説明

C型肝炎患者の経過予測方法

【課題】本発明の目的は、C型肝炎患者の自然治癒の予測、及びC型肝炎患者における薬剤の治療効果の予測を含む、C型肝炎患者の経過予測方法を提供することである。
【解決手段】前記課題は、C型肝炎患者の経過を予測する方法であって、(1)C型肝炎患者由来の核酸試料の(a)遺伝子多型rs8099917及び(b)遺伝子型多型rs72258881を分析する行程、並びに(2)(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、並びに(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測する工程、を含むことを特徴とする、C型肝炎患者の経過予測方法によって解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎患者の経過予測方法に関する。本発明のC型肝炎患者の経過予測方法によれば、C型肝炎患者の自然治癒の予測をすることができる。また、本発明のC型肝炎患者の経過予測方法によれば、PEG化インターフェロン−α及びリバビリンに代表される薬剤の治療効果の予測を行うことができる。特には、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせが[T/G]又は[G/G]の薬剤の治療効果が低い患者群において、高い治療効果が得られるC型肝炎患者を高率に予測することができる。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(以下、HCVと称することがある)は、血液伝搬性のウイルスであり、HCV感染が起こると急性の経過で治癒するものが20〜30%であり、70〜80%は持続感染へ移行する。HCVによる持続感染の多くは慢性肝炎となり、治療を行わない場合、その大部分が肝硬変、そして肝癌へと進行する(非特許文献1)。
このC型慢性肝炎の治療法として、1992年にインターフェロン(以下、IFNと称することがある)による治療が開始された。しかしながら、IFNの効果はHCVの遺伝子型により異なり、遺伝子型1b、且つ高ウイルス量の難治性C型慢性肝炎では、著効(SVR sustained virological response)率は、非常に低かった。その後、IFN及びリバビリンの併用投与が認可され、更に2004年から遺伝子型1b且つ高ウイルス量の難治性C型慢性肝炎にPEG化IFN及びリバビリンの併用投与が保険適用になり、著効率は大きく向上していった。
【0003】
最近、田中らによりIL−28B(IFN−λ3)の近傍に複数のSNPが存在し、そのアリルの違いによって、PEG化IFN及びリバビリンの併用投与の治療効果が異なることが報告されている(非特許文献2)。特に、IL−28Bの8kb下流のSNP(rs8099917)のメジャーアリルであるTT(日本人で80%程度)では、80%著効率を示すが、マイナーアリルであるGG及びヘテロのTG(日本人で20%程度)では、20%程度の著効率しか示さなかった。すなわち、rs8099917のアリルを決定することによって、80%の精度でPEG化IFN及びリバビリンの併用投与の治療効果を予測することが可能であった。しかしながら、rs8099917がTTの患者であっても20%の患者では効果が得られず、逆にrs8099917のアリルがGG又はTGであっても20%の患者では効果が得られるため、治療効果の予測は十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ヘパトロジー・リサーチ(Hepatology Reseach)」(日本)2010年、第40巻、p.449−460
【非特許文献2】「ネイチャー・ジェネティクス(nature genetics)」(英国)2009年、第41巻、p.1105−1109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、C型肝炎患者のIFNによる治療は、多額の治療費が必要である。また、IFNによる治療は、発熱及び頭痛などの軽度なものから、間質性肺炎及び神経症状などの重度な副作用が見られることがある。従って、治療効果の予測が可能であれば、治療効果が得られにくいグループについては、副作用が見られた時点で、早期に中止を判断することが可能であり、無用な副作用への対応や高額な治療費を抑えることが可能である。
従って、本発明の目的は、C型肝炎患者における薬剤の治療効果を、従来の予測方法と比較して、より精確に予測することのできる薬剤の治療効果予測方法を提供することである。
更に、C型肝炎の感染では、前記のように20〜30%が急性の経過で自然治癒するが、現在まで、C型肝炎患者の自然治癒を予測することはできなかった。
従って、本発明の目的は、C型肝炎患者の自然治癒の予測方法を提供することである。
以上のように、本発明の目的は、C型肝炎患者の自然治癒の予測、及びC型肝炎患者における薬剤の治療効果の予測を含む、C型肝炎患者の経過予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、C型肝炎患者の経過予測方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、rs8099917のアリルがGG又はTGである薬剤の治療効果が低いと考えられている患者においても、遺伝子型多型rs72258881のアレルであるTAの繰り返し配列を、13以上有する患者はウイルス学的著効(virological response;以下、VRと称することがある)の可能性が高いことを見出した。
更に、rs8099917のアリルがTTであるC型肝炎患者において、遺伝子型多型rs72258881のアレルであるTAの繰り返し配列を、13以上有する患者は自然治癒の可能性が高いことを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、C型肝炎患者の経過を予測する方法であって、(1)C型肝炎患者由来の核酸試料の(a)遺伝子多型rs8099917又は前記遺伝子多型rs8099917遺と連鎖不平衡にある遺伝子多型、及び(b)遺伝子型多型rs72258881又は前記遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型を分析する行程、並びに(2)(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、若しくは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型の前記[T/T]、[T/G]、及び[G/G]に対応するアレルの組み合わせ、並びに(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12](ここで、nはrs72258881の遺伝子多型を(TA)nで表した場合のTAの繰り返し数である)、若しくは遺伝子型多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型の[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]に対応するアレルの組み合わせ、を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測する工程、を含むことを特徴とする、C型肝炎患者の経過予測方法に関する。
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法の好ましい態様においては、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、(A)[T/T]、並びに[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]の組み合わせである場合に、自然治癒の可能性が高いと予測し、(B)[T/T]、並びに[[n≦12/n≦12]]の組み合わせである場合に、持続感染の可能性が高いと予測し、(C)[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、又は[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、持続感染の可能性が高いと予測する。
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法の別の好ましい態様においては、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、(A)[T/T]、並びに[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、又は[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測し、(B)[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測し、(C)[T/G]又は[G/G]、並びに[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が低いと予測する。
また、本発明のC型肝炎患者の経過予測方法の好ましい態様においては、前記遺伝子多型の分析が、ダイレクトシークエンス法、PCR−RELP法、TaqMan法、DigiTag法、DigiTag2法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、SnaPshot法、ASP−PCR法,PCR−SSO法、PCR−SSP法、PCR−SSCP)法、DNAチップ若しくはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、インベーダー法、MALDI−TOF/MS法、モレキュラー・ビーコン法、RCA法、UCAN法、対立遺伝子特異的PCR、ミニシーケンシング、パイロシーケンシング、ARMS法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、又は変性/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)及びマイクロサテライト多型解析法からなる群から選択される少なくとも1つである。
また、本発明のC型肝炎患者の経過予測方法の好ましい態様においては、前記薬剤が、インターフェロン−α、PEG化インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−λ、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、NS5A阻害剤、Debio025、NIM811、SCY−635、ニタゾキサニド、セルゴシビル、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
また、本発明は、(1)配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917のT又はGを含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる、C型肝炎患者の経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ及び/又は配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセット、並びに(2)配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第552番以降の遺伝子多型rs72258881におけるTA繰り返し配列を含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる、C型肝炎患者の経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ及び/又は配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第第552番以降の遺伝子多型rs72258881を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセット、を含むC型肝炎患者の経過予測用キットに関する。
本発明のC型肝炎患者の経過予測用キットの好ましい態様においては、遺伝子多型rs8099917及び遺伝子多型rs72258881を分析し、そしてそのアレルの組み合わせを分類することが記載された説明書を更に含む。
更に、本発明は、遺伝子多型rs8099917のアレルであるT又はGを含む2つの対立遺伝子の二本鎖DNA、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルであるTAの繰り返し配列を含む2つの対立遺伝子の二本鎖DNAからなり、(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、若しくは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型の前記[T/T]、[T/G]、及び[G/G]に対応するアレルの組み合わせ、並びに(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12](ここで、nはrs72258881の遺伝子多型を(TA)nで表した場合のTAの繰り返し数である)、若しくは遺伝子型多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型の[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]に対応するアレルの組み合わせ、を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測する、C型肝炎患者の経過予測用マーカーに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法、C型肝炎患者の経過予測用キット、及びC型肝炎患者の経過予測用マーカーによれば、C型肝炎患者の自然治癒の予測をすることができる。また、本発明によれば、PEG化インターフェロン−α及びリバビリンに代表される薬剤の治療効果の予測を行うことができる。特には、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせが[T/G]又は[G/G]の薬剤の治療効果が低い患者群において、高い治療効果が得られるC型肝炎患者を高率に予測することができる。
また、本発明によれば、治療効果が得られにくいC型肝炎患者のグループについては、副作用が見られた時点で、早期に中止を判断することが可能であり、無用な副作用への対応や高額な治療費を抑えることが可能である。更に、自然治癒することが予測されるC型肝炎患者のグループにおいては、副作用のある治療を行わずに経過を観察する、又はそれらのグループは薬剤の治療効果も高いため、早期に治療を開始することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.C型肝炎患者の経過予測方法
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法は、(1)(a)C型肝炎患者由来の核酸試料の遺伝子多型rs8099917又は前記遺伝子多型rs8099917遺と連鎖不平衡にある遺伝子多型、及び(b)遺伝子型多型rs72258881又は前記遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型を分析する行程;(2)(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、若しくは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型の前記[T/T]、[T/G]、及び[G/G]に対応するアレルの組み合わせ、及び(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12](ここで、nはrs72258881の遺伝子多型を(TA)nで表した場合のTAの繰り返し数である)、若しくは遺伝子型多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型の[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]に対応するアレルの組み合わせ、を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測する工程;を含む。
すなわち、本発明のC型肝炎患者の経過予測方法は、C型肝炎患者の自然経過の予測方法及びC型肝炎患者に対する薬剤の治療効果を予測する方法を含む。
【0010】
(遺伝子多型rs8099917)
遺伝子多型rs8099917は、ヒトの遺伝子の第19番染色体のIL−28B(IFN−λ3)の5’上流7kb付近に存在している。日本人におけるrs8099917のマイナーアリルであるGの頻度は約9.3%である。従って、マイナーアリルのホモ接合である[G/G]の頻度は約0.9%、メジャーアリルのホモ接合である[T/T]の頻度は約82.2%、マイナーアリル及びメジャーアリルのヘテロ接合である[T/G]の頻度は約16.9%である。
C型肝炎患者において、遺伝子多型rs8099917が[T/T]の場合、PEG化IFN及びリバビリンの併用投与に対して、80%の著効率を示す。一方、マイナーアリルを含む[T/G]及び[G/G]の場合、20%程度の著効率であった。
【0011】
(遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型)
本発明の薬剤の治療効果予測方法において用いることのできる遺伝子多型は、遺伝子多型rs8099917に限らず、遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型を用いることができる。本明細書において、「連鎖不平衡にある」とは、例えば遺伝子多型rs8099917に対してR2が0.8以上の遺伝子多型を意味し、0.85以上の遺伝子多型が好ましく、0.9以上の遺伝子多型がより好ましい。又は、「連鎖不平衡にある」とは、例えば遺伝子多型rs8099917に対してD’が0.8以上の遺伝子多型を意味し、0.85以上の遺伝子多型が好ましく、0.9以上の遺伝子多型がより好ましい。
遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型は、遺伝子多型rs8099917と同じように、治療効果予測方法に用いることができ、例えばHaploviewソフトウエアを用いて、公知の方法により探索することできる。
【0012】
(遺伝子多型rs72258881)
遺伝子多型rs72258881は、ヒトの遺伝子の第19番染色体のIL−28B(IFN−λ3)の5’上流0.5kb付近に存在している。遺伝子多型rs72258881は、TAの反復配列の数の多寡であり、現在確認されている反復配列の数は10〜18である。すなわち、遺伝子多型rs72258881を(TA)n(ここで、nは自然数である)で表した場合、nは10〜18である。日本人においては、n=12がメジャーアリルであり、その頻度は約70%である。一方、n≦11の頻度は約5%であり、n≧13の頻度は約25%である。
【0013】
(遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型)
本発明の薬剤の治療効果予測方法において用いることのできる遺伝子多型は、遺伝子多型rs72258881に限らず、遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型を用いることができる。本明細書において、「連鎖不平衡にある」とは、例えば遺伝子多型rs72258881に対してR2が0.8以上の遺伝子多型を意味し、0.85以上の遺伝子多型が好ましく、0.9以上の遺伝子多型がより好ましい。
遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型は、遺伝子多型rs72258881と同じように、治療効果予測方法に用いることができ、例えばHaploviewソフトウエアを用いて、公知の方法により探索することできる。
【0014】
(C型肝炎患者の自然経過の予測方法)
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法は、C型肝炎患者の自然経過の予測方法として用いることができる。すなわち、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/T]、並びに[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]である場合に、自然治癒の可能性が高いと予測することができる。また、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/T]、並びに[n≦12/n≦12]である場合に、持続感染の可能性が高いと予測することができる。更に、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、又は[n≦12/n≦12]である場合に、持続感染の可能性が高いと予測することができる。表1に自然経過の予測についてまとめる。
【0015】
【表1】

【0016】
なお、本明細書において「自然治癒」とは、HCV感染の後に急性の経過で治癒し、ウイルスが排除されることを意味する。また、本明細書において「持続感染」とは、自然経過においてウイルスが排除されず、治療を行わない場合、その大部分が肝硬変、そして肝癌へと進行することを意味する。
【0017】
遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせと、遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせにおいて、遺伝子型多型rs72258881の(TA)nのnがより大きいアレルを持つC型肝炎患者の方が、自然治癒の可能性が高いと予測することができる。
【0018】
(C型肝炎患者に対する薬剤の治療効果を予測する方法)
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法は、C型肝炎患者に対する薬剤治療効果の予測方法として用いることができる。すなわち、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/T]、並びに[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、又は[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測することができる。
また、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測することができる。
更に、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/G]又は[G/G]、並びに[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が低いと予測することができる。表2に治療効果の予測についてまとめる。
【0019】
【表2】

【0020】
更に、遺伝子多型rs72258881のアレルにn≦11を含むか否かによって、経過予測をすることもできる。
すなわち、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/T]、並びに[n≧12/n≧12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測することができる。
すなわち、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/T]、並びに[n≦11/n≧12]又は[n≦11/n≦11]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が低いと予測することができる。
また、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧12/n≧12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が低いと予測することができる。
更に、遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、それぞれ[T/G]又は[G/G]、並びに[n≦11/n≧12]又は[n≦11/n≦11]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が低いと予測することができる。表3に治療効果の予測についてまとめる。
【0021】
【表3】

【0022】
遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせと、遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせにおいて、遺伝子型多型rs72258881の(TA)nのnがより大きいアレルを持つC型肝炎患者の方が、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測することができる。
【0023】
(被検試料)
本発明の経過予測方法において、遺伝子多型rs8099917及び遺伝子型多型rs72258881の分析に用いる被検試料は、HCV感染患者由来の核酸を含む試料であれば、特に限定されるものではない。被検試料に含まれる核酸の種類も、遺伝子多型rs8099917及び遺伝子型多型rs72258881が含まれるものであれば特に限定されるものではなく、DNAでもRNAでもよい。具体的な試料としては、尿、血液、血清、血漿、リンパ液、組織液、髄液、唾液、尿、汗、細胞、又は組織を挙げることができるが、HCV感染患者からの採取が容易であり、侵襲性が低い点で血液(リンパ球)が好ましい。
【0024】
本発明の経過予測方法により、治療効果の判定が可能な薬剤は、HCVの治療に用いられる薬剤であれば、特に限定されることはなく、例えばインターフェロン(例えば、インターフェロン−α、PEG化インターフェロン−α、インターフェロン−β、又はインターフェロン−λ)、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤(例えば、テラプレビル(Telaprevir)、シルプレビル(Ciluprevir)、ボセプレビル(Boceprevir)、TMC435350、R7227/ITMN−191、MK−7009、BI201335、ナルラプレビル(Narlaprevir)、BMS−650032、PHX1766、又はACH−1625)、RNAポリメラーゼ阻害剤(例えば、バロピシタビン(Valopicitabine)、R7128、R1626、PSI−7851、IDX184、BILB 1941、BI207127、MK−3281、フィリブビル(Filibuvir)、VCH759、VCH916、VCH222、ANA598、HCV−796、GS−9190、GS−9190、又はABT−333、)、NS5A阻害剤(例えば、BMS−790052)、Debio025、NIM811、SCY−635、ニタゾキサニド(Nitazoxanide)、セルゴシビル(Celgosivir)又はそれらの2つ以上の組み合わせの薬剤を挙げることができる。特に好ましい薬剤の組み合わせとしては、インターフェロンの単独投与(例えば、インターフェロン−α単独投与、インターフェロン−β単独投与、PEG化インターフェロン−α単独投与又はインターフェロン−λ単独投与)、インターフェロンと他の薬剤の2剤投与(例えば、PEG化インターフェロン−α及びリバビリンの2剤投与)、又はインターフェロン、リバビリン、及び他の薬剤の3剤投与若しくは4剤投与(例えば、PEG化インターフェロン−α、リバビリン及びプロテアーゼ阻害剤の3剤投与、PEG化インターフェロン−α、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、及びRNAポリメラーゼ阻害剤の4剤投与)を挙げることができる。
【0025】
(遺伝子多型の分析方法)
遺伝子多型の分析方法としては、遺伝子多型を分析可能な方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば遺伝子多型rs8099917の分析には一塩基の変異(SNP)を分析することのできる方法が好ましい。一塩基の変異(SNP)を分析することのできる方法としては、ダイレクトシークエンス法、PCR−RELP法、TaqMan法、DigiTag法、DigiTag2法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、SnaPshot法、ASP−PCR法,PCR−SSO法、PCR−SSP法、PCR−SSCP)法、DNAチップ若しくはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、インベーダー法、MALDI−TOF/MS法、モレキュラー・ビーコン法、RCA法、UCAN法、対立遺伝子特異的PCR、ミニシーケンシング、パイロシーケンシング、ARMS法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、又は変性/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)を挙げることができる。
また、遺伝子型多型rs72258881のTAの反復配列の分析には、2塩基の長さの違いを分析することのできる方法が好ましい。2塩基の長さの違いを分析することのできる方法としては、例えば、STR(Short Tandem Repeat)法、SLP(Single Locus Probe)法、又はマイクロサテライト多型解析法を用いることができる。
【0026】
前記遺伝子多型の分析方法としてDigiTag2法、MGBプローブを用いたTaqMan法、インベーダー法及びマイクロサテライト多型解析法について記載する。
DigiTag2法は、解析対象となるSNP毎にSNP特異的なcommon probeと、アリル特異的なquery probeを用いて、一度に複数か所のSNPについて遺伝子型を決定することのできるマルチプレックスSNPタイピング法である。SNP特異的なcommon probeは、SNPの位置に隣接して下流に存在する3’側プローブであり、アリル特異的なquery probeは、SNPを3’末端に含む上流に存在する5’側プローブである。
query probeは、SNP毎にアリルに対応した2種類を用意する。query probe の3’末端に対応するSNPの遺伝子型に応じて、それと相補的な塩基を持つquery probeだけが、3’側に隣接して存在するcommon probeと結合することができる。更に、検出のために各query probeの5’末端にはアリルに対応して2種類のquery tagが連結されており、またcommon probeの3’末端にはSNPごとに異なるcommon tagが連結されている。検出は、common probeに連結されたcommon tagと相補的な塩基配列を持つオリゴDNAを固定したDNAチップを用いて検出を行う。
【0027】
MGBプローブを用いたTaqMan法は、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセットと、5’末端をレポーター色素(FAM)及びMGB(MGB;Minor Groove Binder)でラベルし、3’末端をクエンチャー色素(Eclipse Dark Quencher)で修飾したMGBプローブとをPCRの反応系に加えることにより行うことができる。このようなMGBプローブを用いたTaqMan自体は周知であり、そのためのキット及び装置も市販されているので、SNPの領域にMGBプローブを設定することにより、市販のキット及び装置を用いて実施することができる。
【0028】
前記フォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにMGBプローブは、遺伝子多型rs8099917のそれぞれのアリルの塩基配列に基づいて作成することができる。具体的には、遺伝子多型rs8099917のフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにプローブは、配列番号1で表される遺伝子多型rs8099917を含むDNAの塩基配列から、作製することができる。具体的にはプライマーは、rs8099917のアレルである「T」又は「G」を挟むように、任意の位置に設定することが可能であり、また、プローブはrs8099917のアレルである「T」又は「G」を含む領域に設定することができる。例えばMGBプローブは、遺伝子多型rs8099917のメジャーアレルT又はマイナーアレルGを含むDNAの塩基配列領域に設定することが可能である。
【0029】
インベーダー法は、3’側には標的DNAに特異的な塩基配列を有し変異部位の塩基の5’側に標的DNAと相補性のない配列(フラップ)を有するアレルプローブ;標的DNAの変異部位の3’側に特異的な相補配列を有するプローブ(インベーダープローブ);及び5’側がヘアピン構造をとり得る配列を有し、ヘアピン構造を形成した際に5’末端の塩基と対をなす塩基から3’側に連続する配列がアレルプローブのフラップと相補的な配列であるFRETプローブとを用いる方法である。
具体的には、標的DNA、アレルプローブ及びインベーダープローブを反応させると、それらの相補結合した変異部位にインベーダープローブの3’末端が侵入する。この変異部位の構造を認識する酵素(cleavase)を用いてアレルプローブの一本鎖部分(すなわち、フラップ部分)が切り出される。切り出されたフラップはFRETプローブと相補的に結合し、フラップの変異部位がFRETプローブのヘアピン構造に侵入する。この構造を、更にcleavaseが認識して切断することにより、FRETプローブの末端標識された蛍光色素が遊離し、クエンチャーの影響を受けなくなるために、蛍光が検出される。なお、通常、標的DNAはSNPを含む領域をフォワードプライマーとリバースプライマーを用いたPCRにより増幅しておくことが好ましい。
【0030】
例えば、rs8099917のSNPタイピングにおいて、前記アレルプローブ、及びインベーダープローブは、rs8099917のアレルである「T」又は「G」を含む配列に基づいて、設定することができる。また、PCRのためのフォワードプライマー及びリバースプライマーは、rs8099917のアレルである「T」又は「G」を挟むように、任意の位置に設定することが可能である。具体的には、アレルプローブとして、メジャーアレル「T」を検出するProbe1:5’−atgacgtggcagacAATTGCTCACAGAAAGGAA−3’(配列番号3)、又はマイナーアレル「G」を検出するProbe2:5’−cgcgccgaggCATTGCTCACAGAAAGGA−3’(配列番号4)を挙げることができ、インベーダープローブとして、Invader:5’−GCTACCAAACTGTATACAGCATGGTTCCAATTTGGGTGAt−3’(配列番号5)を挙げることができる。更に、PCRのためのフォワードプライマー及びリバースプライマーとして、InvaderF:5’−TCATCCCTCATCCCACTTCTGGAACA−3’(配列番号6)及びInvaderR:5’−CGGGCCATCTGTTTCCTGCTG−3’(配列番号7)を挙げることができる。
【0031】
マイクロサテライト多型解析法は、遺伝子中の反復配列の数の異なるSNPを解析するのに適した方法である。例えば、前記rs72258881のSNPタイピングは、マイクロサテライト多型解析法の手法を用いて行うことができる。蛍光標識したプライマーを用いて、SNPを含む領域をPCRによって増幅する。得られたPCR産物をシークエンサー(例えば、キャピラリーDNAシークエンサー)によって、電気泳動し、反復配列の長さを同定することができる。
rs72258881のSNPタイピングにおいては、配列番号2に記載の塩基配列に基づいて設定することができる。例えば、フォワードプライマー5’−tgaacccaggaggcggaggttgcagttagc−3’(配列番号8)、及びリバースプライマー5’−gtgctgagattacaggcctgagccaccac−3’(配列番号9)を作成することができる。
【0032】
2.C型肝炎患者の経過予測用キット
本発明のC型肝炎患者の経過予測用キットは、(1)配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917のT又はGを含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる、C型肝炎患者の経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ及び/又は配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセット;並びに(2)配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第552番以降の遺伝子多型rs72258881におけるTA繰り返し配列を含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる、C型肝炎患者の経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ及び/又は配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第552番以降の遺伝子多型rs72258881を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセット;を含む。
なお、配列番号1で表される塩基配列においては、遺伝子多型rs8099917のメジャーアレルT及びマイナーアレルGは、T又はGを意味する「K」で表されている。また、配列番号2で表される遺伝子多型rs72258881を含む配列は、メジャーアリルである12のTAの反復配列を含む塩基配列を示している。従って、配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第552番以降のTAの反復配列は、10〜18のTAの反復配列を有するマイナーアリルのことがある。
従って、本明細書において、「第552番以降の遺伝子多型rs72258881」とは配列番号2で表される塩基配列の第552番以降のTAの反復配列を意味し、その反復の数は特に限定されるものではない。なお、現在の確認されているTAの反復数は、10〜18である。
【0033】
(経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ)
本発明のC型肝炎患者の経過予測用キットに含まれる経過予測用オリゴヌクレオチドプローブは、配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917のT又はGを含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる少なくとも10のヌクレオチドを含む、プローブである。又は、配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第552番以降の遺伝子多型rs72258881におけるTA繰り返し配列を含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる少なくとも30、より好ましくは40以上、更に好ましくは50以上のヌクレオチドを含むプローブである。
前記プローブは、前記遺伝子多型の分析方法において、プローブとして用いることができる。例えば、TaqMan法、DigiTag法、DigiTag2法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、DNAチップ若しくはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、モレキュラー・ビーコン法、RCA法、UCAN法、又はインベーダー法において用いることのできるプローブを含む。プローブの長さは、遺伝子多型rs8099917のG又はCを含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができるか、又は遺伝子多型rs72258881におけるTA繰り返し配列を含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは、5mer〜1000merであり、より好ましくは、5mer〜500merであり、最も好ましくは、10mer〜50merである。
【0034】
前記経過予測用オリゴヌクレオチドプローブは、用いる分析方法に応じて標識されてもよい。例えば、TaqMan法に用いるMGBプローブは、5’末端をレポーター色素(FAM)及びMGB(MGB(Minor Groove Binder)でラベルし、3’末端をクエンチャー色素(Eclipse Dark Quencher)で標識されているものを用いる。また、DigiTag2法に用いるcommon probeの3’末端に結合しているcommon tagを標識と考えることもできるように、標識に用いる化合物は、特に限定されるものではなく、プローブを標識する場合に用いられている、化合物を制限なく用いることができる。
また、前記経過予測用オリゴヌクレオチドプローブは、遺伝子多型rs8099917又は遺伝子多型rs72258881に結合する部分以外に、オリゴヌクレオチド配列を含むことができる。例えば、前記DigiTag2法に用いるcommon probeの3’末端に結合しているcommon tag、又は制限酵素サイトの配列を含むオリゴヌクレオチドなどを含むことができる。
【0035】
経過予測用オリゴヌクレオチドプローブは、DNA、RNA、DNAとRNAとのハイブリッドでもよい。
【0036】
(経過予測用プライマーセット)
前記経過予測用プライマーセットは、配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセットである。又は、前記経過予測用プライマーセットは、配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第第552番以降の遺伝子多型rs72258881を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセットである。
【0037】
前記経過予測用プライマーセットは、前記遺伝子多型の分析方法において、PCR増幅用のプライマーとして用いることができる。例えば、PCR−RELP法、TaqMan法、SnaPshot法、ASP−PCR法,PCR−SSO法、PCR−SSP法、PCR−SSCP)法、対立遺伝子特異的PCR、ARMS法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、変性/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)、STR(Short Tandem Repeat)法、SLP(Single Locus Probe)法、又はマイクロサテライト多型解析法におけるPCR用プライマーとして用いることができる。プライマーの長さは、特に限定されないが、好ましくは、15mer〜50merであり、より好ましくは、18mer〜35merであり、最も好ましくは、20mer〜30merである。
【0038】
前記経過予測用プライマーセットに用いるフォワードプライマー及びリバースプライマーは、用いる分析方法に応じて標識されてもよい。標識に用いる化合物は、特に限定されるものではなく、プライマーを標識する場合に通常用いられている化合物を用いることができる。
また、フォワードプライマー及びリバースプライマーは、遺伝子多型rs8099917、又は遺伝子多型rs72258881を増幅するために遺伝子に結合する部分以外のオリゴヌクレオチド配列を含むことができる。例えば、制限酵素サイトの配列を含むオリゴヌクレオチドなどを含むことができる。
【0039】
更に、前記フォワードプライマー又はリバースプライマーは、PCR以外にダイレクトシークエンス法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、SnaPshot法、RCA法、ミニシーケンシング、又はパイロシーケンシングにおけるプライマーとして用いることも可能であり、DNA、RNA、DNAとRNAとのハイブリッドでもよい。
【0040】
本発明のC型肝炎患者の経過予測用キットは、前記遺伝子多型の分析に用いるものことができるものである。すなわち、本発明の治療効果予測用キットは、例えば、ダイレクトシークエンス法、PCR−RELP法、TaqMan法、DigiTag法、DigiTag2法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、SnaPshot法、ASP−PCR法,PCR−SSO法、PCR−SSP法、PCR−SSCP)法、DNAチップ若しくはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、インベーダー法、MALDI−TOF/MS法、モレキュラー・ビーコン法、RCA法、UCAN法、対立遺伝子特異的PCR、ミニシーケンシング、パイロシーケンシング、ARMS法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、変性/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)用、STR(Short Tandem Repeat)法、SLP(Single Locus Probe)法、又はマイクロサテライト多型解析法のキットである。
【0041】
本発明のC型肝炎患者の経過予測用キットに含むことのできる説明書は、前記の遺伝子多型の分析方法の説明が記載されている。また、遺伝子多型rs8099917、又は遺伝子多型rs72258881を分析し、それぞれの遺伝子多型と、C型肝炎患者の経過(すなわち、自然治癒の経過、及び/又はC型肝炎患者に対する薬剤の治療効果)とが関連することが記載されていてもよい。
【0042】
3.C型肝炎患者の経過予測用マーカー
本発明の治療効果予測用マーカーは、遺伝子多型rs8099917のアレルであるT又はGを含む2つの対立遺伝子の二本鎖DNA、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルであるTAの繰り返し配列を含む2つの対立遺伝子の二本鎖DNAからなるものである。そして、(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、若しくは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型の前記[T/T]、[T/G]、及び[G/G]に対応するアレルの組み合わせ、並びに(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12](ここで、nはrs72258881の遺伝子多型を(TA)nで表した場合のTAの繰り返し数である)、若しくは遺伝子型多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型の[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]に対応するアレルの組み合わせ、を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測するC型肝炎患者の経過予測用マーカーである。
具体的な自然経過の予測は、表1に記載に従って行うことが可能であり、また薬剤の治療効果の予測は、表2又は表3の記載に従って行うことができる。
換言するならば、C型肝炎患者の経過予測用マーカーは、C型肝炎患者の遺伝子多型rs8099917を含む核酸、又は核酸断片、或いは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型のアレルの組み合わせを含む核酸、又は核酸断片;及びC型肝炎患者の遺伝子多型rs72258881を含む核酸、又は核酸断片、或いは遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型のアレルの組み合わせを含む核酸、又は核酸断片である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
《実施例1》
本実施例では、PEGインターフェロン−α及びバビリンの併用投与の治療を行った48名のC型肝炎患者について、治療効果の判定、rs8099917のSNPタイピング、及び遺伝子型多型rs72258881のSNPタイピングを行った。
rs8099917のSNPタイピングは、インベーダー法によって行った。フォワードプライマーInvaderF:5’−TCATCCCTCATCCCACTTCTGGAACA−3’(配列番号6)、及びInvaderR:5’−CGGGCCATCTGTTTCCTGCTG−3’(配列番号7)を用いてPCRを行った。メジャーアレル「T」を検出するProbe1:5’−atgacgtggcagacAATTGCTCACAGAAAGGAA−3’(配列番号3)、又はマイナーアレル「G」を検出するProbe2:5’−cgcgccgaggCATTGCTCACAGAAAGGA−3’(配列番号4)を挙げることができ、インベーダープローブとして、Invader:5’−GCTACCAAACTGTATACAGCATGGTTCCAATTTGGGTGAt−3’(配列番号5)を用い、メーカーのプロトコールに従ってインベーダー法によりSNPを解析した。
rs72258881のSNPタイピングは、マイクロサテライト多型解析法の手法を用いた。蛍光標識したフォワードプライマー5’−tgaacccaggaggcggaggttgcagttagc−3’(配列番号8)、及びリバースプライマー5’−gtgctgagattacaggcctgagccaccac−3’(配列番号9)を用い、PCRによって、rs72258881のTA反復配列を含む領域を増幅した。得られたDNA断片を、キャピラリーDNAシークエンサーで解析し、TA反復配列の数を解析した。
rs8099917を、[T/T]、並びに[T/G]又は[G/G]に分類し、rs72258881を、[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]並びに[n≦12/n≦12]に分類した場合の、4つの群におけるVRとNVRの頻度を表した結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4に示すように、調べたC型肝炎患者において、rs8099917が[T/T]、及びrs72258881が[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]はいなかった。このようなアレルの組み合わせを示すC型肝炎患者は、自然治癒する可能性が高いからであると考えられる。
rs8099917が[T/T]、及びrs72258881が[n≦12/n≦12]の患者群では、22/26(84.6%)がVRであり、4/26(15.3%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が高いと予測することができる。
また、rs8099917が[T/G]又は[G/G]、及びrs72258881が[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]の患者群では、3/3(100%)がVRであり、0/3(0%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が高いと予測することができる。
一方、rs8099917が[T/G]又は[G/G]、及びrs72258881が[n≦12/n≦12]の患者群では、3/19(15.7%)がVRであり、16/19(84.2%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が低いと予測することができる。
【0047】
また、rs8099917を、[T/T]、並びに[T/G]又は[G/G]に分類し、rs72258881を、[n≧12/n≧12]並びに[n≦11/n≧12]又は[n≦11/n≦11]に分類した場合の、4つの群におけるVRとNVRの頻度を表した結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
rs8099917が[T/T]、及びrs72258881が[n≧12/n≧12]の患者群では、21/25(84.0%)がVRであり、4/25(16.0%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が高いと予測することができる。
rs8099917が[T/T]、及びrs72258881が[n≦11/n≧12]又は[n≦11/n≦11]の患者群では、0/0(0%)がVRであり、1/1(100%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が低いと予測することができる。
また、rs8099917が[T/G]又は[G/G]、及びrs72258881が[n≧12/n≧12]の患者群では、6/18(33.3%)がVRであり、12/18(66.6%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が低いと予測することができる。
rs8099917が[T/G]又は[G/G]、及びrs72258881が[n≦11/n≧12]又は[n≦11/n≦11]の患者群では、0/4(0%)がVRであり、4/4(100%)がNVRであった。すなわちこの群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が低いと予測することができる。
【0050】
《実施例2》
本実施例では、rs8099917が[T/G]且つs72258881が[n≦12/n≧13]のC型肝炎患者の薬剤の治療効果について検討した。rs8099917が[T/G]のC型肝炎患者34例について、rs72258881のSNPタイピングを行った。実施例1と同様に、rs8099917のSNPタイピングはMGBプローブを用いたTaqMan法を用い、そしてrs72258881のSNPタイピングはマイクロサテライト多型解析法を用いて行った。
【0051】
【表6】

【0052】
表6に示したように、rs8099917が[T/G]、及びrs72258881が[n≦12/n≧13]の患者群では、8/9(88.9%)がVRであり、この群では、薬剤の治療に対して感受性(有効性)が高いと予測することができる。
【0053】
《実施例3》
本実施例では、自然治癒したC型肝炎患者のrs8099917及びrs72258881のアレルを検討した。自然治癒の経過をたどった100例のC型肝炎患者について、rs8099917のSNPタイピングを、MGBプローブを用いたTaqMan法により行い、rs72258881のSNPタイピングをマイクロサテライト多型解析法により行った。結果を表7に示す。
【0054】
【表7】

【0055】
rs8099917が[T/T]、及びrs72258881が[n≦12/n≧13]又は[n≧13/n≧13]の患者群では、34名が自然治癒している。C型肝炎が持続感染している患者群に、これらのアレルの組み合わせを示す患者がほとんどないことを考慮すると、rs8099917が[T/T]、及びrs72258881が[n≦12/n≧13]又は[n≧13/n≧13]の患者は、ほとんどが自然治癒するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のC型肝炎患者の経過予測方法、C型肝炎患者の経過予測用キット、及びC型肝炎患者の経過予測用マーカーによれば、C型肝炎患者の自然治癒の予測をすることができる。また、本発明によれば、PEG化インターフェロン−α及びリバビリンに代表される薬剤の治療効果の予測を行うことができる。C型肝炎患者の薬剤に対する治療効果を予測することによって、治療費の抑制が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎患者の経過を予測する方法であって、
(1)C型肝炎患者由来の核酸試料の(a)遺伝子多型rs8099917又は前記遺伝子多型rs8099917遺と連鎖不平衡にある遺伝子多型、及び(b)遺伝子型多型rs72258881又は前記遺伝子多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型を分析する行程、並びに
(2)(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、若しくは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型の前記[T/T]、[T/G]、及び[G/G]に対応するアレルの組み合わせ、並びに(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12](ここで、nはrs72258881の遺伝子多型を(TA)nで表した場合のTAの繰り返し数である)、若しくは遺伝子型多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型の[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]に対応するアレルの組み合わせ、を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測する工程、
を含むことを特徴とする、C型肝炎患者の経過予測方法。
【請求項2】
遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、
(A)[T/T]、並びに[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]の組み合わせである場合に、自然治癒の可能性が高いと予測し、
(B)[T/T]、並びに[[n≦12/n≦12]]の組み合わせである場合に、持続感染の可能性が高いと予測し、
(C)[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、又は[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、持続感染の可能性が高いと予測する、
請求項1に記載のC型肝炎患者の経過予測方法。
【請求項3】
遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせ、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせが、
(A)[T/T]、並びに[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、又は[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測し、
(B)[T/G]又は[G/G]、並びに[n≧13/n≧13]又は[n≦12/n≧13]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が高いと予測し、
(C)[T/G]又は[G/G]、並びに[n≦12/n≦12]の組み合わせである場合に、薬剤の感受性(有効性)が低いと予測する、
請求項1に記載のC型肝炎患者の経過予測方法。
【請求項4】
前記遺伝子多型の分析が、ダイレクトシークエンス法、PCR−RELP法、TaqMan法、DigiTag法、DigiTag2法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、SnaPshot法、ASP−PCR法,PCR−SSO法、PCR−SSP法、PCR−SSCP)法、DNAチップ若しくはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、インベーダー法、MALDI−TOF/MS法、モレキュラー・ビーコン法、RCA法、UCAN法、対立遺伝子特異的PCR、ミニシーケンシング、パイロシーケンシング、ARMS法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)分析、又は変性/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)及びマイクロサテライト多型解析法からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のC型肝炎患者の経過予測方法。
【請求項5】
前記薬剤が、インターフェロン−α、PEG化インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−λ、リバビリン、プロテアーゼ阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、NS5A阻害剤、Debio025、NIM811、SCY−635、ニタゾキサニド、セルゴシビル、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のC型肝炎患者の経過予測方法。
【請求項6】
(1)配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917のT又はGを含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる、C型肝炎患者の経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ及び/又は配列番号1で表されるオリゴヌクレオチドの第551番の遺伝子多型rs8099917を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセット、並びに
(2)配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第552番以降の遺伝子多型rs72258881におけるTA繰り返し配列を含むオリゴヌクレオチド又はその相補鎖に結合することができる、C型肝炎患者の経過予測用オリゴヌクレオチドプローブ及び/又は配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドの第第552番以降の遺伝子多型rs72258881を含む二本鎖DNA断片を増幅することのできる、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるC型肝炎患者の経過予測用プライマーセット、
を含むC型肝炎患者の経過予測用キット。
【請求項7】
遺伝子多型rs8099917及び遺伝子多型rs72258881を分析し、そしてそのアレルの組み合わせを分類することが記載された説明書を更に含む、請求項6に記載のC型肝炎患者の経過予測用キット。
【請求項8】
遺伝子多型rs8099917のアレルであるT又はGを含む2つの対立遺伝子の二本鎖DNA、及び遺伝子型多型rs72258881のアレルであるTAの繰り返し配列を含む2つの対立遺伝子の二本鎖DNA
からなり、
(a)遺伝子多型rs8099917のアレルの組み合わせである[T/T]、[T/G]、及び[G/G]、若しくは遺伝子多型rs8099917と連鎖不平衡にある遺伝子多型の前記[T/T]、[T/G]、及び[G/G]に対応するアレルの組み合わせ、並びに(b)遺伝子型多型rs72258881のアレルの組み合わせである[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12](ここで、nはrs72258881の遺伝子多型を(TA)nで表した場合のTAの繰り返し数である)、若しくは遺伝子型多型rs72258881と連鎖不平衡にある遺伝子多型の[n≧13/n≧13]、[n≦12/n≧13]、及び[n≦12/n≦12]に対応するアレルの組み合わせ、を分類し自然経過又は薬剤の治療効果を予測する、
C型肝炎患者の経過予測用マーカー。

【公開番号】特開2013−70660(P2013−70660A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211647(P2011−211647)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(510192802)独立行政法人国立国際医療研究センター (8)
【Fターム(参考)】