説明

ASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法

【課題】アナログ音声信号をサンプリング・量子化してなる多数の量子化データからなるデジタル音声データをASK変調して伝送路に送信するとともに、伝送路を介して前記ASK変調信号を受信しASK復調することによりデジタル音声データを復元するASK変調式デジタル音声データ送受信方法において、簡素な構成で、ASK変調信号の減衰に起因する復調誤りによる無音時のノイズを低減する。
【解決手段】ASK変調前に、前記デジタル音声データの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うエンコード処理を行うとともに、ASK復調後に、デジタル音声データの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うデコード処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASK変調(振幅偏移変調)式デジタルデータの送受信装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭用のドアホンや、浴室と台所や居間との間のインターホンなどにおいては、アナログ音声信号をサンプリングして量子化し、この多数の量子化データからなるデジタル音声データをASK変調式の音声デジタル信号の送受信装置を用いて通信するように構成されたものがある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−69251号公報
【0004】
図6は従来の一般的なASK変調式デジタル音声データ送受信装置を示している。この送受信装置は、音声をマイクなどにより入力してASK変調した後に伝送路20に出力する送信装置21と、伝送路20からASK変調信号を入力してこれを復調後にスピーカーなどから音声出力する受信装置22とを備えている。送信装置21は、入力されたアナログ音声信号をサンプリング・量子化するA/D変換部211と、A/D変換部211が出力する多数の量子化データをASK変調用にP/S変換するP/S変換部212と、P/S変換部212が出力するシリアルデータからなるデジタル音声データにヘッダを付加するヘッダ付加部213と、ヘッダ付加後のシリアルデータをASK変調するASK変調部214とを備える。また、受信装置22は、伝送路20から入力されるASK変調信号をASK復調するASK復調部221と、ASK復調部221が出力するシリアルデータのヘッダを抜き取るヘッダ抜取部222と、ヘッダ抜取部222が出力するシリアルデータからなるデジタル音声データをS/P変換するS/P変換部223と、S/P変換部223が出力する多数の量子化データからなるデジタル音声データに基づいてアナログ音声信号を生成出力するD/A変換部224とを備えている。これら送信装置21及び受信装置22は、ドアホンやインターホンの親機及び子機のそれぞれに備えられ、双方向に音声通信できるように構成されている。
【0005】
かかるASK変調式の送受信装置は構成が簡素であるため安いコストで製造できるという利点がある。その一方、ASK変調信号の伝送路における信号減衰等により受信側での復調データにビット誤りが発生することがあり、このビット誤りに起因する再生ノイズや再生波形の歪みなどを低減するために、誤り訂正や、誤り検出と信号の再送をする処理などを行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、誤り訂正機能や、誤り検出機能並びに信号再送機能などを実装するとコスト増を招く。
【0007】
一方、ASK変復調におけるビット誤りは、ASK変調信号の振幅大の部分を振幅小であると誤検知することによるものが殆どであり、振幅小の部分を振幅大と誤検知して復調することは殆どないという特性を有している。
【0008】
また、各量子化データは、アナログ音声信号の負側の最大値のとき全てのビットが0とされ、正側の最大値のとき全てのビットが1とされるビット列により構成されるオフセットバイナリでコード出力されたものであることが一般的であり、例えば8ビットの量子化数の場合、無音時は80h(10000000)近辺の量子化データ値となるが、値が1少ない7Fh(01111111)との間でハミング距離が非常に大きくなる。そのため、この量子化データの各ビットを、値"0"のときに振幅大となり値"1"のときに振幅小となるようにASK変調すると、ASK復調時に値"0"が値"1"に誤復調されることはあるが、値"1"が値"0"に誤復調されることはないため、上記の80h以上の値の量子化データの最上位ビットが誤復調されることはないが、7Fh以下の値の量子化データの最上位ビットが誤復調された場合に、無音近傍で大きなノイズを生じてしまう。一方、値"0"のときに振幅小となり、値"1"のときに振幅大となるようにして、7Fh以下の値の量子化データの最上位ビットが誤復調されないようにASK変調すると、今度は80h以上の値の量子化データの最上位ビットが誤復調された場合に無音近傍で大きなノイズを発生してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記のようなASK変復調の特性を利用しつつ、簡素な構成で復調誤りによる音声ノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
【0011】
すなわち、本発明は、多数の量子化データを含むデジタルデータをASK変調して伝送路に送信する送信装置と、伝送路を介して前記ASK変調信号を受信しASK復調することにより前記デジタルデータを復元する受信装置とを備えるASK変調式デジタルデータ送受信装置において、前記送信装置は、前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うエンコード処理をASK変調前に行うエンコード部を有し、前記受信装置は、ASK復調後の前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うデコード処理を行うデコード部を有することを特徴とするものである(請求項1)。
【0012】
また、本発明は、多数の量子化データを含むデジタルデータをASK変調して伝送路に送信するとともに、伝送路を介して前記ASK変調信号を受信しASK復調することにより前記デジタルデータを復元するASK変調式デジタルデータ送受信方法において、前記ASK変調前に、前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うエンコード処理を行うとともに、前記ASK復調後に、前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うデコード処理を行うことを特徴とするものである(請求項4)。
【0013】
かかる本発明のASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法によれば、各量子化データのビット列中で最も音量などに対する重み付けが大きい最上位ビットの値に応じて、ASK変復調の前後で当該量子化データに対して異なるビット反転処理(エンコード処理)を行っているので、ASK変調信号の振幅大の信号部分が伝送路において減衰して受信装置側で振幅小と誤検出されることにより最上位ビットに復調誤りが生じた場合に、受信装置の出力への影響が大きい量子化データの値の範囲ではエンコード前の量子化データの値に対して大きな差分を生じないような処理を行わせることができ、このようにエンコード/デコードルールを簡素化することにより簡単な回路構成とし、若しくはソフトウェア処理のステップ数を軽減しつつも復調誤りに起因するノイズ、特に、デジタル音声信号を送受信する場合の無音時の音声ノイズや、デジタル映像信号を送受信する場合の黒信号のノイズなどが低減される。
【0014】
上記本発明のASK変調式デジタルデータ送受信装置において、前記エンコード部は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転するエンコード処理を行うものであり、前記デコード部は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転するデコード処理を行うものであることが好ましい(請求項2)。
【0015】
また、上記本発明のASK変調式デジタルデータ送受信方法において、前記エンコード処理は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転するものであり、前記デコード処理は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転するものであることが好ましい(請求項5)。
【0016】
これら本発明のASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法によれば、例えばデジタルデータとしてオフセットバイナリでコード出力されたデジタル音声データを用いる場合、量子化データの最上位ビットが0から1に遷移する無音近傍で、ASK復調時に最上位ビットの誤復調が生じた場合でも、エンコード前とデコード後との間で量子化データが大きく変位することがなく、無音時のノイズを簡素な構成で低減できる。また、大音量時に量子化データの値が大きく変化してデコードされてしまうことがあるが、D/A変換後のローパスフィルタなどによる音声波形のスムージングフィルタの効果を得やすく、これに起因するノイズはある程度軽減されるとともに、また、大音量時のノイズであるためリスナーにとってあまり気にならないものとなる。
【0017】
なお、本発明において、上記各量子化データは、アナログ音声信号の負側の最大値のとき全てのビットが0とされ、正側の最大値のとき全てのビットが1とされるビット列により構成されるオフセットバイナリでコード出力されたものであることが好ましい。また、量子化データの最上位ビットとは、量子化データの値に対する重み付けが最も大きいビットのことを意味し、必ずしもビット列の先頭ビットを意味するものではない。この量子化データは、リトルエンディアン及びビッグエンディアンのいずれの方式で扱われてもよく、また、各種の処理のためにビットシフト演算がなされていてもよいことは勿論である。また、量子化データは、アナログ音声信号をリアルタイムにサンプリング及び量子化してなるものであってもよく、予めデジタル音楽プレイヤーなどに保存されたデジタルデータであってもよい。
【0018】
上記本発明のASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法は、前記量子化データが、アナログ信号(例えばアナログ音声信号)をサンプリング及び量子化することにより得られたものである場合に好適に実施でき、この場合、量子化データの値が1増減すると該量子化データの最上位ビットの値が変化する量子化データの値領域が、前記アナログ信号の無信号領域(無音領域)に対応するように、量子化データがオフセットバイナリで量子化されたものとするのが良い(請求項3及び6)。しかし、本発明はアナログ信号をサンプリング及び量子化してなるデジタルデータの送受信のみに限定されるものではなく、デジタル映像信号の送受信における黒信号データの誤り発生時のノイズ低減などにも好適に実施可能である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の請求項1及び4に係るASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法によれば、各量子化データのビット列中で最も音量などに対する重み付けが大きい最上位ビットの値に応じて、ASK変復調の前後で当該量子化データに対して異なるビット反転処理(エンコード処理)を行っているので、ASK変調信号の振幅大の信号部分が伝送路において減衰して受信装置側で振幅小と誤検出されることにより最上位ビットに復調誤りが生じた場合に、受信装置の出力への影響が大きい量子化データの値の範囲ではエンコード前の量子化データの値に対して大きな差分を生じないような処理を行わせることができ、このようにエンコード/デコードルールを簡素化することにより簡単な回路構成とし、若しくはソフトウェア処理のステップ数を軽減しつつも復調誤りに起因するノイズ、特に、デジタル音声信号を送受信する場合の無音時の音声ノイズや、デジタル映像信号を送受信する場合の黒信号のノイズなどが低減される。
【0020】
また、本発明の請求項2及び5に係るASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法によれば、例えばデジタルデータとしてアナログ信号をA/D変換しオフセットバイナリでコード出力されたデジタルデータを用いる場合、量子化データの最上位ビットが0から1に遷移するアナログ信号の無信号領域近傍で、ASK復調時に最上位ビットの誤復調が生じた場合でも、エンコード前とデコード後との間で量子化データが大きく変位することがなく、無信号時のノイズを簡素な構成で低減できる。また、最大値信号時(音声データの場合は大音量時)に量子化データの値が大きく変化してデコードされてしまうことがあるが、D/A変換後のローパスフィルタなどによるアナログ信号波形のスムージングフィルタの効果を得やすく、これに起因するノイズはある程度軽減できるとともに、また、最大値信号時のノイズであるため人にとってあまり気にならないものであるため、全体として簡素な構成でありながらも最も気になる無信号時のノイズを低減することができる。
【0021】
また、本発明の請求項3及び6に係るASK変調式デジタルデータ送受信装置及び方法によれば、たとえばデジタル音声データを用いる場合、量子化データの最上位ビットが0から1に遷移する無音近傍で、ASK復調時に最上位ビットの誤復調が生じた場合でも、エンコード前とデコード後との間で量子化データが大きく変位することがなく、無音時のノイズを簡素な構成で低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るASK変調式デジタル音声データ送受信装置のブロック図である。
【図2】給湯器と浴室リモコン及び台所リモコンとの配線ブロック図である。
【図3】本発明のエンコード処理及びデコード処理の一例を示す量子化データの値の遷移図である。
【図4】送信装置に入力されるアナログ音声信号のサンプリング及び量子化の一例を示すグラフである。
【図5】デコード処理後の多数の量子化データに基づいて受信装置で生成出力されるアナログ音声信号を示すグラフである。
【図6】従来のASK変調式デジタル音声データ送受信装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るASK変調式デジタル音声データ送受信装置を示しており、上記図6に示した従来技術と同様の構成については同符号を付して説明する。該送受信装置は、音声をマイクなどにより入力してASK変調した後に伝送路20に出力する送信装置21と、伝送路20からASK変調信号を入力してこれを復調後に復元されたデジタル音声データに基づいてスピーカーなどから音声出力する受信装置22とを備えている。なお、伝送路20は、有線であっても無線であってもよく、また、他の信号線(例えば、コマンド通信用の信号線や、電力供給用配線など)と共用であってもよい。
【0025】
送信装置21は、入力されたアナログ音声信号をサンプリング・量子化して多数の量子化データからなるデジタル音声データを出力するA/D変換部211と、A/D変換部211が出力する多数の量子化データに後述するような所定のエンコード処理を行うエンコード部215と、エンコード後の多数の符号化量子化データをASK変調用にP/S変換するP/S変換部212と、P/S変換部212が出力するシリアルデータからなるデジタル音声データにヘッダを付加するヘッダ付加部213と、ヘッダ付加後のシリアルデータをASK変調してASK変調信号を伝送路20に出力するASK変調部214とを備える。
【0026】
受信装置22は、伝送路20から入力されるASK変調信号をASK復調するASK復調部221と、ASK復調部221が出力するシリアルデータのヘッダを抜き取るヘッダ抜取部222と、ヘッダ抜取部222が出力するシリアルデータをS/P変換するS/P変換部223と、S/P変換部223が出力する多数の符号化量子化データに後述するような所定のデコード処理を行うデコード部225と、デコード部225が出力する復号後の多数の量子化データからなるデジタル音声データに基づいてアナログ音声信号を生成出力するD/A変換部224とを備えている。これら送信装置21及び受信装置22は、ドアホンやインターホンの親機及び子機のそれぞれに備えられ、双方向に音声通信できるように構成される。
【0027】
図2は、上記本実施形態に係る送受信装置が内蔵される給湯器1用浴室リモコン2及び台所リモコン3の配線図の一例を示す。給湯器1には交流電源4が接続され、給湯器1内のAC/DCコンバータによって直流電力が生成され、該直流電力が電力供給線5を介して各リモコン2,3に供給されている。この電力供給線5は、各リモコン2,3から給湯器1への、及び、各リモコン2,3同士のコマンド通信線としても用いられ、さらに、上記送受信装置の伝送路20としても用いられている。これは例えば、コマンド通信信号は250kHzの搬送波で変調する一方、ASK変調信号は2MHz帯の搬送波で変調することにより行うことができる。また、各リモコン2,3には、本実施形態の送受信装置の送信装置21及び受信装置22がそれぞれ内蔵されている。1本の伝送路20による双方向通信は、例えば、時分割方式で交互に送受信を行うことにより行うことができる。
【0028】
なお、台所リモコン3にiPod(登録商標)などの携帯音楽プレイヤー6を接続して、該プレイヤー6のアナログ音声出力(イヤホン出力など)を台所リモコン3の送信装置21に入力させて、浴室リモコン2のスピーカーからその音楽を出力させることもできる。また、iPod(登録商標)などのデジタル音楽プレイヤーのデジタル入出力端子と接続して、当該プレイヤーに保存されているデジタル音楽データをエンコード部215に入力するための多数の量子化データに変換して、エンコード部215に入力させることも可能である。
【0029】
次に、送信装置21及び受信装置22におけるエンコード処理及びデコード処理について詳細に説明する。
【0030】
送信装置21のエンコード部215は、A/D変換部211が出力するデジタル音声データの各量子化データを、その最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うエンコード処理をASK変調前に行う。より詳細には、エンコード部215は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転するエンコード処理を行うように構成されている。
【0031】
また、受信装置22のデコード部225は、ASK復調後のデジタル音声データの各符号化量子化データを、その最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うデコード処理を行う。より詳細には、デコード部225は、各符号化量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該符号化量子化データを全ビット論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該符号化量子化データの最上位ビットのみを論理反転するデコード処理を行うように構成されている。
【0032】
これらエンコード部215及びデコード部225は、論理回路によって構成してもよく、また、CPUによるソフトウェア処理により実現されるものであっても良い。
【0033】
図3は、量子化データの各ビットの値が"0"のときはASK変調信号を振幅大とし、各ビットの値が"1"のときはASK変調信号を振幅小とした場合の量子化データの遷移を示している。なお、最も単純なASK変調信号の場合、上記の「振幅大」とは搬送波有りを意味し、「振幅小」とは搬送波無しを意味する。
【0034】
図3の最左列の「量子化データ値」の列は、A/D変換部211が出力する量子化データの値を16進数及び2進数で示しており、各量子化データは、値が1増減すると該量子化データの最上位ビットの値が変化する量子化データの値領域が、前記アナログ音声信号の無音領域に対応するように、オフセットバイナリで量子化されたものである。具体的には、量子化データは8ビット(1バイト)のビット列からなり、アナログ音声信号の負の最大値が00h、正の最大値がFFh、無音時が80hとなるようにオフセットバイナリでコード出力されている。
【0035】
図3の「エンコード値」の列は、上記の量子化データの値が、エンコード部215によってエンコードされた後の符号化量子化データの値を示している。本実施例において、エンコード部215は、各量子化データの最上位ビットが"0"のときは当該最上位ビットのみを論理反転し、各量子化データの最上位ビットが"1"のときは当該量子化データの全ビットを論理反転する処理を行っている。かかるエンコード処理により、無音近傍における各量子化データの値のビット列と、隣接する他の値のビット列との間のハミング距離が2以下となっているとともに、無音近傍における量子化データの最上位ビット以外の他のビットの多くが値"1"で埋められていることが分かる。
【0036】
図3の「MSBに誤り発生」の列は、ASK復調部221によって復調された後の符号化量子化データの最上位ビットが、正しくは"0"(振幅大)であるものが"1"(振幅小)と誤って復調された状態を示している。
【0037】
図3の最右列の「デコード値」の列は、「MSBに誤り発生」の列に示すように誤復調された符号化量子化データをデコード部225によってデコードされた後の量子化データの値を示している。本実施例において、デコード部225は、各符号化量子化データの最上位ビットが"1"のときは当該符号化量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、各符号化量子化データの最上位ビットが"0"のときは当該符号化量子化データの全ビットを論理反転する処理を行っている。
【0038】
かかるデコード処理の結果出力されるデコード値を、最左列の元の量子化データ値と比較すると、無音近傍では8ビットの値として小さな差分しか生じておらず、リスナーにノイズとして認識され易い無音近傍におけるノイズを大幅に低減できていることが分かる。
【0039】
一方、元の量子化データ値がFFhであって、ASK変復調時に最上位ビットに誤りが発生すると、デコード後の量子化データは00hとなっているが、多数の量子化データ中の一部がFFhから00hに誤復調されても、D/A変換部224におけるD/A変換後にローパスフィルタなどのスムージングフィルタを設ければノイズがある程度軽減されるとともに、大音量時のノイズであるためノイズと判別されにくい。
【0040】
図4及び図5は、ASK変復調前後の量子化データ及び対応するアナログ信号波形の一例を示している。ここで、図4の矢印Aで示す量子化データ(値=FFh)並びに矢印Bで示すほぼ無音時の量子化データ(値=80h近辺)の最上位ビットが誤復調されたと仮定すると、図5に示すように矢印Aの量子化データは値が00hとなるが、D/A変換後のスムージングフィルタによって出力されるアナログ音声波形はほぼ元の波形に近似するものとなる。また、図5に示す矢印Bの量子化データは、アナログ音声波形の正から負に反転するようになるが、ほぼ無音であるためノイズであると判別され難いものとなる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、本発明の適用用途や適用されるシステム構成によっては、エンコード処理及びデコード処理を上記実施形態とは逆にすることができる。すなわち、エンコード処理は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転するものであり、前記デコード処理は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転し、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転するように構成してもよい。これは例えば、アナログ信号の負の最大値〜無信号時の負の領域が量子化データの80h〜00hに対応し、アナログ信号の無信号時〜正の最大値の正の領域が量子化データの00h〜7Fhに対応するように、量子化データが2’s コンプリメントバイナリでコード出力されている場合に好適に実施できる。
【0042】
また、本発明は、デジタル音声データの送受信に限定されるものではなく、デジタル映像データの送受信にも適用でき、図3に示すエンコード/デコード処理をそのままデジタル映像データの送受信時に用いることができる。たとえば、デジタル映像データの場合、映像を構成する各量子化データが、色差空間に対応する各色毎に1〜数バイトのビット列により構成され、1バイトの場合では80hが無信号(無色)、FFhや00hが最大値信号として量子化されている。かかるデジタル映像データに図3に示すエンコード/デコード処理をすると、無信号付近では量子化データの最上位ビットが誤復調されたとしても、ノイズとして判別されやすい無信号付近のノイズを低減できる。一方、最大値信号付近の一部の量子化データで誤復調が生じても、スムージングフィルタを用いることでノイズを低減できる。
【符号の説明】
【0043】
20 伝送路
21 送信装置
211 A/D変換部
214 ASK変調部
215 エンコード部
22 受信装置
221 ASK復調部
224 D/A変換部
225 デコード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の量子化データを含むデジタルデータをASK変調して伝送路に送信する送信装置と、伝送路を介して前記ASK変調信号を受信しASK復調することにより前記デジタルデータを復元する受信装置とを備えるASK変調式デジタルデータ送受信装置において、
前記送信装置は、前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うエンコード処理をASK変調前に行うエンコード部を有し、
前記受信装置は、ASK復調後の前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うデコード処理を行うデコード部を有することを特徴とするASK変調式デジタルデータ送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のASK変調式デジタルデータ送受信装置において、
前記エンコード部は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転するエンコード処理を行うものであり、
前記デコード部は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転するデコード処理を行うものであることを特徴とするASK変調式デジタルデータ送受信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のASK変調式デジタルデータ送受信装置において、
前記量子化データは、アナログ信号をサンプリング及び量子化することにより得られたものであるとともに、量子化データの値が1増減すると該量子化データの最上位ビットの値が変化する量子化データの値領域が、前記アナログ信号の無信号領域に対応するように、量子化データがオフセットバイナリで量子化されたものであることを特徴とするASK変調式デジタルデータ送受信装置。
【請求項4】
多数の量子化データを含むデジタルデータをASK変調して伝送路に送信するとともに、伝送路を介して前記ASK変調信号を受信しASK復調することにより前記デジタルデータを復元するASK変調式デジタルデータ送受信方法において、
前記ASK変調前に、前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うエンコード処理を行うとともに、
前記ASK復調後に、前記デジタルデータの各量子化データをその最上位ビットの値に基づいて所定ビットの論理反転を行うデコード処理を行うことを特徴とするASK変調式デジタルデータ送受信方法。
【請求項5】
請求項4に記載のASK変調式デジタルデータ送受信方法において、
前記エンコード処理は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転するものであり、
前記デコード処理は、各量子化データの最上位ビットが、ASK変調信号における振幅大に対応するビット値であるときは当該量子化データを全ビット論理反転し、ASK変調信号における振幅小に対応するビット値であるときは当該量子化データの最上位ビットのみを論理反転するものであることを特徴とするASK変調式デジタルデータ送受信方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のASK変調式デジタルデータ送受信方法において、
前記量子化データは、アナログ信号をサンプリング及び量子化することにより得られたものであるとともに、量子化データの値が1増減すると該量子化データの最上位ビットの値が変化する量子化データの値領域が、前記アナログ信号の無信号領域に対応するように、量子化データがオフセットバイナリで量子化されたものであることを特徴とするASK変調式デジタルデータ送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−249225(P2012−249225A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121409(P2011−121409)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】