説明

C反応性タンパク質発現のアンチセンス調節

【課題】C反応性タンパク質をコードする核酸を標的とし、C反応性タンパク質の発現を調節する化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【解決手段】C反応性タンパク質をコードする核酸分子を標的とする長さで8〜50核酸塩基の化合物であって、C反応性タンパク質をコードする該核酸分子と特異的にハイブリダイズし、かつ、C反応性タンパク質の発現を阻害することを特徴とする化合物。前記化合物および製薬学的に許容しうる担体もしくは希釈剤を含んでなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C反応性タンパク質の発現を調節するための組成物及び方法を提供する。特に本発明は、C反応性タンパク質をコードする核酸と特異的にハイブリッド形成可能な化合物、特定的にはオリゴヌクレオチドに関する。そのような化合物はC反応性タンパク質の発現を調節することが示されている。
【背景技術】
【0002】
C反応性タンパク質(CRP及びPTX1としても既知)は、多様な炎症サイトカインに反応して肝臓で生産される必須のヒト急性期反応物質である。1930年に最初に同定されたタンパク質は高度に保存されており、感染又は炎症状態の初期の指示物質であると考えられる。血漿CRP量は感染、虚血、外傷、火傷及び炎症状態に反応して1,000−倍増加する。CRPの生物学的半減期は年齢、肝臓もしくは腎臓機能又は薬物療法により影響されないので、それは組織破壊、壊死及び炎症のための信頼できる生化学的マーカーであり、その測定は種々の炎症状態、狭心症、血管傷害、末期腎臓病、慢性関節リウマチ、肥満症及びアテローム性動脈硬化症の監視に広く用いられる(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。
【0003】
CRPの定量の改良法は、CRPが通常増加する状態である尿路感染(非特許文献1)、髄膜炎(非特許文献10)、新生児敗血症、エリスロポエチン抵抗(非特許文献11)及び不顕性菌血症の診断を含む臨床医学への適用を増加させた。
【0004】
構造的には、CRPはタンパク質のペントラキシン群のメンバーであり、それは環状五量体構造と放射状の相称性を特徴とする。5個の同じ24−kDaのプロトマーは206個のアミノ酸から成り、非共有結合により結合している(非特許文献12、非特許文献7)。ヒトCRPに関するゲノムDNA配列はLei et al.により報告されており(非特許文献12)、同様にタンパク質の突然変異形態(非特許文献13)ならびに担体として突然変異タンパク質を用いて物質を細胞中に送達する方法(非特許文献14)が報告されている。免疫調節活性を有するCRPのアミノ酸174−185に対応するポリペプチドは特許文献1に開示され、特許請求されている(Nestor et al.,1998年)。ヒトCRPの62−71位に対応するペプチドも、炎症状態の処置のためにヒト白血球エラスターゼ及び/又はカテプシンGの活性を阻害するそれらの能力に関して研究され、これらは特許文献2(Fridkin,1999年)に開示されている。
【0005】
CRPタンパク質は広い範囲の細胞物質、例えばホスホコリン、フィブロネクチン、クロマチン、ヒストン類及びリボ核タンパク質にカルシウム依存的方法で結合する(非特許文献7)。それは食細胞的白血球上の特異的レセプターに関するリガンドであり、単球及びマクロファージへの活性化反応を媒介し、補体を活性化する(非特許文献7)。
【0006】
CRPの機能は先天性免疫系におけるその役割に関連すると思われる。Ig(Ig)Gに類似して、それは補体を活性化し、Fcレセプターに結合し、種々の病原体に関するオプソニンとして作用する。CRPのFcレセプターとの相互作用は前炎症性サイトカインを生成させ、それは炎症反応を増強する。個々の抗原性エピトープを特異的に認識するIgGと異なり、CRPは変更された自己の及び異種の分子をパターン認識に基づいて認識する。従ってCRPは変更された自己及びある種の病原体に関する監視分子として作用すると思われる。この認識は初期の防御を与え、前炎症的シグナル及び液性の適応性免疫系の活性化に導く。かくしてCRP分子は認識機能とエフェクター機能の両方を有する。
【0007】
従ってC反応性タンパク質活性及び/又は発現の薬理学的調節は、病理学的状態における治療的介在の適切な要点であると思われる。
【0008】
タンパク質の量を標的とすることによるC反応性タンパク質機能の調節を目的とする戦略は、抗体、ペプチド及びHMG−CoAレダクターゼを阻害する分子の使用を含んできた。
【0009】
近年、Ridker et al.は、酵素HMG−CoAレダクターゼの阻害剤であるロバスタチンがCRP量の増加と関係する急性冠動脈の変事の危険を低下させるのに有効な薬剤であるが高脂血症においてはそうではないことを示した。この試みにおいて、ロバスタチンの使用は1年後にメジアンCRP量を14.8パーセント減少させたが、プラシーボ群においては変化が観察されなかった(非特許文献15)。他のスタチン、セリバスタチンも高コレステロール血症を有する患者においてCRP量を減少させることが示された(非特許文献16)。
【0010】
しかしながら現在、CRP量及び機能を有効に阻害する既知の治療薬はない。結局、CRPを有効且つ選択的に阻害することができる薬剤の必要が長い間感じられてきたままである。
【0011】
アンチセンス法は特定の遺伝子産物の発現を低下させるための有効な手段として出現しつつあり、従ってCRP発現の調節のための複数の治療、診断及び研究用途において独特に有効であることが証明され得る。本発明はCRP発現の調節のための組成物及び方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,783,179号明細書
【特許文献2】国際出願公開第99/00418号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Arici and Walls著,Kidney Int.,2001年,59,407−414
【非特許文献2】Gabay and Kushner著,N.Engl.J.Med.,1999年,340,448−454
【非特許文献3】Highton et al.著,J.Rheumatol.,1985年,12,871−875
【非特許文献4】Hulthe et al.著,Clin.Sci.(Colch),2001年,100,371−378
【非特許文献5】Lagrand et al.著,Circulation,1999年,100,96−102
【非特許文献6】Morrow and Ridker著,Med.Clin.North.Am.,2000年,84,149−161,ix
【非特許文献7】Szalai et al.著,Immunol.Res.,1997年,16,127−136
【非特許文献8】Westhuyzen and Healy著,Ann.Clin.Lab.Sci.,2000年,30,133−143
【非特許文献9】Yudkin et al.著,Atherosclerosis,2000年,148,209−214
【非特許文献10】Ruuskanen et al.著,J.Pediatr.,1985年,107,97−100
【非特許文献11】Barany著,Nephrol.Dial.Transplant.,2001年,16,224−227
【非特許文献12】Lei et al.著,J.Biol.Chem.,1985年,260,13377−13383
【非特許文献13】Potempa et al.著,1996年
【非特許文献14】Potempa et al.著,2000年
【非特許文献15】Ridker et al.著,N.Eng.J.Med.,2001年,344,1959−1965
【非特許文献16】Ridker et al.著,Circulation,2001年,103,1191−1193
【発明の概要】
【0014】
本発明は、C反応性タンパク質をコードする核酸を標的とし、C反応性タンパク質の発現を調節する化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを目的とする。本発明の化合物を含む製薬学的及び他の組成物も提供する。さらに、細胞又は組織を1種もしくはそれより多い本発明のアンチセンス化合物又は組成物と接触させることを含む、細胞又は組織におけるC反応性タンパク質の発現を調節する方法も提供する。さらに、1種もしくはそれより多い本発明のアンチセンス化合物又は組成物の治療的もしくは予防的に有効な量を投与することにより、C反応性タンパク質の発現と関連する疾患もしくは状態に冒されたか又は冒されつつあると思われる動物、特に人間を処置する方法も提供する。
【0015】
<発明の詳細な記述>
本発明は、C反応性タンパク質をコードする核酸分子の機能を調節し、結局生産されるC反応性タンパク質の量を調節することにおいて用いるためにオリゴマー化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる。これは、C反応性タンパク質をコードする1種もしくはそれより多い核酸と特異的にハイブリッド形成するアンチセンス化合物を提供することにより成される。本明細書で用いられる場合、「標的核酸」及び「C反応性タンパク質をコードする核酸」という用語は、C反応性タンパク質をコードするDNA、そのようなDNAから転写されたRNA(mRNA前駆体及びmRNAを含む)ならびにまたそのようなRNAから誘導されるcDNAを包含する。オリゴマー化合物のその標的核酸との特異的ハイブリッド形成は核酸の正常な機能を妨げる。標的核酸に特異的にハイブリッド形成する化合物によるこの標的核酸の機能の調節は一般に「アンチセンス」と呼ばれる。妨げられるべきDNAの機能には複製及び転写が含まれる。妨げられるべきRNAの機能にはすべての生体機能(vital function)、例えばタンパク質翻訳部位へのRNAの輸送、RNAからのタンパク質の翻訳、1個もしくはそれより多いmRNA種を与えるRNAのスプライシング及びRNAが従事するかもしくはそれにより助長される触媒活性が含まれる。そのような標的核酸機能への妨害の全体的効果はC反応性タンパク質の発現の調節である。本発明の範囲内で「調節」は、遺伝子の発現における向上(刺激)又は低下(阻害)を意味する。本発明の範囲内で阻害は、遺伝子発現の調節の好ましい形態であり、mRNAは好ましい標的である。
【0016】
アンチセンスのために特定の核酸を標的とするのが好ましい。本発明の範囲内で、アンチセンス化合物を特定の核酸に「標的化する(targeting)」のは多段階プロセスである。そのプロセスは通常、その機能が調節されるべきである核酸配列の同定で始まる。これは例えばその発現が特定の障害又は疾患状態と関連する細胞遺伝子(又は遺伝子から転写されるmRNA)あるいは感染性作用物質(infectious agent)からの核酸分子であることができる。本発明において、標的はC反応性タンパク質をコードする核酸分子である。標的化プロセスは、アンチセンス相互作用が起こって所望の効果、例えばタンパク質の発現の検出又は調節が生ずるであろうようなこの遺伝子内の単数
もしくは複数の部位の決定も含む。本発明の範囲内で好ましい遺伝子内部位は、遺伝子の読み取り枠(ORF)の翻訳開始又は終止コドンを含む領域である。当該技術分野において既知の通り、翻訳開始コドンは典型的には5’−AUG(転写されたmRNA分子において;対応するDNA分子においては5’−ATG)であるので、翻訳開始コドンは「AUGコドン」、「開始コドン」又は「AUG開始コドン」とも呼ばれる。少数の遺伝子はRNA配列5’−GUG、5’−UUG又は5’−CUGを有する翻訳開始コドンを有し、5’−AUA、5’−ACG及び5’−CUGは生体内で機能することが示されている。かくして「翻訳開始コドン」及び「開始コドン」という用語は多くのコドン配列を包含し得るが、それでもそれぞれの場合にイニシエーターアミノ酸は典型的にはメチオニン(真核生物において)又はホルミルメチオニン(原核生物において)である。真核及び原核遺伝子が2個もしくはそれより多い代替開始コドンを有していることができ、特定の細胞型もしくは組織において、又は特定の組の条件下でそれらのいずれか1つを優先的に翻訳開始のために用いることができることも当該技術分野において既知である。本発明の範囲内で「開始コドン」及び「翻訳開始コドン」は、C反応性タンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNA分子の翻訳を開始させるために生体内で用いられる単数もしくは複数種のコドンを指し、そのようなコドンの単数もしくは複数種の配列に無関係である。
【0017】
遺伝子の翻訳終止コドン(又は「停止コドン」)が3種の配列、すなわち5’−UAA、5’−UAG及び5’−UGA(対応するDNA配列はそれぞれ5’−TAA、5’−TAG及び5’−TGAである)の1つを有することができることも当該技術分野において既知である。「開始コドン領域」及び「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向に(すなわち5’又は3’)約25〜約50個の連続ヌクレオチドを含むmRNA又は遺伝子の部分を指す。類似して、「停止コドン領域」及び「翻訳終止コドン領域」という用語は、翻訳終止コドンからいずれかの方向に(すなわち5’又は3’)約25〜約50個の連続ヌクレオチドを含むmRNA又は遺伝子の部分を指す。
【0018】
翻訳開始コドンと翻訳終止コドンの間の領域を指すとして当該技術分野において既知の読み取り枠(ORF)又は「コーディング領域」も有効に標的とされ得る領域である。他の標的領域には、翻訳開始コドンから5’方向におけるmRNAの部分を指し、かくしてmRNAの5’キャップ部位と翻訳開始コドンの間のヌクレオチド又は遺伝子上の対応するヌクレオチドを含むことが当該技術分野において既知の5’非翻訳領域(5’UTR)ならびに翻訳終止コドンから3’方向におけるmRNAの部分を指し、かくしてmRNAの翻訳終止コドンと3’末端の間のヌクレオチド又は遺伝子上の対応するヌクレオチドを含むことが当該技術分野において既知の3’非翻訳領域(3’UTR)が含まれる。mRNAの5’キャップは、5’−5’トリホスフェート結合を介してmRNAの最も5’の残基に結合したN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5’キャップ領域は5’キャップ構造自身ならびにキャップに隣接する最初の50個のヌクレオチドを含むと考えられる。5’キャップ領域も好ましい標的領域である。
【0019】
いくつかの真核mRNA転写物は直接翻訳されるが、多くは転写物が翻訳される前にそれから切除される「イントロン」として既知の1個もしくはそれより多い領域を含有する。残りの(従って翻訳される)領域は「エキソン」として既知であり、一緒にスプライシングされて連続したmRNA配列を形成する。mRNAスプライス部位、すなわちイントロン−エキソン連結部も好ましい標的領域であり得、異常なスプライシングが疾患に関係している状況あるいは特定のmRNAスプライス産物の過剰生産が疾患に関係している状況において特に有用である。転位又は欠失の故の異常な融合連結部も好ましい標的である。イントロンも有効であり得、従って例えばDNA又はmRNA前駆体を標的とするアンチセンス化合物のための好ましい標的領域であり得ることも見出された。
【0020】
1個もしくはそれより多い標的部位が同定されると、標的に十分に相補的である、すな
わち所望の効果を得るために十分に良好に且つ十分な特異性でハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドが選ばれる。
【0021】
本発明の範囲内で「ハイブリッド形成」は、相補的ヌクレオシドもしくはヌクレオチド塩基の間の水素結合を意味し、それはWatson−Crick、Hoogsteen又は逆Hoogsteen水素結合であることができる。例えばアデニンとチミンは水素結合の形成を介して対合する相補的な核酸塩基(nucleobases)である。本明細書で用いられる場合、「相補的」は2個のヌクレオチドの間の正確な対合に関する可能性を指す。例えばオリゴヌクレオチドのある位置におけるヌクレオチドがDNA又はRNA分子の同じ位置におけるヌクレオチドと水素結合できる場合、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAはその位置において互いに相補的であると考えられる。オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAは、各分子における十分な数の対応する位置が互いに水素結合できるヌクレオチドにより占められている場合に互いに相補的である。かくして「特異的にハイブリッド形成可能」及び「相補的」は、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNA標的の間に安定且つ特異的な結合が起こるのに十分な程度の相補性又は正確な対合を示すために用いられる用語である。アンチセンス化合物の配列が、特異的にハイブリッド形成可能であるべきその標的核酸の配列に100%相補的である必要がないことは、当該技術分野において理解される。標的DNA又はRNA分子への化合物の結合が標的DNA又はRNAの正常な機能を妨げて有用性を喪失させ、且つ特異的結合が望まれている条件下、すなわち生体内アッセイ又は治療的処置の場合には生理学的条件下、及び試験管内アッセイの場合にはアッセイが行なわれる条件下で非−標的配列へのアンチセンス化合物の非−特異的結合を避けるのに十分な程度の相補性がある場合に、アンチセンス化合物は特異的にハイブリッド可能である。
【0022】
標的にハイブリッド形成し、標的の発現を阻害する本発明のアンチセンス及び他の化合物を、実験を介して同定し、これらの化合物の配列を本発明の好ましい態様として下記において同定する。これらの好ましい配列が相補的である標的部位は下記において「活性部位」と呼ばれ、従って標的とするのに好ましい部位である。従って本発明の他の態様は、これらの活性部位にハイブリッド形成する化合物を包含する。
【0023】
通常アンチセンス化合物は研究試薬及び診断薬として用いられる。例えば見事な特異性で遺伝子発現を阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定の遺伝子の機能を明らかにするために通常の熟練者により多くの場合に用いられる。アンチセンス化合物は、例えば生物学的経路の種々のメンバーの機能を区別するためにも用いられる。従ってアンチセンス調節は研究的用途のために利用されてきた。
【0024】
キット及び診断薬における使用のために、本発明のアンチセンス化合物を単独で、又は他のアンチセンス化合物もしくは治療薬と組み合わせて、細胞及び組織内で発現される遺伝子の一部又は全体(entire complement)の発現パターンを明らかにするための差示的及び/又はコンビナトリアルな分析における道具として用いることができる。
【0025】
1種もしくはそれより多いアンチセンス化合物で処置された細胞又は組織内における発現パターンをアンチセンス化合物で処置されていない標準細胞又は組織と比較し、作られるパターンを遺伝子発現の差示的なレベルに関して分析する。それはそれらが例えば調べられている遺伝子の疾患的関連、シグナリング経路、細胞局在、発現レベル、寸法、構造又は機能に関連するからである。これらの分析を刺激された又は刺激されない細胞について、ならびに発現パターンに影響する他の化合物の存在下もしくは不在下で行なうことができる。
【0026】
当該技術分野において既知の遺伝子発現分析の方法の例にはDNAアレー又はマイクロアレー(Brazma and Vilo著,FEBS Lett.,2000年,480,17−24;Celis,et al.著,FEBS Lett.,2000年,480,2−16)、SAGE(遺伝子発現の系列分析(serial analysis))(Madden,et al.著,Drug Discov.Today,2000年,5,415−425)、READS(消化されたcDNAsの制限酵素増幅)(Prashar and Weissman著,Methods Enzymol.,1999年,303,258−72)、TOGA(全遺伝子発現分析)(Sutcliffe et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000年,97,1976−81)、タンパク質アレー及びプロテオミクス(proteomics)(Celis,et al.著,FEBS Lett.,2000年,480,2−16;Jungblut,et al.著,Electrophoresis,1999年,20,2100−10)、発現された配列タグ(EST)配列決定(Celis,et
al.著,FEBS Lett.,2000年,480,2−16;Larson,et al.著,J.Biotechnol.,2000年,80,143−57)、消去式RNA指紋法(subtractive RNA fingerprinting)(SuRF)(Fuchs,et al.著,Anal.Biochem.,2000年,286,91−98;Larson,et al.著,Cytometry,2000年,41,203−208)、消去式クローニング、示差ディスプレー(differential display)(DD)(Jurecic and Belmont著,Curr.Opin.Microbiol.,2000年,3,316−21)、比較的ゲノムハイブリッド形成(Carulli,et al.著,J.Cell Biochem.Suppl.,1998年,31,286−96)、FISH(蛍光その場ハイブリッド形成)法(Going and Gusterson著,Eur.J.Cancer,1999年,35,1895−904)及び質量分析法((To著,Comb.Chem.High Throughput Screen,2000年,3,235−41)において総説されている)が含まれる。
【0027】
アンチセンスの特異性及び感度は治療的用途のためにも当該技術分野における熟練者により利用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物及び人間における疾患状態の処置において治療的部分として用いられてきた。リボザイムを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド薬は人間に安全且つ有効に投与されてきており、現在多数の臨床試験が進行中である。かくしてオリゴヌクレオチドが細胞、組織及び動物、特に人間の処置のための処置管理において有用であるように形成され得る有用な治療様式であり得ることは確立されている。
【0028】
本発明の範囲内で「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)あるいはそれらの擬似体のオリゴマーもしくはポリマーを指す。この用語は天然に存在する核酸塩基、糖類及びヌクレオシド間(主鎖)共有結合から成るオリゴヌクレオチドならびに類似して機能する天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。そのような改変された又は置換されたオリゴヌクレオチドは多くの場合、例えば増強された細胞取込み、核酸標的に関する増強された親和性及びヌクレアーゼの存在下における安定性の向上のような望ましい性質の故に、本来の形態より好ましい。
【0029】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンス化合物の好ましい形態であるが、本発明は下記に記載するようなオリゴヌクレオチドミメティックを含むがこれに限られない他のオリゴマーアンチセンス化合物を包含する。本発明に従うアンチセンス化合物は好ましくは約8〜約50個の核酸塩基(すなわち約8〜約50個の結合したヌクレオシド)を含む。特に好ましいアンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、さらにもっと好ましくは約12〜約30個の核酸塩基を含むものである。アンチセンス化合物に
は、標的核酸にハイブリッド形成し、その発現を調節するリボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)及び他の短い触媒性RNA又は触媒性オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0030】
当該技術分野において既知の通り、ヌクレオシドは塩基と糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は通常は複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2つの最も普通の種類はプリン類及びピリミジン類である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドの場合、リン酸基は糖の2’、3’又は5’ヒドロキシル部分に結合することができる。オリゴヌクレオチドの形成において、リン酸基は互いに隣接するヌクレオシドを共有結合により連結し、線状ポリマー化合物を形成する。今度は代わってこの線状ポリマー構造のそれぞれの末端がさらに結合して円形の構造を形成することができるが、開放された線状構造が一般に好ましい。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基は通常オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成すると言われる。RNA及びDNAの通常の結合又は主鎖は3’から5’へのホスホジエステル結合である。
【0031】
本発明において有用な好ましいアンチセンス化合物の特定の例に、改変された主鎖又は非天然のヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。本明細書で定義される場合、改変された主鎖を有するオリゴヌクレオチドには、主鎖中にリン原子を保持しているものならびに主鎖中にリン原子を有していないものが含まれる。本明細書の目的の場合、そして時々当該技術分野において言及される通り、ヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有していない改変されたオリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオシドと考えられる。
【0032】
改変された好ましいオリゴヌクレオチド主鎖には例えば、正常な3’−5’結合を有するホスホロチオエート類、キラルホスホロチオエート類、ホスホロジチオエート類、ホスホトリエステル類、アミノアルキル−ホスホトリエステル類、3’−アルキレンホスホネート類、5’−アルキレンホスホネート類及びキラルホスホネート類を含むメチル及び他のアルキルホスホネート類、ホスフィネート類、3’−アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデート類を含むホスホルアミデート類、チオノホスホルアミデート類、チオノアルキルホスホネート類、チオノアルキルホスホトリエステル類、セレノホスフェート類及びボラノホスフェート類、これらの2’−5’結合類似体ならびに1個もしくはそれより多いヌクレオチド間結合が3’から3’への、5’から5’への又は2’から2’への結合である反転した極性を有するものが含まれる。反転した極性を有する好ましいオリゴヌクレオチドは最も3’のヌクレオチド間結合における1個の3’から3’への結合、すなわち非塩基性(核酸塩基が失われているか又はその場所にヒドロキシル基を有する)であることができる1個の反転したヌクレオシド残基を含む。種々の塩、混合塩及び遊離の酸の形態も含まれる。
【0033】
上記のリン−含有結合の形成を記載する代表的米国特許には、米国特許第:3,687,808;4,469,863;4,476,301;5,023,243;5,177,196;5,188,897;5,264,423;5,276,019;5,278,302;5,286,717;5,321,131;5,399,676;5,405,939;5,453,496;5,455,233;5,466,677;5,476,925;5,519,126;5,536,821;5,541,306;5,550,111;5,563,253;5,571,799;5,587,361;5,194,599;5,565,555;5,527,899;5,721,218;5,672,697及び5,625,050号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのあるものは本出願と同一に所有され、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0034】
中にリン原子を含まない改変された好ましいオリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合複素原子及びアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合あるいは1個もしくはそれより多い短鎖へテロ原子的もしくは複素環式ヌクレオシド間結合により形成される主鎖を有する。これらにはモルホリノ結合(部分的にヌクレオシドの糖部分から生成する);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシド及びスルホン主鎖;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖;リボアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネート及びスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、S及びCH成分を有する他の主鎖を有するものが含まれる。
【0035】
上記のオリゴヌクレオシドの製造を記載する代表的米国特許には米国特許第:5,034,506;5,166,315;5,185,444;5,214,134;5,216,141;5,235,033;5,264,562;5,264,564;5,405,938;5,434,257;5,466,677;5,470,967;5,489,677;5,541,307;5,561,225;5,596,086;5,602,240;5,620,289;5,602,240;5,608,046;5,610,289;5,618,704;5,623,070;5,633,312;5,633,360;5,677,437;5,792,608;5,646,269及び5,677,439号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのあるものは本出願と同一に所有され、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0036】
他の好ましいオリゴヌクレオチドミメティックの場合、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合、すなわち主鎖の両方が新しい基で置き換えられる。塩基単位は適した核酸標的化合物とのハイブリッド形成のために保持される。1つのそのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリッド形成性を有することが示されたオリゴヌクレオチドミメティックはペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖−主鎖がアミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置き換えられる。核酸塩基は保持され、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に結合している。PNA化合物の製造を記載している代表的米国特許には米国特許第:5,539,082;5,714,331;及び5,719,262号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。さらにNielsen et al.著,Science,1991年,254,1497−1500にPNA化合物の記述を見出すことができる。
【0037】
本発明の最も好ましい態様はホスホロチオエート主鎖を有するオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子主鎖、特に−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−[メチレン(メチルイミノ)もしくはMMI主鎖として既知]、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−N(CH)−CH−及び上記で引用した米国特許第5,489,677号明細書の−O−N(CH)−CH−CH−[ここでは本来のホスホジエステル主鎖が−O−P−O−CH−として示されている]ならびに上記で引用した米国特許第5,602,240号明細書のアミド主鎖を有するオリゴヌクレオシドである。上記で引用した米国特許第5,034,506号明細書のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0038】
改変されたオリゴヌクレオチドは1個もしくはそれより多い置換糖部分を含有することもできる。好ましいオリゴヌクレオチドは2’位に以下:OH;F;O−、S−又はN−アルキル;O−、S−又はN−アルケニル;O−、S−又はN−アルキニル;あるいはO−アルキル−O−アルキルの1つを含み、ここでアルキル、アルケニル及びアルキニルは
置換もしくは非置換C−C10アルキル又はC−C10アルケニル及びアルキニルであることができる。特に好ましいのはO[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH及びO(CHON[(CHCH)]であり、ここでn及びmは1〜約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは2’位に以下:C−C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アラルキル、O−アルキルアリール又はO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、リポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的性質を向上させるための基又はオリゴヌクレオチドの薬力学的性質を向上させるための基ならびに類似の性質を有する他の置換基の1つを含む。好ましい改変は2’−メトキシエトキシ(2’−O−CHCHOCH、2’−O−(2−メトキシエチル)又は2’−MOEとしても既知)(Martin et al.著,Helv.Chim.Acta,1995年,78,486−504)、すなわちアルコキシアルコキシ基を含む。さらに別の好ましい改変は下記の実施例において記載される通り、2’−DMAOEとしても既知の2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CHON(CH基及びやはり下記の実施例において記載される2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル又は2’−DMAEOEとしても既知)、すなわち2’−O−CH−O−CH−N(CHを含む。
【0039】
さらに別の好ましい改変は、2’−ヒドロキシル基が糖環の3’又は4’炭素原子に結合し、それにより二環式糖部分を形成しているロックされた核酸(Locked Nucleic Acids)(LNAs)を含む。結合は好ましくは2’酸素原子と4’炭素原子を架橋するメチレン(−CH−)基であり、ここでnは1又は2である。LNAs及びそれらの製造は国際公開第98/39352号パンフレット及び国際公開第99/14226号パンフレットに記載されている。
【0040】
他の好ましい改変は2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)、2’−アリル(2’−CH−CH=CH)、2’−O−アリル(2’−O−CH−CH=CH)及び2’−フルオロ(2’−F)を含む。2’−改変はアラビノ(上方)位又はリボ(下方)位にあることができる。好ましい2’−アラビノ改変は2’−Fである。類似の改変をオリゴヌクレオチド上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上又は2’−5’結合オリゴヌクレオチド内の糖の3’位において及び5’末端ヌクレオチドの5’位において作ることもできる。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりのシクロブチル部分のような糖ミメティックを有することもできる。そのような改変された糖構造の製造を記載している代表的な米国特許には、米国特許第:4,981,957;5,118,800;5,319,080;5,359,044;5,393,878;5,446,137;5,466,786;5,514,785;5,519,134;5,567,811;5,576,427;5,591,722;5,597,909;5,610,300;5,627,053;5,639,873;5,646,265;5,658,873;5,670,633;5,792,747;及び5,700,920号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのあるものは本出願と同一に所有され、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0041】
オリゴヌクレオチドは核酸塩基(当該技術分野において多くの場合に簡単に「塩基」と呼ばれる)の改変又は置換を含むこともできる。本明細書で用いられる場合、「改変されない」又は「天然の」核酸塩基はプリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)ならびに
ピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)を含む。改変された核酸塩基には他の合成及び天然の核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6−メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2−プロピル及び他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミン及び2−チオシトシン、5−ハロウラシル及びシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH)ウラシル及びシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシ及び他の8−置換アデニン及びグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル及び他の5−置換ウラシル及びシトシン、7−メチルグアニン及び7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニン及び8−アザアデニン、7−デアザグアニン及び7−デアザアデニンならびに3−デアザグアニン及び3−デアザアデニンが含まれる。さらに別の改変された核酸塩基には三環式ピリミジン類、例えばフェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンズオキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−クランプ類(G−clamps)、例えば置換フェノキサジンシチジン(例えば9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンズオキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)が含まれる。改変された核酸塩基にはプリン又はピリミジン塩基が他の複素環、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン及び2−ピリドンで置き換えられたものも含まれ得る。さらに別の核酸塩基には米国特許第3,687,808号明細書で開示されているもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley & Sons,1990年,pages 858−859で開示されているもの、Englisch et al.著,Angewandte Chemie,International Edition,1991年,30,613により開示されているもの及びSanghvi,Y.S.著,Antisense Research
and Applications,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,ed.,CRC Press,1993年,Chapter 15,289−302により開示されているものが含まれる。これらの核酸塩基のあるものは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を向上させるために特に有用である。これらには2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル及び5−プロピニルシトシンを含む5−置換ピリミジン類、6−アザピリミジン類ならびにN−2、N−6及びO−6置換プリン類が含まれる。5−メチルシトシン置換は核酸二重らせん安定性を0.6〜1.2℃向上させることが示されており(Sanghvi,Y.S.著,Antisense Research and Applications,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,CRC Press,Boca Raton,1993年,276−278)、現在好ましい塩基置換であり、特に2’−O−メトキシエチル糖改変と組み合わされるとさらにもっと好ましい。
【0042】
上記の改変された核酸塩基のあるものならびに他の改変された核酸塩基の製造を記載している代表的米国特許には、あるものが本出願と同一に所有され、それらのそれぞれが引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる上記の米国特許第3,687,808号明細書ならびに米国特許第:4,845,205;5,130,302;5,134,066;5,175,273;5,367,066;5,432,272;5,457,187;5,459,255;5,484,908;5,502,177;5,525,711;5,552,540;5,587,469;5,594,121,5,59
6,091;5,614,617;5,645,985;5,830,653;5,763,588;6,995,096;及び5,681,941号明細書ならびに本出願と同一に所有され、やはり引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,750,692号明細書が含まれるがこれらに限られない。
【0043】
本発明のオリゴヌクレオチドの他の改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布又は細胞取込みを増強する1個もしくはそれより多い部分又は複合物質(conjugates)をオリゴヌクレオチドに化学的に結合させることを含む。本発明の化合物は、第一級又は第二級ヒドロキシル基のような官能基に共有結合している複合基(conjugate groups)を含むことができる。本発明の複合基にはインターカレーター、リポーター分子、ポリアミン類、ポリアミド類、ポリエチレングリコール類、ポリエーテル類、オリゴマーの薬力学的性質を増強する基及びオリゴマーの薬物動態学的性質を増強する基が含まれる。典型的な複合基にはコレステロール類、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン類、クマリン類及び色素が含まれる。本発明の範囲内で薬力学的性質を増強する基にはオリゴマー取込みを向上させる基、分解に対するオリゴマーの抵抗性を増強する基及び/又はRNAとの配列−特異的ハイブリッド形成を強化する基が含まれる。本発明の範囲内で薬物動態学的性質を増強する基には、オリゴマーの取込み、分布、代謝又は排出を向上させる基が含まれる。代表的な複合基は1992年10月23日に申請された国際公開第92/09196号パンフレットに開示されており、この開示の全体は引用することにより本明細書の内容となる。複合部分には脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al.著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989年,86,6553−6556)、コール酸(Manoharan et al.著,Bioorg.Med.Chem.Let.,1994年,4,1053−1060)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan
et al.著,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992年,660,306−309;Manoharan et al.著,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993年,3,2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.著,Nucl.Acids Res.,1992年,20,533−538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.著,EMBO J.,1991年,10,1111−1118;Kabanov et al.著,FEBS Lett.,1990年,259,327−330;Svinarchuk et al.著,Biochimie,1993年,75,49−54)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al.著,Tetrahedron Lett.,1995年,36,3651−3654;Shea et al.著,Nucl.Acids Res.,1990年,18,3777−3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.著,Nucleosides & Nucleotides,1995年,14,969−973)又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al.著,Tetrahedron Lett.,1995年,36,3651−3654)、パルミチル部分(Mishra et al.著,Biochem.Biophys.Acta,1995年,1264,229−237)又はオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al.著,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996年,277,923−937)が含まれるがこれらに限られない。本発明のオリゴヌクレオチドは活性薬剤物質、例えばアスピリン(aspirin)、ワルファリン(warfarin)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、イブプロフェン(ibuprofen)、スプロフェン(suprofen)、フェンブフェン(fenbufen)、ケトプロフェン(ketoprofen)、(S)−(+)−
プラノプロフェン(pranoprofen)、カルプロフェン(carprofen)、ダンシルサルコシン(dansylsarcosine)、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、フォリン酸(folinic acid)、ベンゾチアジアジド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメチシン(indomethicin)、バルビツール酸系催眠薬、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗バクテリア剤又は抗生物質に複合されていることもできる。オリゴヌクレオチド−薬剤複合体及びそれらの製造は米国特許出願公開第09/334,130号明細書(1999年6月15日申請)に記載されており、それは引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0044】
そのようなオリゴヌクレオチド複合体の製造を記載している代表的な米国特許には米国特許第:4,828,979;4,948,882;5,218,105;5,525,465;5,541,313;5,545,730;5,552,538;5,578,717;5,580,731;5,580,731;5,591,584;5,109,124;5,118,802;5,138,045;5,414,077;5,486,603;5,512,439;5,578,718;5,608,946;4,587,044;4,605,735;4,667,025;4,762,779;4,789,737;4,824,941;4,835,263;4,876,335;4,904,582;4,958,013;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,245,022;5,254,469;5,258,506;5,262,536;5,272,250;5,292,873;5,317,098;5,371,241;5,391,723;5,416,203;5,451,463;5,510,475;5,512,667;5,514,785;5,565,552;5,567,810;5,574,142;5,585,481;5,587,371;5,595,726;5,597,696;5,599,923;5,599,928及び5,688,941号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのあるものは本出願と同一に所有され、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0045】
与えられる化合物におけるすべての位置が均一に改変されている必要はなく、実際には上記の改変の1つより多くが1個の化合物内に導入されていることができ、あるいはオリゴヌクレオチド内の1個のヌクレオシドにおいて導入されていることさえできる。本発明はキメラ化合物であるアンチセンス化合物も含む。本発明の範囲内で、「キメラ(chimeric)」アンチセンス化合物又は「キメラ(chimeras)」は、それぞれ少なくとも1個のモノマー単位、すなわちオリゴヌクレオチド化合物の場合にはヌクレオチドで構成される2個もしくはそれより多い化学的に別個の領域を含有するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性の向上、細胞取込みの向上及び/又は標的核酸に関する結合親和性の向上をオリゴヌクレオチドに与えるようにオリゴヌクレオチドが改変されている少なくとも1個の領域を含有する。オリゴヌクレオチドの追加の領域はRNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素のための基質として働くことができる。例えばRNase HはRNA:DNA二重らせんのRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。従ってRNase Hの活性化はRNA標的を切断し、それにより遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の有効性を大きく増強する。結局、キメラオリゴヌクレオチドを用いると、同じ標的領域にハイブリッド形成するホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、より短いオリゴヌクレオチドを用いて多くの場合に同等の結果を得ることができる。RNA標的の切断を、当該技術分野において既知のゲル電気泳動及び、必要なら、関連する核酸ハイブリッド形成法により、決まりきった操作で検出することができる。
【0046】
本発明のキメラアンチセンス化合物を2種もしくはそれより多いオリゴヌクレオチド、改変されたオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド及び/又は上記のオリゴヌクレオチドミメティックの複合材料構造として形成することができる。そのような化合物は当該技術分野においてハイブリッド又はギャップマー(gapmers)とも呼ばれてきた。そのようなハイブリッド構造の製造を記載している代表的な米国特許には米国特許第:5,013,830;5,149,797;5,220,007;5,256,775;5,366,878;5,403,711;5,491,133;5,565,350;5,623,065;5,652,355;5,652,356;及び5,700,922号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのあるものは本出願と同一に所有され、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0047】
本発明に従って用いられるアンチセンス化合物は周知の固相合成の方法を介して簡単に且つ決まりきった操作で作ることができる。そのような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems(Foster City,CA)を含むいくつかの販売者により販売されている。当該技術分野において既知のそのような合成のための他のいずれかの手段をさらに、又は代わりに用いることができる。ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドの製造のために類似の方法を用いることは周知である。
【0048】
本発明のアンチセンス化合物は試験管内で合成され、生物起源のアンチセンス組成物又はアンチセンス分子の生体内合成を指示するために設計された遺伝子ベクター構築物を含まない。
【0049】
取込み、分布及び/又は吸収を助けるために、本発明の化合物を他の分子、分子構造又は化合物の混合物、例えばリポソーム、レセプター標的化分子、経口用、直腸用、局所用もしくは他の調剤と混合するか、カプセル封入するか、複合させるか、又は他の方法で関連させることもできる。そのような取込み、分布及び/又は吸収を助ける調剤の調製を記載している代表的な米国特許には米国特許第:5,108,921;5,354,844;5,416,016;5,459,127:5,521,291;5,543,158;5,547,932;5,583,020;5,591,721;4,426,330;4,534,899;5,013,556;5,108,921;5,213,804;5,227,170;5,264,221;5,356,633;5,395,619;5,416,016;5,417,978;5,462,854;5,469,854;5,512,295;5,527,528;5,534,259;5,543,152;5,556,948;5,580,575;及び5,595,756号明細書が含まれるがこれらに限られず、それらのそれぞれは引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0050】
本発明のアンチセンス化合物はいずれかの製薬学的に許容され得る塩、エステル又はそのようなエステルの塩あるいは人間を含む動物に投与されると生物学的に活性な代謝産物又はその残留物を与える(直接又は間接的に)ことができる他のいずれかの化合物を包含する。従って、例えば本発明の化合物のプロドラッグ及び製薬学的に許容され得る塩、そのようなプロドラッグの製薬学的に許容され得る塩及び他の生物学的同等物にも開示が拡張される(drawen)。
【0051】
「プロドラッグ」という用語は不活性な形態で製造される治療薬を示し、それは体内又はその細胞内で内在性酵素又は他の化学品及び/又は条件の作用により活性な形態(すなわち薬剤)に転換される。特に本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ形は、1993年12月9日に公開されたGosselin et al.への国際公開第93/24510号パンフレット又はImbachへの国際公開第94/26764号パンフレット
及び米国特許第5,770,713号明細書に開示されている方法に従ってSATE[(S−アセチル−2−チオエチル)ホスフェート]誘導体として製造される。
【0052】
「製薬学的に許容され得る塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的及び製薬学的に許容され得る塩:すなわち親化合物の所望の生物学的活性を保持しており、望ましくない毒物学的影響をそれに与えない塩を指す。
【0053】
製薬学的に許容され得る塩基付加塩は、金属又はアミン類、例えばアルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミン類を用いて形成される。カチオンとして用いられる金属の例はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適したアミン類の例はN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインである(例えばBerge et al.著,“Pharmaceutical Salts,” J.of Pharma Sci.,1977年,66,1−19を参照されたい)。該酸性化合物の塩基付加塩は、遊離の酸の形態を通常の方法で塩を製造するのに十分な量の所望の塩基と接触させることにより製造される。塩の形態を酸と接触させ、通常の方法で遊離の酸を単離することにより、遊離の酸の形態を再生することができる。遊離の酸の形態は、極性溶媒中における溶解性のようなある物理学的性質において、それらのそれぞれの塩の形態といくらか異なるが、他の点では塩は本発明の目的のためにそれらのそれぞれの遊離の酸と同等である。本明細書で用いられる場合、「製薬学的付加塩」は、本発明の組成物の成分の1つの酸の形態の製薬学的に許容され得る塩を含む。これらにはアミンの有機もしくは無機酸塩が含まれる。好ましい酸塩は塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。他の適した製薬学的に許容され得る塩は当該技術分野における熟練者に周知であり、多様な無機及び有機酸の、例えば無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸もしくはリン酸との;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホもしくはホスホ酸(sulfo or phospho acids)又はN−置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデリン酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸(embonic acid)、ニコチン酸又はイソニコチン酸との;ならびにアミノ酸、例えば天然におけるタンパク質の合成に含まれる20個のアルファ−アミノ酸、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸との、ならびにまたフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−もしくは3−ホスホグリセレート、グルコース−6−ホスフェート、N−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラミン酸塩の生成を伴う)との、あるいはアスコルビン酸のような他の酸有機化合物との塩基性塩が含まれる。製薬学的に許容され得るカチオンを用いて化合物の製薬学的に許容され得る塩を製造することもできる。適した製薬学的に許容され得るカチオンは当該技術分野における熟練者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム及び第四級アンモニウムカチオンが含まれる。炭酸塩又は炭酸水素塩も可能である。
【0054】
オリゴヌクレオチドの場合、製薬学的に許容され得る塩の好ましい例には(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン類、例えばスペルミン及びスペルミジンなどのようなカチオンを用いて生成する塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などを用いて生成する酸付加塩;(c)例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタ
レンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などのような有機酸を用いて生成する塩;ならびに(d)塩素、臭素及びヨウ素のような元素アニオンから生成する塩が含まれるがこれらに限られない。
【0055】
本発明のアンチセンス化合物を診断学、治療学、予防学のためならびに研究試薬及びキットとして用いることができる。治療学のためには、C反応性タンパク質の発現の調節により処置され得る疾患もしくは障害を有すると思われる動物、好ましくは人間を、本発明に従うアンチセンス化合物の投与により処置する。有効量のアンチセンス化合物を適した製薬学的に許容され得る希釈剤もしくは担体に加えることにより、本発明の化合物を製薬学的組成物において用いることができる。本発明のアンチセンス化合物及び方法の使用は予防的にも、例えば感染、炎症又は腫瘍形成を例えば妨げるかもしくは遅らせるためにも有用であり得る。
【0056】
本発明のアンチセンス化合物は研究及び診断学のために有用であり、それはこれらの化合物がC反応性タンパク質をコードする核酸にハイブリッド形成し、この事実を利用するようにサンドイッチ及び他のアッセイを容易に構築できるようにするからである。C反応性タンパク質をコードする核酸との本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成は、当該技術分野において既知の手段により検出され得る。そのような手段にはオリゴヌクレオチドへの酵素の共役、オリゴヌクレオチドの放射性標識又は他のいずれかの適した検出手段が含まれ得る。試料中のC反応性タンパク質の量を検出するためにそのような検出手段を用いるキットを製造することもできる。
【0057】
本発明は、本発明のアンチセンス化合物を含む製薬学的組成物及び調剤も含む。局所的処置が望まれているか又は全身的処置が望まれているかに依存して、及び処置されるべき面積に依存して、本発明の製薬学的組成物を複数の方法で投与することができる。投与は局所的(眼的投与ならびに膣的及び直腸的送達を含んで粘膜への投与を含む)、例えばネブライザーによるものを含んで、粉末又はエアゾールの吸入又は通気により肺的;気管内、鼻内、表皮的及び経皮的、経口的又は非経口的であることができる。非経口的投与には静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射もしくは輸液;あるいは頭蓋内、例えば硬膜下腔内もしくは脳室内投与が含まれる。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル改変を有するオリゴヌクレオチドは、経口的投与に特に有用であると思われる。
【0058】
局所的投与のための製薬学的組成物及び調剤には経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、スプレー、液剤及び粉剤が含まれ得る。通常の製薬学的担体、水性、粉末もしくは油性基剤、増粘剤などが必要又は望ましいかも知れない。コーティングされたコンドーム、グローブなども有用であり得る。好ましい局所用調剤には、本発明のオリゴヌクレオチドが局所的送達剤、例えば脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤及び界面活性剤と混合されているものが含まれる。好ましい脂質及びリポソームには中性(例えばジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)及びカチオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAP及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれる。本発明のオリゴヌクレオチドをリポソーム内にカプセル封入することができるか、又はオリゴヌクレオチドがリポソームへの、特にカチオン性リポソームへの複合体を形成することができる。あるいはまた、オリゴヌクレオチドを脂質、特にカチオン性脂質に複合体化することができる。好ましい脂肪酸及びエステルにはアラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコ
リン又はC1−10アルキルエステル(例えばイソプロピルミリステートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリド又は製薬学的に許容され得るそれらの塩が含まれるがこれらに限られない。局所用調剤は1999年5月20日に申請された米国特許出願公開第09/315,298号明細書に詳細に記載されており、それは引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0059】
経口的投与のための組成物及び調剤には粉剤又は顆粒剤、微粒子剤、ナノ粒子剤、水中もしくは非−水性媒体中の懸濁剤又は溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ、錠剤又はミニ錠剤が含まれる。増粘剤、風味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤は望ましいかも知れない。好ましい経口用調剤は、本発明のオリゴヌクレオチドが1種もしくはそれより多い浸透増進剤界面活性剤及びキレート化剤と一緒に投与されるものである。好ましい界面活性剤には脂肪酸及び/又はそれらのエステルもしくは塩、胆汁酸及び/又はそれらの塩が含まれる。好ましい胆汁酸/塩にはケノデオキシコール酸(CDCA)及びウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが含まれる。好ましい脂肪酸にはアラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン又はそれらのモノグリセリド、ジグリセリドもしくは製薬学的に許容され得る塩(例えばナトリウム)が含まれる。浸透増進剤の組み合わせ、例えば胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩も好ましい。特に好ましい組み合わせはラウリン酸のナトリウム塩、カプリン酸及びUDCAである。さらに別の浸透増進剤にはポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが含まれる。本発明のオリゴヌクレオチドをスプレー乾燥された粒子を含む顆粒状の形態で経口的に送達できるか、又はそれを複合体化させて微粒子もしくはナノ粒子を形成することができる。オリゴヌクレオチド複合体化剤(compexing agents)にはポリ−アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)及びデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE−誘導体化ポリイミン、ポルラン(pollulans)、セルロース及びデンプンが含まれる。特に好ましい複合体化剤にはキトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノ−メチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えばp−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレトー)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE−メタクリレート、DEAE−ヘキシルアクリレート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミン及びDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、アルギネート及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。オリゴヌクレオチドのための経口用調剤及びそれらの調製は米国特許出願公開第08/886,829号明細書(1997年7月1日申請)、第09/108,673号明細書(1998年7月1日申請)、第09/256,515号明細書(1999年2月23日申請)、第09/082,624号明細書(1998年5月21日申請)及び第09/315,298号明細書(1999年5月20日申請)に詳細に記載されており、これらのそれぞれは引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0060】
非経口的、硬膜下腔内又は脳室内投与のための組成物及び調剤は無菌の水溶液を含むこ
とができ、それは緩衝剤、希釈剤及び他の適した添加剤、例えばこれらに限られないが浸透増進剤、担体化合物及び他の製薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤も含有することができる。
【0061】
本発明の製薬学的組成物には溶液、エマルション及びリポソーム−含有調剤が含まれるがこれらに限られない。これらの組成物を多様な成分から調製することができ、それには予備調製された液体、自己−乳化性固体及び自己−乳化性半固体が含まれるがこれらに限られない。
【0062】
簡便に単位投薬形態で与えられることができる本発明の製薬学的調剤は、製薬産業において周知の通常の方法に従って調製され得る。そのような方法は活性成分を単数もしくは複数種の製薬学的担体もしくは賦形剤と一緒にする段階を含む。一般に調剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉砕された固体担体又は両方と均一且つ緊密に一緒にし、次いで必要なら生成物を成形することにより調製される。
【0063】
本発明の組成物を調製し、多くの可能な投薬形態、例えばこれらに限られないが錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、座薬及び浣腸のいずれかにすることができる。本発明の組成物を水性、非−水性もしくは混合媒体中の懸濁剤として調製することもできる。水性懸濁剤はさらに、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール及び/又はデキストランを含む懸濁剤の粘度を向上させる物質を含有することができる。懸濁剤は安定剤も含有することができる。
【0064】
本発明の1つの態様において、製薬学的組成物を泡剤として調製し、用いることができる。製薬学的泡剤にはエマルション、ミクロエマルション、クリーム、ジェリー及びリポソームのような、しかしこれらに限られない調剤が含まれる。これらの調剤は性質において基本的に類似しているが、成分及び最終的生成物の稠度において変わる。そのような組成物及び調剤の調製は一般に製薬及び調製の技術分野における熟練者に既知であり、本発明の組成物の調製に適用され得る。
エマルション
本発明の組成物をエマルションとして製造し、調製することができる。エマルションは典型的には一方の液体を他方の液体中に、通常直径が0.1μmを超える滴の形態で分散させた不均一な系である。(Idson著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199;Rosoff著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Block著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 2,p.335;Higuchi et al.著,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1985年,p.301)。エマルションは多くの場合、緊密に混合され且つ互いに分散された2つの非混和性液相を含む2相系である。一般にエマルションは油中水(w/o)又は水中油(o/w)型であることができる。水相が小滴に微粉砕され、大量の油相中に小滴として分散されている場合、得られる組成物は油中水(w/o)エマルションと呼ばれる。あるいはまた、油相が小滴に微粉砕され、大量の水相中に小滴として分散されている場合、得られる組成物は水中油(o/w)エマルションと呼ばれる。エマルションは分散相及び水相、油相中の溶液として又は別個の相としてそれ自身で存在することができる活性薬剤の他に、追加の成分を含
有することができる。乳化剤、安定剤、色素及び酸化防止剤のような製薬学的賦形剤も、必要な場合にはエマルション中に存在することができる。製薬学的エマルションは、例えば油中水中油(o/w/o)及び水中油中水(w/o/w)エマルションの場合のように、2つより多い相から成る複エマルションであることもできる。そのような複雑な調剤は多くの場合、単純な2相エマルションが与えないある種の利点を与える。o/wエマルションの個々の油滴が小さい水滴を閉じ込めている複エマルションはw/o/wエマルションを構成する。同様に、油性の連続相中で安定化された水の小滴中に閉じ込められた油滴の系はo/w/oエマルションを与える。
【0065】
エマルションは熱力学的安定性が小さいか又はないことを特徴とする。多くの場合、エマルションの分散相又は不連続相は外相又は連続相中に十分に分散され、乳化剤又は調剤の粘度の手段を介してこの形態に保持される。エマルション−型軟膏基剤及びクリームの場合のように、エマルションの相のいずれかが半固体又は固体であることができる。エマルションの安定化の他の手段は乳化剤の使用を伴い、それはエマルションのいずれかの相中に導入されることができる。乳化剤は広く4つの範疇:合成界面活性剤、天然に存在する乳化剤、吸収基剤及び微細に分散された固体に分類され得る(Idson著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger
and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
【0066】
界面活性剤(surface active agents)としても既知の合成界面活性剤はエマルションの調製において広い適用性を見出しており、文献において総説されている(Rieger著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285;Idson著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。界面活性剤は典型的には両親媒性であり、親水性及び疎水性部分を含む。界面活性剤の親水性対疎水性の比は親水親油バランス(HLB)と呼ばれており、調剤の調製において界面活性剤を分類し、選択する時の価値のある道具である。親水性基の性質に基づいて界面活性剤を種々の種類:非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性)に分類することができる。(Rieger著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285)。
【0067】
エマルション調剤において用いられる天然に存在する乳化剤にはラノリン、ビスワックス、ホスファチド、レシチン及びアラビアゴムが含まれる。無水ラノリン及び親水性ペトロラタムのような吸収基剤は親水性を有し、それらは水を吸い上げてw/oエマルションを形成することができ、それでもそれらの半固体の稠度を保持することができる。微粉砕された固体も特に界面活性剤と組み合わされて、及び粘性の調製物中で優れた乳化剤として用いられてきた。これらには極性無機固体、例えば重金属水酸化物、非膨潤性粘土、例えばベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モントモリロナイト、コロイドケイ酸アルミニウム及びコロイドケイ酸アルミニウムマグネシウム、顔料及び非極性固体、例えば炭素又はグリセリルトリステアレートが含まれる。
【0068】
多様な非−乳化性材料もエマルション調剤中に含まれ、エマルションの性質に寄与する。これらには脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、保湿剤、親水性コロイド、防腐剤及び酸化防止剤が含まれる(Block著,Pharmaceut
ical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New
York,N.Y.,volume 1,p.335;Idson著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
【0069】
親水性コロイド又はヒドロコロイドには天然に存在するゴム及び合成ポリマー、例えば多糖類(例えばアラビアゴム、寒天、アルギン酸、カラギーナン、グアゴム、カラヤゴム及びトラガカント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース及びカルボキシプロピルセルロース)ならびに合成ポリマー(例えばカーボマー、セルロースエーテル及びカルボキシビニルポリマー)が含まれる。これらは水中で分散するか又は膨潤してコロイド溶液を形成し、それは分散−相の滴の回りに強い界面フィルムを形成することにより、及び外相の粘度を向上させることにより、エマルションを安定化する。
【0070】
エマルションは多くの場合に炭水化物、タンパク質、ステロール及びホスファチドのような複数の成分を含有し、それらは容易に微生物の成長を助け得るので、これらの調剤には多くの場合に防腐剤が導入される。エマルション調剤中に含まれる通常用いられる防腐剤にはメチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、ベンズアルコニウムクロリド、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル及びホウ酸が含まれる。調剤の劣化を妨げるために、酸化防止剤も通常エマルション調剤に加えられる。用いられる酸化防止剤はフリーラジカル掃去剤、例えばトコフェロール、アルキルガレート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンあるいは還元剤、例えばアスコルビン酸及びメタ重亜硫酸ナトリウムならびに酸化防止剤相乗剤、例えばクエン酸、酒石酸及びレシチンであることができる。
【0071】
皮膚科学的、経口的及び非経口的経路を介するエマルション調剤の適用ならびにそれらの製造法は文献において総説されている(Idson著,Pharmaceutical
Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。経口的送達のためのエマルション調剤は、調製の容易さ、吸収からの有効性及びバイオアベイラビリティーの観点の理由で非常に広く用いられてきた。(Rosoff著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Idson著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。通常o/wエマルションとして経口的に投与されてきた材料の中に、鉱油に基づく軟下薬、油溶性ビタミン類及び高脂肪栄養調製物がある。
【0072】
本発明の1つの態様において、オリゴヌクレオチド及び核酸の組成物をミクロエマルションとして調製する。ミクロエマルションは1つの光学的に等方性且つ熱力学的に安定な液体溶液である水、油及び両親媒性物質の系として定義され得る(Rosoff著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245)。典型的にはミクロエマルションは、最初に界面活性剤水溶液中に油を分散させ、次いで十分な量の第4の成分、一般的には中鎖長アルコールを加えて透明な系を形成することにより調製され
る系である。従ってミクロエマルションは界面活性分子の界面フィルムにより安定化された2種の非混和性の液体の熱力学的に安定で等方的に透明な分散液としても記述されてきた(Leung and Shah著,Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems,Rosoff,M.,Ed.,VCH Publishers,New York,1989年,pages 185−215)。通常ミクロエマルションは油、水、界面活性剤、補助界面活性剤(cosurfactant)及び電解質を含む3〜5種の成分の組み合わせを介して調製される。ミクロエマルションが油中水(w/o)型のものであるか、又は水中油(o/w)型のものであるかは、用いられる油及び界面活性剤の性質ならびに界面活性剤分子の極性の頭部と炭化水素の尾部の構造及び幾何学的充填に依存する(Schott著,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1985年,p.271)。
【0073】
相図を用いる現象学的方法が広範囲に研究され、ミクロエマルションの調製の仕方の包括的知識を当該技術分野における熟練者に与えてきた(Rosoff著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245;Block著,Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger
and Banker(Eds.),1988年,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335)。通常のエマルションに比べ、ミクロエマルションは天然に生成する熱力学的に安定な滴の調剤中で、水に不溶性の薬剤を可溶化する利点を与える。
【0074】
ミクロエマルションの調製において用いられる界面活性剤には、単独のもしくは補助界面活性剤と組み合わされたイオン性界面活性剤、非−イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセクイオレエート(sequioleate)(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が含まれるがこれらに限られない。通常はエタノール、1−プロパノール及び1−ブタノールのような短−鎖アルコールである補助界面活性剤は、界面活性剤フィルム中に浸透し、結局界面活性剤分子の中に形成される空隙(void space)のために無秩序なフィルムを作ることにより、界面流動性を向上させるように作用する。しかしながら、補助界面活性剤を用いずにミクロエマルションを調製することができ、アルコール−非含有自己−乳化性ミクロエマルション系が当該技術分野において既知である。水相は典型的には水、薬剤の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール及びエチレングリコールの誘導体であることができるが、これらに限られない。油相にはCaptex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8−C12)モノ、ジ及びトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8−C10グリセリド、植物油及びシリコーン油のような材料が含まれ得るがこれらに限られない。
【0075】
ミクロエマルションは、薬剤の可溶化及び薬剤の吸収の増強の観点から特に興味深い。脂質に基づくミクロエマルション(o/w及びw/oの両方)は、ペプチドを含む薬剤の経口的バイオアベイラビリティーを増強することが提案された(Constantini
des et al.著,Pharmaceutical Research,1994年,11,1385−1390;Ritschel著,Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.,1993年,13,205)。ミクロエマルションは薬剤の可溶化の向上、酵素的加水分解からの薬剤の保護、膜の流動性及び浸透性における界面活性剤−誘導の変化の故の薬剤吸収の増強の可能性、調製の容易さ、固体投薬形態を越える経口的投与の容易さ、臨床的力価の向上及び毒性の低下の利点を与える(Constantinides et al.著,Pharmaceutical Research,1994年,11,1385;Ho et al.著,J.Pharm.Sci.,1996年,85,138−143)。多くの場合ミクロエマルションは、それらの成分が周囲温度で一緒にされると自然に生成することができる。これは、熱に不安定な薬剤、ペプチド又はオリゴヌクレオチドを調製する場合に特に有利であり得る。ミクロエマルションは化粧品的及び製薬学的適用の両方において、活性成分の経皮的送達においても有効であった。本発明のミクロエマルション組成物及び調剤は胃腸管からのオリゴヌクレオチド及び核酸の全身的吸収の向上を助長し、ならびに胃腸管、膣、口腔前庭及び投与の他の領域内におけるオリゴヌクレオチド及び核酸の局所的細胞取込みを向上させるであろうと期待される。
【0076】
本発明のミクロエマルションは、調剤の性質を向上させ、本発明のオリゴヌクレオチド及び核酸の吸収を増強するために、追加の成分及び添加剤、例えばソルビタンモノステアレート(Grill 3)、ラブラゾル(Labrasol)及び浸透増強剤を含有することもできる。本発明のミクロエマルション中で用いられる浸透増強剤は5つの広い範疇−界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤及び非−キレート化非−界面活性剤の1つに属するとして分類され得る(Lee et al.著,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991年,p.92)。これらの種類のそれぞれは上記で議論された。
【0077】
リポソーム
研究され、そして薬物の製剤化のために使用されているマイクロエマルションに加えて多くの組織された界面活性構造物が存在する。これらは、単分子膜、ミセル、二分子膜および小胞を含む。小胞、例えばリポソームは、それらが薬物送達という観点から提供するそれらの特異性および作用の持続期間のために大きな興味を誘った。本発明において使用されるように、用語「リポソーム」は、球状の1または複数の二分子膜において配列された両親媒性脂質からなる小胞を意味する。
【0078】
リポソームは、親油性材料と水性内部から形成される膜を有する単層または多層の小胞である。水性部分は送達される組成物を含有する。カチオン性リポソームは細胞壁に融合できる利点を有している。非カチオン性リポソームは、細胞壁と効率的に融合できないが、イン・ビボではマクロファージによって取り込まれる。
【0079】
生きている哺乳動物の皮膚を横断するためには、脂質小胞は、適当な経皮的勾配の影響下で、各々50nm未満の直径をもつ一連の細孔を通過しなければならない。したがって、高度に変形可能であり、そしてそのような細孔を通過できるリポソームを使用することが望ましい。
【0080】
リポソームのさらなる利点は次のことを含む:天然のリン脂質から得られるリポソームは生物学的適合性で、かつ生物学的分解性である;リポソームは広範囲の水および脂質可溶性薬物を組み入れることができる;リポソームはそれらの内部コンパートメントに被包化された薬物を代謝および分解から保護できる(Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and
Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,Ne
w York,N.Y.,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮すべき問題は、脂質表面の電荷、小胞の大きさおよびリポソームの水性容量である。
【0081】
リポソームは、作用部位への有効成分の移動および送達のために有用である。リポソーム膜は生物学的な膜に構造的に類似しているので、リポソームが組織に適用された場合、リポソームは細胞膜と次第に溶け込み始める。リポソームが溶け込み、そして細胞処理が進むにつれて、リポソームの内容物は細胞中に空けられ、ここで活性薬剤が作用することができる。
【0082】
リポソーム製剤は、多くの薬物のための送達様式として広範な探求の焦点であった。局所適用では、リポソームが他の製剤以上のいくつかの利点を示す増大する証拠が存在する。そのような利点は、投与された薬物の高い全身性吸収に較べて低下した副作用、所望の標的における投与された薬物の増進した蓄積、および皮膚中に両親水性および疎水性の広い種類の薬物を投与する能力を含む。
【0083】
数種の報告は、皮膚中に高分子量のDNAを含有する薬剤を送達するリポソームの機能を詳述している。鎮痛剤、抗生物質、ホルモンおよび高分子量DNAを含む化合物が皮膚に送達されてきた。主たる適用は上部表皮の標的化をもたらした。
【0084】
リポソームは2つの広い種類に分類される。カチオン性リポソームは正電荷を帯びたリポソームであり、負電荷のDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する。正電荷のDNA/リポソーム複合体は負電荷を帯びた細胞表面に結合し、そしてエンドソームにおいてインターナリゼーションされる。エンドソーム内の酸性pHにより、リポソームは破壊され、細胞の細胞質中にそれらの内容物を放出する(Wang et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1987,147,980−985)。
【0085】
pH感受性または負電荷をもつリポソームは、DNAと複合体を形成するというよりもむしろそれを捕捉する。両DNAおよび脂質は類似の電荷を有するので、複合体形成よりむしろ反発が起きる。pH感受性リポソームは、培養において細胞のモノレアーにチミジンキナーゼ遺伝子をコードしているDNAを送達するために使用されてきた。外因性遺伝子の発現は標的細胞において検出された(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,1992,19,269−274)。
【0086】
リポソーム組成物の1つの主なタイプは、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含有する。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成することができる。陰イオン性リポソーム組成物は、一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるが、陰イオン性の融合生成リポソームは、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から主として形成される。リポソーム組成物のその他のタイプは、ホスファチジルコリン(PC)、例えば大豆PCおよび卵PCから形成される。その他のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0087】
いくつかの研究は、皮膚へのリポソーム薬物製剤の局所送達を試験した。モルモットの皮膚へのインターフェロンを含有するリポソームの適用は、皮膚のヘルペス潰瘍の減退をもたらしたが、他の手段(例えば、溶液または乳濁液として)によるインターフェロンの送達は無効であった(Weiner et al.,Journal of Drug Targeting,1992,2,405−410)。また、さらなる研究は、水性系
を用いるインターフェロンの投与に対する、リポソーム製剤の一部として投与されたインターフェロンの効力を試験し、そしてリポソーム製剤が水性投与よりも優れていると結論づけた(du Plessis et al.,Antiviral Reseach,1992,18,259−265)。
【0088】
また、非イオン性リポソーム系が試験されて、非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含有する特定の系において、皮膚への薬物の送達におけるそれらの利用を決定した。NovasomeTMI(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasomeTMII(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含有する非イオン性リポソーム製剤が、マウス皮膚の真皮中にシクロスポリンAを送達するために使用された。結果は、そのような非イオン性リポソーム系は皮膚の種々の層中にシクロスポリンAの沈着を促進するのに効果的であった(Hu et al.,S.T.P.Pharma.Sci.,1994,4,6,466)。
【0089】
また、リポソームは「立体的に安定な」リポソームを含み、ここに使用されるこの用語は、1種以上の特定の脂質を含有するリポソームを指し、リポソーム中に組み入れられた場合、そのような特定の脂質を欠くリポソームに比較して増強した循環寿命をもたらす。立体的に安定なリポソームの例は、リポソームの小胞形成性脂質部分の一部が、(A)1種以上の糖脂質、例えばモノシアロガングリオシドGM1を含有するか、または(B)1種以上の親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分により誘導体化される、それらのリポソームである。いかなる特定の理論によってもしばられることを望むものでないが、ガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEGで誘導された脂質を含有する立体的に安定なリポソームでは少なくとも、これらの立体的に安定なリポソームの増強した循環半減期は、細網内皮系(RES)の細胞中への低下した取り込みに由来することが、当該技術分野において考えられる(Allen et al.,FEBS Letters,1987,223,42;Wu et al.,Cancer Research,1993,53,3765)。1種以上の糖脂質を含有する種々のリポソームが当該技術分野において知られている。Papahadjopoulosら(Ann.N.Y.Acad.sci.,1987,507,64)は、リポソームの血液半減期を改良するモノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシド硫酸およびホスファチジルイノシトールの能力を報告した。これらの知見はGabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85,6949)によって解説された。共にAllenらによる米国特許第4,837,028号およびWO88/04924は、(1)スフィンゴミエリン、および(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含有するリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webb et al.)はスフィンゴミエリンを含有するリポソームを開示している。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含有するリポソームはWO97/13499(Lim et al.)に開示されている。
【0090】
1種以上の親水性ポリマーにより誘導体化された脂質を含有する多くのリポソーム、およびそれらの製造方法は当該技術分野において既知である。Sunamotoら(Bull.Chem.Soc.Jap.,1980,53,2778)は、REG部分を含有する非イオン性洗剤、2C1215Gを含有するリポソームを記述している。Illumら(FEBS Lett.,1984,167,79)は、重合グリコールによるポリスチレン粒子の親水性コーティングが有意に増強された血液半減期をもたらすことを指摘した。ポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボキシル基の結合によって改変した合成リン脂質がSearsら(米国特許第4,426,330号および同第4,534,899号)によって記述されている。Klibanovら(FEBS Lett.,1990,268,235)は、PEGまたはPEGステアレートにより誘導体化したホスフ
ァチジルエタノールアミン(PE)を含有するリポソームが血液循環半減期において有意に増進したことを例証している実験を記述している。Blumeら(Biochimica et Biophysica Acta,1990,1029,91)は、他のPEG誘導リン脂質、例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびPEGの組み合わせから形成されるDSPE−PEGに対してそのような観察を拡大した。リポソームの外部表面に共有結合したPEG部分を有するリポソームは、Fisherへの欧州特許第0 445 131 B1号およびWO90/04384において記述されている。PEGにより誘導体化したPEの1−20モル%を含有するリポソーム組成物、およびその使用方法は、Woodleら(米国特許第5,013,556号および同第5,356,633号)およびMartinら(米国特許第5,213,804号および欧州特許第0 496 813 B1号)によって記述されている。多数の他の脂質−ポリマー複合体を含有するリポソームは、WO91/05545および米国特許第5,225,212号(共にMartinらに対する)およびWO94/20073(Zalipskyら)において開示されている。PEGで改変したセラミド脂質を含有するリポソームはWO96/10391(Choi et al.)に記述されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki et al.)および同第5,556,948号(Tagawa et al.)は、リポソームの表面に機能性部分によりさらに誘導体化されたPEG含有リポソームを記述している。
【0091】
核酸を含有する限られた数のリポソームは当該技術分野において周知である。ThierryらのWO96/40062は、リポソーム中に高分子量の核酸を被包化する方法を開示している。Tagawaらの米国特許第5,264,221号はタンパク質を結合したリポソームを開示し、そしてそのようなリポソームの内容物はアンチセンスRNAを含んでもよいことを主張する。Rahmanらの米国特許第5,665,710号は、リポソーム中にオリゴデオキシヌクレオチドを被包化するある方法を記述している。LoveらのWO97/04787は、raf遺伝子を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するリポソームを開示している。
【0092】
トランスファーソーム(transfersome)は、なおその他のタイプのリポソームであり、そして薬物送達担体のための魅力ある候補である高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、それらが小滴より小さい細孔を通して容易に浸透することができるほど高度に変形可能である脂質小滴として記述されてもよい。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適応可能であり、例えば、それらは自己最適化性(皮膚の細孔の形状に適応する)、自己修復性であり、分断することなくそれらの標的にしばしば到達し、そしてしばしば自己充填性である。トランスファーソームを作製するためには、標準のリポソーム組成物に対して表面周縁−アクチベーター(edge−activator)、通常は界面活性剤を添加することが可能である。トランスファーソームは、皮膚に血清アルブミンを送達するために使用された。血清アルブミンのトランスファーソーム媒介による送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同様に効果的であることが示された。
【0093】
界面活性剤は、乳剤(マイクロエマルションを含む)およびリポソームのような製剤において広い応用を見い出す。両天然および合成の、界面活性剤の多くの異なるタイプの性質を分類し、格付けするもっとも普通の方法は、親水性/親油性比(HLB)の使用による。親水基(また「ヘッド」として知られる)の性質は、製剤において使用される種々の界面活性剤を類別するもっとも有用な手段を提供する(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0094】
界面活性剤分子がイオン化されない場合、それは非イオン性界面活性剤として分類され
る。非イオン性界面活性剤は、製薬および化粧製品において広い応用を見いだし、そして広範囲のpH値にわたって使用可能である。一般に、それらのHLB値はそれらの構造に応じて2〜約18にわたる。非イオン性界面活性剤は、非イオン性エステル、例えばエチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルを含む。非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル、例えば脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーが、またこの種類に含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤類のもっとも一般的なメンバーである。
【0095】
界面活性剤分子が、水に溶解または分散された時に負電荷を担持する場合、界面活性剤は陰イオン性と分類される。陰イオン性界面活性剤は、カルボキシレート、例えば石けん、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸のエステル、例えばアルキル硫酸およびエトキシル化アルキル硫酸、スルホネート、例えばアルキルベンゼンスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホスクシネート、およびリン酸エステルを含む。陰イオン性界面活性剤類のもっとも重要なメンバーは、アルキル硫酸および石けんである。
【0096】
界面活性剤分子が、水に溶解または分散された時に正電荷を担持する場合、界面活性剤は陽イオン性と分類される。陽イオン性界面活性剤は、第4級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンを含む。第4級アミン塩は、この種類のもっとも使用されるメンバーである。
【0097】
界面活性剤分子が、正または負電荷の両方を担持する能力を有する場合、界面活性剤は両性として分類される。両性界面活性剤は、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタインおよびホスファチドを含む。
【0098】
薬物製品、製剤および乳剤における界面活性剤の使用は概説されている(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0099】
浸透増強剤
1つの実施態様では、本発明は、動物の皮膚への核酸、特にオリゴヌクレオチドの有効な送達を実施するために種々の浸透増強剤を用いる。ほとんどの薬物は、イオン化および非イオン化両形態において溶液中に存在している。しかしながら、通常は、脂質可溶性または親油性薬物のみが細胞膜を容易に横切る。横切る膜が浸透増強剤で処理される場合は、非親油性薬物でさえ細胞膜を横切ることが発見された。細胞膜を横切る非親油性薬物の拡散を助長するのに加えて、また浸透増強剤は親油性薬物の浸透を増強する。
【0100】
浸透増強剤は、5つの広い類別、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁塩、キレート剤および非キレート性非界面活性剤の1つに属するとして分類することができる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。浸透増強剤の上記種類の各々は、より詳細に以下に記述される。
【0101】
界面活性剤:本発明に関して、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水性溶液中に溶解された場合、溶液の表面張力、または水性溶液とその他の液体との間の界面張力を低下させる化学的本質であり、その結果として粘膜を通してのオリゴヌクレオチドの吸収が増強される。胆汁塩および脂肪酸に加えて、これらの浸透増強剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−
20−セチルエーテル)(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92);およびペルフルオロ化学エマルション,例えばFC−43を含む。Takahashi et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1988,40,252)。
【0102】
脂肪酸:浸透増強剤として作用する種々の脂肪酸およびそれらの誘導体は、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC1−10アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピルおよびt−ブチル)、およびそれらのモノ−およびジ−グリセリド(すなわち、オレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレエートなど)を含む(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;El Hariri et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1992,44,651−654)。
【0103】
胆汁塩:胆汁の生理学的役割は、脂質および脂肪可溶性ビタミンの分散および吸収の促進を含む(Brunton,Chapter38 in:Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman et al.Eds.,McGraw−Hill,New York,1996,pp.934−935)。種々の天然胆汁塩およびそれらの合成誘導体は浸透増強剤として働く。かくして、用語「胆汁塩」は、すべての天然に存在する胆汁の成分ならびにすべてのそれらの合成誘導体を含む。本発明の胆汁塩は、例えば、コール酸(またはその製薬学的に許容しうるナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(glucholic acid)(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(glycholic acid)(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(chenodeoxycholic acid)(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)を含む(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Swinyard,Chapter 39 In:Remington’s Pharmaceutical Scinces,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990,pages782−783;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Yamamoto et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1992,263,25;Yamashita et al.,J.Pharm.Sci.,1990,79,579−583)。
【0104】
キレート剤:本発明に関して使用されるキレート剤は、化合物と錯体を形成することに
よって溶液から金属イオンを除去し、その結果、粘膜を通してオリゴヌクレオチドの吸収が増強される化合物として定義することができる。本発明における浸透増強剤としてのそれらの使用に関して、キレート剤はDNアーゼ阻害剤としてまた働くという付加的利点を有する。その理由は、もっとも特性決定されたDNAヌクレアーゼは触媒作用のために二価の金属イオンを必要とするので、そのために、キレート剤によって阻害されるからである(Jarrett,J.Chromatogr.,1993,618,315−339)。本発明のキレート剤は、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸塩およびホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN−アシル誘導体、β−ジケトン(エナミン)のラウレト−9およびN−アミノアシル誘導体を含む(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92;Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33;Buur
et al.,J.Control Rel.,1990,14,43−51)。
【0105】
非キレート性非界面活性剤:本明細書において使用されるように、非キレート性非界面活性浸透増強化合物は、キレート剤または界面活性剤として有意な活性を表さないが、それでもなお栄養粘膜を通してオリゴヌクレオチドの吸収を増強する化合物として定義できる(Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1−33)。この類の浸透増強剤は、例えば、不飽和環式尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Lee et al.,Critical Reviews
in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)および非ステロイド系抗炎症剤、例えばジクロフェナックナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾン(Yamashita et al.,J.Pharm.Phrmacol.,1987,39,621−626)を含む。
【0106】
細胞レベルにおいてオリゴヌクレオチドの取り込みを増強する薬剤が、本発明の製薬学的およびその他の組成物に添加されてもよい。例えば、カチオン性脂質、例えばリポフェクチン(Junichi et al,米国特許第5,705,188号)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリカチオン分子、例えばポリリジン(Lollo et al.,PCT特許出願WO97/30731)は、また、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを増強することが知られている。
【0107】
グリコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ピロール、例えば2−ピロール、アゾン(azone)、およびテルペン、例えばリモネンおよびメントンを含む他の薬剤が、投与された核酸の浸透を増強するために利用されてもよい。
【0108】
また、本発明のある種の組成物は製剤中に担体化合物を組み入れる。本明細書に使用されるように、「担体化合物」または「担体」は、核酸またはその類似体を指し、これは不活性(すなわち、それ自体で生物学的活性を保持しない)であるが、例えば、生物学的に活性な核酸を分解するか、または循環からのそれの除去を促進することによって、生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を低下させるイン・ビボのプロセスによって核酸として認識される。典型的には過剰な担体化合物の物質とともに、核酸および担体化合物の投与は、共通の受容体に対する担体化合物と核酸との間の推測される競合により、肝臓、腎臓または他の循環外の貯蔵場所において回収される核酸量の実質的低下をもたらすことができる。例えば、肝組織における部分ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの回収は、それが、ポリイノシン酸、デキストラン硫酸、ポリシチジル酸(polycytidic acid)または4−アセトアミド−4’イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−
ジスルホン酸とともに同時投与される場合には低下させることができる(Miyao et al.,Antisense Res.Dev.,1995,5,115−121;Takakura et al.,Antisense & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177−183)。
【0109】
添加物
担体化合物に対して、「製薬学的担体」または「添加物」は、動物に1種以上の核酸を送達するための製薬学的に許容しうる溶媒、懸濁化剤またはすべての他の製薬学的不活性な媒質である。添加物は液体または固体であってもよく、そして意中に計画された投与方式により選択されて、核酸および定められた製薬学的組成物の他の成分と組み合わされた場合の所望される大きさ、硬さなどのために提供される。典型的な製薬学的担体は、限定されるものではないが、結合剤(例えば、前糊化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、など);賦形剤(例えば、ラクトースおよび他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウム、など);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアレート、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、澱粉、ナトリウムスターチグリコレートなど);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)を含む。
【0110】
核酸と劣化的に反応しない非経口投与のために適当な製薬学的に許容しうる有機または無機添加物は、また、本発明の組成物を製剤化するために使用できる。適当な製薬学的に許容しうる担体は、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを含む。
【0111】
核酸の局所投与のための製剤は、滅菌および非滅菌水性液剤、通常の溶媒、例えばアルコール中の非水性液剤、液状または固形油基剤中の核酸の液剤を含んでもよい。また、液剤はバッファー、希釈液および他の適当な添加物を含有してもよい。核酸と劣化的に反応しない非経口投与のために適当な製薬学的に許容しうる有機または無機添加物が使用できる。
【0112】
適当な製薬学的に許容しうる添加物は、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを含む。
【0113】
本発明の組成物は、それらの技術的に確立した使用レベルにおいて、製薬学的組成物において慣例的に見いだされる他の付随成分を付加的に含有してもよい。かくして、例えば、本組成物は、さらなる適合しうる製薬学的に活性な材料、例えば鎭痒薬、収斂薬、局所麻酔薬または抗炎症薬を含有してもよく、あるいは本発明の組成物の種々の剤形を物理的に製剤化する際に有用なさらなる材料、例えば染料、着香剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤および安定化剤を含有してもよい。しかしながら、そのような材料は、添加される場合、本発明の組成物の成分の生物学的活性を不当に妨害してはならない。製剤は、滅菌することもでき、そして所望ならば、製剤の核酸と悪い相互作用をしない、補助剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩類、バッファー、着色剤、着香剤および/または芳香物質などと混合されてもよい。
【0114】
水性懸濁剤は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/
またはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増進する物質を含有してもよい。また、懸濁液は安定化剤を含有してもよい。
【0115】
本発明のある実施態様は、(a)1種以上のアンチセンス化合物および(b)非アンチセンスメカニズムによって機能する1種以上の他の化学療法剤を含有する製薬学的組成物を提供する。そのような化学療法剤の例は、限定されるものではないが、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マフォスファミド、イフォスファミド、シトシンアラビノシド、ビス−クロロエチルニトロソウレア、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニソン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソウレア、ニトロジェンマスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、4−ヒドロキシペルオキシシクロホスホルアミド、5−フルオロウラシル(5−FU)、5−フルオロデオキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルシシン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、トリメトレキセート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)を含む。参照、一般に、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,15th Ed.1987,pp.1206−1228,Berkow et al.,eds.,Rahway,N.J. 本発明の化合物とともに使用される場合、そのような化学療法剤は、個々に(例えば、5−FUおよびオリゴヌクレオチド)、連続して(例えば、一定期間5−FUおよびオリゴヌクレオチド、続いてMTXおよびオリゴヌクレオチド)、または1種以上の他のそのような化学療法剤と組み合わせて(例えば、5−FU、MTXおよびオリゴヌクレオチド、または5−FU、放射線治療およびオリゴヌクレオチド)使用されてもよい。限定されるものではないが非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコステロイドを含む抗炎症薬、ならびに限定されるものではないがリビビリン、ビダラビン、アシクロビルおよびガンシクロビルを含む抗ウイルス薬は、また、本発明の組成物中に合体されてもよい。参照、一般に、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,15th Ed.,Berkow et al.,eds.,1987,Rahway,N.J.,それぞれpages2499−2506および46−46)。他の非アンチセンス化学療法剤もまた、本発明の範囲内にある。2種以上の併用化合物は、一緒に使用されても、また連続して使用されてもよい。
【0116】
その他の関連する実施態様では、本発明の組成物は、第1の核酸を標的とした1種以上のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド、および第2の核酸標的を標的とした1種以上のさらなるアンチセンス化合物を含有してもよい。アンチセンス化合物の種々の例が当該技術分野において知られている。2種以上の併用化合物は、一緒に使用されても、また連続して使用されてもよい。
【0117】
治療化合物の製剤化およびそれらの続いての投与は当業者の範囲内にあると考えられる。投薬(dosing)は、数日から数カ月まで継続するか、あるいは治癒が達成されるかまたは疾病状態の減退が達成されるまでの治療行程とともに、治療されるべき疾病状態の重篤度および応答性に依存する。最適な投薬計画は、患者の身体における薬物蓄積の測定から計算することができる。通常の習熟者は、最適用量、投薬方法および反復度を容易に決定できる。最適用量は個々のオリゴヌクレオチドの相対力価により変ってもよく、そして一般に、イン・ビトロおよびイン・ビボの動物モデルにおいて効果的であることが見い出されたEC50に基づいて評価することができる。一般に、用量は、体重1kg当たり0.01μg〜100gであり、そして1日毎、1週毎、1カ月毎または1年毎に1回
以上、または2〜20年毎に1回であってさえ与えることができる。当業者は、体液または組織における薬物の測定される滞留時間および濃度に基づいて投薬のための反復度を容易に評価することができる。成功裏の治療に続いて、疾病状態の再発を予防するために患者に維持治療を受けさせることが望ましいこともあり、この場合、オリゴヌクレオチドは、体重1kg当たり0.01μg〜100gの範囲で、1日に1回以上ないし20年毎に1回の維持用量において投与される。
【0118】
本発明は、その好適な実施態様のあるものにしたがって特異的に記述されたが、次に示す実施例は、本発明を具体的に説明するためにのみ役立ち、そして本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0119】
実施例1
オリゴヌクレオチド合成のためのヌクレオシドホスホルアミダイトデオキシおよび2’−アルコキシアミダイト
2’−デオキシおよび2’−メトキシベータ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトは、商業的供給元(例えば、Chemgenes、Needham MAもしくはGlen Research,Inc.Sterling VA)から購入した。他の2’−O−アルコキシ置換されたヌクレオシドアミダイトは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,506,351に記述されているように製造する。2’−アルコキシアミダイトを用いて合成するオリゴヌクレオチドには、テトラゾールおよび塩基のパルス送達後の待ち工程(wait step)を360秒に増やしたことを除いて、改変されていないオリゴヌクレオチドの標準サイクルを利用した。
【0120】
5−メチル−2’−デオキシシチジン(5−Me−C)ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、市販されているホスホルアミダイト(Glen Research,Sterling VAもしくはChemGenes,Needham MA)を用いて、公開された方法[Sanghvi,et.al.,Nucleic Acids Research,1993,21,3197−3203]に従って合成した。
【0121】
2’−フルオロアミダイト
2’−フルオロデオキシアデノシンアミダイト
2’−フルオロオリゴヌクレオチドは、以前に[Kawasaki,et.al.,J.Med.Chem.,1993,36,831−841]そして引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,670,633に記述されているように合成した。簡潔に言えば、保護されたヌクレオシドN6−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンは、市販されている9−ベータ−D−アラビノフラノシルアデニンを出発物質として利用し、そして2’−アルファ−フルオロ原子が2’−ベータ−トリチル基のS2置換により導入されるところの文献方法を改変することによって合成した。このようにしてN6−ベンゾイル−9−ベータ−D−アラビノフラノシルアデニンを3’,5’−ジテトラヒドロピラニル(THP)中間体として適度な収率で選択的に保護した。THPおよびN6−ベンゾイル基の脱保護は、標準的な方法論を用いて成し遂げ、そして5’−ジメトキシトリチル−(DMT)および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイト中間体を得るために標準的方法を用いた。
【0122】
2’−フルオロデオキシグアノシン
2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成は、出発物質としてテトライソプロピルジシロキサニル(TPDS)で保護された9−ベータ−D−アラビノフラノシルグアニンおよび中間体ジイソブチリルアラビノフラノシルグアノシンへの転化を用いて成し遂げた。TPDS基の脱保護の後にTHPでヒドロキシル基を保護してジイソブチリルジ−
THPで保護されたアラビノフラノシルグアニンを生成せしめた。選択的O−脱アシル化およびトリフレーションの後に粗生成物をフッ化物で処理し、次にTHP基を脱保護した。5’−DMT−および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを得るために標準的方法論を用いた。
【0123】
2’−フルオロウリジン
2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの合成は、2,2’−アンヒドロ−1−ベータ−D−アラビノフラノシルウラシルを70%フッ化水素−ピリジンで処理するところの文献方法の改変によって成し遂げた。5’−DMT−および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを得るために標準的方法を用いた。
【0124】
2’−フルオロデオキシシチジン
2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンは、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンのアミノ化、続いてN4−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンを生成せしめるための選択的保護によって合成した。5’−DMT−および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを得るために標準的方法を用いた。
【0125】
2’−O−(2−メトキシエチル)で改変されたアミダイト
2’−O−メトキシエチルで置換されたヌクレオシドアミダイトは、以下のように、あるいはまた、Martin,P.,Helvetica Chimica Acta,1995,78,486−504の方法のように製造する。
【0126】
2,2’−アンヒドロ[1−(ベータ−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウリジン]
5−メチルウリジン(リボシルチミン、Yamasa,Choshi,Japanを通して市販されている)(72.0g、0.279M)、炭酸ジフェニル(90.0g、0.420M)および重炭酸ナトリウム(2.0g、0.024M)をDMF(300mL)に加えた。混合物を攪拌しながら加熱還流し、発生した二酸化炭素気体を制御して放出させた。1時間後に、わずかに黒ずんだ溶液を減圧下で濃縮した。得られるシロップを攪拌しながらジエチルエーテル(2.5L)に注ぎ込んだ。生成物は粘性物質(gum)を形成した。エーテルをデカントし、そして残留物を最小量のメタノール(約400mL)に溶解した。溶液を新しいエーテル(2.5L)に注ぎ込んで固い粘性物質を生成せしめた。エーテルをデカントし、そして粘性物質を真空オーブン中で乾燥させて(1mmHgで60℃、24時間)固体を生成せしめ、それを薄い黄褐色の粉末に粉砕した(57g、85%粗収率)。NMRスペクトルは、そのナトリウム塩としてフェノールで汚染された(約5%)構造と一致した。この物質をそのままでさらなる反応に用いた(もしくは酢酸エチルにおけるメタノールの勾配(10−25%)を用いてカラムクロマトグラフィーによりこれをさらに精製して白色の固体、mp 222−4℃を生成せしめることができる)。
【0127】
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン
2,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(195g、0.81M)、トリス(2−メトキシエチル)ボレート(231g、0.98M)および2−メトキシエタノール(1.2M)を2Lのステンレス鋼圧力容器に加え、そして160℃の予熱した油浴中に置いた。155−160℃で48時間加熱した後、容器を開け、そして溶液を蒸発乾固し、そしてMeOH(200mL)で研和した。残留物を熱いアセトン(1L)に懸濁した。不溶性の塩を濾過し、アセトン(150mL)で洗浄し、そして濾過液を蒸発させた。残留物(280g)をCHCN(600mL)に溶解し、そして蒸発させた。シリカゲルカラム(3kg)を0.5% EtNHを含有するCHCl/アセトン/MeOH(20:5:3)において充填した。残留物をCHCl(250mL)に溶解し、そし
てカラムに載せる前にシリカ(150g)上に吸着した。生成物を充填溶媒で溶出して160g(63%)の生成物を生成せしめた。不純画分をやり直すことにより追加の物質が得られた。
【0128】
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(160g、0.506M)をピリジン(250mL)と共蒸着し、そして乾燥した残留物をピリジン(1.3L)に溶解した。ジメトキシトリチルクロリドの第一のアリコート(94.3g、0.278M)を加え、そして混合物を室温で1時間攪拌した。ジメトキシトリチルクロリドの第二のアリコート(94.3g、0.278M)を加え、そして反応物をさらに1時間攪拌した。次に、反応を止めるためにメタノール(170mL)を加えた。HPLCにより約70%の生成物の存在が示された。溶媒を蒸発させ、そしてCHCN(200mL)で研和した。残留物をCHCl(1.5L)に溶解し、そして2x500mLの飽和したNaHCOおよび2x500mLの飽和したNaClで抽出した。有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、そして蒸発させた。275gの残留物が得られた。残留物を0.5% EtNHを含有するEtOAc/ヘキサン/アセトン(5:5:1)で充填しそして溶出する3.5kgのシリカゲルカラム上で精製した。純粋画分を蒸発させて164gの生成物を生成せしめた。不純画分から約20gの追加が得られ、183g(57%)の全収量が得られた。
【0129】
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(106g、0.167M)、DMF/ピリジン(562mLのDMFおよび188mLのピリジンから調製する750mLの3:1混合物)および無水酢酸(24.38mL、0.258M)を合わせ、そして室温で24時間攪拌した。最初にTLCサンプルをMeOHの添加でクエンチすることにより反応をTLCでモニターした。TLCにより判断した場合に、反応が完了すると、MeOH(50mL)を加え、そして混合物を35℃で蒸発させた。残留物をCHCl(800mL)に溶解し、そして2x200mLの飽和した重炭酸ナトリウムおよび2x200mLの飽和したNaClで抽出した。水層を200mLのCHClで逆抽出した。合わせた有機化合物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして蒸発させて122gの残留物を生成せしめた(約90%生成物)。残留物を3.5kgのシリカゲルカラム上で精製し、そしてEtOAc/ヘキサン(4:1)を用いて溶出した。純粋生成物画分を蒸発させて96g(84%)を生成せしめた。後の画分からさらに1.5gを回収した。
【0130】
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(96g、0.144M)をCHCN(700mL)に溶解することにより第一の溶液を調製し、取って置いた。トリエチルアミン(189mL、1.44M)をCHCN(1L)中のトリアゾール(90g、1.3M)の溶液に加え、−5℃に冷却し、そしてオーバーヘッド攪拌器を用いて0.5時間攪拌した。0−10℃で保った攪拌溶液にPOClを30分の期間にわたって滴下して加え、そして得られる混合物をさらに2時間攪拌した。後者の溶液に第一の溶液を45分の期間にわたって滴下して加えた。得られる反応混合物を低温室において一晩保存した。反応混合物から塩を濾過し、そして溶液を蒸発させた。残留物をEtOAc(1L)に溶解し、そして不溶性の固体を濾過により除いた。濾過液を1x300mLのNaHCOおよび2x300mLの飽和したNaClで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして蒸発させた。残留物をEtOAcで研和して表題化合物を生成せしめた。
【0131】
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン ジオキサン(500mL)およびNHOH(30mL)中の3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン(103g、0.141M)の溶液を室温で2時間攪拌した。ジオキサン溶液を蒸発させ、そして残留物をMeOH(2x200mL)と共沸した。残留物をMeOH(300mL)に溶解し、そして2リットルのステンレス鋼圧力溶液に移した。NH気体で飽和したMeOH(400mL)を加え、そして容器を100℃に2時間加熱した(TLCにより完全な転化が示された)。容器の中身を蒸発乾固し、そして残留物をEtOAc(500mL)に溶解し、そして飽和したNaCl(200mL)で1回洗浄した。有機化合物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして溶媒を蒸発させて85g(95%)の表題化合物を生成せしめた。
【0132】
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(85g、0.134M)をDMF(800mL)に溶解し、そして無水安息香酸(37.2g、0.165M)を攪拌しながら加えた。3時間攪拌した後、TLCにより反応が約95%完了したことが示された。溶媒を蒸発させ、そして残留物をMeOH(2x200mL)と共沸した。残留物をCHCl(700mL)に溶解し、そして飽和したNaHCO(2x300mL)および飽和したNaCl(2x300mL)で抽出し、MgSO上で乾燥させ、そして蒸発させて残留物(96g)を生成せしめた。残留物を溶出溶媒として0.5% EtNHを含有するEtOAc/ヘキサン(1:1)を用いて1.5kgのシリカカラム上でクロマトグラフィーにかけた。純粋生成物画分を蒸発させて90g(90%)の表題化合物を生成せしめた。
【0133】
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン−3’−アミダイト
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(74g、0.10M)をCHCl(1L)に溶解した。テトラゾールジイソプロピルアミン(7.1g)および2−シアノエトキシ−テトラ(イソプロピル)ホスファイト(40.5mL、0.123M)を窒素雰囲気下で攪拌しながら加えた。得られる混合物を室温で20時間攪拌した(TLCにより反応が95%完了したことが示された)。反応混合物を飽和したNaHCO(1x300mL)および飽和したNaCl(3x300mL)で抽出した。水性洗浄液をCHCl(300mL)で逆抽出し、そして抽出物を合わせ、MgSO上で乾燥させ、そして濃縮した。得られる残留物を溶出溶媒としてEtOAc/ヘキサン(3:1)を用いて1.5kgのシリカカラム上でクロマトグラフィーにかけた。純粋画分を合わせて90.6g(87%)の表題化合物を生成せしめた。
【0134】
2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトおよび2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイト
2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[当該技術分野において2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても既知である]は、以下の段落に記述するように製造する。アデノシン、シチジンおよびグアノシンヌクレオシドアミダイトは、環外アミンをアデノシンおよびシチジンの場合にはベンゾイル成分でそしてグアノシンの場合にはイソブチリルで保護することを除いてチミジン(5−メチルウリジン)と同様に製造する。
【0135】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−O−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン
−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(Pro.Bio.Sint.,Varese,Italy,100.0g、0.416mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.66g、0.013eq、0.0054mmol)を周囲温度でアルゴン雰囲気下でそして機械的に攪拌しながら乾式ピリジン(500ml)に溶解した。tert−ブチルジフェニルクロロシラン(125.8g、119.0mL、1.1eq、0.458mmol)を一度に加えた。反応物を周囲温度で16時間攪拌した。TLC(Rf 0.22、酢酸エチル)により完全な反応が示された。溶液を粘度の高い油状物に減圧下で濃縮した。これをジクロロメタン(1L)および飽和した重炭酸ナトリウム(2x1L)およびブライン(1L)間で分配した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして粘度の高い油状物に減圧下で濃縮した。油状物を酢酸エチルおよびエチルエーテルの1:1混合物(600mL)に溶解し、そして溶液を−10℃に冷却した。得られる結晶質生成物を濾過により集め、エチルエーテル(3x200mL)で洗浄し、そして149g(74.8%)の白色の固体に乾燥させた(40℃、1mmHg、24時間)。TLCおよびNMRは、純粋な生成物と一致した。
【0136】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン
2Lのステンレス鋼の攪拌していない圧力反応器にテトラヒドロフラン中のボラン(1.0M、2.0eq、622mL)を加えた。ヒューム・フードにおいてそして手動で攪拌しながら、エチレングリコール(350mL、過剰)を水素気体の発生がおさまるまで最初に注意深く加えた。5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−O−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(149g、0.311mol)および重炭酸ナトリウム(0.074g、0.003eq)を手動で攪拌しながら加えた。反応器を密封し、そして160℃の内部温度に達するまで油浴中で加熱し、そして次に16時間保持した(圧力<100psig)。反応容器を周囲温度に冷却し、そして開けた。TLC(所望の生成物ではRf 0.67そしてアラ−T(ara−T)副生成物ではRf 0.82、酢酸エチル)により生成物への約70%の転化が示された。さらなる副生成物形成を防ぐために、反応を止め、エチレングリコールを除くために用いるさらに厳しい条件で温水浴(40−100℃)中で減圧下(10〜1mmHg)で濃縮した。[あるいはまた、いったん低沸点の溶媒がなくなると、残留溶液を酢酸エチルおよび水の間で分配することができる。生成物は有機相にある。]残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製した(2kgのシリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン勾配 1:1〜4:1)。適切な画分を合わせ、揮散し、そして白色の堅いが砕けやすい泡状物としての生成物(84g、50%、汚染された出発物質(17.4g)および純粋な再使用可能な出発物質20gに乾燥させた。出発物質、純度が低く回収された出発物質に基づく収率は58%であった。TLCおよびNMRは、99%純粋な生成物と一致した。
【0137】
2’−O−[(2−フタルイミドキシ(2−phthalimidoxy))エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン(20g、36.98mmol)をトリフェニルホスフィン(11.63g、44.36mmol)およびN−ヒドロキシフタルイミド(7.24g、44.36mmol)と混合した。それを次にP上で高真空下で40℃で2日間乾燥させた。反応混合物をアルゴンでフラッシュし、そして乾式THF(369.8mL、Aldrich、sure sealボトル)を加えて清澄溶液を得た。アゾジカルボン酸ジエチル(6.98mL、44.36mmol)を反応混合物に滴下して加えた。添加の速度は、得られる濃い赤色の着色が次の1滴を加える前にちょうど脱色されるように保つ。添加を完了した後、反応物を4時間攪拌した。この時までにTLCにより反応の完了が示
された(酢酸エチル:ヘキサン、60:40)。溶媒を真空中で蒸発させた。得られる残留物をフラッシュカラム上に置き、そして酢酸エチル:ヘキサン(60:40)で溶出し、2’−O−[(2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジンを白色の泡状物(21.819g、86%)として得た。
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルマドキシミノオキシ(2−formadoximinooxy))エチル]−5−メチルウリジン
2’−O−[(2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン(3.1g、4.5mmol)を乾式CHCl(4.5mL)に溶解し、そしてメチルヒドラジン(300mL、4.64mmol)を−10℃〜0℃で滴下して加えた。1時間後に混合物を濾過し、濾過液をよく冷えたCHClで洗浄し、そして合わせた有機相を水、ブラインで洗浄し、そして無水NaSO上で乾燥させた。溶液を濃縮して2’−O−(アミノオキシエチル)チミジンを得、これを次にMeOH(67.5mL)に溶解した。これにホルムアルデヒド(20%水溶液、w/w、1.1eq.)を加え、そして得られる混合物を1時間攪拌した。溶媒を真空下で除き;残留物をクロマトグラフィーにかけて5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルマドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジンを白色の泡状物(1.95g、78%)として得た。
【0138】
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン
5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルマドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン(1.77g、3.12mmol)を乾式MeOH中の1Mピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS)の溶液(30.6mL)に溶解した。この溶液に10℃で不活性雰囲気下で水素化シアノホウ素ナトリウム(0.39g、6.13mmol)を加えた。反応混合物を10℃で10分間攪拌した。この後に反応容器を氷浴から取り除き、そして室温で2時間攪拌し、反応をTLC(CHCl中5%のMeOH)によりモニターした。NaHCO水溶液(5%、10mL)を加え、そして酢酸エチル(2x20mL)で抽出した。酢酸エチル相を無水NaSO上で乾燥させ、蒸発乾固した。残留物をMeOH中の1MPPTSの溶液(30.6mL)に溶解した。ホルムアルデヒド(20% w/w、30mL、3.37mmol)を加え、そして反応混合物を室温で10分間攪拌した。反応混合物を氷浴中で10℃に冷却し、水素化シアノホウ素ナトリウム(0.39g、6.13mmol)を加え、そして反応混合物を10℃で10分間攪拌した。10分後に、反応混合物を氷浴から取り除き、そして室温で2時間攪拌した。反応混合物に5%NaHCO(25mL)溶液を加え、そして酢酸エチル(2x25mL)で抽出した。酢酸エチル層を無水NaSO上で乾燥させ、蒸発乾固した。得られる残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、そしてCHCl中5%のMeOHで溶出して5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジンを白色の泡状物(14.6g、80%)として得た。
【0139】
2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
トリエチルアミントリヒドロフルオリド(3.91mL、24.0mmol)を乾式THFおよびトリエチルアミン(1.67mL、12mmol、乾式、KOH上で保つ)に溶解した。トリエチルアミン−2HFのこの混合物を次に5’−O−tert−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン(1.40g、2.4mmol)に加え、そして室温で24時間攪拌した。反応をTLC(CHCl中5%のMeOH)によってモニターした。溶媒を真空下で除き、そして残留物をフラッシュカラム上に置き、そしてCHCl中10%のMeOHで溶出して2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(766mg、92.5%)を得た。
【0140】
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(750mg、2.17mmol)をP上で高真空下で40℃で一晩乾燥させた。それを次に無水ピリジン(20mL)で共蒸着した。得られる残留物をアルゴン雰囲気下でピリジン(11mL)に溶解した。4−ジメチルアミノピリジン(26.5mg、2.60mmol)、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(880mg、2.60mmol)を混合物に加え、そして出発物質の全てがなくなるまで反応混合物を室温で攪拌した。ピリジンを真空下で除き、そして残留物をクロマトグラフィーにかけ、そしてCHCl中10%のMeOH(数滴のピリジンを含有する)で溶出して5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(1.13g、80%)を得た。
【0141】
5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(1.08g、1.67mmol)をトルエン(20mL)で共蒸着した。残留物にN,N−ジイソプロピルアミンテトラゾニド(0.29g、1.67mmol)を加え、そしてP上で高真空下で40℃で一晩乾燥させた。次に反応混合物を無水アセトニトリル(8.4mL)に溶解し、そして2−シアノエチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホルアミダイト(2.12mL、6.08mmol)を加えた。反応混合物を不活性雰囲気下で周囲温度で4時間攪拌した。反応の進行をTLC(ヘキサン:酢酸エチル 1:1)によりモニターした。溶媒を蒸発させ、次に残留物を酢酸エチル(70mL)に溶解し、そして5%水性NaHCO(40mL)で洗浄した。酢酸エチル層を無水NaSO上で乾燥させ、そして濃縮した。得られる残留物をクロマトグラフィー(溶離剤として酢酸エチル)にかけて5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]を泡状物(1.04g、74.9%)として得た。
【0142】
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[当該技術分野において2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても既知である]を以下の段落に記述するように製造する。アデノシン、シチジンおよびチミジンヌクレオシドアミダイトを同様に製造する。
【0143】
N2−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]
2’−O−アミノオキシエチルグアノシン類似体は、ジアミノプリンリボシドの選択的2’−O−アルキル化により得ることができる。ジアミノプリンリボシドの数グラム量をSchering AG(Berlin)から購入して微量の3’−O−異性体と一緒に2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを提供することができる。2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを分割しそしてアデノシンデアミナーゼでの処理により2’−O−(2−エチルアセチル)グアノシンに転化することができる。(McGee,D.P.C.,Cook,P.D.,Guinosso,C.J.,WO 94/02501 A1 940203.)標準的な保護方法は、2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンおよび2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを与えるはずであり
、これを還元して2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを提供することができる。従来どおりヒドロキシル基をミツノブ反応によってN−ヒドロキシフタルイミドで置換することができ、そして保護されたヌクレオシドを従来のようにホスフィチル化して(phosphitylated)2−N−イソブチル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−([2−フタルミドキシ]エチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]を生成せしめることができる。
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−DMAEOE)ヌクレオシドアミダイト
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシヌクレオシドアミダイト[当該技術分野において2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル、すなわち、2’−O−CH−O−CH−N(CHもしくは2’−DMAEOEヌクレオシドアミダイトとしても既知である]を以下のように製造する。他のヌクレオシドアミダイトを同様に製造する。
2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
2[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(Aldrich、6.66g、50mmol)を100mLのボンベにおいて攪拌しながらテトラヒドロフラン中のボランの溶液(1M、10mL、10mmol)にゆっくりと加える。固体が溶解するのに伴なって、水素気体が発生する。O−,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(1.2g、5mmol)および重炭酸ナトリウム(2.5mg)を加え、そしてボンベを密封し、油浴中に置き、そして155℃に26時間加熱する。ボンベを室温に冷却し、開ける。粗溶液を濃縮し、そして残留物を水(200mL)およびヘキサン(200mL)間で分配する。過剰のフェノールはヘキサン層に抽出される。水層を酢酸エチル(3x200mL)で抽出し、そして合わせた有機層を水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして濃縮する。残留物を溶離剤としてメタノール/塩化メチレン 1:20(これは2%のトリエチルアミンを有する)を用いてシリカゲル上でカラムにかける。カラム画分を濃縮するにつれて無色の固体が生じ、これを集めて表題化合物を白色の固体として生成せしめる。
【0144】
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
無水ピリジン(8mL)中0.5g(1.3mmol)の2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジンに、トリエチルアミン(0.36mL)およびジメトキシトリチルクロリド(DMT−Cl、0.87g、2eq.)を加え、そして1時間攪拌する。反応混合物を水(200mL)に注ぎ込み、そしてCHCl(2x200mL)で抽出する。合わせたCHCl層を飽和したNaHCO溶液、続いて飽和したNaCl溶液で洗浄し、そして無水硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させ、続いてMeOH:CHCl:EtN(20:1.v/v、1%トリエチルアミンを有する)を用いてシリカゲルクロマトグラフィーにかけて表題化合物を生成せしめる。
【0145】
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン−3’−O−(シアノエチル−N,N−ジイソプロピル)ホルホルアミダイト
ジイソプロピルアミノテトラゾリド(0.6g)および2−シアノエトキシ−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト(1.1mL、2eq.)をアルゴンの雰囲気下でCHCl(20mL)に溶解した5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン(2.17g、3mmol)の溶液に加える。反応混合物を一晩攪拌し、そして溶媒を蒸発させる。得られる残留物を溶離剤として酢酸エチルを用いてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して表題化合物を生成せしめる。
【0146】
実施例2
オリゴヌクレオチド合成
置換されていないおよび置換されたホスホジエステル(P=O)オリゴヌクレオチドは、ヨウ素による酸化で標準的なホスホルアミダイト化学を用いて自動DNA合成装置(Applied Biosystemsモデル380B)で合成する。
【0147】
ホスホロチオエート(P=S)は、ホスファイト結合の段階的チエーション(thiation)のために標準酸化ボトルをアセトニトリル中の3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1,−ジオキシドの0.2M溶液で置き換えることを除いてホスホジエステルオリゴヌクレオチドのように合成する。チエーション待ち工程を68秒に増やし、そしてその後にキャッピング工程を続けた。CPGカラムからの切断および55℃(18時間)で濃水酸化アンモニウムにおける脱保護の後、0.5M NaCl溶液から2.5容量のエタノールで2回沈殿させることによりオリゴヌクレオチドを精製した。
【0148】
ホスフィネートオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,508,270に記述されているように製造する。
【0149】
アルカリホスホネートオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許4,469,863に記述されているように製造する。
【0150】
3’−デオキシ−3’−メチレンホスホネートオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,610,289もしくは5,625,050に記述されているように製造する。
【0151】
ホスホルアミダイトオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,256,775もしくは米国特許5,366,878に記述されているように製造する。
【0152】
アルカリホスホノチオエートオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる、公開されたPCT出願PCT/US94/00902およびPCT/US93/06976(それぞれ、WO 94/17093およびWO 94/02499として公開された)に記述されているように製造する。
【0153】
3’−デオキシ−3’−アミノホスホルアミダイトオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,476,925に記述されているように製造する。
【0154】
ホスホトリエステルオリゴヌクレオチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,023,243に記述されているように製造する。
【0155】
ボラノホスフェート(borano phosphate)オリゴヌクレオチドは、引用することにより両方とも本明細書に組み込まれる米国特許5,130,302および5,177,198に記述されているように製造する。
【0156】
実施例3
オリゴヌクレオシド合成
MMI結合オリゴヌクレオシドとも同定されるメチレンメチルイミノ結合オリゴヌクレオシド、MDH結合オリゴヌクレオシドとも同定されるメチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴヌクレオシド、およびアミド−3結合オリゴヌクレオシドとも同定されるメチレンカ
ルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド、およびアミド−4結合オリゴヌクレオシドとも同定されるメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド、ならびに例えば交互のMMIおよびP=OもしくはP=S結合を有する混合バックボーン化合物は、米国特許5,378,825、5,386,023、5,489,677、5,602,240および5,610,289に記述されているように製造し、これらの全ては引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0157】
ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合オリゴヌクレオシドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,264,562および5,264,564に記述されているように製造する。
【0158】
エチレンオキシド結合オリゴヌクレオシドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,223,618に記述されているように製造する。
【0159】
実施例4
PNA合成
ペプチド核酸(PNA)は、Peptide Nucleic Acids(PNA):Synthesis,Properties and Potential Applications,Bioorganic & Medicinal Chemistry,1996,4,5−23において引用される様々な方法のいずれかに従って製造する。これらはまた、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,539,082、5,700,922および5,719,262に従って製造することもできる。
【0160】
実施例5
キメラオリゴヌクレオチドの合成
本発明のキメラオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドもしくは混合オリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドは、いくつかの異なるタイプであることができる。これらには、結合ヌクレオシドの「ギャップ」セグメントが、結合ヌクレオシドの5’および3’「ウィング」セグメントの間に位置する第一のタイプ、ならびに「ギャップ」セグメントが、オリゴマー化合物の3’もしくは5’末端のいずれかに位置する第二の「オープンエンド」タイプが包含される。第一のタイプのオリゴヌクレオチドはまた、当該技術分野において「ギャップマー」もしくはギャップドオリゴヌクレオチドとしても既知である。第二のタイプのオリゴヌクレオチドはまた、当該技術分野において「ヘミマー」もしくは「ウィングマー」としても既知である。
【0161】
[2’−O−Me]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−Me]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
2’−O−アルキルホスホロチオエートおよび2’−デオキシホスホロチオエートオリゴヌクレオチドセグメントを有するキメラオリゴヌクレオチドを、上記のように、Applied Biosystems自動DNA合成装置モデル380Bを用いて合成する。オリゴヌクレオチドは、自動合成装置ならびにDNA部分には2’−デオキシ−5’−ジメトキシトリチル−3’−O−ホスホルアミダイトそして5’および3’ウィングには5’−ジメトキシトリチル−2’−O−メチル−3’−O−ホスホルアミダイトを用いて合成する。テトラゾールおよび塩基の送達後の待ち工程をRNAでは4回そして2’−O−メチルでは2回繰り返す600秒に増やすことにより標準合成サイクルを改変する。完全に保護されたオリゴヌクレオチドを支持体から切断し、そしてリン酸基を3:1のアンモニア/エタノールにおいて室温で一晩脱保護し、次に凍結乾固する。次に、全ての塩基を脱保護するためにメタノール性アンモニアにおける室温で24時間の処理を行い、そしてサンプルを再び凍結乾固した。2’位を脱保護するためにペレットをTHF中1MのTBAFに室温で24時間再懸濁する。次に反応を1M TEAAでクエンチし、そして次に
サンプルをrotovacにより1/2容量に減らし、その後にG25サイズ排除カラム上で脱塩する。回収されるオリゴを次にキャピラリー電気泳動によりそして質量分析により収率に関してそして純度に関して分光光度法で分析する。
【0162】
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−(メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−(メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルアミダイトの代わりに2’−O−(メトキシエチル)アミダイトを用いて、2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドの上記の方法のように製造した。
【0163】
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−−[2’−デオキシホスホロチオエート]−−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチド
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−−[2’−デオキシホスホロチオエート]−−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルアミダイトの代わりに2’−O−(メトキシエチル)アミダイトを用い、キメラ構造のウィング部分内のホスホジエステルヌクレオチド間結合を生成せしめるためにヨウ素で酸化し、そして中央ギャップのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を生成せしめるために3,H−1,2ベンゾジチオール−3−オン1,1ジオキシド(Beaucage試薬)を利用して硫化し、2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドの上記の方法のように製造する。
【0164】
他のキメラオリゴヌクレオチド、キメラオリゴヌクレオシドおよび混合キメラヌクレオチド/オリゴヌクレオシドは、引用することにより本明細書に組み込まれる米国特許5,623,065に従って合成する。
【0165】
実施例6
オリゴヌクレオチド単離
制御細孔(controlled pore)ガラスカラム(Applied Biosystems)からの切断および55℃で18時間にわたる濃水酸化アンモニウムにおける脱保護の後に、オリゴヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオシドを2.5容量のエタノールで0.5M NaClから2回沈殿させることにより精製する。合成されたオリゴヌクレオチドを変性ゲル上でポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析し、そして少なくとも85%が全長物質であると判断した。合成において得られるホスホロチオエートおよびホスホジエステル結合の相対量は、31P核磁気共鳴分光法により定期的に調べ、そしていくつかの研究にはChiang et al.,J.Biol.Chem.1991,266,18162−18171によって記述されているようにオリゴヌクレオチドをHPLCで精製した。HPLCで精製した物質で得られる結果は、HPLCで精製していない物質で得られるものと同様であった。
【0166】
実施例7
オリゴヌクレオチド合成−96ウェルプレート形式
オリゴヌクレオチドを標準的な96ウェル形式で96の配列を同時に組み立てることができる自動合成装置で固相P(III)ホスホルアミダイト化学によって合成した。ホスホジエステルヌクレオチド間結合は、水性ヨウ素での酸化によって生成せしめた。ホスホロチオエートヌクレオチド間結合は、無水アセトニトリル中の3,H−1,2ベンゾジチオール−3−オン1,1ジオキシド(Beaucage試薬)を利用して硫化により生成せしめた。標準的な塩基保護されたベータ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトは、商業的製造供給元(例えば、PE−Applied Biosystems,F
oster City,CAもしくはPharmacia,Piscataway,NJ)から購入した。非標準的なヌクレオシドは、既知の文献もしくは特許を得た方法のように合成する。これらは、塩基保護されたベータ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトとして利用する。
【0167】
オリゴヌクレオチドを支持体から切断し、そして高温(55−60℃)で濃NHOHで12−16時間脱保護し、そして遊離生成物を次に真空中で乾燥させた。次に、乾燥生成物を滅菌水に再懸濁してマスタープレートを生成せしめ、これから全ての分析および試験プレートサンプルを次にロボットピペッターを利用して希釈する。
【0168】
実施例8
オリゴヌクレオチド分析−96ウェルプレート形式
各ウェルにおけるオリゴヌクレオチドの濃度は、サンプルの希釈およびUV吸収分光法により評価した。個々の生成物の全長完全性は、96ウェル形式(Beckman P/ACETM MDQ)におけるか、もしくは個々に製造したサンプルでは、市販のCE装置(例えば、Beckman P/ACETM 5000,ABI 270)上のいずれかでキャピラリー電気泳動(CE)により評価した。塩基およびバックボーン組成は、電気スプレー−質量分析を利用する化合物の質量分析により確かめた。全てのアッセイ試験プレートは、単一および複数チャンネルロボットピペッターを用いてマスタープレートから希釈した。プレートは、プレート上の化合物の少なくとも85%が少なくとも85%全長であった場合に許容しうると判断した。
【0169】
実施例9
細胞培養およびオリゴヌクレオチド処理
標的核酸発現へのアンチセンス化合物の効果は、標的核酸が測定可能なレベルで存在するならば様々な細胞タイプのいずれにおいても試験することができる。これは、例えば、PCRもしくはノーザンブロット分析を用いて日常的に決定することができる。以下の4つの細胞タイプは実例目的のために提供するが、選択する細胞タイプにおいて標的が発現されるならば他の細胞タイプを日常的に用いることができる。これは、当該技術分野において日常的な方法、例えば、ノーザンブロット分析、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、もしくはRT−PCRにより容易に決定することができる。
【0170】
T−24細胞:
ヒト移行上皮膀胱癌細胞系T−24は、American Type Culture
Collection(ATCC)(Manassas,VA)から入手した。T−24細胞は、10%ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)、ペニシリン100ユニット/mL、およびストレプトマイシン100μg/mL(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)を補足した完全マッコイ5A基本培地(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)において通常通りに培養した。細胞は、それらが90%の飽和密度(confluence)に達するとトリプシン処理および希釈により通常通りに継代した。RT−PCR分析における使用には、細胞を7000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(Falcon−Primaria #3872)に接種した。
【0171】
ノーザンブロッティングもしくは他の分析には、細胞を100mmもしくは他の標準的な組織培養プレート上に接種し、そして適切な容量の培地およびオリゴヌクレオチドを用いて、同様に処理することができる。
【0172】
A549細胞:
ヒト肺癌細胞系A549は、American Type Culture Collection(ATCC)(Manassas,VA)から入手した。A549細胞は、10%ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)、ペニシリン100ユニット/mL、およびストレプトマイシン100μg/mL(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)を補足したDMEM基本培地(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)において通常通りに培養した。細胞は、それらが90%の飽和密度に達するとトリプシン処理および希釈により通常通りに継代した。
【0173】
NHDF細胞:
ヒト新生児皮膚繊維芽細胞(NHDF)は、Clonetics Corporation(Walkersville MD)から入手した。NHDFは、供給業者によって推奨されるように補足した繊維芽細胞増殖培地(Clonetics Corporation、Walkersville MD)において通常通りに維持した。細胞は、供給業者によって推奨されるように10継代までの間維持した。
【0174】
HEK細胞:
ヒト胎児角質細胞(HEK)は、Clonetics Corporation(Walkersville MD)から入手した。HEKは、供給業者によって推奨されるように調合した角質細胞増殖培地(Clonetics Corporation、Walkersville MD)において通常通りに維持した。細胞は、供給業者によって推奨されるように10継代までの間維持した。
【0175】
HepB3細胞:
HepB3:
ヒト肝臓癌細胞系HepB3(Hep3B2.1−7)は、American Type Culture Collection(ATCC−ATCCカタログ#HB−8064)(Manassas,VA)から入手した。この細胞系は、8歳の黒人男性の肝細胞癌から最初に得られた。細胞は形態が上皮性であり、そしてヌードマウスにおいて発癌性である。これらの細胞は、Lozanski,et al.,(Cytokine,vol.8,1996:pp.534−540)によって記述されているプロトコルに従って、1μMのデキサメタゾン(Sigma−カタログ#D2915 St.Louis,MO)、400U/mlのIL1B(Sigma−カタログ#I9401)および200U/mlのIL6(Simga−カタログ#I139)を含有する培地の添加によりCRPを生産するように誘導することができる。HepB3細胞は、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Gibco/Life Technologies,Gaithersburg,MD)を補足した、Earles平衡塩溶液、2mM L−グルタミン、1.5g/L重炭酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、1.0mMピルビン酸ナトリウムを有する最小必須培地(MEM)(ATCC−ATCCカタログ#20−2003(Manassas,VA)において通常通りに培養した。細胞は、それらが90%の飽和密度に達するとトリプシン処理および希釈により通常通りに継代した。
【0176】
誘導されるCRPのアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害を決定するために、10% FCSを補足したMEMにおいて6ウェルプレート(Primaria,Franklin N.J.,カタログ#3846)の各ウェルに100,000細胞の密度でHep3B細胞を置き、そして一晩付着させた。翌日、上記のように1μgのデキサメタゾン、400U/mlのIl1Bおよび200U/mlのIl6の最終濃度を補足した通常の培地においてCRPを生産するように24時間細胞を誘導した。この誘導期間の最後に、培地を取り除き、そして3種のサイトカインを補足した、血清のないMEMのみにおいて50
−150nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび3.0−4.5μgのリポフェクチンで細胞を4時間処理した。4時間の薬剤処理の最後に、培地を取り除き、そしてFCSおよびサイトカインを含有する新しいMEMを各ウェルに加え、そしてさらに20時間そのままにしておいた。オリゴヌクレオチドでの処理の24時間後にQiagen RNeasy(Qiagen Ltd,Valencia,CA)法を用いてRNAを採取し、そしてRT−PCR分析を用いてCRP RNAを検出した。
【0177】
アンチセンス化合物での処理:
細胞が90%の飽和密度に達すると、それらをオリゴヌクレオチドで処理した。96ウェルプレートにおいて増やした細胞では、ウェルを200μLのOPTI−MEMTM−1血清使用量低減培地(reduced−serum medium)(Gibco BRL)で1回洗浄し、そして次に3.75μg/mLのLIPOFECTINTM(Gibco BRL)および所望の濃度のオリゴヌクレオチドを含有する130μLのOPTI−MEMTM−1で処理した。4−7時間の処理の後、培地を新しい培地で置き換えた。オリゴヌクレオチド処理の16−24時間後に細胞を採取した。
【0178】
使用するオリゴヌクレオチドの濃度は、細胞系ごとに異なる。特定の細胞系の最適なオリゴヌクレオチド濃度を決定するために、細胞を各種濃度の陽性コントロールオリゴヌクレオチドで処理する。ヒト細胞では、陽性コントロールオリゴヌクレオチドは、ISIS
13920、TCCGTCATCGCTCCTCAGGG、配列番号:1、ヒトH−rasを標的とするホスホロチオエートバックボーンを有する2’−O−メトキシエチルギャップマー(2’−O−メトキシエチルをボールド体で示す)である。マウスもしくはラット細胞では、陽性コントロールオリゴヌクレオチドは、ISIS 15770、ATGCATTCTGCCCCCAAGGA、配列番号:2、マウスおよびラットc−rafの両方を標的とするホスホロチオエートバックボーンを有する2’−O−メトキシエチルギャップマー(2’−O−メトキシエチルを下線で示す)である。次に、c−Ha−ras(ISIS 13920では)もしくはc−raf(ISIS 15770では)mRNAの80%阻害をもたらす陽性コントロールオリゴヌクレオチドの濃度をその細胞系の後の実験における新しいオリゴヌクレオチドのスクリーニング濃度として利用する。80%阻害が得られない場合、H−rasもしくはc−raf mRNAの60%阻害をもたらす陽性コントロールオリゴヌクレオチドの最低濃度をその細胞系の後の実験におけるオリゴヌクレオチドスクリーニング濃度として利用する。60%阻害が得られない場合、その特定の細胞系はオリゴヌクレオチドトランスフェクション実験に不適当とみなされる。
【0179】
実施例10
C反応性タンパク質発現のオリゴヌクレオチド阻害の分析
C反応性タンパク質発現のアンチセンス調節は、当該技術分野において既知である様々な方法においてアッセイすることができる。例えば、C反応性タンパク質mRNAレベルは、例えば、ノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もしくはリアルタイムPCR(RT−PCR)により定量することができる。リアルタイム定量的PCRが、現在、好ましい。RNA分析は、全細胞RNAもしくはポリ(A)+ mRNAに行うことができる。RNA単離の方法は、例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Volume 1,pp.4.1.1−4.2.9および4.5.1−4.5.3,John Wiley & Sons,Inc.,1993に教示されている。ノーザンブロット分析は当該技術分野において日常的であり、そして例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular
Biology,Volume 1,pp.4.2.1−4.2.9,John Wiley & Sons,Inc.,1996に教示されている。リアルタイム定量的(PCR)は、PE−Applied Biosystems,Foster City,C
Aから入手可能でありそして製造業者の説明書に従って使用する、市販されているABI
PRISMTM 7700配列検出システムを用いて都合よく成し遂げることができる。
【0180】
C反応性タンパク質のタンパク質レベルは、免疫沈降、ウェスタンブロット分析(免疫ブロッティング)、ELISAもしくは蛍光活性化細胞選別(FACS)のような、当該技術分野において周知である様々な方法において定量することができる。C反応性タンパク質に対する抗体を同定しそして抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation,Birmingham,MI)のような様々な供給元から入手することができ、もしくは通常の抗体作製方法によって製造することができる。ポリクローナル抗体の製造方法は、例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.11.12.1−11.12.9,John Wiley & Sons,Inc.,1997に教示されている。モノクローナル抗体の製造は、例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.11.4.1−11.11.5,John Wiley & Sons,Inc.,1997に教示されている。
【0181】
免疫沈降法は当該技術分野において標準的であり、そして例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular
Biology,Volume 2,pp.10.16.1−10.16.11,John Wiley & Sons,Inc.,1998に見出すことができる。ウェスタンブロット(免疫ブロット)分析は当該技術分野において標準的であり、そして例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.10.8.1−10.8.21,John Wiley & Sons,Inc.,1997に見出すことができる。固相酵素免疫検定法(ELISA)は当該技術分野において標準的であり、そして例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols
in Molecular Biology,Volume 2,pp.11.2.1−11.2.22,John Wiley & Sons,Inc.,1991に見出すことができる。
【0182】
実施例11
ポリ(A)+ mRNA単離
ポリ(A)+ mRNAは、Miura et al.,Clin.Chem.,1996,42,1758−1764に従って単離した。ポリ(A)+ mRNA単離の他の方法は、例えば、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Volume 1,pp.4.5.1−4.5.3,John Wiley & Sons,Inc.,1993に教示されている。簡潔に言えば、96ウェルプレート上で増やした細胞では、増殖培地を細胞から取り除き、そして各ウェルを200μLの冷えたPBSで洗浄した。60μLの溶解バッファー(10mM Tris−HCl,pH 7.6,1mM EDTA,0.5M
NaCl,0.5% NP−40,20mMバナジル−リボヌクレオシド複合体)を各ウェルに加え、プレートを穏やかに攪拌し、そして次に室温で5分間インキュベーションした。55μLのライセートをオリゴd(T)被覆96ウェルプレート(AGCT Inc.,Irvine CA)に移した。プレートを室温で60分間インキュベーションし、200μLの洗浄バッファー(10mM Tris−HCl pH 7.6,1mM EDTA,0.3M NaCl)で3回洗浄した。最後の洗浄の後、過剰の洗浄バッファーを除くためにプレートをペーパータオル上でふき取り、そして次に5分間風乾させた。70℃に予熱した60μLの溶出バッファー(5mM Tris−HCl pH 7.6
)を各ウェルに加え、プレートを90℃のホットプレート上で5分間インキュベーションし、そして次に溶出液を新しい96ウェルプレートに移した。
【0183】
100mmもしくは他の標準的なプレート上で増やした細胞は、適切な容量の全ての溶液を用いて同様に処理することができる。
【0184】
実施例12
全RNA単離
全RNAは、Qiagen Inc.(Valencia CA)から購入したRNEASY 96TMキットおよびバッファーを用いて製造業者の推奨する方法に従って単離した。簡潔に言えば、96ウェルプレート上で増やした細胞では、増殖培地を細胞から取り除き、そして各ウェルを200μLの冷えたPBSで洗浄した。100μLのバッファーRLTを各ウェルに加え、そしてプレートを激しく20秒間攪拌した。次に100μLの70%エタノールを各ウェルに加え、そして上下に3回ピペッティングすることにより中身を混合した。次に、廃棄物収集トレーを備えそして真空源に接続したQIAVACTMマニホールドに取り付けたRNEASY 96TMウェルプレートにサンプルを移した。真空を15秒間かけた。1mLのバッファーRW1をRNEASY 96TMプレートの各ウェルに加え、そして真空を再び15秒間かけた。次に、1mLのバッファーRPEをRNEASY 96TMプレートの各ウェルに加え、そして真空を15秒の期間にわたってかけた。次に、バッファーRPE洗浄を繰り返し、そして真空をさらに10分間かけた。次に、プレートをQIAVACTMマニホールドから取り除き、そしてペーパータオル上でふき取って乾燥させた。次に、1.2mLの収集チューブを含有する収集チューブラックを備えたQIAVACTMマニホールドにプレートを再び取り付けた。次に、60μLの水を各ウェルにピペッティングし、1分インキュベーションし、そして次に真空を30秒間かけることによりRNAを溶出した。溶出工程をさらに60μLの水で繰り返した。
【0185】
反復的なピペッティングおよび溶出工程は、QIAGEN Bio−Robot 9604(Qiagen,Inc.,Valencia CA)を用いて自動化することができる。基本的に、培養プレート上の細胞を溶解した後、プレートをロボットデッキに移し、そこで、ピペッティング、DNアーゼ処理および溶出工程を行う。
【0186】
実施例13
C反応性タンパク質mRNAレベルのリアルタイム定量的PCR分析
C反応性タンパク質mRNAレベルの定量は、ABI PRISMTM 7700配列検出システム(PE−Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて製造業者の説明書に従ってリアルタイム定量的PCRにより決定した。これは、リアルタイムでポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の高処理量定量を可能にする閉管のゲルに基づかない蛍光検出システムである。PCRを完了した後に増幅生成物を定量する標準的なPCRと対照的に、リアルタイム定量的PCRにおける生成物はそれらが蓄積するにつれて定量される。これは、フォワードおよびリバースPCRプライマー間で特異的にアニールしそして2種の蛍光色素を含有するオリゴヌクレオチドプローブをPCR反応に含むことにより成し遂げられる。レポーター色素(例えばJOE、FAMもしくはVIC、Operon Technologies Inc.,Alameda,CAもしくはPE−Applied Biosystems,Foster City,CAのいずれかから入手する)をプローブの5’末端に取り付け、そしてクエンチャー色素(例えばTAMRA、Operon Technologies Inc.,Alameda,CAもしくはPE−Applied Biosystems,Foster City,CAのいずれかから入手する)をプローブの3’末端に取り付ける。プローブおよび色素がそのままである場合、レポーター色素発光は3’クエンチャー色素の近接によ
って抑えられる。増幅中に、標的配列へのプローブのアニーリングによって、Taqポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性により切断することができる基質が作り出される。PCR増幅サイクルの伸長段階中に、Taqポリメラーゼによるプローブの切断によってプローブの残りから(従ってクエンチャー成分から)レポーター色素が遊離され、そして配列特異的蛍光シグナルが生成される。各サイクルごとに、追加のレポーター色素分子がそれらのそれぞれのプローブから切断され、そしてABI PRISMTM 7700配列検出システムに組み込まれているレーザー光学により蛍光強度が一定の間隔でモニターされる。各アッセイにおいて、未処理のコントロールサンプルからのmRNAの連続希釈物を含有する一連の並行反応により、試験サンプルのアンチセンスオリゴヌクレオチド処理後のパーセント阻害を定量するために用いる標準曲線を作製する。
【0187】
定量的PCR分析の前に、測定する標的遺伝子に特異的なプライマー−プローブ組を、GAPDH増幅反応と「マルチプレックスされる(multiplexed)」それらの能力について評価する。マルチプレクシングにおいて、標的遺伝子および内部標準遺伝子GAPDHは単一のサンプルにおいて同時に増幅される。この分析において、未処理の細胞から単離されるmRNAを連続的に希釈する。各希釈物をGAPDHのみ、標的遺伝子のみ(「シングルプレクシング(single−plexing)」)、もしくは両方(マルチプレクシング)に特異的なプライマー−プローブ組の存在下で増幅する。PCR増幅後に、希釈の関数としてのGAPDHおよび標的mRNAシグナルの標準曲線をシングルプレックスおよびマルチプレックスサンプルの両方から作製する。マルチプレックスサンプルから作製したGAPDHおよび標的シグナルの傾きおよび相関係数の両方が、シングルプレックスサンプルから作製したそれらの対応する値の10%以内に入る場合、その標的に特異的なプライマー−プローブ組はマルチプレックス可能とみなされる。PCRの他の方法もまた当該技術分野において既知である。
【0188】
PCR試薬は、PE−Applied Biosystems,Foster City,CAから入手した。RT−PCR反応は、25μLの全RNA溶液を含有する96ウェルプレートに25μLのPCRカクテル(1x TAQMANTMバッファーA、5.5mM MgCl、各300μMのdATP、dCTPおよびdGTP、600μMのdUTP、各100nMのフォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブ、20ユニットのRNアーゼインヒビター、1.25ユニットのAMPLITAQ GOLDTM、および12.5ユニットのMuLV逆転写酵素)を加えることにより実施した。RT反応は、48℃で30分間のインキュベーションにより実施した。AMPLITAQ
GOLDTMを活性化するために95℃で10分インキュベーションした後、40サイクルの2段階PCRプロトコルを実施した:15秒間95℃(変性)、続いて1.5分間60℃(アニーリング/伸長)。
【0189】
リアルタイムRT−PCRにより得られる遺伝子標的量は、その発現が一定である遺伝子、GAPDHの発現レベルを用いるか、もしくはRiboGreenTM(Molecular Probes,Inc.Eugene,OR)を用いて全RNAを定量することによるいずれかで正規化する。GAPDH発現は、リアルタイムRT−PCRで、標的と同時に実施することにより、マルチプレクシングにより、もしくは別個に定量する。全RNAは、Molecular ProbesからのRiboGreenTM RNA定量試薬を用いて定量する。RiboGreenTMによるRNA定量の方法は、Jones,L.J.,et al,Analytical Biochemistry,1998,265,368−374に教示されている。
【0190】
このアッセイでは、25μLの精製された細胞RNAを含有する96ウェルプレートに175μLのRiboGreenTMワーキング試薬(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH 7.5において1:2865希釈したRiboGreenTM
薬)をピペットで取る。プレートを480nmでの励起および520nmでの発光でCytoFluor 4000(PE Applied Biosystems)において読み取る。
【0191】
ヒトC反応性タンパク質に対するプローブおよびプライマーは、公開された配列情報(配列番号:3として本明細書に組み込まれる、GenBank受託番号M11725)を用いて、ヒトC反応性タンパク質配列にハイブリダイズするように設計した。ヒトC反応性タンパク質では、PCRプライマーは:
フォワードプライマー:GCTTCCCCTCTTCCCGAA(配列番号:4)
リバースプライマー:TGCGCCACTATGTAAATAATTTTCC(配列番号:5)であり、そしてPCRプローブは:FAM−TCTGACACCTGCCCCAACAAGCAATG−TAMRA(配列番号:6)であり、ここで、FAM(PE−Applied Biosystems,Foster City,CA)は蛍光レポーター色素であり、そしてTAMRA(PE−Applied Biosystems,Foster City,CA)はクエンチャー色素である。ヒトGAPDHでは、PCRプライマーは:
フォワードプライマー:GAAGGTGAAGGTCGGAGTC(配列番号:7)
リバースプライマー:GAAGATGGTGATGGGATTTC(配列番号:8)であり、そしてPCRプローブは:5’JOE−CAAGCTTCCCGTTCTCAGCC−TAMRA 3’(配列番号:9)であり、ここで、JOE(PE−Applied Biosystems,Foster City,CA)は蛍光レポーター色素であり、そしてTAMRA(PE−Applied Biosystems,Foster City,CA)はクエンチャー色素である。
【0192】
実施例14
C反応性タンパク質mRNAレベルのノーザンブロット分析
アンチセンス処理の18時間後に、細胞単層を冷えたPBSで2回洗浄し、そして1mLのRNAZOLTM(TEL−TEST「B」Inc.,Friendswood,TX)において溶解した。全RNAを製造業者の推奨するプロトコルに従って調製した。MOPSバッファー系(AMRESCO,Inc.Solon,OH)を用いて1.1%ホルムアルデヒドを含有する1.2%アガロースゲルを通した電気泳動により20マイクログラムの全RNAを分画した。RNAをゲルからHYBONDTM−N+ナイロン膜(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)にノーザン/サザントランスファーバッファー系(TEL−TEST「B」Inc.,Friendswood,TX)を用いて一晩の毛管移動により移した。RNA移動は、UV視覚化により確かめた。STRATALINKERTM UV架橋剤2400(Stratagene,Inc,La Jolla,CA)を用いてUV架橋により膜を固定し、そして次にストリンジェントな条件についての製造業者の推奨を用いてQUICKHYBTMハイブリダイゼーション溶液(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて覆った。
【0193】
ヒトC反応性タンパク質を検出するために、ヒトC反応性タンパク質特異的なプローブをフォワードプライマーGCTTCCCCTCTTCCCGAA(配列番号:4)およびリバースプライマーTGCGCCACTATGTAAATAATTTTCC(配列番号:5)を用いてPCRにより製造した。ローディングおよび移動効率における変動について正規化するために、膜を切り離し(stripped)、そしてヒトグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)RNAについてプローブで調べた(Clontech,Palo Alto,CA)。
【0194】
ハイブリダイズした膜をPHOSPHORIMAGERTMおよびIMAGEQUAN
TMソフトウェアV3.3(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)を用いて視覚化しそして定量した。データを未処理のコントロールにおけるGAPDHレベルに正規化した。
【0195】
実施例15
2’−MOEウィングおよびデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによるヒトC反応性タンパク質発現のアンチセンス阻害
本発明に従って、公開された配列(配列番号:3として本明細書に組み込まれる、GenBank受託番号M11725)を用いて、ヒトC反応性タンパク質RNAの異なる領域を標的とするように一連のオリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチドを表1に示す。「標的部位」は、オリゴヌクレオチドが結合する特定の標的配列上の第一の(最も5’の)ヌクレオチド番号を示す。表1における全ての化合物は、5個のヌクレオチドの「ウィング」が両側(5’および3’方向)に隣接する、10個の2’−デオキシヌクレオチドからなる中央の「ギャップ」領域からなる長さで20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)である。ウィングは、2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドからなる。ヌクレオシド間(バックボーン)結合は、オリゴヌクレオチドの全体にわたってホスホロチオエート(P=S)である。全てのシチジン残基は5−メチルシチジンである。化合物を本明細書の他の実施例に記述されているようにサイトカイン刺激後のHep3B細胞におけるヒトC反応性タンパク質mRNAレベルへのそれらの効果に関して試験し、そして定量的リアルタイムPCRにより分析した。データは2回の実験からの平均であり、そしてサイトカインで誘導したコントロールのパーセント阻害として表す。もしあるならば、「N.D.」は「データなし」を示す。
【0196】
【表1】

【0197】
【表2】

【0198】
表1に示すように、配列番号10、11、12、13、14、17、18、19、20、21、22、23、24、27、28、30、31、32、34、40、42、44、46、47、48、50、54、56、57、59、60、61および62は、このアッ
セイにおいてヒトC反応性タンパク質発現の少なくとも70%の阻害を示し、従って好ましい。これらの好ましい配列が相補的である標的部位は、本明細書において「活性部位」と称し、従って、本発明の化合物により標的とするための好ましい部位である。
【0199】
実施例16
2’−MOEウィングおよびデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによるヒトC反応性タンパク質発現のアンチセンス阻害−用量応答研究
本発明のさらなる態様として、5個のオリゴヌクレオチドをさらなる用量応答研究のために選択した。サイトカインで誘導したHep3B細胞を50、100および150nMのISIS 133712、133719、133726、140180および140177で処理し、そして実施例15に記述するようにオリゴヌクレオチド処理後24時間でmRNAレベルを測定した。
【0200】
これらの研究の結果を表2に示す。データは2回の実験からの平均であり、そしてサイトカインで誘導したコントロールのパーセント阻害として表す。
【0201】
【表3】

【0202】
表2に示すように、ISIS 133712、ISIS 133726およびISIS
140180は、用量に依存してC反応性タンパク質mRNAレベルを減少することに有効であり、従って、本発明の好ましい化合物である。
【0203】
実施例17
C反応性タンパク質タンパク質レベルのウェスタンブロット分析
ウェスタンブロット分析(免疫ブロット分析)は、標準的方法を用いて実施する。オリゴヌクレオチド処理の16−20時間後に細胞を採取し、PBSで洗浄し、Laemmliバッファー(100μl/ウェル)に懸濁し、5分間沸騰させ、そして16% SDS−PAGEゲル上に載せる。ゲルを150Vで1.5時間泳動し、そしてウェスタンブロッティングのために膜に移す。C反応性タンパク質に対する適切な一次抗体を、一次抗体種に対する放射性標識したもしくは蛍光標識した二次抗体と共に用いる。PHOSPHORIMAGERTM(Molecular Dynamics,Sunnyvale CA)を用いてバンドを視覚化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C反応性タンパク質をコードする核酸分子を標的とする長さで8〜50核酸塩基の化合物であって、C反応性タンパク質をコードする該核酸分子と特異的にハイブリダイズし、かつ、C反応性タンパク質の発現を阻害することを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1記載の化合物であって、
(a)C反応性タンパク質をコードする核酸分子の3’非翻訳領域(3’UTR)、
(b)C反応性タンパク質をコードする核酸分子の5’非翻訳領域(5’UTR)、
(c)C反応性タンパク質をコードする核酸分子の開始コドン領域、
(d)C反応性タンパク質をコードする核酸分子のコーディング領域。および
(e)C反応性タンパク質をコードする核酸分子の停止コドン領域
からなる群より選ばれるいずれかの領域を標的とする、上記の化合物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物であって、
(a)C反応性タンパク質をコードする核酸分子のイントロン、または
(b)C反応性タンパク質をコードする核酸分子のスプライス部位
を標的とする、上記の化合物。
【請求項4】
アンチセンスオリゴヌクレオチドである請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも一つの改変されたヌクレオシド間結合を含んでなる請求項4記載の化合物。
【請求項6】
改変されたヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である請求項5記載の化合物。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも一つの改変された糖部分を含んでなる請求項4記載の化合物。
【請求項8】
改変された糖部分が2’−O−メトキシエチル糖部分である請求項7記載の化合物。
【請求項9】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも一つの改変された核酸塩基を含んでなる請求項4記載の化合物。
【請求項10】
改変された核酸塩基が5−メチルシトシンである請求項9記載の化合物。
【請求項11】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがキメラオリゴヌクレオチドである請求項4記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の化合物であって、2’−O−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドから構成された5個のヌクレオチドのウイングが両側に隣接している10個の2’−デオキシヌクレオチドよりなる中央ギャップから構成された長さ20のオリゴヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチドであり、かつ、ヌクレオシド間結合がオリゴヌクレオチド全体にわたってホスホロチオエート(P=S)であり、シトシン残基のすべてが5−メチルシトシンである、上記の化合物。
【請求項13】
C反応性タンパク質をコードする核酸分子上の活性部位の少なくとも8核酸塩基部分と特異的にハイブリダイズする請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の化合物および製薬学的に許容しうる担体もしくは希釈剤を含んでなる組成物。
【請求項15】
C反応性タンパク質に関連する疾患または症状の処置に使用するための請求項1〜13のいずれかに記載の化合物であって、該疾患または症状が心臓血管疾患であってもよく、かつ、心臓血管疾患が不安定狭心症または心筋梗塞であってもよい、上記の化合物。

【公開番号】特開2011−87588(P2011−87588A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263753(P2010−263753)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2003−515635(P2003−515635)の分割
【原出願日】平成14年7月15日(2002.7.15)
【出願人】(502254408)イシス・フアーマシユーチカルズ・インコーポレーテツド (5)
【Fターム(参考)】