回転について、次の表2と図4を参照して以下に説明する。
【表2】

【0034】
4スロットのグループi内の第1のスロット4iについて表2と図4を参照すると、ユーザ局14内のビームフォーマ係数計算ブロック52が決定するφ2(n)とw2(n)の値は、グラフ60に示すようにまた垂直の虚軸に対して回転しない軸60axで表すように、0度の回転に基づく。詳しく述べると、グラフ60は2つの陰のある領域601と602を示す。チャンネル測定ブロック50からのチャンネル測定値


が領域601の中にある場合は、ブロック52はφ2(4i)の値を0度と計算し、符号化ブロック54はこの値を符号化して対応する2値形式w2(4i)=0を生成し、基地局12にフィードバックする。逆に、チャンネル測定値


が領域602の中にある場合は、ブロック52はφ2(4i)の値をπ度と計算し、符号化ブロック54はこの値を符号化して対応する2値形式w2(4i)=1を生成し、基地局12にフィードバックする。また表2とグラフ60上の点の位置は、w2(波バー)(4i)の値に応じて基地局12が実現する位相回転を示す。特定して述べると、基地局12が受信するw2(波バー)(4i)の値が0に等しい場合は、基地局12のフィードバック復号および処理ブロックはスロット4iのチャンネル測定位相変化を0度として処理する。しかし、基地局12が受信するw2(波バー)(4i)の値が1に等しい場合は、基地局12はスロット4iのチャンネル測定位相変化をπ度として処理する。
【0035】
また表2と図4はグループi内の残りの3スロットを示す。ここで図4では同様の参照番号を用いるので、グラフ62はスロット4i+1に対応してπ/4度に等しい回転を表し、グラフ64はスロット4i+2に対応してπ/2度に等しい回転を表し、グラフ66はスロット4i+3に対応して3π/4度に等しい回転を表す。別の観点からグラフ62を見ると、スロット4i+1に用いるその軸62axは垂直の虚軸に対してπ/4度回転していることを表す。またグラフ62は2つの陰のある領域621と622を示す。ユーザ局14のブロック50が決定するチャンネル測定値


が領域621内にある場合はφ2(4i+1)の値はπ/4度であり、w2(4i+1)=0に対応する2進値が基地局12にフィードバックされる。チャンネル測定値


が領域622内にある場合はφ2(4i+1)の値は−3π/4度であり、w2(4i+1)=1に対応する2進値が基地局12にフィードバックされる。また表2とグラフ62上の点の位置は、w2(波バー)(4i+1)の値に応じて基地局12が実現する位相回転を示す。特にスロット4i+1では、基地局12が受信するw2(波バー)(4i+1)の値が0に等しい場合は、基地局12のフィードバック復号および処理ブロックはスロット4i+1のチャンネル推定位相変化をπ/4度として処理する。しかし基地局12が受信するw2(波バー)(4i+1)の値が1に等しい場合は、基地局12はスロット4i+1のチャンネル推定位相変化を−3π/4度として処理する。この第2の例と上に述べた先行例から、従来技術のモード2において、ユーザ局14がφ2(n)に与える表2と図4の残りの値と例と、その値のw2(n)への変換と、基地局12のフィードバック復号および処理ブロックによるw2(波バー)(n)の値の解釈を、当業者は容易に理解することができる。
【0036】
次にユーザ局14が送信するw2(n)に応じる従来技術のモード2による処理の別の態様について説明する。まず前にモード1に関して約束を導入したように、基地局12から見たとき、ユーザ局14からのw2(n)のフィードバック信号に対応する、基地局12が実際に受信した信号を表す値をw2(波バー)(n)とする。次に注意すべきことは、従来技術のモード2ではフィードバック復号および処理ブロック21は、w2(波バー)(n)の受信値毎にw2,T(n)の値を決定するのに実際は平均化フィルタを用いることである。特定して述べると、ブロック21はw2(または基地局12から見るとw2(波バー))の4つの値の平均を計算するので、その結果のw2,T(n)は次の式5により定義される。
【数4】


式5の中のw2(波バー)(4i)は基地局12がフィードバック・チャンネルを介して受信した最新のビームフォーマ係数を示し、式5の中の残りの3つの加数はその最新の係数の前の3つの別のビームフォーマ係数を示す。従来技術のモード2ではこれらの4つの値を平均し(すなわち、4で割り)、基地局12はこの結果w2,T(n)に、乗算器202に接続する第2の出力182からの信号を掛ける。一方、w1,T(n)は単に基準化された値w1(n)の対応値なので、基地局12はこれに、乗算器201に接続する第1の出力181からの信号を掛ける。
【0037】
上記から当業者が理解するように、従来技術のモード2も2つの値の1つ(すなわち、w2(n))のフィードバックを実現する。しかし更に位相回転を用いることにより、従来技術のモード1よりも大きなビームフォーマ分解度が得られる。言い換えると、任意の所定のスロットのw2(n)は従来技術のモード1の場合のように2つの値の1つだけをとるが、4スロットにわたる45度回転を用いることにより事実上8つの可能な値(すなわち、2値/スロット*4スロット/回転サイクル=8値)のコンステレーションを生成する。しかし注意すべきは、従来技術のモード2は、従来技術のモード1が用いたような任意の型のビームフォーマ確認を用いないことである。本発明者の見るところでは、従来技術のモード2ではビームフォーマ確認は実行できない。なぜなら、4サイクルの45度回転と組み合わせるので、複雑すぎて実行不可能になるからである。また位相回転と平均化により従来技術のモード1に比べて全体の遅れが増加するので、従来技術のモード2の分解度が優れているという利点は部分的に相殺される。
【0038】
表1の従来技術のモード3の動作を見ると、従来技術のモード1および2に比べて比較的低いドップラー・フェージング速度に用いられることが分かる。モード3のフェージング速度は、ユーザ局14が比較的低速で移動しているときに相当する。ユーザ局14の速度が低いので、従来技術のモード3では追加の処理を行う時間の余裕がある。特定して述べると、モード3はビームフォーマ係数の量子化を増やすが、この増加は従来技術のモード2の図2に示すような回転により得られるのではない。従来技術のモード3は全部で4ビットの情報をフィードバックする。ここで1ビットは振幅訂正ビットであり、残りの3ビットは位相シフトの訂正用である。
【0039】
これまでは従来技術で実現される閉ループ送信アンテナ・ダイバーシティ・システム10について説明したが、次に好ましい実施の形態をシステム10で実現する態様について説明する。好ましい実施の形態を概観すると、これまで説明したものとは異なる種々の態様を含む。まず、好ましい実施の形態では従来技術のモード1および2を用いず、代わりに単一動作モードを用いる。この単一動作モードは従来技術のモード1および2の全ドップラー・フェージング領域をカバーするので、以後はこれを広範囲閉ループ・モードと呼ぶ。したがって、広範囲閉ループ・モードと従来技術のモード3とを組み合わせると、閉ループ通信のためのドップラー周波数の全予想範囲に適用することができる。第2に、広範囲閉ループ・モードは、従来技術の2つのモードの代わりに1つのモードを用いることの他に、従来技術とは更に異なる別の態様を含む。かかる態様の1つはビームフォーマ係数を決定するのに2つの位相回転を用いることである。また別の態様はビームフォーマ係数を決定するための位相回転を実現する同じモードで、2つの異なる方法のどちらかを用いて実現するビームフォーマ確認を用いることである。以下の本明細書の説明から、当業者はこれらの各点をよく理解できると思う。
【0040】
広範囲閉ループ・モードにおいてビームフォーマ係数を決定するのに2つの位相回転を用いる態様について以下に説明する。広範囲閉ループ・モードは式1の以前の約束を用いて、後で詳細に説明するようにw1(n)の値を基準化し、またこれによりその位相差の対応値φ1(n)を基準化する。しかし好ましい実施の形態では、ビームフォーマ係数計算ブロック52でのφ2(n)とw2(n)の計算において、従来技術のモード1および2とは異なる全体分解度が得られる。特定して述べると、広範囲閉ループ・モードのブロック52は2値ビームフォーマ係数にスロット当たり90度のコンステレーション回転を与える。したがって、逐次スロットn、n+1、n+2など毎に、先行スロットに対する90度回転に基づいてφ2(n)とw2(n)を決定する。かかる回転を2回行うと180度に相当するので、90度コンステレーション回転ではユーザ局14は一般に各逐次スロットに90度回転を加えることによりスロットを分析する。この回転を得るには、ユーザ局14が対象とするスロットを受信したタイム・スロットに部分的に基づいてφ2(n)の値を決定し、次に2つのスロットのグループi内の所定のスロットに与えられる回転に対してφ2(n)の値を選択する。この回転について、次の表3と図5を参照して以下に説明する。また前に示したようにこれらの操作は図1に示すシステム10内で実現して好ましい実施の形態を生成することができる。
【表3】

【0041】
表3と図5から分かるように、2つのスロットのグループi内の第1のスロット2iについて、ユーザ局14内のビームフォーマ係数計算ブロック52が決定するφ2(2i)の値は、グラフ70に示すようにまた垂直の虚軸に対して回転しない軸70axで表すように、0度の回転に基づく。詳しく述べると、グラフ70は2つの陰のある領域701と702を示す。ブロック50からのチャンネル測定値


が領域701内にある場合は、ブロック52はφ2(2i)の値を0度と計算し、ブロック54はこの値を符号化してw2(2i)=0の2進の対応値を生成して、基地局12にフィードバックする。逆に、チャンネル測定値


が領域702内にある場合は、ブロック52はφ2(2i)の値をπ度と計算し、ブロック54はこの値を符号化してw2(2i)=1の2進の対応値を生成して、基地局12にフィードバックする。また表3とグラフ70上の点の位置は、w2(波バー)(2i)の可能な値に応じて基地局12が実現する位相回転を示す。特定して述べると、基地局12がw2(波バー)(2i)=0という値を受信した場合は、基地局12のフィードバック復号および処理ブロックはスロット2iのチャンネル測定位相変化を0度として処理する。基地局12がw2(波バー)(2i)=1という値を受信した場合は、基地局12のフィードバック復号および処理ブロックはスロット2iのチャンネル測定位相変化をπ度として処理する。
【0042】
また表3と図5から分かるように、2スロットのグループi内の第2のスロット2i+1について、ユーザ局14内のビームフォーマ係数計算ブロック52が決定するφ2(2i+1)の値は、グラフ72に示すようにまた垂直の虚軸に対して90度回転する軸72axで表すように、90度の回転に基づく。グラフ72は2つの陰のある領域721と722を示す。ブロック50からのチャンネル測定値


が領域721内にある場合は、ブロック52はφ2(2i+1)の値をπ/2度と計算し、ブロック54はこの値を符号化してw2(2i+1)=0の2進の対応値を生成して、基地局12にフィードバックする。逆に、チャンネル測定値


が領域722内にある場合は、ブロック52はφ2(2i+1)の値を−π/2度と計算し、ブロック54はこの値を符号化してw2(2i+1)=1の2進の対応値を生成して、基地局12にフィードバックする。また、表3とグラフ72上の点の位置は、w2(波バー)(2i+1)の値に応じて基地局12が実現する位相回転を示す。特定して述べると、基地局12がw2(波バー)(2i+1)=0という値を受信した場合は、基地局12のフィードバック復号および処理ブロックはスロット2i+1のチャンネル測定位相変化をπ/2度として処理する。基地局12がw2(波バー)(2i+1)=1という値を受信した場合は、基地局12はスロット2iのチャンネル測定位相の変化を−π/2度として処理する。
【0043】
2(n)の値を決定する広範囲閉ループ・モードのこれまでの動作は、表3の実際の位相差値φ(n)(すなわち、0、π、π/2、−π/2のどれか)に関連して数学的に表すことができる。この場合好ましい実施の形態ではスロットnについて、次の式6で定義される瞬時パワーP(n)を最大にするようにφ(n)を選ぶ。
【数5】


式6は種々の約束を含むので、これについて以下に定義する。まず、


は複素数xの実数部を示す。次に、”H”という上付き記号はマトリクスまたはベクトル転置の共役を示す。最後に、‖v‖はベクトルvのユークリッド・ノルムを示す。
【0044】
また式6から分かるように、好ましい実施の形態では瞬時パワーP(n)の最大値は、nが偶数のときは


、nが奇数のときは


で、φ2(n)が式6の項


を最大にする値のときに起こる。このように好ましい実施の形態では、φ2(n)の値は、nが奇数または偶数について、図6のブロック図で得られるように、


の項だけを参照して2つの値を選択してよい。特定して述べると、図6はこの結果を得るブロック図を示すもので、図2のビームフォーマ係数計算ブロック52とビームフォーマ係数2進符号化ブロック54を結合したものである。また参考のために、図6の結合されたブロックを今後はブロック52/54と呼ぶ。ブロックを結合した理由は、図6は上の式6に示す位相差φ2(n)の決定を実現すると共に、この差を2進形式すなわちw2(n)の対応する値に符号化するからである。最後に比較のために注意したいことは、瞬時パワーを最大にするために位相差を計算する従来技術の1つの方法は、単にルックアップテーブルを用いるだけということである。しかし後で説明するように、この好ましい実施の形態はかかる方式より複雑でない。
【0045】
図6において、チャンネル測定ブロック50からの値α1,nとα2,nは結合ブロック52/54に入力する。特定して述べると、これらの値は複素点乗積ブロック80の入力801と802に結合する。ブロック80は、入力801と802に与えられる値の複素点乗積を決定する機能を表す。図6に示す例では、この積はブロック80の出力803であって、これを次の式7に示す。
【数6】


このように、ブロック80は式7にも示すように、式6の項


の最初の2つの被乗数の積を生成する。
【0046】
複素点乗積ブロック80からの点乗積出力は交番スイッチ82に結合する。スイッチ82は1つのスロットで第1の位置に切り替わり、次のスロットで第2の位置に切り替わる。特定して述べると、iスロットのグループ内の第1のスロット2iでは、スイッチ82は複素点乗積ブロック80の出力を実成分抽出ブロック84に接続し、iスロットのグループ内の第2のスロット2i+1では、スイッチ82は複素点乗積ブロック80の出力を虚成分抽出ブロック86に接続する。
【0047】
実成分抽出ブロック84はその入力に与えられる値の実数部だけを選択して出力し、逆に、虚成分抽出ブロック86はその入力に与えられる値の虚数部だけを出力する。実成分抽出ブロック84の出力は、比較器または比較機能でもある決定ブロック88に入る。ブロック84からの実成分が0以上の場合はブロック90に進み、逆にブロック84からの実成分が0より小さい場合はブロック92に進む。虚成分抽出ブロック86の出力は、比較器または比較機能でもある決定ブロック94に入る。ブロック86からの虚成分が0以下の場合はブロック96に進み、逆にブロック86からの虚成分が0より大きい場合はブロック98に進む。
【0048】
ブロック50/52の動作により生成される最終結果は、図6のブロック90、92、96、98に示す値の割当てを見れば当業者は理解できる。スロットn=2iでは、後で示すように


で式6の項


の最大化に基づいて、決定ブロック88は流れをブロック90か92かに決め、これらの2つのブロック90と92はそれぞれn=2iにおいて表3に示す2つの異なる値(すなわち、それぞれ0またはπ)のどちらかをφ2(n)に割り当てる。またブロック90と92はφ2(n)に割り当てられた値を、表3に示すように対応する2進の対応値w2(n)に符号化する。またスロットn=2i+1では、後で示すように


で式6の項


の最大化に基づいて、決定ブロック94は流れをブロック96か98かに決め、これらの2つのブロック96と98はそれぞれn=2i+1において表3に示す2つの異なる値(すなわち、それぞれπ/2または−π/2)のどちらかをφ2(n)に割り当てる。またブロック96と98はφ2(n)に割り当てられた値を、表3に示すように対応する2進の対応値w2(n)に符号化する。最後に、注意すべきであるが、ブロック90、92、96、98のどれかから割り当てられた値は図2に示す各ブロックに与えられる。すなわち、w2(n)の値は基地局12にフィードバックされ、φ2(n)の値はビームフォーマ確認ブロック56に入る。
【0049】
ブロック84による実成分の抽出に関してブロック50/52の動作を更に理解するため以下に詳細に説明する。この説明から、当業者は図6の特定の実施の形態で実現される別の利点を理解することができる。一般に実成分抽出ブロック84と決定ブロック88は、或る複素算術恒等式を利用して瞬時パワーP(n)を最大にするφ2(n)の値を決定する。この方式で動作するとき、これらのブロックの構造は他の計算または記憶を用いた方法に比べて複雑さが少ない。ブロック84と88は


の場合を処理する。φ2(n)のこれらの2つの値の意味を更に検討すると、式6の実数部の最後の被乗数は式8と9に示す値になる。
【数7】

【0050】
式8と9から理解されるように、P(n)を最大にするには、φ2(n)の値は


の結果が正になるようにしなければならない。例えば、


が正の値の場合は、式8と9の2つの被乗数の中、式8から得られる被乗数1を掛けるとP(n)を最大にすることができる。決定ブロック88はこの場合は流れをブロック90に進めてφ2(n)に0度の値を割り当てる。なぜなら、この値がP(n)を最大にするからである。別の例として、


が負の値の場合は、これに式9から得られる被乗数−1を掛けて正の積を形成すればP(n)は最大になり、決定ブロック88はこの場合は流れをブロック92に進めてφ2(n)にπ度の値を割り当てる。なぜなら、この値がP(n)を最大にするからである。したがってどちらの場合も、ブロック88、90、92はejθを実際に掛けるという複雑な計算を行わずに、この決定を行うことができる。
【0051】
ブロック86による虚成分の抽出に関してブロック50/52の動作を更に理解するため以下に詳細に説明する。この説明から、当業者は図6の特定の実施の形態で実現される別の利点を理解することができる。虚成分抽出ブロック86と決定ブロック94は、或る複素算術恒等式を利用して瞬時パワーP(n)を最大にするφ2(n)の値を決定する。したがってこの場合も、他の計算または記憶を用いた方法に比べて複雑が少ない或る実施の形態を示す。ブロック86と94は


の場合を処理する。φ2(n)のこれらの2つの値の意味を更に検討すると、式6の実数部の最後の被乗数


は式10と11に示す値になる。
【数8】


【数9】

【0052】
式10と11は虚の結果を生成する。好ましい実施の形態に関して分かるように、式6内の実数値に掛けた場合は、次の複素算術原理から理解できるように、これらの結果は結果の虚数部の符号に影響を与えることがある。この場合もP(n)を最大にするには、φ2(n)の値は


の結果が正になるようにしなければならない。しかしスロット2i+1の場合は


であって、式10と11に示すように


の値はブロック80からの点乗積を含み、jまたは−jを掛けたものである。次の式12乃至15は、ブロック86と94の理解を助ける別の複素算術原理を示す。ここで、vとyは複素数であり、jまたは−jを次のように掛けたものである。
【数10】

【0053】
以上のことから、またP(n)を最大にするという目的から、式12乃至15は次のことを示す。式13と式12を比べると、式13の複素数積の実数部の方が大きい(すなわち、bと−bではbの方が大きい)。またこの2つの式が示すように、正の虚数値(すなわち、b)を持つ複素数から実数部が大きいという結果を得るには複素数に−jを掛けなければならない。このように図6から、ブロック80からの複素点乗積が正の虚数値(ブロック86から抽出される)を持つ場合は、−jを掛けたときに積


は最大になる。これはφ2(n)=−π/2のときに起こる。この場合は決定ブロック94は流れをブロック98に進めて、φ2(n)に−π/2度を割り当てる。また式14と式15を比べると、式14の複素数積の実数部の方が大きい(すなわち、dと−dを比べて)。この2つの式が示すように、負の虚数値(すなわち、d)を持つ複素数からこの結果を得るには複素数にjを掛けなければならない。このように図6から、ブロック80からの複素点乗積が負または0の虚数値(ブロック86から抽出される)を持つ場合は、jを掛けたときに積


は最大になる。これはφ2(n)=π/2のときに起こる。この場合は決定ブロック94は流れをブロック96に進めて、φ2(n)にπ/2度を割り当てる。したがってどちらの場合もP(n)を最大にするφ2(n)の正しい値が割り当てられ、実際にeを掛けるという複雑な計算を行う必要はない。
【0054】
次に基地局12に戻って、ユーザ局14からフィードバックされる閉ループ値に応じる広範囲閉ループ・モードについて説明する。まず、上に述べた約束を確認する。すなわち、ユーザ局14はw2(n)(基準化されていない場合はw1(n)も)の値をフィードバックするが、このフィードバック値はフィードバック・チャンネル内のチャンネルの影響を受けるので、基地局12が実際に受信する対応値をw2(波バー)(n)で表す。この値が分かると、フィードバック復号および処理ブロック21は2ステップの動作を行う。簡単のために、これらのステップについて以下に別々に説明する。
【0055】
ブロック21の最初の動作として、ブロック21はw2(波バー)(n)に応じてw2(波バー)(n)に対応する実際の位相差(φ2,T(n)で表す)を決定する。この決定は表3のマッピングにより行う。言い換えると、スロットn=2iにおいてw2(波バー)(2i)が2進値の0に等しい場合は、ブロック21はφ2,T(2i)が0度に等しいと決定し、w2(波バー)(2i)が2進値の1に等しい場合は、ブロック21はφ2,T(2i)がπ度に等しいと決定する。またスロットn=2i+1においてw2(波バー)(2i+1)が2進値の0に等しい場合は、ブロック21はφ2,T(2i+1)がπ/2度に等しいと決定し、w2(波バー)(2i+1)が2進値の1に等しい場合は、ブロック21はφ2,T(2i+1)が−π/2度に等しいと決定する。
【0056】
ブロック21の第2の動作は、直ぐ上に述べたφ2,T(n)の決定された値に応じるものである。特定して述べると、値φ2,T(n)を受信するとブロック21は乗算器201と202で用いる実際の被乗数を決定する。前に述べたようにw1,T(n)は基準化されているので、好ましい実施の形態では乗算器181で用いるその実際の基準化された値を次の式16のように設定する。
【数11】


もちろん式16の値は定数なので、1度だけ計算すればよいし、または或る記憶要素などで固定してもよい。しかしw2,T(n)は前にブロック21が決定したφ2,T(n)の実際の値に基づく。また好ましい実施の形態では、w2,T(n)の値は2つの逐次のスロットに対応するφ2,Tの2つの受信値(すなわち、φ2,T(n)とφ2,T(n−1))の平均を用いる。これを次の式17に示す。
【数12】

【0057】
式17で示す2スロット平均法は、好ましい実施の形態では従来技術に用いられた4スロット平均法(例えば、式5)に比べて計算の複雑さと遅れが一層少なくなることを示す。また分析と説明のために述べると、式17の括弧内の2つの加数は複素平面内の加算を表すので、式17に関して次の項を定義してθT(n)という関連する因数を導入する。
【数13】


このように、式18は2つの逐次のスロットに対応するφ2,Tの2つの受信値の平均としてθT(n)を定義する。偶数スロットnでは


、奇数のスロットnでは


なので、偶数スロットnからの任意の1つと直前の奇数スロットn−1の平均は4つの値の1つ、すなわち


だけをとる。また式17と18の結果から、乗算器201および202はそれぞれw1,T(n)とw2,T(n)の値を用いて信号w1,T(n)Siとw2,T(n)Siを生成し、これらをそれぞれアンテナA121とA122によりユーザ局14に送信する。
【0058】
基地局12が好ましい広範囲閉ループ・モードに従って信号w1,T(n)Siとw2,T(n)Siをユーザ局14に送信したので、次にチャンネル推定およびビームフォーマ確認ブロック56の好ましい実施の形態で実現される、ユーザ局14における好ましいビームフォーマ確認について述べる。前にビームフォーマ確認を導入したときに説明したように、基地局12からの送信はフィードバック・チャンネルにより影響を受ける重み値(例えば、w2,T(n))を用いるので、ビームフォーマ確認は一般に基地局12が用いる実際の重み値を確認するユーザ局14の作業である。次にユーザ局14は確認した値を用いて、ブロック23の最大比結合に用いるhn(山バー)の値を決定する。好ましい実施の形態では、ビームフォーマ確認は広範囲閉ループ・モードで2つの異なる方法の一方を用いて実現される。それぞれの方法については後で説明する。
【0059】
図7はチャンネル推定およびビームフォーマ確認ブロック56のブロック図の詳細を示すもので、これを好ましい実施の形態に関連して詳細に説明する。前に述べたように、ブロック56は図2の他のブロックから種々の入力を受ける。すなわち、パイロット記号抽出器44からのDPCHパイロット記号y(n)と、ビームフォーマ係数計算ブロック52からの位相差値φ1(n)およびφ2(n)(またはφ1(n)が基準化されている場合はφ2(n)だけ)は、ビームフォーマ確認ブロック100に入る。またブロック56は、チャンネル測定ブロック50からチャンネル測定値α1,nおよびα2,nを入力として受ける。値α1,nは第1のマルチスロット平均化推定器102の入力に接続し、α2,nは第2のマルチスロット平均化推定器104の入力に接続する。
【0060】
推定器102および104の出力は入力値α1,nおよびα2,nに対応する推定値であって、約束によりこれらをα1,n(山バー)およびα2,n(山バー)で示す。推定値α1,n(山バー)およびα2,n(山バー)は各乗算器106および108の入力被乗数として接続し、また推定値α2,n(山バー)はビームフォーマ確認ブロック100の入力にも接続する。ビームフォーマ確認ブロック100の出力は基地局12が用いる値w2,T(n)のユーザ局14による推定値であり、記号としてw2,T(山バー)(n)で表す。値w2,T(山バー)(n)は第2の入力被乗数として乗算器108に接続する。また図7に示すw1,T(山バー)(n)の値は式16で与えられる定数であって、乗算器106に第2の入力被乗数として接続する。乗算器106および108の積出力は加算器110に入り、加算器110の出力はMRCブロック23に出力hn(山バー)を与える。次に、チャンネル推定およびビームフォーマ確認ブロック56の動作を説明する。
【0061】
推定器102および104は入力に受けたチャンネル測定値の精度を高める。好ましい実施の形態では、推定器102および104はそれぞれの入力のマルチスロット平均を計算して、より正確な推定値と期待される値(α1,n(山バー)およびα2,n(山バー)で表す)を出力する。好ましくは、用いるマルチスロット平均化法はこの技術で知られている重み付きマルチスロット平均化法であって、低いまたは中間のチャンネル・フェージング速度では6スロットに重み[0.3,0.8,1,1,0.8,0.3]を付け、高いフェージング速度では4スロットに重み[0.6,1,1,0.6]を付けて平均する。
【0062】
ブロック56内の残りのブロックと項目の動作を理解するため、まず式16と18を式4に代入して、次の式19の形でチャンネル推定を定義する。
【数14】

【0063】
式19のα1,nとα2,nの値には、それぞれ推定器102および104からの精度を高めた推定値α1,n(山バー)とα2,n(山バー)を用いてよい。またhn(山バー)の決定を完成するために、ブロック56はθT(n)を決定する。好ましい実施の形態ではこの動作はDPCHパイロット記号y(n)の値に応じてビームフォーマ確認ブロック100が行う。この点で注意すべききであるが、第1に好ましい実施の形態ではパイロット記号(前に述べたように異なる送信アンテナA121とA122ではパイロット記号が異なる)は互いに直交する。第2に好ましい実施の形態のビームフォーマ確認ブロック100は、直交するDPCHパイロット記号に応じて2つの異なる方法のどちらかでθT(n)を決定する。一般にこの2つの方法の第1の方法を2回転仮説試験法と呼び、第2の方法を4仮説単一ショット試験法と呼ぶ。これらの方法を以下に詳細に説明する。
【0064】
どちらの好ましいビームフォーマ確認方法も直交するDPCHパイロット記号y(n)に応じてθT(n)を決定するが、かかる記号を次の式20のように書くことができる。
【数15】


式20で、Ψ(n)は成分当たりの分散がσ2であるゼロ平均ガウス雑音係数である。また式20のベクトル


(以下bと表記する)はブロック100が推定器104から受けるα1,nとα2,nに対して定義され、次の式21のように書かれる。
【数16】


式21で、{dk(1),...,dk(NY)}はアンテナkのDPCHパイロット・パターンであり、NYはスロット当たりのパイロット記号の数である。また式20および21(その他の式も)は理想的な解を与えるが、好ましい実施の形態を実現するときは理想的な対応値α2,nではなくα2,n(山バー)などの推定値を用いる。
【0065】
したがって、好ましい実施の形態が選ぶビームフォーマ確認は経験的な検出確率を最大にする。この確率を式21に適用すると一般に次の式22が得られる。
【数17】



ただし、mは指標付け、


は許容できるφ(m)(山バー)値のインデックスセット、μ(m)はmに依存するしきい値パラメータである。n=2iのときは φ(1)(山バー)=0およびφ(2)(山バー)=πであり、n=2i+1のときは φ(1)(山バー)=π/2およびφ(2)(山バー)=−π/2である。
【0066】
図8はビームフォーマ確認ブロック1001の第1の例のブロック図を示す。これは図7のビームフォーマ確認ブロックとして容易に実現することができ構成であって、後で説明する2回転仮説試験法に従って動作する。まず、ブロック1001はw2,T(山バー)(n)で示す推定値を与える。これは後で示すように式22内の値φ(m)(山バー)に関係する。またw2,T(山バー)(n)の値は、所定のスロットnについてユーザ局14に送信する前に基地局12が信号に付けた重みw2,T(n)の値をユーザ局14が推定した値である。
【0067】
図8はベクトル形成ブロック112を含む。ブロック112は、各パイロット・データと式21に示す該当するチャンネル推定値αk,nとの積に従って、b2(n)のベクトル要素を決定する。しかし値αk,nに関して注意すべきは、ブロック112は実際には、マルチスロット平均化推定器104の出力である精度を高めた値α2,n(山バー)を用いるということである。ブロック112が決定するベクトルb2(n)は複素点乗積ブロック114の入力1141に被乗数として入る。ブロック114は別の入力1142にDPCHパイロット記号抽出器44から別の被乗数ベクトルy(n)を受ける。ブロック114は入力1141と1142に与えられる値の複素点乗積を決定する機能を表す。図8に示す例ではこの積をブロック114の出力1143で示す。またこれを次の式23に示す。
【数18】


式23にも示すように、ブロック114は式22内の項


の最初の2つの被乗数の積を生成する。
【0068】
複素点乗積ブロック114からの積出力は交番スイッチ116に入る。iスロットのグループ内の第1のスロット2iではスイッチ116は第1の位置に切り替わり、複素点乗積ブロック114の出力1143を実成分抽出ブロック118に接続する。第2のスロット2i+1ではスイッチ116は第2の位置に切り替わり、複素点乗積ブロック114の出力1143を虚成分抽出ブロック120に接続する。
【0069】
実成分抽出ブロック118はその入力に与えられる値の実数部だけを選択して出力し、この実数部を加数として加算器122の第1の入力1221に与える。加算器112の第2の入力1222はしきい値ブロック124からkevenで示すしきい値を受ける。加算器122の出力1223は比較器または比較機能である決定ブロック126に接続する。出力1223からの和が0以上の場合はブロック128に進むが、この和が0より小さい場合はブロック130に進む。図8に示すようにブロック128および130はそれぞれφ2,T(山バー)(n)に位相差値(すなわち、それぞれ0とπ)を与え、この値を2スロット平均化ブロック132に出力する。2スロット平均化ブロック132の出力はブロック1001が出力する最終値w2,T(山バー)(n)であり、図7に関して上に説明したのと同様に接続する。
【0070】
虚成分抽出ブロック120はその入力に与えられる値の虚数部だけを選択して出力し、この虚数部を加数として加算器134の第1の入力1341に与える。加算器134の第2の入力1342はしきい値ブロック124からkoddで示すしきい値を受ける。加算器134の出力1343は比較器または比較機能である決定ブロック136に接続する。出力1343からの和が0以下の場合はブロック138に進むが、この和が0より大きい場合はブロック140に進む。図8に示すようにブロック138および140はそれぞれφ2,T(山バー)(n)に位相差値(すなわち、それぞれπ/2と−π/2)を与え、この値を2スロット平均化ブロック132に出力する。
【0071】
上に説明したように、しきい値ブロック124はしきい値kevenとkoddをそれぞれ加算器122と134に与える。次にこれらの値の生成について説明するが、これに関する影響については、後でブロック1001の全体の動作の中で説明する。これらの値の生成について、次の4つの点について検討する。まず、しきい値の添字「even」と[odd」はブロック1001が分析するスロットに(すなわちnの値が偶数(例えば、2i)か奇数(例えば、2i+1)かに)対応する。kevenはnが偶数のスロットのときに決定されて用いられ、koddはnが奇数のスロットのときに決定されて用いられる。第2に、前に述べたようにビームフォーマ係数計算ブロック52は計算された位相差値φ2(n)をビームフォーマ確認ブロック100に与えるが、図8ではこれをしきい値ブロック124の入力として示す。したがって、しきい値ブロック124はユーザ局14が最後に基地局12にフィードバックした値に対応する位相差値を記憶する。第3にユーザ局14はこの技術で知られた1つ以上の種々のアルゴリズムを含み、これについてユーザ局14はフィードバック誤り率の或る測度(例えば、0と1の間という測度で、本発明ではこれをε(すなわち、


)で表す)を持つ。第4に、以下の説明から理解されるように、kevenはブロック52からのφ2(n)を考慮して


が発生する論理的確率であり、koddはブロック52からのφ2(n)を考慮して


が発生する論理的確率である。
【0072】
上の説明から、しきい値ブロック124はkevenとkoddを次の式24および25に従って決定する。
【数19】


式24および25内のσ2(山バー)は式20に関して上に定義した雑音分散σの推定値である。また式24および25内の自然対数はそれぞれρeven(φ(n))とρodd(φ(n))という関数を用いており、これらの関数は式26乃至29に従って定義される。各関数の値はしきい値ブロック124がブロック52から受けるφ2(n)の値に基づく。
【数20】

【0073】
次にブロック1001の全体の動作について説明する。一般にブロック1001は4つのコンステレーション値(すなわち、偶数スロットnでは


、奇数スロットnでは


)のどれが式22の解(すなわち、最大値)を生成するかを決定する。また式21から容易に分かるように、この最大値は、(1)DPCHパイロット記号(すなわち、y(n))と、(2)精度を高めたチャンネル推定値(すなわち、平均化し、PCCPCHパイロット記号に応じて得られたα2,n(山バー))にPCCPCHパイロット記号を掛けた積、との点乗積に関係する。ブロック1001の次の動作は(図6のいくつかの動作と同様の性質から理解されるように)この点乗積の実数部と虚数部を取り出し、φ2(n)のどの値にこの点乗積を掛けると最大値が得られるかを決定する。しかし以下の動作の説明から分かるように、この方法により全体の計算の複雑さは減る。それは、上に説明したように、好ましい実施の形態ではフィードバック復号および処理ブロック21は、式17に示すように2つの逐次のフィードバック値に応じる平均としてw2,T(n)を決定するが、これを最初は処理しないからである。以上から分かるように、スイッチ116は、偶数スロット(すなわち、nが偶数(例えば、2i)のときは2つのコンステレーション値{0、π}だけを考慮し、奇数スロット(すなわちnが奇数(例えば、2i+1)のときは2つのコンステレーション値{π/2、−π/2}だけを考慮するするように動作する。また図6に関連して前に説明した複素数原理を用いれば複雑さはいくらか減る。読者はこの説明をよく知っているはずなので、図8に関しては詳細に繰り返さない。
【0074】
次にブロック1001の実成分抽出ブロック118の動作とその出力に対する応答を説明し、式22の結果を最大にする推定値φ2,T(山バー)(n)を決定する方法を示す。実成分抽出ブロック118とその出力に関連するブロックはnが偶数で


の場合を処理する。nが偶数なので、加算器122でこの抽出された実数部と、しきい値ブロック124からのしきい値kevenとを加算する。kevenの計算についての前の説明から当業者が理解するように、kevenは非ゼロ数である。得られた和の出力1233を決定ブロック126に与える。決定ブロック126は、式8と9の以前の説明から理解される方法で流れを決める。特定して述べると、式8と9から理解されるように、ブロック126の決定によりφ2,T(山バー)(n)の値が2つの値のどちらか(すなわち、φ2,T(山バー)(n)=0またはφ2,T(山バー)(n)=π)をとると、式22内の項


は被乗数1か−1になる。式22内の積の


内の項


以外の部分にブロック124からのkevenしきい値を加えた値が正の場合は、φ2,T(山バー)(n)=0の場合に対応する1という被乗数を前記和に掛けると、式22の最大値が得られる。


が正であることを決定ブロック126が検出し、流れをブロック128に進めてφ2,T(山バー)(n)に0度の値を割り当てると、この解は実現される。
【0075】
または、式22内の積の


内の項


以外の部分にブロック124からのkevenしきい値を加えた値が負の場合は、φ2,T(山バー)(n)=πの場合に対応する-1という被乗数を残りの部分に掛けると、式22の最大値が得られる。


が負であることを決定ブロック126が検出し、流れをブロック130に進めてφ2,T(山バー)(n)にπ度の値を割り当てると、この解は実現される。これまでの説明から当業者が理解するように、式22はnが偶数のときは一般にブロック1001により最大になるが、その他に、フィードバック誤り率εも部分的にφ2,T(山バー)(n)を決定する。特に後者について述べると、当業者が確認するように、εが比較的小さいときは、ブロック52が前に決定してブロック1001に与えたφ2(n)と同じ値がφ2,T(山バー)(n)に割り当てられる可能性が大きい。最後に、ブロック118、126、128、130を用いることにより、実際にejθを掛けるという追加の複雑な計算を必要とせずに、式22の解を生成することができる。
【0076】
次に虚成分抽出ブロック120の動作とその出力に対する応答を説明する。これも式22の推定最大結果を生じるφ2,T(山バー)(n)の値を決定する。虚成分抽出ブロック120とその出力に関連するブロックはnが奇数で


の場合を処理する。nが奇数なので、加算器134でこの抽出された虚数部と、しきい値ブロック124からのしきい値koddとを加算する。kevenと同様にkoddも非ゼロ数であって、koddの符号と大きさに応じてブロック120から抽出された虚数部をシフトする。加算器134から得られる和の出力1343を決定ブロック136に与える。決定ブロック136は、式10と11の以前の説明から理解される方法で流れを決める。特定して述べると、式10と11から理解されるように、ブロック134の決定によりφ2,T(山バー)(n)の値が2つの値のどちらか(すなわち、φ2,T(山バー)(n)=π/2またはφ2,T(山バー)(n)=−π/2)をとると、式22内の項


は被乗数jか−jになる。
【0077】
更に、項


というこれらの被乗数の1つを掛けて式22の項


を最大にするには、複素数が正の虚数部(ブロック120から抽出された)を持つときはこの複素数に−jを掛けなければならない。したがって図8において、ブロック120からの複素点乗積としきい値koddを加算器134で加算した数が正の虚数部を持つ場合はφ2(n)=−π/2のときに積


は最大になるので、決定ブロック134は流れをブロック140に進め、この場合はφ2,T(山バー)(n)に−π/2という値を割り当てる。逆に、複素数が負または0の虚数部を持つ場合は、項


という被乗数の1つを掛けてこの数を最大にするには、この複素数にjを掛けなければならない。このように図8において、ブロック120からの複素点乗積としきい値koddを加算器134で加算した数が負または0の虚数値を持つ場合はφ2(n)=π/2のときに積


は最大になるので、決定ブロック134は流れをブロック138に進め、この場合はφ2,T(山バー)(n)にπ/2という値を割り当てる。以上の説明から、式22はnが奇数のときは一般にブロック1001により最大になることが分かるが、この場合もフィードバック誤り率εの相対的な値からこの決定を補うという更に優れた機能を有する。
【0078】
ブロック1001の説明の最後として、偶数スロットnのときはブロック128または130により、また奇数スロットnのときはブロック138または140による決定されるφ2,T(山バー)(n)の各値は、2スロット平均化ブロック132の入力に接続する。ブロック132は2つの最新の受信値φ2,T(山バー)(n)とφ2,T(山バー)(n−1)を平均してその出力値w2,T(山バー)(n)を生成する。したがってこの平均化法は、基地局12が2つの逐次のビームフォーマ係数を平均するという、式17に関して前に説明した動作を近似する。またブロック1001の動作から、好ましい実施の形態を前に導入したときに、2つの回転する仮説試験と呼ぶ型のビームフォーマ確認を用いると述べた理由が分かる。特に図8から分かるように、スロットn毎に2つの仮説のどちらかを試験する。すなわち偶数スロットnでは2つの仮説は


に対応し、奇数スロットnでは2つの仮説は


に対応する。またこの試験が回転すると言う理由は、nが奇数か偶数かに従ってこの試験が2つの仮説の各集合を交互に用いるからである。
【0079】
図9はビームフォーマ確認ブロック1002の第2の例のブロック図を示す。これは図7のビームフォーマ確認ブロック100として実現することもできる。ブロック1002は後で説明する4仮説単一ショット試験に従って動作し、w2,T(山バー)(n)で示す推定値(これは次の式30内の値θ(m)(山バー)に関係する)を生成する。
【数21】


ただし、mは指標付け、


は許容できるθ(m)(山バー)値のインデックスセット、μ(m)はmに依存するしきい値パラメータであり、また


である。ブロック1002は図8のブロック1001といくつかの構成要素を共用するが、図9のかかる構成要素には図8と同じ参照番号を用いる。これらの項目について簡単に述べると、同じ入力値y(n)、α2,n(山バー)、φ2(n)と、b2(n)のベクトル要素を決定するベクトル形成ブロック112と、上に示した式23の結果を生成する複素点乗積ブロック114を含む。ブロック1002の残りの態様はブロック1001と種々の点で異なる。これについては後で詳細に説明する。
【0080】
ブロック114からの点乗積はその出力を介して4つの異なる乗算器150、152、154、156に第1の被乗数として接続する。また各乗算器150、152、154、156はそれぞれ第2の被乗数


を受ける。これらの第2の被乗数を説明しまたブロック1002の全体の動作を説明すれば、図8のブロック1001と比較することにより、前に式17に関して説明した基地局12が行う2スロット平均化をブロック1002が直接処理することが理解される。前に述べたように、偶数スロットと奇数スロットを平均するとθ(m)(山バー)のコンステレーションは集合{π/4、3π/4、−3π/4、−π/4}の中の4つの値である。後で理解されるように、ブロック1002はこの全コンステレーションを1つの並列動作で処理する。各乗算器150、152、154、156の出力は実成分抽出ブロック158、160、162、164にそれぞれ入力として接続し、これらのブロックはその入力値の実数部を取り出して、出力をそれぞれ加算器166、168、170、172に第1の加数として与える。また各加算器166、168、170、172はしきい値ブロック174から第2の加数を受ける。
【0081】
更にしきい値ブロック174に関して述べると、ブロック52からのφ2(n)の値は指数計算ブロック176に入り、ブロック176は値


を決定して出力する。この出力は2スロット平均化ブロック178に接続し、ブロック178は2つの逐次の値、すなわち





に応じて出力値


を与える。この出力がしきい値ブロック174の入力である。またしきい値ブロック174は図8のしきい値ブロック124と同様に、フィードバック・ビット誤り率εに応答する。図9のブロック1002ではθ(m)(山バー)の4値コンステレーションを考慮するので、式30に関するその決定はより正確である。しかしこのため、ブロック174からのしきい値の決定はより複雑になる。特定して述べると、しきい値ブロック174はεに応じて、またθ(n)の対応する値に基づいて、式30のμ(m)の実際の値を次の表4に示すように決定する。
【表4】


表4からmに対応する値が決定され、θ(n)の同じ値に対応して加算器166、168、170、172にそれぞれ与えられる。例えば、mが所定の値でθ(n)=π/4の場合は、決定されたしきい値μ(m)が加算器166に与えられる。いずれにしても、各値μ(m)と、実成分抽出ブロック158、160、162、164からの対応する出力とを加算する。
【0082】
各加算器166、168、170、172の出力は最大検出および相関回路180に入力として接続する。以下に詳細に説明するように、回路180はその4入力の中の最大の入力を決定し、この値と相関するθ(n)の値を選択する。例えば、最大入力が加算器166からの入力の場合は、回路180はこの値を検出してθ(n)=π/4の値をその最大値に相関させる。当業者が理解するように、回路180は同様に、θ(n)=3π/4を加算器168からの最大値に、またθ(n)=−3π/4を加算器170からの最大値に、またθ(n)=−π/4を加算器172からの最大値に相関させる。いずれにしても、θ(n)という相関値が、ブロック1002から値w2,T(山バー)(n)として出力される。
【0083】
同等のブロックについて種々説明し、ブロック1002内の種々のブロックの動作と式30内の各項について説明したので、当業者にはブロック1002の動作についての更に詳細な説明は必要ないと思う。要約すると、乗算器150、152、154、156は点乗積ブロック114の出力にθ(n)のそれぞれの可能な値を掛け、掛けた結果の実数部を取り出して、式30の項


を与える。また、ブロック174によるしきい値の調整と各加算器の動作はブロック1001についてすでに説明した操作と同様である。また式30にはμ(m)という項が加わっている。最後に、ブロック180は式30の目標である最大の解を選択する。
【0084】
式30を解く1つの実施の形態であるブロック1002の説明をこれで終わるが、これは図8のブロック1001の実施の形態に比べてやや複雑である。例えば、ブロック1002では4つの複素乗算が必要であるが、これはブロック1001では必要ない。他方でブロック1002は、式17に関して前に説明したような基地局12が行う2スロット平均化の影響を直接考慮する。これらの考慮点とその他の設計要因または評価基準から、当業者はブロック1001と1002のどちらかを選ぶことができる。最後に、ブロック1002は4仮説単一ショット試験法(すなわち、スロットn毎に単一の並列動作で4つの仮説を試験する方法、ただし4つの仮説はθ(n)={π/4、3π/4、−3π/4、−π/4}に対応する)で動作すると前に述べた理由は、ブロック1002の動作から分かる。
【0085】
上記から理解されるように、これまで説明した種々の実施の形態は、従来技術のモード1と2に代わる単一の広範囲閉ループ・モードを提供する。この好ましい広範囲閉ループ・モードは種々の利点を有する。例えば、スロット当たりのコンステレーション回転により、w2,T(n)は4つの可能な値(すなわち、2値/スロット*2スロット/回転サイクル=4値)の有効なコンステレーションを含む。これと平滑化平均フィルタにより妥当な解が得られ、また中低位のチャンネル・フェージング速度におけるフィードバック遅れが減る。別の例として、好ましい実施の形態の広範囲閉ループ・モードをシミュレートすると、従来技術のモード1と2と同等のまたはより優れた結果が得られる。従来技術はモード1と2を切り替える必要があるのでこれに対応する複雑さと遅れがあったが、好ましい実施の形態では2つの従来技術のモードの代わりに単一モードを用いるのでかかる欠点がなくなった。更に別の利点として、上述の教示は2アンテナより多いアンテナxを持つ基地局に適用することができる。この場合も第1の値w1(n)を基準化し、ユーザ局14は他のxアンテナごとにφ(n)の値を決定し、対応する重みをこれらの各値に割り当てて、基地局にフィードバックする。
【0086】
この場合も、瞬時パワーを最大にするようにφ(n)を決定する。これは式6の拡張として得られる。更に別の例として、好ましい広範囲閉ループ・モードと従来技術のモード3を結合して、表1内のドップラー・フェージングの全範囲をカバーすることができる。例示した利点の別の例として、ビームフォーマ確認の別の方法を開示した。最後の例として、本発明はCDMA以外のシステム(例えば、時分割多元接続(TDMA)や、直交周波数分割多重通信(OFDM))にも適用することができる。種々の実施の形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲から逸れずに種々の修正や変更を行うことができる。
【0087】
連邦政府後援の研究開発に関する言明
本出願は、米国暫定出願番号第60/148,972号(TI−29547PS)、1999年8月13日出願の、35U.S.C.§119(e)(1)に従う権利を請求する。
【符号の説明】
【0088】
10 無線通信システム
12 ユーザ局
14 送信局
22 逆拡散回路
24 チャンネル評価器
50 チャンネル測定回路
52 ビームフォーマ係数計算回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ局を含む無線通信システムであって、前記ユーザ局は、
逆拡散回路であって、送信局の少なくとも第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから送られる複数のスロットを受信して逆拡散し、前記複数のスロットはそれぞれパイロット記号の第1の集合を含む第1のチャンネルとパイロット記号の第2の集合を含む第2のチャンネルを含む、逆拡散回路と、
前記第1の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また前記所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第1のチャンネル測定値を測定する回路と、
前記第2の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また前記所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第2のチャンネル測定値を測定する回路と、
前記所定のスロットについての前記第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値に応じて、また前記所定のスロットの直前に前記逆拡散回路が受信したスロットに対する前記所定のスロットの90度回転に応じて、複数のスロット内の所定のスロット毎に位相差値を測定する回路と、
を備える無線通信システム。
【請求項2】
前記ユーザ局は前記位相差値を表す少なくとも1つの重み値を前記送信局に送信する回路を更に備え、これにより前記送信局は前記少なくとも1つの重み値に応じて少なくとも1つの追加のスロット内の記号に重みを付けて少なくとも1つの追加のスロットを前記ユーザ局に送信することができる、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
パイロット記号の前記第1の集合は重みの付かない記号を含み、パイロット記号の前記第2の集合は重み付きの記号を含む、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
位相差値を測定する前記回路は、前記複数のスロット内の第1のスロットに関して、第1の事例では、前記第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値に応じる複素点乗積の実数部がゼロ以上かどうかに応じて位相差値を測定し、
位相差値を測定する前記回路は、前記複数のスロット内の第1のスロットに関して、前記第1のスロットの直後の第2の事例では、前記第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値に応じる複素点乗積の虚実数部がゼロ以下かどうかに応じて位相差値を測定する、
請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記ユーザ局は、前記複数のスロット内の所定のスロット毎に、前記送信局が前記第2の送信アンテナで送信する所定のスロットの重み付き記号に与えられる位相差重み値を推定するビームフォーマ確認回路を更に備える、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記所定のスロット毎の重み付き記号は重み付きパイロット記号を含み、
前記ビームフォーマ確認回路は、前記複数のスロット内の所定のスロット毎に、前記所定のスロットの重み付きパイロット記号に応じて、また前記第2のチャンネル測定値と前記所定のスロットについて前記第2の送信アンテナから受信したパイロット記号の前記第2の集合との積に応じて、前記位相差重み値を推定する、
請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記積は前記第2のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記積は前記所定のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付けに応じ、更に前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じる、請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記ユーザ局は所定のスロットの測定された位相差値を記憶する回路を更に備え、
また前記ビームフォーマ確認回路は、前記所定のスロットの直後の複数のスロット内のスロットについて、またフィードバック誤りの確率と前記記憶された位相差値の測定値に応じて、前記位相差重み値を推定する、
請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記ビームフォーマ確認回路は前記複数のスロット内の第1のスロットに関して、第1の事例では、第1の位相差値と第2の位相差値から成る2つの位相差値の一方に応じて経験的に検出する確率を最大にするよう、前記第1のスロット内の重み付き記号に与えられる第1の位相差重み値を推定し、
前記ビームフォーマ確認回路は前記複数のスロット内の第2のスロットに関して、前記第1の事例の後の第2の事例では、第3の位相差値と第4の位相差値から成る2つの位相差値の一方に応じて経験的に検出する確率を最大にするよう、前記第2のスロット内の重み付き記号に与えられる第2の位相差重み値を推定し、
前記第3および第4の位相差値は前記第1および第2の位相差値とは異なる、
請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記ビームフォーマ確認回路は、前記複数のスロット内の所定のスロット毎に、所定のスロットの重み付きパイロット記号の複素点乗積に応じて位相差重み値を推定し、前記積は前記第2のチャンネル測定値と前記所定のスロットについての前記第2の送信アンテナから受信した重み付きパイロット記号に応じる積であり、
前記ビームフォーマ確認回路は、前記複素点乗積の実数部がゼロ以上であるかどうかに応じて第2の位相差重み値を推定し、
前記ビームフォーマ確認回路は、前記複素点乗積の虚数部がゼロ以下であるかどうかに応じて第1の位相差重み値を推定する、
請求項9に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記ビームフォーマ確認回路は、前記第1の位相差重み値と前記第2の位相差重み値の平均として前記位相差重み値を推定する、請求項10に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記積は前記第2のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記積は前記所定のスロットの前記第2のチャンネル測定値の重み付けに応じ、更に前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じる、請求項11に記載の無線通信システム。
【請求項13】
前記ユーザ局は所定のスロットの測定された位相差値を記憶する回路を更に備え、
前記ビームフォーマ確認回路は、前記所定のスロットの直後の複数のスロット内のスロットについて、またフィードバック誤りの確率と前記記憶された位相差値の測定値に応じて、前記位相差重み値を推定する、
請求項12に記載の無線通信システム。
【請求項14】
前記ユーザ局は、前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから受信しまた同じタイム・スロットに対応するスロットのチャンネル推定値を決定する回路を更に備え、また前記チャンネル推定値は第1の加数と第2の加数の和に応じて決定され、
前記第1の加数は前記第2のチャンネル測定値と第2の位相差重み値に応じる第1の積を含み、
前記第2の位相差値は前記第1の位相差値の重み値に対して基準化されており、
前記第2の加数は前記第1のチャンネル測定値と第1の位相差重み値に応じる第2の積を含む、
請求項10に記載の無線通信システム。
【請求項15】
前記ユーザ局は、前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから受信し同じタイム・スロットに対応するスロットを前記チャンネル推定値に応じて処理する最大比結合回路を更に備える、請求項14に記載の無線通信システム。
【請求項16】
前記第1の積は前記第2のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記第1の積は前記所定のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付けに応じ、更に前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じ、
前記第2の積は前記第1のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記積は前記所定のスロットの前記第1のチャンネル測定値の重み付けに応じ、更に前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第1のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第1のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じる、
請求項14に記載の無線通信システム。
【請求項17】
前記ユーザ局は、前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから受信し同じタイム・スロットに対応するスロットを前記チャンネル推定値に応じて処理する最大比結合回路を更に備える、請求項15に記載の無線通信システム。
【請求項18】
前記ビームフォーマ確認回路は前記複数のスロット内の各所定のスロットに関して、4つの異なる位相差値の1つに応じて経験的に検出する確率を最大にするよう、前記所定のスロット内の重み付き記号に与えられる位相差重み値を推定する、請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項19】
前記ビームフォーマ確認回路は、前記複数のスロット内の所定のスロット毎に、前記所定のスロットの重み付きパイロット記号の複素点乗積に更に応じて前記位相差重み値を推定し、前記積は前記第2のチャンネル測定値と前記所定のスロットについて前記第2の送信アンテナから受信した重み付きパイロット記号に応じる積であり、
前記ビームフォーマ確認回路は、4つの異なる位相差値の1つをそれぞれ対応する被乗数として前記積に掛ける回路を更に含み、
前記ビームフォーマ確認回路は、最大の積を得る対応する被乗数として前記位相差重み値を推定する、
請求項18に記載の無線通信システム。
【請求項20】
前記積は前記第2のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記積は前記所定のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付けに応じ、また前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じる、請求項19に記載の無線通信システム。
【請求項21】
前記ユーザ局は所定のスロットの測定された位相差値を記憶する回路を更に備え、
前記ビームフォーマ確認回路は、前記所定のスロットの直後の複数のスロット内のスロットについて、またフィードバック誤りの確率と前記記憶された位相差値の測定値に応じて、前記位相差重み値を推定する、
請求項20に記載の無線通信システム。
【請求項22】
前記ユーザ局は前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから受信しまた同じタイム・スロットに対応するスロットのチャンネル推定値を決定する回路を更に備え、また前記チャンネル推定値は第1の加数と第2の加数の和に応じて決定され、
前記第1の加数は前記第2のチャンネル測定値と第2の位相差重み値に応じる第1の積を含み、
前記第2の位相差値は前記第1の位相差値の重み値に対して基準化されており、
前記第2の加数は前記第1のチャンネル測定値と第1の位相差重み値に応じる第2の積を含む、
請求項19に記載の無線通信システム。
【請求項23】
前記ユーザ局は、前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから受信し同じタイム・スロットに対応するスロットを前記チャンネル推定値に応じて処理する最大比結合回路を更に備える、請求項22に記載の無線通信システム。
【請求項24】
前記第1の積は前記第2のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記第1の積は前記所定のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付けに応じ、また前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第2のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じ、
前記第2の積は前記第1のチャンネル測定値に応じ、すなわち前記積は前記所定のスロットについての前記第1のチャンネル測定値の重み付けに応じ、また前記所定のスロットの前に受信した複数のスロットについての前記第1のチャンネル測定値の重み付き測定値と、前記所定のスロットの後に受信した複数のスロットについての前記第1のチャンネル測定値の重み付き測定値に更に応じる、
請求項22に記載の無線通信システム。
【請求項25】
前記ユーザ局は、前記第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナから受信し同じタイム・スロットに対応するスロットを前記チャンネル推定値に応じて処理する最大比結合回路を更に備える、請求項24に記載の無線通信システム。
【請求項26】
前記第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値と位相差値は、ドップラー・フェージングの第1の速度に応じて第1の閉ループ動作モードで測定され、また前記ユーザ局はドップラー・フェージングの第2の速度に応じて第2の閉ループ動作モードで動作する回路を更に含む、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項27】
前記ユーザ局は、前記第2の閉ループモードで振幅および位相訂正ビットを前記送信局に送信する回路を更に含み、前記送信局は前記振幅および位相訂正ビットに応じて少なくとも1つの追加スロットを前記ユーザ局に送信する、請求項26に記載の無線通信システム。
【請求項28】
送信局を更に含み、前記送信局は、
少なくとも1つの重み値に応じるフィードバック・チャンネル重み値に応じて重み付き記号を形成するための、記号に重みを付ける回路と、
スロット内の重み付き記号を前記ユーザ局に送信する回路と、
を備える、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項29】
送信局を更に含み、前記送信局は、
前記ユーザ局が2つの逐次のタイム・スロットで受信する2つのスロットに応じて前記ユーザ局から前記送信局に送る2つの重み値の平均により決まるフィードバック・チャンネル重み値に応じて重み付き記号を形成するための、記号に重みを付ける回路と、
スロット内の重み付き記号を前記ユーザ局に送信する回路と、
を備える、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項30】
前記ユーザ局はWCDMAユーザ局を含む、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項31】
ユーザ局を含む無線通信システムであって、前記ユーザ局は、
逆拡散回路であって、送信局の少なくとも第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから送られる複数のスロットを受信して逆拡散し、前記複数のスロットはそれぞれパイロット記号の第1の集合を含む第1のチャンネルとパイロット記号の第2の集合を含む第2のチャンネルを含む、逆拡散回路と、
前記第1の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また前記所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第1のチャンネル測定値を測定する回路と、
前記第2の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また前記所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第2のチャンネル測定値を測定する回路と、
前記所定のスロットについての前記第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値に応じて、また前記所定のスロットの直前に前記逆拡散回路が受信したスロットに対する前記所定のスロットの所定の度の回転に応じて、複数のスロット内の所定のスロット毎に位相差値を測定する回路と、
前記複数のスロット内の所定のスロット毎に、前記送信局が前記第2の送信アンテナで送信した所定のスロットのパイロット記号の第1の集合に与えられる位相差重み値を推定するビームフォーマ確認回路と、
を備える無線通信システム。
【請求項32】
無線通信システムを操作する方法であって、
送信局の少なくとも第1の送信アンテナと第2の送信アンテナから送られる複数のスロットを受信して逆拡散し、また前記複数のスロットはそれぞれパイロット記号の第1の集合を含む第1のチャンネルとパイロット記号の第2の集合を含む第2のチャンネルを含み、
前記第1の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また前記所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第1のチャンネル測定値を測定し、
前記第2の送信アンテナからの複数のスロット内の所定のスロット毎に、また前記所定のスロット内のパイロット記号の第1の集合に応じて、第2のチャンネル測定値を測定し、
前記所定のスロットについての前記第1のチャンネル測定値と第2のチャンネル測定値に応じて、また前記所定のスロットの直前に前記逆拡散回路が受信したスロットに対する前記所定のスロットの90度回転に応じて、複数のスロット内の所定のスロット毎に位相差値を測定する、
ステップを含む、無線通信システムを操作する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−231514(P2012−231514A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145803(P2012−145803)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2000−282674(P2000−282674)の分割
【原出願日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(501229528)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (111)
【Fターム(参考)】