説明

CMV感染に関連する疾患の治療のための免疫毒素

本発明は、サイトメガロウイルス(CMV)感染の分野に関する。特に本発明は、CMV感染に関連する疾患を治療する上で有用な高度特異的免疫毒素に関する。CMVは、構成的なインターナリゼーションを受けるケモカイン受容体をコードする。それ故CMV感染細胞は、CMVによってコードされる構成的にインターナライズする受容体に対して高い親和性を有する免疫毒素で特異的に標的され得る。これは、CMV感染細胞による免疫毒素の効率的な取込みを確実にし、それによって、望ましくない毒性及び副作用を最小限にとどめつつ感染細胞の死滅を確実にする。さらに、本発明は、構成的にインターナライズする、CMVによってコードされる受容体を標的することによる、免疫毒素を使用してCMVの複製及び/又は増殖を阻害する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、CMV感染に関連する疾患を治療する上で有用な免疫毒素に関する。本発明はまた、薬剤としての免疫毒素の使用、免疫毒素を含有する医薬組成物及び免疫毒素を含むCMV感染の治療又は予防のためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
[背景]
サイトメガロウイルス
サイトメガロウイルス(CMV)は重要なヒト病原体であり、免疫無防備状態の患者、例えばAIDS患者、新生児、及び移植レジメンの一部として免疫抑制薬を投与された個人において疾患を引き起こすように出現する、主要な日和見病原体である。これらの個人では、急性又は再興感染におけるCMVの帰結は深刻であり得、例えば、数ある病変の中でも特に、網膜炎、脳炎及びニューモシスチスを含み得る。さらに、免疫適格性宿主では、CMVは持続的な生涯にわたる感染を確立し、それを通して様々な炎症状態、例えば心臓移植及びアテレクトミー後の冠動脈閉塞及び血管形成術後の再狭窄に結びついてきた。CMVは、宿主の急性感染の間並びに生涯にわたる潜伏期の間、白血球と相互作用する。それ自体、白血球はCMV誘導性疾患において重要な役割を果たし、感染の急性期にはウイルスの伝播のための媒体として及び生涯の潜伏期の間の定住部位として関係づけられてきた。
【0003】
CMV感染は、米国において骨髄又は固形臓器(solid organ)移植を受ける年間推定29,000人の患者の約30〜60%が罹患し、治療しない場合は移植拒絶反応、重篤な疾病、さらには死亡を引き起こす。高価な抗ウイルス薬治療がこの疾患を制御するために使用されるが、その治療は感染を排除しない。これらの治療は、患者当たり年間30,000〜50,000米ドルを要する。CMV感染は、米国では毎年約3,600人の小児において深刻な結果を引き起こし、約400人を死に至らせる。CMV感染はまた、HIV/AIDS患者を侵し、すべてのAIDS患者の推定40%がCMV感染に対する治療を必要とする。現在のところCMV感染のための有効な治療はない。ウイルス抑制薬は存在するが、強い副作用があり、感染を制御するためにしか役立たない。
【0004】
移植患者及びHIV/AIDS患者におけるCMV感染の治療のための最も一般的な薬剤は、最初は単純ヘルペスウイルス(HSV)のために開発された一般薬(generic drug)、ガンシクロビル(Ganciclovir)及びアシクロビル(Acyclovir)である。ガンシクロビル及びアシクロビルは、CMV並びにHSVにも抑制効果を有する。Gileadからのビスタイド(Vistide)は、より古い一般薬に代わってRocheのバルサイト(Valcyte)と共に成長し、市場を占有すると予想される、より新しい化合物である。
【0005】
特許薬又は一般薬のいずれの既存薬剤も、免疫無防備状態又は免疫抑制患者において感染を根絶することはできず、単にCMV疾患の進行を休止させるだけである。最近の臨床試験では、フォスカビル(Foscavir)とガンシクロビルが、免疫無防備状態患者を治療するそれらの能力に関して比較された。結果は、フォスカビルを使用して30%のより良好な感染の抑制を示した。しかし、フォスカビル治療下の患者の40%が、耐容できない吐気のためにその後ガンシクロビルに切り替えられた。これらの結果は、効果と毒性レベルの両方において改善の余地があることを示す。
【0006】
免疫毒素
免疫毒素は、リガンドについての受容体を発現する細胞を死滅させるために使用できる、毒素と結合したリガンドである。免疫毒素治療はまた、リガンド標的治療としても知られる。それ故、免疫毒素は、送達のための標的部分(リガンド)と細胞傷害のための毒性部分を含む。現在使用されるリガンドは、モノクローナル抗体、サイトカイン/増殖因子及び可溶性受容体である。例えば伝統的な化学療法剤に比べて免疫毒素の利点は、細胞を死滅させるために細胞が分裂している必要がないことである。さらに、免疫毒素が効率よくインターナライズ(internalized)されれば、抗原陰性細胞では副作用が起こらない。
【0007】
一般に、しかしながら、免疫毒素は印象的なレベルの効果を示さなかった。共通の問題は、それらが疾患細胞に対して十分に特異的ではなく、さらに、しばしば、その細胞傷害作用を及ぼすために効率よく疾患細胞に入り込むことができないことである。免疫毒素はまた、おそらく免疫毒素の非特異的取込みのために、他の治療薬よりも高いレベルの全身毒性を生じさせる。
【0008】
現在、毒性、免疫原性及び抗原発現の不均一性の問題を克服するために、免疫毒素に対する新しいアプローチが探索されている。これらのアプローチは、毒素の転移及び触媒ドメインをヒト一本鎖抗体に融合するため、及び高親和性の腫瘍選択的リガンドを選択するためにファージディスプレイを使用するための遺伝子操作の使用を含む。二価構築物の使用も親和性と効力を上昇させ得る。他のアプローチは、腫瘍血管内皮を標的するリガンドの選択及び癌遺伝子産物又は分化抗原のターゲティングに集中している。免疫毒素に関する研究が過去20年間にわたって進められていたにもかかわらず、ウイルス関連疾患に対する免疫毒素はまだ市場で入手可能にはなっていない。
【0009】
免疫毒素は血液腫瘍においてより有用な傾向があり、血液腫瘍は、固形腫瘍と異なって標的抗原を発現する悪性細胞の割合が高いことを特徴とし、混合細胞集団及びしばしば免疫毒素が容易にアクセスできない細胞を特徴とする。腫瘍細胞を標的する場合、大部分の腫瘍細胞に関して固有の腫瘍関連抗原が同定されていないため、正常細胞も標的するモノクローナル抗体が典型的に使用される。腫瘍細胞がより高いレベルの選択抗原を発現し、腫瘍細胞が選択的に死滅される場合でも、治療はまだ、しばしば重大な副作用に結びつく。もう1つの欠点は、モノクローナル抗体が、ヒトにおいて免疫原性であるマウス起源であることであった。この問題は、主としてヒト抗体の使用によって、及びまたヒトにおいて免疫原性ではない組換えヒト増殖因子を使用することによって解決されてきた。
【0010】
免疫毒素のインターナリゼーション(internalization)
大部分の免疫毒素は悪性形質転換を受けた細胞に対して開発され、それ故この形質転換の一部として特定の抗原又は特定抗原群を過剰発現する。これらの抗原は形質転換細胞上で過剰発現されるにもかかわらず、まれにしか形質転換細胞に特異的ではなく、しばしば正常細胞でも発現される。従って、ごくわずかな細胞抗原だけが形質転換細胞上で発現される。それ故、標的抗原を発現する正常細胞を死滅させることによる望ましくない毒性を回避するため、薬剤開発者は、ごくわずかな候補疾患抗原を標的することに制限され、それ故伝統的に、もっぱら細胞型分布に基づいて標的抗原だけを選択するように制限されてきた。その結果として、多くの免疫毒素は、それらが高親和性で標的抗原に結合する場合でも、効率よく標的細胞に入り込むことができず、不十分な効力を生じることになる。
【0011】
免疫毒素を標的細胞に効率よく入り込ませるという問題を解決するための1つの試みがHe D. et al, 2005によって為された。彼らは、免疫毒素、PE35/CEA(Fv)/KDELを含むアルギニン(Arg9ペプチド)を、標的細胞を発現する癌胎児性抗原(CEA)に輸送するための輸送体としてアルギニン含有膜転位シグナル(MTS)(例えばTat及びVP22)を使用した。著者達は、Arg9ペプチド(9量体アルギニンペプチド)の免疫毒素への組込みがPE35/CEA(Fv)/KDEL免疫毒素の受容体媒介性エンドサイトーシスを促進すると示唆する。残念ながら、免疫毒素へのMTSシグナルの導入は、標的抗原を発現する細胞に対する特異性の喪失を生じさせる。それ故このアプローチは、免疫毒素をいかにして標的細胞に入り込ませるかという問題への解決策ではないと思われる。
【0012】
サイトカイン/増殖因子と毒素から成る免疫毒素(サイトカインに基づく免疫毒素)は、サイトカインを介した受容体活性化と、それに続く受容体のインターナリゼーション(internalization)後に効率よくインターナライズされ得るという利点を有する。しかし、サイトカインに基づく免疫毒素は2つの大きな問題を抱える。1)サイトカインが誘導する受容体インターナリゼーションは、リガンドがアゴニスト特性を保持することを必要とし、このアゴニスト特性は標的細胞及び受容体を担持する他の細胞に望ましくない刺激作用を及ぼし得る。2)サイトカインに基づく免疫毒素は、正常細胞上のサイトカイン受容体と相互作用し、それにより、疾患標的細胞に加えて正常細胞も死滅させる。従って成功を収めるサイトカインベースの免疫毒素は、1)望ましくない刺激作用を誘導し得るアゴニスト特性を保持せずにインターナリゼーションを刺激できること、及び2)疾患細胞においてのみ相互作用してインターナライズされ、同じサイトカイン受容体を担持する健常細胞とは相互作用せず、インターナライズされないことを必要とする。
【0013】
抗ウイルス療法のための免疫毒素
HIV
免疫毒素はHIV感染の治療のために評価されてきた。例えば免疫毒素はCD4に対して標的され、ある程度の成功を収めた。また可溶性CD4も毒素に結合されており、生じた免疫毒素は、インビトロで感染細胞におけるウイルスタンパク質の合成を阻害し、ウイルスの拡大を阻止する。免疫毒素はまた、HIVエンベロープタンパク質gp160及びその成分であるgp120及びgp41に対しても標的化された。しかしこれらの試みは、一部にはHIV抗原変異の故に及びまた一部には感染個体の血清中に存在する抗エピトープ抗体の故に、ほとんど作用を及ぼさなかった。
【0014】
CMV
免疫毒素戦略を用いてCMVを治療するためのこれまでの試みは成功していない。
【0015】
ある学術研究グループが、CMV感染細胞を標的する免疫毒素を作製し、試験した(非特許文献1(Barnett et al. 1995)、 非特許文献2(Smee at al. 1995)、 非特許文献3(Barnet et al, 1996))。非特許文献1(Barnett et al. 1995)は、ヒトCMVに感染した細胞に特異的な免疫毒素及びマウスCMVに感染した細胞に特異的な免疫毒素の作製を述べた。両方の免疫毒素がポリクローナルであった、すなわち抗体は、特異的な十分に定義された標的抗原に対するものではなった。さらに、抗血清(抗MCMV及びHCMV)はプロテインA親和性によって精製されただけであり、それ故精製ポリクローナル抗血清は、CMV抗原(MCMV又はHCMV)及び他の定義されない抗原に対する抗体の定義されていないプールを含有する。著者達は、「これらの製剤中に存在するウイルス特異的抗体は総IgGの数パーセント未満を占めた」と述べている。ポリクローナル抗体プール(抗血清)はゲロニン(gelonin)毒素に結合された。抗ヒトCMV免疫毒素の作用は、リボソーム活性を阻害する免疫毒素の能力の測定としてタンパク質へのs35メチオニンの取込みを阻害する免疫毒素の能力によって測定された。著者達は、感染細胞におけるヒトCMVの増殖又は複製を阻害する抗ヒトCMV免疫毒素の能力に関するデータは示していない。さらに著者達は、抗ヒトCMV免疫毒素が35Sメチオニンの取込みを約15%しか阻害しないことを示している。逆に、著者達は、抗マウスCMV免疫毒素がS35メチオニンの取込みを>90%阻害し得ることを示す。加えて、著者達は、0.001のMOIでマウスCMVに感染させたマウス細胞(マウス乳腺癌細胞系、C127I)への抗マウスCMV免疫毒素の添加が、感染後7日目のウイルス収量を免疫毒素20μg/mlで約102(2log)(100倍)抑制したことを述べている。
【0016】
3つの論文が、マウスサイトメガロウイルスに対するモノクローナル抗体の使用を記述している(非特許文献4(Smee el at. 1995a)、非特許文献5(Smee et al. 1995b)、非特許文献3(Barnet et al, 1996))。抗体は、マウスCMVに感染させたBALB/cマウスから作製された。モノクローナル抗体D5.F10.B8(いかなる毒素にも結合していない)によるMCMV感染細胞の処置はウイルス力価の103-3.5の低下を生じさせたが、試験された様々な濃度(1.25、2.5、5、10及び20μg/ml)の間で用量反応効果は存在しなかった(非特許文献4(Smee el at. 1995a))。しかし、著者達は、高濃度のガンシクロビル又は高濃度の(S)−1−[3−ヒドロキシ−(2−ホスホニルメトキシ)−プロピル]シトシン(HPMPC)のいずれかと高濃度のモノクローナル抗体の組合せを使用してウイルス収量の相乗作用的抑制を示している。インビボでは、モノクローナル抗体単独あるいは25又は50mg/kg/日のガンシクロビルと併用したモノクローナル抗体による処置は、SCIDマウスにおけるMCMV誘導の死亡に全く又はごくわずかしか影響を及ぼさない。
【0017】
中和モノクローナル抗体D5.F10.B8又は非中和モノクローナル抗体C34.18.F6のリシンA鎖への結合は、マウスCMVに対する2つの抗体ベースの免疫毒素を生成した。抗体はモノクローナルであるが、抗原は定義されていないことに留意すべきである。モノクローナル免疫毒素によるMCMV感染細胞の処置は、ウイルス力価の102-3の低下を生じさせた。加えて、著者達は、高濃度のガンシクロビル又は高濃度の(S)−1−[3−ヒドロキシ−(2−ホスホニルメトキシ)−プロピル]シトシン(HPMPC)のいずれかと高濃度のモノクローナル抗体の組合せを使用してウイルス収量の相乗作用的抑制を示している。インビボでは、免疫毒素単独による処置はSCIDマウスにおけるMCMV誘導の死亡に影響を及ぼさなかった。50mg/kg/日のガンシクロビルとD5.F10.B8又はC34.18.F6のいずれかに基づく免疫毒素との併用治療は、SCIDマウスにおけるMCMV誘導の死亡を27.3±2.5日(ガンシクロビル単独)から29.3±1.1日(ガンシクロビル+C34免疫毒素)及び30.4±3.1日(ガンシクロビル+D5免疫毒素)に遅延させたという点で軽度の相乗作用を示唆すると思われた(非特許文献5(Smee et al. 1995b))。著者達は、免疫毒素の作用不良を、処置した動物における免疫毒素の実際の濃度に関する知識の欠如及び免疫毒素が動物の体内のウイルス複製部位に達したかどうかが不明であることによって説明する。さらに、著者達は、実際の標的抗原、抗原が感染動物において発現されるかどうか、動物における免疫毒素の動態、感染細胞に対する免疫毒素の親和性、又は抗体が感染細胞にインターナライズされるかどうかについてのデータを示していない。また、著者達は、非複合モノクローナル抗体又は毒素結合抗体の間でのウイルス感染への作用の相違を示していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Barnett et al. 1995
【非特許文献2】Smee at al. 1995
【非特許文献3】Barnet et al, 1996
【非特許文献4】Smee el at. 1995a
【非特許文献5】Smee et al. 1995b
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
[発明の要旨]
構成的にインターナライズする、CMVによってコードされる受容体に対して高い親和性を有する免疫毒素を設計することにより、感染細胞による免疫毒素の効率的な取込み、及びそれによる感染細胞の死が確保される。免疫毒素のインターナリゼーションは免疫毒素媒介性細胞傷害における律速段階とみなされるので、構成的にインターナライズする受容体を標的することは、免疫毒素に基づく薬剤の使用における中心的な問題を解決する。そこで、本発明は、免疫毒素が標的細胞内に輸送され、そこでその機能を発揮し得る、すなわち細胞を死滅させ得ることを確実にする、構成的にインターナライズする受容体を標的する免疫毒素に関する。さらに、本発明の免疫毒素は、CMV感染細胞上に存在する受容体だけを標的し、従って本発明の免疫毒素はCMV感染の治療又は予防において使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
1つの態様では、本発明は、(a)ヒトCMVによってコードされ、CMV感染細胞上で発現される、構成的にインターナライズする受容体に結合するリガンド及び(b)CMV感染細胞に対して細胞傷害性である毒素、を含み、配列番号1ではない免疫毒素に関する。2番目の態様では、本発明は、薬剤としての本発明に従った免疫毒素の使用、及びCMV感染の治療又は予防のための薬剤を製造するための本発明に従った免疫毒素の使用に関する。本発明はまた、本発明に従った免疫毒素又はその何らかの生理的に許容される塩を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、本発明に従った免疫毒素をコードする配列を含む核酸配列及び発現ベクターに関する。さらに、本発明は、(a)本発明に従った免疫毒素の有効量及び(b)同時、別個又は連続投与のための抗ウイルス薬及び免疫抑制薬の群から選択される治療薬を含む、CMV感染の治療又は予防のためのキットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[発明の詳細な説明]
定義
ここで又は以下の本明細書中の残りの部分で異なる定義が為されない限り、ここで使用するすべての技術用語及び学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0022】
「免疫毒素」は、送達のための標的部分(リガンド)と細胞傷害のための毒性部分(毒素)とを含む二機能性分子である。免疫毒素は、リガンドに対する受容体を発現する細胞を死滅させるために使用され得る。
【0023】
「リガンド」は、例えばウイルスを起源とする、受容体又は抗原に対して特異的結合親和性を有する何らかのアミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、何らかの抗体もしくはその部分又は何らかの非ペプチド化合物又はナノ粒子と定義される。
【0024】
「毒素」は、細胞傷害性又は細胞増殖抑制性であるか、又はアポトーシスもしくは壊死を誘導するか、又は病原体の複製、増殖もしくは伝播を直接阻害するか、又は感染細胞を感染宿主の免疫応答に対して脆弱にする、タンパク質又は非ペプチドである何らかの物質と定義される。
【0025】
「ケモカイン」は、走化性サイトカインであり、「CCケモカイン」、「XCケモカイン」、「CXCケモカイン」及び「CX3Cケモカイン」のサブファミリーを含む。一般にケモカインは、細胞移動を調節する低分子量タンパク質である。多くのケモカインはまた、免疫系の細胞の成熟、活性化、増殖及び分化を誘導する能力も備える。
【0026】
「CX3CL1」は、CX3Cケモカインファミリーの成員であるケモカインである。CX3CL1は、配列番号2に列挙されるアミノ酸配列を有し、フラクタルカイン(fractalkine)及びニューロタクチン(neurotactin)とも称される。
【0027】
「CX3CL1のケモカインドメイン」という用語は、配列番号2の25位から100位までのアミノ酸配列を含むポリペプチドと定義される。
【0028】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされるか又は部分的にコードされる、1又はそれ以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。本発明の抗体は、CMVによってコードされる構成的にインターナライズする受容体に対する抗体である。
【0029】
「受容体」、例えば「ケモカイン受容体」は、ケモカインによって細胞において活性化される、例えばケモカインに結合して細胞内シグナル伝達を開始させる受容体である。
【0030】
「構成的インターナリゼーション(constitutively internalization)」は、形質膜において発現され、及び事前の刺激なしで細胞形質膜から細胞質又は細胞内画分にインターナライズされる(internalized)何らかの抗原を指す。抗原のインターナリゼーションはリガンドによって調節され得、インターナライズされた抗原は、形質膜に再循環され得るか又はインターナリゼーション後に分解され得る。
【0031】
「構成的に活性なGタンパク質共役」という用語は、受容体リガンド(アゴニスト)による活性化なしでシグナルを媒介するGタンパク質共役受容体と定義される。
【0032】
「US28」という用語は、ヒトサイトメガロウイルスオープンリーディングフレームUS28によってコードされるGタンパク質共役受容体である。US28は構成的にインターナライズする受容体である。それ故US28に結合するケモカイン又は他の化合物は、この受容体を発現する細胞にインターナライズされる。
【0033】
「CMV」は「サイトメガロウイルス」を指す。
【0034】
「ヒトヘルペスウイルス5型」とも称されるヒトCMVは、ヒトに感染することができるCMVを指す。
【0035】
「CMV疾患」は、疾患個体におけるCMVの存在によって引き起こされるもしくはその存在に関連する又は疾患個体の血清学的検査から明らかな疾患である。
【0036】
CMVは急性疾患並びに慢性疾患を生じさせる。急性疾患は、ほとんどの場合高レベルのウイルス複製に結びつき、多臓器を侵すことによって特徴づけられ、単核細胞症様症候群、未熟児における周産期感染、同種異系移植受容者におけるCMV症候群、及び免疫無防備状態患者(例えば、AIDS患者)における播種性感染である。慢性感染は、ほとんどの場合低レベルのウイルス複製に結びつき、先天性感染、移植患者における血管疾患、正常宿主における血管疾患、及び特に胃腸管における炎症性疾患である。
【0037】
「親ポリペプチド」は、本発明に従って修飾される(変異される、すなわち欠失、挿入及び/又は置換によって、結合される等)ことになるポリペプチド配列を指示することが意図されている。親ポリペプチド配列は、天然に生じるフラクタルカイン(fraktalkine)(哺乳動物フラクタルカイン、例えば配列番号2としてここで同定されるヒトフラクタルカインなど)の配列であり得るか、又はその変異体であり得る。
【0038】
「ポリペプチド配列」(例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド等)は、文脈に依存して、天然に生じるアミノ酸もしくは人工アミノ酸類似体を含むアミノ酸の重合体、又はアミノ酸重合体を表わす文字列である。遺伝暗号の縮重を考慮して、特定ポリペプチド配列をコードする1又はそれ以上の核酸又はその相補的核酸が、ポリペプチド配列から決定され得る。
【0039】
「変異体」は、1又はそれ以上のアミノ酸位置において親ポリペプチド配列と(アミノ酸の欠失、アミノ酸の挿入及び/又は異なるアミノ酸によるアミノ酸の置換によって)異なる配列を含むポリペプチドである。変異体配列は、非天然に生じる配列、すなわち自然界では見いだされない配列である場合がある。好ましくは、「変異体」は親ポリペプチドと同じ機能を保持する。
【0040】
アミノ酸位置及びアミノ酸置換を同定するために使用される用語は、以下のように例示される。K31は、参照アミノ酸配列(例えば、配列番号2)においてリシン(Lys)残基によって占められる位置番号31を指示する。K31Aは、31位のリシン残基がアラニン(Ala)残基で置換されていることを指示する。
【0041】
物体に適用される「天然に生じる」は、その物体が、人間によって人工的に生産されるものとは異なり自然界で見出すことができるという事実を指す。例えば、生物(ウイルス、細菌、原生動物、昆虫、植物又は哺乳動物組織を含む)内に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室において人間によって意図的に改変されていないポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列は、天然に生じる。
【0042】
物体に適用される「非天然に生じる」は、その物体が天然には生じない、すなわちその物体が人間によって人工的に生産されるものを除いて自然界では見出すことができないことを意味する。
【0043】
「医薬組成物」という用語は、個体における医薬的使用に適する組成物を意味する。医薬組成物は、一般に有効量の活性因子及び担体(例えば、医薬的に許容される担体が挙げられる)を含有する。
【0044】
「有効量」という用語は、所望結果を生じさせるために十分な用量又は量を意味する。所望の結果は、その用量又は量のレシピエントにおける客観的改善又は主観的改善を含み得る。
【0045】
「予防的処置」は、処置が疾患、病変もしくは医学的障害を発現する危険性を軽減する、予防する又は低下させるために与えられるように、疾患、病変もしくは障害の徴候又は症状を示していない固体、あるいは疾患、病変又は障害の初期徴候又は症状だけを示す個体に与えられる処置である。予防的処置は、疾患又は障害に対する防止的な処置として機能する。
【0046】
「治療的処置」は、処置が病変、疾患もしくは障害の徴候又は症状を軽減又は排除するために個体に与えられる、病変、疾患もしくは障害の症状又は徴候を示す個体に与えられる処置である。
【0047】
「ヌクレオチド酸配列」(例えば核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド等)は、文脈に依存して、ヌクレオチドA、C、T、U、G又は他の天然に生じるヌクレオチドもしくは人工ヌクレオチド類似体を含むヌクレオチドの重合体、又は核酸を表わす文字列である。所与の核酸又は相補的核酸は、何らかの特定ポリヌクレオチド配列から決定され得る。異なる指示がない限り、特定核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異体(例えば縮重コドン置換体)及び相補的配列、並びに明白に指示される配列(sequence explicitly indicated)を暗黙のうちに包含する。特に、縮重コドン置換体は、1又はそれ以上の選択された(又はすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基(mixed-base)及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することによって達成され得る(Batzer et al. (1991) Nucleic Acid Res 19:5081; Ohtsuka et al. (1985) J Biol Chem 260:2605-2608; Cassol et al. (1992) ; Rossolini et al. (1994) Mol Cell Probes 8:91-98)。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、及び遺伝子によってコードされるmRNAと交換可能に使用される。
【0048】
「ある遺伝子に由来する核酸」は、その合成のために遺伝子又はそのサブ配列が最終的に鋳型として働く核酸を指す。従って、mRNA、mRNAから逆転写されるcDNA、そのcDNAから転写されるRNA、cDNAから増幅されるDNA、増幅されたDNAから転写されるRNA等は、すべてその遺伝子に由来し、そのようにして導かれた産物の検出は、試料中のもとの遺伝子及び/又は遺伝子転写産物の存在及び/又は存在率の指標である。
【0049】
「作動可能に連結される」は、酵素的連結又は別の手段による、配列の正常な機能が達成され得るような相互の立体配置での、2又はそれ以上のヌクレオチド配列の共有結合を指す。例えば、プレ配列又は分泌リーダーをコードするヌクレオチド配列は、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドについてのヌクレオチド配列に作動可能に連結される;プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される;リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するために位置する場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されているヌクレオチド配列が隣接すること、及び分泌リーダーの場合は、隣接し、読み枠内にあることを意味する。連結は、好都合な制限部位におけるライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、標準組換えDNA法と共に使用される。
【0050】
「制御配列」という用語は、ここでは、本発明のポリペプチドの発現のために必要である又は好都合であるすべての成分を含むと定義される。各々の制御配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して特有のものであっても外来のものであってもよい。そのような制御配列としては、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも、制御配列は、プロモーター、並びに転写及び翻訳の終結シグナルを含む。制御配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード領域と制御配列のライゲーションを促進する特異的制限部位を導入するためのリンカーを有し得る。
【0051】
本文中で、「発現ベクター」という用語は、ポリペプチドをコードするセグメントを含み、その転写を与える付加的なセグメントに作動可能に連結されている、直鎖状又は環状のDNA分子を包含する。
【0052】
「宿主細胞」という用語は、ここで使用するとき、核酸構築物による形質転換を受け得る、いかなる細胞型も包含する。
【0053】
例えば細胞、ウイルス、ヌクレオチド、ベクター、タンパク質又はポリペプチドに関して使用するとき「組換え」という用語は、典型的には、その細胞、ウイルス、ヌクレオチド又はベクターが異種(又は外来性)核酸の導入又は天然核酸の変化によって修飾されていること、あるいはそのタンパク質又はポリペプチドが異種アミノ酸の導入によって修飾されていること、あるいはその細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞では見いだされない核酸配列(例えば遺伝子)を発現するか、又は異常発現される、過少発現される又は全く発現されない天然核酸配列(例えば遺伝子)を発現する。
【0054】
2又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列に関して、「同一」又は「同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して又は目視検査によって測定したとき、最大の一致になるように比較して整列した場合に、同じである2又はそれ以上の配列もしくはサブ配列、あるいは同じであるアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定パーセンテージを有する2又はそれ以上の配列もしくはサブ配列を指す。
【0055】
「配列同一性」又は「同一性パーセント」(「同一性%」)という用語は、2個のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が比較ウインドウにわたって(すなわちそれぞれヌクレオチドごとに又はアミノ酸ごとに)同一であることを意味する。配列同一性パーセントは、比較ウインドウにわたって2個の最適に整列したポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列を比較し、両方の配列において同一残基が生じる位置の数を決定して一致する位置の数を求め、マッチする位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数(すなわちウインドウサイズ)で除して、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージ(又は配列類似性のパーセンテージ)を求めることによって計算される。従って、例えば、ポリペプチド配列に関して、配列同一性という用語は、2個のポリペプチド配列が比較ウインドウにわたって(アミノ酸ごとに)同一であることを意味し、アミノ酸残基配列同一性のパーセンテージ(又はアミノ酸残基配列類似性のパーセンテージ)が計算できる。配列比較のために、典型的には1つの配列が、試験配列を比較する参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用するときは、試験配列と参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて配列座標を指定して、配列アルゴリズムのプログラムパラメータを指定する。その後配列比較アルゴリズムが、指定したプログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。ここで述べる配列アルゴリズムの1つ(又は当業者に使用可能な他のアルゴリズム)を用いて又は目視検査によって最大の一致を決定することができる。
【0056】
比較的短いアミノ酸配列(約30残基未満)のアラインメントと比較は、典型的には直接的である。より長い配列の比較は、2個の配列の最適整列を達成するためにより洗練された方法を必要とし得る。比較ウインドウを整列するための配列の最適アラインメントは、
選択された様々な方法によって作成される最適アラインメント(すなわち比較ウインドウにわたって最も高いパーセンテージの配列類似性を生じさせる)に関して、例えばSmith and Waterman (1981) Adv Appl Math 2:482の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch (1970) J MoI Biol 48:443の相同性整列アルゴリズムによって、Pearson and Lipman (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:2444の類似性方法検索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータでの実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)によって、又は検査によって実施できる。
【0057】
配列同一性パーセント(同一性パーセント)及び配列類似性を決定するの適したアルゴリズムの好ましい例は、Pearson, W. R. & Lipman, D. J. (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:2444に述べられているFASTAアルゴリズムである。また、W. R. Pearson(1996) Methods Enzymology 266:227-258も参照のこと。同一性パーセントを計算するためのDNA配列のFASTA整列において使用される好ましいパラメータは最適化されており、BL50マトリックス15:−5、k−タプル=2;連結ペナルティー=40、最適化=28;ギャップペナルティー=−12、ギャップ長ペナルティー=−2;及び幅=16である。
【0058】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの他の好ましい例は、Altschul et al. (1997) Nuc Acids Res 25:3389-3402 及び Altschul et al. (1990) J MoI Biol 215:403-410にそれぞれ述べられている、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST及びBLAST 2.0は、ここで述べるパラメータを用いて、本発明の核酸及びタンパク質についての配列同一性パーセントを決定するために使用される。BLAST解析を実施するためのソフトウエアは、国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列の同じ長さのワードと整列化したとき、いくつかの正の閾値スコアTに一致する又はそれを満たす、問い合わせ配列における短いワード長Wを同定することにより、最初に高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al., 上記)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけ出すための検索を開始するためのシードとしての役割を果たす。これらのワードヒットを、累積アラインメントスコアが増加し得る限り各々の配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(一対の一致する残基に対する報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチ残基に対するペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。各々の方向へのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下したとき;1又はそれ以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積により、累積スコアが0又はそれ以下になったとき;あるいはいずれかの配列の末端に達したとき、停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関して)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラム(例えば、BLASTP2.0.14;2000年6月29日)は、デフォルトとしてワード長3及び期待値(E)10を使用し、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff (1989) Proc Natl Acad Sci USA 89:10915参照)は、50のアラインメント(B)、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較を使用する。やはり、他の適切なアルゴリズムと同様に、プログラムが、他の類似配列、例えばGenBank又はGeneseqに認められる類似分子により密接に関連する配列ではなく、ここで配列表に列挙されるもの(すなわち配列番号1〜22)により密接に関連する配列だけを同定するまで、比較の厳密度を高めることができる。言い換えると、例えばGenBank又はGeneseqに認められるすべての公知の先行技術分子が除外されるように、アルゴリズムの比較の厳密度を高めることができる。
【0059】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性又は同一性の統計学的分析を実施する(例えばKarlin & Altschul (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873-5787参照)。このアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較において最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列に類似するとみなされる。
【0060】
有用なアルゴリズムのもう1つの好ましい例はPILEUPである。PILEUPは、関連性と配列同一性パーセント又は配列類似性パーセントを示すために漸進的ペアワイズアライメントを用いて関連配列群から多重配列アラインメントを作製する。PILEUPはまた、アライメントを作製するために使用されるクラスター関係を示す系統樹又は樹状図も作製する。PILEUPは、Feng & Doolittle (1987) J. MoI. Evol. 35:351-360の漸進的アラインメント法を簡易化したものを用いる。使用される方法は、Higgins & Sharp (1989) CABIOS 5: 151-153によって記述された方法に類似する。このプログラムは、各々が最大長5,000ヌクレオチド又はアミノ酸である、300配列までを整列することができる。マルチプルアラインメント手順は、2つの最も類似する配列のペアワイズアラインメントから始まり、2つの整列された配列のクラスターを作製する。次にこのクラスターを、その次に最も関連する配列又は整列配列のクラスターに対して整列する。2つの個別配列のペアワイズアラインメントを単純に伸長させていくことによって、2つの配列クラスターが整列される。最終的なアラインメントは、一連の漸進的ペアワイズアラインメントによって達成される。このプログラムは、配列比較領域について特定配列及びそれらのアミノ酸又はヌクレオチド座標を指定することによって、及びプログラムパラメータを指定することによって実施される。PILEUPを使用して、参照配列を他の試験配列と比較し、以下のパラメータを用いて配列同一性パーセント(又は配列類似性パーセント)の関係を決定する。デフォルトギャップ加重値(3.00)、デフォルトギャップ長加重値(0.10)及び加重エンドギャップ。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウエアパッケージ、例えばバージョン7.0(Devereaux et al. (1984) Nuc Acids Res 12:387-395)から入手できる。
【0061】
DNA及びアミノ酸配列アラインメントに適したアルゴリズムのもう1つの好ましい例は、CLUSTALWである(Thompson, J. D. et al. (1994) Nuc Acids Res 22:4673-4680)。CLUSTALWは、配列の群の間で多重ペアワイズ比較を実施し、相同性に基づいてそれらをマルチプルアラインメントに構築する。デフォルトギャップオープンペナルティー及びギャップ伸長ペナルティーはそれぞれ10及び0.05である。アミノ酸のアラインメントについては、BLOSUM62マトリックスがタンパク質加重マトリックスとして使用できる(Henikoff and Henikoff (1992) Proc Natl Acad Sci USA 89: 10915-10919)。マルチプルDNA及びアミノ酸配列アラインメントに適したアルゴリズムのもう1つの例は、製造者の指示及びプログラムに指定されるデフォルト値に従って使用される、MegaLineTMDNASTARパッケージ(MegaLineTMバージョン4.03、DNASTAR,Inc.によって製造される)からの、Jotun Hein法、Hein (1990)である。
【0062】
検索及びアラインメントアルゴリズムについての上記考察が、ヌクレオチド配列を含む問い合わせ配列への置き換え、及び適宜に、核酸データベースの選択により、ポリヌクレオチド配列の同定及び評価にも適用できることは当業者に了解される。
【0063】
2つの核酸又はポリペプチドに関して「実質的に同一」又は「実質的同一性」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して又は目視検査によって測定したとき、最大の一致になるように比較し、整列した場合、それぞれ、少なくとも約60%、70%、75%、好ましくは80%又は85%、より好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上のヌクレオチド又はアミノ酸残基同一性パーセントを有する2又はそれ以上の配列又はサブ配列を指す。ある態様では、実質的同一性は、少なくとも約10残基長、例えば少なくとも約20、30、40、50、60、76、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600又は650アミノ酸残基のアミノ酸配列の領域にわたって存在する。ある態様では、実質的同一性は、少なくとも約50残基長、例えば少なくとも約60、76、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600又は650アミノ酸残基のアミノ酸配列の領域にわたって存在する。ある態様では、実質的同一性は、少なくとも約150核酸残基、例えば少なくとも約180、228、300、375、600、750、900、1050、1200、1350、1500、1650、1800又は1950核酸残基の核酸配列の領域にわたって存在する。一部の態様では、アミノ酸配列又は核酸配列は、ポリペプチド配列又は対応するコード領域の長さ全体にわたって実質的に同一である。
【0064】
ポリペプチド及びペプチドに適用されるとき、「実質的同一性」という用語は、典型的には、2つのポリペプチド又はペプチド配列が、例えばデフォルトギャップ加重(以下で詳細に述べる)を用いたBLAST、GAPもしくはBESTFITプログラムによって、又は目視検査によって、最適に整列したとき、少なくとも約60%又は70%、しばしば少なくとも75%、例えば少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%又はそれ以上の割合のアミノ酸残基配列同一性又は配列類似性を共有することを意味する。同様に、2つの核酸に関して適用されるとき、実質的同一性又は実質的類似性という用語は、2つの核酸配列が、例えばデフォルトギャップ加重(以下で詳細に述べる)を用いたBLAST、GAPもしくはBESTFITプログラムによって、又は目視検査によって、最適に整列されたとき、少なくとも約60%、70%又は80%の配列統一性又は配列類似性、好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸残基配列同一性又は配列類似性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性又は配列類似性、又はそれ以上(例えば約90、91、92、93、94、95、96、97、98、98.5、99、99.5又はそれ以上のパーセントのヌクレオチド配列同一性又は配列類似性を含む)を共有することを意味する。
【0065】
以下の配列番号を本発明の説明の中で言及する。
配列番号1:ランテス(Rantes)及びPE38KDELを含む免疫毒素
配列番号2:CX3CL1(フラクタルカイン)
配列番号3:US28受容体
配列番号4:US27受容体
配列番号5:UL33受容体
配列番号6:UL78受容体
配列番号7:vCCL2ケモカイン
配列番号8:外毒素A
配列番号9:PE38KDEL
配列番号10:配列番号2の25〜397位のフラクタルカイン及び配列番号9のPE38KDELを含む免疫毒素
配列番号11:配列番号2の25〜100位のフラクタルカインのケモカイン部分及び配列番号9のPE38KDELを含む免疫毒素
【0066】
本発明は、CMV疾患を治療する又は予防する上で有用な、CMV感染細胞に対して高度に特異的な免疫毒素に関する。本発明の免疫毒素は、CMVによってコードされ、CMV感染細胞の表面上で発現される、構成的にインターナライズする受容体を標的する。構成的にインターナライズする受容体に結合したとき、免疫毒素はCMV感染細胞にインターナライズされ、その後、その細胞傷害作用を及ぼして細胞の死滅を導く。
【0067】
CMVは、CMV感染細胞の表面で発現されるいくつかの受容体をコードし、これらの中には、構成的なインターナリゼーションを受けるケモカイン受容体、例えばUS28、US27、UL33及びUL78がある。US28に対する多くの高度親和性リガンドが感染個体の免疫系であるケモカイン系の構成成分である。これらの宿主免疫分子、ケモカインは、本発明の免疫毒素のリガンドとして使用できる。
【0068】
ケモカインに基づく免疫毒素の使用は、それらが、ケモカインを介した受容体活性化とそれに続く受容体のインターナリゼーション後に効率よくインターナライズされ得るという利点を有する。しかし、ケモカインが誘導する受容体インターナリゼーションは、リガンドがアゴニスト特性を保持することを必要とし、このアゴニスト特性は標的細胞に望ましくない刺激作用を及ぼすことがあり、正常細胞上のケモカイン受容体と相互作用して、それにより、疾患標的細胞に加えて正常細胞を死滅させ得る。CMVによってコードされる受容体に高い特異性を有し、それ故CMV感染細胞上でのみ発現される免疫毒素を設計することにより、対象とする標的細胞に対する特異性が確保される。さらに、CMVによってコードされる、構成的インターナリゼーションを受ける抗原に結合する免疫毒素を設計することにより、リガンドの性質にかかわらず、CMV感染細胞による免疫毒素の効率的な取込みが確保される。通常は、細胞の表面で発現される受容体は、受容体がアゴニストによって活性化されたとき細胞内へのインターナリゼーションを受ける。しかし、構成的にインターナライズする受容体は、アゴニストによる活性化なしに絶えず細胞内へのインターナリゼーションを受ける。従って、CMV感染細胞上の構成的にインターナライズする受容体に対して特異的な免疫毒素を設計することにより、細胞内への免疫毒素の効率的な取込みが得られ、それ故感染細胞は、望ましくない毒性及び副作用を伴わずに免疫毒素によって特異的に標的され得る。
【0069】
そこで、最も広い態様では、本発明は、(a)CMVによってコードされ、CMV感染細胞上で発現される、構成的にインターナライズする受容体に結合するリガンド及び(b)CMV感染細胞に対して細胞傷害性である毒素を含む免疫毒素であって、配列番号1ではない免疫毒素に関する。
【0070】
従って、本発明のすべての実施形態において、免疫毒素は配列番号1ではない、すなわち配列番号1は本発明の範囲から除外される。
【0071】
配列番号1はBruhl et al, 2001によって記述されている。配列番号1は、ケモカイン ランテス(RANTES)とシュードモナス属外毒素Aのトランケート型の融合タンパク質である。著者らは、CCR5受容体を発現する細胞を標的するために配列番号1を使用した。より詳細には、免疫毒素が10nMの濃度でCCR5(+)チャイニーズハムスター卵巣細胞を完全に破壊することを示したが、CCR5(−)チャイニーズハムスター卵巣細胞に対する細胞傷害作用は検出不能であった。この融合タンパク質は、CCR5に結合して、細胞表面から受容体を下方調節する。ケモカイン ランテスはUS28のリガンドでもあるが、著者達はCMV感染細胞に対して免疫毒素を使用することは提案しなかった。
【0072】
以下では、本発明の免疫毒素のリガンドを説明する。
【0073】
本発明のリガンド
本発明のリガンドは、本発明の受容体に結合するポリペプチドである。本発明の受容体は、CMV感染細胞の表面で発現される、CMVによってコードされる構成的にインターナライズする受容体である。本発明の受容体を以下でさらに詳細に説明する。
【0074】
本発明の1つの実施形態では、リガンドは、ケモカイン又はその変異体及び抗体又はそのフラグメントから成る群より選択される。
【0075】
本発明のもう1つの実施形態では、リガンドはケモカイン又はその変異体である。
【0076】
ケモカインは、タンパク質の大きくて多様なスーパーファミリーである。このスーパーファミリーは、古典的ケモカインモチーフにおける最初の2個のシステインが隣接しているか(CCケモカインを含むC−C型)又は介在残基によって隔てられているどうか(CXCケモカインを含むC−X−C型)に基づいて、又は対応するモチーフ内に最初の2個のシステインのうちの1個を欠く型(XCケモカインを含むX−C型)、又は最後に、最初の2個のシステインが3つの介在残基によって隔てられている型(CX3Cケモカインを含むC−X−X−X−C型)の4つの型に細分される。ケモカインは、7回膜貫通型(7TM)のGタンパク質共役受容体(GPCR)であるケモカイン受容体との相互作用を通してそれらの機能を及ぼす。白血球の移動を制御することに加えて、ケモカインは免疫系の発現を調節し、白血球のホメオスタシスと炎症を制御し、リンパ系細胞の活性化と分化を制御する。それ故ケモカインは、感染性病原体に対する宿主免疫応答における中心であると思われる。実際に、ウイルス感染において宿主のケモカイン系を制御することの重要性は、例えばCMVが宿主(例えばヒト又はマウス)のケモカイン系に干渉することが公知のいくつかのタンパク質をコードするという事実によって強調される。
【0077】
本発明の1つの実施形態では、リガンドは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、家禽、ブタ、ウマ、アカゲザル、オランウータン、ウシ、イヌ又はウイルスを起源とするケモカイン又はその変異体又はそのフラグメントから成る群より選択される。
【0078】
もう1つの実施形態では、リガンドは、CCケモカイン、XCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインから成る群より選択されるケモカイン又はその変異体である。
【0079】
もう1つの実施形態では、リガンドは、CCケモカイン及びCX3Cケモカインから成る群より選択されるケモカイン又はその変異体である。
【0080】
さらにもう1つの実施形態では、リガンドは、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27及びCCL28から成る群より選択されるCCケモカイン又はその変異体である。
【0081】
もう1つの実施形態では、リガンドは、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL14、CCL16及びCCL22から成る群より選択されるCCケモカイン又はその変異体である。
【0082】
もう1つの実施形態では、リガンドは、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5及びCCL7から成る群より選択されるCCケモカイン又はその変異体である。
【0083】
もう1つの実施形態では、リガンドは、CCL2、CCL3、CCL4及びCCL7から成る群より選択されるCCケモカイン又はその変異体である。
【0084】
もう1つの実施形態では、リガンドは、KSHVによってコードされるCCケモカイン vCCL1又はvCCL2又はその変異体である。
【0085】
もう1つの実施形態では、リガンドは、KSHVによってコードされるCCケモカイン vCCL2又はその変異体である。
【0086】
好ましい実施形態では、リガンドは、ヒト又はマウスを起源とするCCケモカインである。
【0087】
もう1つの実施形態では、リガンドは、CX3Cケモカイン又はその変異体である。
【0088】
もう1つの実施形態では、リガンドは、ヒトCX3CL1(配列番号2)に少なくとも67%、例えば70%、又は例えば75%、又は例えば80%、又は例えば85%、又は例えば90%、又は例えば95%、又は例えば96%、又は例えば97%、又は例えば98%、又は例えば99%、例えば70%、又は例えば71%、又は例えば72%、又は例えば73%、又は例えば74%、又は例えば75%、又は例えば76%、又は例えば77%、又は例えば78%、又は例えば79%、又は例えば80%、又は例えば81%、又は例えば82%、又は例えば83%、又は例えば84%、又は例えば85%、又は例えば86%、又は例えば87%、又は例えば88%、又は例えば89%、又は例えば90%、又は例えば91%、又は例えば92%、又は例えば93%、又は例えば94%、又は例えば95%、又は例えば96%、又は例えば97%、又は例えば98%、又は例えば99%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
【0089】
1つの態様では、本発明は、配列番号2に少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上の割合の配列同一性を有するフラクタルカイン変異体又はそのフラグメントを提供する。
【0090】
本発明はまた、CX3CL1(配列番号2)のアミノ酸配列に実質的なアミノ酸配列類似性を有するタンパク質又はペプチドを包含する。
【0091】
天然変異体は、個体、多型、対立遺伝子、株又は種の変異体を含む。
【0092】
CX3CL1の天然の種変異体は以下を含む。
【化1】

【0093】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、リガンドは、ヒトCX3CL1のケモカインドメイン(配列番号2の残基25〜100)に対して少なくとも67%、例えば70%、又は例えば75%、又は例えば80%、又は例えば85%、又は例えば90%、又は例えば95%、又は例えば96%、又は例えば97%、又は例えば98%、又は例えば99%、例えば70%、又は例えば71%、又は例えば72%、又は例えば73%、又は例えば74%、又は例えば75%、又は例えば76%、又は例えば77%、又は例えば78%、又は例えば79%、又は例えば80%、又は例えば81%、又は例えば82%、又は例えば83%、又は例えば84%、又は例えば85%、又は例えば86%、又は例えば87%、又は例えば88%、又は例えば89%、又は例えば90%、又は例えば91%、又は例えば92%、又は例えば93%、又は例えば94%、又は例えば95%、又は例えば96%、又は例えば97%、又は例えば98%、又は例えば99%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
【0094】
好ましくは、免疫毒素のリガンドは、10-8M又はそれ以下のKdでUS28受容体に結合する。10-9M未満、例えば10-10M未満、10-11M未満又は10-12M未満のKdがさらに一層好ましい。
【0095】
好ましくは、免疫毒素は、親リガンドの内因性受容体に対して低い親和性を有する。従って、好ましい実施形態では、リガンドは、10-6M又はそれ以上のKdでCX3CR1受容体に結合する。より好ましくは、リガンドは、10-5M又は10-4M超のKdでCX3CR1受容体に結合する。US28受容体に対する特異性は、親リガンドの適切な変異によって達成され得る。
【0096】
好ましくは、免疫毒素のリガンドは、以下の変異体から成る群より選択される:配列番号2の31位で変異した変異体、配列番号2の38位で変異した変異体、配列番号2の42位で変異した変異体、配列番号2の60位で変異した変異体、配列番号2の61位で変異した変異体、配列番号2の68位で変異した変異体、配列番号2の71位で変異した変異体、配列番号2の72位で変異した変異体、配列番号2の73位で変異した変異体。
【0097】
より好ましくは、免疫毒素のリガンド部分は、配列番号2の変異体の以下の群から選択される:31位がリシンからアラニンに変異した変異体K31A、31位がリシンからグルタミン酸に変異した変異体K31E、38位がリシンからアラニンに変異した変異体K38A、38位がリシンからグルタミン酸に変異した変異体K38E、42位がリシンからアラニンに変異した変異体K42A、42位がリシンからグルタミン酸に変異した変異体K42E、60位がリシンからアラニンに変異した変異体K60A、60位がリシンからグルタミン酸に変異した変異体K60E、61位がアルギニンからアラニンに変異した変異体R61A、61位がアルギニンからグルタミン酸に変異した変異体R61E、68位がアルギニンからアラニンに変異した変異体R68A、68位がアルギニンからグルタミン酸に変異した変異体R68E、71位がアルギニンからアラニンに変異した変異体R71A、71位がアルギニンからグルタミン酸に変異した変異体R71E、71位がアルギニンからグルタミンに変異した変異体R71Q、72位がロイシンからアラニンに変異した変異体L72A、73位がフェニルアラニンからアラニンに変異した変異体F73A、73位がフェニルアラニンからロイシンに変異した変異体F73L。
【0098】
もう1つの実施形態では、リガンドは、(配列番号2の)33位、34位及び35位の1又はそれ以上のアミノ酸残基が変異している又は欠失している、ヒトCX3CL1のケモカインドメイン(配列番号2の残基25〜100)を含む。
【0099】
好ましい実施形態では、配列番号2の33位は、aaからaa1、aa2、aa3、aa4又はaa5に変異しているか又は欠失している。
【0100】
好ましい実施形態では、配列番号2の34位は、aaからaa1、aa2、aa3、aa4又はaa5に変異しているか又は欠失している。
【0101】
好ましい実施形態では、配列番号2の35位は、aaからaa1、aa2、aa3、aa4又はaa5に変異しているか又は欠失している。
【0102】
残基33、34及び35の変異は、内因性ケモカイン受容体に結合せずにCMVによってコードされる受容体に結合する、免疫毒素の選択性を与えるために望ましい。
【0103】
本発明のリガンドはまた、ウイルスによってコードされるケモカインであり得る。1つのそのような好ましいケモカインは、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)によってコードされるCCケモカインvCCL2(配列番号7)又はその変異体である。
【0104】
キメラ
本発明はまた、異なるケモカイン、例えばCCケモカイン、XCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインからのセグメントを含む組換えポリペプチド又はタンパク質であるリガンドを提供する。従って、本発明は、CCケモカイン、XCケモカイン、CXCケモカイン又はCX3Cケモカイン、例えばCX3CL1(フラクタルカイン)又はフラクタルカインのケモカインドメインからの2又はそれ以上のセグメントを含む異種融合タンパク質であるリガンドに関する。特異性、例えば受容体特異性の新しい組合せを示す本発明のキメラポリペプチドは、タンパク質結合特異性と他の機能性ドメインの機能的連結から生じる。
【0105】
それ故、本発明のリガンドは、ケモカインがCCケモカイン、XCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインから成る群より選択される、2又はそれ以上の異なるケモカインの間のキメラであり得る。
【0106】
より詳細には、リガンドは、ケモカインが、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28及びvCCL1又はvCCL2から成る群より選択されるCCケモカイン又はその変異体又はトランケート型である、2又はそれ以上の異なるケモカインの間のキメラであり得る。
【0107】
リガンドはまた、1又はそれ以上のCCケモカイン又はその変異体と1又はそれ以上のCX3Cケモカイン又はその変異体の間のキメラであり得る。この実施形態において、CCケモカインは、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28及びvCCL2又はその変異体から成る群より選択され得、及びCX3Cケモカインは、CX3CL1(配列番号2)又はその変異体及びCX3CL1のケモカインドメイン(配列番号2の残基25〜100)又はその変異体から成る群より選択され得る。
【0108】
好ましい実施形態では、リガンドは、vCCL2(配列番号7)とCX3CL1(配列番号2)の間のキメラである。
より詳細には、リガンドは、CX3CL1のN末端部分(配列番号2の残基25〜31又は25〜36)を置換するvCCL2のN末端部分(配列番号7の残基1〜5又は1〜9又は1〜12)をコードする一連のアミノ酸、例えば2(LG)、又は例えば3、又は例えば4、又は例えば5、又は例えば6、又は例えば7、又は例えば8、又は例えば9、又は例えば10、又は例えば11、又は例えば12アミノ酸の間のキメラであり得る。
【0109】
本発明の抗体
上記で概説したように、免疫毒素は送達のための標的部分(リガンド)と細胞傷害のための毒性部分を含む。標的部分は、受容体リガンド、例えばサイトカイン又は増殖因子、可溶性受容体及び抗体、例えばポリクローナル又はモノクローナル抗体であり得る。それゆえ、本発明の1つの実施形態では、本発明の免疫毒素のリガンドは抗体又はその変異体である。本発明の抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであり得る。本発明の抗体又はそのフラグメントは、US28に対する抗体、US27に対する抗体、UL33に対する抗体及びUL78に対する抗体から成る群より選択され得る。本発明の好ましい実施形態では、リガンドはUS28に対する抗体である。
【0110】
当業者に公知であるように、特異的で高親和性の抗体が、当分野で公知の多くの手法によって作製できる。抗体はポリクローナル又はモノクローナルであり得る。モノクローナル抗体はハイブリドーマ技術を用いて作製し得る。好ましい抗体は、US28、US27、UL33もしくはUL78に対するヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0111】
抗体という用語は、全長抗体及びその結合フラグメントを意味するために使用される。広く認められている免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子、並びに数え切れないほどの免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκ又はλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δ又はεとして分類され、それらが順に、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する。典型的な免疫グロブリン(例えば抗体)構造単位は、四量体を含む。各々の四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各々の対は1本の「軽」鎖(約25KDa)と1本の「重」鎖(約50〜70KDa)を有する。各々の鎖のN末端は、主として抗原認識の役割を担う約100〜110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。
【0112】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして又は様々なペプチダーゼでの消化によって生成される多くの広く特性決定されたフラグメントとして存在する。従って、例えばペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に結合している軽鎖であるFabの二量体、F(ab)’2を生成する。F(ab)’2は、温和な条件下で還元されてヒンジ領域内のジスルフィド結合が壊れ、それによってF(ab)’2二量体がFab’単量体に変換され得る。Fab’単量体は、基本的にはヒンジ領域の部分を有するFabである。抗体分子のFc部分は、主として免疫グロブリン重鎖の定常領域に対応し、抗体のエフェクター機能を担う(他の抗体フラグメントのより詳細な説明については、Fundamental Immunology, W. E. Paul, ed., Raven Press, N. Y. (1993)参照)。様々な抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化の観点から定義されているが、当業者は、そのようなFab’フラグメントが化学的に又は組換えDNA法を利用することによって新たに合成され得ることを認識する。従って抗体という用語はまた、ここで使用するとき、全長抗体の修飾によって生成される又は組換えDNA法を用いて新たに合成される抗体フラグメントを包含する。
【0113】
抗体はまた、1本の腕の複合モノクローナル抗体、可変重鎖と可変軽鎖が一緒に結合して(直接又はペプチドリンカーを通して)連続ポリペプチドを形成する一本鎖Fv(sFv)抗体を含む、一本鎖抗体、並びにダイアボディ、トリボディ及びテトラボディを含む(Pack et al. (1995) J MoI Biol 246:28; Biotechnol 11: 1271; and Biochemistry 31: 1579)。抗体は、例えばポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖、Fabフラグメント、Fab発現ライブラリーによって生産されるフラグメント等である。
【0114】
親和性
1つの実施形態では、本発明のリガンドは、本発明の受容体、例えばUS28、US27、UL33又はUL78に少なくとも10-6M、例えば10-7M、又は例えば10-8M、又は例えば10-9M、又は例えば10-10M、又は例えば10-11M、又は例えば10-12Mの特異的結合親和性で結合する。
【0115】
2つの分子、例えばリガンドと受容体の間の「特異的結合親和性」は、分子の混合物中での1つの分子のもう一方の分子に対する選択的結合を意味する。分子の結合は、典型的には、結合親和性が約1×104-1から約1×109-1又はそれ以上(すなわち約10-4から10-9M又はそれ以下のKD)である場合、特異的とみなされる。リガンドと受容体の結合親和性は、当業者に公知の標準手法によって測定し得る。結合親和性を測定するための周知の手法の非限定的な例は、Biacore(登録商標)テクノロジー(Biacore AB,Sweden)、等温滴定型熱量測定(MicroCal LLC,Northampton,MA USA)、ELISA及びFACSを含む。例えばFACS又は他の選別法は、関連結合対成員(受容体、例えば可溶性受容体など)に特異的に結合する分子(例えば細胞表面に提示されるリガンドなど)の集団を選択するために使用し得る。リガンド−受容体複合体は、例えば蛍光によって(例えば複合体を認識する蛍光抗体と複合体を反応させることによって)検出し、選別し得る。関連結合対成員(例えば受容体)に結合する対象分子をプールし、より低濃度の受容体の存在下で再選別する。漸減濃度(例示的な濃度範囲は、リガンド−受容体相互作用の性質に依存して、約10-6Mから10-9Mまで、すなわち1マイクロモル(μM)から1ナノモル(nM)まで、又はそれ以下のオーダーである)の受容体の存在下で多数回の選別を実施することにより、受容体に対して特異的結合親和性を示す対象分子の集団が単離され得る。
【0116】
ポリペプチド、核酸又は他の成分は、それが通常結びついている成分(他のペプチド、ポリペプチド、タンパク質(複合体、例えば天然配列に付随し得るポリメラーゼ及びリボソームを含む)、核酸、細胞、合成試薬、細胞夾雑物、細胞成分等)、例えばそれがもともと由来する細胞において通常結びついている他の成分から、部分的に又は完全に分離されるとき、「単離」される。ポリペプチド、核酸又は他の成分は、それが成分の組成物、混合物又は収集物中に存在する主要な種である(すなわちモルベースで、組成物中のいかなる他の個別種よりも豊富である)ように、その天然環境の他の成分から部分的に又は完全に回収又は分離されるとき、単離される。一部の場合、製剤は、約60%、70%又は75%超、典型的には約80%超、又は好ましくは約90%超の単離種から成る。
【0117】
本発明の毒素
免疫毒素の毒性部分は、標的細胞の死滅を媒介する。最も一般的には、毒素は細菌(例えばシュードモナス属外毒素(PE)(配列番号8)又はジフテリア毒素(DT))又は植物(例えばリシン(recin)又はアブリン)のいずれかに由来する。どちらの種類の毒素も、タンパク質合成を阻害することによって細胞を死滅させる。PE及びDTは伸長因子2(EF2)を不活性化させ、リシン及びアブリンは28Sリボソームサブユニット上のEF2結合部位を不活性化させる。
【0118】
いかなる細胞傷害性毒素も本発明において有用であり得る。しかし、考慮因子、例えば免疫原性、生産の実現可能性、副作用等を配慮し得る。本発明の1つの実施形態では、好ましい毒素は、ゲロニン(gelonin)、ブガニン(bouganin)、サポリン(saporin)、リシン、リシンA鎖、ブリョジン(bryodin)、ジフテリア、レストリクトシン(restrictocin)、ジフテリア毒素、シュードモナス属外毒素A及びそれらの変異体から成る群より選択される。
好ましい実施形態では、毒素はシュードモナス属外毒素A又はその変異体である。
【0119】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の免疫毒素の毒素は、PE38KDEL(配列番号9)と呼ばれるPEの38kDa変異体を含む組換え毒素である。天然では、PEは、3つのドメイン:結合ドメイン、転位ドメイン及びADPリボシル化ドメイン、から構成される66kDaタンパク質である。組換え免疫毒素は、PEの細胞結合ドメインを欠失させ、それをもう1つ別の標的部分、本発明者らの場合は本発明のリガンド、例えば構成的にインターナライズするCMV GPCRに対して高親和性を有するケモカイン誘導体で置換することによって作製される。
【0120】
それ故、シュードモナス属外毒素PE38は、Genbankアクセッション番号K01397に従って、転位ドメイン(ドメインII、配列番号8の253〜364位から成るアミノ酸配列)、ドメイン1bの一部(配列番号8の381〜399位から成るアミノ酸配列)及びADPリボシル化ドメイン(ドメインIII、アミノ酸400〜612)から成る。
【0121】
シュードモナス属外毒素Aを含む免疫毒素は、付属の実施例において概説する方法を用いて作製され得る。これらの方法は他の免疫毒素の作製に適合させ得る。これらにおいては、免疫毒素のリガンドと毒性部分の間で翻訳融合物を作製する。
【0122】
本発明の好ましい免疫毒素は配列番号10である。
【0123】
配列番号11を含む免疫毒素も好ましい。
【0124】
変異体
本発明はまた、本発明の好ましいポリペプチドの変異体及びフラグメントを包含する。より詳細には、本発明は、本発明の免疫毒素の変異体、本発明の免疫毒素のリガンド部分の変異体、及び本発明の免疫毒素の毒性部分の変異体を包含する。1つの特定実施形態では、変異体は、本発明の好ましいポリペプチドのフラグメントである。
【0125】
変異体は、天然に生じるか又は、例えば遺伝子操作によって、人工的に作製され得る。さらに、変異体は機能的変異体であり得、その場合、機能性は本発明の好ましいポリペプチドの機能に関して定義される。従って、リガンドの機能的変異体は、本発明の受容体に結合し得る変異体である。リガンドの特定の好ましい機能的変異体は、CMVによってコードされる構成的にインターナライズする受容体、例えばヒトCMVによってコードされるケモカイン受容体、例えばUS28、US27、UL33又はUL78受容体に結合し得る変異体である。
【0126】
本発明のポリペプチド及びそれらをコードするDNAセグメントの構造に修飾及び変更を加えて、望ましい特徴を備えたタンパク質又はペプチドをコードする機能的変異体をまだ入手し得る。以下は、機能的変異体、又はさらには改善された第二世代分子を作製するためにタンパク質のアミノ酸を変化させることに基づく考察である。アミノ酸変化は、遺伝子暗号に従って、DNA配列のコドンを変化させることによって達成され得る。
【0127】
タンパク質の生物学的機能活性を定義するのはそのタンパク質の相互作用能力と性質であるので、タンパク質配列内、及び言うまでもなく、その基礎であるDNAコード配列内である種のアミノ酸配列置換を実施することができ、それでもなお同様の性質を有するタンパク質を得ることができる。それ故、本発明のポリペプチド又は前記ペプチドをコードする対応するDNA配列内で、それらの生物学的有用性又は活性を評価し得るほどに失わなければ、様々な変更を行い得ることが本発明者らによって考慮される。
【0128】
そのような変更を行う場合、アミノ酸の疎水親水指数を考慮し得る。タンパク質に相互作用性生物学的機能を与える上での疎水親水アミノ酸指数の重要性は、当分野において一般的に了解されている(Kyte and Doolittle, 1982)。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性が、生じるタンパク質の二次構造に寄与し、それが次に、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原等とタンパク質の相互作用を定義することは広く認識されている。各々のアミノ酸には、それらの疎水性特性及び電荷特性に基づいて疎水親水指数(hydropathic index)が割り当てられており(Kyte and Doolittle, 1982)、これらは以下の通りである。イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)。
【0129】
特定のアミノ酸を、類似の疎水親水指数又はスコアを有する他のアミノ酸によって置換し、それでもなお類似の生物活性を有するタンパク質を生じ得ること、すなわち生物学的機能性において等価のタンパク質を入手し得ることは当分野において公知である。そのような変更を行う場合、疎水親水指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがより一層特に好ましい。また、同様のアミノ酸の置換が親水性に基づいて有効に行われ得ることも当分野において了解されている。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,554,101号は、タンパク質の最大局所平均親水性が、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるので、タンパク質の生物学的性質と相関すると述べている。
【0130】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている。アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。あるアミノ酸を、類似の親水性値を有するもう1つ別のアミノ酸によって置換し、それでもなお生物学的に等価の、特に免疫学的に等価のタンパク質を入手し得ることは了解されている。そのような変更を行う場合、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがより一層特に好ましい。
【0131】
上記で概説したように、アミノ酸置換は一般に、それ故、アミノ酸側鎖置換の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさ等に基づく。前記特性のいくつかを考慮に入れた例示的な置換は当業者に周知であり、以下を含む。アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;及びバリン、ロイシン及びイソロイシン。
【0132】
変異体は、所定の配列に対する配列類似性又は配列同一性によって表わされ得る。好ましい実施形態では、所定の配列は、本発明のポリペプチドの配列である。
【0133】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸の配列同一性パーセントを決定するには、最適比較のために配列を整列する(例えば2番目のアミノ酸又は核酸配列との最適アラインメントのために1番目のアミノ酸又は核酸配列の配列内にギャップを導入することができる)。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。1番目の配列内の位置が2番目の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められているとき、それらの分子はその位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つの配列によって共有される同一位置の数の関数である。1つの実施形態では、2つの配列は同じ長さである。
【0134】
アミノ酸配列の「配列同一性」の程度は、アミノ酸配列によって共有される位置の同一アミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の「配列類似性」の程度は、アミノ酸配列によって共有される位置のアミノ酸、すなわち構造的に関連するアミノ酸の数の関数である。配列同一性は、上述した配列比較アルゴリズムによって又は目視検査によって決定される。
【0135】
好ましくは、本発明の変異体内の残基位置は、本発明の好ましいポリペプチドと比較したとき保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0136】
ここで使用する保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸(アミノ酸の所定の群内の)によるもう1つ別のアミノ酸(同じ群内の)の置換に関し、前記の2つのアミノ酸は類似の又は実質的に類似の特徴を示す。
【0137】
ここで適用する「保存的アミノ酸置換」という用語の意味の中で、1つのアミノ酸は、ここで以下に示すアミノ酸の群の中のもう1つ別のアミノ酸を置換し得る。
極性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr及びCys)
非極性側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro及びMet)
脂肪族側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala Val、Leu、Ile)
環状側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp、His、Pro)
芳香族側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp)
酸性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu)
塩基性側鎖を有するアミノ酸(Lys、Arg、His)
アミド側鎖を有するアミノ酸(Asn、Gln)
ヒドロキシ側鎖を有するアミノ酸(Ser、Thr)
硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(Cys、Met)
中性の弱い疎水性アミノ酸(Pro、Ala、Gly、Ser、Thr)
親水性の酸性アミノ酸(Gln、Asn、Glu、Asp)、及び
疎水性アミノ酸(Leu、Ile、Val)
【0138】
好ましい保存的アミノ酸置換群は以下の通りである。バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミン。
【0139】
本発明の1つの実施形態では、変異体は、非天然アミノ酸、例えば非天然側鎖を有するD−アミノ酸、β−アミノ酸又はL−アミノ酸を含む。そのような非天然アミノ酸は、変異体のその受容体への結合を最適化する、毒性を高める、副作用を低減する、変異体の薬物動態を最適化する等のために望ましいと考えられる。
【0140】
従って、本発明に従った変異体又はそのフラグメントは、当該配列の同じ変異体又はそのフラグメント内に、又は当該配列の異なる変異体又はそのフラグメントの中に、少なくとも1つの置換、例えば互いに独立して導入される複数の置換を含み得る。
【0141】
同じ変異体又はそのフラグメントが、ここで上記に定義した保存的アミノ酸の2以上の群からの2以上の保存的アミノ酸置換を含み得ることは上記の概説から明らかである。
【0142】
本発明において使用する機能的変異体は、1つの好ましい実施形態によれば、本発明の所定のポリペプチドの対応する機能性を参照することによって確立される。
【0143】
本発明の1つの実施形態では、配列番号2(CX3CL1)のすべての機能的変異体は、それらが配列番号2に対して示す同一性又は類似性の程度のかかわりなく、本発明の範囲内に含まれる。この理由は、配列番号2の一部の領域が、生じるフラグメントの結合活性にいかなる有意の影響を及ぼすことなく、容易に変異し得る又は完全に欠失され得る可能性が極めて高いためである。
【0144】
置換によって得られる機能的変異体は、機能的に類似のアミノ酸側鎖を含む残基が置換される場合、何らかの形態又は程度の活性を十分に示し得、それにもかかわらずより低い配列同一性を有し得る。これに関して機能的に類似するとは、側鎖の支配的な特徴、例えば疎水性、塩基性、中性又は酸性、又は立体的なかさの存在又は不在を指す。従って、本発明の1つの実施形態では、配列同一性の程度は、変異体が本発明に従った好ましいポリペプチドの機能的変異体であることの主要な尺度ではない。
【0145】
変異体が機能的変異体であるかどうかはアッセイによって判定できる。例えばリガンドの機能性は、機能的パラメータ、例えば本発明の所定の受容体に結合する能力によって判定され得る。受容体結合は、付属の実施例において概説するような、競合結合アッセイ、飽和結合アッセイ、蛍光偏光アッセイ、ビアコアアッセイ及び表面プラズモン共鳴に基づくアッセイによって測定され得る。
【0146】
免疫毒素変異体の機能性は、例えば付属の実施例において概説するようなCMV感染細胞に対する毒性に基づく、生物学的アッセイにおいて測定され得る。
【0147】
機能的変異体の機能は、それ故、状況に依存する。
【0148】
受容体
CMVゲノムは、7回膜貫通型受容体をコードするいくつかの遺伝子(例えばUS28、US27、UL33及びUL78)を含み、少なくともUS28は機能的ケモカイン受容体である。これらの受容体はCMV感染細胞の表面で発現され、その環境においてケモカインに応答することができるようになる。ウイルスそれ自体は、本質的に非運動性であるため、及びヒト細胞によってコードされるケモカイン及びそれらの受容体は、身体を通る白血球及び他の細胞の移動を調節することが公知であるため、CMVによってコードされるケモカイン受容体は、感染の間及び感染後に身体を通るCMVの播種を促進するためにウイルスによってコードされると思われる。
【0149】
CMVによってコードされるケモカイン受容体はCMV感染細胞上で発現されるので、これらの受容体は、CMV感染細胞に対する免疫毒素のための標的として有用である。
【0150】
免疫金コロイド電子顕微鏡法により、US28は主として多胞性エンドソームに局在することが認められる。このタンパク質の重要でない割合(多くても20%)は、細胞表面でも発現される。抗体供給(antibody-feeding)実験は、細胞表面のUS28が構成的なリガンド非依存性エンドサイトーシスを受けることを指示する。ヨウ素化リガンドを使用したさらなる生化学的分析は、US28が速やかにインターナライズされたことを示す。
【0151】
他のHCMVタンパク質の不在下で発現されるとき、標識US28分子は主として細胞内に位置する。US28の局在は、初期エンドソーム及び後期エンドソーム/リソソームについてのマーカーと有意に重なり、このウイルスタンパク質が、少なくとも部分的には、エンドサイトーシス経路内に位置することを示唆する。超薄凍結切片における免疫金標識US28−GFPの電子顕微鏡検査により、このタンパク質が、後期エンドソームの特徴を有し、後期エンドソームマーカーCD63及びリゾビスホスファチジン酸に対する抗体で標識することができる多胞体に関連することが認められる。US28−GFPの標識は、これらの構造の制限膜及び内部小胞の両方で認められる。加えて、US28−GFPは、形質膜及び初期エンドソームに相当し得る小管及び小胞にある程度位置する。
【0152】
この細胞表面US28は、速やかな構成的エンドサイトーシス及びリサイクリングを受けることが認められる。インターナリゼーションの割合は、1分当たり細胞表面プールの7%であり、60分後には初期表面プールの90%までが細胞内にある。これらのインターナリゼーション特性は、活性化ケモカイン受容体のものに類似する。ホルボールエステル及びSDF−1の両方が細胞ケモカイン受容体CXCR4のエンドサイトーシスを誘導することが以前に明らかにされている。US28エンドサイトーシスの反応速度は、SDF−1が誘導するCXCR4のインターナリゼーションに関して見られるものに類似し、ホルボールエステル誘導の取込みよりも有意に速い。US28の迅速なエンドサイトーシスは、リガンド、ランテスによって影響されず、又はUS28受容体に架橋する潜在能を有する二価トレーサー抗体Q4120の結合によって影響を受けない。細胞が細胞表面に一定レベルのUS28を保持するという事実は、構成的エンドサイトーシスは起こるが、インターナライズされたUS28がリサイクルされることを示唆する。シクロヘキシミド処理は、細胞表面のUS28を有意に減少させない。さらに、抗体供給実験においてリサイクリングが直接明らかにされる。興味深いことに、CD4−US28上でインターナライズされた抗体分子は、抗体処理したCD4−US28細胞の凍結切片を免疫標識することによって多胞性エンドソームにおいて認めることができ、US28の多胞体プールがリサイクリング工程の一部であり得ることを示唆する。これに関して、US28のリサイクリング経路は、同じく多胞体の内膜で認められるが形質膜を通してリサイクルできる、リソソームテトラスパニンCD63について述べられているものに類似すると考えられる。US28は細胞外ケモカインをインターナライズすることが示され、このウイルスケモカイン受容体がHCMV感染細胞の環境からCC及びCX3Cケモカインを分離し得ることを示唆した。構成的エンドサイトーシスは、おそらくUS28に結合するいかなるリガンドについても起こる。ひとたびインターナライズされると、リガンドは初期又は後期エンドソームにおいて受容体から解離され、最終的に分解され得る。
【0153】
CMVは、構成的にインターナライズするGPCRをコードするいくつかの遺伝子、例えばUS28、US27、UL33及びUL78をそのゲノム内に保持する。それ故本発明の1つの実施形態では、本発明の免疫毒素の標的である受容体は、ヒトCMVタンパク質US28(配列番号3)、US27(配列番号4)、UL33(配列番号5)及びUL28(配列番号6)又は天然に生じるその変異体から成る群より選択される。
【0154】
US28は、特定のヒト及びウイルスケモカインについての機能的受容体として働くタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)である。CMVによる細胞の感染後、US28が感染細胞の表面で発現され、その環境においてケモカインに応答することができるようになる。US28受容体は、様々なアッセイ形式において多様なヒト、マウス及びウイルスによってコードされるCCケモカインに結合することが示された。加えて、CX3Cケモカイン、フラクタルカイン(CX3CL1とも称される)は、非常に高い親和性(KI50pM)でUS28に結合する。フラクタルカインは、特定の内皮細胞表面及び樹状細胞(DC)の集団で発現され、それ故CMV感染細胞が循環から組織腔に入る入口を規定し、並びにDC内に定住場所を見出し得る。好ましい実施形態では、受容体はUS28又は天然に生じるその変異体である。
【0155】
US28は構成的にインターナライズする受容体である。従ってUS28に結合するケモカイン又は他の化合物は、この受容体を発現する細胞にインターナライズされる。同様に、US28に結合する免疫毒素は、毒素がその細胞傷害機能を及ぼすことができる、CMV感染細胞内へと輸送される。
【0156】
いくつかの試験は、US28がリガンド結合に応答してシグナル伝達し得ることを示した。また別の試験は、US28が構成的に活性であることを示した。本文中で、「構成的に活性なGタンパク質共役」という用語は、受容体リガンド(アゴニスト)による活性化を伴わずにシグナルを媒介するGタンパク質共役受容体に関する。活性GPCRは少なくとも1つの活性Gタンパク質に結合する。Gタンパク質は、GTPに結合しているとき活性である。GTPのGDPへの加水分解は静止状態のGタンパク質を再生する。
【0157】
US28タンパク質をコードする遺伝子は、ヒトヘルペスウイルス5型(HHV5)(実験室株AD169)、全ゲノムGenbankアクセッション番号NC_001347としても知られるヒトサイトメガロウイルス(CMV)ゲノムの一般的に注釈によれば、ヒトサイトメガロウイルスオープンリーディングフレーム(ORF)US28に局在する。
【0158】
ヒトCMVの配列は単離物によって異なり、それ故US28の多数のゲノム変異体が存在する。US27、UL33及びUL78と同様に、US28、US27、UL33及びUL78という用語は、本発明において使用されるとき、CMVによってコードされるタンパク質のすべての天然に生じる変異体を包含することが了解されるべきである。
【0159】
以下のリストは、Genbankにおいて入手可能な94個のUS28アミノ酸配列へのアクセッション番号を示す。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0160】
薬剤としての免疫毒素
サイトメガロウイルス(CMV)は、免疫無防備状態の患者、例えばAIDS患者、新生児、及び移植レジメンの一部として免疫抑制薬を投与された個人において疾患を引き起こすように出現する、重要なヒト病原体である。これらの個人では、急性又は再興感染におけるCMVの帰結は深刻であり得、例えば、数ある病変の中でも特に、網膜炎、脳炎及びニューモシスチスを含み得る。さらに、免疫無防備状態宿主では、CMVは持続的な生涯にわたる感染を確立し、それを通して様々な炎症状態、例えば心臓移植及びアテレクトミー後の冠動脈閉塞及び血管形成術後の再狭窄に結びついてきた。CMVは、宿主の急性感染の間並びに生涯にわたる潜伏期の間、白血球と相互作用する。それ自体、白血球はCMV誘導性疾患において重要な役割を果たし、感染の急性期にはウイルスの伝播のための媒体として及び生涯の潜伏期の間の定住部位として関係づけられてきた。
【0161】
本発明の免疫毒素は、CMV感染細胞を標的し、死滅させる、すなわちCMV感染個体、例えばAIDS患者、新生児、及び移植レジメンの一部として免疫抑制薬を投与された個人及び免疫応答性宿主を治療するために使用できるので、薬剤として有用である。
【0162】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の免疫毒素の薬剤としての使用に関する。それ故、本発明の免疫毒素は、CMV感染の治療又は予防のための薬剤を製造するための使用に関する。
【0163】
本発明の免疫毒素は、CMV感染、もしくはCMV感染の何らかの症状の確立又は進行のためにも使用され得る。
【0164】
本発明の免疫毒素はまた、HIV感染患者が特にCMV感染を起こしやすいことは周知であるので、HIV感染患者におけるCMV感染又はCMV感染の何らかの症状の確立又は進行を予防するために使用し得る。
【0165】
さらに、本発明のCMV感染は、網膜、心臓、肝臓、肺、脾臓又は血液細胞から成る群より選択される組織に局在し得る。
【0166】
免疫毒素の好ましい使用は、CMV感染の治療又は予防のための個体が、HIV患者、新生児及び免疫抑制患者、骨髄移植患者及び臓器移植患者から成る群より選択される免疫無防備状態患者である治療をさらに含む。
【0167】
免疫毒素のさらなる好ましい使用は、CMV感染の治療又は予防のための個体が、冠動脈疾患に罹患している患者である治療を含む。
【0168】
免疫毒素のさらなる好ましい使用は、CMV感染の治療又は予防のための個体が胎児/新生児である治療を含む。
【0169】
本発明の医薬組成物
本発明の免疫毒素は、動物、特に哺乳動物における、予防的治療を含む、疾患及び障害及び/又は病的状態の治療及び診断のために使用できるが、最も好ましくはヒトにおけるこれらの目的のために使用される。さらに、本発明の免疫毒素は、健常個人及び健常動物においてその生理的状態を変化させるためにも使用できる。
【0170】
そのような治療又は診断では、本発明の免疫毒素は、医薬的に許容される担体、及び場合により、打錠剤(tabletting agents)、湿潤剤、結合剤及び充填剤、防腐剤、例えば抗酸化剤及び抗菌剤、緩衝剤及び塩をさらに含む医薬組成物の形態で投与される。好ましい担体は、注射用媒質、特に水を含む。組成物は、経口、経腸、直腸及び非経口経路を含む何らかの従来の経路によって投与される。非経口経路は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔注射を含む。本発明の免疫毒素はまた、吸入によって、鼻スプレーとして、及び皮膚に局所的に投与され得る。それらはまた、硬膜外、髄腔内及び脳室内に投与され得る。
【0171】
特に、本発明の免疫毒素の薬理的に有効な量を含有する医薬組成物は、生理的状態の変化、CMV関連疾患の診断、予防又は治療処置のために、動物、特にヒトに投与される。そのような状態の例は、数ある病変の中でも特に、下痢、網膜炎、脳炎及びニューモシスチスを引き起こし得る急性又は再興性のCMV感染を含む。
【0172】
そこで、1つの実施形態では本発明は、本発明に従った免疫毒素及びその何らかの生理的に許容される塩を含有する医薬組成物に関する。もう1つの実施形態では、本発明は、医薬的に許容される担体をさらに含有する医薬組成物に関する。
【0173】
本発明に従った使用のための組成物における医薬的に許容される賦形剤の選択及びその最適濃度は一般には予測できず、その実験測定に基づいて決定されねばならない。また医薬的に許容される賦形剤が医薬組成物における使用に適するかどうかは、一般にどのような種類の投与形態が選択されるかに依存する。しかし、医薬製剤の当業者は、例えば「Remington: The science and practice of pharmacy」20th ed. Mack Publishing, Easton PA, 2000 ISBN 0-912734-04-3に指針を見出すことができる。
【0174】
医薬的に許容される賦形剤は、組成物が投与される個体に対して実質的に無害な物質である。そのような賦形剤は通常、国の医薬品局によって与えられる必要条件を満たす。公式薬局方、例えばイギリス薬局方、米国薬局方及び欧州薬局方は、周知の医薬的に許容される賦形剤についての基準を定めている。
【0175】
本発明の医薬組成物は、非経口、静脈内、経口、局所、経粘膜又は経皮組成物であり得る。
【0176】
以下において、本発明に従った使用のための関連医薬組成物についての総説を述べる。総説は特定投与経路に基づく。しかし、医薬的に許容される賦形剤が異なる投与形態又は組成物において使用され得る場合、特定の医薬的に許容される賦形剤の適用は、特定投与形態又は賦形剤の特定機能に限定されない。
【0177】
非経口組成物:
全身適用に関しては、本発明に従った組成物は、ミクロスフェア及びリポソームを含む、従来の非毒性の医薬的に許容される担体及び賦形剤を含有し得る。
【0178】
本発明に従った使用のための組成物は、すべての種類の固体、半固体及び液体組成物を含む。特に関係する組成物は、例えば溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、移植用錠剤及びインプラントである。
【0179】
医薬的に許容される賦形剤は、溶媒、緩衝剤、防腐剤、保湿剤、キレート化剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁化剤、ゲル形成剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤及び湿潤剤を含み得る。種々の作用物質の例については以下参照。
【0180】
局所、経粘膜及び経皮組成物
粘膜又は皮膚への適用に関しては、本発明に従った使用のための組成物は、ミクロスフェア及びリポソームを含む、従来の非毒性の医薬的に許容される担体及び賦形剤を含有し得る。
【0181】
本発明に従った使用のための組成物は、すべての種類の固体、半固体及び液体組成物を含む。特に関係する組成物は、例えばペースト、軟膏、親水軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、溶液、乳剤、懸濁液、ローション、リニメント、レゾリブレット(resoriblets)、坐薬、浣腸剤、ペッサリー、成形ペッサリー、膣カプセル、膣錠剤、シャンプー、ゼリー、石けん、スティック、スプレー、粉末、フィルム、泡、パッド、スポンジ(例えばコラーゲンスポンジ)、パッド、包帯(例えば吸収性創傷包帯など)、飲薬、絆創膏、硬膏及び経皮送達システムである。
【0182】
医薬的に許容される賦形剤は、溶媒、緩衝剤、防腐剤、保湿剤、キレート化剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁化剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、坐薬基剤、浸透促進剤、香料、皮膚保護剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤及び湿潤剤を含み得る。種々の作用物質の例については以下参照。
【0183】
経口組成物:
粘膜又は皮膚への適用に関しては、本発明に従った使用のための組成物は、ミクロスフェア及びリポソームを含む、従来の非毒性の医薬的に許容される担体及び賦形剤を含有し得る。
【0184】
本発明に従った使用のための組成物は、すべての種類の固体、半固体及び液体組成物を含む。特に関係する組成物は、例えば溶液、懸濁液、乳剤、非被覆錠剤、放出制御錠剤、胃抵抗性錠剤、口腔内崩壊錠剤、発泡性錠剤、チュアブル錠剤、軟カプセル、硬カプセル、放出制御カプセル、胃抵抗性カプセル、非被覆顆粒、発泡性顆粒、経口使用のための液体の調製用顆粒、被覆顆粒、胃抵抗性顆粒、放出制御顆粒、経口投与用粉末及び経口使用のための液体の調製用粉末である。
【0185】
医薬的に許容される賦形剤は、溶媒、緩衝剤、防腐剤、保湿剤、キレート化剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁化剤、ゲル形成剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、被覆剤及び湿潤剤を含み得る。種々の作用物質の例については以下参照。
【0186】
様々な作用物質の例:
溶媒の例は、水、アルコール、植物油又は魚油(例えばアーモンド油、ヒマシ油、カカオバター、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ケシ油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油及び茶油のような食用油)、鉱物油、脂肪油、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、液体ポリアルキルシロキサン、及びそれらの混合物であるが、これらに限定されない。
【0187】
緩衝剤の例は、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素(hydrogenphosphoric acid
)、ジエチルアミン等であるが、これらに限定されない。
【0188】
本組成物における使用のための防腐剤の例は、パラベン、例えばメチル、エチル、プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ブロノポール、ブロニドックス、MDMヒダントイン、ヨードプロピニルブチルカルバメート、EDTA、塩化ベンザルコニウム及びベンジルアルコール、又は防腐剤の混合物であるが、これらに限定されない。
【0189】
保湿剤の例は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素、及びそれらの混合物であるが、これらに限定されない。
【0190】
キレート化剤の例は、EDTAナトリウム及びクエン酸であるが、これらに限定されない。
【0191】
抗酸化剤の例は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン、及びそれらの混合物であるが、これらに限定されない。
【0192】
乳化剤の例は、天然に生じるゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム;天然に生じるホスファチド、例えばダイズレシチン;モノオレイン酸ソルビタン誘導体;羊毛脂;羊毛アルコール;ソルビタンエステル;モノグリセリド;脂肪アルコール;脂肪酸エステル(例えば脂肪酸のトリグリセリド);及びそれらの混合物であるが、これらに限定されない。
【0193】
懸濁化剤の例は、セルロース及びセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、アカシアゴム、アラビアゴム、トラガカント、及びそれらの混合物であるが、これらに限定されない。
【0194】
ゲル基剤及び増粘剤の例は、流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイド状シリカ又はアルミニウム、亜鉛石けん、グリセロール、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、Carbopol(登録商標)、親水性ポリマー、例えばデンプン又はセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び他のセルロース誘導体、水膨潤性親水コロイド、カラギーナン、ヒアルロン酸塩(例えば、場合により塩化ナトリウムを含むヒアルロン酸ゲル)、及びアルギン酸プロピレングリコールを含むアルギン酸塩であるが、これらに限定されない。
【0195】
軟膏基剤の例は、密ろう、パラフィン、セタノール、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(スパン(Span))、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドの間の縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(トゥイーン(Tween))であるが、これらに限定されない。
【0196】
疎水性軟膏基剤の例は、パラフィン、植物油、獣脂、合成グリセリド、ろう、ラノリン及び液体ポリアルキルシロキサンであるが、これらに限定されない。
【0197】
親水性軟膏基剤の例は、固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)であるが、これらに限定されない。
【0198】
粉末成分の例は、アルギン酸塩、コラーゲン、ラクトース、創傷に適用したときゲルを形成する(液体/創傷滲出物を吸収する)ことができる粉末であるが、これらに限定されない。
【0199】
希釈剤及び崩壊剤の例は、ラクトース、ショ糖、エムデックス、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、デンプン及び微結晶セルロースであるが、これらに限定されない。
【0200】
結合剤の例は、ショ糖、ソルビトール、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールであるが、これらに限定されない。
【0201】
湿潤剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80であるが、これらに限定されない。
【0202】
潤滑剤の例は、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化ケイ素、プレシロール及びポリエチレングリコールであるが、これらに限定されない。
【0203】
被覆剤の例は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース及びポリメチルアクリレートであるが、これらに限定されない。
【0204】
坐薬基剤の例は、カカオ脂、固相脂(adeps solidus)及びポリエチレングリコールであるが、これらに限定されない。
【0205】
医薬組成物は、好ましくは本発明の免疫毒素の有効用量を含有する。医薬組成物は、10μg〜30000μg/日の用量の免疫毒素を含有し得る。
【0206】
本発明の免疫毒素は、薬剤の0.001〜99重量%、典型的には0.01〜75重量%、より典型的には0.1〜20重量%、特に1〜10重量%の量で薬剤中に存在する。
【0207】
本発明の医薬組成物は、単回投与として、定期的又は連続投与として投与され得る。
【0208】
現在のところ、移植患者及びHIV/AIDS患者におけるCMV感染の治療のための最も一般的な薬剤は、最初は単純ヘルペスウイルス(HSV)のために開発された一般薬、ガンシクロビル及びアシクロビルである。ガンシクロビル及びアシクロビルは、CMV並びにHSVに対する抑制作用を有する。Gileadからのビスタイドは、より古い一般薬に代わってRocheのバルサイトと共に成長し、市場を占有すると予想されるより新しい化合物である。
【0209】
本発明の医薬組成物は、1又はそれ以上の抗ウイルス治療薬、例えばガンシクロビル及びアシクロビル、ビスタイド、バルサイトなどと共に同時に、別々に又は連続的に投与し得る。
【0210】
本発明の医薬組成物は、抗HIV治療薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、融合阻害剤、逆転写酵素阻害剤及び/又はヌクレオシド類似体又はHAARTなどと共に併用投与し得る。
【0211】
特許薬又は一般薬のいずれの既存薬剤も、免疫無防備状態又は免疫抑制患者において感染を根絶することはできず、単にCMV疾患の進行を休止させるだけである。最近の臨床試験では、フォスカビルとガンシクロビルが、免疫無防備状態患者を治療するそれらの能力に関して比較された。結果は、フォスカビルを使用して30%のより良好な感染の抑制を示した。しかし、フォスカビル治療下の患者の40%が、耐容できない吐気のためにその後ガンシクロビルに切り替えられた。これらの結果は、効果と毒性レベルの両方において改善の余地があることを示す。
【0212】
本発明の医薬組成物は、1又はそれ以上の免疫抑制治療薬、例えばシクロスポリンA、アザチオプリン、シクロホスファミド、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シロリムス及びバシリキシマブ(Basiliximab)(Simulect)、キメラ(ヒト/マウス)モノクローナル抗体、インターロイキン2受容体拮抗物質及び抗汎T細胞ポリクローナル及びモノクローナル抗体などと共に同時に、別々に又は連続的に投与し得る。
【0213】
さらに、(a)本発明の免疫毒素の有効量及び(b)同時、別個又は連続投与のための抗ウイルス薬、免疫抑制薬の群から選択される治療薬又は治療薬の組合せ、を含む、CMV感染の治療又は予防のためのキットが本発明に含まれる。
【0214】
本発明の核酸
さらに、本発明の免疫毒素をコードする核酸配列を含む核酸配列は本発明に含まれる。好ましい実施形態では、核酸配列は、配列番号10及び配列番号11から成る群より選択される免疫毒素をコードする核酸配列を含む。
【0215】
さらに、本発明の免疫毒素をコードする配列を含む発現ベクターが本発明に含まれる。
【0216】
好ましい実施形態では、発現ベクターは、配列番号10又は配列番号11をコードする核酸配列を含む。
【0217】
また、上記発現ベクターでトランスフェクトした宿主も本発明の一部である。
【0218】
本発明の免疫毒素を生産する方法
ここで述べる免疫毒素は、当分野で公知の何らかの適切な方法によって生産され得る。そのような方法は、免疫毒素をコードする核酸配列を構築し、適切な形質転換又はトランスフェクトした宿主においてその配列を発現させることを含む。
【0219】
ここで述べる免疫毒素をコードする核酸配列は、所望免疫毒素又はその部分又は変異体をコードする核酸配列を単離する又は合成することによって構築され得る。核酸配列は、化学合成によって、例えば所望免疫毒素のアミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドが設計される、オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用すること、及び好ましくは、免疫毒素が生産される宿主細胞において優先されるコドンを選択することによって作製され得る。例えば所望免疫毒素の部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを、PCR、連結又は連結連鎖反応(LCR)によって合成し、構築し得る。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には相補的構築のための5’又は3’突出末端を含む。
【0220】
ひとたび構築されれば、所望免疫毒素をコードする核酸配列を組換えベクターに挿入し、所望形質転換宿主細胞における免疫毒素の発現のために必要な制御配列に作動可能に連結する。
【0221】
すべてのベクター及び発現制御配列が、ここで述べる免疫毒素をコードする核酸配列を発現するために等しく良好に機能するとは限らないことは言うまでもなく了解されるべきである。同様に、すべての宿主が同じ発現系に関して等しく良好に機能するとは限らない。しかし、当業者は、過度の実験を必要とせずにこれらのベクター、発現制御配列及び宿主の中から選択し得る。例えばベクターを選択する場合、ベクターは宿主内で複製しなければならない又は染色体に組み込まれることができなければならないので、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、そのコピー数を調節する能力、及びベクターによってコードされる何らかの他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現も考慮すべきである。発現制御配列を選択する場合も、やはり様々な因子を考慮すべきである。これらは、例えば配列の相対的な強さ、その制御能、及び免疫毒素をコードする核酸配列との適合性、特に潜在的二次構造に関する適合性を含む。宿主は、選択されるベクターとのそれらの適合性、核酸配列によってコードされる産物についての宿主の感受性及び耐容性、それらの分泌特徴、免疫毒素を正しく折りたたむ能力、及びそれらの発酵又は培養必要条件を考慮して選択されるべきである。
【0222】
組換えベクターは、自律複製ベクター、すなわち染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製とは独立しているベクター、例えばプラスミドであり得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞内に導入されたとき、宿主細胞ゲノム内に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製されるものである。
【0223】
ベクターは、好ましくは、所望免疫毒素をコードする核酸配列の転写のために必要な付加的なセグメントに作動可能に連結されている、発現ベクターである。ベクターは、典型的にはプラスミド又はウイルスDNAに由来する。ここで言及する宿主細胞における発現のための多くの適切な発現ベクターが、市販されているか又は文献において記述されている。真核生物宿主のための有用な発現ベクターは、例えばSV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルスからの発現制御配列を含むベクターを含む。具体的なベクターは、例えばpCDNA3.1(+)|Hyg(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)及びpCI−neo(Stratagene,La Jola,CA,USA)である。細菌宿主のための有用な発現ベクターは、公知の細菌プラスミド、例えばpBR322、pET3a及びpET12a(いずれもNovagen Inc.,WI,USAより)を含む大腸菌(E. coli)からのプラスミド、より広い宿主範囲のプラスミド、例えばRP4、ファージDNA、例えばλファージの数多くの誘導体、例えばNM989、及び他のDNAファージ、例えばM13及び糸状一本鎖DNAファージを含む。酵母細胞のための有用な発現ベクターは、2μプラスミド及びその誘導体、POT1ベクター(米国特許第4,931,373号)、(Okkels, Ann. New York Acad. Sci. 782, 202-207, 1996)に述べられているpJSO37ベクター及びpPICZ A、B又はC(Invitrogen)を含む。昆虫細胞のための有用なベクターは、pVL941、pBG311 (Cate et al., 「Isolation of the Bovine and Human Genes for Mullerian Inhibiting Substance And Expression of the Human Gene In Animal Cells」, Cell, 45, pp. 685-98 (1986))、pBluebac 4.5及びpMelbac(いずれもInvitrogenより入手可能)を含む。
【0224】
本発明における使用のための他のベクターは、ここで述べる免疫毒素をコードする核酸配列がコピー数増幅することを許容するものを含む。そのような増幅可能ベクターは当分野において周知である。それらは、例えばDHFR増幅(例えばKaufman, 米国特許第4,470,461号, Kaufman and Sharp, 「Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene: Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression」, Mol. Cell. Biol., 2, pp. 1304-19 (1982)参照)及びグルタミンシンテターゼ(「GS」)増幅(例えば米国特許第5,122,464号及び欧州特許第338 841号参照)によって増幅され得るベクターを含む。
【0225】
組換えベクターは、ベクターが当該宿主細胞において複製することを可能にするDNA配列をさらに含み得る。そのような配列の一例(宿主細胞が哺乳動物細胞であるとき)は、SV40複製起点である。宿主細胞が酵母細胞であるとき、ベクターが複製することを可能にする適切な配列は、酵母プラスミド2μ複製遺伝子REP1−3及び複製起点である。
【0226】
ベクターはまた、選択マーカー、例えばその産物が宿主細胞における欠陥を補完する遺伝子、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又はスキゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)TPI遺伝子(P. R. Russell, Gene 40, 1985, pp. 125-130によって記述されている)、又は薬剤、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン又はメトトレキサートに対する耐性を付与するものを含み得る。糸状菌に関しては、選択マーカーは、amdS、pyrG、arcB、niaD、sCを含む。
【0227】
多種多様な発現制御配列が本発明において使用され得る。そのような有用な発現制御配列は、前記発現ベクターの構造遺伝子に関連する発現制御配列並びに原核又は真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知の何らかの配列、及びそれらの様々な組合せを含む。
【0228】
哺乳動物細胞において転写を指令するための適切な制御配列の例は、SV40及びアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、例えばアデノウイルス2主要後期プロモーター、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV)、ヒト伸長因子1α(EF−1α)プロモーター、ショウジョウバエ(Drosophila)最小熱ショックタンパク質70プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトユビキチンC(UbC)プロモーター、ヒト成長ホルモンターミネーター、SV40またはアデノウイルスElb領域ポリアデニル化シグナル及びコザックコンセンサス配列 (Kozak, M. J MoI Biol 1987 Aug 20; 196(4) :947-50)を含む。
【0229】
哺乳動物細胞における発現を改善するため、免疫毒素をコードするヌクレオチド配列の5’非翻訳領域内に合成イントロンを挿入し得る。合成イントロンの一例は、プラスミドpCI−Neo(Promega Corporation,WI,USAより入手可能)からの合成イントロンである。
【0230】
昆虫細胞において転写を指令するための適切な制御配列の例は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)多角体病ウイルス塩基性タンパク質プロモーター、バキュロウイルス前初期遺伝子1プロモーター及びバキュロウイルス39K後初期遺伝子プロモーター、及びSV40ポリアデニル化配列を含む。
【0231】
酵母宿主細胞における使用のための適切な制御配列の例は、酵母α交配系のプロモーター、酵母トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)プロモーター、酵母解糖系遺伝子又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子からのプロモーター、ADH2−4cプロモーター及び誘導的GALプロモーターを含む。
【0232】
糸状菌宿主細胞における使用のための適切な制御配列の例は、ADH3プロモーター及びターミネーター、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼトリオースリン酸イソメラーゼ又はアルカリプロテアーゼ、黒色アスペルギルス(A. niger)α−アミラーゼ、A.ニガー又はA.ニジュランス(A. nidulans)グルコアミラーゼ、A.ニジュランスアセトアミダーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ又はリパーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、TPI1ターミネーター及びADH3ターミネーターを含む。
細菌宿主細胞における使用のための適切な制御配列の例は、lac系、trp系、TAC又はTRC系及びλファージの主要プロモーター領域のプロモーターを含む。
【0233】
細菌、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳動物、又は他の適切な動物細胞又は細胞系、並びにトランスジェニック動物又は植物を含む、いかなる適切な宿主も、ここで述べる免疫毒素又はその部分を発現するために使用され得る。1つの実施形態では、宿主細胞は真核宿主細胞、例えばグリコシル化することができる哺乳動物宿主細胞である。
【0234】
細菌宿主細胞の例は、グラム陽性細菌、例えばバチルス属(Bacillus)、例えばB.ブレビス(B. brevis)又は枯草菌(B. subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)又はストレプトミセス属(Streptomyces)の菌株、又はグラム陰性細菌、例えば大腸菌の菌株を含む。細菌宿主細胞へのベクターの導入は、例えばプロトプラスト形質転換によって(例えばChang and Cohen, 1979, Molecular General Genetics 168: 111-115参照)、コンピテント細胞(たとえばYoung and Spizizen, 1961, Journal of Bacteriology 81 : 823-829, or Dubnau and Davidoff-Abelson, 1971, Journal of Molecular Biology 56: 209-221参照)、電気穿孔法(例えばShigekawa and Dower, 1988, Biotechniques 6: 742-751参照)、又はコンジュゲーション(例えばKoehler and Thorne, 1987, Journal of Bacteriology 169: 5771-5278参照)を使用して実施され得る。
【0235】
適切な糸状菌宿主細胞の例は、アスペルギルス属、例えばA.オリゼ、黒色アスペルギルス又はA.ニジュランス、フザリウム属(Fusarium)又はトリコデルマ属(Trichoderma)の菌株を含む。真菌細胞は、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及びそれ自体が公知の方法での細胞壁の再生を含む工程によって形質転換し得る。アスペルギルス属宿主細胞の形質転換のための適切な手順は、欧州特許第238 023号及び米国特許第5,679,543号に述べられている。フザリウム属種を形質転換するための適切な方法は、Malardier et al., 1989, Gene 78: 147-156 及び国際公開広報第WO96/00787号によって述べられている。酵母は、Becker and Guarente, In Abelson, J.N. and Simon, M. I., editors, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Volume 194, pp 182-187, Academic Press, Inc., New York; Ito et al., 1983, Journal of Bacteriology 153: 163; and Hinnen et al., 1978, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75: 1920によって述べられている手順を用いて形質転換し得る。
【0236】
適切な酵母宿主細胞の例は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)、スキゾサッカロミセス、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、例えばP.パストリス(P. pastoris)又はP.メタノリカ(P. methanolica)、ハンセヌラ属(Hansenula)、例えばH.ポリモルファ(H. Polymorpha)又はヤロウィア属(Yarrowia)の菌株を含む。酵母細胞を異種DNAで形質転換し、そこから異種ポリペプチドを生産するための方法は、Clontech Laboratories,Inc,Palo Alto,CA,USAによって(YeastmakerTMYeast Tranformation System Kitのための製品プロトコールにおいて)、及びReeves et al., FEMS Microbiology Letters 99 (1992) 193-198, Manivasakam and Schiestl, Nucleic Acids Research, 1993, Vol. 21, No. 18, pp. 4414-4415 and Ganeva et al., FEMS Microbiology Letters 121 (1994) 159-164によって開示されている。
【0237】
適切な昆虫宿主細胞の例は、鱗翅目(Lepidoptora)細胞系、例えばヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf9またはSf21)又はイラクサギンウワバ(Trichoplusioa ni)細胞(High Five)(米国特許第5,077,214号)を含む。昆虫細胞の形質転換及び昆虫細胞における異種ポリペプチドの生産は、Invitrogenによって述べられているように実施し得る。
【0238】
適切な哺乳動物宿主細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えばCHO−K1;ATCC CCL−61)、ミドリザル細胞系(COS)(例えばCOS 1(ATCC CRL−1650)、COS 7(ATCC CRL−1651));マウス細胞(例えばNS/O)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞系(例えばATCC CRL−1632又はATCC CCL−10)、及びヒト細胞(例えばHEK 293(ATCC CRL−1573))、並びに組織培養下の植物細胞を含む。さらなる適切な細胞系は当分野において公知であり、公的預託機関、例えばAmerican Type Culture Collection,Rockville,Marylandから入手可能である。また、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞は、受容体の改善されたグリコシル化を与えるために、例えば米国特許第5,047,335号に述べられているように、シアリルトランスフェラーゼ、例えば1,6−シアリルトランスフェラーゼを発現するように修飾し得る。
【0239】
本発明はまた、本発明の免疫毒素の配列の1コピー又は数コピーを含む融合タンパク質を包含する。そのような融合タンパク質は、典型的には、上述した原理に従って、適切なDNAを利用することによる発現系の使用によって、及び当分野で周知の手順の適用によって製造される。
【0240】
本発明はまた、本発明の免疫毒素の1コピー又は数コピーのアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードするDNAを含むベクターを包含する。本発明によれば、DNAを、化学的に変化した非天然DNAに交換することができ、前記非天然DNAは、ペプチド又はタンパク質合成に関して基本的に天然DNAと同じ機能を与えることができる。さらに、本発明に従ったDNAはまた、RNAに交換することができる。非天然DNA又はRNAを動物、特にヒトに投与するとき、RNA又は非天然RNAを使用することは特に好都合であり、その理由は、RNA又は非天然DNAが動物又はヒトの内因性DNAと組み換わるのが回避され、それ故長期的な副作用の危険度を低下させるためである。
【0241】
また、免疫毒素を翻訳融合物として作製しないことも考慮される。その代りに、リガンドと毒素部分を別々に合成し、その後化学的手段又はタンパク質連結によって融合し得る。
【0242】
さらに、リガンド及び/又は毒素が、例えば化学合成によってインビトロで生産されるポリペプチドであり得ることも考慮される。
【0243】
さらに、リガンド及び/又は毒素がポリペプチドではなく、その代りに、例えば合成分子であり得ることも考慮される。
【0244】
AIDS/死亡への進行についてのマーカーとしてのCMV
高活性抗レトロウイルス療法(HAART)が使用可能になる以前は、サイトメガロウイルスはHIV感染患者における日和見感染の主要原因であり、AIDS及び死亡への加速的進行に結びついてきた。試験は、サイトメガロウイルス血症がHAARTの時代においてもまだHIV疾患及び死亡の進行にとっての重要な危険因子であるかどうかを検討した。
【0245】
方法。過去にCD4細胞数が100/μL以下であった374名の患者を前向き試験に登録した。連続的な血液試料をPCRによってサイトメガロウイルスに関して検査した。新たなサイトメガロウイルス疾患、新たなAIDSを定義づける障害、及び死亡の割合を、基線値に従った層化後37ヶ月間の平均フォローアップ期間にわたって算定し、フォローアップ期間中のいずれかの時点で最も新しいサイトメガロウイルスPCR状態を算定した。
【0246】
2969のPCRアッセイの所見。375名(12.6%)がサイトメガロウイルスDNAに関して陽性であった。259名(69.3%)の患者は、PCRによりサイトメガロウイルスに関して持続的に陰性であり;15名は持続的に陽性であり;及び100名は間欠的に陽性及び陰性であった。多変量モデルにおいて、時間依存性共変量(time-updated covariate)としてのサイトメガロウイルスPCR陽性状態は、新たなAIDSを定義づける障害への進行(2.22[95% CI 1.27〜3.88]p=0.005)及び死亡(4.14[1.97〜8.70]p=0.0002)の高い相対的比率と有意に関連した。
【0247】
解釈。PCRによる血液中のサイトメガロウイルスの検出は、HAARTの時代においてさえも予後不良の患者を同定し続ける。このウイルスがHIV疾患進行のマーカー又は決定因子であるかどうかを検討するための、サイトメガロウイルスに対して活性な薬剤の無作為化対照臨床試験が必要である。
【0248】
治療又は予防の方法
本発明はまた、本発明の免疫毒素の有効量を、それを必要とする個人に投与することを含む、CMV感染の治療又は予防の方法に関する。個人は、CMV感染を有する任意の個人又はCMVに感染する危険性のある任意の個人である。1つの実施形態では、個人は、HIV患者、新生児及び免疫抑制患者、骨髄移植患者及び臓器移植患者から成る群より選択される免疫無防備状態患者である。もう1つの実施形態では、個人は、冠動脈疾患に罹患している患者である。
【0249】
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、本発明の免疫毒素の有効量を、それを必要とする個人に投与することを含み、CMV感染が、個人の網膜、心臓、肝臓、肺、脾臓及び血液細胞から成る群より選択される組織に局在する、CMV感染の治療又は予防の方法に関する。
【0250】
さらなる実施形態では、本発明は、CMV感染又はCMV感染の何らかの症状の確立又は進行を予防するための方法に関する。
【0251】
本発明の様々な態様及びこれらの態様の特定実施形態の上記説明に関して、本発明の1つの態様及び/又は態様の1つの実施形態に関して上記で説明される又は言及される何らかの特徴及び特性はまた、類推により、記述される本発明の何らかの又はすべての他の態様及び/又は実施形態にも適用されることが了解されるべきである。
【実施例】
【0252】
[実施例1]
大腸菌における組換え免疫毒素、CX3CL1−PE38KDELの構築
フラクタルカインcDNAを、CX3CL1発現プラスミドpLSM103(Tracy Handelの好意により提供された)及びpRB1399(Ira Pastanの好意により提供された)からの外毒素PE38KDELから増幅した。標準PCR手法により、NcoI部位、his6タグ及び第Xa因子切断部位をCX3CL1のN末端に付加し、PE38配列とのオーバーラップをC末端に付加した。
【0253】
CX3CL1をプライマーCX3CL1(6his、Xa)S(tag cca tgg atg cac cac cac cac cac cac atc gaa ggt cgt cag cac cac ggt gtg acg)及びCX3CL1(PE38)AS(ctg ccg ccc tcg cca ttt cga gtt agg gca g)で増幅した。
PCR反応混合物は以下の通りであった:
各プライマー0.4μM
10×pfu(Stratagene)緩衝液5μl
dNTP 0.2μM
DMSO 5μl
pfu 0.5μl
pLSM103 100ng
50μlにするためのH2
PCR条件は以下の通りであった:
95℃、3分間
以下の35サイクル、
95℃、30秒間
60℃、40秒間
72℃、1分間
72℃、10分間
予想フラグメント長は291bpであった。
【0254】
CX3CL1とのオーバーラップをPE38のN末端に付加し、そのフラグメントをプライマーPE38(CX3CL1)S(cta act cga aat ggc gag ggc ggc agc ctg gc)及びPE38 KDEL AS(tag gaa ttc tta gag ctc gtc ttt cgg cg)で増幅した。PCR反応混合物及びPCR条件は上述した通りであった。フラグメントを、promega wizardキットを使用して1%アガロースゲルから精製し、CX3CL1(6his、Xa)S及びPE38 KDEL ASプライマーと共にPCR反応物に連結して、CX3CL1−PE38融合タンパク質免疫毒素(IMT)cDNAを作製した。
濃度及び条件は上記の通りであるが、PE38フラグメント1.25μl及びCX3CL1フラグメント0.25μlを鋳型DNAとした。
IMTフラグメントを上記のようにアガロースゲルから精製し、水40μl中に溶出した。(フラグメント長 1306bp)。
【0255】
IMT及び細菌発現ベクターpET24d(Novagen)をNcoI及びEcoRI制限酵素消化による粘着末端連結のために作製した。
IMT 40μl又はpET24dベクター2μg+EcoRI緩衝液10μl、NcoI 1μl、EcoRI 1μl、及び100μlにするための水を混合し、37℃で90分間インキュベートした。
両方のフラグメントを1volのフェノールと1volのクロロホルム中で連続的に精製し、2.5volの96%エタノール/0.1volの3M NaAc pH4.6で沈殿させた。フラグメントを、pET24dについては水30μl中に、IMTについては水10μl中に再懸濁し、粘着末端連結のために使用した。
【0256】
pET24d及びIMTの粘着末端連結
NcoI/EcoRI消化したpET24d 1μl及びNcoI/EcoRI消化したIMT 5μlを、10μlにするための水、2×クイックリガーゼ緩衝液10μl及びクイックT4 DNAリガーゼ1μlと混合し、室温で5分間インキュベートした。
【0257】
IMT構築物のクローニング
コンピテントF’細胞(Invitrogen)30μlを氷上で解凍し、IMT 2μlを添加して、氷上で15分間インキュベートした。
細菌に、水浴中42℃で60秒間熱ショックを与え、その後氷上で2分間インキュベートした。
SOC培地450μlを添加し、37℃で1時間インキュベートした。
細菌懸濁液125μlを、30μg/mlカナマイシンを含むLB寒天プレートに接種し、37℃でO/Nインキュベートした。
【0258】
細菌コロニーを採取し、LB+カナマイシン培地5ml中37℃でO/Nインキュベートした。F’細胞中のIMTの存在を確認するため、Qiagenのプラスミドミニプレップ精製キットを用いてプラスミドDNAを精製し、EcoRI及びNcoIで切断した。制限消化混合物は以下の通りであった:
プラスミド 5μl
EcoRI緩衝液 2μl
EcoRI 0.25μl
NcoI 0.25μl
水 12.5μl
反応物を37℃で90分間放置し、10μlをアガロースゲルで分析して、予想サイズ(1306bp)を有するフラグメントの存在を検出した。
【0259】
F’IMTの一晩培養物2mlを使用してLB培地100mlに接種し、プラスミドDNAマキシプレップを作製した。Qiagenのプラスミド「マキシプレップ」精製キットを用いてプラスミドを一晩培養物100mlから精製し、沈殿したDNAを水250μlに溶解した。IMTの存在を確認するため、プラスミドをEcoRI及びNcoIの両方で消化して1306bpのフラグメントを得、XhoIで消化して300bpのフラグメントを得る。プラスミドDNA濃度は0.22μg/μlと測定された。制限消化混合物は以下の通りであった。
プラスミド 11.5μl
EcoRI 1.5μl
NcoI 1.5μl
EcoRI緩衝液 10μl
水 75.5μl
又は
プラスミド 11.5μl
BSA 1μl
XhoI 1.5μl
NEB2 10μl
水 77μl
【0260】
両方の反応物を37℃で90分間インキュベートし、アガロースゲルで分析した。IMT配列を確認するため、プラスミドはベクター特異的プライマー、T7プロモータープライマー及びT7ターミネータープライマーを用いて配列決定して、IMTの正しい配列が確認された。
【0261】
IMT構築物のOrigami 2細胞(Novagen)への形質転換
化学的コンピテントorigami 2細胞50μlを氷上で解凍した。
IMT構築物75ngを添加し、反応物を氷上で5分間インキュベートした。
混合物を水浴中42℃で30秒間加熱し、氷上で15分間冷却した。
SOC 150μlを添加し、37℃で1時間インキュベートした。
IMTで形質転換したorigami 2細胞75μlを、テトラサイクリン及びカナマイシンを含む寒天プレートに添加し、37℃でO/Nインキュベートした。
1つのコロニーをクローニングし、増殖させた。
【0262】
大腸菌における組換え免疫毒素、CX3CL1−PE38KDELの発現
Origami 2細胞(Novagen)におけるIMT発現
LB培地30ml+30μg/mlのカナマイシン及び12.5μg/mlのテトラサイクリンを、IMTで形質転換したorigami 2細胞と共に37℃でO/Nインキュベートした。
LB培地1.5L(3×500ml)にO/N培地を接種し、OD600=0.6まで37℃でインキュベートした。
IMT発現を0.5mM イソプロピルb−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)で2時間半誘導し、遠心分離(あらかじめ計量したチューブにおいて10000g、4℃で15分間)によって細胞を収集した。
【0263】
BugBuster Master Mixを用いた大腸菌の溶解
ペレットを、湿ペレットグラム当たりBugBuster(Novagen)5mlに再懸濁し、10〜20分間又は抽出物がもはや粘性でなくなるまでインキュベートした。
不溶性細胞デブリを、16000g、4℃で20分間の遠心分離によって除去した。
可溶性IMTタンパク質を含む上清を清浄なチューブに移した。
【0264】
NiアフィニティーカラムにおけるHis標識IMTの精製
イミダゾールを最終濃度20mMまで添加し、pHを7.5に調整して、試料を0.22μmフィルターでろ過した。
カラムを洗浄緩衝液で洗い、試料を添加した。
タンパク質が結合したカラムを5×カラム容積の洗浄緩衝液で洗った。
His標識IMTを、250mM イミダゾールを含む溶出緩衝液中で溶出した。
【0265】
Pierceからの20KDaのカットオフ値を有するicon concentratorを用いた緩衝液交換及び濃縮
IMTタンパク質をiconチューブに負荷し、所望濃度/容積が得られるまで3500×gで遠心分離した。
第Xa因子切断緩衝液をもとの容積に添加し、所望濃度が得られるまで遠心分離した。この工程を3回反復する。
【0266】
第Xa因子を用いたIMTプロテアーゼ消化物
第Xa因子を、第Xa因子1単位対タンパク質10μgの割合でタンパク質溶液に添加し、室温で5時間インキュベートする。
第Xa因子捕捉キット(Novagen)を用いて第Xa因子を除去する。
第Xa因子の除去後、IMTを−20℃で保存する。
緩衝液
洗浄緩衝液:PBS+20mM イミダゾール、pH7.5
溶出緩衝液:PBS+100mM、250mM又は500mM イミダゾール、pH7.5
第Xa因子切断緩衝液:5mM CaCl、100mM NaCl、50mM トリス−Cl、pH8.0。
インビトロ薬理学及び細胞生物学
【0267】
[実施例2]
CX3CL1−PE38KDELの分析−US28結合親和性
COS−7細胞を、トランスフェクションの1日後に24穴培養プレートに移す。各穴当たりに接種した細胞数は、添加した放射性リガンドの5−10%の特異的結合が得られる数である。トランスフェクションの2日後に、1mM CaCl2、5mM MgCl2及び0.5%(w/v)ウシ血清アルミンを添加した50mM HEPES緩衝液、pH7.4 0.5ml中で、12pMの125I−MIP−1α、125I−MIP−1β、125I−ランテス、125I−MCP−1、125I−CX3C又はもう1つ別の高親和性US28リガンドのいずれかプラス可変量の試験する非標識リガンドを使用して、全細胞に関して4℃で3時間、競合結合を実施する。インキュベーション後、非特異的結合及びリガンドの二量体化によって引き起こされる干渉を低減するため、0.5M NaClを添加した4℃の結合緩衝液中で細胞を迅速に4回洗浄する。非特異的結合は、0.1μM 非標識ケモカインの存在下での結合として測定される。
【0268】
非線形回帰によってIC50値を決定し、KD及びBmax値を、Inplot 4.0ソフトウエア(GraphPad Software,San Diego,CA)を使用して、方程式KD=IC50−L及びBmax=B0(1+(KD/L))を用いて競合結合実験から算定する。
【0269】
[実施例3]
US28を介したCX3CL1−PE38KDELのインターナリゼーションの分析
リガンド/免疫毒素供給実験
リガンド/免疫毒素供給実験のため、US28発現細胞をカバーガラス上で48時間増殖させる。細胞を室温で結合培地(BM:重炭酸塩を含まず、0.2%ウシ血清アルブミン、10mM HEPESを含み、pH7.4に調整した、RPMI−1640)中にて洗浄する。その後、細胞を、リガンド、修飾ケモカイン又は全長免疫毒素のいずれかを含むBM中でインキュベートする。1時間後、カバーガラスを氷上に置き、低温BMで洗浄する。細胞表面結合リガンドを除去するため、細胞をpH3.0に調整したBM中で2回洗浄し、次に同じ培地中で3分間のインキュベーションを2回実施して、BM、pH7.4に戻す。その後、3%パラホルムアルデヒドを含むPBS中で10分間固定し、0.05%サポニンで透過化処理を行うか又は行わずに、リガンドに対する抗体で染色して、共焦点顕微鏡によって検査する。
【0270】
エンドサイトーシスアッセイ
接着細胞に関するエンドサイトーシスアッセイを、基本的に記述されているように実施する(Pelchen-Matthews et al., 1991*)。簡単に述べると、細胞を24穴プレートの16mmの穴に接種し、〜2.5×105細胞/穴の最終密度まで2日間増殖させる。細胞を氷上で冷却し、4%FCSを含むDMEMで洗浄して、DMEM中の125I−リガンド又は125I−免疫毒素のいずれか250μlと共に4℃で2時間インキュベートする。その後、細胞をDMEM中で洗浄して遊離リガンドを除去し、次に37℃のDMEM 1mlを添加して温める。選択された時点で細胞を4℃に戻し、低温DMEMで洗浄する。穴の半数について、細胞を0.2M NaOH 400μl中で直接収集し、計数(全細胞関連活性)のためにチューブに移す。細胞内活性を測定するため、残りの穴を酸で洗って細胞表面リガンドを除去する(酸抵抗性活性)。細胞を上記のようにNaOH中で収集する。各時点についてのインターナライズされた活性の割合を、酸抵抗性活性を全細胞関連活性で除することによって決定する。
【0271】
[実施例4]
FACS分析によって測定したUS28陽性細胞の除去
免疫毒素を有する細胞の除去
US28陽性細胞及び免疫毒素に結合しない内因性ケモカイン受容体を発現する対照細胞を種々の濃度の精製免疫毒素及び対照としての培地と共に24時間インキュベートする。生存細胞をFACSで分析し、計数する。
【0272】
US28又はCXCR4を発現する細胞を24穴培養プレートで準集密状態に増殖させ、種々の濃度の精製免疫毒素又は対照としての培地と共にインキュベートする。40時間後、接着細胞と非接着細胞を回収し、死細胞のパーセンテージを測定するためにFACSで分析した。我々は以前に、死(ヨウ化プロピジウム陽性)CHO細胞がそれらの光散乱特性によって同定できることを確認した。
インビトロウイルス学
【0273】
[実施例6]
CX3CL1−PE38KDELはヒト線維芽細胞におけるヒトCMV複製の阻害を媒介する。野生型HCMV(AD169株)に作用を及ぼし、対照としてのUS28ノックアウトHCMV(AD169株)には作用を及ぼさない。
【0274】
[実施例7]
マウス線維芽細胞におけるCX3CL1−PE38KDELを介したマウスCMV複製の阻害。US28を過剰発現する組換えMCMV(smith株)には作用を及ぼし、対照としての野生型MCMV(smith株)には作用を及ぼさない。
インビボウイルス学
【0275】
[実施例8]
免疫適格性モデル:Balb/C及びC57/B6バックグラウンドでのCX3CR1ノックアウトマウスにおけるウイルス複製及び播種へのCX3CL1−PE38KDELの作用。Balb/CとB6マウスは、異なるウイルス感受性及び疾患進行を示す。CX3CL1−PE38KDEL処置の作用を、ガンシクロビル(GCV)又はシドフォビル(cidofovir)(HPMPC)のいずれかと比較する。すべての薬剤を腹腔内に投与する。感染後3日目、5日目及び7日目に末梢リンパ節、脾臓及び肝臓において及び感染後14日目に唾液腺において、重量減少及びウイルス力価を測定し、処置の作用を評価するために採点する。さらに、ウイルス複製及び播種を、感染器官のMCMV IE1に対する免疫組織化学によって検討する。
【0276】
[実施例9]
免疫不全モデル:SCID(重症複合型免疫不全)マウスにおけるウイルス複製及び疾患の進行へのCX3CL1−PE38KDELの作用を検討する。SCIDマウスは用量依存的にCMV感染に屈し、それ故抗CMV薬の効果を測定するための最も感受性の高いモデルである。
【0277】
[実施例11]
親和性部分を試験するための方法
競合結合実験は、様々な濃度の非標識競合物質と単一濃度の放射性リガンドの平衡結合を測定する。競合物質に対する受容体の親和性を調べるためにこれらのデータを分析する。アッセイは、受容体結合物質との反応における標識リガンドと非標識リガンドの間の競合に基づく。
【0278】
受容体は、哺乳動物細胞内での発現によってリガンドに対して使用可能となる。発現は安定であるか又は一過性であり得る。一過性発現は、受容体をコードする発現構築物による関連細胞系のトランスフェクションによって実施し得る。
【0279】
トランスフェクションの1日後、細胞を関連細胞培養プレート(たとえば24穴プレートであるが、必要な細胞数に依存する)に移す。各穴当たりに接種する細胞数は、添加する放射性リガンドの5〜10%の特異的結合が得られるように決定される。トランスフェクションの2日後、結合緩衝液(1mM CaCl2、5mM MgCl2及び0.5%(w/v)ウシ血清アルミンを添加した50mM HEPES緩衝液、pH7.4 0.5ml)中で、約12pMの放射性標識リガンド(例えば125I−MIP−1α、125I−MIP−1β、125I−ランテス、125I−MCP−1、125I−CX3C)プラス可変量の非標識競合リガンドを使用して、全細胞に関して4℃で3時間、競合結合を実施する。インキュベーション後、非特異的結合及びリガンドの二量体化によって引き起こされる干渉を低減するため、0.5M NaClを添加した4℃の結合緩衝液中で細胞を迅速に4回洗浄する。非特異的結合は、0.1μM 非標識リガンド(ケモカイン)の存在下での結合として測定される。
【0280】
飽和結合実験
飽和結合実験は、様々な濃度の放射性リガンドの平衡結合を測定する。部位の数、Bmax、及びリガンド親和性、Kdを決定するために結合とリガンド濃度の間の関係を分析する。
【0281】
飽和放射性リガンド結合実験は、様々な濃度の放射性リガンドの平衡時の特異的な放射性リガンド結合を測定する。受容体の数及び親和性を決定するためにこれらのデータを分析する。この種の実験はスカッチャードプロット(より正確にはRosenthalによる)で分析するために使用されるので、時として「スカッチャード実験」とも呼ばれる。
【0282】
分析は、インキュベーションを平衡に至るまで進行させたという仮定に依存する。これは、リガンド、受容体、温度及び他の実験条件に依存して、数分間から何時間もの間のどこかで起こり得る。最も低濃度の放射性リガンドが、平衡に至るまでに最も長い時間を要する。平衡時間を調べるときには、それ故、低濃度の放射性リガンド(おそらくKdの10〜20%)を使用する。
[参考文献]
【化14】

[配列表]
配列番号1:ランテス及びPE38KDELを含む免疫毒素のタンパク質配列
配列番号2:CX3CL1(フラクタルカイン)のタンパク質配列
配列番号3:US28受容体のタンパク質配列
配列番号4:US27受容体のタンパク質配列
配列番号5:UL33受容体のタンパク質配列
配列番号6:UL78受容体のタンパク質配列
配列番号7:vCCL2ケモカインのタンパク質配列
配列番号8:外毒素Aのタンパク質配列
配列番号9:PE38KDELのタンパク質配列
配列番号10:フラクタルカイン及びPE38KDELを含む免疫毒素のタンパク質配列
配列番号11:配列番号2のフラクタルカインのケモカイン部分25〜100位及びPE38KDELを含む免疫毒素のタンパク質配列
配列番号12:ランテス及びPE38KDELを含む免疫毒素のDNA配列
配列番号13:CX3CL1(フラクタルカイン)のDNA配列
配列番号14:US28受容体のDNA配列
配列番号15:US27受容体のDNA配列
配列番号16:UL33受容体のDNA配列
配列番号17:UL78受容体のDNA配列
配列番号18:vCCL2ケモカインのDNA配列
配列番号19:外毒素AのDNA配列
配列番号20:PE38KDELのDNA配列
配列番号21:フラクタルカイン及びPE38KDELを含む免疫毒素のDNA配列
配列番号22:配列番号2のフラクタルカインのケモカイン部分25〜100位及びPE38KDELを含む免疫毒素のDNA配列
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒトCMVによってコードされ、CMV感染細胞上で発現される、構成的にインターナライズする受容体に結合するリガンド、及び(b)CMV感染細胞に対して細胞傷害性である毒素を含む免疫毒素であって、配列番号1ではない免疫毒素。
【請求項2】
受容体が、ヒトCMVによってコードされるタンパク質US28、US27、UL33及びUL78又はその何らかの天然に生じる変異体から成る群より選択される、請求項1に記載の免疫毒素。
【請求項3】
受容体がUS28である、請求項2に記載の免疫毒素。
【請求項4】
リガンドが、ケモカイン又はその変異体又は抗体もしくはそのフラグメントから成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項5】
リガンドがケモカイン又はその変異体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項6】
リガンドが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、家禽、ブタ、ウマ、アカゲザル、オランウータン、ウシ、イヌもしくはウイルスを起源とするケモカイン又はその変異体から成る群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項7】
リガンドが、CCケモカイン、XCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインから成る群より選択されるケモカイン又はその変異体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項8】
リガンドが、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27及びCCL28から成る群より選択されるCCケモカイン又はその変異体である、請求項7に記載の免疫毒素。
【請求項9】
リガンドが、ヒト又はマウスを起源とするCCケモカイン又はその変異体である、請求項8に記載の免疫毒素。
【請求項10】
リガンドが、XCL1及びXCL2から成る群より選択されるXCケモカイン又はその変異体である、請求項7に記載の免疫毒素。
【請求項11】
リガンドが、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15及びCXCL16から成る群より選択されるCXCケモカイン又はその変異体である、請求項7に記載の免疫毒素。
【請求項12】
リガンドがCX3Cケモカイン又はその変異体である、請求項7に記載の免疫毒素。
【請求項13】
リガンドが、ヒトCX3CL1(配列番号2)に対して少なくとも67%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である、請求項12に記載の免疫毒素。
【請求項14】
リガンドが、ヒトCX3CL1のケモカインドメイン(配列番号2の25〜100位)に対して少なくとも67%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である、請求項12に記載の免疫毒素。
【請求項15】
リガンドが10-8M又はそれ以下のKdでUS28受容体に結合する、請求項14に記載の免疫毒素。
【請求項16】
リガンドが10-6M又はそれ以下のKdでCX3CR1受容体に結合する、請求項14及び15のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項17】
リガンドが以下の変異体:配列番号2の31位で変異した変異体、配列番号2の38位の変異体、配列番号2の42位で変異した変異体、配列番号2の60位で変異した変異体、配列番号2の61位で変異した変異体、配列番号2の68位で変異した変異体、配列番号2の71位で変異した変異体、配列番号2の72位で変異した変異体、及び配列番号2の73位で変異した変異体から成る群より選択される、請求項14から16のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項18】
リガンドが以下の変異体:配列番号2の31位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の31位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の38位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の38位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の42位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の42位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の60位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の60位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の61位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の61位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の68位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の68位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の71位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の71位がグルタミン酸に変異した変異体、配列番号2の71位がグルタミンに変異した変異体、配列番号2の72位がアラニンに変異した変異体、配列番号2の73位がアラニンに変異した変異体及び配列番号2の73位がロイシンに変異した変異体から成る群より選択される、請求項14から17のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項19】
リガンドが、配列番号2の33位、34位及び35位の1又はそれ以上のアミノ酸残基が変異している変異体である、請求項14から16のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項20】
リガンドが、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)によってコードされるCCケモカインvCCL2(配列番号7)又はその変異体である、請求項1から7のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項21】
リガンドが2又はそれ以上の異なるケモカインの間のキメラであり、前記ケモカインがCCケモカイン、XCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインから成る群より選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項22】
リガンドが、US28に対する抗体又は前記抗体のフラグメント、US27に対する抗体又は前記抗体のフラグメント、UL33に対する抗体又は前記抗体のフラグメント及びUL78に対する抗体又は前記抗体のフラグメントから成る群より選択される抗体又はそのフラグメントである、請求項4に記載の免疫毒素。
【請求項23】
リガンドが、US28に対する抗体又は前記抗体のフラグメントである、請求項23に記載の免疫毒素。
【請求項24】
毒素が、ゲロニン、ブガニン、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリョジン、ジフテリア、レストリクトシン、ジフテリア毒素、シュードモナス属外毒素A及びそれらの変異体から成る群より選択される、請求項1〜23のいずれか1項に記載の免疫毒素。
【請求項25】
毒素がシュードモナス属外毒素A又はその変異体である、請求項24に記載の免疫毒素。
【請求項26】
毒素がPE38KDEL(配列番号9)である、請求項25に記載の免疫毒素。
【請求項27】
請求項12から19のいずれか1項に記載のリガンドとPE38KDEL(配列番号9)を含む、請求項26に記載の免疫毒素。
【請求項28】
ケモカインドメインCX3CL1(配列番号2の25〜100位)及びPE38KDEL(配列番号9)、配列番号11を有する免疫毒素を含む、請求項27に記載の免疫毒素。
【請求項29】
請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素の薬剤としての使用。
【請求項30】
CMV感染の治療又は予防のための薬剤を製造するための、請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素の使用。
【請求項31】
CMV感染又はCMV感染の何らかの症状の確立又は進行を予防するための薬剤の製造のための、請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素の使用。
【請求項32】
HIV感染患者におけるCMV感染又はCMV感染の何らかの症状の確立又は進行を予防するための薬剤の製造のための、請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素の使用。
【請求項33】
CMV感染が、網膜、心臓、肝臓、肺、脾臓又は血液細胞から成る群より選択される組織に局在する、請求項29から32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
CMV感染の治療又は予防のための個体が、HIV患者、新生児及び免疫抑制患者、骨髄移植患者及び固形器官移植患者から成る群より選択される免疫無防備状態患者である、請求項29から33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
CMV感染の治療又は予防のための個体が、冠動脈疾患に罹患している患者である、請求項29から34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素又はその何らかの生理的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項37】
医薬的に許容される担体をさらに含有する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
組成物が、1又はそれ以上の抗ウイルス薬と同時に、別々に又は連続的に投与される、請求項36及び37のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
組成物が、1又はそれ以上の免疫抑制薬と同時に、別々に又は連続的に投与される、請求項36から38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
(a)請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素の有効量及び(b)同時、別々又は連続的な投与のための抗ウイルス薬及び免疫抑制薬の群から選択される治療薬を含む、CMV感染の治療又は予防のためのキット。
【請求項41】
請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素をコードする配列を含む核酸配列。
【請求項42】
免疫毒素が配列番号11又はその変異体であり、核酸配列が配列番号22を有する、請求項41に記載の核酸配列。
【請求項43】
適切な宿主において免疫毒素の生産を指令する1又はそれ以上の制御配列に作動可能に連結された請求項41又は42に記載のヌクレオチド配列を含む核酸構築物。
【請求項44】
請求項39において定義される核酸構築物を含む組換え発現ベクター。
【請求項45】
請求項39において定義される核酸構築物又は請求項40において定義される組換え発現ベクターを含む組換え宿主細胞。
【請求項46】
前記宿主細胞が原核生物宿主細胞である、請求項41に記載の組換え宿主細胞。
【請求項47】
請求項1から28のいずれか1項に記載の免疫毒素の有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、CMV感染の治療又は予防のための方法。
【請求項48】
個体が、HIV患者、新生児及び免疫抑制患者、骨髄移植患者及び固形臓器移植患者から成る群より選択される免疫無防備状態患者である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
個体が冠動脈疾患に罹患している患者である、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
CMV感染が、網膜、心臓、肝臓、肺、脾臓又は血液細胞から成る群より選択される組織に局在する、請求項42から44のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−540842(P2009−540842A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516907(P2009−516907)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050082
【国際公開番号】WO2008/003327
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509002981)
【Fターム(参考)】