説明

CNS試料において非中枢神経系(CNS)疾病を診断するための方法およびシステム

本発明は、CNS、例えば、脳脊髄液、脳もしくは脊髄組織試料または他の生体液試料における遺伝子発現の変化を検出することによって非中枢神経系(非CNS)疾患を診断する方法、システムおよび組成物を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疾病のリスク評価、同定、診断、予後および/またはモニタリングならびに早期治療的介入のための方法および組成物に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、共に2003年7月3日提出の米国仮出願第60/484,683号および同第60/484,726号の優先権を主張する。図面を含むこれら2つの出願の内容は全て参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
早期診断および同時に行われる早期治療的介入がほとんどのヒト疾患の治療および/または管理の成功の鍵となることは自明である。しかし、多くの疾患は、病的過程が進行してしまってからしか診断することができない。例えば、多くの固形腫瘍は、何年も異常増殖が存在していて、触診または組織画像化技法によって可視化できるようになるまでは(すなわち、固形腫瘍のサイズが少なくとも0.5 cmである)、通常臨床的に検出不可能である。同様に、糖尿病 (空腹時血漿血糖値上昇または高血糖) の診断基準は、耐糖能障害(高血糖の根本原因)がすでに存在する場合に、疾患を同定する。別の例では、関節リウマチ(RA)は、関節硬直および関節痛の存在ならびに陽性のリウマチ因子の存在によって診断され、RAを示す因子は全てすでに存在し、進行している可能性がある。
【0004】
診断用疾病マーカー
癌では、前癌状態から悪性腫瘍への進行には、組織病理学的改変に至る遺伝子変化の腫瘍細胞内での蓄積を伴う。このような遺伝子変化が、腫瘍細胞によって作られたタンパク質の増加に対応する場合には、このようなタンパク質は腫瘍細胞または体液(腫瘍から分泌される場合)中で検出することができ、生物学的腫瘍マーカーとして使用することができる場合もある。ほとんどの腫瘍は1つ以上のこのようなマーカーと関連している。このようなマーカーは、癌を診断する、予後を判定するおよび/または癌の進行をモニターする可能性のあるツールとして評価されている。しかし、多くの腫瘍マーカーは、異常増殖が腫瘍形成段階に進行してしまってからでしか検出可能ではない。腫瘍が悪性になるまで腫瘍マーカーが検出できない場合もある。したがって、最も広範に使用されている腫瘍マーカーの多くは、主に、早期診断より疾病の進行または治療に対する応答をモニターするために使用される。
【0005】
関節リウマチでは、抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体、抗ケラチン抗体(AKA)およびIgMリウマチ因子が関節リウマチのマーカーとして示唆されている(Bas et al., Rheumatology (Oxford), 2002, 41(7): 809-14)。しかし、このようなマーカーの価値は決定的なものとはなっていない(Scott, Rheumatology (Oxford), 2000, 39(Supp) 1: 24-9)。同様に、いくつかのタンパク質および遺伝子マーカーが活動性の糖尿病の存在と関連することが見出されているが、診断用または予防用としてのマーカーの使用は、I型または2型糖尿病のどちらにおいても、現段階では有用であると証明されていない(NACBウェブサイトでオンライン利用可能なNational Academy of Clinical Biochemistry (NACB) Laboratory Medicine Practice Guideline: Guidelines and Recommendations for Laboratory Analysis in the Diagnosis and Management of Diabetes Mellitus, 2002参照)。
【0006】
疾病診断のゲノミクスおよびプロテオミクス
機能的ゲノミクスおよびプロテオミクスなどの高スループットスクリーニング方法の開発は、異なる疾患に関連する分子を探索する新たな生物学的基盤を提供した。マイクロアレイ分析に基づいた遺伝子-発現プロファイルは、肺癌患者の生存率を予測するのに幾分か有用となっている(Beer et al., 2002, Nat. Med., 8(8): 816-24)。同様の方法は、併用化学療法後のびまん性大細胞リンパ腫の臨床成績を予測するのに有用であると言われた遺伝子群を同定した(Shipp et al., 2002, Nat Med., 8(1): 68-74)。また、卵巣癌患者または前立腺癌患者と非癌ボランティアのプロテオミクスプロファイルの比較は、早期癌検出に有用である可能性のある血清タンパク質のセットを提供すると言われた(Petricoin et al., 2002, Lancet, 2002, 359(9306): 572-7;Petricoin et al., 2002, J. Natl. Cancer Inst., 94(20): 1576-8)。
【0007】
現在では、癌のほとんどの機能的ゲノミクス研究は、患者から得られる癌試料を使用して、(ゲノミクスまたはプロテオミクス方法によって)癌関連遺伝子発現プロファイルを生成している。
【0008】
疾病を検出し、診断する方法の必要性がある。早期段階または極早期段階の疾病検出およびリスク評価の予測方法およびマーカーが特に必要とされている。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本明細書に記載する方法およびシステムは、少なくとも一部には、中枢神経系(CNS)は、末梢(非CNS)疾病または疾患(例えば、非CNS腫瘍もしくは癌などの高増殖性疾患、免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害または病原性感染症)の存在に応答した遺伝子発現の特定の変化(例えば、遺伝子発現パターンの変化)を示すという発見に基づいている。任意の理論に拘束されることなく、本発明者らは、CNS、例えば、脳の遺伝子発現の特定の変化は、疾患発症の早期段階、例えば、疾患が臨床的に検出可能になる前および/または被験者が症状を呈す前に末梢疾患の存在に応答して生じると考えている。従って、末梢疾患を早期段階において診断し、CNSの遺伝子発現の変化またはパターンを分析することによって早期治療的介入の標的とすることができる。
【0010】
従って、一局面において、本発明は、ヒトなどの被験者の非CNS疾患を診断する方法を特徴とする。非CNS疾患は、例えば、高増殖性疾患、例えば、非CNS腫瘍もしくは癌;免疫疾患、例えば、関節リウマチ;炎症性もしくはアレルギー性疾患、例えば、喘息;代謝障害、例えば、糖尿病もしくは肥満;または病原性感染症、例えば、ウイルス感染症であってもよい。本発明の方法は、被験者のCNS試料、例えば、(視床下部、小脳、中脳、海馬、前前頭皮質または線条体の組織または細胞などの)脳組織もしくは細胞または脳脊髄液(CSF)もしくはCNS遺伝子産物(またはその誘導体)が検出されると考えられる任意の他の生体液の試料における遺伝子の発現を検出する段階を含む。本発明の方法は、任意で、CNS試料を得る段階を含む。基準値、例えば、対照または基底値と比較した遺伝子発現の変化は非CNS疾患の存在と関連する。本発明の方法は任意の非CNS疾患のリスクまたは存在を検出するために使用することができるということにおいて、限定するものではない。一態様において、非CNS疾患はリンパ腫ではない。
【0011】
被験者はヒトであってもよい。一態様において、ヒトは、診断対象の疾患の症状を示していない。別の態様において、疾患は臨床的に検出可能でない、例えば、疾患は日常的な一般臨床検査によって検出できない。
【0012】
CNS試料または、CNS遺伝子産物(またはその誘導体)が検出されると考えられる任意の他の生体液において、遺伝子の発現を検出する段階は、mRNAレベル、転写速度、遺伝子産物の量および遺伝子産物の活性の1つ以上の値を求める段階を含んでもよい。いくつかの態様において、CNSにおける単一遺伝子の発現を検出することができ、この場合には、その遺伝子における遺伝子発現の変化が非CNS疾患の存在と関連する。他の態様において、複数の遺伝子の発現(例えば、遺伝子のパネルまたはクラスター)を評価することができ、この場合には、複数の遺伝子の遺伝子発現の特定のプロファイルが特定の非CNS疾患の存在と関連する。
【0013】
本発明の方法は、検出する段階の結果を非CNS疾患の有無と関連させる段階を含んでもよい。「関連させる」は、検出する段階の結果に基づいて、被験者が非CNS疾患を有するもしくは有さない、または非CNS疾患をいずれ発症するもしくは発症しない確率を同定することを意味する。関連させる段階は、例えば、実験記録またはデータセットなどの印刷された記録またはコンピュータ読取可能な記録のように、検出する段階の記録からデータセットを生成する段階または検出する段階の記録を提供する段階を含んでもよい。記録は、被験者識別子、CNS試料の試料識別子、日時、方法のオペレーターの主体および/または他の情報のなどの他の情報を含んでもよい。記録は、被験者についての情報を提供または保存するために使用することができる。例えば、記録は、情報を(例えば、被験者、医療提供者、政府または保険会社)に提供するために使用することができる。記録または記録から引き出される情報は、例えば、被験者が特定の治療または特定の臨床試験群に好適である、または好適でないことを同定するために使用することができる。
【0014】
本明細書に記載する方法において、CNS遺伝子の遺伝子発現は、当業者が利用可能な任意の技法、例えば、脳組織、CSFもしくはCNS遺伝子産物(またはその誘導体)が検出されると考えられる任意の他の生体液などのCNS生物試料のゲノミクスもしくはプロテオミクスマイクロアレイ分析;または遺伝子発現の変化を検出する脳画像化技法によって検出することができる。一態様において、本発明の方法は、CSFに放出または分泌されるCNS遺伝子産物を検出する段階に関係する。このような態様では、遺伝子産物を検出する(抗体、例えば、標識抗体などの)薬剤は、例えば、ディップスティック(dipstick)式に固相に固定することができる。
【0015】
評価対象の遺伝子は、特定の疾患に関連する特定の遺伝子または遺伝子発現プロファイル(基準遺伝子発現プロファイル)に依存する。例えば、癌細胞(または特定の種類の癌細胞)の存在に応答して調節される例示的な遺伝子(または遺伝子のプロファイルまたはクラスター)を以下の図1〜29に示す。このような遺伝子は、本明細書において、CNS「マーカー遺伝子」または非CNS疾患の「疾病監視(disease surveillance)遺伝子」とも言われる。本明細書に記載する方法は、末梢非CNS疾患の存在に関連する発現の変化を示すと判定されている他の遺伝子または遺伝子産物の検出を含んでもよいので、例示的なCNSマーカー遺伝子は限定するものではない。CNSマーカー遺伝子は、特に、ホルモン、増殖因子、免疫系成分およびサイトカインをコードする遺伝子を含んでもよい。
【0016】
別の態様において、本発明は、被験者の非CNS疾患を診断するシステムを特徴とする。本発明のシステムは、CNS試料を入手するためのサンプリング装置;CNS試料中の1つ以上の遺伝子の遺伝子発現データを生成する遺伝子発現検出装置;特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイル;および遺伝子発現データを受信して、基準遺伝子発現プロファイルと比較するコンパレータ(comparator)を含む。本発明はまた、このようなシステムと共に使用することができるキットも含む。キットは、サンプリング装置または試料の容器および特定の疾患の基準遺伝子発現プロファイルを含む。プロファイルはコンピュータ読取可能な媒体のデジタルデータセットの形態であってもまたは電子的な形態のアナログプロファイルであってもよい。
【0017】
非CNS疾患を診断するために本明細書に含まれる他のシステムは、CNSにおける1つ以上の遺伝子発現の画像を入手し、1つ以上の遺伝子の遺伝子発現データを生成するための画像形成装置(例えば、PETまたはMRI装置);特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイル;および遺伝子発現データを受信して、基準遺伝子発現プロファイルと比較するコンパレータを含む。
【0018】
他の局面において、本発明はまた、被験者のCNS試料における1つ以上の遺伝子の発現を検出する段階;検出された発現から遺伝子発現データを生成する段階;特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイルを入手する段階;および遺伝子発現データと基準遺伝子発現プロファイルを比較する段階を含み、CNS試料の遺伝子発現データと基準遺伝子発現プロファイルの一致が、被験者は非CNS疾患を有するまたは発症することを示す、被験者の非CNS疾患を診断するための方法も含む。
【0019】
これらのシステムおよび方法において、CNS試料は脳脊髄液(CSF)試料であってよく、遺伝子発現データはCSFのタンパク質に対応してもよい。または、CNS試料は、CNSの遺伝子によって発現されるタンパク質を含有する生体液試料であってもよく、遺伝子発現データは試料中のタンパク質の存在またはレベルに対応する。CNS試料はまた、試料中の存在またはレベルがCNSにおいて発現される遺伝子によって影響されるタンパク質を含有する生体液試料であってもよく、遺伝子発現データは試料中のタンパク質の存在またはレベルに対応する。例えば、タンパク質はホルモン、増殖因子、免疫系成分およびサイトカインから選択することができる。タンパク質は、図1、50および54のいずれかに記載する遺伝子のいずれかまたはそのヒトもしくは他の哺乳類相同物によってコードされうる。本明細書に挙げている遺伝子のヒト相同物は、例えば、インターネットのGenBankなどの入手可能な公開データベースから容易に入手することができる。
【0020】
特定の遺伝子は、肝細胞成長因子(HGF)、アフェリン(apherin)A3、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4、成長分化因子(growth differentiation factor-9b)(GDF-9b);骨形成タンパク質15(BMP 15)、神経芽細胞腫腫瘍形成抑制因子1、メラニン形成細胞増殖遺伝子1および線維芽細胞増殖因子22(FGF22)からなる群より選択される遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする。
【0021】
CNS試料はまた脳由来の1つ以上の細胞であってもよく、遺伝子発現データは、試料中の核酸分子(例えば、遺伝子に対応するmRNA)またはタンパク質に対応する。脳細胞は、視床下部、中脳、前前頭皮質および線条体からなる群より選択されてもよい。
【0022】
これらのシステムおよび方法では、各々異なる非CNS疾患に特異的である2つ以上の基準遺伝子発現プロファイルを使用することができる。非CNS疾患は、例えば、癌、関節リウマチ、喘息、糖尿病および肥満であってもよい。例えば、非CNS疾患は、直径0.5 cm未満の固形腫瘍である。遺伝子発現データはCNS試料中の複数の遺伝子のデータを含んでもよく、遺伝子発現プロファイルを含む。
【0023】
本明細書の方法はまた、1人以上の健康な被験者に対応する対照遺伝子発現プロファイルを得る段階;および遺伝子発現データを対照遺伝子発現プロファイルと比較する段階であって、CNS試料の遺伝子発現データと対照遺伝子発現プロファイルの一致が、被験者が非CNS疾患を有さず、非CNS疾患を発症しないことを示す段階を含んでもよい。
【0024】
新規システムおよび方法において、遺伝子発現はマイクロアレイアッセイを使用して検出することができ、被験者はヒトであってもよい。
【0025】
別の局面において、本発明は、被験者から2つ以上のCNS遺伝子の試験遺伝子発現プロファイルを得る段階;特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイルを得る段階;および試験遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルを比較する段階であって、基準遺伝子発現プロファイルに一致する試験遺伝子発現プロファイルが、被験者が非CNS疾患を有するまたは発症することを示す段階を含む、非中枢神経系(非CNS)疾患を診断する方法を含む。
【0026】
本明細書の方法およびシステムは、比較する段階の結果の記録を生成する段階;および任意で、被験者、医療提供者または他の団体に記録を送信する段階を含んでもよい。
【0027】
さらに別の局面において、本発明は、5つ以上(例えば、10、15、20、50またはそれ以上)の遺伝子の発現データを含む基準遺伝子発現プロファイルに対応するデータセットを含み、5つ以上の遺伝子の各々が、特定の非CNS疾患が認められない哺乳類の同じ5つ以上の遺伝子と比較して、特定の非CNS疾患を有する哺乳類の中枢神経系(CNS)試料において差次的に発現され、データセットが非CNS疾患を診断するために使用される、コンピュータ読取可能な媒体を特徴とする。
【0028】
例えば、いくつかの態様において、コンピュータ読取可能な媒体は、乳癌は図29-1〜29-6;図32-1〜32-6;もしくは図35-1〜35-6;結腸癌は図30-1〜30-6;図33-1〜33-6;もしくは図36-1〜36-6;肺癌は図31-1〜31-6;34-1〜34-6;もしくは37-1〜37-6;関節炎は図50;または喘息は図54の1つ以上に記載されている遺伝子のいずれかから選択される5つ以上(例えば、10、15、20、50またはそれ以上)の遺伝子の発現データを含む基準遺伝子発現プロファイルを含む。
【0029】
遺伝子はまた、以下の遺伝子群:
乳癌: Nedd8(図29-1)、Col4a3bp(図29-2)、Bgn(図29-4)、Sox5(図29-5)、Slc38a4 (図32-1)、Toml(図32-2)、Calr(図32-4)、Itgae(図32-5)、Ttrap(図35-1)、P exllb (図35-2)、Sema7a(図35-4)およびStam2(図35-5);
結腸癌: Nmb(図30-1)、Ryr2(図30-2)、Trfr (図30-4)、Mfap5(図30-5)、Prrg2 (図33-1)、Faim (図33-2)、Mgml(図33-4)、Stch (図33-5)、Lhb(図36-1)、Prm3(図36-2)、Crry(図36-4)およびTimp4(図36-5);
肺癌: Nmb(図31-1)、Pcdh8(図31-2)、Rock2(図31-4)、Angptl3(図31-5)、Sqstml(図34-1)、Kcnip2(図34-2)、Oxt(図34-4)、Myh4(図34-5)、Encl(図37-1)、Gsgl(図37-2)、Srr(図37-4)およびNdph(図37-5);
関節炎: Bc121(図51A)、P2rxl(図51B)、Pafahlbl(図51B)、Kcna3(図51C)、Taflb(図51C)、Slc38a3(図51D)、Hprt(図52A)、C1d(図52B)、Carll(図52D)、Dusp3(図52D)、Gabrr2(図53C)およびAatk(図53D);ならびに
喘息:Rasa3(図55B)、Tnk2(図55B)、H28(図55C)、Diap2(図55C)、Lgals6 (図56A)、Reck (図56A)、Whrn (図56A)、Stk22sl(図56B)、CD47 (図57A)、Jundl (図57A)、Cstb(図57B)およびDesrt(図57B)
のいずれか1つから選択されてもよい。
【0030】
別の態様において、本発明は、試験実験動物において非CNS疾患を誘導する段階;試験実験動物由来のCNS試料における遺伝子の発現を、対照実験動物由来のCNS試料における遺伝子の発現と比較する段階;および対照実験動物由来のCNS試料と比較して、試験実験動物由来のCNS試料において差次的に発現される遺伝子のヒト相同物を疾病監視遺伝子として選択する段階によって、ヒトの非CNS疾患の疾病監視遺伝子を同定する方法を含む。いくつかの態様において、非CNS新生物は化学的もしくは放射線突然変異誘発によって、または実験動物に腫瘍細胞を投与することによって誘導され、実験動物は関節リウマチ、糖尿病、喘息、肥満または糖尿病の動物モデル(例えば、マウスまたはヒト以外の霊長類)である。
【0031】
新規システムおよび方法において、画像分析で評価されたとき、被験者は疾患の臨床徴候を欠如していてもよく、疾患の家族歴を有してもよくおよび/または(BRCA1、BRCA2、hMSH2、hMLHlまたはhMSH6遺伝子などの)疾患を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子のキャリアであってもよい。
【0032】
別の局面において、本発明は、特定の非CNS疾患が認められない対照哺乳類を得る段階;特定の非CNS疾患を有する対照哺乳類と同じ種類の罹患哺乳類を得る段階;対照哺乳類由来の第1のCNS試料および罹患哺乳類由来の第2のCNS試料を得る段階;第1のCNS試料由来の第1の遺伝子発現プロファイルおよび第2のCNS試料由来の第2の遺伝子発現プロファイルを生成する段階;第1および第2の遺伝子発現プロファイルを比較する段階;差次的に発現される第2の遺伝子発現プロファイルから遺伝子セットを選択する段階;ならびに選択した遺伝子の発現データから基準遺伝子発現プロファイルを調整する段階によって、特定の非CNS疾患を有する哺乳類のCNS試料において差次的に発現される1つ以上の遺伝子の基準遺伝子発現プロファイルを生成する方法を特徴とする。
【0033】
本発明はまた、5つ以上の遺伝子の発現データを含み、5つ以上の遺伝子の各々が、特定の非CNS疾患が認められない哺乳類の同じ5つ以上の遺伝子と比較して、特定の非CNS疾患を有する哺乳類の中枢神経系(CNS)試料において差次的に発現される、哺乳類における非中枢神経系(非CNS)疾患の存在に対応する、例えば、電子的なデジタルまたはアナログ式の基準遺伝子発現プロファイルを特徴とする。
【0034】
本発明はまた、本発明の方法によりまたは本明細書に記載するシステムを使用して非中枢神経系(非CNS)疾患を診断する段階;および疾患の治療剤を被験者に投与する段階によって、被験者を治療する方法を含む。例えば、治療剤は、抗チューブリン/抗微小管薬、トポイソメラーゼI阻害剤、代謝拮抗剤およびアルキル化剤などの化学療法剤であってもよい。
【0035】
別の局面において、本発明は、被験者(例えば、ヒト)が末梢(非CNS)疾患を有するまたは発症するリスクがあるかどうかを判定する方法を特徴とする。本発明の方法は、被験者の1つ、2つまたはそれ以上のCNS遺伝子の試験遺伝子発現プロファイルを提供する段階または入手する段階;および試験遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイル(例えば、本明細書に記載する基準遺伝子発現プロファイル)を比較する段階であって、基準遺伝子発現プロファイルが特定の非CNS疾患の存在と関連する段階を含む(例えば、結腸癌、乳癌または肺癌に関連する)。基準遺伝子発現プロファイルの限定するものではない例は本明細書に開示されている。一態様において、本発明の方法は、比較する段階の結果の記録(例えば、実験記録またはデータセット)を生成する段階;および任意で、被験者、被験者の医療提供者または他の団体に記録を(例えば、プリントまたはコンピュータ読取可能な物質によって)送信する段階を含む。本明細書に記載する他の方法の場合と同様に、種々の技法を使用して遺伝子発現プロファイルを提供することができ、種々の種類の疾患を検出することができる。
【0036】
本明細書に記載する方法は、特に、種々の疾患のリスク評価のため、疾病の早期検出および診断のため、疾病の進行のモニタリングのため、疾病の治療効果のモニタリングのため、および/または臨床状態の評価のために有用である。
【0037】
本明細書において使用する「疾患」または「疾病」は、生体または細胞、組織もしくは器官の一部の健康を脅かす状態の変化である。2つの用語は、疾患の極早期段階(例えば、被験者または医療提供者によって検出できない可能性があるが、疾病過程を開始している生体の早期変化)を含む全ての疾患段階を含むことが意味されている。例えば、「疾患」および「疾病」という用語は、新生物または腫瘍が形成される前の異常増殖期;例えば、関節リウマチまたは喘息の発症において、炎症またはアレルギーの症状が現れる前の抗原に対する早期免疫応答;および体重が増加する前の、体重増加を促進するエネルギー代謝の早期変化を含む。
【0038】
本明細書において使用する「異常増殖」は、正常細胞の増殖の停止を誘発しないと考えられるまたは停止を生ずると考えられる条件下における細胞の無秩序で、進行性の増殖である。異常増殖は、組織の新たな異常な増殖である、「新生物」の形成を生ずることがある。異常に増殖する細胞が塊を形成すると、新生物は、一般に、「腫瘍」と言われる。新生物は良性または悪性(癌性)となることがある。
【0039】
本明細書において使用する「一致する(matches、matching)」または「一致(match)」は、試験遺伝子発現プロファイルの遺伝子の少なくとも75%が基準発現プロファイルの遺伝子と同じようにアップ-またはダウンレギュレーションされている場合である。例えば、基準発現プロファイルにおいて遺伝子1〜5がアップレギュレーションされており、遺伝子6〜10がダウンレギュレーションされている場合には、遺伝子1〜10がダウンレギュレーションされている試験プロファイルは一致していないと考えられるが、遺伝子1、2、3、4および6がアップレギュレーションされており、遺伝子5、7、8、9および10がダウンレギュレーションされている試験プロファイルは一致していると考えられる。「高レベルの一致」は、遺伝子の少なくとも75%が、基準発現プロファイルの遺伝子の発現レベルの少なくともプラスまたはマイナス50%(または発現レベルの比のLog2)内にあることを意味すると考えられる。例えば、基準発現プロファイルでは:遺伝子Aでは、疾患が存在しない場合の発現レベルに対する疾患が存在する場合の発現レベルのLog2比は+0.4であり;遺伝子Bでは、比は-0.4であり;遺伝子Cでは、比は+0.2であり;および遺伝子Dでは、比は-0.2である。以下の値(A=+0.3;B=□0.3;C=+0.1;D=+0.3)を有する試験プロファイルは、試験プロファイルの遺伝子A、B、C(基準プロファイルの遺伝子の75%)が基準プロファイルのそのような遺伝子の比の±50%以内であるので、高レベルの一致である。
【0040】
「被験者」は、考えられる疾患の存在について試験されるヒトまたは動物である。動物は、哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシもしくはヤギなどの家畜;実験用げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモットまたはハムスター)などの実験動物;ウサギ;または実験用霊長類、例えば、チンパンジーもしくはサルであってもよい。
【0041】
本明細書に記載するものと同様または等価な方法および材料を、本発明を実施または試験する際に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書に記載する全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾の場合には、定義を含む本明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示的にすぎず、限定をする意図はない。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲により明らかにされる。
【0043】
詳細な説明
本明細書に記載する方法は、一部には、疾病の早期段階の(疾病出現の数時間以内、数日以内、数週間以内または数ヶ月以内の場合もある)末梢(非CNS)組織または器官を同定する(例えば、診断するまたはモニターする)ために、CNSにおける遺伝子発現の検出に依拠している。疾病の早期同定および/または診断は、早期治療的介入の機会を提供し、疾患が過度に進行性または攻撃的になる前に疾患を標的とする。
【0044】
一般的な方法
CNSは、強度または機能的関連性によって、内部恒常性を変更する可能性のある任意の内部または外部刺激に対する生態の応答に関与する。この機能の一部として、CNSおよび免疫系は、適宜、相互作用して好適な免疫応答を得る。
【0045】
免疫応答は、神経および液性機序を介して脳に影響を与える。神経機序は、主に、迷走神経の活動に関係する。液性機序は、脳組織に対する直接的なサイトカイン媒介性作用、例えば、神経発火頻度に対するサイトカイン媒介性の増加を含んでもよい(Rothwell and Hopkins, 1995, Trends Neurosci 18(3): 130-6;Wang et al., 2003, Nature, 421(6921):384-8)。一例において、末梢サイトカインは迷走神経に結合して、活性化し、脳の孤束および視床下部の核のニューロンを活性化することが知られている(Watkins and Maier, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(14):7710-3)。
【0046】
末梢からの液性信号は、脳への強力なメッセンジャーとして作用する。脳内のサイトカインは、末梢よりはるかに低用量で作用を発揮することができる。例えば、100 pg〜10 ngの用量のインターロイキン-1(IL-1)の脳内投与は、体温、胃の機能、代謝の増加および挙動変化の最大限の変化を誘発するが、末梢に投与して同様の応答を誘発するためには数マイクログラムのこのサイトカインが必要である(Rothwell and Hopkins,前記)。
【0047】
内部免疫信号を感知すると、脳は種々に反応する。免疫信号に対するCNS応答のパラダイムは、視床下部-脳下垂体-副腎軸などの神経内分泌軸の活性化である。この軸が活性化されると、糖質コルチコイドが遊離され、進行中の免疫応答を10分未満で調節することができる。Vagatomyは、サイトカインの腹腔内投与により、視床下部下垂体副腎軸の活性化を弱めることが示されている(Watkins and Maier、前記)。このフィードバック機序は生理学的関連性が高い;すなわち、末梢におけるサイトカイン放出による糖質コルチコイド産生の阻害により、通常、生物は死亡する(Besedovsky and del Rey, 1996, Endocr. Rev., 17(1):64-102)。
【0048】
脳はまた、外部環境から免疫および他の系に影響する信号も感知することができる。例えば、ストレス反応の誘発により、糖質コルチコイドを放出し、進行中の免疫応答を弱くすることができる。免疫系に対するストレスの影響は動物モデルおよびヒトにおいて十分に証明されている(Deinzer et al., 2000, Int. J. Psychophysiol., 37(3):219-32;Marshall et al., 1998, Brain Behav. Immun., 12(4): 297-307;Benschop et al., 1996, FASEB J., 10(4): 517-24;Sheridan et al., 1998, Ann. N. Y. Acad. Sci., 840: 803-8)。また、黙想またはヨガなどの精神/肉体介入が免疫系に影響を与える可能性があるという逸話的および予備的な証拠がある(Cassileth, 1999, CA Cancer J. Clin., 49(6): 362-75)。
【0049】
本発明の新規方法は、末梢疾患を早期段階において検出する方法として、CNSのこの自然の反応を利用する。任意の理論によって限定するのではないが、本明細書に記載する方法は、一部には、疾病進行の発症の早期段階において末梢(非CNS)疾患からの「アラーム信号」の存在をCNSが感知するという発見に基づいている。従って、本明細書に記載する方法は、CNS、例えば、ヒトなどの被験者のCNS試料またはCNS遺伝子産物もしくはその誘導体が検出されると考えられる任意の他の体液の遺伝子発現を検出することによって末梢疾患を診断する段階に関する。一一つの局面において、非CNS疾患は、疾病の進行が生体内で開始されてから、数時間、数週間または数ヶ月以内にCNS(例えば、脳)の遺伝子発現プロファイルに基づいて同定することができる。いくつかの態様において、非CNS疾患は、疾病の進行が生体内で開始されるが、疾患が臨床的に検出可能になるおよび/または増悪期になる前に、1年以上(例えば、2、3、5、7、10年またはそれ以上)たたないうちにCNS(例えば、脳)の遺伝子発現プロファイルに基づいて同定することができる。
【0050】
癌発症
臨床的に検出可能な腫瘍塊は、異常であるが、免疫監視を逃れ、免疫系の攻撃を受けない細胞を含むことが一般に認められている。異常増殖の進行時には、細胞は、特に、組織適合性抗原のダウンレギュレーションなどの表現型変化に反映される高い突然変異率によって特徴づけられる。従って、腫瘍は、クローン選択および細胞を所定の治療に対して抵抗性にする突然変異を有する細胞クローンの腫瘍塊からの増殖によって特定の治療に抵抗性となることがある。腫瘍細胞クローンの自然淘汰は、所定の割合で生じ、増殖および免疫系からの逸脱を促進する遺伝的および後成的特徴を有する悪性細胞が出現する。平均悪性度は10,000を超える突然変異を含むと推定される(Stoler et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 96(26): 15121-6)。従って、確立された癌の抗原プロファイルは、超早期段階の細胞の遺伝子型および表現型を反映しないと結論づけることができる。さらに、確立された癌に存在する腫瘍抗原および生物において誘導することができる応答は早期段階の異常増殖細胞によって誘導される抗原および応答と異なると考えることが妥当である。本明細書に記載する新規方法は、これらの障害にもかかわらず、このような早期段階の異常増殖細胞を検出することができる。
【0051】
異常増殖、例えば、癌(例えば、ある種類の癌)には、長期間(例えば、1、2、5、10、15、20または25年間)増殖してから、従来の公知の技術を使用して検出可能なるおよび/または悪性になるものがある。この期間は、悪性腫瘍が現在の方法によって検出可能になる前に、癌細胞を検出する驚くほど長い機会を提供する。この期間中に、腫瘍細胞は、それらのゲノムの不安定性の結果として分子レベルのいくつかの改変を受ける。
【0052】
遺伝的変化は各々おそらく増殖に選択的であるおよび/または先天性および適応免疫応答を回復し、活性化する新たな「アラーム信号」を誘発することができる。簡単には、腫瘍が臨床的に検出可能になる前に、10〜15年の腫瘍形成期間中に10,000のアラーム信号が作製される。
【0053】
関節リウマチの発症
関節リウマチ(RA)は、遺伝的因子が何らかの作用をすると考えられる後天性自己免疫疾患である。RAは全人口の1〜2パーセントに生じ、世界的に見られる。女性RA患者は3:1の割合で男性より数が多い。成人の疾病発症は、通常、40〜60歳の間であるが、任意の年齢において生じうる。
【0054】
RAは、関節へのTh1リンパ球およびマクロファージの浸潤ならびに患者血清中のリウマチ因子の存在に関係する(Chernajovsky et al., 2000, Genes Immun., 1:295-307)。軟骨の分解は滑膜の増殖(パンヌス)を伴う。この過程は、一般に、IL-1およびTNF-αによって調節されるが、TGF-βおよびIL-10はこの作用を阻止する(Chenajovsky et al.,同書)。関節炎の罹病率はMHCクラスII遺伝子座、特にRA患者の70%ではHLA-DR4に関連するとされている(Chernajovsky et al.,同書)。リウマチ因子(RF)はIgGの抗体であり、この疾病の成人患者の60〜80パーセントに存在する。RFの高い抗体価は、通常、重症度および活動性が大きい関節疾病、より大きな程度の全身関与および寛解の予後の不良に関連する。
【0055】
未知の抗原は自己免疫応答を開始し、RAを生ずると考えられる。自己免疫応答を開始する関節炎形成性(arthritogenetic)細菌の細菌リポ多糖(LPS)に類似した滑液抗原が存在することが示唆されている(Kennedy, 2000, Med. Hypotheses, 54(5):723-5)。TNF-αは、RAに特有の慢性炎症の駆動力であると考えられる。TNF-αは、疾病進行に関与すると考えられるB細胞の成熟にも重要な作用を果たす(Chernajovsky et al.,同書)。疾病の結果におけるサイトカインシグナリングのサプレッサー(Suppressor of Cytokine signaling)(SOCS)の役割を強力に示すデータもある(Egan et al., 2003, J. Clin. Invest. 111(6):915-24)。
【0056】
自己免疫応答の開始および/またはRAの早期発症における炎症機序は、CNSにおける遺伝子発現の変化によって検出される信号を誘発する。
【0057】
喘息の発症
喘息は、気道壁における好酸球、肥満細胞、好塩基球およびCD25+Tリンパ球の存在によって特徴付けられる炎症性気道疾病である。ケモカインは炎症部位に細胞を誘引し、サイトカイン(インターロイキン(IL)-4、IL-5、IL-10およびIL-13)はそれらを活性化し、炎症および粘膜の損傷を生じる。喘息が慢性になると、基底膜の肥厚および線維形成などの二次的な変化が生ずる。IL-4およびTGF-βなどの他のサイトカインは組織リモデリングおよび線維形成応答に関与しうる。
【0058】
アレルギー性喘息(外因性喘息としても公知)では、気道炎症の開始事象はアレルゲンに対する免疫学的反応である。アレルゲンへの継続的な接触は慢性炎症を生ずる。アレルギー性喘息は、米国において約3百万人の小児(全小児の8〜12パーセント)および7百万人の成人が罹患しており、年間62億ドルの医療費になると推定される。まだ未同定の炎症マーカーに基づいた比較的長期間の(longitudinal)研究は将来の喘息管理を先導することが示唆されている(Wilson, 2002, Curr. Opin. Pulm. Med., 8(1):25-32)。
【0059】
喘息の発症において、アレルギー性または炎症性応答の開始、例えば、サイトカインおよび/またはケモカインの放出は、CNSにおける遺伝子発現の変化によって検出される信号を誘発しうる。
【0060】
肥満の発症
体格および体重は遺伝性の高い特徴である。一卵性および二卵性双生児、双生児でない兄弟姉妹ならびに養子家族の集団で実施した関連研究は、体格指数(体重を身長でわって二乗する)のばらつきは、任意の他の群と比較して一卵性双生児でははるかに小さく、環境的影響より遺伝的因子がヒト肥満の主要な決定因子であることを示した(Maes et al., 1997, Behav. Genet., 27: 325-351;Allison et al., 1996, Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord., 20: 501-506)。食餌性の肥満も遺伝性が高い。100日にわたって1日あたり1,000 kcal過剰摂取させた12組の若い成人の一卵性双生児において実施した先駆的な研究は、過剰摂取は全てのボランティアの体重の変動のある増加を誘導することを証明した。しかし、双生児の組は、双生児でない組と比較して体重増加の変動が6倍小さく、長期過剰摂取への適応は重要な遺伝的因子を有することを示している(Bouchard et al., 1990, N. Engl. J. Med., 322:1477-1482)。遺伝的背景が異なるマウスまたはラットを試験したとき、高脂肪食を摂取することにより体重を増加する強力な遺伝的素因は実験室においてかなり明白に観察されている(Schaffhauser et al., 2002, Obes. Res., 10: 1188-1196)。低脂肪食を随時摂取させると、ほとんどの株のマウスは比較的長期間にわたって体重を維持する。しかし、高脂肪食を随時摂取させると、体格のかなりの増加を呈する株もあれば、食餌消費の増加にもかかわらずこの増加に抵抗性の株もある(West et al., 1995, Am. J. Physiol., 268:R658-R655;Prpic et al., 2003, Endocrinology, 144: 1155-1163)。
【0061】
体重の調節は、生物全体のエネルギーバランスの管理に関与する大多数の相互に関連する末梢および脳回路に関係する(Spiegelman and Flier, 2001, Cell, 104:531-43)。生体全体に蓄えられるエネルギー量に関する情報は、レプチンおよびインスリンなどの末梢ホルモンによって脳に送達される。これらのホルモンの血漿濃度の相対的な変動は、中枢機序によって解釈されて、食欲または満腹の信号を誘導する(Friedman and Halaas, 1998, Nature, 395:763-70)。グレリンおよびコレシストキニン(CCK)などの他の分子は、消化管の異なる部分から放出された後脳に流入し、生物の栄養状態の非常に重要な情報を脳の中心に提供する(Murakami et al., 2002, J. Endocrinol., 174: 283-288;Sheng and Moran, 2002, Neuropeptides, 36: 171-181)。
【0062】
エネルギーの恒常性を複雑に管理する脳の重要な領域である視床下部は、短い時間枠に集まる種々の信号を統合する。腹側視床下部では、食欲誘導性ニューロン群は神経ペプチドY(NPY)遺伝子を発現する。レプチンレベルが循環から低下すると、NPYが視床下部の室傍核に放出されて、食物摂取を誘導する(Widdowson et al., 1999, Peptides, 20: 367-372)。NPYをマウスまたはラットの脳室内に単回投与すると何時間も食物摂取を劇的に増加することができる(Zarjevski et al., 1993, Endocrinology, 133:1753-1758)。逆に、視床下部の弓状核に位置する別の群のニューロンはプロオピオメランコルチン遺伝子(POMC)を発現する。これらのニューロンもレプチン受容体遺伝子を発現する。高脂肪食の過剰摂取により、トリグリセリドレベルが上昇し、末梢脂肪細胞が脂肪貯蔵で満たされる。これにより、レプチンの産生が増加し、循環中に放出され、選択的取り込み機序によって最終的に脳に流入する(Hileman et al., 2002,Endocrinology, 143:775-783)。レプチンは、POMCニューロンに位置するレプチン受容体を刺激し、発火活動を増加する(Cowley et al., 2001, Nature, 411:480-484)。
【0063】
POMC前駆体によって作製される活性ペプチドの1つはα-メラニン形成細胞刺激ホルモン(α-MSH)である。レプチン受容体を刺激すると、α-MSHが視床下部の室傍核に放出されて、満腹を誘導する。マウスまたはラットにα-MSHを脳室内注射すると、強制的に摂食させない場合、動物の死を促進することがある長期間継続する食欲不振を誘導する(Fan et al., 1997, Nature, 385:165-168)。
【0064】
上記のホルモン、神経ペプチドおよびそれらの受容体は、エネルギーバランスの中枢管理に関与する多数の遺伝子産物のごく少数の例である。エネルギー管理に関与する分子の調節(例えば、肥満の傾向または存在に関連する破壊)は、CNSにおける遺伝子発現の変化を生ずる信号を誘発する可能性がありうる。
【0065】
遺伝子発現を検出する分子
CNSにおける遺伝子発現は、インビトロにおいて、例えば、単離したCNS試料において、またはインビボにおいて、例えば、インビボにおける画像形成技法を使用して検出することができる。
【0066】
中枢神経系(CNS)試料
CNSは、(脳神経を含む)脳および脊髄をいう。CNS試料は、例えば、脳もしくは脊髄の細胞もしくは組織であっても、または脳室および脊髄の中心管を満たす脳脊髄液(CSF)試料であってもよい。
【0067】
遺伝子発現の検出が被験者から単離されたCNS試料において実施される予定の場合には、CNS試料は、当業者が利用可能な任意の数の方法によって得ることができる。例えば、CNS細胞または組織は、例えば、針生検または開放性外科的切開によって脳から得ることができる。脳の画像形成を実施して、脳に進入する針またはメスの正確な位置決めを決定することができる。
【0068】
一例において、定位生検として知られている、弱い沈静または全身麻酔下にある患者の頭蓋骨に小さい穴を開け、コンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像形成(MRI)スキャンなどのコンピュータ支援式画像形成技法によってガイドして針を脳組織に挿入する。針を使用して細胞試料を取り出し、通常のアッセイ、例えば、本明細書に記載する遺伝子発現アッセイによってその遺伝子発現を検出することができる。別の例において、CSF試料は、腰椎穿刺などの通常の方法によって得ることができる。この手技は、例えば、局所麻酔下で外来で実施することができる。
【0069】
CNS試料に特定の遺伝子発現アッセイを実施するのに必要な細胞数またはCSF量は異なる;しかし、PCRに基づいた技法などのいくつかの技法には、極少数の細胞、例えば、10〜100細胞程度しか必要としない(Klein et al., Nat. Biotechnol.,20(4):387-92,2002)。CNS試料は本明細書に記載する診断試験にすぐ使用しても、または例えば、冷蔵もしくは冷凍保存しても、および/または診断試験を実施する施設に輸送してもよい。
【0070】
核酸を使用する方法
一態様において、本明細書に記載する方法は、(RNA、mRNA、DNA、cDNAまたは遺伝子に対応する他の核酸などの)ポリヌクレオチドを検出する遺伝子発現を検出する技法を使用する。核酸を使用して遺伝子発現を検出する多数の方法が存在すること、および任意の好適な検出方法を使用することができることが当業者に理解されるべきである。典型的なアッセイ様式は核酸ハイブリダイゼーションを使用し、例えば、1)核ラン-オン(nuclear run-on)アッセイ、2)スロットブロットアッセイ、3)ノーザンブロットアッセイ、4)磁気粒子分離、5)核酸もしくはDNAアレイもしくはチップ(以下にもさらに詳細に考察されている)、6)逆ノーザンブロットアッセイ、7)ドットブロットアッセイ、8)インサイチューハイブリダイゼーション、9)RNase保護アッセイ、10)リガーゼ連鎖反応、11)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、12)逆転写酵素(RT)-PCR、および13)ディファレンシャルディスプレイRT-PCR(DDRT-PCR)またはこれらの方法の任意の2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。このようなアッセイは、検出される特定の核酸の存在またはレベルを検出、同定またはモニターするために、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識または他の好適な標識などの検出可能な標識を使用することができる。このような技法および標識は当技術分野において公知であり、当業者が広範に利用することができる。
【0071】
一態様において、試験対象の被験者のCNS試料から単離したmRNAに、配列パネルの1つ以上のメンバーに対応する多数のDNAプローブをハイブリダイゼーションすることによって、RNase保護アッセイを本明細書に記載する方法に使用することができる。CNS試料の1つ以上の遺伝子の発現プロファイルを基準遺伝子発現プロファイル、例えば、基底状態の発現パターンまたは他の陰性もしくは陽性対照(例えば、末梢疾病がないことが公知の患者のプロファイル、または試験対象の特定の疾患がないことが公知の被験者由来の標準的もしくは平均プロファイル)と比較することができる。一例において、試験CNSの遺伝子発現プロファイルを、非CNS異常増殖の存在に関連する基準遺伝子発現プロファイルと比較する。試験遺伝子発現プロファイルが基準遺伝子発現プロファイルに一致する場合には、被験者は非CNS異常増殖疾患を有するまたはそれを発症するリスクにあることを示す。本明細書において使用する「一致する」は、試験遺伝子発現プロファイルの遺伝子の少なくとも75%が、基準発現プロファイルの遺伝子と同じ方法でアップ-またはダウンレギュレーションされていることを意味する。
【0072】
本明細書に記載する方法はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する方法にも好適である。PCRを使用する方法は、RT-PCR(米国特許第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応(Barany, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193,1991)、自己持続配列複製(3SR)(self-sustained sequence replication)(Guatelli et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874-1878, 1990)、転写増幅システム(Kwoh et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:1173-1177,1989)、Qベータレプリカーゼ(Lizardi et al., BioTechnology,6:1197,1988)、ローリングサイクル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)または任意の他の核酸増幅方法を含み、当技術分野において公知の技法を使用する増幅分子の検出が続く。CNS試料において発現されるmRNAのPCR増幅は、試料から単離されたmRNAから直接実施しても、または単離されたこのようなmRNAから逆転写されたcDNAから実施してもよい。次いで、増幅した核酸を関心対象の特定のプローブ、例えば、本明細書に記載するCNS遺伝子のプローブにハイブリダイゼーションしてその発現を判定することができる。プローブをアレイ、例えば、本明細書に記載するアレイのアドレスに配置することができる。このような方法は日常的であり、コンピュータ制御式試薬分注および信号検出を使用する自動システムへの日常的な適応に特に応じやすい。例えば、Klein et al., Nat. Biotechnol.,2002, 20(4):387-92参照。
【0073】
別の態様において、インサイチュー方法を使用して、特定の遺伝子に対応するmRNAの存在またはレベルを検出する。このような方法では、CNS細胞または組織試料を調製/処理して、支持体、典型的にはガラススライドに固定し、次いでプローブ(例えば、本明細書に記載するCNS遺伝子のプローブ)と接触させることができる。
【0074】
さらに別の態様において、米国特許第5,695,937号に記載する遺伝子発現の連続分析を使用して、本明細書に記載するCNS遺伝子の転写物レベルを検出する。
【0075】
ポリペプチドを使用する方法
他の態様において、本明細書に記載する方法は、遺伝子がコードする遺伝子産物(ポリペプチド)遺伝子を検出するまたはポリペプチドの活性、例えば、酵素活性を検出する発現を検出する技法を使用する。このような方法は、CNS細胞から、例えば、CSFに分泌されるポリペプチドをコードする遺伝子の発現を検出するのに特に有利である。
【0076】
種々の方法を使用してCNS遺伝子がコードするタンパク質のレベルを求めることができる。一般に、これらの方法は、(脳細胞試料またはCSF試料などの)CNS試料と関心対象のタンパク質に選択的に結合する抗体などの試薬を接触させる段階を含む。一態様において、抗体は検出可能な標識を有する。抗体はポリクローナル抗体であっても、またはさらに好ましくはモノクローナルであってもよい。無傷の抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab')2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関して「標識した」という用語は、プローブまたは抗体に検出可能な物質を結合する(すなわち、物理的に結合する)ことによるプローブまたは抗体の直接的な標識化、および検出可能な物質との反応によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を含むことが意図されている。このような検出方法を使用して、インビトロおよびインビボにおいてCNSのCNS遺伝子産物を検出することができる。
【0077】
インビトロ技法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降法、免疫蛍光法、酵素免疫測定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット分析およびLuminex(商標)x MAP(商標)検出アッセイなどの免疫測定法が挙げられる。標的分析物を標識抗体と固相支持体に固定した抗体の間に「サンドイッチ」する「サンドイッチ」タイプのアッセイである免疫測定法もある。アッセイは、固定した抗体に結合した抗原標識抗体複合体の存在および量を観察することによって読み取られる。
【0078】
本明細書に記載する方法に有用な別の免疫測定法は、固相表面に結合した抗体と、未知量の抗原分析物および同一種類の標識抗原を含有する試料(例えば、CSF試料)を接触させる「競合」タイプの免疫測定法である。次いで、固相表面に結合した標識抗原の量を求め、試料中の抗原分析物の量の相対的な測定値を提供する。このような免疫測定法は、使用が便利であるように「ディップスティック」様式(例えば、フロースルーまたは移動式のディップスティックデザイン)で容易に実施される。ディップスティックを使用するアッセイは、任意で、陰性または陽性の内部対照を含む。数多くの種類のディップスティック免疫測定法が当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,656,448号;同第4,366,241号および同第4,770,853号に記載されている。他の態様において、抗体を使用するアッセイはアレイ様式で実施される。例えば、CNS試料を標識、例えば、ビオチン化し、次いで抗体、例えば、抗体アレイ上に位置づけられている抗体に接触させる。例えば、蛍光標識に結合したアビジンで試料を検出することができる。
【0079】
インビボ技法は、例えば、検出対象の遺伝子産物に結合する標識抗体を被験者(例えば、CSF)に導入する段階を含む。抗体は、例えば、被験者における存在および位置を標準的な画像形成技法によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0080】
特定のCNS遺伝子産物を検出するために使用されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体は入手可能である場合もある。例えば、本明細書に記載するCNSマーカー遺伝子の多くの市販の抗体が存在する。または、当業者は、通常の技法を使用して診断アッセイに使用するのに好適な抗体を作製することができる。特定の標的を検出するためにポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作製し、使用する方法は、例えば、Harlow et al., Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol I. Cold Spring Harbor Laboratory(1998年12月1日)に記載されている。改変された抗体および抗体断片(例えば、キメラ抗体、再構成抗体、ヒト化抗体またはそれらの断片、例えば、Fab'、Fab、F(ab')2断片);または生合成抗体(例えば、1本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、1本鎖Fv(scFv)等を作製する方法は当技術分野において公知であり、例えば、Zola, Monoclonal Antibodies: Preparation and Use of Monoclonal Antibodies and Engineered Antibody Derivatives, Springer, Verlag(2000年12月15日;第1版)に見出すことができる。
【0081】
CNS遺伝子発現の画像形成
一態様において、本明細書に記載する方法は、CNSにおける遺伝子発現を画像化する、例えば、遺伝子発現を非侵襲的に画像化する技法を使用する。例えば、血液脳関門(BBB)を超えて栄養物を輸送するために存在する担体媒介性輸送システムなどの内因性BBB輸送システムにより標識プローブを脳に標的化することによって、標的遺伝子の発現を検出することができる標識プローブを血液脳関門(BBB)から脳内に送達することができる。同様に、受容体媒介性の経細胞輸送システムを作動して、インスリン、トランスフェリンまたはインスリン様成長因子などの循環ペプチドを輸送する。これらの内因性ペプチドは、「輸送ペプチド」または「分子的なトロイの木馬」として作用して本明細書に記載する標識診断プローブを、BBBを越えて通過させることができる。次いで、公知の脳画像化技法によって標識を検出することができる。このような方法は、例えば、米国特許第6,372,250号に記載されている。他の態様において、Shi et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2000,97(26):14709-14およびLee et al.,J.Nucl.Med.2002,43(7):948-56は、BBBを通過するためにアンチセンス放射性医薬品と薬物標的化技術を合わせて使用してインビボにおいて脳における遺伝子発現を画像化することを記載している。
【0082】
標的遺伝子の発現を検出することができる標識プローブを脳内に送達する他の方法は、例えば、米国特許第5,720,720号に記載されている。この特許は、高流動微量注入(high-flow microinfusion)によって脳に(遺伝子産物を画像化するための標識抗体などの)薬剤を送達する方法を記載している。
【0083】
生体液中のCNS遺伝子発現の変化の検出
CNSにおける遺伝子の活性化により、離れた部位、例えば、血液、尿または精液などの体液における遺伝子産物の測定可能な変化を生ずることがある。例えば、大脳皮質、海馬、嗅内(entorrhinal)皮質、視床の一部、基底核、小脳および網様体は自律神経系の出力に影響することが公知である(Kandel et al.,Principles of Neural Science、第3版、Appleton & Lange)。このような影響により、自律神経節または神経支配されている器官における遺伝子発現のmRNAまたはタンパク質レベルの測定可能な変化を生じうる。この種の相互作用の一例は、末梢におけるサイトカイン放出による迷走神経活性化の免疫調節作用である(Tracy,Nature,420:853-9,2002)。
【0084】
また、CNSにおける遺伝子の活性化は、血中タンパク質の変化を測定することによって測定することができる場合もある。例えば、CNSのニューロンは、視床下部-下垂体-副腎、-性腺または甲状腺軸などのいくつかの神経内分泌軸を介して血中へのホルモンの放出を誘発することができる(Besedovsky and del Rey, Endocrine Reviews, 17:1-39,1996)。さらに、脳の細胞外液は血中および深頸リンパ節に排出される(Cserr et al., Brain Pathol., 2(4):269-76,1992)。脳の細胞外液は、くも膜絨毛を通過して脳から血液に、ならびにある種の脳神経(主に嗅神経)および脊髄神経根神経節を通ってリンパ液に排出される。脳または脳脊髄液の異なる領域に注射したタンパク質の最低14〜47%はリンパ液を通過する。従って、CSFマーカーはリンパ液、血液または血清中に排出され、リンパ液、血液または血清中で検出することができる。血中に見られるこのようなマーカーは濃縮されてもよく、それによって血液成分の腎臓による選択的なろ過により尿中で検出可能になりうる。
【0085】
CNSは、自律神経系および内分泌系を介して精巣に関連している。脳内の遺伝子の活性の変化によって視床下部-下垂体-性腺軸の活動または精巣の神経支配が変更されると、このような変化は、精子などの精巣に関連する体液中で検出できると考えられる。例えば、脊髄損傷患者は、精子の組成が変化することが示されている(Naderi and Safarinejad, Clin. Endocrinol.,58(2):177-84,2003)。
【0086】
日常的な方法を使用して、CNSにおける遺伝子発現の変化の結果である、末梢体液などの末梢組織における遺伝子産物を同定することができる。例えば、候補マーカー遺伝子を実験動物の脳において崩壊することができる。野生型動物(すなわち、候補マーカー遺伝子が崩壊されていない動物)と比較した、実験動物の末梢組織における候補遺伝子の発現の変化は、末梢組織における候補分子の発現がCNSにおける遺伝子発現の変化に関連していることを示す。
【0087】
アレイ
本明細書に記載する方法は、当技術分野において公知の方法により、核酸またはタンパク質アレイ、例えば、核酸および/またはタンパク質「チップ」用に容易に適応させられる。典型的な態様において、アレイチップは、多数のCNS遺伝子の発現を検出するための多数のプローブ(例えば、DNAプローブおよび/または抗体プローブ)を含む。一態様において、特定のチップ上のプローブは、CNS試料を採取した被験者に非CNS異常増殖または他の疾患が存在する場合には、各クラスターが特定の遺伝子発現プロファイルに関連する遺伝子の1つ以上の特定のパネルまたは「クラスター」のメンバーを検出するように選択される。チップは、固相平面支持体、例えば、ガラス、金属またはナイロン上の離れた所定の位置(アドレスまたは「スポット」)に固定(係留)された数十、数百または数千の個々のプローブを含むことができる。アレイはマクロアレイであってもまたはマイクロアレイであってもよく、その差はスポットのサイズである。マクロアレイは、直径約300ミクロン以上のスポットを有し、ゲルまたはブロットスキャナーを使用して画像化することができる。マイクロアレイは、直径300ミクロン未満、典型的には200ミクロン未満のスポットを有する。
【0088】
本明細書に記載する方法において遺伝子発現プロファイルを分析および比較するためには、核酸アレイは、少なくとも4つ、例えば、少なくとも10、20、40、60、80または100のCNS遺伝子の核酸プローブを使用して構築することができる。このようなアレイは対照プローブ(すなわち、陰性試料、例えば、非CNS疾患が認められない被験者の試料において発現が影響を受けないことが予想される遺伝子のプローブ)を含んでもよい。典型的には、このような対照または「正常な」非疾病試料は健康なボランティアから得られる。健康なボランティアの比較的長期にわたる研究を実施して、対照試料が、疾病を生じない個人由来のものであることを確認することができる。このような研究は、対照遺伝子発現プロファイルのデータベースの生データを提供する。このようなデータベースは、本発明に使用することができる正常または対照「基準」プロファイル源を提供する。対照試料はまた、診断対象の疾患に関連のない死因で死亡した個人(例えば、不慮の外傷で死亡した個人)の死後に得ることもできる。このような場合には、死後試料は死後できるだけ早く、例えば、死後3時間以内に採取するべきである。
【0089】
関心対象の組織、例えば、脳、脊髄またはCSF試料の総mRNAを表す標識cDNA集団を、好適なハイブリダイゼーション条件下でDNAアレイと接触させる。例えば、固相支持体上の特定のアドレスにおける蛍光によって、cDNAとアレイの配列とのハイブリダイゼーションを検出する。このように、特定の被験者または被験者群のCNS試料における遺伝子発現パターンを表す蛍光パターンが得られる。これらの遺伝子発現パターンはデジタル化して、コンピュータ分析および比較のために電子的に保存することができる。例えば、アレイを使用して、試験対象の個人におけるCNS遺伝子の発現と、例えば、デジタルデータベースに電子的に保存されている1つ以上の基準遺伝子発現プロファイルを比較することができ、この場合基準遺伝子発現プロファイルは末梢異常増殖または他の疾患の有(陽性対照)またはなし(陰性対照)に関連する。
【0090】
いくつかの態様において、cDNAは、アレイを作製するためのプローブとして使用される。好適なcDNAは、上記の従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得ることができる。cDNAの長さは20〜2,000ヌクレオチド、例えば、100〜1,000ヌクレオチドであってもよい。cDNAを作製するための当技術分野において公知の他の方法を使用してもよい。例えば、クローニングした配列の逆転写を使用してもよい(例えば、Sambrook et al.編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている)。cDNAプローブを好適な固相支持体(基板)、例えば、コーティングしたガラス顕微鏡スライドの特定の所定の位置(アドレス)に二次元格子状に配置または設置する(「プリントする」または「スポットする」)。少容量、例えば、5ナノリッターの濃縮DNA溶液を各スポットに使用する。スポッティングは、業者の取扱説明書に従い、市販のマイクロスポッティング装置(配列マシーンまたは格子形成ロボットと呼ばれる場合もある)により行われることができる。DNAアレイを作製するための固相支持体および装置の市販業者には、BioRobotics Ltd., Cambridge, UK;Corning Science Products Division, Acton, MA;GENPAK Inc., Stony Brook, NY;SciMatrix, Inc., Durham, NC;およびTeleChem International, Sunnyvale, CAが挙げられる。
【0091】
cDNAは任意の好適な方法によって固相支持体に結合することができる。一般に、結合は共有結合である。DNA分子を固相支持体に共有結合するのに好適な方法には、アミノ架橋およびUV 架橋が挙げられる。cDNAアレイの構築に関するガイダンスは、例えば、DeRisi et al., Nature Genetics, 1996, 14:457-460;Khan et al., Electrophoresis, 1999,20:223-229;Lockhart et al., Nature Biotechnol., 1996, 14: 1675-1680参照。
【0092】
新規方法のいくつかの態様において、アレイの固定DNAプローブは合成オリゴヌクレオチドである。cDNAに関して本明細書に記載する技法を使用して、事前に作製したオリゴヌクレオチドをスポットして、DNAアレイを作製することができる。しかし、一般に、オリゴヌクレオチドは固相支持体上に直接合成される。オリゴヌクレオチドアレイを合成する方法は当技術分野において公知である。例えば、Fodor et al.,米国特許第5,744,305号参照。オリゴヌクレオチドの配列は、検出対象の特定の遺伝子の配列の一部を表す。一般に、オリゴヌクレオチドの長さは10〜50ヌクレオチド、例えば、15、20、25、30、35、40または45ヌクレオチドである。
【0093】
アプタマーアレイも本発明の方法に有用である。アプタマーは、ハイブリダイゼーションではなく、三次元配座に基づいて特定の標的分子に結合する核酸分子である。アプタマーは、例えば、オリゴヌクレオチドの最初の異種集団を合成し、次いで特定の標的分子にしっかりと結合するオリゴヌクレオチドを集団から選択することによって選択される。特定の標的分子に結合するアプタマーが同定されたら、生物学分野および他の分野において公知の種々の技法を使用して、例えば、クローニングおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、次いで転写によって複製することができる。標的分子は核酸、タンパク質、ペプチド、小有機または無機化合物および場合によっては、微生物全体であってもよい。
【0094】
オリゴヌクレオチドの異種集団の合成およびその集団からのアプタマーの選択は、試験管内進化法(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment )またはSELEXとして公知の手法を使用して実施することができる。SELEX方法は、例えば、Gold et al.,米国特許第5,270,163号および同第5,567,588号;Fitzwater et al.,(「A SELEX Primer」、Methods in Enzymology, 267:275-301,1996);およびEllington and Szostak(「In Vitro Selection of RNA Molecules that Bind Specific Ligands」、Nature, 346:818-22)に記載されている。簡単に説明すると、異種DNAオリゴマー集団を合成して、アプタマーのインビトロ選択のための候補オリゴマーを提供する。この最初のDNAオリゴ集団は、長さ15〜100ヌクレオチドのランダム配列に長さ10〜50ヌクレオチドの一定の5'および3'配列が隣接しているセットである。一定領域はPCRプライマーハイブリダイゼーションの部位を提供し、一実施においてRNAポリメラーゼによる転写開始部位を提供し、RNAオリゴマーの集団を作製する。一定部位はまた、選択したアプタマーをクローニングするための制限部位も有する。一定領域の多数の例をアプタマー進化に使用することができる。例えば、Conrad et al.(「In Vitro Selection of Nucleic Acid Aptamers That Bind Proteins」、Methods in Enzymology, 267:336-83,1996);Ciesiolka et al.,(「Affinity Selection-Amplification from Randomized Ribooligonucleotide Pools」、Methods in Enzymology, 267:315-35, 1996);Fitzwater、前記参照。
【0095】
アプタマーは、一般に、5〜100サイクルの手法で選択される。各サイクルにおいて、オリゴマーは標的分子に結合され、それらが結合している標的を単離することによって精製し、標的から放出し、次いで20〜30世代のPCR増幅によって複製する。
【0096】
アプタマー選択は、生物学における機能の進化的選択に類似している。異種オリゴヌクレオチド集団に上記のアプタマー選択手法を実施することは、連続的に複製中の生物学的な集団に、機能についての10〜20の厳しい選択事象を実施することと類似しており、各選択は20〜30世代の複製分だけ離れている。
【0097】
異種性は、例えば、アプタマー選択手法の開始時にだけ導入し、複製過程全体には導入しない。または、異種性はアプタマー選択手法の後期段階に導入してもよい。
【0098】
例えば、2'-フルオロ-リボヌクレオチドオリゴマー、NH2-置換およびOCH3-置換リボースアプタマーならびにデオキシリボーズアプタマーを含む種々のオリゴマーをアプタマー選択に使用することができる。RNAおよびDNA集団は、同様に、任意の種類の標的分子に結合するように構成されたアプタマーを提供することができる。どちらの集団においても、選択したアプタマーは109〜1023の頻度で生じ、Gold et al.,(「Diversity of Oligonucleotide Functions」、Annual Review of Biochemistry, 64:763-97, 1995)参照、最も多くは、同族抗原に対する抗体の親和性と同じくらい強い親和性である、標的に対するナノモルの結合親和性を有する。Griffiths et al.,(EMBO J.,13:3245-60,1994)参照。
【0099】
2'-フルオロ-リボヌクレオチドオリゴマーの使用は、未置換のリボ-またはデオキシリボ-オリゴヌクレオチドで得られるものより10〜100倍結合親和性を増加すると考えられる。Pagratis et al.(「Potent 2'-amino and 2'fluoro 2'deoxyribonucleotide RNA inhibitors of keratinocyte growth factor」Nature Biotechnology, 15:68-73)。このような修飾塩基は追加の結合相互作用を提供し、アプタマーの二次構造の安定性を増す。これらの修飾はまたアプタマーをヌクレアーゼ抵抗性にし、これはシステムの実世界への適用の大きな利点である。Lin et al.(「Modified RNA sequence pools for in vitro selection」Nucleic Acids Research, 22: 5229-34, 1994);Pagratis、前記参照。
【0100】
本発明において、アプタマーは、CNSマーカー遺伝子に対応するmRNA、cDNAまたはタンパク質を検出するために使用することができる。
【0101】
本発明のいくつかの態様において、動物モデルCNS遺伝子のヒト相同物のプローブ(核酸プローブ、抗体またはアプタマー)を本発明の検出方法に使用する。他の態様において、検出に使用するプローブは遺伝子の高度に保存されている領域、例えば、相同マウスとヒト配列の間で高度に保存されている配列からなる。
【0102】
試料調製および分析
新規方法において、1つ以上のCNS遺伝子の転写レベルは、アッセイしたCNS試料の細胞に存在する対応するmRNAの量に反映されると仮定される。一般に、CNS細胞または試料のmRNAは、特定の遺伝子を表して作製されるcDNAの相対量が試料中のmRNAの相対量を反映するような条件下においてcDNAにコピーされる。比較ハイブリダイゼーション方法は、関心対象の遺伝子の配列にハイブリダイゼーションする対応するcDNAの量によって示される、2つの組織試料中の種々の特定のmRNAの量を比較することに関係する。
【0103】
cDNAを作製するために使用するmRNAは、一般に、他の細胞内容物および成分から単離される。mRNAを単離する有用な方法は2段階法である。第1の段階では、総RNAを単離する。第2の段階は、固相支持体、例えば、クロマトグラフィーカラムまたは磁気ビーズに結合したオリゴ(dT)分子にmRNAのポリ(A)テイルをハイブリダイゼーションすることに基づいている。総RNA単離およびmRNA単離は当技術分野において公知であり、例えば、業者の取扱説明書により市販のキットを使用して実施することができる。同様に、単離したmRNAからのcDNAの合成は当技術分野において公知であり、業者の取扱説明書により市販のキットを使用して実施することができる。cDNAの蛍光標識化は、蛍光標識したデオキシヌクレオチド、例えば、Cy5-dUTPまたはCy3-dUTPをcDNA合成反応に加えることによって実施することができる。DNAアレイで分析するためのmRNAの単離および蛍光標識したcDNAの合成に関するガイダンスは、例えば、Ross et al.,Nature Genetics, 2000, 24:227-235参照。
【0104】
DNAアレイのハイブリダイゼーションおよび洗浄、ハイブリダイゼーションの検出ならびにデータ分析の従来の技法は、必要以上の実験を行わないで新規方法に使用することができる。DNAアレイをスキャンし、データを分析するためのハードウェアおよびソフトウェアの市販業者には、Cartesian Technologies, Inc.(Irvine, CA);GSI Lumonics(Watertown, MA);Genetic Microsystem Inc.(Woburn, MA);およびScanalytics, Inc.(Fairfax, VA)が挙げられる。
【0105】
他の態様において、1つ以上のCNS遺伝子の発現レベルは、アッセイ対象のCNS試料の細胞に存在するタンパク質の存在および/またはレベルに反映される。CNS試料中のタンパク質の存在またはレベルは通常の方法によって検出することができる。例えば、CNS試料(例えば、CSF試料)は、2次元(2D)PAGEなどのゲル電気泳動技法によって分析することができる。タンパク質スポットが2D-PAGEゲルで分離されたら、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型法(MALDI-TOF)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)によって差次的に発現されるスポットを同定することができる。この方法をペプチド分析に使用して、試料中の特定のタンパク質のフィンガープリントを提供することもできる。
【0106】
第2のプロテオミクス方法は、質量分析法によってCSF試料などのCNS試料を直接分析することによってプロテオミクススペクトルを得ることに関係しうる。例えば、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型(SELDI-TOF)分析を実施して、CNS試料のプロテオミクスパターンを作製することができる。SELDI-TOF分析は、正常者と疾病患者を識別するクラスターパターンを同定することができることが示されている。Paweletz et al., Dis. Markers, 17(4):301-7, 2001参照。
【0107】
遺伝子発現プロファイルの生成
本明細書に記載する方法に使用する遺伝子発現プロファイルは2つ以上のCNS遺伝子の発現パターンである。発現プロファイルは、5、10、25、50、100、200、500またはそれ以上の遺伝子の発現パターンであってもよい場合もある。本明細書において使用する「基準遺伝子発現プロファイル」は2つ以上のCNS遺伝子の発現の特徴的なパターン(データセット)(例えば、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションおよび/または発現のレベル)であり、この場合、発現のパターンは特定の疾患のリスクまたは存在に関連する(例えば、疾患が認められない人の発現レベルに対する特定の疾患に関連する発現レベルの比)。特徴的なプロファイルと特定の疾患の関連は、CNS遺伝子発現データを生成して分析し、CNS遺伝子発現の特定のパターン(例えば、陰性対照と比較したときの特定の遺伝子の遺伝子発現の相対的な増加および/または低下)と特定の臨床状態の関連を同定することによって求められる。例えば、基準遺伝子発現プロファイルは遺伝子のセット(本明細書において遺伝子の「パネル」または「クラスター」とも言われる)のデータであってもよく、この場合には、セットの各遺伝子は、特定の末梢疾患または任意の末梢疾患に関連する場合にはダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションされる。
【0108】
基準プロファイルはパネルの2つ以上の遺伝子の遺伝子発現の値、例えば、相対値を含んでもよく、この場合には、パネルの少なくとも1つの遺伝子はダウンレギュレーションされ、少なくとも1つの遺伝子はアップレギュレーションされる。このような遺伝子発現プロファイルの一例は、図47A〜Cの表のいずれかに示す遺伝子の少なくとも2つ、例えば、5〜50ならびに図58および60に記載する遺伝子の任意の数の相対的な差次的な発現の値を含むプロファイルである。このような基準プロファイルは早期癌、関節炎または喘息の存在に関連する。他の例は、本明細書に開示する図の各々によって提供される。例えば、図31-4は、肺癌の存在に応答して皮質において大幅にアップレギュレーションされる遺伝子のプロファイルまたはパネルを提供している。
【0109】
非CNS癌(または乳癌、肺癌または結腸癌などの特定の種類の非CNS癌)に関連する例示的な遺伝子発現プロファイルを図2-46に示す。基準遺伝子発現プロファイルは、これらの図に示す遺伝子または遺伝子産物の少なくとも一部のデータを含んでもよい。例えば、肺癌に関連する基準遺伝子発現プロファイルは、図8、9、10、17、18、19、26、27および28に肺癌のCNSマーカーとして記載する1、2、5、10、20、30、40、50またはそれ以上の遺伝子または遺伝子産物の差次的な発現の値を含むことができる。本発明の方法に使用することができる基準プロファイルは本明細書に記載するCNSマーカーに限定されない。
【0110】
基準プロファイルは、本明細書に記載する実施例1〜3に例示するように、実験動物における非CNS疾病の存在に応答するCNSの遺伝子発現パターンの変化を検出し、実験試料においてあるパターンで差次的に発現される遺伝子および遺伝子クラスターのヒト相同物を同定することによって生成することができる。
【0111】
基準遺伝子発現プロファイルは、ヒトCNS遺伝子発現データを評価することによっても得ることができる。例えば、数十、数百または数千人のCNS遺伝子発現データを入手し、例えば、電子的、例えば、デジタル処理して保存されているデータベースを作製し、維持する。個人を追跡調査し、例えば、癌の臨床状態に関して比較的長期間にわたって(例えば、少なくとも5年、10年、15年、20年、30年、50年以上または生涯にわたって)評価することができる。例えば、CNS遺伝子発現データを入手してから5年、10年、15年、20年、30年または50年後に特定の疾病を発症した個人の発現プロファイルを、疾病が認められていない個人の発現プロファイルと比較する。1つの臨床タイプの疾患を発症した個人と別の臨床タイプの疾患を発症した個人間、または早い年齢において疾病を発症した個人と遅い年齢で疾病を発症した個人間の同様の比較を実施する。これらの分析は、異なる病期の疾病、例えば、異なる病期の異常増殖または異なる種類の腫瘍に関連する特定の基準CNS遺伝子発現プロファイルを提供する。「対照遺伝子発現プロファイル」は、健康(正常)個人または動物モデルにおける所定のセットの遺伝子のプロファイルである。
【0112】
基準および対照遺伝子発現プロファイルは、典型的には、電子デジタル形式、例えば、CD、ディスク、DVD、ハードドライブ、コンピュータメモリまたはメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な媒体に保存され、また被験者の性別、疾患の種類および病期、年齢群ならびに人種などの情報を同定する。
【0113】
「試験遺伝子発現プロファイル」は、末梢疾病の存在について試験する対象の被験者のCNS試料から得られる。まず、本明細書に記載するように、脳針生検(脳細胞試料)または腰椎穿刺(CSF)などの通常の手段によってCNS試料、例えば、脳細胞試料またはCSF試料を被験者から得る。次いで、遺伝子発現を検出する方法、例えば、本明細書に記載する遺伝子発現を検出する任意の方法に使用するために試料を調製する。一態様において、総RNAを試料から調製し、本明細書に記載する核酸アレイアッセイに使用するためのcDNAに逆転写することができる。別の態様において、本明細書に記載する抗体アッセイに使用するために総タンパク質を試料から調製する。次いで、調製した試料を、試験試料を比較する1つ以上の特定基準遺伝子発現プロファイルのCNS遺伝子または遺伝子産物のクラスターまたはパネルに対応するCNS遺伝子または遺伝子産物の少なくとも1つのクラスターまたはパネルの発現レベル(または抗体アレイの場合にはタンパク質レベル)を検出することができるアレイ(例えば、抗体または核酸アレイ)と接触させることができる。例えば、試験被験者から調製したCNS試料を、図2〜46に示す遺伝子の2つ以上、例えば、2〜150、10〜50または20〜30の核酸プローブを含有する核酸アレイまたは抗体プローブを含有する抗体アレイと接触させることができる。一態様において、アレイは図2〜46のいずれかに開示する特定のクラスターのマーカー遺伝子の各々のプローブを含有することができる。
【0114】
アレイアッセイの結果は、アレイ上の各位置(各プローブ)についての蛍光検出および結合した抗体またはハイブリダイゼーションした核酸の測定などの通常の技法によって得られる。次いで、アレイ上の各抗体またはプローブによってCNS試料中で検出される各ポリペプチドまたは遺伝子のレベルの値のデータセットを生成することができる。データセットは、患者の識別子および検出される発現またはタンパク質の実際のレベルおよび/または相対的なレベルなどの情報を含むことができる。このようなデータセットを「試験」または「試料」遺伝子発現プロファイルとして直接使用してもまたは基準プロファイルの様式に匹敵する様式にデータセットを変換してもよい。
【0115】
試験遺伝子発現プロファイルが生成されたら、本明細書に記載するように試験プロファイルを基準発現プロファイルと比較することができる。
【0116】
遺伝子発現プロファイルの分析
新規方法および任意のシステムにより、試験被験者の試験遺伝子発現プロファイルを、特定の疾患の存在に関連する基準遺伝子発現プロファイルおよび/または特定の非CNS疾患が認められないことに関連する対照(「正常」)遺伝子発現プロファイルと比較することによって試験被験者を評価することができる。多数のボランティアにおけるCNS遺伝子発現の比較的長期にわたる研究を実施して、疾病を発症しない個人に関連する対照遺伝子発現プロファイルまたは疾病を発症する個人の基準プロファイルを同定し、確認する。このような研究は、本発明の方法に使用することができる陰性および陽性対照遺伝子発現プロファイルのデータベースの生データを提供する。
【0117】
被験者「試験」および「基準」プロファイルは、本明細書に記載する方法によって得ることができる。一態様において、本発明の方法は、被験者(医療提供者または他の団体から直接または間接的に)からCNS試料を得る段階、試料から発現プロファイルを生成する段階、および被験者の発現プロファイルを1つ以上の対照および/または基準プロファイルと比較する段階および/または被験者のプロファイルと最も類似した基準プロファイルを選択する段階を含む。
【0118】
他の検出方法の場合と同様に、プロファイルに基づいたアッセイは症状の発症前(この場合には診断である)、治療前(この場合には予後である)または治療経過中(この場合にはモニターとして作用する)に実施することができる。
【0119】
種々の通常の統計学的手段を使用して、2つの遺伝子発現プロファイルを比較することができる。考えられる1つの測定基準は、2つのプロファイル間の差である距離ベクトルである。試験および基準プロファイルの各々は多次元ベクトルとして表され、各次元はプロファイルの値、例えばパネルの特定の遺伝子の発現の値である。試験遺伝子発現プロファイルの遺伝子の少なくとも75%が、基準発現プロファイルの遺伝子と同じようにアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされている場合には、試験プロファイルと基準または対照プロファイルは「一致する」ということができる。「高レベルの一致」は、遺伝子の少なくとも75%が、基準発現プロファイルの遺伝子の発現レベルの少なくともプラスまたはマイナス50%(または発現レベルの比のLog2)内にあることを意味すると考えられる。
【0120】
一態様において、上記のそれぞれの多次元ベクトルが、互いに対するばらつきが30%以下である場合には、試験および基準プロファイルは一致するといわれる。試験および基準プロファイルが一致する場合には、試験被験者は、基準プロファイルが関連する末梢疾患を有すると同定することができる。試験および正常対照プロファイルが一致する場合には、被験者に末梢疾患は認められないと考えられる。
【0121】
一態様において、パターン認識ソフトウェアを使用して、マッチングプロファイルを同定する。例えば、パターン発見のための階層的クラスタリング、K平均クラスタリングおよびSOM(self-organizing maps)などの監督されていないクラスタリングアルゴリズムを使用することができる。Genes@Work ソフトウェアパッケージ(IBM Corp.)で実施されるSVM(support vector machines)およびSPLASH(structural pattern localization analysis by sequential histograms)などの監督されている技法も使用することができる。
【0122】
別の態様において、最近傍分類子(nearest neighbor classifier)を適用することによって実施される定量的パターン比較によって遺伝子発現プロファイルを分析する(Jelinek et al., Mol. Cancer Res., 1:346-61, 2003参照)。最近傍分類子に基づいて、順列由来の分布と共に、基準遺伝子発現パターンによって規定されるクラスに属する各試験プロファイルの確立を推定するために使用することができるスコアを規定する(Jelinek、前記参照)。
【0123】
被験者、医療関係者または別の関心を有する団体に紙または電子形態で送信することができる診断試験の結果は、被験者の発現プロファイル自体、被験者の発現プロファイルを別のプロファイルと比較した結果またはこれらのいずれかの記述子であってもよい。送信は、コンピュータネットワークで(例えば、搬送波に組み込まれたコンピュータデータ信号などのコンピュータ送信の形態で)実施されうる。新規システムはまた、以下の段階を実施するための実行可能なコードを有する(CD、ディスクまたはハードドライブなどの)コンピュータ読み取り可能な媒体を含む:被験者の発現プロファイルを受信する;基準発現プロファイルのデータベースにアクセスする;およびi)被験者の発現プロファイルに最も類似した一致基準プロファイルを選択する、またはii)被験者の発現プロファイルと少なくとも1つの基準プロファイルの類似性の少なくとも1つの比較スコアを求める。被験者の発現プロファイルおよび基準発現プロファイルは各々、同定された遺伝子もしくは遺伝子産物の1つ以上の発現レベルまたはそれらがコードするタンパク質のレベルを示す値を含む。
【0124】
予測医療
本明細書に記載する方法は、一般に予測医療分野において有用であり、さらに具体的には、診断および予後アッセイ、疾病、例えば異常増殖の進行のモニタリングまたは例えば、臨床試験における治療に対する応答のモニタリングに有用である。例えば、異常増殖の他の、例えば臨床徴候がない場合に、被験者が超早期異常増殖を有するかどうかを判定することができる。別の例において、関節の炎症などのRAの臨床徴候がない場合に、被験者が関節リウマチを発症するリスクにあるかどうかまたは被験者が早期RAを有するかどうかを判定することができる。本発明の方法は、例えば、(例えば、癌を除去するために)疾病の手術または治療を受けたことがある患者に特に有用であり、この場合には、本発明の方法は再発もしくは転移をモニターするために使用することができると思われ、本発明の方法は、例えば、環境的要因により癌の発生頻度が高い地域に生活している人または疾病(例えば、糖尿病、喘息または癌)の家族歴を有する個人または疾病感受性遺伝子、例えば、癌感受性遺伝子(例えば、BRCA1またはBRCA2、hMSH2、MLH1、MSH2またはMSH6)のキャリアである個人に特に有用である。他の癌感受性遺伝子はThe Genetic Basis of Human Cancer、第2版(Vogelstein および Kinzler、編)に記載されている。このような個人は、本明細書に記載する方法を使用して評価することができる。
【0125】
例えば、疾病を発症するリスクが高い場合(例えば、個人が喘息もしくは癌の強い家族歴を有する場合、または個人が癌感受性遺伝子を保有するもしくは癌のリスクが高い地域で生活している場合)には、個人は生涯にわたって定期的(例えば、10年ごと、5年ごとまたは毎年)評価することができる場合もある。
【0126】
ここで言われるおよび本発明の方法のいずれかに関連していわれる「被験者」は脊椎動物であり、典型的には哺乳類またはヒトである。被験者は実験動物(例えば、ラットまたはマウスなどの実験用げっ歯類)、飼われている動物(例えば、イヌまたはネコ);家畜として飼育されている動物(例えば、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギまたはウマ);ヒト以外の霊長類(例えば、類人猿、サルまたはチンパンジー)であってもよい。動物またはヒトは胎児であってもよい(従って、本発明の方法は、遺伝子スクリーニングを実施するまたは出生前診断を実施するために使用することができる)。
【0127】
非CNS疾患を診断するシステム
被験者の非中枢神経系(非CNS)疾患を診断するシステムは以下の要素を含んでもよい:CNS試料を入手するためのサンプリング装置;遺伝子発現検出装置;基準遺伝子発現プロファイル;およびCNS試料中の1つ以上の遺伝子の遺伝子発現を基準遺伝子発現プロファイルと比較する手段(例えば、コンパレータ)。
【0128】
サンプリング装置は、低侵襲的技法、例えば、脳外科的手術によってCNS試料を獲得する。低侵襲性脳外科的技法には、他の技法の中でも、コンピュータ支援式定位固定、術中超音波、脳マッピングおよび神経内視鏡が挙げられる。定位固定は、外部基準目印および神経構造を表示する画像化技法を用いて脳内の任意の領域にナビゲート(navigating)するシステムをいう。
【0129】
または、「試料」は、実際の試料を採取するのではなく、例えば、脳における遺伝子発現を画像化することによって取ることができる。脳の画像化は、他の方法の中でも、コンピュータ断層スキャン(CT)、磁気共鳴画像形成(MRI)またはポジトロン放出断層撮影(PET)によって実施することができる。これらの方法由来の信号は、脳内の任意の標的地点までの軌道および深さをコンピュータが算出して提供することができる基準点を提供する。Cosman-Roberts-Wells(CRW)システムを含む定位固定システムをMRIおよび脳の血管造営位置に使用することができる。術中超音波は単独で使用してもまたは定位固定と併用使用してもよい。術中小音波を使用して、硬膜切開前に脳室などの組織を同定することができる。超音波プローブを使用して、深部病変の針生検を先導し、CNS試料を獲得することもできる。剛性および可撓性の光ファイバー内視鏡を使用して、低侵襲的技法を使用して脳試料を獲得することができる。レーザーおよび(生検器具を含む)種々の他の器具を取り付けて使用することができる。腰椎穿刺によって脳脊髄液を得るサンプリング装置も上記に記載する画像化方法のいずれかによって先導することができる。
【0130】
遺伝子発現検出装置は、核酸を使用する方法、アレイならびに試料調製および分析の副題で本明細書に記載するものを含む。コンパレータは、本明細書に記載するパターン認識ソフトウェアを搭載したコンピュータであってもよい。
【0131】
コンピュータ読み取り可能な媒体
別の局面において、新規システムは、複数のデジタルコード化されたデータ記録またはデータセットを有するコンピュータ読み取り可能な媒体を特徴とする。データ記録またはデータセットは各々CNS遺伝子発現レベルを示す値および試料の記述子を含む。記述子は、例えば、識別子(例えば、試料を入手する患者の識別子、例えば、復号表にアクセスする者によってのみ患者の情報に対応させることができる名前または参照コード)、発現レベルがあるレベルに到達しているまたはあるレベル以下に低下している事象において下される診断または実施される治療であってもよい。データ記録は、関連する遺伝子の発現レベルを示す値も含んでもよい(例えば、データ記録は遺伝子「クラスター」の複数の遺伝子の各々の値を含んでもよく、この場合、クラスターの遺伝子の特定の基準遺伝子発現は非CNS疾患に関連する)。データ記録はまた、対照遺伝子(例えば、発現が対照試料において変化されないまたは発現が診断上非CNS疾患に関連がない遺伝子)の値を含む。データ記録は種々の方法、例えば、表として(例えば、関係型データベース(例えば、OracleのSQLデータベースまたはSybaseデータベース環境またはリストとして構成されてもよい。
【0132】
非CNS疾病
本明細書に記載する方法は、異常増殖(例えば、腫瘍または癌);免疫障害(関節リウマチ、多発性硬化症、全身エリテマトーデス、乾癬、強皮症などの自己免疫障害);アレルギー性または炎症性疾患(例えば、喘息、炎症性大腸炎、クローン病);代謝または内分泌疾患(例えば、糖尿病、肥満、アジソン病);病原性感染症(例えば、ウイルス、寄生虫または真菌感染症、例えば、HIV感染症);および循環器系疾患などの種々の非CNS疾患を診断し、モニターするために使用することができるという意味において限定するものではない。
【0133】
本明細書において使用する「異常増殖」は、正常な細胞の増殖を誘発しないと考えられる、または正常な細胞の増殖を停止すると考えられる条件下における細胞の未制御で進行性の増殖をいう。異常増殖により任意の新たな異常な増殖、特に増殖が未制御で進行性である組織の新たな増殖を意味する本明細書において規定する「新生物」が形成される。本明細書において使用する新生物は「腫瘍」と同義である。悪性新生物または腫瘍は、退形成の程度が大きいまたは細胞の分化および方向性の損失を示し、浸潤および転移という特性を有するという点において良性から識別される。従って、異常増殖は、「癌」を含み、本明細書中において、正常な制御の損失という独自の特徴を有し、未調節の増殖、分化の損失、局所組織への浸潤および転移を生じる細胞の増殖について言及する。本明細書に記載する方法を使用して、上皮もしくは内分泌組織、間葉組織または造血組織由来の異常増殖などの任意の非CNS細胞または組織種の異常増殖を診断することができる。
【0134】
「癌」という用語は当技術分野において認識されており、呼吸器系の癌、胃腸系の癌、泌尿生殖器系の癌、精巣癌、乳癌、前立腺がん、内分泌系の癌およびメラノーマを含む上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍をいう。例示的な癌には、結腸、肺、前立腺、乳房、頸部、頭頸部および卵巣の組織から形成するものが挙げられる。この用語はまた、癌性および肉腫性組織を含む悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。「腺癌」は、腺組織由来の癌または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌をいう。
【0135】
「肉腫」という用語は当技術分野において認識されており、間葉由来の悪性腫瘍をいう。
【0136】
本明細書において使用する「造血器腫瘍性疾患」という用語は、例えば、骨髄、リンパ系もしくは赤血球系統またはそれらの前駆細胞から生ずる造血器起源の過形成/腫瘍性細胞に関係する疾病を含む。これらの疾患は、低分化の急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生ずることがある。例示的な骨髄疾患には、急性前骨髄白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、これらに限定されず(Vaickus, L. (1991) Crit Rev. in Oncol./Hemotol. 11:267-97に総説が示されている);リンパの悪性腫瘍には、B系統ALLおよびT系統ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HLL)ならびにワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)が挙げられるが、これらに限定されない。別の形態の悪性リンパ腫には、非ホジキンリンパ腫およびそれらの種々の変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大型顆粒リンパ性白血病(LGF)、ホジキン病およびリード-スタンバーグ病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
非CNS疾患の疾病監視遺伝子の同定
本発明の新規方法はまた、被験者の非CNS疾患の疾病監視遺伝子を同定する方法およびすでに発見されているCNSマーカー遺伝子のリスト(図)も含む。一般に、このような方法は、被験者、例えば、実験動物における特定の非CNS疾患状態の存在に応答したCNSの遺伝子発現の変化を検出する段階に関係する。本発明の方法は、一般に、試験実験動物に疾病状態または疾患を誘発する段階;および試験実験動物由来のCNS試料における少なくとも1つの遺伝子の発現を対照実験動物由来のCNS試料における遺伝子発現と比較する段階に関係する。対照実験動物由来のCNS試料と比較して、試験実験動物由来のCNS試料において差次的に発現される遺伝子(また、遺伝子のヒト相同物)は、非CNS疾患のCNS診断マーカーである。このようなマーカーは、本明細書において、非CNS疾病のCNS「マーカー遺伝子」または「疾病監視遺伝子」といわれる。しかし、マーカー遺伝子の遺伝子産物は診断マーカーとしても作用することができることが理解される。ほとんどの場合において、差次的に発現される複数のマーカーが同定される(例えば、マーカーの「プロファイル」または「クラスター」が同定される)。実験動物は、好ましくは、実験用哺乳類であり、例えば、実験用げっ歯類(例えば、ラット、マウスまたはモルモット)またはヒト以外の霊長類(例えば、類人猿、例えば、サルまたはチンパンジー)であってもよい。
【0138】
本明細書に記載する遺伝子発現を検出する方法、特にアレイおよびチップ技術は、非CNS異常増殖の疾病監視遺伝子を同定する方法に有用である。CNS試料を実験動物および対照動物から調製し(例えば、脳を生検するもしくは切除する、またはCSF試料を採取する)、本明細書に記載するようにRNA、cDNAまたはタンパク質を試料から調製する。単一のチップ(例えば、実験動物種のゲノムの大多数の遺伝子のプローブを有する市販のチップ)により、数百、数千または場合によっては、数万の遺伝子が、対照実験動物と比較して試験実験動物のCNS試料中で発現されるレベルを測定することができる。典型的には、クラスタリング方法または他のインフォマティクスツールを使用して、このような大規模実験で得られるデータを探索し、対照試料と比較して実験試料において統計学的に有意に差次的に発現される遺伝子または遺伝子のクラスターを同定する。多数のこのようなツールおよびプログラムは当業者に利用可能である。例示的なデータ分析方法は本明細書に記載されており、以下の実施例に例示されている。
【0139】
異常増殖の疾病監視遺伝子
一態様において、非CNS腫瘍疾患のCNS診断マーカーは、実験動物における非CNS新生物の存在に応答したCNSにおける遺伝子発現の変化を検出することによって同定される。例えば、実験動物に新生物を誘発し、実験動物のCNSにおける遺伝子発現を対照動物と比較して評価する。実験動物において非CNS新生物、例えば、癌の増殖を誘発する方法は当技術分野において公知であり、例えば、化学的もしくは放射線突然変異誘発または実験動物への腫瘍細胞(例えば、培養腫瘍細胞または細胞系統)の移植が挙げられる。発現が対照動物と比較して実験動物において変化しているCNS遺伝子または遺伝子産物は異常増殖のCNSマーカーまたは監視遺伝子として同定される。癌、特に癌腫のCNSマーカー遺伝子の例は図2〜48および実施例1〜3によって本明細書に提供されている。
【0140】
種々の態様において、乳癌の診断マーカーには、Nedd8(図29-1)、Col4a3bp(図29-2)、Bgn(図29-4)、Sox5(図29-5)、Slc38a4 (図32-1)、Toml(図32-2)、Calr(図32-4)、Itgae(図32-5)、Ttrap(図35-1)、P exllb (図35-2)、Sema7a(図35-4)およびStam2(図35-5)が挙げられる。
【0141】
他の態様において、結腸癌の診断マーカーには、Nmb(図30-1)、Ryr2(図30-2)、Trfr (図30-4)、Mfap5(図30-5)、Prrg2 (図33-1)、Faim (図33-2)、Mgrnl(図33-4)、Stch (図33-5)、Lhb(図36-1)、Prm3(図36-2)、Crry(図36-4)およびTimp4(図36-5)が挙げられる。
【0142】
肺癌の診断マーカーには、Nmb(図31-1)、Pcdh8(図31-2)、Rock2(図31-4)、Angptl3(図31-5)、Sqstml(図34-1)、Kcnip2(図34-2)、Oxt(図34-4)、Myh4(図34-5)、Encl(図37-1)、Gsgl(図37-2)、Srr(図37-4)およびNdph(図37-5)が挙げられる。
【0143】
これらの疾病監視遺伝子の任意の1つを単独または例えば、2、5もしくは10遺伝子のセットで使用して、本明細書に記載する方法に有用なプローブを作製して特定の癌を診断することができる。
【0144】
関節リウマチの疾病監視遺伝子
別の態様において、関節リウマチ(RA)のCNS診断マーカーの同定は、野生型動物と比較してRA動物モデルにおけるCNSの遺伝子発現の変化を検出することによって実施することができる。例えば、当技術分野において認められているげっ歯類コラーゲン誘発関節炎(CIA)を使用することができる。この方法では、精製コラーゲンの皮内注射によってげっ歯類、例えば、DBA/1マウスに関節炎を誘発する。完全アジュバントに乳化した100μgの精製II型コラーゲンを、典型的には、尾の付け根に注射する。関節炎の発症は、免疫化の約3週間後に足の腫脹または発赤として肉眼で見られる(Williams et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 89:9784-9788)。関節炎の臨床的特徴は、足の腫脹をある期間にわたって(例えば、ノギス(カリパス)で)定量的に評価することによってモニターされる。関節炎の重症度は、確立されている臨床スコアにより評価される(Williams et al., 1995, Eur. J. Immunolo., 25:763-769)。発現が対照動物と比較してCIA動物において変化しているCNS遺伝子または遺伝子産物をRAのCNSマーカーまたは監視遺伝子と同定する。
【0145】
Th1リンパ球およびB細胞、炎症誘発性サイトカインならびに細菌LPSの考えられる模倣物の疾病発達への関与を考えると、これらの過程を調節する遺伝子はCNSにおける早期RA監視に関与する候補であると考えられる。例えば、IL-1β、TNF、IL-18、IFN-γ、IL-12、gp130などの脳内で産生される炎症誘発性サイトカイン;IL-6および白血病抑制因子(LIF)などのサイトカイン;N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)などの神経伝達物質および神経栄養因子;プロスタグランジンE2(PGE2)ならびにSOCS-1および-3などのサイトカインの阻害物質;cAMP-誘発性中枢ペプチド(cAMP-inducing central peptide)などのSOCS調節因子;ペントラキシン3(PTX3)などの、サイトカイン作用の結果として産生される脳内分子;コルチコトロピン(cortocotropin)などのホルモン放出因子;HPA軸の調節に関与するコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)および他のホルモン;POMCなどの下垂体副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞タンパク質;炎症反応のNF-κB-媒介性信号伝達に関与する分子;およびこれらの遺伝子ファミリーの他のメンバー、ならびにこれらのタンパク質の誘発因子および刺激因子はRAの疾病監視遺伝子となりうる。例えば、Blond et al., 2002, Brain Res., 958(1):89-99;Suk et al., 2001, Immunol. Lett., 77(2):79-85;Losy et al., 2001, Acta Neurol. Scand., 104(3):171-3;Opp et al., 2001, Neuroendocrinology, 73(4):272-84;Chesnokova et al., 2002, Endocrinology, 143(5):1571-4;Bousquet et al., 2002, Mol. Endocrinol.,15(11):1880-90;Polentarutti et al., 2000, J. Neuroimmunol., 106(1-2):87-94;Bayas et al., 2003, Neurosci. Lett. 335(3):155-8;Xu et al., 2000, Acta Pharmacol. Sin. 21(7):600-4;Fang et al., 2000, Neuroreport, 11(4):737-41参照。
【0146】
種々の態様において、関節リウマチの診断マーカーには、Bc121(図51A)、P2rxl(図51B)、Pafahlbl(図51B)、Kcna3(図51C)、Taflb(図51C)、Slc38a3(図51D)、Hprt(図52A)、C1d(図52B)、Carl(図52D)、Dusp3(図52D)、Gabrr2(図53C)およびAatk(図53D)が挙げられる。
【0147】
喘息の疾病監視遺伝子
別の態様において、喘息のCNS診断マーカーは、野生型動物と比較して、喘息の動物モデルにおけるCNSの遺伝子発現の変化を検出することによって同定することができる。げっ歯類、ヒツジおよびヒト以外の霊長類モデルを含む喘息の数種の実験モデルが当技術分野において公知である(総説は、Isenberg-Feig et al., 2003, Curr. Allergy Asthma Rep. 3(1):70-8参照)。これらのいずれかを本発明の方法に使用することができる。一態様において、喘息の実験モデルはKomai et al.(2003, Br. J. Pharmacol. 138(5):912-20)により実施される。簡単に説明すると、50μgの卵白アルブミンを1 mgのミョウバン(Al(OH)3)と併用して0日目および12日目に腹腔内投与することによってBalb/cマウスを感作する。22日目から43日目まで、1% w/vの卵白アルブミンの毎日30分のエアゾールによる抗原負荷に動物を暴露する。対照動物は、生理食塩液を注射した動物ならびに卵白アルブミンおよびミョウバンで感作し、生理食塩液で抗原負荷した動物を含んでもよい。アセチルコリンに対する気道の反応性;IL-4、IL-5および/またはIL-13レベル;インターフェロン-γレベル;気管支肺胞液における好酸球数;血清中の特定のIgG1およびIgG2aレベル;肺組織学;ならびに直腸温:の1つ以上を測定することによって気道機能を評価する。喘息のCNSマーカーまたは監視遺伝子は、発現が対照動物と比較して喘息モデル動物において変化しているまたは発現がエアゾール抗原負荷前と比較してエアゾール抗原負荷後に変化しているものである。
【0148】
CNSに関連するいくつかの遺伝子産物がTh-2応答に影響を与えることが示されており、疾病監視遺伝子としての候補として示されている。これらには、ストレスの主要なホルモン性媒介物質であり、抗原提示細胞に作用してインビトロおよびエクスビボにおいてIL-12の産生を抑制する糖質コルチコイド;神経伝達物質ノルエピネフリンまたはエピネフリン;βアドレナリン受容体(AR)アゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、プロプラノロール);アデノシンおよびアデノシンアナログなどの神経伝達の調節因子;一般に免疫応答、特にTh-1/Th-2バランスに影響を与えるオピオイドシステム成分;ヒスタミンなどのアレルギー反応の調節因子;肥満細胞からのヒスタミンの放出を増加する、サブスタンスP、血管作用性小腸ペプチドおよびソマトスタチンなどの神経ペプチド;が挙げられる。Blotta et al., 1997, J. Immunol. 158:5589-5595;Elenkov et al.,1996, Proc. Assoc. Am. Physicians, 108:374-381;Cooper et al., The Biochemical Basis of Neuropharmacology, Oxford University Press, 1996, p. 123;Link et al., 1999, J. Immunol. 164:436-442;Loizzo et al., 2002, Br. J. Pharmacol., 135(5):1219-26;Lowman et al., 1988, British Journal of Pharmacology, Vol95:121-130;およびElenkov et al., Annals of the New York Academy of Science, 2000,917:94-105参照。
【0149】
一態様において、喘息の診断マーカーは、Rasa3(図55B)、Tnk2(図55B)、H28(図55C)、Diap2(図55C)、Lgals6 (図56A)、Reck (図56A)、Whrn (図56A)、Stk22sl(図56B)、CD47 (図57A)、Jundl (図57A)、Cstb(図57B)およびDesrt(図57B)である。
【0150】
糖尿病の疾病監視遺伝子
別の態様において、糖尿病のCNS診断マーカーは、野生型動物と比較して、糖尿病の動物モデルにおけるCNSの遺伝子発現の変化を検出することによって同定することができる。例えば、NODマウスおよびBBラットなどの自然発症モデルならびにストレプトゾトシン誘発性(STZ)糖尿病ラットなどの誘発性モデルのような糖尿病の数種の実験モデルが当技術分野において公知である。これらは、Cheta, 1998, J. Pediatr. Endocrinol. Metab., 11(1):11-9に概説されている。糖尿病のCNSマーカーまたは監視遺伝子は、未誘発動物と比較して誘発動物において発現が変化していることが同定されている(例えば、対照飼育STZラットとストレプトゾトシン飼育STZラットの比較)または発現が疾病の自然進行の早期段階において変化しているものである。
【0151】
肥満の疾病監視遺伝子
さらに別の態様において、肥満性向のCNS診断マーカーは、肥満の動物モデルにおけるCNSの遺伝子発現の変化を検出することによって、例えば、肥満が発症する、または臨床的に検出可能になる前後の肥満傾向の動物におけるCNS遺伝子発現を比較することによって同定することができる。本発明の方法は、高脂肪餌を接触させた後に肥満傾向のマウス株または肥満になりにくいマウス株のCNS遺伝子発現の差を比較することに関係しうる。例えば、本発明の方法は、共に食餌性の肥満を発症しにくいC57BL/KsJ(KsJ)もしくはA/J株のマウス、または肥満傾向の株C57BL/6J(B6)を使用することができる。
【0152】
肥満または体重低下または体重制御の考えられる疾病監視遺伝子には、レプチン、レプチン受容体、グレリン、コレシストキニン(CCK)、CCK-A受容体、神経ペプチドY(NPY)、プロオピオメラノコルチン(POMC)、α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)およびエネルギーバランスの中枢制御に関与する他の分子が挙げられる。非常に多数の遺伝子産物が、食餌摂取に関連する挙動を調整することを考えると、これらの遺伝子の1つ以上における特定の多型対立遺伝子の遺伝的欠損または存在がエネルギー恒常性の制御における疾患を誘発し、肥満を生じることがある。このような分子の正常な信号伝達のこのような欠損または崩壊が、CNS遺伝子発現を変化させる早期信号を誘発する可能性がありうる。
【0153】
他の種から単離した相同性配列
図1、50および54に記載する遺伝子のヒト相同物は、GenBankおよびインターネットで利用可能なものなどの公共のデータベースで見出すことができる。
【0154】
CNSマーカー遺伝子およびそれらの産物のヒト相同物(例えば、ヒト以外の実験動物における実験によって同定されるCNSマーカー遺伝子のヒト相同物)は、本明細書に記載する方法の種々の態様に有用である。本明細書に提供されるCNSマーカー遺伝子のほとんどのヒト相同物は公知である。ヒト相同物が同定されていない場合では、いくつかの方法を使用してこのような遺伝子を同定することができる。これらの方法には、マウスマーカー遺伝子核酸配列によるヒトライブラリーの低緊縮度ハイブリダイゼーションスクリーン、マウスマーカー遺伝子由来の縮重オリゴヌクレオチドでプライミングしたヒトDNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および相同配列のデータベーススクリーンが挙げられる。
【0155】
治療方法
本明細書に記載する方法を使用して、病的な過程の早期段階に被験者の非CNS疾患の存在を同定または診断することができる。従って、本発明の方法は、多数の疾患の治療および/または管理の成功の鍵となりうる早期介入を可能にする。例えば、本明細書に記載する方法を使用して肥満または糖尿病の性向を早期段階に診断することができれば、ライフスタイルまたは栄養面の簡単な変化で疾病の進行を停止または遅くするのに十分となり得、疾病が遅い、進行した段階で診断される場合にはこのように変化では十分でないと考えられる。同様に、早期段階に検出される異常増殖は、進行性の異常増殖、例えば、癌の段階に使用されるものより低毒性の治療剤または低用量の治療剤で治療される可能性が高い。
【0156】
化学療法剤
一態様において、本明細書に記載する方法は、例えば、新生物が生じる前、新生物が臨床的に検出可能になる前および/または腫瘍が悪性になる前に早期段階に被験者における非CNS異常増殖の存在を同定または診断することができる。従って、本明細書に記載する方法によって検出される新生物は、一般に腫瘍細胞を標的とする、または特に特定の腫瘍細胞を標的とする薬剤による治療を受けやすい。一態様において、被験者を化学療法剤で治療することができる。本明細書において使用する化学療法剤は、異常増殖の治療に使用される化学的な治療剤または薬物をいう。他の化合物が抗癌作用を発揮するという意味において、それらを化学療法剤と技術的に記載することができるということにもかかわらず、簡単にするためにこの用語を使用する。数多くの例示的な化学療法剤を以下に記載する。
【0157】
好適な化学療法剤には、抗チューブリン/抗微小管薬、例えば、パクリタキセル、タキソール、タモキシフェン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、トポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、マーバロン(merbarone)、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone);代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/Ara-C、トリメトレキセート、ゲムシタビン、アシビシン(acivicin)、アラノシン、ピラゾフリン、N-ホスホルアセチル-L-アスパレート=PALA、ペントスタチン、5-アザシチジン、5-アザ2'-デオキシシチジン、アラ-A、クラドリビン、5-フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N-[5-[N-(3,4-ジヒドロ-2-メチル-4-オキソキナゾリン-6-イルメチル)-N-メチルアミノ]-2-テノイル]-L-グルタミン酸;アルキル化剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、デカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタードおよびピポブロマン、4-イポメアノール;エストロゲン調節剤、例えば、ラロキシフェン;ピロキシカム;9-シスレチノイン酸が挙げられる。
【0158】
選択した化学療法剤の好適な用量は当業者に公知である。例えば、薬剤がドキソルビシンである場合には、好適な用量は、患者の皮膚表面積あたり30 mg/m2を含んでもよく、1週間間隔で2回静脈内投与される。しかし、当業者は、投与経路、投与回数、投与時期および用量を適宜容易に調節することができる。これらの点を考慮すると、所定の化学療法剤の好適な用量は10 mg/m2〜約500 mg/m2であり、さらに好ましくは、患者の皮膚表面積あたり50 mg/m2〜約250 mg/m2である(平均的な体格の成人の非負表面は約1.8 m2である)。このような用量は、選択した特定の薬物または薬剤に応じて調節することができるが、例えば、静脈内、皮内、直接部位注射、腹腔内、経鼻的等を含む任意の好適な経路によって投与することができる。投与は適宜反復してもよい。
【0159】
一態様において、本明細書に記載する方法は、新生物が生じる前、新生物が臨床的に検出可能になる前および/または腫瘍が悪性になる前に早期段階に被験者における非CNS異常増殖の存在を同定または診断することができるので、化学療法剤の用量は、新生物、例えば、癌が、腫瘍塊の可視化または触診などの臨床方法によって検出または診断された後に典型的に使用される用量より少なくてもよい。
【0160】
治療標的
非CNS疾患のCNSマーカー遺伝子、例えば、本明細書に記載するCNSマーカー遺伝子は、疾患の存在を「感知する」だけでなく、応答、例えば、抗腫瘍応答を形成することによって疾患の存在への応答に活発に関与することができる。または、CNSマーカー遺伝子は、疾患の進行を促進することによって、例えば、新生物の増殖を誘発するまたは新生物の悪性転換を促進することによって非CNS疾患の存在に応答することができる。治療方法として、CNSにおいて前者の種類の遺伝子の発現または活性を促進するおよび/または後者の種類の遺伝子の活性の発現を阻害することが望まれると考えられる。従って、CNSマーカー遺伝子が特定の疾患を抑制または促進する応答を形成するかどうかにかかわらず、その同定は疾患の進行を阻害する標的を提供しうる。
【0161】
治療標的であるとも考えられるこのようなCNSマーカー遺伝子を同定する方法は、阻害応答を示さない動物と比較して、疾病に対する阻害応答を示す動物において差次的に発現されるCNS遺伝子を同定することである。例えば、実験動物に、インターロイキン(IL)、例えば、IL-12を発現する腫瘍誘発細胞(例えば、CT26などの結腸癌細胞)を注射することができる。IL-12を発現するように遺伝的に改変されている腫瘍細胞の注射は、Th1免疫媒介性腫瘍拒絶を誘発することが公知である(Adris et al., 2000, Cancer Res., 60(23):6696-703)。対照マウスには、IL-12を発現しない腫瘍細胞を注射することができる。注射後の異なる経過時点において、CNSの遺伝子発現を、本明細書に記載するように、例えば、マイクロアレイ分析によって動物において分析する。このように、動物のCNS(例えば、脳)において具体的に「スイッチオン」および「スイッチオフ」する遺伝子を同定することができる。これらの遺伝子には、ILの存在に応答するものがある。他は、抗腫瘍免疫応答の「刺激」に活発に関与する遺伝子に対応する。この方法は、抗腫瘍免疫応答の刺激に関与することができる任意のインターロイキン遺伝子に使用することができる。抗腫瘍応答を「刺激する」ことに活発に関与する脳遺伝子の同定は、例えば、遺伝子もしくは遺伝産物を直接使用することによって、またはそれらの活性を遮断もしくは刺激する薬剤をスクリーニングすることによって治療的介入の標的を提供する。
【0162】
治療標的であると考えられるCNS遺伝子を同定する第2の方法は、特定の遺伝子に脳特異的崩壊(例えば、ノックアウト)を有する遺伝子組換え動物(例えば、ノックアウトマウス)を使用することによる。多大な数のCNS特異的ノックアウトマウスが現在当業者に利用可能であり(例えば、Jackson Laboratoryウェブサイト、神経生物学に使用する数多くのJAX(登録商標)マウスモデルを記載している)、さらに多くのものが日常的に利用可能になることが予想されうる。非CNS疾病に対するCNS応答の役割は、(例えば、癌、RA、喘息または肥満について本明細書に記載するように)ノックアウトマウスに疾患を誘発し、疾病の結果を評価することによって、脳ノックアウト動物を入手または作製することができる任意の特定の遺伝子について確立することができる。
【0163】
治療標的でもあると考えられるCNSマーカー遺伝子および遺伝子産物を図48A〜C、59および61に記載する。これらの遺伝子は細胞信号伝達に関与する分子(例えば、成長因子、ホルモン、サイトカインおよびそれらの受容体)であるか、またはそれらをコードし、検討した腫瘍の各々において差次的に発現されるマーカーでもある。
【0164】
ワクチン
本明細書に記載する方法はまた、予防的なワクチンの標的を提供する。疾病を「感知する」脳遺伝子セットは、公知または未知リガンドの受容体を含んでもよい。疾病細胞は、脳由来の抗疾病応答の誘発を阻害するこのようなリガンドを産生する可能性がある。このような例では、抗疾病応答に関与するCNS遺伝子を同定することにより、脳において疾病応答を阻害するように影響する可能性のある疾病細胞によって分泌される遺伝子産物を同定することができる。これらの産物を標的とする遺伝子ワクチンは実行可能な治療法になると考えられる。
【0165】
非CNS疾患を治療する際の予防ワクチン化のCNS標的を同定する方法は以下のようである:実験腫瘍モデルにおいて抗疾病応答、例えば、腫瘍の場合には、IL-12媒介性抗腫瘍応答を示す動物から(本明細書に上記するものなどの技法を使用して)CNS遺伝子発現プロファイルを得る。腫瘍を「感知する」遺伝子のクラスターから、IL-12の存在下において発現レベルを変化するものがあることが予想される。この遺伝子のサブセットは、抗腫瘍応答の「形成」に関与するものである可能性がある。この遺伝子のサブセットは予測可能な調節因子を有する可能性がある。例えば、IL-12の存在下において非CNS遺伝子に応答して発現プロファイルを変化するCNS遺伝子が受容体である場合には、このような受容体の遺伝子発現の変化はそのリガンドによって引き起こされる可能性があることを予想することができると考えられる。従って、予防的な遺伝子ワクチンは、このようなリガンドに対するメモリー応答を形成するように設計することができると考えられる。
【0166】
第2の実験方法は、腫瘍細胞の非腫瘍形成投与(例えば、異常増殖が生体内に存在するが、新生物はまだ形成されていない状態)に応答して活性を変化するCNS遺伝子を同定することに関係しうる。上記に説明するように、このサブセットのCNS遺伝子から活性の変化を生ずる調節遺伝子を予測することができる。腫瘍細胞由来となりうるこのような調節遺伝子は、末梢生体における最初の腫瘍由来のアラーム信号となる可能性がある。従って、予防的な遺伝子ワクチンは、このような遺伝子に免疫応答を形成するように設計することができると考えられる。
【0167】
ワクチンは、例えば、標的対象の遺伝子に対応するポリペプチドまたは核酸であってもよい。本明細書に記載するワクチンは、水、生理食塩液、Tris-EDTA(TE)緩衝液などの生理学的に適応可能な溶液またはリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を用いて個人に投与または接種することができる。それらはまた、取り込みを促進するまたは接種部位に免疫系細胞を招集する能力を有する物質(例えば、促進剤およびアジュバント)の存在下で投与してもよい。ワクチンは多数の投与様式および投与経路を有する。それらは皮内(ID)、筋肉内(IM)で投与することができ、どちからの経路によって、それらは針注射、遺伝子銃または無針ジェット注射によって投与することができる(例えば、Biojector(商標)、Bioject Inc., Portland, OR)。他の投与様式には、経口、静脈内、腹腔内、肺内、硝子体内および皮下接種が挙げられる。局所接種も可能であり、粘膜ワクチンと呼ぶことができる。これらには、例えば、鼻腔内、眼球、口腔、膣または直腸局所経路が挙げられる。これらの局所経路による送達は点鼻剤、点眼剤、吸入剤、坐剤または微粒子(microsphere)によってもよい。
【0168】
以下の実施例は例示的にすぎず、限定する意図はない。
【0169】
実施例
実施例1:結腸癌に関連するCNS遺伝子発現プロファイル
腫瘍細胞を末梢的に植え込んだ実験動物の脳組織の遺伝子発現マイクロアレイ分析を使用して、末梢腫瘍の存在に関連するCNS遺伝子発現プロファイルを同定した。この実施例は、結腸癌に関連する脳遺伝子発現プロファイルの同定を記載している。
【0170】
以下に記載するように、300μlのPBSに再懸濁させたマウス結腸癌細胞系統(ATCC cat#:CRL-2638)であるCT-26 WT細胞5×105 を雄BALB-Cマウスに皮下注射した。対照マウスは、同じ手法により、対応する容量のPBSを注射した。所定の時間後に、以下に詳細に記載するように、動物を犠牲にし、脳を切開し、異なる脳領域から調製した総RNAまたはポリA+RNAからcDNA第1鎖を合成した。Pan(登録商標)Mouse 10K OligoセットA(MWG Biotech)を含有するプレプリント加工したスライド(CorningのCMT-GAP(商標) II Coated Slide)にハイブリダイゼーションすることによって遺伝子発現マイクロアレイ分析をcDNA第1鎖を用いて実施した。このスライドセットは、機能的に規定されているマウス遺伝子から選択した9,769の遺伝子のプローブを含有する。
【0171】
以下に詳細に記載するように、Biorad Versarrayチップリーダー5μmシステム、レーザースキャナー(Biorad, Waterloo, ON, Canada)を用い、次いでVersarray Analizerソフトウェアを使用してマイクロアレイ実験のデータを分析した。
【0172】
実験方法
細胞系統:実験研究は以下のマウス細胞系統に基づいた:CT26WT結腸癌(ATCC cat#: CRL-2638)、LL/2(LLC1)肺癌(ATCC cat#: CRL-1642)および4T1乳癌(ATCC cat#: CRL-2539)。全ての細胞系統は、10mlの対応する培地を入れたP-100培養皿で増殖させた。全ての培養培地は、0.22μm CAフィルターを使用してろ過滅菌した。CT-26細胞は、1.5 g/L炭酸水素ナトリウム、10 mM Hepesおよび1 mM ピルビン酸ナトリウムを含有し、10%ウシ胎児血清を添加したDMEM中で37℃、5% CO2において増殖させた。LL/2(LLC1)細胞は、4.5 g/Lグルコース、1.5 g/L炭酸水素ナトリウム、10 mM Hepesおよび1 mMピルビン酸ナトリウムを含有し、10%ウシ胎児血清を添加したDMEM中で37℃、5% CO2において増殖させた。4T1細胞は、4.5 g/Lグルコース、1.5 g/L炭酸水素ナトリウム、10 mM Hepesおよび1m Mピルビン酸ナトリウムを含有し、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI 1640中で37℃、5% CO2において増殖させた。
【0173】
インビボ研究:6週齢の動物を、ケージあたり5匹の動物を入れ(同一ケージ内に腫瘍動物および対照動物)、食餌および水は随時摂取させて、Hepaフィルター付きエアーラックで2週間飼育した。8週齢時に、雄Balb-Cマウスに、300μlのPBSに再懸濁させた5×105 のCT-26WT細胞を皮下注射した。BALB-C雌マウスに、100μlのPBSに懸濁させた1×105の4T-1細胞を皮下注射した。C-57/BL6雄に、300μlのPBSに再懸濁させた1×106のLL/2(LLC1)細胞を皮下注射した。対照動物は、同じ手法により対応する容量のPBSを注射した。
【0174】
各腫瘍の種類について、4回のことなる実験を実施し、3つの経過時点を4つ組で評価した。1つの経過時点の各々は30匹のマウスに対応した(15匹の腫瘍保有マウスおよび15匹の対照マウス)。注射は全て27Gシリンジを使用して実施した。対応する経過時点において、マウスを頸部脱臼により犠牲にした。マウスを速やかに断頭し、脳を取り出し、以下の手法を使用して切開した:視床下部および小脳を切開し、脳を手術用のカミソリで脳を切断して右および左半球を分離し、2人が中脳、海馬、前前頭皮質および線条体を各脳半球から切開した。脳領域は全て速やかにドライアイスで凍結し、RNA抽出時まで-80℃で保存した。
【0175】
総RNAの単離:凍結した組織試料を、視床下部および前前頭皮質は6 mlのTrizol試薬(Invitrogen, life technologies, Carlsbad, CA, USA)の存在下で、中脳は6 mlの存在下でホモジナイズした。製造業者の取扱説明書に従って総RNAを得た。RNase Out(Invitrogen, life technologies, Carlsbad, CA, USA)の存在下で、視床下部および前前頭皮質は10μlのDNase I(2 U/μl)(Ambion, Inc. Austin, TX, USA)で、中脳は40μlで37℃において30分DNase処理した。DNAフリーRNAをフェノールクロロホルムで抽出し、RNaseフリーMiliQ水に再懸濁した。
【0176】
ポリA+RNAの調製:Ambion社製のMicroPoly(A) Pure(登録商標)を使用して、ポリA+RNAを得た。一般に、出発物質は、5M NaClを最終濃度0.45M NaClまで添加した400μgの総RNAであった。混合後、試料をRNaseフリーのマイクロチューブに移した。製造業提供の結合緩衝液を添加後、RNAを65℃において5分加熱し、氷上で速やかに1分冷却した。オリゴ(dT)セルロースを試料に添加し、転倒混和し、ゆっくり撹拌しながら室温において60分インキュベーションした。次に、これを4,000 rcfで3分遠心分離した。上清を除去後、ペレットを1 mlの結合緩衝液で処理し、混合して、4,000 rcfで3分遠心分離して遠沈させた。上清を除去後、ペレットを結合緩衝液で3回洗浄し、次に洗浄緩衝液で4回洗浄した。次いで、オリゴ(dT)セルロースを、製造業者提供の洗浄緩衝液400μlに溶解し、樹脂を4回以上洗浄して、スピンカラムに移した。カラムの溶出液がA260において<0.05 ODの吸光度に達したら、65℃において事前に加温した(製造業者提供の)溶出緩衝液200μlでmRNAをオリゴ(dT)セルロースから溶出した。20μlの5 M 酢酸アンモニウム、1μlのグリコーゲンおよび550μlの100%エタノールを含有する混合物を加えて、溶出したポリA+RNAを濃縮した。-20℃において終夜沈殿後、試料を14,000 rcfで4℃において20分間遠心分離した。上清を注意して除去した後、水/EDTAで処理した10μlのDEPCにポリA+RNAを含有するペレットを再懸濁した。
【0177】
マイクロアレイハイブリダイゼーションのプローブの標識化:間接的な方法によって標識化を実施した。第1の方法は、SuperScript逆転写酵素を使用してcDNA第1鎖を合成し、次にアミノアリルをシアニン3または5(Cy3/Cy5)蛍光分子(Amersham Pharmacia)に結合することによるアミノアリル標識ヌクレオチドを使用した。3μgのポリ(A+)RNAに、0.6μlのランダムプライマー(pd(N)6、Invitrogen)(3μg/μl)および1.2μlのオリゴ(dT)12-18(0.5μg/μl)を添加した。MilliQ H2Oを最終容量15.5μlまで添加した。混合物を65℃において5分間加熱し、氷上で冷却し、遠沈した。6μlの5X第1鎖緩衝液、3μlの100 mM DTT、0.6μlの50Xアミノアリル(Sigma Co)dNTPミックス(Amersham Pharmacia)、1.5μlのRNase Out(40単位/μl、Invitrogen)、1.4μlのMilliQ H2Oを含有するマスターミックス12.5μlを各チューブに添加し、37℃において2分インキュベーションし、次に2μlのSuperScript II逆転写酵素(Invitrogen)を添加した。37℃において2時間インキュベーション後、チューブを70℃において15分インキュベーションし、次いで遠沈した。37℃において15分インキュベーションした3μlの2.5 M NaOH、次いで15μlの2M HEPESフリー酸(HEPES free acid)、4.8μlの3 M NaAcO(pH 5.2)および最終的に150μlの100% EtOHを逐次的に添加してRNAを分解した。混合後、チューブを-20℃において1時間インキュベーションした。チューブを4℃において30分遠心分離し、上清を除去し、ペレットを70%エタノールで2回洗浄した。ペレットを2.25μlのMilliQ H2Oに溶解した。蛍光Cy3およびCy5の結合は、4.5μlのcDNA試料に2.25μlの0.2 M NaHCO3(pH 9.0)、次いで4.5μlのDMSO/染料混合物を添加することによって実施した。チューブを十分に混合し、室温において暗所で1時間インキュベーションした。プローブの精製は、500μlのローディング緩衝液を試料に添加し、混合した。SNAPカラム(Invitrogen)を採取チューブに取り付け、試料をカラムにローディングし、室温において2〜5分間インキュベーションした。SNAPカラムを最大速度で1分間遠心分離し、溶出液を捨てた。2回以上洗浄後、SNAPカラムを採取チューブに戻し、最大速度で30秒遠心分離して薄膜フィルターから残存する洗浄緩衝液を除去した。60μlのTE緩衝液をSNAPカラムに添加してcDNAを溶出し、2〜5分インキュベーションし、最大速度で室温において1〜2分遠心分離した。最初の溶出液を採取した後、溶出を反復し、両方の試料を合わせた。
【0178】
染料および総DNAの取り込みレベルの定量:取り込まれる染料の程度は、Cy3-およびCy5-プローブで、それぞれ、550 nmおよび650 nmにおける吸光度によって得た。DNAの量は260 nmにおける吸光度によって得た。染料取り込みの割合は3〜5%であった。
【0179】
マイクロアレイおよびデータ分析
プレハイブリダイゼーション:プレハイブリダイゼーション緩衝液(5 mlの20XSSC緩衝液、0.25 mlの20% SDS、5 mlの10% BSAおよび24.75 mlのMilliQ H2O)を42℃において事前加温した。事前加温したプレハイブリダイゼーション緩衝液を含有する50 mlFalconポリプロピレンチューブにプリント加工したスライドを入れ、42℃において40分インキュベーションした。洗浄ステーションで、42℃に事前加温したMilliQ H2Oで1回1分でスライドを5回洗浄後、スライドを2-プロパノールで4または5回洗浄した。マイクロアレイ遠心器を使用してスライドを1分遠心分離して乾燥した。カバーガラスをMilliQ H2Oおよび2-プロパノールで洗浄し、乾燥した。スライドを速やかにハイブリダイゼーションに使用した。
【0180】
ハイブリダイゼーション:ハイブリダイゼーションは全て色素交換法(dye swap manner)で実施した。ハイブリダイゼーションミックスは各々:0.15% SDS、30%ホルムアミド、3% SSC;1μg/μlサケ精子DNAを含有した。この混合物に70 pmoleのCy3を含有するプローブおよび35 pmoleのCy5を含有するプローブを添加して総容量60μlを得た。混合物を95℃において3分インキュベーションし、snapを氷上で1分冷却し、16.000 gで1分遠心分離した。プレハイブリダイゼーションしたマイクロアレイスライド(アレイスライドが上)をハイブリダイゼーションチャンバーに入れた。プローブ混合物を注意しながらスライド表面の上面に配置し、カバースリップでカバーした。カバースリップの端をImmedgeペン(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA, USA)でなぞった。10μlのMilliQ H2O(合計20μl)をチャンバーの各端から小さいウェルに添加してチャンバーを密封した。スライドを、3Dローテーターで42℃において16〜20時間インキュベーションした。ハイブリダイゼーションの終了時に、スライドを注意して取り出し、42℃に事前加温した洗浄緩衝液(2XSSC、0.1%SDS)で撹拌しながら5分洗浄した。スライドを別のチャンバーで、1回5分(1回目は1XSSC、次いで0.1X SSC)で、2回以上洗浄した。スライドをマイクロアレイ遠心器で1分遠心分離して乾燥し、スキャン時まで軽く堅いスライドボックスに置いた。
【0181】
データ獲得および画像処理:VersArrayチップリーダーソフトウェアv3.0ビルド1.63(BioRad)を使用するVirtekチップリーダーレーザースキャナーモデルA0-B0-05(Virtek Vision Corp, Waterloo, ON, Canada)を用いてスライドをスキャンした。各画像について異なる検出器感度値を用い、分解能10μm、ピクセル深さ16ビットで、Cy3およびCy5チャネルの各々の3つの画像を得た。画像は16ビットTIFFファイル(Tagged Image File Format)で保存し、VersArrayアナライザーソフトウェアv4.5(BioRad)で分析した。画像分割は「相互相関」アルゴリズムを用いて実施し、バックグラウンド判定に「ローカルコーナー」を使用した。結果は、以下のフィールドを表で分けた単純なテキストファイルで保存した:グリッド、列、カラム、各チャネルの信号平均、各チャネルの信号中央値、各チャネルのバックグラウンド平均、ピクセルの面積および品質スコア。品質スコア(QS)は、スポット形状QSと信号対ノイズQSスコアの幾何学的平均と規定した。信号対ノイズQSは、2*中央値(ローカルバックグラウンド)より大きい値を有するスポットにおけるピクセルの割合として算出した。スポット形状QSは、スポット周囲に対するスポット面積の比を0〜1の範囲になるようにしたものと規定する。
【0182】
データフィルタリング化および正規化:データ処理は全てRシステムv1.8.1(R Development core Team)下で実施した。データの作用動的範囲(working dynamic range)を最大にするために、チャネルの9の可能な組み合わせを分析した。データをフィルタリングして、ダスト由来データポイント(75ピクセル未満のサイズのスポットまたは80%未満の平均から中央値の相関のスポット) を排除し(Tran et al., Nucleic Acids Res. 30(12), e54, 2002)、飽和データポイント(20%より大きい飽和ピクセルの割合のスポット)を排除し、低信号データポイント(1.2未満の信号対ノイズ比のスポット)を排除した。スポット強度はバックグラウンドに関連せず、ほとんどの画像では、スポットバックグラウンドはスライドバックグラウンドより低いことを本発明者らは観察したので(Fang et al., Nucleic Acid Res. 31(16):e96)、バックグラウンドをスポット強度データから引く(BS)または引かない(BNS)かどうかに依存して、データ分析を2つの平行法で実施することを本発明者らは決めた。Cy5およびCy3の比および積の底2の対数は以下のように算出した:
M=log2(Cy5/Cy3) (1)
A=1/2・log2(Cy5×Cy3) (2)
【0183】
9回の反復の各々のデータは、自身の中央値を引くことによって全体的に正規化した。リーブ-ワン-アウト(leave-one-out)アルゴリズムを用いて、異常データポイントを9回の反復データから排除した。簡単に説明すると、自由度n-1のt-スチューデント検定分布から推定したとき、95%の信頼レベルの残りのデータポイントによって規定される信頼区間から外れている場合には、異常であるとしてデータポイントを棄却した。ここで、nは残りのデータポイントの数である。
【0184】
次いで、異常値ではないデータポイントの平均を用いて遺伝子発現データセットを生成した。
【0185】
データの正規化のために、本発明者らは以下のモデルを仮定した:
Mjk=mj+ck+ek(Fj)+ek(Ajk・Pj)+εjk (3)
ここで、mj(j=1、2、...、g)は、スポットjによって測定される遺伝子の発現の真の比を示し、Mjk(j=1、2、...、g;k=1、2、...、n)は、反復kのスポットjの発現レベルの測定比を示す。反復kの測定比Mは、2つのチャネルck間の全体的な測定バイアス、スポット(または遺伝子)特異的なバイアスek(Fj)、スポット強度依存的バイアスek(Ajk)、スポット位置関連バイアスek(Pj)およびゼロ平均ランダムエラーεjkによって影響されることをこのモデルは提示している。本発明者らの実験結果は、ek(Pj)およびek(Ajk)は独立していないことを示したので、本発明者らは、強度依存的および位置依存的バイアスをek(Ajk・Pj)=f(xj, yj, Ajk)(ここで、xjおよびyjは、スライドのスポットjの座標を規定する)としてモデル化した。データは、全体的な中央値正規化によってチャネル(ck)間の全体的な測定バイアスを補正した。遺伝子特異的バイアス(ek(Fj))は色素交換分析によって補正した(以下参照)。最後に、強度依存的および位置依存的バイアス(ek(Ajk・Pj))を、スライド全体についてM対xj、yjおよびAjkの局所的重み付けした3D多項式表面回帰によって補正し、次に各グリッドの3D多項式表面回帰を実施してグリッド特異的、強度依存的系統バイアスおよび位置依存的系統バイアスを補正した。局所的重み付け3D多項式表面回帰は、Rシステムのloess関数を用いて実施した。
【0186】
反復したスライド間のデータ統合(色素交換分析)
標識プローブ各々を色素交換プロトコールで少なくとも2回ハイブリダイゼーションした(技術的な反復)。色素交換実験に関連しない遺伝子は排除した。関連のない遺伝子は以下のように同定した:2つの比の積を算出して保存した。最初の変位値(合計100の変位値)が第99番目の変位値に等しいかまたはそれより大きくなるまで、低い比に対応するデータポイントを繰り返し排除した。
【0187】
実験の全ての反復間のスケール(すなわち、分散)が異なった場合には(p<0.05、分散の均一性に関するFigner-Killeen検定)、データは等しくスケーリングされるように変換した。比が、平均ゼロ、分散ai2σ2の正規分布に従うと仮定して、本発明者らはaiを以下のように推定した:

Iはスライド総数を示し、中央絶対偏差(MAD)は、
MAD=中央値j|Mij-中央値j(Mij)| (5)
(ここで、Mijは第i番目のスライドの第j番目のスポットを示す)
によって規定した。
【0188】
統合したデータセットは、平均品質スコアで重み付けした技術的反復のA値の平均および平均品質スコアで重み付けした技術的反復のM値の平均として得た。
【0189】
生物学的反復の分析および統合:少なくとも4つの生物学的反復を調製した。算術平均(Mn)およびSDは技術的反復の統合データから推定した。各実験の差次的に発現される遺伝子を同定した(p<0.05、対となるデータのt-スチューデント検定)。
【0190】
多変量分析
時間分析:2つの固定効果(腫瘍細胞注射または対照処理および経過時点)および1つのランダム効果(生物学的反復)を用い、反復なしの混合モデルデザインを、群間の分散分析(ANOVA)で分析した(Pavlidis P, Methods, 31:282-289, 2003)。このようなデザインは、処理、経過時点および相互作用のp-値の推定を可能にする。
【0191】
腫瘍および時間分析:3つの固定効果および1つのランダム効果を用い、反復デザインを用いない混合モデルデザインをANOVAで分析した。このようなデザインでは、生物学的反復はランダム効果として分析され、固定要因は処理(腫瘍対対照)、腫瘍モデル(乳癌、結腸癌および肺癌)および経過時間(18、72および192時間)であった。このようなデザインは、処理、腫瘍モデル、経過時間ならびに処理と腫瘍モデルおよび経過時間の相互作用のp-値の推定を可能にした。
【0192】
クラスター分析:差次的に発現される遺伝子だけをクラスター分析の対象とした。所定の遺伝子は、発現比が、分析した2つのデータセット(BNSおよびBS)についてゼロから有意に異なった場合、差次的に発現されると考慮した。従って、データセットBNSにおいて差次的に発現され(p<0.01)、データセットBSにおいても差次的に発現される(p<0.05)遺伝子をクラスター分析の対象とした。同様に、データセットBSにおいて差次的に発現され(p<0.01)、データセットBNSにおいても差次的に発現される(p<0.05)をクラスター分析の対象とした。図5、6および7は、腫瘍細胞注射後、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に前前頭皮質において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。図14、15および16は、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に視床下部において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。同様に、図23、24および25は、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に中脳において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。
【0193】
クラスター分析前に、データを以下のようにスケーリングした:Ms=(M-Mn(M)/SD(M)。メリットアルゴリズム(Yeung et al., Bioinformatics 17(4):309-18,2001)の図を使用して、クラスター内変動を最小にするクラスタリングアルゴリズムおよびクラスター数を同定した。7つの異なるクラスタリングアルゴリズムおよび合計51の異なるクラスタリング方法を生ずるこのようなアルゴリズムの異なる変動を用いて分析した全てのデータセットのメリットの図を調査して、本発明者らは、遺伝子発現パターンとWardの最小分散集積方法(Hartigan, Clustering Algorithms, Wiley, New York, 1975)のユークリッド距離を使用して階層アルゴリズムを実施することにした。
【0194】
図30Aおよび30Bは、前前頭皮質において18、72および192時間経過時において差次的に発現された遺伝子のデータを含むクラスタリング分析の結果を示す。図30-1は、全ての時間経過時において前前頭皮質においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図30-2は、18時間または18時間および72時間経過時においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図30-3は、192時間または72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図30-4は、全ての時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図30-5は、18時間または18および72時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図30-6は、192時間または72および192時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図33および33-1〜33-6は、試料が視床下部由来であることを除いて、同じ種類のデータを示す。図36A、36Bおよび36-1〜36-6は、試料が中脳由来であることを除いて、同じ種類のデータを示す。
【0195】
分泌されるマーカー:図47Bは、任意の経過時間において差次的に発現され(p<0.01)、結腸癌に関連する分泌産物であることが予測されるまたは公知である遺伝子を記載する。分泌されるマーカーは、発現を脳および脳脊髄液において検出することができ、固形組織生検の必要性を回避することができるという点において特に有用である。
【0196】
遺伝子アノテーション:遺伝子情報は以下から得た:
Entrez Gene(インターネット、ncbi.nlm.nih.gov/entrez)、
LocusLink(インターネット、ncbi.nlm.nih.gov./LocusLink)、
UniGene(インターネット、ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)、および
マウスゲノムインフォマティクス(インターネット、informatics.jax.org)。
【0197】
アノテーションの分野は「遺伝子座」(LocusLinkナンバー)、「遺伝子」(遺伝子名)、「説明」、「局在」(成分)、「生化学的機能」(機能)、「生物機能」(プロセス)および「クラス」である。
【0198】
実施例2:乳癌に関連するCNS遺伝子発現プロファイル
この実施例は、乳癌に関連する脳遺伝子発現プロファイルの同定を記載する。
【0199】
BALB-Cマウスに、100μlのPBSに再懸濁した1×105の4T-1乳癌細胞(ATCC cat#:CRL-2539)を皮下注射した。実験方法、マイクロアレイおよびデータ分析は全て、実施例1について上記するように実施した。
【0200】
結果
マイクロアレイデータの品質フィルタリング、正規化および分析は上記に考察するように実施した。
【0201】
クラスター分析:差次的に発現される遺伝子だけをクラスター分析の対象とした。所定の遺伝子は、発現比が、分析した2つのデータセット(BNSおよびBS)についてゼロから有意に異なった場合、差次的に発現されると考慮した。従って、データセットBNSにおいて差次的に発現され(p<0.01)、データセットBSにおいても差次的に発現される(p<0.05)遺伝子をクラスター分析の対象とした。同様に、データセットBSにおいて差次的に発現され(p<0.01)、データセットBNSにおいても差次的に発現される(p<0.05)をクラスター分析の対象とした。図2、3および4は、腫瘍細胞注射後、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に前前頭皮質において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。図11、12および13は、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に視床下部において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。同様に、図20、21および22は、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に中脳において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。
【0202】
図29は、前前頭皮質において18、72および192時間経過時において差次的に発現された遺伝子のデータを含むクラスタリング分析の結果を示す。図29-1は、全ての時間経過時において前前頭皮質においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図29-2は、18時間または18時間および72時間経過時においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図29-3は、192時間または72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図29-4は、全ての時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図29-5は、18時間または18および72時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図29-6は、192時間または72および192時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図32A、32Bおよび32-1〜32-6は、試料が視床下部由来であることを除いて、同じ種類のデータを示す。図35A、35Bおよび35-1〜35-6は、試料が中脳由来であることを除いて、同じ種類のデータを示す。
【0203】
分泌されるマーカー:図47Aは、任意の経過時間において差次的に発現され(p<0.01)、乳癌に関連する分泌産物であることが予測されるまたは公知である遺伝子を記載する。分泌されるマーカーは、発現を脳および脳脊髄液において検出することができ、固形組織生検の必要性を回避することができるという点において特に有用である。
【0204】
実施例3:肺癌に関するCNS遺伝子発現プロファイル
この実施例は、肺癌に関連する脳遺伝子発現プロファイルの同定を記載する。
【0205】
雄C-57/BL6マウスに、300μlのPBSに再懸濁した1×106の肺癌LL/2(LLC1) 細胞(ATCC cat#:CRL-1642)を皮下注射した。実験方法、マイクロアレイおよびデータ分析は全て、実施例1について上記するように実施した。
【0206】
結果
マイクロアレイデータの品質フィルタリング、正規化および分析は上記に考察するように実施した。
【0207】
クラスター分析:差次的に発現される遺伝子だけをクラスター分析の対象とした。所定の遺伝子は、発現比が、分析した2つのデータセット(BNSおよびBS)についてゼロから有意に異なった場合、差次的に発現されると考慮した。従って、データセットBNSにおいて差次的に発現され(p<0.01)、データセットBSにおいても差次的に発現される(p<0.05)遺伝子をクラスター分析の対象とした。同様に、データセットBSにおいて差次的に発現され(p<0.01)、データセットBNSにおいても差次的に発現される(p<0.05)をクラスター分析の対象とした。図8、9および10は、腫瘍細胞注射後、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に前前頭皮質において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。図17、18および19は、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に視床下部において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。同様に、図26、27および28は、それぞれ、18時間、72時間および192時間経過時に中脳において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。
【0208】
図31Aおよび31Bは、前前頭皮質において18、72および192時間経過時において差次的に発現された遺伝子のデータを含むクラスタリング分析の結果を示す。図31-1は、全ての時間経過時において前前頭皮質においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図31-2は、18時間または18時間および72時間経過時においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図31-3は、192時間または72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図31-4は、全ての時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図31-5は、18時間または18および72時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図31-6は、192時間または72および192時間経過時においてアップレギュレーションされていた遺伝子を含むクラスタリング分析の結果を示す。図34A、34Bおよび34-1〜34-6は、試料が視床下部由来であることを除いて、同じ種類のデータを示す。図37A、37Bおよび37-1〜37-6は、試料が中脳由来であることを除いて、同じ種類のデータを示す。
【0209】
分泌されるマーカー:図47Cは、任意の経過時間において差次的に発現され(p<0.01)、肺癌に関連する分泌産物であることが予測されるまたは公知である遺伝子を記載する。分泌されるマーカーは、発現を脳および脳脊髄液において検出することができ、固形組織生検の必要性を回避することができるという点において特に有用である。
【0210】
実施例4:癌に関連するCNS遺伝子発現プロファイル
この実施例は、以下の3つの種類の癌:肺癌、乳癌および結腸癌の任意の2つに関連する脳遺伝子発現プロファイルの同定を記載する。
【0211】
実験方法、マイクロアレイおよびデータ分析は全て、実施例1、2および3について上記するように実施した。
【0212】
最後の分析において、フィルタリングしたデータを再クラスタリングして、分析した3つの腫瘍の任意の2つにおいて差次的に発現され、これらの2つの腫瘍モデルの類似した発現パターンを示した配列を選択した。図41は、前前頭皮質試料から分析した3つの癌モデルの任意の2つにおいてダウンレギュレーションされていた遺伝子を示す。図42は、前前頭皮質試料から分析した3つの癌モデルの任意の2つにおいてアップレギュレーションされていた遺伝子を示す。図43は、視床下部試料から分析した3つの癌モデルの任意の2つにおいてダウンレギュレーションされていた遺伝子を示す。図44は、視床下部試料から分析した3つの癌モデルの任意の2つにおいてアップレギュレーションされていた遺伝子を示す。図45は、中脳試料から分析した3つの癌モデルの任意の2つにおいてダウンレギュレーションされていた遺伝子を示す。図46は、中脳試料から分析した3つの癌モデルの任意の2つにおいてアップレギュレーションされていた遺伝子を示す。
【0213】
実施例5:マイクロアレイデータのリアルタイムPCR確証
リアルタイムRT-PCR条件
逆転写反応:0.5μgオリゴ(dT)12-18(Invitrogen)および200 UのSuperscript II RNaseH-逆転写酵素(Invitrogen)を使用して0.5μgのmRNAを逆転写した。先ず、mRNAおよびオリゴ(dT)を混合し、65℃において5分過熱し、残りの反応成分を添加するまで氷上に置いた。反応液を42℃において50分インキュベーションし、70℃において15分熱不活性化によって反応を停止した。mRNAの分解は、2μlの2.5 M NaOHを各cDNA反応液に添加し、37℃において15分インキュベーションした。10μlの2 M HEPESフリー酸で反応液を中和し、担体として1μlの20 mg/mlのグリコーゲンを使用してcDNAをエタノール沈殿した。製造業者の取扱説明書によりOligreen ssDNA定量試薬(Invitrogen)を使用して、cDNAの量を定量した。
【0214】
反応準備およびサイクル条件:プライマー3プログラム(インターネットのgenome.wi.mit.edu/cgi-bin/primer/primer3.cgi/primer3_www.cgiで無料で利用可能)を使用してプライマーをデザインし、Invitrogenから購入した。iCycler IQ リアルタイム検出システム(Bio-Rad)の96ウェル光学プレートにおいてSYBR Green I(Invitrogen)を使用して、遺伝子を2つのハウスキーピング遺伝子(β2ミクログロブリンおよびβアクチン)と比較することによって、確証のために分析した各遺伝子を分析した。25μlの反応各々については、1μlのcDNA希釈液、2.5μlの10XPCR緩衝液、1.5μlの50 mM MgCl2、0.75μlの10 mM dNTPミックス、0.5μlの各プライマー(10 μM)、0.75μlのSYBR Green I(1000倍希釈)、0.25μlの10 mg/ml BSA、0.25μlのmMフルオレセイン染料(Bio-Rad)、0.25μlのグリセロール、16.55μlおよび0.2μlのプラチナムTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を使用した。PCR条件は以下のように設定した:94℃において2.5分ならびに94℃において45秒、58℃において30秒および72℃において15秒を40サイクル。
【0215】
算出:試料は全てトリプリケート(n=3)でアッセイし、実験は各々デュープリケート(n=2)で実施した。分析は、先ず各PCR産物の補正したTmをチェックした。次いで、Ramakers et. al.,2003, Neurosci. Lett., 339:62-66により、LinRegPCRプログラム(インターネットのbioinfo@amc.uva.nlで無料で利用可能)を使用して各反応の効率を試験した。85%〜100%の効率が適当であると考えられた。各遺伝子の標準曲線を構築し(一般に、1000 ng、100 ngおよび10 ngのcDNA希釈を使用した)、Vandesompele et. al., 2002, Genome Bio., 18:3(7):RESEARCH0034による、geNormプログラム(インターネットのmedgen31.ugent.be/jvdesomp/genormで無料で利用可能)を使用して、Rajeevan et. al., 2001, Methods, 25(4):443-51により算出した発現対ハウスキーピング発現の相対レベルを実施した。
【0216】
リアルタイムPCR:マイクロアレイ実験から得られた結果は、実験手法の各段階、アレイ製造から試料調製および画像分析への適用までによって影響されるBrazma et al., 2000, FEBS Lett, 480:17-24。これらの要因は試料中の転写物の発現に影響し、補足的な技法による確証の必要性を生じる。異なる技法を確証に使用することができる。従来、mRNAレベルの測定は、ノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーションおよびリボヌクレアーゼ保護アッセイRPA)などのハイブリダイゼーションに基づいた技法を使用して実施されている。しかし、これらの方法はハイブリダイゼーションの動態によって制限され、大量のRNAを必要とする。また、同時に取り扱うことができる試料数は非常に限られている。
【0217】
定量的RT-PCRの精度と高試料スループットの可能性の組み合わせは、マイクロアレイ分析の理想となる。リアルタイム定量的PCRは、蛍光の変化により各サイクル中の増幅産物の蓄積を測定することによって反応の進行をモニターするように最適化された技法である。(Gibson UE et al. Genome Res 1996, 6:995-1001;Heid CA et al. Genome Res 1996, 6:986-994)。SYBR GreenはPCR産物の検出のために使用した。SYBR Green Iは、溶液では、蛍光をほとんど示さないが、DNA二重らせんの副溝に結合すると、蛍光は大幅に増強される。
【0218】
脳における遺伝子発現の分析は非常に複雑である。脳は少数の一次細胞種を有するが、これらは莫大な表現型の多様性を示し、遺伝子発現の変化は小さい細胞亜集団にしか影響しない。結果として、脳細胞の小さい亜集団における深刻なトランスクリプトーム変化も検出することができない;大量の転写物がこれらの変化を隠蔽する可能性がある。結果として、マイクロアレイで見出される発現変化の大きさは中程度にすぎないことが多く、実験ノイズから分離することは困難である(Mirnics K et al., 2004, Nature Neurosc, 7:434-439)。例えば、Wurmbach et al., 2003, Methods, 31:306-316は、幻覚剤処理後のマウス大脳皮質において、マイクロアレイの倍差(fold difference)が1.6より大きいと、遺伝子の確証は43%であったが、折りたたみ差が1.3〜1.6であると、遺伝子の確証はわずか14.3%であったことを示している。
【0219】
本発明者らは、リアルタイムPCR分析を使用して本発明者らの結果の確証を開始した。最初の確証アプローチとして、本発明者らは、14の差次的に発現される遺伝子を無作為に選択した。図49は、マイクロアレイ分析によって得られる折り畳み差対リアルタイムPCRによって得られる倍変化(fold change)を示す。マイクロアレイの折りたたみが1.15〜1.35のとき、14のうち4つの遺伝子(29%)が確証された。確証された遺伝子は以下であった:
a)IL-1βおよびTNF-αによって誘発される炎症性サイトカイン依存的信号伝達経路において機能することが報告されているTOM1(myb1相同物の標的)(Yamakami M, 2004, Biol. Pharm. Bull., 27:564-566)
b)いくつかの信号伝達経路、特に、神経突起成長に必要な経路に関与することが報告されているPtpn11(タンパク質チロシンホスファターゼ、非受容体型11)(Chen B. et al., 2002, Dev Biol., 15;252(2):170-87)。
c)ミエリン化線維の組織化に関与することが報告されているCntn2(コンタクチン2)。(Traka M. et al., 2003, J. Cell Bio., 15;162(6):1161-72)。
d)RIKEN cDNA 1200011M11、未知機能の新規遺伝子。
【0220】
実施例6:喘息に関連するCNS遺伝子発現プロファイル
この実施例は、喘息に関連する脳遺伝子発現プロファイルの同定を記載する。
【0221】
8週齢の雄Balb-cに、50μgの卵白アルブミン(卵白アルブミンの200μg/ml生理食塩溶液250μl)を7日連続して腹腔内注射した。陰性対照は、対応する容量の生理食塩液単独を注射した。注射は全て27Gシリンジを使用して実施した。最後の注射の3週間後に、動物は、喘息群が卵白アルブミン(2 mg/ml)エアゾールまたは陰性対照群は生理食塩液単独の反復暴露を8日間1日1回実施した。エアゾールは、ネブライザーに取り付けて、各実験動物あたり1ケージに適用した。暴露は5匹の動物群において5分間実施した。
【0222】
血清中で卵白アルブミン特異的抗体を検出するためのELISA:最後の噴霧後に血液試料を採取し、室温において1時間保存し、10,000 gで室温において10分遠心分離した。上清(血清)を使用時まで-80℃で保存した。ラット抗マウスIgE 2μg/mlのPBS(pH 7.5)溶液100μlを96ウェルプレートに添加し、撹拌しながら4℃において終夜インキュベーションした。プレートを100μlの洗浄緩衝液(PBS pH 7.5;0.05% Tween 20)で3回洗浄した。ブロッキングは100μlのブロッキング緩衝液(PBS pH 7.5;1% BSA)で実施し、撹拌しながら室温において30分インキュベーションし、次いで100μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。血清を、適当な希釈列でPBS(pH 7.5)に添加し、撹拌しながら4℃において終夜インキュベーションした。翌日、ジゴキシゲニン(4μg/ml)に結合した卵白アルブミンを含有するブロッキング緩衝液の溶液100μlを添加し、室温において撹拌しながら2時間30分インキュベーションした。プレートを100μlの洗浄緩衝液で3回洗浄し、ストック溶液から洗浄緩衝液で1000倍希釈した抗ジゴキシゲニン-POD、Fab断片の100μlを添加し、撹拌しながら室温において1時間30分インキュベーションした。プレートを100μlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。現像は100μlの現像液(クエン酸48.8 mM;リン酸ナトリウム塩基性0.102 M;7 mlの溶液にO.P.D.1錠、H2O2 150X、1Xとする)を添加することによって実施した。100μlの硫酸4Nで反応を停止し、420 nmのELISAリーダーで読んだ。抗卵白アルブミンIgEレベルが対照動物と同様の喘息群の動物は切開の対象としなかった。
【0223】
総RNAを単離する方法、プローブを標識する方法、マイクロアレイハイブリダイゼーション方法およびデータ分析方法は、実施例1について上記するように実施した。
【0224】
結果
品質フィルタリング、正規化およびマイクロアレイデータの分析は上記に考察するように実施した。
所定の遺伝子は、発現比が、分析した2つのデータセット(BNSおよびBS)についてゼロから有意に異なった場合、差次的に発現されると考慮した。従って、データセットBNSにおいて差次的に発現され(p<0.05)、データセットBSにおいても差次的に発現される(p<0.1)遺伝子をクラスター分析の対象とした。同様に、データセットBSにおいて差次的に発現され(p<0.05)、データセットBNSにおいても差次的に発現される(p<0.1)遺伝子をクラスター分析の対象とした。図55は、卵白アルブミン暴露後2日目に前前頭皮質において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。図56は、卵白アルブミン暴露後2日めに視床下部において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。同様に、図57は、卵白アルブミン暴露後2日目に中脳において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。
【0225】
分泌されるマーカー:図60は、任意の経過時間において差次的に発現され(p<0.05)、喘息に関連する分泌産物であることが予測されるまたは公知である遺伝子を記載する。分泌されるマーカーは、発現を脳および脳脊髄液において検出することができ、固形組織生検の必要性を回避することができるという点において特に有用である。
【0226】
実施例7:関節炎に関するCNS遺伝子発現プロファイル
この実施例は、関節炎に関連する脳遺伝子発現プロファイルの同定を記載する。
【0227】
10週齢のC57BL/6Jマウスに、最終濃度2 mg/mlに完全フロイントアジュバントで乳化したニワトリII型コラーゲン(C II)0.1 mlを尾の付け根に皮内注射した。21日後に、不完全フロイントアジュバントで乳化したC II(2 mg/ml)からなる追加免疫投与(0.1 ml)を皮内注射した。さらに3日後に、動物にリポ多糖(40 mgを0.1 mlリン酸緩衝生理食塩液(PBS)に加えたもの;大腸菌(E. coli)血清型055:B5)を腹腔内注射した。
【0228】
関節炎の臨床評価:関節炎の発症および進行をモニターし、関節炎の目に見える徴候に基づいて臨床スコアを割り付けた(0.5=指の腫脹、歩行困難または疼痛(脚を縮める);1=脚の腫脹;2=脚および足首の腫脹;3=完全な炎症)。3週間後、頸部脱臼によってマウスを犠牲にし、速やかに断頭し、脳を取り出し、以下に記載するように切開した。
【0229】
総RNAを単離する方法、プローブを標識する方法、マイクロアレイハイブリダイゼーション方法およびデータ分析方法は、実施例1について上記するように実施した。
【0230】
結果
品質フィルタリング、正規化およびマイクロアレイデータの分析は上記に考察するように実施した。
所定の遺伝子は、発現比が、分析した2つのデータセット(BNSおよびBS)についてゼロから有意に異なった場合、差次的に発現されると考慮した。従って、データセットBNSにおいて差次的に発現され(p<0.05)、データセットBSにおいても差次的に発現される(p<0.1)遺伝子をクラスター分析の対象とした。同様に、データセットBSにおいて差次的に発現され(p<0.05)、データセットBNSにおいても差次的に発現される(p<0.1)遺伝子をクラスター分析の対象とした。図51は、最後のリポ多糖注射後24日目に前前頭皮質において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。図52は、最後のリポ多糖注射後24日目に視床下部において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。同様に、図53は、最後のリポ多糖注射後24日目に中脳において差次的に発現されると考えられた遺伝子を記載する。
【0231】
分泌されるマーカー:図58は、任意の経過時間において差次的に発現され(p<0.05)、関節炎に関連する分泌産物であることが予測されるまたは公知である遺伝子を記載する。分泌されるマーカーは、発現を脳および脳脊髄液において検出することができ、固形組織生検の必要性を回避することができるという点において特に有用である。
【0232】
実施例8:遺伝子産物プロファイルを検出することによるヒトにおける乳癌の診断
この実施例は、ヒト被験者に実施した非CNS癌の診断試験を記載する。被験者は、BRCA1乳癌感受性遺伝子のキャリアである。
【0233】
CSF試料は、腰椎穿刺によって被験者から得た。この手技は、外来で局所麻酔下で実施する。CSF試料は診断アッセイに速やかに使用するか、または冷却または冷凍して、保存するかもしくは診断試験を実施する施設に輸送する。
【0234】
診断試験は、CSFに特徴的なプロファイルで分泌されるとき、乳癌の存在に関連するCNS遺伝子産物のセット(クラスター)を検出することができる3つの抗体のパネルを含有する抗体アレイにCSF試料を接触させることに関係する。パネルは、図47(A)に記載する乳癌の3つのCNSマーカーの抗体プローブを含む。従って、この実施例では、特徴的なプロファイルは乳癌のCNS「基準プロファイル」である。
【0235】
抗体アレイの結果は、アレイの各位置(各抗体)の蛍光検出および結合抗体対未結合抗体の測定などの通常の技法によって得られる。アレイの各抗体によってCSF試料中に検出される各ポリペプチドのレベルの値のデータセットを生成する。データセットを試験発現プロファイルとして直接使用する。対照発現プロファイルは、乳癌が認められない人の抗体アレイの平均結果から生成する。
【0236】
試験発現プロファイルが生成されたら、試験プロファイルを基準発現プロファイルおよび対照プロファイルと比較する。この実施例において、基準プロファイルは、CSFに分泌される3つのCNS遺伝子産物のパネルの相対的な発現値を含むデータセットであり、全て早期乳癌被験者においてアップレギュレーションされることが公知である。そのような3つの遺伝子のLog2比を、それぞれ、図29、32Aおよび35Bにクレイスケールレベルとして図示する。本明細書に規定するように、試験プロファイルが基準プロファイルとの一致を示す場合には、被験者は早期乳癌を有する(またはそのリスクにある)と判定される。
【0237】
実施例9:遺伝子産物プロファイルを検出することによるヒトの結腸癌の診断
この実施例は、ヒト被験者に実施した結腸癌の診断試験を記載する。被験者は、早期結腸癌を有する患者である。被験者からCSF試料を得る方法は実施例8と同じである。
【0238】
診断試験は、CSFに特徴的なプロファイルで分泌されるとき、乳癌の存在に関連するCNS遺伝子産物のセット(クラスター)を検出することができる3つの抗体のパネルを含有する抗体アレイにCSF試料を接触させることに関係する。パネルは、図47(B)に記載する結腸癌の7つのCNSマーカーの3つの抗体プローブを含む。従って、この実施例では、特徴的なプロファイルは結腸癌のCNS「基準プロファイル」である。
【0239】
抗体アレイの結果は、アレイの各位置(各抗体)の蛍光検出および結合抗体対未結合抗体の測定などの通常の技法によって得られる。アレイの各抗体によってCSF試料中に検出される各ポリペプチドのレベルの値のデータセットを生成する。データセットを試験発現プロファイルとして直接使用する。対照発現プロファイルは、結腸癌が認められない人の抗体アレイの平均結果から生成する。
【0240】
試験発現プロファイルが生成されたら、試験プロファイルを基準発現プロファイルおよび対照プロファイルと比較する。この実施例において、基準プロファイルは、Ereg、Mgrn1およびLhbの相対的な発現値を含むデータセットであり、全て早期乳癌被験者においてアップレギュレーションされることが公知である。そのような3つの遺伝子のLog2比を、それぞれ、図30、33および36にクレイスケールレベルとして図示する(Ereg比=0.67、皮質18時間;Mgrn1比=1.095、1.08と1.11の平均、それぞれ、72時間および192時間経過時の視床下部;Lhb比=0.92、0.94と0.90の平均、それぞれ72時間および192時間における中脳。本明細書に規定するように、試験プロファイルが基準プロファイルとの一致を示す場合には、被験者は早期結腸癌を有する(またはそのリスクにある)と判定される。
【0241】
他の態様
本発明の数多くの態様が記載されている。しかしながら、本発明の精神および特許請求の範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることができることが理解されると考えられる。従って、他の態様は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】図1-1〜図1-35は、乳癌、結腸癌および肺癌の関連動物モデルの前前頭皮質、視床下部および中脳において同定された全ての癌疾病監視遺伝子(p<0.01で差次的に発現される)を示す表である。データは、対照マウスと比較して、腫瘍を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子に対応する。試料は、腫瘍細胞注射後18時間経過時、72時間経過時および192時間経過時に対応する。 以下の図2〜28は、乳癌、肺癌または結腸癌を有するマウスの前前頭皮質、視床下部または中脳において差次的に発現される遺伝子(p<0.01)を示す表である。試料は、腫瘍細胞注射後18時間経過時、72時間経過時または192時間経過時に対応する。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)を用いる混合モデル分散分析によって同定した。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図2】図2は、18時間経過時に乳癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図3】図3は、72時間経過時に乳癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図4】図4は、192時間経過時に乳癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図5】図5は、18時間経過時に結腸癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図6】図6Aおよび図6Bは、72時間経過時に結腸癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図7】192時間経過時に結腸癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図8】図8Aおよび図8B、18時間経過時に肺癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図9】図9Aおよび図9Bは、72時間経過時に肺癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図10】図10Aおよび図10Bは、192時間経過時に肺癌を有するマウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図11】図11Aおよび図11Bは、18時間経過時に乳癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図12】図12は、72時間経過時に乳癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図13】図13は、192時間経過時に乳癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図14】図14は、18時間経過時に結腸癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図15】図15は、72時間経過時に結腸癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図16】図16は、192時間経過時に結腸癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図17】図17Aおよび図17Bは、18時間経過時に肺癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図18】図18Aおよび図18Bは、72時間経過時に肺癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図19】図19は、192時間経過時に肺癌を有するマウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図20】図20は、18時間経過時に乳癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図21】図21は、72時間経過時に乳癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図22】図22は、192時間経過時に乳癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図23】図23Aおよび図23Bは、18時間経過時に結腸癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図24】図24は、72時間経過時に結腸癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図25】図25は、192時間経過時に結腸癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図26】図26は、18時間経過時に肺癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図27】図27は、72時間経過時に肺癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。
【図28】図28は、192時間経過時に肺癌を有するマウスの中脳において差次的に発現される遺伝子を示す。 以下の図29〜37-6は、階層的クラスター分析を実施後の対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスの差次的に発現される遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18時間経過時、72時間経過時および192時間経過時において前前頭皮質、視床下部または中脳から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)および経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図29】図29は、階層的クラスター分析を実施後に乳癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。
【図29−1】図29-1は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図29−2】図29-2は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図29−3】図29-3は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図29−4】図29-4は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図29−5】図29-5は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図29−6】図29-6は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図30】図30Aおよび図30Bは、階層的クラスター分析を実施後の結腸癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す表である。試料は前前頭皮質から得た。
【図30−1】図30-1は、結腸癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図30−2】図30-2は、結腸癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図30−3】図30-3は、結腸癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図30−4】図30-4は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図30−5】図30-5は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図30−6】図30-6は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図31】図30Aおよび図30Bは、階層的クラスター分析を実施後の肺癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す表である。試料は前前頭皮質から得た。
【図31−1】図31-1は、肺癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図31−2】図31-2は、肺癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図31−3】図31-3は、肺癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図31−4】図31-4は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図31−5】図31-5は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図31−6】図31-6は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は前前頭皮質から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図32】図32Aおよび図32Bは、乳癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。
【図32−1】図32-1は、乳癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図32−2】図32-2は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図32−3】図32-3は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図32−4】図32-4は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図32−5】図32-5は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図32−6】図32-6は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図33】図33は、結腸癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。
【図33−1】図33-1は、結腸癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図33−2】図33-2は、結腸癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図33−3】図33-3は、結腸癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図33−4】図33-4は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図33−5】図33-5は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図33−6】図33-6は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図34】図34Aおよび図34Bは、肺癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。
【図34−1】図34-1は、肺癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図34−2】図34-2は、肺癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図34−3】図34-3は、肺癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図34−4】図34-4は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図34−5】図34-5は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図34−6】図34-6は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は視床下部から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図35】図35Aおよび図35Bは、階層的クラスター分析後の乳癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は中脳から得た。
【図35−1】図35-1は、乳癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図35−2】図35-2は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図35−3】図35-3は、乳癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図35−4】図35-4は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図35−5】図35-5は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図35−6】図35-6は、乳癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図36】図36Aおよび図36Bは、階層的クラスター分析後の結腸癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は中脳から得た。
【図36−1】図36-1は、結腸癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図36−2】図36-2は、結腸癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図36−3】図36-3は、結腸癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図36−4】図36-4は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図36−5】図36-5は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図36−6】図36-6は、結腸癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図37】図37Aおよび図37Bは、階層的クラスター分析後の肺癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す。試料は中脳から得た。
【図37−1】図37-1は、肺癌を有するマウスのダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図37−2】図37-2は、肺癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図37−3】図37-3は、肺癌を有するマウスにおいてダウンレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間および192時間経過時においてダウンレギュレーションされているものに対応する。
【図37−4】図37-4は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、全ての経過時点においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図37−5】図37-5は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後18時間経過時または18時間経過時および72時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図37−6】図37-6は、肺癌を有するマウスにおいてアップレギュレーションされた遺伝子を示す。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に中脳から得た。遺伝子のリストは、腫瘍注射後72時間経過時および192時間経過時においてアップレギュレーションされているものに対応する。
【図38】図38Aおよび図38Bは、階層的クラスター分析後の、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおいて差次的に発現される遺伝子を示す(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時において前前頭皮質から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。バックグラウンドを引かないで得られるデータだけを表に含む。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。
【図39】図39Aおよび図39Bは、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有する差次的に発現される遺伝子を示す(p<0.001)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時において視床下部から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。バックグラウンドを引かないで得られるデータだけを表に含む。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。
【図40】図40Aおよび図40Bは、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有する差次的に発現される遺伝子を示す(p<0.001)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時において中脳から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。バックグラウンドを引かないで得られるデータだけを表に含む。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。
【図41】図41の(A)は、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおけるダウンレギュレーションされた遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に前前頭皮質から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。少なくとも2つの癌モデルにおいて同様の一時的な発現パターンを示した遺伝子だけを表に含めた。結果は、バックグラウンドを引かないで得られるデータに対応する。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。(B) (A)の遺伝子の腫瘍対対照の底2の対数比である。バーは平均±SEMである。
【図42】図42の(A)は、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおけるアップレギュレーションされた遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に前前頭皮質から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。少なくとも2つの癌モデルにおいて同様の一時的な発現パターンを示した遺伝子だけを表に含めた。結果は、バックグラウンドを引かないで得られるデータに対応する。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。(B) (A)の遺伝子の腫瘍対対照の底2の対数比である。バーは平均±SEMである。
【図43】図43の(A)は、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおけるダウンレギュレーションされた遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に視床下部から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。少なくとも2つの癌モデルにおいて同様の一時的な発現パターンを示した遺伝子だけを表に含めた。結果は、バックグラウンドを引かないで得られるデータに対応する。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。(B)(A)の遺伝子の腫瘍対対照の底2の対数比である。バーは平均±SEMである。
【図44】図44の(A)は、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおけるアップレギュレーションされた遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に視床下部から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。少なくとも2つの癌モデルにおいて同様の一時的な発現パターンを示した遺伝子だけを表に含めた。結果は、バックグラウンドを引かないで得られるデータに対応する。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。(B)(A)の遺伝子の腫瘍対対照の底2の対数比である。バーは平均±SEMである。
【図45】図45の(A)は、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおけるダウンレギュレーションされた遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に中脳から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。少なくとも2つの癌モデルにおいて同様の一時的な発現パターンを示した遺伝子だけを表に含めた。結果は、バックグラウンドを引かないで得られるデータに対応する。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。(B) (A)の遺伝子の腫瘍対対照の底2の対数比である。バーは平均±SEMである。
【図46】図46の(A)は、対照マウスと比較した、乳癌、結腸癌または肺癌を有するマウスにおけるアップレギュレーションされた遺伝子を示す表である(p<0.01)。試料は、腫瘍細胞注射後18、72および192時間経過時に中脳から得た。差次的に発現される遺伝子は、固定効果として腫瘍(または対照)、腫瘍モデルおよび経過時点を用いる混合モデルANOVAによって同定した。少なくとも2つの癌モデルにおいて同様の一時的な発現パターンを示した遺伝子だけを表に含めた。結果は、バックグラウンドを引かないで得られるデータに対応する。腫瘍対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。(B) (A)の遺伝子の腫瘍対対照の底2の対数比である。バーは平均±SEMである。
【図47】図47の(A)〜(C)は、3つの異なる癌モデル:乳癌、47A;結腸癌、47B;および肺癌、47Cで試験した任意の事件において差次的に発現される腫瘍-特異的CNSマーカーを記載する表のセットである。この図に加える基準は、(1)マーカーが分泌された産物に対応する;および(2) 異なる発現のp値が0.01未満である、であった。
【図48】図48の(A)〜(C)は、結腸癌および肺癌の各々の治療的介入のための標的の可能性もあるCNSマーカーとして同定された遺伝子を記載する表のセットである。この図に加える基準は、(1)マーカーが、増殖因子、ホルモンまたはサイトカインなどのシグナル伝達受容体に対応する;および(2)異なる発現のp値が0.01未満である、であった。
【図49】図49は、確証のためにランダムに選択した差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を形成する表である。リアルタイムPCRによって14のうち4つ(29%)が差次的に発現される遺伝子と確証され、マイクロアレイとWurmbach et al., Methods 2003, 31: 306-316によるReal Time PCRとのすぐれたレベルの相関を示した。比は平均±SEMと表す。(ND)データ入手不可能。p-値ランクは、マイクロアレイ結果の遺伝子をp-値により小さい順に選別して算出した。
【図50】図50は、関連動物モデルの前前頭皮質、視床下部および中脳において同定された全ての関節炎疾病監視遺伝子(p<0.05で差次的に発現される)を示す表である。データは、対照マウスと比較した関節炎マウスにおいて差次的に発現される遺伝子に対応する。試料は、動物が関節炎症状を示し始めた、最後のLPS注射後24日目に得た。
【図51】図51A〜Dは、関節炎マウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を示す表である。試料は、動物が関節炎症状を示し始めた、最後のリポ多糖注射後24日目に得た。差次的に発現される遺伝子は対応のある試料のt-検定によって同定した。関節炎対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図52】図52A〜Dは、関節炎マウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を示す表である。試料は、動物が関節炎症状を示し始めた、最後のリポ多糖注射後24日目に得た。差次的に発現される遺伝子は対応のある試料のt-検定によって同定した。関節炎対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図53】図53A〜Dは、関節炎マウスの中脳において差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を示す表である。試料は、動物が関節炎症状を示し始めた、最後のリポ多糖注射後24日目に得た。差次的に発現される遺伝子は対応のある試料のt-検定によって同定した。関節炎対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図54】図54は、関連動物モデルの前前頭皮質、視床下部および中脳において同定された全ての喘息疾病監視遺伝子(p<0.05で差次的に発現される)を示す表である。データは、対照マウスと比較した喘息マウスにおいて差次的に発現される遺伝子に対応する。試料は、最後の卵白アルブミンのエアゾールによる暴露後2日目に得た。
【図55】図55A〜Cは、喘息マウスの前前頭皮質において差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を示す表である。試料は、最後の卵白アルブミンのエアゾールによる暴露後2日目に得た。差次的に発現される遺伝子は対応のある試料のt-検定によって同定した。喘息対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図56】図56Aおよび56Bは、喘息マウスの視床下部において差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を示す表である。試料は、最後の卵白アルブミンのエアゾールによる暴露後2日目に得た。差次的に発現される遺伝子は対応のある試料のt-検定によって同定した。喘息対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図57】図57Aおよび57Bは、喘息マウスの中脳において差次的に発現される遺伝子(p<0.05)を示す表である。試料は、最後の卵白アルブミンのエアゾールによる暴露後2日目に得た。差次的に発現される遺伝子は対応のある試料のt-検定によって同定した。喘息対対照の底2の対数比をグレイスケールで示す。BNSはバックグラウンドを引かないで得られたデータに対応し、BSはバックグラウンドを引いて得られたデータに対応する。
【図58】図58は、試験した経過時間において、差次的に発現される関節炎特異的CNSマーカーを記載する表である。この図に加える基準は、(1)マーカーが分泌された産物に対応する;および(2) 異なる発現のp値が0.05未満である、であった。
【図59】図59は、関節炎の治療的介入のための標的の可能性もあるCNSマーカーとして同定された遺伝子を記載する表のセットである。この図に加える基準は、(1)マーカーが、増殖因子、ホルモンまたはサイトカインなどのシグナル伝達受容体に対応する;および(2)異なる発現のp値が0.05未満である、であった。
【図60】図60は、試験した経過時間において、差次的に発現される喘息特異的CNSマーカーを記載する表である。この図に加える基準は、(1)マーカーが分泌された産物に対応する;および(2) 異なる発現のp値が0.05未満である、であった。
【図61】図61は、喘息の治療的介入のための標的の可能性もあるCNSマーカーとして同定された遺伝子を記載する表のセットである。この図に加える基準は、(1)マーカーが、増殖因子、ホルモンまたはサイトカインなどのシグナル伝達受容体に対応する;および(2)異なる発現のp値が0.05未満である、であった。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】

【図1−7】

【図1−8】

【図1−9】

【図1−10】

【図1−11】

【図1−12】

【図1−13】

【図1−14】

【図1−15】

【図1−16】

【図1−17】

【図1−18】

【図1−19】

【図1−20】

【図1−21】

【図1−22】

【図1−23】

【図1−24】

【図1−25】

【図1−26】

【図1−27】

【図1−28】

【図1−29】

【図1−30】

【図1−31】

【図1−32】

【図1−33】

【図1−34】

【図1−35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系(CNS)試料を得るためのサンプリング装置;
CNS試料中の1つ以上の遺伝子の遺伝子発現データを生成する遺伝子発現検出装置;
特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイル;および
遺伝子発現データを受信して、基準遺伝子発現プロファイルと比較するコンパレータ(comparator)
を含む、被験者の非中枢神経系(非CNS)疾患を診断するためのシステム。
【請求項2】
中枢神経系(CNS)における1つ以上の遺伝子発現の画像を入手し、1つ以上の遺伝子の遺伝子発現データを生成するための画像形成装置;
特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイル;および
遺伝子発現データを受信して、基準遺伝子発現プロファイルと比較するコンパレータ
を含む、被験者の非中枢神経系(非CNS)疾患を診断するためのシステム。
【請求項3】
被験者のCNS試料における1つ以上の遺伝子の発現を検出する段階;
検出された発現から遺伝子発現データを生成する段階;
特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイルを入手する段階;および
遺伝子発現データと基準遺伝子発現プロファイルを比較する段階
を含み、
CNS試料の遺伝子発現データと基準遺伝子発現プロファイルの一致が、被験者が非CNS疾患を有するまたは発症することを示す、被験者の非中枢神経系(非CNS)疾患を診断するための方法。
【請求項4】
CNS試料が脳脊髄液(CSF)試料であり、遺伝子発現データがCSFのタンパク質に対応する、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項5】
CNS試料が、CNSにおける遺伝子によって発現されるタンパク質を含む生体液試料であり、遺伝子発現データが試料中のタンパク質の存在またはレベルに対応する、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項6】
CNS試料が、試料中の存在またはレベルがCNSにおいて発現される遺伝子によって影響されるタンパク質を含む生体液試料であり、遺伝子発現が試料中のタンパク質の存在またはレベルに対応する、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項7】
タンパク質が、ホルモン、成長因子、免疫系成分およびサイトカインからなる群より選択される、請求項5または6記載のシステムまたは方法。
【請求項8】
タンパク質が、図1、50および54のいずれかに記載されている遺伝子のいずれか、またはヒトもしくは他の哺乳類相同物によってコードされる、請求項5または6記載のシステムまたは方法。
【請求項9】
遺伝子が、肝細胞成長因子(HGF)、アフェリン(apherin)A3、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4、成長分化因子(growth differentiation factor-9b)(GDF-9b);骨形成タンパク質15(BMP 15)、神経芽細胞腫腫瘍形成抑制因子1、メラニン形成細胞増殖遺伝子1および線維芽細胞増殖因子22(FGF22)からなる群より選択される、遺伝子産物をコードする、請求項5または6記載のシステムまたは方法。
【請求項10】
CNS試料が脳の1つ以上の細胞の試料であり、遺伝子発現データが試料の核酸分子またはタンパク質に対応する、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項11】
脳細胞が、視床下部、中脳、前前頭皮質および線条体からなる群より選択される、請求項10記載のシステムまたは方法。
【請求項12】
核酸分子が、遺伝子に対応するmRNAを含む、請求項10記載のシステムまたは方法。
【請求項13】
2つ以上の基準遺伝子発現プロファイルを使用し、各々が異なる非CNS疾患に特異的である、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項14】
非CNS疾患が、癌、関節リウマチ、喘息、糖尿病および肥満からなる群より選択される、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項15】
非CNS疾患が癌である、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項16】
非CNS疾患が、直径0.5 cm未満の固形腫瘍である、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項17】
遺伝子発現データがCNS試料中の複数の遺伝子のデータを含み、遺伝子発現プロファイルを含む、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項18】
1人以上の健康な被験者に対応する対照遺伝子発現プロファイルを得る段階;および
遺伝子発現データを対照遺伝子発現プロファイルと比較する段階であって、CNS試料の遺伝子発現データと対照遺伝子発現プロファイルの一致が、被験者が非CNS疾患を有さず、非CNS疾患を発症しないことを示す段階
をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項19】
遺伝子発現が、マイクロアレイアッセイを使用して検出される、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項20】
被験者がヒトである、請求項1もしくは2記載のシステムまたは請求項3記載の方法。
【請求項21】
被験者から2つ以上の中枢神経系(CNS)遺伝子の試験遺伝子発現プロファイルを得る段階;
特定の非CNS疾患の基準遺伝子発現プロファイルを得る段階;および
試験遺伝子発現プロファイルと基準遺伝子発現プロファイルを比較する段階であって、基準遺伝子発現プロファイルに一致する試験遺伝子発現プロファイルが、被験者が非CNS疾患を有するまたは発症することを示す段階
を含む、非中枢神経系(非CNS)疾患を診断する方法。
【請求項22】
比較する段階の結果の記録を生成する段階;および任意で、被験者、医療提供者または他の団体に記録を送信する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
非CNS疾患が、癌、関節リウマチ、喘息、糖尿病および肥満からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
試験遺伝発現プロファイルを得る段階が、2つ以上のCNS遺伝子に対応するmRNAを検出する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
試験遺伝子発現プロファイルを得る段階が、2つ以上のCNS遺伝子によってコードされるポリペプチド産物を検出する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
試験遺伝子発現プロファイルが複数のCNS遺伝子について得られる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
試験遺伝子発現プロファイルを得る段階が、マイクロアレイアッセイを実施する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項28】
5つ以上の遺伝子の発現データを含む基準遺伝子発現プロファイルに対応するデータセットを含み、ここで5つ以上の遺伝子の各々が、特定の非CNS疾患が認められない哺乳類の同じ5つ以上の遺伝子と比較して、特定の非CNS疾患を有する哺乳類の中枢神経系(CNS)試料において差次的に発現され、データセットが非CNS疾患を診断するために使用される、コンピュータ読取可能な媒体。
【請求項29】
基準遺伝子発現プロファイルが、乳癌は図29-1〜29-6;図32-1〜32-6;もしくは図35-1〜35-6;結腸癌は図30-1〜30-6;図33-1〜33-6;もしくは図36-1〜36-6;肺癌は図31-1〜31-6;34-1〜34-6;もしくは37-1〜37-6;関節炎は図50;または喘息は図54の1つ以上に記載されている遺伝子のいずれかから選択される5つ以上の遺伝子の発現データを含む、請求項28記載のコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項30】
5つ以上の遺伝子が、以下の遺伝子群のいずれか1つから選択される、請求項28記載のコンピュータ読取可能な媒体:
乳癌: Nedd8(図29-1)、Col4a3bp(図29-2)、Bgn(図29-4)、Sox5(図29-5)、Slc38a4 (図32-1)、Toml(図32-2)、Calr(図32-4)、Itgae(図32-5)、Ttrap(図35-1)、P exllb (図35-2)、Sema7a(図35-4)およびStam2(図35-5);
結腸癌: Nmb(図30-1)、Ryr2(図30-2)、Trfr (図30-4)、Mfap5(図30-5)、Prrg2 (図33-1)、Faim (図33-2)、Mgrnl(図33-4)、Stch (図33-5)、Lhb(図36-1)、Prm3(図36-2)、Crry(図36-4)およびTimp4(図36-5);
肺癌: Nmb(図31-1)、Pcdh8(図31-2)、Rock2(図31-4)、Angptl3(図31-5)、Sqstml(図34-1)、Kcnip2(図34-2)、Oxt(図34-4)、Myh4(図34-5)、Encl(図37-1)、Gsgl(図37-2)、Srr(図37-4)およびNdph(図37-5);
関節炎: Bc121(図51A)、P2rxl(図51B)、Pafahlbl(図51B)、Kcna3(図51C)、Taflb(図51C)、Slc38a3(図51D)、Hprt(図52A)、C1d(図52B)、Carll(図52D)、Dusp3(図52D)、Gabrr2(図53C)およびAatk(図53D);ならびに
喘息:Rasa3(図55B)、Tnk2(図55B)、H28(図55C)、Diap2(図55C)、Lgals6 (図56A)、Reck (図56A)、Whrn (図56A)、Stk22sl(図56B)、CD47 (図57A)、Jundl (図57A)、Cstb(図57B)およびDesrt(図57B)。
【請求項31】
試験実験動物において非CNS疾患を誘導する段階;
試験実験動物由来のCNS試料における遺伝子の発現を、対照実験動物由来のCNS試料における遺伝子の発現と比較する段階;および
対照実験動物由来のCNS試料と比較して、試験実験動物由来のCNS試料において差次的に発現される遺伝子のヒト相同物を疾病監視(disease surveillance)遺伝子として選択する段階
を含む、ヒトの非中枢神経系(非CNS)疾患の疾病監視遺伝子を同定する方法。
【請求項32】
非CNS新生物が化学的または放射線突然変異誘発によって誘導される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
非CNS新生物が、実験動物に腫瘍細胞を投与することによって誘導される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
実験動物が、関節リウマチ、糖尿病、喘息、肥満または糖尿病の動物モデルである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
実験動物がマウスまたはヒト以外の霊長類である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
被験者が、画像分析で評価されたとき、疾患の臨床徴候が欠如している、請求項1〜35のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項37】
被験者が疾患の家族歴を有する、請求項1〜36のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項38】
被験者が、疾患を発症するリスクが高いことに関連する遺伝子のキャリアである、請求項1〜37のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項39】
被験者が、BRCA1、BRCA2、hMSH2、hMLHlまたはhMSH6遺伝子のキャリアである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
特定の非CNS疾患が認められない対照哺乳類を得る段階;
特定の非CNS疾患を有する対照哺乳類と同じ種類の罹患哺乳類を得る段階;
対照哺乳類由来の第1のCNS試料、および罹患哺乳類由来の第2のCNS試料を得る段階;
第1のCNS試料由来の第1の遺伝子発現プロファイル、および第2のCNS試料由来の第2の遺伝子発現プロファイルを生成する段階;
第1および第2の遺伝子発現プロファイルを比較する段階;
差次的に発現される第2の遺伝子発現プロファイルから遺伝子セットを選択する段階;ならびに
選択した遺伝子の発現データから基準遺伝子発現プロファイルを調整する段階:
を含む、特定の非CNS疾患を有する哺乳類のCNS試料において差次的に発現される1つ以上の遺伝子の基準遺伝子発現プロファイルを生成する方法。
【請求項41】
5つ以上の遺伝子の発現データを含み、ここで5つ以上の遺伝子の各々が、特定の非CNS疾患が認められない哺乳類の同じ5つ以上の遺伝子と比較して、特定の非CNS疾患を有する哺乳類の中枢神経系(CNS)試料において差次的に発現される、哺乳類における非中枢神経系(非CNS)疾患の存在に対応する基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項42】
基準遺伝子発現プロファイルが、乳癌は図29-1〜29-6;図32-1〜32-6;もしくは図35-1〜35-6;結腸癌は図30-1〜30-6;図33-1〜33-6;もしくは図36-1〜36-6;肺癌は図31-1〜31-6;34-1〜34-6;もしくは37-1〜37-6;関節炎は図50;または喘息は図54の1つ以上に記載されている遺伝子のいずれかから選択される5つ以上の遺伝子の発現データを含む、請求項41記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項43】
5つ以上の遺伝子が、以下の遺伝子群:
乳癌: Nedd8(図29-1)、Col4a3bp(図29-2)、Bgn(図29-4)、Sox5(図29-5)、Slc38a4 (図32-1)、Toml(図32-2)、Calr(図32-4)、Itgae(図32-5)、Ttrap(図35-1)、P exllb (図35-2)、Sema7a(図35-4)およびStam2(図35-5);
結腸癌: Nmb(図30-1)、Ryr2(図30-2)、Trfr (図30-4)、Mfap5(図30-5)、Prrg2 (図33-1)、Faim (図33-2)、Mgrnl(図33-4)、Stch (図33-5)、Lhb(図36-1)、Prm3(図36-2)、Crry(図36-4)およびTimp4(図36-5);
肺癌: Nmb(図31-1)、Pcdh8(図31-2)、Rock2(図31-4)、Angptl3(図31-5)、Sqstml(図34-1)、Kcnip2(図34-2)、Oxt(図34-4)、Myh4(図34-5)、Encl(図37-1)、Gsgl(図37-2)、Srr(図37-4)およびNdph(図37-5);
関節炎: Bc121(図51A)、P2rxl(図51B)、Pafahlbl(図51B)、Kcna3(図51C)、Taflb(図51C)、Slc38a3(図51D)、Hprt(図52A)、C1d(図52B)、Carll(図52D)、Dusp3(図52D)、Gabrr2(図53C)およびAatk(図53D);ならびに
喘息:Rasa3(図55B)、Tnk2(図55B)、H28(図55C)、Diap2(図55C)、Lgals6 (図56A)、Reck (図56A)、Whrn (図56A)、Stk22sl(図56B)、CD47 (図57A)、Jundl (図57A)、Cstb(図57B)およびDesrt(図57B)
のいずれか1つから選択される、請求項41記載の基準遺伝子発現プロファイル。
【請求項44】
請求項3または21記載の方法により、非中枢神経系(非CNS)疾患を診断する段階;および
疾患の治療剤を被験者に投与する段階:
を含む、被験者を治療する方法。
【請求項45】
治療剤が化学療法剤である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
化学療法剤が、抗チューブリン/抗微小管薬、トポイソメラーゼI阻害剤、代謝拮抗剤およびアルキル化剤からなる群より選択される、請求項45記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図29−1】
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【図29−2】
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【図29−3】
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【図29−4】
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【図29−5】
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【図29−6】
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【図30A】
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【図30B】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図30−3】
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【図30−4】
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【図30−5】
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【図30−6】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31−1】
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【図31−2】
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【図31−3】
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【図31−4】
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【図31−5】
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【図31−6】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図32−3】
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【図32−4】
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【図32−5】
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【図32−6】
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【図33】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図33−3】
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【図33−4】
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【図33−5】
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【図33−6】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34−1】
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【図34−2】
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【図34−3】
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【図34−4】
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【図34−5】
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【図34−6】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35−1】
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【図35−2】
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【図35−3】
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【図35−4】
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【図35−5】
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【図35−6】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36−1】
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【図36−2】
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【図36−3】
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【図36−4】
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【図36−5】
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【図36−6】
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【図37A】
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【図37B】
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【図37−1】
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【図37−2】
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【図37−3】
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【図37−4】
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【図37−5】
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【図37−6】
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【図38A】
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【図38B】
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【図39A】
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【図39B】
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【図40A】
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【図40B】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48A】
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【図48B】
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【図48C】
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【図49−1】
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【図49−2】
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【図50−1】
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【図50−2】
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【図50−3】
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【図50−4】
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【図50−5】
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【図50−6】
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【図50−7】
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【図50−8】
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【図50−9】
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【図50−10】
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【図50−11】
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【図50−12】
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【図51A】
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【図51B】
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【図51C】
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【図51D】
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【図52A】
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【図52B】
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【図52C】
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【図52D】
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【図53A】
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【図53B】
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【図53C】
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【図53D】
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【図54−1】
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【図54−2】
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【図54−3】
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【図54−4】
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【図54−5】
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【図54−6】
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【図54−7】
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【図55A】
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【図55B】
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【図55C】
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【図56A】
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【図56B】
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【図57A】
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【図57B】
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【図58】
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【図59−1】
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【図59−2】
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【図59−3】
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【図60】
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【図61−1】
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【図61−2】
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【公表番号】特表2007−531494(P2007−531494A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518833(P2006−518833)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021543
【国際公開番号】WO2005/007892
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506005156)ジェントロン リミテッド ライアビリティー カンパニー (2)
【Fターム(参考)】