CD59の表面発現を証明する細胞の細胞毒性媒介
本発明は、癌性疾患(原発性腫瘍及び腫瘍転移の両方)についての、病期判断、診断及び治療、具体的には腫瘍細胞の細胞毒性の媒介、及び最も具体的には細胞毒性の開始のための手段としての癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の使用、また任意に1又は複数のCDMAB/化学療法剤との組み合わせでの使用に関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。抗癌抗体は、毒物、酵素、放射性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター成分及び血行性細胞と複合化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌性疾患の診断及び治療、具体的には腫瘍細胞の細胞毒性の媒介に関するとともに、最も具体的には、細胞毒性応答を開始するための手段として、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の使用、また任意に1又は複数のCDMAB/化学療法剤との組み合わせでの使用に関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
CD59は、膜糖タンパク質に連結された18〜20kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)である。これは当初、ヒト赤血球の表面から単離され、補体活性の阻害因子として機能する。補体媒介性の溶解を増強させるために開発された複数の抗体は、その後CD59を標的とすることが判明した。この独立した開発により、CD59について多数の名前が存在することになり、MEM−43抗原、反応性溶解の膜阻害因子(membrane inhibitor of reactive lysis)(MIRL)、H19、膜侵襲複合体阻害因子(MACIF)、分子量20,000の相同制限因子(HRF20)及びプロテクチン(protectin)(Walsh, Tone et al. 1992)等がある。
【0003】
CD59抗原はアミノ酸分析及びNMRにより十分に特徴付けられている。これは128アミノ酸からなり、そのうち最初の25個がシグナル配列を含んでなる。分子のきつい折り畳みをもたらす10個のシステイン残基がある。位置18のアスパラギン残基は、N−グリコシル化されることが知られ、位置77のアスパラギン残基は、GPIアンカーに結合する。C末端残基は、GPI繋留タンパク質の特徴である(Davies and Lachmann 1993)。
【0004】
CD59は、当初はヒト赤血球の表面で発見されたが、幅広く発現する分子である。フローサイトメトリー、免疫組織化学及びノーザンブロット解析から得た細胞分布に関する膨大なデータの集積により、多くのタイプの細胞及び組織、例えば血小板、白血球及び繊維芽細胞等の造血細胞、並びに赤血球等での発現が明らかになっている(Meri, Waldmann et al., 1991)。CD59は、体全体の脈管及び管内皮、特に腎臓、気管支、膵臓、皮膚表皮及び胆管及び唾液腺に豊富に存在する(Meri, Waldmann et al., 1991)。肺、肝臓、胎盤、甲状腺及び精子での発現が注目されている(Davies and Lachmann, 1993)。CD59の可溶化形態は、唾液、尿、涙、汗、脳脊髄液、母乳、羊水及び精液の血漿で検出されている(Davies and Lachmann, 1993)。可溶性CD59の起源は、未だ決定されておらず、分泌されるのか、ホスホリパーゼにより切断されるのか、又はその他の手段で細胞から脱落するのかはわかっていない(Davies and Lachmann, 1993)。CD59は、多くのB細胞系列、CNS組織、肝実質及び膵臓ランゲルハンス島には存在しないようである(Meri, Waldmann et al., 1991)。
【0005】
CD59は、正常な細胞及び組織に幅広く発現するが、同様に悪性腫瘍にも幅広く発現する。CD59の発現は、正常組織と比較して特定タイプの癌で増加し、発現レベルは、腫瘍の分化段階に関連するという証拠がある。中から高レベルのCD59発現が、甲状腺、前立腺、乳房、卵巣、肺、結腸直腸、膵臓、胃、腎臓及び皮膚癌において、並びに悪性神経膠腫、白血病及びリンパ腫において報告されている(Fishelson, Donin et al. 2003)。
【0006】
腫瘍悪性度以外では、CD59発現と、腫瘍/患者特徴、例えば腫瘍タイプ、サイズ、脈管浸潤、患者の年齢、性別又は閉経状態(乳癌にのみ)との間で観察される相関はない(Madjd, Pinder et al., 2003; Watson, Durrant et al., 2006)。乳房、直腸結腸及び前立腺を含む、異なる腫瘍組織を用いる研究において、CD59発現は、中度から高度分化型腫瘍の悪性度と非常に強い相関がある(Madjd, Pinder et al., 2003; Watson, Durrant et al., 2006, Jarvis, Li et al., 1997; Koretz, Bruderlein et al., 1993)。ただし、高度分化型腫瘍でのCD59発現と患者予後との関連は、解消されないままである。乳癌及び結腸直腸癌サンプルを用いる2つの別々の研究から、高度に分化した細胞におけるCD59発現が、患者の良好な予後と相関することが示される(Madjd, Pinder et al., 2003; Koretz, Bruderlein et al., 1993)。あるいは、結腸直腸癌組織を用いる別の研究において、Watson等は、高レベルのCD59と分化腫瘍悪性度との相関により、疾患を初期及び後期に準分類できることを報告した。この筆者等は、高分化型の初期及び後期の腫瘍において見られる高レベルのCD59は、疾患特異的な患者生存の減少と関連することを示す(Watson, Durrant et al., 2006)。
【0007】
反対に、脱分化腫瘍細胞は、転移の指標となるCD59染色の不存在と、最も良好な相関関係にある。複数の研究は、CD59発現の増加が腫瘍転移と逆相関することを示す。乳癌及び結腸直腸癌において、転移のない腫瘍サンプルにCD59が高発現する(Madjd, Pinder et al., 2003; Koretz, Bruderlein et al., 1993)。同様に、肝臓における結腸直腸の転移腫瘍において、高レベルのCD59を有する細胞は小数である(Hosch, Scheunemann et al., 2001)。また、頭部及び頸部の扁平上皮細胞癌におけるCD59発現は、T1/T2N0M0腫瘍悪性度のサンプル中でのみ増加し、N1及びM1超の腫瘍悪性度では増加は見られない(Ravindranath, Shuler et al., 2006)。
【0008】
CD59の最も特徴的な機能は、膜侵襲複合体(MAC)の形成とその後の補体活性化を阻害できることである。細胞膜に孔が形成されそれが最終的に細胞溶解へと導く補体カスケードにおいて、MAC形成は最後の事象である。CD59がC5b−8に結合し、続くMAC形成に必要なステップであるC9分子の重合を干渉する。モノクローナル抗体をブロック及び非ブロックしてなされる、CD59のエピトープの競合的突然変異解析によりCD59の活性部位の位置がマップ化され、CD59活性に必要なアミノ酸Tyr-40、Arg-53及びGlu-56が同定されている(Bodian, Davies et al., 1997)。
【0009】
補体活性は、標的細胞の破壊か、又は白血球をリクルートし、周囲の平滑筋を収縮し、及び脈管透過性を増大させる細胞活性化のいずれかをもたらす。補体は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び補体依存性細胞毒性(CDCC)でも役割を果たす。これは、うまく調整されない場合に、標的組織を損傷させ得る炎症性応答を導く。CD59及び他の補体阻害タンパク質、例えば補体受容体タイプ−1(CR1;CD35)、膜補因子タンパク質(MCP;CD46)及び分解促進因子(DAF;CD55)等は、自己組織損傷を防止する補体カスケードの過剰な活性化を無効化するよう機能する。CD59等の補体阻害タンパク質の差次的発現が、悪性腫瘍が頻繁に獲得する補体活性への耐性を向上させることに寄与し得ることが想定される(Jarvis, Li et al. 1997)。
【0010】
腫瘍細胞による補体に対する耐性がCD59を標的にすることにより克服できるか否かを評価するために、CD59ブロック抗体YTH53.1が腫瘍細胞の溶解を増加させる能力を、インビトロで評価した。乳癌(T47D細胞系列)及び卵巣奇形癌(PA−1細胞系列)細胞を有する3次元微小腫瘍球(microtumor spheroids)(MTS)を用いる研究で、この抗体がCD59活性、即ち補体耐性をブロックする能力を測定した。MTSは多細胞凝集体であり、これが培養物中で増殖し、単層又は懸濁培養物よりもインビボで観察されるものに近いモデルである。このグループによる従来の研究から、MTSとして増殖されるPA−1細胞は、懸濁物中で増殖されるPA−1細胞よりも、補体溶解に耐性であることが示されている。細胞毒性を、クロム放出アッセイで測定し、ビオチン化YTH53.1でMTSを前処理した後、細胞損傷をヨウ化プロピジウム(PI)の取り込みにより可視化した。YTH53.1のビオチン化は、CD59への親和性を保持するが、その従来の補体経路の活性化能力を欠如する。乳癌細胞(S2細胞系列)に対するウサギ抗ヒトポリクローナル抗体は、従来の補体経路を活性化するために使用した。ビオチン化YTH53.1と共に一晩インキュベーションし、MTSを全て浸潤させ、クロム放出アッセイにより、ビオチン化YTH53.1、D2及びヒト補体の存在下、1から2時間の遅滞期の後に、33%の細胞死滅が示された。同じ処理で、電子顕微鏡により、平均T47D腫瘍容量が28%減少することが明らかになった。PIインキュベーション後の蛍光顕微鏡により、T47D及びPA−1 MTSにおける複数層の細胞死が明らかになった。これらの結果は、CD59阻害活性をブロックできる抗CD59抗体が、インビトロでの腫瘍細胞の補体媒介性溶解を増加できることを示す(Hakulinen and Meri 1998)。
【0011】
別の研究では、ヒト転移性前立腺癌細胞系列DU145及びPC3による補体媒介性溶解への耐性は、YTH53.1で処理することによりインビトロで克服することができた。クロム放出アッセイを、YTH53.1及びビオチン化YTH53.1の存在下及び不存在下で、細胞死を測定するために使用した。CD59抗体の不存在下では、両方の細胞系列が、補体媒介性溶解に対し完全に耐性であったが、YTH53.1での処理により、PC3細胞の56%及びDU145細胞の34%を死滅させ、この耐性を部分的に克服した。ビオチン化YTH53.1での処理は、補体耐性を克服する点で効果が低く、PC3の47%及びDU145細胞の20%を死滅させた。DU145細胞との比較でPC3によるCD59の発現が高くなればなるほど、補体媒介性溶解に耐性となる際に、CD59の発現及び機能に依存する可能性は大きくなることが、DU145と比較したPC3の感度の増大に反映される。天然及びビオチン化抗体の異なる効果は、従来の補体経路の活性化及びCD59の中性化の両方の影響が高められることで実証される(Jarvis, Li et al. 1997)。ただし、従来の経路による補体活性化の追加はわずかに活性を増加させるだけであるので(例えば、ビオチン化YTH53.1での47%対PC3細胞上のYTH53.1での56%)(Jarvis, Li et al. 1997)、抗体の活性の大部分は補体阻害のブロッキング(CD59の中性化)に寄与する。これまでの報告と共に、本研究は抗体を用いてCD59を標的とすることが、悪性腫瘍において相補体活性化への耐性をブロックするための有効な療法となり得ることを実証する。
【0012】
別のアプローチで、Harris等は、遺伝子操作した二特異的抗体を用いて、インビトロで腫瘍細胞上のCD59を特異的に標的とすることを目的とした。細胞標的(抗−CD19又は抗−CD38)及びCD59−中性化成分の両方を含有する、2つの異なる二特異性F(ab'ガンマ)2抗体構築物のうちの1つを用いて、CD59を中性化した。この実験において、Fab'ガンマFcガンマ2キメラ抗体(ヒトCD37特異的)を、新形成Bリンパ細胞(Raji)上のヒト補体の従来経路活性化のために使用した。二特異性構築物のいずれかを用いるCD59の中性化は、Raji細胞の15〜25%を溶解させた。標的(Raji)及びバイスタンダー(K562)細胞の混合物では、CD59発現バイスタンダー細胞での特異的な取り込みを回避し、抗−CD38×抗−CD59二特異性構築物をRajiに特異的に送達することができた。抗−CD19×抗−CD59二特異性抗体はいずれの細胞タイプにも等しく十分に結合し、細胞特異的な標的は、高親和性抗腫瘍細胞Fab'ガンマに依存することを示した(Harris, Kan et al., 1997)。二特異性抗体を使用して、正常バイスタンダー細胞が影響を受けることを回避するよう腫瘍特異的CD59を標的とする前提には訴求力があるが、これらの抗体は、腫瘍特異的標的に対する抗体の親和性により制限される。さらに、二特異的抗体は、腫瘍化前産物(pro-tumorgenic outcomes)をもたらし得る別の腫瘍特異的抗原を標的とすることの影響により複雑化される可能性がある。また、報告された研究においては、二特異性抗体は、細胞溶解を促進する補体の予備活性化の要求により制限される。補体活性化能力を有するCD59に対する一特異性抗体の使用は、複雑さが低減され、潜在的により有効な治療ツールとなり得る。これまで、抗−CD59抗体YTH53.1のインビボ解析は存在しなかった。
【0013】
腫瘍生存は、他の療法形態への耐性を獲得する間のCD59発現にも関連する。リツキシマブ(Rituxan(登録商標), Genentech, San Francisco, CA)の臨床的有効性と、CD59レベルの反比例関係は、リンパ腫細胞で報告されている。キメラモノクローナル抗体リツキシマブは、CD20抗原に対する抗体であり、非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療における使用が承認されている。ただし、CD20+である多くの患者は、治療に対する応答がなく、応答のあるほとんどの患者は、最終的には治療への耐性が現れる。これは、CD59等の成分阻害因子の誘導に起因する可能性がある。Takai等は、リツキシマブと補体の低濃度物に繰り返し暴露させながら、リツキシマブ−耐性B−リンパ細胞系列(RAMOS)を用いることで、リツキシマブ及び補体への耐性の確立の間にCD59発現が増加することを実証した(Takai et al., 2006)。抗ホルモンによる阻害への応答において、乳癌細胞はエストロゲン受容体(ER)妨害の抗腫瘍効果を最大限に限定するため、別のシグナル伝達をリクルートする。抗エストロゲンタモキシフェン又はファスロデクス(faslodex)に対するMCF−7細胞の応答の間の、CD59発現の実質的増加が報告され、治療耐性を獲得すると遺伝子発現レベルが実質的に低下するという、抗エストロゲン阻害の急性期の間の一時的なものであることが示された(Shaw, Gee et al., 2005)。従って、抗体を伴うCD59を標的とすることは、CD59発現が増加する癌において他の癌治療への耐性を克服する、潜在的に有効な治療アプローチでもある。
【0014】
他の治療に対する耐性を克服する手段としての、CDCC増加のための抗−CD59抗体の使用が調べられている。リツキサン−耐性NHL及びMM細胞系列は、インビトロで補体の存在下でCD59を発現し、一方、リツキサン−感受性NHL及びMM細胞系列はCD59を発現しない。抗−CD59抗体(YTH53.1)を伴う耐性細胞系列の1つの予備インキュベーションにより、リツキシマブ及びヒト補体での治療に対して細胞を感作した。また、CD20+であるがリツキシマブ治療による疾患進行を有する親から単離された腫瘍において、CD59の高レベルの発現が示された(Treon, Emmanouilides et al. 2005)。
【0015】
別の研究によれば、CD59(MB−59)を対象とし、単鎖可変断片(scFc)としてヒト抗体ライブラリーから単離され、且つヒトIgG1のヒンジ−CH2−CH3ドメインを含有するよう遺伝子操作したヒトmAbを、リツキシマブにより刺激される補体媒介性障害を受ける2つのBリンパ細胞系列であるKarpas422とHu−SCID1上で、CD59を標的とする効果を評価するために使用した。このアッセイにおいて、抗体処理後、残りの細胞をMTTアッセイにより測定し、リツキシマブに感作され且つ補体を死滅させた細胞の数は約30%であったが、MB−59が試験系に加えられると倍になった(Ziller et al., 2005)。MB−59単独での使用は、補体媒介性細胞毒性を増強する点で有効ではなかった。従って、リツキシマブの治療は腫瘍細胞を感作し、抗−CD59抗体の添加は、リツキシマブに対する部分的な耐性を克服するのに役立ち、その結果免疫療法又はその他の治療に対して、腫瘍をより応答性させた。YTH53.1と同様に、これまでMB−59はインビトロで有効性の解析がなされていない。
【0016】
CD59は、補体調整におけるその役割に加えて新脈管形成にも関連している。vanBeijnun等による研究によれば、遺伝子発現の連続的解析(SAGE)のタグは、腫瘍及び正常な内皮細胞(EC)から作られ、サプレッション・サブトラクト・ハイブリダイゼーション(suppression subtractive hybridization)(SSH)により比較された。結腸癌組織、非悪性の脈管形成性胎盤組織、及び非脈管形成性正常組織由来のCD59は、脈管形成及び非脈管形成の内皮と比較して腫瘍内皮で過剰発現されることを、4つの表面発現腫瘍脈管形成遺伝子(TAG)で確認した。CD59を標的とする抗体は、EC管形成(インビトロ)及び雛(chick)絨毛尿膜(CAM)(インビボ)アッセイで測定されるような脈管形成を阻害した(vanBeijnum, Ding et al., 2006)。抗−CD59抗体での癌の治療は、腫瘍において脈管形成の阻害について追加的な有効性を有する可能性がある。
【0017】
様々な癌におけるCD59の差次的発現、薬物耐性の発現の際のその誘導と脈管形成におけるその役割を考慮すると、正常組織上の多数のCD59は、標的とした治療として抗CD59抗体を使用することの障壁となると考えられる。発作型夜行性ヘモグロビン尿症(PNH)は、造血幹細胞に影響を及ぼし、補体侵襲に対し異常に感作された細胞をもたらす、希少な遺伝性障害である(Davies and Lachmann 1993)。症状には、慢性溶血、貧血及び血栓症がある(Sugita and Masuho 1995)。例えば赤血球、顆粒球、単球、血小板及び時にはリンパ球等のPNHにより影響を受ける細胞は、GPI繋留タンパク質、例えばアセチルコリンステラーゼ、LFA−3、HUPAR及び補体調整タンパク質CD35,CD46,CD55及びCD59を欠損する(Davies and Lachmann 1993)。完全にCD59を欠損しているが、その他の補体調整GPI繋留タンパク質はどれも欠損していない、ある個人についての1つの報告された事例がある。この欠損は、溶血性貧血及び血栓症等のPNH様症状と関連する(Davies and Lachmann 1993)。CD59機能の欠損に関連する不所望な影響があるが、この個人は補体欠損が非致命であることを証明する。溶血の副作用はCD59発現の減少の副作用であり、CD59抗体の臨床的使用において限定的である可能性がある。CD59遺伝子の1つがノックアウトされているマウスモデルでは、CD59欠損がインビボで非致命であることが実証されている。マウスは、2形態のCD59、CD59a及びCD59bを発現する。CD59aは、血液細胞等の様々なマウス組織において幅広く発現し、一方CD59b発現は、精巣においてのみ確認されている。Miwa等は、インビボでの自発的な補体侵襲から赤血球を保護するCD59の役割を評価するため、CD59a−欠損マウスを作製した。このノックアウトマウスは、溶血性貧血の兆候は全く無く、正常に発育及び生存するとともに、ヘモグロビンレベルの上昇がない。赤血球は、コブラ毒素因子(CVF)の注入により誘導された補体侵襲によってより感受性が高くなるにもかかわらず、自発的補体侵襲からの赤血球離脱は、野生型と比較して有意に上昇しない(Miwa, Zhou et al. 2002)。
【0018】
最近、ラット阻害タンパク質(RIP)と呼ばれる、21kDaの膜糖タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体であって、ヒトCD59のラット相同体である、6D1のF(ab')2断片を、有意な副作用のない雄のWistarラット群に投与した。同じ研究において、異なるラットの膜関連補体調整タンパク質に対する抗体である、5I2の断片も投与した。6D1の注入後、肺、心臓及び肝臓で結合が検出されたが、心拍数又は血圧の変化は全く無かった。唯一観察された影響は、わずかな白血球数の増加及び赤血球数の減少であり、血小板数に変化はなかった。対照的に、5I2断片注入により、血圧の急上昇、白血球及び血小板の急下降、及び注入後2時間までの赤血球数の断続的な上昇がもたらされた(Matsuo, Ichida et al. 1994)。これまで、任意の全長でネイキッドな抗−CD59抗体が、臨床試験又はインビボでの予備臨床的な癌モデルで治療的有効性を示した報告はない。
【0019】
癌療法としてのモノクローナル抗体:癌に罹患する個人は各々唯一であり、人のアイデンティティと同じように、ある癌はその他の癌とは異なる。それにもかかわらず、現行の療法は全ての同じ種類の癌患者を、同じ段階において、同じ方法で治療する。これらの患者の少なくとも30%は、一次治療に失敗して、結局次の治療ラウンドとなり、さらに治療失敗、転移、及び最終的には死亡の可能性が高まる。治療についての優れた対処法としては、特定の個人のための療法のオーダーメイドが挙げられるだろう。オーダーメイドに適する唯一の現行の療法が外科手術である。化学療法及び放射線治療は、患者の目的をかなえることはできず、ほとんどの場合外科手術それだけでは、治癒をもたらすのに不十分である。
【0020】
モノクローナル抗体の出現により、単一のエピトープを対象として各抗体を作製することが可能となったため、オーダーメイド療法のための方法が発展する可能性がより現実的になった。さらに、特定の個人の腫瘍を一意的に規定するエピトープの配列を対象とする抗体の組み合わせを作製することが可能である。
【0021】
癌細胞と正常細胞との大きな違いは、癌細胞は形質転換細胞に特異的な抗原を含むことであると認識されていたため、科学界では、モノクローナル抗体を、癌抗原特異的な結合により形質転換細胞を特異的に標的とさせるよう設計することができると信じられてきた。すなわち、モノクローナル抗体が、癌細胞を除去する「特効薬」として機能できるという信念が生じていた。しかしながら、現在では、癌の全ての事例において機能できる単一のモノクローナル抗体は存在せず、モノクローナル抗体は、標的とされた癌の治療群として展開できることが広く認識されている。本開示の発明の教示に従って単離されたモノクローナル抗体は、腫瘍負担の低減等の患者に有益な方法で癌性疾患のプロセスを修正することを示した。本明細書で本抗体は、癌性疾患修飾性抗体(CDMAB)又は「抗癌」抗体として様々に記載するつもりである。
【0022】
現時点では、通常癌患者は治療についての選択肢がほとんどない。癌療法に対する管理された手法は、全世界的な生存率及び罹患率において改善をもたらしている。しかし、特定の個人にとってこの改善の統計値は、その独自の状況における改善と必ずしも相関しない。
【0023】
すなわち、同じ集団の別の患者の各々の腫瘍を独立に治療できる施術者を想定する方法論であれば、まさに一人の人間に対して目的にかなう療法の唯一の対処法が可能となるであろう。このような治療過程により、理想的には治癒率を上昇させ、より良好な結果を生み、その結果長年望まれた必要性を満たすであろう。
【0024】
歴史的には、ポリクローナル抗体の使用は、ヒト癌の治療において大した成果もなく使用されてきた。リンパ腫及び白血病をヒト血漿で処理したが、緩和又は応答の延長はほとんどなかった。さらに、再現性はなく、化学療法と比較して追加的な利益もなかった。また、乳癌、メラノーマ及び腎細胞癌等の固形腫瘍を、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿及びウマ血清で処理したが、同様に予測不能で効果のない結果であった。
【0025】
固形腫瘍に対するモノクローナル抗体については多くの臨床試験が存在する。1980年代には、ヒト乳癌について少なくとも4つの臨床試験があったが、特異的な抗原に対する、又は組織選択性に基づく抗体を使用する少なくとも47人の患者のうち、応答者は1人のみであった。1998年には、ヒト化抗Her2/neu抗体(ハーセプチン(Herceptin(登録商標)))を、CLISPLATINとの組み合わせで使用する臨床試験の成功例があった。この試験では37人の患者を評価し、このうち約4分の1では部分的な応答率であり、別の4分の1では疾患進行が小規模又は安定的であった。応答者の進行期間の中心値は8.4ヶ月で、応答期間の中心値は5.3ヶ月であった。
【0026】
ハーセプチン(登録商標)は、タキソール(Taxol(登録商標))との組み合わせでの一次使用で、1998年に承認された。臨床研究の結果は、タキソール(登録商標)治療単独(3.0ヶ月)の群と比較して、抗体治療+タキソール(登録商標)(6.9ヶ月)を受けた者は疾患進行の期間中心値の増加を示した。生存率中心値でも、ハーセプチン(登録商標)+タキソール(登録商標)治療対タキソール治療単独が22対18月とわずかな増加であった。さらに、抗体+タキソール(登録商標)の組み合わせ群が、タキソール(登録商標)単独との比較において、完全応答者数(8対2パーセント)及び部分的応答者数(34対15パーセント)両方が増加した。ただし、ハーセプチン(登録商標)及びタキソール(登録商標)での治療は、タキソール(登録商標)治療単独と比較して、心毒性の発生数がより高くなった(それぞれ13対1パーセント)。また、ハーセプチン(登録商標)療法は、機能又は生物学的重要なリガンドが現在知られていない受容体である、ヒト上皮増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現する、転移性乳癌に罹患する患者のおよそ25パーセントの患者(免疫組織化学(IHC)分析により決定した)のみにおいて有効であった。したがって、乳癌の患者にとって満たされていない大きな必要性が依然として存在する。それでもハーセプチン(登録商標)治療の恩恵を受ける者も、少なくともある程度の化学療法を必要とし、その結果としてこの種の治療の副作用に対処する必要がある。
【0027】
結腸直腸癌を検討する臨床試験は、糖タンパク質及び糖脂質の両方の標的に対する抗体を必要とする。腺癌に対するいくつかの特異性を有する17−1A等の抗体は、60人以上の患者での第2相臨床試験で、たった1人の患者が部分的応答を示すという結果であった。他の試験では、17−1Aの使用により、追加的にシクロホスファミドを使用するプロトコールでの52人の患者中、1人の完全応答及び2人の小規模応答しか得られなかった。これまで、17−1Aの第3相臨床試験では、結腸癌の段階3のアジュバント療法として改善の有効性が実証されなかった。ヒト化マウスモノクローナル抗体の使用は、当初は画像化用として承認され、腫瘍退縮は起きなかった。
【0028】
近年になってから、モノクローナル抗体を用いる直腸結腸癌の臨床研究から得られるいくつかの積極的な結果が存在するようになった。アービタックス(ERBITUX(登録商標))は、2004年に、イリノテカンをベースとする化学療法では効果のない、EGFR発現転移性直腸結腸癌の患者に対する第2治療として承認された。アービタックス(登録商標)とイリノテカンとの組み合わせでの、2つの第2相臨床試験及び1つの試験からは、疾患進行の期間中心値がそれぞれ4.1及び6.5ヶ月で、それぞれ23及び15パーセントの応答率であることが示された。同じ2つの第2相臨床試験と別の1つの試験からの結果では、アービタックス(登録商標)単独での治療は、疾患進行の期間中心値がそれぞれ1.5及び4.2ヶ月で、それぞれ11及び9パーセントの応答率を示した。
【0029】
結果的には、スイス及び米国両方におけるイリノテカンとの組み合わせでのアービタックス(登録商標)治療、米国におけるアービタックス(登録商標)治療単独が、イリノテカンの第1療法に失敗した直腸癌患者の第2治療として承認された。従って、スイスにおける治療は、ハーセプチン(登録商標)のようにモノクローナル抗体と化学療法との組み合わせとしてしか承認されない。さらに、スイス及びUSにおける治療は、第2治療としての患者のためにしか承認されていない。また、2004年には、転移性結腸直腸癌の第1治療として、アバスチン(AVASTIN(登録商標))が、5−フルオロウラシルをベースとする静脈内化学療法との組み合わせ使用で承認された。第3期臨床試験の結果からは、アバスチン(登録商標)+5−フルオロウラシルで治療した患者の生存率中心値は、5−フルオロウラシル単独で治療した患者と比較して(それぞれ20ヶ月対16ヶ月)延長することが実証された。ただし、ハーセプチン(登録商標)及びアービタックス(登録商標)と同様にまた、治療はモノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてしか承認されていない。
【0030】
また、肺癌、脳癌、卵巣癌、脾臓癌、前立腺癌、及び胃癌については不良な結果のままである。近年の最も有望な非小細胞肺癌における結果は、殺細胞薬物であるドキソルビシン(doxorubicin)と結合させたモノクローナル抗体(SGN−15; dox−BR96, 抗−Sialyl−LeX)と化学療法剤タキソテール(TAXOTERE(登録商標))との組み合わせを含む治療の第2相臨床試験から得られた。タキソテール(登録商標)は、唯一の肺癌の第2治療用としてFDAに承認された化学療法である。当初のデータは、タキソテール(登録商標)単独と比較して全生存が向上したことを示唆した。研究のために募集された62人の患者のうち、3分の2がSGN−15とタキソテール(登録商標)との組み合わせを受け、残りの3分の1がタキソテール(登録商標)単独を受けた。全生存は、タキソテール(登録商標)単独を受けた患者での5.9ヶ月に対して、SGN−15とタキソテール(登録商標)との組み合わせを受けた患者では、7.3ヶ月であった。1年及び18ヶ月での全生存は、タキソテール(登録商標)単独を受けた患者でのそれぞれ24及び8パーセントと比較して、SGN−15+タキソテール(登録商標)を受けた患者はそれぞれ29及び18パーセントであった。さらなる臨床試験が計画されている。
【0031】
前臨床的には、メラノーマ用のモノクローナル抗体の使用においていくつかの限定的な成果があった。これらの抗体はほとんど臨床試験に到達せず、これまで1つも承認されないか、又は第3相臨床試験における好ましい結果が実証されなかった。
【0032】
疾患を治療する新規な薬物の発見は、疾患の病因に寄与する可能性のある既知の30,000個の遺伝子産物における、関連性ある標的の識別がなされていないために遅れている。腫瘍学の研究において可能性ある薬物標的は、単に腫瘍細胞において過剰発現するという事実だけを根拠に選択されることが多い。すなわち識別された標的は、その後多数の化合物との相互作用でスクリーニングされる。可能性ある抗体治療の場合は、これらの候補化合物は通常、Kohler 及び Milstein の(1975, Nature, 256, 495-497, Kohler and Milstein)により構築された基本原理による、モノクローナル抗体発生の従来手法から得る。脾臓細胞を抗原(例えば細胞全体、細胞画分、精製抗原)で免疫化し、不死化ハイブリドーマパートナーと融合させたマウスから採取する。標的に対し最も強く結合する抗体のセレクションとして、得られたハイブリドーマをスクリーニング及び選択する。癌細胞を対象とする、ハーセプチン(登録商標)及びリツキシマブ(RITUXIMAB)等の多数の治療用及び診断用抗体はこれらの方法を用いて作製され、その親和性に基づき選択された。この戦略には2つの欠陥が存在する。第一に、治療用及び診断用抗体結合に適切な標的の選択は、周囲の組織特異的な発癌プロセスについての知識不足と、それによる、過剰発現によるセレクション等の単純化されすぎた方法でこれらの標的を識別することによって制限されている。第二に、通常最も大きい親和性で受容体に結合する薬物分子はシグナルを開始又は阻害する可能性が最も高い、という仮定が常に正しいとは限らない。
【0033】
乳癌及び結腸癌の治療でいくつかの進歩があるにもかかわらず、有効な抗体療法の確認及び開発は、単剤でも共治療(co-treatment)でも、全ての癌の種類のためには不十分である。
【0034】
国際公開第EP2006/009496号は、結腸直腸の癌組織において、市販の抗体を用いて決定したCD59の局在を開示する。その後、この抗体を、インビトロのコラーゲンゲルベースの新芽形成アッセイで検査したが、顕著な活性は検出されなかった。その後この抗体を、ニワトリ胚の絨毛尿膜(CAM)を開発する際に実験室で検査したところ、27%まで新脈管形成を阻害することを示した。
【0035】
米国特許第5,750,102号は、患者の腫瘍由来の細胞が、患者由来の細胞又は組織からクローン化される可能性のあるMHC遺伝子で形質移入されるプロセスを開示する。その後これらの形質移入細胞を、患者へのワクチン接種のために使用する。
【0036】
米国特許第4,861,581号は、哺乳類の腫瘍性及び正常細胞の内部細胞成分特異的であるが外部成分には非特異的であるモノクローナル抗体を獲得するステップ、モノクローナル抗体を標識するステップ、殺腫瘍性細胞に対する治療を受ける哺乳類の組織と前記標識された抗体を接触させるステップ、及び変質腫瘍性細胞の内部細胞成分への前記標識された抗体の結合を測定することにより治療の有効性を決定付けるステップを含んでなるプロセスを開示する。ヒト細胞内抗原を対象とする抗体の調製において、特許権者は悪性細胞が当該抗原の利便性のある供給源であると認識する。
【0037】
米国特許第5,171,665号は、新規な抗体及びその作製のための方法を提供する。特に、この特許は、結腸及び肺のもの等のヒト腫瘍に関連するタンパク質抗原に強力に結合するが、正常細胞への結合特性はより低いモノクローナル抗体の構造を教示する。
【0038】
米国特許第5,484,596号は、癌療法を提供する。ここで当該方法は、ヒト癌患者から腫瘍細胞を外科的に除去するステップ、腫瘍細胞を得る腫瘍組織を治療するステップ、非腫瘍形成性以外の生存能力ある腫瘍細胞に放射線照射するステップ、及び原発腫瘍の再発を阻害すると同時に転移を阻害できる患者のためのワクチンを調製するこれらの細胞を使用するステップを含んでなる。当該特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローナル抗体の開発を教示する。col. 4, lines 45(以下参照)で説明されるように、特許権者等は、ヒトの新形成(neoplasia)において活性特異的な免疫療法を表すモノクローナル抗体の開発において特発性腫瘍細胞を利用する。
【0039】
米国特許第5,693,763号は、ヒトの細胞癌固有であって、起源の上皮組織に依存しない糖タンパク質抗原について教示する。
【0040】
米国特許第5,783,186号は、細胞を発現するHer2においてアポトーシスを誘導する抗Her2抗体、抗体を産生するハイブリドーマ細胞系、前記抗体を使用する癌治療の方法、及び前記抗体を含む医薬組成物について述べている。
【0041】
米国特許第5,849,876号には、腫瘍及び非腫瘍組織源から精製されたムチン抗原に対する、モノクローナル抗体の作製のための新規なハイブリドーマ細胞系についての記載がある。
【0042】
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に特異的な抗体を作製するヒトリンパ球の産生のための方法、モノクローナル抗体を作製する方法、及び前記方法により作製されたモノクローナル抗体について述べている。特に当該特許は癌の診断及び治療に有用な、抗HDヒトモノクローナル抗体の作製について述べている。
【0043】
米国特許第5,869,045号は、ヒト癌細胞と反応する、抗体、抗体断片、抗体複合物及び一本鎖の免疫毒素に関する。これらの抗体機能による機序は2つ存在する。すなわち分子がヒト細胞癌の表面に存在する細胞膜抗原と反応すること、並びにさらに当該抗体が癌細胞中に内部移行でき、結合した後に、これらを抗体−薬物及び抗体−毒の複合体を形成するために特に有用にさせることである。未修飾の状態で、前記抗体はまた特異的な濃度で細胞毒特性を発現する。
【0044】
米国特許第5,780,033号は、腫瘍の療法及び予防のための自己抗体の使用を開示する。ただし、当該抗体は、高齢の哺乳類由来の抗核性自己抗体である。この場合、自己抗体は免疫系において見出される天然抗体の一種であると言われる。自己抗体が「高齢の哺乳類」由来であるため、実際には、自己抗体は治療される患者由来である必要性はない。さらに、当該特許は、高齢の哺乳類由来の天然のモノクローナル抗核性自己抗体、及びモノクローナル抗核性自己抗体を作製するハイブリドーマ細胞系列を開示する。
【0045】
米国特許出願20050032128A1は、糖尿病治療のための、抗グリケート化CD59抗体の使用を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0046】
本特許出願は、癌性疾患修飾性モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞系列を単離する米国特許第6,180,357号で教示される、患者特異的な抗癌抗体を作製するための方法論を利用する。これらの抗体は1つの腫瘍に対して特異的に作製できる。すなわち、癌療法のオーダーメイドが可能となる。本出願に関しては、殺細胞性(細胞毒性(cytotoxic))又は細胞増殖阻害(cytostatic)特性のいずれか一方を有する抗癌抗体は、以下「細胞毒性」と言う。これらの抗体は、癌の病期分類及び診断のための補助として使用できるとともに、腫瘍転移を治療するために使用できる。これらの抗体はまた、予防的治療の手段により癌を防ぐために使用することができる。従来の薬物発見パラダイムに従って産生された抗体とは異なり、本手段は、悪性組織の増殖及び/又は生存に不可欠であることが従来示されていない、分子及び経路を標的としてもよい。さらに、これらの抗体の結合親和性は、より強い親和性相互作用の影響を受けにくい可能性のある、細胞毒性事象開始の要請に適している。また、放射線核種等の標準的な化学療法の様式と、本発明のCDMABとを組み合わせることは本発明の範囲内であるため、前記化学療法の使用に焦点を当てる。CDMABはまた、毒、細胞毒性成分、酵素、例えばビオチン結合酵素、又は血行性細胞と組み合わせることができ、抗体複合体を形成する。CDMABは、単独で用いることも、1又は複数のCDMAB/化学療法剤の組み合わせとして用いることもできる。
【0047】
個別的な抗癌治療の有望性は、患者が管理される方法に変化をもたらす。可能性ある臨床的シナリオは、腫瘍サンプルが提示の時点で得られ、且つ保存されることである。このサンプルから、当該腫瘍を一群の先行癌性疾患修飾性抗体に分類できる。従来的には、患者は病期分類されるが、この利用可能な抗体はさらに進行した病期の患者に使用できるものである。患者を、存在する自己抗体で迅速に治療でき、当該腫瘍に特異的な一群の抗体を、本明細書で概説した方法を使用して作製することも、本明細書に開示のスクリーニング方法との組み合わせにおいて、ファージディスプレイライブラリーの使用を介して作製することもできる。その他の腫瘍は治療されたものと同じいくつかのエピトープを生み出すことができる可能性が存在するため、作製された全ての抗体は、抗癌抗体のライブラリーに加えられるはずである。本方法に従って作製された抗体は、これらの抗体に結合する癌を有するかなりの数の患者における癌性疾患を治療するために有用であり得る。
【0048】
患者は、抗癌抗体に加えて治療の集学的レジメの一部として現在推奨される療法を受けることを選択できる。本方法論により単離された抗体は、非癌性細胞に対して比較的非毒性であるという事実により、単独又は従来の療法との複合のいずれかによって使用される、高用量での抗体の組み合わせが可能となる。治療指数が高いことにより、治療耐性細胞の発生の可能性を低減させることになる、短い時間スケールでの再治療が可能となるであろう。
【0049】
患者が、治療の初期過程が無効であるか又は転移を発症する場合に、腫瘍に対して特異的な抗体を産生するプロセスでは、再治療を繰り返すことができる。さらに、抗癌抗体は、その癌患者から得られる赤血球と複合化し、転移の治療のために再注入することができる。転移性癌に有効な治療はほとんどなく、通常転移は結果的に死をもたらす不良な結果に至る。ただし、通常転移性癌は、十分に血管新生がなされ、赤血球による抗癌抗体の送達は、腫瘍の部分で抗体を濃縮する効果を有する。転移の前でも、大部分の癌はその生存のための宿主の血液供給に依存し、赤血球と複合化した抗癌抗体は同様にインサイツ(in situ)で腫瘍に対して有効であり得る。あるいは、抗体はその他の血行性細胞、例えばリンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞等と複合化してもよい。
【0050】
5群の抗体が存在し、各々はその重鎖により与えられる機能を有している。一般的には、ネイキッド抗体による癌細胞死滅は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)か、又は補体依存性細胞毒性(CDC)のいずれかを介して媒介されると考えられている。例えばマウスIgM及びIgG2a抗体は、補体系列のC−1成分の結合によりヒト補体を活性化するので、腫瘍溶解を導くことができる従来の補体活性化の経路を活性化できる。ヒト抗体にとって抗体を活性化する大部分の有効な補体は、一般的にはIgM及びIgG1である。IgG2a及びIgG3アイソタイプのマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球及び特定のリンパ球により細胞死滅に導くFc受容体を有する細胞毒性細胞のリクルートに有効である。IgG1及びIgG3の両アイソタイプのヒト抗体はADCCを媒介する。
【0051】
Fc領域を介して媒介される細胞毒性は、エフェクター細胞、その対応受容体、又はタンパク質、例えばNK細胞、T細胞及び補体の存在を必要とする。これらのエフェクター機序が不存在の場合、抗体のFc部分は不活性である。抗体のFc部分には、インビトロ(in vitro)で抗体の薬物動態に影響を及ぼすが、インビボ(in vivo)では作動しないという特性を有する可能性がある。
【0052】
抗体媒介性癌死滅の別の機序の可能性としては、細胞膜及びその関連する糖タンパク質又は糖脂質における種々の化学結合の加水分解を触媒する機能を有する抗体、いわゆる触媒抗体の使用を介することが考えられる。
【0053】
抗体媒介性癌細胞死滅について追加の3つの機序がある。1つ目は、癌細胞に存在する想定される抗原に対して、免疫応答をもたらす抗体を誘導するワクチンとしての抗体の使用である。2つ目は、増殖受容体を標的としてその機能を阻害する抗体、又は機能が有効に喪失するように受容体を下方制御する抗体の使用である。3つ目は、例えばTRAIL R1もしくはTRAIL R2等の死受容体、又はアルファVベータ3等のインテグリン分子のライゲーション等の直接細胞死に導く可能性のある、細胞表面部分の直接ライゲーションにおける当該抗体の影響である。
【0054】
癌薬物の臨床的用途は、患者に対する許容可能なリスクプロファイルの下での、当該薬物の利益に基づく。癌療法において、一般的に利益の中でも生存率が最も追求されるものであったが、寿命の延長に加えて、広く認識される多数のその他の利益が存在する。治療が生存率に不利な影響を及ぼさない場合、これらのその他の利益には、症状緩和、有害事象に対する保護、再発まで又は無病生存の期間延長、進行に至るまでの期間延長が含まれる。これらの診断基準は一般的に受容され、米国食品医薬局(F.D.A)等の取締機関はかかる利益をもたらす薬物を承認している(Hirschfeld et al. Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42:137-143 2002)。これらの診断基準に加え、この種の利益の前兆となり得る他の終点が存在することが広く認識されている。一つには、米国F.D.Aにより許可された加速された承認審査方式は、患者の利益を予測する可能性のある代理の存在を承認する。2003年末以後、この方式の下で承認された薬物は16個あり、これらのうち4個が完全な承認に至った。すなわち、追跡研究によって代理終点により予測された通りの患者の直接の利益が実証された。固形腫瘍における薬物の効果を決定するための1つの重要な終点は、治療への応答を測定することによる腫瘍負荷の評価である(Therasse et al. Journal of the National Cancer Institute 92(3):205-216 2000)。この評価のための臨床的診断基準(RECIST基準)は、癌における国際的専門家グループである、固形腫瘍作業グループでの応答評価基準により公表された。RECIST基準による客観的反応(objective responses)が示すように、適切なコントロール群との比較で、腫瘍負荷に対して実証された効果を有する薬物は、最終的に患者の直接の利益を生み出す傾向がある。一般的に予備臨床の状況では、腫瘍負荷は評価及び証明についてより直接的である。予備臨床研究は臨床の状況に置き換えることができるので、予備臨床モデルで生存の延長をもたらす薬物は、期待される臨床用途が最も大きい。臨床治療に正の応答をもたらすことと同様に、予備臨床の状況で腫瘍量を低減する薬物は、当該疾患に大きな直接的影響を及ぼす可能性もある。生存の延長は癌薬物治療からの臨床転帰の後に最も望まれるものであるが、臨床用途を有するという他の利益があるとともに、疾患の進行の遅延、延長された生存又はその両方に相関し得る腫瘍量の減少が、直接の利益に導き、且つ臨床的影響を与えることは明らかである(Eckhardt et al. Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds; ASCO Educational Book, 39th Annual Meeting, 2003, pages 209-219)。
【0055】
米国特許第6,180,357号、及び米国特許出願第11/361,153号及び第11/067,366号(各内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示のプロセスを実質的に使用することで、マウスモノクローナル抗体、AR36A36.11.1を入手し、その後、ヒト前立腺腫瘍組織からの細胞でマウスを免疫化した。異なる細胞期限由来の広範に及ぶヒト細胞系列で、AR36A36.11.1抗原を発現した。前立腺癌細胞系列LnCapは、インビトロでAR36A36.11.1の細胞毒性影響を受け易かった。
【0056】
前立腺癌細胞に対するインビトロでのAR36A36.11.1細胞毒性の結果は、インビボでの抗腫瘍活性の実証により、さらに広げられた(米国特許出願第11/067,366号に開示)。AR36A36.11.1は、ヒト前立腺癌の予防的なインビトロモデルにおいて、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍量を低減させた。移植後41日目で、最後の治療投与後5日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、バッファコントロール治療群における腫瘍容量の14%であった(t検定、p=0.0009)。PC−3前立腺癌異種移植モデルにおいては、疾患進行の代理指標として体重が使用できる(Wang et al. Int J Cancer, 2003)。コントロール動物は、試験の最後(41日目)までに、試験の開始から27%の体重減少を示した。対照的に、AR36A36.11.1治療群は、コントロール群より有意に高い体重であった(p=0.017)。全体では、AR36A36.11.1治療群は、体重減少が6%しかなく、これはバッファコントロール群での27%の減少よりもかなり少なかった。従って、AR36A36.11.1は、ヒト前立腺癌異種移植モデルにおいて、十分に寛容されるとともに、腫瘍量及び悪液質を低減した。
【0057】
抗前立腺癌効果に加え、AR36A36.11.1は、SW1116結腸癌細胞に対して、予防的インビボ腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍活性を示した(米国特許出願第11/067,366号に開示)。移植後55日目で、最後の治療投与後5日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、バッファコントロール治療群における腫瘍容量の51%であった(t検定、p=0.0055)。試験の間に、毒性の臨床的兆候はなかった。1週間間隔で測定した体重を、健康状態と生育不良の指標とした。治療期間の最後に、群間で体重に有意な差異はなかった(t検定、p=0.4409)。従って、AR36A36.11.1は、ヒト結腸癌異種移植モデルにおいて、十分に寛容されるとともに、腫瘍量及び悪液質を低減した。
【0058】
さらに、AR36A36.11.1は、MDA−MB−231乳癌細胞に対して、予防的インビボ腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍活性を示した(米国特許出願第11/067,366号に開示)。AR36A36.11.1は、完全に、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍量を低減させた。移植後56日目で、最後の治療投与後6日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、アイソタイプコントロール治療群における腫瘍容量の0%であった(t検定、p=0.0002)。試験の間に、毒性の臨床的兆候はなかった。1週間間隔で測定した体重を、健康状態と生育不良の指標とした。治療期間の最後に、群間で体重に有意な差異はなかった(t検定、p=0.0676)。従って、AR36A36.11.1は、ヒト乳癌異種移植モデルにおいて、十分に寛容されるとともに、腫瘍量及び悪液質を低減した。
【0059】
また、AR36A36.11.1は、MDA−MB−231乳癌細胞に対して、確立された予防的インビボ腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍活性を示した(米国特許出願第11/067,366号に開示)。AR36A36.11.1は、確立されたヒト乳癌のインビボモデルで、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍量を低減させた。移植後83日目で、最後の治療投与後2日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、バッファコントロール治療群における腫瘍容量の46%であった(t検定、p=0.0038)。これは、平均T/Cの32%に相当する。試験の間に、毒性の臨床的兆候はなかった。1週間間隔で測定した体重を、健康状態と生育不良の指標とした。治療期間の最後に、群間で体重に有意な差異はなかった(t検定、p=0.6493)。
【0060】
治療の利益は、ヒト癌疾患の複数の十分に認識されたモデルで観察され、例えば人を含む他の哺乳類に対する療法としての本抗体の薬学及び医薬的利益を示している。全体としてこのデータは、AR36A36.11.1抗原が癌関連抗原であり、ヒト癌細胞を発現し、病理学的に明らかな癌標的であることを実証する。
【0061】
既に開示される通り(米国特許出願第11/361,153号)、生化学データは、AR36A36.11.1により認識される抗原はCD59であることが示された。これは、CD59に対して反応性のモノクローナル抗体(クローンMEM−43、Serotec, Raleigh, NC)が、免疫沈降によりAR36A36.11.1に結合するタンパク質を同定したことを示す研究により支持された。AR36A36.11.1エピトープは炭水化物依存性ではないようである。
【0062】
薬物標的としてのAR36A36.11.1エピトープの有効性を確認するため、正常なヒト組織切片でのAR36A36.11.1抗原の発現を事前に決定した(米国特許出願第11/361,153号に開示の通り)。59個の正常なヒト組織への抗体の結合を、ヒトの正常器官組織アレイ(Imgenex, San Diego, CA)を用いて実施した。AR36A36.11.1抗体は、上皮組織に優先的に結合した(様々な器官の血管上皮、皮膚及び扁桃の扁平上皮、乳房の小管上皮、鼻粘膜上皮、唾液腺の腺房及び管上皮、肝臓の胆汁管上皮、膵臓のランゲルハンスの腺房上皮及び島、膀胱の粘膜上皮及び前立腺の腺房上皮)。AR36A36.11.1抗体は、抗−CD59抗体で以前に報告されたものと一致するヒト組織への結合を示している。
【0063】
また、AR36A36.11.1の潜在的治療利益をさらに拡大するために、様々なヒト癌組織内での抗原の頻度及び局在を決定した(米国特許出願第11/361,153号で既報)。AR36A36.11.1抗体は、被検腫瘍の17/54(32%)に結合した。抗体の結合は、2/17腫瘍について強力で、2/17について中程度、4/17について弱く、9/17については不確かであった。組織特異性は、腫瘍細胞及び基質血管に対するものであった。細胞局在は、散在染色パターンを有する膜性細胞質であった。従って、AR36A36.11.1抗体は、多様な腫瘍タイプの膜に局在することが示された。これらの結果は、AR36A36.11.1抗体が治療剤として、幅広い癌、例えば限定するものでないが、皮膚、肝臓及び膵臓の癌等において治療的薬物として可能性を有することを示す。
【0064】
本発明は、AR36A36.11.1、キメラAR36A36.11.1((ch)AR36A36.11.1)及びヒト化変異体(hu)AR36A36.11.1の開発及び使用について記載する。AR36A36.11.1は、細胞毒性アッセイ及び動物モデルにおける未確立及び確立した腫瘍増殖における、その影響により確認された。本発明は、標的分子であるCD59に存在する1又は複数のエピトープに特異的に結合するとともに、ネイキッド抗体のような、悪性腫瘍細胞に対してはインビトロ細胞毒特性を有するが、正常細胞には毒性がなく、またヒト癌のインビトロモデルにおいて、ネイキッド抗体のように、腫瘍増殖の阻害及び生存の延長を直接媒介もする試薬について初めて報告する点で、癌治療の分野における進展を示す。これは、同様の特性を有することを示すものがこれまでないため、任意の他の既報の抗−CD59抗体との関連における進歩である。これはまた、特定タイプの腫瘍の増殖及び進行に関連する事象におけるCD59の直接的関与を、明確且つ初めて実証するため、当該分野における進展である。これはまた、ヒト患者において、同様の抗癌特性を示す可能性があるため、癌療法における進展である。抗癌抗体のライブラリーにこれらの抗体を包含することにより、腫瘍の増殖及び進行を標的及び阻害する際に最も有効なものを発見するため、異なる抗癌抗体の適切な組み合わせの決定により異なる抗原マーカーを発現する腫瘍を標的とする可能性を高める得ることは、さらなる進展である。
【0065】
総括すると、本発明は、治療剤のための標的として、AR36A36.11.1抗原の使用を教示し、それが投与される場合、哺乳類における抗原を発現する癌の腫瘍量を減少できるとともに、標的とされる哺乳類の延長された生存をもたらすことができる。本発明はまた、CDMAB(AR36A36.11.1、(ch)AR36A36.11.1及びヒト化変異体、(hu)AR36A36.11.1)、及びその誘導体、及びその抗原結合断片、及びその細胞毒性誘導性リガンドであって、哺乳類において抗原を発現する癌の腫瘍量の低減をもたらし、且つ治療される哺乳類の延長された生存をもたらす前記物質の使用を教示する。さらに、本発明はまた、癌細胞におけるAR36A36.11.1抗原の検出のための使用であって、本抗原を発現する担腫瘍哺乳類の診断、療法の予測、及び予後診断にとって有用になり得る使用を教示する。
【0066】
従って、本発明の目的は、ハイブリドーマ細胞系列、並びに当該ハイブリドーマ細胞系列がコードされる対応する単離モノクローナル抗体及びその抗原結合断片を単離するために、特定の個人、又は1もしくは複数の特定の癌細胞系列に由来する癌細胞に対する、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)であって、癌細胞関しては毒性であるが、同時に非癌細胞に対して比較的非毒性であるCDMABを作製する方法を利用することである。
【0067】
本発明の追加の目的は、癌性疾患修飾抗体、そのリガンド及び抗原結合断片を教示することである。
【0068】
本発明のさらなる目的は、癌性疾患修飾抗体であって、その細胞毒性が抗体依存性細胞毒性を介して媒介される抗体を作製することである。
【0069】
本発明のさらに追加の目的は、癌性疾患修飾抗体であって、その細胞毒性が補体依存性細胞毒性を介して媒介される抗体を作製することである。
【0070】
本発明のよりさらなる目的は、癌性疾患修飾抗体であって、その細胞毒性は、細胞化学結合の加水分解を触媒できる機能である抗体を作製することである。
【0071】
本発明のよりさらなる目的は、癌性疾患修飾抗体であって、それが癌の診断、予後診断、及び監視のための結合アッセイにおいて有用である抗体を作製することである。
【0072】
本発明の他の目的及び進展は、本発明の例示、及び実施例、特定の実施態様で説明する、以下の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
特許又は出願書類は、少なくとも1つの色付きの図面を含む。色付きの(1又は複数の)図面を伴う本特許又は特許出願公報の複写は、要請に応じて、必要な料金を支払うことで庁(Office)から提供されるだろう。
【図1】図1は、確立されたヒトPC−3前立腺癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与される期間を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図2】図2は、確立されたヒトPC−3前立腺癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図3】図3は、確立されたヒト乳房MDA−MB−468癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図4】図4は、確立されたヒト乳房MDA−MB−468癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図5】図5は、確立されたヒト乳房(MDA−MB−231)癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与される期間を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図6】図6は、確立されたMDA−MB−231ヒト乳房癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図7】図7は、予防的なNCI−H520ヒト肺扁平上皮細胞癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与される期間を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図8】図8は、予防的なNCI−H520ヒト肺扁平上皮細胞癌モデルにおける、マウス生存に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図9】図9は、予防的なNCI−H520ヒト肺扁平上皮細胞癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図10】MDA−MB−231乳癌細胞の全ての膜調製物のウェスタンブロットは、異なる一次抗体溶液で調べた。レーン3〜7は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した、ビオチン化AR36A36.11.1で調べた。レーン9〜13は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化10A304.7と混合した、ビオチン化AR36A36.11.1で調べた。レーン15〜19は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化B1B.1と混合した、ビオチン化AR36A36.11.1で調べた。レーン8〜14は、ネガティブコントロール溶液と共にインキュベーションし、レーン8は二次溶液中でインキュベートしなかった。レーン1、2及び20はTBSTのみでインキュベートした。
【図11】MDA−MB−231乳癌細胞の全ての膜調製物のウェスタンブロットは、異なる一次抗体溶液で調べた。レーン3〜7は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化10A304.7と混合した、ビオチン化10A304.7で調べた。レーン9〜13は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した、ビオチン化10A304.7で調べた。レーン15〜19は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化8A3B.6と混合した、ビオチン化10A304.7で調べた。レーン8〜14は、ネガティブコントロール溶液と共にインキュベーションし、レーン8は二次溶液中でインキュベートしなかった。レーン1、2及び20はTBSTのみでインキュベートした。
【図12】CLIPSペプチドに対する10A304.7の結合は、CD59アミノ酸配列に基づいて合成した。
【図13】CLIPSペプチドに対するAR36A36.11.1の結合は、CD59アミノ酸配列に基づいて合成した。
【図14】CD59のアミノ酸配列。10A304.7及びAR36A36.11.1の両方に認識される非連続的なエピトープは、下線の配列内に含まれる。
【図15】軽鎖のPCR増幅で使用されるプライマー。
【図16】重鎖のPCR増幅で使用されるプライマー。
【図17】マウスAR36A36.11.1VH配列。CDRは下線部。
【図18】マウスAR36A36.11.1VL配列。CDRは下線部。
【図19】キメラ及び変異ヒト化AR36A36.11.1VH配列の作製のために使用されるオリゴヌクレオチド。
【図20】キメラ及び変異ヒト化AR36A36.11.1VL配列の作製のために使用されるオリゴヌクレオチド。
【図21】軽鎖及び重鎖発現ベクター。
【図22A】ヒト化AR36A36.11.1VH変異体。CDRは下線部。
【図22B】ヒト化AR36A36.11.1VH変異体。CDRは下線部。
【図23A】ヒト化AR36A36.11.1VL変異体。CDRは下線部。
【図23B】ヒト化AR36A36.11.1VL変異体。CDRは下線部。
【図24】ヒト化AR36A36.11.1VH及びVL変異体の活性。
【図25】図25は、ヒト化変異体、キメラ及びマウスAR36A36.11.1の、ヒト乳癌細胞系列MDA−MB−231に対する結合を示す。
【図26】図26は、ヒト乳癌細胞系列MDA−MB−231での、AR36A36.11.1のマウス及びヒト化変異体のインビトロCDC活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
一般的に、以下の語又は句は、要約、明細書、実施例及び請求の範囲において使用される場合の定義を示す。
【0075】
「抗体」なる用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば単一モノクローナル抗体(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、及び中性抗体、脱免疫化、マウス、キメラ又はヒト化抗体)、ポリエピトープ(polyepitopic)特異性を伴う抗体組成物、単鎖抗体、二機能性抗体、三特性抗体、免疫複合体及び抗体断片を包含する(以下を参照)。
【0076】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体のことを言う。すなわち、わずかに存在し得る天然の突然変異を除けば、その集団を含んでなる個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位を対象とする。さらに、異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。その特異性に加え、モノクローナル抗体は、その他の抗体による汚染を受けずに合成できる点で有利である。修飾語の「モノクローナル」は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の作製を要するものと解すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al. Nature, 256:495 (1975)で最初に報告された、ハイブリドーマ(マウス又はヒト)法によって作製しても、又は組み換えDNA法(米国特許第4,816,567号参照)により作製してもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いる、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0077】
「抗体断片」は、未処理抗体の一部を含んでなり、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含んでなる。抗体断片の例としては、全長抗体より短い、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;二機能性抗体;直鎖抗体;単鎖抗体分子;単鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、遺伝子組み換えタンパク質及び(1又は複数の)抗体から形成した多特異性抗体が挙げられる。
【0078】
「未処理の」抗体は、抗原結合性可変領域並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含んでなるものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異であってもよい。好ましくは、未変性抗体は、1又は複数のエフェクター機能を有する。
【0079】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、未変性抗体は異なる「クラス」に割り振ることができる。未変性抗体の5つの主要なクラスとしては、IgA,IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、このうちいくつかは、さらに「サブクラス」(アイソタイプ)に分けてもよく、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等がある。対応する異なる抗体クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なる免疫グロブリンのクラスのサブユニット構造及び3次元立体配置が周知である。
【0080】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰属する生物活性のことを言う。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;相補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体の下方制御(例えばB細胞受容体;BCR)等がある。
【0081】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)を発現する非特異的細胞毒性細胞が標的細胞に結合した抗体を認識し、実質的に標的細胞の分解を引き起こす、細胞媒介性の反応のことを言う。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する中で、FcγRIIIのみを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の、464ページの表3に要約がある。注目の分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号又は5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイを行ってもよい。このアッセイにとって有用なエフェクター細胞には、抹消血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞がある。あるいは、又は追加的には、注目の分子のADCC活性は、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)で開示されるような動物モデル等のインビボで評価してもよい。
【0082】
「エフェクター細胞」は、1又は複数のFcRを発現し、且つエフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、且つADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、抹消血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然原料から単離してもよく、例えば本明細書で記載の通りの、血液又はPBMC由来があり得る。
【0083】
「Fc受容体」又は「FcR」なる用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用する。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するとともに、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIサブクラスの受容体を含むものであり、これらの受容体の対立遺伝子変異体であり且つ選択的に接合された状態である。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、主にその細胞質ドメインが異なる、類似するアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)を有する(M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)の概説を参照)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); 及び de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来識別されるものを含む他のFcRは、本明細書の用語「FcR」に包含される。当該用語はまた、母体IgGの胎児への転移に寄与する新生児受容体FcRnを含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., Eur. J. Immunol. 24:2429 (1994))。
【0084】
「補体依存性細胞毒性」又は「CDC」とは、補体の存在下、標的を分解する分子の能力を言う。補体活性経路は、補体システムの第一成分(C1q)が同族の抗原と複合化した分子(例えば抗体)に結合することにより開始する。補体活性を評価するために、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)等に記載される、CDCアッセイを行ってもよい。
【0085】
用語「可変の(variable)」とは、可変ドメインの特定の部分の配列が、抗体間で著しく異なり、それが個別具体的な抗体の抗原に対する結合及び特異性のために使用されることを言う。ただし、その可変性は抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布してはいない。軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインにおける、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中する。より高度に保存された可変ドメインの部分は、フレームワーク領域と呼ばれる(FR)。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々4つのFRを含んでなり、これは大部分が3つの超可変領域により接続されるβシートの立体配置を採用しており、その超可変領域は、そのβシート構造を接続し、ある場合にはβシート構造の一部を形成することもあるループを形成する。各鎖における超可変領域は、その他の鎖由来の超可変領域と共に、FRにより近接した状態でまとめられており、抗体の抗原結合部位の構成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. pp 15-17; 48-53 (1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接的には関与しないが、様々なエフェクター機能を示し、例えば抗体依存性細胞毒性(ADCC)への抗体の参加等がある。
【0086】
本明細書で使用される場合「超可変領域」なる用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基のことを言う。一般的に超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)及び重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. pp 15-17; 48-53(1991))及び/又は「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基2632(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)及び重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)及び91〜96(H3); Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書で定義する超可変領域の残基以外の可変ドメインの残基のことである。抗体のパパイン分解により、「Fab」断片と呼ばれる、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同じ抗原結合断片と、残りのその名前が容易に結晶化できることを反映する「Fc」断片とを作製する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋できる、F(ab')2断片を作製する。
【0087】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する、最小の抗体断片である。この領域は、1の重鎖及び1の軽鎖可変ドメインの、緊密な、非共有的会合状態の二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域は、VH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を特徴づけるための相互作用するのはこの立体配置のためである。まとめて当該6つの超可変領域は、抗体に対する抗原結合特異性を提供する。ただし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つの超可変領域のみからなるFvの半分)でも、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識且つ結合する能力を有する。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインの重鎖の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab'断片は、その抗体ヒンジ領域由来の1又は複数システイン等の重鎖CH1領域のカルボキシ末端での数個の残基の添加により、Fab断片と区別される。本明細書で指定するFab'−SHは、少なくとも1個の遊離チオール基を持つ定常ドメインの(1又は複数の)システイン残基におけるFab'のことである。F(ab')2抗体断片はもともと、Fab'断片のペアとして作製され、これはこれらの間にヒンジシステインを有する。その他の抗体断片の化学共役も知られている。
【0088】
任意の脊椎動物種由来の抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確な特徴のある種類の1つに割り振ることができる。
【0089】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含んでなり、ここで当該ドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、scFvに抗原結合のための所望の構造を形成させる、VH及びVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含んでなる。scFvの概説として、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0090】
「二機能性抗体」なる用語は、2つの抗原結合部位を伴う抗体小断片のことを言い、当該断片は、同じポリペプチド鎖に、可変軽ドメイン(VL)と接続する可変重ドメイン(VH)を含んでなる(VH−VL)。同じ鎖上の2つのドメインの間でペアを組ませるには短すぎるリンカーを使用することにより、当該ドメインは別の鎖の相補ドメインとペアを組まされ、2つの抗原結合部位を作り出す。二機能性抗体についてより詳細な記載としては、例えば欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号;及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)がある。
【0091】
「三機能性抗体」又は「三価の三量体」なる用語は、3つの単鎖抗体の組み合わせのことを言う。三機能性抗体は、VL又はVHのアミノ酸末端で構築されており、リンカー配列を含まない。三機能性抗体は、頭−尾法で環状に配列されたポリペプチドを有する3つのFv頭部を持つ。三機能性抗体の可能性ある構造としては、各々120°の角度で平面上に位置した3つの結合部位を有する平面状である。三機能性抗体は、一特異性、二特異性、三特異性の可能性がある。
【0092】
「単離」抗体は、その天然環境の成分から、識別及び分離及び/又は回収されたものである。その天然環境の混入成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨げる可能性がある物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質等が挙げられる。単離抗体には、抗体の天然環境成分の少なくとも1つは存在しないはずなので、遺伝子改変細胞内のインサイツ(in situ)抗体が含まれる。ただし、通常単離抗体は少なくとも1回の精製ステップにより調製する。
【0093】
抗体「(それ)が結合する」注目の抗原、例えばCD59は、抗原を発現する細胞を標的とする点で治療的又は診断的剤として抗体が有用であるよう、十分な親和性を有する抗原に結合できるものである。抗体がCD59に結合できるものである場合、通常他の受容体とは対照的に優先的にCD59に結合し、非特異的Fc接触等の偶発的結合、又は他の抗原と共通する翻訳後修飾のための結合はなく、且つ他のタンパク質と重要な交差反応をしないものであってよい。注目の抗原に結合する抗体を検出するための方法は、当業者に周知であり、限定するものではないが、FACS、細胞ELISA及びウェスタンブロット等のアッセイが含まれ得る。
【0094】
本明細書で使用される、「細胞」、「細胞系列」、及び「細胞培養物」なる表現は同じ意味で使用され、いずれの語も子孫を包含する。全ての子孫は、計画的又は偶発的な変異により、DNA含有物が正確に同じでなくてもよい。最初に形質移入された細胞でのスクリーニングと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。これらの語を区別することを意図する場合は、本文から明らかになる。
【0095】
「治療又は治療すること」は、療法的な治療及び予防的又は妨害的な測定のことを言い、ここで本目的は、標的とする病因の症状又は障害を、防止又は遅延(緩和)することである。治療を必要とする対象には、既に障害を患うもの、及び障害を患う傾向のあるもの、又はその障害が防止されるべきであるものが含まれる。それ故、本明細書において治療される哺乳類は、障害に罹患している診断されていてもよいし、障害に罹患し易く又は影響を受け易くてもよい。
【0096】
「癌」及び「癌性」なる用語は、哺乳類における生理的症状のことを言い、典型的には、細胞の増殖又は死が制御されていないことが特徴である。癌の例としては、限定するものではないが、細胞癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ様悪性疾患が挙げられる。当該癌のより具体的な例としては、扁平細胞癌(例えば上皮扁平細胞癌)、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平細胞癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌等の胃癌(gastric or stomach cancer)、膵臓癌、グリオブラストーマ、頸部癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、へパトーム、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜及び子宮細胞癌、唾液腺細胞癌、腎臓又は腎性癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞癌、肛門細胞癌、陰茎細胞癌、並びに頭部及び頸部癌が挙げられる。
【0097】
「化学療法剤」は癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ(thiotepa)及びシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(シトキサン(CYTOXAN(登録商標)));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン(busulfan)、インプロスルファン(improsulfan)及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン、例えばベンゾドパ(benzodopa)、カルボクオン(carboquone)、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa);エチレンイミネス(ethylenimines)及びメチラメラミネス(methylamelamines)、例えばアルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンホスフォラミド(triethylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスフォラミド(triethylenethiophosphoramide)及びトリメチルオロメラミン(trimethylolomelamine);ナイトロジェンマスタード(nitrogen mustards)、例えばクロランブシル(chlorambucil)、クロルナフェジン(chlornaphazine)、クロロフォスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン(melphalan)、ノベンビシン(novembichin)、フェネストリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマウタード;ニトロソ尿素(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine);抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン(actinomycin)、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアミシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルノマイシン(carnomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycins)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、ミトマイシン(mitomycins)、ミコフェノリール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、プロマイシン(puromycin)、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメックス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);抗代謝物、例えばメトトレキサート(methotrexate)及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン(thioguanine);ピリミジン類似体、例えばアンシタビン(ancitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(6-azauridine)、カルモフル(carmofur)、シタラビン(cytarabine)、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フロクスウジン(floxuridine)、5−FU;アンドロゲン、例えばカルステロン(calusterone)、ドロモスタノロン(dromostanolone)、プロピオナート(propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone);抗アドレナル、例えばアミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane);葉酸補充物(replenisher)、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノブリン酸(aminolevulinic acid);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン(lentinan)、ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダモル(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン(procarbazine);PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2"−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン(urethan);ビデシン(vindesine);デカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガサイトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C]);シクロホスファミド;チオテパ(thiotepa);タキサン(taxanes)、例えばパクリタキセル(paclitaxel)(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)及びドセタキセル(docetaxel)(タキソテール(TAXOTERE(登録商標)、Aventis, Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル(chlorambucil);ゲンシタビン(gemcitabine);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(vinblastine);白金;エトポシド(etoposide)(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC(mitomycin C);ミトキサントロン(mitoxantrone);ビンクリスチン(vincristine);ビノレルビン(vinorelbine);ネバルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニプシド(teniposide);デューロマイシン(daunomycin);アミノプテリン(aminopterin);ゼローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RES 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン(esperamicins);カペシタビン(capecitabine);及び上記の任意の医薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体がある。また、この定義には、腫瘍でのホルモン作用を制御又は阻害の作用をする、抗エストロゲン等の抗ホルモン剤が含まれ、例えば、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン(4-hydroxytamoxifen)、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェンン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、及びトレミフェン(toremifene)(Fareston);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リュープロリド(leuprolide)、及びゴセレリン(goserelin);及び上記の任意の医薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体がある。
【0098】
治療の目的のための「哺乳類」とは、哺乳類として分類される任意の動物、例えば、ヒト、マウス、SCIDもしくはヌードマウス又はマウス種、家畜(domestic and farm animal)、及び動物園の、スポーツの、もしくはペットの動物、例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等のことを言う。好ましくは、当該哺乳類はヒトである。
【0099】
「オリゴヌクレオチド」は、周知の方法で化学合成される、短い、一本鎖又は二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである(方法としては、例えば、1988年5月4日に発行された欧州特許第266,032号等の記載に従う固相法を用いるか、又はFroehler et al., Nucl. Acids Res., 14:5399-5407, 1986に記載されたデオキシヌクレオシド H−ホスホネート中間体を経由することによる、ホスホトリエステル、亜リン酸エステル、又はホスホラミダイトの化学がある。)その後これらをポリアクリルアミドゲルで精製する。
【0100】
本発明によれば、「ヒト化」及び/又は「キメラ」状態の非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンは、もとの抗体と比較すると、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)又はヒト抗ヒト抗体(HAHA)応答の減少をもたらす、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体の抗原結合サブ配列等)を含有する抗体であるとともに、非ヒト免疫グロブリンと同じ結合特徴を同時に保持し、所望の効果をもたらすのに必要な、当該非ヒト免疫グロブリン由来の必須部分(例えば、(1又は複数の)CDR、(1又は複数の)抗原結合領域、(1又は複数の)可変ドメイン等)を含有する抗体のことを言う。大部分においてヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補的決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(マウス、ラット又はウサギ等)のCDR由来の残基で置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトFR残基と置き換えられる。さらにヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入CDRもしくはFR配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体機能をさらに洗練し、最適化させる。一般的にヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応する全てもしくは実質的に全てのCDR領域、及びヒト免疫グロブリン共通配列のものに対応する全てもしくは実質的に全てのFR残基における、少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。最も有利なことには、ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。
【0101】
「脱免疫化」抗体は、所与の種に対して非免疫原性又は低免疫原性の免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体への構造的変質を介して達成できる。当業者に周知のいずれかの脱免疫化技術を使用できる。抗体を脱免疫化するのに適した技術の1つとして、例えば2000年6月15日に発行された国際公開第00/34317号における記載が挙げられる。
【0102】
「アポトーシス」を誘導する抗体は、最終的に細胞死が予定されているもので、限定するものではないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の膨張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成によって例証される。
【0103】
本明細書で使用される「抗体誘導性細胞毒性」は、効果が結合度に関連する必要がない、IDAC受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより作製された、ハイブリドーマ上清又は抗体、IDAC受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、IDAC受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、その抗原結合断片、又は抗体リガンド由来の細胞毒の影響を意味すると解され、この影響は結合度合いに関連する必要はない。
【0104】
本明細書全体を通して、ハイブリドーマ細胞系列、及びそこから作製される単離モノクローナル抗体は、その内部での指定であるAR36A36.11.1(マウス)、(ch)AR36A36.11.1(キメラ)、(hu)AR36A36.11.1(ヒト)又は寄託機関の指定であるIDAC 280104−02のいずれかで択一的に言われる。
【0105】
本明細書で使用される「抗体−リガンド」は、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに結合特異性を提示する部分であって、未処理の抗体分子、抗体断片、及び少なくとも1つの抗原結合領域又はその一部(すなわち、抗体分子の可変部分)を有するいずれかの分子であってもよく、例えば、IDAC 280104−02として指定されたハイブリドーマ細胞系列により作製された単離モノクローナル抗体、IDAC 受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、IDAC 受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、及びその抗原結合断片により結合される抗原の、少なくとも1つのエピトープで、特異的に認識及び結合する、Fv分子、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、二特異性抗体、融合タンパク質、又はいずれかの遺伝子操作分子。
【0106】
本明細書で使用される、「癌性疾患修飾性抗体」(CDMAB)は、患者に有益な方法、例えば腫瘍負荷の低減、又は腫瘍を持つ個体の生存の延長により、細胞癌疾患プロセスを修飾するモノクローナル抗体、及びその抗体−リガンドのことを言う。
【0107】
「CDMAB関連結合剤」は、その最も広い意味で使用され、限定するものではないが、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する、ヒト又は非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンド等の任意の形態が含まれると解する。
【0108】
「競合的バインダー」は、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに結合親和性を有する、ヒト又は非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンド等の任意の形態が含まれると解する。
【0109】
治療される腫瘍には、原発性腫瘍及び転移性腫瘍、並びに難治性腫瘍が含まれる。難治性腫瘍には、化学療法剤単独、抗体単独、放射治療単独、又はそれらの組み合わせでの治療に応答しない、又は耐性のある腫瘍を含む。難治性腫瘍はまた、当該剤での治療により阻害するように見えるが、治療中断後、5年以内、時には10年以上後に再発する腫瘍を包含する。
【0110】
治療できる腫瘍には、血管新生されない、又は実質的に血管新生されない腫瘍、並びに血管新生される腫瘍が含まれる。従って治療できる固形腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経膠腫及びリンパ腫が含まれる。当該腫瘍のいくつかの例には、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部及び頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、例えば、小細胞及び非小細胞肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍が含まれる。他の例には、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽腫、毛細血管腫、髄膜腫、横紋筋肉腫、グリア芽腫、好ましくは、多型性グリア芽腫、及び平滑筋肉腫が含まれる。
【0111】
本明細書で使用される「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する分子の部分を意味する。
【0112】
本明細書で使用される「競合阻害」は、ハイブリドーマ細胞系列により作製されるモノクローナル抗体に対する決定部位を認識及び当該部位に結合できることを意味し、ここで前記細胞系列は、IDAC 280104−02、(IDAC 280104−02抗体)、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、その抗原結合断片、又はその抗体リガンドのことを指し、これが従来の相互(reciprocal)抗体競合アッセイを用いて対象とされる(Belanger L., Sylvestre C. and Dufour D. (1973), Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures. Clinica Chimica Acta 48, 15)。
【0113】
本明細書で使用される「標的抗原」は、IDAC 280104−02抗原又はその部分である。
【0114】
本明細書で使用される「免疫複合体」は、任意の分子又はCDMAB、例えば、細胞毒と化学的もしくは生化学的に関連する抗体、放射活性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター成分、酵素、毒素、抗腫瘍薬物又は治療剤等がある。抗体又はCDMABは、その標的が結合できる限り分子周囲の任意の場所で、サイトカイン、放射活性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター成分、酵素、毒素、抗腫瘍薬物又は治療剤と結合してもよい。免疫複合体の例には、毒素化学複合体及び抗体毒性融合タンパク質が含まれる。
【0115】
抗腫瘍剤としての使用に適する放射活性剤は、当業者に知られている。例えば、131I又は211Atが使用される。これらの同位体は、従来技術を用いて抗体に結合する(例えば、Pedley et al., Br. J. Cancer 68, 69-73 (1993))。あるいは、抗体に結合する抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化する酵素である。腫瘍部位に到達するまでその不活性状態を維持し、腫瘍部位で抗体複合体が投与されるとその細胞毒性状態に変換する、プロドラッグを投与してもよい。実際は、抗体−酵素複合体を患者に投与し、治療される組織の領域に局在化させる。その後プロドラッグは、治療される組織の領域で、細胞毒性薬物への変換が起きるよう患者に投与される。あるいは、抗体と複合化された抗腫瘍剤は、例えばインターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)等のサイトカインである。抗体は、他の組織に影響を及ぼすことなく、サイトカインが腫瘍の損傷又は破壊を媒介するよう、腫瘍に対するサイトカインを標的とする。従来の組み換えDNA技術を用いると、サイトカインはDNAレベルで抗体と融合する。インターフェロンを使用してもよい。
【0116】
本明細書で使用される「融合タンパク質」は、任意のキメラタンパク質であって、ここで抗原結合領域は、生物活性分子、例えば毒物、酵素、蛍光タンパク質、発光マーカー、ポリペプチドタグ、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター成分、又はタンパク質薬物と接続する。
【0117】
本発明はさらに、標的又はレポーター成分が結合する本発明のCDMABを考慮する。標的成分は、結合ペアの第一成分である。例えば、抗腫瘍剤は、当該ペアの第二成分と複合化し、これが、抗原結合タンパク質が結合する部位に向かう。かかる結合ペアの一般的な例としては、アビジン及びビオチンがある。好ましい実施態様によれば、ビオチンは、本発明のCDMABの標的抗原と複合化して、アビジン又はストレプトアビジンと複合化する抗腫瘍剤又の成分のための標的を提供する。あるいは、ビオチン又は別のこのような成分は、例えば、検出可能なシグナル発生剤がアビジン又はストレプトアビジンと複合化する診断システムにおいて、本発明のCDMABの標的抗原と結合すると共に、レポーターとして使用される。
【0118】
検出可能なシグナル発生剤は、インビボ及びインビトロでの診断目的において有用である。シグナル発生剤は、外部手段、通常は電磁波照射により検出できる測定可能なシグナルを発生する。ほとんどの部分でシグナル発生剤は、酵素又は発色団であるか、又は蛍光、リン光、もしくは化学発光により光を放射する。発光団は、紫外又は可視領域で光を吸収する色素を含むとともに、酵素触媒反応の基質又は分解産物であり得る。
【0119】
さらに、本発明の範囲内には、調査又は診断方法のための、インビボ及びインビトロでの、本発明のCDMABの使用が含まれる。本明細書で考慮される診断方法を実行するため、本発明には、本発明のCDMABを含有するキットがさらに含まれる。当該キットは、個人の細胞におけるCDMABの標的抗原の過剰発現を検出することによって、特定タイプの癌のリスクのある個人を識別するために有用である。
【0120】
診断アッセイキット
本発明の腫瘍を検出するための診断アッセイキットの形態で、本発明のCDMABの利用を考慮する。腫瘍は一般的に、1又は複数の腫瘍特異的抗原の存在に基づいて患者において検出され、当該抗原には例えば、患者から得られる生物サンプル、例えば血液、血清、尿及び/又は腫瘍生検等の中の、タンパク質及び/又はかかるタンパク質をコードするポリヌクレオチドがある。
【0121】
特定の腫瘍、例えば結腸、乳房、肺又は前立腺の腫瘍の、存在又は不存在を示すマーカーとして、タンパク質は機能する。抗原が、他の癌性主要の検出のための用途を有することはさらに考慮される。結合剤の診断アッセイキットの包含物は、本発明のCDMABか、又は生物サンプルにおいて剤と結合する抗原のレベルを検出できる結合剤に関連するCDMABを含んでなる。ポリヌクレオチドプライマー及びプローブを、腫瘍タンパク質をコードするmRNAのレベルを検出するために使用してもよく、これは癌の存在又は不存在の指標でもある。診断用の結合アッセイのために、データを、通常の組織に存在するものとの関連で、癌性腫瘍の存在を決定的に診断するための結合の認識をさせるような、統計的に有意な抗原レベルと相関するようなものにする。サンプルにおけるポリペプチドマーカーを検出する結合剤を使用するような多数の形式は、当業者に知られる通り、本発明の診断アッセイに有用であることを考慮する。例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に例示されるものがある。既に記載した診断アッセイの形式の全て又は任意の組み合わせ、置換又は修正が、さらに考慮される。
【0122】
患者における癌の存在又は不存在は、典型的には以下によって決定される、(a)患者から得た生物サンプルを、結合剤と接触させること、(b)サンプル中の結合剤と結合するポリペプチドレベルを検出すること、及び(c)既定のカットオフ値と、前記ポリペプチドレベルを比較すること、である。
【0123】
例示的な実施態様によれば、アッセイが、サンプルの残部由来のポリペプチドに結合及びこれを除去するため、固形支持体上に固定されたCDMABベースの結合剤の使用に関連することが考慮される。その後、結合ポリペプチドを、レポーター群を含有するとともに、試薬/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を用いて検出してもよい。例示的な検出試薬としては、ポリペプチド又は抗体又は結合抗原に特異的に結合するCDMABベースの結合剤か、又は例えば抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA又はレクチン等の結合剤に特異的に結合するその他の剤がある。代わりの実施態様によれば、競合アッセイを利用してもよく、ここでポリペプチドはレポーター群で標識され、サンプルと結合剤のインキュベーション後、固定化結合剤に結合させる。固定化結合剤とサンプルとの反応性の指標は、サンプルの成分が、標識化ポリペプチドが結合剤へ結合することを阻害する程度である。当該アッセイ内での使用のための好適なポリペプチドには、結合剤が結合親和性を有する、全長腫瘍特異的タンパク質及び/又はその部分が含まれる。
【0124】
診断キットは、タンパク質が結合できる当業者に既知の任意の物質の形態である、固形支持体を提供する。好適な例には、マイクロタイタープレートにおける試験ウェル又はニトロセルロース又はその他の好適な膜が含まれる。あるいは、前記支持体には、ビーズ又はディスク、例えば、ガラス、ファイバーグラス、ラテックス又はプラスティック材料、例えばポリスチレン又は塩化ポリビニルがある。支持体はまた、磁気粒子又は光ファイバーセンサー、例えば米国特許第5,359,681号に開示のもの等でもよい。
【0125】
結合剤は、特許及び科学文献において十分に記載される、当業者に既知の様々な技術を用いて固形支持体に固定されることが考慮される。「固定化」なる用語は、吸着のような非共有結合及び共有結合の両方のことを言い、本発明の内容においては、支持体上で剤と官能基が直接結合するか、又は架橋剤で結合するものがある。非限定的ではあるが好ましい実施態様によれば、マイクロタイタープレート中のウェル、又は膜への吸着による固定化は好ましい。吸着を、好適なバッファ中で、好適な時間、固形支持体と結合剤を接触させることにより達成してもよい。接触時間は、温度で変動する可能性があり、一般的には約1時間から約1日の範囲内である。
【0126】
固形支持体への結合剤の共有的結合は、最初に、支持体及び結合剤上の官能基、例えばヒドロキシル又はアミノ基の両方と反応する二機能性試薬と、支持体との反応により通常達成される。例えば、結合剤は、ベンゾキノンを用いるか、又は結合パートナー上のアミンの活性水素で、支持体上のアルデヒド基の縮合により、適切なポリマー被覆を有する支持体と共有的に結合してもよい(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook, 1991, at A12 A13を参照されたい)。
【0127】
診断アッセイキットが、2抗体サンドウィッチアッセイの形態をとることが、さらに考慮される。このアッセイは、例えば通常マイクロタイタープレートのウェルである固形支持体に固定されている本明細書で開示のCDMAB等の抗体と、サンプルとを最初に接触させ、サンプル内でポリペプチドが固定化抗体と結合させる。その後、未結合サンプルを固定化ポリペプチド−抗体複合体から除去するとともに、レポーター群を含有する検出試薬(好ましくはポリペプチドの異なる部位に結合できる第二抗体)を添加する。その後、固形支持体に結合したままの検出試薬の量を、特異的レポーター群に適する方法を用いて決定する。
【0128】
特定の実施態様によれば、上記の通り抗体が支持体に固定化されると、支持体上の残存タンパク質結合部位は、当業者に既知の任意の好適なブロッキング剤、例えばウシ血清アルブミン又はTween20(商標)(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を使用してブロックされる。その後、固定化抗体をサンプルと共にインキュベートし、ポリペプチドを抗体と結合させる。サンプルは、例えばリン酸バッファ化食塩水(PBS)等の好適な希釈剤でインキュベーション前に希釈できる。一般的には、特異的に選択された腫瘍で、個々から得たサンプル内のポリペプチドの存在を検出するのに十分な時間に対応する、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)が選択されるはずである。好ましくは、接触時間は、結合及び未結合ポリペプチド間の平衡到達レベルの、少なくとも約95%の結合レベルに到達するために十分な時間である。当業者は、平衡到達に必要な時間を、ある時間を超えて起きる結合のレベルを評価することにより容易に決定できる。
【0129】
その後、適切なバッファで固形支持体を洗浄することにより、未結合サンプルを除去することは、さらに考慮される。その後、レポーター群を含有する第二抗体を、固形支持体に添加する。検出試薬と、固定化抗体−ポリペプチド複合体とのインキュベーションは、結合ポリペプチドを検出する十分な時間量で実施されるはずである。その後、未結合検出試薬は除去されるとともに、結合検出試薬はレポーター群を用いて検出される。レポーター群の検出に用いられる方法は選択されたレポーター群のタイプに特異的であることが必要で、例えば放射性群、シンチレーション計測又はオートラジオグラフィ法が一般的に適切である。分光測定法は、色素、発光団及び蛍光団の検出に使用できる。ビオチンは、異なるレポーター群と結合したアビジンを用いる(一般的には酵素上の放射性又は蛍光団)。酵素レポーター群は一般的に基質の添加し(一般的には特定時間)、その後反応産物の分光測定又の他の解析により検出できる。
【0130】
例えば前立腺癌等の癌の存在又は不存在を決定する、本発明の診断的アッセイキットを利用するため、固形支持体に結合した状態のレポーター群から検出されるシグナルは、一般的には、既定のカットオフ値と対応するシグナルと比較される。例えば、癌の検出のための例示的なカットオフ値は、固定化抗体を癌に罹患しない患者からのサンプルとインキュベートする場合の、得られる平均中間シグナルである。一般的には、既定のカットオフ値超で約3標準偏差であるシグナルを発生させるサンプルは、癌が陽性であると考えられるはずである。代わりの実施態様によれば、カットオフ値は、Sackett et al., Clinical Epidemiology. A Basic Science for Clinical Medicine, Little Brown and Co., 1985, p. 106-7の方法に従って、受信者動作曲線(Receiver Operator Curve)を用いて決定することができる。当該実施態様によれば、前記カットオフ値は、診断検査結果の各可能性あるカットオフ値に対応する、真陽性速度(即ち、感度)及び偽陽性速度(100パーセント特異性)のペアのプロットから決定できる。左手上方の角に最近接するプロット上のカットオフ値(即ち、最大面積を包含する値)は、最も正確なカットオフ値であり、本方法により決定されるカットオフ値より高いシグナルを発生するサンプルは陽性と考えられる。あるいは、カットオフ値は、偽陽性速度を最小化するようにプロットに沿って左に移動しても、又は偽陰性速度を最小化するように右に移動してもよい。一般的には、本方法によろい決定されるカットオフ値より高いシグナルを発生するサンプルは、癌が陽性と考えられる。
【0131】
キットにより可能となる診断アッセイは、流入又は片(strip)試験の形式のいずれかで行うことが考慮され、ここで結合剤はニトロセルロース等の膜に固定化される。流入試験においては、サンプル内のポリペプチドは、サンプルが膜を通過する際に、固定化結合剤に結合する。次に、標識化結合剤は、第二結合剤と含有する溶液が膜を通過する際に、結合剤−ポリペプチド複合体に結合する。その後、第二結合剤の結合の検出を、上記の通りに行うことができる。片試験形式においては、結合剤が結合する膜の一端を、サンプル含有溶液に浸漬する。第二結合剤を含有する領域を通り、固定下結合剤の領域まで、サンプルを膜に沿って移動させる。固定化抗体の領域での第二結合剤の濃度は、癌の存在を示す。結合部位における、例えば線等のパターンの発生は、視覚的に読取り可能であり、これは陽性試験の指標である。当該パターンの不存在は、陰性の結果を示す。一般的には、生物サンプルが、上記の形式での2抗体のサンドウィッチアッセイにおいて、陽性シグナルを発生するのに十分なレベルのポリペプチドを含有する場合、視覚的に識別可能なパターンを発生する、膜固定化結合剤の量を選択する。本診断アッセイにおける使用のための好ましい結合剤は、本明細書で記載の抗体、その抗原結合断片、及び任意のCDMAB関連結合剤をここで開示する。膜上に固定化した抗体量は、診断アッセイを作製する任意の有効量であり、約25ナノグラム〜約1マクログラムとすることができる。典型的に当該試験は、非常に少量の生物サンプルで行う。
【0132】
さらに、本発明のCDMABはその標的抗原を識別できるため、実験室の研究で使用することができる。
【0133】
本明細書で記載の発明がより十分理解されるように、以下の記載で説明する。
【0134】
本発明は、CDMAB(即ち、IDAC 280104−02 CDMAB、受託番号280104−02でIDCABに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、受託番号280104−02でIDCABに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合断片、又はその抗体リガンド)であって、IDAC 280104−02抗原を特異的に認識及びこれに結合するCDMABを提供する。
【0135】
単離モノクローナル抗体のCDMABは、受託番号280104−02でIDCABに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体は、その標的抗原に対する、ハイブリドーマIDAC 280104−02により作製された単離モノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を有する限り、任意の状態があり得る。即ち、任意の組み換えタンパク質(例えば、抗体がリンホカイン又は腫瘍阻害増殖因子等の第二タンパク質と組み合わされる融合タンパク質)であって、IDCA 280104−02抗体と同じ結合特異性を有するものは、本発明の範囲内に入る。
【0136】
本発明の1の実施態様によれば、CDMABはIDAC 280104−02抗体である。その他の実施態様によれば、CDMABは抗原結合断片であり、これは、IDCA280104−02抗体の抗原結合領域を有する、Fv分子(例えば、単鎖Fv分子)、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、融合タンパク質、生検抗体、ヘテロ抗体又は任意の組み換え分子があり得る。本発明のCDMABは、IDAC 280104−02モノクローナル抗体が対象とするエピトープを対象とする。
【0137】
本発明のCDMABは、修飾されてもよく、すなわち、誘導分子を作製するような分子内アミノ酸修飾がある。化学修飾も可能である。直接変異導入による修飾は、親和性成熟の方法であり、ファージディスプレイ又は鎖シャッフリング(chain shuffling)も可能である。
【0138】
親和性及び特異性は、CDR及び/又はフェニルアラニントリプトファン(FW)残基の変異により、及び所望の特徴を有する抗原結合部位のスクリーニングのために、修正又は改善できる(例えば、Yang et al., J. Mol. Biol., (1995) 254: 392-403)。1つの方法としては、個々の残基又は残基の組み合わせを無作為化し、他の同じ抗原結合部位の集団において、2から20アミノ酸のサブセットが特定の位置に見出されるようにする。あるいは、変異性PCR法によって広範な残基を誘導することができる(例えば、Hawkins et al., J. Mol. Biol., (1992) 226: 889-96)。別の例によれば、重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含有するファージディスプレイベクターは、E.coliの変異系統で繁殖できる(例えば、Low et al., J. Mol. Biol., (1996) 250: 359-68)。これらの変異誘発方法は、当業者に既知の多くの方法の例示がある。
【0139】
本発明の抗体の親和性を向上させるための別の手法は鎖シャッフリングの実施であり、これはより高親和性の抗体を調製するため、その重鎖又は軽鎖を、別の重鎖又は軽鎖と無作為に対にする方法である。様々な抗体のCDRを、他の動物の対応するCDRとシャッフルしてもよい。
【0140】
誘導分子は、ポリペプチドの官能特性を維持するはずであり、特にかかる置換を有する分子は、IDAC 208104−02抗原又はその部分に対してポリペプチドを結合させる。
【0141】
これらのアミノ酸置換には、限定するものではないが、当業界で「保存的」として知られるアミノ酸置換がある。
【0142】
例えば、「保存的アミノ酸置換」と呼ばれる特定のアミノ酸置換は、タンパク質の立体配座又は官能基のいずれも変更せずにタンパク質においてしばしばなされる置換であり、十分に確立されたタンパク質化学の原理である。
【0143】
当該変更には、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びロイシン(L)の任意のアミノ酸から任意の他の疎水性アミノ酸への置換;アスパラギン酸(D)からグルタミン酸(E)への置換及び逆も同様;グルタミン(Q)からアスパラギン(N)への置換及び逆も同様;及びセリン(S)からスレオニン(T)への置換及び逆も同様、が含まれる。他の置換は、特定のアミノ酸の環境及びタンパク質の3次元構造におけるその役割によって、保存的と考えることができる。例えば、グリシン(G)及びアラニン(A)はしばしば相互変換でき、アラニン及びバリン(V)も同様である。比較的疎水的なメチオニン(M)は、ロイシン及びイソロイシンと相互変換でき、バリンと相互変換できることもある。アミノ酸残基の重要な特性がその電荷であるような位置で、リジン(K)及びアルギニン(R)はしばしば相互変換可能であり、この2つのアミノ酸残基のpKの差異は重要でない。さらに他の変化は、特定の環境下で「保存的」と考えられる。
【実施例1】
【0144】
ヒトPC−3癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、前立腺癌の予防的インビボモデルにおける有効性が従来から実証されている(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。この発見を拡張するため、AR36A36.11.1を、確立されたPC−3前立腺癌異種移植モデルで試験した。図1及び2を参照すると、8〜10週齢の雄の無胸腺ヌードマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト前立腺癌細胞(PC−3)を移植した。マウスを10匹ずつ2つの治療群にわけた。移植後6日目で、平均マウス腫瘍容量はおよそ95mm3に達したときに、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4-、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に3回、3週間にわたり投与した。腫瘍増殖を4〜10日ごとにキャリパーで測定した。抗体を10用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0145】
AR36A36.11.1は、PC−3インビボヒト前立腺癌の確立されたモデルで、腫瘍増殖を有意に阻害した。ARIUS抗体AR36A36.11.1での治療は、実験71日目であって、最後の抗体用量投与後44日目に決定した際、PC−3腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して81.1%まで低減した(t検定、p=0.0004084)(図1)。腫瘍増殖阻害は、コントロール及び治療群の両方について、初期腫瘍容量の減少後に計算した。
【0146】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。1週間ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図2)。6日と71日の間の平均増分は、コントロールにおいて3.47g(14.3%)、AR36A36.11.1治療群において4.93g(19.8%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0147】
総括すると、AR36A36.11.1は、この確立されたヒト前立腺癌の異種移植モデルにおいて十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。
【実施例2】
【0148】
ヒトMDA−MB−468乳癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、MDA−MB−231ヒト乳癌異種移植モデルにおける有効性を従来から実証している(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。この発見を別のヒト乳癌モデルに拡張するため、AR36A36.11.1を、確立されたMDA−MB−468ヒト乳癌異種移植モデルで試験した。図3及び4を参照すると、8〜10週齢の雄の無胸腺ヌードマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト乳癌細胞(MDA−MB−468)を移植した。マウスを10匹ずつ2つの治療群にわけた。移植後35日目で、平均マウス腫瘍容量はおよそ83mm3に達したときに、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4-、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に3回、3週間にわたり投与した。腫瘍増殖を1週間に1回キャリパーで測定した。抗体を10用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0149】
AR36A36.11.1は、MDA−MB−468インビボヒト乳癌の確立されたモデルで、腫瘍増殖を有意に阻害した。ARIUS抗体AR36A36.11.1での治療は、実験79日目であって、最後の抗体用量投与後26日目に決定した際、MDA−MB−468腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して98.6%まで低減した(t検定、(p=0.000147)(図3)。腫瘍増殖阻害は、コントロール及び治療群の両方について、初期腫瘍容量の減少後に計算した。
【0150】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。1週間ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図4)。35日と79日の間の平均増分は、コントロールにおいて1.82g(7.2%)、AR36A36.11.1治療群において1.59g(6.7%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0151】
総括すると、AR36A36.11.1は、この確立されたヒト乳癌の異種移植モデルにおいて十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。
【実施例3】
【0152】
ヒトMDA−MB−231乳癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、確立されたMDA−MB−231ヒト乳癌異種移植モデルにおける有効性を従来から実証している(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。有効用量レベルを決定するため、AR36A36.11.1を、確立されたMDA−MB−31ヒト乳癌異種移植モデルにおいて様々な用量で試験した。図5及び6を参照すると、8〜10週齢の雌のSCIDマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)を移植した。平均マウス腫瘍容量がおよそ100mm3に到達してから、マウスを10匹ずつ5つの治療群にわけた。移植後11日目で、20、10、2又は0.2mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に3回、3週間にわたり投与した。腫瘍増殖を4〜7日ごとにキャリパーで測定した。抗体を10用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0153】
AR36A36.11.1は、MDA−MB−231インビボヒト乳癌の確立されたモデルにおいて、治療期間の間、最低用量の0.2mg/kgで、用量依存的な腫瘍増殖の阻害及び軽減を実証した。腫瘍増殖軽減は、最低用量での治療後も維持した。実験48日目であって、最後の抗体用量投与後16日目に決定した際、MDA−MB−231腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して、20、10及び2mg/kgのARIUS抗体AR36A36.11.1での治療により100%まで完全に根絶させ(t検定、p<0.00001)、0.2mg/kgの用量での処理では98%(p<0.00001)であった(図5)。
【0154】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。4〜7日ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図6)。11日と48日の間の平均増分は、コントロールにおいて2.5g(13.4%)、及びAR36A36.11.1の20、10、2又は0.2mg/kgでの治療群においてはそれぞれ、1.6g(8.4%)、2.7g(14.1%)、2.6g(13.6%)、及び2.9g(15.3%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0155】
総括すると、AR36A36.11.1は、この確立されたヒト乳癌の異種移植モデルにおいて、0.2mg/kgで十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。
【実施例4】
【0156】
ヒトNCI−H520肺癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、ヒト乳房、前立腺の結腸の癌異種移植モデルにおける有効性を従来から実証している(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。肺癌における有効性を実証するため、AR36A36.11.1を、NCI−H520ヒト肺癌異種移植モデルにおいて様々な用量で試験した。図7及び8を参照すると、8〜10週齢の雌のSCIDマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト乳癌細胞(NCI−H520)を移植した。平均マウス腫瘍容量がおよそ100mm3に到達してから、マウスを10匹ずつ2つの治療群にわけた。移植後11日目で、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に1回、7週間にわたり投与した。腫瘍増殖を4〜7日ごとにキャリパーで測定した。抗体を8用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0157】
AR36A36.11.1は、NCI−H520インビボヒト肺扁平上皮細胞癌のモデルで、腫瘍増殖を有意に阻害した。ARIUS抗体AR36A36.11.1での治療は、実験55日目であって、最後の抗体用量投与後5日目に決定した際、NCI−H520腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して58.9%まで低減した(t検定、p=0.03113)(図7)。研究を継続し、生存の監視を、コントロール群の90%(9/10)のマウスが、終点に達したために研究から除去された時点である、実験から100日目、最後の用量投与後50日目まで行った。ただし、AR36A36.11.1治療群の50%(5/10)のマウスは、その時点で生存していた(図8)。
【0158】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。1週間ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図9)。0日と55日の間の平均増分は、コントロールにおいて3.7g(18.9%)、AR36A36.11.1治療群において2.6g(12.9%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0159】
総括すると、AR36A36.11.1は、このヒト肺扁平上皮細胞癌の異種移植モデルにおいて十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。AR36A36.11.1は、4つの異なるヒト癌指標、肺扁平冗費細胞、前立腺、乳房及び結腸に対する有効性を実証している。治療の利益は、人を含む他の哺乳類における療法のための、本抗体の薬学的及び医薬的利益を示す、ヒト癌性疾患についての、複数の十分に認識されたモデルにおいて観察された。総合すると、このデータは、AR36A36.11.1抗原が、癌関連抗原であり、且つヒト癌細胞で発現されるとともに、病理的に明らかな癌標的であることを実証する。
【実施例5】
【0160】
クロス競合実験
AR36A36.11.1の結合特性を特徴付けるために、抗体競合実験を10A304.7(他には既に記載の、抗−CD59抗体;米国特許出願第10/413,755号で現在米国特許第6,794,494号、米国特許出願第10/944,664号及び第11/361,153号)を用いて行った。ウェスタンブロットを、10A304.7及びAR36A36.11.1がCD59のエピトープと同じ又は異なるエピトープを認識するかを決定するために用いた。500マイクログラムのMDA−MB−231総膜調製物を、非還元条件で調製ウェルコームを用いてSDS−PAGEに供し、これを2つの10%ポリアクリルアミドゲルの各々の延長まで広げた。150V2時間4℃で、ゲルからタンパク質をPVDF膜に移した。膜を、TBST中の5%スキムミルクで、およそ7時間、4℃で、回転盤上に置き、ブロック化した。膜をおよそ20mLのTBSTで2回洗浄し、20個の別々のチャネルを作るウェスタン・マルチスクリーン装置であって、異なるプローブ溶液をアプライする装置に置いた。以前は、EZ-Link NHS-PEO固相ビオチン化キット(Pierce, Rockford, IL)を用いて、ビオチン化10A304.7及びAR36A36.11.1を調製していた。一次抗体溶液を、ビオチン化10A304.7又はビオチン化AR36A36.11.1を、様々な濃度の非ビオチン化抗体と混合することにより、調製した。具体的には、TBST中の3%スキムミルク中の0.05μg/mLのビオチン化AR36A36.11.1に加え、0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL又は1000μg/mLの非ビオチン化抗体を含有する溶液を調製した。使用された非ビオチン化抗体は、AR36A36.11.1、10A304.7及びコントロール抗体8B1B.1(抗−ブルータングウイルス;IgG2b、カッパ、自社精製)であった。0.05μg/mLのビオチン化10A304.7含有溶液を、同じ濃度の上記の非ビオチン化抗体10A304.7、AR36A36.11.1及びコントロール抗体8B3B.6(抗−ブルータングウイルス;IgG2a、カッパ、自社精製)と共に調製した。TBST中の3%スキムミルクからなるネガティブコントロール溶液を、各膜上の2つのチャネルに添加した。
【0161】
一次抗体溶液を、揺動盤上、室温で2時間、膜上の別々のチャネルでインキュベートした。揺動盤上で、各チャネルをTBSTで10分間3回洗浄した。TBST中の3%スキムミルク中の、0.01μg/mLパーオキシダーゼ複合化ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)からなる二次溶液を、TBST中の3%スキムミルクをネガティブコントロールとして添加した各膜上の1つのチャネル以外の、膜上の各ウェルにアプライした。膜を、揺動盤上、室温で1時間、二次溶液中でインキュベートした。揺動盤上で、各チャネルをTBSTで10分間3回洗浄した。膜をマルチスクリーン装置から除去し、増強化学発光検出溶液(GE Healthcare, Life Sciences formerly Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)で、その製品の指示書に従ってインキュベートした。その後、膜をフィルムに晒して現像した。
【0162】
図10及び11は、抗体競合実験の結果を示す。ビオチン化AR36A36.11.1の結合は、5μg/mL以上の濃度で非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した場合に完全に阻害され(100×過剰;図10、レーン3〜7)、一方、ビオチン化10A304.7の結合は、50μg/mL以上の濃度で非ビオチン化10A304.7と混合した場合に完全に阻害された(1000×過剰;図11、レーン3〜7)。ビオチン化AR36A36.11.1の結合は、IgG2bアイソタイプコントロール抗体含有の任意のサンプル中で阻害されず(図10、レーン15〜19)、ビオチン化10A304.7の結合は、IgG2aアイソタイプコントロール抗体含有の任意のサンプル中で阻害されない(図11、レーン15〜19)。これは、同じ非ビオチン化抗体と混合したビオチン化抗体で観察される結合の阻害は、過剰抗体の非特異的相互作用のみによるものではなく、非ビオチン化抗体による抗原結合部位の占有に起因することを示唆する。ビオチン化AR36A36.11.1の結合は、500μg/mL以上の濃度で、非ビオチン化10A304.7と混合した場合に完全に阻害され(10000×過剰;図10、レーン9〜13)、ビオチン化10A304.7の結合は、試験された全ての濃度で、非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した場合に完全に阻害された(図11、レーン9〜13)。これらの結果は、AR36A36.11.1の結合が、10A304.7の結合を阻害し、逆もまた同様であることを示している。全体的に、競合ウェスタンブロットの結果は、AR36A36.11.1及び10A304.7により認識されるCD59分子のエピトープが互いに類似することを示す。
【実施例6】
【0163】
エピトープマッピング
エピトープマッピングを、10A304.7(他には既に記載の、抗−CD50抗体;米国特許出願第11/361,153号)及びAR36A36.11.1により認識されるCD59分子の領域を決定するために実施した。15ペプチドの重複を、標準的なFmocの化学、及び捕捉剤と共にトリフルオロ酸を用いる脱保護を用いて、CD59のアミノ酸配列に基づいて合成した。さらに、最大30ペプチドの二重ループ、三重ループ、及びシート様ペプチドを、CD59分子の不連続エピトープを再構築するために、Chemically Linked Peptides on Scaffolds(CLIPS)技術を用いて、化学的足場(scaffold)上で合成した。ループ化ペプチドは、ジシステインを含有し、アルファ、アルファ'−ジブロモキシレンで処理することにより環化することにより合成された。またループサイズは、可変空間でシステイン残基を誘導することにより変化させた。新規に誘導されたシステインに加えて他のシステインが存在する場合、これらをアラニンと置換した。ペプチド内の複数のシステインの側鎖は、CLIPSテンプレートと結合し、これは、クレジットカード形式ポリプロピレンPEPSCANカード(455ペプチド形式/カード)において、CLIPSテンプレートの0.5mM溶液、例えば炭酸水素アンモニウム(20 mM, pH 7.9)/アセトニトリル(1:1(v/v))中の1,3−ビス(ブロモメチル)ベンゼン等と処理することにより結合させた。カードを、溶液中で穏やかに、溶液に完全に覆われるようにしながら30から60分振とうした。最後に、カードを、過剰量のH2Oで洗浄すると共に、PBS(pH 7.2)中、1%SDS/0.1%ベータ−メルカプトエタノールを含有する分裂バッファ中で、70℃で30分間超音波処理し、その後さらに45分間H2O中で超音波処理した。全部で3811種の異なるペプチドを合成した。各ペプチドに対する抗体の結合を、PEPSCANベースのELISAで検査した。共有結合ペプチドを含有する、455ウェルのクレジットカード形式ポリプロピレンカードを、一次抗体溶液でインキュベートした。ここで一次抗体溶液は、ブロッキング溶液(PBS中、5%オバルブミン(w/v))で希釈した、10μg/mLの10A304.7又はAR36A36.11.1のいずれかからなる。洗浄後、当該ペプチドを1/1000希釈のウサギ−抗−マウス抗体パーオキシダーゼで、25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、パーオキシダーゼ基質2,2'−アジノ−ジ−3−エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)及び2マイクロリットルの3%H2O2を添加した。1時間後発色を測定した。発色を、電荷結合素子(CCD)−カメラ及び画像処理システムを用いて定量化した。
【0164】
10A304.7及びAR36A36.11.1が最も強く結合した、(3811のうち)20ペプチドを、図12及び13に記載した。3つのアミノ酸ホットスポット領域(VYNKCW、NFNDVT及びLTYY)は、両抗体が結合するペプチド組成物を分析することにより、10A304.7及びAR36A36.11.1の両方で確認された。配列VYNKCW、NFNDVT及びLTYYの様々な組み合わせは、10A304.7のための高結合ペプチドのトップ20のうち17個に存在し、AR36A36.11.1のための高結合ペプチドのトップ20のうち16個に存在する。全CD59分子アミノ酸配列内のこれらのアミノ酸配列の位置を図14に示す。全体的にこれらの結果は、10A304.7及びAR36A36.11.1が、CD59の配列VYNKCWKFEHCNFNDVTTRLRENELTYYに含まれる3つの部分の類似する不連続エピトープを認識することを示している。
【実施例7】
【0165】
AR36A36.11.1のヒト化
組み換えDNA技術は、当業界で周知の方法を使用して行い、適切な場合には、酵素の使用のための供給業者の指示書を当該方法中で使用した。詳細な実験方法を以下に記載する。
【0166】
ポリAトラクトシステム(Poly A Tract System) 1000 mRNA 抽出キット:(Promega Corp., Madison, WI)を使用し、製造者の指示書に従って、ハイブリドーマAR36A36.11.1細胞からmRNAを抽出した。mRNAを以下の通りに逆転写した。カッパ軽鎖については、5.0μLのmRNAを、1.0μLの20 pmol/μL MuIgG・VL−3'プライマーOL040(図15)、及び5.5μLヌクレアーゼ未含有水(Promega Corp., Madison, WI)と混合した。ラムダ軽鎖については、5.0μLのmRNAを、1.0μLの20 pmol/μL MuIgG・VL−3'プライマーOL042(図15)、及び5.5μLヌクレアーゼ未含有水(Promega Corp., Madison, WI)と混合した。ガンマ重鎖については、5μLのmRNAを、1.0μLの20 pmol/μL MuIgG・VH−3'プライマーOL023(表1)、及び5.5μLヌクレアーゼ未含有水(Promega Corp., Madison, WI)と混合した。全3つの反応混合物を、サーマル・サイクラー・セットの予備加熱ブロック中、70℃で5分間置いたこれらを、5分間氷上で冷却してから、各々、4.0μL ImPromII 5×反応バッファ(Promega Corp,. Madison, WI)、0.5μL RNasinリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega Corp,. Madison, WI)、2.0μL 25mM MgCl2 (Promega Corp,. Madison, WI)、1.0μL 10mM dNTP mix (Invitrogen, Paisley, UK)及び1.0μL Improm II逆転写酵素(Promega Corp., Madison, WI)に添加した。反応混合物を室温で5分間インキュベートし、その後予備加熱PCRブックセットに移し、42℃で1時間置いた。前記時間の経過後、逆転写酵素を、70℃でPCRブロック中15分間インキュベーションすることにより加熱不活性化した。
【0167】
重鎖及び軽鎖配列を、以下のcDNAから増幅した:PCRマスターミックスを、37.5μL 10×Hi−Fi伸長PCRバッファ:(Roche, Mannheim, Germany)、7.5μL10mM dNTP ミックス(Invitrogen, Paisley, UK)及び3.75μL Hi−Fi伸長DNAポリメラーゼ(Roche, Mannheim, Germany)を、273.75μLヌクレアーゼ未含有水に添加することにより調製した。このマスターミックスを、氷上の薄壁PCR反応管中に21.5μLずつ分注した。これらの管の6つに、2.5μLのMuIgVH−3'逆転写酵素反応ミックス及び1.0μLの重鎖5'プライマープールHAからHFを添加した(プライマー配列及びプライマープール構築物については図16を参照)。別の7つの管には、2.5μLのMuIgVL−3'逆転写酵素反応物及び1.0μLの軽鎖5'プライマープールLAからLFを添加した(図15)。最後の管には、2.5μLのMuIgVL−3'逆転写酵素反応物及び1.0μLのラムダ軽鎖プライマーMuIgλVL5'−LIを添加した。反応物を、サーマル・サイクラーのブロックに置き、95℃で2分間加熱した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応を、94℃で30秒、55℃で1分、及び72℃で30秒を1サイクルとして40サイクルで実施した。最後に、PCR産物を、72℃で5分間加熱し、その後4℃に保持した。
【0168】
増幅産物を、pGEM−TイージーベクターシステムI(Promega Corp., Madison, WI)キットを用いてpGEM−Tイージーベクターに移植し、配列決定した。得られたVH及びVL配列を、それぞれ図17及び18に示す。
【0169】
キメラ抗体の発生については、VH領域遺伝子を、プライマーOL330及びOL331を用いるPCRにより増幅した(図19)。これらを、テンプレートとしてのcDNAクローンの1つ由来のプラスミドDNAを用い、5'MluI及び3'HindIII制限酵素部位中で操作するように設計した。0.5mL PCR管で、5μL 10×Hi−Fi伸長PCRバッファ(Roche, Mannheim, Germany)、1.0μL 10mM dNTPミックス(Invitrogen, Paisley, UK)、0.5μLのプライマーOL330、0.5μLのプライマーOL331、1.0μL テンプレートDNA、及び0.5μL Hi−Fi伸長DNAポリメラーゼ(Roche, Mannheim, Germany)を、41.5μLヌクレアーゼ未含有水に添加した。
【0170】
VL領域を、MssHII及びBamHI制限酵素部位で、オリゴヌクレオチドOL332及びOL333(図20)を用いて操作する同様の方法で増幅した。反応物を、サーマル・サイクラーのブロック中に置き、95℃で2分間加熱した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応を、94℃で30秒、55℃で1分、及び72℃で30秒を1サイクルとして30サイクル実施した。最後に、PCR産物を、72℃で5分間加熱し、その後4℃に保持した。その後、VH及びVL領域のPCR産物を、NluI/HindIII及びBssHII/BamHI部位で、それぞれベクターpANT15及びpANT13に導入した(図21)。pANT15及びpANT13は、ヒトIg発現カセットを含有するpAT153ベースのプラスミドである。pANT15重鎖カセットは、下流にヒトIgG ポリA領域を伴うhCMVieプロモーター由来の、ヒトゲノムIgG1定常部遺伝子からなる。pANT15はまた、下流にSV40 ポリA領域を伴うSV40プロモーター由来の、ハムスターdhfr遺伝子を含有する。pANT13軽鎖カセットは、下流にヒト軽鎖ポリA領域を伴うhCMVieプロモーター由来の、ゲノムヒトカッパ定常部を含んでなる。ヒトIgリーダー配列と定常部とのク導入部位は、可変領域遺伝子の挿入を可能にさせる。
【0171】
NSO細胞(ECACC 85110503, Porton, UK)を、エレクトロポレーション法を用いてこれら2つのプラスミドと同時形質移入し、5% FBS(Ultra low IgG Cat No. 16250-078 Invitrogen, Paisley, UK)プラスペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, Paisley, UK)プラス100nM メトトレキサート(Sigma, Poole, UK)を加えたDMEM(Invitrogen, Paisley, UK)中でセレクションした。メトトレキサート耐性コロニーを単離し、抗体を、製造者推奨の条件に従って1mLHiTrap MabSelect SuRe カラム(GE Healthcare, Amersham, UK)を用いてプロテインA親和性クロマトグラフィにより精製した。
【0172】
キメラ抗体を、ビオチンタグマイクロビオチン化キット(Sigma, Poole, UK)でビオチン化したAR36A36.11.1マウス抗体を用いて、ELISAベースの競合アッセイで試験した。ビオチン化マウスAR36A36.11.1を、競合抗体の様々な濃度の存在下で、MDA−MB−231細胞との結合に使用した。MDA−MB−231細胞を、組織培養物処理した、平底96ウェルプレート中でコンフルエンスに近い状態で培養し、その後固定化した。ビオチン化マウスAR36A36.11.1抗体を、1μg/mLまで希釈し、0〜5μg/mLの範囲の濃度で当量の競合抗体と混合した。100μLの抗体混合物を、MDA−MB−231被覆プレートに移し、これを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、結合ビオチン化マウスAR36A36.11.1を、ストレプトアビジン−HRP複合体(Sigma, Poole, UK)及びOPD基質(Sigma, Poole, UK)の添加により検出した。アッセイを、暗所で5分間進行させ、その後3M HClの添加により停止させた。その後、アッセイプレートをMRX TCIIプレートリーダー(Dynex Technologies, Worthing, UK)を用い、490nmの吸収を測定した。キメラ抗体((ch)AR36A36.11.1)は、MDA−MB−231細胞に対して、ビオチン化AR36A36.11.1抗体と競合するマウスAR36A36.11.1抗体と同量のものとして示される。
【0173】
ヒト化VH及びVL配列を、マウスAR36A36.11.1配列及び相同ヒトVH及びVL配列との比較で設計した。VH変異体の配列を、図22A及び22Bに、またVL変異体を、図23A及び23Bに示す。ヒト化V領域遺伝子を、相同ヒトVH及びVL配列由来のアミノ酸を導入するように、長い重複オリゴヌクレオチドを用いるPCR用のマウスAR36A36.11.1VH及びVLテンプレートを用いて構築した。変異体ヒト化VH及びVL配列の発生のために使用されるオリゴヌクレオチドは、それぞれ図19及び20に示す。米国特許出願第2004260069号(Hellendoorn, Carr and Baker)に詳述されるように、変異体遺伝子を、発現ベクターpSVgpt及びpSVhygに直接導入した。
【0174】
変異体ヒト化重鎖及び軽鎖の全ての組み合わせ(キメラ構築物を含む)を、速やかにCHO−K1細胞(ECACC 85051005, Porton, UK)に形質移入し、上清を48時間後に回収した。
【0175】
上清を、精製ヒトIgG1/カッパ(Sigma, Poole, UK)を標準として用い、IgG Fc/カッパELISAでの抗体発現のために定量化した。イムノソルブ96ウェルプレート(Nalge nunc, Hereford, UK)を、1×PBS(pH 7.4)で1:1500希釈したマウス抗−ヒトIgG Fc特異的抗体(I6260 Sigma, Poole, UK)で、37℃で1時間被覆した。プレートをPBS+0.05%Tween20で3回洗浄し、その後2%BSA/PBSで希釈したサンプル及び標準を添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートし、PBS/Tweenで3回洗浄し、100μL/ウェルの検出抗体ヤギ抗−ヒトカッパ軽鎖パーオキシダーゼ複合体(A7164 Sigma, Poole, UK)を2%BSA/PBSで1:1000希釈したものを添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後PBS/Tweenで5回洗浄し、OPD基質(Sigma, Poole, UK)を用いて結合抗体を検出した。アッセイを暗所で5分間進行させ、3M HClの添加により停止させた。その後アッセイプレートを、MRX TCIIプレートリーダー(Dynex Technologies, Worthing, UK)を用い490nmで測定した。
【0176】
ヒト化変異体の結合を、上記の競合結合ELISAで評価した。標準曲線を、様々な濃度(156.25 ng/mL 〜 5 μg/mL)の精製キメラ抗体((ch)AR36A36.11.1)であって、マウスAR36A36.11.1の96ウェルマイクロタイタープレート上の固定化MSA−MA−231細胞への結合と競合する抗体で作製した。マウスAR36A36.11.1のMDA−MA−231細胞への結合は、ヤギ抗−マウスIgG:HRP複合体(A2179 Sigma, Poole, UK)で検出され、TMB基質(Sigma, Poole, UK)を用いて明らかにされた。キメラ標準曲線を用いることにより、試験濃度での予測される阻害割合を、各変異体について計算するとともに、実際の観察値と比較した。その後、様々な重/軽鎖組み合わせの各々について期待される阻害により、試験サンプルの観察される阻害を除することにより標準化した。すなわち、観察/期待の比率=1.0のサンプルは、キメラ抗体と同じ結合親和性を有し、値が>1.0ではCD59及びサンプルの結合が減少し、比率<1.0ではCD59への結合が増加する。結果を図24に示す。
【0177】
VH及びVL遺伝子の組み合わせを、二重(dual)ベクターpANT18(pANT18ベクターは、上記プラスミドpANT15と、SpeI/PciI制限酵素部位を導入したpANT13由来の軽鎖カセットをベースとする)に導入するとともに、エレクトロポレーション法を用いてCHO/dhfr−細胞(ECACC, 94060607)に形質移入し、ヒポキサチン及びチミジン枯渇培地(L−グルタミンのピルビン酸Na添加の高グルコースDMEM(Invitrogen, Paisley, UK)、プラス5%透析FBS(カタログ番号26400-044 Invitrogen, Paisley, UK)、プラスプロリン(Sigma, Poole, UK)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, Paisley, UK))でセレクションした。抗体を、上記のプロテインA親和性クロマトグラフィで精製した。精製抗体をフィルター滅菌し、4℃で保存した(PBS中、pH 7.4)。抗体濃度を、上記の通りヒトIgG1/カッパ捕捉ELISAにより計算した。
【0178】
精製抗体サンプルうち3つについて、上記の通り競合ELISAを用いて、MDA−MB−231細胞発現ヒトCD59への結合を試験した。様々な濃度の各抗体(156 ng/mL to 5 μg/mL)を、精製マウスAR36A36.11.1と混合し、固定化MDA−MB−231細胞で被覆したマイクロタイタープレートに添加した。マウスAR36A36.11.1の結合を、上記の通りヤギ抗−マウスIgG(Fc):HRP複合体で検出した。450nmの吸収を、プレートリーダーで測定し、これを試験抗体濃度に対してプロットした。マウスAR36A36.11.1のMDA−MB−231細胞への結合を50%まで阻害するのに必要な、セレクションした変異体の濃度(IC50)を計算し、キメラ抗体と比較した。
【0179】
リード変異体ヒト化抗体及びキメラのIC50は、以下の通りである。
【表1】
【実施例8】
【0180】
マウスAR36A36.11.1、(ch)AR36A36.11.1及びヒト化変異体、(hu)AR36A36.11.1の細胞ELISA
3つのリードヒト化変異体、キメラ及びマウスAR36A36.11.1と共にアイソタイプコントロールについて、細胞ELISAを用いて、MDA−MB−231細胞発現ヒトCD59結合への結合を試験した。MDA−MB−231細胞を、使用前に播種及び固定化した。プレートを、MgCl2 及び CaCl2 含有PBSを用いて2回、室温で洗浄した。PBSで希釈した100μLの2%パラホルムアルデヒドを、各ウェルに室温で10分間添加し、その後破棄した。プレートを再びMgCl2 及び CaCl2 含有PBSで3回、室温で洗浄した。洗浄バッファ(PBSプラス0.05%Tween)中の100μL/ウェルの5%ミルクを用いて、1時間室温でブロッキングを行った。プレートを洗浄バッファで3回洗浄し、様々な濃度の各抗体(0.3 ng/mL から 10 μg/mL)を、洗浄バッファ(PBSプラス0.05%Tween)中の100μL/ウェルの1%ミルクに添加した。プレートを洗浄バッファで3回洗浄し、セイヨウワサビパーオキシダーゼ(5%ミルク含有のPBS中で希釈したもの)と複合化した、100μL/ウェルの1/10,000希釈のヤギ抗−マウスIgG又はヤギ抗−ヒトIgG抗体を添加した。室温で1時間インキュベーション後、プレートを洗浄バッファで3回洗浄し、100μL/ウェルのTMB基質を、室温で1〜3分インキュベートした。反応を、100μL/ウェル 2M H2SO4で停止させ、プレートをSoftmax Pro ソフトウェアを用いるSpectramax M5 (Molecular Devices)により、595nmの吸収を差し引き、450nmで測定をした。50%までMDA−MB−231細胞に結合する抗体を計算した(図25)。3つの変異体ヒト化抗体、キメラ及びマウスAR36A36.11.1についてのEC50は、以下の通りである。
【表2】
【実施例9】
【0181】
抗体AR36A36.11.1のマウス及びヒト化変異体のインビボ補体依存性細胞毒性(CDC)活性の実証
マウスAR36A36.11.1の治療有効性は、ヒト乳癌の異種移植腫瘍モデルにおいて既に実証されている(米国特許出願第11/067,366号及び前記の実施例2及び3で開示)。作用の可能性ある機序を解明すると共に、AR36A36.11.1のヒト化クローンのインビボ有効性を実証するために、CDC活性を、ヒト乳癌細胞系列MDA−MB−231で評価する。播種後2日目に樹立された(established)MDA−MB−231細胞の単層を、マウス(20μg/mL)及びヒト化(2、0.2及び0.02μg/mL)抗体の両方で処理し、1時間結合させた(37℃、5%CO2)。ウサギ補体を、終濃度10%(v/v)とするために添加し、さらに3時間37℃、5%CO2でインキュベートさせた。CDC活性を、Cytotox 96(商標)(Promega Corporation, Madison, WI, USA)を用いて、未処理(uncompromised)細胞の存在下で残存乳酸ジヒドロゲナーゼを測定することにより評価した。各試験抗体を三重に評価するとともに、その結果をウサギ補体のみで処理したウェルと以下の等式を用いて比較し、細胞毒性割合として表現した。
【数1】
【0182】
この実験から得られる結果(図26)は、AR36A36.11.1のヒト化変異体クローンは、MDA−MB−231標的細胞中で用量依存的に、ウサギ補体をリクルートできることを実証する。最高濃度(20μg/mL)でのアイソタイプ一致のコントロールでは、乳癌においてCDC活性は観察されなかった。このデータは、マウスAR36A36.11.1の補体依存性活性が、ヒト化プロセスの間に変換されていることを実証する。
【実施例10】
【0183】
競合的バインダーの単離
抗体があれば、当業者は個々に、競合的に阻害するCDMAB、例えば競合抗体を作製でき、これは同じエピトープを認識するものである(Belanger L et al. Clinica Chimica Acta 48:15-18 (1973))。ある1の方法には、当該抗体に認識される抗原を発現する免疫原で免疫化することが必要となる。このサンプルには、組織に限定するものではないが、(1又は複数の)単離タンパク質又は(1又は複数の細胞系列が含まれる。得られたハイブリドーマは競合アッセイを用いてスクリーニングすることができ、前記アッセイは、試験抗体の結合を阻害する抗体を認識するもの、例えばELISA、FACS又はウェスタンブロッティングがある。別の方法は、ファージディスプレイ抗体ライブラリーを使用でき、前記抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を選別することができる(Rubinstein JL et al. Anal Biochem 314:294-300 (2003))。いずれの事例においても、抗体を、起源標識抗体の結合を、その標的抗原の少なくとも1つのエピトープに置換できる性質に基づき選択する。従って、かかる抗体は、起源抗体として抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する特徴を有することになる。
【実施例11】
【0184】
AR36A36.11.1モノクローナル抗体の可変領域のクローニング
AR36A36.11.1ハイブリドーマ細胞系列から産生されたモノクローナル抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)由来の可変領域の配列を決定した(上記実施例7に開示の通り)。キメラ及びヒト化IgGを作製するため、可変軽ドメイン及び可変重ドメインは、発現に適するベクターにサブクローンできる(上記実施例7に開示の通り)。
【0185】
別の実施態様によれば、AR36A36.11.1又はその脱免疫化、キメラ又はヒト化変異体を、抗体を発現するとともに回収できるように、トランスジェニック動物において抗体をコードする核酸を発現することにより作製した。例えば、抗体は、回収及び精製を促進するような組織特異的な方法で発現できる。かかる実施態様の1つによれば、本発明の抗体を、泌乳の際の分泌のための乳腺において発現する。トランスジェニック動物には、限定するものではないが、マウス、ヤギ及びウサギがある。
【0186】
(i)モノクローナル抗体
DNAがコードするモノクローナル抗体(上記実施例7に開示の通り)は、従来手法を用いて、容易に単離及び配列決定される(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として機能する。単離されると、DNAは、発現ベクター中に入れることができるが、当該ベクターはその後宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞等であって、他に免疫グロブリンタンパク質を作製しないものに形質移入され、組み換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成において得られる。DNAはまた修飾されてもよく、例えば、相同マウス配列の代わりに、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換することにより行う。キメラ又はハイブリッド抗体はまた、合成タンパク質化学における既知の方法を用いてインビトロで調製してもよく、架橋剤関連のもの等がある。例えば、免疫毒を、チオエーテル結合によるジスルフィド交換反応を用いて構築してもよい。この目的のための好適な試薬の例としては、イミノチオレート(iminothiolate)及びメチル−4−メルカプトブチルイミデートがある。
【0187】
(ii)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト供給源からそれに導入される1又は複数のアミノ酸を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート(import)」残基と言われ、典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列についての齧歯類のCDR又はCDR配列を置換することにより、Winter及びその共同研究者の方法を用いて実施できる(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988); reviewed in Clark, Immunol. Today 21:397-402 (2000))。
【0188】
ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の3次元モデルを用い、親配列及び様々な概念上のヒト化産物の解析のプロセスにより調製できる。3次元免疫グロブリンモデルは、通常利用可能であるとともに、当業者に知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の、可能性ある3次元立体配座を、例示及び表示するコンピュータプログラムを利用できる。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能化において、可能性ある残基の役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析が可能となる。このように、FR残基は、所望の抗体特徴、例えば(1又は複数の)標的抗原に対する向上した親和性等が達成されるように、コンセンサス及びインポート配列から、選択及び組み合わせることができる。一般的にCDR残基は、抗原結合への影響因子に直接的及び最も実質的に関与する。
【0189】
(iii)抗体断片
様々な技術が、抗体断片の作製のために開発されている。これらの断片は、組み換え宿主細胞により作製できる(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11:548-557 (1999); Little et al., Immunol. Today 21:364-370 (2000)に概説されている)。例えば、Fab'−SH断片は、E.coliから直接回収できるとともに、キメラ的にF(ab')2断片に結合できる(Carter et al., Biotechnology 10:163-167 (1992))。別の実施態様によれば、F(ab')2は、F(ab')2分子の集積を促進するロイシンジッパーGCN4を用いて行われる。別のアプローチによれば、Fv、Fab又はF(ab')2断片は、組み換え宿主細胞培養物から直接単離できる。
【実施例12】
【0190】
本発明の抗体を含んでなる組成物
本発明の抗体は、癌の予防/治療のための組成物として使用できる。本発明の抗体を含んでなる癌の予防/治療のための組成物は、それらを液体調製物の状態で、又はヒトもしくは哺乳類(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に適する医薬組成物として、経口又は非経口で(例えば、脈管内、腹腔内、皮下等)投与できる。本発明の抗体は、それ自身を投与してもよいし、適切な組成物として投与してもよい。投与用に使用される組成物は、本発明の抗体又はその塩とともに医薬的に許容可能な担体を、そして希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。かかる組成物は経口又は非経口投与に適する医薬製剤の形態で投与される。
【0191】
非経口投与のための組成物の例としては、注射用製剤、坐剤等が挙げられる。注射用製剤には、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴、関節内注射等の投薬形態があり得る。これらの注射用製剤は周知の方法で調製できる。例えば、注射用製剤は、本発明の抗体又はその塩を、注射用として従来から使用されている滅菌水媒体又は油性媒体中に、溶解、懸濁又は乳化させることにより調製してもよい。注射用の水性媒体としては、例えば生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張溶液等があり、アルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物))等の適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。油性媒体としては、ゴマ油、ダイズ油等が使用され、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。そして、注射剤は通常、適切なアンプルに充填される。直腸投与用の坐剤は、本発明の抗体又はその塩を、坐剤用の従来基材と混合することにより調製してもよい。経口投与のための組成物には、固体又は液体製剤が含まれ、特に錠剤(糖衣錠及びフィルムコート錠剤がある)、丸剤、顆粒、粉末製剤、カプセル(軟カプセルがある)、シロップ、エマルション、懸濁物等が挙げられる。当該組成物は周知の方法で製造され、医薬製剤の分野で従来から使用されるビヒクル、希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。錠剤用のビヒクル又は賦形剤の例としては、乳糖、スターチ、スクロース、ステアリン酸マグネシウム等がある。
【0192】
有利なことには、上記の経口又は非経口使用のための組成物は、活性成分の用量に適合する適切な単位用量での医薬製剤を調製する。かかる単位用量製剤には、例えば錠剤、丸薬、カプセル、注射(アンプル剤)、坐剤等がある。前述の含有される化合物の量は、一般的に投薬単位形態当たり5〜500 mgである。特に注射の形態では上記抗体が約5〜約100 mgで含まれ、その他の形態では10〜250 mgであることが好ましい。
【0193】
本発明の抗体を含んでなる、前述の予防的/治療的な剤又は調節因子の用量は、投与される対象、標的疾患、症状、投与経路等によって変動し得る。例えば成人の乳癌の治療/予防の目的で使用する場合、本発明の抗体を用量として約0.01〜約20 mg/体重kgで、好ましくは約0.1〜約10 mg/体重kgで、より好ましくは約0.1〜約5 mg/体重kgで、頻度として約1〜5回/日で、好ましくは約1〜3回/日、静脈内に投与することが有利である。他の非経口及び経口投与においては、剤を上記に示した用量に対応する用量で投与できる。症状が特に重篤な場合は、その症状によって用量を増加してもよい。
【0194】
本発明の抗体は、そのままで投与しても、適切な組成物の形態で投与してもよい。投与のために使用される組成物は、前述の抗体又はその塩と共に、医薬的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。かかる組成物は、経口又は非経口投与(例えば静脈注入、皮下注入等)に適した医薬製剤の形態で提供される。上記の各組成物は、他の活性成分をさらに含有してもよい。さらに、本発明の抗体は、他の薬物との組み合わせで使用してもよく、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド等)、代謝性アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート、5−フルオロウラシル等)、抗腫瘍抗体(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン等)、植物誘導性抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール等)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカン等がある。本発明の抗体は及び上記の薬物は、患者に対して同時に投与しても、時間差で投与してもよい。
【0195】
本明細書で記載の方法、特に癌については、他の抗体又は化学療法剤を共に投与してもよい。例えば、特に、結腸癌を治療する場合は、EGFRに対する抗体、例えばERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)等を投与してもよい。ERBITUX(登録商標)は、乾癬の治療にも有用である。組み合わせ使用としての他の抗体には、特に乳癌治療にはHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、特に結腸癌治療にはAVASTIN(登録商標)、及び非小細胞肺癌の治療にはSGN−15がある。本発明の抗体の、他の抗体/化学療法剤を伴う投与は、同時でも、又は別々でもよく、経路が同じでも異なってもよい。
【0196】
利用される化学療法剤/他の抗体レジメには、患者の症状の治療に最適と考えられる任意のレジメが含まれる。異なる悪性疾患に対し、個々の患者基準で決定されるはずの、特異的抗腫瘍抗体及び特異的化学療法剤の使用を要請できる。本発明の好ましい実施態様によれば、化学療法を投与し、同時に、より好ましくはその後に抗体治療を行う。ただし、本発明は、投与について任意の特定の方法又は経路に限定しない。
【0197】
AR36A36.11.1が、CD59に存在するエピトープのライゲーションを通して抗癌の効果を媒介すると共に、生存を延長することを、多数の証拠が示している。米国特許出願第11/361,153号に開示の通り、AR36A36.11.1抗体は、MDA−MB−231細胞等の発現細胞由来の同属抗原を、免疫沈降に使用できることは既に示されている。さらに、AR36A36.11.1、キメラAR36A36.11.1又はヒト化変異体、(hu)AR36A36.11.1は、限定するものではないが、FACS、細胞ELISA又はIHCにより例示される技術を利用して、それに特異的に結合するCD59抗原成分を発現する、細胞及び/又は組織において使用できる。
【0198】
AR36A36.11.1抗体と同様に、他の抗−CD59抗体は、CD59の他の形態を免疫沈降及び単離するために使用できると共に、当該抗原はまた、同じタイプのアッセイを用いて、抗原を発現する細胞又は組織に対するこれらの抗体の結合を阻害するために使用される。
【表3】
【0199】
本明細書中で述べられた全ての特許文献及び刊行物は、本発明の属する技術分野の、通常の知識を有する者に対するレベルの指標となる。全ての特許文献及び刊行物は、個々の刊行物が具体的且つ個別的に参照により組み込まれると指示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0200】
本発明の特定の形態が例示されているが、これは本明細書で記載及び示されている部分の、具体的な形態又は順序に限定するものではないと解すべきである。本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更がなされるとともに、本発明が明細書中に示し、記載したものに限定されると考えられないことは、当業者にとって明らかである。
【0201】
当業者であれば、本発明を、目的を実施し、及び上述の結果と利益、並びにその固有のものを得るために十分適応させることは容易に理解できるはずである。本明細書中で記載した、いずれかのオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物的関連化合物、方法、手法、及び技術は、現在のところの好ましい実施態様の代表例であり、例とする意図であるが、その範囲を限定する意図はない。この中における変更及び他の使用は当業者であれば想到できるはずであり、本発明の精神の範囲内に包含されるとともに、添付の請求の範囲により規定されるものである。本発明は特定の好ましい実施態様との関連で記載されているが、請求された本発明がかかる特定の実施態様に過度に限定されるべきではないことは当然理解されるはずである。実際、当業者に自明な発明の実施のための記載の様式の様々な変更は、以下の請求の範囲内であることを意図している。
【0202】
【表4】
【表5】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌性疾患の診断及び治療、具体的には腫瘍細胞の細胞毒性の媒介に関するとともに、最も具体的には、細胞毒性応答を開始するための手段として、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の使用、また任意に1又は複数のCDMAB/化学療法剤との組み合わせでの使用に関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
CD59は、膜糖タンパク質に連結された18〜20kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)である。これは当初、ヒト赤血球の表面から単離され、補体活性の阻害因子として機能する。補体媒介性の溶解を増強させるために開発された複数の抗体は、その後CD59を標的とすることが判明した。この独立した開発により、CD59について多数の名前が存在することになり、MEM−43抗原、反応性溶解の膜阻害因子(membrane inhibitor of reactive lysis)(MIRL)、H19、膜侵襲複合体阻害因子(MACIF)、分子量20,000の相同制限因子(HRF20)及びプロテクチン(protectin)(Walsh, Tone et al. 1992)等がある。
【0003】
CD59抗原はアミノ酸分析及びNMRにより十分に特徴付けられている。これは128アミノ酸からなり、そのうち最初の25個がシグナル配列を含んでなる。分子のきつい折り畳みをもたらす10個のシステイン残基がある。位置18のアスパラギン残基は、N−グリコシル化されることが知られ、位置77のアスパラギン残基は、GPIアンカーに結合する。C末端残基は、GPI繋留タンパク質の特徴である(Davies and Lachmann 1993)。
【0004】
CD59は、当初はヒト赤血球の表面で発見されたが、幅広く発現する分子である。フローサイトメトリー、免疫組織化学及びノーザンブロット解析から得た細胞分布に関する膨大なデータの集積により、多くのタイプの細胞及び組織、例えば血小板、白血球及び繊維芽細胞等の造血細胞、並びに赤血球等での発現が明らかになっている(Meri, Waldmann et al., 1991)。CD59は、体全体の脈管及び管内皮、特に腎臓、気管支、膵臓、皮膚表皮及び胆管及び唾液腺に豊富に存在する(Meri, Waldmann et al., 1991)。肺、肝臓、胎盤、甲状腺及び精子での発現が注目されている(Davies and Lachmann, 1993)。CD59の可溶化形態は、唾液、尿、涙、汗、脳脊髄液、母乳、羊水及び精液の血漿で検出されている(Davies and Lachmann, 1993)。可溶性CD59の起源は、未だ決定されておらず、分泌されるのか、ホスホリパーゼにより切断されるのか、又はその他の手段で細胞から脱落するのかはわかっていない(Davies and Lachmann, 1993)。CD59は、多くのB細胞系列、CNS組織、肝実質及び膵臓ランゲルハンス島には存在しないようである(Meri, Waldmann et al., 1991)。
【0005】
CD59は、正常な細胞及び組織に幅広く発現するが、同様に悪性腫瘍にも幅広く発現する。CD59の発現は、正常組織と比較して特定タイプの癌で増加し、発現レベルは、腫瘍の分化段階に関連するという証拠がある。中から高レベルのCD59発現が、甲状腺、前立腺、乳房、卵巣、肺、結腸直腸、膵臓、胃、腎臓及び皮膚癌において、並びに悪性神経膠腫、白血病及びリンパ腫において報告されている(Fishelson, Donin et al. 2003)。
【0006】
腫瘍悪性度以外では、CD59発現と、腫瘍/患者特徴、例えば腫瘍タイプ、サイズ、脈管浸潤、患者の年齢、性別又は閉経状態(乳癌にのみ)との間で観察される相関はない(Madjd, Pinder et al., 2003; Watson, Durrant et al., 2006)。乳房、直腸結腸及び前立腺を含む、異なる腫瘍組織を用いる研究において、CD59発現は、中度から高度分化型腫瘍の悪性度と非常に強い相関がある(Madjd, Pinder et al., 2003; Watson, Durrant et al., 2006, Jarvis, Li et al., 1997; Koretz, Bruderlein et al., 1993)。ただし、高度分化型腫瘍でのCD59発現と患者予後との関連は、解消されないままである。乳癌及び結腸直腸癌サンプルを用いる2つの別々の研究から、高度に分化した細胞におけるCD59発現が、患者の良好な予後と相関することが示される(Madjd, Pinder et al., 2003; Koretz, Bruderlein et al., 1993)。あるいは、結腸直腸癌組織を用いる別の研究において、Watson等は、高レベルのCD59と分化腫瘍悪性度との相関により、疾患を初期及び後期に準分類できることを報告した。この筆者等は、高分化型の初期及び後期の腫瘍において見られる高レベルのCD59は、疾患特異的な患者生存の減少と関連することを示す(Watson, Durrant et al., 2006)。
【0007】
反対に、脱分化腫瘍細胞は、転移の指標となるCD59染色の不存在と、最も良好な相関関係にある。複数の研究は、CD59発現の増加が腫瘍転移と逆相関することを示す。乳癌及び結腸直腸癌において、転移のない腫瘍サンプルにCD59が高発現する(Madjd, Pinder et al., 2003; Koretz, Bruderlein et al., 1993)。同様に、肝臓における結腸直腸の転移腫瘍において、高レベルのCD59を有する細胞は小数である(Hosch, Scheunemann et al., 2001)。また、頭部及び頸部の扁平上皮細胞癌におけるCD59発現は、T1/T2N0M0腫瘍悪性度のサンプル中でのみ増加し、N1及びM1超の腫瘍悪性度では増加は見られない(Ravindranath, Shuler et al., 2006)。
【0008】
CD59の最も特徴的な機能は、膜侵襲複合体(MAC)の形成とその後の補体活性化を阻害できることである。細胞膜に孔が形成されそれが最終的に細胞溶解へと導く補体カスケードにおいて、MAC形成は最後の事象である。CD59がC5b−8に結合し、続くMAC形成に必要なステップであるC9分子の重合を干渉する。モノクローナル抗体をブロック及び非ブロックしてなされる、CD59のエピトープの競合的突然変異解析によりCD59の活性部位の位置がマップ化され、CD59活性に必要なアミノ酸Tyr-40、Arg-53及びGlu-56が同定されている(Bodian, Davies et al., 1997)。
【0009】
補体活性は、標的細胞の破壊か、又は白血球をリクルートし、周囲の平滑筋を収縮し、及び脈管透過性を増大させる細胞活性化のいずれかをもたらす。補体は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び補体依存性細胞毒性(CDCC)でも役割を果たす。これは、うまく調整されない場合に、標的組織を損傷させ得る炎症性応答を導く。CD59及び他の補体阻害タンパク質、例えば補体受容体タイプ−1(CR1;CD35)、膜補因子タンパク質(MCP;CD46)及び分解促進因子(DAF;CD55)等は、自己組織損傷を防止する補体カスケードの過剰な活性化を無効化するよう機能する。CD59等の補体阻害タンパク質の差次的発現が、悪性腫瘍が頻繁に獲得する補体活性への耐性を向上させることに寄与し得ることが想定される(Jarvis, Li et al. 1997)。
【0010】
腫瘍細胞による補体に対する耐性がCD59を標的にすることにより克服できるか否かを評価するために、CD59ブロック抗体YTH53.1が腫瘍細胞の溶解を増加させる能力を、インビトロで評価した。乳癌(T47D細胞系列)及び卵巣奇形癌(PA−1細胞系列)細胞を有する3次元微小腫瘍球(microtumor spheroids)(MTS)を用いる研究で、この抗体がCD59活性、即ち補体耐性をブロックする能力を測定した。MTSは多細胞凝集体であり、これが培養物中で増殖し、単層又は懸濁培養物よりもインビボで観察されるものに近いモデルである。このグループによる従来の研究から、MTSとして増殖されるPA−1細胞は、懸濁物中で増殖されるPA−1細胞よりも、補体溶解に耐性であることが示されている。細胞毒性を、クロム放出アッセイで測定し、ビオチン化YTH53.1でMTSを前処理した後、細胞損傷をヨウ化プロピジウム(PI)の取り込みにより可視化した。YTH53.1のビオチン化は、CD59への親和性を保持するが、その従来の補体経路の活性化能力を欠如する。乳癌細胞(S2細胞系列)に対するウサギ抗ヒトポリクローナル抗体は、従来の補体経路を活性化するために使用した。ビオチン化YTH53.1と共に一晩インキュベーションし、MTSを全て浸潤させ、クロム放出アッセイにより、ビオチン化YTH53.1、D2及びヒト補体の存在下、1から2時間の遅滞期の後に、33%の細胞死滅が示された。同じ処理で、電子顕微鏡により、平均T47D腫瘍容量が28%減少することが明らかになった。PIインキュベーション後の蛍光顕微鏡により、T47D及びPA−1 MTSにおける複数層の細胞死が明らかになった。これらの結果は、CD59阻害活性をブロックできる抗CD59抗体が、インビトロでの腫瘍細胞の補体媒介性溶解を増加できることを示す(Hakulinen and Meri 1998)。
【0011】
別の研究では、ヒト転移性前立腺癌細胞系列DU145及びPC3による補体媒介性溶解への耐性は、YTH53.1で処理することによりインビトロで克服することができた。クロム放出アッセイを、YTH53.1及びビオチン化YTH53.1の存在下及び不存在下で、細胞死を測定するために使用した。CD59抗体の不存在下では、両方の細胞系列が、補体媒介性溶解に対し完全に耐性であったが、YTH53.1での処理により、PC3細胞の56%及びDU145細胞の34%を死滅させ、この耐性を部分的に克服した。ビオチン化YTH53.1での処理は、補体耐性を克服する点で効果が低く、PC3の47%及びDU145細胞の20%を死滅させた。DU145細胞との比較でPC3によるCD59の発現が高くなればなるほど、補体媒介性溶解に耐性となる際に、CD59の発現及び機能に依存する可能性は大きくなることが、DU145と比較したPC3の感度の増大に反映される。天然及びビオチン化抗体の異なる効果は、従来の補体経路の活性化及びCD59の中性化の両方の影響が高められることで実証される(Jarvis, Li et al. 1997)。ただし、従来の経路による補体活性化の追加はわずかに活性を増加させるだけであるので(例えば、ビオチン化YTH53.1での47%対PC3細胞上のYTH53.1での56%)(Jarvis, Li et al. 1997)、抗体の活性の大部分は補体阻害のブロッキング(CD59の中性化)に寄与する。これまでの報告と共に、本研究は抗体を用いてCD59を標的とすることが、悪性腫瘍において相補体活性化への耐性をブロックするための有効な療法となり得ることを実証する。
【0012】
別のアプローチで、Harris等は、遺伝子操作した二特異的抗体を用いて、インビトロで腫瘍細胞上のCD59を特異的に標的とすることを目的とした。細胞標的(抗−CD19又は抗−CD38)及びCD59−中性化成分の両方を含有する、2つの異なる二特異性F(ab'ガンマ)2抗体構築物のうちの1つを用いて、CD59を中性化した。この実験において、Fab'ガンマFcガンマ2キメラ抗体(ヒトCD37特異的)を、新形成Bリンパ細胞(Raji)上のヒト補体の従来経路活性化のために使用した。二特異性構築物のいずれかを用いるCD59の中性化は、Raji細胞の15〜25%を溶解させた。標的(Raji)及びバイスタンダー(K562)細胞の混合物では、CD59発現バイスタンダー細胞での特異的な取り込みを回避し、抗−CD38×抗−CD59二特異性構築物をRajiに特異的に送達することができた。抗−CD19×抗−CD59二特異性抗体はいずれの細胞タイプにも等しく十分に結合し、細胞特異的な標的は、高親和性抗腫瘍細胞Fab'ガンマに依存することを示した(Harris, Kan et al., 1997)。二特異性抗体を使用して、正常バイスタンダー細胞が影響を受けることを回避するよう腫瘍特異的CD59を標的とする前提には訴求力があるが、これらの抗体は、腫瘍特異的標的に対する抗体の親和性により制限される。さらに、二特異的抗体は、腫瘍化前産物(pro-tumorgenic outcomes)をもたらし得る別の腫瘍特異的抗原を標的とすることの影響により複雑化される可能性がある。また、報告された研究においては、二特異性抗体は、細胞溶解を促進する補体の予備活性化の要求により制限される。補体活性化能力を有するCD59に対する一特異性抗体の使用は、複雑さが低減され、潜在的により有効な治療ツールとなり得る。これまで、抗−CD59抗体YTH53.1のインビボ解析は存在しなかった。
【0013】
腫瘍生存は、他の療法形態への耐性を獲得する間のCD59発現にも関連する。リツキシマブ(Rituxan(登録商標), Genentech, San Francisco, CA)の臨床的有効性と、CD59レベルの反比例関係は、リンパ腫細胞で報告されている。キメラモノクローナル抗体リツキシマブは、CD20抗原に対する抗体であり、非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療における使用が承認されている。ただし、CD20+である多くの患者は、治療に対する応答がなく、応答のあるほとんどの患者は、最終的には治療への耐性が現れる。これは、CD59等の成分阻害因子の誘導に起因する可能性がある。Takai等は、リツキシマブと補体の低濃度物に繰り返し暴露させながら、リツキシマブ−耐性B−リンパ細胞系列(RAMOS)を用いることで、リツキシマブ及び補体への耐性の確立の間にCD59発現が増加することを実証した(Takai et al., 2006)。抗ホルモンによる阻害への応答において、乳癌細胞はエストロゲン受容体(ER)妨害の抗腫瘍効果を最大限に限定するため、別のシグナル伝達をリクルートする。抗エストロゲンタモキシフェン又はファスロデクス(faslodex)に対するMCF−7細胞の応答の間の、CD59発現の実質的増加が報告され、治療耐性を獲得すると遺伝子発現レベルが実質的に低下するという、抗エストロゲン阻害の急性期の間の一時的なものであることが示された(Shaw, Gee et al., 2005)。従って、抗体を伴うCD59を標的とすることは、CD59発現が増加する癌において他の癌治療への耐性を克服する、潜在的に有効な治療アプローチでもある。
【0014】
他の治療に対する耐性を克服する手段としての、CDCC増加のための抗−CD59抗体の使用が調べられている。リツキサン−耐性NHL及びMM細胞系列は、インビトロで補体の存在下でCD59を発現し、一方、リツキサン−感受性NHL及びMM細胞系列はCD59を発現しない。抗−CD59抗体(YTH53.1)を伴う耐性細胞系列の1つの予備インキュベーションにより、リツキシマブ及びヒト補体での治療に対して細胞を感作した。また、CD20+であるがリツキシマブ治療による疾患進行を有する親から単離された腫瘍において、CD59の高レベルの発現が示された(Treon, Emmanouilides et al. 2005)。
【0015】
別の研究によれば、CD59(MB−59)を対象とし、単鎖可変断片(scFc)としてヒト抗体ライブラリーから単離され、且つヒトIgG1のヒンジ−CH2−CH3ドメインを含有するよう遺伝子操作したヒトmAbを、リツキシマブにより刺激される補体媒介性障害を受ける2つのBリンパ細胞系列であるKarpas422とHu−SCID1上で、CD59を標的とする効果を評価するために使用した。このアッセイにおいて、抗体処理後、残りの細胞をMTTアッセイにより測定し、リツキシマブに感作され且つ補体を死滅させた細胞の数は約30%であったが、MB−59が試験系に加えられると倍になった(Ziller et al., 2005)。MB−59単独での使用は、補体媒介性細胞毒性を増強する点で有効ではなかった。従って、リツキシマブの治療は腫瘍細胞を感作し、抗−CD59抗体の添加は、リツキシマブに対する部分的な耐性を克服するのに役立ち、その結果免疫療法又はその他の治療に対して、腫瘍をより応答性させた。YTH53.1と同様に、これまでMB−59はインビトロで有効性の解析がなされていない。
【0016】
CD59は、補体調整におけるその役割に加えて新脈管形成にも関連している。vanBeijnun等による研究によれば、遺伝子発現の連続的解析(SAGE)のタグは、腫瘍及び正常な内皮細胞(EC)から作られ、サプレッション・サブトラクト・ハイブリダイゼーション(suppression subtractive hybridization)(SSH)により比較された。結腸癌組織、非悪性の脈管形成性胎盤組織、及び非脈管形成性正常組織由来のCD59は、脈管形成及び非脈管形成の内皮と比較して腫瘍内皮で過剰発現されることを、4つの表面発現腫瘍脈管形成遺伝子(TAG)で確認した。CD59を標的とする抗体は、EC管形成(インビトロ)及び雛(chick)絨毛尿膜(CAM)(インビボ)アッセイで測定されるような脈管形成を阻害した(vanBeijnum, Ding et al., 2006)。抗−CD59抗体での癌の治療は、腫瘍において脈管形成の阻害について追加的な有効性を有する可能性がある。
【0017】
様々な癌におけるCD59の差次的発現、薬物耐性の発現の際のその誘導と脈管形成におけるその役割を考慮すると、正常組織上の多数のCD59は、標的とした治療として抗CD59抗体を使用することの障壁となると考えられる。発作型夜行性ヘモグロビン尿症(PNH)は、造血幹細胞に影響を及ぼし、補体侵襲に対し異常に感作された細胞をもたらす、希少な遺伝性障害である(Davies and Lachmann 1993)。症状には、慢性溶血、貧血及び血栓症がある(Sugita and Masuho 1995)。例えば赤血球、顆粒球、単球、血小板及び時にはリンパ球等のPNHにより影響を受ける細胞は、GPI繋留タンパク質、例えばアセチルコリンステラーゼ、LFA−3、HUPAR及び補体調整タンパク質CD35,CD46,CD55及びCD59を欠損する(Davies and Lachmann 1993)。完全にCD59を欠損しているが、その他の補体調整GPI繋留タンパク質はどれも欠損していない、ある個人についての1つの報告された事例がある。この欠損は、溶血性貧血及び血栓症等のPNH様症状と関連する(Davies and Lachmann 1993)。CD59機能の欠損に関連する不所望な影響があるが、この個人は補体欠損が非致命であることを証明する。溶血の副作用はCD59発現の減少の副作用であり、CD59抗体の臨床的使用において限定的である可能性がある。CD59遺伝子の1つがノックアウトされているマウスモデルでは、CD59欠損がインビボで非致命であることが実証されている。マウスは、2形態のCD59、CD59a及びCD59bを発現する。CD59aは、血液細胞等の様々なマウス組織において幅広く発現し、一方CD59b発現は、精巣においてのみ確認されている。Miwa等は、インビボでの自発的な補体侵襲から赤血球を保護するCD59の役割を評価するため、CD59a−欠損マウスを作製した。このノックアウトマウスは、溶血性貧血の兆候は全く無く、正常に発育及び生存するとともに、ヘモグロビンレベルの上昇がない。赤血球は、コブラ毒素因子(CVF)の注入により誘導された補体侵襲によってより感受性が高くなるにもかかわらず、自発的補体侵襲からの赤血球離脱は、野生型と比較して有意に上昇しない(Miwa, Zhou et al. 2002)。
【0018】
最近、ラット阻害タンパク質(RIP)と呼ばれる、21kDaの膜糖タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体であって、ヒトCD59のラット相同体である、6D1のF(ab')2断片を、有意な副作用のない雄のWistarラット群に投与した。同じ研究において、異なるラットの膜関連補体調整タンパク質に対する抗体である、5I2の断片も投与した。6D1の注入後、肺、心臓及び肝臓で結合が検出されたが、心拍数又は血圧の変化は全く無かった。唯一観察された影響は、わずかな白血球数の増加及び赤血球数の減少であり、血小板数に変化はなかった。対照的に、5I2断片注入により、血圧の急上昇、白血球及び血小板の急下降、及び注入後2時間までの赤血球数の断続的な上昇がもたらされた(Matsuo, Ichida et al. 1994)。これまで、任意の全長でネイキッドな抗−CD59抗体が、臨床試験又はインビボでの予備臨床的な癌モデルで治療的有効性を示した報告はない。
【0019】
癌療法としてのモノクローナル抗体:癌に罹患する個人は各々唯一であり、人のアイデンティティと同じように、ある癌はその他の癌とは異なる。それにもかかわらず、現行の療法は全ての同じ種類の癌患者を、同じ段階において、同じ方法で治療する。これらの患者の少なくとも30%は、一次治療に失敗して、結局次の治療ラウンドとなり、さらに治療失敗、転移、及び最終的には死亡の可能性が高まる。治療についての優れた対処法としては、特定の個人のための療法のオーダーメイドが挙げられるだろう。オーダーメイドに適する唯一の現行の療法が外科手術である。化学療法及び放射線治療は、患者の目的をかなえることはできず、ほとんどの場合外科手術それだけでは、治癒をもたらすのに不十分である。
【0020】
モノクローナル抗体の出現により、単一のエピトープを対象として各抗体を作製することが可能となったため、オーダーメイド療法のための方法が発展する可能性がより現実的になった。さらに、特定の個人の腫瘍を一意的に規定するエピトープの配列を対象とする抗体の組み合わせを作製することが可能である。
【0021】
癌細胞と正常細胞との大きな違いは、癌細胞は形質転換細胞に特異的な抗原を含むことであると認識されていたため、科学界では、モノクローナル抗体を、癌抗原特異的な結合により形質転換細胞を特異的に標的とさせるよう設計することができると信じられてきた。すなわち、モノクローナル抗体が、癌細胞を除去する「特効薬」として機能できるという信念が生じていた。しかしながら、現在では、癌の全ての事例において機能できる単一のモノクローナル抗体は存在せず、モノクローナル抗体は、標的とされた癌の治療群として展開できることが広く認識されている。本開示の発明の教示に従って単離されたモノクローナル抗体は、腫瘍負担の低減等の患者に有益な方法で癌性疾患のプロセスを修正することを示した。本明細書で本抗体は、癌性疾患修飾性抗体(CDMAB)又は「抗癌」抗体として様々に記載するつもりである。
【0022】
現時点では、通常癌患者は治療についての選択肢がほとんどない。癌療法に対する管理された手法は、全世界的な生存率及び罹患率において改善をもたらしている。しかし、特定の個人にとってこの改善の統計値は、その独自の状況における改善と必ずしも相関しない。
【0023】
すなわち、同じ集団の別の患者の各々の腫瘍を独立に治療できる施術者を想定する方法論であれば、まさに一人の人間に対して目的にかなう療法の唯一の対処法が可能となるであろう。このような治療過程により、理想的には治癒率を上昇させ、より良好な結果を生み、その結果長年望まれた必要性を満たすであろう。
【0024】
歴史的には、ポリクローナル抗体の使用は、ヒト癌の治療において大した成果もなく使用されてきた。リンパ腫及び白血病をヒト血漿で処理したが、緩和又は応答の延長はほとんどなかった。さらに、再現性はなく、化学療法と比較して追加的な利益もなかった。また、乳癌、メラノーマ及び腎細胞癌等の固形腫瘍を、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿及びウマ血清で処理したが、同様に予測不能で効果のない結果であった。
【0025】
固形腫瘍に対するモノクローナル抗体については多くの臨床試験が存在する。1980年代には、ヒト乳癌について少なくとも4つの臨床試験があったが、特異的な抗原に対する、又は組織選択性に基づく抗体を使用する少なくとも47人の患者のうち、応答者は1人のみであった。1998年には、ヒト化抗Her2/neu抗体(ハーセプチン(Herceptin(登録商標)))を、CLISPLATINとの組み合わせで使用する臨床試験の成功例があった。この試験では37人の患者を評価し、このうち約4分の1では部分的な応答率であり、別の4分の1では疾患進行が小規模又は安定的であった。応答者の進行期間の中心値は8.4ヶ月で、応答期間の中心値は5.3ヶ月であった。
【0026】
ハーセプチン(登録商標)は、タキソール(Taxol(登録商標))との組み合わせでの一次使用で、1998年に承認された。臨床研究の結果は、タキソール(登録商標)治療単独(3.0ヶ月)の群と比較して、抗体治療+タキソール(登録商標)(6.9ヶ月)を受けた者は疾患進行の期間中心値の増加を示した。生存率中心値でも、ハーセプチン(登録商標)+タキソール(登録商標)治療対タキソール治療単独が22対18月とわずかな増加であった。さらに、抗体+タキソール(登録商標)の組み合わせ群が、タキソール(登録商標)単独との比較において、完全応答者数(8対2パーセント)及び部分的応答者数(34対15パーセント)両方が増加した。ただし、ハーセプチン(登録商標)及びタキソール(登録商標)での治療は、タキソール(登録商標)治療単独と比較して、心毒性の発生数がより高くなった(それぞれ13対1パーセント)。また、ハーセプチン(登録商標)療法は、機能又は生物学的重要なリガンドが現在知られていない受容体である、ヒト上皮増殖因子受容体2(Her2/neu)を過剰発現する、転移性乳癌に罹患する患者のおよそ25パーセントの患者(免疫組織化学(IHC)分析により決定した)のみにおいて有効であった。したがって、乳癌の患者にとって満たされていない大きな必要性が依然として存在する。それでもハーセプチン(登録商標)治療の恩恵を受ける者も、少なくともある程度の化学療法を必要とし、その結果としてこの種の治療の副作用に対処する必要がある。
【0027】
結腸直腸癌を検討する臨床試験は、糖タンパク質及び糖脂質の両方の標的に対する抗体を必要とする。腺癌に対するいくつかの特異性を有する17−1A等の抗体は、60人以上の患者での第2相臨床試験で、たった1人の患者が部分的応答を示すという結果であった。他の試験では、17−1Aの使用により、追加的にシクロホスファミドを使用するプロトコールでの52人の患者中、1人の完全応答及び2人の小規模応答しか得られなかった。これまで、17−1Aの第3相臨床試験では、結腸癌の段階3のアジュバント療法として改善の有効性が実証されなかった。ヒト化マウスモノクローナル抗体の使用は、当初は画像化用として承認され、腫瘍退縮は起きなかった。
【0028】
近年になってから、モノクローナル抗体を用いる直腸結腸癌の臨床研究から得られるいくつかの積極的な結果が存在するようになった。アービタックス(ERBITUX(登録商標))は、2004年に、イリノテカンをベースとする化学療法では効果のない、EGFR発現転移性直腸結腸癌の患者に対する第2治療として承認された。アービタックス(登録商標)とイリノテカンとの組み合わせでの、2つの第2相臨床試験及び1つの試験からは、疾患進行の期間中心値がそれぞれ4.1及び6.5ヶ月で、それぞれ23及び15パーセントの応答率であることが示された。同じ2つの第2相臨床試験と別の1つの試験からの結果では、アービタックス(登録商標)単独での治療は、疾患進行の期間中心値がそれぞれ1.5及び4.2ヶ月で、それぞれ11及び9パーセントの応答率を示した。
【0029】
結果的には、スイス及び米国両方におけるイリノテカンとの組み合わせでのアービタックス(登録商標)治療、米国におけるアービタックス(登録商標)治療単独が、イリノテカンの第1療法に失敗した直腸癌患者の第2治療として承認された。従って、スイスにおける治療は、ハーセプチン(登録商標)のようにモノクローナル抗体と化学療法との組み合わせとしてしか承認されない。さらに、スイス及びUSにおける治療は、第2治療としての患者のためにしか承認されていない。また、2004年には、転移性結腸直腸癌の第1治療として、アバスチン(AVASTIN(登録商標))が、5−フルオロウラシルをベースとする静脈内化学療法との組み合わせ使用で承認された。第3期臨床試験の結果からは、アバスチン(登録商標)+5−フルオロウラシルで治療した患者の生存率中心値は、5−フルオロウラシル単独で治療した患者と比較して(それぞれ20ヶ月対16ヶ月)延長することが実証された。ただし、ハーセプチン(登録商標)及びアービタックス(登録商標)と同様にまた、治療はモノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてしか承認されていない。
【0030】
また、肺癌、脳癌、卵巣癌、脾臓癌、前立腺癌、及び胃癌については不良な結果のままである。近年の最も有望な非小細胞肺癌における結果は、殺細胞薬物であるドキソルビシン(doxorubicin)と結合させたモノクローナル抗体(SGN−15; dox−BR96, 抗−Sialyl−LeX)と化学療法剤タキソテール(TAXOTERE(登録商標))との組み合わせを含む治療の第2相臨床試験から得られた。タキソテール(登録商標)は、唯一の肺癌の第2治療用としてFDAに承認された化学療法である。当初のデータは、タキソテール(登録商標)単独と比較して全生存が向上したことを示唆した。研究のために募集された62人の患者のうち、3分の2がSGN−15とタキソテール(登録商標)との組み合わせを受け、残りの3分の1がタキソテール(登録商標)単独を受けた。全生存は、タキソテール(登録商標)単独を受けた患者での5.9ヶ月に対して、SGN−15とタキソテール(登録商標)との組み合わせを受けた患者では、7.3ヶ月であった。1年及び18ヶ月での全生存は、タキソテール(登録商標)単独を受けた患者でのそれぞれ24及び8パーセントと比較して、SGN−15+タキソテール(登録商標)を受けた患者はそれぞれ29及び18パーセントであった。さらなる臨床試験が計画されている。
【0031】
前臨床的には、メラノーマ用のモノクローナル抗体の使用においていくつかの限定的な成果があった。これらの抗体はほとんど臨床試験に到達せず、これまで1つも承認されないか、又は第3相臨床試験における好ましい結果が実証されなかった。
【0032】
疾患を治療する新規な薬物の発見は、疾患の病因に寄与する可能性のある既知の30,000個の遺伝子産物における、関連性ある標的の識別がなされていないために遅れている。腫瘍学の研究において可能性ある薬物標的は、単に腫瘍細胞において過剰発現するという事実だけを根拠に選択されることが多い。すなわち識別された標的は、その後多数の化合物との相互作用でスクリーニングされる。可能性ある抗体治療の場合は、これらの候補化合物は通常、Kohler 及び Milstein の(1975, Nature, 256, 495-497, Kohler and Milstein)により構築された基本原理による、モノクローナル抗体発生の従来手法から得る。脾臓細胞を抗原(例えば細胞全体、細胞画分、精製抗原)で免疫化し、不死化ハイブリドーマパートナーと融合させたマウスから採取する。標的に対し最も強く結合する抗体のセレクションとして、得られたハイブリドーマをスクリーニング及び選択する。癌細胞を対象とする、ハーセプチン(登録商標)及びリツキシマブ(RITUXIMAB)等の多数の治療用及び診断用抗体はこれらの方法を用いて作製され、その親和性に基づき選択された。この戦略には2つの欠陥が存在する。第一に、治療用及び診断用抗体結合に適切な標的の選択は、周囲の組織特異的な発癌プロセスについての知識不足と、それによる、過剰発現によるセレクション等の単純化されすぎた方法でこれらの標的を識別することによって制限されている。第二に、通常最も大きい親和性で受容体に結合する薬物分子はシグナルを開始又は阻害する可能性が最も高い、という仮定が常に正しいとは限らない。
【0033】
乳癌及び結腸癌の治療でいくつかの進歩があるにもかかわらず、有効な抗体療法の確認及び開発は、単剤でも共治療(co-treatment)でも、全ての癌の種類のためには不十分である。
【0034】
国際公開第EP2006/009496号は、結腸直腸の癌組織において、市販の抗体を用いて決定したCD59の局在を開示する。その後、この抗体を、インビトロのコラーゲンゲルベースの新芽形成アッセイで検査したが、顕著な活性は検出されなかった。その後この抗体を、ニワトリ胚の絨毛尿膜(CAM)を開発する際に実験室で検査したところ、27%まで新脈管形成を阻害することを示した。
【0035】
米国特許第5,750,102号は、患者の腫瘍由来の細胞が、患者由来の細胞又は組織からクローン化される可能性のあるMHC遺伝子で形質移入されるプロセスを開示する。その後これらの形質移入細胞を、患者へのワクチン接種のために使用する。
【0036】
米国特許第4,861,581号は、哺乳類の腫瘍性及び正常細胞の内部細胞成分特異的であるが外部成分には非特異的であるモノクローナル抗体を獲得するステップ、モノクローナル抗体を標識するステップ、殺腫瘍性細胞に対する治療を受ける哺乳類の組織と前記標識された抗体を接触させるステップ、及び変質腫瘍性細胞の内部細胞成分への前記標識された抗体の結合を測定することにより治療の有効性を決定付けるステップを含んでなるプロセスを開示する。ヒト細胞内抗原を対象とする抗体の調製において、特許権者は悪性細胞が当該抗原の利便性のある供給源であると認識する。
【0037】
米国特許第5,171,665号は、新規な抗体及びその作製のための方法を提供する。特に、この特許は、結腸及び肺のもの等のヒト腫瘍に関連するタンパク質抗原に強力に結合するが、正常細胞への結合特性はより低いモノクローナル抗体の構造を教示する。
【0038】
米国特許第5,484,596号は、癌療法を提供する。ここで当該方法は、ヒト癌患者から腫瘍細胞を外科的に除去するステップ、腫瘍細胞を得る腫瘍組織を治療するステップ、非腫瘍形成性以外の生存能力ある腫瘍細胞に放射線照射するステップ、及び原発腫瘍の再発を阻害すると同時に転移を阻害できる患者のためのワクチンを調製するこれらの細胞を使用するステップを含んでなる。当該特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローナル抗体の開発を教示する。col. 4, lines 45(以下参照)で説明されるように、特許権者等は、ヒトの新形成(neoplasia)において活性特異的な免疫療法を表すモノクローナル抗体の開発において特発性腫瘍細胞を利用する。
【0039】
米国特許第5,693,763号は、ヒトの細胞癌固有であって、起源の上皮組織に依存しない糖タンパク質抗原について教示する。
【0040】
米国特許第5,783,186号は、細胞を発現するHer2においてアポトーシスを誘導する抗Her2抗体、抗体を産生するハイブリドーマ細胞系、前記抗体を使用する癌治療の方法、及び前記抗体を含む医薬組成物について述べている。
【0041】
米国特許第5,849,876号には、腫瘍及び非腫瘍組織源から精製されたムチン抗原に対する、モノクローナル抗体の作製のための新規なハイブリドーマ細胞系についての記載がある。
【0042】
米国特許第5,869,268号は、所望の抗原に特異的な抗体を作製するヒトリンパ球の産生のための方法、モノクローナル抗体を作製する方法、及び前記方法により作製されたモノクローナル抗体について述べている。特に当該特許は癌の診断及び治療に有用な、抗HDヒトモノクローナル抗体の作製について述べている。
【0043】
米国特許第5,869,045号は、ヒト癌細胞と反応する、抗体、抗体断片、抗体複合物及び一本鎖の免疫毒素に関する。これらの抗体機能による機序は2つ存在する。すなわち分子がヒト細胞癌の表面に存在する細胞膜抗原と反応すること、並びにさらに当該抗体が癌細胞中に内部移行でき、結合した後に、これらを抗体−薬物及び抗体−毒の複合体を形成するために特に有用にさせることである。未修飾の状態で、前記抗体はまた特異的な濃度で細胞毒特性を発現する。
【0044】
米国特許第5,780,033号は、腫瘍の療法及び予防のための自己抗体の使用を開示する。ただし、当該抗体は、高齢の哺乳類由来の抗核性自己抗体である。この場合、自己抗体は免疫系において見出される天然抗体の一種であると言われる。自己抗体が「高齢の哺乳類」由来であるため、実際には、自己抗体は治療される患者由来である必要性はない。さらに、当該特許は、高齢の哺乳類由来の天然のモノクローナル抗核性自己抗体、及びモノクローナル抗核性自己抗体を作製するハイブリドーマ細胞系列を開示する。
【0045】
米国特許出願20050032128A1は、糖尿病治療のための、抗グリケート化CD59抗体の使用を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0046】
本特許出願は、癌性疾患修飾性モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞系列を単離する米国特許第6,180,357号で教示される、患者特異的な抗癌抗体を作製するための方法論を利用する。これらの抗体は1つの腫瘍に対して特異的に作製できる。すなわち、癌療法のオーダーメイドが可能となる。本出願に関しては、殺細胞性(細胞毒性(cytotoxic))又は細胞増殖阻害(cytostatic)特性のいずれか一方を有する抗癌抗体は、以下「細胞毒性」と言う。これらの抗体は、癌の病期分類及び診断のための補助として使用できるとともに、腫瘍転移を治療するために使用できる。これらの抗体はまた、予防的治療の手段により癌を防ぐために使用することができる。従来の薬物発見パラダイムに従って産生された抗体とは異なり、本手段は、悪性組織の増殖及び/又は生存に不可欠であることが従来示されていない、分子及び経路を標的としてもよい。さらに、これらの抗体の結合親和性は、より強い親和性相互作用の影響を受けにくい可能性のある、細胞毒性事象開始の要請に適している。また、放射線核種等の標準的な化学療法の様式と、本発明のCDMABとを組み合わせることは本発明の範囲内であるため、前記化学療法の使用に焦点を当てる。CDMABはまた、毒、細胞毒性成分、酵素、例えばビオチン結合酵素、又は血行性細胞と組み合わせることができ、抗体複合体を形成する。CDMABは、単独で用いることも、1又は複数のCDMAB/化学療法剤の組み合わせとして用いることもできる。
【0047】
個別的な抗癌治療の有望性は、患者が管理される方法に変化をもたらす。可能性ある臨床的シナリオは、腫瘍サンプルが提示の時点で得られ、且つ保存されることである。このサンプルから、当該腫瘍を一群の先行癌性疾患修飾性抗体に分類できる。従来的には、患者は病期分類されるが、この利用可能な抗体はさらに進行した病期の患者に使用できるものである。患者を、存在する自己抗体で迅速に治療でき、当該腫瘍に特異的な一群の抗体を、本明細書で概説した方法を使用して作製することも、本明細書に開示のスクリーニング方法との組み合わせにおいて、ファージディスプレイライブラリーの使用を介して作製することもできる。その他の腫瘍は治療されたものと同じいくつかのエピトープを生み出すことができる可能性が存在するため、作製された全ての抗体は、抗癌抗体のライブラリーに加えられるはずである。本方法に従って作製された抗体は、これらの抗体に結合する癌を有するかなりの数の患者における癌性疾患を治療するために有用であり得る。
【0048】
患者は、抗癌抗体に加えて治療の集学的レジメの一部として現在推奨される療法を受けることを選択できる。本方法論により単離された抗体は、非癌性細胞に対して比較的非毒性であるという事実により、単独又は従来の療法との複合のいずれかによって使用される、高用量での抗体の組み合わせが可能となる。治療指数が高いことにより、治療耐性細胞の発生の可能性を低減させることになる、短い時間スケールでの再治療が可能となるであろう。
【0049】
患者が、治療の初期過程が無効であるか又は転移を発症する場合に、腫瘍に対して特異的な抗体を産生するプロセスでは、再治療を繰り返すことができる。さらに、抗癌抗体は、その癌患者から得られる赤血球と複合化し、転移の治療のために再注入することができる。転移性癌に有効な治療はほとんどなく、通常転移は結果的に死をもたらす不良な結果に至る。ただし、通常転移性癌は、十分に血管新生がなされ、赤血球による抗癌抗体の送達は、腫瘍の部分で抗体を濃縮する効果を有する。転移の前でも、大部分の癌はその生存のための宿主の血液供給に依存し、赤血球と複合化した抗癌抗体は同様にインサイツ(in situ)で腫瘍に対して有効であり得る。あるいは、抗体はその他の血行性細胞、例えばリンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞等と複合化してもよい。
【0050】
5群の抗体が存在し、各々はその重鎖により与えられる機能を有している。一般的には、ネイキッド抗体による癌細胞死滅は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)か、又は補体依存性細胞毒性(CDC)のいずれかを介して媒介されると考えられている。例えばマウスIgM及びIgG2a抗体は、補体系列のC−1成分の結合によりヒト補体を活性化するので、腫瘍溶解を導くことができる従来の補体活性化の経路を活性化できる。ヒト抗体にとって抗体を活性化する大部分の有効な補体は、一般的にはIgM及びIgG1である。IgG2a及びIgG3アイソタイプのマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球及び特定のリンパ球により細胞死滅に導くFc受容体を有する細胞毒性細胞のリクルートに有効である。IgG1及びIgG3の両アイソタイプのヒト抗体はADCCを媒介する。
【0051】
Fc領域を介して媒介される細胞毒性は、エフェクター細胞、その対応受容体、又はタンパク質、例えばNK細胞、T細胞及び補体の存在を必要とする。これらのエフェクター機序が不存在の場合、抗体のFc部分は不活性である。抗体のFc部分には、インビトロ(in vitro)で抗体の薬物動態に影響を及ぼすが、インビボ(in vivo)では作動しないという特性を有する可能性がある。
【0052】
抗体媒介性癌死滅の別の機序の可能性としては、細胞膜及びその関連する糖タンパク質又は糖脂質における種々の化学結合の加水分解を触媒する機能を有する抗体、いわゆる触媒抗体の使用を介することが考えられる。
【0053】
抗体媒介性癌細胞死滅について追加の3つの機序がある。1つ目は、癌細胞に存在する想定される抗原に対して、免疫応答をもたらす抗体を誘導するワクチンとしての抗体の使用である。2つ目は、増殖受容体を標的としてその機能を阻害する抗体、又は機能が有効に喪失するように受容体を下方制御する抗体の使用である。3つ目は、例えばTRAIL R1もしくはTRAIL R2等の死受容体、又はアルファVベータ3等のインテグリン分子のライゲーション等の直接細胞死に導く可能性のある、細胞表面部分の直接ライゲーションにおける当該抗体の影響である。
【0054】
癌薬物の臨床的用途は、患者に対する許容可能なリスクプロファイルの下での、当該薬物の利益に基づく。癌療法において、一般的に利益の中でも生存率が最も追求されるものであったが、寿命の延長に加えて、広く認識される多数のその他の利益が存在する。治療が生存率に不利な影響を及ぼさない場合、これらのその他の利益には、症状緩和、有害事象に対する保護、再発まで又は無病生存の期間延長、進行に至るまでの期間延長が含まれる。これらの診断基準は一般的に受容され、米国食品医薬局(F.D.A)等の取締機関はかかる利益をもたらす薬物を承認している(Hirschfeld et al. Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42:137-143 2002)。これらの診断基準に加え、この種の利益の前兆となり得る他の終点が存在することが広く認識されている。一つには、米国F.D.Aにより許可された加速された承認審査方式は、患者の利益を予測する可能性のある代理の存在を承認する。2003年末以後、この方式の下で承認された薬物は16個あり、これらのうち4個が完全な承認に至った。すなわち、追跡研究によって代理終点により予測された通りの患者の直接の利益が実証された。固形腫瘍における薬物の効果を決定するための1つの重要な終点は、治療への応答を測定することによる腫瘍負荷の評価である(Therasse et al. Journal of the National Cancer Institute 92(3):205-216 2000)。この評価のための臨床的診断基準(RECIST基準)は、癌における国際的専門家グループである、固形腫瘍作業グループでの応答評価基準により公表された。RECIST基準による客観的反応(objective responses)が示すように、適切なコントロール群との比較で、腫瘍負荷に対して実証された効果を有する薬物は、最終的に患者の直接の利益を生み出す傾向がある。一般的に予備臨床の状況では、腫瘍負荷は評価及び証明についてより直接的である。予備臨床研究は臨床の状況に置き換えることができるので、予備臨床モデルで生存の延長をもたらす薬物は、期待される臨床用途が最も大きい。臨床治療に正の応答をもたらすことと同様に、予備臨床の状況で腫瘍量を低減する薬物は、当該疾患に大きな直接的影響を及ぼす可能性もある。生存の延長は癌薬物治療からの臨床転帰の後に最も望まれるものであるが、臨床用途を有するという他の利益があるとともに、疾患の進行の遅延、延長された生存又はその両方に相関し得る腫瘍量の減少が、直接の利益に導き、且つ臨床的影響を与えることは明らかである(Eckhardt et al. Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds; ASCO Educational Book, 39th Annual Meeting, 2003, pages 209-219)。
【0055】
米国特許第6,180,357号、及び米国特許出願第11/361,153号及び第11/067,366号(各内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示のプロセスを実質的に使用することで、マウスモノクローナル抗体、AR36A36.11.1を入手し、その後、ヒト前立腺腫瘍組織からの細胞でマウスを免疫化した。異なる細胞期限由来の広範に及ぶヒト細胞系列で、AR36A36.11.1抗原を発現した。前立腺癌細胞系列LnCapは、インビトロでAR36A36.11.1の細胞毒性影響を受け易かった。
【0056】
前立腺癌細胞に対するインビトロでのAR36A36.11.1細胞毒性の結果は、インビボでの抗腫瘍活性の実証により、さらに広げられた(米国特許出願第11/067,366号に開示)。AR36A36.11.1は、ヒト前立腺癌の予防的なインビトロモデルにおいて、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍量を低減させた。移植後41日目で、最後の治療投与後5日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、バッファコントロール治療群における腫瘍容量の14%であった(t検定、p=0.0009)。PC−3前立腺癌異種移植モデルにおいては、疾患進行の代理指標として体重が使用できる(Wang et al. Int J Cancer, 2003)。コントロール動物は、試験の最後(41日目)までに、試験の開始から27%の体重減少を示した。対照的に、AR36A36.11.1治療群は、コントロール群より有意に高い体重であった(p=0.017)。全体では、AR36A36.11.1治療群は、体重減少が6%しかなく、これはバッファコントロール群での27%の減少よりもかなり少なかった。従って、AR36A36.11.1は、ヒト前立腺癌異種移植モデルにおいて、十分に寛容されるとともに、腫瘍量及び悪液質を低減した。
【0057】
抗前立腺癌効果に加え、AR36A36.11.1は、SW1116結腸癌細胞に対して、予防的インビボ腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍活性を示した(米国特許出願第11/067,366号に開示)。移植後55日目で、最後の治療投与後5日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、バッファコントロール治療群における腫瘍容量の51%であった(t検定、p=0.0055)。試験の間に、毒性の臨床的兆候はなかった。1週間間隔で測定した体重を、健康状態と生育不良の指標とした。治療期間の最後に、群間で体重に有意な差異はなかった(t検定、p=0.4409)。従って、AR36A36.11.1は、ヒト結腸癌異種移植モデルにおいて、十分に寛容されるとともに、腫瘍量及び悪液質を低減した。
【0058】
さらに、AR36A36.11.1は、MDA−MB−231乳癌細胞に対して、予防的インビボ腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍活性を示した(米国特許出願第11/067,366号に開示)。AR36A36.11.1は、完全に、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍量を低減させた。移植後56日目で、最後の治療投与後6日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、アイソタイプコントロール治療群における腫瘍容量の0%であった(t検定、p=0.0002)。試験の間に、毒性の臨床的兆候はなかった。1週間間隔で測定した体重を、健康状態と生育不良の指標とした。治療期間の最後に、群間で体重に有意な差異はなかった(t検定、p=0.0676)。従って、AR36A36.11.1は、ヒト乳癌異種移植モデルにおいて、十分に寛容されるとともに、腫瘍量及び悪液質を低減した。
【0059】
また、AR36A36.11.1は、MDA−MB−231乳癌細胞に対して、確立された予防的インビボ腫瘍モデルにおいて、抗腫瘍活性を示した(米国特許出願第11/067,366号に開示)。AR36A36.11.1は、確立されたヒト乳癌のインビボモデルで、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍量を低減させた。移植後83日目で、最後の治療投与後2日目に、AR36A36.11.1治療群における平均腫瘍容量は、バッファコントロール治療群における腫瘍容量の46%であった(t検定、p=0.0038)。これは、平均T/Cの32%に相当する。試験の間に、毒性の臨床的兆候はなかった。1週間間隔で測定した体重を、健康状態と生育不良の指標とした。治療期間の最後に、群間で体重に有意な差異はなかった(t検定、p=0.6493)。
【0060】
治療の利益は、ヒト癌疾患の複数の十分に認識されたモデルで観察され、例えば人を含む他の哺乳類に対する療法としての本抗体の薬学及び医薬的利益を示している。全体としてこのデータは、AR36A36.11.1抗原が癌関連抗原であり、ヒト癌細胞を発現し、病理学的に明らかな癌標的であることを実証する。
【0061】
既に開示される通り(米国特許出願第11/361,153号)、生化学データは、AR36A36.11.1により認識される抗原はCD59であることが示された。これは、CD59に対して反応性のモノクローナル抗体(クローンMEM−43、Serotec, Raleigh, NC)が、免疫沈降によりAR36A36.11.1に結合するタンパク質を同定したことを示す研究により支持された。AR36A36.11.1エピトープは炭水化物依存性ではないようである。
【0062】
薬物標的としてのAR36A36.11.1エピトープの有効性を確認するため、正常なヒト組織切片でのAR36A36.11.1抗原の発現を事前に決定した(米国特許出願第11/361,153号に開示の通り)。59個の正常なヒト組織への抗体の結合を、ヒトの正常器官組織アレイ(Imgenex, San Diego, CA)を用いて実施した。AR36A36.11.1抗体は、上皮組織に優先的に結合した(様々な器官の血管上皮、皮膚及び扁桃の扁平上皮、乳房の小管上皮、鼻粘膜上皮、唾液腺の腺房及び管上皮、肝臓の胆汁管上皮、膵臓のランゲルハンスの腺房上皮及び島、膀胱の粘膜上皮及び前立腺の腺房上皮)。AR36A36.11.1抗体は、抗−CD59抗体で以前に報告されたものと一致するヒト組織への結合を示している。
【0063】
また、AR36A36.11.1の潜在的治療利益をさらに拡大するために、様々なヒト癌組織内での抗原の頻度及び局在を決定した(米国特許出願第11/361,153号で既報)。AR36A36.11.1抗体は、被検腫瘍の17/54(32%)に結合した。抗体の結合は、2/17腫瘍について強力で、2/17について中程度、4/17について弱く、9/17については不確かであった。組織特異性は、腫瘍細胞及び基質血管に対するものであった。細胞局在は、散在染色パターンを有する膜性細胞質であった。従って、AR36A36.11.1抗体は、多様な腫瘍タイプの膜に局在することが示された。これらの結果は、AR36A36.11.1抗体が治療剤として、幅広い癌、例えば限定するものでないが、皮膚、肝臓及び膵臓の癌等において治療的薬物として可能性を有することを示す。
【0064】
本発明は、AR36A36.11.1、キメラAR36A36.11.1((ch)AR36A36.11.1)及びヒト化変異体(hu)AR36A36.11.1の開発及び使用について記載する。AR36A36.11.1は、細胞毒性アッセイ及び動物モデルにおける未確立及び確立した腫瘍増殖における、その影響により確認された。本発明は、標的分子であるCD59に存在する1又は複数のエピトープに特異的に結合するとともに、ネイキッド抗体のような、悪性腫瘍細胞に対してはインビトロ細胞毒特性を有するが、正常細胞には毒性がなく、またヒト癌のインビトロモデルにおいて、ネイキッド抗体のように、腫瘍増殖の阻害及び生存の延長を直接媒介もする試薬について初めて報告する点で、癌治療の分野における進展を示す。これは、同様の特性を有することを示すものがこれまでないため、任意の他の既報の抗−CD59抗体との関連における進歩である。これはまた、特定タイプの腫瘍の増殖及び進行に関連する事象におけるCD59の直接的関与を、明確且つ初めて実証するため、当該分野における進展である。これはまた、ヒト患者において、同様の抗癌特性を示す可能性があるため、癌療法における進展である。抗癌抗体のライブラリーにこれらの抗体を包含することにより、腫瘍の増殖及び進行を標的及び阻害する際に最も有効なものを発見するため、異なる抗癌抗体の適切な組み合わせの決定により異なる抗原マーカーを発現する腫瘍を標的とする可能性を高める得ることは、さらなる進展である。
【0065】
総括すると、本発明は、治療剤のための標的として、AR36A36.11.1抗原の使用を教示し、それが投与される場合、哺乳類における抗原を発現する癌の腫瘍量を減少できるとともに、標的とされる哺乳類の延長された生存をもたらすことができる。本発明はまた、CDMAB(AR36A36.11.1、(ch)AR36A36.11.1及びヒト化変異体、(hu)AR36A36.11.1)、及びその誘導体、及びその抗原結合断片、及びその細胞毒性誘導性リガンドであって、哺乳類において抗原を発現する癌の腫瘍量の低減をもたらし、且つ治療される哺乳類の延長された生存をもたらす前記物質の使用を教示する。さらに、本発明はまた、癌細胞におけるAR36A36.11.1抗原の検出のための使用であって、本抗原を発現する担腫瘍哺乳類の診断、療法の予測、及び予後診断にとって有用になり得る使用を教示する。
【0066】
従って、本発明の目的は、ハイブリドーマ細胞系列、並びに当該ハイブリドーマ細胞系列がコードされる対応する単離モノクローナル抗体及びその抗原結合断片を単離するために、特定の個人、又は1もしくは複数の特定の癌細胞系列に由来する癌細胞に対する、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)であって、癌細胞関しては毒性であるが、同時に非癌細胞に対して比較的非毒性であるCDMABを作製する方法を利用することである。
【0067】
本発明の追加の目的は、癌性疾患修飾抗体、そのリガンド及び抗原結合断片を教示することである。
【0068】
本発明のさらなる目的は、癌性疾患修飾抗体であって、その細胞毒性が抗体依存性細胞毒性を介して媒介される抗体を作製することである。
【0069】
本発明のさらに追加の目的は、癌性疾患修飾抗体であって、その細胞毒性が補体依存性細胞毒性を介して媒介される抗体を作製することである。
【0070】
本発明のよりさらなる目的は、癌性疾患修飾抗体であって、その細胞毒性は、細胞化学結合の加水分解を触媒できる機能である抗体を作製することである。
【0071】
本発明のよりさらなる目的は、癌性疾患修飾抗体であって、それが癌の診断、予後診断、及び監視のための結合アッセイにおいて有用である抗体を作製することである。
【0072】
本発明の他の目的及び進展は、本発明の例示、及び実施例、特定の実施態様で説明する、以下の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
特許又は出願書類は、少なくとも1つの色付きの図面を含む。色付きの(1又は複数の)図面を伴う本特許又は特許出願公報の複写は、要請に応じて、必要な料金を支払うことで庁(Office)から提供されるだろう。
【図1】図1は、確立されたヒトPC−3前立腺癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与される期間を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図2】図2は、確立されたヒトPC−3前立腺癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図3】図3は、確立されたヒト乳房MDA−MB−468癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図4】図4は、確立されたヒト乳房MDA−MB−468癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図5】図5は、確立されたヒト乳房(MDA−MB−231)癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与される期間を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図6】図6は、確立されたMDA−MB−231ヒト乳房癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図7】図7は、予防的なNCI−H520ヒト肺扁平上皮細胞癌モデルにおける、腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の影響を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与される期間を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図8】図8は、予防的なNCI−H520ヒト肺扁平上皮細胞癌モデルにおける、マウス生存に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図9】図9は、予防的なNCI−H520ヒト肺扁平上皮細胞癌モデルにおける、マウス体重に対するAR36A36.11.1の影響を示す。データ点は、平均+/−SEMを表す。
【図10】MDA−MB−231乳癌細胞の全ての膜調製物のウェスタンブロットは、異なる一次抗体溶液で調べた。レーン3〜7は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した、ビオチン化AR36A36.11.1で調べた。レーン9〜13は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化10A304.7と混合した、ビオチン化AR36A36.11.1で調べた。レーン15〜19は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化B1B.1と混合した、ビオチン化AR36A36.11.1で調べた。レーン8〜14は、ネガティブコントロール溶液と共にインキュベーションし、レーン8は二次溶液中でインキュベートしなかった。レーン1、2及び20はTBSTのみでインキュベートした。
【図11】MDA−MB−231乳癌細胞の全ての膜調製物のウェスタンブロットは、異なる一次抗体溶液で調べた。レーン3〜7は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化10A304.7と混合した、ビオチン化10A304.7で調べた。レーン9〜13は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した、ビオチン化10A304.7で調べた。レーン15〜19は、それぞれ0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLの非ビオチン化8A3B.6と混合した、ビオチン化10A304.7で調べた。レーン8〜14は、ネガティブコントロール溶液と共にインキュベーションし、レーン8は二次溶液中でインキュベートしなかった。レーン1、2及び20はTBSTのみでインキュベートした。
【図12】CLIPSペプチドに対する10A304.7の結合は、CD59アミノ酸配列に基づいて合成した。
【図13】CLIPSペプチドに対するAR36A36.11.1の結合は、CD59アミノ酸配列に基づいて合成した。
【図14】CD59のアミノ酸配列。10A304.7及びAR36A36.11.1の両方に認識される非連続的なエピトープは、下線の配列内に含まれる。
【図15】軽鎖のPCR増幅で使用されるプライマー。
【図16】重鎖のPCR増幅で使用されるプライマー。
【図17】マウスAR36A36.11.1VH配列。CDRは下線部。
【図18】マウスAR36A36.11.1VL配列。CDRは下線部。
【図19】キメラ及び変異ヒト化AR36A36.11.1VH配列の作製のために使用されるオリゴヌクレオチド。
【図20】キメラ及び変異ヒト化AR36A36.11.1VL配列の作製のために使用されるオリゴヌクレオチド。
【図21】軽鎖及び重鎖発現ベクター。
【図22A】ヒト化AR36A36.11.1VH変異体。CDRは下線部。
【図22B】ヒト化AR36A36.11.1VH変異体。CDRは下線部。
【図23A】ヒト化AR36A36.11.1VL変異体。CDRは下線部。
【図23B】ヒト化AR36A36.11.1VL変異体。CDRは下線部。
【図24】ヒト化AR36A36.11.1VH及びVL変異体の活性。
【図25】図25は、ヒト化変異体、キメラ及びマウスAR36A36.11.1の、ヒト乳癌細胞系列MDA−MB−231に対する結合を示す。
【図26】図26は、ヒト乳癌細胞系列MDA−MB−231での、AR36A36.11.1のマウス及びヒト化変異体のインビトロCDC活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
一般的に、以下の語又は句は、要約、明細書、実施例及び請求の範囲において使用される場合の定義を示す。
【0075】
「抗体」なる用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば単一モノクローナル抗体(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、及び中性抗体、脱免疫化、マウス、キメラ又はヒト化抗体)、ポリエピトープ(polyepitopic)特異性を伴う抗体組成物、単鎖抗体、二機能性抗体、三特性抗体、免疫複合体及び抗体断片を包含する(以下を参照)。
【0076】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体のことを言う。すなわち、わずかに存在し得る天然の突然変異を除けば、その集団を含んでなる個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位を対象とする。さらに、異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。その特異性に加え、モノクローナル抗体は、その他の抗体による汚染を受けずに合成できる点で有利である。修飾語の「モノクローナル」は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の作製を要するものと解すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al. Nature, 256:495 (1975)で最初に報告された、ハイブリドーマ(マウス又はヒト)法によって作製しても、又は組み換えDNA法(米国特許第4,816,567号参照)により作製してもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いる、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0077】
「抗体断片」は、未処理抗体の一部を含んでなり、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含んでなる。抗体断片の例としては、全長抗体より短い、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;二機能性抗体;直鎖抗体;単鎖抗体分子;単鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、遺伝子組み換えタンパク質及び(1又は複数の)抗体から形成した多特異性抗体が挙げられる。
【0078】
「未処理の」抗体は、抗原結合性可変領域並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含んでなるものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異であってもよい。好ましくは、未変性抗体は、1又は複数のエフェクター機能を有する。
【0079】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、未変性抗体は異なる「クラス」に割り振ることができる。未変性抗体の5つの主要なクラスとしては、IgA,IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、このうちいくつかは、さらに「サブクラス」(アイソタイプ)に分けてもよく、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等がある。対応する異なる抗体クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なる免疫グロブリンのクラスのサブユニット構造及び3次元立体配置が周知である。
【0080】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰属する生物活性のことを言う。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;相補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体の下方制御(例えばB細胞受容体;BCR)等がある。
【0081】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)を発現する非特異的細胞毒性細胞が標的細胞に結合した抗体を認識し、実質的に標的細胞の分解を引き起こす、細胞媒介性の反応のことを言う。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する中で、FcγRIIIのみを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の、464ページの表3に要約がある。注目の分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号又は5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイを行ってもよい。このアッセイにとって有用なエフェクター細胞には、抹消血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞がある。あるいは、又は追加的には、注目の分子のADCC活性は、Clynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)で開示されるような動物モデル等のインビボで評価してもよい。
【0082】
「エフェクター細胞」は、1又は複数のFcRを発現し、且つエフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、且つADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、抹消血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然原料から単離してもよく、例えば本明細書で記載の通りの、血液又はPBMC由来があり得る。
【0083】
「Fc受容体」又は「FcR」なる用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用する。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するとともに、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIサブクラスの受容体を含むものであり、これらの受容体の対立遺伝子変異体であり且つ選択的に接合された状態である。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、主にその細胞質ドメインが異なる、類似するアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)を有する(M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)の概説を参照)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); 及び de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来識別されるものを含む他のFcRは、本明細書の用語「FcR」に包含される。当該用語はまた、母体IgGの胎児への転移に寄与する新生児受容体FcRnを含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., Eur. J. Immunol. 24:2429 (1994))。
【0084】
「補体依存性細胞毒性」又は「CDC」とは、補体の存在下、標的を分解する分子の能力を言う。補体活性経路は、補体システムの第一成分(C1q)が同族の抗原と複合化した分子(例えば抗体)に結合することにより開始する。補体活性を評価するために、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)等に記載される、CDCアッセイを行ってもよい。
【0085】
用語「可変の(variable)」とは、可変ドメインの特定の部分の配列が、抗体間で著しく異なり、それが個別具体的な抗体の抗原に対する結合及び特異性のために使用されることを言う。ただし、その可変性は抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布してはいない。軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインにおける、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中する。より高度に保存された可変ドメインの部分は、フレームワーク領域と呼ばれる(FR)。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々4つのFRを含んでなり、これは大部分が3つの超可変領域により接続されるβシートの立体配置を採用しており、その超可変領域は、そのβシート構造を接続し、ある場合にはβシート構造の一部を形成することもあるループを形成する。各鎖における超可変領域は、その他の鎖由来の超可変領域と共に、FRにより近接した状態でまとめられており、抗体の抗原結合部位の構成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. pp 15-17; 48-53 (1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接的には関与しないが、様々なエフェクター機能を示し、例えば抗体依存性細胞毒性(ADCC)への抗体の参加等がある。
【0086】
本明細書で使用される場合「超可変領域」なる用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基のことを言う。一般的に超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)及び重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. pp 15-17; 48-53(1991))及び/又は「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基2632(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)及び重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)及び91〜96(H3); Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書で定義する超可変領域の残基以外の可変ドメインの残基のことである。抗体のパパイン分解により、「Fab」断片と呼ばれる、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同じ抗原結合断片と、残りのその名前が容易に結晶化できることを反映する「Fc」断片とを作製する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋できる、F(ab')2断片を作製する。
【0087】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する、最小の抗体断片である。この領域は、1の重鎖及び1の軽鎖可変ドメインの、緊密な、非共有的会合状態の二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域は、VH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を特徴づけるための相互作用するのはこの立体配置のためである。まとめて当該6つの超可変領域は、抗体に対する抗原結合特異性を提供する。ただし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つの超可変領域のみからなるFvの半分)でも、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識且つ結合する能力を有する。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインの重鎖の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab'断片は、その抗体ヒンジ領域由来の1又は複数システイン等の重鎖CH1領域のカルボキシ末端での数個の残基の添加により、Fab断片と区別される。本明細書で指定するFab'−SHは、少なくとも1個の遊離チオール基を持つ定常ドメインの(1又は複数の)システイン残基におけるFab'のことである。F(ab')2抗体断片はもともと、Fab'断片のペアとして作製され、これはこれらの間にヒンジシステインを有する。その他の抗体断片の化学共役も知られている。
【0088】
任意の脊椎動物種由来の抗体の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確な特徴のある種類の1つに割り振ることができる。
【0089】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含んでなり、ここで当該ドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、scFvに抗原結合のための所望の構造を形成させる、VH及びVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含んでなる。scFvの概説として、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0090】
「二機能性抗体」なる用語は、2つの抗原結合部位を伴う抗体小断片のことを言い、当該断片は、同じポリペプチド鎖に、可変軽ドメイン(VL)と接続する可変重ドメイン(VH)を含んでなる(VH−VL)。同じ鎖上の2つのドメインの間でペアを組ませるには短すぎるリンカーを使用することにより、当該ドメインは別の鎖の相補ドメインとペアを組まされ、2つの抗原結合部位を作り出す。二機能性抗体についてより詳細な記載としては、例えば欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号;及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)がある。
【0091】
「三機能性抗体」又は「三価の三量体」なる用語は、3つの単鎖抗体の組み合わせのことを言う。三機能性抗体は、VL又はVHのアミノ酸末端で構築されており、リンカー配列を含まない。三機能性抗体は、頭−尾法で環状に配列されたポリペプチドを有する3つのFv頭部を持つ。三機能性抗体の可能性ある構造としては、各々120°の角度で平面上に位置した3つの結合部位を有する平面状である。三機能性抗体は、一特異性、二特異性、三特異性の可能性がある。
【0092】
「単離」抗体は、その天然環境の成分から、識別及び分離及び/又は回収されたものである。その天然環境の混入成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨げる可能性がある物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質等が挙げられる。単離抗体には、抗体の天然環境成分の少なくとも1つは存在しないはずなので、遺伝子改変細胞内のインサイツ(in situ)抗体が含まれる。ただし、通常単離抗体は少なくとも1回の精製ステップにより調製する。
【0093】
抗体「(それ)が結合する」注目の抗原、例えばCD59は、抗原を発現する細胞を標的とする点で治療的又は診断的剤として抗体が有用であるよう、十分な親和性を有する抗原に結合できるものである。抗体がCD59に結合できるものである場合、通常他の受容体とは対照的に優先的にCD59に結合し、非特異的Fc接触等の偶発的結合、又は他の抗原と共通する翻訳後修飾のための結合はなく、且つ他のタンパク質と重要な交差反応をしないものであってよい。注目の抗原に結合する抗体を検出するための方法は、当業者に周知であり、限定するものではないが、FACS、細胞ELISA及びウェスタンブロット等のアッセイが含まれ得る。
【0094】
本明細書で使用される、「細胞」、「細胞系列」、及び「細胞培養物」なる表現は同じ意味で使用され、いずれの語も子孫を包含する。全ての子孫は、計画的又は偶発的な変異により、DNA含有物が正確に同じでなくてもよい。最初に形質移入された細胞でのスクリーニングと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。これらの語を区別することを意図する場合は、本文から明らかになる。
【0095】
「治療又は治療すること」は、療法的な治療及び予防的又は妨害的な測定のことを言い、ここで本目的は、標的とする病因の症状又は障害を、防止又は遅延(緩和)することである。治療を必要とする対象には、既に障害を患うもの、及び障害を患う傾向のあるもの、又はその障害が防止されるべきであるものが含まれる。それ故、本明細書において治療される哺乳類は、障害に罹患している診断されていてもよいし、障害に罹患し易く又は影響を受け易くてもよい。
【0096】
「癌」及び「癌性」なる用語は、哺乳類における生理的症状のことを言い、典型的には、細胞の増殖又は死が制御されていないことが特徴である。癌の例としては、限定するものではないが、細胞癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ様悪性疾患が挙げられる。当該癌のより具体的な例としては、扁平細胞癌(例えば上皮扁平細胞癌)、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平細胞癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌等の胃癌(gastric or stomach cancer)、膵臓癌、グリオブラストーマ、頸部癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、へパトーム、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜及び子宮細胞癌、唾液腺細胞癌、腎臓又は腎性癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞癌、肛門細胞癌、陰茎細胞癌、並びに頭部及び頸部癌が挙げられる。
【0097】
「化学療法剤」は癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ(thiotepa)及びシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(シトキサン(CYTOXAN(登録商標)));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン(busulfan)、インプロスルファン(improsulfan)及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン、例えばベンゾドパ(benzodopa)、カルボクオン(carboquone)、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa);エチレンイミネス(ethylenimines)及びメチラメラミネス(methylamelamines)、例えばアルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンホスフォラミド(triethylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスフォラミド(triethylenethiophosphoramide)及びトリメチルオロメラミン(trimethylolomelamine);ナイトロジェンマスタード(nitrogen mustards)、例えばクロランブシル(chlorambucil)、クロルナフェジン(chlornaphazine)、クロロフォスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イホスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン(melphalan)、ノベンビシン(novembichin)、フェネストリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマウタード;ニトロソ尿素(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine);抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン(actinomycin)、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアミシン(calicheamicin)、カラビシン(carabicin)、カルノマイシン(carnomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycins)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、ミトマイシン(mitomycins)、ミコフェノリール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、プロマイシン(puromycin)、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメックス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);抗代謝物、例えばメトトレキサート(methotrexate)及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン(thioguanine);ピリミジン類似体、例えばアンシタビン(ancitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(6-azauridine)、カルモフル(carmofur)、シタラビン(cytarabine)、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フロクスウジン(floxuridine)、5−FU;アンドロゲン、例えばカルステロン(calusterone)、ドロモスタノロン(dromostanolone)、プロピオナート(propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone);抗アドレナル、例えばアミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane);葉酸補充物(replenisher)、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノブリン酸(aminolevulinic acid);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);デホファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン(lentinan)、ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダモル(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン(procarbazine);PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2"−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン(urethan);ビデシン(vindesine);デカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガサイトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C]);シクロホスファミド;チオテパ(thiotepa);タキサン(taxanes)、例えばパクリタキセル(paclitaxel)(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)及びドセタキセル(docetaxel)(タキソテール(TAXOTERE(登録商標)、Aventis, Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル(chlorambucil);ゲンシタビン(gemcitabine);6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(vinblastine);白金;エトポシド(etoposide)(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC(mitomycin C);ミトキサントロン(mitoxantrone);ビンクリスチン(vincristine);ビノレルビン(vinorelbine);ネバルビン(navelbine);ノバントロン(novantrone);テニプシド(teniposide);デューロマイシン(daunomycin);アミノプテリン(aminopterin);ゼローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RES 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン(esperamicins);カペシタビン(capecitabine);及び上記の任意の医薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体がある。また、この定義には、腫瘍でのホルモン作用を制御又は阻害の作用をする、抗エストロゲン等の抗ホルモン剤が含まれ、例えば、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン(4-hydroxytamoxifen)、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェンン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、及びトレミフェン(toremifene)(Fareston);及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リュープロリド(leuprolide)、及びゴセレリン(goserelin);及び上記の任意の医薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体がある。
【0098】
治療の目的のための「哺乳類」とは、哺乳類として分類される任意の動物、例えば、ヒト、マウス、SCIDもしくはヌードマウス又はマウス種、家畜(domestic and farm animal)、及び動物園の、スポーツの、もしくはペットの動物、例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等のことを言う。好ましくは、当該哺乳類はヒトである。
【0099】
「オリゴヌクレオチド」は、周知の方法で化学合成される、短い、一本鎖又は二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである(方法としては、例えば、1988年5月4日に発行された欧州特許第266,032号等の記載に従う固相法を用いるか、又はFroehler et al., Nucl. Acids Res., 14:5399-5407, 1986に記載されたデオキシヌクレオシド H−ホスホネート中間体を経由することによる、ホスホトリエステル、亜リン酸エステル、又はホスホラミダイトの化学がある。)その後これらをポリアクリルアミドゲルで精製する。
【0100】
本発明によれば、「ヒト化」及び/又は「キメラ」状態の非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンは、もとの抗体と比較すると、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)又はヒト抗ヒト抗体(HAHA)応答の減少をもたらす、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体の抗原結合サブ配列等)を含有する抗体であるとともに、非ヒト免疫グロブリンと同じ結合特徴を同時に保持し、所望の効果をもたらすのに必要な、当該非ヒト免疫グロブリン由来の必須部分(例えば、(1又は複数の)CDR、(1又は複数の)抗原結合領域、(1又は複数の)可変ドメイン等)を含有する抗体のことを言う。大部分においてヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補的決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(マウス、ラット又はウサギ等)のCDR由来の残基で置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトFR残基と置き換えられる。さらにヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入CDRもしくはFR配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体機能をさらに洗練し、最適化させる。一般的にヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンのものに対応する全てもしくは実質的に全てのCDR領域、及びヒト免疫グロブリン共通配列のものに対応する全てもしくは実質的に全てのFR残基における、少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。最も有利なことには、ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。
【0101】
「脱免疫化」抗体は、所与の種に対して非免疫原性又は低免疫原性の免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体への構造的変質を介して達成できる。当業者に周知のいずれかの脱免疫化技術を使用できる。抗体を脱免疫化するのに適した技術の1つとして、例えば2000年6月15日に発行された国際公開第00/34317号における記載が挙げられる。
【0102】
「アポトーシス」を誘導する抗体は、最終的に細胞死が予定されているもので、限定するものではないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の膨張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成によって例証される。
【0103】
本明細書で使用される「抗体誘導性細胞毒性」は、効果が結合度に関連する必要がない、IDAC受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより作製された、ハイブリドーマ上清又は抗体、IDAC受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、IDAC受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、その抗原結合断片、又は抗体リガンド由来の細胞毒の影響を意味すると解され、この影響は結合度合いに関連する必要はない。
【0104】
本明細書全体を通して、ハイブリドーマ細胞系列、及びそこから作製される単離モノクローナル抗体は、その内部での指定であるAR36A36.11.1(マウス)、(ch)AR36A36.11.1(キメラ)、(hu)AR36A36.11.1(ヒト)又は寄託機関の指定であるIDAC 280104−02のいずれかで択一的に言われる。
【0105】
本明細書で使用される「抗体−リガンド」は、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに結合特異性を提示する部分であって、未処理の抗体分子、抗体断片、及び少なくとも1つの抗原結合領域又はその一部(すなわち、抗体分子の可変部分)を有するいずれかの分子であってもよく、例えば、IDAC 280104−02として指定されたハイブリドーマ細胞系列により作製された単離モノクローナル抗体、IDAC 受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、IDAC 受託番号280104−02で寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、及びその抗原結合断片により結合される抗原の、少なくとも1つのエピトープで、特異的に認識及び結合する、Fv分子、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、二特異性抗体、融合タンパク質、又はいずれかの遺伝子操作分子。
【0106】
本明細書で使用される、「癌性疾患修飾性抗体」(CDMAB)は、患者に有益な方法、例えば腫瘍負荷の低減、又は腫瘍を持つ個体の生存の延長により、細胞癌疾患プロセスを修飾するモノクローナル抗体、及びその抗体−リガンドのことを言う。
【0107】
「CDMAB関連結合剤」は、その最も広い意味で使用され、限定するものではないが、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに競合的に結合する、ヒト又は非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンド等の任意の形態が含まれると解する。
【0108】
「競合的バインダー」は、少なくとも1つのCDMAB標的エピトープに結合親和性を有する、ヒト又は非ヒト抗体、抗体断片、抗体リガンド等の任意の形態が含まれると解する。
【0109】
治療される腫瘍には、原発性腫瘍及び転移性腫瘍、並びに難治性腫瘍が含まれる。難治性腫瘍には、化学療法剤単独、抗体単独、放射治療単独、又はそれらの組み合わせでの治療に応答しない、又は耐性のある腫瘍を含む。難治性腫瘍はまた、当該剤での治療により阻害するように見えるが、治療中断後、5年以内、時には10年以上後に再発する腫瘍を包含する。
【0110】
治療できる腫瘍には、血管新生されない、又は実質的に血管新生されない腫瘍、並びに血管新生される腫瘍が含まれる。従って治療できる固形腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経膠腫及びリンパ腫が含まれる。当該腫瘍のいくつかの例には、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部及び頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍、例えば、小細胞及び非小細胞肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍が含まれる。他の例には、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽腫、毛細血管腫、髄膜腫、横紋筋肉腫、グリア芽腫、好ましくは、多型性グリア芽腫、及び平滑筋肉腫が含まれる。
【0111】
本明細書で使用される「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する分子の部分を意味する。
【0112】
本明細書で使用される「競合阻害」は、ハイブリドーマ細胞系列により作製されるモノクローナル抗体に対する決定部位を認識及び当該部位に結合できることを意味し、ここで前記細胞系列は、IDAC 280104−02、(IDAC 280104−02抗体)、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、その抗原結合断片、又はその抗体リガンドのことを指し、これが従来の相互(reciprocal)抗体競合アッセイを用いて対象とされる(Belanger L., Sylvestre C. and Dufour D. (1973), Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures. Clinica Chimica Acta 48, 15)。
【0113】
本明細書で使用される「標的抗原」は、IDAC 280104−02抗原又はその部分である。
【0114】
本明細書で使用される「免疫複合体」は、任意の分子又はCDMAB、例えば、細胞毒と化学的もしくは生化学的に関連する抗体、放射活性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター成分、酵素、毒素、抗腫瘍薬物又は治療剤等がある。抗体又はCDMABは、その標的が結合できる限り分子周囲の任意の場所で、サイトカイン、放射活性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター成分、酵素、毒素、抗腫瘍薬物又は治療剤と結合してもよい。免疫複合体の例には、毒素化学複合体及び抗体毒性融合タンパク質が含まれる。
【0115】
抗腫瘍剤としての使用に適する放射活性剤は、当業者に知られている。例えば、131I又は211Atが使用される。これらの同位体は、従来技術を用いて抗体に結合する(例えば、Pedley et al., Br. J. Cancer 68, 69-73 (1993))。あるいは、抗体に結合する抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化する酵素である。腫瘍部位に到達するまでその不活性状態を維持し、腫瘍部位で抗体複合体が投与されるとその細胞毒性状態に変換する、プロドラッグを投与してもよい。実際は、抗体−酵素複合体を患者に投与し、治療される組織の領域に局在化させる。その後プロドラッグは、治療される組織の領域で、細胞毒性薬物への変換が起きるよう患者に投与される。あるいは、抗体と複合化された抗腫瘍剤は、例えばインターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)等のサイトカインである。抗体は、他の組織に影響を及ぼすことなく、サイトカインが腫瘍の損傷又は破壊を媒介するよう、腫瘍に対するサイトカインを標的とする。従来の組み換えDNA技術を用いると、サイトカインはDNAレベルで抗体と融合する。インターフェロンを使用してもよい。
【0116】
本明細書で使用される「融合タンパク質」は、任意のキメラタンパク質であって、ここで抗原結合領域は、生物活性分子、例えば毒物、酵素、蛍光タンパク質、発光マーカー、ポリペプチドタグ、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター成分、又はタンパク質薬物と接続する。
【0117】
本発明はさらに、標的又はレポーター成分が結合する本発明のCDMABを考慮する。標的成分は、結合ペアの第一成分である。例えば、抗腫瘍剤は、当該ペアの第二成分と複合化し、これが、抗原結合タンパク質が結合する部位に向かう。かかる結合ペアの一般的な例としては、アビジン及びビオチンがある。好ましい実施態様によれば、ビオチンは、本発明のCDMABの標的抗原と複合化して、アビジン又はストレプトアビジンと複合化する抗腫瘍剤又の成分のための標的を提供する。あるいは、ビオチン又は別のこのような成分は、例えば、検出可能なシグナル発生剤がアビジン又はストレプトアビジンと複合化する診断システムにおいて、本発明のCDMABの標的抗原と結合すると共に、レポーターとして使用される。
【0118】
検出可能なシグナル発生剤は、インビボ及びインビトロでの診断目的において有用である。シグナル発生剤は、外部手段、通常は電磁波照射により検出できる測定可能なシグナルを発生する。ほとんどの部分でシグナル発生剤は、酵素又は発色団であるか、又は蛍光、リン光、もしくは化学発光により光を放射する。発光団は、紫外又は可視領域で光を吸収する色素を含むとともに、酵素触媒反応の基質又は分解産物であり得る。
【0119】
さらに、本発明の範囲内には、調査又は診断方法のための、インビボ及びインビトロでの、本発明のCDMABの使用が含まれる。本明細書で考慮される診断方法を実行するため、本発明には、本発明のCDMABを含有するキットがさらに含まれる。当該キットは、個人の細胞におけるCDMABの標的抗原の過剰発現を検出することによって、特定タイプの癌のリスクのある個人を識別するために有用である。
【0120】
診断アッセイキット
本発明の腫瘍を検出するための診断アッセイキットの形態で、本発明のCDMABの利用を考慮する。腫瘍は一般的に、1又は複数の腫瘍特異的抗原の存在に基づいて患者において検出され、当該抗原には例えば、患者から得られる生物サンプル、例えば血液、血清、尿及び/又は腫瘍生検等の中の、タンパク質及び/又はかかるタンパク質をコードするポリヌクレオチドがある。
【0121】
特定の腫瘍、例えば結腸、乳房、肺又は前立腺の腫瘍の、存在又は不存在を示すマーカーとして、タンパク質は機能する。抗原が、他の癌性主要の検出のための用途を有することはさらに考慮される。結合剤の診断アッセイキットの包含物は、本発明のCDMABか、又は生物サンプルにおいて剤と結合する抗原のレベルを検出できる結合剤に関連するCDMABを含んでなる。ポリヌクレオチドプライマー及びプローブを、腫瘍タンパク質をコードするmRNAのレベルを検出するために使用してもよく、これは癌の存在又は不存在の指標でもある。診断用の結合アッセイのために、データを、通常の組織に存在するものとの関連で、癌性腫瘍の存在を決定的に診断するための結合の認識をさせるような、統計的に有意な抗原レベルと相関するようなものにする。サンプルにおけるポリペプチドマーカーを検出する結合剤を使用するような多数の形式は、当業者に知られる通り、本発明の診断アッセイに有用であることを考慮する。例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に例示されるものがある。既に記載した診断アッセイの形式の全て又は任意の組み合わせ、置換又は修正が、さらに考慮される。
【0122】
患者における癌の存在又は不存在は、典型的には以下によって決定される、(a)患者から得た生物サンプルを、結合剤と接触させること、(b)サンプル中の結合剤と結合するポリペプチドレベルを検出すること、及び(c)既定のカットオフ値と、前記ポリペプチドレベルを比較すること、である。
【0123】
例示的な実施態様によれば、アッセイが、サンプルの残部由来のポリペプチドに結合及びこれを除去するため、固形支持体上に固定されたCDMABベースの結合剤の使用に関連することが考慮される。その後、結合ポリペプチドを、レポーター群を含有するとともに、試薬/ポリペプチド複合体に特異的に結合する検出試薬を用いて検出してもよい。例示的な検出試薬としては、ポリペプチド又は抗体又は結合抗原に特異的に結合するCDMABベースの結合剤か、又は例えば抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA又はレクチン等の結合剤に特異的に結合するその他の剤がある。代わりの実施態様によれば、競合アッセイを利用してもよく、ここでポリペプチドはレポーター群で標識され、サンプルと結合剤のインキュベーション後、固定化結合剤に結合させる。固定化結合剤とサンプルとの反応性の指標は、サンプルの成分が、標識化ポリペプチドが結合剤へ結合することを阻害する程度である。当該アッセイ内での使用のための好適なポリペプチドには、結合剤が結合親和性を有する、全長腫瘍特異的タンパク質及び/又はその部分が含まれる。
【0124】
診断キットは、タンパク質が結合できる当業者に既知の任意の物質の形態である、固形支持体を提供する。好適な例には、マイクロタイタープレートにおける試験ウェル又はニトロセルロース又はその他の好適な膜が含まれる。あるいは、前記支持体には、ビーズ又はディスク、例えば、ガラス、ファイバーグラス、ラテックス又はプラスティック材料、例えばポリスチレン又は塩化ポリビニルがある。支持体はまた、磁気粒子又は光ファイバーセンサー、例えば米国特許第5,359,681号に開示のもの等でもよい。
【0125】
結合剤は、特許及び科学文献において十分に記載される、当業者に既知の様々な技術を用いて固形支持体に固定されることが考慮される。「固定化」なる用語は、吸着のような非共有結合及び共有結合の両方のことを言い、本発明の内容においては、支持体上で剤と官能基が直接結合するか、又は架橋剤で結合するものがある。非限定的ではあるが好ましい実施態様によれば、マイクロタイタープレート中のウェル、又は膜への吸着による固定化は好ましい。吸着を、好適なバッファ中で、好適な時間、固形支持体と結合剤を接触させることにより達成してもよい。接触時間は、温度で変動する可能性があり、一般的には約1時間から約1日の範囲内である。
【0126】
固形支持体への結合剤の共有的結合は、最初に、支持体及び結合剤上の官能基、例えばヒドロキシル又はアミノ基の両方と反応する二機能性試薬と、支持体との反応により通常達成される。例えば、結合剤は、ベンゾキノンを用いるか、又は結合パートナー上のアミンの活性水素で、支持体上のアルデヒド基の縮合により、適切なポリマー被覆を有する支持体と共有的に結合してもよい(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook, 1991, at A12 A13を参照されたい)。
【0127】
診断アッセイキットが、2抗体サンドウィッチアッセイの形態をとることが、さらに考慮される。このアッセイは、例えば通常マイクロタイタープレートのウェルである固形支持体に固定されている本明細書で開示のCDMAB等の抗体と、サンプルとを最初に接触させ、サンプル内でポリペプチドが固定化抗体と結合させる。その後、未結合サンプルを固定化ポリペプチド−抗体複合体から除去するとともに、レポーター群を含有する検出試薬(好ましくはポリペプチドの異なる部位に結合できる第二抗体)を添加する。その後、固形支持体に結合したままの検出試薬の量を、特異的レポーター群に適する方法を用いて決定する。
【0128】
特定の実施態様によれば、上記の通り抗体が支持体に固定化されると、支持体上の残存タンパク質結合部位は、当業者に既知の任意の好適なブロッキング剤、例えばウシ血清アルブミン又はTween20(商標)(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を使用してブロックされる。その後、固定化抗体をサンプルと共にインキュベートし、ポリペプチドを抗体と結合させる。サンプルは、例えばリン酸バッファ化食塩水(PBS)等の好適な希釈剤でインキュベーション前に希釈できる。一般的には、特異的に選択された腫瘍で、個々から得たサンプル内のポリペプチドの存在を検出するのに十分な時間に対応する、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)が選択されるはずである。好ましくは、接触時間は、結合及び未結合ポリペプチド間の平衡到達レベルの、少なくとも約95%の結合レベルに到達するために十分な時間である。当業者は、平衡到達に必要な時間を、ある時間を超えて起きる結合のレベルを評価することにより容易に決定できる。
【0129】
その後、適切なバッファで固形支持体を洗浄することにより、未結合サンプルを除去することは、さらに考慮される。その後、レポーター群を含有する第二抗体を、固形支持体に添加する。検出試薬と、固定化抗体−ポリペプチド複合体とのインキュベーションは、結合ポリペプチドを検出する十分な時間量で実施されるはずである。その後、未結合検出試薬は除去されるとともに、結合検出試薬はレポーター群を用いて検出される。レポーター群の検出に用いられる方法は選択されたレポーター群のタイプに特異的であることが必要で、例えば放射性群、シンチレーション計測又はオートラジオグラフィ法が一般的に適切である。分光測定法は、色素、発光団及び蛍光団の検出に使用できる。ビオチンは、異なるレポーター群と結合したアビジンを用いる(一般的には酵素上の放射性又は蛍光団)。酵素レポーター群は一般的に基質の添加し(一般的には特定時間)、その後反応産物の分光測定又の他の解析により検出できる。
【0130】
例えば前立腺癌等の癌の存在又は不存在を決定する、本発明の診断的アッセイキットを利用するため、固形支持体に結合した状態のレポーター群から検出されるシグナルは、一般的には、既定のカットオフ値と対応するシグナルと比較される。例えば、癌の検出のための例示的なカットオフ値は、固定化抗体を癌に罹患しない患者からのサンプルとインキュベートする場合の、得られる平均中間シグナルである。一般的には、既定のカットオフ値超で約3標準偏差であるシグナルを発生させるサンプルは、癌が陽性であると考えられるはずである。代わりの実施態様によれば、カットオフ値は、Sackett et al., Clinical Epidemiology. A Basic Science for Clinical Medicine, Little Brown and Co., 1985, p. 106-7の方法に従って、受信者動作曲線(Receiver Operator Curve)を用いて決定することができる。当該実施態様によれば、前記カットオフ値は、診断検査結果の各可能性あるカットオフ値に対応する、真陽性速度(即ち、感度)及び偽陽性速度(100パーセント特異性)のペアのプロットから決定できる。左手上方の角に最近接するプロット上のカットオフ値(即ち、最大面積を包含する値)は、最も正確なカットオフ値であり、本方法により決定されるカットオフ値より高いシグナルを発生するサンプルは陽性と考えられる。あるいは、カットオフ値は、偽陽性速度を最小化するようにプロットに沿って左に移動しても、又は偽陰性速度を最小化するように右に移動してもよい。一般的には、本方法によろい決定されるカットオフ値より高いシグナルを発生するサンプルは、癌が陽性と考えられる。
【0131】
キットにより可能となる診断アッセイは、流入又は片(strip)試験の形式のいずれかで行うことが考慮され、ここで結合剤はニトロセルロース等の膜に固定化される。流入試験においては、サンプル内のポリペプチドは、サンプルが膜を通過する際に、固定化結合剤に結合する。次に、標識化結合剤は、第二結合剤と含有する溶液が膜を通過する際に、結合剤−ポリペプチド複合体に結合する。その後、第二結合剤の結合の検出を、上記の通りに行うことができる。片試験形式においては、結合剤が結合する膜の一端を、サンプル含有溶液に浸漬する。第二結合剤を含有する領域を通り、固定下結合剤の領域まで、サンプルを膜に沿って移動させる。固定化抗体の領域での第二結合剤の濃度は、癌の存在を示す。結合部位における、例えば線等のパターンの発生は、視覚的に読取り可能であり、これは陽性試験の指標である。当該パターンの不存在は、陰性の結果を示す。一般的には、生物サンプルが、上記の形式での2抗体のサンドウィッチアッセイにおいて、陽性シグナルを発生するのに十分なレベルのポリペプチドを含有する場合、視覚的に識別可能なパターンを発生する、膜固定化結合剤の量を選択する。本診断アッセイにおける使用のための好ましい結合剤は、本明細書で記載の抗体、その抗原結合断片、及び任意のCDMAB関連結合剤をここで開示する。膜上に固定化した抗体量は、診断アッセイを作製する任意の有効量であり、約25ナノグラム〜約1マクログラムとすることができる。典型的に当該試験は、非常に少量の生物サンプルで行う。
【0132】
さらに、本発明のCDMABはその標的抗原を識別できるため、実験室の研究で使用することができる。
【0133】
本明細書で記載の発明がより十分理解されるように、以下の記載で説明する。
【0134】
本発明は、CDMAB(即ち、IDAC 280104−02 CDMAB、受託番号280104−02でIDCABに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、受託番号280104−02でIDCABに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、抗原結合断片、又はその抗体リガンド)であって、IDAC 280104−02抗原を特異的に認識及びこれに結合するCDMABを提供する。
【0135】
単離モノクローナル抗体のCDMABは、受託番号280104−02でIDCABに寄託されたハイブリドーマにより作製された単離モノクローナル抗体は、その標的抗原に対する、ハイブリドーマIDAC 280104−02により作製された単離モノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を有する限り、任意の状態があり得る。即ち、任意の組み換えタンパク質(例えば、抗体がリンホカイン又は腫瘍阻害増殖因子等の第二タンパク質と組み合わされる融合タンパク質)であって、IDCA 280104−02抗体と同じ結合特異性を有するものは、本発明の範囲内に入る。
【0136】
本発明の1の実施態様によれば、CDMABはIDAC 280104−02抗体である。その他の実施態様によれば、CDMABは抗原結合断片であり、これは、IDCA280104−02抗体の抗原結合領域を有する、Fv分子(例えば、単鎖Fv分子)、Fab分子、Fab'分子、F(ab')2分子、融合タンパク質、生検抗体、ヘテロ抗体又は任意の組み換え分子があり得る。本発明のCDMABは、IDAC 280104−02モノクローナル抗体が対象とするエピトープを対象とする。
【0137】
本発明のCDMABは、修飾されてもよく、すなわち、誘導分子を作製するような分子内アミノ酸修飾がある。化学修飾も可能である。直接変異導入による修飾は、親和性成熟の方法であり、ファージディスプレイ又は鎖シャッフリング(chain shuffling)も可能である。
【0138】
親和性及び特異性は、CDR及び/又はフェニルアラニントリプトファン(FW)残基の変異により、及び所望の特徴を有する抗原結合部位のスクリーニングのために、修正又は改善できる(例えば、Yang et al., J. Mol. Biol., (1995) 254: 392-403)。1つの方法としては、個々の残基又は残基の組み合わせを無作為化し、他の同じ抗原結合部位の集団において、2から20アミノ酸のサブセットが特定の位置に見出されるようにする。あるいは、変異性PCR法によって広範な残基を誘導することができる(例えば、Hawkins et al., J. Mol. Biol., (1992) 226: 889-96)。別の例によれば、重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含有するファージディスプレイベクターは、E.coliの変異系統で繁殖できる(例えば、Low et al., J. Mol. Biol., (1996) 250: 359-68)。これらの変異誘発方法は、当業者に既知の多くの方法の例示がある。
【0139】
本発明の抗体の親和性を向上させるための別の手法は鎖シャッフリングの実施であり、これはより高親和性の抗体を調製するため、その重鎖又は軽鎖を、別の重鎖又は軽鎖と無作為に対にする方法である。様々な抗体のCDRを、他の動物の対応するCDRとシャッフルしてもよい。
【0140】
誘導分子は、ポリペプチドの官能特性を維持するはずであり、特にかかる置換を有する分子は、IDAC 208104−02抗原又はその部分に対してポリペプチドを結合させる。
【0141】
これらのアミノ酸置換には、限定するものではないが、当業界で「保存的」として知られるアミノ酸置換がある。
【0142】
例えば、「保存的アミノ酸置換」と呼ばれる特定のアミノ酸置換は、タンパク質の立体配座又は官能基のいずれも変更せずにタンパク質においてしばしばなされる置換であり、十分に確立されたタンパク質化学の原理である。
【0143】
当該変更には、イソロイシン(I)、バリン(V)、及びロイシン(L)の任意のアミノ酸から任意の他の疎水性アミノ酸への置換;アスパラギン酸(D)からグルタミン酸(E)への置換及び逆も同様;グルタミン(Q)からアスパラギン(N)への置換及び逆も同様;及びセリン(S)からスレオニン(T)への置換及び逆も同様、が含まれる。他の置換は、特定のアミノ酸の環境及びタンパク質の3次元構造におけるその役割によって、保存的と考えることができる。例えば、グリシン(G)及びアラニン(A)はしばしば相互変換でき、アラニン及びバリン(V)も同様である。比較的疎水的なメチオニン(M)は、ロイシン及びイソロイシンと相互変換でき、バリンと相互変換できることもある。アミノ酸残基の重要な特性がその電荷であるような位置で、リジン(K)及びアルギニン(R)はしばしば相互変換可能であり、この2つのアミノ酸残基のpKの差異は重要でない。さらに他の変化は、特定の環境下で「保存的」と考えられる。
【実施例1】
【0144】
ヒトPC−3癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、前立腺癌の予防的インビボモデルにおける有効性が従来から実証されている(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。この発見を拡張するため、AR36A36.11.1を、確立されたPC−3前立腺癌異種移植モデルで試験した。図1及び2を参照すると、8〜10週齢の雄の無胸腺ヌードマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト前立腺癌細胞(PC−3)を移植した。マウスを10匹ずつ2つの治療群にわけた。移植後6日目で、平均マウス腫瘍容量はおよそ95mm3に達したときに、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4-、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に3回、3週間にわたり投与した。腫瘍増殖を4〜10日ごとにキャリパーで測定した。抗体を10用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0145】
AR36A36.11.1は、PC−3インビボヒト前立腺癌の確立されたモデルで、腫瘍増殖を有意に阻害した。ARIUS抗体AR36A36.11.1での治療は、実験71日目であって、最後の抗体用量投与後44日目に決定した際、PC−3腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して81.1%まで低減した(t検定、p=0.0004084)(図1)。腫瘍増殖阻害は、コントロール及び治療群の両方について、初期腫瘍容量の減少後に計算した。
【0146】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。1週間ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図2)。6日と71日の間の平均増分は、コントロールにおいて3.47g(14.3%)、AR36A36.11.1治療群において4.93g(19.8%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0147】
総括すると、AR36A36.11.1は、この確立されたヒト前立腺癌の異種移植モデルにおいて十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。
【実施例2】
【0148】
ヒトMDA−MB−468乳癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、MDA−MB−231ヒト乳癌異種移植モデルにおける有効性を従来から実証している(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。この発見を別のヒト乳癌モデルに拡張するため、AR36A36.11.1を、確立されたMDA−MB−468ヒト乳癌異種移植モデルで試験した。図3及び4を参照すると、8〜10週齢の雄の無胸腺ヌードマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト乳癌細胞(MDA−MB−468)を移植した。マウスを10匹ずつ2つの治療群にわけた。移植後35日目で、平均マウス腫瘍容量はおよそ83mm3に達したときに、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4-、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に3回、3週間にわたり投与した。腫瘍増殖を1週間に1回キャリパーで測定した。抗体を10用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0149】
AR36A36.11.1は、MDA−MB−468インビボヒト乳癌の確立されたモデルで、腫瘍増殖を有意に阻害した。ARIUS抗体AR36A36.11.1での治療は、実験79日目であって、最後の抗体用量投与後26日目に決定した際、MDA−MB−468腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して98.6%まで低減した(t検定、(p=0.000147)(図3)。腫瘍増殖阻害は、コントロール及び治療群の両方について、初期腫瘍容量の減少後に計算した。
【0150】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。1週間ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図4)。35日と79日の間の平均増分は、コントロールにおいて1.82g(7.2%)、AR36A36.11.1治療群において1.59g(6.7%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0151】
総括すると、AR36A36.11.1は、この確立されたヒト乳癌の異種移植モデルにおいて十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。
【実施例3】
【0152】
ヒトMDA−MB−231乳癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、確立されたMDA−MB−231ヒト乳癌異種移植モデルにおける有効性を従来から実証している(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。有効用量レベルを決定するため、AR36A36.11.1を、確立されたMDA−MB−31ヒト乳癌異種移植モデルにおいて様々な用量で試験した。図5及び6を参照すると、8〜10週齢の雌のSCIDマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)を移植した。平均マウス腫瘍容量がおよそ100mm3に到達してから、マウスを10匹ずつ5つの治療群にわけた。移植後11日目で、20、10、2又は0.2mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に3回、3週間にわたり投与した。腫瘍増殖を4〜7日ごとにキャリパーで測定した。抗体を10用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0153】
AR36A36.11.1は、MDA−MB−231インビボヒト乳癌の確立されたモデルにおいて、治療期間の間、最低用量の0.2mg/kgで、用量依存的な腫瘍増殖の阻害及び軽減を実証した。腫瘍増殖軽減は、最低用量での治療後も維持した。実験48日目であって、最後の抗体用量投与後16日目に決定した際、MDA−MB−231腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して、20、10及び2mg/kgのARIUS抗体AR36A36.11.1での治療により100%まで完全に根絶させ(t検定、p<0.00001)、0.2mg/kgの用量での処理では98%(p<0.00001)であった(図5)。
【0154】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。4〜7日ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図6)。11日と48日の間の平均増分は、コントロールにおいて2.5g(13.4%)、及びAR36A36.11.1の20、10、2又は0.2mg/kgでの治療群においてはそれぞれ、1.6g(8.4%)、2.7g(14.1%)、2.6g(13.6%)、及び2.9g(15.3%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0155】
総括すると、AR36A36.11.1は、この確立されたヒト乳癌の異種移植モデルにおいて、0.2mg/kgで十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。
【実施例4】
【0156】
ヒトNCI−H520肺癌細胞でのインビボ腫瘍実験
AR36A36.11.1は、ヒト乳房、前立腺の結腸の癌異種移植モデルにおける有効性を従来から実証している(米国特許出願第11/067,366号に開示の通り)。肺癌における有効性を実証するため、AR36A36.11.1を、NCI−H520ヒト肺癌異種移植モデルにおいて様々な用量で試験した。図7及び8を参照すると、8〜10週齢の雌のSCIDマウスに対し、各マウスの右側腹に皮下注入して、100μリットルPBS溶液中の500万個のヒト乳癌細胞(NCI−H520)を移植した。平均マウス腫瘍容量がおよそ100mm3に到達してから、マウスを10匹ずつ2つの治療群にわけた。移植後11日目で、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体又はバッファコントロールを、希釈剤でストック濃縮物から希釈後の300マイクロリットル容量で各コホートに対し腹腔内投与した。ここで希釈剤は、2.7 mM KCl、1 mM KH2PO4、137 mM NaCl 及び 20 mM Na2HPO4を含有する。その後、抗体及びコントロールサンプルを、1週間に1回、7週間にわたり投与した。腫瘍増殖を4〜7日ごとにキャリパーで測定した。抗体を8用量投与後に治療を完了した。動物の体重を腫瘍測定と同時に記録した。終点に達すると、研究の最後でCCACガイドラインに従って、全ての動物を安楽死させた。
【0157】
AR36A36.11.1は、NCI−H520インビボヒト肺扁平上皮細胞癌のモデルで、腫瘍増殖を有意に阻害した。ARIUS抗体AR36A36.11.1での治療は、実験55日目であって、最後の抗体用量投与後5日目に決定した際、NCI−H520腫瘍の増殖は、バッファ治療群と比較して58.9%まで低減した(t検定、p=0.03113)(図7)。研究を継続し、生存の監視を、コントロール群の90%(9/10)のマウスが、終点に達したために研究から除去された時点である、実験から100日目、最後の用量投与後50日目まで行った。ただし、AR36A36.11.1治療群の50%(5/10)のマウスは、その時点で生存していた(図8)。
【0158】
研究を通して、毒性の明らかな臨床的兆候はなかった。1週間ごとに測定した体重は、健康状態と生育不良の指標とした。研究の期間にわたり全ての群において、平均体重が増加した(図9)。0日と55日の間の平均増分は、コントロールにおいて3.7g(18.9%)、AR36A36.11.1治療群において2.6g(12.9%)であった。当該治療期間中、群間で有意な差はなかった。
【0159】
総括すると、AR36A36.11.1は、このヒト肺扁平上皮細胞癌の異種移植モデルにおいて十分な耐性があるとともに、有意に阻害した。AR36A36.11.1は、4つの異なるヒト癌指標、肺扁平冗費細胞、前立腺、乳房及び結腸に対する有効性を実証している。治療の利益は、人を含む他の哺乳類における療法のための、本抗体の薬学的及び医薬的利益を示す、ヒト癌性疾患についての、複数の十分に認識されたモデルにおいて観察された。総合すると、このデータは、AR36A36.11.1抗原が、癌関連抗原であり、且つヒト癌細胞で発現されるとともに、病理的に明らかな癌標的であることを実証する。
【実施例5】
【0160】
クロス競合実験
AR36A36.11.1の結合特性を特徴付けるために、抗体競合実験を10A304.7(他には既に記載の、抗−CD59抗体;米国特許出願第10/413,755号で現在米国特許第6,794,494号、米国特許出願第10/944,664号及び第11/361,153号)を用いて行った。ウェスタンブロットを、10A304.7及びAR36A36.11.1がCD59のエピトープと同じ又は異なるエピトープを認識するかを決定するために用いた。500マイクログラムのMDA−MB−231総膜調製物を、非還元条件で調製ウェルコームを用いてSDS−PAGEに供し、これを2つの10%ポリアクリルアミドゲルの各々の延長まで広げた。150V2時間4℃で、ゲルからタンパク質をPVDF膜に移した。膜を、TBST中の5%スキムミルクで、およそ7時間、4℃で、回転盤上に置き、ブロック化した。膜をおよそ20mLのTBSTで2回洗浄し、20個の別々のチャネルを作るウェスタン・マルチスクリーン装置であって、異なるプローブ溶液をアプライする装置に置いた。以前は、EZ-Link NHS-PEO固相ビオチン化キット(Pierce, Rockford, IL)を用いて、ビオチン化10A304.7及びAR36A36.11.1を調製していた。一次抗体溶液を、ビオチン化10A304.7又はビオチン化AR36A36.11.1を、様々な濃度の非ビオチン化抗体と混合することにより、調製した。具体的には、TBST中の3%スキムミルク中の0.05μg/mLのビオチン化AR36A36.11.1に加え、0.5μg/mL、5μg/mL、50μg/mL、500μg/mL又は1000μg/mLの非ビオチン化抗体を含有する溶液を調製した。使用された非ビオチン化抗体は、AR36A36.11.1、10A304.7及びコントロール抗体8B1B.1(抗−ブルータングウイルス;IgG2b、カッパ、自社精製)であった。0.05μg/mLのビオチン化10A304.7含有溶液を、同じ濃度の上記の非ビオチン化抗体10A304.7、AR36A36.11.1及びコントロール抗体8B3B.6(抗−ブルータングウイルス;IgG2a、カッパ、自社精製)と共に調製した。TBST中の3%スキムミルクからなるネガティブコントロール溶液を、各膜上の2つのチャネルに添加した。
【0161】
一次抗体溶液を、揺動盤上、室温で2時間、膜上の別々のチャネルでインキュベートした。揺動盤上で、各チャネルをTBSTで10分間3回洗浄した。TBST中の3%スキムミルク中の、0.01μg/mLパーオキシダーゼ複合化ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)からなる二次溶液を、TBST中の3%スキムミルクをネガティブコントロールとして添加した各膜上の1つのチャネル以外の、膜上の各ウェルにアプライした。膜を、揺動盤上、室温で1時間、二次溶液中でインキュベートした。揺動盤上で、各チャネルをTBSTで10分間3回洗浄した。膜をマルチスクリーン装置から除去し、増強化学発光検出溶液(GE Healthcare, Life Sciences formerly Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)で、その製品の指示書に従ってインキュベートした。その後、膜をフィルムに晒して現像した。
【0162】
図10及び11は、抗体競合実験の結果を示す。ビオチン化AR36A36.11.1の結合は、5μg/mL以上の濃度で非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した場合に完全に阻害され(100×過剰;図10、レーン3〜7)、一方、ビオチン化10A304.7の結合は、50μg/mL以上の濃度で非ビオチン化10A304.7と混合した場合に完全に阻害された(1000×過剰;図11、レーン3〜7)。ビオチン化AR36A36.11.1の結合は、IgG2bアイソタイプコントロール抗体含有の任意のサンプル中で阻害されず(図10、レーン15〜19)、ビオチン化10A304.7の結合は、IgG2aアイソタイプコントロール抗体含有の任意のサンプル中で阻害されない(図11、レーン15〜19)。これは、同じ非ビオチン化抗体と混合したビオチン化抗体で観察される結合の阻害は、過剰抗体の非特異的相互作用のみによるものではなく、非ビオチン化抗体による抗原結合部位の占有に起因することを示唆する。ビオチン化AR36A36.11.1の結合は、500μg/mL以上の濃度で、非ビオチン化10A304.7と混合した場合に完全に阻害され(10000×過剰;図10、レーン9〜13)、ビオチン化10A304.7の結合は、試験された全ての濃度で、非ビオチン化AR36A36.11.1と混合した場合に完全に阻害された(図11、レーン9〜13)。これらの結果は、AR36A36.11.1の結合が、10A304.7の結合を阻害し、逆もまた同様であることを示している。全体的に、競合ウェスタンブロットの結果は、AR36A36.11.1及び10A304.7により認識されるCD59分子のエピトープが互いに類似することを示す。
【実施例6】
【0163】
エピトープマッピング
エピトープマッピングを、10A304.7(他には既に記載の、抗−CD50抗体;米国特許出願第11/361,153号)及びAR36A36.11.1により認識されるCD59分子の領域を決定するために実施した。15ペプチドの重複を、標準的なFmocの化学、及び捕捉剤と共にトリフルオロ酸を用いる脱保護を用いて、CD59のアミノ酸配列に基づいて合成した。さらに、最大30ペプチドの二重ループ、三重ループ、及びシート様ペプチドを、CD59分子の不連続エピトープを再構築するために、Chemically Linked Peptides on Scaffolds(CLIPS)技術を用いて、化学的足場(scaffold)上で合成した。ループ化ペプチドは、ジシステインを含有し、アルファ、アルファ'−ジブロモキシレンで処理することにより環化することにより合成された。またループサイズは、可変空間でシステイン残基を誘導することにより変化させた。新規に誘導されたシステインに加えて他のシステインが存在する場合、これらをアラニンと置換した。ペプチド内の複数のシステインの側鎖は、CLIPSテンプレートと結合し、これは、クレジットカード形式ポリプロピレンPEPSCANカード(455ペプチド形式/カード)において、CLIPSテンプレートの0.5mM溶液、例えば炭酸水素アンモニウム(20 mM, pH 7.9)/アセトニトリル(1:1(v/v))中の1,3−ビス(ブロモメチル)ベンゼン等と処理することにより結合させた。カードを、溶液中で穏やかに、溶液に完全に覆われるようにしながら30から60分振とうした。最後に、カードを、過剰量のH2Oで洗浄すると共に、PBS(pH 7.2)中、1%SDS/0.1%ベータ−メルカプトエタノールを含有する分裂バッファ中で、70℃で30分間超音波処理し、その後さらに45分間H2O中で超音波処理した。全部で3811種の異なるペプチドを合成した。各ペプチドに対する抗体の結合を、PEPSCANベースのELISAで検査した。共有結合ペプチドを含有する、455ウェルのクレジットカード形式ポリプロピレンカードを、一次抗体溶液でインキュベートした。ここで一次抗体溶液は、ブロッキング溶液(PBS中、5%オバルブミン(w/v))で希釈した、10μg/mLの10A304.7又はAR36A36.11.1のいずれかからなる。洗浄後、当該ペプチドを1/1000希釈のウサギ−抗−マウス抗体パーオキシダーゼで、25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、パーオキシダーゼ基質2,2'−アジノ−ジ−3−エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)及び2マイクロリットルの3%H2O2を添加した。1時間後発色を測定した。発色を、電荷結合素子(CCD)−カメラ及び画像処理システムを用いて定量化した。
【0164】
10A304.7及びAR36A36.11.1が最も強く結合した、(3811のうち)20ペプチドを、図12及び13に記載した。3つのアミノ酸ホットスポット領域(VYNKCW、NFNDVT及びLTYY)は、両抗体が結合するペプチド組成物を分析することにより、10A304.7及びAR36A36.11.1の両方で確認された。配列VYNKCW、NFNDVT及びLTYYの様々な組み合わせは、10A304.7のための高結合ペプチドのトップ20のうち17個に存在し、AR36A36.11.1のための高結合ペプチドのトップ20のうち16個に存在する。全CD59分子アミノ酸配列内のこれらのアミノ酸配列の位置を図14に示す。全体的にこれらの結果は、10A304.7及びAR36A36.11.1が、CD59の配列VYNKCWKFEHCNFNDVTTRLRENELTYYに含まれる3つの部分の類似する不連続エピトープを認識することを示している。
【実施例7】
【0165】
AR36A36.11.1のヒト化
組み換えDNA技術は、当業界で周知の方法を使用して行い、適切な場合には、酵素の使用のための供給業者の指示書を当該方法中で使用した。詳細な実験方法を以下に記載する。
【0166】
ポリAトラクトシステム(Poly A Tract System) 1000 mRNA 抽出キット:(Promega Corp., Madison, WI)を使用し、製造者の指示書に従って、ハイブリドーマAR36A36.11.1細胞からmRNAを抽出した。mRNAを以下の通りに逆転写した。カッパ軽鎖については、5.0μLのmRNAを、1.0μLの20 pmol/μL MuIgG・VL−3'プライマーOL040(図15)、及び5.5μLヌクレアーゼ未含有水(Promega Corp., Madison, WI)と混合した。ラムダ軽鎖については、5.0μLのmRNAを、1.0μLの20 pmol/μL MuIgG・VL−3'プライマーOL042(図15)、及び5.5μLヌクレアーゼ未含有水(Promega Corp., Madison, WI)と混合した。ガンマ重鎖については、5μLのmRNAを、1.0μLの20 pmol/μL MuIgG・VH−3'プライマーOL023(表1)、及び5.5μLヌクレアーゼ未含有水(Promega Corp., Madison, WI)と混合した。全3つの反応混合物を、サーマル・サイクラー・セットの予備加熱ブロック中、70℃で5分間置いたこれらを、5分間氷上で冷却してから、各々、4.0μL ImPromII 5×反応バッファ(Promega Corp,. Madison, WI)、0.5μL RNasinリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega Corp,. Madison, WI)、2.0μL 25mM MgCl2 (Promega Corp,. Madison, WI)、1.0μL 10mM dNTP mix (Invitrogen, Paisley, UK)及び1.0μL Improm II逆転写酵素(Promega Corp., Madison, WI)に添加した。反応混合物を室温で5分間インキュベートし、その後予備加熱PCRブックセットに移し、42℃で1時間置いた。前記時間の経過後、逆転写酵素を、70℃でPCRブロック中15分間インキュベーションすることにより加熱不活性化した。
【0167】
重鎖及び軽鎖配列を、以下のcDNAから増幅した:PCRマスターミックスを、37.5μL 10×Hi−Fi伸長PCRバッファ:(Roche, Mannheim, Germany)、7.5μL10mM dNTP ミックス(Invitrogen, Paisley, UK)及び3.75μL Hi−Fi伸長DNAポリメラーゼ(Roche, Mannheim, Germany)を、273.75μLヌクレアーゼ未含有水に添加することにより調製した。このマスターミックスを、氷上の薄壁PCR反応管中に21.5μLずつ分注した。これらの管の6つに、2.5μLのMuIgVH−3'逆転写酵素反応ミックス及び1.0μLの重鎖5'プライマープールHAからHFを添加した(プライマー配列及びプライマープール構築物については図16を参照)。別の7つの管には、2.5μLのMuIgVL−3'逆転写酵素反応物及び1.0μLの軽鎖5'プライマープールLAからLFを添加した(図15)。最後の管には、2.5μLのMuIgVL−3'逆転写酵素反応物及び1.0μLのラムダ軽鎖プライマーMuIgλVL5'−LIを添加した。反応物を、サーマル・サイクラーのブロックに置き、95℃で2分間加熱した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応を、94℃で30秒、55℃で1分、及び72℃で30秒を1サイクルとして40サイクルで実施した。最後に、PCR産物を、72℃で5分間加熱し、その後4℃に保持した。
【0168】
増幅産物を、pGEM−TイージーベクターシステムI(Promega Corp., Madison, WI)キットを用いてpGEM−Tイージーベクターに移植し、配列決定した。得られたVH及びVL配列を、それぞれ図17及び18に示す。
【0169】
キメラ抗体の発生については、VH領域遺伝子を、プライマーOL330及びOL331を用いるPCRにより増幅した(図19)。これらを、テンプレートとしてのcDNAクローンの1つ由来のプラスミドDNAを用い、5'MluI及び3'HindIII制限酵素部位中で操作するように設計した。0.5mL PCR管で、5μL 10×Hi−Fi伸長PCRバッファ(Roche, Mannheim, Germany)、1.0μL 10mM dNTPミックス(Invitrogen, Paisley, UK)、0.5μLのプライマーOL330、0.5μLのプライマーOL331、1.0μL テンプレートDNA、及び0.5μL Hi−Fi伸長DNAポリメラーゼ(Roche, Mannheim, Germany)を、41.5μLヌクレアーゼ未含有水に添加した。
【0170】
VL領域を、MssHII及びBamHI制限酵素部位で、オリゴヌクレオチドOL332及びOL333(図20)を用いて操作する同様の方法で増幅した。反応物を、サーマル・サイクラーのブロック中に置き、95℃で2分間加熱した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応を、94℃で30秒、55℃で1分、及び72℃で30秒を1サイクルとして30サイクル実施した。最後に、PCR産物を、72℃で5分間加熱し、その後4℃に保持した。その後、VH及びVL領域のPCR産物を、NluI/HindIII及びBssHII/BamHI部位で、それぞれベクターpANT15及びpANT13に導入した(図21)。pANT15及びpANT13は、ヒトIg発現カセットを含有するpAT153ベースのプラスミドである。pANT15重鎖カセットは、下流にヒトIgG ポリA領域を伴うhCMVieプロモーター由来の、ヒトゲノムIgG1定常部遺伝子からなる。pANT15はまた、下流にSV40 ポリA領域を伴うSV40プロモーター由来の、ハムスターdhfr遺伝子を含有する。pANT13軽鎖カセットは、下流にヒト軽鎖ポリA領域を伴うhCMVieプロモーター由来の、ゲノムヒトカッパ定常部を含んでなる。ヒトIgリーダー配列と定常部とのク導入部位は、可変領域遺伝子の挿入を可能にさせる。
【0171】
NSO細胞(ECACC 85110503, Porton, UK)を、エレクトロポレーション法を用いてこれら2つのプラスミドと同時形質移入し、5% FBS(Ultra low IgG Cat No. 16250-078 Invitrogen, Paisley, UK)プラスペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, Paisley, UK)プラス100nM メトトレキサート(Sigma, Poole, UK)を加えたDMEM(Invitrogen, Paisley, UK)中でセレクションした。メトトレキサート耐性コロニーを単離し、抗体を、製造者推奨の条件に従って1mLHiTrap MabSelect SuRe カラム(GE Healthcare, Amersham, UK)を用いてプロテインA親和性クロマトグラフィにより精製した。
【0172】
キメラ抗体を、ビオチンタグマイクロビオチン化キット(Sigma, Poole, UK)でビオチン化したAR36A36.11.1マウス抗体を用いて、ELISAベースの競合アッセイで試験した。ビオチン化マウスAR36A36.11.1を、競合抗体の様々な濃度の存在下で、MDA−MB−231細胞との結合に使用した。MDA−MB−231細胞を、組織培養物処理した、平底96ウェルプレート中でコンフルエンスに近い状態で培養し、その後固定化した。ビオチン化マウスAR36A36.11.1抗体を、1μg/mLまで希釈し、0〜5μg/mLの範囲の濃度で当量の競合抗体と混合した。100μLの抗体混合物を、MDA−MB−231被覆プレートに移し、これを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、結合ビオチン化マウスAR36A36.11.1を、ストレプトアビジン−HRP複合体(Sigma, Poole, UK)及びOPD基質(Sigma, Poole, UK)の添加により検出した。アッセイを、暗所で5分間進行させ、その後3M HClの添加により停止させた。その後、アッセイプレートをMRX TCIIプレートリーダー(Dynex Technologies, Worthing, UK)を用い、490nmの吸収を測定した。キメラ抗体((ch)AR36A36.11.1)は、MDA−MB−231細胞に対して、ビオチン化AR36A36.11.1抗体と競合するマウスAR36A36.11.1抗体と同量のものとして示される。
【0173】
ヒト化VH及びVL配列を、マウスAR36A36.11.1配列及び相同ヒトVH及びVL配列との比較で設計した。VH変異体の配列を、図22A及び22Bに、またVL変異体を、図23A及び23Bに示す。ヒト化V領域遺伝子を、相同ヒトVH及びVL配列由来のアミノ酸を導入するように、長い重複オリゴヌクレオチドを用いるPCR用のマウスAR36A36.11.1VH及びVLテンプレートを用いて構築した。変異体ヒト化VH及びVL配列の発生のために使用されるオリゴヌクレオチドは、それぞれ図19及び20に示す。米国特許出願第2004260069号(Hellendoorn, Carr and Baker)に詳述されるように、変異体遺伝子を、発現ベクターpSVgpt及びpSVhygに直接導入した。
【0174】
変異体ヒト化重鎖及び軽鎖の全ての組み合わせ(キメラ構築物を含む)を、速やかにCHO−K1細胞(ECACC 85051005, Porton, UK)に形質移入し、上清を48時間後に回収した。
【0175】
上清を、精製ヒトIgG1/カッパ(Sigma, Poole, UK)を標準として用い、IgG Fc/カッパELISAでの抗体発現のために定量化した。イムノソルブ96ウェルプレート(Nalge nunc, Hereford, UK)を、1×PBS(pH 7.4)で1:1500希釈したマウス抗−ヒトIgG Fc特異的抗体(I6260 Sigma, Poole, UK)で、37℃で1時間被覆した。プレートをPBS+0.05%Tween20で3回洗浄し、その後2%BSA/PBSで希釈したサンプル及び標準を添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートし、PBS/Tweenで3回洗浄し、100μL/ウェルの検出抗体ヤギ抗−ヒトカッパ軽鎖パーオキシダーゼ複合体(A7164 Sigma, Poole, UK)を2%BSA/PBSで1:1000希釈したものを添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後PBS/Tweenで5回洗浄し、OPD基質(Sigma, Poole, UK)を用いて結合抗体を検出した。アッセイを暗所で5分間進行させ、3M HClの添加により停止させた。その後アッセイプレートを、MRX TCIIプレートリーダー(Dynex Technologies, Worthing, UK)を用い490nmで測定した。
【0176】
ヒト化変異体の結合を、上記の競合結合ELISAで評価した。標準曲線を、様々な濃度(156.25 ng/mL 〜 5 μg/mL)の精製キメラ抗体((ch)AR36A36.11.1)であって、マウスAR36A36.11.1の96ウェルマイクロタイタープレート上の固定化MSA−MA−231細胞への結合と競合する抗体で作製した。マウスAR36A36.11.1のMDA−MA−231細胞への結合は、ヤギ抗−マウスIgG:HRP複合体(A2179 Sigma, Poole, UK)で検出され、TMB基質(Sigma, Poole, UK)を用いて明らかにされた。キメラ標準曲線を用いることにより、試験濃度での予測される阻害割合を、各変異体について計算するとともに、実際の観察値と比較した。その後、様々な重/軽鎖組み合わせの各々について期待される阻害により、試験サンプルの観察される阻害を除することにより標準化した。すなわち、観察/期待の比率=1.0のサンプルは、キメラ抗体と同じ結合親和性を有し、値が>1.0ではCD59及びサンプルの結合が減少し、比率<1.0ではCD59への結合が増加する。結果を図24に示す。
【0177】
VH及びVL遺伝子の組み合わせを、二重(dual)ベクターpANT18(pANT18ベクターは、上記プラスミドpANT15と、SpeI/PciI制限酵素部位を導入したpANT13由来の軽鎖カセットをベースとする)に導入するとともに、エレクトロポレーション法を用いてCHO/dhfr−細胞(ECACC, 94060607)に形質移入し、ヒポキサチン及びチミジン枯渇培地(L−グルタミンのピルビン酸Na添加の高グルコースDMEM(Invitrogen, Paisley, UK)、プラス5%透析FBS(カタログ番号26400-044 Invitrogen, Paisley, UK)、プラスプロリン(Sigma, Poole, UK)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, Paisley, UK))でセレクションした。抗体を、上記のプロテインA親和性クロマトグラフィで精製した。精製抗体をフィルター滅菌し、4℃で保存した(PBS中、pH 7.4)。抗体濃度を、上記の通りヒトIgG1/カッパ捕捉ELISAにより計算した。
【0178】
精製抗体サンプルうち3つについて、上記の通り競合ELISAを用いて、MDA−MB−231細胞発現ヒトCD59への結合を試験した。様々な濃度の各抗体(156 ng/mL to 5 μg/mL)を、精製マウスAR36A36.11.1と混合し、固定化MDA−MB−231細胞で被覆したマイクロタイタープレートに添加した。マウスAR36A36.11.1の結合を、上記の通りヤギ抗−マウスIgG(Fc):HRP複合体で検出した。450nmの吸収を、プレートリーダーで測定し、これを試験抗体濃度に対してプロットした。マウスAR36A36.11.1のMDA−MB−231細胞への結合を50%まで阻害するのに必要な、セレクションした変異体の濃度(IC50)を計算し、キメラ抗体と比較した。
【0179】
リード変異体ヒト化抗体及びキメラのIC50は、以下の通りである。
【表1】
【実施例8】
【0180】
マウスAR36A36.11.1、(ch)AR36A36.11.1及びヒト化変異体、(hu)AR36A36.11.1の細胞ELISA
3つのリードヒト化変異体、キメラ及びマウスAR36A36.11.1と共にアイソタイプコントロールについて、細胞ELISAを用いて、MDA−MB−231細胞発現ヒトCD59結合への結合を試験した。MDA−MB−231細胞を、使用前に播種及び固定化した。プレートを、MgCl2 及び CaCl2 含有PBSを用いて2回、室温で洗浄した。PBSで希釈した100μLの2%パラホルムアルデヒドを、各ウェルに室温で10分間添加し、その後破棄した。プレートを再びMgCl2 及び CaCl2 含有PBSで3回、室温で洗浄した。洗浄バッファ(PBSプラス0.05%Tween)中の100μL/ウェルの5%ミルクを用いて、1時間室温でブロッキングを行った。プレートを洗浄バッファで3回洗浄し、様々な濃度の各抗体(0.3 ng/mL から 10 μg/mL)を、洗浄バッファ(PBSプラス0.05%Tween)中の100μL/ウェルの1%ミルクに添加した。プレートを洗浄バッファで3回洗浄し、セイヨウワサビパーオキシダーゼ(5%ミルク含有のPBS中で希釈したもの)と複合化した、100μL/ウェルの1/10,000希釈のヤギ抗−マウスIgG又はヤギ抗−ヒトIgG抗体を添加した。室温で1時間インキュベーション後、プレートを洗浄バッファで3回洗浄し、100μL/ウェルのTMB基質を、室温で1〜3分インキュベートした。反応を、100μL/ウェル 2M H2SO4で停止させ、プレートをSoftmax Pro ソフトウェアを用いるSpectramax M5 (Molecular Devices)により、595nmの吸収を差し引き、450nmで測定をした。50%までMDA−MB−231細胞に結合する抗体を計算した(図25)。3つの変異体ヒト化抗体、キメラ及びマウスAR36A36.11.1についてのEC50は、以下の通りである。
【表2】
【実施例9】
【0181】
抗体AR36A36.11.1のマウス及びヒト化変異体のインビボ補体依存性細胞毒性(CDC)活性の実証
マウスAR36A36.11.1の治療有効性は、ヒト乳癌の異種移植腫瘍モデルにおいて既に実証されている(米国特許出願第11/067,366号及び前記の実施例2及び3で開示)。作用の可能性ある機序を解明すると共に、AR36A36.11.1のヒト化クローンのインビボ有効性を実証するために、CDC活性を、ヒト乳癌細胞系列MDA−MB−231で評価する。播種後2日目に樹立された(established)MDA−MB−231細胞の単層を、マウス(20μg/mL)及びヒト化(2、0.2及び0.02μg/mL)抗体の両方で処理し、1時間結合させた(37℃、5%CO2)。ウサギ補体を、終濃度10%(v/v)とするために添加し、さらに3時間37℃、5%CO2でインキュベートさせた。CDC活性を、Cytotox 96(商標)(Promega Corporation, Madison, WI, USA)を用いて、未処理(uncompromised)細胞の存在下で残存乳酸ジヒドロゲナーゼを測定することにより評価した。各試験抗体を三重に評価するとともに、その結果をウサギ補体のみで処理したウェルと以下の等式を用いて比較し、細胞毒性割合として表現した。
【数1】
【0182】
この実験から得られる結果(図26)は、AR36A36.11.1のヒト化変異体クローンは、MDA−MB−231標的細胞中で用量依存的に、ウサギ補体をリクルートできることを実証する。最高濃度(20μg/mL)でのアイソタイプ一致のコントロールでは、乳癌においてCDC活性は観察されなかった。このデータは、マウスAR36A36.11.1の補体依存性活性が、ヒト化プロセスの間に変換されていることを実証する。
【実施例10】
【0183】
競合的バインダーの単離
抗体があれば、当業者は個々に、競合的に阻害するCDMAB、例えば競合抗体を作製でき、これは同じエピトープを認識するものである(Belanger L et al. Clinica Chimica Acta 48:15-18 (1973))。ある1の方法には、当該抗体に認識される抗原を発現する免疫原で免疫化することが必要となる。このサンプルには、組織に限定するものではないが、(1又は複数の)単離タンパク質又は(1又は複数の細胞系列が含まれる。得られたハイブリドーマは競合アッセイを用いてスクリーニングすることができ、前記アッセイは、試験抗体の結合を阻害する抗体を認識するもの、例えばELISA、FACS又はウェスタンブロッティングがある。別の方法は、ファージディスプレイ抗体ライブラリーを使用でき、前記抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体を選別することができる(Rubinstein JL et al. Anal Biochem 314:294-300 (2003))。いずれの事例においても、抗体を、起源標識抗体の結合を、その標的抗原の少なくとも1つのエピトープに置換できる性質に基づき選択する。従って、かかる抗体は、起源抗体として抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する特徴を有することになる。
【実施例11】
【0184】
AR36A36.11.1モノクローナル抗体の可変領域のクローニング
AR36A36.11.1ハイブリドーマ細胞系列から産生されたモノクローナル抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)由来の可変領域の配列を決定した(上記実施例7に開示の通り)。キメラ及びヒト化IgGを作製するため、可変軽ドメイン及び可変重ドメインは、発現に適するベクターにサブクローンできる(上記実施例7に開示の通り)。
【0185】
別の実施態様によれば、AR36A36.11.1又はその脱免疫化、キメラ又はヒト化変異体を、抗体を発現するとともに回収できるように、トランスジェニック動物において抗体をコードする核酸を発現することにより作製した。例えば、抗体は、回収及び精製を促進するような組織特異的な方法で発現できる。かかる実施態様の1つによれば、本発明の抗体を、泌乳の際の分泌のための乳腺において発現する。トランスジェニック動物には、限定するものではないが、マウス、ヤギ及びウサギがある。
【0186】
(i)モノクローナル抗体
DNAがコードするモノクローナル抗体(上記実施例7に開示の通り)は、従来手法を用いて、容易に単離及び配列決定される(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として機能する。単離されると、DNAは、発現ベクター中に入れることができるが、当該ベクターはその後宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞等であって、他に免疫グロブリンタンパク質を作製しないものに形質移入され、組み換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成において得られる。DNAはまた修飾されてもよく、例えば、相同マウス配列の代わりに、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換することにより行う。キメラ又はハイブリッド抗体はまた、合成タンパク質化学における既知の方法を用いてインビトロで調製してもよく、架橋剤関連のもの等がある。例えば、免疫毒を、チオエーテル結合によるジスルフィド交換反応を用いて構築してもよい。この目的のための好適な試薬の例としては、イミノチオレート(iminothiolate)及びメチル−4−メルカプトブチルイミデートがある。
【0187】
(ii)ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト供給源からそれに導入される1又は複数のアミノ酸を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート(import)」残基と言われ、典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列についての齧歯類のCDR又はCDR配列を置換することにより、Winter及びその共同研究者の方法を用いて実施できる(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988); reviewed in Clark, Immunol. Today 21:397-402 (2000))。
【0188】
ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の3次元モデルを用い、親配列及び様々な概念上のヒト化産物の解析のプロセスにより調製できる。3次元免疫グロブリンモデルは、通常利用可能であるとともに、当業者に知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の、可能性ある3次元立体配座を、例示及び表示するコンピュータプログラムを利用できる。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能化において、可能性ある残基の役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析が可能となる。このように、FR残基は、所望の抗体特徴、例えば(1又は複数の)標的抗原に対する向上した親和性等が達成されるように、コンセンサス及びインポート配列から、選択及び組み合わせることができる。一般的にCDR残基は、抗原結合への影響因子に直接的及び最も実質的に関与する。
【0189】
(iii)抗体断片
様々な技術が、抗体断片の作製のために開発されている。これらの断片は、組み換え宿主細胞により作製できる(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11:548-557 (1999); Little et al., Immunol. Today 21:364-370 (2000)に概説されている)。例えば、Fab'−SH断片は、E.coliから直接回収できるとともに、キメラ的にF(ab')2断片に結合できる(Carter et al., Biotechnology 10:163-167 (1992))。別の実施態様によれば、F(ab')2は、F(ab')2分子の集積を促進するロイシンジッパーGCN4を用いて行われる。別のアプローチによれば、Fv、Fab又はF(ab')2断片は、組み換え宿主細胞培養物から直接単離できる。
【実施例12】
【0190】
本発明の抗体を含んでなる組成物
本発明の抗体は、癌の予防/治療のための組成物として使用できる。本発明の抗体を含んでなる癌の予防/治療のための組成物は、それらを液体調製物の状態で、又はヒトもしくは哺乳類(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に適する医薬組成物として、経口又は非経口で(例えば、脈管内、腹腔内、皮下等)投与できる。本発明の抗体は、それ自身を投与してもよいし、適切な組成物として投与してもよい。投与用に使用される組成物は、本発明の抗体又はその塩とともに医薬的に許容可能な担体を、そして希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。かかる組成物は経口又は非経口投与に適する医薬製剤の形態で投与される。
【0191】
非経口投与のための組成物の例としては、注射用製剤、坐剤等が挙げられる。注射用製剤には、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴、関節内注射等の投薬形態があり得る。これらの注射用製剤は周知の方法で調製できる。例えば、注射用製剤は、本発明の抗体又はその塩を、注射用として従来から使用されている滅菌水媒体又は油性媒体中に、溶解、懸濁又は乳化させることにより調製してもよい。注射用の水性媒体としては、例えば生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張溶液等があり、アルコール(例えばエタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物))等の適切な可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。油性媒体としては、ゴマ油、ダイズ油等が使用され、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤との組み合わせで使用してもよい。そして、注射剤は通常、適切なアンプルに充填される。直腸投与用の坐剤は、本発明の抗体又はその塩を、坐剤用の従来基材と混合することにより調製してもよい。経口投与のための組成物には、固体又は液体製剤が含まれ、特に錠剤(糖衣錠及びフィルムコート錠剤がある)、丸剤、顆粒、粉末製剤、カプセル(軟カプセルがある)、シロップ、エマルション、懸濁物等が挙げられる。当該組成物は周知の方法で製造され、医薬製剤の分野で従来から使用されるビヒクル、希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。錠剤用のビヒクル又は賦形剤の例としては、乳糖、スターチ、スクロース、ステアリン酸マグネシウム等がある。
【0192】
有利なことには、上記の経口又は非経口使用のための組成物は、活性成分の用量に適合する適切な単位用量での医薬製剤を調製する。かかる単位用量製剤には、例えば錠剤、丸薬、カプセル、注射(アンプル剤)、坐剤等がある。前述の含有される化合物の量は、一般的に投薬単位形態当たり5〜500 mgである。特に注射の形態では上記抗体が約5〜約100 mgで含まれ、その他の形態では10〜250 mgであることが好ましい。
【0193】
本発明の抗体を含んでなる、前述の予防的/治療的な剤又は調節因子の用量は、投与される対象、標的疾患、症状、投与経路等によって変動し得る。例えば成人の乳癌の治療/予防の目的で使用する場合、本発明の抗体を用量として約0.01〜約20 mg/体重kgで、好ましくは約0.1〜約10 mg/体重kgで、より好ましくは約0.1〜約5 mg/体重kgで、頻度として約1〜5回/日で、好ましくは約1〜3回/日、静脈内に投与することが有利である。他の非経口及び経口投与においては、剤を上記に示した用量に対応する用量で投与できる。症状が特に重篤な場合は、その症状によって用量を増加してもよい。
【0194】
本発明の抗体は、そのままで投与しても、適切な組成物の形態で投与してもよい。投与のために使用される組成物は、前述の抗体又はその塩と共に、医薬的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。かかる組成物は、経口又は非経口投与(例えば静脈注入、皮下注入等)に適した医薬製剤の形態で提供される。上記の各組成物は、他の活性成分をさらに含有してもよい。さらに、本発明の抗体は、他の薬物との組み合わせで使用してもよく、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド等)、代謝性アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート、5−フルオロウラシル等)、抗腫瘍抗体(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン等)、植物誘導性抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール等)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカン等がある。本発明の抗体は及び上記の薬物は、患者に対して同時に投与しても、時間差で投与してもよい。
【0195】
本明細書で記載の方法、特に癌については、他の抗体又は化学療法剤を共に投与してもよい。例えば、特に、結腸癌を治療する場合は、EGFRに対する抗体、例えばERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)等を投与してもよい。ERBITUX(登録商標)は、乾癬の治療にも有用である。組み合わせ使用としての他の抗体には、特に乳癌治療にはHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、特に結腸癌治療にはAVASTIN(登録商標)、及び非小細胞肺癌の治療にはSGN−15がある。本発明の抗体の、他の抗体/化学療法剤を伴う投与は、同時でも、又は別々でもよく、経路が同じでも異なってもよい。
【0196】
利用される化学療法剤/他の抗体レジメには、患者の症状の治療に最適と考えられる任意のレジメが含まれる。異なる悪性疾患に対し、個々の患者基準で決定されるはずの、特異的抗腫瘍抗体及び特異的化学療法剤の使用を要請できる。本発明の好ましい実施態様によれば、化学療法を投与し、同時に、より好ましくはその後に抗体治療を行う。ただし、本発明は、投与について任意の特定の方法又は経路に限定しない。
【0197】
AR36A36.11.1が、CD59に存在するエピトープのライゲーションを通して抗癌の効果を媒介すると共に、生存を延長することを、多数の証拠が示している。米国特許出願第11/361,153号に開示の通り、AR36A36.11.1抗体は、MDA−MB−231細胞等の発現細胞由来の同属抗原を、免疫沈降に使用できることは既に示されている。さらに、AR36A36.11.1、キメラAR36A36.11.1又はヒト化変異体、(hu)AR36A36.11.1は、限定するものではないが、FACS、細胞ELISA又はIHCにより例示される技術を利用して、それに特異的に結合するCD59抗原成分を発現する、細胞及び/又は組織において使用できる。
【0198】
AR36A36.11.1抗体と同様に、他の抗−CD59抗体は、CD59の他の形態を免疫沈降及び単離するために使用できると共に、当該抗原はまた、同じタイプのアッセイを用いて、抗原を発現する細胞又は組織に対するこれらの抗体の結合を阻害するために使用される。
【表3】
【0199】
本明細書中で述べられた全ての特許文献及び刊行物は、本発明の属する技術分野の、通常の知識を有する者に対するレベルの指標となる。全ての特許文献及び刊行物は、個々の刊行物が具体的且つ個別的に参照により組み込まれると指示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0200】
本発明の特定の形態が例示されているが、これは本明細書で記載及び示されている部分の、具体的な形態又は順序に限定するものではないと解すべきである。本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更がなされるとともに、本発明が明細書中に示し、記載したものに限定されると考えられないことは、当業者にとって明らかである。
【0201】
当業者であれば、本発明を、目的を実施し、及び上述の結果と利益、並びにその固有のものを得るために十分適応させることは容易に理解できるはずである。本明細書中で記載した、いずれかのオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物的関連化合物、方法、手法、及び技術は、現在のところの好ましい実施態様の代表例であり、例とする意図であるが、その範囲を限定する意図はない。この中における変更及び他の使用は当業者であれば想到できるはずであり、本発明の精神の範囲内に包含されるとともに、添付の請求の範囲により規定されるものである。本発明は特定の好ましい実施態様との関連で記載されているが、請求された本発明がかかる特定の実施態様に過度に限定されるべきではないことは当然理解されるはずである。実際、当業者に自明な発明の実施のための記載の様式の様々な変更は、以下の請求の範囲内であることを意図している。
【0202】
【表4】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における、ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍の低減方法であって、ここで当該ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、当該哺乳類の乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与するステップを含んでなる方法。
【請求項2】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項1の方法。
【請求項3】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項2の方法。
【請求項4】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項1の方法。
【請求項6】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項1の方法。
【請求項8】
哺乳類における、抗体誘導性細胞毒性の影響を受けやすいヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍の低減方法であって、ここで当該ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、当該哺乳類の乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与するステップを含んでなる方法。
【請求項9】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項8の方法。
【請求項10】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項9の方法。
【請求項11】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項8の方法。
【請求項12】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項8の方法。
【請求項13】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項8の方法。
【請求項14】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項8の方法。
【請求項15】
哺乳類における、ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍の低減方法であって、ここで当該ヒト乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、モノクローナル抗体又はそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と共に、当該哺乳類の乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与するステップを含んでなる方法。
【請求項16】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項15の方法。
【請求項17】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項16の方法。
【請求項18】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項15の方法。
【請求項19】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項15の方法。
【請求項20】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項15の方法。
【請求項21】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項15の方法。
【請求項22】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のための使用であって、ここで当該ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、当該哺乳類の乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与することを含んでなる使用。
【請求項23】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項22の方法。
【請求項24】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項22の方法。
【請求項26】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項22の方法。
【請求項27】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項22の方法。
【請求項28】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項22の方法。
【請求項29】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のためのモノクローナル抗体の使用であって、ここで当該ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と共に、当該哺乳類の乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与することを含んでなる使用。
【請求項30】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項29の方法。
【請求項31】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項30の方法。
【請求項32】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項29の方法。
【請求項33】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項29の方法。
【請求項34】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項29の方法。
【請求項35】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項29の方法。
【請求項36】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のためのプロセスであって、ここで当該ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍が、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合するヒトCD59抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、前記ヒト腫瘍に罹患する個体に、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体が結合するものと同じ1又は複数のエピトープと結合する、少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを投与するステップを含んでなり、ここで、当該1又は複数のエピトープの結合は、乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍量を低減させる、プロセス。
【請求項37】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のためのプロセスであって、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体に特異的に結合するヒトCD59抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するプロセスであり、前記ヒト腫瘍に罹患する個体に、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体が結合するものと同じ1又は複数のエピトープと結合する、少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と共に投与するステップを含んでなり、ここで、当該投与は腫瘍量を低減させる、プロセス。
【請求項38】
哺乳類において、ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍を治療することにより生存期間の延長及び疾患進行の遅延のための方法であって、ここで当該腫瘍は、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と特異的に結合する抗原、又は当該モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片を発現するものであり、当該哺乳類に、モノクローナル抗体を、哺乳類の腫瘍量の低減のための有効量投与し、それによって疾患の進行が遅延するとともに生存期間が延長することを含んでなる方法。
【請求項39】
哺乳類において、ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍を治療することにより生存期間の延長及び疾患進行の遅延のための方法であって、ここで当該腫瘍は、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と特異的に結合するCD59、又は当該モノクローナル抗体から作製されるCD59結合断片を発現するものであり、当該哺乳類に、モノクローナル抗体を、哺乳類の腫瘍量の低減のための有効量投与し、それによって疾患の進行が遅延するとともに生存期間が延長するステップを含んでなる方法。
【請求項40】
細胞表面でCD59のエピトープを少なくとも1つ発現する癌性細胞の相補体依存性細胞毒性を誘導する方法であって、少なくとも1つのエピトープが、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片と結合した場合に、細胞毒性をもたらすとともに、以下のステップ、
280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片を用意するステップ、及び
当該単離モノクローナル抗体又は当該抗原結合断片と、癌性細胞とを接触させるステップを含んでなり、
ここで、単離モノクローナル抗体又は抗原結合断片が、TROP−2のエピトープの少なくとも1つと結合することにより細胞毒性が発生する方法。
【請求項41】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項40の方法。
【請求項42】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項41の方法。
【請求項43】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項40の方法。
【請求項44】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項40の方法。
【請求項45】
前記単離されたモノクローナル抗体が、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項40の方法。
【請求項46】
前記単離されたモノクローナル抗体が、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項40の方法。
【請求項47】
細胞表面でCD59のエピトープを少なくとも1つ発現する癌性細胞の相補体依存性細胞毒性を誘導する方法であって、少なくとも1つのエピトープが、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片と結合した場合に、細胞毒性をもたらすとともに、以下のステップ、
280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片の結合を競合的に阻害する単離モノクローナル抗体を用意し、それにCD59のエピトープの少なくとも1つが結合すると、細胞毒性が誘導されるステップ、及び
当該単離モノクローナル抗体又は当該抗原結合断片と、癌性細胞とを接触させるステップを含んでなり、
ここで、単離モノクローナル抗体又は抗原結合断片が、CD59のエピトープの少なくとも1つと結合することにより細胞毒性が発生する、方法。
【請求項48】
受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体と、1又は複数の同じエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項49】
ヒトCD59に特異的に結合する、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABであって、ここで当該単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のヒトCD59のエピトープと反応するものであり、その標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とする、単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB。
【請求項50】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のエピトープを認識する、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABであって、1又は複数のその標的エピトープへの当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とする、単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB。
【請求項51】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域、並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域、を含んでなるモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項52】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域;並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域;並びにヒト抗体の重鎖又は軽鎖由来の可変ドメインフレームワーク領域、又はヒト抗体コンセンサスフレームワーク、を含んでなるモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項53】
配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項54】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するヒト化抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域、並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域、を含んでなるモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項55】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するヒト化抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域;並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域;並びにヒト抗体の重鎖又は軽鎖由来の可変ドメインフレームワーク領域、又はヒト抗体コンセンサスフレームワーク、を含んでなるモノクローナル抗体又はそのヒトCD59結合断片
【請求項56】
配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するヒト化抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項57】
配列番号9の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するヒト化抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項58】
配列番号9の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号10から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するヒト化抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項59】
ヒトの膵臓、前立腺、卵巣、乳房又は結腸の腫瘍を治療するために有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、56、57又は58のいずれか1項に記載の抗体又はCDMAB;
前記抗体又はその抗原結合断片と、細胞毒性成分、酵素、放射活性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター成分及び血行性細胞からなる群から選択される物質との複合体;及び
必要量の医薬的に許容可能な担体;
の組み合わせを含んでなり、
ここで、当該組成物はヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効である組成物。
【請求項60】
ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、56、57又は58のいずれか1項に記載の抗体又はCDMAB;及び必要量の医薬的に許容可能な担体;の組み合わせを含んでなり、当該組成物はヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効である組成物。
【請求項61】
ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、56、57又は58のいずれか1項に記載の抗体又はCDMABと、細胞毒性成分、酵素、放射活性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター成分及び血行性細胞からなる群から選択される物質との複合体;及び
必要量の医薬的に許容可能な担体;
の組み合わせを含んでなり、ここで当該組成物はヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効である組成物。
【請求項62】
ヒト癌性腫瘍の存在を検出するためのアッセイキットであって、当該ヒト癌性腫瘍は、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該キットは、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMAB、及び特定のカットオフレベルでのポリペプチドの存在がヒト癌性腫瘍の存在の兆候であるポリペプチドに対して、モノクローナル抗体又はそのCDMABが結合するかを検出する手段を含んでなるキット。
【請求項1】
哺乳類における、ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍の低減方法であって、ここで当該ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、当該哺乳類の乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与するステップを含んでなる方法。
【請求項2】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項1の方法。
【請求項3】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項2の方法。
【請求項4】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項1の方法。
【請求項6】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項1の方法。
【請求項8】
哺乳類における、抗体誘導性細胞毒性の影響を受けやすいヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍の低減方法であって、ここで当該ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、当該哺乳類の乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与するステップを含んでなる方法。
【請求項9】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項8の方法。
【請求項10】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項9の方法。
【請求項11】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項8の方法。
【請求項12】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項8の方法。
【請求項13】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項8の方法。
【請求項14】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項8の方法。
【請求項15】
哺乳類における、ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍の低減方法であって、ここで当該ヒト乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、モノクローナル抗体又はそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と共に、当該哺乳類の乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与するステップを含んでなる方法。
【請求項16】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項15の方法。
【請求項17】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項16の方法。
【請求項18】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項15の方法。
【請求項19】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項15の方法。
【請求項20】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項15の方法。
【請求項21】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項15の方法。
【請求項22】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のための使用であって、ここで当該ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、当該哺乳類の乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与することを含んでなる使用。
【請求項23】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項22の方法。
【請求項24】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項23の方法。
【請求項25】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項22の方法。
【請求項26】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項22の方法。
【請求項27】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項22の方法。
【請求項28】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項22の方法。
【請求項29】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のためのモノクローナル抗体の使用であって、ここで当該ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマ細胞系列により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該哺乳類に、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と共に、当該哺乳類の乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍量を低減させる有効量で投与することを含んでなる使用。
【請求項30】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項29の方法。
【請求項31】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項30の方法。
【請求項32】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項29の方法。
【請求項33】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項29の方法。
【請求項34】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項29の方法。
【請求項35】
前記単離されたモノクローナル抗体が、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項29の方法。
【請求項36】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のためのプロセスであって、ここで当該ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍が、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合するヒトCD59抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、前記ヒト腫瘍に罹患する個体に、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体が結合するものと同じ1又は複数のエピトープと結合する、少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを投与するステップを含んでなり、ここで、当該1又は複数のエピトープの結合は、乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍量を低減させる、プロセス。
【請求項37】
ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍の低減のためのプロセスであって、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体に特異的に結合するヒトCD59抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するプロセスであり、前記ヒト腫瘍に罹患する個体に、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体が結合するものと同じ1又は複数のエピトープと結合する、少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と共に投与するステップを含んでなり、ここで、当該投与は腫瘍量を低減させる、プロセス。
【請求項38】
哺乳類において、ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍を治療することにより生存期間の延長及び疾患進行の遅延のための方法であって、ここで当該腫瘍は、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と特異的に結合する抗原、又は当該モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片を発現するものであり、当該哺乳類に、モノクローナル抗体を、哺乳類の腫瘍量の低減のための有効量投与し、それによって疾患の進行が遅延するとともに生存期間が延長することを含んでなる方法。
【請求項39】
哺乳類において、ヒトの乳房、膵臓、卵巣、前立腺又は結腸の腫瘍を治療することにより生存期間の延長及び疾患進行の遅延のための方法であって、ここで当該腫瘍は、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と特異的に結合するCD59、又は当該モノクローナル抗体から作製されるCD59結合断片を発現するものであり、当該哺乳類に、モノクローナル抗体を、哺乳類の腫瘍量の低減のための有効量投与し、それによって疾患の進行が遅延するとともに生存期間が延長するステップを含んでなる方法。
【請求項40】
細胞表面でCD59のエピトープを少なくとも1つ発現する癌性細胞の相補体依存性細胞毒性を誘導する方法であって、少なくとも1つのエピトープが、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片と結合した場合に、細胞毒性をもたらすとともに、以下のステップ、
280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片を用意するステップ、及び
当該単離モノクローナル抗体又は当該抗原結合断片と、癌性細胞とを接触させるステップを含んでなり、
ここで、単離モノクローナル抗体又は抗原結合断片が、TROP−2のエピトープの少なくとも1つと結合することにより細胞毒性が発生する方法。
【請求項41】
前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性成分と複合化された、請求項40の方法。
【請求項42】
前記細胞毒性成分が放射性同位体である、請求項41の方法。
【請求項43】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、補体を活性化する、請求項40の方法。
【請求項44】
前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項40の方法。
【請求項45】
前記単離されたモノクローナル抗体が、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のヒト化抗体、又は当該ヒト化抗体から作製された抗原結合断片である、請求項40の方法。
【請求項46】
前記単離されたモノクローナル抗体が、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生された単離モノクローナル抗体のキメラ抗体、又は当該キメラ抗体から作製された抗原結合断片である、請求項40の方法。
【請求項47】
細胞表面でCD59のエピトープを少なくとも1つ発現する癌性細胞の相補体依存性細胞毒性を誘導する方法であって、少なくとも1つのエピトープが、280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片と結合した場合に、細胞毒性をもたらすとともに、以下のステップ、
280104−02としてIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又は当該単離モノクローナル抗体から作製される抗原結合断片の結合を競合的に阻害する単離モノクローナル抗体を用意し、それにCD59のエピトープの少なくとも1つが結合すると、細胞毒性が誘導されるステップ、及び
当該単離モノクローナル抗体又は当該抗原結合断片と、癌性細胞とを接触させるステップを含んでなり、
ここで、単離モノクローナル抗体又は抗原結合断片が、CD59のエピトープの少なくとも1つと結合することにより細胞毒性が発生する、方法。
【請求項48】
受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体と、1又は複数の同じエピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項49】
ヒトCD59に特異的に結合する、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABであって、ここで当該単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが、IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のヒトCD59のエピトープと反応するものであり、その標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とする、単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB。
【請求項50】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のエピトープを認識する、単離モノクローナル抗体又はそのCDMABであって、1又は複数のその標的エピトープへの当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とする、単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB。
【請求項51】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域、並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域、を含んでなるモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項52】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域;並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域;並びにヒト抗体の重鎖又は軽鎖由来の可変ドメインフレームワーク領域、又はヒト抗体コンセンサスフレームワーク、を含んでなるモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項53】
配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項54】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するヒト化抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域、並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域、を含んでなるモノクローナル抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項55】
IDAC受託番号280104−02を有するハイブリドーマ細胞系列AR36A36.11.1により産生される単離モノクローナル抗体と同じ1又は複数のCD59のエピトープと特異的に結合するヒト化抗体であって、
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域;並びに配列番号4、配列番号5、又は配列番号6の相補性決定領域アミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域;並びにヒト抗体の重鎖又は軽鎖由来の可変ドメインフレームワーク領域、又はヒト抗体コンセンサスフレームワーク、を含んでなるモノクローナル抗体又はそのヒトCD59結合断片
【請求項56】
配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するヒト化抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項57】
配列番号9の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するヒト化抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項58】
配列番号9の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号10から選択される軽鎖可変アミノ酸配列を含んでなる、ヒトCD59に特異的に結合するヒト化抗体、又はそのヒトCD59結合断片。
【請求項59】
ヒトの膵臓、前立腺、卵巣、乳房又は結腸の腫瘍を治療するために有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、56、57又は58のいずれか1項に記載の抗体又はCDMAB;
前記抗体又はその抗原結合断片と、細胞毒性成分、酵素、放射活性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター成分及び血行性細胞からなる群から選択される物質との複合体;及び
必要量の医薬的に許容可能な担体;
の組み合わせを含んでなり、
ここで、当該組成物はヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効である組成物。
【請求項60】
ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、56、57又は58のいずれか1項に記載の抗体又はCDMAB;及び必要量の医薬的に許容可能な担体;の組み合わせを含んでなり、当該組成物はヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効である組成物。
【請求項61】
ヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効な組成物であって、
請求項1、2、3、6、7、8、17、49、50、54、55、56、57又は58のいずれか1項に記載の抗体又はCDMABと、細胞毒性成分、酵素、放射活性化合物、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター成分及び血行性細胞からなる群から選択される物質との複合体;及び
必要量の医薬的に許容可能な担体;
の組み合わせを含んでなり、ここで当該組成物はヒトの乳房、前立腺、肺又は結腸の腫瘍を治療するために有効である組成物。
【請求項62】
ヒト癌性腫瘍の存在を検出するためのアッセイキットであって、当該ヒト癌性腫瘍は、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMABであって、標的抗原への当該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害できることを特徴とするCDMABに、特異的に結合する抗原のエピトープを少なくとも1つ発現するものであり、当該キットは、受託番号280104−02でIDACに寄託されたハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体、又はそのCDMAB、及び特定のカットオフレベルでのポリペプチドの存在がヒト癌性腫瘍の存在の兆候であるポリペプチドに対して、モノクローナル抗体又はそのCDMABが結合するかを検出する手段を含んでなるキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2010−530361(P2010−530361A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509638(P2010−509638)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000977
【国際公開番号】WO2008/144889
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000977
【国際公開番号】WO2008/144889
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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