説明

AV装置,テレビジョン受像機

【課題】スピーカ及び光ディスクドライブを備えたAV装置において,組み立て工数の増大を招くような部品を追加することなく,内蔵された光ディスクドライブが発する振動音を抑制できること。
【解決手段】AV装置が,光ディスクドライブ9のトラッキングエラー信号における光ディスク100の回転周波数の信号成分の強度及び位相を検出する信号解析回路31と,光ディスクの回転周波数と同じ周波数,前記信号解析回路31により検出された強度に応じた振幅,及び前記信号解析回路31により検出された位相に対して光ディスク100の回転周波数に応じて定まる位相差を有する位相で信号レベルが変動するノイズ音抑制信号を生成するノイズ音抑制回路32と,そのノイズ音抑制信号をスピーカ25に入力される音響信号に重畳させる合波器33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,スピーカと光ディスクドライブとを備えたAV装置及びテレビジョン受像機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今,液晶テレビジョン受像機に代表される薄型のテレビジョン受像機は,光ディスクドライブが内蔵され,光ディスクに放送番組等のコンテンツを録画する録画機能及び録画データに基づく再生機能を備えるものがある。これにより,録画・再生機能を有するAV(Audio Visual)システム全体の省スペース化が実現される。なお,光ディスクドライブには,DVD(Digital Versatile Disc)のドライブやブルーレイディスクのドライブ等がある。
【0003】
また,光ディスクドライブは,光ディスクの回転速度を,基準となる回転速度から,その2倍速,4倍速及び8倍速等へ変更する機能を有し,その回転速度,即ち,回転周波数に応じたサンプリング周波数で光ディスクに記録されたデータにアクセスする。
コンテンツの再生処理では,光ディスクドライブを通じて光ディスクからコンテンツのデータが先読みされ,そのコンテンツの再生信号の生成及びバッファリングが行われつつ,再生速度に応じたペースでバッファから再生信号が出力される。その際,光ディスクドライブは,基準となる回転速度よりも速い速度で光ディスクを回転させる。これにより,早送り再生が可能となり,また,再生処理中に他の割り込み処理が発生した場合でも円滑な再生が可能となる。なお,前記コンテンツのデータの先読みとは,そのコンテンツのリアルタイム再生に必要なデータの読み込みペースよりも速いペースでデータの読み込みを行うことである。
【0004】
ところで,光ディスクドライブは,光ディスクを回転させると,回転軸部分に保持された光ディスクの偏芯の状態に応じて,光ディスク上のトラックと光ピックアップ部との位置ずれが生じる。また,光ディスクの偏芯の程度は,回転軸部分へ光ディスクをセットする操作の状況や,セットされる光ディスクの個体差等によってその都度異なる。そのため,光ディスクドライブは,光ピックアップ部と光ディスク上の各トラックとの位置関係を順次検出し,その検出結果をフィードバックして前記光ピックアップ部の位置を調節するサーボ制御を行いつつ,データの読み出しを行う。そのサーボ制御により,光ディスク上のトラックに対する前記ピックアップ部の位置が,信号ピックアップに適した目標位置に位置決めされる。光ピックアップ部と光ディスク上の各トラックとの位置関係の検出信号としては,一般に,光ディスク上の各トラックと光ピックアップ部との光ディスクの半径方向における位置ずれ量を表すトラッキングエラー信号と,光ディスク上のトラックと光ピックアップ部との距離を表すフォーカシングエラー信号とがある。そして,光ディスクドライブは,前記トラッキングエラー信号のフィードバック制御により光ピックアップ部の位置を調節するトラッキングサーボの機能と,前記フォーカシングエラー信号のフィードバック制御により光ディスクに照射するビーム光の焦点位置を調節するフォーカシングサーボの機能とを備えている。
図3は,前記トラッキングエラー信号の検出手法の一例であるDPP(Differential Push-Pull)法を説明する図である。
DPP法では,不図示の光ピックアップ部に設けられた光源から光ディスク100に向かうビーム光を3分岐させ,3つのビーム光P1,P2,P3を光ディスク100上の同一の周上の異なるトラック101に照射する。その際,真ん中のメインビーム光P1に対して両側のサブビーム光P1,P2を,光ディスク100の半径方向に所定距離だけずらして照射する。そして,DPP法では,3つのビーム光P1,P2,P3の反射光の強度を受光部において検出し,それらの強度のバランスから,光ディスク100上のトラック101と不図示の光ピックアップ部との光ディスク100の半径方向における位置ずれ量を検出する。
【0005】
また,光ディスクドライブは,光ディスクの偏芯の状態に応じた振動により,振動音を発する。その振動音は,一般に,光ディスクの回転周波数が大きいほど,また,光ディスクの偏芯の度合いが大きいほど大きくなる。特に,ブルーレイディスクドライブのように,光ディスクをより速く回転させる光ディスクドライブは,光ディスクの偏芯による振動音が大きくなる。また,光ディスクの回転周波数や偏芯の程度は状況に応じて異なるため,光ディスクドライブの振動音の内容も状況に応じて異なる。
そこで,光ディスクドライブが主要部となる録画・再生装置等においては,光ディスクドライブの振動音が耳障りな騒音となることを防止するため,遮音構造を有する筐体や免震構造等を採用することが考えられる。また,録画再生装置等が,開閉扉付きのラックに収容されれば,光ディスクドライブの振動音がユーザにとっての騒音となることを防止できる。
一方,特許文献1には,放熱用ファンの振動音の信号をセンサにより検出し,その振動音の信号の位相を反転させた信号に相当する騒音抑制用の音響を,放熱用ファンの近傍に配置された専用のスピーカを通じて出力することにより,放熱ファンが発する騒音を抑制することについて示されている。なお,放熱用ファンの振動音の信号は,放熱用ファンを駆動するモータの回転軸に取り付けられた円盤の孔をセンサで検出することによって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−73072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,液晶テレビジョン受像機のように,厚みの薄さが非常に重要な仕様となるAV装置においては,それに内蔵される光ディスクドライブの騒音防止に十分な遮音構造や免震構造を採用することが難しいという問題点があった。
また,液晶テレビジョン受像機のように,放送コンテンツや光ディスクドライブにより再生されるコンテンツの音響を出力するスピーカを備えたAV装置は,ラックに収容するという防音対策を採用できない。
また,特許文献1に示されるように,振動音を検出するセンサや騒音抑制用のスピーカを設けることは,製品の組み立て工数の増大を招くため好ましくない。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,組み立て工数の増大を招くような部品を追加することなく,内蔵された光ディスクドライブが発する振動音を抑制できるAV装置及びテレビジョン受像機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係るAV装置は,次の(1)〜(4)に示される各構成要素を備えた装置である。
(1)コンテンツの音響を出力するスピーカ。
なお,前記コンテンツは,例えば,放送コンテンツや光ディスクに記録されたコンテンツ等である。
(2)光ディスクを回転させ,その光ディスク上のトラックと光ピックアップ部との位置ずれ量を表すトラッキングエラー信号を検出し,そのトラッキングエラー信号に基づくトラッキングサーボを行いつつ前記光ピックアップ部を通じて前記光ディスクにアクセスする光ディスクドライブ。
(3)前記トラッキングエラー信号における前記光ディスクの回転周波数の信号成分の強度及び位相を検出する信号特性検出手段。
(4)前記光ディスクの回転周波数と同じ周波数,前記信号特性検出手段により検出された強度に応じた振幅,及び前記信号特性検出手段により検出された位相に対して前記光ディスクの回転周波数に応じて定まる位相差を有する位相で信号レベルが変動するノイズ音抑制信号を生成し,そのノイズ音抑制信号を前記スピーカに入力される音響信号に重畳させるノイズ音抑制信号重畳手段。
【0009】
前記光ディスクドライブが発する主な振動音は,光ディスクの回転周波数と同じ周波数の音である。また,前記スピーカとの前記光ディスクドライブと位置関係は既知であるため,前記スピーカの出力音及び前記光ディスクドライブの振動音それぞれについて,それら2つの音が発生してから特定の位置に到達するまでに位相がどれだけずれるかは,それら2つの音各々の周波数に応じて定まる。
また,前記トラッキングエラー信号における前記光ディスクの回転周波数の信号成分の強度は,前記光ディスクの偏芯の大きさ,即ち,光ディスクドライブが発する主な振動音の大きさを表す指標となる。また,前記トラッキングエラー信号における前記光ディスクの回転周波数の信号成分の位相は,光ディスクドライブが発する主な振動音の位相とほぼ一致する。
そこで,前記ノイズ音抑制信号重畳手段は,前記スピーカに入力される音響信号に,前記光ディスクの回転周波数と周波数が同じであって,ユーザの位置を想定した特定の位置において前記光ディスクドライブの振動音の位相と逆位相となる前記ノイズ音抑制信号を重畳させる。また,前記ノイズ音抑制信号重畳手段は,前記ノイズ音抑制信号の振幅を,前記光ディスクドライブの振動音の大きさの指標値,即ち,前記トラッキングエラー信号における前記光ディスクの回転周波数の信号成分の強度に応じて定める。
従って,本発明に係るAV装置によれば,ユーザの位置を想定した特定の位置における前記光ディスクドライブの振動音を,前記スピーカからの出力音によってキャンセルできる。
しかも,前述したように,光ディスクドライブは,通常,前記トラッキングエラー信号を検出して前記トラッキングサーボを行う機能を備えている。また,コンテンツの音響出力用の前記スピーカは,既存の部品である。さらに,前記信号特性検出手段や前記ノイズ音抑制信号重畳手段は,既存の電子基板への回路や素子の追加や,既存のプロセッサが実行するプログラムの追加によって実現できる。そのため,本発明に係るAV装置の実現にあたり,従来に比べて組み立て工数の増大を招くような部品を追加する必要がない。
【0010】
ところで,前記スピーカの位置と前記光ディスクドライブの位置とが離れている場合,想定されるユーザの位置の範囲が広ければ,前記光ディスクドライブの振動音の位相と前記ノイズ音抑制信号に基づく出力音の位相とがユーザの位置いおいて逆位相とならず,本発明におけるノイズキャンセルの作用が機能しない可能性がある。
そこで,前記スピーカと前記光ディスクドライブとが装置前面側から見て重なる位置に配置されていることが望ましい。これにより,ユーザの位置が装置前面側において変化しても,その位置に到達する前記光ディスクドライブの振動音の位相と前記ノイズ音抑制信号に基づく出力音の位相とが逆位相となる関係が崩れず,本発明におけるノイズキャンセルの作用が確実に機能する。
また,本発明は,スピーカと光ディスクドライブとを内蔵する薄型のテレビジョン受像機への適用が特に効果的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,組み立て工数の増大を招くような部品を追加することなく,内蔵された光ディスクドライブが発する振動音を抑制できるAV装置及びテレビジョン受像機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るテレビジョン受像機Xの概略構成を表すブロック図。
【図2】テレビジョン受像機Xにおけるスピーカと光ディスクドライブとの位置関係の一例を表す図。
【図3】トラッキングエラー信号の検出手法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0014】
まず,図1に示されるブロック図を参照しつつ,本発明の実施形態に係るテレビジョン受像機Xの構成について説明する。
テレビジョン受像機Xは,液晶テレビジョン受像機であり,コンテンツの音響を出力するスピーカ及び光ディスクドライブを内蔵するAV装置の一例である。
図1に示されるように,テレビジョン受像機Xは,複数のチューナ1,外部信号入力部2,復調・分離回路3,映像復号回路11,映像選択回路12,映像処理回路13,液晶ドライバ14,液晶表示パネル15,調光回路16,バックライト17,音響復号回路21,音響選択回路22,音響処理回路23,アンプ24,スピーカ25,制御回路4,リモコン受光部6,リモコン7,録画・再生回路8,光ディスクドライブ9,信号解析回路31,ノイズ音抑制回路32及び合波器33等を備えている。
このテレビジョン受像機Xは,前記録画・再生回路8により再生されるコンテンツや放送コンテンツの映像や音響が,前記液晶表示パネル15及び前記スピーカ25それぞれを通じて出力される光ディスクドライブ内蔵型の液晶テレビジョン受像機である。
【0015】
前記チューナ1は,入力されたテレビジョン放送信号から放送番組のコンテンツの信号を抽出する電子部品である。より具体的には,前記チューナ1は,前記制御回路4により選択を指示された放送番組の信号が含まれる搬送波周波数成分の信号を抽出し,その抽出信号を後段の復調・分離回路3に伝送する。なお,前記チューナ1は,地上波,BS,CS等の放送媒体ごとに個別に設けられる。
前記復調・分離回路3は,前記チューナ1から伝送されてきた搬送波周波数成分からトランスポートストリーム信号(Transport Stream信号:以下,TS信号)を復調する。さらに,前記復調・分離回路3は,抽出されたTS信号から,視聴される放送番組に対応した映像信号及び音響信号,並びに付加データ等を分離して抽出する。さらに,前記復調・分離回路3は,前記制御回路4から受けたPID(Packet IDentification)に応じて,視聴対象となる放送番組の映像信号及び音響信号を抽出し,各信号を前記映像復号回路11及び前記音響復号回路21それぞれに伝送する。
また,前記復調・分離回路3は,TS信号から,付加データであるSI(Service Information)等を抽出して前記制御回路4に伝送する。このSIは,EPG(Electronic Program Guide)の情報が多重化されたデータである。EPGの情報には,例えば,番組名,番組のジャンル,放送時間等を示す情報が含まれる。
【0016】
また,前記外部信号入力部2は,外部装置から映像信号及び音響信号を入力する信号入力インターフェースである。
また,前記光ディスクドライブ9は,DVD又はブルーレイディスク等の着脱可能な光ディスク100がセットされ,その光ディスク100に対してデータの読み書きを行う装置である。その際,前記光ディスクドライブ9は,セットされた光ディスク100をサーボモータにより速度可変に回転させつつ,その回転速度に応じた速度でその光ディスク100に記録されたデータにアクセスする。なお,前記光ディスクドライブ9に対する前記光ディスク100の回転速度,即ち,光ディスク100を駆動するサーボモータの回転速度の設定は,前記録画・再生回路8により行われる。
また,前記光ディスクドライブ9は,エラー検出回路9aを備えている。
前記エラー検出回路9aは,不図示の光ピックアップ部と回転中の光ディスク100上の各トラックとの光ディスク100の半径方向における位置ずれ量を表すトラッキングエラー信号と,光ディスク100上の各トラックと前記光ピックアップ部との距離を表すフォーカシングエラー信号とを検出する回路である。なお,前記エラー検出回路9aは,例えば,既に図3に基づき説明したDPP法等により前記トラッキングエラー信号を検出する。
そして,前記光ディスクドライブ9は,前述したように,前記トラッキングエラー信号のフィードバック制御により光ピックアップ部の位置を調節するトラッキングサーボの機能と,前記フォーカシングエラー信号のフィードバック制御により光ディスクに照射するビーム光の焦点位置を調節するフォーカシングサーボの機能とを備えている。前記光ディスクに対するアクセスは,前記トラッキングサーボ及び前記フォーカシングサーボの制御を行いつつ実行される。
なお,前記エラー検出回路9aにより検出された前記トラッキングエラー信号は,前記光ディスクドライブ9において用いられるとともに,前記信号解析回路31へ伝送される。
【0017】
また,前記録画・再生回路8は,前記光ディスクドライブ9に対して前記光ディスク100の回転速度の指令値を出力する処理と,コンテンツの録画処理及びコンテンツの再生処理とを実行する回路である。なお,前記光ディスク100の回転速度の指令値,即ち,前記光ディスク100の回転周波数の設定は,前記信号解析回路31及び前記ノイズ音抑制回路32へも伝送される。
例えば,前記録画・再生回路8は,前記映像復号回路11から出力される映像信号及び前記音響復号回路21から出力される音響信号に基づいて,コンテンツの録画処理を行う。その際,前記録画・再生回路8は,入力信号からコンテンツの録画データを生成し,その録画データを前記光ディスクドライブ9を通じて光ディスクに記録する。録画対称となるコンテンツは,前記チューナ1により得られる放送番組のコンテンツ,又は前記外部信号入力部2を通じて入力されるコンテンツである。
さらに,前記録画・再生回路8は,前記光ディスクドライブ9を通じて光ディスク100からコンテンツの録画データを読み出しつつ,そのコンテンツの再生信号を生成するコンテンツ再生処理を実行する。前記再生信号は,コンテンツ再生用の映像信号及び音響信号である。その際,前記録画・再生回路8は,前記光ディスク100からコンテンツのデータの先読みを行いつつ,そのコンテンツの再生信号の生成と,不図示の再生信号バッファへのバッファリングとを行う。そして,コンテンツデータの先読みがなされる際,前記光ディスクドライブ9は,基準となる回転速度よりも速い速度,例えば,2倍速〜8倍速で光ディスク100を回転させる。
そして,前記録画・再生回路8は,再生速度に応じたペースで,前記再生信号バッファから前記再生信号を出力する。ここで,前記再生信号における映像信号は前記映像選択回路12へ出力され,前記再生信号における音響信号は前記音響選択回路22へ出力される。これにより,早送り再生が可能となり,また,再生処理中に他の割り込み処理が発生した場合でも円滑な再生が可能となる。
【0018】
また,前記映像復号回路11は,前記復調・分離回路3から伝送される映像信号を復号し,復号した映像信号を前記映像選択回路12に伝送する。同様に,前記音響復号回路21は,前記復調・分離回路3から伝送される音響信号を復号し,復号した音響信号を前記音響選択回路22に伝送する。
前記映像選択回路12は,前記制御回路4からの制御指令に従って,入力される複数のコンテンツの映像信号の中から,1つ又は複数の映像信号を選択して前記映像処理回路13へ伝送する。この映像選択回路12に入力される信号には,前記映像復号回路11を通じて入力される放送番組のコンテンツの映像信号と,前記外部信号入力部2を通じて入力される外部入力コンテンツの映像信号と,前記録画・再生回路8を通じて入力される再生コンテンツの映像信号とが含まれる。
【0019】
また,前記映像処理回路13は,前記制御回路4からの制御指令に従って,コンテンツの画像を前記液晶表示パネル15に表示させるために前記液晶ドライバ14に供給するフレーム画像信号を生成する。
例えば,前記映像処理回路13は,前記制御回路4からの制御指令に従って,1つ又は複数のコンテンツの画像が全表示領域の中でレイアウトされた表示用のフレーム画像信号を生成する。即ち,前記映像選択回路12は,1つのコンテンツの画像が全表示領域に渡って,或いは一部の表示領域のみに表示されるフレーム画像信号や,複数のコンテンツの画像が並べて配列されて表示されるフレーム画像信号等を生成する。
【0020】
前記液晶ドライバ14は,前記映像処理回路13から所定周期で順次伝送されてくる前記フレーム画像信号に基づいて前記液晶表示パネル15を制御し,そのフレーム画像信号に対応する1フレーム分(1コマ)の画像を前記液晶表示パネル15に順次表示させる回路である。
また,前記液晶表示パネル15は,前記液晶ドライバ14による制御に応じて,前記フレーム画像信号に対応する映像を表示するデバイスである。
また,前記バックライト17は,前記液晶表示パネル15の背面側に配列された複数の光源の光により,前記液晶表示パネル15の表示領域を背面側から照明するものである。
また,前記調光回路16は,前記制御回路4からの制御指令に従って,前記バックライト17の光源に対する供給電力を調節することにより,前記バックライト17の発光の明るさを調節する回路である。
【0021】
前記音響復号回路21は,前記復調・分離回路3から伝送されてくる音響信号を復号し,復号した音響信号を前記音響選択回路22に伝送する。
前記音響選択回路22は,前記制御回路4からの制御指令に従って,入力される複数の音響信号の中から1つの音響信号を選択して前記音響処理回路23へ伝送する回路である。前記音響選択回路22に入力される音響信号には,前記チューナ1により選局された放送番組のコンテンツの音響信号(前記音響復号回路21を通じて入力される音響信号)と,前記外部信号入力部2を通じて入力される音響信号と,前記録画・再生回路8を通じて入力される再生コンテンツの音響信号とが含まれる。
前記音響処理回路23は,前記制御回路4からの指示に従って,前記音響選択回路22により選択された音響信号に対して各種信号処理を行うものである。例えば,前記スピーカ25の特性に合わせたイコライズ処理や,サラウンド処理等を行う。
前記合波器33は,前記音響処理回路23による処理後の音響信号,即ち,前記スピーカ25に入力される音響信号に,前記ノイズ音抑制回路32によって生成されるノイズ音抑制信号を重畳させる信号合成器である。
前記アンプ24は,前記合波器33により前記ノイズ音抑制信号が重畳された音響信号を,前記制御回路4からの指示に従って増幅或いは減衰させる音量調節処理を行い,前記スピーカ25に出力するものである。これにより,前記スピーカ25から,前記音響処理回路23による処理後のコンテンツの音響信号に対応する音響と,前記ノイズ音抑制信号に対応する音響とを併せた音響が出力される。なお,前記スピーカ25には,ステレオ音響信号におけるLチャンネル用のスピーカ25Lと,Rチャンネル用のスピーカ25Rとが含まれる。
【0022】
前記リモコン受光部6は,当該テレビジョン受像機Xの操作用のリモコン7(リモート操作器)から,所定の信号伝送プロトコル(いわゆるリモコンプロトコル)に従って,赤外線による無線信号受信を行う信号伝送インターフェースである。そして,前記リモコン受光部6は,赤外線信号から前記リモコン7に対する操作入力情報を表す信号を抽出し,その信号を前記制御回路4に伝送する。
前記制御回路4は,演算手段であるMPU4a,記憶手段であるROM4b(EPROM)及びEEPROM4cを備え,前記MPU4aが,制御プログラムを実行することによって当該テレビジョン受像機X全体を制御する。
前記ROM4bには,前記MPU4aによって実行される制御プログラムが予め格納されている。また,前記EEPROM4cには,前記MPU4aが実行する処理において読み書き(参照又は書き込み)される各種データが記憶される。
例えば,前記制御回路4は,前記リモコン7及び前記リモコン受光部6を通じてチャンネル選局や音量調節の情報を取得し,その取得情報の内容に応じて前記チューナ1に対する選局指示や前記アンプ24に対する音量調節指示を出力する。なお,前記アンプ24に対する音量調節指示の内容は,前記ノイズ音抑制回路32にも伝送される。
【0023】
前記信号解析回路31は,前記エラー検出回路9aにより検出された前記トラッキングエラー信号における所定の指定周波数の信号成分及び位相を検出する回路である。ここで,前記指定周波数は,前記録画・再生回路8から伝送される前記光ディスク100の回転周波数の設定値である。即ち,前記信号解析回路31は,前記光ディスク100の回転周波数の信号成分の強度及び位相を検出する信号特性検出手段の一例である。
例えば,前記信号解析回路31は,以下の手順で前記光ディスク100の回転周波数の信号成分の強度及び位相を検出する。
まず,前記信号解析回路31は,時間領域のデータである前記トラッキングエラー信号のデータに対してフーリエ変換処理を施すことにより,前記トラッキングエラー信号のパワースペクトルデータ,即ち,周波数領域のデータを生成する。
次に,前記信号解析回路31は,前記パワースペクトルデータにおける前記光ディスク100の回転周波数の帯域以外のデータの値を最小値に修正する。
さらに,前記信号解析回路31は,修正後のパワースペクトルデータに対して逆フーリエ変換処理を施すことにより,前記トラッキングエラー信号における前記光ディスク100の回転周波数の信号成分を抽出した時間領域のデータを生成する。
そして,前記信号解析回路31は,逆フーリエ変換処理を通じて抽出した時間領域のデータの振幅及び位相を,前記光ディスク100の回転周波数の信号成分の強度及び位相として検出する。その検出結果は,前記ノイズ音抑制回路32に伝送される。
【0024】
また,前記ノイズ音抑制回路32は,前記光ディスク100の回転周波数と同じ周波数,前記信号解析回路31により検出された強度に応じた振幅,及び前記信号解析回路31により検出された位相に対して前記光ディスク100の回転周波数に応じて定まる位相差を有する位相で信号レベルが変動する前記ノイズ音抑制信号を生成する。このノイズ音抑制信号は,前記合波器33により,前記スピーカ25に入力される音響信号に重畳される。なお,前記ノイズ音抑制回路32及び前記合波器33が,前記ノイズ音抑制信号重畳手段の一例である。
ここで,前記ノイズ音抑制回路32は,前記アンプ24に設定される増幅ゲインに基づいて,前記アンプ24による増幅後の振幅が前記信号解析回路31により検出された強度に比例するように前記ノイズ音抑制信号の振幅を設定する。
また,前記ノイズ音抑制回路32は,当該テレビジョン受像機Xの前面側におけるユーザの位置を想定した位置において,前記ノイズ音抑制信号に基づき前記スピーカ25から出力される音響の位相が,前記光ディスクドライブ9の振動音の位相と逆位相となるように,前記ノイズ音抑制信号の位相を設定する。この場合,前記ノイズ音抑制信号の位相は,前記光ディスクドライブ9の位置におけるその振動音の周波数と位相とが,それぞれ前記光ディスクの回転周波数と前記信号解析回路31により検出された位相と一致するとの前提の下に設定される。
例えば,前記光ディスク100の回転周波数がfd[Hz],前記光ディスクドライブ9からユーザの位置までの距離に対する前記スピーカ25からユーザの位置までの距離の差がΔL[mm]であるとすると,前記ノイズ音抑制信号の位相θcは,前記信号解析回路31により検出された位相θdに対して次式に基づき算出される位相差Δθだけ加算した位相に設定される。なお,ΔL[mm]は既知の定数であり,音速を34029[mm/s]としている。
Δθ=π+2π×ΔL/(34029/fd)
即ち,前記ノイズ音抑制回路32は,前記トラッキングエラー信号から前記光ディスク100の回転周波数fdの成分を抽出した信号に対し,前記位相差Δθだけ位相シフト処理を施した信号を前記ノイズ音抑制信号として生成する。
【0025】
前述したように,前記トラッキングエラー信号における前記光ディスク100の回転周波数の信号成分の強度は,前記光ディスク100の偏芯の大きさ,即ち,前記光ディスクドライブ9が発する主な振動音の大きさを表す指標となる。
また,前記トラッキングエラー信号における前記光ディスク100の回転周波数の信号成分の位相は,前記光ディスクドライブ9が発する主な振動音の位相とほぼ一致する。
従って,前記スピーカ25から出力される前記ノイズ音抑制信号の音響は,想定されるユーザの位置における前記光ディスクドライブ9の振動音をキャンセルするよう作用する。
また,前記光ディスクドライブ9は,通常,前記エラー検出回路9aを備えている。また,コンテンツの音響出力用の前記スピーカ25は,既存の部品である。さらに,前記信号解析回路31や前記ノイズ音抑制回路32は,既存の電子基板へ追加実装されるDSP(Digital Signal Processor)等により実現できる。或いは,前記信号解析回路31や前記ノイズ音抑制回路32の処理は,前記音響処理回路23が備えるプロセッサが実行するプログラムの追加によって実現することも考えられる。そのため,テレビジョン受像機Xの実現にあたり,従来に比べて組み立て工数の増大を招くような部品を追加する必要がない。
【0026】
図2は,テレビジョン受像機Xにおける前記スピーカ25R,25Lと前記光ディスクドライブ9との位置関係の一例を表す図であり,テレビジョン受像機Xの概略正面図である。
図2に示される例では,Rチャンネル用のスピーカ2Rと前記光ディスクドライブ9とが,当該テレビジョン受像機Xの前面側から見て重なる位置に配置されている。例えば,Rチャンネル用のスピーカ25Rの背面側に前記光ディスクドライブ9が配置されている。このような配置により,ユーザ50の位置が当該テレビジョン受像機Xの前面側において変化しても,そのユーザ50の位置に到達する前記光ディスクドライブ9の振動音S0の位相と前記ノイズ音抑制信号に基づく出力音S1の位相とが逆位相となる関係が崩れず,前記ノイズ音抑制信号によるノイズキャンセルの作用が確実に機能する。
また,図2に示されるような前記スピーカ25及び前記光ディスクドライブ9の配置の場合,前記ノイズ音抑制信号は,ステレオ音響信号におけるRチャンネルの音響信号に対してのみ重畳される。
なお,前記光ディスクドライブ9の位置が,当該テレビジョン受像機Xの前面側から見て2つのスピーカ25R,25Lのいずれの位置とも重ならない場合も考えられる。その場合,前記ノイズ音抑制回路32は,ステレオ音響信号におけるRチャンネル及びLチャンネルの音響信号それぞれについて前記位相差Δθを個別に算出し,その個別の位相差Δθに基づいてRチャンネル及びLチャンネルの音響信号それぞれに重畳させる2つの前記ノイズ音抑制信号を生成する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は,テレビジョン受像機などのAV装置への利用が可能である。
【符号の説明】
【0028】
X :テレビジョン受像機
1 :チューナ
2 :外部信号入力部
3 :復調・分離回路
4 :制御回路
6 :リモコン受光部
7 :リモコン
8 :録画・再生回路
9 :光ディスクドライブ
9a :エラー検出回路
11 :映像復号回路
12 :映像選択回路
13 :映像処理回路
14 :液晶ドライバ
15 :液晶表示パネル
16 :調光回路
17 :バックライト
21 :音響復号回路
22 :音響選択回路
23 :音響処理回路
24 :アンプ
25 :スピーカ
31 :信号解析回路
32 :ノイズ音抑制回路
33 :合波器
50 :ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツの音響を出力するスピーカと,光ディスクを回転させ,該光ディスク上のトラックと光ピックアップ部との位置ずれ量を表すトラッキングエラー信号を検出し,該トラッキングエラー信号に基づくトラッキングサーボを行いつつ前記光ピックアップ部を通じて前記光ディスクにアクセスする光ディスクドライブとを備えたAV装置であって,
前記トラッキングエラー信号における前記光ディスクの回転周波数の信号成分の強度及び位相を検出する信号特性検出手段と,
前記光ディスクの回転周波数と同じ周波数,前記信号特性検出手段により検出された強度に応じた振幅,及び前記信号特性検出手段により検出された位相に対して前記光ディスクの回転周波数に応じて定まる位相差を有する位相で信号レベルが変動するノイズ音抑制信号を生成し,該ノイズ音抑制信号を前記スピーカに入力される音響信号に重畳させるノイズ音抑制信号重畳手段と,
を具備してなることを特徴とするAV装置。
【請求項2】
前記スピーカと前記光ディスクドライブとが装置前面側から見て重なる位置に配置されてなる請求項1に記載のAV装置。
【請求項3】
放送コンテンツの音響を出力するスピーカと,光ディスクを回転させ,該光ディスク表面のトラックと光ピックアップ部との位置の偏差を表すトラッキングエラー信号を検出し,該トラッキングエラー信号に基づくトラッキングサーボを行いつつ前記光ピックアップ部を通じて前記光ディスクにアクセスする光ディスクドライブとを備え,装置前面側から見て前記スピーカと前記光ディスクドライブとが重なる位置に配置されたテレビジョン受像機であって,
前記トラッキングエラー信号における前記光ディスクの回転周波数の信号成分の強度及び位相を検出する信号特性検出手段と,
前記光ディスクの回転周波数と同じ周波数,前記信号特性検出手段により検出された強度に応じた振幅,及び前記信号特性検出手段により検出された位相に対して予め設定された差のある位相で信号レベルが変動するノイズ音抑制信号を生成し,該ノイズ音抑制信号を前記スピーカに入力される音響信号に重畳させるノイズ音抑制信号重畳手段と,
を具備してなることを特徴とするテレビジョン受像機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−170628(P2010−170628A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13620(P2009−13620)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】