説明

A型肝炎ウイルス核酸の捕捉、検出および定量のためのオリゴヌクレオチドの同定

【課題】ウイルス血症サンプル中のA型肝炎ウイルスを検出するための信頼できる診断試験法を提供する。
【解決手段】A型肝炎ウイルス特異的プライマー、およびA型肝炎ウイルスゲノムの保存領域から誘導されるプローブが、開示される。捕捉オリゴヌクレオチド、プライマー、およびプローブを使用する、核酸ベースのアッセイもまた、開示される。長さ60ヌクレオチド以下の単離されたオリゴヌクレオチドが開示され、この単離されたオリゴヌクレオチドは、(a)特定な配列からなる群より選択される配列の少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列;(b)(a)のヌクレオチド配列2体して90%配列同一性を有するヌクレオチド配列;または(c)(a)の相補体および(b)の相補体;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、ウイルス診断に関する。具体的には、本発明は、生物学的サンプルにおいてA型肝炎感染を正確に診断するためおよびA型肝炎を検出するための、核酸ベースアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
A型肝炎は、発熱、倦怠感、食欲不振、悪心、腹部不快感、および黄疸を引き起こす、腸伝達性疾患である。A型肝炎の病因因子であるA型肝炎ウイルスは、Picornaviridae科のHepatovirus属に分類される、小さく外被のない球状のウイルスである。HAVゲノムは、一本鎖で線状の7.5kb RNA分子からなり、このRNA分子は、ウイルス複製に必要な構造タンパク質および酵素活性を生じるようにプロセシングされるポリタンパク質前駆体をコードする(非特許文献1)。HAVは、細胞培養中でほとんど増殖せず、細胞傷害性ではなく、そして低収量のウイルスを生じる。ビリオンから抽出されたHAV RNAは、細胞培養中で感染性である(非特許文献2および非特許文献3)が、そのウイルスゲノムの直接操作は、そのRNA組成が原因で困難になる。
【0003】
HAVは、感染した個体に対する抗体によって認識される主要な抗原性ドメインを含む、4つのキャプシドタンパク質(A、B、CおよびD)をコードする。このキャプシドタンパク質に加えて、抗原性ドメインは、2Aのような非構造タンパク質およびウイルスによりコードされるプロテアーゼ中において、報告されている。別の重要なHAV抗原性ドメインが、キャプシド前駆体P1と2Aとの間の連結部において、記載されている。
【0004】
HAVは、人−人接触または汚染された食物もしくは汚染された水の摂取のいずれかによって、糞便−口腔経路によって、通常は獲得される。しかし、プールされた血漿生成物によってHAVが伝達する可能性が存在する。脂質エンベロープが存在しないことによって、HAVは、物理化学的不活化に対して非常に抵抗性であり、このウイルスは、血液生成物の従来の熱処理に耐え得る。従って、HAVおよびパルボウイルスB19は、プールされた血漿誘導体の投与を介して伝達されてきた。感染した個体におけるHAV抗原および/またはHAV抗体を同定するための感度が良い特異的な診断アッセイ、ならびにウイルス血症サンプルを検出してそのサンプルを輸液から排除するための核酸ベースの試験の開発は、重要な公衆衛生上の挑戦を示す。
【0005】
Robertsonらに対する米国特許第5,290,677号(特許文献1)は、抗体を使用するHAVウイルス全体の捕捉を記載する。RNAが、単離され、そしてcDNAが生成される。その後、そのcDNAは、HAVゲノムのVP1キャプシド領域由来のプライマーおよびVP3キャプシド領域由来のプライマーを使用するPCRによって増幅され、その増幅産物が、そのゲノムの同じ領域に由来するプローブを使用して検出される。それらのプライマーおよびプローブの選択は、検出されるべきHAVの遺伝子型に基づく。
血液誘導体および血漿誘導体を介するかまたは個人的密接によるこのウイルスの伝達を防ぐために、ウイルス血症サンプル中のA型肝炎ウイルスを検出するための信頼できる診断試験を開発する必要性が、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,290,677号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Najarianら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:2627〜2632(1985)
【非特許文献2】Lacarniniら、J.Virol.37:216〜225(1981)
【非特許文献3】Sieglら、J.Gen.Virol.57:331〜341(1981)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、感染している可能性がある個体由来の生物学的サンプルにおいてHAVを検出するための、感度の良い信頼できる核酸ベースの診断試験を開発することに基づく。本明細書中に記載される技術は、PCR、転写媒介性増幅(TMA)、および5’ヌクレアーゼアッセイ(例えば、TaqManTM技術)を使用して、HAV配列の保存ゲノム領域の増幅用テンプレートとして、抽出したサンプル核酸を利用する。これらの方法は、ウイルス血症サンプルにおけるHAVの検出を可能にする。特定の実施形態において、本発明は、HAVゲノムの5’UTR領域に由来するプライマーおよびプローブを使用する。さらに、これらの方法は、捕捉されたサンプル核酸が同じ容器中で増幅および検出に供され得る、ワンポット(one−pot)分析を可能にする。本発明の方法を使用して、感染したサンプルは、輸液から、および血液誘導体調製物から、同定されて排除され得る。
従って、一実施形態において、本発明は、生物学的サンプルにおけるHAV感染を検出するための方法に関する。この方法は、
(a)固体支持体を、上記生物学的サンプルと、高カオトロピック塩濃度下で、または上記固体支持体と標的核酸との間で複合体が形成されるハイブリダイズ条件下で、接触させる工程;
(b)上記サンプルから(a)の固体支持体を分離する工程;
(c)標的核酸が存在する場合にその標的核酸を増幅する工程;および
(d)上記増幅された核酸の存在を、上記サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する工程;
を包含する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、生物学的サンプルにおけるHAV感染を検出するための方法に関する。この方法は、
(a)固体支持体を、上記生物学的サンプルと、高カオトロピック塩濃度下で、または上記固体支持体と標的核酸との間で複合体が形成されるハイブリダイズ条件下で、接触させる工程;
(b)上記サンプルから(a)の固体支持体を分離する工程;
(c)HAVのゲノムの5’ UTRに由来するプライマー(例えば、配列番号1を含む配列によって示されるプライマー、および配列番号2を含む配列によって示されるプライマー)を使用して、標的核酸鎖を増幅する工程;
を包含する。特定の実施形態において、この方法は、HAVゲノムの5’ UTRに由来するプローブ(例えば、配列番号3のプローブ)を使用して、上記増幅された標的オリゴヌクレオチドの存在を、上記サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する工程をさらに包含する。
【0010】
さらなる実施形態において、本発明は、生物学的サンプル中のHAV感染を検出するための方法に関し、上記方法は、
HAVを含むことが疑われる生物学的サンプルから核酸を単離する工程;
2種のプライマーを使用して、上記核酸を増幅する工程であって、
(a)上記プライマーの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、一方のプライマーは、配列番号1からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、かつもう一方のプライマーは、配列番号2からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むか、または
(b)上記プライマーは、(a)のヌクレオチド配列と90%配列同一性を有し、
上記2種のプライマーの各々は、それぞれ、単離された核酸のセンス鎖の一部およびアンチセンス鎖の一部とハイブリダイズするに十分に相補的である、工程;ならびに
上記増幅された核酸の存在を、上記サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する工程、
を包含する。
【0011】
特定の実施形態において、上記核酸は、
(a)結合している捕捉核酸を含む固体支持体を、標的核酸鎖が上記捕捉核酸とハイブリダイズするハイブリダイズ条件下で生物学的サンプルと接触させる工程;および
(b)上記サンプルから上記固体支持体を分離する工程;
を包含する方法によって、上記生物学的サンプルから単離される。
【0012】
さらなる実施形態において、上記単離する工程、増幅する工程、および検出する工程は、単一の容器中で実施される。
【0013】
さらなる実施形態において、上記捕捉核酸は、1種以上のオリゴヌクレオチドを含み、上記オリゴヌクレオチドの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつ上記オリゴヌクレオチドの各々は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7からなる群より選択される配列からの少なくとも10個連続するヌクレオチドを含む。
【0014】
なおさらなる実施形態において、上記捕捉核酸は、長さが約15ヌクレオチド〜25ヌクレオチドのホモポリマー鎖(例えば、ポリA、ポリT、ポリG、ポリCおよびポリU)をさらに含む。
【0015】
別の実施形態において、上記増幅する工程は、PCR、転写媒介性増幅(TMA)またはTaqManを含む。
【0016】
さらなる実施形態において、上記方法は、増幅された生成物を検出するために標識プローブオリゴヌクレオチドを使用する工程をさらに包含し、このプローブは、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつ配列番号3を含む少なくとも10個連続するヌクレオチドを含む。
【0017】
特定の実施形態において、上記プローブは、検出可能な標識(例えば、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、および2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)からなる群より選択される蛍光標識)を5’末端および3’末端にさらに含む。
【0018】
なお別の実施形態において、本発明は、生物学的サンプルにおけるHAV感染を検出するための方法に関し、この方法は、
(a)固体支持体を、1種以上のオリゴヌクレオチドを含む捕捉核酸と、この捕捉核酸が上記固体支持体と結合する条件下で接触させる工程であって、上記1種以上のオリゴヌクレオチドは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14からなる群より選択される配列を含む、工程;
(b)(a)の固体支持体を、生物学的サンプルと、HAV由来の標的核酸鎖が存在する場合にはその標的核酸鎖が上記捕捉核酸とハイブリダイズするハイブリダイズ条件下で接触する工程;および
(c)上記サンプルから(b)の固体支持体を分離する工程;
(d)配列番号1を含むセンスプライマーと配列番号2を含むアンチセンスプライマーとを使用して上記核酸を増幅する工程であって、上記センスプライマーおよび上記アンチセンスプライマーは、それぞれ、上記単離された核酸のセンス鎖の一部およびアンチセンス鎖の一部とハイブリダイズするに十分に相補的である、工程;ならびに
(e)上記増幅された核酸の存在を、上記サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する工程;
を包含する。
【0019】
上記の方法の特定の実施形態において、上記固体支持体は、ビーズ(例えば、磁気ビーズ)を含み、上記単離する工程、増幅する工程、および検出する工程は、単一の容器中で実施される。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、図1に示されるヌクレオチド配列のうちのいずれか1つからなるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドに関する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、長さ60ヌクレオチド以下の単離されたオリゴヌクレオチドに関し、この単離されたオリゴヌクレオチドは、
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択される配列からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列に対して90%配列同一性を有するヌクレオチド配列;または
(c)(a)の相補体および(b)の相補体;
を含む。
【0022】
特定の実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
【0023】
さらなる実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、検出可能な標識を5’末端および/または3’末端にさらに含む。特定の実施形態において、上記検出可能な標識は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、および2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)からなる群より選択される蛍光標識である。
【0024】
なおさらなる実施形態において、本発明は、診断試験キットに関し、このキットは、本明細書中に記載される1種以上のプライマーと、この診断試験を実行することについての指示を含む。特定の実施形態において、この試験キットは、検出可能な標識に結合した約10ヌクレオチド〜約50ヌクレオチドのHAV特異的ハイブリダイズ配列を含む、オリゴヌクレオチドプローブをさらに含む。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、生物学的サンプルにおけるHAVを検出するためのキットに関する。このキットは、1種以上のオリゴヌクレオチドを含む捕捉核酸(これらの1種以上のオリゴヌクレオチドの各々は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群より選択される配列を含む);配列番号1を含むプライマーおよび配列番号2を含むプライマー;ならびに配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブを含む。特定の実施形態において、上記試験キットは、ポリメラーゼ、および上記診断試験を実行するための指示をさらに含む。
【0026】
さらなる実施形態において、本発明は、生物学的サンプルにおけるHAV感染を検出するためのキットに関し、このキットは、
1種以上のオリゴヌクレオチドを含む捕捉核酸であって、これらのオリゴヌクレオチドの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつこれらのオリゴヌクレオチドの各々は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群より選択される配列の少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、捕捉核酸;
少なくとも2種のプライマーであって、これらのプライマーの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、一方のプライマーは、配列番号1からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、もう一方のプライマーは、配列番号2からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、プライマー;および
HAV感染を同定するための指示書
を備える。
【0027】
特定の実施形態において、上記キットは、長さが約60ヌクレオチド以下でありかつ配列番号3からの少なくとも10個連続するヌクレオチドを含む、プローブオリゴヌクレオチドをさらに含む。上記プローブは、検出可能な標識を5’末端および3’末端にさらに含み得る。いくつかの実施形態において、上記検出可能な標識は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、および2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)からなる群より選択される蛍光標識である、キット。
【0028】
特定の実施形態において、上記のキットは、ポリメラーゼおよび緩衝液をさらに含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
長さ60ヌクレオチド以下の単離されたオリゴヌクレオチドであって、
(a)配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択される配列からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列に対して90%配列同一性を有するヌクレオチド配列;または
(c)(a)の相補体および(b)の相補体;
を含む、オリゴヌクレオチド。
(項目2)
項目1に記載のオリゴヌクレオチドであって、該オリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群より選択される配列からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列である、オリゴヌクレオチド。
(項目3)
項目1に記載のオリゴヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1を含む、オリゴヌクレオチド。
(項目4)
項目1に記載のオリゴヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、配列番号2を含む、オリゴヌクレオチド。
(項目5)
項目1に記載のオリゴヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、配列番号3を含む、オリゴヌクレオチド。
(項目6)
項目5に記載のオリゴヌクレオチドであって、検出可能な標識を5’末端および/または3’末端にさらに含む、オリゴヌクレオチド。
(項目7)
項目6に記載のオリゴヌクレオチドであって、前記検出可能な標識は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、および2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)からなる群より選択される蛍光標識である、オリゴヌクレオチド。
(項目8)
A型肝炎ウイルス核酸を増幅するための2種のプライマーの組であって、該プライマーの組は、配列番号1からなるプライマーおよび配列番号2からなるプライマーからなる、組。
(項目9)
生物学的サンプル中のA型肝炎ウイルス(HAV)を検出する方法であって、該方法は、
HAVを含むことが疑われる生物学的サンプルから核酸を単離する工程;
該HAVのゲノムの5’ UTRに由来する少なくとも2種のプライマーを使用して、該単離された核酸を増幅する工程であって、該プライマーの各々は、長さが10ヌクレオチド〜60ヌクレオチドであり、かつ該プライマーの各々は、それぞれ、該単離された核酸のセンス鎖の一部およびアンチセンス鎖の一部とハイブリダイズするに十分に相補的である、工程;および
該増幅された核酸の存在を、該サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する工程;
を包含する、方法。
(項目10)
項目9に記載の方法であって、
(a)前記プライマーのうちの一方は、配列番号1からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、かつもう一方のプライマーは、配列番号2からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むか、または
(b)前記プライマーは、(a)のヌクレオチド配列と90%配列同一性を有し、そして
前記増幅された核酸の存在を、前記サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する、方法。
(項目11)
項目9に記載の方法であって、前記核酸は、
(a)結合している捕捉核酸を含む固体支持体を、標的核酸鎖が該捕捉核酸とハイブリダイズするハイブリダイズ条件下で生物学的サンプルと接触させる工程;および
(b)該サンプルから該固体支持体を分離する工程;
を包含する方法によって、前記生物学的サンプルから単離される、方法。
(項目12)
項目11に記載の方法であって、前記固体支持体は、ビーズを含む、方法。
(項目13)
項目12に記載の方法であって、前記ビーズは、磁気ビーズである、方法。
(項目14)
項目13に記載の方法であって、前記単離する工程、増幅する工程、および検出する工程は、単一の容器中で実施される、方法。
(項目15)
項目11に記載の方法であって、前記捕捉核酸は、1種以上のオリゴヌクレオチドを含み、該オリゴヌクレオチドの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつ該オリゴヌクレオチドの各々は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14からなる群より選択される配列からの少なくとも10個連続するヌクレオチドを含む、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、前記捕捉核酸は、3’末端または5’末端のいずれかに、長さが約15ヌクレオチド〜25ヌクレオチドのホモポリマー鎖をさらに含み、該ホモポリマー鎖は、ポリA、ポリT、ポリG、ポリCおよびポリUからなる群より選択される、方法。
(項目17)
項目16に記載の方法であって、前記ホモポリマー鎖は、ポリA鎖である、方法。
(項目18)
項目9に記載の方法であって、前記増幅する工程は、PCR、転写媒介性増幅(TMA)またはTaqManを含む、方法。
(項目19)
項目18に記載の方法であって、前記増幅する工程は、TMAを含む、方法。
(項目20)
項目18に記載の方法であって、検出可能な標識を含むプローブオリゴヌクレオチドを、前記増幅された配列を検出するために使用する工程をさらに包含し、ここで、該プローブオリゴヌクレオチドは、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつ該プローブオリゴヌクレオチドは、配列番号3を含む少なくとも10個連続するヌクレオチドを含む、方法。
(項目21)
項目20に記載の方法であって、前記プローブは、検出可能な標識を5’末端および3’末端に含む、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、前記検出可能な標識は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、および2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)からなる群より選択される蛍光標識である、方法。
(項目23)
生物学的サンプルにおけるA型肝炎ウイルス(HAV)感染を検出するための方法であって、該方法は、
(a)固体支持体を、1種以上のオリゴヌクレオチドを含む捕捉核酸と、該捕捉核酸が該固体支持体と結合する条件下で接触させる工程であって、該1種以上のオリゴヌクレオチドは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14からなる群より選択される配列を含む、工程;
(b)(a)の固体支持体を、該生物学的サンプルと、HAV由来の標的核酸鎖が存在する場合には該標的核酸鎖が該捕捉核酸とハイブリダイズするハイブリダイズ条件下で接触させる工程;および
(c)該サンプルから(b)の固体支持体を分離する工程;
(d)配列番号1を含むセンスプライマーと配列番号2を含むアンチセンスプライマーとを使用して該核酸を増幅する工程であって、該センスプライマーおよび該アンチセンスプライマーは、それぞれ、該単離された核酸のセンス鎖の一部およびアンチセンス鎖の一部とハイブリダイズするに十分に相補的である、工程;ならびに
(e)該増幅された核酸の存在を、該サンプル中のHAVの存在または非存在の指標として検出する工程;
を包含する、方法。
(項目24)
項目23に記載の方法であって、前記固体支持体は、ビーズを含む、方法。
(項目25)
項目24に記載の方法であって、前記ビーズは、磁気ビーズである、方法。
(項目26)
項目25に記載の方法であって、前記単離する工程、増幅する工程、および検出する工程は、単一の容器中で実施される、方法。
(項目27)
生物学的サンプルにおけるA型肝炎ウイルス(HAV)感染を検出するためのキットであって、該キットは、
1種以上のオリゴヌクレオチドを含む捕捉核酸であって、該オリゴヌクレオチドの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつ該オリゴヌクレオチドの各々は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群より選択される配列の少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、捕捉核酸;
少なくとも2種のプライマーであって、該プライマーの各々は、長さが約60ヌクレオチド以下であり、一方のプライマーは、配列番号1からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、もう一方のプライマーは、配列番号2からの少なくとも10個連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、プライマー;および
HAV感染を同定するための指示書
を備える、キット。
(項目28)
項目27に記載のキットであって、ポリメラーゼと緩衝液とをさらに備える、キット。
(項目29)
項目27に記載のキットであって、プローブオリゴヌクレオチドをさらに備え、該プローブオリゴヌクレオチドは、長さが約60ヌクレオチド以下であり、かつ配列番号3を含む少なくとも10個連続するヌクレオチドを含む、キット。
(項目30)
項目29に記載のキットであって、前記プローブは、検出可能な標識を5’末端および3’末端にさらに含む、キット。
(項目31)
項目30に記載のキットであって、前記検出可能な標識は、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、および2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)からなる群より選択される蛍光標識である、キット。
【0029】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すると明らかになる。さらに、特定の手順または組成物をより詳細に記載する種々の参考文献が、本明細書中に示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1A〜図1B(配列番号1および配列番号2)は、単離されたHAV核酸の増幅における使用のための例示的プライマーを示す。
【図2】図2(配列番号3)は、HAVの存在を示す増幅された標的オリゴヌクレオチドの存在を検出する際に使用するためのプローブを示し、Xは、6−FAM(フルオレセイン)であり、Zは、リンカー+TAMRA(テトラメチルローダミン)である。
【図3】図3A〜図3F(配列番号10〜配列番号15)は、生物学的サンプルからHAV核酸を単離するための例示的捕捉オリゴヌクレオチドを示す。
【図4】図4Aは、HAV野生型標的配列(配列番号16)を示す。図4B(配列番号17)は、標的の捕捉および増幅についてのコントロールとして使用するための例示的内部コントロール配列を示す。太字の塩基は、この内部コントロール配列中で置換されている野生型の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他のように示されない限り、当業者の範囲内にある従来の化学、生化学、組換えDNA技術およびウイルス学の方法を使用する。そのような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、Fundamental Virology、第2版、第I巻および第II巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,現行版);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press,Inc.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編、1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)を参照のこと。
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その内容が明らかにそうでないように示さない限り、複数の言及物を包含することが、留意されなければならない。従って、例えば、「オリゴヌクレオチド(an oligonucleotide)」に対する言及は、2つ以上のオリゴヌクレオチドの混合物を包含するなどである。
【0032】
以下のアミノ酸略語が、文中全体にわたって使用される:
アラニン:Ala(A) アルギニン:Arg(R)
アルパラギン:Asn(N) アスパラギン酸:Asp(D)
システイン:Cys(C) グルタミン:Gln(Q)
グルタミン酸:Glu(E) グリシン:Gly(G)
ヒスチジン:His(H) イソロイシン:Ile(I)
ロイシン:Leu(L) リジン:Lys(K)
メチオニン:Met(M) フェニルアラニン:Phe(F)
プロリン:Pro(P) セリン:Ser(S)
スレオニン:Thr(T) トリプトファン:Trp(W)
チロシン:Tyr(Y) バリン:Val(V)。
【0033】
(I.定義)
本発明を記載する際に、以下の用語が使用され、この以下の用語は、下記に示されるように定義されることが意図される。
【0034】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを指し、そしてこれは、その最小の長さの生成物には限定されない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、マルチマーなどが、この定義内に包含される。全長タンパク質およびそのフラグメントの両方が、この定義により包含される。これらの用語はまた、そのポリペプチドの発現後修飾(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)を包含する。さらに、本発明のために、「ポリペプチド」は、ネイティブ配列に対する改変(例えば、欠失、付加および置換(一般的には性質が保存的である)を含むタンパク質を、そのタンパク質が望ましい活性を維持する限り、指す。これらの改変は、部位特異的変異誘発を介してのように、意図的であってもよいし、または例えば、そのタンパク質を生成する宿主の変異またはPCR増幅に起因するエラーを介して、偶発的であってもよい。
【0035】
「単離された」によって、ポリペプチドを指す場合、その示される分子は、その分離が天然で見出される生物全体から分離されて別個であること、または同じ型の他の生物学的高分子が実質的に存在しないことが、意味される。ポリヌクレオチドに関する用語「単離された」とは、天然で通常会合する配列を全体的にかまたは部分的に欠いている核酸分子;または天然で存在する通りに存在するが、会合した異種配列を有する、配列;またはその染色体から解離されている分子である。
【0036】
指定される配列「に由来する」ポリヌクレオチド、または指定される配列「に特異的である」ポリヌクレオチドとは、指定されるヌクレオチド配列の一領域に対応する(すなわち、同一であるかまたは相補的である)少なくとも約6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10〜12ヌクレオチド、そしてなおより好ましくは少なくとも約15〜20ヌクレオチドの連続配列を含む、ポリヌクレオチド配列を指す。その由来するポリヌクレオチドは、目的とするヌクレオチド配列から必ずしも物理的に誘導されるわけではなく、任意の様式(化学合成、複製、逆転写または転写が挙げられるが、これらに限定されない)で、そのポリヌクレオチドが由来する領域中の塩基配列により提供される情報に基づいて生成され得る。従って、その由来するポリヌクレオチドは、元のポリヌクレオチドのセンス方向またはアンチセンス方向のいずれかを示し得る。
【0037】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド部分または2つのポリペプチド部分の間の類似性パーセントを指す。2つの核酸配列または2つのポリペプチド配列は、それらの配列が、その分子の規定された長さにわたって少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80〜85%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95〜98%の配列類似性を示す場合に、互いに対して「実質的に相同である」。本明細書中で使用される場合、実質的に相同性とは、特定の核酸配列またはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列もまた指す。
【0038】
一般的に、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の、それぞれ、正確なヌクレオチドごとまたはアミノ酸ごとの一致を指す。同一性パーセントは、それらの2つの配列を整列し、整列した2つの配列間の一致の正確な数を計数し、短い方の配列の長さで除算し、その結果に100を乗算することによって、2つの分子間の配列情報を直接比較することによって、決定され得る。
【0039】
容易に利用可能なコンピュータープログラムは、相同性および同一性の分析を補助するために使用され得る。例えば、ALIGN,Dayhoff,M.O.,Atlas of Protein Sequence and Structure,M.O.Dayhoff編,5 Suppl.3:353〜358,National biomedical Research Foundation,Washington,DCは、ペプチド分析のために、SmithおよびWaterman,Advances in Appl.Math.2:482〜489,1981の局所相同性アルゴリズムを適合する。ヌクレオチド配列相同性を決定するためのプログラムが、Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8(Genetics Computer Group,Madison、WIから入手可能)において利用可能であり、例えば、BESTFITプログラム、FASTAプログラムおよびGAPプログラムもまた、SmithおよびWatermanアルゴリズムに依存する。これらのプログラムは、製造業者によって推奨されそして上記で言及されるWisconsin Sequence Analysis Packageにおいて記載される、デフォルトパラメーターを用いて容易に利用される。例えば、参照配列に対する特定のヌクレオチド配列の相同性パーセントは、デフォルトスコアリングテーブルおよび6ヌクレオチド位置のギャップペナルティを用いてSmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを使用して、決定され得る。
【0040】
本発明の状況において相同性パーセントを確立する別の方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokにより開発されてIntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)により頒布されている、University of Edinburghが著作権を有するMPSRCHパッケージのプログラムを使用することである。この組のパッケージから、Smith−Watermanアルゴリズムが、使用され得、デフォルトパラメーターは、スコアリングテーブル(例えば、ギャップオープンペナルティ12、ギャップエクステンションペナルティ1、およびギャップ6)について使用される。生じたデータから、「Match」値が「配列相同性」を反映する。配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントを計算するための他の適切なプログラムは、当該分野で一般的に公知であり、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトパラメーターとともに使用されるBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを使用して使用され得る:遺伝コード=標準;フィルター=なし:鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10、Matrix=BLOUSUM62;Descriptuions=50配列;分別=HIGH SCORE;Databases=非重複、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi−bin/BLASTにおいて見出され得る。
【0041】
あるいは、相同性は、相同領域間に安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化、そして消化されたフラグメントのサイズ決定によって、決定され得る。実質的に相同である核酸配列は、例えば、その特定の系について規定されたストリンジェント条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において、同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当業者の範囲内にある。例えば、Sambrookら(前出);DNA Cloning(前出);Nucleic Acid Hybridization(前出)を参照のこと。
【0042】
「組換え」とは、核酸分子を記載するために本明細書中で使用される場合、その起源または操作によって、天然で会合するポリヌクレオチドのすべてまたは一部と会合していない、ゲノム起源、cDNA起源、ウイルス起源、半合成起源、または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。用語「組換え」とは、タンパク質またはポリペプチドに関して使用される場合、組換えポリヌクレオチドの発現によって生成されたポリペプチドを意味する。一般的に、目的の遺伝子は、下記にさらに記載されるように、クローン化され、その後、形質転換生物中で発現される。その宿主生物は、発現条件下で外来遺伝子を発現して、そのタンパク質を生成する。
【0043】
「制御エレメント」とは、それが連結しているヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を補助するポリヌクレオチド配列を指す。この用語は、宿主細胞においてコード配列の転写および翻訳を集合的に提供する、プロモーター、転写終結配列、上流調節ドメイン、ポリアデニル化シグナル、非翻訳領域(5’−UTRおよび3’−UTRを含む)、そして適切な場合には、リーダー配列およびエンハンサーを包含する。
【0044】
「プロモーター」とは、本明細書中で使用される場合、ポリメラーゼに結合可能であり、かつそのプロモーターに作動可能に連結している下流(3’方向の)ヌクレオチド配列の転写を開始可能である、調節領域である。本発明のために、プロモーター配列は、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで目的の配列の転写を開始するために必要な最小数の塩基またはエレメントを包含する。そのプロモーター配列の中には、転写開始部位、およびRNAポリメラーゼもしくはDNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)がある。例えば、プロモーターは、DNA依存性RNAポリメラーゼ(「転写酵素」)によってその核酸に結合して特定の部位でRNAの転写を開始するためのシグナルとして認識される核酸配列であり得る。結合のために、そのような転写酵素は、一般的には、そのプロモーター配列とその相補体とを含む部分で二本鎖であるDNAを必要とする。そのテンプレート部分(転写されるべき配列)は、二本鎖である必要はない。個々のDNA依存性RNAポリメラーゼは、転写を促進する際にその効率が顕著に変化し得る種々の異なるプロモーター配列を認識する。RNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合して転写を開始する場合、そのプロモーター配列は、転写される配列の一部ではない。従って、それにより生成されたRNA転写物は、その配列を含まない。
【0045】
制御配列は、RNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼがそのプロモーター配列に結合して隣接配列を転写する場合に、ヌクレオチド配列の「転写を指向する」。
【0046】
「DNA依存性DNAポリメラーゼ」は、DNAテンプレートから相補的DNAコピーを合成する酵素である。例は、E.coli由来のDNAポリメラーゼIおよびバクテリオファージT7 DNAポリメラーゼである。すべての公知のDNA依存性DNAポリメラーゼは、合成を開始するためには相補的プライマーを必要とする。適切な条件下では、DNA依存性DNAポリメラーゼは、RNAテンプレートから相補的DNAコピーを合成し得る。
【0047】
「DNA依存性RNAポリメラーゼ」または「転写酵素」は、(通常は二本鎖である)プロモーター配列を有する二本鎖DNA分子または部分的に二本鎖のDNA分子から、複数のRNAコピーを合成する酵素である。このRNA分子(「転写物」)は、そのプロモーターのすぐ下流の特定の位置で始まって、5’→3’方向で合成される。転写酵素の例は、E.coli由来のDNA依存性RNAポリラーゼ、ならびにバクテリオファージT7、T3およびSP6である。
【0048】
「RNA依存性DNAポリメラーゼ」または「逆転写酵素」は、RNAテンプレートから相補的DNAコピーを合成する酵素である。すべての公知の逆転写酵素はまた、DNAテンプレートから相補的DNAコピーを生成する能力も有する。従って、これらは、RNA依存性およびDNA依存性の両方のDNAポリメラーゼである。RNAテンプレートおよびDNAテンプレートの両方を用いて合成を開始するためには、プライマーが必要とされる。
【0049】
「RNAseH」は、RNA:DNA二重鎖のRNA部分を分解する酵素である。これらの酵素は、エンドヌクレアーゼであっても、エキソヌクレアーゼであってもよい。ほとんどの逆転写酵素は、通常は、そのポリメラーゼ活性に加えて、RNAseH活性を含む。しかし、そのRNAseHの他の供給源は、ポリメラーゼ活性を付随することなく利用可能である。その分解は、RNA:DNA複合体からのRNAの分離をもたらしうる。あるいは、そのRNAseHは、そのRNAの一部が融解するように種々の位置でそのRNAを単に切断し得るか、または酵素がそのRNAの一部をほぐすのを許容する。
【0050】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」とは、任意の長さのリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドのポリマー形態を包含するために本明細書中で使用される。この用語は、その分子の一次構造のみを指す。従って、この用語は、三本鎖DNA,二本鎖DNA、および一本鎖DNA、ならびに三本鎖RNA、二本鎖RNA、および一本鎖RNAを包含する。この用語はまた、改変体(例えば、メチル化および/またはキャップ化による)、ならびに非改変形態のポリヌクレオチドを包含する。より具体的には、用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」とは、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリン塩基もしくはピリミジン塩基のN−グリコシドもしくはC−グリコシドである他の任意の型のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含む他のポリマー(例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸(PNA))ポリマーおよびポリモルホリノ(Anti−Virals,Inc.,Corvallis,OregonからNeugeneとして市販される)ポリマー、ならびにそのポリマーが塩基対形成および塩基スタッキング(例えば、DNAおよびRNAにおいて見出されるような)を可能にする構成で核酸塩基を含む場合に、他の配列特異的核酸ポリマーを包含する。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」の間で意図される長さの区別は存在せず、これらの用語は、互換可能に使用される。これらの用語は、その分子の一次構造のみを指す。従って、これらの用語は、例えば、3’−デオキシ−2’,5’−DNA、オリゴデオキシリボヌクレオチドN3’P5’ホスホロアミデート、2’−O−アルキル置換RNA,二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッド、ならびにPNAとDNAまたはRNAとの間のハイブリッドを包含し、そしてまた、既知の型の改変(例えば、当該分野で公知の標識、メチル化、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上をアナログで置換すること、ヌクレオチド間改変(例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)、負荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有する改変、および正荷電結合(例えば、アミノアルキルホスホロアミデート、アミノアルキルホスホトリエステル)を有する改変、ペンダント部分(例えば、タンパク質(ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなどを含む))を含む改変、インターカレーター(例えば、空くチジン、ソラレンなど)を含む改変、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含む改変、アルキル化剤を含む改変、改変結合(例えば、αアノマー核酸など)を含む改変、ならびに非改変形態のポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド)を包含する。特に、DNAは、デオキシリボ核酸である。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「標的核酸領域」または「標的核酸」とは、増幅されるべき「標的配列」を有する核酸分子を意味する。この標的核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、そしてその標的配列のほかに他の配列(これは、増幅されないかもしれない)を含み得る。用語「標的配列」とは、標的核酸中の増幅されるべき特定のヌクレオチド配列を指す。その標的配列は、プローブが望ましい条件下で安定なハイブリッドを形成する標的分子中に含まれる、プローブハイブリダイズ領域を含み得る。その「標的配列」はまた、そのオリゴヌクレオチドプライマーが複合体形成し、その標的配列をテンプレートとして使用して伸長される、複合体形成配列を含み得る。その標的核酸がもともの一本鎖である場合、用語「標的配列」はまた、その標的核酸中に存在するような「標的配列」と相補的な配列を指す。その「標的核酸」がもともと二本鎖である場合、用語「標的配列」とは、プラス(+)鎖およびマイナス(−)鎖の両方を指す。
【0052】
用語「プライマー」または「オリゴヌクレオチドプライマー」とは、本明細書中で使用される場合、プライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチドと重合誘導剤(例えば、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ)の存在下かつ適切な温度、pH、金属濃度、および塩濃度)に配置された場合に、相補的核酸鎖の合成を開始するように作用するオリゴヌクレオチドを指す。そのプライマーは、好ましくは、最大の増幅効率のためには一本鎖であるが、あるいは、二本鎖であってもよい。二本鎖である場合、そのプライマーは、まず、伸長産物を調製するために使用される前に、その鎖を分離するように処理される。この変性工程は、代表的には、熱によって行われるが、あるいは、アルカリとその後の中和によって実行され得る。従って、「プライマー」は、テンプレートと相補的であり、そしてそのテンプレートとの水素結合またはハイブリダイゼーションによって複合体形成して、ポリメラーゼによる合成開始のためのプライマー/テンプレート複合体を生じる。この複合体は、その3’末端に結合したテンプレートと相補的な共有結合塩基をDNA合成プロセスにおいて添加することによって、伸長される。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」または「オリゴヌクレオチドプローブ」とは、上記で定義されるような、ポリヌクレオチドから構成される構造体であって、その構造は、標的核酸分析物中に存在する核酸配列と相補的な核酸配列を含む、構造体を指す。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNAおよび/またはRNA、および/または合成ヌクレオチドアナログから構成され得る。「オリゴヌクレオチドプローブ」が、5’ヌクレアーゼアッセイ(例えば、TaqManTM技術)において使用される場合、そのプローブは、少なくとも1つの蛍光剤と、少なくとも1つの消光剤とを含み、このプローブは、増幅されたあらゆる標的オリゴヌクレオチド配列を検出するために、その反応において使用されるポリメラーゼの5’エンドヌクレアーゼ活性によって消化される。この状況において、このオリゴヌクレオチドプローブは、その5’末端に近接する十分な数のホスホジエステル結合を有し、その結果、使用される5’→3’ヌクレアーゼ活性は、結合したプローブを効率的に分解してその蛍光剤と消光剤とを分離し得る。オリゴヌクレオチドプローブがこのTMA技術において使用される場合、そのオリゴヌクレオチドプローブは、下記に記載されるように、適切に標識される。
【0054】
このハイブリダイズ配列は、安定なハイブリッドを提供するために完全な相補性を有する必要はないことが、認識される。多くの状況において、安定なハイブリッドは、塩基の約10%未満がミスマッチであり、4つ以上のヌクレオチドからなるループを無視する場合に形成される。従って、本明細書中で使用される場合、用語「相補的」とは、アッセイ条件下で、その「相補体」と安定な複合体を形成するオリゴヌクレオチドを、一般的には、約90%以上の相同性が存在する場合に、指す。
【0055】
用語「ハイブリダイズする」および「ハイブリダイゼーション」とは、Watson−Crick塩基対形成を介して複合体を形成するために十分に相補的であるヌクレオチド配列間での複合体の形成を指す。プライマーが標的(テンプレート)と「ハイブリダイズ」する場合、そのような複合体(またはハイブリッド)は、例えば、DNA合成を開始するためにDNAポリメラーゼによって必要とされるプライミング機能を保存するために十分に安定である。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「結合対」とは、互いに特異的に結合する第1分子および第2分子(例えば、核酸二重鎖を形成可能な相補的ポリヌクレオチド対)を指す。サンプル中におけるその結合対の第1メンバーと、その結合対の第2メンバーとの「特異的結合」は、そのサンプル中の他の成分に対するよりも高い親和性および特異性で、その第1メンバーと第2メンバーとが結合すること(またはその逆)によって、示される。その結合対のメンバー間の結合は、代表的には、非共有結合性である。文脈が明らかに他のように示さない限り、用語「親和性分子」および「標的分析物」とは、本明細書中で、それぞれ、結合対の第1メンバーおよび第2メンバーを指すために使用される。
【0057】
用語「特異的結合分子」および「親和性分子」とは、本明細書中で互換可能に使用され、そしてこれらは、サンプル中に存在する検出可能な物質と、化学的手段または物理的手段を介して選択的に結合する分子を指す。「選択的に結合する」によって、その分子は、目的とする標的に対して優先的に結合するか、または他の分子に対してよりも標的に対して高い親和性で結合することが、意味される。例えば、核酸分子は、実質的に相補的な配列に結合し、関連しない配列には結合しない。
【0058】
二本鎖核酸分子の「融解温度」または「T」とは、その核酸の螺旋構造の半分が、加熱、または例えば、酸処理もしくはアルカリ処理などによる塩基対間の水素結合の他の解離が原因で失われる温度として、規定される。核酸分子のTは、その長さおよびその塩基組成に依存する。GC塩基対がリッチな核酸分子は、豊富なAT塩基対を有する核酸分子よりも高いTを有する。核酸の分離した相補鎖は、その温度がそのTよりも下に低下すると、自然に再会合またはアニールして、二重鎖核酸を形成する。最も速い核酸ハイブリダイゼーション速度は、そのTmより約25℃低い温度で生じる。そのTは、以下の関係:Tm=69.3+0.41(GC)%(Marmurら(1962)J.Mol.Biol.5:109〜118)を使用して、推定され得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「生物学的サンプル」とは、被験体により生成される抗体を一般的に含め、被験体から単離された組織サンプルまたは流体サンプルを指す。代表的なサンプルとしては、血液、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、脊髄液、リンパ液、皮膚サンプル、皮膚分泌物、気道、腸管および泌尿器管、涙、唾液、乳汁、血球、器官、生検、そしてまたインビトロ細胞培養成分のサンプル(培養培地中での細胞増殖ならびに組織増殖から生じる馴化培地(例えば、組換え細胞および細胞成分)が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい生物学的サンプルは、血液、血漿および血清である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「標識」および「検出可能な標識」とは、検出可能な分子を指し、これには、放射性同位体、蛍光剤、化学発光体、発色団、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素インヒビター、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、またはハプテン)などが挙げられるが、これらに限定されない。用語「蛍光剤」とは、検出可能な範囲の蛍光を示すことが可能な物質またはその物質の一部を指す。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「固体支持体」とは、固体表面(例えば、磁気ビーズ、ラテックスビーズ、マイクロタイタープレートウェル、ガラスプレート、ナイロン、アガロース、アクリルアミドなど)を指す。
【0062】
(II.発明を実施する形態)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、特定の処方物にもプロセスパラメーターにも限定されず、従って、当然変化し得ることが、理解されるべきである。本明細書中で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を記載するためだけのものであり、この用語は、限定することは意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0063】
本明細書中に記載される組成物および方法と類似するかまたは等価である複数の組成および方法が、本発明の実施において使用され得るが、好ましい材料および方法が、本明細書中に記載される。
【0064】
上記のように、本発明は、生物学的サンプルにおいてA型肝炎ウイルス(HAV)感染を正確に検出するための新規な診断方法の開発に基づく。その方法は、少量のウイルスを含むサンプルにおけるHAV標的核酸配列の同定を可能にする感度の高い核酸ベースの検出技術に依存する。具体的には、本発明者は、本明細書中において、HAVゲノムの5’ UTR由来の配列を使用して、生物学的サンプルにおけるHAVの迅速かつ感度の高い検出を提供することを発見した。HAVゲノムの配列(5’ UTRを含む)は、複数のHAV単離株において公知である。例えば、NCBI登録番号K02990;AB020564;AB020565;AB020566;AB020567;AB020568;AB020569;AF268396;M16632;M14707;M20273;NC001489;X83302;Cohenら、J.Virol.(1987)61:50〜59を参照のこと。種々のHAV単離株に由来する配列を比較することによって、本発明とともに使用するためのこれらの5’ UTR配列および他の5’ UTR配列は、容易に同定され得る。簡便のために、本発明とともに使用するためのこの種々の核酸分子は、NCBI登録番号K02990に対して番号付けされている。その5’ UTR配列は、NCBI登録番号K02990の1〜723位に存在する。
【0065】
本発明のストラテジーにおいて、その標的核酸は、非相同DNA/RNAから分離される。一局面において、その標的核酸は、固体支持体と複合体を形成することによって、分離される。別の局面において、その標的核酸は、固体支持体上に固定された捕捉オリゴヌクレオチドを使用することによって分離され、その捕捉オリゴヌクレオチドは、検出されるべき生物にとって特異的であり得る。その後、分離された標的核酸は、レポーター基でタグ化されたオリゴヌクレオチドプローブを使用して検出され得るか、または増幅され得る。HAVについて、分離された標的核酸は、好ましくは、非翻訳領域(例えば、5’ UTR)中でプライマーを使用して増幅される。この領域由来の代表的なプライマーは、配列番号1および配列番号2の配列(図1)を含むプライマーである。
【0066】
本発明の一局面において、標的核酸を保有する可能性がある生物学的サンプルは、固体支持体(必要に応じて、捕捉オリゴヌクレオチドを有する)と接触される。その捕捉オリゴヌクレオチドは、その固体支持体と、例えば、その固体支持体に対するプローブ部分の共有結合によって、親和性結合によって、水素結合によって、または非特異的結合によって、結合され得る。
【0067】
その捕捉オリゴヌクレオチドは、目的の領域からの約5〜約500ヌクレオチド、好ましくは約10〜約100ヌクレオチド、またはより好ましくは約10〜約60ヌクレオチド、またはこれらの範囲中の任意の整数個のヌクレオチド(例えば、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド...35ヌクレオチド...40ヌクレオチドなどを含む配列)を含み得る。代表的な捕捉オリゴヌクレオチドは、HAV単離株の5’ UTR配列(例えば、本明細書中図3A〜3F(配列番号10〜15)に示される配列)から誘導される。
【0068】
その捕捉オリゴヌクレオチドは、種々の様式で固体支持体に付着され得る。例えば、そのオリゴヌクレオチドは、その固体支持体に捕捉オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオチドまたは5’末端ヌクレオチドを付着することによって、固体支持体に付着され得る。より好ましくは、その捕捉オリゴヌクレオチドは、その固体支持体からプローブを離すように作用するリンカーによって、固体支持体に付着される。そのリンカーは、通常は、長さが少なくとも10〜50原子であり、より好ましくは、長さが少なくとも15〜30原子である。そのリンカーに必要な長さは、使用される特定の固体支持体に依存する。例えば、6原子リンカーが、高架橋ポリスチレンが固体支持体として使用される場合に、一般的に十分である。
【0069】
固体支持体に捕捉オリゴヌクレオチドを付着するために使用され得る広範な種類のリンカーが、当該分野で公知である。このリンカーは、固体支持体に付着された捕捉オリゴヌクレオチドに対する標的配列のハイブリダイゼーションを有意には妨げない、任意の化合物から形成され得る。このリンカーは、自動合成によりそのリンカー上に容易に付加され得る、ホモポリマーオリゴヌクレオチドから形成され得る。そのホモポリマー配列は、ウイルス特異的配列に対して5’側または3’側のいずれかであり得る。本発明の一局面において、その捕捉オリゴヌクレオチドは、固体支持体への付着を容易にするために、ホモポリマー鎖(例えば、ポリA、ポリT、ポリG、ポリC、ポリU、ポリdA、ポリdT、ポリdG、ポリdCまたはポリdU)に連結され得る。そのホモポリマー鎖は、長さが約10〜約40ヌクレオチドであり得、または好ましくは、長さが約12〜約25ヌクレオチドであり得、またはこれらの範囲中の任意の整数個のヌクレオチド(例えば、10ヌクレオチド...12ヌクレオチド...16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、または24ヌクレオチド)であり得る。
【0070】
代表的なホモポリマー配列としては、ポリT配列またはポリA配列が挙げられる。あるいは、官能化ポリエチレングリコールのようなポリマーが、リンカーとして使用され得る。そのようなポリマーは、標的オリゴヌクレオチドに対するプローブのハイブリダイゼーションを有意には妨げない。結合の例としては、ポリエチレングリコール結合、カルバメート結合、およびアミド結合が挙げられる。固体支持体と、リンカーと、捕捉オリゴヌクレオチドとの間の結合は、好ましくは、高温度で塩基性条件下で塩基保護基を除去する間には切断されない。
【0071】
この捕捉オリゴヌクレオチドはまた、その捕捉オリゴヌクレオチドの伸長を妨げるために、3’末端でリン酸化され得る。
【0072】
この固体支持体は、多くの形態を採り得、この形態としては、例えば、粒子形態に還元されており、この支持体を含むサンプル媒体を篩に通すと回収可能なニトロセルロース;磁場を適用した際にサンプル媒体内をニトロセルロースが移動するのを可能にする、磁気粒子などが含浸されたニトロセルロースまたは物質;濾過され得るかまたは電磁特性を示し得る、ビーズまたは粒子;水性媒体の表面に分配するポリスチレンビーズ;ならびに磁性シリカが挙げられる。捕捉オリゴヌクレオチドの固定のための固体支持体の好ましい型の例としては、制御孔ガラス、ガラスプレート、ポリスチレン、アビジンコートポリスチレンビーズ、セルロース、ナイロン、アクリルアミドゲル、および活性化デキストランが挙げられる。
【0073】
本発明の一局面は、磁気シリカまたは磁気ビーズを含む固体支持体を包含し、必要に応じて、この磁気シリカまたは磁気ビーズは、捕捉オリゴヌクレオチドが磁気支持体粒子に共有結合または結合するのを容易にする一級アミン官能基を含む。あるいは、その磁気シリカまたは磁気ビーズは、それらに固定されたホモポリマー(例えば、ポリT配列またはポリA配列)を有する。磁気シリカまたは磁気ビーズを備える固体支持体を使用することによって、単離、増幅、および検出をワンポットで行う方法が可能になる。なぜなら、この固体支持体は、磁気手段によって生物学的サンプルから分離され得るからである。
【0074】
この磁気ビーズまたは磁気粒子は、標準的技術を使用して生成され得るか、または商業的供給源から得られ得る。一般に、この粒子またはビーズは、磁気ビーズから構成され得るが、これらはまた、反応性表面を有して磁場と反応する能力を示す限り、他の磁性金属または金属酸化物(不純形態であっても、合金形態であっても、複合体形態であってもよい)であってもよい。個別にかまたは鉄と組み合わせて使用され得る他の物質としては、コバルト、ニッケル、およびケイ素が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における適用のために適切な磁気ビーズとしては、Seradyn,Indianopolis,INによって商標名Sera−MagTM磁気オリゴヌクレオチドビーズとして販売されている、ポリdT基含有磁気ビーズが挙げられる。本発明における適用のために適切な磁気シリカとしては、Novagen,Madison,WIによってMagPrepTM磁気シリカが挙げられる。
【0075】
次に、捕捉オリゴヌクレオチドと固体支持体との結合は、その捕捉オリゴヌクレオチドを含む媒体と、その固体支持体とを接触することによって、開始される。一局面において、ポリdT基含有磁気ビーズが、HAVゲノムの保存一本鎖領域から選択される配列と連続してポリdAを含む標的配列と、ハイブリダイズされる。この捕捉オリゴヌクレオチド上のポリdAと、固体支持体上のポリdTとが、ハイブリダイズし、それにより、この捕捉オリゴヌクレオチドが固体支持体に固定または結合する。別の局面において、この磁気ビーズは、2002年10月9日出願の同一人に譲渡された係属中の米国特許出願番号10/267,922において開示されるヌクレオチド配列に由来する、約10〜約75ヌクレオチド、好ましくは約10〜約25ヌクレオチドのその表面ヌクレオチド配列上に、固定されている。
【0076】
この固体支持体は、高いカオトロピック塩濃度下またはハイブリダイゼーション条件下で、生物学的サンプルと接触される。この捕捉オリゴヌクレオチドは、生物学的サンプル中に存在する標的鎖とハイブリダイズする。代表的には、標的に対する捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、約15分間以内に達成され得るが、3〜48時間かかり得る。
【0077】
別の局面において、シリカ磁気粒子が、複合体の形成を促進するように設計された条件下で、標的物質を含む媒体に曝露される。この複合体は、より好ましくは、シリカ磁気粒子と、上記媒体と、カオトロピック塩との混合物中で形成される。
【0078】
カオトロピック塩は、水性溶液中で非常に可溶性であるカオトロピックイオンの塩である。そのような塩によって提供されるカオトロピックイオンは、タンパク質水溶液または核酸水溶液中で十分に高濃度である場合には、タンパク質をアンフォールディングさせるか、核酸の二次構造を失わせるか、または二本鎖核酸の場合には融解させる。カオトロピックイオンは、液体の水中に存在する水素結合ネットワークを破壊することによって、正確にフォールディングまたは構成されたタンパク質および核酸よりも、変性タンパク質および変性核酸を熱力学的に安定にするので、これらの効果を有すると考えられる。代表的なカオトロピックイオンとしては、グアニジニウムイオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、およびトリクロロ酢酸イオンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において好ましいのは、グアニジニウムイオンである。カオトロピック塩としては、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、およびトリクロロ酢酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいのは、上記のグアニジニウム塩であり、特に好ましいのは、チオシアン酸グアニジンである。
【0079】
本方法の実施において使用するためのカオトロピックイオンの濃度は、好ましくは、約0.1Mと7Mとの間であり、より好ましくは、約0.5Mと5Mとの間である。この混合物中のカオトロピックイオンの濃度は、生物学的標的物質を混合物中のシリカ磁気粒子に接着させるに十分に高くなければならないが、標的物質を実質的に変性させたり、分解したり、または混合物から沈殿させたりする程には高くない。タンパク質、および大きな二本鎖核酸分子(例えば、ウイルス核酸)は、0.5Mと2Mとの間のカオトロピック塩濃度で安定であるが、約2Mよりも高いカオトロピック塩濃度で溶液から沈殿することが公知である。
【0080】
本発明の一局面において、上記のように形成された複合体は、上記の核酸物質のうちの少なくともいくらかが、上記シリカ磁気粒子に接着されて、複合体を形成するまでインキュベートされる。このインキュベーション工程は、少なくとも約0℃、好ましくは少なくとも約4℃、より好ましくは少なくとも約20℃の温度にて実行され、但し、そのインキュベーション温度は、約75℃以下である。従って、0℃〜75℃、好ましくは4℃〜50℃、最も好ましくは約15℃〜約35℃の範囲の温度、またはこれらの範囲内の任意の整数値の温度が、本明細書中での用途を見出す。このインキュベーション工程は、好ましくは、シリカ磁気粒子が上記核酸物質に可逆的に結合する能力を失いはじめる温度よりも低い温度で実行され、室温程度(すなわち、約25℃)で実行され得る。
【0081】
その後、固体支持体は、濾過によって、カラムに通すことによって、または磁気的手段によって、生物学的サンプルから分離される。当業者によって認識されるように、分離方法は、選択される固体支持体の型に依存する。標的は、固体支持体上に固定された捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするので、その標的鎖は、それによってサンプル中の不純物から分離される。いくつかの場合、外来の核酸、タンパク質、糖質、脂質、細胞破片、および他の不純物が、生物学的サンプル中でこれらが最初に見出されたよりもかなり低い濃度であっても、なおこの支持体に結合し得る。当業者は、いくつかの望ましくない物質が、洗浄媒体でその支持体を洗浄することによって除去され得ることを認識する。生物学的サンプルからその固体支持体を分離すると、好ましくは、サンプル中に存在する非標的核酸のうちの少なくとも約70%、より好ましくは約90%、最も好ましくは少なくとも約95%を除去する。
【0082】
本発明の方法はまた、捕捉された標的オリゴヌクレオチドを増幅して、増幅された核酸を生成する工程も包含する。標的核酸を増幅する工程は、核酸ポリメラーゼを使用して、複数コピーのその標的オリゴヌクレオチドまたはそのフラグメントを生成する。適切な増幅技術は、当該分野で周知であり、例えば、転写関連増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、レプリカーゼ媒介性増幅、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)である。
【0083】
本発明のアッセイとともに使用するためのプライマーは、好ましくは、存在が検出されるべき生物にとって独特である。従って、HAVの検出のために、そのプライマーは、HAVの非翻訳領域中の保存領域(例えば、図1において示される領域)から誘導される。
【0084】
このアッセイにおいて使用するためのプライマーおよび捕捉オリゴヌクレオチドは、標準的技術によって容易に合成される。この標準的技術は、例えば、米国特許第4,458,066号および同第4,415,732号;Beaucageら(1992)Tetrahedron 48:2223〜2311;およびApplied Biosystems User Bulletin No.13(1 April 1987)に開示されるような、ホスホロアミダイト化学を介する固相合成である。他の化学合成方法としては、例えば、Narangら、Meth.Enzymol.(1979)68:90により記載されるホスホトリエステル方法、およびBrownら、Meth.Enzymol.(1979)68:109により開示されるホスホジエステル方法が挙げられる。ポリ(A)もしくはポリ(C)または他の非相補的ヌクレオチド伸長物が、これらの同じ方法を使用して、プローブ中に組み込まれ得る。ヘキサエチレンオキシド伸長物が、当該分野で公知の方法によって、プローブに結合され得る。Cloadら(1991)J.Am.Chem.Soc.113:6324〜6326;Levensonらに対する米国特許第4,914,210号;Durandら(1990)Nucleic Acids Res.18:6353〜6359;およびHornら(1986)Tet.Lett.27:4705〜4708。代表的には、そのプライマー配列は、長さが10〜75ヌクレオチド間(例えば、15〜60ヌクレオチド、20〜40ヌクレオチドなど)であり、より代表的には、18〜40ヌクレオチド長の間であり、言及した範囲の間の任意の長さである。代表的なプローブは、10〜50ヌクレオチド長の間(例えば、15〜40ヌクレオチド長、18〜30ヌクレオチド長など)、および言及した範囲の間の任意の長さの範囲にある。
【0085】
さらに、このプローブは、検出用標識に結合され得る。標識の付加を可能にする反応性官能基を用いてオリゴヌクレオチドを誘導体化するために、いくつかの手段が公知である。例えば、いくつかのアプローチが、プローブをビオチン化して、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、または電子密度標識をアビジンを介して結合し得るようにするために利用可能である。例えば、Brokenら、Nucl.Acids.Res.(1978)5:363〜384(これは、フェリチン−アビジン−ビオチン標識の使用を開示する)およびCholletら、Nucl.Acids Res.(1985)13:1529〜1541(これは、アミノアルキルホスホルアミドリンカーアームを介してオリゴヌクレオチドの5’末端をビオチン化することを開示する)を参照のこと。いくつかの方法がまた、アミノ反応基(例えば、イソチオシアネート、N−ヒドロキシスクシンイミドなど)によって誘導体化された蛍光化合物または他の型の化合物によって容易に標識される、アミノ誘導体化オリゴヌクレオチドを合成するために、利用可能である。例えば、Connolly(1987)Nucl.Acids Res.15:3131〜3139、Gibsonら(1987)Nucl.Acids Res.15:6455〜6467およびMiyoshiらに対する米国特許第4,605,735号を参照のこと。チオール特異的標識と反応し得るスルフヒドリル誘導体化オリゴヌクレオチドを合成するための方法もまた、利用可能である。例えば、Fungらに対する米国特許第4,757,141号、Connollyら(1985)Nucl.Acids Res.13:4485〜4502およびSpoatら(1987)Nucl.Acids Res.15:4837〜4848を参照のこと。核酸フラグメントを標識するための方法論の包括的概説が、Matthewsら、Anal.Biochem.(1988)169:1〜25において提供される。
【0086】
例えば、プローブは、そのプローブの非連結末端に蛍光分子を連結することによって、蛍光標識され得る。適切な蛍光標識を選択するための指針は、Smithら、Meth.Enzymol.(1987)155:260〜301;Kargerら、Nucl.Acids Res.(1991)19:4955〜4962;Haugland(1989)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)において見出され得る。好ましい蛍光標識としては、フルオレセインおよびその誘導体(例えば、米国特許第4,318,846号およびLeeら、Cytometory(1989)10:151〜164に開示される)、ならびに6−FAM(フルオレセイン)、JOE(2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロフルオレセイン)、TAMRA(テトラメチルローダミン)、ROX(ローダミンX)、HEX−1、HEX−2、ZOE、TET−1またはNAN−2などが、挙げられる。
【0087】
さらに、プローブは、下記の技術を使用してアクリジニウムエステル(AE)で標識され得る。現在の技術によって、AE標識をそのプローブ中の任意の位置に配置することが可能である。例えば、Nelsonら(1995)「Detection of Acridinium Esters by Chemiluminescence」Nonisotopic Probing,Blotting and Sequencing,Kricka L.J.編、Academic Press,San Diego,CA;Nelsonら(1994)「Application of the Hybridization Protection Assay(HPA) to PCR」The Polymerase Chain Reaction,Mullisら編、Birkhauser、Boston,MA;Weeksら、Clin.Chem.(1983)29:1474〜1479;Berryら、Clin.Chem.(1988)34:2087〜2090を参照のこと。AE分子は、プローブ内の任意の位置に標識を配置することを可能にする非ヌクレオチドベースのリンカーアーム化学を使用して、プローブに直接結合され得る。例えば、米国特許第5,585,481号および同第5,185,439号を参照のこと。
【0088】
特定の実施形態において、内部コントロール(IC)または内部標準が、標的の捕捉および増幅についてのコントロールとして役立てるために添加される。好ましくは、このICは、標的配列とは異なり、サンプルから生物特異的なオリゴヌクレオチドを分離するために使用されるプローブ配列とハイブリダイズ可能であり、かつ増幅可能である、配列を含む。この内部コントロールの使用によって、分離プロセス、増幅プロセス、および検出系のコントロールが可能になり、そしてサンプルについてのアッセイ性能および定量をモニタリングすることが可能になる。このICは、適切な任意の点(例えば、溶解緩衝液中)に含まれ得る。一実施形態において、このICは、HAVヌクレオチド配列の一部を含むRNAと、プローブにハイブリダイズする独特な配列とを含む。従って、特定の実施形態において、このICは、5〜30塩基(例えば、6塩基...9塩基...12塩基...15塩基...20塩基など)またはこれより多くの塩基が他の塩基で置換された改変配列を含む、HAVゲノムの一部を含む。この置換塩基は、2個または3個連続する配列だけが置換されるように、標的配列の全体の長さにわたって位置し得る。HAVについての代表的ICは、図4Bに示され、これは、HAVゲノムの5’ UTRに由来する721bpを含む。図4B中の太字の大文字は、野生型配列中に存在する塩基が置換されている、塩基を示す(図4Aを参照のこと)。このアッセイは、内部標準に特異的なプローブ(ICプローブ)をさらに含み得る。
【0089】
このIC配列についての代表的なプローブは、実施例において配列番号18および配列番号19として詳説される。このICプローブは、必要に応じて、標的配列についての検出可能な標識とは異なる検出可能な標識に結合され得る。この検出可能な標識が発蛍光団である実施形態において、このICは、分光光度法によって、そして検出限界の研究によって、定量され得る。
【0090】
代表的には、標的検出を妨げないICのコピー数は、そのICを、標的の固定されたIU/コピー/PFUを用いて力価測定することによって、好ましくは下端で決定される。標準曲線が、国際的に認可されている標準のサンプルを希釈することによって、作成される。
【0091】
別の実施形態において、本明細書中に記載される通りに、ICは、当業者に公知の標準的技術に従って、サンプルから単離されたRNAと合わされる。その後、このRNAは、cDNAを提供するために逆転写酵素を使用して逆転写される。このcDNA配列は、標識プライマーを使用して、必要に応じて(例えば、PCRによって)増幅され得る。この増幅生成物は、代表的には、電気泳動によって分離され、そして組み込まれた標識の量(増幅生成物の量に比例する)が、決定される。その後、サンプル中のmRNAの量は、既知の標準物によって生成されたシグナルと比較することによって、計算される。
【0092】
上記のプライマーおよびプローブは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの技術において使用されて、生物学的サンプル中のHAV感染が検出され得る。PCRは、核酸分子または分子混合物中に含まれる望ましい標的核酸配列を増幅するための技術である。PCRにおいて、一対のプライマーが、標的核酸の相補鎖にハイブリダイズするように過剰に使用される。これらのプライマーは、標的核酸をテンプレートとして使用して、ポリメラーゼによって各々伸長される。この伸長生成物は、元の標的鎖から解離した後に、標的配列自体になる。その後、新しいプライマーが、ハイブリダイズされ、そしてポリメラーゼによって伸長され、このサイクルが反復されて、標的配列分子の数が幾何学的に増加される。サンプル中の標的核酸配列を増幅するためのPCR方法は、当該分野で周知であり、そしてそれは、例えば、Innisら編、PCR Protocols(Academic Press,NY 1990);Taylor(1991)Polymerase chain reaction:basic principles and automation、PCR:A Practical Approach、McPhersonら編、IRL Press,Oxford;Saikiら(1986)Nature 324:163;ならびに米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号および同第4,889,818号を参照のこと。
【0093】
具体的には、PCRは、増幅されるべき標的ヌクレオチド配列に隣接する比較的短いオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、これらのプライマーは、それらの3’末端が互いに向かい合い、各プライマーがもう一方に向かって延びるような、方向である。このポリヌクレオチドサンプルは、抽出され、好ましくは熱によって変性され、そしてモル過剰量で存在する第1プライマーおよび第2プライマーとハイブリダイズされる。重合は、4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP−dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)の存在下で、プライマー依存性およびテンプレート依存性のポリヌクレオチド重合剤(例えば、プライマー伸長生成物を生成可能な酵素(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのクレノーフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticusから単離された耐熱性DNAポリメラーゼ(Taq)(種々の供給源(例えば、Perkin Elmer)から入手可能である)、Themus thermophilusから単離された耐熱性DNAポリメラーゼ(United States Biochemicals)、Bacillus stereothermophilusから単離された耐熱性DNAポリメラーゼ(Bio−Rad)、またはThermococcus litoralisから単離されたDNAポリメラーゼ(「Vent」ポリメラーゼ,New England Biolabs)))を使用して、触媒される。これによって、元の鎖の新しく合成された相補鎖にその5’末端で共有結合している個々のプライマーを含む、2つの「長い生成物」が生じる。その後、この反応混合物は、例えば、温度を低下させること、変性剤を不活化すること、またはより多くのポリメラーゼを添加することによって、重合条件へと戻され、そして第2サイクルが開始される。この第2サイクルは、この2つの元の鎖、第1サイクルからの2つの長い生成物、元の鎖から複製された2つの新しい長い生成物、およびこの長い生成物から複製された2つの「短い生成物」を提供する。この短い生成物は、各端部にプライマーを伴って標的配列の配列を有する。さらなるサイクル各々において、さらに2つの長い生成物が、生成され、そして長い生成物および短い生成物の数と等しい数の短い生成物が、直前のサイクルの最後に残る。従って、標的配列を含む短い生成物の数は、各サイクルとともに対数的に増加する。好ましくは、PCRは、市販のサーマルサイクラー(例えば、Perkin Elmer)を用いて実行される。
【0094】
RNAは、そのmRNAをcDNAへと逆転写し、その後、上記のようにPCR(RT−PCR)を実施することによって、増幅され得る。あるいは、単一の酵素が、米国特許第5,322,770号に記載されるように、両方の工程のために使用され得る。mRNAはまた、cDNAへと逆転写され得、その後、Marshallら(1994)PCR Meth.App.4:80〜84によって記載されるように、非対称ギャップリガーゼ連鎖反応(RT−AGLCR)が実施され得る。
【0095】
TaqManTMアッセイ(Perkin−Elmer)として公知である蛍光発生5’ヌクレアーゼアッセイは、核酸標的についての強力かつ汎用的なPCRベースの検出系である。従って、本明細書中に記載されるHAVゲノムの領域に由来するプライマーおよびプローブは、生物学的サンプル中の感染の存在を検出するために、TaqManTM分析において使用され得る。分析は、蛍光シグナルの生成をモニタリングすることによって、サーマルサイクリングと組み合わせて実施される。このアッセイ系は、ゲル電気泳動の必要性を省き、そしてこのアッセイ系は、標的コピー数の決定を可能にする定量的データを生成する能力を有する。
【0096】
蛍光発生5’ヌクレアーゼアッセイは、例えば、AmpliTaq GoldTMDNAポリメラーゼ(これは、内因性5’ヌクレアーゼ活性を有する)を使用して、蛍光レポーター色素と消光剤との両方で標識された内部オリゴヌクレオチドプローブを消化することによって、便利に実施される(Hollandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:7276〜7280;およびLeeら、Nucl.Acids.Res.(1993)21:3761〜3766を参照のこと)。アッセイの結果は、増幅サイクルの間に蛍光プローブが消化された時に生じる蛍光の変化を測定すること、その色素標識と消光剤標識とを分離すること、そして標的核酸の増幅に比例する蛍光シグナルの増加を引き起こすことによって、検出される。
【0097】
この増幅生成物は、溶液中で、または固体支持体を使用して、検出され得る。この方法において、TaqManTMプローブが、望ましいPCR生成物内の標的配列にハイブリダイズするように消化される。TaqManTMプローブの5’末端は、蛍光レポーター色素を含む。このプローブの3’末端は、プローブ伸長を防ぐようにブロックされ、そしてこの3’末端は、5’発蛍光団の蛍光を消光する色素を含む。その後の増幅の間に、その5’蛍光標識は、5’エキソヌクレア−ゼ活性を有するポリメラーゼがその反応中に存在する場合に、切り離される。その5’発蛍光団が励起すると、検出され得る蛍光の増加をもたらす。
【0098】
従って、一局面において、本発明は、5’→3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼと、HAV標的配列にハイブリダイズ可能な1種以上のプライマーと、そのプライマーに対して3’側でHAV標的配列にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドプローブとを使用して、標的HAVヌクレオチド配列を増幅するための方法に関する。増幅の間に、そのポリメラーゼは、標的配列にハイブリダイズした場合にオリゴヌクレオチドプローブを消化し、それによって、消光剤分子からレポーター分子を分離する。その増幅が実行された場合、レポーター分子の蛍光がモニターされ、その蛍光は、核酸増幅の発生に対応する。そのレポーター分子は、好ましくは、フルオレセイン色素であり、消光剤分子は、好ましくは、ローダミン色素である。
【0099】
プライマーおよびプローブの長さは変化し得るが、プローブ配列は、それがプライマー配列よりも高い融解温度を有するように、選択される。好ましくは、そのプローブ配列は、増幅プライマー配列についての融解温度よりも約10℃高い推定融解温度を有する。従って、プライマー配列は、一般的には、プローブ配列よりも短い。代表的には、プライマー配列は、10〜75ヌクレオチド長の間の範囲であり、より代表的には、20〜45ヌクレオチド長の範囲内にある。代表的なプローブは、10〜50ヌクレオチド長の範囲にあり、より代表的には、15〜40ヌクレオチド長の範囲内にある。
【0100】
TaqManTMアッセイの詳細な説明について、そのアッセイにおいて使用するための試薬および条件は、例えば、Hollandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:7276〜7280;米国特許第5,538,848号、同第5,723,591号、および同第5,876,930号を参照のこと。
【0101】
本明細書中に記載されるHAV配列はまた、転写媒介性増幅(TMA)アッセイのための基礎として使用され得る。TMAは、生物学的サンプル中に非常に少量で存在する標的核酸配列を同定する方法を提供する。そのような配列は、直接アッセイ方法を使用して検出することが困難または不可能であり得る。具体的には、TMAは、等温性の自己触媒核酸標的増幅システムであり、標的配列の数十億個より多くのRNAコピーを提供し得る。このアッセイは、定性的に実施されて、生物学的サンプル中の標的配列の存在または非存在を正確に検出し得る。このアッセイはまた、数桁の濃度範囲にわたって標的配列の量の定量的尺度を提供し得る。TMAは、反応条件(例えば、温度、イオン強度、およびpH)を反復操作することなく、標的核酸配列の複数コピーを自己触媒合成するための方法を提供する。
【0102】
一般的に、TMAは、以下の工程:(a)核酸(RNAが挙げられる)を、HAVに感染していると疑われる目的の生物学的サンプルから単離する工程;および(b)反応混合物中に、(i)単離された核酸、(ii)第1オリゴヌクレオチドプライマーおよび第2オリゴヌクレオチドプライマー(この第1プライマーは、RNA標的配列(例えば、+鎖)の3’末端部分が存在する場合にその3’末端部分と複合体形成するに十分に相補的な複合体形成配列を有する。第2プライマーは、その相補鎖(例えば、−鎖)の標的配列の3’末端部分と複合体形成するに十分に相補的な複合体形成配列を有する。この第1オリゴヌクレオチドは、その複合体形成配列の5’側に、プロモーターを含む配列をさらに含む。)、(iii)逆転写酵素またはRNAおよびDNA依存性DNAポリメラーゼ、(iv)RNA−DNA複合体のRNA鎖を選択的に分解する酵素活性(例えば、RNAseH)、ならびに(v)上記プロモーターを認識するRNAポリメラーゼを合わせる工程、を包含する。
【0103】
その反応混合物の成分は、段階的にかまたは一度に、合わされ得る。この反応混合物は、オリゴヌクレオチド/標的配列が形成される条件下(核酸プライム条件および核酸合成条件を含む)(リボヌクレオチド三リン酸およびデオキシリボヌクレオチド三リン酸を含む)で、標的配列の複数コピーを提供するために十分な時間インキュベートされる。その反応は、反応成分(例えば、成分酵素)の安定性を維持するために適切であり、かつ増幅反応の経過の間に反応条件の改変も操作も必要としない、条件下で有利なことに生じる。従って、その反応は、実質的に等温性でありかつ実質的に一定のイオン強度およびpHを含む、条件下で生じ得る。この反応は、簡便には、第1DNA伸長反応によって生成されるRNA−DNA複合体を分離するために変性工程を必要としない。
【0104】
適切なDNAポリメラーゼとしては、逆転写酵素(例えば、鳥類骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素(例えば、Seikagaku America,Inc.から入手可能である)およびモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素(例えば、Bethesda Research Laboratoriesから入手可能である)が挙げられる。
【0105】
これらのプライマー中に組み込むために適切なプロモーターまたはプロモーター配列は、RNAポリメラーゼにより特異的に認識される核酸配列(天然に存在する配列、合成により生成される配列、または制限酵素消化の生成物のいずれか)であり、このRNAポリメラーゼは、その配列を認識し、その配列に結合し、転写プロセスを開始し、それによってRNA転写物が生成される。この配列は、必要に応じて、このRNAポリメラーゼの実際の認識部位を越えて伸長するヌクレオチド塩基をさらに含み得、このヌクレオチド塩基は、分解プロセスに対する付加された安定性もしくは感受性を、または増加した転写効率を、付与し得る。有用なプロモーターの例としては、特定のバクテリオファージポリメラーゼによって認識されるプロモーター(例えば、バクテリオファージT3、T7、もしくはSP6に由来するプロモーター)、またはE.coli由来のプロモーターが挙げられる。これらのRNAポリメラーゼは、商業的供給源(例えば、New England BiolabsおよびEpicentre)から容易に入手可能である。
【0106】
本明細書中の方法において使用するために適切な逆転写酵素のうちのいくつか(例えば、AMV逆転写酵素)は、RNAseH活性を有する。しかし、外因性RNAseH(例えば、E.coli RNAseH)を添加することは、AMV逆転写酵素を使用する場合でさえも、好ましくあり得る。RNAseHは、例えば、Bethesda Research Laboratoriesから容易に入手可能である。
【0107】
これらの方法によって生成されるRNA転写物は、上記の機構を介して標的配列のさらなるコピーを生成するためのテンプレートとして作用し得る。この系は、自己触媒性であり、反応条件(例えば、温度、pH、イオン強度など)を反復して改変する必要も変化する必要もなく、増幅が自己触媒的に生じる。
【0108】
検出は、広範な種類の方法(直接配列決定、配列特異的オリゴマーとのハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動および質量分析法を含む)を使用して、なされ得る。これらの方法は、不均質形式を使用しても、均質形式を使用してもよく、同位体標識を使用しても、非同位体標識を使用しても、標識を使用しなくてもよい。
【0109】
ある好ましい検出方法は、上記の標的配列特異的オリゴヌクレオチドプローブを使用することである。このプローブは、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(HPA)において使用され得る。この実施形態において、このプローブは、アクリジニウムエステル(AE)(これは、非常に化学発光性の分子である)で簡便に標識される。例えば、Nelsonら(1995)「Detection of Acridinium Esters by Chemiluminescence」Nonisotopic Probing,Blotting and Sequencing、Kricka L.J.編、Academic Press,San Diego,CA;Nelsonら(1994)「Application of the Hybridization Protection Assay(HPA) to PCR」The Polymerase Chain Reaction,Mullisら編、Birkhauser,Boston,MA;Weeksら、Clin.Chem.(1983)29:1474〜1479;Berryら、Clin.Chem.(1988)34:2087〜2090を参照のこと。一つのAE分子が、プローブ内の任意の位置に標識を配置することを可能にする非ヌクレオチドベースリンカーアーム化学を使用して、プローブに直接結合される。例えば、米国特許第5,585,481号および同第5,185,439号を参照のこと。化学発光は、アルカリ水素ペルオキシドとの反応によって誘発される。アルカリ水素ペルオキシドは、励起したN−メチルアクリドンを生じ、このN−メチルアクリドンは、その後、光子を放出して基底状態へと低下する。
【0110】
このAE分子が核酸プローブに共有結合された場合、加水分解は、穏やかなアルカリ条件下で迅速である。このAE標識プローブが標的核酸と正確に相補的である場合、AE加水分解の速度は、非常に低下する。従って、ハイブリダイズしたAE標識プローブおよびハイブリダイズしていないAE標識プローブは、物理的に分離する必要なく、溶液中で直接検出され得る。
【0111】
HPAは、一般的には、以下の工程からなる:(a)AE標識プローブを、約15〜約30分間、溶液中で標的核酸とハイブリダイズさせる工程。その後、穏やかなアルカリ溶液を添加し、ハイブリダイズしていないプローブに結合したAEを加水分解する。この反応は、約5〜10分間かかる。残っているハイブリッド結合したAEを、存在する標的の量の尺度として検出する。この工程は、約2〜5秒間かかる。好ましくは、差次的加水分解工程を、ハイブリダイゼーション工程と同じ温度(代表的には、50〜70℃)で行う。あるいは、第2の差次的加水分解工程を、室温で実施し得る。これによって、上昇したpH(例えば、10〜11の範囲内にある)を使用することが可能になる。このpHは、ハイブリダイズしたAE標識プローブと、ハイブリダイズしていないAE標識プローブとの間で、より大きな加水分解速度差を生じる。HPAは、例えば、米国特許第6,004,745号;同第5,948,899号および同第5,283,174号に詳細に記載される。
【0112】
TMAは、例えば、米国特許第5,399,491号に詳細に記載される。代表的なアッセイの一例において、単離された核酸サンプル(HAV標的配列を含むと疑われる)が、緩衝剤、塩、マグネシウム、ヌクレオチド三リン酸、プライマー、ジチオスレイトール、およびスペルミジンを含む、緩衝剤濃縮物と混合される。この反応物は、必要に応じて、約100℃で約2分間インキュベートされて、あらゆる二次構造が変性される。室温まで冷却した後、逆転写酵素、RNAポリメラーゼ、およびRNAseHが添加され、その混合物は、37℃で2〜4時間インキュベートされる。その後、その反応は、生成物を変性すること、プローブ溶液を添加すること、60℃で20分間インキュベートすること、ハイブリダイズしていないプローブを選択的に加水分解するために溶液を添加すること、この反応物を60℃で6分間インキュベートすること、そしてルミノメーターにおいて残っている化学発光を測定することによって、アッセイされ得る。
【0113】
容易に明らかであるように、本明細書中に記載されるアッセイの設計は、多量の変化を受け、多くの形式が、当該分野で公知である。上記の説明は、単に指針として提供されるに過ぎず、当業者は、当該分野で周知の技術を使用して、記載されているプロトコルを容易に改変し得る。
【0114】
上記のアッセイ試薬(プライマー、プローブ、結合したプローブを備える固体支持体、および他の検出試薬)は、上記のアッセイを実行するために、適切な指示書および他の必要試薬とともに、キット中で提供され得る。このキットは、通常は、別の容器中に、プライマーとプローブとの組み合わせ(固体支持体にすでに結合しているか、またはマトリックスにこの組み合わせを結合するための試薬と別個であるかのいずれか)、コントロール処方物(ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)、標識がシグナルを直接発生しない場合にそのアッセイ形式が同じシグナル発生試薬(例えば、酵素基質)を必要とする場合は、標識試薬を含む。このアッセイを実行するための指示(たとえば、文書、テープ、VCR、CD−ROMなど)が、通常は、このキット中に含まれる。このキットはまた、使用される特定のアッセイに依存して、パッケージされた他の試薬、および物質(すなわち、洗浄緩衝剤など)を含み得る。標準的アッセイ(例えば、上記のアッセイ)は、これらのキットを使用して実行され得る。
【0115】
(III.実験)
下記に、本発明を実行するための具体的な実施形態の例が存在する。これらの実施例は、例示目的のためだけに提供され、本発明の範囲をいかなる様式でも限定することは意図されない。
【0116】
使用する数字(例えば、量、温度など)に関して、正確さを保証するために努力はしたが、いくらかの実験誤差および偏差は、当然許容されるべきである。
【0117】
以下の実施例において、酵素は、商業的供給源から購入し、製造業者の指示に従って使用した。ニトロセルロースフィルターなどもまた、商業的供給源から購入した。
【0118】
RNAフラグメントおよびDNAフラグメントの単離において、記載される場合以外は、すべてのRNA操作およびDNA操作は、標準的手順に従って行った。Sambrookら(上記)を参照のこと。制限酵素、T4 DNAリガーゼ、E.coli DNAポリメラーゼI、クレノーフラグメント、および他の生物学的試薬は、商業的供給業者から購入して、製造業者の指示に従って使用し得る。二本鎖核酸フラグメントは、アガロースゲル上で分離した。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
生物学的サンプルからのHAV RNAの抽出)
HAV核酸陽性血清を、BioClinical Partners(Berkeley,CA)から購入した。2つのアプローチを使用して、サンプルから核酸を単離した。具体的には、RNAを、(a)シリカに結合することによって、および(b)標的特異的オリゴヌクレオチドにアニールすることによって、抽出した。
【0120】
((a)シリカに結合することによる核酸の単離)
RNAを、Boom,R.ら(1990)「Rapid and simple method for purification of nucleic acids」J.Clin.Microbiol.28;495〜503により記載される方法を使用して、シリカに結合することによって抽出した。高濃度のカオトロピック塩(例えば、グアニジニウムイソチオシアネート)の存在下で、核酸は、シリカに結合する。サイズ分けした小さな核酸は、酸性pH条件下、シリカにより効率的に結合する。結合した核酸を、高温にて、低塩、アルカリpH緩衝剤中で、効率的に溶出する。通常のシリカを帯磁シリカで置換すると、核酸単離の洗浄工程および溶出工程が非常に容易になる。磁気ベースを使用して、核酸が結合したシリカ粒子を捕捉するために使用し、それにより、通常のシリカ粒子を沈降するために必要な遠心分離を排除した。
【0121】
使用した溶解緩衝剤は、Organon−Teknika(Durham,NC)から得た。この溶解緩衝剤は、タンパク質を可溶化してRNaseおよびDNaseを不活化するために、グアニジニウムイソチオシアネートを含む。界面活性剤Triton X−100は、細胞構造および核タンパク質の可溶化および崩壊のプロセスをさらに容易にし、それにより、核酸を放出させる。この溶解試薬を酸性にして、核酸結合を増強した。50μlのアルカリ溶出緩衝液を使用して、結合した核酸を溶出させた。予め分注した9.0mlの溶解試薬を使用して、2.0mlのHAV IgM陽性血漿から核酸を抽出した。帯磁シリカ(Novagen,Madison,WIから得たMagPrep粒子)を使用して、核酸が結合したシリカ粒子を捕捉し、それにより、通常のシリカ粒子を沈降するために必要な遠心分離を排除した。結合した核酸を、1mM EDTAを含有する50μlの10mM Tris(pH 9.0)中に溶出した。核酸単離の後、HAVの存在を、下記のようにTaqManTMPCRを実施することによって、決定した。
【0122】
((b)標的特異的オリゴヌクレオチドにアニールすることによる核酸の単離)
帯磁シリカを使用すると、洗浄工程および溶出工程の間の迅速かつ容易な取扱いが非常に容易になるが、核酸の単離は、なお労力がかかり、かつ時間がかかる。従って、磁気ビーズを使用して、血漿または血清からの特定の核酸標的の一工程捕捉を、使用した。これを広範な種類のウイルス核酸捕捉試験に適用可能にするために、オリゴdTに結合した包括的磁気ビーズを、使用した。約14bpの長さのオリゴdTを備える血清−Mag磁気オリゴ(dT)ビーズ(Seradyn,Indianapolis,IN)を、3’末端にHAV特異的配列と連続して(下記に特定される配列の末端にて示される)ポリAテールを含む捕捉オリゴヌクレオチドと組み合わせて使用した。
【0123】
磁気ビーズを、プライマーを含まない0.4mlのTMA溶解緩衝液(GenProbe,San Diego,CA)中に懸濁し、捕捉プライマーを、個別にかまたは組み合わせて、試験した。捕捉後、ビーズを、0.3M NaClを含む10mM Hepes(pH7.5)、0.5% NP−40という洗浄緩衝液で3回洗浄した。捕捉した核酸を備えるビーズを、100μlのTaqManTM一工程RT−PCR試薬中に懸濁し、下記のようなTaqManTMPCRによる検出のために、TaqManTMRT−PCRマイクロタイタープレートに移した。いくつかのオリゴヌクレオチドの組み合わせが、TaqManTMアッセイによって検出した場合に、HAVを捕捉する際に効率的であった。
【0124】
使用した捕捉オリゴヌクレオチドは、以下の通りであった(配列の終わりに示した番号付けは、NCBI登録番号K02990に対する、HAVゲノム内の位置に対応する。捕捉配列は、特定した位置に対して逆相補的な配列である。なぜなら、HAVは、+鎖RNAウイルスであるからである):
【0125】
【化1】

【0126】
【化2】

(73〜95、+22bpポリAテール、p=リン酸化)(配列番号9)。
【0127】
(実施例2)
(TaqManTMによるHAV RNAの検出)
TaqManTM技術を、捕捉した標的RNAを増幅するために使用した。このために、増幅オリゴヌクレオチドは、HAV特異的プライマーからなった。これらのプライマーは、以下の通りであった:
5’非翻訳領域における増幅プライマーおよび検出プローブ:
【0128】
【化3】

ここで、X=6−FAM(フルオレセイン)であり、Z=リンカー+TAMRA(テトラメチルローダミン)である。
【0129】
実施例1からの核酸を希釈して、約100IU/20μlを得た。TaqManTM分析用の試薬は、Applied Biosystems,Foster City,CAから得た。最終容量50ml中のTaqManTM反応混合物は、25mlのTaqManTMOne step RT−PCR Mix、各々0.5pmolの増幅プライマー、および0.2pmolのプローブを含んだ。この反応条件は、ABI 7900 Sequence Detector中で、RT活性について48℃で30分間、酵素を活性化するために96℃で10分間、その後、95℃で30秒間と交互に60℃で30秒間を45サイクルを含んだ。PCR増幅センスプライマーVHAV1、アンチセンスプライマーVHAV2、およびプローブVHAV3を、使用した。
【0130】
721ntの内部コントロール転写物(図4B(配列番号17))を調製した。これを捕捉して増幅し得るが、これは、変化したプローブ結合配列を含む。図4Bに示される配列中の太字は、標的中の配列(図4A、配列番号16)を置換するこの内部コントロール中の配列を示す。この内部コントロールについての例示的なプローブ配列は、xCAGTGACATGCAGGTCTAGCTz(配列番号18)またはxCCCAGTGACATGCAGGTCTAGCTz(配列番号19)であり、ここで、x=TETであり、z=リンカー+TAMRAである。
【0131】
(実施例3)
(増幅効率および捕捉オリゴヌクレオチドの組み合わせの試験)
HAVの5’ UTRヌクレオチド配列を、NCBI登録番号K02990の配列に基づいて合成によって構築した。この配列をM13プラスミド中にクローニングして、一本鎖NDAを得、このDNAを精製した。
【0132】
((a)増幅効率)
クローニングして精製した上記のDNAの濃度を、分光光度法によって決定し、1反応当たり10,000〜0.5コピーに対応するDNAの希釈物を、TaqManTMアッセイにおいて増幅し、上記の方法、プライマー、およびプローブを使用して検出した。代表的には、>0.2の閾値にて<45サイクルにて認識したサンプルからのシグナルを、陽性であると見なした。表1が、結果を詳説する。
【0133】
(表1)
【0134】
【表1】

((b)捕捉オリゴヌクレオチドの組み合わせ)
捕捉/プライマーの組み合わせの効率を、25コピー/反応のssDNAを使用して試験した。配列番号4、5、6、7、8、および9の配列を含む捕捉オリゴヌクレオチドの組み合わせが、最も効率的であった。
【0135】
従って、新規なHAV配列およびこれらの配列を使用する検出アッセイを、開示してきた。上記から、本発明の具体的な実施形態が本明細書中で例示目的のために記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが、認識される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291200(P2009−291200A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178917(P2009−178917)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【分割の表示】特願2004−513454(P2004−513454)の分割
【原出願日】平成15年6月12日(2003.6.12)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】