説明

CD44の表面発現の特徴をなす細胞の細胞傷害性の媒介

本発明は、癌性疾患の診断及び治療に関し、具体的には原発性及び転移性のヒト腫瘍細胞の細胞傷害性の媒介に関し;そして最も具体的には、任意的に1つ以上の化学治療剤と組み合わせられる単離されたモノクローナル抗体又はその癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の、例えば肝細胞を起源とする原発性又は転移性の任意の腫瘍部位等のヒト腫瘍における細胞傷害性応答を開始させるための手段としての使用に関する。更に本発明は、本発明のCDMABを活用する結合アッセイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の単離及び生産に関し、並びに治療及び診断のプロセスにおけるこれらのCDMAB単独の、又は1つ以上のCDMAB/化学治療剤との組合せの使用に関する。更に本発明は、本発明のCDMABを活用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
癌におけるCD44: ヒト白血球細胞に対するモノクローナル抗体の充実は、広範な通常組織及び全ての種類の血液細胞に発現する、単鎖ヒアルロン酸(HA)を結合させる糖タンパク質である、CD44抗原の発見に繋がった。それは当初、リンパ球の活性化及びホーミングに関与するものであった。現在、その予想される生理学的な役割は、炎症系遺伝子の活性化、細胞周期の調節、細胞増殖の誘導、分化及び発生の誘導、細胞骨格再編成及び細胞移動の誘導、並びにアポトーシスに対する細胞の生存/耐性を含む。
【0003】
ヒトにおいて、単一の遺伝子コピーのCD44は、染色体11の11p13の短腕上に存在する。上記遺伝子は19個のエキソンを有しており、最初の5個は定常部、次の9個は可変部、その次の3個は定常部であり、最後の2つは可変部である。差動スプライシングにより、1000を超える異なるアイソフォームが作り出される。しかしながら現在、天然に存在する変異体の中で同定されているものは僅か数ダースである。
【0004】
CD44の通常の当タンパク質は、N-末端細胞外(20a.a.のリーダー配列、及び膜近接領域(85a.a.))ドメイン(270a.a.)、膜貫通領域(21a.a.)、及び細胞質尾部(72a.a.)からなる。また、細胞外領域は、N-末端に連結モジュールを含む。この領域は長さが92a.a.であり、他のHA結合連結タンパク質との相同性を示す。CD44のマウスとヒトの型は、高い相同性を示す。このタンパク質の変異型は、エキソン5のカルボキシ末端側に挿入が起こり、その部分は発現されたときに細胞外に位置する。
【0005】
また、血清溶解型のCD44も天然に存在し、それらは終止コドン(可変領域の内部)又はタンパク質溶解活性により生じる。TNF-αを含む様々な刺激による細胞の活性化は、CD44受容体の切断(shedding)を引き起こす。また、その受容体の切断は腫瘍細胞においても見られ、結果として最高で10倍のヒト血清中のCD44濃度の上昇を引き起こし得る。高いCD44血清濃度は、悪性腫瘍(卵巣癌を除く)を示唆する。
【0006】
通常の型のCD44は、約37kDの分子量で存在する。翻訳後修飾により、分子量は80〜90kDまで増加する。これらの修飾は、アミノ末端細胞外ドメインにおけるアスパラギン残基のN-結合型グリコシル化、細胞外ドメインのカルボキシ末端におけるセリン/スレオニン残基のO-結合型グリコシル化、及びグリコサミノグリカン付加を含む。スプライス変異体は、80〜250kDのサイズ範囲で変動する。
【0007】
哺乳類の細胞外マトリックス(ECM)に位置する多糖類であるHAは、主要なCD44のリガンドであると考えられている。しかしながら、CD44は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン当のタンパク質とも結合することが見出されている。HA結合とグリコシル化との間には、関係があるように思われる。不活性CD44(HAと結合しない)は最高の、活性CD44(HAと結合する)は最低のグリコシル化レベルを有し、誘導CD44(サイトカイン、モノクローナル抗体、増殖因子等により活性化されない限りHAとの結合は弱く、又は結合しない)は、活性型と不活性型との間のどこかのグリコシル化レベルを有する。
【0008】
CD44は、細胞の相互作用、刺激及び環境に依存するシグナル伝達経路を通じ、その機能の幾つかを媒介する。幾つかのこれらの経路には、NFKBシグナルカスケード(炎症反応に関与する)、Ras-MAPKシグナル伝達経路(細胞周期及び増殖に関与する)、タンパク質のRhoファミリー(細胞骨格再編成及び細胞移動に関与する)、及びPI3-K-関連シグナル経路(細胞の生存に関する)が含まれる。上記全ての機能は、癌の発生及び進行と密接に関連している。また、CD44は、様々な追加的な機構を通じて癌において一定の役割を担っていることが示唆されている。これらには、CD44の細胞表面上に存在する細胞表面プロテオグリカンにより、増殖因子、ケモカイン、及びサイトカインを悪性腫瘍に関与する受容体に提示することが含まれる。また、CD44-HA複合体の内在化後のリソソームヒアルロニダーゼによるHAの細胞内分解は、腫瘍の移動性及びECMを貫く血管形成の誘導の可能性を潜在的に増大させ得る。加えて、生存又はアポトーシスシグナルの伝達は、通常の、又は変異型のCD44受容体を通じて起こることが示されている。また、CD44は、細胞の分化及び移動に関与することも示唆されている。全てではないであろうがこれらの機構の多くは環境又は細胞依存型であり、そして幾つかは変わりやすい知見に繋がっている。従って、何らかの結論が描かれる前に、更なる研究が必要である。
【0009】
CD44の癌における潜在機能的な役割を評価するために、CD44の発現研究が行われ、受容体の発現の差異が疾患の進行度と関連しているか否かが判定された。しかしながら、主要な腫瘍の種類において一貫した知見は観察されず、これは恐らく試薬の組合せ、技術、病理学的評点、及び細胞の種類における研究者間の相違のためである。腎細胞癌及び非ホジキンリンパ腫は、継続的に高いCD44の発現を示す患者が、CD44の発現が低い、又は無い対照群よりも短命である点で例外的であるように思われる。
【0010】
その癌との関連性のために、CD44は抗癌治療の発達の標的となっている。腫瘍の成長において通常型と変異型のいずれのCD44が必要であるかは、未だに議論されている。両方の視点を支持するインビボ動物データが存在し、それは腫瘍の種類及び細胞種にさえ左右される場合がある。異なる治療アプローチには、可溶性CD44タンパク質、ヒアルロナン合成酵素cDNA、ヒアルロニダーゼの注射、アンチセンスCD44、及びCD44特異的抗体の使用が含まれる。各アプローチは一定の成功を納めており、それらは抗CD44癌治療の支持を提供する。
【0011】
変異型CD44に特異的なモノクローナル抗体又は通常型CD44に特異的なモノクローナル抗体のいずれも実験的に製造されるが、殆どの場合これらの抗体は本来備わっている生物活性を有さず、それらが認識する種類のCD44に特異的に結合するものは僅かである。しかしながら、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて活性であるものは幾つか存在するが、一般的にはそれらは両立しない。幾つかの抗CD44抗体は、細胞イベントを媒介することが示されている。例えば、ヒト赤血球ルセラン(Lutheran)抗原CD44標準型に対するマウス抗体A3D8は、CD2(9-1抗体)及びCD3(OKT3抗体)により媒介されるT細胞の活性化を亢進させることが示され;もう1つの抗CD44抗体は類似の効果を有していた。また、A3D8は単球からのIL-Iの放出及びTリンパ球からのIL-2の放出も誘起した。興味深いことに、A3D8とダウノルビシン、マイトキサントロン、及びエトポシド等の薬物とを併用することで、二次メッセンジャーであるセラミドの生産を無効化することによるHL60及びNB4 AML細胞におけるアポトーシスの誘起が阻害された。本来備わっている活性を有さず、CD44類に類似するエピトープを認識するJ173抗体は、薬物誘起性のアポトーシスを阻害しなかった。CD44の85〜110kD型及び200kD型を認識するNIH44-1抗体は、その著者らがCD44の架橋又は凝集のいずれかと推測した経路を通じて起こる、T-細胞の増殖を増大させた。このような抗体が癌に対するもの(例えば、リンパ球の活性化)ではなく、細胞増殖を誘導するものでもなく、あるいは細胞傷害性薬とともに使用した際に癌細胞の薬物誘導死をもたらすこともないことから、これらが癌治療を目的とした用途に適しているという証拠はない。総合すると、癌を認識するものではない(例えば、リンパ球の活性化)ことから、癌治療剤としての使用に適している等の抗体は、細胞増殖を誘導し、又は細胞傷害性薬剤と共に使用されたときに薬物誘起性の癌細胞の死滅を阻害したという証拠はない。
【0012】
幾つかの抗CD44抗体は、インビボで抗腫瘍効果を示すことが述べられている。CD44のv6変異体を認識するマウスIgG1である1.1ASML抗体は、ラット膵臓腺癌BSp73ASMLのリンパ節及び肺への転移を減少させることが示されている。処理された動物の生存率は、それに付随して上昇した。その抗体は、リンパ節のコロニー化の前に投与されたときにのみ有効であることから、リンパ節中の細胞の増殖に干渉することが推定された。前記抗体のインビトロにおける腫瘍細胞に対する直接の細胞傷害性は無く、そして前記抗体は補体媒介性の細胞傷害性又は免疫エフェクター細胞の機能を亢進しなかった。ヒト細胞に対する前記抗体の利用は述べられていなかった。
【0013】
Breyerらは、同所移植されたラットグリア芽腫の進行をかく乱するための市販の抗CD44類抗体の使用を述べている。ラットグリア芽腫細胞株であるC6は、前頭葉に移植され、1週間後、それらのラットは抗体の脳内注射による3つの処理が行われた。処理されたラットは、腫瘍成長が減衰し、及び緩衝液又はアイソタイプで処理されたラットよりも体重の増加が示された。前記抗体は、細胞外マトリックス成分で被覆したカバースリップへのインビトロでの細胞の接着を阻害することが可能であるが、細胞への直接的な細胞傷害性効果を有しなかった。この抗体は、ヒト細胞に対して試験されなかった。
【0014】
CD44類(IM-7.8.1)に対する抗体とCD44v10(K926)に対する抗体との有効性を比較するある実験が遂行された。CD44の複数のアイソフォームのいずれも発現する、転移性が高いマウスメラノーマ株B1 6F10は、マウス脳内に移植された。2日後、抗体は研究期間中に3日に1度投与された。いずれの抗体も、肺転移の数で50%を超える顕著な減少を引き起こした;2つの抗体の間で、有効性において顕著な相違は存在しなかった。前記抗体はインビトロにおける増殖に影響せず、その著者であるZawadskiらは、腫瘍成長の阻害は、CD44とそのリガンドとの相互作用を抗体が阻害したことによると推定した。IM-7.8.1を使用したもう1つの研究において、Zahalkaらは、前記抗体及びそのF(ab')2フラグメントは、T-細胞リンパ腫LBによるリンパ節への浸潤を阻害することが可能であることを示した。これにより、マウスにおける顕著な延命効果がもたらされた。Wallach-Dayanらは、自発的に腫瘍を形成しないLB-TRsマウスリンパ腫をCD44v4〜v10と共に感染させることにより、腫瘍を形成する能力を獲得したことを示した。IM-7.8.1の投与は、アイソタイプコントロール抗体の場合と比較して、移植された感染細胞の腫瘍サイズを減少させた。これらの研究のいずれも、本抗体のヒトへの利用を示さなかった。
【0015】
マウスIgG2aであるGKW.A3は、ヒトCD44に特異的であり、そしてSCIDマウス中のヒトメラノーマ異種移植の形成及び転移を防止する。前記抗体は、転移性ヒト細胞株SMMU-2と混合され、そして皮下注射された。処理はその後3週間継続された。4週間後、10頭中1頭のマウスが注射部位において腫瘍を発生させたが、一方無処理動物の腫瘍発生率は100パーセントであった。前記抗体のF(ab')2フラグメントは同様の腫瘍形成の阻害を示し、その作用の機構が補体又は抗体依存性細胞介在性細胞傷害性に依存していないことが示唆された。最初の抗体注射に1週間先立って腫瘍細胞が注射されたとき、80パーセントの動物が、原発部位において腫瘍を発生させた。しかしながら、生存期間はなおも顕著に増大したことは注目すべきである。抗体の遅延投与は原発的な腫瘍形成に効果が無いが、無処理動物においては存在した肺、腎臓、副腎、肝臓、及び腹膜への転移が完全に防止された。この抗体は、インビトロにおいて細胞に対する直接的な細胞傷害性を何ら有さず、SMMU-2細胞の増殖にも干渉せず、そして転移又は増殖に影響することにより、腫瘍の形成に対して主要な効果を有するように思われる。この抗体の1つの注目すべき特性は、それがCD44の全てのアイソフォームを認識することであり、これは治療的使用が限定的である可能性を示唆する。
【0016】
Strobelらは、マウス異種移植モデルへのヒト卵巣がん細胞の腹膜移植を阻害するための抗CD44抗体(クローン515)の使用を述べている。ヒト卵巣癌細胞36M2は、抗CD44抗体又はコントロール抗体の存在下でマウスに腹膜内移植され、そしてその後20日間処理が行われた。5週間後に、抗体処理群の腹膜腔で小結節の数が顕著に減少した。抗CD44処理群及びコントロール処理群に由来する小結節の大きさは、いずれも同じであり、これは細胞が一度移植されると、抗体は腫瘍増殖に対して何ら効果を示さなかったことを示唆した。細胞を皮下移植した場合も、腫瘍増殖に対する効果はなく、抗体それ自体は抗増殖または細胞傷害性効果を有しないことを示した。加えて、インビトロでの細胞増殖に対する抗体の効果は存在しなかった。
【0017】
VFF-18(BIWA1とも表される)は、ポリペプチドの360〜3870領域に対して特異的なCD44のv6変異体に対する高親和性抗体である。この抗体は、12人の患者の第一相臨床試験で99mテクネチウム標識抱合体として使用されている。この抗体は、頭頚部の扁平上皮癌の患者における安全性及び標的化可能性について試験された。注射後の40時間、注射投与量の14パーセントが腫瘍に取り込まれ、その際、腎臓、脾臓、及び骨髄を含む他の器官における蓄積は最小であった。高度に選択的な腫瘍結合は、この抗体の放射免疫療法における一定の役割を示唆するが、この抗体の非常に高い親和性が、腫瘍のより深い層への浸透を妨げていた。BIWA1の適用をさらに制限するものは、マウス抗体の免疫原性(12人の患者中11人にヒト抗マウス抗体(HAMA)が発生した)、腫瘍全体に及ぶ異質性の蓄積、及び抗体可溶性CD44複合体の形成である。WO 02/094879は、HAMA応答を克服するために設計されたVFF-18のヒト化版(BIWA4と命名された)を開示している。BIWA4は、親VFF-18抗体と比較して顕著に低い抗原結合親和性を有することが見出された。驚くべきことに、低親和性のBIWA4抗体は、高親和性のBIWA8ヒト化VFF-18抗体よりも優れた腫瘍取込み特性を有していた。患者33人に対する第一相臨床試験において、安全性、耐容性、腫瘍蓄積、及び最大許容投与量(186Re標識BIWA4の場合)を判定するために、99mテクネチウム標識及び186レニウム標識BIWA4抗体が評価された。186Re標識BIWA4のいずれの用量においても腫瘍応答は認められなかったが、幾つかは安定病態を有し;用量規定毒性が60mCi/m2で生じた。有害事象率は50〜65パーセントであり、33人の患者中12人が深刻な有害事象(血小板減少症、白血球減少症、及び発熱)を有すると判断され、またその内の6人(全員が186Re標識BIWA4による処置を受けた)が、処置または経過観察の過程で疾患進行により死亡した。2人の患者は、ヒト抗ヒト抗体を発生させた。186Re標識BIWA4の用量を段階的に増量する第一相試験は、患者20人に対して実施された。口腔粘膜炎及び用量規定血小板減少症及び白血球減少症が観察され;1人の患者ではHAHA応答を発生させた。安定病態は、60mCi/m2という最も高い用量で処置された患者5人に認められた。達成される有効性について安全性及び耐容性の両面において許容可能であると判断されたが、これらの研究は、臨床試験において、他の非放射性同位元素併用生物学的療法と比較して、有害事象率が高い。米国特許出願2003/0103985号は、腫瘍治療における使用のためにマイタンシノイド(maytansinoid)を抱合させたVFF18のヒト化版(BIWI1と命名)を開示している。ヒト化VFF 18抗体(BIWA4、毒素を縫合させた場合は即ちBIWI1)は、外陰部ヒト扁平上皮細胞癌、咽頭有棘細胞癌、または乳癌のマウスモデルにおいて、顕著な抗腫瘍効果を示すことが見出された。非抱合型版であるBIWA4は抗腫瘍効果を示さず、また抱合型版であるBIWA1は、ヒトにおける安全性又は有効性の証拠を有していない。
【0018】
MabU36は、UM-SCC-22Bヒト下咽頭癌細胞免疫化並びに癌及び組織特異性に対する選択性により製造されたマウスモノクローナルIgG1抗体である。cDNAクローニング及び配列分析を通しての抗原特徴付けは、ケラチノサイト特異的CD44スプライス変異体エピカンのv6ドメインをMabU36の標的として同定した。免疫組織化学的検査により、このエピトープが細胞膜に極限されていることが示された。さらに、MabU36は、94%の頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)を強く標識し、またこれらの腫瘍内で、均一な細胞染色がみられた。患者10人の99mTc標識MabU36を検査したところ、HNSCC癌への抗体の選択的蓄積(2日間で20.4±12.4パーセント注入量/kg)がみられ、副作用は報告されていないが、患者2人にHAMAが発生した。放射性ヨウ素標識マウスMabU36の検査において、患者18人中、HAMAの症例が3件あり、選択的かつ一様なHNSCCへの取り込みがみられた。MabU36の抗原性を低下させるとともにHAMAの率を低下させるために、キメラ抗体が構築された。キメラおよび本来のマウスMabU36は、いずれもADCC活性を示さない。MabU36が持つ本来の機能活性に関する証拠は存在しない。MabU36の治療剤としての有用性を判定するために、186Re標識キメラMabU36が使用された。この第一相試験において、13人の投薬量増量治験患者は、探索量の99mTc標識キメラMabU36が与えられ、続いて186Re標識キメラMabU36が投与された。急性有害事象の報告はなかったが、後処置投与量を制限する骨髄毒性(1.5GBq/m)が患者3人のうち2人にみられ、また最大許容投与量(1.0GBq/m)による処置を受けた1人の患者に血小板減少症が認められた。腫瘍サイズに対して多少の効果があったにもかかわらず、これらの効果は処置に対する客観的応答基準を満たすものではなかった。186Re標識キメラMabU36に関する更なる研究において、顆粒球コロニー刺激因子刺激全血返血という戦略を採用して、最大耐容活性を2.8Gyに倍化させた。頭頚部に種々な腫瘍を有する患者9人に対するこの研究で、3人が薬物関連貧血症のために輸血を必要とした。他の毒性として、第3度の骨髄毒性及び第2度の粘膜炎が挙げられる。安定病態が5人の患者で3〜5ヵ月間達成されたにもかかわらず、客観的な腫瘍応答は報告されなかった。従って、MabU36が非常に特異的な抗体であるにもかかわらず、抗癌効果を達成するために放射性免疫複合体を必要とすることが障害となり、その有益性が制限されることであると認識し得る。なぜなら、達成される臨床効果に関連して、治療に伴う毒性があるからである。
【0019】
要約すると、CD44v6(1.1ASML)およびCD44v10(K926)モノクローナル抗体は、それぞれ、転移性膵臓腺癌を注射されたラット又は悪性黒色腫を注射されたマウスの転移活性を減少させることが示されている。別の抗CD44v6抗体(VFF-18及びその誘導体)は、メイタンシノイド又は放射性同位元素に抱合される場合のみに、抗腫瘍効果を有することが示されている。また、抗標準CD44モノクローナル抗体も、ラットグリア芽細胞腫(抗CD44)による大脳内進行、マウスT細胞リンパ腫によるリンパ節浸潤(IM-7.8.1)を抑制すること、並びにヌードマウス(クローン515)でのヒト卵巣癌細胞系の移植、マウスメラノーマ細胞系の肺転移(IM-7.8.1)、及びSCIDマウス(GKW.A3)におけるヒトメラノーマ細胞株の転移を阻害することが示されている。放射性同位元素抱合MabU36抗CD44v6抗体及びその誘導体は、臨床試験で、顕著な毒性を伴う抗腫瘍活性を有した。これらの結果は、それらが潜在的な癌療法としての抗CD44モノクローナル抗体の開発を促し、そして支持するものであるが、ヒト癌に対する有効性、安全性、および適用性に限界があることを示している。
【0020】
従って、癌細胞傷害性を媒介する抗体組成物が単離されるならば、前記細胞上のCD44の細胞表面発現に対するその親和性の機能として、有益な診断および治療方法が実現され得る。
【0021】
癌治療としてのモノクローナル抗体:癌が発症した各個体は個別のものであり、そして個体の個性により他の癌と異なる癌を有する。それにも関らず、現在の治療は、全ての患者を、同一の型の癌について、同一の段階で、同一の方法で処置する、少なくともこれらの患者の30%は一次治療に失敗し得て、それにより、治療期間の更なる延長、並びに治療の失敗、転移、及び最終的には死の可能性が増大する。治療のための一つの優れたアプローチは、特定の個体のための治療の受注生産であり得る。受注生産と結び付く僅かな現代の治療は、外科手術である。化学療法及び放射線治療は患者ごとに仕立てることは出来ず、そして外科手術単独では、殆どの場合、治療をもたらすには不十分である。
【0022】
各抗体が単一のエピトープを認識するモノクローナル抗体の登場と共に、カスタム治療の方法を開発する可能性はより現実的なものとなった。更に、特定の個体の腫瘍を一意的に定義するエピトープの群を認識する抗体の組合せを生産できる可能性がある。
【0023】
腫瘍細胞と正常細胞との間で顕著な相違は形質転換した細胞に特異的な抗原を含む点であるということが認識されていることから、科学界は、モノクローナル抗体を、これらの癌抗原に特異的に結合させることにより特異的に形質転換細胞を標的とするように設計することが出来るという考えを長年抱いており;故にモノクローナル抗体は癌細胞を死滅させる「特効薬」となるという考えが生じている。しかしながら、単一のモノクローナル抗体であって全ての種類の癌を相手取ることが出来るものは無く、そして、モノクローナル抗体は、1つの群として、標的とされた癌の治療用に用いられ得ることが、現在広く認識されている。一通り開示された発明の教示に従い単離されたモノクローナル抗体は、例えば全身腫瘍組織量を減少させることにより患者に有益な方式で癌の疾患経過を変更させることが示されており、そしてそれらは本明細書中で癌性疾患修飾抗体(CDMAB)又は「抗癌」抗体等と様々に称され得る。
【0024】
現在、癌の患者は通常治療の選択肢を殆ど有しない。癌治療に対する厳格なアプローチは、世界の生存率及び罹患率の改善をもたらしている。しかしながら、特定の個体にとって、これらの改善された統計は、必ずしも彼等の個人的な症状の改善と一致しない。
【0025】
従って、もし実行者が同一集団中の他の患者から独立して各腫瘍を治療することを可能とする方法論が提示されれば、これは1人のヒトのためだけに治療を仕立てるという類の無いアプローチを可能とし得る。そのような治療の方策は、理想的には、快癒率を増大させ、そしてより良好な転帰をもたらし、それにより長年にわたる切実な要求を満足させる。
【0026】
歴史的に、ポリクローナル抗体の使用は、ヒトの癌の治療における使用では限定的にしか成功していない。リンパ腫及び白血病はヒト血漿で治療されているが、寛解又は応答の延長は殆ど無かった。更に、再現性が欠けており、そして化学療法と比較して追加的な利益が無かった。乳癌、黒色腫及び腎細胞癌等の固形腫瘍も、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿及びウマ血清で治療されているが、対応する結果は予測不可能であり、そして効果が無い。
【0027】
固形腫瘍に対するモノクローナル抗体の多くの臨床試験が存在している。1980年代、特異的抗原に対する、又は組織選択性に基づく抗体を使用して、少なくとも47人の患者から僅か1人の応答者しか得られなかったヒト乳癌のための臨床試験が少なくとも4つ存在した。1998年前には、CISPLATINと組み合わせられたヒト化抗Her2/neu抗体(Herceptin(登録商標))を使用した臨床試験が成功した。この試験において、37人の患者は約四半期の間その部分寛解率の、そしてその後の四半期の間小さな、又は安定した疾患の振興の応答が評価された。応答者の間における進行期間の中央値は8.4ヶ月であり、応答期間の中央値は5.3ヶ月であった。
【0028】
Herceptin(登録商標)は、Taxol(登録商標)と組合せる最初の使用用に1998年に承認された。臨床研究結果により、Taxol(登録商標)単独で治療を受けた群(3.0ヶ月)と比較して、抗体療法とTaxol(登録商標)とを併せて治療を受けた者の方が、疾患の進行する時間の中央値が増大(6.9ヶ月)することが示された。また、Herceptin(登録商標)プラスTaxol(登録商標)治療群対Taxol(登録商標)単独治療群の生存率の中央値も22ヶ月対18ヶ月と僅かに増大した。加えて、前記抗体プラスTaxol(登録商標)の組合せ群とTaxol(登録商標)単独とを比較して、完全応答者(8%対2%)及び部分応答者(34%対15%)のいずれの人数においても増大した。しかしながら、Herceptin(登録商標)及びTaxol(登録商標)による治療は、Taxol(登録商標)治療単独の場合と比較して、より高い心臓毒性の発生率をもたらした(それぞれ13%対1%)。また、Herceptin(登録商標)治療は、転移性乳癌患者の約25%を占める、現在のところ機能又は生物学的に重要なリガンドが判明していない受容体である、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現(免疫組織化学(IHC)解析により判定されたとき)する患者にのみ有効であった。故に、乳癌患者にとって満たされていない多大な必要性がなおも存在する。Herceptin(登録商標)により利益を受け得る者であっても、治療はなおも化学療法が必要であり、結果として、少なくともある程度は、この種類の治療の副作用を処置しなければならない。
【0029】
結腸直腸癌を調査する臨床試験は、糖タンパク質及び糖脂質の療法の標的に対する抗体を含む。腺癌に対する一定の特異性を有する17-1A等の抗体は、60人を超える患者において、第二相臨床試験が実施されたが、部分的な応答を有する患者は僅かに1人であった。他の試験において、17-1Aの使用により、追加的なシクロフォスファミドを使用するプロトコルにおける52人の患者の間で、完全応答は僅か1人であり、そして部分応答は僅か2人であった。現在のところ、17-1Aの第三相臨床試験は、ステージIII結腸癌のアジュバント療法として改善された有効性を示していない。ヒト化マウス抗体の使用は、最初にイメージング用に承認され、そして腫瘍抑制をもたらさなかった。
【0030】
最近、モノクローナル抗体を使用した結腸直腸癌の臨床研究から肯定的な結果が幾つか報告されている。2004年に、ERBITUX(登録商標)は、イリノテカンを基礎とする化学療法では効果が無い、EGFRを発現する転移性の結腸直腸癌の患者の二次治療のための使用が承認された。二群第二相臨床研究及び一群研究の結果から、イリノテカンと組み合わせられたERBITUX(登録商標)は、それぞれ4.1ヶ月及び6.5ヶ月の疾患進行の時間の中央値で、それぞれ23パーセント及び15パーセントの奏効率を有することが示された。同一の二群第二相臨床研究及びもう一つの一群研究の結果から、ERBITUX(登録商標)単独による処置は、それぞれ1.5ヶ月及び4.2ヶ月の疾患進行の時間の中央値で、それぞれ11パーセント及び9パーセントの奏効率をもたらすことが示された。
【0031】
故に、スイス及び米国においてイリノテカンと組み合わせられたERBITUX(登録商標)治療が、並びに米国において単独のERBITUX(登録商標)治療が、一次イリノテカン治療に失敗した結腸癌患者の二次治療として承認されている。従って、Herceptin(登録商標)と同様に、スイスにおける治療はモノクローナル抗体と化学療法との組合せとしてのみ承認される。加えて、スイス及び米国の治療は、二次治療の患者においてのみ承認される。また、2004年に、AVASTIN(登録商標)は、転移性結腸直腸癌に一次治療としての静脈内5−フルオロウラシルを基礎とする化学療法との組合せにおいての使用において承認された。第三相臨床研究の結果により、5−フルオロウラシル単独により処置された患者と比較して、AVASTIN(登録商標)プラス5−フルオロウラシルにより処置された患者の生存率の中央値の延長(それぞれ16ヶ月対20ヶ月)が示された。しかしながら、再びHerceptin(登録商標)及びERBITUX(登録商標)と同様に、モノクローナル抗体と化学療法との組合せとしてのみ処置が承認される。
【0032】
肺、卵巣、膵臓、前立腺、及び胃癌においては、依然として結果は振わない。非小細胞肺癌の最近の最も期待できる結果は、第二相臨床試験において得られており、治療には、殺細胞薬剤のドキソルビシンを抱合したモノクローナル抗体(SGN-15; dox-BR96, anti-Sialyl-LeX)と化学治療剤TAXOTERE(登録商標)とが組み合わせられて含まれる。TAXOTERE(登録商標)肺癌の二次治療用のFDAのみが承認する化学療法である。初期のデータは、TAXOTERE(登録商標)単独の場合と比較して、全生存の改善を示唆する。その研究のために集められた62人の患者の内、2/3がTAXOTERE(登録商標)とSGN-15との組合せを、一方残りの1/3がTAXOTERE(登録商標)を単独で与えられた。TAXOTERE(登録商標)とSGN-15との組合せを与えられた患者において全生存の中央値は7.3ヶ月であり、一方TAXOTERE(登録商標)を単独で与えられた患者は5.9ヶ月であった。SGN-15プラスTAXOTERE(登録商標)を与えられた患者の1年及び18ヶ月の全生存はそれぞれ29パーセント及び18パーセントであり、一方TAXOTERE(登録商標)を単独で与えられた患者はそれぞれ24パーセント及び8パーセントであった。更なる臨床試験が計画されている。
【0033】
前臨床的に、モノクローナル抗体の黒色腫に対する使用は幾つかの限定的な成功しか存在しない。現在のところ、これらの抗体で臨床試験に到達しているものは殆ど無く。承認され、又は第三相臨床試験で良好な結果を示したものは無い。
【0034】
疾患を治療する新規な薬物の発見は、病因に関与し得る30,000の既知の遺伝子産物の中にある関連する標的の同定の欠落により妨げられる。癌研究において、潜在的な薬物標的は、それらが腫瘍細胞で過剰発現しているという単純な事実によりしばしば選択される。そして、同定された標的は多数の化合物との相互作用についてスクリーニングに供される。潜在的な抗体療法の場合、これらの候補化合物は、Kohler及びMilsteinにより定められた基本原則(1975, Nature, 256, 495-497, Kohler and Milstein)に従うモノクローナル抗体生産の伝統的な方法により通常得られる。抗原(例えば全細胞、細胞フラクション、精製された抗原)で免疫性を与えられたマウスから脾臓細胞が回収され、そして不死化されたハイブリドーマパートナーと融合させられる。得られたハイブリドーマはスクリーニングされ、そして標的に最も良好に結合する抗体を分泌するものが選択される。Herceptin(登録商標)及びRITUXIMABを含む、癌細胞を認識する多くの治療用及び診断用抗体は、これらの方法を使用して生産され、そしてそれらの親和性に基づいて選択された。この戦略の欠点は2つある。第一に、治療用又は診断用の抗体と結合する適切な標的の選択は、組織特異的な発癌過程を囲む知見の不足により制限され、その結果、過剰発現による選択のように、これらの標的が短絡的な方法により同定される。第二に、最も良好な親和性で受容体と結合する薬物分子はしばしば、あるシグナルを通常そうであるとは限らない方に開始又は阻害させる高い可能性を有する。
【0035】
乳癌及び結腸癌の治療に関するある程度の進歩に関らず、単独の薬剤又は共治療のいずれかとしての、有効な抗体療法の同定及び開発は、いずれの型の癌においも成し遂げられていない。
【0036】
従来技術
米国特許第5,750,102号は、患者腫瘍由来の細胞に、その患者の細胞または組織からクローニングされたものであり得るMHC遺伝子をトランスフェクションするプロセスを開示する。
【0037】
米国特許第4,861,581号は、ほ乳類の腫瘍性及び正常細胞の細胞内構成要素に対して特異的であるが、細胞外構成要素に対しては非特異的であるモノクローナル抗体を収得する工程と、そのモノクローナル抗体を標識する工程と、腫瘍性の細胞を死滅させるための処置を受けているほ乳類の組織と標識された抗体とを接触させる工程と、そして変性腫瘍細胞の細胞内構成要素に対する標識抗体の結合を測定することによって治療の効果を判定する工程とを含むプロセスを開示する。ヒト細胞内抗原に対する抗体を調製する際に、特許権者らは、悪性細胞がそのような抗原の簡便な供給源であることを認識する。
【0038】
米国特許第5,171,665号は、新規な抗体及びその生産方法を提供する。具体的には、その特許は、ヒト腫瘍(例えば、大腸および肺の腫瘍)に関連したタンパク質抗原と強固に結合し、その一方で正常細胞への結合の程度が遥かに低いという性質を持つモノクローナル抗体の形成を教示する。
【0039】
米国特許第5,484,596号は、ヒト癌患者から腫瘍組織を外科的に除去し、腫瘍組織を処理することにより腫瘍細胞を収得し、腫瘍細胞に放射線を照射することにより、生存可能ではあるが非腫瘍形成性になるようにし、及びこれらの細胞を用いて、原発性腫瘍の再発を阻害すると同時に転移を阻害することが可能な患者用ワクチンを調製することを含む、癌治療の方法を提供する。その特許は、腫瘍の表面抗原に対して反応するモノクローナル抗体の開発を教示する。第4欄45行(以下を参照されたい)に記載されているように、特許権者らは、ヒト腫瘍形成で活性かつ特異的な免疫治療を示すモノクローナル抗体の作成において自家由来の腫瘍細胞を利用する。
【0040】
米国特許第5,693,763号は、ヒト上皮性悪性腫瘍に特有であり、かつそれが由来する上皮組織に依存しない糖タンパク質抗原を教示する。
【0041】
米国特許第5,783,186号は、Her2発現細胞でアポトーシスを誘導する抗Her2抗体、その抗体を生産するハイブリドーマ細胞株、その抗体を使用して癌を治療する方法、及びその抗体を含む医薬組成物に関する。
【0042】
米国特許第5,849,876号は、腫瘍及び非腫瘍組織供給源から精製されたムチン抗原に対するモノクローナル抗体を生産するための新規ハイブリドーマ細胞株を記載する。
【0043】
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に特異的な抗体を生産するヒトリンパ球を製造する方法、モノクローナル抗体を生産する方法、及びこの方法によって生産されるモノクローナル抗体に関する。その特許は、特に癌の診断及び治療に有用な抗HDヒトモノクローナル抗体の生産に関する。
【0044】
米国特許第5,869,045号は、ヒト上皮性悪性腫瘍細胞と反応する抗体、抗体フラグメント、抗体抱合体、及び単鎖免疫毒素に関する。これらの抗体作用が2倍になるメカニズムは、ヒト上皮性悪性腫瘍の表面に存在する細胞膜抗原と反応する点で、そして更に抗体が結合の後にその上皮性悪性腫瘍細胞内に内在化する能力を有するという点であり、それらにより抗体−薬物及び抗体−毒素抱合体の形成に特に有用となる。未修飾形態においても、それらの抗体は特定の濃度で細胞傷害性を発現する。
【0045】
米国特許第5,780,033号は、腫瘍の治療及び予防のための自己抗体の使用を開示する。しかしながら、この抗体は、老いたほ乳類由来の抗核自己抗体である。この場合、その自己抗体は、免疫系で見いだされる自然抗体の一種であるといえる。なぜなら、その自己抗体は「老いたほ乳類」に由来し、自己抗体が実際に、治療を受けている患者に由来することを必要とはしないからである。加えてその特許は、老いたほ乳類及びモノクローナル抗核自己抗体を生産するハイブリドーマ細胞株に由来する、天然の抗核自己抗体及びモノクローナル抗核自己抗体を開示する。
【0046】
米国特許第5,750,102号は、患者の腫瘍に由来する細胞に、患者由来の細胞又は組織からクローニングされたMHC遺伝子をトランスフェクションするプロセスを開示する。そして、これらのトランスフェクションされた細胞は、その患者へのワクチン接種に使用される。
【0047】
米国特許第4,861,581号は、ほ乳類の腫瘍性及び正常細胞の細胞内構成要素に対して特異的であるが、細胞外構成要素に対しては非特異的であるモノクローナル抗体を収得する工程と、そのモノクローナル抗体を標識する工程と、腫瘍性の細胞を死滅させるための治療を受けているほ乳類の組織とその標識された抗体とを接触させる工程と、そして変性腫瘍細胞の細胞内構成要素に対する標識抗体の結合を測定することによって治療の効果を判定する工程とを含むプロセスを開示する。ヒト細胞内抗原に対する抗体を調製する際に、特許権者らは、悪性細胞がそのような抗原の簡便な供給源であることを認識する。
【0048】
米国特許第5,171,665号は、新規な抗体及びその生産方法を提供する。具体的には、その特許は、ヒト腫瘍(例えば、大腸および肺の腫瘍)に関連したタンパク質抗原と強固に結合し、その一方で正常細胞への結合の程度が遥かに低いという性質を持つモノクローナル抗体の形成を教示する。
【0049】
米国特許第5,484,596号は、ヒト癌患者から腫瘍組織を外科的に除去し、腫瘍組織を処理することにより腫瘍細胞を収得し、腫瘍細胞に放射線を照射することにより、生存可能ではあるが非腫瘍形成性になるようにし、及びこれらの細胞を用いて、原発性腫瘍の再発を阻害すると同時に転移を阻害することが可能な患者用ワクチンを調製することを含む、癌治療の方法を提供する。その特許は、腫瘍の表面抗原に対して反応するモノクローナル抗体の開発を教示する。第4欄45行(以下を参照されたい)に記載されているように、特許権者らは、ヒト腫瘍形成で活性かつ特異的な免疫治療を示すモノクローナル抗体の作成において自家由来の腫瘍細胞を利用する。
【0050】
米国特許第5,693,763号は、ヒト上皮性悪性腫瘍に特有であり、かつそれが由来する上皮組織に依存しない糖タンパク質抗原を教示する。
【0051】
米国特許第5,783,186号は、Her2発現細胞でアポトーシスを誘導する抗Her2抗体、その抗体を生産するハイブリドーマ細胞株、その抗体を使用して癌を治療する方法、及びその抗体を含む医薬組成物に関する。
【0052】
米国特許第5,849,876号は、腫瘍及び非腫瘍組織供給源から精製されたムチン抗原に対するモノクローナル抗体を生産するための新規ハイブリドーマ細胞株を記載する。
【0053】
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に特異的な抗体を生産するヒトリンパ球を製造する方法、モノクローナル抗体を生産する方法、及びこの方法によって生産されるモノクローナル抗体に関する。その特許は、特に癌の診断及び治療に有用な抗HDヒトモノクローナル抗体の生産に関する。
【0054】
米国特許第5,869,045号は、ヒト上皮性悪性腫瘍細胞と反応する抗体、抗体フラグメント、抗体抱合体、及び単鎖免疫毒素に関する。これらの抗体作用が2倍になるメカニズムは、ヒト上皮性悪性腫瘍の表面に存在する細胞膜抗原と反応する点で、そして更に抗体が結合の後にその上皮性悪性腫瘍細胞内に内在化する能力を有するという点であり、それらにより抗体−薬物及び抗体−毒素抱合体の形成に特に有用となる。未修飾形態においても、それらの抗体は特定の濃度で細胞傷害性を発現する。
【0055】
米国特許第5,780,033号は、腫瘍の治療及び予防のための自己抗体の使用を開示する。しかしながら、この抗体は、老いたほ乳類由来の抗核自己抗体である。この場合、その自己抗体は、免疫系で見いだされる自然抗体の一種であるといえる。なぜなら、その自己抗体は「老いたほ乳類」に由来し、自己抗体が実際に、治療を受けている患者に由来することを必要とはしないからである。加えてその特許は、老いたほ乳類及びモノクローナル抗核自己抗体を生産するハイブリドーマ細胞株に由来する、天然の抗核自己抗体及びモノクローナル抗核自己抗体を開示する。
【0056】
米国特許第5,916,561号は、CD44遺伝子の変異体エクソンv6を認識する特異的抗体VFF-18及びその変異体を開示する。この抗体は、ラットCD44v6変異体よりもむしろヒトCD44v6変異体を認識するという点で、コンパレーター抗体をしのぐ改善である。加えて、この抗体は、CD44v6発現のための診断アッセイを開示する。この抗体に関して、インビトロ又はインビボにおける作用はみられなかった。
【0057】
米国特許第5,616,468号は、CD44遺伝子のヒトエクソン6Aによりコードされる配列を含む合成ペプチドに対して生産されたモノクローナル抗体Var3.1を開示する。具体的には、この抗体はヒトCD44の90kD形態に結合せず、Hermes-3抗体と区別される。CD44のv6変異体を検出する方法が提供され、そしてこの抗原に基づく悪性転換をスクリーニング及び評価するための方法が提供される。血清中の抗原の検出を基礎とする炎症性疾患をスクリーニングするための方法も提供される。
【0058】
米国特許第5,879,898号は、43アミノ酸ペプチドを生産するヒトCD44変異体6の129bpのエクソンに結合する特異的抗体を開示する。このモノクローナル抗体は、いくつものハイブリドーマ細胞株:MAK<CD44>M-1.1.12、MAK<CD44>M-2.42.3、及びMAK<CD44>M-4.3.16により生産される。この抗体は、新規CD44v6アミノ酸配列の少なくとも1つのヘキサペプチドを含む融合タンパク質から製造される。更に、癌診断に使用され得るエクソン6変異体を検出するための免疫アッセイが開示される。開示されたこの抗体にインビトロ又はインビボにおける作用がみられない点に注目されたい。
【0059】
米国特許第5,942,417号は、CD44様ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド並びにそのポリヌクレオチド及びその変異体を使用して組換えタンパク質を作製する方法を開示する。抗体はこれらのポリペプチドについて特許請求されているが、特定の具体例は無く、またそのような抗体を分泌する寄託されたクローンも無い。ノーザンブロットは幾つかの種類の組織でポリヌクレオチドの出現を示しているが、このポリヌクレオチドの翻訳及び発現に付随する証拠は挙げられていない。従って、このポリペプチドの遺伝子産物に対して作製されるべき抗体(これらの抗体はインビトロ又はインビボのいずれかにおいて機能を有し得る)が存在したという証拠は無く、そしてその抗体がヒトの癌疾患に関連するものであり得る証拠も無い。
【0060】
米国特許第5,885,575号は、CD44の変異体エピトープと反応する抗体及びその抗体を用いてその変異体を同定する方法を開示する。この変異体をコードする単離ポリペプチドはラット細胞から単離されたもので、そしてこの変異体を認識する抗体であるmAb1.1ASMLは、分子量120kD、150kD、180kD、及び200kDのタンパク質を認識する。モノクローナル抗体1.1ASMLの投与は、同系ラットにおいてラットBSp73ASMLの増殖及び転移を遅延させた。1.1ASMLがLCLC97ヒト大細胞肺癌に対する反応性が欠如していたことに表されるように、ヒト腫瘍を認識しない点に注目されたい。ヒト同族体はLCLC97から単離されたが、この同族体を認識する等価な抗体は生産されなかった。従って、ラットCD44の変異体に特異的な抗体が生産され、そしてラット腫瘍の増殖及び転移に影響を及ぼすことが示されたが、この抗体がヒト腫瘍に対して影響を及ぼすという証拠は無い。より具体的には、その発明者らはこの抗体がヒト癌を認識しないことを指摘している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0061】
この出願は、癌性疾患修飾モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞株を単離するための米国6,180,357号特許に教示される患者特異的抗癌抗体を生産するための方法を利用する。これらの抗体は、1つの腫瘍に対して特異的に作製され得て、故に癌治療の受注生産が可能となる。この出願の文脈中で、殺細胞(細胞傷害性)又は細胞増殖阻害(細胞増殖抑制性)特性のいずれかを有する抗癌抗体は、以下において細胞傷害性と称される。これらの抗体は癌の病期分類及び診断の補助として使用され得て、そして腫瘍転移の治療に使用され得る。伝統的な薬物探索の枠組みに従い製造された抗体と異なり、この方法により製造された抗体は、悪性組織の増殖及び/又は生存に組み込まれていることが予め示されていない分子及び経路を標的とし得る。更に、これらの抗体の結合親和性は、より強力な親和性相互作用を許容し得ない細胞傷害性イベントを開始する要求に適合している。また、例えば放射性核種等の標準的な化学治療様式を本発明に係るCDMABに抱合させ、それによりその化学治療剤を集中させることは、本発明の範囲内である。また、前記CDMABは、毒素、細胞傷害性部分、例えばビオチン抱合酵素等の酵素、サイトカイン、インターフェロン、標的若しくはレポーター部分又は血行性細胞を抱合し、それにより抗体抱合体を形成する。前記CDMABは単独又は1つ以上のCDMAB/化学治療剤と組み合わせられて使用され得る。
【0062】
個別的抗癌治療の見込みは、患者を管理する方法の変化をもたらし得る。可能性のある臨床シナリオは、腫瘍サンプルが提示期間に収得され、そして集積されることである。このサンプルから、既存の癌性疾患修飾抗体パネルにより腫瘍の型が定められ得る。患者の病期分類は簡便に行われ得るが、利用可能な抗体は患者の更なる病期分類に使用され得る。患者は既存の抗体を用いて迅速に治療され得て、そして本明細書中に概説された方法を使用して、又は本明細書中に開示されたスクリーニング方法と併せてファージディスプレイライブラリーを通じて、腫瘍に特異的な抗体パネルが生産され得る。生産された全ての抗体は、抗癌抗体ライブラリーに加えられ得る。なぜなら、治療に付されているものと同一の幾つかのエピトープを他の腫瘍が有する可能性があるからである。この方法に従って生産される抗体は、これらの抗体に結合する癌を有する多くの患者の癌疾患の治療に有用であり得る。
【0063】
抗癌抗体に加えて、患者は、複数の態様の治療計画の部分として、現在推奨される治療を受けることを選択し得る。本方法を経て単離された抗体が非癌性細胞に大して相対的に非毒性であるという事実により、抗体の組合せ剤の高投薬量での使用、又は確立された治療との併用が可能となる。また治療指数が高いことにより、治療抵抗性細胞の出現可能性を減少させ得る短い時間スケールでの再加療も可能となる。
【0064】
患者が初期の治療単位に不応であり、又は転移が進行しているときは、その腫瘍に特異的な抗体を製造するプロセスは再加療のために反復され得る。更に、それらの抗癌抗体は、転移の治療のためにその患者から収得された赤血球に共役させられ、そして再注入され得る。転移性癌には有効な治療法は殆ど存在しておらず、そして転移は通常、死に至る不良転帰の前兆となる。しかしながら、転移性癌は通常盛んに血管新生を行うことから、赤血球による抗癌抗体の輸送は、腫瘍の部位に抗体を集中させるために有効であり得る。転移前であっても、殆どの癌細胞は生存のために宿主の血液供給に依存していることから、同様に赤血球に共役させられた抗癌抗体生体内の腫瘍に対して有効であり得る。あるいは、抗体は、例えばリンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞等の他の血行性細胞に共役させられ得る。
【0065】
抗体には5つのクラスが存在し、また各々はその重鎖により与えられる機能と関係している。裸抗体(naked antibody)による癌細胞の死滅は通常、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を通じて媒介されると考えられている。例えば、IgM及びIgG2a抗体は、補体系のC-1成分を結合させることによりヒト補体を活性化し、それにより腫瘍の溶解を導き得る古典的な補体活性化の経路を活性化し得る。ヒト抗体において、最も効果的な補体活性化抗体は、一般的にIgM及びIgGlである。IgG2a及びIgG3アイソタイプのマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球、及びある種のリンパ球によって殺細胞を導き得るFc受容体を有する細胞傷害性細胞をリクルートさせる点において効果的である。IgG1及びIgG3アイソタイプのヒト抗体は、ADCCを媒介する。
【0066】
Fc領域を通じて媒介される細胞傷害性は、例えばNK細胞、T細胞及び補体等の、エフェクター細胞、それらに関連する受容体、又はタンパク質を必要とする。これらのエフェクター機構が無い限り、抗体のFc部分は不活性である。抗体のFc部分は、インビボにおいては抗体の薬物動態に影響する特性を与え得るが、これはインビトロでは作用しない。
【0067】
発明者らは、いかなるエフェクター機構も存在しないインビトロの条件下で細胞傷害性アッセイを遂行した。これらのアッセイは、エフェクター細胞(NK、マクロファージ、若しくはT-細胞)又は補体を有しない。これらのアッセイは共に添加されるものによって完全に明確にされるので、各成分が特徴付けられ得る。本明細書中で使用されるアッセイは、標的細胞、培地および血清のみを含む。標的細胞は癌細胞又は線維芽細胞であるから、エフェクター機能を有しない。エフェクター機能特性を有する外来性の細胞無くしては、この機能を有する細胞要素は存在しない。その培地は、補体又は細胞を含まない。標的細胞の増殖を補助するために使用される結成は、供給元により開示されているとおり、補体血清を有しない。更に、発明者らの研究施設において、発明者らは、使用される血清の補体活性の欠如を評価している。故に、発明者らの研究は、抗体の効果が、Fabを通じて媒介される抗原結合の効果のみによるという事実を証明する。事実上、標的細胞はFcの受容体を有していないので、それらはFabのみを対象とし、及び相互作用している。ハイブリドーマは標的細胞で試験された完全なイムノグロブリンを分泌しているが、細胞と相互作用するイムノグロブリンの部分は、抗原結合フラグメントとして作用するFabのみである。
【0068】
まさに請求された抗体及び抗原結合フラグメントに関しては、出願された本出願は、図1におけるデータにより証明されるように、細胞介在性細胞傷害性を示している。上記に指摘され、そして客観的な証拠を介して本明細書中で確認されるように、この効果は、Fabが腫瘍細胞に結合することのみによる。
【0069】
Fcによりリクルートされるエフェクター機構から独立して、抗体が標的抗原に直接結合することにより細胞傷害性を媒介するという現象には、十分な証拠が存在する。このことについての最良の証拠は、補足的な細胞又は補体を含まない(これらの機構を形式的に排除するため)インビトロにおける実験である。これらの型の実験は、完全なイムノグロブリン、又はF(ab)'2フラグメント等の抗原結合フラグメントにより遂行されている。これらの型の実験において、抗体又は抗原結合フラグメントは、抗Her-2及び抗EGFR抗体(いずれも癌治療における販売用として米国FDAにより承認されている)の場合のように、標的細胞のアポトーシスを直接誘起し得る。
【0070】
抗体により媒介される癌の死滅のもう一つの可能な機構は、細胞膜及びそれに付随する糖タンパク質又は糖脂質の様々な化学結合の加水分解を触媒する作用を有する、触媒抗体と称される抗体の使用によるものであり得る。
【0071】
抗体により媒介される癌細胞の死滅には、更なる3つの機構が存在する。第一は、生物体が癌細胞上に存在すると想定される抗原に対する免疫応答の構築を誘起するためのワクチンとしての抗体の使用である。第二は、増殖受容体を標的とし、そしてそれらの機能に干渉するための、又はその受容体の機能を有効に失わせるように下方制御するための抗体の使用である。第三は、TRAIL R1若しくはTRAIL R2等のデスレセプター、又はアルファVベータ3等のインテグリン分子等の結紮(ligation)等の、直接的な細胞死を引き起こし得る、細胞表面部分の直接的な結紮における、そのような抗体の作用である。
【0072】
癌薬物の臨床的有用性は、患者に対する許容されるリスク下のその薬物の利益のプロフィールを基礎とする。癌治療において、生存は一般に最も要求される利益であるが、延命に加えて、周知の他の利益が数多く存在する。これらの他の利益は、生存に不都合な影響を与えない、症状の緩和、副作用からの保護、再発までの期間の延長、又は無病生存率、及び進行までの期間の延長を含む。これらの基準は一般に許容されており、そして米国食品医薬品局(F.D.A)等の規制機関は、これらの利益をもたらす薬物を承認する(Hirschfeld et al. Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42:137-143 2002)。これらの基準に加え、これらの種類の利益を予期させ得る他の評価項目が存在することは周知である。ある部分において、米国F.D.Aにより許可された迅速承認プロセスは、患者の利益を予測するための代用(surrogate)の存在を認めている。2003年末時点で、このプロセスの下で16の薬物が承認されており、そしてその中で、4つが完全承認(full approval)に進んでいる。即ち追試験により代用の評価項目により予測されたような直接的な患者の利益が示されている。固形腫瘍における薬物の効果を判定するための1つの重要な評価項目は、治療に対する応答を測定することによる全身腫瘍組織量の評価である(Therasse et al. Journal of the National Cancer Institute 92(3):205-216 2000)。そのような評価のための臨床基準(RECIST基準)は、癌の国際的エキスパートのグループであるSolid Tumors Working GroupにおけるResponse Evaluation Criteriaにより公表されている。RECIST基準に従う客観的奏効により示されるように、全身腫瘍組織量に対する効果が示された薬物は、妥当なコントロール群の傾向と比較して、究極的には、直接的な患者への利益をもたらす。前臨床的な設定において、全身腫瘍組織量は一般に評価及び記述がより直接的である。前臨床研究が臨床設定に変換され得る場合、前臨床モデルにおいて生存の延長をもたらした薬物は、最良の予想された臨床的有用性を有する。臨床治療に肯定的な応答をもたらすのと同様に、前臨床設定において全身腫瘍組織量を減少させる薬物は、その疾患に対して顕著な直接的な影響をも有し得る。生存の延長は癌薬物治療の最も強く要求される臨床転帰であるが、臨床的有用性を有する他の利益が存在し、そして疾患の進行の遅延、生存の延長、又はそれらの両方に関連し得る全身腫瘍組織量も直接的な利益をもたらし、そして臨床的影響を有することは明白である(Eckhardt et al. Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds; ASCO Educational Book, 39th Annual Meeting, 2003, pages 209-219)。
【0073】
US 6,180,357のプロセスを実質的に使用して、マウスモノクローナル抗体のH460-16-2は、患者の肺腫瘍生検、及び肺癌細胞株のNCI-H460(ATCC, Virginia, MA)に由来する細胞でマウスを免疫付与した後に収得された。H460-16-2抗原は、様々な組織起源の広範なヒト細胞株の細胞表面上に発現されていた。乳癌細胞株のMDA-MB-231(MB-231)及び皮膚癌細胞株のA2058は、インビトロにおいてH460-16-2の細胞傷害作用を受けやすかった。
【0074】
培養下におけるMB-231に対するH460-16-2の細胞傷害性の結果は、マウスに移植されたときのこれらの癌細胞へのその抗腫瘍活性により更に拡張された。(S.N. 10/603,000の開示を参照されたい)。前臨床的異種移植腫瘍モデルは、治療効果の有効な予測因子とみなされる。
【0075】
ヒト乳癌モデルの予防的インビボモデルにおいて、H460-16-2処理は、処理期間中の腫瘍増殖抑制において、アイソタイプコントロール抗体よりも顕著に(p<0.0001)効果的であった。処理期間の終了時点で、H460-16-2が与えられたマウスにおいて生じた腫瘍は、コントロール群の僅か1.3%しか育たなかった。追跡治療期間後の間、H460-16-2の治療効果は持続し、そして測定期間の最後まで、処理群において平均腫瘍体積はコントロールより顕著に小さくあり続けた。生存を抗体の効果の尺度として使用した場合、処理後70日で、H460-16-2で処理された群における死亡のリスクは、抗体緩衝液コントロール群の約71パーセントであることが推定された。これらのデータにより、H40-16-2処理は、コントロール処理群と比較して、生存利益を与えるものであることが示された。H460-16-2処理は、体重減少及び臨床的苦痛を含む傷害性の兆候を何ら誘起しなかったことから、安全であると思われる。故にH460-16-2処理は、よく確立されたヒト乳癌モデルにおいて、コントロール処理群と比較して、腫瘍増殖を遅延させ、及び生存を上昇させたことから、効果的であった。
【0076】
加えて、H460-16-2は、確立されたインビボ腫瘍モデル(S.N. 10/603,000の記載を参照されたい)におけるMB-231に対する抗腫瘍活性を示した。H460-16-2による処理は、標準的な化学治療薬物であるシスプラチンと比較され、そしてシスプラチン及びH460-16-2処理群は、抗体希釈緩衝液又はアイソタイプコントロール抗体のいずれかで処理された群と比較して、平均腫瘍体積が著しく(p<0.001)小さいことが示された。H460-16-2処理により媒介される腫瘍抑制はシスプラチン化学療法の約3分の2であるが、顕著(19.2パーセント)な体重減少(p<0.003)及び臨床的苦痛(シスプラチン治療において観察された2人の治療関連死を含む)を引き起こさなかった。その抗腫瘍活性及びその最小の毒性により、H460-16-2は魅力的な抗癌治療剤となる。
【0077】
治療後の期間において、治療後70日以降、H460-16-2群における死亡リスクはアイソタイプコントロール抗体群の場合の約半分であったことから、H460-16-2は顕著な(p<0.02)生存利益を示した。観察された生存利益は治療後120日まで持続し、100パーセントのアイソタイプコントロール及びシスプラチン処理マウスが死亡したのに対して、H460-16-2処理群は67パーセントであった。アイソタイプコントロール群と比較して腫瘍増殖を26パーセントに遅延させることにより、H460-16-2は腫瘍の抑制を持続させた。治療の31日後、アイソタイプコントロール群と比較して腫瘍増殖を48パーセントに減少させることにより、H460-16-2は腫瘍サイズを制限し、これは治療終了時点において観察された48パーセントの減少と同程度である。乳癌の確立された腫瘍モデルにおいて、これらの結果は哺乳類においてH460-16-2が治療期間を超えて腫瘍抑制を維持する能力を有することを示唆し、そしてその抗体が全身腫瘍組織量を減少させ、及び生存を促進させる能力を有することを示した。
【0078】
確立された乳癌のインビボ腫瘍モデルにおける有益な効果に加えて、化学治療薬物(シスプラチン)と組み合わせられたH460-16-2処理は、確立されたインビボ前立腺癌モデル(S.N. 10/810,165の開示を参照されたい)におけるPC-3細胞に対する抗腫瘍活性を有していた。対応のあるt検定を使用したところ、H460-16-2プラスシスプラチンによる処理が、処理期間直後の腫瘍増殖抑制に、緩衝液コントロール(p<0.0001)、シスプラチン単独処理(p=0.004)又はH460-16-2単独処理(p<0.0001)の場合よりも顕著に有効であった。処理期間の終了時点で、H460-16-2プラスシスプラチンが与えられたマウスに生じた腫瘍は、緩衝液コントロール群の僅か28.5パーセントまでしか成長していなかった。PC-3 SCID異種移植モデルにおいて、体重は疾患進行の代用指標として使用され得る。全ての群のマウスは深刻な体重減少を呈した。この研究において、全ての群のマウスは処理機関終了時点で約23〜35パーセントの体重減少を示した。H460-16-2で処理された群は、体重減少の程度が最も小さかった(21.7パーセント)。処理の48日後、緩衝液コントロールと比較して、H460-16-2及びシスプラチンの処理に関連する体重減少の顕著な増大は認められなかった。故に、よく確立されたヒト前立腺癌モデルにおいて、アイソタイプコントロール処理群と比較して、腫瘍増殖を遅延させたことから、H460-16-2プラスシスプラチン処理は有効であった。
【0079】
H460-16-2エピトープが薬物標的であることを立証するために、正常ヒト組織中のH460-16-2抗原の発現が過去に判定された(S.N. 10/603,000)。この実験は、抗CD44抗体;クローンL178(S.N. 10/647,818に記載される)及びクローンBU75(S.N. 10/810,165に記載される)と比較することにより拡張された。H460-16-2を用いたIHC染色によると、肝臓、腎臓(尿細管上皮細胞の辺縁部の染色を除く)、心臓及び肺等の重要臓器の細胞を含む大方の組織において、H460-16-2抗原を発現していなかった。組織染色により得られた結果は、H460-16-2が様々な細胞種に限定的に結合するが、浸潤性マクロファージ、リンパ球、及び線維芽細胞に対する結合を有することを示唆した。前記BU75抗体は、類似した染色パターンを示した。しかしながら、リンパ球の染色がH460-16-2と比較してBU75の方がより強かったという、注目すべき少なくとも1つの相違点が存在した。
【0080】
H460-16-2抗原の局在性及び乳癌患者間等の集団中のその流行率は、H460-16-12の治療用途の評価及び有効な臨床試験の設定にとって重要である。癌患者から得られた乳房腫瘍におけるH460-16-2抗原の発現を検討するために、50人の乳癌患者から得られた腫瘍組織サンプルが、H460-16-2抗原の発現においてスクリーニング(S.N. 10/603,000)され、そしてそれはL178(S.N. 10/647,818)、BU75(S.N. 10/810,165)及び抗Her2抗体のc-erbB-2(S.N. 10/810,165)の場合と比較された。これらの研究の結果は類似しており、そして62パーセントの組織サンプルにおいてH460-16-2抗原が陽性に染色され、一方73パーセントの乳房腫瘍の組織においてBU75エピトープが陽性であることが示された。患者サンプル中のH460-16-2の発現は、染色が悪性細胞に制限されていたことから、癌細胞に特異的であると思われる。H460-16-2は乳癌患者から得られた通常組織10サンプル中4サンプルを染色したが、一方BU75は8サンプルであった。乳房腫瘍におけるH460-16-2及びBU75の発現はいずれも主に悪性細胞の細胞膜に局在化するように見られることから、CD44を治療の標的とすることは魅力的である。更にH460-16-2の発現は、乳房腫瘍の発生、治療、及び予後に重要な役割を演ずるホルモンであるエストロゲン及びプロゲステロンの受容体の発現に基づいて評価された。H460-16-2抗原の発現とエストロゲン又はプロゲステロンのいずれかの受容体の発現との間には、明らかな関連性は存在しなかった。腫瘍がそれらのステージ、又は癌の進行程度に基づいて解析されたときも、またしてもH460-16-2抗原の発現と腫瘍のステージとの間に明確な関連性は存在しなかった。類似した結果が、BU75においても得られた。H460-16-2抗原が陽性であった乳房腫瘍組織サンプルの52パーセントはHer2が陰性であったというように、c-erbB-2と比較してH460-16-2は完全に異なる染色プロフィールを示し、これは乳癌患者において未だ満たされていない標的治療の需要が存在することを示唆する。また、H460-16-2及びHer2のいずれも要請であった乳房腫瘍の組織切片の中にも、染色の強度において相違が存在した。また、C-erbB-2抗体は正常な乳房組織切片の1つをも陽性に染色した。
【0081】
H460-16-2の潜在的治療利益を更に拡張するために、様々なヒト癌組織中のその抗原の頻度及び局在性も過去に判定され(S.N. 10/603,000)、そしてそれがクローンL178(S.N. 10/647,818)と比較された。これらの腫瘍種の多くのものも、L178抗原が陽性であった。ヒトの乳房腫瘍組織については、H460-16-2及びL178は、腫瘍細胞の表面上に局在が生じていた。しかしながら、H460-16-2抗体と比較して、L178の方が実質的により多く膜に局在していた。また、H460-16-2及びL178の両方に染色された腫瘍種の内43パーセントの組織が、L178抗体においてより高い強度の染色を示した。
【0082】
加えて、前立腺及び肝臓の正常組織及び癌組織中の抗原の頻度及び局在性が、過去に判定されている(S.N. 11/364,013)。前立腺癌アレイによると、19/53(36パーセント)の試験された組織においてH460-26-2が陽性であった。H460-26-2は、腫瘍細胞及び間質線維芽細胞に特異的であった。細胞局在性は、主に管腔局在化を伴うか又は伴わないで、膜及び細胞膜に認められた。陽性の細胞のパーセンテージは、10パーセント未満〜50パーセント超の範囲にあり、これは抗体と腫瘍細胞との結合が不均一であることを示唆する。抗体結合と腫瘍のステージとの関係は、ステージI、II、III、及びIVにおいて腫瘍の数がそれぞれ1/1(100パーセント)、4/12(33パーセント)、0/2(0パーセント)、及び11/33(33パーセント)というように、腫瘍の数がステージの違いにより食い違っていたため、適切に評価することが出来なかった。GleasonスコアG3〜G4の方が、G1〜G2よりも高い結合を示した(36パーセント対24パーセント)。Gleasonスコアは、前立腺癌を格付けするシステムである。Gleason分類は、組織サンプル中の癌の最も大きな2つの領域それぞれに等級を割り当てる。等級は1〜5の範囲にあり、1は最も悪性が低く、そして5は最も悪性である。等級3の腫瘍は、例えば殆ど転移を起こさないが、転移は等級4又は等級5においては普通に起こる。そして、2つの等級が足し合わされてGleasonスコアが得られる。スコア2〜4は低悪性度とみなされ;5〜7は中悪性度;そして8〜10は高悪性度である。低いGleasonスコアの腫瘍は、典型的に、それが患者の生存中に顕著な害となり得ない程度に増殖が遅い。3つ全ての正常の前立腺組織切片は、抗体において陽性であった。しかし、組織特異性は筋上皮及び間質線維芽細胞においてであり、そして腺上皮には及ばない。図12は、試験された前立腺腫瘍に対するH460-16-2の結合の不均一性を示し;10/53、6/53、3/53の陽性腫瘍が、それぞれ10パーセント未満〜10パーセント、50パーセント未満〜50パーセント、及び50パーセント超のカテゴリーに収まる。その前立腺癌細胞への結合の結果、H460-16-2の治療利益は前立腺癌の治療まで潜在的に拡張され得る。
【0083】
肝臓癌アレイによると、H460-16-2抗体は、試験された49種の肝臓癌の内21種(43パーセント)(内訳は、37種の原発性肝細胞癌の内11種(30パーセント)、8種の転移性肝細胞癌の内7種(88パーセント)、2種の原発性胆管癌の内1種(50パーセント)及び2種の転移性胆管癌の内2種(100パーセント))との結合を示した。その抗体は、早期ステージのI及びIIと比較して、進行した腫瘍のステージのIII及びIVにおいて、より顕著に高い結合を示した[ステージI、0/2(0パーセント);ステージII、2/17(12パーセント);ステージIII、8/16(50パーセント);及びステージIV、6/8(75パーセント)]。H460-16-2は腫瘍細胞及び浸潤性炎症細胞に特異的であった。細胞局在性は、主に膜に認められた。幾つかの腫瘍は、細胞質内拡散染色(diffuse cytoplasmic staining)パターンをも示した。その抗体は、9種の非腫瘍性肝組織の内9種と結合した。しかしながら、その結合は類洞細胞及び浸潤性リンパ球に制限された。故に、H460-16−2は、肝臓癌の治療における治療薬物として潜在力を有する。
【0084】
文献情報から得られたIHCデータとの比較を基礎として、本明細書中に提示されるIHCデータと正確に合致する形態のCD44は存在しないと思われる。標準的なCD44の形態は、通常ヒト脳において発現するが、H460-16-2抗原はそうではない。全てのCD44アイソフォームを認識する抗体は、肝臓(クッパー細胞を含む)を染色せず、そして生殖周期の全ての相において子宮内膜腺を陽性に染色する。H460-16-2抗原はクッパー細胞上に明確に存在しており、そしてそれは生殖周期の分泌性の子宮内皮腺にのみ存在する。H460-16-2抗原は組織マクロファージ上に明確に存在し、そして変異形態のV4/5及びV8/9はマクロファージの染色を示すこともある。抗CD44のL178及びBU75と比較して類似するが区別できるH460-16-2の結合パターンから、H460-16-2抗原がCD44の特異なエピトープであることが示唆される。
【0085】
過去に開示されたように(S.N. 10/647,818)、追加的な生化学データも、H460-16-2により認識される抗原がCD44の形態の一つであること示唆した。これは、CD44に対する反応性を有するモノクローナル抗体(L178)が、免疫沈降法によりH460-16-2と結合したタンパク質を同定することを示した研究により支持された。また、ウェスタンブロットの研究は、H460-16-2により認識されるCD44のエピトープがV6又はV10上に存在しないことを示唆した。また、H460-16-2エピトープは糖鎖及び立体構造に依存していることにより峻別されるが、一方多くの抗CD44抗体はCD44のペプチド部分を認識する。これらのIHC及び生化学の結果は、H460-16-2がCD44抗原の変異体に結合することを示す。故に、圧倒的多数の証拠が、H460-16-2がCD44の変異体上に存在する特異な糖鎖依存的立体構造的エピトープの結紮を通じての抗癌作用を媒介することを示した。本発明の目的上、前記エピトープは「CD44抗原部分」と定義され、これはハイブリドーマ細胞株H460-16-2によりコードされるモノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、又はその抗体抱合体に結合する能力により特徴付けられる。
【0086】
H460-16-2の抗癌作用の背後の機構を更に解明するために、ヒアルロン酸(HA)結合アッセイが実行された(S.N. 10/810,165において開示される)。MDA-MB-231細胞のHAへの接着を50%抑制するために、平均濃度が1.87(±1.01)マイクログラム/MLのH460-16-2が必要であることが判定された。これらの結果は、H460-16-2が、HAとの結合に寄与するCD44上の領域(単数又は複数)と少なくとも部分的に相互作用し、そしてその結果、血管新生又はECMを貫く腫瘍の侵襲の下方制御を通じて、その抗癌作用を媒介していることを示唆した。
【0087】
HA結合アッセイに加え、H460-16-2のインビトロ及びインビボでの抗癌作用が細胞周期の制御によるものであるか否かを判定するために、細胞周期実験が実行された(S.N. 10/810,165において開示される)。H460-16-2を添加して24時間後、アイソタイプコントロールと比較して、MDA-MB-231のアポトーシス細胞の数の増大が認められた。また、この効果は、用量依存的であるように思われる。故に、H460-16-2の効果は、全体的又は部分的に、そのアポトーシス誘導能力によるものでもあり得る。
【0088】
H460-16-2の作用の機構を更に解明するために、乳癌異種移植モデル中のインビボで増殖するMDA-MB-231腫瘍におけるH460-16-2のアポトーシスに対する効果が調査された(S.N. 11/364,013において開示される)。アポトーシス細胞は、単独の細胞の消滅、細胞の圧縮、及びクロマチンの密集塊(dense mass)への凝縮等の形態学的基準を使用して計数された。緩衝液コントロール処理群は平均の合計スコアが17細胞(±5.29)であったが、その一方H460-16-2処理群は平均の合計スコアが22.5細胞(±4.20)であった。故に、細胞の形態を用いた判定によると、H460-16-2による処理はアポトーシスを増大させる傾向がある。
【0089】
S.N. 11/364,013に開示されているように、H460-16-2の2つのキメラ版が製造された。一方の版はアイソタイプIgG1、カッパーに由来し((ch)ARH460-16-2-IgGl)、そしてもう一方はアイソタイプIgG2、カッパーに由来する((ch)ARH460-16-2-IgG2)。キメラIgG1及びキメラIgG2分泌性クローンから採取された上澄みはウェスタンブロットにおいてCD44を検出することが可能であり、そのシグナルはマウスH460-16-2で得られたものと類似していた(S.N. 11/364,013において開示される)。
【0090】
確立された乳癌のモデルにおいて、両方のキメラ抗体が、H460-16-2のマウス版と比較された(S.N. 11/364,013において記載される)。マウスH460-16-2及び(ch)ARH460-16-2-IgGlはいずれも、確立されたMDA-MB-231インビボヒト乳癌モデルにおいて腫瘍の増殖を減少させた。最後の用量が投与されてから5日後である62日目の時点で、H460-16-2による処理は39パーセントの腫瘍増殖阻害をもたらした(平均T/C=57パーセント)。この腫瘍増殖の減少は、コントロールと異なり顕著(p=0.0037)であった。キメラ抗体(ch)ARH460-16-2-IgGlは、69パーセントの腫瘍増殖阻害(TGI)の亢進をもたらした(平均T/C=26.9パーセント;p<0.0001)。対象的に、IgG2版のキメラ抗体である(ch)ARH460-16-2-IgG2は、緩衝液コントロールと比較したときに腫瘍増殖の阻害を示さなかった(TGI=0パーセント;平均T/C=122パーセント;p=0.7264)。
【0091】
いずれの版のH460-16-2がマウスの対応物と同じ方法でMDA-MB-231ヒト乳癌細胞株にアポトーシスを誘起することが出来るかを判定するために、アネキシン−V染色が実行された(S.N. 11/364,013において開示される)。アイソタイプコントロールで処理された細胞の自然に起こるアポトーシス作用は、ビヒクルのみで処理された細胞と類似していることが見出された。全てのマウス及びヒトのキメラIgG1及びIgG2 H460-16-2抗体は、それぞれの実験において用量依存的な方式で乳癌細胞株のアポトーシス誘起することが見出されたが、就中(ch)ARH460-16-2 IgGl及びIgG2抗体は、いずれもより強力なアポトーシス作用を示した。結果として、インビトロにおいて(ch)ARH460-16-2-IgG2抗体は、キメラIgG1抗体と比較して最も強力なアポトーシス作用を有することが示唆される。3つの抗体のいずれも、それらの予想されるアイソタイプコントロールを凌ぐ壊死及び壊死/アポトーシス集団のパーセントの増大を示した。壊死及び壊死/アポトーシス集団のパーセントの増大は(ch)ARH460-16-2-IgG2が最大であり、次に(ch)ARH460-16-2-IgG1が、その次にH460-16-2が続くことが認められた。
【0092】
全体として、このデータは、マウス及びキメラH460-16-2抗原が癌関連抗原であり、そしてヒトにおいて発現しており、そして病理学的に関連する癌の標的であることを示す。更に、このデータは、H460-16-2抗体がヒト癌組織に結合し、及びそれが診断、治療又は予後の予測であり得るアッセイに適切に使用され得ることを示す。加えて、殆どの非悪性細胞においてその抗原の発現が欠如していることから、この抗原の細胞膜への局在性は細胞の癌状態を示唆するものであり、そしてこの観察により、この抗原、その遺伝子若しくは誘導体、そのタンパク質又はその変異体を、診断、治療又は予後の予測であり得るアッセイのために使用することが可能となる。
【0093】
抗CD44抗体の使用を含む他の研究は、H460-16-2には示されていない治療可能性の限界を有する。H460-16-2は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても抗腫瘍活性を示す。前記MAK<CD44>M- 1.1.12、 MAK<CD44>M-2.42.3、及び MAK<CD44>M-4.3.16等の抗体は、それら自体によるインビトロ又はインビボの細胞傷害性を有さず、そしてVFF-18 and Mab U36は、固有の腫瘍細胞傷害性を示さない。加えて、インビボの腫瘍効果が示されている他の抗CD44抗体も、H460-16-2では明らかではない一定の限界を有する。例えば、ASMLl.1, K926, 抗CD44類 及びIM-78.1は、ラット、マウス、及び異種移植モデル中で増殖するマウス腫瘍のそれぞれに対してインビボ抗腫瘍活性を示す。H460-16-2は、ヒト癌のモデルにおいて抗腫瘍活性を示す。また、H460-16-2はヒトCD44を認識するが、ASMLl.1等の抗体はラットCD44のみを認識する。クローン515抗CD44抗体は確かにヒト卵巣細胞株の腹膜腫瘍移植を阻害するが、腫瘍増殖を予防又は阻害しない。H460-16-2はSCIDマウス異種移植モデル中のヒト乳房腫瘍の増殖の抑制が可能である。GKW.A3は、予防的なマウス中で増殖するヒト転移性黒色種の腫瘍増殖を抑制することが可能であるが、確立されたモデルでは不可能である。H460-16-2は、ヒト乳癌の予防的、又は確立された異種移植モデルのいずれにおいても顕著な抗腫瘍活性を示している。よって、H460-16-2が過去に記載された抗CD44抗体と比較して優位な抗腫瘍能力を有することは全く明白である。それは、SCIDマウス中のヒト乳房腫瘍に対するインビトロ及びインビボ抗腫瘍活性を示しており、そしてヒトCD44を認識する。また、それはヒト乳癌の予防的、及び確立された(より臨床的に関連性のある)モデルにおける活性を呈し、そしてそれはヒト前立腺癌の確立されたモデルにおいてシスプラチンと共に活性を呈する。
【0094】
本発明は、米国特許第6,180,357号に記載されたプロセスにより開発されたH460-16-2の開発及び使用を記載し、そしてその動物モデル中の腫瘍増殖、及び癌性疾患に苦しむ者の生存期間の延長における効果により特定される。
【0095】
本発明は、標的分子であるCD44上のエピトープ(単数又は複数)に特異的に結合する試薬を記載する点、及びヒト肝臓癌のインビボモデルにおける腫瘍増殖及び転移の阻害を直接媒介する点において、癌治療の分野で進展を表す。本明細書中に記載される圧倒的多数の証拠が、キメラH460-16-2が、肝臓癌(肝細胞を起源とする任意の原発腫瘍又は転移性腫瘍を包含するものとして広く理解され得る)上に発現するCD44上に存在するエピトープの結紮を通じて抗癌効果を媒介することを示す。本出願は、CD44の発現が、転移性及び原発性ヒト肝臓癌細胞株において観察されることを示す。また、本発明は、キメラH460-16-2が、インビボにおいてヒト肝臓癌の転移の負担及び可能性を減少させることを開示する。
【0096】
これは、類似の特性を有するものがこれまでに見出されていないことから、過去に記載された他の抗CD44抗体との関連で進展である。また、それは、特定の種類の癌の増殖及び発達に関連するイベントにおいてCD44の直接の関与を明示することから、この分野において進展を提供する。また、それは、ヒト患者においても相似な抗癌特性を呈する能力を有することから、がん治療における進展を表す。更なる進展は、抗癌抗体のライブラリーにこれらの抗体を包摂することにより、異なる抗癌抗体の適切な組合せを判定することにより、異なる抗原マーカーを発現する腫瘍をターゲティングして、その腫瘍のターゲティング並びに増殖及び発達の阻害において最も効果的なものを見出す可能性を高め得る。
【0097】
全くのところ、本発明は、投与されたとき、哺乳類においてその抗原を発現する癌の全身腫瘍組織量を減少させ(よって疾患の進行を遅延させる)、そして哺乳類においてその抗原を発現する癌の転移の可能性を減少させ得て、そしてまた、処理された哺乳類の延命をもたらし得る治療剤の標的としてのH460-16-2抗原の使用を教示する。また、本発明は、哺乳類において前記抗原を発現する癌の全身腫瘍組織量を減少させるために、及びその抗原を発現する腫瘍を有する哺乳類の延命を行うために、その抗原をターゲティングするための、CDMAB(H460-16-2)、及びその誘導体、リガンド、並びにそれらの抗原結合フラグメントの使用を教示する。また、更に本発明は、H460-16-2抗原を発現する腫瘍を有する哺乳類の診断、治療の予測、及び予防に使用され得る、癌性細胞中のこの抗原の検出の使用を教示する。
【0098】
よって、ハイブリドーマ細胞株、並びにそのハイブリドーマ細胞株がコードする対応する単離されたモノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントを単離するために、特定の個体、又は1つ以上の特定の癌細胞株に対する、癌細胞に対しては傷害性であるが、同時に非癌細胞に対しては相対的に非傷害性である癌性疾患修飾抗体(CDMAB)を生産する方法を利用することは、本発明の目的の1つである。
【0099】
癌性疾患修飾抗体、リガンド、及びそれらの抗原結合フラグメントを教示することは、本発明の追加的な目的である。
【0100】
癌性疾患修飾抗体の細胞傷害性が抗体依存性細胞傷害性を通じて媒介されるその癌性疾患修飾抗体を生産することは、本発明の更なる目的である。
【0101】
癌性疾患修飾抗体の細胞傷害性が補体依存性細胞傷害性を通じて媒介されるその癌性疾患修飾抗体を生産することは、本発明のなおも追加的な目的である。
【0102】
癌性疾患修飾抗体の細胞傷害性が細胞の化学結合の加水分解を触媒する能力の作用であるその癌性疾患修飾抗体を生産することは、本発明のなおも更なる目的である。
【0103】
本発明のなおも更なる目的は、癌の診断、予防、及びモニタリングのための結合アッセイに有用である癌性疾患修飾抗体を生産することである。
【0104】
本発明の他の目的及び利点は、本発明の幾つかの態様を例証及び実施例により説明する以下の記載から明らかになり得る。
【0105】
本特許又は出願書面は、少なくとも1つの色付きで作製された図を含む。色付きの図を付した本特許又は特許出願公表のコピーは、請求及び必要な料金の支払いに応じて省庁により提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】ヒト肝臓腫瘍及び正常ヒト組織マイクロアレイ上に結合するH460-16-2の要約である。
【0107】
【図2】ヒト組織マイクロアレイを利用した、肝臓腫瘍組織に対するH460-16-2(A)又はアイソタイプコントロール抗体(B)、及び非腫瘍性肝臓組織に対するH460-16-2(C)又はアイソタイプコントロール抗体(D)の結合パターンを示す代表的な顕微鏡写真である。H460-16-2は腫瘍細胞において強い陽性の染色を呈した。そして、非腫瘍性肝臓組織においては、染色は類洞細胞(黒矢印)及び浸潤性リンパ球(緑矢印)に限定された。倍率は200xである。
【0108】
【図3】様々なHCC細胞株における、CD44の過剰発現と転移能力との間の関連性を示す。
【0109】
【図4】確立された同所性HCC腫瘍モデルにおける、(ch)ARH460-16-2-IgG1のHCC腫瘍増殖及び転移に対する効果を示す。データポイントは、平均±SEMを表す。
【0110】
【図5】確立された同所性HCC腫瘍モデルにおける、(ch)ARH460-16-2-IgG1の腫瘍増殖に対する定量的効果を示す。棒グラフは、4つの動物の群における腫瘍の基底シグナル(basal signal)を、フォトン/s/cm2/ステリジアン(steridian)で表したものである。各柱は、腫瘍接種後45日目の平均基底レベルシグナルを表す。
【0111】
【図6】確立された同所性HCC腫瘍モデルにおける、(ch)ARH460-16-2-IgG1の原発性腫瘍増殖に対する効果を視覚的に効果を示す。
【0112】
【図7】抗体処理下又は非処理下で起こった異なる部位における転移の数を表にしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0113】
一般的に、以下の用語又は句は、要約書、明細書、実施例、及び特許請求の範囲において使用されたとき、以下に指示された定義を有する。
【0114】
「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、特に、例えば、単一のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体、脱免疫(de-immunized)、マウス、キメラ、又はヒト化抗体を含む)、ポリエピトープ性特異性を有する抗体組成物、単鎖抗体、二機能性抗体(diabody)、三機能性抗体(triabody)、免疫抱合体、並びに抗体フラグメントを含む(下記を参照されたい)。
【0115】
本明細書において使用されるとき、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体、即ち抗体の集団を構成する各抗体が、少数存在し得る潜在的な自然に発生する突然変異体を除いて同一である抗体の集団から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的に単一の抗原部位を認識する。更に、異なる決定基(エピトープ)を認識する異なる抗体を含むポリクローナル抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定期を認識する。それらの特異性に加え、前記モノクローナル抗体は、それらが他の抗体により汚染されること無く合成され得る点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られたときの抗体の特性を示し、そして何らかの特定の方法による抗体の生産を要求するものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に関して使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohler et al, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ(マウス又はヒト)法により生産され得て、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により生産され得る。また、前記「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks et al, J. Mol. Biol, 222:581-597 (1991)において記載される技術を使用した、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0116】
「抗体フラグメント」は、無傷抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合部位又は可変部位を含む。抗体フラグメントの例には、全長に満たない抗体、Fab、 Fab'、 F(ab')2、及び Fvフラグメント;二機能性抗体;線状抗体;単鎖抗体分子;抗体フラグメント(単数又は複数)から形成された単鎖抗体、単一領域抗体分子、融合タンパク質、組換えタンパク質及び多重特異性抗体が含まれる。
【0117】
「無傷」抗体は、抗原結合可変領域、そして軽鎖定常領域(CL)、並びに重鎖定常領域 CHI、CH2、及びCH3を含むものである。前記定常領域は、天然配列定常領域(例えばヒト天然配列定常領域)又はそれらのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、前記無傷抗体は1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0118】
それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、無傷抗体は異なる「クラス」に割り当てられ得る。無傷抗体の5つの主要なクラス:IgA、 IgD、 IgE、 IgG、及びIgMが存在し、そしてこれらの幾つかは更に、例えばIgGl、 IgG2、 IgG3、 IgG4、 IgA、及びIgA2のような「サブクラス」(アイソタイプ)に分けられる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、 δ、 ε、 γ、 及びμと称される。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元形状は周知である。
【0119】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する抗体の生物的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合;補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)の下方制御等が含まれる。
【0120】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害性」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後その標的細胞の溶解を引き起こすという、細胞が介在する反応を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。血球ケイ細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464ページ表3にまとめられている。関心のある分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが遂行され得る。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は加えて、関心のある分子のADCC活性は、例えばClynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)等に記載されているも動物モデルのように、インビボで評価され得る。
【0121】
「エフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、そしてエフェクター機能を遂行する白血球である。好ましくは、その細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、そしてADCCエフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球が含まれ、中でもPMBC及びNK細胞が好ましい。前記エフェクター細胞は、本明細書中に記載されるように、例えば血液又はPBMCのような、それらの天然の供給源から単離され得る。
【0122】
「Fc受容体」又は「FcR」という用語は、ある抗体のFc領域と結合する受容体を記載するために使用される。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体を結合するもの(γ受容体)であり、そしてFcγRI、 FcγRII、 及び FcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子多形及び択一的スプライシング形態を含む。FcγRII受容体はFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、それらは主に細胞質ドメインにおいて相違する類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体であるFcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン活性型モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体であるFcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン阻害型モチーフ(ITIM)を含む(M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)の概説を参照されたい)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haas et al, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。やがて同定されるべきものを含む他のFcRは、本明細書中の「FcR」の用語に包含される。また、この用語は、母体IgGの胎児への移転に関与する新生児受容体のFcRnを含む(Guyer et al, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al, Eur. J. Immunol. 24:2429 (1994))。
【0123】
「補体依存的細胞傷害性」又は「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体システムの第一の成分(C1q)が分子(例えば抗体)と同種抗原との複合体と結合することにより開始される。補体活性を評価するために、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されるようなCDCアッセイが遂行され得る。
【0124】
「可変」という用語は、抗体の間で配列が広く異なる可変領域の部分を指し、そしてそれは特定の抗原に対する特定の抗体の結合及び特異性に使用される、しかしながら、可変性は、抗体の可変領域全体で均等に分布していない。それは、軽鎖及び重鎖可変領域の両方に存在する超可変領域と称される3つのセグメント内に集中している。可変領域のより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。天然の重鎖及び軽鎖の可変領域は、それぞれ4つのFRを含み、β−シート構造を広く採用し、3つの超可変領域により連結され、それらは、β−シート構造を連結する(あるときはその一部分を形成する)ループを形成する。それぞれの鎖における超可変領域は、FRにより接近して結びついており、そして他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照されたい)。定常領域は抗体の抗原との結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)における抗体の関与等の、様々なエフェクター機能を見せる。
【0125】
本明細書中で使用されるとき、「超可変領域」という用語は、抗原との結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(例えば軽鎖可変領域における24〜34残基(L1)、50〜56残基(L2)及び89〜97残基(L3)、並びに重鎖可変領域における31〜35残基(H1)、50〜65残基(H2)及び95〜102残基(H3);Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))及び/又は「超可変ループ」の残基(例えば軽鎖可変領域における26〜32残基(L1)、50〜52残基(L2)及び91〜96残基(L3)、並びに重鎖可変領域における26〜32残基(H1)、53〜55残基(H2)及び96〜101残基(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書中に定義されたような超可変領域残基以外の可変領域残基である。抗体をパパインで消化することにより、「Fab」と称される、単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合フラグメント、及び残余の「Fc」フラグメント(この名称はその容易に結晶化する能力を反映する)が得られる。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有するF(ab')2フラグメントが得られ、それらはなおも抗原を架橋することが可能である。
【0126】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変領域からなる強固で非共有結合的な会合による二量体から構成される。それぞれの可変領域の3つの超可変領域が相互作用して、VH-VL二量体表面上に抗原結合部位を示すことは、この形態によるものである。合計6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変領域(又は抗原に特異的な超可変領域を僅か3つしか含まない半分のFv)であっても抗原を認識し、結合する能力を有する(但し、完全な結合部位よりも親和性は低い)。また、Fabフラグメントは、軽鎖の定常領域及び重鎖の第一の定常領域(CHI)を含む。Fab'フラグメントは、抗体ヒンジ領域に由来する1つ以上のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端が数残基長く残される点で、Fabと相違する。Fab'-SHは、本明細書において、定常領域のシステイン残基(単数又は複数)が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab'の意味である。F(ab')2抗体フラグメントは当初、Fab'フラグメントのペアであって、それらの間にヒンジシステインを有するものとして生産された。また、抗体フラグメントの他の化学カップリング法も既知である。
【0127】
任意の脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づいて、カッパー(κ)及びラムダ(λ)と称される、2つの明確に区別される種類のいずれか1つに分けられ得る。
【0128】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVH 及びVL領域を含み、これらの領域が単一のポリペプチド鎖中に存在するものである。好ましくは、前記Fvポリペプチドは、前記VH とVL領域との間にポリペプチドリンカーを更に含み、これによりscFvが抗原に結合するための所望の構造を形成することが可能となる。scFvの概説として、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer- Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0129】
「二機能性抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体フラグメントであり、それらのフラグメントが可変軽領域(VL)と連結した可変重領域(VH)を同一のポリペプチド中に含むもの(VH-VL)を指す。同一の鎖中の2つの領域の間で対合が生じ得ない程の非常に短いリンカーを使用することにより、それらの領域は強制的に別の鎖の相補的領域と対合し、そして2つの抗原結合部位を形成する。二機能性抗体は、例えばEP 404,097;WO 93/11161;及びHollinger et al, Proc Natl. Acad Sci USA, 90:6444-6448 (1993)等においてより充分に記載されている。
【0130】
「三機能性抗体」又は「三価三量体(trivalent trimer)」という用語は、3つの単鎖抗体の組合せを指す。三機能性抗体は、VL又はVH領域のアミノ酸末端で構築される。即ちリンカー配列を有しない。三機能性抗体は3つのポリペプチドが頭部と尾部で連結して環状に配置されることにより3つのFv頭部を有する。三機能性抗体の可能な立体構造は、3つの結合部位が他のものに対し120度の角度を付けて平面的に配置された、3つの結合部位を有する平面である。三機能性抗体は、単一特異性、二重特異性、又は三重特異性であり得る。
【0131】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され、そして分離及び/又は回収された抗体である。その自然環境の混入成分は、その抗体の診断的又は治療的使用に干渉し得る物質であり、そして抗体、ホルモン、及び他のタンパク質系又は非タンパク質系の溶質を含み得る。単離された抗体には、組換え細胞中のその場の(in situ)抗体が含まれる。なぜなら、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分は存在し得ないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製され得る。
【0132】
例えばCD44抗原部分のような関心のある抗原に「結合する」抗体は、その抗体がその抗原を発現する細胞を標的とするものとして治療剤又は診断剤として有用である程度に抗体と充分な親和性で結合することが可能な抗体である。その抗体がCD44抗原部分に結合するものである場合は、それは通常、他の受容体とは異なり選択的にCD44抗原部分と結合し、そして非特異的Fc接触、又は他の抗原に一般的な翻訳後修飾との結合等の偶発的な結合を含まず、そして他のタンパク質と顕著な免疫交差反応を起こさないものであり得る。関心のある抗原に結合する抗体の検出のための方法は当業者に周知であり、そして、限定されないが、FACS、細胞ELISA及びウェスタンブロット等のアッセイが含まれ得る。
【0133】
本明細書中で使用されるとき、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は、同様の意味で使用され、そして全てのそのような意味は、子孫細胞(progeny)を含む。また、意図的な、又は故意ではない突然変異が起こるので、全ての子孫細胞が正確に同一のDNA構成であるとは限らない。当初形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同一の機能又は生物活性を有する突然変異した子孫細胞が含まれる。格別の意味が意図される箇所では、それは文脈から明白であり得る。
【0134】
「治療(Treatment)又は治療(treating)」は、いずれも治療的処置及び予防的又は防止的測定を指し、ここでその目的は、標的とする病状又は疾患を防止又は減衰(減少)させることである。治療が必要な者には、既に罹患している者、或いは罹患傾向がある者、又はその疾患を予防しようとする者が含まれる。故に、本明細書中で治療されるべき哺乳類は、罹患時、又は罹患傾向若しくは罹患が疑われるときに、診断を受けている場合がある。
【0135】
「癌」及び「癌性」という用語は、制御を脱した細胞の増殖又は死滅により典型的に特徴付けられる、哺乳類における生理的状態を指し、又は記述する。癌の例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性悪性疾患が含まれる。そのような癌のより具体的な例には、扁平上皮癌(例えば上皮扁平細胞癌)、小細胞肺癌非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、消化器癌を含む食道癌又は胃癌、膵臓癌(liver cancer)、グリア芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌(hepatoma)、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓又は腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、肛門癌、陰茎癌、及び頭頸部癌が含まれる。
【0136】
「化学治療剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学治療剤の例には、チオテパ(thiotepa)及びシクロスホスファミド(cyclosphosphamide) (CYTOXAN(登録商標))等のアルキル化剤;ブルスファン(busulfan)、インプロスルファン(improsulfan)及びぴぽするファン( piposulfan)等のスルホン酸アルキル剤;ベンゾドパ(benzodopa)カルボクオネ(carboquone)メツレドパ(meturedopa)及びウレドパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンホスホルアミド(triethylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphoramide)及びトリメチルオロメラミン(trimethylolomelamine)等のエチレンイミン及びメチラメラミン;クロラムブシル(chlorambucil)、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミン酸化物塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン(melphalan)、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード(uracil mustard)等のニトロジェンマスタード;カルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine)等のニトロソウレア(nitrosurea);アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、クチノマイシン(actinomycin)、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン類(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアミシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルノマイシン(carnomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycins)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(6-diazo-5-oxo-L- norleucine)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類(mitomycins)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン類(olivomycins)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ユベニメックス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)等の抗生物質;メトトレキサート(methotrexate)及び5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)(5-FU)等の代謝競合物質;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート(methotrexate)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート(trimetrexate)等の葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン(6- mercaptopurine)、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン(thioguanine)等のプリン類似体;アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(6- azauridine)、カルモフル(carmofur)、シタラビン(cytarabine)、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ジオキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フルオキシウリジン(floxuridine)、5-FU等のピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone)等のアンドロゲン;アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane)等の抗副腎物質(anti-adrenals);フロリン酸(frolinic acid)等の葉酸補充物質(folic acid replenisher);アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム(gallium nitrate);ヒドロキシ尿素(hydroxyurea);レンチナン(lentinan);ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメト(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド(2- ethylhydrazide);プロカルバジン(procarbazine);PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン(2,2',2''-trichlorotriethylamine);ウレタン(urethan);ビンデシン(vindesine);ダカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside)(「Ara-C」);シクロホスファミド(cyclophosphamide);チオテパ(thiotepa);パクリタキセル(paclitaxel)(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)及びドセタキセル(docetaxel)(TAXOTERE(登録商標), Aventis, Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France)等のタキサン;クロラムブシル(chlorambucil);ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン(6-thioguanine);メルカプトプリン(mercaptopurine);メトトレキサート(methotrexate); シスプラチン(cisplatin)及びカルボプラチン(carboplatin)等のプラチナ類似体;ビンブラスチン(vinblastine);プラチナ(platinum);エトポシド(etoposide)(VP- 16);イフォスファミド(ifosfamide);マイトマイシンC(mitomycin C);ミトキサントロン(mitoxantrone);ビンクリスチン(vincristine);ビノレルビン(vinorelbine);ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド(teniposide);ダウノマイシン(daunomycin);アミノプテリン(aminopterin);キセロダ(xeloda);イバンドロン酸塩(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000);ジフルオロメチルオルニチン(difluoromethylornithine)(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン(esperamicins);カペシタビン(capecitabine); 並びに上記のいずれかの医薬として許容される塩、酸又は誘導体が含まれる。また、この定義には、例えば、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-hydroxytamoxifen)、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LYl 17018、オナプリストン(onapristone)、及び(toremifene)(Fareston)等を含む抗エストロゲン;並びにフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、及びゴセレリン(goserelin)等の抗アンドロゲン;並びに上記のいずれかの医薬として許容される塩、酸、又は誘導体等の、腫瘍に対するホルモンの作用を制御又は抑制する、抗ホルモン剤も含まれる。
【0137】
診断の目的である「哺乳類」は、ヒト、マウス、SCID若しくはヌードマウス若しくはマウスの系統、ヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の家畜、並びに動物園用、競技用、又はペット用動物を含む、哺乳類として分類される任意の動物を指す。好ましくは、本明細書中の動物はヒトである。
【0138】
「オリゴヌクレオチド」は、1988年4月に公表されたEP 266,032に記載された固相技術を使用する、又はFroehler et al., Nucl Acids Res., 14:5399-5407, 1986により記載されたH-ホスホン酸デオキシヌクレオシド中間体を介する、既知の方法(ホスホトリエステル、亜リン酸塩、又はホスホミダイト化学等により化学的に合成される、短い単鎖又は二重鎖ポリデオキシヌクレオチドである。そしてそれらは、ポリアクリルアミドゲルを用いて精製される。
【0139】
本発明において、非ヒト(例えばマウス)イムノグロブリンの「ヒト化」及び/又は「キメラ形態は、元の抗体と比較してヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、又はヒト抗ヒト抗体(HAHA)反応の減少をもたらす、特定のキメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖、又はそれらのフラグメント(抗体のFv、Fab、 Fab'、F(ab')2、又は他の抗原結合性サブ配列等)を含み、そして所望の効果を再現するために必要である、前記非ヒトイムノグロブリンに由来する必須部分(例えばCDR(単数又は複数)、抗原結合領域(単数又は複数)、可変領域(単数又は複数)等)を含むが、同時に前記非ヒトイムノグロブリンと同程度の結合特性を保持する抗体を指す。殆どの場合、ヒト化抗体は、ヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)の相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性、及び容量を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基により置換されたレシピエント抗体である。場合によっては、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトFR残基により置換される。更に、前記ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDR又はFR配列にも見出されない残基を含み得る。これらの変更は、抗体の性能を更に洗練させ、そして最適化するためになされる。一般に、前記ヒト化抗体は、実質的に全てのものが少なくとも1つの、典型的には2つの可変部領域を含み得て、ここで、全て又は実質的に全てのCDR領域は非ヒトイムノグロブリンに対応しており、そして全て又は実質的に全てのFR残基はヒトイムノグロブリンコンセンサス配列のものである。また、ヒト化抗体は、典型的にはヒトイムノグロブリンに由来する、少なくとも一部のイムノグロブリン定常領域(Fc)を含み得る。
【0140】
「脱免疫化」抗体は、所定の種に対して免疫原性が無く、又は免疫原性が低いイムノグロブリンである。脱免疫化は、抗体を構造的に変化させることにより達成され得る。当業者に既知の任意の脱免疫化技術が採用され得る。抗体を脱免疫化セセルための1つの適切な技術は、例えば2000年6月16日に公表されたWO 00/34317に記載されている。
【0141】
「アポトーシス」を誘導する抗体は、制限されないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞の圧縮、小胞体の膨張、細胞の断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス体と称される)の形成により示される、何らかの原因によるプログラムされた細胞死を誘導する抗体である。
【0142】
本明細書中で使用されるとき、「抗体誘起性細胞傷害性」は、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産されたハイブリドーマ上澄又は抗体、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産された単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産された単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、それらの抗原結合フラグメント、又は抗体リガンドに由来する細胞傷害作用を意味するものとして理解され、その作用は必ずしも結合の程度に関連しない。
【0143】
本明細書全体において、ハイブリドーマ細胞及びそれから生産される単離されたモノクローナル抗体は、内部の表示ではH460-16-2 (マウス)、(h)ARH460-16-2-IgGl, (ch)ARH460-16-2-IgGlと、又は寄託表示(Depository Designation)ではATCC PTA-4621と代替的に称される。
【0144】
本明細書中で使用されるとき、「抗体リガンド」は、標的抗原の少なくとも1つのエピトープにに対する結合特異性を呈する部分を含み、それは無傷抗体分子、抗体フラグメント、及びそれらの少なくとも1つの抗原結合領域又は部分を有する任意の分子であり得て(即ち、抗体分子の様々な部分)、例えばATCC PTA-4621として表示されるハイブリドーマ細胞株により生産される単離されたモノクローナル抗体により結合される抗原(ATCC PTA-4621抗原)の少なくとも1つを特異的に認識し、結合するFv分子、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、二重特異性抗体、融合タンパク質、又は任意の組換え分子、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体のキメラ化抗体、及びそれらの抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0145】
本明細書中で使用されるとき、「癌性疾患修飾抗体(CDMAB)」は、例えば腫瘍患者の全身腫瘍組織量を減少し、又は生存期間を延長させることより、患者にとって有益である形で癌性疾患プロセスを調節するモノクローナル抗体、及びそれらの抗体リガンドを指す。
【0146】
「CDMAB関連結合剤」は、その最も広い意味において、限定されないが、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する、任意の形態のヒト又は非ヒト抗体、抗体フラグメント、抗体リガンド等を含むものと解される。
【0147】
「競合的結合剤」は、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに対して結合親和性を有する、任意の形態のヒト又は非ヒト抗体、抗体フラグメント、抗体リガンド等を含むものと解される。
【0148】
治療されるべき腫瘍には、原発性腫瘍及び転移性腫瘍、あるいは難治性腫瘍が含まれる。難治性腫瘍には、化学治療剤単独、抗体単独、放射線単独、又はそれらの組合せに反応しない、又は体制である腫瘍が含まれる。また、難治性腫瘍は、そのような薬剤での治療により阻害されたように見えるが、治療終了後5年以内に、場合によっては10年以上も後になって再発する腫瘍も包含する。治療され得る腫瘍には、血管新生が起こらないもの、又は未だ実質的に血管新生が起こっていないもの、あるいは血管新生がなされた腫瘍が含まれる。結果的に治療され得る固形腫瘍の例には、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、グリア腫及びリンパ腫が含まれる。そのような腫瘍の幾つかの例には、類表皮腫瘍、頭頸部腫瘍等の扁平上皮腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、小細胞腫及び非小細胞腫を含む肺腫瘍が含まれる。他の例には、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫及び脳転移、黒色腫、消化器及び腎臓の癌腫及び肉腫、横紋筋肉腫、好ましくは多形グリア芽腫であるグリア芽腫、及び平滑筋肉腫が含まれる。
【0149】
本明細書中で使用されるとき、「抗原結合領域」は、その標的抗原を認識する分子の部分を意味する。
【0150】
本明細書中で使用されるとき、「競合的に阻害する」は、ATCC PTA-4621として表示されるハイブリドーマ細胞株により生産されたモノクローナル抗体(ATCC PTA-4621抗体)、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産された単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産された単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、それらの抗原結合フラグメント、又は抗体リガンドが決定部位を認識し、そして結合することが可能であることが、確立された逆抗体競合アッセイ(Belanger L., Sylvestre C. and Dufour D. (1973), Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures. Clinica Chimica Acta 48, 15)を使用して導き出されることを意味する。
【0151】
本明細書中で使用されるとき、「標的抗原」は、ATCC PTA-4621抗原又はその部分である。
【0152】
本明細書中で使用されるとき、「免疫抱合体」は、細胞毒、放射性医薬品、サイトカイン、インターフェロン、標的若しくは受容体部分、酵素、毒物、抗腫瘍薬物、又は治療剤と科学的又は生物的に連結した抗体等の任意の分子又はCDMABを意味する。前記抗体又はCDMABは、細胞毒、放射性医薬品、サイトカイン、インターフェロン、標的若しくは受容体部分、酵素、毒物、抗腫瘍薬物、又は治療剤と、それがその標的と結合することが可能である限り、その分子中の任意の位置で連結され得る。免疫抱合体の例には、抗体毒化学抱合体(antibody toxin chemical conjugate)及び抗体毒融合タンパク質(antibody-toxin fusion protein)が含まれる。
【0153】
抗腫瘍剤としての使用に適した放射性医薬品は、当業者に既知である。例えば、131I又は211Atが使用される。これらの放射性同位体は、確立された技術(例えばPedley et al, Br. J. Cancer 68, 69-73 (1993))を使用して抗体と連結される。あるいは、抗体と連結された抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化させる酵素である。プロドラッグは、それが腫瘍部位に到達するまではその不活性形態を維持するように投与され得て、一旦前記抗体複合体が投与されると、腫瘍部位においてそれはその細胞傷害性形態に転換する。実際に、前記抗体酵素抱合体は患者に投与され、そして治療されるべき組織の領域に局在化する。それから前記プロドラッグが患者に投与され、治療されるべき組織の領域における細胞傷害性薬物への転換が引き起こされる。あるいは、抗体に縫合される抗腫瘍剤は、インターロイキン−2、インターロイキン−4、又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)等のサイトカインである。その抗体はサイトカインを腫瘍に集中することにより、他の組織に影響を与えること無く、腫瘍に対するダメージ又は破壊を媒介する。サイトカインは、確立された組換えDNA技術を使用して、DNAレベルで抗体と融合される。また、インターフェロンも使用され得る。
【0154】
本明細書中で使用されるとき、「融合タンパク質」は、抗原結合領域が、例えば毒素、酵素、蛍光タンパク質、発光マーカー、ポリペプチドタグ、サイトカイン、インターフェロン、標的若しくはレポーター部分、又はタンパク薬物等の生物的活性分子と連結される、任意のキメラタンパク質を意味する。
【0155】
本発明は、標的又はレポーター部分が結合した、本発明に係るCDMABを更に意図する。標的部分は結合ペアの第一のメンバーである。例えば抗腫瘍剤は、そのペアの第二のメンバーに抱合されることにより、抗原結合タンパク質が結合する部位に指向する。そのような結合ペアの通常の例は、アビジン及びビオチンである。一の好ましい態様において、ビオチンは本発明に係るCDMABの標的抗原に抱合されることにより、アビジン若しくはストレプトアビジンに抱合される抗腫瘍剤又は他の部分の標的を提供する。あるいは、ビオチン又はもう1つのそのような部分は、本発明に係るCDMABの標的抗原と連結し、そして例えば検出可能なシグナル生産薬剤がアビジン又はストレプトアビジンに抱合されている診断システムにおいてレポーターとして使用される。
【0156】
検出可能なシグナル生産薬剤は、インビボ又はインビトロの診断目的において有用である。前記シグナル生産薬剤は、通常は電磁放射腺の手段である外部的手段により検出可能である測定可能なシグナルを生産する。殆どの場合、前記シグナル生産薬剤は、酵素若しくは発色団であり、又は蛍光、燐光、若しくは化学発光により光を発する。発色団は紫外又は可視領域において光を吸収する色素を含み、そして酵素により触媒される反応の基質又は分解産物であり得る。
【0157】
更に、本発明の範囲内には、本CDMABの当業者に周知であるインビボ及びインビトロでの調査又は診断法のための使用が含まれる。本明細書中で意図されるような診断方法を実行するために、本発明は、本発明のCDMABを含むキットを更に含み得る。そのようなキットは、個体の細胞上にあるCDMABの標的抗原の過剰発現を検出することにより、その個体の特定の種の癌のリスクを識別するために有用であり得る。
【0158】
診断アッセイキット
本発明に係る任意の適切なCDMABを診断アッセイキットの形で腫瘍の存在を判定するために利用することが意図される。その腫瘍は一般的に、血液、血清、尿及び/又は腫瘍生検等の、既に患者から収得されている場合がある生物サンプル中の、例えばタンパク質及び/又はそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチド等の1つ以上の腫瘍特異的抗原の存在を基礎として検出され得る。
【0159】
それらのタンパク質は、例えば結腸、乳房、肺、又は前立腺の腫瘍等の特定の腫瘍の存在又は不存在を示すマーカーとして機能する。更に、その抗原は、他の癌性腫瘍の検出の用途を有し得ることが意図される。本発明に係るCDMABを含む結合剤又はCDMABに関連する結合剤の診断アッセイキット内の含有物により、生物サンプル内でその薬剤に結合する抗原のレベルを検出することが可能となる。ポリヌクレオチド及びプローブは、腫瘍タンパク質をコードするmRNAのレベルを検出するために使用され得て、またそれらは癌の存在又は不存在を示す。診断されるべき結合アッセイのために、癌性腫瘍の存在を決定的に特徴付ける結合の認識を表現するように、正常組織に存在するものとの関連で統計的に顕著なレベルの抗原に相互関連するデータが生産されることとなる。当業者に知られているように、本発明に係る診断アッセイにおいて、サンプル中のポリペプチドマーカーを検出するための結合剤を使用するための、多くの構成が有用であり得ることが意図される。例えばそれらは、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapters 9-14, 1988において説明されている。更に、前記診断アッセイの構成の、任意の及び全ての組合せ、置換、又は変更が意図される。
【0160】
患者体内における癌の存在又は不存在は、典型的には、(a)患者から得られた生物サンプルと結合剤とを接触させ;(b)そのサンプルにおけるその結合剤と結合するポリペプチドのレベルを検出し;そして(c)そのポリペプチドのレベルと予め定められたカットオフ値とを比較することにより判定され得る。
【0161】
一の具体的態様において、アッセイは、サンプルの残りのポリペプチドと結合し、そしてそのポリペプチドを取り出すための、固相担体上に不動化されたCDMABを基礎とする結合剤の使用を含み得ることを意図する。そして、結合したポリペプチドは、レポーター基を含み、及び結合剤/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を使用して検出され得る。具体的には、検出試薬は、そのポリペプチドと特異的に結合するCDMABを基礎とする結合剤、又はその結合剤と特異的に結合する抗体若しくは他の試薬であり、抗イムノグロブリン、プロテインG、プロテインA、又はレクチン等が含まれる。他の一の態様において、競合アッセイが使用され得ることが意図され、ここで、ポリペプチドがレポーター基で標識され、そして不動化した結合剤をサンプルと共にインキュベーションした後に、その結合剤にそのポリペプチドを結合させる。そのサンプルの不動化した結合剤との反応性の指標は、サンプルの成分が結合剤へのラベルされたポリペプチドの結合を抑制する程度である。そのようなアッセイにおける使用に適したポリペプチドには、結合剤が結合親和性を有する完全長腫瘍特異的タンパク質及び/又はそれらの部分が含まれる。
【0162】
前記診断キットは、当業者に既知である、タンパク質が結合し得る任意の材料の形態であり得る固相担体で提供され得る。適切な例には、マイクロタイタープレートのテストウェル、又はニトロセルロース若しくは他の適切な膜が挙げられる。あるいは、前記担体は、ガラス、線維ガラス、ラテックス、又はポリスチレン若しくはポリ塩化ビニル等のプラスチック材料等のビーズ又はディスクであり得る。また、前記担体は、磁性粒子、又は例えば米国特許第5,359,681号において開示される光ファイバーセンサーであり得る。
The support may also be a magnetic particle or a fiber optic sensor, such as those disclosed, for example, in U.S. Pat. No.5,359,681.
【0163】
前記結合剤は、当業者に既知であり、特許及び学術文献に十分に記載されている様々な方法を使用して、固相担体上に不動化され得る。「不動化」という用語は、吸着等の非共有結合と共有結合の両方を指し、本発明の文脈においては、担体上での薬剤と官能基との間の直接的な連結、又は架橋剤の作用による連結であり得る。限定されないが、好ましい一の態様は、マイクロタイタープレートのウェルへの、又は膜への吸着による不動化が好ましい。吸着は、適切な緩衝液中で、結合剤と固相担体とが、適切な時間接触することにより達成され得る。その接触時間は温度により変化し得るが、一般的には約1時間〜約1日の範囲内であり得る。
【0164】
結合剤の固相担体への共有結合は通常、最初にその担体と、その結合剤上のヒドロキシル又はアミノ等の官能基との両方と反応し得る二機能性試薬でその担体を反応させることにより遂行される。例えば、前記結合剤は、ベンゾキノンを使用して、又は担体上のアルデヒド基と結合パートナー上のアミン及び活性水素との縮合により、適切なポリマーコーティングを有する担体上に共有結合され得る。
【0165】
前記診断アッセイキットは、2抗体サンドイッチアッセイの形態をとり得ることが更に意図される。このアッセイは、最初に例えば通常マイクロタイタープレートである固相担体上に不動化された本明細書中で開示されるCDMABとサンプルとを接触させることにより、そのサンプル中のポリペプチドのその不動化された抗体への結合を可能とする。それから未結合のサンプルは不動化されたポリペプチド−抗体複合体から除去され、そしてレポーター基を含む検出試薬(好ましくはそのポリペプチド上の異なる部位に結合することか可能である二次抗体)が添加される。そして前記固相単体への結合を担持する検出試薬の量は、個別のレポーター基に適切な方法を使用して判定される。
【0166】
特定の態様において、上記の如く一旦抗体が担体上に不動化された後、その担体上の残ったタンパク質結合部位は、ウシ血清アルブミン又はTween20(登録商標) (Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)等の当業者に既知である任意の適切なブロッキング試薬の使用によりブロックされ得ることが意図される。そして、その不動化された抗体は、サンプルと共にインキュベートされ、そしてポリペプチドがその抗体に結合することが可能となる。前記サンプルは、インキュベーションに先立ち、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の適切な希釈剤で希釈され得る。一般的に、適切な接触時間(即ち、インキュベーション時間)は、具体的に選択された腫瘍について個体から得られたサンプル内のポリペプチドの存在を検出するのに十分な期間に対応するように選択され得る。好ましくは、前記接触時間は、結合及び非結合ポリペプチドの間の平衡で少なくとも95%の結合のレベルが達成されるのに十分なものである。当業者は、平衡に達するのに必定な時間が、期間中に生じる結合のレベルを測定することにより容易に判定され得ることを認識する。
【0167】
そして、未結合のサンプルは、適切な緩衝液により固相担体を洗浄することにより除去され得ることが更に意図される。そして、レポーター基を含む二次抗体が、その固相担体に添加され得る。そして、その検出試薬を不動かされた抗体−ポリペプチド複合体と共にインキュベーションすることは、結合したポリペプチドの検出に十分な時間遂行され得る。その後、未結合の検出試薬は除去され、そして結合した検出試薬は、レポーター基を使用して検出され得る。レポーター基を検出するために採用される方法は、選択されたレポーター基の種類により必然的に特異的であり、例えば放射性基においては、シンチレーション計数又はオートラジオグラフィーが一般に適している。分光法は、色素、発光基、及び蛍光基の検出に使用され得る。ビオチンは、異なるレポーター基(通常、放射性若しくは蛍光基又は酵素)と会合したアビジンを使用して検出され得る。酵素レポーター基は、一般に、基質が添加(一般に特定の時間中)された後、分光法又は反応産物の他の分析がなされることにより検出され得る。
【0168】
前立腺癌等の癌の存在又は非存在を判定するための本発明の診断アッセイキットを利用するために、固相担体への結合を担持するレポーター基から検出されたシグナルは、一般に予め定められたカットオフ値に対応するシグナルと比較され得る。例えば、癌の検出を例示するカットオフ値は、不動化した抗体が癌を含まない患者のサンプルと共にインキュベートされたときに得られた平均のシグナルであり得る。一般的に、予め定められたカットオフ値を超えて約3の標準偏差であるシグナルを生ずるサンプルは、癌として陽性とみなされ得る。別の態様において、カットオフ値は、Sackett, Clinical Epidemiology. A Basic Science for Clinical Medicine, Little Brown and Co., 1985, p. 106-7の方法に従い、Receiver Operator Curveを使用することにより判定され得る。そのような態様において、カットオフ値は、診断試験結果におけるそれぞれの見込みカットオフ値に対応する、真陽性率(true positive rate )(即ち感受性)と偽陽性率(false positive rate)(100パーセント−特異性)とのペアのプロットから判定され得る。左上隅に最も近いプロットのカットオフ値(即ち、最大の領域を含める値)は最も正確なカットオフ値であり、そして本方法により判定されるカットオフ値より高いシグナルを生じるサンプルは陽性とみなされ得る。あるいは、前記カットオフ値はプロットに沿って左にシフトして擬陽性率を最小化し得て、又は右にシフトして擬陰性率を最小化し得る。一般に、本発明により判定されるカットオフ値より高いシグナルを生じるサンプルは、癌として陽性であるとみなされる。
【0169】
本キットによりなされる診断アッセイは、フロースルー又はストリップ試験方式のいずれかにおいて実行され得て、ここで、結合剤は、ニトロセルロース等の膜上に不動化される。フロースルー試験において、サンプル中のポリペプチドは、そのサンプルがその膜を通過するときに、その不動化された結合剤に結合する。そして標識された二次結合剤が、その二次結合剤を含む溶液がその膜を通過するときに、その結合剤−ポリペプチド複合体に結合する。そして、結合した二次結合剤の検出は、上記のごとく実行される。ストリップ試験方式において、結合剤が結合している膜の一端が、サンプルを含む溶液中に浸され得る。そのサンプルは、二次結合剤を含む領域を通過し、そして不動化された結合剤の領域まで膜内を移動する。不動化された抗体の領域における二次結合剤の濃度は、癌の存在を表示する。結合部位において線形等の視覚的に読み取ることが出来るパターンが形成されることは、試験が陽性であることを示すものであり得る。そのようなパターンが存在しないことは、陰性の結果を示す。一般的に、膜上に不動化された結合剤の量は、生物サンプルが、2抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグナルを生じるのに十分であり得るレベルのポリペプチドを含むときに、上に考察された方式において視覚的に認識できるパターンを生ずるように選択される。本診断アッセイにおける使用に好ましい結合剤は、本明細書中に開示された抗体、それらの抗原結合フラグメント、及び本明細書中に記載されたようなCDMAB関連結合剤である。膜上に不動化される抗体の量は、診断アッセイを構成するのに有効な任意の量であり得て、そして約25ナノグラム〜約1マイクログラムの範囲であり得る。典型的には、そのような試験は、極めて少量の生物サンプルをもって実行され得る。
【0170】
加えて、本発明に係るCDMABは、その標的抗原を同定する能力のため、研究用に研究室内で使用され得る。
【0171】
本明細書中に記載される発明がより完全に理解されるように、以下の記載において説明する。
【0172】
本発明は、ATCC PTA-4621抗原を特異的に認識し、結合する、CDMAB等(即ち、ATCC PTA-4621 CDMAB、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体のヒト化抗体、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合フラグメント、又はそれらの抗体リガンド)を提供する。
【0173】
受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体のCDMAB等は、それが、ハイブリドーマATCC PTA-4621により生産される単離されたモノクローナル抗体のその標的抗原への免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を有しているものである限りにおいて、任意の形態であり得る。従って、ATCC PTA-4621抗体と同じ結合特異性を有する任意の組換えタンパク質(例えば、抗体と、リンホカイン又は腫瘍阻害性増殖因子等の二次タンパク質との融合タンパク質)は、本発明の範囲内に含まれる。
【0174】
本発明の一の態様において、CDMABは、ATCC PTA-4621抗体である。
【0175】
他の態様において、CDMABは、ATCC PTA-4621抗体のFv分子(単鎖Fv分子等)、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、融合タンパク質、二特異性抗体、ヘテロ抗体、又は抗原結合領域を有する任意の組換え分子であり得る抗原結合フラグメントである。本発明に係るCDMABは、ATCC PTA-4621モノクローナル抗体が指向するエピトープに指向する。
【0176】
本発明に係るCDMABは、修飾(その分子内のアミノ酸を変更することにより派生的な分子を生産する)され得る。また、化学的修飾もなされ得る。また、直接的な突然変異、親和性成熟の手法、ファージディスプレイ、又はチェーンシャッフリング法による修飾もなされ得る。
【0177】
親和性及び特異性は、CDR及び/又はフェニルアラニン・トリプトファン残基の突然変異、並びに所望の特性を有する抗原結合部位のスクリーニングにより、改変又は改善され得る(例えば、Yang et al, J. Mol. Biol., (1995) 254: 392-403)。一つの手段は、ある他の同一の抗原結合部位の集団において、2〜20アミノ酸のサブセットが特定の位置に見出されるように、各々の残基又は複数の残基の組合せを無作為化することである。あるいは、突然変異は、変異性PCR法による広範囲の残基に渡り誘起され得る(例えば、Hawkins et al, J. Mol. Biol., (1992) 226: 889-96)。もう一の例において、重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含むファージディスプレイベクターは、E. coliの突然変異誘発株において増殖され得る(例えば、Low et al, J. Mol. Biol., (1996) 250: 359-68)。これらの突然変異生成は、当業者に既知の多くの方法が例示されている。
【0178】
本発明に係る抗体の親和性を増大させるもう一の手段はチェーンシャッフリングを遂行することであり、高い親和性を有する抗体を調製するために、重鎖又は軽鎖は無作為に他の重鎖又は軽鎖と組み合わせられる。また、抗体の様々なCDRも、他の抗体の対応するCDRとシャッフルされ得る。
【0179】
派生分子は、そのポリペプチドの機能特性を担持するべきである。即ち、そのような置換等を有する分子は、なおもそのポリペプチドのIDAC 051206-01抗原又はその部分への結合を許容し得る。
【0180】
これらのアミノ酸置換は、必ずしも限定されないが、「保存的」であるとして当業者に知られているアミノ酸置換を含む。
【0181】
例えば、「保存的アミノ酸置換」と称される特定のアミノ酸置換は、そのタンパク質の立体構造又は機能のいずれの変化も伴わず、タンパク質において頻繁になされ得ることは、タンパク質化学のよく確立された原則である。
【0182】
そのような変化には、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びロイシン(L)のいずれかの、他のこれらの疎水性アミノ酸のいずれかへの置換;アスパラギン酸(D)のグルタミン酸(E)への置換、又はその逆;グルタミン(Q)のアスパラギン(N)への置換及びその逆;並びにセリン(S)のスレオニン(T)への置換及びその逆が含まれる。また、特定のアミノ酸の環境及びそのタンパク質の三次元構造における役割に依存して、他の置換も保存的であるとみなされる場合がある。例えば、グリシン(G)及びアラニン(A)は、アラニン及びバリン(V)と頻繁に互換可能であり得る。相対的に疎水性であるメチオニン(M)は、ロイシン及びイソロイシン、そして場合によってはバリンと頻繁に互換され得る。リシン(K)及びアルギニン(R)は、頻繁に位置が入れ替わる。ここで、アミノ酸残基の顕著な特徴はその電荷であり、これらの2つのアミノ酸残基のpKが異なることは顕著なものではない。特定の環境において、なおも他の変化が「保存的」とみなされ得る。
【実施例】
【0183】
実施例1
比と肝臓腫瘍組織染色
H460-16-2のヒト肝臓腫瘍組織への結合を更に評価するために、IHC研究が実施された。更なる実験のための条件を判定するために、予めIHC最適化研究が実行された。S.N. 10/603,000において過去に開示されたようにH460-16-2モノクローナル抗体が生産され、そして精製された。
【0184】
49のヒト肝臓組織及び9の正常肝臓組織に対する抗体の結合は、ヒトの肝臓正常及び腫瘍組織マイクロアレイを使用して実行された(Imgenex, San Diego, CA)。各患者について、以下の情報:身長、性別、器官及び診断結果が用意された。組織切片は58℃で1時間オーブン内で乾燥させられることにより脱パラフィン化され、そしてコプリンジャー中で5回4分間キシレンに浸漬することにより脱ろうされた。濃度勾配のついたエタノール(100パーセント〜75パーセント)による連続した処理の後、それらの切片は水中で再び水和された。それらのスライドは、pH6の10mMクエン酸緩衝液(Dako, Toronto, Ontario)中に浸漬され、そして高、中、低出力設定で各5分間マイクロ波を照射され、そして最後に冷却PBS中に浸漬された。そしてスライドは、3パーセント過酸化水素溶液中に6分間浸漬され、各5分間3回PBSで洗浄され、乾燥され、ユニバーサルブロッキング溶液(Dako, Toronto, Ontario)中で5分間室温でインキュベートされた。H460-16-2、抗AFP(アルファ1フェトタンパク質; クローン AFP-11, Abcam, Cambridge, MA)、又はアイソタイプコントロール抗体(哺乳類組織中では存在せず、また誘導性ではない、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)グルコースオキシダーゼを認識する;Dako, Toronto, Ontario)は、抗体希釈緩衝液(Dako, Toronto, Ontario)でそのワーキング濃度(それぞれの抗体において5マイクログラム/mL、但し、抗PSMAは10マイクログラム/mLに希釈)まで希釈され、そして室温で1時間インキュベートされた。それらのスライドは、PBSで各5分間3回洗浄された。一次抗体の免疫反応性は、市販のHRP抱合二次抗体(Dako Envision System, Toronto, Ontario)で30分間室温で検出/可視化された。この工程ののち、それらのスライドは、PBSで各5分間3回洗浄され、そしてイムノペルオキシダーゼ染色用の色素原基質であるDAB(3,3'−ジアミノベンジジンテトラヒドラクロライド、 Dako, Toronto, Ontario)の添加により、室温で10分間発色反応がなされた。スライドを水道水中で洗浄し、発色反応が停止された。Meyerのヘマトキシリン(Sigma Diagnostics, Oakville, ON)で対比染色がされた後、それらのスライドは濃度勾配のついたエタノール(75〜100パーセント)で脱水され、キシレンで洗浄された。マウンティング媒体(Dako Faramount, Toronto, Ontario)を使用して、それらのスライドはカバーガラスで封じられた。スライドは、Axiovert 200 (Ziess Canada, Toronto, ON)を使用して顕微鏡的に試験され、そしてNorthern Eclipse Imaging Software (Mississauga, ON)を使用して、デジタル画像が取得及び保存された。結果は、組織病理学者により読み取られ、評点され、そして解釈された。
【0185】
図1において開示されるように、H460-16-2抗体は、試験された肝臓癌の21/49(43パーセント)と結合し、肝細胞癌の原発性のものが11/37(30パーセント)、転移性のものが7/8(88パーセント)、胆管癌の原発性のものが1/2(50パーセント)、転移性のものが2/2(100パーセント)であった。その抗体は、進行性癌の早期ステージI及びIIと比較して、ステージIII及びIVに対して顕著に高い結合を示した(p=0.03[ステージI、0/2(0パーセント);ステージII、2/17(12パーセント);ステージIII、8/16(50パーセント)及びステージIV、6/8(75パーセント)]。H460-16-2は腫瘍細胞及び浸潤性炎症細胞に特異的である。細胞の局在性は、主に膜上であった。また、幾つかの腫瘍は、細胞内に分散する染色パターンを呈した。その抗体は、非腫瘍性肝臓組織の9/9に結合した(図2)。しかしながら、その結合は、洞様細胞及び浸潤性リンパ球に限定されていた。H460-16-2抗原は、進行した肝臓腫瘍組織において特異的に発現すると思われる。故に、H46-16-2は、肝臓癌の治療における治療薬物としての可能性を有している。
【0186】
よって、転移性及び進行した肝臓腫瘍組織に対する結合の選択性を考慮すると、前記H460-16-2抗原は肝臓腫瘍組織に発現すると思われる。故に、H460-16-2は、肝細胞癌の診断試薬として、及び肝臓癌の治療における治療薬としての有用性を有している。
【0187】
実施例2
様々なHCC細胞株のCD44と転移能力との相互関係
インビトロにおいてこの相互関係を更に評価するため、様々な転移能力を有する6つの肝細胞癌(HCC)細胞株(Hep3B (American Type Culture Collection, Manassas, VA), Huh-7 (Dr. H. Nakabayashi, Hokkaido University School of Medicine, Sapporo, Japanからの提供), PLC (Japanese Cancer Research Bank, Tokyo, Japan), MHCC-97L, MHCC-97H 及び HCCLM3 (Liver Cancer Institute, Fudan University, Shanghai, China))が、(ch)ARH460-l 6-2-IgGlを使用したフローサイトメトリーによるCD44発現の評価に付された。様々なHCC細胞株においてCD44の発現を検出するために、細胞は(ch)ARH460-l 6-2-IgGl又はアイソタイプコントロール抗体(10マイクログラム/mL)で1時間、そして適切な二次抗体で30分間染色され、そしてFACSで分析された。フローサイトメトリーによると、CD44発現レベルは、原発性非転移性細胞株(Hep3B、 Huh-7 及び PLC)と比較して転移性細胞株(MHCC-97L、 HCCLM3 及び MHCC-97H)においてより高いことが見出された(図3)。
【0188】
実施例3
HCCLM3細胞を用いた同所性HCC腫瘍モデル
細胞のルシフェラーゼ標識
インビボにおいてこの相互関係を更に評価するため、(ch)ARH460-l 6-2-IgGlは、同所性HCC腫瘍モデルのいて試験された。HCCLM3(転移性HCC細胞株。Yang et al, Cancer Genet. Cytogenet. 158(2): 180-183 2005)細胞をルシフェラーゼで標識するため、過去に開示されたように(Cheung et al, Cancer Res. 66(8):4357-4367 2006)ルシフェラーゼ遺伝子を担持するレンチウイルスベクターが構築され、そして細胞にトランスフェクションされた。20個を超える陽性クローン(2マイクログラム/mLの濃度のブラストサイジンで選択された)のプールから、安定発現株が得られた。
【0189】
動物CCD実験
100万個のルシフェラーゼ標識された細胞は、ヌードマウスの右脇腹に皮下注射され、そして腫瘍の発達が日々観察された。腫瘍が直径1〜1.5cmに達したところで、それは摘出され、そして約1〜2mmに角切りされ、それらはその後に5週齢雄ヌードマウスの左肝葉内に移植された。10日後、それらのヌードマウスは4頭からなる群の中に無作為化され、そしてアイソタイプコントロール又は2、10、若しくは20mg/kgの(ch)ARH460-16-2-IgGlのいずれかで試験された。各コホートに、ストック濃縮物を2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4、137 mM NaCl 及び20 mM Na2HPO4を含む希釈剤で希釈した(ch)ARH460-16-2-IgGl試験抗体が200マイクロリットル、腹腔内投与された。そしてそれらの抗体は、移植後45日までに同一の様式で、週2回、合計12回投与された。
【0190】
それらのマウスは、腫瘍播種後7日及び45日に撮像された。マウスは、Committee on the Use of Live Animals in Teaching and Research of the University of Hong Kongに従い、4:1の比率のケタミン−キシラジン混合物で麻酔された。撮像は、Xenogen IVIS 100冷却CCDカメラ(Xenogen, New Jersey, USA)で行われた。撮像の15分前に200マイクロリットルの15mg/mLのD−ルシフェリンがマウスに腹腔内投与され、その後それらのマウスは遮光容器中に置かれた。生物発光画像の取得に続いて、グレイスケール参照画像が収得された。取得時間は、3秒〜1分の範囲であった。示される画像は、動物のグレイスケール写真に重ね合わされた光子/s/cm2/ステラジアンにおける放射光の擬画像(pseudoimage)である。
【0191】
(ch)ARH460-16-2-IgGlは、ヒトHCCの確立された同所性モデルにおいて、全身腫瘍組織量を顕著に減少させた。腫瘍移植後45日の時点で、(ch)ARH460-16-2-IgGlは、2、10、及び20mg/kgの投与量で、の原発性肝臓腫瘍シグナルを、37.6E+7±0.17からそれぞれ9E+7±0.72、2.3E+7±0.52、及び0.1E+7± 0.5に減少させた(図5)。それぞれの異なる群からの代表的な腫瘍も撮像された(図6)。研究の過程で、2つの群の間に平均体重量の顕著な相違は認められなかった。
【0192】
(ch)ARH460-16-2-IgGlは、ヒトHCCの確立された同所性モデルにおいて、肝臓内及び肺転移を顕著に抑制した。処理群及びコントロール群における肺及び肝臓内転移を起こしたマウスの個体数は、図7に示されている。(ch)ARH460-16-2-IgGlは、2mg/kgの投与で、(5/5)100パーセントであった肝臓内転移を(2/5)40パーセントまで顕著に抑制した。また、(ch)ARH460-16-2-IgGlは、2mg/kgの投与で、(5/5)100パーセントであった肺転移を(0/5)0パーセントまで顕著に抑制した(図7)。肝臓及び肺転移に加え、コントロール群は、精巣(4/5)及び膀胱(3/5)への転移も示した。
【0193】
まとめると、(ch)ARH460-16-2-IgGlは、この確立されたヒト同所性HCC腫瘍モデルにおいて耐容性が良好であり、全身腫瘍組織量並びに肝臓内及び肺転移を減少させた。
【0194】
多くの証拠により、マウス及びキメラH460-16-2が、肝臓癌において発現するCD44上に存在するエピトープの結紮を通じて抗癌効果を誘起することを示す。CD44の高発現は、ヒト肝臓癌細胞株が原発性である場合に対して転移性である場合に共に観察されることが示されている。また、キメラH460-16-2が、インビボのヒト肝臓癌の全身腫瘍組織量及び転移確立を減少させることも示されている。故に、キメラH460-16-2は、肝細胞に由来する任意の原発性又は転移性腫瘍部位を含むことが広く理解される、肝臓癌の診断及び治療において、治療可能性を有する。
【0195】
本明細書中で言及された全ての特許及び出願は、本発明に関連する当業者のレベルをの指標となる。全ての特許及び出願は、個々の出願が具体的に及び個別的に参照により塩称されることが示されたものである限り、同程度参照により本明細書中に援用される。
【0196】
本発明の特定の形態が例示されていても、それは本明細書中に記載され、及び示された部分の特定の形態又は改変に限定することを意図しないことは理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱すること無く様々な変化がなし得て、そして本発明は、明細書中に示され、及び記載された事項に限定されたものとみなされるべきではないことは、当業者にとって明白であろう。本発明が目的を遂行するために大幅に改編され、そしてその目的を遂げ、そして言及された、及び本発明に固有の長所を獲得していることは、当業者は容易に認識し得る。本明細書中に記載された、任意のオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的に関連する化合物、方法、手順及び技術は、目下好ましい態様の代表例であり、例となることが意図されたものであり、そしてその範囲を限定するものとして意図されない。本発明の精神の中に包含され、そして添付された請求項の範囲により規定される、発明内容の変更及び他の目的での使用は、当業者によりなされ得る。本発明は具体的な好ましい態様に関連して記載されているが、主張される発明がそのような具体的な態様に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、当業者にとって明らかである、本発明を遂行するためにされる記載された様式の様々な変更は、以下の請求項の範囲内にあることが意図される。
【0197】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発ヒト腫瘍部位及び転移部位を治療する方法であり、前記原発ヒト腫瘍又は転移が、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたクローンにより生産される単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記単離されたモノクローナル抗体又は前記そのCDMABとその標的抗原との結合を競合的に阻害する能力により特徴付けられ、前記哺乳類に前記哺乳類の全身腫瘍組織量の減少を引き起こすのに効果的な量の前記単離されたモノクローナル抗体又は前記そのCDMABを投与することを含む前記方法。
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABが細胞傷害性部分と結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABが補体を活性化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABが抗体依存性細胞介在性細胞傷害性を媒介する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたヒト化抗体又はそのCDMABである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたキメラ抗体又はそのCDMABである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳類において抗体に誘起される細胞介在性細胞傷害性の影響を受けやすい原発ヒト腫瘍部位又は転移部位を治療する方法であり、前記原発ヒト腫瘍又は転移が、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたクローンにより生産される単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、前記単離されたモノクローナル抗体又は前記そのCDMABとその標的抗原との結合を競合的に阻害する能力により特徴付けられ、前記哺乳類に、前記哺乳類の全身腫瘍組織量の減少を引き起こすのに効果的な量の前記単離されたモノクローナル抗体又は前記そのCDMABを投与することを含む前記方法。
【請求項9】
前記単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABが細胞傷害性部分と結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABが補体を活性化させる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABが抗体依存性細胞介在性細胞傷害性を媒介する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたヒト化抗体又はそのCDMABである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受入番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生産される単離されたキメラ抗体又はそのCDMABである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ATCC受入番号PTA-4621を有するハイブリドーマ細胞株H460-16-2により生産される単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトCD44抗原のエピトープ(単数又は複数)を発現するヒト癌性腫瘍を治療するためのプロセスであり:
ATCC受入番号PTA-4621を有するハイブリドーマ細胞株H460-16-2により生産される単離されたモノクローナル抗体により認識されるものと同一のエピトープ(単数又は複数)を認識する、少なくとも1つの単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABを、前記ヒトの癌で苦しむ個体に投与する;
ことを含み、前記エピトープ(単数又は複数)の結合が全身腫瘍組織量の減少を引き起こす前記プロセス。
【請求項16】
ATCC受入番号PTA-4621を有するハイブリドーマ細胞株H460-16-2により生産される単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトCD44抗原のエピトープ(単数又は複数)を発現するヒト癌性腫瘍を治療するためのプロセスであり:
ATCC受入番号PTA-4621を有するハイブリドーマ細胞株H460-16-2により生産される単離されたモノクローナル抗体により認識されるものと同一のエピトープ(単数又は複数)を認識する、少なくとも1つの単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABを、前記ヒトの癌で苦しむ個体に投与する;
ことを含み、前記投与が全身腫瘍組織量の減少を引き起こす前記プロセス。
【請求項17】
ATCC受入番号PTA-4621を有するハイブリドーマ細胞株H460-16-2により生産される単離されたモノクローナル抗体が特異的に結合するヒトCD44抗原のエピトープ(単数又は複数)を発現するヒト癌性腫瘍から選択される組織サンプル中の癌性細胞の存在を判定するための結合アッセイであり:
ATCC受入番号PTA-4621を有するハイブリドーマ細胞株H460-16-2により生産される単離されたモノクローナル抗体により認識されるものと同一のエピトープ(単数又は複数)を認識する、少なくとも1つの単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABを提供し;
前記少なくとも1つの単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABと前記ヒト組織サンプルとを接触させ;そして
前記少なくとも1つの単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABと前記組織サンプルとの結合を判定する;
ことを含み、それにより前記組織サンプル中の前記癌性細胞の存在が示される、前記結合アッセイ。
【請求項18】
前記原発ヒト腫瘍部位及び/又は転移部位が肝細胞起源である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記原発ヒト腫瘍部位及び/又は転移部位が肝細胞起源である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項20】
前記癌性組織が肝細胞起源である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項21】
前記癌性組織が肝細胞起源である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項22】
前記癌性組織が肝細胞起源である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項23】
ヒト癌性細胞の存在を検出するためのアッセイキットであり、前記ヒト癌性細胞が受入番号PTA-4621としてATCCに供託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABと特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、そのCDMABが前記単離されたモノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合的に阻害する能力により特徴付けられ、そのキットが受入番号PTA-4621としてATCCに供託されたハイブリドーマにより生産される単離されたモノクローナル抗体又はそのCDMABを含み、そしてそのモノクローナル抗体又はそのCDMABが特定のカットオフレベルにおいて存在するポリペプチドと結合するか否かを検出するための手段が、前記ヒト癌性腫瘍の前記存在の診断である、前記アッセイキット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521426(P2010−521426A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552035(P2009−552035)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000449
【国際公開番号】WO2008/109992
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】