C−Cカップリング反応用触媒組成物

【課題】厳密な禁水性を必要とせず、従来の硝酸銀やフッ化銀を使用したC−Cカップリング反応における問題点のない、工業的利用に適したC−Cカップリング反応用の触媒を提供すること。
【解決手段】パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を含むC−Cカップリング反応用触媒組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なC−Cカップリング反応用触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のC−Cカップリング反応においては、遷移金属触媒の存在下、炭化水素のハロゲン化物と、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬)、有機亜鉛試薬(バルビエール試薬)、有機錫試薬(stille-カップリング)または有機ボロン酸(suzuki-カップリング)等とを作用させ、それによってカップリング体を得ていた(非特許文献1参照)。このカップリング反応においては、前記ハロゲン化物のC−ハロゲン結合の活性化および各種有機金属試薬の炭素−金属結合の活性化が起こっており、これによってカップリング体が生成する。
【0003】
しかしながら、これらのカップリング反応に用いられる前記有機金属試薬は、水分に不安定であり、高い発火性を持つため、大気中での取り扱いが難しく、窒素等の不活性雰囲気下で、厳密な監視下に取り扱う必要がある。そのため上記カップリング反応は、取扱者の安全性の観点から、また製造プロセスが煩雑になってしまう点から、工業的に好ましい反応であるとは言えない。
【0004】
一方、非特許文献2〜4および特許文献1には、パラジウム触媒の存在下、カップリング反応の反応促進剤として硝酸銀またはフッ化銀などを用いて、2−ブロモチオフェンまたは2−ホルミルチオフェンとハロゲン化アリール化合物とを作用させることにより、2−ブロモチオフェンまたは2−ホルミルチオフェンのC−H結合およびハロゲン化アリール化合物のC−ハロゲン結合の活性化を利用して、C−Cカップリング体を得ることが開示されている。
【0005】
従来の知見から考えると、2−ブロモチオフェンのC−Br結合または2−ホルミルチオフェンのC−CHO結合の活性化が起こるはずであるのに対し、ブロモ基またはホルミル基を保持した状態で、チオフェンのC−Hの結合活性化によるカップリング体の生成が見られている。このC−Cカップリングに関しては、従来の触媒サイクルとは異なるメカニズムでカップリング反応が進行すると、上記文献の著者らは示唆している。
【0006】
このような、反応促進剤として硝酸銀またはフッ化銀などを用いた反応では、有機金属試薬を用いる必要がないため、厳密な禁水性は必要とされない。しかしながら、カップリング体を得るにあたって、前記硝酸銀およびフッ化銀から生じる副生成物(たとえばハロゲン化銀)の除去のプロセスが困難であること、および環境的側面から、これら銀化合物の使用は工業的に好ましいとは言えない。
【0007】
なお、特許文献2には、β−ピネン単位を30質量%以上含有する重合体の主鎖および/または側鎖にある不飽和結合を飽和結合に変換し、β−ピネン系重合体を得る水素化反応において、金属を含む不均一系水素化触媒を用い、かつ、M(OR)nなどを共存させることを特徴とするβ−ピネン系重合体の「水素化方法」(nは1または2である)が開示されている。当該文献の[0042]には、前記不均一系水素化触媒中の金属はパラジウムであることが好ましいことが開示され、[0048]には、前記M(OR)nのMの例としてリチウムが挙げられ、またRの例としてt−ブチル基が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−220075号公報
【特許文献2】特開2009−270097号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tetrahedron Lett. 2008, 49, 1000-1003
【非特許文献2】Org. Lett. 2005, 7, 5083-5085
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 5074-5075
【非特許文献4】Bulletin of the Chemical Society of Japan Vol.81, No.5 548-561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、厳密な禁水性を必要とせず、非特許文献2〜4および特許文献1に記載のC−Cカップリング反応のような、硝酸銀やフッ化銀を使用した場合の問題点のない、工業的利用に適したC−Cカップリング反応用の触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のC−Cカップリング反応用触媒組成物は、パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を含むことを特徴としている。
すなわち本発明者らは、パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を触媒として使用したC−Cカップリング反応では、非特許文献2〜4および特許文献1に記載のC−Cカップリング反応と同様の触媒サイクルで、C−Cカップリング体が得られ、当該反応においては、厳密な禁水性が必要とされず、かつリチウム塩基から生じる副生物の除去も困難ではなく、また前記反応は、環境的側面からも特に問題はないことを見出し、本発明を完成するにいたったのである。
【0012】
前記パラジウム錯体触媒において、パラジウム原子の価数が0価もしくは2価であり、パラジウム原子に配位する配位子がホスフィン化合物、アリール化合物、ニトリル化合物、カルボニル化合物およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物もしくは原子であることが好ましい。
【0013】
また、前記パラジウム錯体触媒において、パラジウム原子1モルに対し、前記配位子が1〜4モル配位していることが好ましい。
前記リチウム塩基の構造は通常、カチオンであるリチウムに対し、アニオンがイオン結合した構造であり、前記アニオンはカルボアニオンまたはアルコキシアニオンである。
【0014】
本発明のC−Cカップリング反応用触媒組成物は、アリール化合物とハロゲン化アリール化合物とのC−Cカップリング反応に好適に使用することができる。
前記アリール化合物は、置換されていてもよい複素芳香環化合物であって、該複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、前記複素芳香環を構成する炭素原子の少なくとも一つは置換されていない複素芳香環化合物であることが好ましい。
【0015】
前記複素芳香環化合物の例としては、下記式(1)で表されるチオフェンもしくはその誘導体が挙げられる。
【0016】
【化1】

式(1)において、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、R1およびR2は互いに結合して5もしくは6員の芳香環を形成してもよく、該芳香環はヘテロ原子を有していてもよく、該芳香環は置換されていてもよく、R2およびR3は互いに結合して5もしくは6員の脂環構造を形成してもよく、該脂環構造はヘテロ原子を有していてもよく、該脂環構造は置換されていてもよい。
【0017】
また前記ハロゲン化アリール化合物の例としては、下記式(2)で表されるアリール誘導体が挙げられる。
【0018】
【化2】

式(2)において、Ra、RbおよびRcはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、Xはハロゲン原子であり、置換基数を示すm1は0〜3の整数であり、m2は0〜5の整数であり、m3は0〜4の整数であり、m1が2以上の場合、複数存在するRaは同一でも異なっていてもよく、m2が2以上の場合、複数存在するRbは同一でも異なっていてもよく、m3が2以上の場合、複数存在するRcは同一でも異なっていてもよい。
【0019】
さらに、本発明のC−Cカップリング反応用触媒組成物を使用したC−Cカップリング反応は、アリール化合物と、ハロゲン化アリール化合物とを接触させ、前記アリール化合物の炭素−水素原子間の結合、および前記ハロゲン化アリール化合物の炭素−ハロゲン原子間の結合を活性化させ、炭素−炭素原子間での結合を形成させるC−Cカップリング反応を実施するに際して、パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を含むC−Cカップリング反応用触媒組成物の存在下、極性プロトン性有機溶媒中で前記C−Cカップリング反応を実施するものであり、該反応により、多環芳香族化合物が製造される。
【0020】
前記アリール化合物は好ましくは、置換されていてもよい複素芳香環化合物であって、該複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、前記複素芳香環を構成する炭素原子の少なくとも一つは置換されていない複素芳香環化合物である。
【0021】
前記複素芳香環化合物の例としては、下記式(1)で表されるチオフェンもしくはその誘導体が挙げられる。
【0022】
【化3】

式(1)において、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、R1およびR2は互いに結合して5もしくは6員の芳香環を形成してもよく、該芳香環はヘテロ原子を有していてもよく、該芳香環は置換されていてもよく、R2およびR3は互いに結合して5もしくは6員の脂環構造を形成してもよく、該脂環構造はヘテロ原子を有していてもよく、該脂環構造は置換されていてもよい。
【0023】
前記パラジウム錯体において、パラジウム原子の価数が0価もしくは2価であり、パラジウム原子に配位する配位子がホスフィン化合物、アリール化合物、ニトリル化合物、カルボニル化合物、ハロゲン原子からなる群より選ばれる化合物もしくは原子であり、前記パラジウム原子1モルに対し、前記配位子が1〜4モル配位していることが好ましい。
【0024】
前記ハロゲン化アリール化合物の例としては、下記式(2)で表されるアリール誘導体が挙げられる。
【0025】
【化4】

式(2)においてRa、RbおよびRcはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、置換基数を示すm1は0〜3の整数であり、m2は0〜5の整数であり、m3は0〜4の整数であり、m1が2以上の場合、複数存在するRaは同一でも異なっていてもよく、m2が2以上の場合、複数存在するRbは同一でも異なっていてもよく、m3が2以上の場合、複数存在するRcは同一でも異なっていてもよい。
【0026】
前記C−Cカップリング反応用触媒組成物の使用量は、前記パラジウム錯体触媒換算で、前記ハロゲン化アリール化合物の仕込みモル量に対し、0.1〜50モル%であることが好ましい。
【0027】
また、前記C−Cカップリング反応用触媒組成物において、前記リチウム塩基の構造が、カチオンであるリチウムに対し、アニオンがイオン結合した構造であり、前記アニオンはカルボアニオンまたはアルコキシアニオンであり、前記C−Cカップリング反応用触媒組成物の使用量が、前記リチウム塩基換算で、前記アリール化合物の仕込み量一当量に対し、0.1〜50当量であることが好ましい。
前記C−Cカップリング反応の反応温度は、通常40〜150℃である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のC−Cカップリング反応用触媒組成物によれば、厳密な禁水性を必要とせず、環境的側面から問題なく、副生成物の除去が困難となることなく、C−Cカップリング反応を実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のC−Cカップリング反応用触媒組成物(以下単に「本発明の触媒組成物」ともいう)を構成する各成分および該触媒組成物の使用方法について詳細に説明する。
【0030】
[パラジウム錯体触媒]
本発明の触媒組成物を構成するパラジウム錯体触媒は、パラジウム原子に、配位子となる任意の化合物または原子が反応して(配位して)得られた化合物であれば、特に限定されない。パラジウム錯体触媒は、C−Cカップリング反応において、二つの化合物または構造の間に炭素−炭素結合を生じさせる作用を有すると考えられる。
【0031】
前記パラジウム原子の価数は、通常0価もしくは2価である。
前記配位子となる化合物の例としては、ホスフィン化合物、アリール化合物、ニトリル化合物、カルボニル化合物およびハロゲン原子が挙げられる。前記ホスフィン化合物はリン原子による配位をし、前記アリール化合物はπ電子による炭素原子のハプト配位をし、前記ニトリル化合物は窒素原子による配位をし、前記カルボニル化合物は酸素原子−炭素原子−酸素原子によるハプト3配位をする。
【0032】
これらの配位子の中でも、C−Cカップリング反応の触媒活性に影響する立体障害性と、パラジウム原子上の電子密度を調整するための配位子の立体障害性や配位子の電子ドナー性の調整など、分子設計の拡張性の高さとの観点から、ホスフィン化合物が好ましい。
【0033】
前記ホスフィン化合物の例としては、トリ−tert−ブチルホスフィン, トリフェニルホスフィンが挙げられる。
前記アリール化合物の例としては、シクロペンタジエニル、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニルが挙げられる。
【0034】
前記ニトリル化合物の例としては、アセトニトリル、ベンゾニトリルが挙げられる。
前記カルボニル化合物の例としては、アセチルアセトン、ジベンジリデンアセトンが挙げられる。
【0035】
前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
このような配位子を有するパラジウム錯体触媒においては、パラジウム原子1モルに対し、前記配位子が1〜4モル配位していることが好ましい。前記比率は、より好ましくは2モル配位(パラジウム原子1モルに対して配位子が2モル配位)である。
【0036】
このような配位子を有するパラジウム錯体触媒には、商業的に入手可能なものもあるが、別途パラジウム前駆体原料から配位子交換反応等で合成することも可能である。また、カップリング反応系にてパラジウム前駆体と配位子のそれぞれを添加することで、前記反応系中でパラジウム錯体触媒を形成させ、C−Cカップリング反応を行うことも可能である。そのような反応系中で合成されたパラジウム錯体触媒を含む本発明の触媒組成物の触媒活性は、前記反応系の外で合成して得られるパラジウム錯体触媒とほぼ同程度である。本発明の触媒組成物におけるパラジウム錯体触媒の含有量については、後述の〔多環芳香族化合物の製造方法〕における<反応条件等>の項にて説明する。
本発明の触媒組成物において、パラジウム錯体触媒は、1種単独で含まれても、2種以上が含まれてもよい。
【0037】
[リチウム塩基]
本発明の触媒組成物に含まれるリチウム塩基は、C−Cカップリング反応を促進する強塩基である。前記リチウム塩基は、カチオンであるリチウムに対し、アニオンがイオン結合した構造をとっている。前記アニオンの例としては、カルボアニオンおよびアルコキシアニオンが挙げられる。前記アルコキシアニオンにおけるアルコキシの炭素数は、通常1〜10である。
【0038】
前記リチウム塩基の具体例としては、tBuOLi、n-BuLi、t-BuLi、sec-BuLi、LiNH2およびリチウムペンタメチルシクロペンタジエニドが挙げられる。C−Cカップリング反応においてこの特定の強塩基を存在させることにより、たとえば本発明の触媒組成物を後述するアリール化合物とハロゲン化アリール化合物とのC−Cカップリング反応に使用する場合には、アリール化合物の炭素−水素間の結合活性化、生成する多環芳香族化合物のカルボアニオンの安定化、アリール化合物から脱離するプロトンの捕捉によりC−Cカップリング反応が促進されるものと考えられる。本発明の触媒組成物におけるリチウム塩基の含有量については、後述の〔多環芳香族化合物の製造方法〕における<反応条件等>の項にて説明する。
【0039】
本発明の触媒組成物において、リチウム塩基は、1種単独で含まれても、2種以上が含まれてもよい。
【0040】
[その他の成分]
本発明の触媒組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、パラジウム錯体触媒の反応活性の向上などの目的で、支持配位子等を含んでいてもよい。
前記支持配位子の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

これらの支持配位子を使用する場合、その含有量は、本発明の触媒組成物に含まれるパラジウム錯体触媒1当量あたり、0.1〜10当量となる量が好ましい。
【0045】
本発明の触媒組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、パラジウム触媒サイクルを促進するための目的で炭酸カリウムや第3級アミン等のハロゲントラップ剤を含んでもよい。これらのハロゲントラップ剤を使用する場合は、その好ましい使用量は、本発明の触媒組成物を後述するアリール化合物とハロゲン化アリール化合物とのC−Cカップリング反応に使用する場合には、反応基質であるハロゲン化アリール化合物もしくはアリール化合物の仕込み量一当量に対し、通常0.1〜50当量であり、より好ましくは1〜10当量である。
【0046】
[本発明の触媒組成物の調製方法]
本発明の触媒組成物は、たとえば、以上説明した各構成成分を物理的に混合することによって調製することができる。混合を容易にするため、パラジウム錯体触媒またはリチウム塩基などは、それらが可溶の溶媒に溶解した状態で混合に供してもよい。前記溶媒の例としては、後述する〔多環芳香族化合物の製造方法〕の<反応条件等>の項で説明する、多環芳香族化合物の製造において使用することのできる反応溶媒が挙げられる。前記溶媒は、1種単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0047】
また、本発明の触媒組成物はC−Cカップリング反応に使用されるが、該カップリング反応系に前記各構成成分を投入し、カップリング反応系において触媒組成物を調製してもよい。この投入する際にも、パラジウム錯体触媒またはリチウム塩基などは溶媒に溶解した状態であってもよい。
【0048】
[本発明の触媒組成物の使用方法]
本発明の触媒組成物は、以上説明したパラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を含み、当該触媒組成物によれば、従来の銀化合物を反応促進剤として使用したC−Cカップリング反応と同様にC−Cカップリング体を合成することができる。しかも前記触媒組成物を使用したC−Cカップリング反応では、厳密な禁水性は必要とされず、除去が困難となる副生成物は生じず、また環境的側面からも特に問題はない。
【0049】
〔多環芳香族化合物の製造方法〕
本発明の触媒は、たとえば、アリール化合物と、ハロゲン化アリール化合物とを接触させ、前記アリール化合物の炭素−水素原子間の結合、および前記ハロゲン化アリール化合物の炭素−ハロゲン原子間の結合を活性化させ、炭素−炭素原子間(前記のアリール化合物における、活性化された炭素−水素原子の結合を構成する炭素原子と、前記のハロゲン化アリール化合物における、活性化された炭素−ハロゲン原子の結合を構成する炭素原子との間)での結合を形成させるC−Cカップリング反応を実施し、多環芳香族化合物を製造する反応に好適に使用することができる。
【0050】
前記多環芳香族化合物の例としてビチオフェンなどが挙げられるが、これらは、その光学的特性、電気化学的振る舞いおよび液晶特性などから、有機TFT、発光素子および有機ソーラーセルなどの有機半導体の原材料として使用しうる先端材料として注目されている化合物である。以下、前記多環芳香族化合物の製造方法における反応原料および反応条件等について説明する。
【0051】
<反応原料>
(アリール化合物)
前記アリール化合物の例としては、置換されていてもよい複素芳香環化合物であって、該複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、前記複素芳香環を構成する炭素原子の少なくとも一つは置換されていない複素芳香環化合物が挙げられる。
【0052】
前記複素芳香環化合物における置換基の例としては、6員環、5員環等の縮合環を形成する置換基、置換もしくは非置換のベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環等の芳香族基が挙げられる。これらの置換基が結合していることにより、置換基が結合した部位は炭素−水素結合活性化を起こさず、置換基が結合していない炭素−水素結合が選択的に活性化され、ハロゲン化アリール化合物とのカップリング体を与える。
【0053】
以上例示した置換基の中でも、反応効率の観点から、6員環の縮合環を形成する置換基を有するベンゾ[b]チオフェン、置換もしくは非置換のベンゼン環およびチオフェン環が好ましい。
【0054】
さらに、これらの置換基は、元々の置換されていない複素芳香環化合物におけるカチオン性が高い(電子密度が低い)炭素上に結合していることが、反応効率の観点から好ましい。
【0055】
前記複素芳香環化合物において、該複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、前記複素芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子が活性化し、ハロゲン化アリール化合物の、ハロゲン原子が結合した炭素原子との間でC−Cカップリング反応が進行する。
【0056】
前記複素芳香環化合物が置換基を有しない場合は、複素芳香環を構成するヘテロ原子の両隣の二つの炭素上の電子密度は、ほぼ同じであるため、両隣の炭素−水素結合が活性化される。その結果として、C−Cカップリング反応により、複素芳香環化合物一分子にハロゲン化アリール化合物が二分子付加したカップリング体が得られる。
【0057】
このようなハロゲン化アリール化合物が二分子付加したカップリング体を優先的に得るためには、複素芳香環化合物1当量に対し、ハロゲン化アリールを2.5当量仕込むなど、原料の仕込み比率を変える、複素芳香環化合物における炭素−水素結合からの脱プロトンの効果を向上させるため、リチウム塩基の添加量(すなわち本発明の触媒組成物の使用量または該組成物におけるリチウム塩基の含有量)を増やすなどの工夫が必要となる。
【0058】
また複素芳香環化合物は通常5〜6員の環状芳香族化合物である。
複素環を構成するヘテロ原子の例としては、硫黄原子、酸素原子、窒素原子などが挙げられるが、これらの中でも、脱プロトンの反応性の観点から硫黄原子が好ましい。
【0059】
さらに、複素環中のヘテロ原子の数は、複素環の環構成原子数によっても変化しうるが、通常1〜2個である。
以上説明した複素芳香環化合物としては、下記式(1)で表されるチオフェンもしくはその誘導体が好ましい。
【0060】
【化9】

式(1)において、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基である。前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0061】
ヘテロなクロスカップリング体を選択的に得る観点から、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に置換基を有することが好ましく、R1、R2は置換基を有し、R3は水素原子であることがより好ましい。
【0062】
さらに、式(1)において、R1およびR2は互いに結合して5もしくは6員の芳香環を形成してもよく、該芳香環はヘテロ原子を有していてもよく、該芳香環は置換されていてもよく、R2およびR3は互いに結合して5もしくは6員の脂環構造を形成してもよく、該脂環構造はヘテロ原子を有していてもよく、該脂環構造は置換されていてもよい。
【0063】
前記ヘテロ原子の例としては酸素、窒素、硫黄原子が挙げられ、前記芳香環または脂環構造に結合する置換基の例としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
【0064】
以上説明した複素芳香環化合物は市販されており、また公知の方法によって容易に合成することができる。
本発明の多環芳香族化合物の製造方法においては、前記複素芳香環化合物は1種単独で反応に使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
(ハロゲン化アリール化合物)
上記ハロゲン化アリール化合物は、ハロゲン原子で置換されていれば特に限定されず、その他の置換基でさらに置換されていてもよい。前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0066】
複素芳香環化合物とのC−Cカップリング反応では、ハロゲン化アリール化合物の、前記ハロゲン原子が結合した炭素原子が活性化し、複素芳香環化合物の、複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、活性化された炭素原子との間でカップリング反応が進行する。
【0067】
前記ハロゲン化アリール化合物には、ハロゲン原子以外のその他の置換基が結合してもよく、その例としては、炭素数1〜10のアルキル基および炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基および炭素数5〜10の脂環族基が挙げられる。
以上説明したハロゲン化アリール化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
【0068】
【化10】

式(2)において、Ra、RbおよびRcはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基である。
【0069】
また、式(2)において、置換基数を示すm1は0〜3の整数であり、m2は0〜5の整数であり、m3は0〜4の整数である。
m1が2以上の場合には、複数存在するRaは同一でも異なっていてもよい。
m2が2以上の場合には、複数存在するRbは同一でも異なっていてもよい。
m3が2以上の場合には、複数存在するRcは同一でも異なっていてもよい。
【0070】
以上説明したハロゲン化アリール化合物は市販されており、また公知の方法によって容易に合成することができる。
本発明の多環芳香族化合物の製造方法においては、前記ハロゲン化アリール化合物は1種単独で反応に使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
<反応条件等>
本発明においては、C−Cカップリング反応は、本発明の触媒組成物の存在下、極性非プロトン性有機溶媒中で、上記アリール化合物と、上記ハロゲン化アリール化合物とを反応させることにより実施される。たとえば、前記アリール化合物が2−メチルチオフェンであり、前記ハロゲン化アリール化合物が1−ブロモ−4−メチルベンゼンである場合には、以下に示す反応が起こる。
【0072】
【化11】

上記式において、Xはパラジウム錯体触媒における配位子であり、tBuOLiはリチウム塩基である。
【0073】
当該反応は、前記のように極性非プロトン性有機溶媒中で実施される。これは、反応における中間体を安定化するためである。
前記極性非プロトン性有機溶媒の具体例としては、、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジブチルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、DMSO、二硫化炭素、THF、シクロペンチルメチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ピリジン、4−N,N−ジメチルピリジン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリルおよびベンゾニトリルが挙げられる。
【0074】
本発明の多環芳香族化合物の製造方法におけるC−Cカップリング反応において、前記極性非プロトン性有機溶媒は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
本発明の触媒組成物におけるパラジウム錯体触媒の量は、上記反応における反応基質であるハロゲン化アリール化合物の仕込みモル量に対し、通常0.1〜50モル%となる量であり、好ましくは1〜10モル%となる量である。
【0076】
また、本発明の触媒組成物におけるリチウム塩基の量は、反応基質であるアリール化合物の仕込みモル数一当量に対し、通常0.1〜50当量となる量であり、好ましくは1〜10当量となる量である。
【0077】
以上説明したパラジウム錯体触媒およびリチウム塩基の好ましい使用量を同時に達成するため、本発明の触媒組成物におけるパラジウム錯体触媒の含有量は、好ましくはハロゲン化アリール化合物に対して0.1〜50モル%であり、より好ましくは1〜20モル%であり、リチウム塩基の含有量は、好ましくはアリール化合物1当量に対して0.1当量〜50当量であり、より好ましくは1〜10当量である。
【0078】
また、前記アリール化合物と前記ハロゲン化アリール化合物との使用割合は、モル比で、通常アリール化合物:ハロゲン化アリール化合物=1:0.5〜1:5.0の範囲であり、好ましくは1:1〜1:3.0の範囲である。
【0079】
前記反応の反応温度は通常40〜150℃であり、反応効率の観点から、好ましくは60〜120℃である。
前記反応の反応時間は通常3〜48時間であり、反応効率の観点から、好ましくは10〜24時間である。
【0080】
反応を終了させるためには、クエンチャーとして水を加えればよい。このため、本反応においては、厳密な禁水性は必要とされないが、反応系に反応を止めてしまうほどの水が混入することの無いよう注意が必要である。
【0081】
以上説明したC−Cカップリング反応において、本発明の触媒組成物が含むのはパラジウム錯体触媒およびリチウム塩基であるから、従来の強塩基たる有機金属試薬を使用していたC−Cカップリング反応とは異なり、本発明の触媒組成物を使用したC−Cカップリング反応では、厳密な禁水性は必要とされず、反応系に反応を止めてしまうほどの水が混入することの無いよう注意する程度で十分である。また、C−Cカップリング反応を実施した結果、パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基は、金属パラジウム、ハロゲン化リチウム等の不活性な状態に変化しており、これらは濾過、分液抽出等の反応溶液の後処理の段階で容易に除去できることから、非特許文献2〜4および特許文献1に記載された、銀化合物を反応促進剤として使用するC−Cカップリング反応のような、副生成物を除去するプロセスが困難となることもない。
【0082】
本発明の多環芳香族化合物の製造方法においては、上記のようにして多環芳香族化合物を合成した後に、有機電子デバイス材料向けの高純度化のためにカラムクロマトグラフィーによる精製工程、または昇華精製等の工程を実施してもよい。
【実施例】
【0083】
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
[実施例1]
本発明の触媒組成物を用いて、下記式に示す反応を実施した。
【0084】
【化12】

反応原料として、0.6mmolのベンゾチオフェンおよびそれに対して1.2当量の1−ブロモ−4−メチルベンゼンを使用した。
【0085】
25mLシュレンク管を窒素ガスで置換し、そのシュレンク管に、THF(テトラヒドロフラン)0.5mLにtert−ブトキシリチウム3当量を溶解させた溶液を添加した。さらにDMFを2mLシュレンク管に添加した。そして、シュレンク管の内容液を攪拌しながら橙色のPd(PtBu32(Aldrich社製)を、原料ベンゾチオフェンに対して2mol%シュレンク管に添加し、その後、反応原料であるベンゾチオフェンおよび1−ブロモ−4−メチルベンゼンを添加し、100℃で16時間反応させた。
【0086】
その後、水を加えて反応をクエンチし、水及びジエチルエーテルを用いて抽出を行い、有機層の溶媒を減圧留去し、C−Cカップリング反応の生成物である1−ベンゾチエニル−4−メチルベンゼンを得た。これのNMR収率を測定したところ、1H NMR収率は97%であった。なお、NMRの測定条件は以下のとおりである。
【0087】
1H NMRスペクトルはJEOL JNM−ECX500Mを用いて、重クロロホルム溶媒中でテトラメチルクロロシラン(TMS)を内部基準とし、測定を行った(以下の実施例及び比較例についても同様に実施した)。
【0088】
[実施例2〜4]
使用するパラジウム錯体触媒およびtert−ブトキシリチウムの使用量、反応溶媒の種類および反応時間を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてC−Cカップリング反応を実施した。C−Cカップリング反応の生成物の1H NMR収率も併せて表1に示す。
【0089】
【表1】

[実施例5]
本発明の触媒組成物を用いて、下記式に示す反応を実施した。
【0090】
【化13】

反応原料として、0.5mmolの2−メチルチオフェンおよびそれに対して1.2当量の1−ブロモ−4−メチルベンゼンを使用した。
【0091】
25mLシュレンク管を乾燥してから窒素ガスで置換し、そのシュレンク管に、tert−ブトキシリチウム3当量を秤量し、固体状態で添加した。さらに、TMUを2mLシュレンク管に添加した。そして、シュレンク管の内容液を攪拌しながら、橙色のPd(PtBu32(Aldrich社製)を、2−メチルチオフェンに対して2mol%シュレンク管に添加し、その後、反応原料である2−メチルチオフェンおよび1−ブロモ−4−メチルベンゼンを添加し、100℃で15時間反応させた。
【0092】
その後、水を加えて反応をクエンチし、水及びジエチルエーテルを用いて抽出を行い、有機層の溶媒を減圧蒸発させ、C−Cカップリング反応の生成物である1−(2−メチルチエニル)−4−メチルベンゼンを得た。これの1H NMR収率を実施例1と同様な条件で求めたところ、収率は35%であった。
【0093】
[実施例6〜11]
使用するパラジウム錯体触媒の種類及び量、反応溶媒の種類および使用量、反応温度および反応時間を下記表2に示すように変更した以外は、実施例5と同様にしてC−Cカップリング反応を実施した。なお、実施例7および実施例8においては、パラジウム錯体触媒の支持配位子として下記式(A)で表される化合物(実施例7)および下記式(B)で表される化合物(実施例8)を、原料仕込みの段階でシュレンク管に添加した。
【0094】
【化14】

(上記式において、Cyはシクロヘキシル基を表す。)。
【0095】
1H NMR収率を併せて表2に示す。
【0096】
【表2】

[実施例12〜18]
使用するパラジウム錯体触媒の種類及び量、反応溶媒の種類および使用量、反応温度および反応時間を下記表3に示すように変更した以外は、実施例6と同様にしてC−Cカップリング反応を実施した。なお、実施例12〜18においては、パラジウム錯体触媒の支持配位子として下記式(C)で表される化合物(実施例12、14、16)および下記式(D)で表される化合物(実施例13、15、17、18)を原料仕込みの段階でシュレンク管に添加した。
【0097】
【化15】

【0098】
【表3】

[実施例19]
本発明の触媒組成物を用いて、下記式に示す反応を実施した。
【0099】
【化16】

反応原料として、式(1a)で表される2−メチルチオフェンを0.6mmol、および式(2a)で表される1−(2−ブロモ−3−ヘキシルチエニル)−4−メトキシベンゼンを0.5mmol使用した。
【0100】
25mLシュレンク管を乾燥してから窒素ガスで置換し、そのシュレンク管に、THF0.5mLに、tert−ブトキシリチウムを1−(2−ブロモ−3−ヘキシルチエニル)−4−メトキシベンゼンに対して3当量溶解させた溶液を添加した。さらに、DMFを2mLシュレンク管に添加した。そして、シュレンク管の内容液を攪拌しながら、橙色のPd(PtBu32(Aldrich社製)を、1−(2−ブロモ−3−ヘキシルチエニル)−4−メトキシベンゼンに対して2mol%シュレンク管に添加し、その後、反応原料である式(1a)の化合物および式(2a)の化合物を添加し、100℃で15時間反応させた。
【0101】
その結果、C−Cカップリング反応の生成物である式(3a)で表される化合物、ならびに副生成物である式(4a)で表される化合物および式(5a)で表される化合物が得られた。これら三つの化合物の1H NMR収率を実施例1と同様な条件で求めたところ、式(3a)の化合物の収率が11%、式(4a)の化合物の収率が10%、そして式(5a)の化合物の収率が50%であった。
【0102】
[実施例20〜25]
反応原料である式(1a)の化合物および式(2a)の化合物の使用量、反応溶媒の種類および使用量、反応温度および反応時間を下記表4に示すように変更した以外は、実施例19と同様にしてC−Cカップリング反応を実施した。
【0103】
式(3a)〜式(5a)の化合物の1H NMR収率とともに表す。
【0104】
【表4】

[比較例1]
実施例1と同様の条件で、パラジウム錯体触媒をニッケル錯体触媒NiCl2(dppe) (dppe:1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)に変更し、NiCl2(dppe)の添加触媒量は同量で反応を行ったが、1H NMR収率で1%以下であった。
【0105】
[比較例2]
実施例1と同様の条件で、リチウム塩基を炭酸セシウムに変更し、炭酸セシウムの添加モル量は同様で反応を行ったが、1H NMR収率は1%以下であった。
【0106】
[比較例3]
実施例1と同様の条件で、溶媒を(関東化学(株)製)脱水エタノールに変更し、反応を行ったが、1H NMR収率は1%以下であった。
【0107】
[比較例4]
実施例1と同様の条件で、溶媒を(関東化学(株)製)酢酸に変更し、反応を行ったが、1H NMR収率は1%以下であった。
【0108】
[比較例5]
実施例7と同様の条件で、パラジウム錯体触媒をニッケル錯体触媒NiCl2(dppe) (dppe:1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)に変更し、添加量は同量で反応を行ったが、1H NMR収率で1%以下であった。
【0109】
[比較例6]
実施例19と同様の条件で、パラジウム錯体触媒をニッケル錯体触媒NiCl2(dppe) (dppe:1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)に変更し、添加量は同量で反応を行ったが、1H NMR収率で1%以下であった。
【0110】
[比較例7]
実施例19と同様の条件で、溶媒を(関東化学(株)製)酢酸に変更し、反応を行ったが、1H NMR収率は1%以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を含むC−Cカップリング反応用触媒組成物。
【請求項2】
前記パラジウム錯体触媒において、パラジウム原子の価数が0価もしくは2価であり、
パラジウム原子に配位する配位子がホスフィン化合物、アリール化合物、ニトリル化合物、カルボニル化合物およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物もしくは原子であることを特徴とする請求項1に記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物。
【請求項3】
前記パラジウム錯体触媒において、パラジウム原子1モルに対し、前記配位子が1〜4モル配位していることを特徴とする請求項1または2に記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物。
【請求項4】
前記リチウム塩基の構造が、カチオンであるリチウムに対し、アニオンがイオン結合した構造であり、前記アニオンはカルボアニオンまたはアルコキシアニオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物。
【請求項5】
アリール化合物とハロゲン化アリール化合物とのC−Cカップリング反応に使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物。
【請求項6】
前記アリール化合物が、置換されていてもよい複素芳香環化合物であって、該複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、前記複素芳香環を構成する炭素原子の少なくとも一つは置換されていない複素芳香環化合物であることを特徴とする請求項5に記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物。
【請求項7】
前記複素芳香環化合物が、下記式(1)で表されるチオフェンもしくはその誘導体であることを特徴とする請求項6に記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物:
【化1】

(式(1)において、
1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、
1およびR2は互いに結合して5もしくは6員の芳香環を形成してもよく、該芳香環はヘテロ原子を有していてもよく、該芳香環は置換されていてもよく、
2およびR3は互いに結合して5もしくは6員の脂環構造を形成してもよく、該脂環構造はヘテロ原子を有していてもよく、該脂環構造は置換されていてもよい。)。
【請求項8】
前記ハロゲン化アリール化合物が、下記式(2)で表されるいずれかのアリール誘導体であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のC−Cカップリング反応用触媒組成物:
【化2】

(式(2)において、Ra、RbおよびRcはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、Xはハロゲン原子であり、
置換基数を示すm1は0〜3の整数であり、m2は0〜5の整数であり、m3は0〜4の整数であり、
m1が2以上の場合、複数存在するRaは同一でも異なっていてもよく、m2が2以上の場合、複数存在するRbは同一でも異なっていてもよく、m3が2以上の場合、複数存在するRcは同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項9】
アリール化合物と、ハロゲン化アリール化合物とを接触させ、前記アリール化合物の炭素―水素原子間の結合、および前記ハロゲン化アリール化合物の炭素−ハロゲン原子間の結合を活性化させ、炭素−炭素原子間での結合を形成させるC−Cカップリング反応を実施するに際して、
パラジウム錯体触媒およびリチウム塩基を含むC−Cカップリング反応用触媒組成物の存在下、極性非プロトン性有機溶媒中で前記C−Cカップリング反応を実施することを特徴とする多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項10】
前記アリール化合物が、置換されていてもよい複素芳香環化合物であって、該複素芳香環を構成するヘテロ原子に隣接した、前記複素芳香環を構成する炭素原子の少なくとも一つは置換されていない複素芳香環化合物であることを特徴とする請求項9に記載の多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項11】
前記複素芳香環化合物が、下記式(1)で表されるチオフェンもしくはその誘導体であることを特徴とする請求項10に記載の多環芳香族化合物の製造方法:
【化3】

(式(1)において、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、
1およびR2は互いに結合して5もしくは6員の芳香環を形成してもよく、該芳香環はヘテロ原子を有していてもよく、該芳香環は置換されていてもよく、
2およびR3は互いに結合して5もしくは6員の脂環構造を形成してもよく、該脂環構造はヘテロ原子を有していてもよく、該脂環構造は置換されていてもよい。)。
【請求項12】
前記パラジウム錯体触媒において、パラジウム原子の価数が0価もしくは2価であり、
パラジウム原子に配位する配位子がホスフィン化合物、アリール化合物、ニトリル化合物、カルボニル化合物、ハロゲン原子からなる群より選ばれる化合物もしくは原子であり、
前記パラジウム原子1モルに対し、前記配位子が1〜4モル配位していることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化アリール化合物が、下記式(2)で表されるいずれかのアリール誘導体であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の多環芳香族化合物の製造方法:
【化4】

(式(2)においてRa、RbおよびRcはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基または炭素数5〜10の脂環族基であり、
置換基数を示すm1は0〜3の整数であり、m2は0〜5の整数であり、m3は0〜4の整数であり、
m1が2以上の場合、複数存在するRaは同一でも異なっていてもよく、m2が2以上の場合、複数存在するRbは同一でも異なっていてもよく、m3が2以上の場合、複数存在するRcは同一でも異なっていてもよい。)。
【請求項14】
前記C−Cカップリング反応用触媒組成物の使用量が、前記パラジウム錯体触媒換算で、前記ハロゲン化アリール化合物の仕込みモル量に対し、0.1〜50モル%であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項15】
前記リチウム塩基の構造が、カチオンであるリチウムに対し、アニオンがイオン結合した構造であり、
前記アニオンはカルボアニオンまたはアルコキシアニオンであり、
前記C−Cカップリング反応用触媒組成物の使用量が、前記リチウム塩基換算で、前記アリール化合物の仕込み量一当量に対し、0.1〜50当量であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の多環芳香族化合物の製造方法。
【請求項16】
前記C−Cカップリング反応の反応温度が、40〜150℃であることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の多環芳香族化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−183366(P2011−183366A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54726(P2010−54726)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (133)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (416)
【Fターム(参考)】