説明

B型肝炎ウイルスの検出のためのオリゴヌクレオチドプローブ及びプライマー

本開示はB型肝炎ウイルスを検出及び定量する方法を提供する。本開示は、配列番号1及び配列番号2に規定されるB型肝炎ウイルスの検出のためのオリゴヌクレオチドプローブを、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に規定されるそれぞれのプライマー[センス及びアンチセンス]と共に開示する。本開示はB型肝炎ウイルスの検出のためのPCR反応混合物、及び該混合物をインストラクションパッケージと共に含むHBVの検出のためのキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サンプル中のHBV(B型肝炎ウイルス)核酸の存在を決定し、定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HBVは急性及び慢性の肝炎(B型肝炎)、並びに重症例では肝硬変及び肝癌を引き起こす。最近の研究によって、世界中で多くの人々がB型肝炎ウイルス(HBV)に感染しており、その数は約3億人に相当することが示されている。
【0003】
感染被験者の血液/血清又は血漿中のHBV核酸を直接検出するPCRベースのアッセイは、医師が正確な感染段階を知る上で有用となる、感染患者の正確なウイルス量の決定において利点をもたらす可能性がある。正確なウイルス量の決定はさらに、医師が患者に適切な治療を施すための助けとなる場合がある。正確なウイルス量を定量することは、抗ウイルス療法の進行をモニタリングするのにも役立ち得る。現在使用されているHBVの診断方法は、HbeAg、HbsAg、又は抗HBc IgM、抗HBe IgG、抗HBs IgG若しくは抗HBc IgG等の血清マーカーの存在に基づくELISA(酵素結合免疫吸着法)をベースとするものである。ELISAベースの方法からは正確なウイルス量についての洞察を得ることができないため、ウイルス量の定量的尺度をもたらすことのできる方法を探求する必要がある。既知の検出方法に関連する上述の問題を考えると、HBVの検出に利用することができるように、ウイルス量の定性的尺度及び定量的尺度の両方をもたらすことのできる効果的な方法が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の第1の目的は、サンプル中のHBV核酸の存在を決定する方法を提供することである。
【0005】
本開示の第2の目的は、HBVの検出のためのプローブ及びプライマーを提供することである。
【0006】
本開示の第3の目的は、HBVの検出のためのPCR反応混合物を提供することである。
【0007】
本開示の第4の目的は、HBVの検出のためのプローブ及びプライマーを含むキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本開示は、配列番号1及び配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブ;配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のプライマー;B型肝炎ウイルスの検出のためのPCR反応混合物であって、核酸増幅試薬、配列番号1及び配列番号2に規定される二重標識プローブ、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6のプライマー、並びに試験サンプルを含む、PCR反応混合物;B型肝炎ウイルスを検出する方法であって、核酸増幅試薬、配列番号1又は配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブ、それぞれ配列番号3及び配列番号4又は配列番号5及び配列番号6の対応するプライマー、試験サンプルを含む反応混合物を調製する工程、並びに上記反応混合物に対してPCRを行い、標的配列のコピーを得た後、B型肝炎ウイルスを検出するために蛍光シグナルの増大を測定する、PCRを行い、測定する工程を含む、方法;並びにB型肝炎ウイルスの検出のためのキットであって、単独又は組み合わせた配列番号1及び配列番号2の二重標識プローブ、単独又は組み合わせた配列番号3、配列番号4、及び配列番号5、配列番号6の対応するプライマー対、並びに増幅試薬を含む、キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】市販のキットを用いたHBV陽性サンプルのリアルタイムプロットを示す図である。
【図2】配列番号1を用いたHBV陽性サンプルのリアルタイムプロットを示す図である。
【図3】配列番号2を用いたHBV陽性サンプルのリアルタイムプロットを示す図である。
【図4】配列番号1を用いたHBV陰性サンプルのリアルタイムプロットを示す図である。
【図5】配列番号2を用いたHBV陰性サンプルのリアルタイムプロットを示す図である。
【図6】HBV標準曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、配列番号1及び配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブに関する。
【0011】
本開示の一実施形態では、上記プローブは二重標識プローブである。
【0012】
本開示の一実施形態では、上記プローブはB型肝炎ウイルスを検出する。
【0013】
本開示の一実施形態では、上記プローブは5’末端で蛍光物質、内部領域又は3’末端でクエンチャーという検出可能な標識と結合している。
【0014】
本開示の一実施形態では、配列番号1はB型肝炎ウイルスの表面遺伝子に対して設計され、配列番号2はB型肝炎ウイルスのX遺伝子領域に対して設計されている。
【0015】
本開示は配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のプライマーに関する。
【0016】
本開示の一実施形態では、上記配列番号3及び配列番号5のプライマーがそれぞれセンスプライマーであり、上記配列番号4及び配列番号6のプライマーがそれぞれアンチセンスプライマーである。
【0017】
本開示の一実施形態では、上記配列番号3及び配列番号4のプライマーは配列番号1の二重標識プローブに対するものであり、上記配列番号5及び配列番号6のプライマーは配列番号2の二重標識プローブに対するものである。
【0018】
本開示は、B型肝炎ウイルスの検出のためのPCR反応混合物であって、核酸増幅試薬、配列番号1及び配列番号2に規定される二重標識プローブ、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6のプライマー、並びに試験サンプルを含む、PCR反応混合物に関する。
【0019】
本開示の一実施形態では、上記サンプルは血液、血清及び血漿を含む群から選択される。
【0020】
本開示の一実施形態では、上記PCRはリアルタイムPCRである。
【0021】
本開示は、B型肝炎ウイルスを検出する方法であって、
(a)核酸増幅試薬、配列番号1又は配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブ、それぞれ配列番号3及び配列番号4又は配列番号5及び配列番号6の対応するプライマー、試験サンプルを含む反応混合物を調製する工程、並びに
(b)上記反応混合物に対してPCRを行い、標的配列のコピーを得た後、B型肝炎ウイルスを検出するために蛍光シグナルの増大を測定する、PCRを行い、測定する工程を含む、方法。
【0022】
本開示の一実施形態では、上記プローブは5’末端で蛍光物質、内部領域又は3’末端でクエンチャーという検出可能な標識と結合している。
【0023】
本開示の一実施形態では、上記配列番号3及び配列番号5のプライマーはそれぞれセンスプライマーであり、上記配列番号4及び配列番号6のプライマーはそれぞれアンチセンスプライマーである。
【0024】
本開示の一実施形態では、上記試験サンプルは血液、血清及び血漿を含む群から選択される。
【0025】
本開示の一実施形態では、上記増幅試薬は塩化マグネシウム、Taqポリメラーゼ及び増幅バッファーを含む。
【0026】
本開示の一実施形態では、上記検出は本質的に定性的又は定量的である。
【0027】
本開示の一実施形態では、上記蛍光物質はフルオレセイン、及びフルオレセイン誘導体であるFAM、VIC、JOE、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸、クマリン及びクマリン誘導体、ルシファーイエロー、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、6−カルボキシフルオレセイン、テトラクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン並びにシアニン色素を含む群から選択される。
【0028】
本開示の一実施形態では、上記クエンチャーは、テトラメチルローダミン[TAMRA]、4’−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸、4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−マレイミド、テトラメチルローダミン、カルボキシテトラメチルローダミン及びBHQ色素を含む群から選択される。
【0029】
本開示の一実施形態では、上記蛍光物質は、好ましくは5’末端の6−カルボキシフルオレセインであり、上記クエンチャーは、好ましくは3’末端のテトラメチルローダミン[TAMRA]、又は内部領域若しくは3’末端のブラックホールクエンチャー1[BHQ1]である。
【0030】
本開示は、B型肝炎ウイルスの検出のためのキットであって、単独又は組み合わせた配列番号1及び配列番号2の二重標識プローブ、単独又は組み合わせた配列番号3、配列番号4、及び配列番号5、配列番号6の対応するプライマー対、並びに増幅試薬を含む、キットに関する。
【0031】
本開示の一実施形態では、上記増幅試薬は塩化マグネシウム、Taqポリメラーゼ及び増幅バッファーを含む。
本開示の生物学的配列のリスト
配列番号1並びに対応するプライマーである配列番号3及び配列番号4は、下記表1に示される配列を有する。
【0032】
【表1】

【0033】
配列番号2並びに対応するプライマーである配列番号5及び配列番号6は、表2に示される配列を有する。
【0034】
【表2】

【0035】
リアルタイムPCRを利用することによって、この設計された「オリゴヌクレオチド」プローブを感染サンプル中のHBV核酸の検出に使用することができる。検出の方法は、PCR中の蛍光の増大を測定することである。
【0036】
HBVゲノムに特異的な最もよく保存された領域を特定するために、HBVデータベースを徹底的に検索した。保存領域を有する最も有望な領域を、プライマー・プローブセットを設計するために選択した。表面遺伝子及びX遺伝子中の(with in)保存領域を得て、解析し、プローブ及びプライマーを設計した。
【0037】
本発明によると、配列番号1は、配列番号3及び配列番号4のそのそれぞれのセンスプライマー及びアンチセンスプライマーと共に、HBVゲノムの表面遺伝子に対して設計されている。同様に、配列番号2は、配列番号5及び配列番号6のその対応するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーと共に、HBVゲノムのX遺伝子に対して設計されている。
【0038】
本発明によると、上記配列番号1及び配列番号2の「オリゴヌクレオチド」は、5’末端に蛍光物質、内部領域又は3’末端にクエンチャーという検出可能な標識を有する。蛍光物質はフルオレセイン、及びフルオレセイン誘導体であるFAM、VIC、JOE、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸、クマリン及びクマリン誘導体、ルシファーイエロー、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、6−カルボキシフルオレセイン、テトラクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン並びにシアニン色素を含む群から選択される。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態では、上記クエンチャーはテトラメチルローダミン[TAMRA]、4’−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸、4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−マレイミド、テトラメチルローダミン、カルボキシテトラメチルローダミン及びBHQ色素を含む群から選択される。上記蛍光物質は好ましくは6−カルボキシフルオレセイン[FAM]であり、クエンチャーは内部に存在する場合、ブラックホールクエンチャー1[BHQ1]であり、3’末端に存在する場合、テトラメチルローダミン[TAMRA]又はブラックホールクエンチャー1[BHQ1]であるのが好ましい。
【0040】
本発明は核酸増幅試薬、配列番号1又は配列番号2に指定される「オリゴヌクレオチド」プローブ、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のそれらの対応するプライマー、並びに試験サンプルを含む上記PCR反応混合物に対し、リアルタイムPCRを用いた増幅を行って、標的配列のコピーを得る、B型肝炎ウイルスを検出する方法に関する。増幅は蛍光シグナルの増大によって測定される。
【0041】
「オリゴヌクレオチド」プローブのサイズは19ヌクレオチド〜27ヌクレオチドの範囲である。設計されたプローブは5’末端に蛍光物質を、内部領域又は3’末端にクエンチャーを有する。
【0042】
上記蛍光物質は好ましくは6−カルボキシフルオレセイン[FAM]であり、クエンチャーは内部に存在する場合、ブラックホールクエンチャー1[BHQ1]であり、3’末端に存在する場合、テトラメチルローダミン[TAMRA]又はブラックホールクエンチャー1[BHQ1]であるのが好ましい。本発明は、血液/血清/血漿サンプル中に存在するB型肝炎ウイルスの検出に使用される。検出に使用される方法は、PCR中の蛍光の増大をモニタリングすることである。
【0043】
本発明によると、「オリゴヌクレオチド」プローブとは、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)の短配列を指す。本発明による「オリゴヌクレオチド」プローブは、全てのB型肝炎ウイルス(HBV)遺伝子型に由来する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる。本発明による「オリゴヌクレオチド」プローブは概して、約19ヌクレオチド長〜27ヌクレオチド長である。本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド」プローブは、非HBV核酸への非特異的なハイブリダイゼーションを示すことなく、HBV核酸配列に特異的にハイブリダイズする。本明細書で利用される「オリゴヌクレオチド」配列プローブは、TaqMan chemistryの原理に従う。Double−Dyeオリゴヌクレオチド又は二重標識プローブとも呼ばれるTaqManプローブは、最も広く使用されているタイプのプローブである。このプローブは、Roche[Basel,Switzerland]及びABI[Foster City,USA]によって、本来は放射標識プローブを使用していたアッセイから開発されたものであり、アンプリコンの一方の鎖と相補的な一本鎖プローブ配列からなる。蛍光物質は励起すると、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)によってそのエネルギーをクエンチャーへと渡す。リアルタイムPCRにおいては、プローブはPCRの各アニーリング工程中にアンプリコンに結合する。Taqポリメラーゼがアンプリコンに結合したプライマーから伸長を行うと、プローブの5’末端が置換され、続いてTaqポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。切断は残りのプローブがアンプリコンからなくなるまで続けられる。このプロセスによって、蛍光物質及びクエンチャーが溶液中に放出され、それらがプローブによって結び付けられていたときと比べて特別に引き離される。これにより蛍光物質からの蛍光の不可逆的な増大がもたらされる。
【0044】
したがって、本発明による配列番号1及び配列番号2の「オリゴヌクレオチド」プローブはさらに、それぞれ配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のそれらの対応するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーと組み合わせて提供されるが、これらを使用して、リアルタイムPCRによって試験サンプル中のHBV核酸配列を特異的に増幅及び検出することができる。
【0045】
本願の技術を、以下の実施例を用いてさらに詳しく説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0046】
配列番号1及び配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブの有効性及び感度を解析し、市販の標準キットと比較した。いずれの場合にも同じ濃度のリアルタイムPCR試薬、鋳型及びオリゴヌクレオチド(oligos)を使用し、サイクル条件も全ての反応について一定に保った。市販の標準キットにより得られた結果に基づいて、配列番号1及び配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブをそれらの感度及び特異性について解析した。
実施例1
市販のキットを用いて、10個のHBV陽性血清サンプル及び10個のHBV陰性血清サンプルからDNAを単離した。全てのサンプルについて、リアルタイムPCR反応を、配列番号1及び配列番号2に指定されるオリゴヌクレオチドプローブを、それぞれ配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のそれらの対応するプライマーと共に用いて行った。感染サンプルを検知する、これらのオリゴヌクレオチドプローブの感度を市販の標準キットと比較した。いずれの場合にも同じ濃度のリアルタイムPCR試薬、鋳型及びプライマーを使用し、サイクル条件も全ての反応について一定に保った。リアルタイムPCRミックスの組成及びPCR条件を表3及び表4に挙げる。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
得られた結果から、配列番号1及び配列番号2に指定されるオリゴヌクレオチドプローブがHBV陽性サンプルのみを検知し、陰性サンプルに対する誤った増幅を全く示さないことが示された。
【0050】
配列番号1のオリゴヌクレオチドは、10個全ての陽性サンプルを40サイクル(陽性サンプルカットオフ値)の内に検知し、100%の特異性を示した。検出された10個の陽性サンプル(positives)のうち、9個のサンプルが市販の標準キットと比べてより早く検出された。
【0051】
同様に、配列番号2のオリゴヌクレオチドは10個全ての陽性サンプルを40サイクル(陽性サンプルカットオフ値)の内に検知し、100%の特異性を示した。検出された10個の陽性サンプルのうち、2個のサンプルが市販の標準キットと比べてより早く検出された。
【0052】
配列番号1は多くのサンプルを市販の標準キットよりも早く検知したため、配列番号1はHBV感染のスクリーニングに対し、特異性及び感度の点でより優れたプローブである。しかしながら、配列番号1及び配列番号2のどちらのオリゴヌクレオチドプローブもHBV感染の検出に使用することができる。
【0053】
市販のキットのCt値との配列番号1のパフォーマンスの比較を表5に示す。同様に、市販のキットのCt値との配列番号2のパフォーマンスの比較を表6に示す。市販のキット、配列番号1及び配列番号2のリアルタイムPCRグラフを図1、図2、図3、図4及び図5に挙げる。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
実施例2
標準曲線を作成することによってもウイルス量を定量することができる。標準曲線の作成のために、25μlのHBV DNAに対し、dNTP、Taq DNAポリメラーゼ、酵素バッファー、MgCl、並びに表面遺伝子領域及びX遺伝子領域に特異的なプライマーを含有するPCRミックスを用いた従来のPCRを行った。PCRの条件は以下の通りである:
工程1:95℃で120秒間
工程2:95℃で20秒間
工程3:60℃で40秒間
工程2及び工程3を40サイクル繰り返した
PCRの後、増幅したサンプルに対して3%アガロースゲルでの電気泳動を行い、エチジウムブロマイドで染色した。次いで、HBVゲノムの表面遺伝子及びX遺伝子領域に相当する約1.2kbp長のアンプリコンのバンドを、ゲルから切り出し、Qiaquickゲル抽出キットを用いて精製した。精製したアンプリコンDNA(2μl)の260nmでの吸光度を、nanodropを用いて推定した。DNAの吸光係数は、個々の塩基の吸光係数を合計することによって算出した。
【0057】
アンプリコンのナノモル濃度(Nanomoles)は、以下の方程式を用いて算出した:
Nmoles/ml=1000×OD260(1cm)×1ml(体積)/アンプリコンの吸光係数
コピー数は以下の式を用いて算出した:
コピー数/ml=(mol/ml)×アボガドロ数
算出値:
OD260=0.522
吸光係数=33675.1
nmoloes/ml=0.015501068
コピー数/ml=9.34×1012
リアルタイムPCRを用いて10希釈〜10希釈のアンプリコンをランすることによって、純粋なアンプリコンのコピー数から標準曲線を作成した。リアルタイムPCRプレミックスの組成及びPCRプログラムを表3及び表4に挙げる。
【0058】
図6の標準曲線から得られるCt値から、未知のサンプルについてコピー数を算出することができる(図6及び表7)。
【0059】
【表7】

【0060】
結論
a)陰性サンプルのいずれも、配列番号1及び配列番号2に指定される設計されたオリゴヌクレオチドプローブにより偽陽性を示さなかった。
【0061】
b)HBVの表面遺伝子に対して設計された配列番号1のオリゴヌクレオチドは、良好な特異性及び感度を示した(100%)。10個の陽性サンプルのうち、9個が市販の標準キットよりも早く検知された(表5)。
【0062】
c)HBVのX遺伝子に対して設計されたオリゴヌクレオチド配列番号2も、10個全ての陽性サンプルを検知し、100%の特異性を示した。10個の陽性サンプルのうち、2個が市販の標準キットよりも早く検知された(表6)。
【0063】
d)これらの評価研究を総合すると、配列番号1及び配列番号2は市販のキットに比べ、HBV検出に最良であると考えられた。
【0064】
e)最後に、配列番号1及び配列番号2に指定されるオリゴヌクレオチドプローブは、感染サンプル中のウイルス量を定量するのに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1及び配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項2】
二重標識プローブである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
B型肝炎ウイルスを検出する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
5’末端で蛍光物質、内部領域又は3’末端でクエンチャーという検出可能な標識と結合している、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
配列番号1がB型肝炎ウイルスの表面遺伝子に対して設計され、配列番号2がB型肝炎ウイルスのX遺伝子領域に対して設計される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のプライマー。
【請求項7】
配列番号3及び配列番号5のプライマーがそれぞれセンスプライマーであり、配列番号4及び配列番号6のプライマーがそれぞれアンチセンスプライマーである、請求項6に記載のプライマー。
【請求項8】
配列番号3及び配列番号4のプライマーが配列番号1の二重標識プローブに対するものであり、配列番号5及び配列番号6のプライマーが配列番号2の二重標識プローブに対するものである、請求項6に記載のプライマー。
【請求項9】
B型肝炎ウイルスの検出のためのPCR反応混合物であって、核酸増幅試薬、配列番号1及び配列番号2に規定される二重標識プローブ、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6のプライマー、並びに試験サンプルを含む、PCR反応混合物。
【請求項10】
前記サンプルが血液、血清及び血漿を含む群から選択される、請求項9に記載のPCR反応混合物。
【請求項11】
前記PCRがリアルタイムPCRである、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
B型肝炎ウイルスを検出する方法であって、
(a)核酸増幅試薬、配列番号1又は配列番号2のオリゴヌクレオチドプローブ、それぞれ配列番号3及び配列番号4又は配列番号5及び配列番号6の対応するプライマー、試験サンプルを含む反応混合物を調製する工程、並びに
(b)前記反応混合物に対してPCRを行い、標的配列のコピーを得た後、B型肝炎ウイルスを検出するために蛍光シグナルの増大を測定する、PCRを行い、測定する工程を含む、方法。
【請求項13】
前記プローブが5’末端で蛍光物質、内部領域又は3’末端でクエンチャーという検出可能な標識と結合している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記配列番号3及び配列番号5のプライマーがそれぞれセンスプライマーであり、前記配列番号4及び配列番号6のプライマーがそれぞれアンチセンスプライマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記試験サンプルが血液、血清及び血漿を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記増幅試薬が塩化マグネシウム、Taqポリメラーゼ及び増幅バッファーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記検出が本質的に定性的又は定量的である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光物質がフルオレセイン、及びフルオレセイン誘導体であるFAM、VIC、JOE、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸、クマリン及びクマリン誘導体、ルシファーイエロー、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、6−カルボキシフルオレセイン、テトラクロロ−6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン並びにシアニン色素を含む群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記クエンチャーがテトラメチルローダミン[TAMRA]、4’−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸、4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−マレイミド、テトラメチルローダミン、カルボキシテトラメチルローダミン及びBHQ色素を含む群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光物質が、好ましくは5’末端の6−カルボキシフルオレセインであり、前記クエンチャーが好ましくは3’末端のテトラメチルローダミン[TAMRA]、又は内部領域若しくは3’末端のブラックホールクエンチャー1[BHQ1]である、請求項18及び19に記載の方法。
【請求項21】
B型肝炎ウイルスの検出のためのキットであって、単独又は組み合わせた配列番号1及び配列番号2の二重標識プローブ、単独又は組み合わせた配列番号3、配列番号4、及び配列番号5、配列番号6の対応するプライマー対、並びに増幅試薬を含む、キット。
【請求項22】
前記増幅試薬が塩化マグネシウム、Taqポリメラーゼ及び増幅バッファーを含む、請求項21に記載の方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−517804(P2012−517804A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549734(P2011−549734)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000048
【国際公開番号】WO2010/092595
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511198069)ビッグテック プライベート リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BIGTEC PRIVATE LIMITED
【住所又は居所原語表記】II Floor, SID Entrepreneurship Building, Indian Institute of Science  IISc  Campus, Malleshwaram,Bangalore 560 012, Karnataka INDIA
【Fターム(参考)】