説明

AVE8062およびドセタキセルを組み合わせる抗腫瘍組み合わせ

本発明は、AVE8062またはこれらの塩およびドセタキセルの連続抗腫瘍組み合わせであって、AVE8062を10から50mg/mの用量で患者に投与した後、この週の異なる日に、好ましくは、24時間の間隔の後に、ドセタキセルを50から120mg/mの用量で投与することを特徴とする組み合わせに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形腫瘍の治療においてAVE8062またはAVE8062の塩およびドセタキセルを組み合わせる抗腫瘍組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
Clinical Cancer Research 2004,10,415−427では、固形腫瘍の治療において血管標的薬剤(即ち、VTA)が比較される。これらのうち、AVE8062A(AVE8062塩酸塩)は4.3−30mg/mの週用量で単独投与される。
【0003】
Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.2003,22,834,abstract 834は、4.5、6.0、8.0、11.5、15.5、22および30mg/mの週用量でのAVE8062Aの単独投与を記載する。AVE8062Aが高すぎる用量で投与されるとき、心臓毒性が観察された。
【0004】
J.Clin.Onc.2006,ASCO meeting,2006:13074,Vol.24,No.18Sは、要約の形で、AVE8062Aのオキサリプラチンとの組み合わせを記載する。この組み合わせはJpn.J Cancer Res.1999,90,1016−1025にも記述される。
【0005】
WO 02/056692はコンブレタスタチンA−4および2種類の抗癌剤の組み合わせを記載する。示される例のうちで、1から100mg/mの用量のコンブレタスタチンA−4が40から250mg/mの用量のパクリタキセルと組み合わせられる。WO 2006/078422も1から100mg/mの用量のコンブレタスタチンおよび40から250mg/mの用量のパクリタキセルの組み合わせを記述する。
【0006】
WO 02/074229はAVE8062並びにタキサン、特には、タキソールまたはドセタキセル、ビンカアルカロイド、アルキル化剤および代謝拮抗剤から選択される抗癌剤の組み合わせを記載する。この組み合わせは2種類の化合物を同時に、または連続的に投与することからなる。投与の順番は特定されない。これらの化合物は経口、静脈内、皮下または筋肉内投与することができる。
【0007】
タキサンの場合、1から10mg/kgの用量で腹腔内注射によって、または1から3mg/kgの用量で静脈内注射によって投与される。マウスにおける、150mg/kgの用量のAVE8062および109.6mg/kgの用量のドセタキセル(AVE8062A/ドセタキセル比:1.37)の組み合わせの例が示される。マウスの場合において3のマウス→ヒト変換因子(Freireich,EJ「Quantitative comparison of toxicity of anticancer agents in mouse,rat,dog,monkey and man」,Cancer Chemother Rep.1966,50(4),219−244を参照)を採用することにより、これは、ヒトにおける、450mg/mのAVE8062および330mg/mのドセタキセル用量を生じる。
【0008】
Cancer Res.2007,67(19),9337−9345は、マウスにおける、SKOV3ip1、HeyA8またはHeyA8−MDR型(卵巣癌細胞)の腫瘍細胞の治療におけるAVE8062Aおよびドセタキセルの組み合わせを記載する。マウスにおいて、AVE8062Aは10、30、50および100mg/kg(30から300mg/m)の用量で、ドセタキセルは2または1.4mg/kg(6または4.2mg/m)の用量で投与された。30mg/kgの用量がAVE8062について推奨されるものである。
【0009】
サイトwww.clinicaltrials.govに、進行した固形腫瘍を有する患者の治療におけるAVE8062+シスプラチン(D1)/ドセタキセル(D2)の組み合わせの第I相試験(符号NCT00719524)が提示される。用量は特定されない。
【0010】
Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.2005,Vol.46,abstract#3425(ドセタキセルおよびAVE8062A、血管標的薬剤の間のイン・ビボ相乗作用)は、MA13/C乳癌を有するマウスに投与されるAVE8062Aおよびドセタキセルの組み合わせを記載する。この組み合わせで見出された最高非毒性用量(HNTD)は37.5mg/kg/AVE8062A注射および54.8mg/kg/ドセタキセル注射(即ち、1.461のドセタキセル/AVE8062A比)である。本発明はヒト患者に投与しようとする組み合わせを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第02/056692号
【特許文献2】国際公開第2006/078422号
【特許文献3】国際公開第02/074229号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Clinical Cancer Research 2004,10,415−427
【非特許文献2】Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.2003,22,834,abstract 834
【非特許文献3】J.Clin.Onc.2006,ASCO meeting,2006:13074,Vol.24,No.18S
【非特許文献4】Jpn.J Cancer Res.1999,90,1016−1025
【非特許文献5】Freireich,EJ「Quantitative comparison of toxicity of anticancer agents in mouse,rat,dog,monkey and man」,Cancer Chemother Rep.1966,50(4),219−244
【非特許文献6】Cancer Res.2007,67(19),9337−9345
【非特許文献7】Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.2005,Vol.46,abstract#3425
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、AVE8062またはAVE8062塩およびドセタキセルの抗腫瘍および連続組み合わせであって、AVE8062を10から50mg/mの用量で患者に投与した後、この週の異なる日に、好ましくは、24時間の間隔の後に、ドセタキセルを50から120mg/mの用量で投与することを特徴とする組み合わせに関する。
【0014】
AVE8062またはAVE8062塩の用量はむしろ20から40mg/mであり、むしろ30から40mg/mである。ドセタキセルの用量はむしろ50から100mg/mであり、むしろ60から80mg/mである。AVE8062またはAVE8062塩の用量は35mg/mであり得、ドセタキセルのこれは75mg/mであり得る。
【0015】
AVE8062またはAVE8062塩およびドセタキセルは灌流によって投与することができる。
【0016】
本発明は、サイクルを開始させるAVE8062またはAVE8062塩の投与、次いでドセタキセルの投与を含むサイクルの間に患者に投与しようとする組み合わせであって、AVE8062またはAVE8062塩を最初に投与し、次いで、この週の異なる日に、好ましくは、24時間の間隔の後に、ドセタキセルを投与し、AVE8062およびドセタキセルの用量は請求項1から4のうちの一項において定義される通りであることを特徴とする組み合わせにも関する。このサイクルは反復することができ、AVE8062またはAVE8062塩の2回の投与の間の間隔は1から4週間の範囲、好ましくは、3週間である。
【0017】
本発明は、請求項1から10のうちの一項において定義される抗腫瘍組み合わせの調製へのAVE8062またはAVE8062塩およびドセタキセルの使用にも関する。本発明は、請求項1から10のうちの一項において定義される抗腫瘍組み合わせの調製へのAVE8062またはAVE8062塩の使用にも関する。
【0018】
この組み合わせは固形腫瘍を治療することを可能にする。これは乳癌、卵巣癌、食道癌、膵臓癌、筋肉組織もしくは軟組織の癌、頭/首癌、膀胱癌、肝臓癌、前立腺癌、卵巣癌または皮膚癌の治療を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
AVE8062に関して、これは式:
【0020】
【化1】

を有し、および化学名(Z)−N−[2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]フェニル]−L−セリンアミドを有する。AVE8062AはAVE8062の塩酸塩を示す。
【0021】
AVE8062はWO 03/084919に記載される方法に従って調製することができる。用いたプロトコルの脈絡においては、AVE8062Aが用いられた;この化合物は活性主成分の水溶液を収容するバイアルの形態で包装される。約25mgの量のAVE8062Aをバイアルから引き出し、次いで灌流バッグ内で希釈した後、患者に投与する。バッグ内のAVE8062Aの濃度は0.012mg/mlから1.62mg/mlである。各々の患者に投与される灌流容積は患者に依存する。
【0022】
ドセタキセルに関して、これはSanofi−Aventisにより商品名Taxotere(登録商標)で販売される。これは下記化学式を有する:
【0023】
【化2】

【0024】
CAS No.114977−28−5または148408−66−6(三水和物)を有する形態であってもよい。ドセタキセルの調製は、例えば、EP 0253738、EP 0253739およびWO 92/09589に記述される。
【0025】
用いたプロトコルの脈絡においては、ドセタキセルはポリソルベート80中の40mg/mlの濃度の無水ドセタキセルを収容するバイアルの形態で包装されていた。20mgのドセタキセル(0.5ml)を収容するバイアルを用いることが可能であり、これを次に、10mg/mlの最終ドセタキセル濃度を有する予混合溶液が得られるように、13%w/wのエタノールの水溶液のバイアル(1.98ml)の内容物で希釈する。80mgのドセタキセル(2ml)を収容するバイアルを用いることも可能であり、これを次に、10mg/mlの最終ドセタキセル濃度を有する予混合溶液が得られるように、13%w/wのエタノールの水溶液のバイアル(7.33ml)の内容物で希釈する。
【0026】
次に、グルコースまたは塩化ナトリウムを収容する灌流バッグ内で予混合溶液これ自体を再希釈する。各患者に投与される灌流容積は患者に依存する。
【0027】
抗腫瘍組み合わせに関して、これは、好ましくは灌流により、AVE8062またはAVE8062塩を10から50mg/mの用量で、次いで、この週の異なる日、好ましくは、24時間の間隔の後、ドセタキセルを50から120mg/mの用量で連続的に投与することからなる。この2種類の化合物をこの順序で、即ち、まずAVE8062またはAVE8062塩、次いでドセタキセルを連続的に組み合わせることが好ましい。
【0028】
好ましくは、AVE8062またはAVE8062塩の用量は20から40mg/m、むしろ30から40mg/mであり、および/またはドセタキセルの用量は50から100mg/m、むしろ60から80mg/mである。例えば、ある組み合わせは35mg/mのAVE8062またはAVE8062塩および75mg/mのドセタキセルであり得る。
【0029】
[結果]
プロトコルは進行した固形腫瘍を有する患者にAVE8062Aおよびドセタキセルの組み合わせを投与することからなるものであった。AVE8062Aを灌流により約30分間にわたって投与し、翌日、ドセタキセルを灌流により約1時間にわたって投与する。次に、このAVE8062A/ドセタキセルサイクルを3週間毎に繰り返す。
【0030】
患者:メジアン年齢:53歳(範囲28から71歳);39名、男性14名/女性25名;主な腫瘍:乳(12名)および食道(8名)。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
これらの組み合わせはいかなる重篤な心臓毒性効果をも導かなかった。
【0034】
【表3】

【0035】
腫瘍に関して、これは固形腫瘍、特には、成人または小児における固形腫瘍であり得る。この組み合わせは乳癌、卵巣癌、食道癌、膵臓癌、筋肉組織もしくは軟組織の癌、頭部/首部癌、膀胱癌、肝臓癌、前立腺癌、卵巣癌または皮膚癌を治療することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AVE8062またはAVE8062塩およびドセタキセルの抗腫瘍および連続組み合わせであって、AVE8062を10から50mg/mの用量で患者に投与した後、この週の異なる日に、好ましくは、24時間の間隔の後に、ドセタキセルを50から120mg/mの用量で投与することを特徴とする組み合わせ。
【請求項2】
AVE8062またはAVE8062塩の用量が20から40mg/mであり、むしろ30から40mg/mである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
ドセタキセルの用量が50から100mg/mであり、むしろ60から80mg/mである、請求項1または2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
AVE8062またはAVE8062塩の用量が35mg/mであり、およびドセタキセルの用量が75mg/mである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項5】
AVE8062またはAVE8062塩およびドセタキセルを灌流によって投与する、請求項1から4のうちの一項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
サイクルを開始させるAVE8062またはAVE8062塩の投与、次いでドセタキセルの投与を含むサイクルの間に患者に投与しようとする組み合わせであって、AVE8062またはAVE8062塩を最初に投与し、次いで、この週の異なる日に、好ましくは、24時間の間隔の後に、ドセタキセルを投与し、AVE8062およびドセタキセルの用量は請求項1から4のうちの一項において定義される通りであることを特徴とする組み合わせ。
【請求項7】
サイクルを反復し、AVE8062またはAVE8062塩の2回の投与の間隔が1から4週間の範囲、好ましくは、3週間であることを特徴とする、請求項6に記載の組み合わせ。
【請求項8】
固形腫瘍を治療するための、請求項1から7のうちの一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
固形腫瘍が固形乳房腫瘍ではない、請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
乳癌、卵巣癌、食道癌、膵臓癌、筋肉組織もしくは軟組織の癌、頭部/首部癌、膀胱癌、肝臓癌、前立腺癌、卵巣癌または皮膚癌を治療するための、請求項1から7に記載の組み合わせ。
【請求項11】
請求項1から10のうちの一項において定義される抗腫瘍組み合わせの調製へのAVE8062またはAVE8062塩およびドセタキセルの使用。
【請求項12】
請求項1から10のうちの一項において定義される抗腫瘍組み合わせの調製へのAVE8062またはAVE8062塩の使用。

【公表番号】特表2012−511554(P2012−511554A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540175(P2011−540175)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052475
【国際公開番号】WO2010/067027
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】