説明

AC/DCコンバータ

【課題】ノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を受けないように、ゲート信号の位相を計算し、サイリスタをオン/オフ制御する。
【解決手段】制御部3は、運転オフ時に、ゼロクロスを検出してゼロクロス検出信号を生成し、入力電圧周期を算出して周期下限値及び周期上限値を設定する。制御部3は、運転オン時に、モデル位相ゼロクロス検出部24において、モデル位相を内部で生成し、ゼロクロス検出信号を入力し、かつ入力電圧周期が周期下限値よりも大きいときに、または、ゼロクロス検出信号を入力していないとき、かつモデル位相が周期上限値よりも大きくなったときに、モデル位相をリセットしモデル位相ゼロクロス検出信号を生成する。そして、制御部3は、モデル位相周期算出部25において、モデル位相周期の平均値を算出し、パワー素子4のサイリスタをオン/オフ制御するためのゲート信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC/DCコンバータに関し、特に、ゼロクロスを検出してゲート信号を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
AC/DCコンバータは、ブリッジ状に構成された複数の整流素子からなり、複数の整流素子のうちのサイリスタのゲートを、入力した交流電力における線間電圧の位相に合わせて制御することにより、交流電力を直流電力へエネルギー変換する機器である。この位相を得るために、AC/DCコンバータの制御部は、入力した交流電力の線間電圧から、0Vをクロスするポイント(以下、ゼロクロスという。)を検出し、そのゼロクロスの時間間隔を入力電圧周期とし、サイリスタのゲートをオンするゲート信号の位相を計算し、ゲート信号をサイリスタへ出力する。このようにして、R相のゲート信号、S相のゲート信号及びT相のゲート信号の位相が計算され、これらのゲート信号によってそれぞれのサイリスタが点弧してオン/オフ制御され、交流電力が直流電力に変換される。
【0003】
このようなAC/DCコンバータには、高調波ノイズを除去するためにローパスフィルタが設けられている。しかしながら、ローパスフィルタでは、配線が長い等の原因でインピーダンスが高くなって、低次高周波の影響を無視することができず、ゼロクロスを正確に検出することができない場合がある。そこで、ローパスフィルタの代わりにノッチフィルタを設けたAC/DCコンバータが知られている(特許文献1を参照)。このAC/DCコンバータによれば、ノッチフィルタによって、特定次数の高調波が除去された基本波のみの入力交流電圧に基づいて、ゼロクロスを検出することができる。したがって、低次高周波の影響を受けることなく、ゲート信号の位相を正確に計算することができ、適切な位相のゲート信号をサイリスタへ出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−32483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ローパスフィルタが設けられたAC/DCコンバータ、及び、特許文献1のノッチフィルタが設けられたAC/DCコンバータであっても、ノイズ、瞬時停電等の外的要因により外乱が発生し、入力交流電圧が影響を受けた場合には、これらのフィルタでは外乱を除去することができない。このため、AC/DCコンバータの制御部は、ゼロクロスを誤って検出し、不正確な入力電圧周期を計算してしまう。この結果、ゲート信号の位相を正しく計算することができず、意図と反した誤った位相でサイリスタをオン/オフ制御してしまうという問題があった。これは、制御部が、ゼロクロスを誤って検出したか否かを判定しておらず、入力側の線間電圧とは関係なく、外乱によって誤検出したゼロクロスの時点を基準にゲート信号の位相が計算されてしまうからである。
【0006】
このような外乱がプリチャージ動作時に発生すると、ヒューズが溶断し、整流素子が破損する可能性がある。また、このような外乱が定常動作時(フルファイア動作時:高負荷時)に発生すると、AC/DCコンバータの出力バス電圧が低くなり、瞬時停電を誤って検出してしまい、後段にインバータが設けられている場合はそのインバータの運転が停止する可能性がある。ここで、プリチャージ動作とは、AC/DCコンバータの出力バス電圧を0Vの値から所定の電圧値まで引き上げるときの動作をいう。定常動作(フルファイア動作)とは、プリチャージ動作後の動作、すなわち、出力バス電圧が所定の電圧値まで上がった後の動作をいう。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を直接受けることのないように、ゲート信号の位相を計算し、サイリスタをオン/オフ制御可能なAC/DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によるAC/DCコンバータは、AC電源の電圧から0Vをクロスするポイントのゼロクロスを検出し、前記ゼロクロスを検出したタイミングを示すゼロクロス検出信号から前記ゼロクロス検出信号の周期を算出し、前記周期に基づいてゲート信号を生成し、前記ゲート信号によりサイリスタをオン/オフ制御し、前記AC電源の交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータにおいて、AC電源の相電圧を入力し、前記相電圧を線間電圧に変換する相電圧/線間電圧変換部と、前記相電圧/線間電圧変換部により変換された線間電圧に基づいて、ゼロクロスを検出し、ゼロクロス検出信号を生成するゼロクロス検出部と、前記ゼロクロス検出部により生成されたゼロクロス検出信号に基づいて、前記入力した相電圧の周期を示す入力電圧周期を算出する入力電圧周期算出部と、前記入力電圧周期算出部により算出された入力電圧周期に基づいて、周期上限値及び周期下限値を設定する周期上下限値設定部と、前記ゼロクロス検出部により生成されたゼロクロス検出信号、前記入力電圧周期算出部により算出された入力電圧周期、前記周期上下限値設定部により設定された周期上限値及び周期下限値に基づいて、0の値からインクリメントするモデル位相を生成し、前記モデル位相が前記周期上限値と周期下限値との間の所定値でリセットされて0の値になったときに、モデル位相ゼロクロス検出信号を生成するモデル位相ゼロクロス検出部と、前記モデル位相ゼロクロス検出部により生成されたモデル位相ゼロクロス検出信号に基づいて、前記モデル位相の周期を示すモデル位相周期を算出するモデル位相周期算出部と、前記モデル位相周期算出部により算出されたモデル位相周期に基づいて、ゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるAC/DCコンバータは、前記モデル位相ゼロクロス検出部が、前記入力電圧周期算出部により算出された入力電圧周期が周期下限値よりも大きいときに前記ゼロクロス検出部からゼロクロス検出信号を入力した場合、または、前記ゼロクロス検出信号を入力していない状態で前記モデル位相が周期上限値よりも大きくなった場合、前記モデル位相を0の値にリセットする、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明によるAC/DCコンバータは、前記周期上下限値設定部が、当該AC/DCコンバータが交流電力を直流電力に変換する処理を行っていない運転オフ時に算出された入力電圧周期の平均値を算出し、前記平均値に基づいて周期上限値及び周期下限値を設定し、前記モデル位相周期算出部が、前記モデル位相ゼロクロス検出部により生成されたモデル位相ゼロクロス検出信号に基づいて、前記モデル位相の周期を示すモデル位相周期を算出し、前記モデル位相周期の平均値を算出し、前記ゲート信号生成部が、前記モデル位相周期算出部により算出されたモデル位相周期の平均値に基づいてゲート信号を生成する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明によるAC/DCコンバータは、前記ゼロクロス検出部、入力電圧周期算出部、周期上下限値設定部、モデル位相ゼロクロス検出部、モデル位相周期算出部及びゲート信号生成部が、前記AC電源のR相、S相及びT相用に設けられ、前記ゲート信号生成部により生成されたそれぞれのゲート信号にて、R相、S相及びT相のサイリスタをそれぞれオン/オフ制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、線間電圧における入力電圧周期の周期下限値及び周期上限値を設定し、周期下限値と周期上限値との間の時間間隔を有するモデル位相ゼロクロス検出信号を生成し、モデル位相ゼロクロス検出信号の時間間隔であるモデル位相周期を算出し、モデル位相周期に基づいて、サイリスタをオン/オフ制御するゲート信号を生成するようにした。これにより、モデル位相ゼロクロス検出信号及びモデル位相周期は、ノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を直接受けることがない。したがって、このような外乱の影響を直接受けることのないように、ゲート信号の位相を計算することができ、サイリスタをオン/オフ制御することができる。この結果、安定したAC/DCコンバータの運転を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるAC/DCコンバータが用いられる電源装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態によるAC/DCコンバータに備えた制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】相電圧と線間電圧との関係を説明する図である。
【図4】ゲート信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】ゼロクロス検出部の構成を示すブロック図である。
【図6】入力電圧周期算出部の構成を示すブロック図である。
【図7】周期上下限値設定部の構成を示すブロック図である。
【図8】モデル位相ゼロクロス検出部の構成を示すブロック図である。
【図9】モデル位相周期算出部の構成を示すブロック図である。
【図10】ゲート信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図11】モデル位相ゼロクロス検出部の処理を説明するフローチャートである。
【図12】モデル位相ゼロクロス検出部の動作を説明するタイムチャートである。
【図13】ゲート信号生成部の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
本発明によるAC/DCコンバータの特徴は、入力した交流電力の線間電圧からゼロクロスを検出して入力電圧周期を算出することにより、ゲート信号の位相を計算するのではなく、実際に検出したゼロクロスから入力電圧周期の上下限値を算出し、実際に検出したゼロクロスを用いて、この上下限値内に収まるようにモデル位相ゼロクロスを検出し、モデル位相周期を算出することにより、ゲート信号の位相を計算することにある。これにより、AC/DCコンバータがノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を受けて、誤ったタイミングでゼロクロスが検出され入力電圧周期が大きく変動したとしても、モデル位相ゼロクロスは、所定の上下限値内に収まって大きく変動することがない。したがって、外乱の影響を直接受けることのないゲート信号の位相を計算することができ、サイリスタをオン/オフ制御することができる。
【0015】
〔電源装置〕
図1は、本発明の実施形態によるAC/DCコンバータが用いられる電源装置の全体構成を示すブロック図である。この電源装置は、リアクタ2、AC/DCコンバータ5及びインバータ6を備えて構成され、AC電源1から入力した商用交流電力を一旦直流電力に変換し、直流電力を所定周波数の交流電力に変換し、交流電力を駆動電力としてモータ7へ供給する。
【0016】
リアクタ2は、電源装置のエネルギー制御用として、AC電源1とAC/DCコンバータ5との間においてRST各相の配線に直列接続される。AC/DCコンバータ5は、制御部3及びパワー素子4を備えている。制御部3は、リアクタ2の出力側の相電圧VR,VSを入力し、ゼロクロスを検出して入力電圧周期を算出し、ゲート信号の位相を計算してGR信号、GS信号及びGT信号の各ゲート信号を生成し、パワー素子4に出力する。制御部3の詳細については後述する。パワー素子4は、ブリッジ状に構成された6個の整流素子からなり、出力側であるP側のDCバスに接続された3個の整流素子がサイリスタである。これらの3個のサイリスタ(R相のサイリスタ、S相のサイリスタ、T相のサイリスタ)のゲートには、制御部3からGR信号、GS信号及びGT信号の各ゲート信号が入力され、オン/オフ制御によって、直流電力がパワー素子4から出力される。
【0017】
ここで、相電圧VRはR相の電圧であり、相電圧VSはS相の電圧である。また、GR信号は、R相のサイリスタのゲートをオン/オフするためのゲート信号であり、GS信号は、S相のサイリスタのゲートをオン/オフするためのゲート信号であり、GT信号は、T相のサイリスタのゲートをオン/オフするためのゲート信号である。また、後述する相電圧VTはT相の電圧であり、線間電圧Vrs,Vsrは相電圧VRと相電圧VSとの間の電圧であり、線間電圧Vrt,Vtrは相電圧VRと相電圧VTとの間の電圧であり、線間電圧Vst,Vtsは相電圧VSと相電圧VTとの間の電圧である。
【0018】
インバータ6は、AC/DCコンバータ5から直流電力を入力し、所定周波数の交流電力に変換し、駆動電力としてモータ7へ供給する。ここで、インバータ6は、相対向する2対の整流素子、例えばIGBTの対が、そのゲートに入力される制御信号によりコレクタ−エミッタ間の導通/遮断が制御され、整流素子のオン/オフ動作を繰り返すことにより、入力した直流電力を、矩形波交流波形の電圧を有する交流電力に変換する。
【0019】
〔AC/DCコンバータの制御部〕
次に、本発明の実施形態によるAC/DCコンバータ5について詳細に説明する。図2は、図1に示したAC/DCコンバータ5に備えた制御部3の構成を示すブロック図である。この制御部3は、A/D変換部11、フィルタ12、相電圧/線間電圧変換部13、ゲート信号処理部14−1,14−2,14−3を備えており、AC電源1からリアクタ2を介して相電圧VR,VSを入力し、パワー素子4のサイリスタをオン/オフさせるためのゲート信号であるGR信号、GS信号及びGT信号を生成し、パワー素子4に出力する。
【0020】
A/D変換部11は、相電圧VR,VSを入力し、アナログ信号の相電圧VR,VSをデジタル信号に変換し、デジタル信号の相電圧VR,VSをフィルタ12に出力する。フィルタ12は、A/D変換部11からデジタル信号の相電圧VR,VSを入力し、高周波ノイズを除去する。
【0021】
相電圧/線間電圧変換部13は、フィルタ12から高周波が除去された相電圧VR,VSを入力し、相電圧VR,VSを線間電圧Vrs,Vrt,Vsr,Vst,Vts,Vtrに変換し、線間電圧Vrs,Vrtをゲート信号処理部14−1に出力し、線間電圧Vsr,Vstをゲート信号処理部14−2に出力し、線間電圧Vts,Vtrをゲート信号処理部14−3に出力する。具体的には、相電圧/線間電圧変換部13は、以下の式により変換を行う。
Vrs=VR−VS、Vrt=VR−VT、Vsr=VS−VR、Vst=VS−VT、Vts=VT−VS、Vtr=VT−VR
【0022】
図3は、相電圧VR,VS,VTと線間電圧Vrs,Vrt,Vsr,Vst,Vts,Vtrとの関係を説明する図である。図3に示すように、相電圧VR,VS,VTは3相電圧であるから、位相がそれぞれ120度ずれている。また、線間電圧Vrs,Vsr、線間電圧Vrt,Vtr、線間電圧Vst,Vtsは位相がそれぞれ180度ずれており、線間電圧Vrs,Vrt,Vst,Vsr,Vtr,Vtsは、この順番に位相がそれぞれ60度ずれている。
【0023】
図2に戻って、ゲート信号処理部14−1は、相電圧/線間電圧変換部13から線間電圧Vrs,Vrtを入力し、AC/DCコンバータ5が交流電力を直流電力に変換する処理を行っていない運転オフ時に、線間電圧Vrs,Vrtに基づいて、R相における電圧のゼロクロス(R相のゼロクロス)を検出し、R相の入力電圧周期を算出し、入力電圧周期の上下限値を算出する。そして、AC/DCコンバータ5が交流電力を直流電力に変換する処理を行っている運転オン時に、線間電圧Vrs,Vrtに基づいてR相のゼロクロスを検出し、検出したR相のゼロクロスを用いて、算出した上下限値内に収まるようにモデル位相ゼロクロスを検出し、モデル位相周期を算出し、ゲート信号であるGR信号を生成してパワー素子4に出力する。ゲート信号処理部14−1の詳細については後述する。
【0024】
ゲート信号処理部14−2は、相電圧/線間電圧変換部13から線間電圧Vsr,Vstを入力し、ゲート信号処理部14−1と同様の処理を行い、ゲート信号であるGS信号を生成してパワー素子4に出力する。ゲート信号処理部14−3は、相電圧/線間電圧変換部13から線間電圧Vts,Vtrを入力し、ゲート信号処理部14−1,14−2と同様の処理を行い、ゲート信号であるGT信号を生成してパワー素子4に出力する。
【0025】
〔ゲート信号処理部〕
次に、図2に示した制御部3のゲート信号処理部14−1,14−2,14−3について詳細に説明する。図4は、ゲート信号処理部14−1の構成を示すブロック図である。ゲート信号処理部14−2,14−3の構成も、図4に示すゲート信号処理部14−1と同様である。このゲート信号処理部14−1は、ゼロクロス検出部21、入力電圧周期算出部22、周期上下限値設定部23、モデル位相ゼロクロス検出部24、モデル位相周期算出部25及びゲート信号生成部26を備えている。
【0026】
(ゼロクロス検出部)
ゼロクロス検出部21は、相電圧/線間電圧変換部13から線間電圧Vrs,Vrtを入力し、線間電圧Vrs,Vrtに基づいて、R相のゼロクロスを検出し、検出したタイミングでゼロクロス検出信号を入力電圧周期算出部22及びモデル位相ゼロクロス検出部24に出力する。
【0027】
図5は、ゼロクロス検出部21の構成を示すブロック図である。このゼロクロス検出部21は、選択回路31及び検出回路32を備えている。選択回路31は、相電圧/線間電圧変換部13から線間電圧Vrs,Vrtを入力し、R相からS相へ電流が流れた場合を正の電圧信号とする線間電圧Vrsと、R相からT相へ電流が流れた場合を正の電圧信号とする線間電圧Vrtとを比較し、大きい線間電圧を選択して検出回路32に出力する。これにより、選択回路31により選択される線間電圧は、相順に左右されることのない、R相のゼロクロスを検出するための電圧となる。
【0028】
検出回路32は、選択回路31から線間電圧Vrs,Vrtのうちの大きい方の線間電圧を入力し、その線間電圧がマイナスの値から0以上の値に移行するアップショットを検出し、検出したタイミングでエッジ状のゼロクロス検出信号を入力電圧周期算出部22及びモデル位相ゼロクロス検出部24に出力する。このアップショットがR相のゼロクロスである。
【0029】
(入力電圧周期算出部)
入力電圧周期算出部22は、ゼロクロス検出部21から、ゼロクロスを検出したタイミングでゼロクロス検出信号を入力し、1スキャンの実行周期毎に所定値が加算されるカウンタ値に基づいて、入力したゼロクロス検出信号間の時間差を算出し、その時間差をR相の入力電圧周期として周期上下限値設定部23及びモデル位相ゼロクロス検出部24に出力する。この入力電圧周期は、AC電源1におけるR相の周期であり、ゼロクロス検出信号を入力する毎に更新される。
【0030】
図6は、入力電圧周期算出部22の構成を示すブロック図である。この入力電圧周期算出部22は、カウンタ41、転送回路42−1,42−2及び差分回路43を備えている。カウンタ41は、入力電圧周期算出部22における1スキャンの実行周期である50μ秒毎にカウント値に1を加算し、加算結果のカウント値を転送回路42−1及び差分回路43に出力する。転送回路42−1は、カウンタ41からカウント値を入力し、ゼロクロス検出部21からゼロクロス検出信号を入力し、ゼロクロス検出信号を入力したタイミングで、そのときに入力していたカウント値を入力電圧周期として差分回路43に出力する。この入力電圧周期は、前回スキャンにて算出した周期であり、今回スキャンの入力電圧周期を算出するために用いられる。
【0031】
差分回路43は、カウンタ41からカウント値を入力し、転送回路42−1から前回スキャンにて算出した入力電圧周期を入力し、カウント値から前回スキャンにて算出した入力電圧周期を減算し、減算結果(前回スキャンにて入力したゼロクロス検出信号のタイミング時点からの経過時間)を転送回路42−2に出力する。転送回路42−2は、差分回路43から減算結果である経過時間を入力し、ゼロクロス検出部21からゼロクロス検出信号を入力し、ゼロクロス検出信号を入力したタイミングで、そのときに入力していた経過時間を今回スキャンの入力電圧周期として周期上下限値設定部23に出力する。このようにして、AC電源1におけるR相の周期が入力電圧周期として算出される。
【0032】
(周期上下限値設定部)
周期上下限値設定部23は、AC/DCコンバータ5の運転オフ時において、入力電圧周期算出部22から入力電圧周期を入力し、入力した複数の入力電圧周期の平均値を算出して所定の係数を乗算し、周期下限値L_LMT及び周期上限値P_LMTを設定し、モデル位相ゼロクロス検出部24に出力する。周期下限値L_LMT及び周期上限値P_LMTは、モデル位相ゼロクロス検出部24において、モデル位相ゼロクロスを検出するための条件として用いられる。また、周期下限値L_LMT及び周期上限値P_LMTは、AC/DCコンバータ5が運転していない運転オフ時に設定され、運転オン時には設定されない。運転オン時は、相電圧VR,VSがノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を受ける可能性があるのに対し、運転オフ時は、このような影響を受けていない相電圧VR,VSが制御部3に入力され、正確なタイミングのゼロクロスが検出され、正確な入力電圧周期によって周期下限値L_LMT及び周期上限値P_LMTが設定されるからである。これにより、ノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を受けていない周期下限値L_LMT及び周期上限値P_LMTを設定することができる。
【0033】
図7は、周期上下限値設定部23の構成を示すブロック図である。この周期上下限値設定部23は、平均演算回路51及び乗算回路52,53を備えている。平均演算回路51は、入力電圧周期算出部22から入力電圧周期を入力し、入力電圧周期をシフトレジスタに記憶し、シフトレジスタに記憶した最新のN個の入力電圧周期を加算してNで除算し、入力電圧周期平均値を求め、乗算回路52,53に出力する。
【0034】
乗算回路52は、平均演算回路51から入力電圧周期平均値を入力し、その値の90%を算出するために入力電圧周期平均値に0.9を乗算し、周期下限値L_LMTをモデル位相ゼロクロス検出部24に出力する。乗算回路53は、平均演算回路51から入力電圧周期平均値を入力し、その値の110%を算出するために入力電圧周期平均値に1.1を乗算し、周期上限値P_LMTをモデル位相ゼロクロス検出部24に出力する。
【0035】
(モデル位相ゼロクロス検出部)
モデル位相ゼロクロス検出部24は、ゼロクロス検出部21からゼロクロス検出信号を、入力電圧周期算出部22から入力電圧周期を、周期上下限値設定部23から周期下限値L_LMT及び周期上限値P_LMTをそれぞれ入力し、1スキャンの実行周期毎に所定値を加算するカウンタ値(モデル位相)を生成し、所定の条件にてカウンタ値をリセットしてR相のモデル位相ゼロクロスを検出し、検出したモデル位相ゼロクロスのタイミングでモデル位相ゼロクロス検出信号をモデル位相周期算出部25及びゲート信号生成部26に出力する。ここで、モデル位相ゼロクロス検出部24は、入力電圧周期が周期下限値L_LMT以下のときにゼロクロス検出信号を入力しても、モデル位相をリセットしない。また、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きくかつ周期上限値P_LMTよりも小さいときにゼロクロス検出信号を入力すると、モデル位相をリセットする。また、入力電圧周期が周期上限値P_LMTになったとき(モデル位相が周期上限値P_LMTになったとき)、モデル位相をリセットする。
【0036】
図8は、モデル位相ゼロクロス検出部24の構成を示すブロック図である。このモデル位相ゼロクロス検出部24は、加算回路61、選択回路62、比較回路64−1,64−2,68、AND回路65、OR回路66及び反転回路67を備えている。加算回路61は、選択回路62から前回スキャンのモデル位相を入力し、モデル位相に1を加算し、加算結果のモデル位相を選択回路62に出力する。
【0037】
選択回路62は、加算回路61からモデル位相を入力し、AND回路65及び比較回路64−2からリセット信号を入力し、反転回路67から制御信号を入力する。選択回路62は、両リセット信号を入力しておらず、制御信号を入力しているときに、入力したモデル位相をそのまま比較回路68に出力すると共に、前回スキャンのモデル位相として加算回路61及び比較回路64−2に出力する。ここで、制御信号は、両リセット信号が0のときに、1の信号として入力される。詳細については後述する。また、選択回路62は、いずれかのリセット信号を入力したタイミングで、モデル位相をリセットし、0の値のモデル位相を比較回路68、加算回路61及び比較回路64−2に出力する。
【0038】
比較回路64−1は、入力電圧周期算出部22から入力電圧周期を入力し、周期上下限値設定部23から周期下限値L_LMTを入力し、入力電圧周期と周期下限値L_LMTとを比較し、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きい場合、制御信号をAND回路65に出力する。AND回路65は、ゼロクロス検出部21からゼロクロス検出信号を入力し、比較回路64−1から1の制御信号を入力し、AND演算を行い、演算結果が1のときにリセット信号を選択回路62に出力する。これにより、ゼロクロス検出信号は、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きい場合に、リセット信号として選択回路62に出力され、選択回路62においてモデル位相がリセットされる。
【0039】
比較回路64−2は、周期上下限値設定部23から周期上限値P_LMTを入力し、選択回路62から前回スキャンのモデル位相を入力する。そして、比較回路64−2は、1カウントあたりの時間(加算回路61において1が加算される1スキャンあたりの時間)をモデル位相に乗算して、時間情報のモデル位相に変換し、時間情報のモデル位相と周期上限値P_LMTとを比較し、モデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きい場合、リセット信号を選択回路62及びOR回路66に出力する。これにより、リセット信号は、モデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きくなった場合、すなわち、モデル位相が周期上限値P_LMTを超えてもゼロクロス検出信号が検出されない場合に、ゼロクロス検出信号が検出されたものとみなして選択回路62に出力され、選択回路62においてモデル位相がリセットされる。
【0040】
OR回路66は、AND回路65からリセット信号を入力し、比較回路64−2からリセット信号を入力し、OR演算を行い、演算結果が1のときに制御信号を反転回路67に出力する。反転回路67は、OR回路66から制御信号を入力し、制御信号を反転して選択回路62に出力する。これにより、反転回路67からの1の制御信号は、AND回路65からのリセット信号及び比較回路64−2からのリセット信号がいずれもないときに、選択回路62に出力され、選択回路62において、入力したモデル位相がそのまま出力される。
【0041】
比較回路68は、選択回路62からモデル位相を入力し、モデル位相と0とを比較し、モデル位相が0のときに、エッジ状の信号をR相のモデル位相ゼロクロス検出信号としてモデル位相周期算出部25及びゲート信号生成部26に出力する。
【0042】
図11は、モデル位相ゼロクロス検出部24の処理を説明するフローチャートである。モデル位相ゼロクロス検出部24は、ゼロクロス検出信号を入力した場合(ステップS1101:Y)、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きいときに(ステップS1102:Y)、モデル位相をリセットし(ステップS1103)、モデル位相ゼロクロス検出信号を出力する(ステップS1104)。
【0043】
また、モデル位相ゼロクロス検出部24は、ゼロクロス検出信号を入力した場合(ステップS1101:Y)、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きくないときに(ステップS1102:N)、次のゼロクロス検出信号の入力を待ち、モデル位相が周期上限値P_LMTを超えるのを待つ。
【0044】
また、モデル位相ゼロクロス検出部24は、ゼロクロス検出信号を入力していない場合(ステップS1101:N)、モデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きくなったときに(ステップS1105:Y)、モデル位相をリセットし(ステップS1103)、モデル位相ゼロクロス検出信号を出力する(ステップS1104)。
【0045】
また、モデル位相ゼロクロス検出部24は、ゼロクロス検出信号を入力していない場合(ステップS1101:N)、モデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きくないときに(ステップS1105:N)、ゼロクロス検出信号の入力を待ち、モデル位相が周期上限値P_LMTを超えるのを待つ。
【0046】
図12は、モデル位相ゼロクロス検出部24の動作を説明するタイムチャートである。図12のa,b,f,gに示すように、ゼロクロス検出信号の入力タイミングにおいて、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きい場合に、モデル位相がリセットされ、モデル位相ゼロクロス検出信号が出力される(ステップS1101:Y,ステップS1102:Y,ステップS1103,ステップS1104)。また、c,dに示すように、ゼロクロス検出信号の入力タイミングにおいて、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きくない場合に、ゼロクロス検出信号を無視し、モデル位相をリセットしない(ステップS1101:Y,ステップS1102:N)。また、eに示すように、モデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きくなった場合、すなわち、モデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きくなってもゼロクロス検出信号が検出されない場合に、モデル位相がリセットされ、モデル位相ゼロクロス検出信号が出力される(ステップS1101:N,ステップS1105:Y,ステップS1103,ステップS1104)。
【0047】
図12によれば、AC電源1からの入力電圧に基づいて生成したゼロクロス検出信号のタイミングと、モデル位相に基づいて生成したモデル位相ゼロクロス検出信号のタイミングとを比較すると、c,dの時点において、ゼロクロス検出信号は、ノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を受けて誤って検出されてしまう。これに対し、モデル位相ゼロクロス検出信号は、外乱の影響を受けることなく、誤って検出されることがない。
【0048】
また、図12によれば、モデル位相ゼロクロス検出信号のタイミングは、周期下限値L_LMTと周期上限値P_LMTとの間の時間間隔でばらつくことになり、Δt2<Δt<Δt1となる。しかし、後述するように、モデル位相周期算出部25はモデル位相周期の平均値を算出するから、モデル位相ゼロクロス検出信号のタイミングのばらつきは、モデル位相周期算出部25の処理において吸収されることになる。尚、Δtは、モデル位相ゼロクロス検出信号のタイミング間の時間であり、各区間において厳密には異なる値である。
【0049】
(モデル位相周期算出部)
図4に戻って、モデル位相周期算出部25は、モデル位相ゼロクロス検出部24から、モデル位相ゼロクロスを検出したタイミングでモデル位相ゼロクロス検出信号を入力し、1スキャンの実行周期毎に所定値を加算するカウンタ値に基づいて、入力したモデル位相ゼロクロス検出信号間の時間差を算出し、その時間差をR相のモデル位相周期に設定し、複数のモデル位相周期の平均値を算出し、モデル位相周期平均値をゲート信号生成部26に出力する。このモデル位相周期平均値は、モデル位相ゼロクロス検出信号を入力する毎に更新される。
【0050】
図9は、モデル位相周期算出部25の構成を示すブロック図である。このモデル位相周期算出部25は、カウンタ71、転送回路72−1,72−2、差分回路73及び平均演算回路74を備えている。カウンタ71は、モデル位相周期算出部25における1スキャンの実行周期である50μ秒毎にカウント値に1を加算し、加算結果のカウント値を転送回路72−1及び差分回路73に出力する。転送回路72−1は、カウンタ71からカウント値を入力し、モデル位相ゼロクロス検出部24からモデル位相ゼロクロス検出信号を入力し、モデル位相ゼロクロス検出信号を入力したタイミングで、そのときに入力していたカウント値をモデル位相周期として差分回路73に出力する。このモデル位相周期は、前回スキャンにて算出した周期であり、今回スキャンのモデル位相周期を算出するために用いられる。
【0051】
差分回路73は、カウンタ71からカウント値を入力し、転送回路72−1から前回スキャンにて算出したモデル位相周期を入力し、カウント値から前回スキャンにて算出したモデル位相周期を減算し、減算結果(前回スキャンにて入力したモデル位相ゼロクロス検出信号のタイミング時点からの経過時間)を転送回路72−2に出力する。転送回路72−2は、差分回路73から減算結果である経過時間を入力し、モデル位相ゼロクロス検出部24からモデル位相ゼロクロス検出信号を入力し、モデル位相ゼロクロス検出信号を入力したタイミングで、そのときに入力していた経過時間を今回スキャンのモデル位相周期として平均演算回路74に出力する。平均演算回路74は、転送回路72−2からモデル位相周期を入力し、モデル位相周期をシフトレジスタに記憶し、シフトレジスタに記憶した最新のN個のモデル位相周期を加算してNで除算し、モデル位相周期平均値を求め、ゲート信号生成部26に出力する。
【0052】
このように、AC電源1におけるR相の周期は、モデル位相周期平均値として算出され、R相のモデル位相周期平均値は、AC電源1の実際の電圧に基づいて算出された入力電圧周期に代えて、パワー素子4におけるR相のサイリスタをオン/オフ制御するためのゲート信号を生成するために用いられる。また、モデル位相周期算出部25は、モデル位相周期の平均値を算出するから、モデル位相ゼロクロス検出信号のタイミングのばらつきを吸収することができる。
【0053】
(ゲート信号生成部)
ゲート信号生成部26は、モデル位相ゼロクロス検出部24からモデル位相ゼロクロス検出信号を入力すると共に、モデル位相周期算出部25からモデル位相周期平均値を入力し、ゲート信号であるGR信号を生成し、パワー素子4に出力する。
【0054】
図10は、ゲート信号生成部26の構成を示すブロック図である。図13は、ゲート信号生成部26の動作を説明するタイムチャートである。このゲート信号生成部26は、位相60度計算回路81、位相180度計算回路82、位相135度計算回路83、位相240度計算回路84、プリチャージ変化計算回路85及びGR信号生成回路86を備えている。
【0055】
位相60度計算回路81は、モデル位相周期算出部25からモデル位相周期平均値を入力し、0からモデル位相周期平均値までの範囲を0度から360度までの範囲に対応させ、60度の位相に対応したモデル位相周期平均値の時間を60度時間として計算し、GR信号生成回路86に出力する。位相180度計算回路82は、180度の位相に対応したモデル位相周期平均値の時間を180度時間として計算し、GR信号生成回路86に出力する。位相135度計算回路83は、135度の位相に対応したモデル位相周期平均値の時間を135度時間として計算し、プリチャージ変化計算回路85及びGR信号生成回路86に出力する。位相240度計算回路84は、240度の位相に対応したモデル位相周期平均値の時間を240度時間として計算し、プリチャージ変化計算回路85及びGR信号生成回路86に出力する。60度時間、180度時間、135度時間及び240度時間は、図13に示すように、モデル位相が0にリセットされるモデル位相ゼロクロス検出信号がオンしたタイミングからそれぞれの位相までの間の時間である。
【0056】
プリチャージ変化計算回路85は、位相135度計算回路83から135度時間を入力し、位相240度計算回路84から240度時間を入力し、予め設定されたプリチャージ設定時間(プリチャージ動作の開始から完了までの間の時間)を用いて、1サイクルあたりのプリチャージ変化量(1サイクルあたりのプリチャージ時間変化量)を計算し、GR信号生成回路86に出力する。具体的には、AC電源1を50Hzの電源とし、予め設定されたプリチャージ設定時間をtとすると、以下の式により、1サイクルあたりのプリチャージ変化量Sを計算する。
S=(240度時間−135度時間)/(50×t)
【0057】
GR信号生成回路86は、ゲート信号であるGR信号を生成するためのコンペアマッチタイマを備え、モデル位相ゼロクロス検出部24からモデル位相ゼロクロス検出信号を、位相60度計算回路81から60度時間を、位相180度計算回路82から180度時間を、位相135度計算回路83から135度時間を、位相240度計算回路84から240度時間を、プリチャージ変化計算回路85からプリチャージ変化量をそれぞれ入力し、GR信号を生成するタイミングを示すコンペアマッチA値及びコンペアマッチB値を設定する。そして、GR信号生成回路86は、モデル位相ゼロクロス検出信号を入力したタイミングで、コンペアマッチタイマをリセットして0からカウントを開始し、コンペアマッチタイマのタイマ値とコンペアマッチA値及びコンペアマッチB値とを比較し、タイマ値がコンペアマッチA値になったときにオンし、タイマ値がコンペアマッチB値になったときにオフするGR信号を生成し、パワー素子4におけるR相のサイリスタへ出力する。
【0058】
ここで、GR信号生成回路86は、図13に示すように、AC/DCコンバータ5がプリチャージ動作する時に、240度時間をコンペアマッチA値に設定し、最初のサイクルにおいて、コンペアマッチA値からプリチャージ変化量を減算した結果をコンペアマッチB値に設定する。そして、プリチャージ動作の開始からのサイクル数をCとすると、GR信号生成回路86は、第Cサイクルにおいて、以下の式の結果をコンペアマッチB値に設定する。
B=240度時間−(プリチャージ変化量×C)
このようにして、GR信号生成回路86は、図13に示すように、サイクルが進む毎に、プリチャージ変化量の時間分増加するコンペアマッチB値によるGR信号を生成して出力する。そして、GR信号生成回路86は、プリチャージ動作が開始して、予め設定されたプリチャージ設定時間になると、前記式に従って135度時間をコンペアマッチB値に設定し、240度時間と135度時間との間でオン状態となるGR信号を生成し、出力する。これにより、プリチャージ動作が終了し、定常動作(フルファイア動作)に入る。
【0059】
GR信号生成回路86は、図13に示すように、AC/DCコンバータ5のプリチャージ動作が終了して定常動作に入ると、180度時間をコンペアマッチA値に設定し、60度時間をコンペアマッチB値に設定し、GR信号を生成して出力する。図13及び図3に示すように、180度時間と60度時間との間でオンとなるGR信号は、R相電圧VRが他のS相電圧VS及びT相電圧VTよりも大きい時間範囲で、R相のサイリスタをオンするゲート信号である。
【0060】
以上のように、本発明の実施形態によるAC/DCコンバータ5によれば、制御部3は、運転オフ時に、線間電圧Vrs,Vrtからゼロクロスを検出してゼロクロス検出信号を生成し、ゼロクロス検出信号の時間間隔である入力電圧周期を算出し、入力電圧周期の90%に相当する周期下限値L_LMT及び110%に相当する周期上限値P_LMTを設定するようにした。そして、制御部3は、運転オン時に、モデル位相ゼロクロス検出部24において、モデル位相を内部で生成し、入力電圧周期が周期下限値L_LMTよりも大きいときにゼロクロス検出信号を入力した場合、または、ゼロクロス検出信号を入力していない状態でモデル位相が周期上限値P_LMTよりも大きくなった場合、モデル位相をリセットし、周期下限値L_LMTと周期上限値P_LMTとの間の時間間隔を有するモデル位相ゼロクロス検出信号を生成するようにした。そして、制御部3は、モデル位相周期算出部25において、モデル位相ゼロクロス検出信号の時間間隔であるモデル位相周期の平均値を算出し、モデル位相周期平均値及びモデル位相ゼロクロス検出信号に基づいて、パワー素子4のサイリスタをオン/オフ制御するためのゲート信号を生成するようにした。
【0061】
これにより、モデル位相ゼロクロス検出信号は、AC/DCコンバータ5がノイズ、瞬時停電等による外乱の影響を受けたとしても、周期下限値L_LMTと周期上限値P_LMTとの間の時間間隔を有する信号になり、モデル位相周期も、周期下限値L_LMTと周期上限値P_LMTとの間に収まるようになる。したがって、外乱の影響を直接受けることのないゲート信号の位相を計算することができ、AC電源1の線間電圧のタイミングに一致した位相で、サイリスタをオン/オフ制御することが可能となる。つまり、AC/DCコンバータ5がプリチャージ動作している時に、ノイズ、瞬時停電等による外乱が発生したとしても、ヒューズは溶断することなく、整流素子が破損することもない。また、AC/DCコンバータ5が定常動作(フルファイア動作)している時に、このような外乱が発生したとしても、AC/DCコンバータ5の出力バス電圧が低くなることがないから、瞬時停電を誤って検出することもなく、後段に設けられたインバータ6の運転が停止することがない。この結果、安定したAC/DCコンバータ5の運転を実現することが可能となる。
【0062】
また、AC/DCコンバータ5の制御部3は、相毎のゲート信号処理部14−1,14−2,14−3により独立したゲート信号を生成し、パワー素子4の相毎のサイリスタをオン/オフ制御するようにしたから、R相、T相及びS相の相順を考慮した複雑な処理を行う必要がない。
【符号の説明】
【0063】
1 AC電源
2 リアクタ
3 制御部
4 パワー素子
5 AC/DCコンバータ
6 インバータ
7 モータ
11 A/D変換部
12 フィルタ
13 相電圧/線間電圧変換部
14 ゲート信号処理部
21 ゼロクロス検出部
22 入力電圧周期算出部
23 周期上下限値設定部
24 モデル位相ゼロクロス検出部
25 モデル位相周期算出部
26 ゲート信号生成部
31 選択回路
32 検出回路
41 カウンタ
42 転送回路
43 差分回路
51 平均演算回路
52,53 乗算回路
61 加算回路
62 選択回路
64,68 比較回路
65 AND回路
66 OR回路
67 反転回路
71 カウンタ
72 転送回路
73 差分回路
74 平均演算回路
81 位相60度計算回路
82 位相180度計算回路
83 位相135度計算回路
84 位相240度計算回路
85 プリチャージ変化計算回路
86 GR信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC電源の電圧から0Vをクロスするポイントのゼロクロスを検出し、前記ゼロクロスを検出したタイミングを示すゼロクロス検出信号から前記ゼロクロス検出信号の周期を算出し、前記周期に基づいてゲート信号を生成し、前記ゲート信号によりサイリスタをオン/オフ制御し、前記AC電源の交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータにおいて、
AC電源の相電圧を入力し、前記相電圧を線間電圧に変換する相電圧/線間電圧変換部と、
前記相電圧/線間電圧変換部により変換された線間電圧に基づいて、ゼロクロスを検出し、ゼロクロス検出信号を生成するゼロクロス検出部と、
前記ゼロクロス検出部により生成されたゼロクロス検出信号に基づいて、前記入力した相電圧の周期を示す入力電圧周期を算出する入力電圧周期算出部と、
前記入力電圧周期算出部により算出された入力電圧周期に基づいて、周期上限値及び周期下限値を設定する周期上下限値設定部と、
前記ゼロクロス検出部により生成されたゼロクロス検出信号、前記入力電圧周期算出部により算出された入力電圧周期、前記周期上下限値設定部により設定された周期上限値及び周期下限値に基づいて、0の値からインクリメントするモデル位相を生成し、前記モデル位相が前記周期上限値と周期下限値との間の所定値でリセットされて0の値になったときに、モデル位相ゼロクロス検出信号を生成するモデル位相ゼロクロス検出部と、
前記モデル位相ゼロクロス検出部により生成されたモデル位相ゼロクロス検出信号に基づいて、前記モデル位相の周期を示すモデル位相周期を算出するモデル位相周期算出部と、
前記モデル位相周期算出部により算出されたモデル位相周期に基づいて、ゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備えたことを特徴とするAC/DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のAC/DCコンバータにおいて、
前記モデル位相ゼロクロス検出部は、前記入力電圧周期算出部により算出された入力電圧周期が周期下限値よりも大きいときに前記ゼロクロス検出部からゼロクロス検出信号を入力した場合、または、前記ゼロクロス検出信号を入力していない状態で前記モデル位相が周期上限値よりも大きくなった場合、前記モデル位相を0の値にリセットする、ことを特徴とするAC/DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のAC/DCコンバータにおいて、
前記周期上下限値設定部は、当該AC/DCコンバータが交流電力を直流電力に変換する処理を行っていない運転オフ時に算出された入力電圧周期の平均値を算出し、前記平均値に基づいて周期上限値及び周期下限値を設定し、
前記モデル位相周期算出部は、前記モデル位相ゼロクロス検出部により生成されたモデル位相ゼロクロス検出信号に基づいて、前記モデル位相の周期を示すモデル位相周期を算出し、前記モデル位相周期の平均値を算出し、
前記ゲート信号生成部は、前記モデル位相周期算出部により算出されたモデル位相周期の平均値に基づいてゲート信号を生成する、ことを特徴とするAC/DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のAC/DCコンバータにおいて、
前記ゼロクロス検出部、入力電圧周期算出部、周期上下限値設定部、モデル位相ゼロクロス検出部、モデル位相周期算出部及びゲート信号生成部は、前記AC電源のR相、S相及びT相用に設けられ、
前記ゲート信号生成部により生成されたそれぞれのゲート信号にて、R相、S相及びT相のサイリスタをそれぞれオン/オフ制御する、ことを特徴とするAC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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