説明

Ar/NH3急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法

【課題】Ar/NH急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】ウェーハの表面から内側に十分な深さのDZがウェーハのバルク領域での高いゲッタリング効果と結合される。シリコンウェーハにおいて、真性ゲッタリング場所としての役割をする酸素析出物は垂直分布を示す。ウェーハの上面から下面に至る酸素析出物濃度プロファイルは、ウェーハの上下面から所定の第1及び第2深さで第1及び第2ピークと、ウェーハの上下面と第1及び第2ピークのそれぞれとのDZと、ウェーハのバルク領域に対応する第1及び第2ピーク間のコンケーブ領域を含む。このような酸素析出物濃度プロファイルのために、ウェーハはNH及びArを含むガス混合物雰囲気で約1200℃以下の温度で急速熱的アニーリング工程に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロエレクトロニクスの製造方法及び素子に係り、特にシリコンインゴットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を製作するための出発物質である単結晶シリコンは、一般にチョクラルスキー(Czochralski;CZ)法と呼ばれる結晶成長法により円筒状のインゴットより形成される。単結晶シリコンよりなるインゴットは、スライシング、エッチング、洗浄、ポリシングなどの一連のウェーハリング工程を経つつウェーハとして製作される。前記CZ法によれば、単結晶シリコンよりなるシード結晶を溶融シリコン内に入れた後、上向きに引上げれば、溶融シリコンは徐々に抽出されつつ単結晶インゴットとして成長される。前記シリコン溶融物は、石英るつぼ内に収容されているために多様な不純物(例えば、酸素)によって汚染される。
【0003】
シリコンの溶融温度において、酸素は溶融物の温度に該当するシリコン内の酸素の溶解度と固状化されたシリコン内での酸素の実分離係数により決定される濃度に至るまでに結晶格子内に浸透する。このように結晶成長過程でシリコンインゴットに浸透された酸素の濃度は、後続する集積回路の製作時に使われる典型的な温度で固状化されたシリコン内の酸素溶解度よりはるかに大きい。一方、結晶が成長して冷却されるにつれ、結晶内の酸素の溶解度は急に減少し、結果的に冷却されたインゴット内には酸素が過飽和される。
【0004】
前記インゴットはウェーハにスライスされる。ウェーハ内の残留するインタスティシャル酸素は、後続する熱的工程間に酸素析出物として成長される。素子活性領域内での酸素析出物の存在はゲート酸化膜の集積性を低下させ、及び/または望ましくない基板漏れ電流を誘発させうる。しかし、これらが素子活性領域の外側(すなわち、バルク領域)に存在すれば、これらは素子工程から生じる金属不純物を収集しうる。このような望ましい機能をゲッタリングと呼ぶ。
【0005】
図1は、従来のMOSトランジスタの断面構造を示す。図1を参照すれば、酸素析出物がシリコン基板10の表面近傍に形成されたソース領域12とドレーン領域14との間のチャンネル領域内に存在すれば、ゲート電極18とシリコン基板10との電気的絶縁を保つゲート絶縁膜16の絶縁破壊を誘発しうる。また、MOSFETを使用するメモリ素子でのリフレッシュ特性を劣化させることになる。
【0006】
また、後続する熱処理により生じるウェーハのバルク領域10a内に形成された酸素析出物は漏れソースとして作用し、後続する半導体素子の製作過程で所望しない金属不純物をトラップしうる真性ゲッタリングサイトの役割も行う。したがって、インゴット内に酸素濃度が十分に高ければ真性ゲッタリングサイトの酸素析出物の量が多くなってゲッタリング能力が高まる。しかし、酸素濃度が足りなければ、酸素析出物がバルク領域内に形成されずにゲッタリング能力が劣るか、または完全になくなる。したがって、ウェーハのバルク領域内には適正量の酸素析出物が分布されるように調節する必要がある。
【0007】
一方、従来の一般的な方法でインゴット成長され、ウェーハリングされたウェーハはウェーハの上面(前面)から下面(後面)に至るまで、全体的に酸素析出物が分布されている。一般的に、D−欠陥(ベイカンシ集塊(vacancy agglomerates))、転位(dislocation)、積層欠陥及び酸素析出物などが存在しないデヌーデッドゾーン(Denuded Zone;DZ)10b層が上面から所定深さに至るまで確保しなければならない。しかし、従来の方法により製造されたウェーハはウェーハの表面近傍まで酸素析出物が生じて漏れ電流のソースとして作用する。
【0008】
したがって、ウェーハの表面近傍に十分なDZを確保しつつ、ウェーハのバルク領域に真性ゲッタリングサイトを形成するために、例えば、初期酸素が13ppma(parts per million atoms)以上で高濃度の酸素を含有したウェーハを低温と高温とを交代しつつ長時間熱処理を行うことによって、ウェーハのバルク領域内に酸素析出物を形成させうる。しかし、DZがインタスティシャル酸素の外方拡散(out−diffusion)に強く依存するために十分なDZを得にくい。このような従来の技術により熱的に処理された半導体ウェーハに対して、その上面から下面に至る酸素析出物の濃度プロファイルを図2のように示せる。
【0009】
特に、付加的な高温の熱的工程が長時間実行される従来の技術は素子の特性を悪化させうる。例えば、スリップや歪み(warpage)がウェーハで生じられる。しかも、製造原価も増加しうる。また、そうした場合には、バルク領域内の酸素析出物にトラップされていた金属汚染物、特にFeなどが後続工程によりウェーハの表面のDZ側に再びリリースされて漏れソースとして作用するという問題点がある。
【0010】
図3は特許文献1の図1Aに開示された従来の他の方法により形成された酸素析出物の濃度プロファイルを再図示して示した図面である。特に、図3はN雰囲気下でウェーハに対して急速熱的アニーリング(急速熱的アニーリング)工程を行い、後続熱処理を行って形成された酸素析出物のウェーハ深さによる濃度プロファイルを示したものである。しかし、前記従来の方法は図3から分かるように、ウェーハの表面からのDZの確保がほとんど不可能であり、バルク領域内に酸素析出物が十分に存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5401669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ウェーハの表面近傍にDZが十分に確保されており、同時にウェーハのバルク領域内で真性ゲッタリングサイトとしての役割をする酸素析出物の制御された垂直的分布を有するシリコンウェーハを提供するところにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ウェーハの表面近傍にDZが十分に確保されており、同時にウェーハのバルク領域内で真性ゲッタリングサイトとしての役割をする酸素析出物の制御された垂直的分布を有するシリコンウェーハとインゴットとの製造方法を提供するところにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、本発明に係るシリコンウェーハを製造するために急速冷却が可能な単結晶シリコンインゴットを製造するためのチョクラルスキープーラを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態は、真性サイトとしての役割をする酸素析出物の制御された垂直的分布を有するシリコンウェーハを提供する。特に、半導体素子の活性領域が形成されうるシリコンウェーハの上面から下面に至る酸素析出物濃度プロファイルは、ウェーハの上下面から各々所定の第1及び第2深さにある第1及び第2ピークを含む。また、DZがウェーハの上面と第1ピークとの間及びウェーハの下面と第2ピークとの間に含まれる。また、酸素析出物濃度プロファイルは、第1ピークと第2ピークとの間でウェーハのバルク領域に相当するコンケーブ領域を有する。
【0016】
さらに、本発明の実施形態において、前記ウェーハの下面と前記第2ピークとの間のDZはその内部に少なくとも1つのスリップ転位領域を含み、それに対してウェーハの上面と第1ピークとの間のDZはその内部にスリップ転位を含まない。他の実施形態では、シリコンウェーハはSTIスリップのないウェーハの上面と第1ピークとの間のDZで複数個の浅いトレンチ分離(Shallow Trench Isolation;STI)領域を含む。
【0017】
また、他の実施形態では、酸素析出物濃度プロファイルは、前述したように、第1及び第2ピーク、DZ及び第1及び第2ピークの間のコンケーブ領域を含む。複数個のSTI領域は、STI領域に近接した前記ウェーハの上面と第1ピークとの間のDZ内に含まれ、酸素析出物が、図2のSTI領域から遠く離れて存在するシリコンウェーハにおけるSTI領域に比べて減少されたSTIスリップを有する。
【0018】
本発明の何れかの実施形態では、酸素析出物濃度プロファイルが、上下面間の中心に位置するシリコンウェーハの中心面に対して対称的である。したがって、例えば、前記所定の第1及び第2深さは同一である。しかし、他の実施形態では、前記プロファイルは対称的である必要はなく、例えば、第1ピーク及び第2ピークが相異なる深さになりうる。また、本発明のある実施形態では、DZの深さは、ウェーハの各面から5μmないし40μmの範囲であるために、半導体素子の活性領域が十分に深く形成される。
【0019】
本発明の他の実施形態では、前記第1ピーク及び第2ピークでの酸素析出物の濃度は、少なくとも1×10cm−3以上であり、前記第1ピーク及び第2ピーク間の前記コンケーブ領域での酸素析出物の濃度は、少なくとも1×10cm−3以上である。さらに他の実施形態では、前記コンケーブ領域内の最低酸素析出物濃度は、前記第1及び第2ピークでの最高酸素析出物濃度よりも少なくとも1次数の大きさだけ小さい。
【0020】
本発明の他の実施形態に係るシリコンウェーハは、酸素析出物核生成中心、例えば後続する熱処理を通じて前述した酸素析出物濃度プロファイルを生成するベイカンシの制御された分布を含む。前記ベイカンシ濃度プロファイルは、前記ウェーハの上下面からそれぞれ所定の第1及び第2深さでの第1及び第2ピークを含む。また、前記ベイカンシ濃度は、前記ウェーハの上面と前記第1ピークとの間及び前記ウェーハの下面と前記第2ピークとの間にDZを形成するために臨界濃度より小さな所定の濃度に保たれる。
【0021】
前記ベイカンシ濃度プロファイルは、前記第1及び第2ピークの間でコンケーブ領域を有する。一部の実施形態では、前記ウェーハの下面と前記第2ピークとの間のDZは、その内部に少なくとも1つのスリップ領域を含み、それに対して前記ウェーハの上面と前記第1ピークとの間のDZはその内部にスリップ転位を含まない。他の実施形態では、複数個のSTI領域が前記ウェーハの上面と前記第1ピークとの間のDZに含まれ、前述した酸素析出物核生成中心を含まないシリコンウェーハでの同一なSTI領域に比べて減少されたSTIスリップを有する。対称または非対称的なプロファイルが得られる。
【0022】
本発明の方法を説明する実施形態によれば、急速熱的アニーリング(RTA)は、後続する熱処理の間に酸素析出物の成長場所としての役割をする核生成中心を生ずるために、前記シリコンウェーハの上下面に対してベイカンシ注入効果を有するガスとインタスティシャルシリコン注入効果を有するガスの混合ガス雰囲気下で、約1100℃ないし1200℃で前記シリコンウェーハに対して実行され、前記ウェーハの上面から下面に至る核生成中心濃度プロファイルは、前記ウェーハの上下面からそれぞれ所定の第1及び第2深さでの第1及び第2ピークを含む。
【0023】
また、前記核生成中心濃度は、ウェーハの上面と第1ピークとの間及び前記ウェーハの下面と第2ピークとの間にDZを形成するための臨界濃度よりも小さな所定の濃度に保たれる。最後に、核生成中心プロファイルは、ウェーハのバルク領域に相当する前記第1ピーク及び第2ピークの間にコンケーブ領域を有する。対称または非対称的なプロファイルが提供されうる。
【0024】
さらに他の実施形態において、前記RTAは、後続する熱処理の間に酸素析出物成長サイトとしての役割をする核生成中心を生じるためにNH及びArを含むガス混合物の雰囲気下でシリコンウェーハに対して実行され、ウェーハの上面から下面に至る核生成中心濃度プロファイルは前述したようになる。前記RTAは、約1100℃ないし1150℃で実行される。他の実施形態では、前記RTAは約1120℃で実行される。他の実施形態では、前記RTAは少なくとも約5秒間行われる。さらに他の実施形態では、前記RTAは約50℃/秒であり、NH及びArを含む雰囲気を急速に加熱させることが先行する。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態によれば、約1100℃ないし1200℃で少なくとも約5秒間NH及びArを含む雰囲気下で上下面を有するシリコンウェーハに対してRTAを行うことによって、シリコンウェーハが製作される。他の実施形態において、前記RTAは約1100℃ないし1150℃で実行される。さらに他の実施形態において、前記RTAは1120℃で行われる。
【0026】
さらに、他の実施形態において、前記RTAを行う前に、前記雰囲気の加熱が約50℃/秒、例えば約800℃から約1100℃ないし1150℃に増加される。しかも、前記RTAを行った後に、前記加熱が約10℃/秒ないし約70℃/秒、例えば約800℃まで減少されうる。さらに他の実施形態において、前記加熱を減少させた後、NHが前記雰囲気からパージされうる。
【0027】
本発明の他の方法を示す実施形態によれば、複数個のシリコンウェーハがRTAチャンバ内でAr及びNH3を含む雰囲気下で、一連のウェーハから前記RTAチャンバにシリコンジオキシドの昇華を起こす温度以下で、一連のシリコンウェーハに対するRTA工程を連続して行うことによって製作される。前記RTAは、前述したいかなる条件下でも実行されうる。他の実施形態において、シリコンウェーハがRTAチャンバのシリコンジオキシドを洗浄せずに6ヵ月以上も連続して処理されうる。
【0028】
他の方法を示す実施形態によれば、熱処理はウェーハの上面から下面に至る酸素析出物濃度プロファイルを生成するために前記RTA以後に実行され、前記プロファイルはウェーハの上下面からそれぞれ所定の第1及び第2深さでの第1及び第2ピーク、前記ウェーハの上面と第1ピークとの間及び前記ウェーハの下面と第2ピークとの間のDZ、前記第1ピークと第2ピークとの間でのコンケーブ領域を含む。対称または非対称的なプロファイルが提供されうる。
【0029】
本発明の他の実施形態において、本発明の実施形態に係るRTAが行われるシリコンウェーハが、インゴットの引上げ速度がインタスティシャル集塊の形成が防止されるのに十分に大きいが、インタスティシャル集塊の形成が防止され、ベイカンシ集塊の形成が防止されるのに十分に小さいインゴット引上げ速度プロファイルによって、ホットゾーン炉で溶融シリコンから引上げられたインゴットから製作されうる。
【0030】
本発明の他の実施形態では、本発明の実施形態に係るRTAが行われるシリコンウェーハが、インゴットの引上げ速度がインタスティシャル集塊を形成せずに、インゴットの直径を貫通しつつベイカンシ集塊が形成されるのに十分な大きさを有するインゴット引上げ速度プロファイルによって、ホットゾーン炉で溶融シリコンから引上げられたインゴットから製作されうる。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、単結晶シリコンインゴットを成長させるためのチョクラルスキープーラは、チャンバ密封体、溶融シリコンを保有する前記チャンバ密封体内のるつぼ、シード結晶を保有するために前記るつぼに隣接されている前記密封体内のシードホルダー、前記るつぼを取囲む前記密封体内のヒーターを含む。
【0032】
また、相互離れている内部及び外部熱遮断ハウジング壁、前記内部及び外部熱遮断ハウジング壁と連結した熱遮断ハウジング蓋及び熱遮断ハウジング底を含み、前記熱遮断ハウジング蓋は前記内部熱遮断ハウジング壁から前記外部熱遮断ハウジング壁まで上向きに傾き、前記熱遮断ハウジング底は前記内部熱遮断ハウジング壁から前記外部熱遮断ハウジング壁に向けて下向きに傾く、環状の熱遮断ハウジングが前記チャンバ密封体内に提供される。前記環状の熱遮断ハウジングは前記外部熱遮断ハウジング壁と前記熱遮断ハウジング底との交点でノッチをさらに含む。支持部材が前記るつぼ内で前記熱遮断ハウジングを支持する。
【0033】
他の実施形態によれば、前記熱遮断ハウジング底は前記内部熱遮断ハウジング壁から前記外部熱遮断ハウジング壁に向けて下向きに傾き、前記内部熱遮断ハウジング壁に隣接した第1部分を含む。また、前記熱遮断ハウジング底は、前記外部熱遮断ハウジング壁から前記内部熱遮断ハウジング壁に向って下向きに傾き、前記外部熱遮断ハウジング壁に隣接した第2部分を含む。
【0034】
本発明の実施形態に係るチョクラルスキープーラは、前記シードホルダーを、前記溶融シリコンをシリンダー型単結晶シリコンインゴットに成長させるために前記るつぼから引上げ、前記インゴットはシリンダー状であって、その中心軸に沿ってその周囲に成長し、前記溶融シリコンとインゴット−溶融シリコン境界とを形成する。
【0035】
前記熱遮断ハウジングの前記内部及び熱遮断ハウジング壁の長さ、前記熱遮断ハウジング蓋及び第1及び第2部分の傾斜角度、前記インゴットと前記内部熱遮断ハウジング壁との距離、前記るつぼと前記外部熱遮断ハウジング壁との距離、前記溶融シリコンと前記内部熱遮断ハウジング壁との距離及び前記熱遮断板の位置のうち少なくとも1つが、前記引上げられたインゴットがその中心での前記インゴットの温度に基づき、前記インゴット−溶融シリコン境界での温度から前記インゴットの所定温度まで少なくとも1.4K/分の割合で冷却されるように選択される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、酸素析出物の垂直的分布を制御することによって、ウェーハの表面近傍にDZが十分に確保されると同時に、ウェーハのバルク領域内で真性ゲッタリングサイトとしての役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】シリコンウェーハの表面近傍に形成される従来の一般のMOSトランジスタの構造を示す断面図である。
【図2】従来のシリコンウェーハに対する酸素析出物の濃度プロファイルを示す図面である。
【図3】従来の他のシリコンウェーハに対する酸素析出物の濃度プロファイルを示す図面である。
【図4】本発明の一実施形態に係るシリコンウェーハに対する酸素析出物の濃度プロファイルを概略的に示す図面である。
【図5】本発明の一実施形態によって実行されるRTA工程のタイムチャートである。
【図6】Nガス雰囲気下で図5のRTA工程を行った後のウェーハの深さに対する点欠陥の濃度プロファイルを示す図面である。
【図7】Arガス雰囲気下で図5のRTA工程を行った後のウェーハの深さに対する点欠陥の濃度プロファイルを示す図面である。
【図8】Hガス雰囲気下で図5のRTA工程を行った後のウェーハの深さに対する点欠陥の濃度プロファイルを示す図面である。
【図9】Nガス及びArガスを含むガス混合物の混合比を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のベイカンシ濃度プロファイルを示す図面である。
【図10】RTA工程間に使われたガスの種類に対し、本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後、後続熱処理を通じて得られた酸素析出物の濃度プロファイルを示す図面である。
【図11】Arガス雰囲気下で図5のRTA工程を行うことによって、シリコンウェーハの表面近傍でのCOPの分解過程を説明するための図面である。
【図12】Nガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後、後続熱処理を経たウェーハの酸素析出物の分布を示す写真である。
【図13】Arガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後、後続熱処理を経たウェーハの酸素析出物の分布を示す写真である。
【図14】Hガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を受けたウェーハの酸素析出物の分布を示す写真である。
【図15】Nガス+Arガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの酸素析出物の分布を示す写真である。
【図16】Nガス+Hガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの酸素析出物の分布を示す写真である。
【図17】Nガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの表面近傍に形成されたDZの深さを示す写真である。
【図18】Arガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの表面近傍に形成されたDZの深さを示す写真である。
【図19】Hガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの表面近傍に形成されたDZの深さを示す写真である。
【図20】Nガス+Arガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの表面近傍に形成されたDZの深さを示す写真である。
【図21】Nガス+Hガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後続熱処理を経たウェーハの表面近傍に形成されたDZの深さを示す写真である。
【図22A】アズ−グロン状態のCOPの形状を実施形態を示す写真である。
【図22B】これをNガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った変化されたCOPの形状を示す写真である。
【図23A】アズ−グロン状態のCOPの形状を実施形態を示す写真である。
【図23B】これをNガス+Arガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後の変化したCOPの形状を示す写真である。
【図24A】アズ−グロン状態のCOPの形状を実施形態示す写真である。
【図24B】これをNガス+Hガス雰囲気下で本発明の実施形態に係るRTA工程を行った後の変化したCOPの形状を示す写真である。
【図25】本発明の実施形態に係るウェーハの準備を示す工程順序図である。
【図26】シリコンインゴットでの相対的な点欠陥分布とV/G比(インゴットの引上げ速度/温度勾配)との間の関係を示す概念図である。
【図27】従来の一般のチョクラルスキープーラを示す概略図である。
【図28】本発明者による米国特許出願公開第08/989591号明細書及び第09/320210号明細書に係る他の従来のチョクラルスキープーラを示す概略図である。
【図29】本発明の一実施形態に係るチョクラルスキープーラを示す概略図である。
【図30】図29のチョクラルスキープーラの要部を示す図面である。
【図31】N及びAr混合ガスの流量を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示すグラフである。
【図32】N及びAr混合ガスの混合比を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示すグラフである。
【図33】温度昇温率を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示すグラフである。
【図34】アニーリング時間を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示すグラフである。
【図35】熱処理温度を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示すグラフである。
【図36】温度下降率を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示すグラフである。
【図37】本発明の実施形態に係るRTAのための時間−温度プロファイルを示す図面である。
【図38】本発明の実施形態に係る図37のRTAに対する酸素析出物の温度依存性を示す図面である。
【図39】本発明の実施形態に係る酸素析出物のアニーリング時間依存性を示す図面である。
【図40】本発明の実施形態に係るRTAの間にAr対NH流量比に対する酸素析出物の依存性を示す図面である。
【図41】本発明の実施形態に係る温度下降率についての酸素析出物の依存性を示す図面である。
【図42】本発明の実施形態に係る初期酸素濃度の関数としてピークBMD密度を示す図面である。
【図43】本発明の実施形態に係るRTAに対する温度対ウェーハの下部表面でのスリップ長さを示す図面である。
【図44】本発明の実施形態に係るAr/NHガス比対スリップ長さを示す図面である。
【図45】本発明の実施形態に係る温度下降率の関数としてスリップ長さを示す図面である。
【図46A】本発明の実施形態に係るウェーハ下部のXRT写真である。
【図46B】本発明の実施形態に係るウェーハ下部のXRT写真である。
【図47】ギャップ充填膜緻密化後のトレンチ内におけるストレスを示す図面である。
【図48A】本発明の実施形態に係るシリコンウェーハで製作される電界効果トランジスタ素子の断面図である。
【図48B】図48Aのウェーハで酸素析出物のプロファイルを示す図面である。
【図49】本発明の実施形態に係るトレンチ転位固定の結果として浅いトレンチ分離素子でスリップの移動を示す図面である。
【図50】本発明の実施形態によって、M字形酸素析出物濃度プロファイルを有さないウェーハとM字形酸素析出物濃度プロファイルを有するウェーハに対してリフレッシュ時間に対する累積不良率を示す図面である。
【図51】従来のRTAシステムの断面図である。
【図52】本発明の実施形態に係る改良されたチョクラルスキープーラの概略図である。
【図53】図52のチョクラルスキープーラの改良された部分の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付した図面に基づき本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は多くの相異なる形に具現でき、ここで説明される実施形態に限定されるものと解釈されてはならず、かかる実施形態はその開示内容をさらに完全にし、発明の思想を当業者に十分に伝達するために提供されるものである。図面において、層及び領域の厚さは明瞭性のために誇張されている。同一な部材符号は全体的に同一な要素を示す。
【0039】
層、領域または基板のような要素が他の要素“上”にあるという記載は、他の要素上に直接存在していても、中間要素が介入されていても良い。逆に、何れの要素が他の要素“直接上”にあるという記載は、中間要素が存在しないことを意味する。しかも、ここで描写されて表示される各実施形態はその相補的な導電形態の実施形態を含む。
【0040】
図4は本発明の一実施形態に係るシリコンウェーハに関する酸素析出物の濃度プロファイルを概略的に示す図面である。図2及び図3に示された従来の技術により形成されたシリコンウェーハ内の酸素析出物の濃度プロファイルと比較して、本発明による酸素析出物濃度プロファイルは、ウェーハの上下面から一定の深さに至るDZが十分に確保されており、各DZとバルク領域との境界で二重ピークが形成される。また、二重ピーク間のバルク領域内での多くの量の酸素析出物が金属汚染物質のゲッタリング効果を十分に発揮できる程度に存在する。
【0041】
具体的に、従来の酸素析出物プロファイルでは、ウェーハの中央に位置する単一ピークにより捕集された金属汚染物質は、後続する熱処理工程によってリリースされもする。従来のプロファイルに比べて、酸素析出物濃度プロファイルで二重ピークを含む本発明の実施形態では、金属汚染物がウェーハのバルク領域及び表面の両方向にリリースされうるので、表面にリリースされた金属汚染物の量は減少されうる。
【0042】
図5は本発明の実施形態によって行われるRTA(Rapid Thermal Annealing)工程のタイムチャートである。本発明が適用されるRTA炉は商用化されたものを使用できる。前記RTA工程において、まず、本発明に係るシリコンウェーハを、例えば、待機周期の間に約700℃に設定されたRTA炉でローディングする(I)。次いで、RTA炉の温度を、例えば、約1250℃まで約50℃/秒の割合で急に高める(II)。次いで、1250℃の温度に一定時間、例えば約10秒間保つ(III)。次いで、温度を待機周期の温度まで約33℃/秒の割合で急に降温させる(IV)。最後に、ウェーハをRTA炉からアンローディングする(V)。図5のようなRTA工程の実施形態により酸素析出物の核生成中心の分布が制御され、一方、図11で後述するように、ウェーハの表面近傍に存在するボイドまたはCOPが分解されうる。
【0043】
図5の工程温度範囲は単に例示的なものに過ぎない。しかし、本発明の実施形態に係るRTAで雰囲気ガスの種類、雰囲気ガスの流量、雰囲気ガスの混合比、温度上昇率、アニーリング温度、アニーリング時間及び/または温度下降率(すなわち、冷却速度)などが、後述するように、図4に係るプロファイルを得るのに寄与する。前記RTAは少なくとも1150℃で少なくとも5秒以上行われる。例えば、1150℃で熱処理を行う場合、少なくとも30秒間保ち、1250℃で熱処理を行う場合には少なくとも5秒ないし10秒間行える。一方、冷却速度は少なくとも30℃/秒以上に急冷する。
【0044】
ウェーハの表面にベイカンシ注入効果を提供するガスとインタスティシャルシリコン注入効果を提供するガスを含むガス混合物が本発明の実施形態によってRTAのためのガスとして使われる。一部の実施形態ではNガスがベイカンシ注入効果を有するガスとして使われ、Ar/Hガスがインタスティシャルシリコン注入効果を有するガスとして使われる。
【0045】
図6ないし図8は、図5のRTAがそれぞれN、Ar及びH雰囲気下で実行された後、ウェーハの深さに対するベイカンシ欠陥及びインタスティシャルシリコン欠陥の点欠陥濃度プロファイルを示す。図6ないし図8において、線(a)は不活性ガス雰囲気でRTAを行った後のベイカンシ点欠陥濃度プロファイルを示し、線(b)及び(c)は対応するガス雰囲気でRTAを行った後、それぞれベイカンシ及びインタスティシャル点欠陥濃度プロファイルを示す。
【0046】
図6ないし図8の実施形態のように、不活性ガス雰囲気でRTAを行った後のベイカンシ点欠陥濃度((a)で表されるコンベックスカーブ)はウェーハの上下面で低く、ウェーハのバルク領域で高い。RTA炉の温度が不活性ガス雰囲気で図5の点(a)の温度まで急に上がると、ウェーハで点欠陥として存在するベイカンシの平衡濃度は濃くなる。ベイカンシの移動度はウェーハのバルク領域内で低いためにベイカンシ濃度はバルク領域内で平衡濃度より低く保たれる。しかし、ベイカンシの移動がウェーハの表面近傍では活性的であるためにウェーハの表面近傍でベイカンシの濃度は急に平衡濃度に到達する。
【0047】
一方、RTA炉の温度が急に上がることによって、インタスティシャルシリコンの平衡濃度は、例えば、ベイカンシとインタスティシャルシリコンとの間のフレンケル再結合(Frenkel recombination)によりベイカンシ濃度が濃くなるにつれて薄くなる。また、ウェーハのバルク領域内に存在するインタスティシャルの移動度がその内部にあるベイカンシのように低いために、バルク領域内のインタスティシャル濃度は平衡濃度より濃く保たれる。しかし、ウェーハの表面近傍でのインタスティシャル濃度は、ウェーハの表面近傍でのベイカンシ濃度のように平衡濃度に到達する。
【0048】
ウェーハが、図5の点(b)に至るうちに高温で保たれる時、拡散が起こってベイカンシ及びインタスティシャルが平衡濃度に到達する。ウェーハが、図5の点(c)の温度まで急に冷却された後に、大きな拡散係数を有するインタスティシャル点欠陥は下降した温度で新たな平衡濃度に到達する。しかし、小さな拡散係数を有するベイカンシ点欠陥はウェーハで過飽和される。特に、ベイカンシの過飽和程度はウェーハのバルク領域内で高い。しかし、ベイカンシの移動度がウェーハの表面近傍で高いために、ベイカンシ点欠陥の濃度は下降した温度で直ちに新たな平衡濃度に到達する。
【0049】
したがって、不活性雰囲気でRTAが実行された後のベイカンシ濃度プロファイルは、図6ないし図8のようにコンベックス形状を有する。
【0050】
また、図6のように、図5のRTAがNガス雰囲気で行われた場合、ウェーハのバルク領域内に浸透したNガスは、ベイカンシシリコンと結合して小さなSiを生成し、よってバルク領域内でベイカンシ濃度は薄くなる。一方、ベイカンシ濃度は、Nガスによるベイカンシ注入効果によってウェーハの表面近傍で濃くなる。その結果、N雰囲気下でのベイカンシ濃度プロファイルは不活性雰囲気下で製造されたウェーハのそれとは反対形状((b)で表された線)を有する。
【0051】
さらに、図5のRTA工程がそれぞれ図7及び図8のようにAr及びHガス雰囲気下で行われる時、ベイカンシ濃度はインタスティシャルシリコン注入効果によってウェーハ全体に亙って低まる。特に、ベイカンシシリコンとインタスティシャルシリコンの再結合が使われたガスのインタスティシャルシリコン注入効果によってウェーハの表面近傍で起こるために、ベイカンシ濃度は特定温度で平衡濃度の臨界濃度に保たれる。
【0052】
本発明の実施形態において、図5のRTAがガス混合物雰囲気、例えば、N及びArガス、またはN及びHガス雰囲気で行われ、よってガス混合物雰囲気下でベイカンシ濃度プロファイルが図6及び図7のそれらを組合わせることで、そして図6及び図8のそれらを組合わせることで得られる。
【0053】
図9のように、ガス混合物雰囲気下で製造されたウェーハのベイカンシ濃度プロファイルは、シリコンウェーハの上下面から所定深さで第1及び第2ピークを示す。また、前記上下面から前記第1及び第2ピークまでのベイカンシ濃度は特定温度で平衡濃度より小さい。また、第1及び第2ピーク間のバルク領域ではベイカンシ濃度プロファイルはコンケーブ形状を有する。
【0054】
図9のベイカンシ濃度プロファイルは、図5のRTA工程がベイカンシ及びインタスティシャルシリコン注入効果を提供するガスを含むガス混合物雰囲気下で行われるために、本発明の実施形態によって得られる。論理学的スケールを使用し、Nガス雰囲気下でベイカンシシリコン注入効果から得られたベイカンシシリコン濃度プロファイルを、ArまたはHガス雰囲気下でインタスティシャルシリコン注入効果から得られたインタスティシャルシリコン濃度プロファイルと比較すると、ベイカンシシリコン濃度プロファイルはウェーハの上下面から所定深さに至る領域でのインタスティシャルシリコン濃度プロファイルよりは険しくない。
【0055】
しかし、ベイカンシシリコン濃度プロファイルは、前記所定の深さからバルク領域に向うまでのインタスティシャルシリコン濃度プロファイルより険しくなる。したがって、ウェーハの上下面近傍のDZで、ベイカンシシリコン濃度は臨界値またはその以下、すなわち、インタスティシャルシリコンとの再結合により、特定の温度で平衡濃度値より小さいか、あるいは同一に保たれる。DZ以外では、ベイカンシシリコン濃度は平衡濃度値と同一か、あるいは高くなるように急に増加する。
【0056】
そして、ベイカンシ及びインタスティシャルシリコン濃度値間の差が最大値に到達する、すなわち、ベイカンシシリコン濃度プロファイルがインタスティシャルシリコン濃度より険しくなる、ウェーハの深さにおいて、ピーク(第1及び第2ピーク)が形成される。前記ベイカンシシリコン濃度は、前記ピークを越えてバルク領域に向って薄くなるために第1及び第2ピークの間でコンケーブベイカンシ濃度プロファイルが得られる。
【0057】
本発明の他の実施形態によれば、ウェーハのベイカンシ点欠陥は、後続する半導体素子製作過程の熱処理サイクルを通じて酸素析出物を生成させる。換言すれば、前記ベイカンシ点欠陥は、後続する熱処理サイクルにより形成された酸素析出物のための核生成中心となる。ベイカンシ濃度が高いほど、酸素析出物の濃度は高まる。したがって、酸素析出物濃度プロファイルは、ウェーハのベイカンシ濃度プロファイルから推論されうる。
【0058】
前記ベイカンシ濃度と酸素析出物濃度は次の関係式を有する。Si(シリコン基板)+xO+yVsi⇔SiO(酸素析出物)+Si(インタスティシャルシリコン)+σ
【0059】
この関係式は、ベイカンシシリコン濃度VSi及び初期酸素濃度Oが濃くなるにつれて反応は、右に進行されて酸素析出物の濃度が濃くなることを意味する。前記関係式でσは定数である。
【0060】
一方、本発明の実施形態では、図5のRTA工程が完了したウェーハに対して後続の熱処理を行って酸素析出物の濃度プロファイルを得た。前記後続の熱処理条件は酸素析出物が形成される半導体素子の製造での熱処理サイクルの条件を考慮して設定した。ウェーハ間の比較のために、図5のRTA工程が実行された後、後続工程がNガス雰囲気下で約800℃で約4時間及び約1600℃で約16時間実行された。
【0061】
また、本発明で使われたガス混合物の効果を調べるために、図5のRTA工程の間に使われたガス混合物の流量及び混合比を変化させた。図9はNガス及びArガスを含むガス混合物の混合比を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のベイカンシ濃度プロファイルを示す。図31はAr/N混合ガスの流量を変化させつつピークでの酸素析出物濃度の変化を示すグラフである。
【0062】
図9において、(a)はN及びArの混合比が70:30の時のベイカンシ濃度プロファイルを、(b)はN及びArの混合比が50:50の時のベイカンシ濃度プロファイルを、(c)はN及びArの混合比が30:70の時のベイカンシ濃度プロファイルを各々示す。N濃度が濃くなるにつれてピークはウェーハの表面に向って移動し、ピークのベイカンシ濃度は増加することが分かる。すなわち、後続工程によって酸素析出物が形成されないDZの深さはN濃度の濃化によって急に浅くなる。
【0063】
ピークでの図31の酸素析出物濃度は、図5のRTAが完成された後、N雰囲気下で約800℃で約4時間及び約1600℃で約16時間さらに熱処理を行ってから測定した。ここで、前記RTAは約50℃/秒の温度上昇率、約1250℃のアニーリング温度、約10秒のアニーリング時間及び約33℃/秒の温度下降率下でAr/Nガス混合物を流すことで行った。Ar/N混合物でAr/Nガスの流量は1/1、2/2、3/3、4/4及び5/5リットル/分に変化させた。図31の結果は、酸素析出物濃度が混合ガスの流量の増加によって増加することを示す。
【0064】
ピークでの図32の酸素析出物濃度は、ガス混合物においてAr/Nガスが多様な混合比で3/1、2.5/1.5、2/2、1.5/2.5、1/3リットル/分の流量で供給されるということを除いては、図31のデータのための条件と同一な条件下でRTAが行ってから測定した。図5のRTAが完成された後、N雰囲気下約800℃で約4時間及び約1600℃で約16時間さらに熱処理が行われた。図32の結果は、4リットル/分というガス混合物の一定の流量で酸素析出物の濃度がガス混合物でN比率の増加によって濃くなることを示す。
【0065】
ガス混合物の混合比及び流量、温度上昇率、アニーリング温度及び時間、温度下降率等を含むRTAの工程条件は、ベイカンシ濃度プロファイル、ピークでのベイカンシ濃度値、バルク領域でのベイカンシ濃度値、DZの全てまたは一部でピークの位置を変化させるために様々なレベルに多様化されうる。
【0066】
図33は、温度昇温率を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示す。比較の基準を同一にするために、RTAの他の工程条件は一定に保った。すなわち、NガスとArガスの混合比率は50:50であり、アニーリング温度は1250℃、アニーリング時間は10秒、温度下降率は33℃/秒に設定した。後続熱処理は、前述したように、全てのウェーハに対して800℃で4時間、1600℃で16時間N雰囲気下で行い、その結果を表1に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
図33及び表1を参照すれば、ピークで酸素析出物の濃度は温度上昇率に大きく影響を受けないことが分かる。
【0069】
図34は熱処理時間を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示す。正確な比較のために、RTAの他の工程条件は同一に保った。すなわち、NガスとArガスとの混合比率は50:50、温度上昇率は50℃/秒、アニーリング温度は1250℃、温度下降率は33℃/秒に設定した。後続熱処理は前述した測定と同様に、全てのウェーハに対して800℃で4時間、1600℃で16時間N雰囲気下で行い、その結果を表2に示した。
【0070】
【表2】

【0071】
図34及び表2を参照すれば、ピークで酸素析出物の濃度は、アニーリング時間に大きく影響を受けることが分かり、ピークでの酸素析出物の濃度が少なくても10/cm以上になるには本発明のアニーリング時間が少なくとも5秒以上進められなければならないことが分かる。
【0072】
図35は熱処理温度を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示す。比較の基準を同一にするためにRTAの他の工程条件は同一に保った。すなわち、NガスとArガスの混合比率は50:50、温度上昇率は50℃/秒、アニーリング時間は10秒、温度下降率は33℃/秒に設定した。後続熱処理は前述した測定と同一に、全てのウェーハに対して800℃で4時間、1600℃で16時間N雰囲気下で行い、その結果を表3に示した。
【0073】
【表3】

【0074】
図35及び表3を参照すれば、ピークで酸素析出物の濃度は、アニーリング温度に大きく影響を受けることが分かり、ピークでの酸素析出物の濃度が少なくても10/cm以上になるには、本発明のアニーリング温度には、少なくとも約1250℃以上進めなければならないことが分かる。アニーリング温度とアニーリング時間は酸素析出物の濃度と関連して非常に密接な関連がある。図34の結果を考慮すれば、同一な酸素析出物の濃度を得るためには、アニーリング温度が高ければアニーリング時間を短くし、逆にアニーリング温度が低ければアニーリング時間を長くしうることが分かる。
【0075】
図36は温度下降率を変化させつつ図5のRTA工程を行った後のピークでの酸素析出物の濃度変化を示す。比較の基準を同一にするためにRTAの他の工程条件を同一に保った。すなわち、NガスとArガスとの混合比率は50:50、温度上昇率は50℃/秒、アニーリング温度は1250℃、アニーリング時間は10秒に設定した。後続熱処理は前述した測定と同一に、全てのウェーハに対して800℃で4時間、1600℃で16時間N雰囲気下で行い、その結果を表4に示した。
【0076】
【表4】

【0077】
図36及び表4を参照すれば、ピークにおいて酸素析出物の濃度は温度下降率に大きく影響を受けないが、温度下降率が大きくなればピークでの酸素析出物の濃度が多少濃くなることが分かる。
【0078】
図10は、RTAの間に使われたガスの種類と関連し、本発明の一実施形態に係るRTA工程を行った後、後続熱処理による酸素析出物の濃度プロファイルを示す図面である。図10において、(a)はNガス雰囲気、(b)はN及びArガス雰囲気、(c)はNガス及びHガス雰囲気、(d)はArガス雰囲気、(e)はHガス雰囲気下で製造されたウェーハの酸素析出物濃度プロファイルを示す。
【0079】
比較の基準を同一にするために、各場合において、RTA及び後続熱処理は同一な工程条件下で行われた。すなわち、温度1250℃で10秒間実施し、後続熱処理は前述したように、全てのウェーハに対して800℃で4時間、1600℃で16時間N雰囲気下で行い、その結果を表5に示した。
【0080】
【表5】

【0081】
図11はArガス雰囲気下で図5のRTA工程を行うにつれてシリコンウェーハの表面近傍でのCOP(Crystal Originated Precipitates)の分解過程を説明するための図面である。一般にCZ法によるインゴット成長時に形成されるボイド形態のCOPはカットされた八面体ボイド状をなし、ボイド20aの内壁側にはシリコン酸化膜22が形成されている。ArガスまたはHガスなど図5のRTA工程中にウェーハの表面にインタスティシャルシリコン注入効果を有するガスの雰囲気下では表面近傍のCOPが分解される現象が生じる。
【0082】
具体的に分解のメカニズムを説明すれば、結晶成長中に酸素が初期濃度Oで含まれたインゴットが冷却されることによってインゴットの酸素濃度は冷却温度で過飽和される。したがって、インゴットから形成されたウェーハの初期酸素濃度も所定の酸素溶解度(図11で“S”で示される)を越えて過飽和される。
【0083】
しかし、ウェーハの表面近傍で初期酸素濃度は、ウェーハの表面を通過して酸素の外方拡散によって前記所定の溶解度“S”と同一か、小さくなる。一方、ウェーハのバルク領域内では、前記過飽和された酸素がボイド20a内に供給され、前記ボイド20aの内側にシリコンオキシド層22を形成するのに使われる。
【0084】
また、ウェーハの表面近傍(すなわち、図11の表面と点線“T”との間の領域)での初期酸素濃度は酸素の前記所定の溶解度“S”より小さいために、酸素がボイド20b内に形成されたシリコンオキシド層(図示せず)から溶解され、同時にシリコンがRTA工程中に提供されたガスのインタスティシャルシリコン注入効果によって前記ボイド20bの内側に提供される。結果的に、前記ボイド20bの大きさは縮小し続けてついに消える。
【0085】
前記COP溶解効果によって、本発明に係るRTA工程は多様な種類のウェーハに対しても拡張されうる。表5のように、このようなCOP溶解効果はArガスよりはHガスを使用する場合に増進されうる。
【0086】
図12ないし図16は、図10の酸素析出物濃度プロファイルを有し、前記RTA工程を行った後、後続熱処理により形成されたウェーハの酸素析出物の分布を示す写真である。特に、図12はNガスを、図13はArガスを、図14はHガスを、図15はNガス及びArガスを、図16はNガス及びHガスを各々使用する場合に該当する。また、各写真の左側がウェーハの上面であり、右側が下面を示す。
【0087】
図17ないし図21は、図10の酸素析出物濃度プロファイルを有し、前記RTA工程を行った後、後続熱処理によりウェーハの全面近くに形成された酸素析出物が存在しないDZの深さを示す写真である。特に、図17はNガスを、図18はArガスを、図19はHガスを、図20はNガス及びArガスを、図21はNガス及びHガスを各々使用する場合を示す。表5のようにNガス雰囲気下ではDZがほとんど確保されないことが分かる。
【0088】
図22Aないし図24Bは、アズ−グロン(as−grown)状態のCOPの形状と図5のRTA工程を行った後の変化された形状をそれぞれ示す写真である。図22A及び図22BはNガス雰囲気下で、図23A及び図23BはNガス及びArガス雰囲気下で、図24A及び図24BはNガス及びHガス雰囲気下で、各々RTA工程を行った場合を示す。
【0089】
表5のように、N雰囲気下ではCOPの分解が本質的に起こらず、NガスがArガスまたはHガスと混合されたガス混合物雰囲気下ではCOPの分解がよく起こることが分かる。特に、Hガス雰囲気下での結果は、COPが完全に分解されたことが分かる。このような結果から、アズ−グロン状態でCOPを小さくすれば、図5のRTA工程中にCOPが完全に分解されたことが分かる。
【0090】
本発明の実施形態は、シリコンウェーハに対して図5のRTA工程を行うことによって半導体素子の製造過程で一般に行われる後続熱処理サイクルにより形成される酸素析出物の分布を制御することに関するものである。本発明に係るRTA工程が行われる間に全体ウェーハの準備とRTAに効率よく適用される実施形態について後述する。
【0091】
図25は、本発明の実施形態に係るウェーハの準備を示す工程順序図であって、特に、結晶成長段階(S10)後の一般のウェーハリング過程を示す図面である。一般の半導体ウェーハリング方法の概略はウルフとタウバーにより1986年に作成されたテキストブック“Silicon Processing for the VLSI Era,Volume1,Process Technology”の1章、1ないし35頁に詳細に開示されており、その開示内容は参照文献として本明細書に反映される。
【0092】
図25を参照すれば、一般のウェーハリング過程はチョクラルスキープーラを使用してインゴットを成長させる結晶成長段階(S10)、インゴットをウェーハの形態にスライシングする切断段階(S12)、切断されたインゴットのスライスの側面をラウンドしたり、表面をエッチングするエッチング段階(S14)を含む。次いで、スライスの表面に対する第1洗浄段階(S16)を行った後、ドナーキリング段階(S18)が行われ、半導体素子が形成されるウェーハの上面をポリシングするポリシング段階(S20)とポリシングされたウェーハに対する第2洗浄段階(S22)が行われた後、パッケージングされる(S24)。
【0093】
本発明の実施形態に係る図5のRTA工程は、ドナーキリング段階(S18)で行う。もちろん、本発明の他の実施形態によってRTAを別に行えるが、原価節減の次元でドナーキリング段階で行うことが望ましい。一般に、ドナーキリングとは、シリコンインゴット内に含まれた酸素が後続する半導体素子の製作過程でイオンの形に存在してイオン注入された不純物に対してドナーの役割ができるために、これを防止するために予めウェーハリング過程で熱処理を行って酸素析出物に作る過程を意味し、通常、RTA装備で約700℃で約30秒以上実施する。
【0094】
前記結晶成長段階(S10)が行われる装置として、図27は従来の一般的なチョクラルスキープーラを概略的に示す図面である。図27を参照すれば、チョクラルスキープーラ100は炉、結晶引上げメカニズム、環境制御器及びコンピュータ化された制御システムを含む。前記チョクラルスキー炉は一般的にホットゾーン炉と呼ばれる。前記ホットゾーン炉はヒーター104、石英よりなるるつぼ106、黒鉛よりなるサセプタ108及び示されたように第1方向112に回転する回転軸110を含む。
【0095】
冷却ジャケットまたは冷却ポート132が水冷のような外部冷却手段によって冷却される。熱遮断体114が付加的な熱分布を提供し、加熱パック102が熱吸収物質116で充填されて付加的な熱分布を提供する。
【0096】
前記結晶引上げメカニズムは、示されたように第1方向112の逆方向の第2方向122に回転できる結晶引上げ軸120を含む。前記結晶引上げ軸120は、その端部にシードホルダー120aを含む。前記シードホルダー120aはシード結晶124をホールディングしており、るつぼ106内の溶融シリコン126から引上げられてインゴット128を形成する。
【0097】
前記環境制御システムは、チャンバ密封体130、冷却ジャケット132及び示されていない他の流動制御器及び真空排気システムを含む。コンピュータ化された制御システムは前記ヒーター、プーラ及び他の電気的、機械的要素を制御するために使用されうる。
【0098】
単結晶シリコンインゴットを成長させるために、前記シード結晶124は溶融シリコン126と接触し、徐々に軸方向(上側)に引上げられる。単結晶シリコンへの前記溶融シリコン126の冷却及び固状化は、インゴット128と溶融シリコン126との境界131で起こる。図27に示されたように前記境界131は前記溶融シリコン126に対して膨らんでいる。
【0099】
一方、本発明によるRTAの実施形態を適用して図4のような制御された酸素析出物の濃度プロファイルを得られるシリコンウェーハは3種に大別される。特に、本発明の実施形態に係るRTAはインタスティシャル集塊及びベイカンシ集塊のような欠陥が存在しない“パーフェクトウェーハ”、ベイカンシ集塊がウェーハの中心部から一定の半径内のベイカンシ−リーチ領域にのみ形成されており、ベイカンシ領域の外側には、インタスティシャル集塊及びベイカンシ集塊が存在しない“セミパーフェクトウェーハ”、ウェーハの全体に亙ってインタスティシャル集塊は存在せず、ベイカンシ集塊のみが存在するウェーハに対して適用しうる。
【0100】
しかし、本発明の適用対象となるウェーハは、必ずこれに限定されるものでもなく、本発明は前記ウェーハに限定されるものでもなく、本発明の原理が適用される全ての形のウェーハを含める。本発明の実施形態は、前述したように、本発明が適用されるシリコンウェーハに対して図5のRTA工程を実施した後、後続熱処理を行うことによって、図4のような制御された酸素析出物の濃度プロファイルに関するものである。一方、COPと関連して本発明の実施形態は、COPがウェーハのバルク領域内には存在するが、DZにはCOPが存在しないシリコンウェーハを具現することと繋がる。
【0101】
シリコンウェーハにおいて欠陥を防止するために結晶成長時に高純度のインゴットを製作するための多様な研究がなされており、特にシード結晶の引上げ速度とホットゾーン構造での温度勾配を制御する技術がよく知られている。ボロンコフの“The Mechanism of Swirl Defects Formation in Silicon”[Journal of Crystal Growth、Vol.59,1982,pp.625−643]には、インゴットの引上げ速度Vとインゴット−溶融シリコン接触面での温度勾配Gの制御に関する技術がよく開示されている。
【0102】
また、ボロンコフ理論の応用が本発明者により開かれたシリコン物質に対する向上された科学技術に対する第2回国際シンポジウム(Second International Symposium on Advanced Science and Technology of Silicon Material;1996.11.25−29)で発表された論文“Effect of Crystal Defects on Device Characteristics”に開示されている。この論文は、Gに対するVの比(以下、V/G比)が臨界比(V/G)以上ではベイカンシ−リーチ領域が形成され、臨界比(V/G)以下ではインタスティシャル−リーチ領域が形成されることが分かる。
【0103】
具体的に、図26はシリコンインゴットでの相対的点欠陥分布とV/Gの関係とを示す概念図である。図26のように、インゴットの成長時、V/Gが臨界点(V/G)以上ではベイカンシ−リーチ領域が形成され、臨界ベイカンシ濃度C以上ではベイカンシ集塊が形成され、臨界インタスティシャル濃度C以下ではインタスティシャル集塊が形成されることが分かる。また、図26で(V/G)から(V/G)までの幅はインタスティシャル関連欠陥(小さい転位)のB−バンドを示し、(V/G)から(V/G)までの幅はO.S.Fリング(大きな酸素析出物)のP−バンドをそれぞれ示す。
【0104】
本発明の実施形態は、インゴット成長時、V/Gが前記B−バンド及びP−バンド間のV/G比を有する無欠陥のパーフェクトウェーハ、前記P−バンドを含むV/G比を有するセミパーフェクトウェーハ及び臨界ベイカンシ濃度Cに該当する臨界V/G比(V/G)以上でV/G比に起因してベイカンシ集塊がウェーハの全体に形成されるウェーハに適用されうる。
【0105】
一方、本発明の適用対象となるウェーハのパーフェクトウェーハ及びセミパーフェクトウェーハに対しては米国特許出願公開第08/989591号明細書及びそれに関するCIP出願である第09/320210号明細書及び第09/320102号明細書によく開示されており、本出願書と共に結合する参照し、その詳細な説明は略す。
【0106】
図28は、前記CIP出願に開示された改良されたチョクラルスキープーラを示す概略図であって、図27のチョクラルスキープーラと比較して熱遮断体214を改良したものである。図28を簡略に説明すれば、改良されたチョクラルスキープーラ200は炉、結晶引上げメカニズム、環境制御器及びコンピュータ化された制御システムを含む。前記ホットゾーン炉はヒーター204、るつぼ206、サセプタ208及び示されたように第1方向212に回転する回転軸210を含む。冷却ジャケット232と熱遮断体214が付加的な熱分布を提供し、加熱パック202が熱吸収物質216で充填されて付加的な熱分布を提供する。
【0107】
前記結晶引上げメカニズムは、示されたように第1方向212の逆方向の第2方向222に回転される結晶引上げ軸220を含む。前記結晶引上げ軸220はその端部にシードホルダー220aを含む。前記シードホルダー220aはシード結晶224をホールディングしており、るつぼ206内の溶融シリコン226から引上げられてインゴット228を形成する。
【0108】
前記環境制御システムはチャンバ密封体230、冷却ジャケット232及び示されていない他の流動制御器及び真空排気システムを含む。コンピュータ化された制御システムは、前記ヒーター、プーラ及び他の電気的、機械的要素を制御するために使用されうる。
【0109】
単結晶シリコンインゴットを成長させるために、前記シード結晶224は溶融シリコン226と接触し、徐々に軸方向(上側)に引上がる。単結晶シリコンへの前記溶融シリコン226の冷却及び固状化は、インゴット228と溶融シリコン226との境界231で立ち上がる。図27のチョクラルスキープーラ200と比べて熱遮断体214内に熱遮断ハウジング234をさらに設けてV/Gの調節をさらに精密にしたものである。
【0110】
図29は本発明の実施形態によって改良されたチョクラルスキープーラを示す概略図であり、図30はその改良された要部を示したものであって、図28と同一な構成部分に対してはその詳細な説明を略す。改良された部分は、図29及び図30のように、熱遮断ハウジング300の形状が変更され、熱遮断板360がさらに設けられた。前記熱遮断ハウジング300は、90゜回転された台形形状であり、望ましくは垂直の内部熱遮断ハウジング壁310及び外部熱遮断ハウジング壁330、前記内部熱遮断ハウジング壁310と外部熱遮断ハウジング壁330とを連結する熱遮断ハウジング蓋340及び熱遮断ハウジング底320を含む環状を有する。
【0111】
ここで、前記熱遮断ハウジング蓋340は、前記内部熱遮断ハウジング壁310から前記外部熱遮断ハウジング壁330まで水平面からβの角度で上向きに傾いており、前記熱遮断ハウジング底320は、前記内部熱遮断ハウジング壁310から前記外部熱遮断ハウジング壁330まで水平面からαの角度で下向きに傾いており、示されたように台形形状を形成する。
【0112】
前記環状の熱遮断ハウジング330内には熱吸収物質(図示せず)が内蔵され、カーボンフェライトより形成されうる。
【0113】
また、熱遮断ハウジング300の熱遮断ハウジング蓋340と冷却ジャケット232との間で前記引上げられるインゴットの周囲を取囲む熱遮断板360が備えられ、前記熱遮断ハウジング330は、支持部材350により加熱パック216の上側に固定される。
【0114】
図29及び図30のチョクラルスキープーラは、インゴットの冷却速度を向上させうる構造である。引上げられたインゴット内に存在するボイドの大きさは、一般にインゴット−溶融シリコン境界での初期ベイカンシ濃度の自乗根に比例するが、インゴットの冷却速度の自乗根に反比例する。一方、図11のようにインゴット内に存在するボイドの大きさを一定の大きさ以下に形成すれば、たとえ結晶成長時インゴット内にボイドが形成されたとしても、本発明の実施形態に係るRTA工程によりDZから分解されうる。
【0115】
したがって、このような本発明の目的によってインゴット内に形成されるボイドを小さくするためにインゴットの冷却速度を向上させねばならない。一方、インゴットの冷却速度が速くなると、引上げられるインゴットの中心軸に沿って温度勾配(Gc)が大きくなり、所定の欠陥分布を有するようにV/Gを一定に保つ場合、インゴットの引上げ速度も速くなる。
【0116】
本発明の実施形態によれば、前記インゴット−溶融シリコン境界での温度から前記インゴットの所定の温度まで冷却させるために、前記中心でのインゴットの温度に基づいて前記インゴットの冷却速度を少なくとも1.4K/min以上になるように、少なくとも前記内部熱遮断ハウジング壁310の長さ“a”及び外部熱遮断ハウジング壁340の長さ“c”、熱遮断ハウジング蓋340の傾斜角“β”及び熱遮断ハウジング底320の傾斜角“α”、前記インゴット228から内部熱遮断ハウジング壁310までの距離“d”、前記るつぼ206から外部熱遮断ハウジング壁330までの距離“f”、前記内部列遮断ハウジング壁310と外部熱遮断ハウジング壁330までの距離“e”及び前記熱遮断板360の位置が変化されうる。
【0117】
図29のプーラでは、成長されるインゴットの冷却速度が速いために引上げ速度を非常に速く、例えば、0.50mm/minから1.00mm/minにできるためにインゴットの生産性が向上されるだけでなく、図28のチョクラルスキープーラで製作されるパーフェクトウェーハやセミパーフェクトウェーハのためのインゴット成長時の工程マージンも確保しうる。
【0118】
前述した本発明の実施形態は、その内部に高密度及び/または高性能の集積回路を製作するために適切なシリコンウェーハを生産しうる。しかし、量産の側面では前述した本実施形態によって製作されたシリコンウェーハは、その素子領域で望ましくないハイレベルのスリップを有しうるということがわかる。素子領域内でのスリップは、急速熱的アニーリング中にその支持ピン及び/または支持リング上でウェーハの自体荷重によって誘導されたストレス及びSTI緻密化によって誘導されたストレスにより生じる。このようなスリップは、前記ウェーハから製作された集積回路素子の信頼性及び/または収率に影響を与えることがある。
【0119】
さらに、前述したように製造されたシリコンウェーハはRTAチャンバ上に望ましくないシリコンジオキシド昇華を起こしうる。特に、ウェーハからの自然酸化膜または他のSiOはRTA工程中に蒸発し、石英よりなるRTAチャンバ上に蒸着されうる。RTAチャンバ上のSiO昇華は、RTA工程の効率、信頼性及び/または再現性を減少させ、RTAチャンバに対する頻繁な洗浄及び/または交替を必要とすることがある。
【0120】
発明の実施形態は、第1及び第2ピーク、DZ及び前記第1及び第2ピーク間のコンケーブ領域を含む前記酸素析出物濃度プロファイルを作るために使われた前記RTA工程が前述したように、N及びArのガス混合物よりもNH及びArを含むガス混合物雰囲気で行われるという事実から発現できる。Hの代りにベイカンシ注入ガスとしてNHを使用することにより、前記RTA工程はN及びAr雰囲気下でこれまで使われた1220℃のような高温と比較して約1100℃ないし1200℃、または約1100℃ないし1150℃、または約1100℃ないし1120℃、または約1120℃のような低温で行われる。RTA工程を低温で行うことによって、スリップの量及び/またはシリコンジオキシド昇華量は顕著に減少されうる。したがって、前記ウェーハから製作される集積回路の収率及び信頼性は高まり、ウェーハの製作に対する量産費用が減少されうる。
【0121】
特に、本発明の実施形態によれば、第1及び第2ピーク、前記ウェーハの上面と第1ピークとの間及びウェーハの下面と第2ピークとの間のDZ、及び第1ピーク及び第2ピークとの間のコンケーブ領域を含む酸素析出物濃度プロファイルを有するシリコンウェーハを前述したように製作しうる。しかし、本発明の実施形態によれば、前記ウェーハの下面と第2ピークとの間のDZはその内部に少なくとも1つのスリップ領域を含み、一方ウェーハの上面と第1ピークとの間のDZはその内部にスリップ転位が存在しない。
【0122】
特に、ウェーハの上面から約5μmないし40μmの厚さを有するスリップのない領域が作られ、その内部で形成された素子は向上された収率、性能及び/または信頼性を有する。しかも、複数個のSTI領域がウェーハの上面と第1ピークとの間のDZで形成され、酸素析出物を前記STI領域から遠く離れて存在するシリコンウェーハと同一なSTI領域と比較して減少されたSTIスリップを有する。望ましくは、前記STI領域はSTIスリップが存在しない。
【0123】
また、本発明の実施形態は前記RTAが前述したような核生成中心濃度プロファイルを得るために約1100℃ないし1200℃の間、または約1100℃ないし1150℃、または約1100℃ないし1120℃、または約1120℃で実行可能にする。しかし、低温で行われるために、スリップが前述したように減少され、シリコンジオキシド昇華が減少または除去されうる。
【0124】
特に、本発明の実施形態はRTA工程を少なくとも約5秒間約1100℃ないし1200℃、または約1100℃ないし1150℃、または約1100℃ないし1120℃の間、または約1120℃でAr及びNHを含む雰囲気で上下面を有するウェーハに対して実行される。一部の実施形態で、RTAを行う前に、OがパージされてOとNHとの相互反応を減少させたり、防止させうる。
【0125】
センサーが前記雰囲気内で所定の濃度以下のOが存在することを感知するために使用されうる。選択的には、Oをパージさせるために温度が所定の温度、例えば約800℃で所定時間、例えば10秒間保たれる。RTAが実行された後でNHも前記雰囲気からパージされうる。
【0126】
本発明の実施形態に係るRTA工程は一連のシリコンウェーハからRTAチャンバ上にシリコンジオキシドの昇華を起こす温度以下にRTAチャンバ内で一連のウェーハに対して連続的に行われる。約1200℃以下、または約1150℃以下、または約1120℃以下の温度が使用されうる。したがって、チャンバの洗浄及び/または取替えの必要性が減少または除去されうる。
【0127】
1つの特定例では、約1200℃以上の温度でH及びNHを使用してRTAを行う時、RTAチャンバは6ヵ月毎にRTAチャンバを洗浄または取替える必要があるということがわかった。対応的にNH及びArを使用して1150℃以下の低温でRTAを行う本発明の実施形態は、6ヵ月以上洗浄またはRTAチャンバの取替えが不要である。
【0128】
図37は本発明の実施形態に係るRTAのための時間/温度プロファイルを示すグラフである。図37のRTA工程は、図4のウェーハに関するものと同一なM字形のプロファイルを作れるが、スリップによるストレスを減少させ、シリコンジオキシドの昇華を減少させうる。しかも、図37の本発明の実施形態は図5と関連して前述したRTA工程の実施形態と比較されうる。
【0129】
図37を参照すれば、時間(a)の前にウェーハが、その温度が約10秒の待機周期(I)の間、例えば約800℃に設定された従来の石英RTA炉のようなRTAチャンバまたは炉内にローディングされる。この時間の間にArがRTAチャンバ内に流れる。しかも、時間(a)と時間(b)との時間周期(I)の間にウェーハから外部拡散されたり、及び/またはそうでなければRTA雰囲気に存在する酸素をパージするために酸素パージが行われる。前記酸素パージはRTA温度を10秒程度の所定の時間周期(I)の間に待機温度で維持及び/またはチャンバ内の酸素濃度が1ppma以下のような所定量以下に減少されることを感知しうるセンサーをRTAチャンバ内に提供することによって行われる。
【0130】
また、酸素パージ周期(I)の端部でRTA炉の温度は時間周期(II)の間に、例えば秒当り約50℃の割合で急に高まる。温度上昇と同時にNHがチャンバに流込む。NH流入の開始は温度上昇の開始前に、時間(b)以前に起こるか、時間(b)と(c)との間の温度上昇中の何れの段階で起こるか、あるいは時間(c)以後にRTA温度が得られた後に起こりうる。図37のように、NH流入は時間(b)で温度上昇の開始と一致しうる。
【0131】
また、前記RTAは、時間(c)と時間(d)との時間周期(III)の間に約5秒ないし約30秒間保たれる。図37のように、時間周期(III)の間にRTA温度は、望ましくは約1100℃ないし1200℃、または約1100℃ないし1150℃の間である。他の実施形態において前記RTAは約1100℃ないし1120℃に保たれる。さらに、他の実施形態において、RTAは約1120℃で行われる。このようなRTA工程は、約1250℃でRTAを行う前述した図5及び米国特許第6204152号明細書及び第5994761号明細書に開示されたような他の従来のRTA工程と対照されうる。
【0132】
また、RTA炉で温度は時間周期(IV)で、例えば、約10℃/秒及び70℃/秒の間の割合で、望ましくは約33℃/秒に待機周期(V)まで急に降温する。望ましくは、NHの流れは時間(e)の温度下降周期(IV)の終わりまで保たれる。しかし、NHの流れは温度下降周期(IV)またはRTA周期(III)の間に終了されうる。待機周期(V)の間に、望ましくはNHパージが、例えば、時間(e)で起こる。しかし、NHパージはより迅速に起こるか、あるいは起こらないこともある。望ましくは、一度NHパージが実行されれば、ウェーハは時間(f)でRTA炉からアンローディングされる。
【0133】
本発明の実施形態によれば、図37のRTAプロファイルは、スリップ及び/または酸素昇華を顕著に減少及び/または除去できる図4のような望ましいM字形酸素析出物濃度カーブを得るために使用されうることが分かる。
【0134】
図37の工程温度範囲は、単に例示的なものに過ぎない。しかも、本発明の実施形態に係るRTAで不活性ガスの流量、不活性ガスの混合比、温度上昇率、アニーリング温度、アニーリング時間及び/または温度下降率は以下で説明されるように図4によるプロファイルを得るために調整されうる。
【0135】
図38は、本発明の実施形態によって多様な急速アニーリング温度(図37の周期III)について図37の急速熱的アニーリング工程に対する酸素析出物の温度依存性を示すグラフである。あらゆる場合で、10秒間の周期IIIのアニーリング時間が用いられ、周期IVでの温度下降率は33.3℃/秒であり、ArとNHの流量は同一にした。
【0136】
図38は、図4のような第1及び第2ピークに対するBMD(Bulk Micro−Defect)密度(すなわち、ベイカンシ欠陥及びインタスティシャル欠陥)(ピークBMD)と第1及び第2ピーク間のコンケーブバルク領域内の最低領域に対するBMD(バルクBMD)を示すグラフである。各BMD測定と関連した四角形は、図4のDZの深さを示す。BMD欠陥は密度(cm−2)で表され、10倍して体積(cm−3)に変換されうる。
【0137】
図38を参照すれば、最右側の棒グラフ対は1220℃の温度でAr及びNの雰囲気で約23μmの深さを有するDZ、約1.4×10のピークBMD及び約1.2×10のバルクBMDを示す。図38のように、似た特性が約1120℃でAr及びNHの雰囲気で得られる。したがって、類似したBMDプロファイルが、Ar及びN雰囲気が用いられた温度よりも100℃低い1120℃で得られる。
【0138】
また、図38はDZの深さ、バルクBMD及びピークBMDが温度の関数として制御できるということを示す。約1100℃と約1150℃との間の範囲はバルクBMDとピークBMDとを相対的に一定に保つ一方、DZの深さを制御できる。例えば、約1120℃と約1170℃との間でDZの深さ、ピークBMD及びバルクBMDは相対的に温度により影響を受けないと現れ、一方約1100℃と約1120℃との間ではDZの深さは温度増加と共に浅くなり、ピークBMD濃度及びバルクBMD濃度は温度増加と共に増加する。
【0139】
図39は、本発明の実施形態に係る酸素析出物のアニーリング時間依存性を示すグラフである。図39のように、Ar及びNHを同一流量を使用し、1120℃のアニーリング温度で、ピークBMD、バルクBMD及びDZ深さのうちいずれも10秒ないし30秒間のアニーリング時間にあまり依存しないと現れた。したがって、生産量を増加させるために10秒のアニーリング時間が望ましい。
【0140】
図40は、本発明の実施形態に係る、NHに対するArの流量比に対する酸素析出物の依存性を示すグラフである。グラフから見られるように、広い範囲の比率に亙ってNHに対するArの流量比に対するピークBMD、バルクBMD及びDZ深さはあまり依存しないものと現れた。
【0141】
図41は、図37の区間IVで温度下降率に対する酸素析出物の依存性を示すグラフである。グラフから分かるように、秒当り10℃ないし70℃に至る広範囲の比率に亙って温度下降率に対するDZ深さ、ピークBMDまたはバルクBMDの依存性が若干ある。
【0142】
図42は、本発明の実施形態に係るアズ−グロンインゴットとウェーハでの初期酸素濃度の関数としてピークBMDとバルクBMDとを示すグラフである。上部線(実線)はピークBMD密度を示し、下部線(点線)はバルクBMD密度を示す。グラフから分かるように、たとえピークBMDは、結晶成長の間に初期酸素濃度に相対的に独立しているが、バルクBMDは、初期酸素濃度に強く依存している。
【0143】
したがって、初期酸素濃度は、約13ppmaの初期酸素濃度において約5から約9ppmaにおいて約10までバルクに対するピークBMDの比を制御するために使用されうる。特に、ピークBMDとバルクBMDとの間に少なくとも1次数の大きさ(約10倍)の差を提供するために、初期酸素濃度は、例えば、約9ppmaに選択されうる。
【0144】
要約すれば、図38ないし図42は、NH及びArを含む雰囲気を使用し、図4のM字形酸素析出物濃度プロファイルが1200℃以下、1150℃以下、1100℃ないし1120℃の間、及び/または約1120℃の温度で得られ、1220℃のような約1200℃以上の温度でAr及びN下で得られる酸素析出物濃度プロファイルに比べて見劣りがしない。前述した温度範囲を含めて本発明の実施形態を使用してスリップ発生及びシリコンジオキシド昇華がどのように減少及び除去されるかが見られる。
【0145】
本発明の実施形態によって、スリップ発生の減少を説明する前に、スリップの発生についての説明が与えられる。当業者によく知られたように、RTA間ウェーハは3つの支持リングまたはエッジリングを使用してRTA炉内で支持されうる。前記支持ピンまたはエッジリングで単に部分的にウェーハを支持することによって、ウェーハの自体荷重はウェーハにストレスを誘導し、その自体がスリップを起こせる。
【0146】
スリップは一般に前記支持ピンまたは支持リングにより支持されているウェーハの下部面で起こり、素子が形成されたウェーハの上部面まで延びる。活性素子に対するスリップの衝撃を減少及び除去するために、第1ピークと第1(上部)面間のDZ内にスリップのない領域を提供することが望ましい。言い換えれば、ウェーハの上部面から約40μmの深さに至る無スリップ領域を提供することが望ましい。したがって、底面からのスリップが素子領域に入らないようにする。ところが、従来のRTA工程を使用すれば40μm無スリップ領域を提供することが難しくなる。
【0147】
図43は、Ar及びNH雰囲気を使用する本発明のRTA実施形態に対する温度対ウェーハの底面でのスリップ長さを示すグラフである。図43において、スリップ長さは上左部に示されたウェーハの三箇所で測定した。これら位置は、RTA炉でウェーハ支持位置に対応する所である。第1支持ピン1は、RTA炉のガス入口に隣接し、他の位置2、3はガス入口から離れている。図43の右側に示されたのは、Ar及びNの雰囲気に対するスリップ長さ測定値である。
【0148】
図43を参照すれば、Ar及びNの雰囲気下の1220℃で、3.5mmのスリップ長さがウェーハ上の位置1で得られ、これは受け入れられない。明確に対応して減少された温度1120℃では1.5mm以下のスリップ長さが本発明の実施形態に係るAr及びNHを使用して得られる。ウェーハの底で1.5mm以下のスリップ長さは40μmまでウェーハの上部で無スリップ領域を得られる。したがって、ウェーハの無スリップ活性領域が生産されうる。
【0149】
図44は、本発明の実施形態に係るNHに対するArガス比対スリップ長さを示すグラフである。グラフで見られるように、1.5mm以下の受け入れられるスリップがガス比の広い範囲に亙って生産されうる。
【0150】
図45は、本発明の実施形態に係る温度下降率の関数としてスリップ長さを示したグラフである。示されたように、温度下降率はスリップ長さに影響を与えられる。約1.5mm以下のスリップ長さを提供するために少なくとも秒当り30℃の温度下降率が保たなければならない。
【0151】
図46A及び図46Bは、スリップを示すウェーハ底のXRT(X−ray Topography)写真であり、それぞれ10秒間1250℃でAr及びN雰囲気でのRTA及び10秒間1120℃でAr及びNHガス雰囲気でのRTAに該当する。図46Aのように、深刻なスリップが図43ないし45の位置#1に該当し、図46Aの上部のウェーハの第1位置で見られる。これに対し、図46Bでは唯一の欠陥はウェーハの3ピン位置でのピンマーク自体だけである。したがって、無スリップ活性領域を有するウェーハが生産されうる。
【0152】
以下、本発明の実施形態に係るスリップ減少の他の形態を説明する。特に、DZ下に十分に高い密度の酸素析出物を有するM字形酸素析出物濃度プロファイルを提供することによって、STI素子内でスリップが減少され、望ましくは除去されうる。当業者によく知られたように、STIは集積回路基板の活性領域内でトランジスタのような素子を相互分離するために使用されうる。
【0153】
当業者によく知られたように、STIでトレンチは半導体基板の表面内に形成され、次いでUSG(Undoped Silicate Glass)及び/またはHDP(High Density Plasma)のような絶縁物質で充填される。また、トレンチはシリコンナイトライドのような他の絶縁体で並べられうる。トレンチ内の絶縁物質とシリコンウェーハとの間の熱膨張差によって、圧縮及び/または引張りストレスがトレンチと基板との境界面に誘導されうる。
【0154】
トレンチ分離領域でのストレス量はトレンチ縦横比及び/または他の工程条件の関数で有り得る。例えば、表6は三つのウェーハD21、D19及びD17に対するトレンチにおけるストレス分布を示し、ウェーハD21からウェーハD19及びD17に行くほど縦横比は増加する。表6のように、ストレスはウェーハD21で最高であり、ウェーハD17で最低である。
【0155】
【表6】

【0156】
図47は表6のウェーハに対するギャップ充填膜緻密化後のトレンチにおけるストレスを示す。図47で線の長さはストレス量に比例する。
【0157】
特定の作動理論によらず、酸素固定現象が生じうるためにSTI素子でスリップは本発明の実施形態に係る酸素析出物濃度プロファイルを使用して減少できると理論化される。特に、本発明の実施形態に係る酸素析出物濃度プロファイルは酸素析出物のない素子活性領域を提供するが、前記活性領域に隣接したウェーハバルクに非常に高密度の酸素析出物を提供できる。しかも、酸素析出物間の空間は非常に小さくなりうる。これら特性は、バルク領域内で高い線張力(line tension)を生じ、交互にトレンチから転位(dislocation)の運動を誘発させうるために転位(dislocation)が素子活性領域から移動してしまい、酸素析出物に固定されると理論化される。
【0158】
図48Aは、本発明の実施形態に係るシリコンウェーハ内で製造される電界効果トランジスタ素子の断面図であり、酸素析出物を形成するために800℃で4時間、1000℃で16時間アニーリングさせた。図面に示されたように、上部DZに対応する素子活性領域は一般に酸素析出物がないが、高密度の酸素析出物がM字形プロファイルで第1ピークに対応する前記素子に隣接したバルク領域内で発見される。図48Bは、本発明の実施形態によって図48Aのウェーハで酸素析出物のM字形プロファイルを示すグラフである。
【0159】
図49は、本発明の実施形態によってトレンチ転位固定の結果としてSTI素子でスリップの潜在的の運動を概念的に示す。特定の作動理論によらず、図49でFは、例えばトレンチ内のギャップ充填物質の緻密化後に生じる工程によって誘発されたストレスである。FAは、図47のシミュレーションの結果によって示されるようにトレンチの角部で最大となる。また、図49で、Fintはトレンチ転位と酸素析出物との内部作用力であり、次のように与えられる。
【0160】
【数1】

ここで、量(quantities)は図49に示されており、εとεはひずみ(strain)を、vは体積を示す。図49に示されたように、転位運動(dislocation movement)は次のように得られる。
【0161】
【数2】

【0162】
LTは線張力ベクトルであり、材料定数(material constant)G、バーガースベクトルb及び転位中心間の長さLの関数である。したがって、酸素析出物間の距離が減少する時、線張力FLTは強くなる。これは、F≦FLT+Fintである転位固定条件で転位移動を起こし、よって平衡条件ではFLTmax=Gb/Lである。したがって、Lが減少すればFLTmaxは増加する。結論的に、特定の作動理論によらず、高密度の小さな酸素析出物がLを減少させ、FLTを増加させ、よってF≦FLT+Fintよりなって転位固定を起こす。
【0163】
転位固定を直接観察しがたい。しかし、転位固定は、図4のプロファイルを含むように製造されたSTI構造を有する128MB DRAMのような素子を比較することによって確認されうる。図50は、本発明の実施形態に係るM字形酸素析出物濃度プロファイルを有するウェーハ(図50の下部曲線)と一定した酸素析出物濃度プロファイルを有するウェーハ(図50の上部曲線)とに対するリフレッシュ時間対不良ビット数を示すグラフである。
【0164】
図50に示されたように、与えられたリフレッシュ時間に対して不良ビットの数は、一定の酸素析出物濃度プロファイルを有するウェーハ(図50の上部曲線)に比べ、本発明の実施形態に係るM字形酸素析出物濃度プロファイルを有するウェーハ(図50の下部曲線)を使用する場合にさらに低い。特定の作動理論によらず、本発明の実施形態に係るM字形酸素析出物プロファイルは活性素子領域内で転位固定を提供するものと理論化されうる。
【0165】
当業者によく知られたように、活性素子領域内で転位はその内部に電子を捕捉し、これは素子のリフレッシュ時間を縮小させ、そして/または与えられたリフレッシュ時間でさらに多くの数の不良ブットを生じる。したがって、図50は、転位固定が本発明の実施形態に係るM字形酸素析出物濃度プロファイルを使用して生成されるという証拠を提供するものである。
【0166】
前述したように、本発明の実施形態によって製造されたシリコンウェーハはRTAチャンバ上にシリコンジオキシド昇華を減少させ、望ましくは除去しうる。図51は、石英チャンバ512及びRTA熱源514を含む従来のRTAシステム510の断面図である。ウェーハ516がチャンバ512内で見られ、支持台518により支持されている。前記ウェーハは一般的にその上に自然酸化層520を含む。
【0167】
約1200℃上の温度でRTAを行えば、存在する自然酸化物及び/または他のシリコンジオキシドは、ウェーハから蒸発して石英チャンバ512上に蒸着されうる。このような現象を“シリコンジオキシド昇華”と称する。シリコンジオキシドが前記チャンバ壁上に蒸着されると、これはチャンバの効率及び/または工程の信頼性を低下させ、ウェーハの収率及び/または性能を低下させうる。
【0168】
明確に比較したところ、本発明の実施形態によってRTAアニーリングが約1200℃以下、約1150℃以下、約1100℃ないし1120℃の間、約1120℃で実行されれば、シリコンジオキシド昇華はほとんど起こらない。実際にチャンバ512の洗浄または取替え無しにRTAシステム512内でウェーハが6ヵ月以上処理されうることが分かった。
【0169】
図52は、本発明の実施形態に係る改良されたチョクラルスキープーラの概略図であり、図53は図52のチョクラルスキープーラの改良された部分を示す詳細図である。図52及び図53において、図28ないし図30と同一な参照番号は同一な要素を示し、図28ないし図30との違いだけを以下で説明する。
【0170】
図52及び53に示されたように、熱遮断ハウジング底は内部熱遮断ハウジング壁310から外部熱遮断ハウジング壁330に向けて下向きに傾いた内部熱遮断ハウジング壁310に隣接した第1部分320aを含む。また、外部熱遮断ハウジング壁330から内部熱遮断ハウジング壁310に向け、例えば、図53に示した角度γで下向きに傾いた前記外部熱遮断ハウジング壁330に隣接した第2部分320bを含む。一方、前記熱遮断ハウジング底の第2部分320bは、外部熱遮断ハウジング壁330と熱遮断ハウジング底320との交差部で前記熱遮断ハウジング内のノッチとも考えられる。
【0171】
図52及び53のチョクラルスキープーラは、本発明の実施形態によって次の長所の1つまたはそれ以上を提供しうる。第1、インゴット228の表面と内部熱遮断ハウジング壁310との距離“d”がインゴットでのより均一な熱分布のために減少されうる。しかも、ノッチ320bの領域でArガスの速度は減少され、これはインゴット22の表面の温度均一性を増加させうる。次に、前記ノッチはArガス内で乱流を減少させうる。これらのうち1つ以上及び/または他の要素の結果として、向上された品質のシリコンインゴットが提供されうる。
【0172】
図面及び詳細な説明で本発明の典型的な望ましい実施形態が開示されており、たとえ特定用語が使われたとしても、これは特許請求の範囲で言及される本発明の思想を限定するものではなく、単に一般的で、叙述的な意味として使われる。
【符号の説明】
【0173】
200 チョクラルスキープーラ
202 加熱パック
204 ヒーター
206 るつぼ
208 サセプタ
210 回転軸
212 第1方向
216 熱吸収物質
220 結晶引上げ軸
220a シードホルダー
222 第2方向
224 シード結晶
226 溶融シリコン
228 シリコンインゴット
230 チャンバ密封体
232 冷却ジャケット
231 インゴットと溶融シリコンの境界
300 熱遮断ハウジング
310 内部熱遮断ハウジング壁
320 熱遮断ハウジング底
330 外部熱遮断ハウジング壁
340 熱遮断ハウジング蓋
350 支持部材
360 熱遮断板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面を有するシリコンウェーハに対し、NH及びArの混合ガス雰囲気下で、少なくとも5秒間1100℃と1200℃との間で急速熱的アニーリング工程を行い、少なくとも10℃/秒の割合で前記ウェーハを急速冷却するように、後続熱処理の間に酸素析出物として成長する場所としての役割をする核生成中心を生じ、前記ウェーハの上面から下面までの前記核生成中心の濃度プロファイルにおいて前記核生成中心濃度プロファイルは、前記ウェーハの上下面から各々第1及び第2深さでの第1及び第2ピークと、前記ウェーハの上面と前記第1ピークとの間、及び前記ウェーハの下面と前記第2ピークとの間での臨界濃度より低い所定の核生成中心濃度を有する領域と、前記第1ピーク及び第2ピーク間のコンケーブ領域とを含むことを特徴とするNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記急速熱的アニーリング工程段階は、前記ウェーハの上面から下面までのベイカンシの濃度プロファイルを再び生じ、前記ベイカンシ濃度プロファイルは、
前記ウェーハの上下面から各々第1及び第2深さでの第1ピーク及び第2ピークと、
前記ウェーハの上面と前記第1ピークとの間、及び前記ウェーハの下面と前記第2ピークとの間での臨界濃度より低い所定のベイカンシ濃度を有する領域と、
前記第1ピーク及び第2ピーク間のコンケーブ領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記ウェーハの上面から下面までの酸素析出物濃度プロファイルを形成するために前記シリコンウェーハに対して後続する熱処理を行う段階をさらに含み、前記酸素析出物濃度プロファイルは、
前記ウェーハの上下面から各々第1及び第2深さでの第1ピーク及び第2ピークと、
前記ウェーハの上面と前記第1ピークとの間、及び前記ウェーハの下面と前記第2ピークとの間のデヌーデッドゾーンと、
前記第1ピーク及び第2ピーク間のコンケーブ領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記急速熱的アニーリング工程を行う段階は、少なくとも10℃/秒ないし70℃/秒の割合で前記ウェーハを急速冷却することを含むことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記急速熱的アニーリング工程は1100℃と1150℃との間で行うことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記急速熱的アニーリング工程を行う段階は、50℃/秒の割合で前記ウェーハを急速加熱することを含むことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記シリコンウェーハに対する後続熱処理を行う段階は、800℃ないし1000℃で4ないし20時間行うことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記急速熱的アニーリング工程を行う段階は、前記シリコンウェーハのためのウェーハリング工程のドナーキリングの間に行うことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項9】
前記実行段階前に、
インゴットの引上げ速度がインタスティシャル集塊の形成を防止できるほどに十分に高く、ベイカンシ集塊の形成が防止できるほどに十分に小さなインゴット引上げ速度プロファイルによってホットゾーン炉内の溶融シリコンからインゴットを引上げる段階と、
前記シリコンウェーハを提供するために前記インゴットを半径方向にスライシングする段階とが先行することを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項10】
前記実行段階前に、
点欠陥を形成するが、インタスティシャル集塊及びベイカンシ集塊を形成しないインゴット引上げ速度プロファイルによってホットゾーン炉内の溶融シリコンからインゴットを引上げる段階と、
前記シリコンウェーハを提供するために前記インゴットを半径方向にスライシングする段階が先行することを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項11】
前記実行段階前に、
インゴットの引上げ速度がインタスティシャル集塊を形成せずにベイカンシ集塊がインゴットの直径を通じて形成されるように十分に大きいインゴット引上げ速度プロファイルによってホットゾーン炉内の溶融シリコンからインゴットを引上げる段階と、
前記シリコンウェーハを提供するために前記インゴットを半径方向にスライシングする段階が先行することを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項12】
前記実行段階の前に、Ar及びNHを含む雰囲気から酸素をパージングする段階が先行することを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項13】
前記実行段階の前に、所定濃度以下の酸素が前記雰囲気に存在することを感知する段階が先行することを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項14】
前記実行段階後に、Ar及びNHを含む雰囲気の加熱を10℃/秒ないし70℃/秒の間で、1100℃ないし1200℃の間から800℃に減少させる段階が後続することを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項15】
前記実行段階は、上下面を有するシリコンウェーハに対してAr及びNHを含む雰囲気で5秒ないし30秒間1100℃ないし1150℃で急速熱的アニーリング工程を行う段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のNH/Ar急速熱的アニーリング工程を含むシリコンウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図46A】
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【図46B】
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【図47】
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【図48A】
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【図48B】
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【図49】
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【図50】
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【公開番号】特開2011−258973(P2011−258973A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175797(P2011−175797)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【分割の表示】特願2007−127353(P2007−127353)の分割
【原出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea