COガスセンサ用の触媒、そのような触媒の製造方法、ペースト、COガスセンサ、およびCOガスセンサの製造方法
【課題】一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を示すCOガスセンサ用の触媒を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明では、金粒子と金属酸化物粒子とを含み、前記金粒子は、全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒が提供される。
【解決手段】本発明では、金粒子と金属酸化物粒子とを含み、前記金粒子は、全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒に関し、特に一酸化炭素(CO)ガスのような可燃性ガスを検出する可燃性ガスセンサ用の燃焼触媒に関する。また、本発明は、そのような触媒の製造方法、そのような触媒を含むペースト、およびそのような触媒を含む一酸化炭素(CO)ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素や一酸化炭素(CO)等の可燃性ガスを検出する可燃性ガスセンサとして、接触燃焼方式のガスセンサが知られている。
【0003】
接触燃焼方式の可燃性ガスセンサは、金のような貴金属と酸化物の複合体である、燃焼触媒と呼ばれる触媒で被覆された白金コイルが設置されたガス検知部を有する。センサの使用時には、この検知部において、例えば、センサ内に流入した一酸化炭素(CO)等の可燃性ガスが、触媒作用により空気中の酸素と反応し、酸化熱が発生する。またこれにより、白金コイルの温度が上昇する。従って、白金コイルの温度上昇による抵抗変化を検出信号として測定することにより、可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0004】
また、最近では、検知部に白金コイルの代わりに熱電変換素子を使用した、熱電タイプの可燃性ガスセンサが知られている。このタイプのガスセンサでは、熱電変換素子を用いて、触媒作用によって生じる可燃性ガスの燃焼による発熱を検出し、これを電圧信号に変換する。従って、電圧信号の出力により、可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0005】
そのような可燃性ガスセンサ用の燃焼触媒に関しては、その反応活性を高めるため、これまでに様々な報告がなされている。例えば、酸化チタンに3wt%の微細な金粒子を担持させることにより、反応活性の高い燃焼触媒を得ることができることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nishibori M.,Tajima K.,Shin W.,Izu N.,Itoh T.,Matsubara I.,Tsubota S.,J.Ceram.Soc.Jpn.,115(1),37−41,2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、可燃性ガスセンサの検出感度を高めるためには、測定対象ガスのみを選択的に検知する、いわゆる「選択性」が重要となる。例えば、一酸化炭素(CO)ガスセンサの場合、測定環境内に存在する妨害物質(例えば水素ガス)の影響を受けずに、一酸化炭素(CO)のみを選択的に検出することが必要となる。
【0008】
しかしながら、前述の非特許文献1に記載の燃焼触媒は、一酸化炭素(CO)ガスに対して、良好な反応活性は示すものの、水素ガスの存在環境下では、一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性が低下するという問題があることが指摘されている。従って、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い反応活性を示すとともに、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を有する燃焼触媒の開発が要望されている。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を示すCOガスセンサ用の触媒を提供することを目的とする。また、そのような触媒の製造方法、そのような触媒を含むペースト、そのような触媒を含むCOガスセンサ、およびCOガスセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、
金粒子と金属酸化物粒子とを含み、
前記金粒子は、全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒が提供される。
【0011】
当該触媒において、前記金粒子は、10nm〜20nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0012】
また当該触媒において、前記金属酸化物粒子は、20nm〜100nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0013】
また当該触媒において、前記金属酸化物粒子は、酸化コバルト、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化珪素からなる群から選定された少なくとも一つの材料を含んでも良い。
【0014】
また、本発明では、金粒子と金属酸化物粒子とを含む、COガスセンサ用の触媒の製造方法であって、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップと、
を有することを特徴とするCOガスセンサ用の触媒の製造方法が提供される。
【0015】
ここで、当該方法において、前記pHは、6.5〜7.5の範囲であっても良い。
【0016】
また当該方法において、前記金コロイド溶液に含まれる金粒子は、1nm〜5nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0017】
また当該方法において、前記金属酸化物粒子は、5nm〜30nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0018】
さらに、前述のCOガスセンサ用の触媒の製造方法は、前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップの後、
得られた焼成物を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有しても良い。
【0019】
また、前記熱処理するステップは、10分から24時間の範囲で行われても良い。
【0020】
また、前記熱処理するステップは、1vol%以下の水素を含む雰囲気下で実施されても良い。
【0021】
また本発明では、マトリクス媒体と、触媒とを含むペーストであって、
前記触媒は、前述の特徴を有する本発明による触媒であることを特徴とするペーストが提供される。
【0022】
当該ペーストにおいて、前記マトリクス媒体は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、およびイソプロピルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂、およびポリビニルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの有機バインダとを含んでも良い。
【0023】
また、本発明では、燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサであって、
前記燃焼触媒は、前述の特徴を有する触媒であることを特徴とするCOガスセンサが提供される。
【0024】
ここで、少なくとも前記燃焼触媒は、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で予め熱処理されていても良い。
【0025】
また、本発明では、燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサの製造方法であって、
前記燃焼触媒は、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる燃焼触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成して、燃焼触媒を得るステップと、
を有する方法により製造されることを特徴とするCOガスセンサの製造方法が提供される。
【0026】
ここで、COガスセンサの製造方法は、さらに、前記得られた燃焼触媒を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有しても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を示すCOガスセンサ用の触媒が提供される。また、そのような触媒の製造方法、そのような触媒を含むペースト、そのような触媒を含むCOガスセンサ、およびCOガスセンサの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による触媒の一形態を示すTEM写真である。
【図2】本発明による触媒を含むセンササンプルの、1vol%CO+空気(a)または1vol%水素+空気(b)中における出力電圧の一例を示したグラフである。
【図3】本発明による触媒を製造する際のフローチャートである。
【図4】本発明によるCOガスセンサの一例の概略的な構成図である。
【図5】各温度における実施例1に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図6】各温度における実施例1に係るサンプルの、1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図7】各温度における実施例1に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図8】各温度における実施例2に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図9】各温度における実施例2に係るサンプルの、1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図10】各温度における実施例2に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図11】150℃で予備熱処理されたサンプルAの、各温度における1vol%一酸化炭素(CO)+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0030】
金粒子と酸化物粒子とを含む触媒(以下、「金−酸化物触媒」と称する)において、この触媒が一酸化炭素(CO)ガスに対して高い反応活性を示すためには、金粒子が高分散状態にあることが必要である。そのため、従来より、この触媒に含まれる金粒子には、比較的容易に高分散状態を得ることができるよう、極めて微細なものが積極的に使用されてきた。例えば、金粒子の典型的な粒径は、最大でも数nm程度である。また、これに付随して、燃焼触媒に含まれる金の量は、最大でも数wt%が適当であるとされてきた。これは、燃焼触媒中により多くの金を存在させた場合、金粒子同士が凝集しやすくなり、粒成長が生じる可能性が高くなるためである。このような金の粒成長が生じると、微細な金粒子を触媒中に分散させる効果がなくなってしまう。
【0031】
しかしながら、本願発明者等は、鋭意研究開発を推進した結果、従来のような金の含有量が少ない燃焼触媒の場合、妨害物質(例えば水素ガス)が存在する環境下では、一酸化炭素(CO)ガスに対する十分な選択性が得られないことを見出した(例えば、前述の非特許文献1)。また、本願発明者等は、この原因は、従来のような金の含有量が少ない燃焼触媒では、一酸化炭素(CO)ガスに対する活性サイトが十分に確保されないためであると考えるに至った。そして、燃焼触媒の一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性を向上させるためには、従来の考えとは逆に、触媒中により積極的に金の粒子を含有させ、一酸化炭素(CO)ガスに対する反応活性サイトを増やすことが有効であることを見出し、本願発明に至った。
【0032】
すなわち、本発明では、金粒子と金属酸化物粒子とを含み、金粒子が全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒が提供される。なお、金粒子の最大量を触媒全体に対して40wt%未満としたのは、実験の結果、触媒中にあまりに多くの金粒子を含有させると、金粒子同士が容易に凝集するようになり、触媒の選択性が低下することが明らかとなったためである。(一方、金粒子の最小量を触媒全体に対して10wt%以上としたのは、金粒子の量がこれよりも少ないと、従来の燃焼触媒のように、一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性が悪くなるからである。)
【0033】
特に、金粒子は、全体重量に対して10wt%〜35wt%含まれていることが好ましく、10wt%〜20wt%の範囲で含まれていることがより好ましい。
【0034】
図1には、本発明による触媒のTEM写真を示す。粒径が10〜20nm程度で、黒色に見える小さな粒子が金粒子であり、粒径が100nm程度のより大きなグレーの粒子が金属酸化物粒子である。この写真から、金粒子は、金属酸化物粒子の周囲に比較的均一に分散されていることがわかる。この写真の例では、金属酸化物は、酸化コバルト(Co3O4)であり、金の含有量は、触媒全体に対して10wt%である。
【0035】
このような触媒では、一酸化炭素(CO)ガスに対する反応活性サイトを多数提供することができるため、高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性を有意に向上させることができる。
【0036】
図2には、図1に示す触媒を含むセンササンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性の一例を示す。触媒には、10wt%の金粒子および酸化コバルトからなるものを使用した。図2(a)は、1vol%のCOを含む乾燥空気中での出力電圧の測定結果であり、図2(b)は、1vol%の水素を含む乾燥空気中での出力電圧の測定結果である。測定温度は、いずれも220℃である。
【0037】
この結果から、本発明による触媒は、COガスに対して良好な感度を有することがわかる。また、測定結果において、COガスに比べて水素に対する感度は、十分に低くなっており、本発明による触媒は、COガスに対して有意な選択性を有することがわかる。
【0038】
また、本発明による触媒は、COガスセンサに適用した場合、比較的劣化が生じ難いという追加の特徴を有する。従来のような粒径が数nm程度の微細な金粒子を低含有量で担持させた触媒では、金粒子の絶対量が少ないため、金粒子が比較的短時間で劣化されてしまい、長期安定性に劣るという問題がある。しかしながら、本発明による触媒には、比較的多くの金粒子が含まれているため、相対的に劣化の速度が緩和され、より長時間安定に使用することができる。
【0039】
さらに、本発明による触媒は、初期安定性に優れるという追加の特徴を有する。すなわち、従来のような粒径が数nm程度の微細な金粒子を低含有量で担持させた触媒では、金粒子がより活性な状態にあるため、金粒子が他の位置に移動しやすいという傾向がある。従って、従来の触媒を燃焼触媒として含むセンサでは、使用開始直後には(金粒子の配置が安定化されるまで)、測定値が不安定になる可能性がある。一方、本発明による触媒は、比較的高い含有量の金粒子が含まれているため、金粒子の移動は、比較的生じ難く、そのような触媒を含むセンサでは、使用初期からセンサを安定的に使用することができる。
【0040】
なお、本発明による触媒において、金の平均粒径は、10nm〜20nmの範囲であることが好ましい。ここで本願では、金の「平均粒径」は、以下の方法により測定した。まず50000〜200000倍程度の倍率で、微粒子の電子顕微鏡(TEM)写真を撮影する。写真中において、寸法および形状が最も普遍的な金粒子10個を選定し、それぞれの直径を測定する。得られた10個の直径データを平均して、これを金の平均粒径とした。
【0041】
本発明による触媒において、金粒子の担持体となる金属酸化物の平均粒径は、金粒子よりも大きければ特に限られないが、例えば、20nm〜100nmの範囲であることが好ましい。金属酸化物の平均粒径が100nmを超えると、小さな金粒子を均一に分散させることが難しくなる可能性があるからである。ただし、金属酸化物の周囲に金粒子を均一に分散させる技術が存在する場合は、金属酸化物の平均粒径は、100nmを超えても良い。なお本願では、金属酸化物の「平均粒径」は、前述の金の場合と同様に測定した。
【0042】
本発明による触媒において、金属酸化物の材質は、特に限られない。金属酸化物は、例えば、酸化コバルト、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、またはこれらの混合物であっても良い。
【0043】
(本発明による触媒の製造方法)
次に、前述のような特徴を有する本発明による触媒の製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す方法は、一例に過ぎず、本発明による触媒を別の方法で製造しても良いことは、当業者には明らかであろう。
【0044】
図3には、本発明による触媒の製造フローの一例を示す。本発明による触媒の製造方法は、金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップ(ステップS110)と、最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップ(ステップS120)と、前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップ(ステップS130)と、前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップ(ステップS140)と、を含む。
【0045】
前述のような従来の燃焼触媒では、製造の際に、金の粒径を数nmの寸法に制御する必要があり、複雑で緻密な制御が必要となる。また、そのような微小な金粒子を、酸化物担持体に対して均一に分散させることは、極めて難しい。例えば、粒径が数nmの金粒子は、活性が極めて高いため、担持体に分散させる際に、金粒子同士が容易に凝集してしまうという問題が生じ得る。
【0046】
これに対して、本発明による触媒の製造方法には、従来のような複雑で高度な制御が必要な工程は、含まれてはいない。従って、本発明による方法では、金−酸化物触媒を比較的簡単に製造することができる。
【0047】
以下、本発明による触媒の製造方法の各ステップについて、より詳しく説明する。
【0048】
(ステップS110)
まずステップS110では、原料として、金のコロイド溶液と、金属酸化物粒子とが準備される。
【0049】
金のコロイド溶液には、公知の方法で調製されたいかなるものを使用しても良い。金のコロイド溶液は、例えば、メルカプトこはく酸タイプのものであっても良い。コロイド溶液中に含まれる金粒子は、例えば、1nm〜10nmの範囲の平均粒径を有し、平均粒径は、例えば5nmである。また、コロイド溶液中に含まれる金粒子の濃度は、特に限られないが、金粒子の濃度は、例えば、2wt%である。
【0050】
金属酸化物粒子の材料は、特に限られず、前述のような材料を使用しても良い。また、金酸化物粒子の平均粒径は、特に限られないが、あまり大きな平均粒径のものを使用すると、最終的に得られる担持体酸化物の粒径が極端に大きくなる可能性があるため、平均粒径は、50nm以下が好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、例えば、10nm〜30nmの範囲である。
【0051】
(ステップS120)
次に、ステップS120では、前述の金粒子と、金属酸化物粒子とを含む水溶液が調製される。これは、例えば、蒸留水を含む容器(例えばビーカー等)中に、前述の金粒子および金属酸化物粒子を添加することにより行われる。なお、この際には、最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とが混合される。
【0052】
(ステップS130)
次に、ステップS130では、金粒子および金属酸化物粒子を含む水溶液が加熱され、水分が蒸発される。加熱温度は、50℃〜90℃の範囲であることが好ましく、例えば70℃である。
【0053】
なお、この工程では、水分の蒸発の間、水溶液のpHがモニターされ、pHは、所定の範囲に維持されるように調整される。例えば、水溶液のpHは、7前後(例えば、pH6.5〜7.5)に維持される。pHの調整には、各種酸およびアルカリが使用される。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムまたはアンモニア溶液が使用される。
【0054】
水溶液のpHを制御するのは、水の蒸発過程での金の凝集を抑制するためである。例えば、メルカプトこはく酸タイプの金コロイド溶液を使用した場合、水溶液のpHが6.5〜7.5の範囲を著しく外れた場合、金の凝集が促進され、最終的に得られる触媒粉末中の金の分散性が悪くなる可能性が高くなる。
【0055】
加熱により、ほとんどの水分が蒸発した後、容器内の凝固物を完全に乾燥させる。これは、例えば、容器を100℃に設定した乾燥炉に保持することにより行われても良い。
【0056】
その後、容器から乾燥した凝固物が回収される。
【0057】
(ステップS140)
次に、回収された凝固物が大気炉内で焼成される。焼成温度は、300℃〜400℃の範囲であることが好ましい。焼成時間は、焼成温度にもよるが、おおよそ30分〜5時間程度である。
【0058】
以上の工程を経て、金粒子と金属酸化物粒子とを含み、金が全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれている、粉末状の触媒が得られる。
【0059】
このように、本発明による方法では、触媒を製造する際に、従来のような複雑で高精度の制御を行う必要はない。従って、本発明による方法では、本発明による触媒を比較的簡単に製造することができる。
【0060】
(本発明の第2の態様)
本発明では、前述の特徴を有する触媒を含むペーストを提供することも可能である。そのようなペーストは、例えば、一酸化炭素(CO)ガスセンサの検知部に、燃焼触媒を設置する際に使用することができる。以下、本発明によるペーストの調製方法の一例について説明する。
【0061】
本発明によるペーストは、前述の触媒を、ペーストを構成するマトリクス媒体に添加することにより得ることができる。添加する触媒の形態は、特に限られず、触媒の形態は、粉末状、粒子状、または塊状であっても良い。
【0062】
マトリクス媒体は、触媒を分散することが可能である限り、特に限られない。マトリクス媒体は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、およびイソプロピルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂、およびポリビニルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの有機バインダとを含んでも良い。この場合、溶媒と有機バインダの混合比は特に限られず、両材料の組み合わせに応じて、様々な混合比を採用することができる。マトリクス媒体は、例えば、テルピネオールにエチルセルロースを混合したものであっても良い。この場合、テルピネオールとエチルセルロースの混合比は、特に限られず、全マトリクス媒体に対するエチルセルロースの重量比は、例えば、0〜10wt%の範囲(例えば5wt%)であっても良い。
【0063】
また、マトリクス媒体と触媒の混合比は、特に限られない。マトリクス媒体と触媒の重量比は、例えば、1:1〜4:1(例えば2:1)であっても良い。
【0064】
なお、マトリクス媒体は、400℃以下の温度で焼成することにより、焼失する性質を有することが好ましい。焼失する温度が400℃より高いマトリクス媒体を使用すると、そのようなペーストを用いてセンサの検知部を製作する場合、すなわちペーストをセンサの検知部に塗布してこれを焼成する際に、他の構成部材に熱影響を及ぼす恐れがあるからである。ただし、そのような構成部材が、より高い耐熱温度を有する場合、焼失する温度が400℃より高いマトリクス媒体を使用しても良いことは、明らかであろう。
【0065】
(本発明の第3の態様)
本発明の別の態様では、前述の特徴を有する触媒を検知部に備える一酸化炭素(CO)ガスセンサが提供される。
【0066】
図4には、そのようなCOガスセンサの一例を模式的に示す。図4(a)は、COガスセンサの概略的な上面図であり、図4(b)は、図(a)のA−A線での模式的な断面図である。
【0067】
COガスセンサ400は、基板410と、支持膜413と、ヒータ415と、熱電膜420と、絶縁層430と、燃焼触媒440とを有する。
【0068】
基板410は、例えば、シリコンで構成される。基板410の厚さは、特に限られないが、例えば350nmである。なお、基板410は、支持膜413が設置された部分が切除されており、支持膜413は、基板410の側から見た場合、暴露されている。支持膜413は、例えば窒化珪素等で形成される。実際には、シリコンのような基板が窒化処理され、表面に窒化珪素が形成された後に、基板を除去することにより、図に示すような構成が得られる。
【0069】
支持膜413は、その上部に配置されるヒータ415および熱電膜420等を支持する役割を有する。支持膜413の厚さは、特に限られないが、例えば、280nm程度である。ヒータ415は、燃焼触媒440近傍を加熱し、燃焼触媒440でのCOガスの燃焼反応を助長する役割を有する。なお、図に示されたヒータ415の配置は、一例であって、ヒータ415は、いかなる配置パターンで、支持膜413上に配置されても良い。
【0070】
熱電膜420は、燃焼触媒440により、一酸化炭素(CO)ガスが酸化された際に生じる熱を電気信号に変換する役割を有する。熱電膜420は、例えば、シリコンゲルマニウム等で構成される。図の例では、熱電膜420の厚さは、約450nmである。なお、図の例では、熱電膜420は、出力電圧(または出力電流)を取り出すための電極を兼ねているため、別個の電極は、示されていない。しかしながら、熱電膜420とは別に、熱電膜に接続された電極を配置しても良いことは明らかであろう。
【0071】
燃焼触媒440は、前述の特徴を有する本発明による触媒で構成される。燃焼触媒440は、例えば、前述の本発明によるペーストを塗布、固化して構成される。燃焼触媒440の厚さは、例えば、10μm程度である。
【0072】
絶縁層430は、燃焼触媒440と熱電膜420とが直接接触することを防止する役割を有し、例えば二酸化珪素で構成される。絶縁層430の厚さは、例えば300nm程度である。
【0073】
なお本願では、COガスセンサ400のうち、燃焼触媒440を除く部分を、特に「熱電デバイス」と称する場合がある。
【0074】
以上の構成は、一例であって、他の様々な構成のCOガスセンサを使用し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0075】
このような本発明によるCOガスセンサでは、前述のような本発明による触媒の有意な特徴により、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性と、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い選択性とが得られる。また、従来の燃焼触媒に比べて、劣化が生じにくいため、長期にわたって、安定的に使用することができる。
【0076】
なお、COガスセンサを用いて、実際にある環境のCOガス濃度を測定する場合、そのようなCOガスセンサは、COガスに対する応答速度が大きく、できるだけ速やかに測定結果を表示できるものであることが望ましい。従って、本発明による触媒をCOガスセンサの燃焼触媒として適用する場合、触媒の清浄度を高める処置を予め行っておくことが好ましい。これにより、触媒の活性がより一層向上し、COガスに対する応答速度を高めることができる。
【0077】
例えば、触媒に対して以下のような熱処理(以下、「予備熱処理」ともいう)を行うことにより、触媒表面に付着残留している酸化物、炭化物等の不純物を除去し、触媒の清浄度を高めることができる。
【0078】
「予備熱処理」は、水素と酸素を含む雰囲気で行われる。水素と酸素の両方を含む雰囲気で処理を行うことにより、触媒表面に不純物として存在する炭化物等を燃焼除去させることができる。
【0079】
雰囲気中の酸素の濃度は、特に限られないが、例えば1vol%〜99vol%の範囲である。例えば、空気を雰囲気ガスとして使用する場合、酸素の濃度は、約21vol%となる。一方、雰囲気中の水素の濃度は、空気を雰囲気ガスとして使用する場合、4vol%未満(例えば1vol%)である必要がある。水素の爆発下限界は、空気中で4vol%であるため、水素の濃度を4vol%よりも高くすると、安全上問題がある。なお、大気雰囲気とは異なる、ある濃度の酸素を含む雰囲気を選定する場合、水素の濃度は、その雰囲気に含まれる酸素体積に対して、1/5未満とする必要がある。
【0080】
通常の場合、予備熱処理は、150℃〜250℃程度の温度で、本発明による触媒を所定の時間保持することにより行われる。予備熱処理の時間は、例えば10分〜24時間の範囲であり、例えば1時間である。
【0081】
なお、このような予備熱処理は、触媒の状態で実施しても良いが、該触媒をCOガスセンサに適用してから、(例えばCOガスセンサの使用直前等に)実施しても良いことは当業者には明らかである。
【実施例】
【0082】
以下、本発明による実施例について説明する。
【0083】
(実施例1)
本発明による金−酸化物触媒を用いてCOガスセンササンプルを作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0084】
(金−酸化物触媒の調製)
以下の方法により、10wt%金−酸化コバルトからなる触媒を調製した。
【0085】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)2.75gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.5g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、10wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0086】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、以下のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出した。
d=kα/βcosθ 式(1)
ここで、dは、結晶粒径であり、λはX線の波長、βは半値幅、θは回折角である。また、kは、定数でk=0.9である。
【0087】
式(1)から、金の粒径は、15nm程度と見積もられた。
【0088】
(ペーストの調製)
テルピネオールにエチルセルロースを10wt%添加して作製した分散媒体と、前述の方法で調製した触媒粉末とを混合して、ペーストを調製した。分散媒体と触媒の混合重量比は、2:1とした。
【0089】
(COガスセンササンプルの作製)
まず、注射器を用いて、前述のペーストを熱電デバイス(基板のサイズ:縦4mm×横4mm)上に塗布した(塗布量0.003μL)。次に、この熱電デバイスをマッフル炉に入れ、400℃で2時間保持した。これにより、COガスセンササンプル(以下、「実施例1に係るサンプル」と称する)が得られた。
【0090】
なお、熱電デバイスの構成は、表1に示した通りである。
【0091】
【表1】
【0092】
(サンプルの特性評価)
前述の方法で作製した実施例1に係るサンプルを用いて、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。評価は、以下のようにして行った。
【0093】
空気が充填されたガスタンクAと、1vol%の一酸化炭素(CO)を含む乾燥空気ガス(以下、「混合ガス1」と称する)が充填されたガスタンクBと、1vol%の水素を含む乾燥空気ガス(以下、「混合ガス2」と称する)が充填されたガスタンクCと、1vol%の一酸化炭素(CO)および1vol%の水素を含む乾燥空気ガス(以下、「混合ガス3」と称する)が充填されたガスタンクDとを準備する。
【0094】
まず、実施例1に係るサンプルを所定の温度(200℃〜240℃)まで昇温し、その温度に維持する。この状態で、ガスタンクAから、実施例1に係るサンプルに空気を供給し(流量200ccm)、サンプルから出力される電圧値の測定を開始する。出力電圧がほぼ0(ゼロ)であることが確認された後(おおよそ混合ガスの供給から約40秒後)、ガスタンクAからの空気供給を停止し、ガスタンクBから実施例1に係るサンプルに、混合ガス1を供給する。さらに、約200秒経過後に、ガスタンクBからサンプルへの混合ガス1の供給を停止し、再度ガスタンクAからサンプルに空気を供給する。この間のサンプルから得られる出力電圧の経時変化を測定する。
【0095】
同様の測定を、混合ガス2、3についても実施し、実施例1に係るサンプルにおける、それぞれの供給ガスに対する検出特性を評価した。
【0096】
図5〜7には、測定結果を示す。各図において、横軸は、経過時間であり、縦軸は、サンプルからの出力電圧である。また図5は、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)において得られた結果であり、図6は、混合ガス2(1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果であり、図7は、混合ガス3(1vol%CO+1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果である。
【0097】
図5から、200℃〜240℃の各温度において、混合ガス1を供給した期間(約30秒〜約200秒)の間、ほぼ一定の出力電圧が得られていることがわかる。特に、サンプルの温度が240℃の場合、出力される電圧は、約2390mVに達した。一方、混合ガス2の場合は、図6に示すように、いずれの温度においても、サンプルからの出力電圧は、極めて小さく、最大でも0.5mV程度であった(温度240℃の場合)。また一酸化炭素と水素の両方を含む混合ガス3の場合、サンプルから出力される電圧は、図7に示すように、混合ガス1において得られた出力電圧(すなわち図5に示す出力電圧)とほぼ等しくなった。
【0098】
表2には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(図5のプラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(図6のプラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0099】
【表2】
【0100】
これらの結果から、200℃〜240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、4.2〜12.6の範囲となっており、実施例1に係るサンプルでは、COガスに対して、高い選択性を有することがわかる。
【0101】
(実施例2)
本発明による金−酸化物触媒を用いてCOガスセンササンプルを作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。
【0102】
以下の方法により、20wt%金−酸化コバルトからなる触媒を調製した。
【0103】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)6.25gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.5g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
【0104】
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、20wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0105】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、前述のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出したところ、金の粒径は、18nm程度と見積もられた。
【0106】
(ペーストの調製)
テルピネオールにエチルセルロースを10wt%添加して作製した分散媒体と、前述の方法で調製した20wt%金−酸化コバルト触媒粉末とを混合して、ペーストを調製した。分散媒体と触媒の混合重量比は、2:1とした。
【0107】
(COガスセンササンプルの作製)
まず、注射器を用いて、前述のペーストを実施例1と同じ構成の熱電デバイス上に塗布した(塗布量0.003μL)。次に、この熱電デバイスをマッフル炉に入れ、300℃で2時間保持した。これにより、COガスセンササンプル(以下、「実施例2に係るサンプル」と称する)が得られた。
【0108】
(サンプルの特性評価)
作製した実施例2に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0109】
図8〜10には、測定結果を示す。各図において、横軸は、経過時間であり、縦軸は、サンプルから出力された電圧値である。また図8は、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)において得られた結果であり、図9は、混合ガス2(1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果であり、図10は、混合ガス3(1vol%CO+1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果である。
【0110】
図8から、200℃〜240℃の各温度において、混合ガス1を供給した期間(約30秒〜約200秒の間)、ほぼ一定の出力電圧が得られていることがわかる。特に、サンプルの温度が240℃の場合、出力される電圧は、約3310mVに達した。一方、混合ガス2の場合は、図9に示すように、いずれの温度においても、サンプルからの出力電圧は、極めて小さく、最大でも0.5mV未満であった(温度240℃の場合)。また一酸化炭素と水素の両方を含む混合ガス3の場合、サンプルから出力される電圧は、図10に示すように、混合ガス1において得られた出力電圧(すなわち図5に示す出力電圧)とほぼ等しくなった。
【0111】
表3には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(図8のプラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(図9のプラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0112】
【表3】
【0113】
これらの結果から、200℃〜240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、8.5〜9.7の範囲となっており、実施例2に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を有することがわかる。
【0114】
(比較例1)
従来の金−酸化物触媒を用いてCOガスセンササンプルを作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。
【0115】
以下の方法により、3wt%金−酸化チタンからなる触媒を調製した。
【0116】
まず、蒸留水400mlを容器に入れ、この中に、塩化金(III)酸4水和物を0.125g添加し、ホットスターラーを用いて温度70℃、回転速度100rpmで加熱撹拌しながら溶解した。さらに、この混合溶液を70℃に保持し、100rpmで撹拌した状態のまま、pH試験紙を用いて混合溶液のpHをモニタリングし、混合溶液のpHを7前後に調整した。pHの調整には、1Nの水酸化ナトリウム溶液を使用した。混合溶液のpHが7になってから、混合溶液を1時間程度保持した後、酸化チタンを2g添加し、250rpmで撹拌した。さらに、この混合溶液を、70℃、250rpmで1時間加熱撹拌した後、加熱撹拌を止め、室温まで放冷した。
【0117】
室温の混合溶液を6000rpmで10分間、遠心分離器で処理した後、混合溶液から上澄み溶液を分離した。残った固形分に蒸留水を加えて、再度、この溶液のpHをモニタリングし、溶液のpHを7前後に調整した。さらに溶液を6000rpmで10分間、遠心分離器で処理した後、溶液から上澄み溶液を分離した。この操作を、固形分に蒸留水を加えたときの溶液のpHが、約7.0になるまで繰り返した。
【0118】
次に、凝固物を回収し、これを100℃に設定した乾燥機に入れ、12時間以上保持することにより、凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を、容器から取り出し、これをマッフル炉に入れ、400℃で4時間保持した。この処理により、3wt%金−酸化チタンからなる触媒の粉末が得られた。
【0119】
(ペーストの調整)
テルピネオールにエチルセルロースを10wt%添加して作製した分散媒体と、前述の方法で調製した3wt%金−酸化チタン触媒の粉末とを混合して、ペーストを調製した。分散媒体と、触媒粉末の重量混合比は、4:1とした。
【0120】
(COガスセンササンプルの作製)
まず、注射器を用いて、前述のペーストを実施例1と同じ構成の熱電デバイス上に塗布した(塗布量0.003μL)。次に、この熱電デバイスをマッフル炉に入れ、300℃で2時間保持した。これにより、COガスセンササンプル(以下、「比較例1に係るサンプル」と称する)が得られた。
【0121】
(サンプルの特性評価)
作製した比較例1に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0122】
表4には、150℃および200℃における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0123】
【表4】
【0124】
これらの結果から、いずれの温度においても、比V1/V2は、1.7〜1.8の範囲となっており、比較例1に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を示さないことがわかった。
【0125】
(比較例2)
実施例2と同様の方法により、COガスセンササンプル(以下、「比較例2に係るサンプル」と称する)を作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。ただし、この比較例2では、COガスセンササンプルに使用する触媒には、以下の方法により調製した40wt%金−酸化コバルトからなる触媒を使用した。
【0126】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)20gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.6g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
【0127】
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、40wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0128】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、前述のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出したところ、金の粒径は、35nm程度と見積もられた。
【0129】
なお、比較例2に係るサンプルにおいて、その他の製作条件(ペーストの調製条件、熱電デバイスへのペーストの設置条件等)は、実施例2の場合と同様である。
【0130】
(サンプルの特性評価)
作製した比較例2に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0131】
表5には、200℃および240℃における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0132】
【表5】
【0133】
これらの結果から、比V1/V2は、0.6〜4.0の範囲となっており、比較例2に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を示さないことがわかった。
【0134】
(実施例3)
以下の方法により、30wt%金−酸化コバルトからなる触媒を調製した。
【0135】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)10.71gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.5g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、30wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0136】
次に、この触媒を用いて、前述の実施例2と同様の方法により、ペーストを調製し、さらにCOガスセンササンプルを作製した(以下、「実施例3に係るサンプル」と称する)。
【0137】
作製した実施例3に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0138】
表6には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0139】
【表6】
【0140】
これらの結果から、200℃〜240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、5.9〜6.5の範囲となっており、実施例3に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を有することがわかる。
【0141】
(比較例3)
実施例2と同様の方法により、COガスセンササンプル(以下、「比較例3に係るサンプル」と称する)を作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。ただし、この比較例3では、COガスセンササンプルに使用する触媒には、以下の方法により調製した3wt%金−酸化コバルトからなる触媒を使用した。
【0142】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)1.55gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を1.0g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
【0143】
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、3wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0144】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、前述のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出したところ、金の粒径は、10nm程度以下と見積もられた。
【0145】
次に、この触媒を用いて、前述の実施例2と同様の方法により、ペーストを調製し、さらにCOガスセンササンプルを作製した(以下、「比較例3に係るサンプル」と称する)。
【0146】
作製した比較例3に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。ただし、ここでは、試験温度は、220℃および240℃とした。
【0147】
表7には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0148】
【表7】
【0149】
これらの結果から、220℃、240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、2.7〜3.9の範囲となっており、比較例3に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を示さないことがわかる。
【0150】
(実施例4)
次に、COガスセンササンプルのCOに対する応答速度を検討した。
【0151】
まず、前述の実施例2の方法により製作したCOガスセンササンプルに対して、熱処理を実施した。熱処理雰囲気は、1vol%水素を含む空気雰囲気とした。また熱処理温度は、150℃、200℃、または250℃とし、熱処理時間(前述の各温度の保持時間)は、1時間とした。このような熱処理によって得られた各COガスセンササンプルをそれぞれ、サンプルA(150℃)、サンプルB(20℃)、およびサンプルC(250℃)と称する。
【0152】
熱処理後に得られた各COガスセンササンプルA〜Cを用いて、前述の実施例1の場合と同様の測定を行い、各サンプルA〜CのCOに対する応答速度を、熱処理を実施しないサンプル(すなわち実施例2に係るサンプル)の場合と比較評価した。
【0153】
図11には、一例として、サンプルA(熱処理温度150℃)において、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)中で得られた測定結果を示す。測定温度は、200℃、220℃および240℃である。
【0154】
また、表8には、サンプルA〜C、および実施例2に係るサンプルに対する、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)中での各測定温度(200℃、220℃および240℃)における応答速度をまとめて示す。応答速度は、「T90」および「T65」の2つの指標で表した。ここで、T90とは、出力電圧最大値(プラトー部の値)の90%の応答電圧に到達した時間を意味し、T65とは、出力電圧最大値(プラトー部の値)の65%の応答電圧に到達した時間を意味する。
【0155】
【表8】
【0156】
表8の結果から、熱処理を実施していない実施例2に係るサンプルでは、T65は、10〜11秒程度であるのに対して、サンプルA〜Cのいずれにおいても、T65は、2〜4秒の範囲となっていることがわかる。すなわち、COガスセンサ(正確にはCOガスセンサに含まれる触媒)に対して、150℃〜250℃の範囲で予め熱処理を実施することにより、熱処理を行わない場合に比べて、COガスに対する応答速度が向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、一酸化炭素(CO)濃度を測定するCOガスセンサ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0158】
400 COガスセンサ
413 支持膜
415 ヒータ
420 熱電膜
430 絶縁層
440 燃焼触媒。
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒に関し、特に一酸化炭素(CO)ガスのような可燃性ガスを検出する可燃性ガスセンサ用の燃焼触媒に関する。また、本発明は、そのような触媒の製造方法、そのような触媒を含むペースト、およびそのような触媒を含む一酸化炭素(CO)ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素や一酸化炭素(CO)等の可燃性ガスを検出する可燃性ガスセンサとして、接触燃焼方式のガスセンサが知られている。
【0003】
接触燃焼方式の可燃性ガスセンサは、金のような貴金属と酸化物の複合体である、燃焼触媒と呼ばれる触媒で被覆された白金コイルが設置されたガス検知部を有する。センサの使用時には、この検知部において、例えば、センサ内に流入した一酸化炭素(CO)等の可燃性ガスが、触媒作用により空気中の酸素と反応し、酸化熱が発生する。またこれにより、白金コイルの温度が上昇する。従って、白金コイルの温度上昇による抵抗変化を検出信号として測定することにより、可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0004】
また、最近では、検知部に白金コイルの代わりに熱電変換素子を使用した、熱電タイプの可燃性ガスセンサが知られている。このタイプのガスセンサでは、熱電変換素子を用いて、触媒作用によって生じる可燃性ガスの燃焼による発熱を検出し、これを電圧信号に変換する。従って、電圧信号の出力により、可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0005】
そのような可燃性ガスセンサ用の燃焼触媒に関しては、その反応活性を高めるため、これまでに様々な報告がなされている。例えば、酸化チタンに3wt%の微細な金粒子を担持させることにより、反応活性の高い燃焼触媒を得ることができることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nishibori M.,Tajima K.,Shin W.,Izu N.,Itoh T.,Matsubara I.,Tsubota S.,J.Ceram.Soc.Jpn.,115(1),37−41,2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、可燃性ガスセンサの検出感度を高めるためには、測定対象ガスのみを選択的に検知する、いわゆる「選択性」が重要となる。例えば、一酸化炭素(CO)ガスセンサの場合、測定環境内に存在する妨害物質(例えば水素ガス)の影響を受けずに、一酸化炭素(CO)のみを選択的に検出することが必要となる。
【0008】
しかしながら、前述の非特許文献1に記載の燃焼触媒は、一酸化炭素(CO)ガスに対して、良好な反応活性は示すものの、水素ガスの存在環境下では、一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性が低下するという問題があることが指摘されている。従って、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い反応活性を示すとともに、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を有する燃焼触媒の開発が要望されている。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を示すCOガスセンサ用の触媒を提供することを目的とする。また、そのような触媒の製造方法、そのような触媒を含むペースト、そのような触媒を含むCOガスセンサ、およびCOガスセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、
金粒子と金属酸化物粒子とを含み、
前記金粒子は、全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒が提供される。
【0011】
当該触媒において、前記金粒子は、10nm〜20nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0012】
また当該触媒において、前記金属酸化物粒子は、20nm〜100nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0013】
また当該触媒において、前記金属酸化物粒子は、酸化コバルト、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化珪素からなる群から選定された少なくとも一つの材料を含んでも良い。
【0014】
また、本発明では、金粒子と金属酸化物粒子とを含む、COガスセンサ用の触媒の製造方法であって、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップと、
を有することを特徴とするCOガスセンサ用の触媒の製造方法が提供される。
【0015】
ここで、当該方法において、前記pHは、6.5〜7.5の範囲であっても良い。
【0016】
また当該方法において、前記金コロイド溶液に含まれる金粒子は、1nm〜5nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0017】
また当該方法において、前記金属酸化物粒子は、5nm〜30nmの範囲の平均粒径を有しても良い。
【0018】
さらに、前述のCOガスセンサ用の触媒の製造方法は、前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップの後、
得られた焼成物を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有しても良い。
【0019】
また、前記熱処理するステップは、10分から24時間の範囲で行われても良い。
【0020】
また、前記熱処理するステップは、1vol%以下の水素を含む雰囲気下で実施されても良い。
【0021】
また本発明では、マトリクス媒体と、触媒とを含むペーストであって、
前記触媒は、前述の特徴を有する本発明による触媒であることを特徴とするペーストが提供される。
【0022】
当該ペーストにおいて、前記マトリクス媒体は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、およびイソプロピルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂、およびポリビニルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの有機バインダとを含んでも良い。
【0023】
また、本発明では、燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサであって、
前記燃焼触媒は、前述の特徴を有する触媒であることを特徴とするCOガスセンサが提供される。
【0024】
ここで、少なくとも前記燃焼触媒は、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で予め熱処理されていても良い。
【0025】
また、本発明では、燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサの製造方法であって、
前記燃焼触媒は、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる燃焼触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成して、燃焼触媒を得るステップと、
を有する方法により製造されることを特徴とするCOガスセンサの製造方法が提供される。
【0026】
ここで、COガスセンサの製造方法は、さらに、前記得られた燃焼触媒を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有しても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を示すCOガスセンサ用の触媒が提供される。また、そのような触媒の製造方法、そのような触媒を含むペースト、そのような触媒を含むCOガスセンサ、およびCOガスセンサの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による触媒の一形態を示すTEM写真である。
【図2】本発明による触媒を含むセンササンプルの、1vol%CO+空気(a)または1vol%水素+空気(b)中における出力電圧の一例を示したグラフである。
【図3】本発明による触媒を製造する際のフローチャートである。
【図4】本発明によるCOガスセンサの一例の概略的な構成図である。
【図5】各温度における実施例1に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図6】各温度における実施例1に係るサンプルの、1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図7】各温度における実施例1に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図8】各温度における実施例2に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図9】各温度における実施例2に係るサンプルの、1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図10】各温度における実施例2に係るサンプルの、1vol%一酸化炭素(CO)+1vol%水素+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【図11】150℃で予備熱処理されたサンプルAの、各温度における1vol%一酸化炭素(CO)+乾燥空気ガスに対する電圧信号の経時変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0030】
金粒子と酸化物粒子とを含む触媒(以下、「金−酸化物触媒」と称する)において、この触媒が一酸化炭素(CO)ガスに対して高い反応活性を示すためには、金粒子が高分散状態にあることが必要である。そのため、従来より、この触媒に含まれる金粒子には、比較的容易に高分散状態を得ることができるよう、極めて微細なものが積極的に使用されてきた。例えば、金粒子の典型的な粒径は、最大でも数nm程度である。また、これに付随して、燃焼触媒に含まれる金の量は、最大でも数wt%が適当であるとされてきた。これは、燃焼触媒中により多くの金を存在させた場合、金粒子同士が凝集しやすくなり、粒成長が生じる可能性が高くなるためである。このような金の粒成長が生じると、微細な金粒子を触媒中に分散させる効果がなくなってしまう。
【0031】
しかしながら、本願発明者等は、鋭意研究開発を推進した結果、従来のような金の含有量が少ない燃焼触媒の場合、妨害物質(例えば水素ガス)が存在する環境下では、一酸化炭素(CO)ガスに対する十分な選択性が得られないことを見出した(例えば、前述の非特許文献1)。また、本願発明者等は、この原因は、従来のような金の含有量が少ない燃焼触媒では、一酸化炭素(CO)ガスに対する活性サイトが十分に確保されないためであると考えるに至った。そして、燃焼触媒の一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性を向上させるためには、従来の考えとは逆に、触媒中により積極的に金の粒子を含有させ、一酸化炭素(CO)ガスに対する反応活性サイトを増やすことが有効であることを見出し、本願発明に至った。
【0032】
すなわち、本発明では、金粒子と金属酸化物粒子とを含み、金粒子が全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒が提供される。なお、金粒子の最大量を触媒全体に対して40wt%未満としたのは、実験の結果、触媒中にあまりに多くの金粒子を含有させると、金粒子同士が容易に凝集するようになり、触媒の選択性が低下することが明らかとなったためである。(一方、金粒子の最小量を触媒全体に対して10wt%以上としたのは、金粒子の量がこれよりも少ないと、従来の燃焼触媒のように、一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性が悪くなるからである。)
【0033】
特に、金粒子は、全体重量に対して10wt%〜35wt%含まれていることが好ましく、10wt%〜20wt%の範囲で含まれていることがより好ましい。
【0034】
図1には、本発明による触媒のTEM写真を示す。粒径が10〜20nm程度で、黒色に見える小さな粒子が金粒子であり、粒径が100nm程度のより大きなグレーの粒子が金属酸化物粒子である。この写真から、金粒子は、金属酸化物粒子の周囲に比較的均一に分散されていることがわかる。この写真の例では、金属酸化物は、酸化コバルト(Co3O4)であり、金の含有量は、触媒全体に対して10wt%である。
【0035】
このような触媒では、一酸化炭素(CO)ガスに対する反応活性サイトを多数提供することができるため、高い反応活性を維持したまま、一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性を有意に向上させることができる。
【0036】
図2には、図1に示す触媒を含むセンササンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する選択性の一例を示す。触媒には、10wt%の金粒子および酸化コバルトからなるものを使用した。図2(a)は、1vol%のCOを含む乾燥空気中での出力電圧の測定結果であり、図2(b)は、1vol%の水素を含む乾燥空気中での出力電圧の測定結果である。測定温度は、いずれも220℃である。
【0037】
この結果から、本発明による触媒は、COガスに対して良好な感度を有することがわかる。また、測定結果において、COガスに比べて水素に対する感度は、十分に低くなっており、本発明による触媒は、COガスに対して有意な選択性を有することがわかる。
【0038】
また、本発明による触媒は、COガスセンサに適用した場合、比較的劣化が生じ難いという追加の特徴を有する。従来のような粒径が数nm程度の微細な金粒子を低含有量で担持させた触媒では、金粒子の絶対量が少ないため、金粒子が比較的短時間で劣化されてしまい、長期安定性に劣るという問題がある。しかしながら、本発明による触媒には、比較的多くの金粒子が含まれているため、相対的に劣化の速度が緩和され、より長時間安定に使用することができる。
【0039】
さらに、本発明による触媒は、初期安定性に優れるという追加の特徴を有する。すなわち、従来のような粒径が数nm程度の微細な金粒子を低含有量で担持させた触媒では、金粒子がより活性な状態にあるため、金粒子が他の位置に移動しやすいという傾向がある。従って、従来の触媒を燃焼触媒として含むセンサでは、使用開始直後には(金粒子の配置が安定化されるまで)、測定値が不安定になる可能性がある。一方、本発明による触媒は、比較的高い含有量の金粒子が含まれているため、金粒子の移動は、比較的生じ難く、そのような触媒を含むセンサでは、使用初期からセンサを安定的に使用することができる。
【0040】
なお、本発明による触媒において、金の平均粒径は、10nm〜20nmの範囲であることが好ましい。ここで本願では、金の「平均粒径」は、以下の方法により測定した。まず50000〜200000倍程度の倍率で、微粒子の電子顕微鏡(TEM)写真を撮影する。写真中において、寸法および形状が最も普遍的な金粒子10個を選定し、それぞれの直径を測定する。得られた10個の直径データを平均して、これを金の平均粒径とした。
【0041】
本発明による触媒において、金粒子の担持体となる金属酸化物の平均粒径は、金粒子よりも大きければ特に限られないが、例えば、20nm〜100nmの範囲であることが好ましい。金属酸化物の平均粒径が100nmを超えると、小さな金粒子を均一に分散させることが難しくなる可能性があるからである。ただし、金属酸化物の周囲に金粒子を均一に分散させる技術が存在する場合は、金属酸化物の平均粒径は、100nmを超えても良い。なお本願では、金属酸化物の「平均粒径」は、前述の金の場合と同様に測定した。
【0042】
本発明による触媒において、金属酸化物の材質は、特に限られない。金属酸化物は、例えば、酸化コバルト、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、またはこれらの混合物であっても良い。
【0043】
(本発明による触媒の製造方法)
次に、前述のような特徴を有する本発明による触媒の製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す方法は、一例に過ぎず、本発明による触媒を別の方法で製造しても良いことは、当業者には明らかであろう。
【0044】
図3には、本発明による触媒の製造フローの一例を示す。本発明による触媒の製造方法は、金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップ(ステップS110)と、最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップ(ステップS120)と、前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップ(ステップS130)と、前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップ(ステップS140)と、を含む。
【0045】
前述のような従来の燃焼触媒では、製造の際に、金の粒径を数nmの寸法に制御する必要があり、複雑で緻密な制御が必要となる。また、そのような微小な金粒子を、酸化物担持体に対して均一に分散させることは、極めて難しい。例えば、粒径が数nmの金粒子は、活性が極めて高いため、担持体に分散させる際に、金粒子同士が容易に凝集してしまうという問題が生じ得る。
【0046】
これに対して、本発明による触媒の製造方法には、従来のような複雑で高度な制御が必要な工程は、含まれてはいない。従って、本発明による方法では、金−酸化物触媒を比較的簡単に製造することができる。
【0047】
以下、本発明による触媒の製造方法の各ステップについて、より詳しく説明する。
【0048】
(ステップS110)
まずステップS110では、原料として、金のコロイド溶液と、金属酸化物粒子とが準備される。
【0049】
金のコロイド溶液には、公知の方法で調製されたいかなるものを使用しても良い。金のコロイド溶液は、例えば、メルカプトこはく酸タイプのものであっても良い。コロイド溶液中に含まれる金粒子は、例えば、1nm〜10nmの範囲の平均粒径を有し、平均粒径は、例えば5nmである。また、コロイド溶液中に含まれる金粒子の濃度は、特に限られないが、金粒子の濃度は、例えば、2wt%である。
【0050】
金属酸化物粒子の材料は、特に限られず、前述のような材料を使用しても良い。また、金酸化物粒子の平均粒径は、特に限られないが、あまり大きな平均粒径のものを使用すると、最終的に得られる担持体酸化物の粒径が極端に大きくなる可能性があるため、平均粒径は、50nm以下が好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、例えば、10nm〜30nmの範囲である。
【0051】
(ステップS120)
次に、ステップS120では、前述の金粒子と、金属酸化物粒子とを含む水溶液が調製される。これは、例えば、蒸留水を含む容器(例えばビーカー等)中に、前述の金粒子および金属酸化物粒子を添加することにより行われる。なお、この際には、最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とが混合される。
【0052】
(ステップS130)
次に、ステップS130では、金粒子および金属酸化物粒子を含む水溶液が加熱され、水分が蒸発される。加熱温度は、50℃〜90℃の範囲であることが好ましく、例えば70℃である。
【0053】
なお、この工程では、水分の蒸発の間、水溶液のpHがモニターされ、pHは、所定の範囲に維持されるように調整される。例えば、水溶液のpHは、7前後(例えば、pH6.5〜7.5)に維持される。pHの調整には、各種酸およびアルカリが使用される。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムまたはアンモニア溶液が使用される。
【0054】
水溶液のpHを制御するのは、水の蒸発過程での金の凝集を抑制するためである。例えば、メルカプトこはく酸タイプの金コロイド溶液を使用した場合、水溶液のpHが6.5〜7.5の範囲を著しく外れた場合、金の凝集が促進され、最終的に得られる触媒粉末中の金の分散性が悪くなる可能性が高くなる。
【0055】
加熱により、ほとんどの水分が蒸発した後、容器内の凝固物を完全に乾燥させる。これは、例えば、容器を100℃に設定した乾燥炉に保持することにより行われても良い。
【0056】
その後、容器から乾燥した凝固物が回収される。
【0057】
(ステップS140)
次に、回収された凝固物が大気炉内で焼成される。焼成温度は、300℃〜400℃の範囲であることが好ましい。焼成時間は、焼成温度にもよるが、おおよそ30分〜5時間程度である。
【0058】
以上の工程を経て、金粒子と金属酸化物粒子とを含み、金が全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれている、粉末状の触媒が得られる。
【0059】
このように、本発明による方法では、触媒を製造する際に、従来のような複雑で高精度の制御を行う必要はない。従って、本発明による方法では、本発明による触媒を比較的簡単に製造することができる。
【0060】
(本発明の第2の態様)
本発明では、前述の特徴を有する触媒を含むペーストを提供することも可能である。そのようなペーストは、例えば、一酸化炭素(CO)ガスセンサの検知部に、燃焼触媒を設置する際に使用することができる。以下、本発明によるペーストの調製方法の一例について説明する。
【0061】
本発明によるペーストは、前述の触媒を、ペーストを構成するマトリクス媒体に添加することにより得ることができる。添加する触媒の形態は、特に限られず、触媒の形態は、粉末状、粒子状、または塊状であっても良い。
【0062】
マトリクス媒体は、触媒を分散することが可能である限り、特に限られない。マトリクス媒体は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、およびイソプロピルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂、およびポリビニルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの有機バインダとを含んでも良い。この場合、溶媒と有機バインダの混合比は特に限られず、両材料の組み合わせに応じて、様々な混合比を採用することができる。マトリクス媒体は、例えば、テルピネオールにエチルセルロースを混合したものであっても良い。この場合、テルピネオールとエチルセルロースの混合比は、特に限られず、全マトリクス媒体に対するエチルセルロースの重量比は、例えば、0〜10wt%の範囲(例えば5wt%)であっても良い。
【0063】
また、マトリクス媒体と触媒の混合比は、特に限られない。マトリクス媒体と触媒の重量比は、例えば、1:1〜4:1(例えば2:1)であっても良い。
【0064】
なお、マトリクス媒体は、400℃以下の温度で焼成することにより、焼失する性質を有することが好ましい。焼失する温度が400℃より高いマトリクス媒体を使用すると、そのようなペーストを用いてセンサの検知部を製作する場合、すなわちペーストをセンサの検知部に塗布してこれを焼成する際に、他の構成部材に熱影響を及ぼす恐れがあるからである。ただし、そのような構成部材が、より高い耐熱温度を有する場合、焼失する温度が400℃より高いマトリクス媒体を使用しても良いことは、明らかであろう。
【0065】
(本発明の第3の態様)
本発明の別の態様では、前述の特徴を有する触媒を検知部に備える一酸化炭素(CO)ガスセンサが提供される。
【0066】
図4には、そのようなCOガスセンサの一例を模式的に示す。図4(a)は、COガスセンサの概略的な上面図であり、図4(b)は、図(a)のA−A線での模式的な断面図である。
【0067】
COガスセンサ400は、基板410と、支持膜413と、ヒータ415と、熱電膜420と、絶縁層430と、燃焼触媒440とを有する。
【0068】
基板410は、例えば、シリコンで構成される。基板410の厚さは、特に限られないが、例えば350nmである。なお、基板410は、支持膜413が設置された部分が切除されており、支持膜413は、基板410の側から見た場合、暴露されている。支持膜413は、例えば窒化珪素等で形成される。実際には、シリコンのような基板が窒化処理され、表面に窒化珪素が形成された後に、基板を除去することにより、図に示すような構成が得られる。
【0069】
支持膜413は、その上部に配置されるヒータ415および熱電膜420等を支持する役割を有する。支持膜413の厚さは、特に限られないが、例えば、280nm程度である。ヒータ415は、燃焼触媒440近傍を加熱し、燃焼触媒440でのCOガスの燃焼反応を助長する役割を有する。なお、図に示されたヒータ415の配置は、一例であって、ヒータ415は、いかなる配置パターンで、支持膜413上に配置されても良い。
【0070】
熱電膜420は、燃焼触媒440により、一酸化炭素(CO)ガスが酸化された際に生じる熱を電気信号に変換する役割を有する。熱電膜420は、例えば、シリコンゲルマニウム等で構成される。図の例では、熱電膜420の厚さは、約450nmである。なお、図の例では、熱電膜420は、出力電圧(または出力電流)を取り出すための電極を兼ねているため、別個の電極は、示されていない。しかしながら、熱電膜420とは別に、熱電膜に接続された電極を配置しても良いことは明らかであろう。
【0071】
燃焼触媒440は、前述の特徴を有する本発明による触媒で構成される。燃焼触媒440は、例えば、前述の本発明によるペーストを塗布、固化して構成される。燃焼触媒440の厚さは、例えば、10μm程度である。
【0072】
絶縁層430は、燃焼触媒440と熱電膜420とが直接接触することを防止する役割を有し、例えば二酸化珪素で構成される。絶縁層430の厚さは、例えば300nm程度である。
【0073】
なお本願では、COガスセンサ400のうち、燃焼触媒440を除く部分を、特に「熱電デバイス」と称する場合がある。
【0074】
以上の構成は、一例であって、他の様々な構成のCOガスセンサを使用し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0075】
このような本発明によるCOガスセンサでは、前述のような本発明による触媒の有意な特徴により、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い反応活性と、一酸化炭素(CO)ガスに対する高い選択性とが得られる。また、従来の燃焼触媒に比べて、劣化が生じにくいため、長期にわたって、安定的に使用することができる。
【0076】
なお、COガスセンサを用いて、実際にある環境のCOガス濃度を測定する場合、そのようなCOガスセンサは、COガスに対する応答速度が大きく、できるだけ速やかに測定結果を表示できるものであることが望ましい。従って、本発明による触媒をCOガスセンサの燃焼触媒として適用する場合、触媒の清浄度を高める処置を予め行っておくことが好ましい。これにより、触媒の活性がより一層向上し、COガスに対する応答速度を高めることができる。
【0077】
例えば、触媒に対して以下のような熱処理(以下、「予備熱処理」ともいう)を行うことにより、触媒表面に付着残留している酸化物、炭化物等の不純物を除去し、触媒の清浄度を高めることができる。
【0078】
「予備熱処理」は、水素と酸素を含む雰囲気で行われる。水素と酸素の両方を含む雰囲気で処理を行うことにより、触媒表面に不純物として存在する炭化物等を燃焼除去させることができる。
【0079】
雰囲気中の酸素の濃度は、特に限られないが、例えば1vol%〜99vol%の範囲である。例えば、空気を雰囲気ガスとして使用する場合、酸素の濃度は、約21vol%となる。一方、雰囲気中の水素の濃度は、空気を雰囲気ガスとして使用する場合、4vol%未満(例えば1vol%)である必要がある。水素の爆発下限界は、空気中で4vol%であるため、水素の濃度を4vol%よりも高くすると、安全上問題がある。なお、大気雰囲気とは異なる、ある濃度の酸素を含む雰囲気を選定する場合、水素の濃度は、その雰囲気に含まれる酸素体積に対して、1/5未満とする必要がある。
【0080】
通常の場合、予備熱処理は、150℃〜250℃程度の温度で、本発明による触媒を所定の時間保持することにより行われる。予備熱処理の時間は、例えば10分〜24時間の範囲であり、例えば1時間である。
【0081】
なお、このような予備熱処理は、触媒の状態で実施しても良いが、該触媒をCOガスセンサに適用してから、(例えばCOガスセンサの使用直前等に)実施しても良いことは当業者には明らかである。
【実施例】
【0082】
以下、本発明による実施例について説明する。
【0083】
(実施例1)
本発明による金−酸化物触媒を用いてCOガスセンササンプルを作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0084】
(金−酸化物触媒の調製)
以下の方法により、10wt%金−酸化コバルトからなる触媒を調製した。
【0085】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)2.75gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.5g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、10wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0086】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、以下のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出した。
d=kα/βcosθ 式(1)
ここで、dは、結晶粒径であり、λはX線の波長、βは半値幅、θは回折角である。また、kは、定数でk=0.9である。
【0087】
式(1)から、金の粒径は、15nm程度と見積もられた。
【0088】
(ペーストの調製)
テルピネオールにエチルセルロースを10wt%添加して作製した分散媒体と、前述の方法で調製した触媒粉末とを混合して、ペーストを調製した。分散媒体と触媒の混合重量比は、2:1とした。
【0089】
(COガスセンササンプルの作製)
まず、注射器を用いて、前述のペーストを熱電デバイス(基板のサイズ:縦4mm×横4mm)上に塗布した(塗布量0.003μL)。次に、この熱電デバイスをマッフル炉に入れ、400℃で2時間保持した。これにより、COガスセンササンプル(以下、「実施例1に係るサンプル」と称する)が得られた。
【0090】
なお、熱電デバイスの構成は、表1に示した通りである。
【0091】
【表1】
【0092】
(サンプルの特性評価)
前述の方法で作製した実施例1に係るサンプルを用いて、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。評価は、以下のようにして行った。
【0093】
空気が充填されたガスタンクAと、1vol%の一酸化炭素(CO)を含む乾燥空気ガス(以下、「混合ガス1」と称する)が充填されたガスタンクBと、1vol%の水素を含む乾燥空気ガス(以下、「混合ガス2」と称する)が充填されたガスタンクCと、1vol%の一酸化炭素(CO)および1vol%の水素を含む乾燥空気ガス(以下、「混合ガス3」と称する)が充填されたガスタンクDとを準備する。
【0094】
まず、実施例1に係るサンプルを所定の温度(200℃〜240℃)まで昇温し、その温度に維持する。この状態で、ガスタンクAから、実施例1に係るサンプルに空気を供給し(流量200ccm)、サンプルから出力される電圧値の測定を開始する。出力電圧がほぼ0(ゼロ)であることが確認された後(おおよそ混合ガスの供給から約40秒後)、ガスタンクAからの空気供給を停止し、ガスタンクBから実施例1に係るサンプルに、混合ガス1を供給する。さらに、約200秒経過後に、ガスタンクBからサンプルへの混合ガス1の供給を停止し、再度ガスタンクAからサンプルに空気を供給する。この間のサンプルから得られる出力電圧の経時変化を測定する。
【0095】
同様の測定を、混合ガス2、3についても実施し、実施例1に係るサンプルにおける、それぞれの供給ガスに対する検出特性を評価した。
【0096】
図5〜7には、測定結果を示す。各図において、横軸は、経過時間であり、縦軸は、サンプルからの出力電圧である。また図5は、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)において得られた結果であり、図6は、混合ガス2(1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果であり、図7は、混合ガス3(1vol%CO+1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果である。
【0097】
図5から、200℃〜240℃の各温度において、混合ガス1を供給した期間(約30秒〜約200秒)の間、ほぼ一定の出力電圧が得られていることがわかる。特に、サンプルの温度が240℃の場合、出力される電圧は、約2390mVに達した。一方、混合ガス2の場合は、図6に示すように、いずれの温度においても、サンプルからの出力電圧は、極めて小さく、最大でも0.5mV程度であった(温度240℃の場合)。また一酸化炭素と水素の両方を含む混合ガス3の場合、サンプルから出力される電圧は、図7に示すように、混合ガス1において得られた出力電圧(すなわち図5に示す出力電圧)とほぼ等しくなった。
【0098】
表2には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(図5のプラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(図6のプラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0099】
【表2】
【0100】
これらの結果から、200℃〜240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、4.2〜12.6の範囲となっており、実施例1に係るサンプルでは、COガスに対して、高い選択性を有することがわかる。
【0101】
(実施例2)
本発明による金−酸化物触媒を用いてCOガスセンササンプルを作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。
【0102】
以下の方法により、20wt%金−酸化コバルトからなる触媒を調製した。
【0103】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)6.25gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.5g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
【0104】
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、20wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0105】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、前述のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出したところ、金の粒径は、18nm程度と見積もられた。
【0106】
(ペーストの調製)
テルピネオールにエチルセルロースを10wt%添加して作製した分散媒体と、前述の方法で調製した20wt%金−酸化コバルト触媒粉末とを混合して、ペーストを調製した。分散媒体と触媒の混合重量比は、2:1とした。
【0107】
(COガスセンササンプルの作製)
まず、注射器を用いて、前述のペーストを実施例1と同じ構成の熱電デバイス上に塗布した(塗布量0.003μL)。次に、この熱電デバイスをマッフル炉に入れ、300℃で2時間保持した。これにより、COガスセンササンプル(以下、「実施例2に係るサンプル」と称する)が得られた。
【0108】
(サンプルの特性評価)
作製した実施例2に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0109】
図8〜10には、測定結果を示す。各図において、横軸は、経過時間であり、縦軸は、サンプルから出力された電圧値である。また図8は、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)において得られた結果であり、図9は、混合ガス2(1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果であり、図10は、混合ガス3(1vol%CO+1vol%水素+乾燥空気)において得られた結果である。
【0110】
図8から、200℃〜240℃の各温度において、混合ガス1を供給した期間(約30秒〜約200秒の間)、ほぼ一定の出力電圧が得られていることがわかる。特に、サンプルの温度が240℃の場合、出力される電圧は、約3310mVに達した。一方、混合ガス2の場合は、図9に示すように、いずれの温度においても、サンプルからの出力電圧は、極めて小さく、最大でも0.5mV未満であった(温度240℃の場合)。また一酸化炭素と水素の両方を含む混合ガス3の場合、サンプルから出力される電圧は、図10に示すように、混合ガス1において得られた出力電圧(すなわち図5に示す出力電圧)とほぼ等しくなった。
【0111】
表3には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(図8のプラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(図9のプラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0112】
【表3】
【0113】
これらの結果から、200℃〜240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、8.5〜9.7の範囲となっており、実施例2に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を有することがわかる。
【0114】
(比較例1)
従来の金−酸化物触媒を用いてCOガスセンササンプルを作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。
【0115】
以下の方法により、3wt%金−酸化チタンからなる触媒を調製した。
【0116】
まず、蒸留水400mlを容器に入れ、この中に、塩化金(III)酸4水和物を0.125g添加し、ホットスターラーを用いて温度70℃、回転速度100rpmで加熱撹拌しながら溶解した。さらに、この混合溶液を70℃に保持し、100rpmで撹拌した状態のまま、pH試験紙を用いて混合溶液のpHをモニタリングし、混合溶液のpHを7前後に調整した。pHの調整には、1Nの水酸化ナトリウム溶液を使用した。混合溶液のpHが7になってから、混合溶液を1時間程度保持した後、酸化チタンを2g添加し、250rpmで撹拌した。さらに、この混合溶液を、70℃、250rpmで1時間加熱撹拌した後、加熱撹拌を止め、室温まで放冷した。
【0117】
室温の混合溶液を6000rpmで10分間、遠心分離器で処理した後、混合溶液から上澄み溶液を分離した。残った固形分に蒸留水を加えて、再度、この溶液のpHをモニタリングし、溶液のpHを7前後に調整した。さらに溶液を6000rpmで10分間、遠心分離器で処理した後、溶液から上澄み溶液を分離した。この操作を、固形分に蒸留水を加えたときの溶液のpHが、約7.0になるまで繰り返した。
【0118】
次に、凝固物を回収し、これを100℃に設定した乾燥機に入れ、12時間以上保持することにより、凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を、容器から取り出し、これをマッフル炉に入れ、400℃で4時間保持した。この処理により、3wt%金−酸化チタンからなる触媒の粉末が得られた。
【0119】
(ペーストの調整)
テルピネオールにエチルセルロースを10wt%添加して作製した分散媒体と、前述の方法で調製した3wt%金−酸化チタン触媒の粉末とを混合して、ペーストを調製した。分散媒体と、触媒粉末の重量混合比は、4:1とした。
【0120】
(COガスセンササンプルの作製)
まず、注射器を用いて、前述のペーストを実施例1と同じ構成の熱電デバイス上に塗布した(塗布量0.003μL)。次に、この熱電デバイスをマッフル炉に入れ、300℃で2時間保持した。これにより、COガスセンササンプル(以下、「比較例1に係るサンプル」と称する)が得られた。
【0121】
(サンプルの特性評価)
作製した比較例1に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0122】
表4には、150℃および200℃における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0123】
【表4】
【0124】
これらの結果から、いずれの温度においても、比V1/V2は、1.7〜1.8の範囲となっており、比較例1に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を示さないことがわかった。
【0125】
(比較例2)
実施例2と同様の方法により、COガスセンササンプル(以下、「比較例2に係るサンプル」と称する)を作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。ただし、この比較例2では、COガスセンササンプルに使用する触媒には、以下の方法により調製した40wt%金−酸化コバルトからなる触媒を使用した。
【0126】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)20gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.6g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
【0127】
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、40wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0128】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、前述のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出したところ、金の粒径は、35nm程度と見積もられた。
【0129】
なお、比較例2に係るサンプルにおいて、その他の製作条件(ペーストの調製条件、熱電デバイスへのペーストの設置条件等)は、実施例2の場合と同様である。
【0130】
(サンプルの特性評価)
作製した比較例2に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0131】
表5には、200℃および240℃における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0132】
【表5】
【0133】
これらの結果から、比V1/V2は、0.6〜4.0の範囲となっており、比較例2に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を示さないことがわかった。
【0134】
(実施例3)
以下の方法により、30wt%金−酸化コバルトからなる触媒を調製した。
【0135】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)10.71gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を0.5g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、30wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0136】
次に、この触媒を用いて、前述の実施例2と同様の方法により、ペーストを調製し、さらにCOガスセンササンプルを作製した(以下、「実施例3に係るサンプル」と称する)。
【0137】
作製した実施例3に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。
【0138】
表6には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0139】
【表6】
【0140】
これらの結果から、200℃〜240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、5.9〜6.5の範囲となっており、実施例3に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して高い選択性を有することがわかる。
【0141】
(比較例3)
実施例2と同様の方法により、COガスセンササンプル(以下、「比較例3に係るサンプル」と称する)を作製し、その一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性を評価した。ただし、この比較例3では、COガスセンササンプルに使用する触媒には、以下の方法により調製した3wt%金−酸化コバルトからなる触媒を使用した。
【0142】
まず、平均粒径3nmの金粒子を含む金コロイド溶液(メルカプトこはく酸タイプ:金含有量2wt%)1.55gを容器に入れ、溶液を撹拌した状態で、この溶液中に、酸化コバルトの粉末(平均粒径15nm)を1.0g添加した。さらに、この溶液中に蒸留水を10ml添加した。この混合溶液を70℃に保持し、180rpm〜3000rpmの回転速度で撹拌し、水分を蒸発させた。なおこの間、容器の壁に付着した水滴は、適宜拭き取った。また蒸発の間、pH試験紙を用いて混合溶液のpHを適宜モニタリングし、混合溶液のpHを7前後に維持した。(このため必要に応じて、1Nの水酸化ナトリウム溶液、または1Nのアンモニア溶液を混合溶液に添加した。)
【0143】
混合溶液の水分がほぼ蒸発した後、容器を100℃に設定した乾燥器に入れ、30分以上保持し、容器内の凝固物を完全に乾燥させた。その後、この凝固物を容器から回収し、これをマッフル炉に入れ、300℃で2時間大気保持し、焼成した。この処理により、3wt%金−酸化コバルトからなる触媒の粉末が得られた。
【0144】
X線回折装置(RINT2100、(株)リガク製)を用いて、得られた触媒粉末のXRD分析を行った。得られた回折ピーク結果から、前述のシェラー(Scherrer)の式を用いて、金の粒径を算出したところ、金の粒径は、10nm程度以下と見積もられた。
【0145】
次に、この触媒を用いて、前述の実施例2と同様の方法により、ペーストを調製し、さらにCOガスセンササンプルを作製した(以下、「比較例3に係るサンプル」と称する)。
【0146】
作製した比較例3に係るサンプルを用いて、前述の実施例1の場合と同様の評価を行い、サンプルの一酸化炭素(CO)ガスに対する検出特性(選択性)を評価した。ただし、ここでは、試験温度は、220℃および240℃とした。
【0147】
表7には、各温度における、混合ガス1で得られた出力電圧V1(プラトー部の値)と、混合ガス2で得られた出力電圧V2(プラトー部の値)と、両者の比V1/V2とを示す。
【0148】
【表7】
【0149】
これらの結果から、220℃、240℃の範囲のいずれの温度においても、比V1/V2は、2.7〜3.9の範囲となっており、比較例3に係るサンプルは、一酸化炭素(CO)ガスに対して良好な選択性を示さないことがわかる。
【0150】
(実施例4)
次に、COガスセンササンプルのCOに対する応答速度を検討した。
【0151】
まず、前述の実施例2の方法により製作したCOガスセンササンプルに対して、熱処理を実施した。熱処理雰囲気は、1vol%水素を含む空気雰囲気とした。また熱処理温度は、150℃、200℃、または250℃とし、熱処理時間(前述の各温度の保持時間)は、1時間とした。このような熱処理によって得られた各COガスセンササンプルをそれぞれ、サンプルA(150℃)、サンプルB(20℃)、およびサンプルC(250℃)と称する。
【0152】
熱処理後に得られた各COガスセンササンプルA〜Cを用いて、前述の実施例1の場合と同様の測定を行い、各サンプルA〜CのCOに対する応答速度を、熱処理を実施しないサンプル(すなわち実施例2に係るサンプル)の場合と比較評価した。
【0153】
図11には、一例として、サンプルA(熱処理温度150℃)において、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)中で得られた測定結果を示す。測定温度は、200℃、220℃および240℃である。
【0154】
また、表8には、サンプルA〜C、および実施例2に係るサンプルに対する、混合ガス1(1vol%CO+乾燥空気)中での各測定温度(200℃、220℃および240℃)における応答速度をまとめて示す。応答速度は、「T90」および「T65」の2つの指標で表した。ここで、T90とは、出力電圧最大値(プラトー部の値)の90%の応答電圧に到達した時間を意味し、T65とは、出力電圧最大値(プラトー部の値)の65%の応答電圧に到達した時間を意味する。
【0155】
【表8】
【0156】
表8の結果から、熱処理を実施していない実施例2に係るサンプルでは、T65は、10〜11秒程度であるのに対して、サンプルA〜Cのいずれにおいても、T65は、2〜4秒の範囲となっていることがわかる。すなわち、COガスセンサ(正確にはCOガスセンサに含まれる触媒)に対して、150℃〜250℃の範囲で予め熱処理を実施することにより、熱処理を行わない場合に比べて、COガスに対する応答速度が向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、一酸化炭素(CO)濃度を測定するCOガスセンサ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0158】
400 COガスセンサ
413 支持膜
415 ヒータ
420 熱電膜
430 絶縁層
440 燃焼触媒。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金粒子と金属酸化物粒子とを含み、
前記金粒子は、全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒。
【請求項2】
前記金粒子は、10nm〜20nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載のCOガスセンサ用の触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子は、20nm〜100nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項1または2に記載のCOガスセンサ用の触媒。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、酸化コバルト、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化珪素からなる群から選定された少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のCOガスセンサ用の触媒。
【請求項5】
金粒子と金属酸化物粒子とを含む、COガスセンサ用の触媒の製造方法であって、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップと、
を有することを特徴とするCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記pHは、6.5〜7.5の範囲であることを特徴とする請求項5に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記金コロイド溶液に含まれる金粒子は、1nm〜5nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項5または6に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物粒子は、5nm〜30nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一つに記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項9】
マトリクス媒体と、触媒とを含むペーストであって、
前記触媒は、請求項1乃至4に記載のいずれか一つに記載の触媒であることを特徴とするペースト。
【請求項10】
マトリクス媒体は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、およびイソプロピルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂、およびポリビニルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの有機バインダとを含むことを特徴とする請求項9に記載のペースト。
【請求項11】
燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサであって、
前記燃焼触媒は、前記請求項1乃至4に記載のいずれか一つの触媒であることを特徴とするCOガスセンサ。
【請求項12】
少なくとも前記燃焼触媒は、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で予め熱処理されていることを特徴とする請求項11に記載のCOガスセンサ。
【請求項13】
さらに、前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップの後、
得られた焼成物を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一つに記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理するステップは、10分から24時間の範囲で行われることを特徴とする請求項13に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理するステップは、1vol%以下の水素を含む雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項13または14に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項16】
燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサの製造方法であって、
前記燃焼触媒は、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる燃焼触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成して、燃焼触媒を得るステップと、
を有する方法により製造されることを特徴とするCOガスセンサの製造方法。
【請求項17】
さらに、前記得られた燃焼触媒を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有することを特徴とする請求項16に記載のCOガスセンサの製造方法。
【請求項1】
金粒子と金属酸化物粒子とを含み、
前記金粒子は、全体重量に対して10wt%以上40wt%未満の量で含まれていることを特徴とするCOガスセンサ用の触媒。
【請求項2】
前記金粒子は、10nm〜20nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載のCOガスセンサ用の触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子は、20nm〜100nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項1または2に記載のCOガスセンサ用の触媒。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、酸化コバルト、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化アルミニウム、および酸化珪素からなる群から選定された少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のCOガスセンサ用の触媒。
【請求項5】
金粒子と金属酸化物粒子とを含む、COガスセンサ用の触媒の製造方法であって、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップと、
を有することを特徴とするCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記pHは、6.5〜7.5の範囲であることを特徴とする請求項5に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記金コロイド溶液に含まれる金粒子は、1nm〜5nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項5または6に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物粒子は、5nm〜30nmの範囲の平均粒径を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一つに記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項9】
マトリクス媒体と、触媒とを含むペーストであって、
前記触媒は、請求項1乃至4に記載のいずれか一つに記載の触媒であることを特徴とするペースト。
【請求項10】
マトリクス媒体は、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、およびイソプロピルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂、およびポリビニルアルコールで構成された群から選定された少なくとも一つの有機バインダとを含むことを特徴とする請求項9に記載のペースト。
【請求項11】
燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサであって、
前記燃焼触媒は、前記請求項1乃至4に記載のいずれか一つの触媒であることを特徴とするCOガスセンサ。
【請求項12】
少なくとも前記燃焼触媒は、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で予め熱処理されていることを特徴とする請求項11に記載のCOガスセンサ。
【請求項13】
さらに、前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成するステップの後、
得られた焼成物を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一つに記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理するステップは、10分から24時間の範囲で行われることを特徴とする請求項13に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理するステップは、1vol%以下の水素を含む雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項13または14に記載のCOガスセンサ用の触媒の製造方法。
【請求項16】
燃焼触媒が設置された検知部を備えるCOガスセンサの製造方法であって、
前記燃焼触媒は、
金コロイド溶液および金属酸化物粒子を準備するステップと、
最終的に得られる燃焼触媒において、金の重量と金属酸化物粒子の重量の和に対する金の重量比が、10wt%以上40wt%未満となるように、前記金コロイド溶液と、前記金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製するステップと、
前記水溶液のpHを制御した状態で前記水溶液を加熱して、水分を除去することにより、凝固物を得るステップと、
前記凝固物を300℃〜400℃の温度範囲で焼成して、燃焼触媒を得るステップと、
を有する方法により製造されることを特徴とするCOガスセンサの製造方法。
【請求項17】
さらに、前記得られた燃焼触媒を、水素および酸素を含む雰囲気下、150℃〜250℃の範囲で熱処理するステップを有することを特徴とする請求項16に記載のCOガスセンサの製造方法。
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図4】
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【図11】
【図1】
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【公開番号】特開2010−75917(P2010−75917A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193792(P2009−193792)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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