説明

CDMA信号解析装置

【課題】表示器にグラフィック表示されたコード・ドメインパワー特性から異常発生したチャネルを一瞥して把握する。
【解決手段】 被測定信号からチップデータを作成する(10)。チップデータを逆拡散して各チャネルのシンボルデータとして出力する(22)。各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルのコード・ドメインパワーを算出する(24)。ドメインパワー特性(31)を表示器に表示する(29)。各チャネルのコード・ドメインエラーを算出する(25)。各チャネルのコード・ドメインエラーのうち予め設定されたしきい値を超えるコード・ドメインエラーを指定する(28)。コード・ドメインパワー特性における各チャネルのコード・ドメインパワーのうちのしきい値を超えるコード・ドメインエラーのチャネルに対応するチャネルのコード・ドメインパワーを強調表示する(29)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力された被測定信号であるCDMA信号の各拡散ファクターの各チャネルにおける信号を解析するCDMA信号解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代の移動通信システムにおける無線通信方式の一つとして、W―CDMA(Wideband Code Division Multiple Access 広帯域符号分割多元接続)が提唱されている。この通信方式を用いる場合、基地局と移動局(携帯電話)との間で送受される信号内には、W―CDMAの通信規格(3GPP)に従って送受信される多数のデータが多重化されて組込まれている。
【0003】
図4に、W―CDMAにおける送信側の各送信データD0〜Dnの多重化手法を示す。各送信データD0〜Dnは、変調部1で例えばQPSK等の変調方式で位相変調され、拡散部2においてそれぞれ異なる拡散コード(直交可変拡散符号)w0〜wnでコード拡散されたのち、加算器3で加算された後、スクランブル回路4にてスクランブルコードが乗算されて、3.84MHzのチップ(chip)データとして高周波回路5で高周波信号に変換されてアンテナ6から電波出力される。
【0004】
次に、拡散部2において各送信データD0〜Dnを拡散する拡散コードの構成を図5を用いて説明する。このCDMA方式の拡散コードは図示するようにツリー構造に構成されており、拡散コード7の拡散コード長4、8、16、32、64、128、256、512に応じてそれぞれ拡散ファクター(Spreading Factor)8(SF4、SF8、SF16、SF32、SF64、SF128、SF256、SF512)が定義されている。なお、図5においては、SF32〜SF512の各拡散ファクター8は省略されている。
【0005】
それぞれの拡散ファクター8には、所属する拡散コード7の拡散コード長分の拡散コード7が割付られている。例えば、拡散ファクターSF8には、チャネルCH0〜CH7のそれぞれ符号長を8で構成する合計8個の拡散コード7が一定法則に従って割付られている。
【0006】
W―CDMAにおいて送信側から出力されるデータの伝送速度は固定(3.84Mcpsであり、1フレーム長(時間)も固定(10ms)であるので、この1フレームに含まれるチップデータ数も一定(=38400)である。したがって、送信側において、送信すべきデータの数と、データ(情報)の種類(英数データ、音声、画像etc)によって、採用する拡散コード7の符号長(拡散ファクター8)を選択設定する。
【0007】
この場合、選択された拡散コード7から分岐した(枝分かれした)下位の拡散ファクター8に所属する全部の拡散コード7、及び選択された拡散コード7の上位の系列の各拡散コード7は選択禁止となる。これは、自己の拡散コード7と自己から枝分かれした下位の拡散ファクター8の拡散コード7又は自己の上位の系列の拡散コード7とが同時に選択されると、逆拡散した場合に、どの拡散コード7で拡散された送信データであるかの区別が付かないからである。
【0008】
したがって、このツリー構造に構成された拡散コード群における拡散部2に採用可能な拡散コード7の最大数は512となる。
【0009】
W―CDMAにおける送信側の各送信データD0〜Dnは、変調部1にて、QPSK(Quadrature phase shift keying 4位相偏移変調)の変調方式で変調されている。さらに、近年、このW―CDMAを基礎として、パケット通信速度を上昇させた第3.5世代の移動通信システム(3.5G)のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の規格が検討されている。このHSDPAにおいては、各送信データD0〜DnはQPSKの他に16QAM(Quadrature amplitude modulation)の変調方式が採用可能である。
【0010】
したがって、このようなW―CDMAの無線通信方式を採用した移動通信システムおける基地局から各移動局(携帯電話)へ送信される電波の信号が上述した規格を満たしていることを試験する必要がある。
【0011】
なお、特許文献1には、CDMA信号における各チャネルのコード・ドメインパワーを求めて、基地局側で各送信データが割付られた(採用した)チャネルを特定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000―36802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、W―CDMAの規格を採用した第3世代の移動通信システムやHSDPAの規格を採用した第3.5世代の移動通信システムにおける基地局から各移動局(携帯電話)へ送信される電波の信号が上述した規格を満たしていることを簡単に検証できるCDMA信号解析装置の開発が望まれている。
【0013】
CDMA信号における各チャネルの特性としては、上述したコード・ドメインパワーの他に、信号の有無、信号有りの場合における変調方式、コンスタレーション、変調精度[EVM(Error Vector Magnitude )、振幅誤差、位相誤差、原点オフセット]、エラー発生率(BER Bit Error Ratio)等がある。
【0014】
そして、上述した各特性は、互いに影響を及ぼしあう。そして、一つの特性に異常値が発生すると、この特性に関係する他の特性に異常が生じているか否かを調べて、これらの各異常の発生状況を分析して、異常発生原因を究明することが望ましい。
【0015】
特に、CDMA信号における各チャネルのコード・ドメインパワーは、チャネル毎に通信先の各移動局(携帯電話)までの距離に応じてパワー値が変化するので、パワー値の大小に応じて異常発生の有無を即座に判断できない。
【0016】
しかしながら、前述した特許文献1においては、CDMA信号における各チャネルのコード・ドメインパワーを求めて、表示器にコード・ドメインパワー特性として表示していたが、各チャネルのコード・ドメインパワー以外の特性は求めていない。したがって、異常発生時において、各チャネルのコード・ドメインパワーの値のみから異常発生原因を短時間で効率的に究明することが困難であった。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、CDMA信号における各チャネルのコード・ドメインパワーに加えて、各チャネルのコード・ドメインエラーをも測定することによって、表示器にグラフィック表示されたコード・ドメインパワー特性から異常発生したチャネルを一瞥して把握でき、かつ異常発生原因を短時間で効率的に究明できるCDMA信号解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、入力された被測定信号であるCDMA信号の各拡散ファクターの各チャネルにおける信号を解析するCDMA信号解析装置に適用される。
【0019】
そして、上述した課題を解消するために、本発明のCDMA信号解析装置においては、入力された被測定信号からフレーム同期がとれたチップデータを作成する入力処理部と、入力処理部から出力されたチップデータをチャネル毎の拡散ファクターに対応する拡散コードで逆拡散して各チャネルのシンボルデータとして出力する逆拡散処理部と、逆拡散処理部から出力された各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルのコード・ドメインパワーを算出するコード・ドメインパワー算出部と、コード・ドメインパワー算出部で算出された各チャネルのコード・ドメインパワーをコード・ドメインパワー特性として表示器にグラフィック表示するパワー特性表示手段と、逆拡散処理部から出力された各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルのコード・ドメインエラーを算出するコード・ドメインエラー算出部と、このコード・ドメインエラー算出部で算出された各チャネルのコード・ドメインエラーのうち予め設定されたしきい値を超えるコード・ドメインエラーを指定するしきい値判定部と、表示器に表示されたコード・ドメインパワー特性における各チャネルのコード・ドメインパワーのうちのしきい値判定部で指定されたコード・ドメインエラーのチャネルに対応するチャネルのコード・ドメインパワーを強調表示するパワー強調表示手段とを備えている。
【0020】
このように構成されたCDMA信号解析装置においては、各チャネルのコード・ドメインパワーを算出するコード・ドメインパワー算出部の他に各チャネルのコード・ドメインエラーを算出するコード・ドメインエラー算出部を設けている。さらに、しきい値を超えるコード・ドメインエラーを指定するしきい値判定部を設けている。そして、表示されたコード・ドメインパワー特性におけるエラーがしきい値を超えたコード・ドメインパワーが強調表示される。
【0021】
したがって、表示されたコード・ドメインパワー特性から、異常発生(エラーがしきい値を超えた)チャネルと、異常発生チャネルと該当チャネルのコード・ドメインパワーとの関係とを把握でき、かつ異常発生原因を短時間で効率的に究明できる。
【0022】
また、別の発明は、上述した発明のCDMA信号解析装置に対して、さらに、コード・ドメインエラー算出部で算出された各チャネルのコード・ドメインエラーをコード・ドメインエラー特性として、表示器に対して、コード・ドメインパワー特性と同一画面上に、グラフィック表示するエラー特性表示手段と、表示器に表示されたコード・ドメインエラー特性における各チャネルのコード・ドメインエラーのうちのしきい値判定部で指定されたコード・ドメインエラーを強調表示するエラー強調表示手段とを備えている。
【0023】
このように構成されたCDMA信号解析装置においては、表示器に前述したコード・ドメインパワー特性に加えてコード・ドメインエラー特性が同一画面上で表示される。さらに、このコード・ドメインエラー特性において、しきい値を超えたコード・ドメインエラーが強調表示される。したがって、このCDMA信号解析装置を用いて試験を行う試験実施者にとって、異常発生状況をより的確に把握できる。
【0024】
また、別の発明は、上述した発明のCDMA信号解析装置に対して、さらに、逆拡散処理部から出力された各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルの変調方式を判定する変調方式判定部と、この変調方式判定部で判定された各チャネルの変調方式を変調方式一覧として表示器に表示する変調方式表示手段とを備えている。
【0025】
このように構成されたCDMA信号解析装置においては、表示器に各チャネルの変調方式が変調方式一覧として表示されているので、チャネル間のコード・ドメインエラーの差が変調方式に起因するものであるか否かが一瞥して把握でき、異常発生状況をより的確に把握できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、CDMA信号における各チャネルのコード・ドメインパワーに加えて、各チャネルのコード・ドメインエラーも測定し、表示器に表示したコード・ドメインパワー特性におけるエラーがしきい値を超えたコード・ドメインパワーを強調表示している。
【0027】
したがって、CDMA信号解析装置を用いて試験を行う試験実施者にとって、表示器に表示されたコード・ドメインパワー特性から異常発生したチャネルを一瞥して把握でき、かつ異常発生原因を短時間で効率的に究明できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施形態に係るCDMA信号解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
この実施形態のCDMA信号解析装置には、基地局から出力されたHSDPAの通信方式を採用した被測定信号aが入力される。このHSDPAの通信方式を採用した被測定信号aは、図4で説明したように、各送信データD0〜Dnを各変調部1でQPSK又は16QAMの変調方式で変調され、各拡散部2において、それぞれ図5で示した規格を有する各拡散コード7でコード拡散されて、加算器3で加算され、スクランブル回路4でスクランブル処理され、高周波回路5で高周波信号に変換されてアンテナ6から出力された一つの信号である。
【0031】
図1における、CDMA信号解析装置に入力された被測定信号aは、入力処理部10内の周波数変換部11で局部発振部(LOOSC)12からの周波数信号に基づいて中間周波数に周波数変換された後、A/D変換部13でA/D変換される。A/D変換されたデジタルの被測定信号aはI、Q分離部14でI(同相)成分とQ(直交)成分とに直交復調され、検波部15へ入力される。検波部15はI成分とQ成分とをクロック抽出部16で抽出したクロックでチップ単位のデータI、Qへ検波して次の周波数補正部17へ送出する。
【0032】
周波数補正部17は、キャリア抽出部18で抽出されたキャリアを用いて、先に中間周波数に変換した時点における周波数誤差を修正する。周波数誤差が修正されたチップ単位のデータI、Qは、次のスクランブル解除部19で前述したデスクランブルコードを乗算することにより、スクランブルが解除され、この入力処理部10からフレーム同期がとれた新たなチップデータI、Qとして、逆拡散部20へ入力される。
【0033】
逆拡散部20は、入力されたチップデータI、Qを、図5で示した各拡散ファクター8が異なる各拡散コード7で逆拡散して、複数のシンボルデータを得て、拡散率(拡散ファクター8)判定部21へ送出する。拡散率判定部21は、入力された複数のシンボルデータの拡散ファクター8及び拡散コード7から、各シンボルデータのチャネル(コード)を判定して、各送信データD0〜Dnに対応するチャネル1〜チャネルnの各チャネルの、I、Q値で示されるシンボルデータ23として出力する。
【0034】
したがって、逆拡散部20及び拡散率判定部21は、入力処理部10から出力されたチップデータをチャネル毎の拡散ファクター8に対応する拡散コード7で逆拡散して各チャネルのシンボルデータ23として出力する逆拡散処理部22を構成する。
【0035】
逆拡散処理部22から出力されたチャネル1〜チャネルnの各チャネルのシンボルデータ23は、コード・ドメインパワー算出部24、変調方式判定部26へ送出される。
【0036】
コード・ドメインパワー算出部24は、入力された各チャネルのI、Q値で示されるシンボルデータ23のパワーP(コード・ドメインパワー)を算出する。具体的には、あるコード(チャネル)のコード・ドメインパワーPは、図2に示すように、該当コード(チャネル)のシンボルデータI(同相成分)、Q(直交成分)をIQ座標上に表示した場合における座標原点からのベクトルである測定ベクトルZの2乗値で示されるパワーpの、チャネル1からチャネルnまでの全部のチャネル(コード)のパワーp1〜pnの合計値(p1+p2+…+pn)に対する比で示される。
【0037】
p=Z2=I2+Q2
P=10・log[p/(p1+p2+…+pn)] (dB)
コード・ドメインパワー算出部24は、算出した各チャネルのコード・ドメインパワーPをしきい値判定部27へ送出する。しきい値判定部27は、各チャネルのコード・ドメインパワーPが、該当チャネルの信号有無を判定するためのしきい値Ph以上か否かを判定し、しきい値Ph以上のコード・ドメインパワーPを表示制御部29へ正規のコード・ドメインパワーPとして送出する。しきい値判定部27は、しきい値Ph未満のコード・ドメインパワーPは雑音であると判定して、それ以降、「信号無し」であるとして扱う。
【0038】
さらに、しきい値判定部27は、各チャネルの信号有無の判定結果をコード・ドメインエラー算出部25、変調方式判定部26へ送出する。
【0039】
そして、表示制御部29は、n個の各チャネルのコード・ドメインパワーPを、信号有無の判定に用いたしきい値Phと共に、図3に示すように、表示器30にコード・ドメインパワー特性31としてグラフィック表示する。
【0040】
次に、各コード(チャネル)のコード・ドメインエラーCDEの定義、算出法を図2を用いて説明する。
【0041】
シンボルデータI(同相成分)、Q(直交成分)を、IQ座標上に表示した場合の測定点の座標原点からのベクトルを測定ベクトルZとし、入力されたシンボルデータの本来あるべき理想点のベクトルを理想ベクトルRとする。理想点から測定点までのベクトルを誤差ベクトルEとする。
【0042】
誤差ベクトルE=|Z―R|
前述した振幅誤差、位相誤差、原点オフセットとともに変調精度を構成するEVM(Error Vector Magnitude )は、誤差ベクトルE及び理想ベクトルRの各時間的なRMS(2乗平均値)を用いて下式で定義されている。
【0043】
EVM=[RMS(E)/RMS(R)]×100 (%)
図1に示すCDMA信号解析装置においては、理想ベクトルRは逆拡散処理部22から出力されたn個のチャネルのシンボルデータ23から作成され、測定ベクトルZ及び誤差ベクトルEは周波数補正部17から出力されたスクランブル解除前のチップ単位のデータI、Qから作成される。
【0044】
したがって、誤差ベクトルEをコード(チャネル)毎に分けるために、この誤差ベクトルEをスクランブル解除し、さらにコード逆拡散を実施する必要がある。ここで、誤差ベクトルEをスクランブル解除したものを新たな誤差ベクトルEaとし、各拡散コードSで逆拡散して、コード(チャネル1〜n)毎の誤差ベクトルを、さらに新たな誤差ベクトルEb(=Eb1、Eb2、…、Ebn)とする。
【0045】
この各コード(チャネル)の誤差ベクトルEbのRMS値をコードEVMと称する。
【0046】
コードEVM=RMS(Eb)
そして、各コード(チャネル)のコード・ドメインエラーCDEは
CDE=10・log[(RMS(Eb))2/(RMS(R))2] (dB)
となる。
【0047】
次に、理想ベクトルRの算出法を説明する。図1における逆拡散処理部22から出力されたn個のチャネルのシンボルデータ23は理想信号生成部40の理想信号作成部41へ入力される。この理想信号作成部41は、このシンボルデータ23を例えば平均化して、この平均等を参酌して、理想シンボルデータを定める。拡散処理部42でこの理想シンボルデータを拡散し、さらにスクランブル処理部43でスクランブル処理することにより、1個の理想ベクトルRを得る。理想信号生成部40は作成した理想ベクトルRをコード・ドメインエラー算出部25へ送出するとともに、最適化部44及び誤差信号作成部45へ送出する。
【0048】
次に、測定ベクトルZ及び誤差ベクトルE、各コード(チャネル)の誤差ベクトルEbの算出法を説明する。図1における周波数補正部17から出力されたスクランブル解除前のチップ単位のデータI、Qは最適化部44へ入力される。最適化部44は、データI、Qの前述したEVMが最小となるように、当該データI、Qの周波数、位相、各コードチャネルのゲイン、タイミングを調整して、調整した後のデータI、Qを最適化信号としての測定ベクトルZとする。誤差信号作成部45は、入力した測定ベクトルZと理想信号生成部40から入力された理想ベクトルRとから、誤差ベクトルEを算出する(E=|Z―R|)。
【0049】
スクランブル解除部46は、誤差ベクトルEをスクランブル解除し、新たな誤差ベクトルEaとして、逆拡散部47へ送出する。逆拡散部47は、スクランブル解除後の誤差ベクトルEaを各拡散コードSで逆拡散して、コード(チャネル1〜n)毎の誤差ベクトルEb(=Eb1、Eb2、…、Ebn)を得て、コード・ドメインエラー算出部25へ送出する。
【0050】
コード・ドメインエラー算出部25は、コード(チャネル1〜n)毎の誤差ベクトルEbから、コード(チャネル1〜n)毎のコードEVMを算出して、さらにコード(チャネル1〜n)毎の前述したコード・ドメインエラーCDEを算出する。
【0051】
実際には、コード・ドメインエラー算出部25は、逆拡散処理部22から入力されn個のチャネルのシンボルデータ23のうち、しきい値判定部27から信号ありと判定された各チャネルのシンボルデータ23のコード・ドメインエラーCDEを算出する。
【0052】
コード・ドメインエラー算出部25は、算出した信号有りの各チャネルのコード・ドメインエラーCDEをしきい値判定部28へ送出する。
【0053】
しきい値判定部28は、入力された信号有りの各チャネルのコード・ドメインエラーCDEが、予め設定されたしきい値Eh以上か否かを判定し、入力された信号有りの各チャネルのコード・ドメインエラーCDEに上述した判定情報を付加して、表示制御部29へ送出する。
【0054】
表示制御部29は、しきい値判定部28から、入力された信号有りの各チャネルのコード・ドメインエラーCDEを、図3に示すように、表示器30にコード・ドメインエラー特性32としてグラフィック表示する。この場合、予め設定されたしきい値Eh以上のコード・ドメインエラー33を例えば異なる色で強調表示する。
【0055】
さらに、表示制御部29は、表示器30に表示されたコード・ドメインパワー特性31における各チャネルのコード・ドメインパワーPのうちのコード・ドメインエラー特性32において、予め設定されたしきい値Eh以上のコード・ドメインエラー33に対応するチャネルのコード・ドメインパワー34を例えば異なる色で強調表示する。
【0056】
変調方式判定部26は、逆拡散処理部22から入力されn個のチャネルのシンボルデータ23のうち、しきい値判定部27から信号ありと判定された各チャネルのシンボルデータ23のQPSK又は16QAMの変調方式を判定する。具体的には、入力された各チャネルのI、Q値で示されるシンボルデータ23のコンスタレーションを求め、このコンスタレーションのパターンから、各チャネルのQPSK又は16QAMの変調方式を判定する。変調方式判定部26は判定した各チャネルのQPSK又は16QAMの変調方式を表示制御部29へ送出する。
【0057】
表示制御部29は、各チャネルのQPSK又は16QAMの変調方式を、図3に示すように、表示器30に変調方式一覧35として表示出力する。
【0058】
このように構成されたCDMA信号解析装置においては、図3に示すように、表示器30に、コード・ドメインエラー特性32、コード・ドメインパワー特性31、及び変調方式一覧35が同時に表示される。
【0059】
そして、コード・ドメインパワー特性31においては、チャネル1〜チャネルnまでのn個のチャネルのうちコード・ドメインパワーPがしきい値Phと同時に表示されるので、このCDMA信号解析装置を用いた試験実施者は、各チャネルの信号有無を一瞥して把握できる。
【0060】
さらに、コード・ドメインエラー特性32においては、信号有りのチャネルのコード・ドメインエラーCDEのみが表示される。なお、信号無しのチャネルのコード・ドメインエラーCDEを算出し、表示することは無意味なことである。したがって、試験実施者に不要な判断を強いることはない。さらに、予め設定されたしきい値Eh以上のコード・ドメインエラー33が強調表示されるので、試験実施者は、しきい値Eh以上のコード・ドメインエラー33のチャネルを一瞥して把握できる。
【0061】
さらに、コード・ドメインパワー特性31において、異常発生の可能性が大きい予め設定されたしきい値Eh以上のコード・ドメインエラー33に対応するチャネルのコード・ドメインパワー34が強調表示される。前述したように、各チャネルのコード・ドメインパワーPは、チャネル毎に通信先の各移動局(携帯電話)までの距離に応じてパワー値が変化するので、コード・ドメインパワーPの大小に応じて異常発生の有無を即座に判断できない。そこで、異常発生の可能性が大きいコード・ドメインパワー34を強調表示することによって、例えば、図3における左側のコード・ドメインパワー34のように、コード・ドメインパワーPが十分に大きいにも係わらず、異常発生の可能性が大きいチャネルが存在するという新たな知見を試験実施者は一瞥して把握できる。
【0062】
さらに、表示器30には変調方式一覧35が表示される。一般に、変調方式が異なれば、コード・ドメインエラーCDEも変化する。16QAMの変調方式のコード・ドメインエラーCDEの方が、QPSKの変調方式のコード・ドメインエラーCDEに比較して大きい。したがって、コード・ドメインエラー特性32における各チャネル相互間のコード・ドメインエラーCDEの変動が変調方式に起因するか否かを一瞥して把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係るCDMA信号解析装置の概略構成を示すブロック図
【図2】同実施形態のCDMA信号解析装置におけるコード・ドメインエラーの算出方法を示す図
【図3】同実施形態のCDMA信号解析装置における表示器の表示内容を示す図
【図4】一般的なW−CDMAにおける送信側の各送信データの多重化手法を示す図
【図5】ツリー構造に設定された拡散ファクターと各チャネルにおける拡散コードとの関係を示す図
【符号の説明】
【0064】
1…変調部、2…拡散部、3…加算器、4…スクランブル回路、5…高周波回路、6…アンテナ、7…拡散コード、8…拡散ファクター、10…入力処理部、11…周波数変換部、13…A/D変換部、14…I、Q分離部、19…スクランブル解除部、22…逆拡散処理部、23…シンボルデータ、24…コード・ドメインパワー算出部、25…コード・ドメインエラー算出部、26…変調方式判定部、27,28…しきい値判定部、29…表示制御部、30…表示器、31…コード・ドメインパワー特性、32…コード・ドメインエラー特性32、35…変調方式一覧、40…理想信号作成部、44…最適化部、45…誤差信号作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された被測定信号であるCDMA信号の各拡散ファクターの各チャネルにおける信号を解析するCDMA信号解析装置において、
前記入力された被測定信号からフレーム同期がとれたチップデータを作成する入力処理部(10)と、
この入力処理部から出力されたチップデータをチャネル毎の拡散ファクターに対応する拡散コードで逆拡散して各チャネルのシンボルデータとして出力する逆拡散処理部(22)と、
前記逆拡散処理部から出力された各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルのコード・ドメインパワーを算出するコード・ドメインパワー算出部(24)と、
このコード・ドメインパワー算出部で算出された各チャネルのコード・ドメインパワーをコード・ドメインパワー特性(31)として表示器にグラフィック表示するパワー特性表示手段(29)と、
前記逆拡散処理部から出力された各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルのコード・ドメインエラーを算出するコード・ドメインエラー算出部(25)と、
このコード・ドメインエラー算出部で算出された各チャネルのコード・ドメインエラーのうち予め設定されたしきい値を超えるコード・ドメインエラーを指定するしきい値判定部(28)と、
前記表示器に表示されたコード・ドメインパワー特性における各チャネルのコード・ドメインパワーのうちの前記しきい値判定部で指定されたコード・ドメインエラーのチャネルに対応するチャネルのコード・ドメインパワーを強調表示するパワー強調表示手段(29)と
を備えたことを特徴とするCDMA信号解析装置。
【請求項2】
前記コード・ドメインエラー算出部で算出された各チャネルのコード・ドメインエラーをコード・ドメインエラー特性(32)として、前記表示器に対して、前記コード・ドメインパワー特性と同一画面上に、グラフィック表示するエラー特性表示手段(29)と、
前記表示器に表示されたコード・ドメインエラー特性における各チャネルのコード・ドメインエラーのうちの前記しきい値判定部で指定されたコード・ドメインエラーを強調表示するエラー強調表示手段(29)と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のCDMA信号解析装置。
【請求項3】
前記逆拡散処理部から出力された各チャネルのシンボルデータを用いて、各チャネルの変調方式を判定する変調方式判定部(26)と、
この変調方式判定部で判定された各チャネルの変調方式を変調方式一覧(35)として前記表示器に表示する変調方式表示手段(29)と
を備えたことを特徴とする請求項2記載のCDMA信号解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−135541(P2006−135541A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321099(P2004−321099)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】