説明

C型肝炎治療用組成物

本発明は、南瓜子、紅花、オオバコ及びスイカズラからなる組成物を投与することで、C型慢性肝炎患者の自覚症状、例えば全身倦怠感及び腹部膨満感などが消失するだけでなく、及び医師の診断による他覚症状、例えば肝腫大及び手掌紅斑なども軽減または消失させることができる。また、本発明組成物投与1ヶ月後乃至3ヶ月後と徐々にC型肝炎ウイルスRNA量の有意な減少が認められた。従って、本発明に係る組成物は、少なくとも、C型慢性肝炎治療用組成物として有用である。特に、C型慢性肝炎患者のうちC型慢性肝炎ウイルスRNA量が高値の患者に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、C型肝炎治療用組成物に関する。より具体的には、C型慢性肝炎ウイルスRNA量減少用組成物、C型慢性肝炎の症状改善または軽減用組成物、C型慢性肝炎における肝硬変進展抑制用組成物並びにそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
C型肝炎の原因はC型肝炎ウイルス(HCV RNAウイルス)であり、例えば血液などの体液を介して感染する。
C型肝炎ウイルス(HCV)は、その遺伝子型からいくつかのサブタイプに分類される。HCV株を大きくタイプ1からタイプ6に分類し、またサブタイプとしてa、b、及びc等を併記し、1a、1b、2a、2b、3a、及び3b等と命名する分類法が用いている(例えば、加藤宣之編・著:C型肝炎ウイルス、株式会社アイピーシー、東京、2000、168頁)。
HCVに感染すると60%の人が1〜2ヶ月の潜伏期を経過して急性肝炎を起こすが、C型肝炎では肝障害や症状が軽いものが多く、急性肝炎の時期がはっきりしないこともある。C型急性肝炎は高率に(60〜70%)慢性肝炎へと進む。当該慢性肝炎ではAST[aspartate aminotransferase(GOT;glutamate oxaloacetate transaminase、ともいう)]、ALT[alanine aminotransferase(GPT;glutamate pyruvate transaminase、ともいう)]は異常値を示し、2〜3年で当該数値がいったん正常値域に近くなるか、正常値域に戻る。この状態が、数年から十年続くので、HCV感染から10年以上経ってから、C型慢性肝炎と診断されることもある。20〜30年の期間に肝細胞の慢性的な壊死・炎症反応を繰り返すうちに肝炎から肝硬変に、さらに10年で肝細胞癌へと進展するといわれている(例えば、熊谷直樹:C型肝炎、「毎日ライフ」2002年9月号第23頁参照、読売新聞社、2002年発行)。
C型慢性肝炎患者のうち、自覚症状が認められるのは活動期のみである。症状としては、全身倦怠感、易疲労感、食思不振、悪心あるいは嘔吐などがある。さらに進行した肝硬変の患者になると、自覚症状をともなう患者の割合は約80%に上昇し、腹部膨満感や皮膚掻痒感などの症状が付け加わってくる。腹痛や吐血あるいは下血などの症状も見られる。他覚症状は肝腫大が最も一般的であり、頻度は約6割といわれ、そのほか肝左葉腫大、脾腫、浮腫、腹水、手掌紅斑、あるいは黄疸などが現れてくる(例えば、加藤宣之編・著:C型肝炎ウイルス、株式会社アイピーシー、東京、2000、189頁)。
C型肝炎の一般的治療方針は、肝機能を正常化して肝炎を鎮静化させて病気の進行を抑えることである。ウイルスが体内にいても肝炎を抑えれば病気の進行を抑えられるという考えに基づいて、肝炎の症状を改善、低減する目的で、ウルソデオキシコール酸(熊胆含有成分)、小柴胡湯(柴胡、黄ゴン、半夏、(乾)生薑、人参、大棗、甘草の7種の生薬を煎出して調製される漢方処方)、甘草含有成分のグリチルリチン酸を主体とする製剤[強力ネオミノファーゲンC(SNMC)](商品名)を投与する療法も広く行われている。
しかし、何よりも病気の進行を食い止める為に体内からHCVを排除することを目的とした「インターフェロン(IFN)療法」の開発が精力的に行われてきた。抗ウイルス剤と使用されるIFNにはαとβがあり、nIFNα(天然型インターフェロンα)、recombinantIFNα(遺伝子組換え型インターフェロンα)、nIFNβ(天然型インターフェロンβ)とconsensusIFNα[コンセンサスインターフェロンα:インターフェロンアルファコン−1(遺伝子組換え)]が使用されている。これらIFNの使用によりウィルスを完全に除去した著効例、一般肝機能が改善された有効例も報告されており、さらにIFNの使用により肝癌の発ガン率が低下する進展抑制効果も認められている。
HCVに対する抗ウイルス作用を示すIFN以外の物質としては、ラクトフェリンが挙げられる。ラクトフェリンは、1本のポリペプチド鎖にガラクトースやマンノースなどからなる糖鎖が結合した分子量約80,000の糖蛋白質で鉄結合性のトランスファミリーに属する。ラクトフェリンの作用機序は細胞外に存在するウイルスを中和し、感染できなくすると考えられている。
一方、南瓜子、オオバコ、またはスイカズラの1種以上を飼料に添加することにより、寄生虫、細菌及びウイルス病の特に自然感染を防ぎ、生体防御力の強化と共に肉質、卵質を改善する旨が開示されている。さらには、南瓜子、オオバコ、スイカズラ、紅花の4種の生薬を配合した飼料について採卵鶏の健康状態、生存率、卵質の向上、抗ロイコチトゾーン病効果、ウズラの抗ニューカッスル病効果、腸内コクシジウム、ブドウ球菌数抑制効果が開示されている(例えば、米国特許5,882,672号参照)。
ニホンカボチャ等のウリ科植物からインターフェロン誘起剤の製造方法が開示されている(例えば、米国特許4,421,746号参照)。西洋南瓜(スーダン薬用植物)のメタノール抽出物がHCVプロテアーゼ阻害効果を示し、その阻害活性は47.4±0.0%であったことが報告されているが、該文献にはin vivoにおいてC型肝炎ウイルスを低下させるということについては開示も示唆もされていない(Phytochemistry Research(2000)14,510−516)。また、オオバコ(Plantago major L.)がC型肝炎かどうかは不明であるが、肝炎ウィルスの治療に使われているとの報告例もあるが、実際に効果があるかどうかについては開示も示唆もない(American Journal of Chinese Medicine,(1990)Vol.XVIII,Nos.1−2,PP.35−43)。紅花から抽出したインターフェロン誘起剤の抗ウイルス活性及び抗腫瘍活性が開示されている(例えば、米国特許4,456,597号参照)。また、金銀花、あるいは車前子等からインターフェロン誘起剤が抽出され、ヒト及び動物のウイルス感染症の予防及び治療に有用であることが開示されている(例えば、米国特許4,469,685号参照)。南瓜子と紅花の2種の生薬を配合することからなるマクロファージ活性化剤が開示されている(例えば、特開平11−116498号参照)。南瓜子、紅花、オオバコ及びスイカズラの4種の生薬を配合することからなる好中球活性化剤が開示されている(例えば、特開2000−281584参照)。しかしながら、これらの文献には、本発明の有効成分である各生薬についてインターフェロン誘起作用、マクロファージ活性化作用、好中球活性化作用、あるいは、IgE抗体産生抑制作用などが開示されているが、抗C型肝炎ウイルス活性については何ら開示も示唆もされていない。
C型慢性肝炎のうち、特にタイプ1bでC型肝炎患者の血液中のウイルス量が高い(一般的には100KIU/ml以上を指す)場合は「難治性C型慢性肝炎」と呼ばれ、これらの症例に対する治療法の更なる開発が望まれている(例えば、熊谷直樹:C型肝炎、毎日ライフ9月号、読売新聞社、東京、2002)。なお、最近発売された最も根治率の高いとされているインターフェロンアルファコン−1でも、ウイルス量が、850KIU/ml以下にならないと、根治は望めないとされており、またウイルス量が低ければ低いほどインターフェロン療法の治療効果が良いことが分かっている(厚生省「非A非B型肝炎研究班」1995年報告、別冊医学のあゆみ「肝障害の発症・進展機序をさぐる」1999年2月5日発行、医歯薬出版株式会社発行、肝胆膵43,(2),pp.281−288,2001参照)。したがって、インターフェロン療法の導入前においては、出来るだけウイルス量が出来るだけ低い状態であることが望ましいとされている。
【発明の開示】
本発明は、従来のC型肝炎治療法と併用可能で、かつ、これらと併用することにより、従来では治療困難とされてきたC型慢性肝炎の治療に有用な生薬を利用したものであって、南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラを有効成分とするC型慢性肝炎治療用組成物を提供することにある。より具体的には、C型慢性肝炎の症状進行抑制または症状改善用組成物、並びにこれらの組成物の調製方法を提供することにある。
本発明者等は、植物性生薬につき鋭意検討した結果、C型慢性肝炎患者、特に血液中C型慢性肝炎ウィルスRNA量が高値を示す患者に南瓜子、紅花、オオバコ及びスイカズラからなる組成物を投与した結果、驚くべきことに患者の自覚症状、代表的には全身倦怠感または腹部膨満感を改善すること、及び医師の診断による他覚症状、代表的には肝腫大又は手掌紅斑を改善することを確認し、本発明組成物投与1ヶ月後、3ヶ月後と徐々にC型肝炎ウイルスRNA量減少していることを見出した。
即ち、本発明の態様は、
・南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラからなるC型慢性肝炎ウイルスRNA量減少用組成物、
・南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラからなるC型慢性肝炎の症状改善あるいは軽減用組成物、及び
・南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラを有効成分とするC型慢性肝炎における肝硬変進展抑制療用組成物に関する。
また、上記C型慢性肝炎ウイルスRNA量減少用組成物、C型慢性肝炎症状改善または軽減用組成物、及びC型慢性肝炎における肝硬変進展抑制用組成物の調製方法に関する。
さらに、本発明は、従来の治療薬、好ましくはnIFNα、recombinantIFNα、consensusIFNα、peginterferon(PEG−IFN)、IFNβ、IFN/ribavirin等との併用により、ウイルス量が500KIU/MI以上の高い値を示す患者における、インターフェロンによるC型慢性肝炎の根治を可能とする佐薬的な効力を示す組成物、換言すれば、C型慢性肝炎治療共力剤組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例2における各検査時のHCV−RNA量(KIU/ml)の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明において使用される生薬について説明する。
南瓜子は、ウリ科の植物南瓜(和名:ニホンカボチャCucurbita moschata Duch.)の種子であるが、本発明においては、南瓜子と同じ性質の作用効果を示す種子であれば、その類縁植物の種子をも包含するものである。南瓜子は、生のまま使用してもよいが、乾燥品の方が医薬、健康食品として保存上好ましく、また、種皮のみを用いてもよい。成分としてククルビチン、タンパク質、ビタミンA、B、B,Cを含み、またカロチン等も含まれている。
紅花(Carthamus tinctorius L.)は、キク科植物の管状花を乾燥したものである。成分としてはカルサミン、サフラーイエロー、リグナン、ステロールを含む。
オオバコ(Plantago asiatica L.)は、オオバコ科の植物で、成熟した種子(車前子)または全草(車前)が用いられる。成分としては多糖類、Plantenolic acid、コハク酸、アデニン、Aucubin、PlantagininやビタミンA、B等を含む。
スイカズラ(Lonicera japonica THUNB.)は、スイカズラ科の花若しくは蕾(金銀花)、葉、茎あるいは全草(忍冬)のいずれもが使用可能である。成分としては蝋様物質、イノシトール、タンニン、サポニン、ロニセリン等を含む。
本発明では、これらの生薬を原末あるいは水または有機溶媒抽出エキスとして用いることができる。即ち、原末、溶媒製剤、粉剤、成型剤、浸出剤等として用いる。
有機溶媒としてはエタノール、アセトン等が用いられ、これらは水あるいは2種以上の有機溶媒と混合して用いてもよい。抽出は生薬に対し数倍量の溶媒を加え常温乃至加温下に抽出あるいは浸出を行う。各生薬単独で抽出したエキスを配合してもよく、あるいは、予め複数の生薬の原末を配合したものを抽出してエキスを得てもよい。また、生薬を原末として使用するときは、その生鮮、陰干し、あるいは乾燥したものを用い細断あるいは粉末として用いる。
上記生薬の原末あるいは水または有機溶媒抽出エキスは、そのまままたは公知の方法で各種の形態に調製して、医薬用組成物、健康食品、あるいは機能性食品(サプリメント)として利用できる。
例えば、医薬用組成物あるいは機能性食品(サプリメント)は、通常の製剤化方法により経口用の錠剤、散剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、シロップ剤として提供される。製剤化の為に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、緩衝剤、矯味剤、安定剤等を必要に応じて添加することもできる。少なくとも1つの不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合される。組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム、スターチ、タルクのような潤滑剤や繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤または丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、寒天、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの糖衣または胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
また、本発明の有効成分である生薬の活性に悪影響を与えない範囲内であれば、水溶性ビタミン(カフェイン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビオチン、カルニチン、パントテン酸、及びニコチン酸とその誘導体など)、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンEとその誘導体など)、アミノ酸(タウリン、アルギニンなどの)、東洋ハーブ(紫蘇、甘草、イチョウ、蒲公英、菊花、人参、桂皮など)、あるいは西洋ハーブ(ノコギリヤシ、セイヨウオトギリソウ、エキナシア、アニシード、アニュアルカモミル(カミツレ)、ローズマリー、ミント、ユーカリプタス、ラベンダー、ローズ(バラ)、ハイビスカス、アロエなど)を配合することもできる。さらに、使用方法などとの関係によっては、その他の有効成分として、ラクツロースなどのオリゴ糖等または市販の乳酸菌(ビフィズス菌)等を配合することもできる。
経口投与の為の液体組成物は、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
また、健康食品としては、飲料、あるいはゼリー、ビスケット、クッキー、キャンディー等菓子の形態で提供することができる。
本発明に係る組成物は、南瓜子及び紅花、さらにオオバコ、スイカズラあるいは紫蘇の生薬を有効成分として含有するが、特に南瓜子は20〜60質量%、紅花は10〜40質量%、その他の生薬については各々5〜70質量%の範囲で含むのが好ましい。
本発明有効成分の投与法は、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、成人60kg体重1日当たり生薬総量として0.5〜5g、好ましくは1〜3gを、経口投与する。健康食品、サプリメントなどの場合にもこれに準じればよい。
本発明におけるC型慢性肝炎治療共力剤組成物とは、先にあげたC型肝炎の一般的治療方針の中で使用されるインターフェロンやウルソデオキシコール酸などの薬物と併用することにより相加的又は相乗的な効果を示すものである。本発明組成物と上記他の一般的C型肝炎治療薬との併用におけるそれぞれの投与の順序は、特に制限なく、同時に併用してもよく、また、本発明組成物を服用数ヵ月後に上記他の一般的C型肝炎治療薬のによる治療を開始してもよく、逆に上記他の一般的C型肝炎治療薬による治療を数ヵ月後に行った後、維持療法的に本発明組成物を服用することも出来る。
また、本発明は、ヒトのC型肝炎ウイルス性疾患の症状改善・軽減用だけでなく、犬あるいは猫等のコンパニオン動物の肝炎ウイルスに対する治療薬、症状改善・軽減用健康食品としても応用できる。
【実施例】
以下に実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例1】
(1)C型慢性肝炎患者のC型肝炎ウイルスRNA量測定試験
通院中の試験開始時にRNA量が高値であったC型慢性肝炎患者26名(男性13名、女性13名。28〜80(平均59.0)歳を対象とした。本発明組成物の1つである商品インターパンチ(登録商標;(株)サンウエル製)を、1日2包(1.5g/包)を3ヶ月間投与した。投与前、1ヶ月及び3ヶ月後の来院時に自覚症状、他覚症状、一般生化学所見及びHCV−RNA量も測定した。
(2)試験結果
自覚症状として全身倦怠感のあった6例中4例、また腹部膨満感のあった1例中1例の症状が投与1ヶ月後でなくなった。他覚症状として肝腫大のあった13例中2例が、また手掌紅斑があった6例中1例の症状が投与1ヶ月後になくなった。加えて自覚症状及び他覚症状が試験開始前より悪化していた患者はいなかった。一般臨床検査(血液学的検査(白血球数、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、血小板数、白血球像)、血液生化学的検査(総蛋白、アルブミン、A/G、総ビリルビン、AST、ALT、ZTT、LDH、アルカリフォスファターゼ、γ−GTP、総コレステロール、TG、尿素窒素、クレアチニン、Na、K、Cl))では悪化した傾向は認められなかった(例えば、日本肝臓学会監修:慢性肝炎診療マニュアル、医学書院、東京、2001、ISBN:426011977X)。投与前のRNA量を500−849 KIU/ml及び850KIU/ml以上で層別に検討したところ、850KIU/ml以上の患者(13例)の平均値1447.7KIU/mlが投与1ヶ月後及び3ヶ月後においてそれぞれ993.6KIU/ml及び961.8KIU/mlと有意な減少(p=0.032及びP=0.015)を認めた。500−849KIU/mlの患者(13例)の平均値649.4KIU/mlは、投与3ヶ月後には527.5KIU/mlと減少し、減少傾向(P=0.108)が認められた。
(3)結果についての考察
全身倦怠感がなくなることは生活活力の回復につながり、腹部膨満感も常に腹部の違和感を感じていることがなくなることで生理的あるいは精神的な圧迫感が消失するなど、C型慢性肝炎患者に対するQuality of Life(以下QOLと称する。)の向上に寄与する。C型慢性肝炎患者における肝腫大は、医師はC型慢性肝炎の他覚症状を判断するに際して、最も多く観察できるとして注目している項目であり(C型慢性肝炎の臨床と経過、Medicina,30(3),pp.474−477,1993参照)、上記の2例の症例で認められた肝腫大の消失は、C型慢性肝炎治療においては非常に意義のあるものである。
さらに本発明組成物には、HCV−RNA量を減少させる可能性が認められた。上記の症例においては、特に副作用は認められず、本願発明に係る組成物は、少なくとも、C型慢性肝炎患者へのインターフェロン療法の導入前に服用することでインターフェロンの治療効果を高めるのに有用であり、またC型慢性肝炎治療の際の共力剤組成物として有用であることが示唆された。
【実施例2】
(1)被験者
実施例1で行った26名を含むC型慢性肝炎の通院患者50例(男性26例、女性24例、年齢28〜80歳、59.0±10.6歳、(平均±SD))を総登録症例として、オープンラベル試験を実施した。組入基準は担当医師が選定し、本人の承諾が得られた患者とした。HCVのセロタイプはグループ1が40例、グループ2が9例、判定不能が1例であった。IFN治療歴を有する患者は24例であった。
本試験では服用状況不良4例、データ欠測4例、服用前6ヶ月以内のIFN投与3例、自己判断による服用中止2例、服用中IFN投与開始1例、投与前より肝腫瘍の合併を認めており試験対象として不適切である判断された1例の計15例を除外し、35例(男性17例、女性18例、年齢28〜80歳、60.5±10.4歳、(平均±SD))を有効解析対象とした。有効性解析対象でのセロタイプはグループ1が27例、グループ2が7例、判定不能が1例であり、試験開始前のIFN治療歴がある患者は15例であった。
服用期間中に肝臓用の併用薬を使用した患者は22例であった。試験開始前から13例でウルソデオキシコール酸を使用していたが、服用期間中に新たに5例に投与された。グリチルリチン製剤はウルソ投与と併用で2例に、カンテック錠(商品名)とプロヘパール錠(商品名)と併用で1例使用された。タウリン散(商品名)はウルソデオキシコール酸投与と併用で1例で使用された。残る3例はアミノレバン(商品名)、小柴胡湯、あるいはプロヘパール錠の単独投与例がそれぞれ1例ずつであった。
(2)被験物質
被験物質としては、実施例1と同じインターパンチ(株式会社サンウエル製、東京、日本)を使用した。このインターパンチを各被験者に対して1日量2包1.5g(4種類の植物の乾燥原末で合計1g分のエキスを含む)を服用するように処方した。
(3)検査項目
自覚症状として悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満感、吐血・下血、皮膚掻痒感及び全身倦怠感の6項目、他覚症状は肝腫大、浮腫、腹水、手掌紅斑及び黄疸の5項目を評価した。自覚症状と他覚症状は、患者が来院時に担当医師が聞き取りまたは触診などにより確認しカルテに記録した。血液検査項目は、白血球数、赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値、血小板数及び白血球百分比、生化学検査項目は、AST、ALT、ALP、γ−GTP、ZTT、LDH、UN、クレアチニン、Na、K、Cl、総ビリルビン、総蛋白、アルブミン、総コレステロール及びTG、尿検査項目は蛋白、糖及び潜血とした。また、HCV−RNA量をアンプリコア法にて定量した。通常の測定上限は850KIU/mlであるが、それ以上の値の場合には希釈法で再測定を実施した。以上の検査項目を服用前、服用1ヶ月後及び服用3ヶ月後に測定した。
(4)統計学的手法
血液検査、生化学検査、HCV−RNA定量及びHCV抗体価の推移についてはStudent’s t−testを用いた。併用薬の影響に関してはχ検定で判定した。
(5)結果の考察
(i)自覚症状及び他覚症状
本試験では、服用前に自覚症状として全身倦怠感を6例が自覚していたが、服用1ヶ月後には4例(66.7%)、3ヶ月後にも4例の改善を認めた。腹部膨満感は2例が自覚していたが服用1ヶ月後に1例(50%)、3ヶ月後には2例(100%)とも改善を認めた。悪心・嘔吐は2例が自覚していたが、服用3ヶ月後に1例(50%)の改善を認めた。
他覚症状に関しては、試験開始前の時点で、肝腫大が医師による触診で16例に認められていたが、服用1ヶ月後に1例(6.3%)、3ヶ月後に2例(12.5%)で改善が認められた。その他の症状については改善は認められなかったが、服用前に有していた自覚症状及び他覚症状が服用後に悪化した患者は認められなかった。これらの結果は、以下の表1に、まとめて示す。
(ii)血液学的検査・生化学検査・尿検査
血液学的検査項目では、変動は認められなかった。白血球百分比でも、服用による影響は認められなかった。血液学的検査の結果は、以下の表2に示す。
生化学検査では、ZTTが服用前17.5±7.6IU/Lであったが、服用3ヶ月後に18.4±7.8IU/Lと有意な増加が認められた(p<0.05)。Naは服用前141.5±2.2mEq/Lであったが、服用1ヶ月後では、142.7±20mEq/Lと有意な増加が認められたが(p<0.01)、服用3ヶ月後には服用前と差がなくなった(141.1±2.2mEq/L)。その他の肝機能、腎機能などの生化学検査項目に変動はなかった。この結果は、以下の表3に示す。
尿検査項目では、特に変動はなかった。
(iii)HCV−RNA定量及びHCV抗体価
HCV−RNA定量は、35例全例を対象に服用前、服用1ヶ月後及び3ヶ月後に測定したが、測定時期間で比較した場合、平均±SDはそれぞれ734.4±716.1KIU/ml、605.1±471.1KIU/ml、578.7±437.9KIU/mlであり、服用により経時的な減少は認められたが、その減少の割合には、統計学的有意差は認められなかった。しかし、ウイルス量を100KIU/ml未満、100−499KIU/ml、500−849KIU/ml及び850KIU/ml以上の4つに層別解析をしたところ、図1に示すように850KIU/ml以上の群(n=12)で服用後1ヶ月及び3ヶ月で有意な減少が認められた(それぞれP=0.044及びP=0.024)。また、500−849KIU/ml群の患者(n=9)でも、服用3ヶ月後に有意な減少が認められた(P=0.021)。さらに、服用前ウイルス量1.4KIU/mlであった一症例では、服用1ヶ月以降、ウイルスは検出感度以下となった。
HCV抗体価は25例の平均値で統計解析をしたが、服用前、服用1ヶ月後及び3ヶ月後はそれぞれ66.44±7.78HCV−Ab Index、67.17±7.00HCV−Ab Index及び66.83±8.23HCV−Ab Indexで変動はなく、上記のウイルス量により層別解析をかけても有意な変動は認められなかった。
また、HCV−RNA量の減少とAST、ALTの変動との間に有意な相関性は認められなかった。さらに、ウルソを含む薬剤の併用の有無とHCV−RNA量の増減についても有意差は認められなかった。自覚あるいは他覚症状の改善例とウイルス量との間にも一定の傾向は認められなかった。
(iv)有害事象
71歳女性に服用1ヶ月目に軽度の下痢を認めたが、服用を中断することなく、下痢は消失した。60歳男性は服用3ヶ月目に腹部膨満感が認められたが、軽度であった。その他には、有害事象は認められなかった。
(v)結果の考察
本試験で特筆すべき変化は、ウイルス量を100KIU/ml未満、100−499KIU/ml、500−849KIU/ml及び850KIU/ml以上の4つに層別解析したところ、850KIU/ml以上の患者では、服用後1ヶ月及び3ヶ月で有意な減少が認められ(p<0.05)、500−849KIU/mlの患者でも、服用3ヶ月後に有意な減少が認められたことである(p<0.05)。
また、今回は500KIU/ml以下の低ウイルス量患者群において優位な低下は認められなかったものの、自然治癒する確率が極めてまれであるC型慢性肝炎において(C型慢性肝炎の臨床と経過、Medicina,30(3),pp.474−477,1993参照)、一例でも本発明組成物の服用によりウイルスが検出感度以下になったということは驚くべきことであり、これは低ウイルス量の患者においても効果があることを示している。
今回の検討ではHCV−RNA量が減少した例においてもAST、ALTの低下は明らかでなく、ウイルス量の減少と肝機能指標との相関は確認できなかった。肝疾患の予後はAST、ALTの低下が重要とする報告14があるが、ウイルスの減少による臨床的有用性は現時点では明らかではない。しかし、IFNの著効率がウイルス量に依存することから、本願発明に係る組成物を、インターフェロンを含む他薬剤と併せて治療することにより、C型慢性肝炎の治療に際して有効であることが示唆された。
自覚症状においては症例数は少ないものの、服用3ヶ月後に全身倦怠感が6例中4例の患者で改善を認め、腹部膨満感は2例中2例、悪心・嘔吐は2例中1例で改善した。また他覚症状において触診によるものでは肝腫大は16例認められたが、服用3ヶ月後に2例で認められなくなった。服用前に有していた自覚症状及び他覚症状が服用後に悪化していた患者は認められなかった。全身倦怠感が回復した患者が認められたことは、QOLの向上に寄与したと考えられる。
本試験では有害事象は2例で観察され、1例は服用1ヶ月目に軽度の下痢が観察された。しかし、服用継続下に下痢症状は回復し、一時的な反応であった。本試験で使用した健康食品にはビフィズス菌も配合されており、それによる影響も考えられる。もう1例の60歳男性は服用3ヶ月目に腹部膨満感が認められたが、軽度であった。その他の患者には有害事象は認められず、さらに有効性解析除外例を含めた50例とも、本発明組成物の服用による重篤な有害事象はなかったことが確認できた。
また、C型肝炎に広く用いられるIFNでは、インフルエンザ様の発熱、関節痛、筋肉痛などの症状のほかに、脱毛、うつ症状、目の異常、食欲低下、体重減少などの副作用が観察されるが、今回の本発明組成物の服用から重篤な有害事象がないC型肝炎治療剤として期待される。
血液・生化学検査ではZTTが3ヶ月後に有意な増加をしていた。ZTT値は免疫グロブリン(IgG)を反映し、慢性肝疾患の経過観察における間葉系の反応の指標となるが、肝細胞の障害を直接示すものではない。一方、肝障害の指標であるAST、ALTは増加しておらず、HCV抗体も変動なく、アルブミンなど蛋白分画も変化は明らかでなかった。これらの所見から総合的に判断するとZTTの増加に関しては患者の自己免疫性現象や肝硬変など何らかの重篤な変化を示唆するものではないと考えられた。また、Naは服用1ヶ月後で有意な増加が認められたが(p<0.01)、基準値内での変化であり、また3ヶ月後には服用前の値に回復しており、有意な副作用とは考えられなかった。
これらの結果から、本発明組成物をC型慢性肝炎患者に服用させた場合に、高ウイルス量の患者でも、早ければ服用1ヶ月後でウイルス量の減少が認められ、また全身倦怠感などの自覚症状や、肝腫大などの他覚症状も一部の症例で改善を認められた。血液・生化学的検査項目の悪化はなく、服用による重篤な有害事象もなく、C型慢性肝炎の治療の際に、本願発明に係る組成物を併せて治療することで、共力作用を示すことが示唆された。



ZTTは服用前と服用3ヶ月後のデータで統計学的な有意差な増加があった。
ナトリウムは服用前と服用1ヶ月後のデータで統計学的な有意差な増加があった。
【実施例3】
南瓜子5.0g、紅花3.0g、オオバコ1.0g、スイカズラ3.0gと乳糖67g及びデンプン16gを堅形混合機にて均一に混合し、先にハイドロキシプロピルセルロース2g、カプリン酸トリグリセライド5gを85%エタノール40gに溶解したもの練合溶媒とし、練合したのちバスケット型製粒機(スクリーン径1mm)にて造粒後、14メッシュ篩を通過させ乾燥後円柱状顆粒とする。上記成分とマンニット、ヒドロキシプロピルセルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アスパルテーム及び香料を均一に混合し、顆粒剤12包を得た(特開2000−231584参照)。
以下、実施例4と同様に各種配合比(重量%)の組成物を調製することができる。

【実施例4】
本発明組成物の1つである商品インターパンチ(登録商標;(株)サンウエル製)の調製例。
南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラの生薬原末を配合し、10倍量の水で95±5℃で30分間抽出し、抽出液をろ過後濃縮し、還元麦芽糖、乳糖、デンプンなどの賦形剤・香料を添加し、造粒工程にかけて細粒とした。

【実施例5】
安全性
本発明組成物処方A:
成分(乾燥粉末の配合比):南瓜子(50%)、紅花(20%)、オオバコ(15%)及びスイカズラ(15%)。
このものを、健常成人男性7名に2週間にわたり1日2回(1回当たり原生薬換算1.0g)摂食させた。摂食開始前、開始後1及び2週目に採血を行い、一般臨床検査(血液学的検査(白血球数、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、MCV、MCH、MCHC、血小板数、白血球像)、血液生化学的検査(総蛋白、アルブミン、A/G、総ビリルビン、MCV、MCH、MCHC、AST、ALT、アルカリフォスファターゼ、□−GTP、総コレステロール、中性脂肪、尿素窒素、尿酸、クレアチニン)及び免疫生化学検査(非特異的IgE、非特異的IgG、トランスフェリン))並びに医師による問診・聴打診、理学的検査(体温、脈拍、血圧)を実施し、本発明組成物処方A摂食の安全性を検討した。また、細胞機能(単球(血液中マクロファージ)貪食能、好中球貪食能、NK細胞活性)並びにサイトカイン(IL2、4、6、8、10、12、IFN−β、TNF−α)を測定することにより、本健康食品の安全性を検討した。
その結果、2週間の摂食による試験実施期間中、自覚症状、他覚所見並びに免疫生化学検査を含む臨床検査値について、試験食品の摂取に起因すると考えられる有害事象は認められず、安全性に問題のないことが確認された。細胞機能並びにサイトカインに関しては顕著な変化は認められず、健常成人男性において本投与量・投与期間においては、測定可能な変化は捉えられないことが判明した。
【実施例6】
安全性
本発明組成物の1つであるインターパンチを健常成人男性に8年間摂取させた(摂取開始時は31歳)。最初の2年間は処方例Aの配合生薬原末を1日当たり平均1g、その後は実施例処方Aの健康食品を平均1日当たり原末換算で1gを摂取させた。その結果、摂取期間中一般血液性状、健康状態等に悪影響は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
本発明は、前記実施例に示した如く南瓜子、紅花、オオバコ及びスイカズラからなる組成物がC型肝炎患者の自覚症状、例えば全身倦怠感及び腹部膨満感をなくすこと、及び医師の診断による他覚症状、例えば肝腫大の状態から正常な肝への状態に改善させ及び手掌紅斑をなくすことができ、また、前記組成物投与1ヶ月後乃至3ヶ月後と徐々にC型肝炎ウイルスRNA量が減少していたことから、少なくとも、C型慢性肝炎治療用組成物として有用であり、具体的にはインターフェロン治療の導入前に本組成物を服用することでインターフェロン治療の効果が高まることが期待できる。C型慢性肝炎患者の肝腫大というのは、医師は、肝炎進行状況診断の1つの指標としている。その肝腫大において、改善が認められたということは、C型慢性肝炎治療においては非常に意義のあるものであり、C型肝炎から肝硬変への進展抑制や肝硬変から肝ガンへの進展抑制用組成物として有用である。
また、本発明はC型肝炎患者のうち、特に、C型慢性肝炎ウイルスRNA量が高値の患者に有用である。加えて、本発明組成物は、C型肝炎ウイルスRNA量減少用組成物やC型慢性肝炎の症状改善・軽減用組成物として使用可能である。また、副作用の恐れが少なく、長期間常用することができ、あるいは従来のC型慢性肝炎治療剤、特にC型慢性肝炎治療剤との併用も可能である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラからなるC型慢性肝炎ウイルスRNA量減少用組成物。
【請求項2】
南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラからなるC型慢性肝炎の症状改善あるいは軽減用組成物。
【請求項3】
南瓜子、紅花、オオバコ、及びスイカズラを有効成分とするC型慢性肝炎における肝硬変進展抑制用組成物。

【国際公開番号】WO2004/078191
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503086(P2005−503086)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002706
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(504335116)オリジナル・イメージ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】