COPD体感器具及びCOPD体感装置
【課題】被験者にCOPDの症状を体感させ、早期にCOPD検査を行う契機とするためのCOPD体感器具を提供する。
【解決手段】被験者の呼気時において抵抗体の前後の差圧がA以上B未満となる呼気抵抗を提供するI期用抵抗体32aと、差圧がB以上C未満となる呼気抵抗を提供するII期用抵抗体32bと、差圧がC以上D未満となる呼気抵抗を提供するIII期用抵抗体32cと、差圧がD以上となる呼気抵抗を提供するIV期用抵抗体32dとを、適宜選択して、マウスピース31に取り付ける。被験者はこのマウスピース31に呼気を吹き込むことで、COPDの各症状を体感することができる。
【解決手段】被験者の呼気時において抵抗体の前後の差圧がA以上B未満となる呼気抵抗を提供するI期用抵抗体32aと、差圧がB以上C未満となる呼気抵抗を提供するII期用抵抗体32bと、差圧がC以上D未満となる呼気抵抗を提供するIII期用抵抗体32cと、差圧がD以上となる呼気抵抗を提供するIV期用抵抗体32dとを、適宜選択して、マウスピース31に取り付ける。被験者はこのマウスピース31に呼気を吹き込むことで、COPDの各症状を体感することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease(以下「COPD」と称する))を体感させることを可能とするCOPD体感器具、及びそのCOPD体感器具を接続したCOPD体感装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、呼吸器系の病気であるCOPDの患者数が急速に増加している。COPDは徐々に進行していく病気であり、I期の段階では症状を感じ難いが、進行すると僅かな運動で息切れを感じるようになり、次第に安静状態でも呼吸が苦しくなり、さらに悪化すると死に至る。COPDによる死亡率は年々上昇しており、2008年度死亡順位は10位、男性に限れば7位となっている(非特許文献1)。今後、COPDによる死亡率はさらに上がり、死亡順位は3位になるとも推定されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4008953号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】GOLD日本委員会編「COPDに関する統計資料」、Internet URLhttp://www.gold-jac.jp/copd_facts_in_japan/
【非特許文献2】Nippon Boehringer Co.,Ltd著「世界中で増え続けるCOPD」、Internet URLhttp://www.spinet.jp/copd01_world.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1によれば、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人と推定されているが、2005年度の厚生労働省患者調査によると、病院でCOPDと診断された患者数は約22万3千人に過ぎない。これは、COPDという病気が一般市民に未だ認知されていないことが最大の理由である。近年は日本呼吸器学会等によってCOPDの啓蒙活動が積極的に行われているものの、2009年度の調査では80%以上の一般市民がCOPDについて「知らない」と答えている。これはCOPDの死亡率を考慮すると極めて低い数値である。
【0006】
上述したようにCOPDは徐々に進行していく病気であるため、早期検査、早期発見、早期治療が極めて重要である。しかしCOPDに対する認知度の低さから、軽症の段階にあるCOPD有病者が検査を受けるケースは極めて少なく、症状が重度になってから初めてCOPDの検査を受けるケースが多い。また、COPDが進行したときの呼吸の困難性を理解しておらず、当然実感もできていないため、医師から検査を勧められたにもかかわらず、COPDを軽視して検査を受けようとしないケースも多い。さらにCOPDは別名「たばこ病」とも呼ばれており、喫煙と極めて大きな関連がある。健常者であっても喫煙を行うことによりCOPDとなるリスクが高まり、検査の必要性も非喫煙者より格段に高くなるが、COPDに対する不理解から検査を受けないケースが多い。このような状況を放置すると、将来的にCOPD関連の医療費が増加し、経済的、社会的負荷が大きくなってしまう問題がある。
【0007】
本発明は、このような背景のもとになされたものであり、その目的は、被験者にCOPDの症状を体感させ、早期にCOPD検査を行う契機とするためのCOPD体感器具、及びそのCOPD体感器具を接続したCOPD体感装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、次のような手段を採る。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
【0009】
本発明1に係るCOPD体感器具(30)は、被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗が0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期用抵抗体(32a)と、前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期用抵抗体(32b)と、前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期用抵抗体(32c)と、前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期用抵抗体(32d)とを備え、前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から任意の抵抗体を適宜選択可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明2に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1のCOPD体感器具であって、被験者が呼気を吹き込むマウスピースをさらに備え、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)から任意の抵抗体を適宜選択して前記マウスピースに取り付け可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明3に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1のCOPD体感器具であって、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記I期用抵抗体(32a)とが一体となったI期体感器具(34a)と、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記II期用抵抗体(32b)とが一体となったII期体感器具(34b)と、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記III期用抵抗体(32c)とが一体となったIII期体感器具(34c)と、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記IV期用抵抗体(32d)とが一体となったIV期体感器具(34d)と、から構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明4に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれも貫通孔が設けられた板状物によって構成され、各抵抗体を構成する板状物に設けられた貫通孔の開口率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0013】
本発明5に係るCOPD体感器具(30)は、本発明4のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)を構成する板状物の開孔率は概ね8%以上、100%未満であり、前記II期用抵抗体(32b)を構成する板状物の開孔率は概ね8%より小さく概ね4.5%以上であり、前記III期用抵抗体(32c)を構成する板状物の開孔率は概ね4.5%より小さく概ね2.4%以上であり、前記IV期用抵抗体(32d)を構成する板状物の開孔率は概ね2.4%より小さいことを特徴とする。この開孔率とは、板状物の全面積(呼気経路の断面積)に対する孔面積の比率であり、後述する実施例においては、直径25mmの円板状物の全面積490.63mm2に対しての孔面積の比率である。
【0014】
本発明6に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の開孔率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0015】
本発明7に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の積層数を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0016】
本発明8に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれも不織布によって構成され、各抵抗体を構成する不織布の厚さを相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0017】
本発明9に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれも連続気泡発泡体によって構成され、各抵抗体を構成する連続気泡発泡体の発泡倍率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0018】
本発明10に係るCOPD体感器具(30)は、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と、被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗を可変可能な可変抵抗部から構成されるCOPD体感器具であって、前記可変抵抗部は、前記呼気抵抗が概ね0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期状態と、前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期状態と、前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期状態と、前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期状態に適宜変更可能であることを特徴とする。
【0019】
本発明11に係るCOPD体感器具(30)は、本発明10のCOPD体感器具であって、前記可変抵抗部を回転させる回転操作部(操作部37)を有し、前記回転操作部には、前記可変抵抗部の回転量に対応してI期状態(a)、II期状態(b)、III期状態(c)、及びIV期状態(d)が表示されており、前記表示に基づいて前記可変抵抗部を所定量回転させることによって当該可変抵抗部を通過する呼気の流量を変化させ、前記I期状態、前記II期状態、前記III期状態、又は前記IV期状態に適宜変更可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明12に係るCOPD体感器具(30)は、本発明2又は3のCOPD体感器具と、被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置(1)と、から構成されるCOPD体感装置であって、前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口(17)を備え、当該吹込口には前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)から選択される任意の抵抗体が接続され、前記呼吸機能検査装置が、前記抵抗体を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とする。
【0021】
本発明13に係るCOPD体感装置は、本発明10のCOPD体感器具(30)と、被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置(1)と、から構成されるCOPD体感装置であって、前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口(17)を備え、当該吹込口には前記可変抵抗部が接続され、前記呼吸機能検査装置が、前記可変抵抗部を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のCOPD体感器具によれば、被験者にI期、II期、III期、及びIV期のCOPD症状を体感させることができる。健常者であってもCOPDの各症状における呼吸の困難性を体感することができるため、COPDの予防、早期発見、早期治療の重要性を認識させてCOPDの検査を受ける契機とすることができる。また、軽症患者に対してもCOPDが進行したときの症状を体感させることができるため、COPDの早期治療の重要性を認識させ、COPDの進行を防ぐのに役立てることが可能である。さらに、喫煙者には喫煙を継続することのリスクを認知させてCOPDの検査の必要性を認識させること、禁煙の契機を提供することが可能である。
【0023】
本発明によって、COPDの早期検査を促すことができ、COPDの早期発見、早期治療に貢献することができ、将来的なCOPD関連の医療費抑制にも資することになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はCOPD体感器具の斜視図である。
【図2】図2はマウスピース、抵抗体、及び抵抗体保持部から構成されるCOPD体感器具を分解した状態を示す側面断面図である。
【図3】図3(a)はマウスピース、抵抗体、及び抵抗体保持部から構成されるCOPD体感器具が組み立てられた状態を示す側面断面図であり、図3(b)は同COPD体感器具をマウスピース側から見た正面図である。
【図4】図4(a)は呼気抵抗の測定実験で使用する抵抗体の斜視図であり、図4(b)は正面図である。
【図5】図5(a)は呼気抵抗の測定実験で使用する抵抗体と実験用マウスピースの接続方法を示す図である。図5(b)は呼気抵抗の測定実験で使用する装置の概要を示す図である。
【図6】図6は開口率と流量値の関係を示す図である。
【図7】図7は、差圧が30cmH20となるときの%1秒量と抵抗値の関係を示す図である(横軸:抵抗,縦軸:%1秒量)。
【図8】図8は、差圧が30cmH20となるときの%1秒量と抵抗値の関係を示す図である(横軸:%1秒量,縦軸:抵抗)。
【図9】図9は、抵抗値と開孔率の関係を示す図である。
【図10】図10は貫通孔が設けられた板状物によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図11】図11はメッシュ体によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図12】図12はメッシュ体によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図13】図13は不織布によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図14】図14は連続気泡発泡体によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図15】図15はI期体感器具、II期体感器具、III期体感器具、IV期体感器具から構成されるCOPD体感器具の一例を示す側面断面図である。
【図16】図16(a)は可変抵抗部を有するCOPD体感器具の側面断面図であり、図16(b)は同COPD体感器具をマウスピース部側から見た正面図であり、図16(c)は同COPD体感器具の平面図である。
【図17】図17はCODP体感装置を構成する呼吸機能検査装置の一例を表す図であり、図17(a)はその平面図、図17(b)は左側面図、図17(c)は正面図、図17(d)は右側面図である。
【図18】図18は図17の呼吸機能検査装置の一例を表す機能ブロック図である。
【図19】図19は呼吸機能検査装置の吹込口にフィルタ及びマウスピースを接続する例を示す図である。
【図20】図20は呼吸機能検査装置の吹込口にCOPD体感装置、フィルタ、及びマウスピースを接続する例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[1.COPD体感器具(組立型)]
以下、本発明のCOPD体感器具の一例を説明する。COPD体感器具30は、例えば図1に示す形状を有している。図1に示すCOPD体感器具30は、図2に示すようにマウスピース31、抵抗体32、及び抵抗体保持部33から構成され、図3に示すようにこれらを組み付けた状態で使用するものである。図3(a)に示す抵抗体32は、抵抗体保持部33の端面の縁部と、マウスピース31内部の凸部壁面に挟まれて支持され、図3(b)の正面図に示すように、マウスピース31側から見たときに中央部周辺を視認できる構成となっている。
【0026】
本例において、マウスピース31及び抵抗体保持部33はエラストマー成分を多量に含む樹脂製又はゴム製であり、柔軟性を有している。また、抵抗体保持部33の外周面の両端近くには、凸部33aが設けられている。凸部33aは外周面の端面に平行である。抵抗体保持部33の凸部33aを含む外周面の外径は、マウスピース31の背面側の内径より僅かに大きい。また、抵抗体保持部33の凸部33aを含まない外周面の外径は、マウスピース31の背面側の内径と概ね同一である。従って、図3(a)に示すように、マウスピース31の内周に抵抗体保持部33の外周を嵌め込むことで、凸部33aをマウスピース31の内周に食い込ませ、マウスピース31と抵抗体保持部33を固定することができる。この嵌め込みの際、抵抗体保持部33の端面と、マウスピース31内部の凸部壁面との間に抵抗体32を挟むことで、マウスピース31、抵抗体32、抵抗体保持部33を一体化することができる。嵌め込み量は、マウスピース31内部に設けられた凸部壁面によって規定される一定量である。一旦嵌め込むとマウスピース31の内周面に凸部33aが食い込み、その摩擦力により、容易に分離しがたい構造となっている。
【0027】
(呼気抵抗と病期分類の相関)
本発明は、所定の抵抗体32を備えたCOPD体感器具30のマウスピース31から被験者が呼気を吹き込むことで、COPDの症状、即ち呼気の困難性を体感することを特徴とする。COPDの症状には、I期、II期、III期、及びIV期の4つが存在するが、COPD体感器具によって被験者は各症状に相当する呼気の困難性を体感することができる。本発明者らは、これら4つの症状を再現させることができるようにCOPD体感器具内部の抵抗体32を設計した。
【0028】
被験者が呼気をCOPD体感器具30に吹き込むと、その呼気が抵抗体32に衝突し、その結果、抵抗体32の前後(正面側と背面側)には差圧が生じる。本実施の形態中、この差圧(cmH2O)を当該呼気の流量値で除した値(L/s)を「呼気抵抗(cmH2O/L/s)」と称することにする。仮に呼気の流量値が一定であるとすると、抵抗体32が提供する呼気抵抗が大きいほど抵抗体32の前後の差圧は大きく、呼気抵抗が小さいほど差圧が小さいという関係がある。COPD病期分類は呼気抵抗と密接な関連性があり、COPDがI期、II期、III期、IV期と進行するにつれ、呼気抵抗は大きくなるという特徴がある。この事実を応用し、本発明者らはCOPD体感器具において抵抗体32が提供する呼気抵抗とCOPD病期分類を対応させることを試みた。その結果、抵抗体32が提供する呼気抵抗を調整することで、COPD病期分類の各症状を被験者に体感させることを可能とした。
【0029】
(抵抗体の開孔率と呼気抵抗の関係)
本発明者らは、抵抗体として孔が設けられた板状物を用いて、当該板状物の前後に生じる差圧に基づいて呼気抵抗の値を測定する実験を行った。図4(a)には、抵抗体32の斜視図を示す。本実験で使用する板状物である抵抗体32は、内部が空洞である円筒状物50と一体化されている。図4(b)は抵抗体32の正面図である。本実験では、表1に示すように孔面積の異なる10の抵抗体を用意し、それぞれについて呼気抵抗の値を測定した。開孔率(%)=孔面積/全面積×100とした。この全面積は、板状物である抵抗体32の孔の面積を含み、円筒状物50の縁部との接合部分を除いた面積である。抵抗体32の直径から円筒状物50の縁部との接合部分を除いた直径Φは25mmであり、これに基づいて計算した全面積は490.63mm2であった。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示した各抵抗体に関して、図5に示す実験装置を利用して呼気抵抗を測定する実験を行った。図5(a)に示すように、抵抗体32と実験用マウスピースを抵抗体固定具によって固定する。図5(b)に示すように、固定した抵抗体32及び実験用マウスピースの前後に擬似的な呼吸流路を設け、抵抗体の一方からブロアーで空気を吸引した。このとき、抵抗体の前後の差圧が30cmH20となるようにブロアーの流量値を調整した。このとき測定された流量値を表2に示す。表2に示すように、開孔率が低くなるほど、これに伴い流量値も低下する。差圧が30cmH20の場合の、流量値(L/s)と開孔率(%)の関係を図6のグラフに示す。また、本実験において抵抗体の前後の差圧(30cmH20)を、当該差圧が生じたときの流量値(L/s)で除した値である抵抗値(呼気抵抗)を、表3に示した。開孔率(%)が低くなるほど、抵抗値は高くなる。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
図7には、%1秒量(%FEV1とも表記される)と抵抗値の関係を示す。1秒量とは、最大吸気位から一気に呼出させて最大呼気位に達したときの容量の差分である努力性肺活量のうち、最初の1秒間に呼出された容量である。%1秒量とは、正常値(予測値とも呼ばれる)である1秒量に対しての測定値である1秒量の割合である。被験者A及びDはいずれも健常者である(%1秒量が100以上)。その後、表1に示した各抵抗体を順次、後述する呼吸機能検査装置1に接続し、抵抗体を接続した状態で被験者A及びDの1秒量を測定して、%1秒量を計算した。
【0035】
上記のようにして計算した%1秒量と差圧が30cmH2Oとなるときの抵抗値との関係を図7に示す。各グラフには被験者Aの%1秒量、被験者Dの%1秒量、被験者A及びBの2者の平均値と、抵抗値の関係が折線グラフによって示されている。COPD病期分類の区分として、%1秒量≧80のときがI期(軽度の気流閉塞)、50≦%1秒量<80のときがII期(中等度の気流閉塞)、30≦%1秒量<50のときがIII期(高度の気流閉塞)、%1秒量<30のときがIV期(極めて高度の気流閉塞)の条件とされている。
【0036】
これら%1秒量と抵抗値との関係から、COPD病期分類と抵抗値とを関連づけることができる。図8には%1秒量を横軸、抵抗値(cmH20/L/s)を縦軸にとり、各抵抗値と%1秒量の計測値を直線で補完したグラフを示す(差圧が30cmH20のとき)。また、被験者A及びDの計測値の平均値を累乗近似で補完した結果を併せて示した。
【0037】
図8のグラフを表にした結果を表4にあらわす。
【0038】
【表4】
【0039】
表4の結果は、%1秒量を10%刻みとしたときの抵抗値の値を示している。各値は実測値から累乗近似により求めた値である。差圧が30cmH2Oの場合、%1秒量が30のときの抵抗値の累乗近似値は40(cmH20/L/s)であり、%1秒量が50のときの抵抗値の累乗近似値は20.7(cmH20/L/s)であり、%1秒量が80のときの抵抗値の累乗近似値は11.2(cmH20/L/s)であった。
【0040】
これらの各抵抗値と、前述した実験例における抵抗体32の開口率を対応させたグラフを図9に示した。上記基準とした抵抗値である11.2(cmH2O/L/s)、20.7(cmH2O/L/s)、40.0(cmH2O/L/s)に対応する開口率は、各々8.3%、4.6%、2.4%であった。
【0041】
これと同様の実験を合計3回行った。その結果、表5に示すように、抵抗体の内径Φが25mmであって差圧が30cmH2Oの場合、%1秒量が30のときの抵抗値の累乗近似値は概ね40(cmH20/L/s)であり、%1秒量が50のときの抵抗値の累乗近似値は概ね21(cmH20/L/s)であり、%1秒量が80のときの抵抗値の累乗近似値は概ね12(cmH20/L/s)であった。そして、これら基準となる抵抗値に対応する開口率は、各々2.4%、4.5%、8%であった。
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果に基づいて、抵抗値が0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるときがCOPD病期分類におけるI期、抵抗値が12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるときがII期、抵抗値が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるときがIII期、抵抗値が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいときがIV期に該当する呼気抵抗を各々提供するといえる。
【0044】
上記基準とした抵抗値である12(cmH2O/L/s)、21(cmH2O/L/s)、40(cmH2O/L/s)に対応する開口率は、各々8.0%、4.5%、2.4%であった。従って、図10(a)に示すように、このように孔を設けた板状の抵抗体32の開口率を概ね8.0%以上、100%未満とすることで健常な被験者にCOPDのI期を体感させることが可能である。また、抵抗体の開口率を概ね4.5%以上、概ね8.0%未満にすることでII期に相当する呼気抵抗を与え、健常な被験者にCOPDのII期を体感させることが可能である。また、抵抗体の開口率を概ね2.4%以上、概ね4.5%未満にすることで健常な被験者にIII期に相当する呼気抵抗を与え、III期を体感させることが可能である。さらに、抵抗体の開口率を概ね2.4%未満にすることで健常な被験者にIV期に相当する呼気抵抗を与え、IV期を体感させることが可能である。なお、I期,II期,III期,又はIV期の患者の呼気時に、上記いずれかの抵抗体によって呼気抵抗を与えることにより、自己の症状よりも重い症状を体感させることができる。
【0045】
即ち、図10に示した抵抗体32として抵抗体32a、32b、32c、32dのいずれかを選択することによって、任意の症状のCOPDを体感させることを可能とする。このように被験者はCOPDの各症状を体感することで、COPDの予防や症状の悪化を防止したいと考えるため、COPDの早期検査を行う契機となる。また喫煙者に対しては、COPDの症状が進行したときの呼気の困難性を体感させることで禁煙を促すことになる。この例では孔径のみを異ならせているが、孔数を異ならせて開孔率を調整するようにしても良い。
【0046】
特に好ましい値としては、I期用抵抗体の開孔率が9.2%程度であり、II期用抵抗体の開孔率が5.8%程度であり、III期用抵抗体の開孔率が3.1%程度であり、IV期用抵抗体の開孔率が2.1%程度である。このような開孔率とすることにより、被験者が各症状の違いによる呼気抵抗を明確に把握することができる。ここで、各症状に対応した所定の呼気抵抗を生じさせる手法は様々である。例えば以下のような手法が存在する。
【0047】
(メッシュ体の開孔率を変化させる方法)
図11に示すように抵抗体32を構成するメッシュ体の開孔率を相違させることによって、呼気抵抗を相違させる方法がある。メッシュ体は、銅、亜鉛、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属の細線により構成されたものであっても良いが、樹脂網であっても良く、材質は問わない。メッシュ体を呼気が通過する量は、メッシュ、線径、目開き、開孔率に関係するが、一定面積中をどれだけ呼気が通過するかが問題となるため、開孔率によって規定することが最も簡潔であり、呼気抵抗との相関が高いと考えられる。
【0048】
開孔率を変化させる方法は多種あるが、図11にその一例を示す。本例では開孔率の高い順に32a、32b、32c、32dの4つのメッシュ体を選択した。図11(a)に示すI期用メッシュ体32aと図11(b)に示すII期用メッシュ体32bの間ではメッシュは変更しておらず、線径を大幅に拡大することによって、開孔率を所定量縮小させている。図11(b)に示すII期用メッシュ体32bと図11(c)に示すIII期用メッシュ体32cの間では線径をやや縮小する一方でメッシュを大幅に増加させることで開孔率を所定量縮小させている。図11(c)に示すIII期用メッシュ体32cと図11(d)に示すIV期用メッシュ体32dの間ではメッシュは変更しておらず、線径を大幅に拡大することによって、開孔率を所定量縮小させている。
【0049】
(メッシュ体の積層数を変化させる方法)
呼気抵抗を相違させる方法として、メッシュ体の積層数を変化させる方法がある。図12にその例を示す。本例では、図12(a)に示すようにI期を被験者に体感させるときにはメッシュ体1枚のみからなる抵抗体32aを使用し、図12(b)に示すようにII期を被験者に体感させるときにはI期に使用するメッシュ体を2枚積層した抵抗体32bを使用し、図12(c)に示すようにIII期を被験者に体感させるときにはI期に使用するメッシュ体を3枚積層した抵抗体32cを使用し、図12(d)に示すようにIV期を被験者に体感させるときにはI期に使用するメッシュ体を4枚積層した抵抗体32dを使用している。この積層方法を採る場合に、積層する角度(メッシュを構成する線の角度)を相違させることでより高い呼気抵抗(差圧)を生じさせることが可能である。例えば図12(b)〜(d)の例では、積層するメッシュ体の角度を各々相違させているため、積層数が同じであっても、同一角度で積層した場合より高い抵抗を生じるようにすることができる。
【0050】
(不織布の厚さを変化させる方法)
呼気抵抗を相違させる方法として、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル等の不織布を変化させる方法がある。図13にその例を示す。図13(a)に示すように被験者にI期を体感させるときには最も薄い不織布32aを使用し、図13(b)に示すように被験者にII期を体感させるときには不織布32aより厚い不織布32bを使用し、図13(c)に示すように被験者にIII期を体感させるときには不織布32bより厚い不織布32cを使用し、図13(d)に示すように被験者にIV期を体感させるときには最も厚い不織布32dを使用する。このように厚さを変化させる方法以外に、所定の厚さの不織布の積層枚数を変化させることによって、呼気抵抗を相違させることも可能である。
【0051】
(連続気泡発泡体の発泡倍率を変化させる方法)
呼気抵抗を相違させる方法として、連続気泡発泡体の発泡倍率を変化させる方法がある。図14にその例を示す。図14(a)に示すように被験者にI期を体感させるときには発泡倍率が最大である連続気泡発泡体32aを使用し、図14(b)に示すように被験者にII期を体感させるときには連続気泡発泡体32aより発泡倍率が小さい連続気泡発泡体32bを使用し、図14(c)に示すように被験者にIII期を体感させるときには連続気泡発泡体32bより発泡倍率が小さい連続気泡発泡体32cを使用し、図14(d)に示すように被験者にIV期を体感させるときには発泡倍率が最小である連続気泡発泡体32dを使用する。なお、連続気泡発泡体32a、32b、32c、32dの体積は概ね同一としているが、発泡倍率と体積を変化させることによって、適切な差圧に調整するようにしても良い。
【0052】
[2.COPD体感器具(キット型)]
図2には、マウスピース31、抵抗体32、及び抵抗体保持部33から構成される組立型のCOPD体感器具が示されているが、これらが一体となった器具を複数備えるようにしても良い。図15には、I期体感器具34a、II期体感器具34b、III期体感器具34c、及びIV期体感器具34dの4つの器具によって構成されるCODP体感器具30の例を示す。各器具は、図1〜3に示したマウスピース31及び抵抗体保持部33が一体化した筐体35と、当該筐体内部に保持される抵抗体32によって構成されている。
【0053】
I期体感器具34aの筐体35内部には、I期用の抵抗体32aが保持されている。II期体感器具34bの筐体35内部には、II期用の抵抗体32bが保持されている。III期体感器具34cの筐体35内部には、III期用の抵抗体32cが保持されている。IV期体感器具34dの筐体35内部には、IV期用の抵抗体32dが保持されている。抵抗体32によって所定の呼気抵抗を生じさせる方法としては、前述した各方法のいずれを用いても良い。図15の例では、不織布の厚さを相違させることにより差圧を相違させる手法を用いている。
【0054】
被験者にI期を体感させるときにはI期体感器具34aを使用し、II期を体感させるときにはII期体感器具34bを使用し、III期を体感させるときにはIII期体感器具34cを使用し、IV期を体感させるときにはIV期体感器具34dを使用する。これら4つの器具を使用することで各症状を被験者に体感させることができる。このようなキット型のCOPD体感器具は、図1〜3に示した組立型と比較すると扱いが極めて容易である。
【0055】
[3.COPD体感器具(可変抵抗型)]
上述した組立型のCOPD体感器具、キット型のCOPD体感器具の他、可変抵抗型のCOPD体感器具を使用することも可能である。図16には可変抵抗型のCOPD体感器具の例を示す。図16(a)及び(b)に示すように、可変抵抗型のCOPD体感器具30は、マウスピース31及び抵抗体保持部33が一体化した筐体35と、可変抵抗部36と、当該可変抵抗部36を所定の回転量回転させるための操作部37によって構成される。可変抵抗部36は平らな円盤状の平板であり、筐体35の内部に呼気の方向と垂直となるよう設置されている。可変抵抗部36を回転させることによって、マウスピース部側から背面側に通過する呼気の量、即ち呼気抵抗を調整することが可能である。
【0056】
筐体35の頂部には平らな操作部37が設けられており、その操作部37の中央には調整つまみ37aが配置されている。円柱形で平板状の調整つまみ37aの上面には指針37bが表示されている。調整つまみ37aの底面は、円柱形で棒状の連結部材36aの上面に固定され、この連結部材36aの底面は、可変抵抗部36の頂部と固定されている。連結部材36aは筐体35の内周面から頂部に貫通した貫通孔を埋めるように嵌め込まれており、当該貫通孔の壁面によって挟持されている。この連結部材36aと、これに固定されている可変抵抗部36及び調整つまみ37aは一体となっており、調整つまみ37aを水平方向に回転させることで可変抵抗部36を鉛直軸を中心に回転させることができる。これによって、可変抵抗部36を通過する呼気の量を調整することができる。
【0057】
従って、調整つまみ37aの回転量に応じて、I期、II期、III期、IV期に相当する呼気抵抗を提供することが可能である。調整つまみ37aの上面には指針37bが表示されている。一方、操作部37の上面には調整つまみ37aの回転量に対応した4つの目盛り(ここでは[a]、[b]、[c]、[d])が表示されている。
【0058】
指針37bを[a]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が4つの目盛り中で最大となり、可変抵抗部36を通過する呼気の量は最大となる。即ち呼気抵抗は4つの目盛り中で最小となり、このとき被験者にI期を体感させるようになっている。指針37bを[b]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が[a]の位置よりも増加し、被験者にII期を体感させるようになっている。指針37bを[c]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が[b]の位置よりも増加し、被験者にIII期を体感させるようになっている。指針37bを[d]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が4つの目盛り中で最小となり、可変抵抗部36を通過する呼気の量は最小となる。呼気抵抗は4つの目盛り中で最大となり、このとき被験者にIV期を体感させるようになっている。
【0059】
また、本例のCOPD体感器具では、呼気時の抵抗を可変抵抗部によって調整することも可能であるため、1の器具でI期、II期、III期、及びIV期の全ての症状を体感させることができる。また、本発明のCOPD体感装置によれば、呼吸機能検査装置が所定の呼気抵抗が存在する状態におけるCOPD病期分類を表示するので、被験者が体感している状態が、I期、II期、III期、及びIV期のいずれの症状に相当するのかを実際のCODP検査を介して理解させることができる。
【0060】
本例では、可変抵抗部36として板状体を使用したが、これに限らず球状体を使用するようにしても良い。球を貫通する孔の数を回転角度に応じて相違させ、これにより可変抵抗部36の抵抗値を相違させるようにしても良い。また、目盛りとして[a]の位置に[I期]、[b]の位置に[II期]、[c]の位置に[III期]、[d]の位置に[IV期]と表示すると、判断が容易となる。このような可変抵抗部36を有したCOPD体感器具を使用することで、前述した組立型、キット型のように、複数の抵抗体を用意しておく必要が無くなる。また、呼気を行いながら調整つまみ37aを回転させることで、連続的に複数の症状を体感することができる。
【0061】
[4.COPD体感装置]
前述したCOPD体感器具の例によれば、健常者がCOPDの各症状を体感することができる。しかしながら、被験者が現在体感している症状が、I期、II期、III期、IV期のいずれに該当するのを客観的に提示されていないため、COPDの症状を十分に実感できない場合がある。本発明に係るCOPD体感装置は、COPD体感器具30を使用している状態で実測されるデータに基づいたCOPD病期分類を表示することにより、所謂「COPD症状の体感度」を向上させたものである。本例におけるCOPD体感装置は、以下に説明する呼吸機能検査装置1に、前述した抵抗体32又は可変抵抗部36を接続したものである。
【0062】
(呼吸機能検査装置)
本発明で使用する呼吸機能検査装置は、例えば特許文献1に示すように、被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する機能を有するものである。以下、呼吸機能検査装置を図面に従って説明する。図17(a)〜(d)は、呼吸機能検査装置1の外観を示す外観図であり、図17(a)はその平面図、図17(b)は左側面図、図17(c)は正面図、図17(d)は右側面図である。図18は、呼吸機能検査装置1の機能を示す機能ブロック図である。呼吸機能検査装置1は、筐体である本体部15とこれに着脱自在なフローセンサ5等からなる。本体部15は、操作キー4、ディスプレイ7、プリンタ8、制御回路、電源回路等を備えている。本体部15の上部には、これと一体に形成された持ち運び用の取手18が形成されている。取手18は、これを手で掴んで呼吸機能検査装置1を持ち運びするためのものである。
【0063】
フローセンサ5は、本体部15に着脱自在に搭載されており、使用時に本体部15と切り離して使用される。フローセンサ5は、呼吸流量に比例した差圧を発生させるものであり、被検者の呼気が吹き込まれる吹込口17を備えている。吹込口17から呼気が吹き込まれることにより、フローセンサ5内に差圧が生じ、この差圧が差圧チューブを介して本体部15内の制御回路に伝達される。図18に示すように、制御回路は、フローセンサ5にて発生した差圧を計測してアナログ信号に変換する圧力センサ10、この圧力センサ10から出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器11、このA/D変換器11により変換されたディジタル信号の処理を行うCPU12等からなる。
【0064】
フローセンサ5は、図17(c)に示すように本体外部に設けられており、2本のチューブからなる差圧チューブ16の一端が接続され、他端が本体部15の差圧チューブ接続口6、6に接続されている。このフローセンサ5は本体部15と着脱自在であり、使用していないときには図17(c)に示すように本体部15のホルダに収容されており、使用時にホルダから取り出して被検者によって把持される。
【0065】
フローセンサ5の周辺について図19を用いて詳述する。フローセンサ5は筐体となるフローセンサケース5aによって覆われており、このフローセンサケース5aの側面にはフローセンサ5に呼気を吹き込むための吹込口17が設けられている。この吹込口17には、通常フィルタ41を介して吹込部材40が接続される。またフローセンサケース5aの下部にはフローセンサケース5aを把持するためのハンドル5bが設けられている。被検者がこのハンドル5bを把持した状態で、フローセンサ5に設けられた吹込口17にフィルタ41を介して取り付けられた吹込部材40を口に含み、医師や検査技師の指示に従い呼吸を行うことでCOPDの検査が行われる。
【0066】
このフローセンサ5の流管内には抵抗体が配置されている。この抵抗体は、例えば膜状の抵抗体が流管内の気体の流れを遮るように配置されており、この流管内に気体の流れが生じると抵抗体の前後に差圧が発生する。この抵抗体の前後の圧力は、該抵抗体の前後に配される圧力ポート、及び該圧力ポートの各々と接続される差圧チューブ16を介して、差圧チューブ接続口6、6に伝達される構成となっている。即ち差圧チューブ16を構成する2本のチューブのうち一方が抵抗体前の圧力を当該チューブと接続される一方のチューブ接続口6に伝達し、他方が抵抗体後の圧力を当該チューブと接続される他方のチューブ接続口6に伝達する。本体部15側ではこのチューブ接続口6、6の差圧を検出することにより、流管内を流れる気体の流量、即ち呼吸流量を計測することができる。この呼吸流量は、呼吸流速とも呼ばれる。なお、この方式のフローセンサは、いわゆる差圧式と呼ばれるものであり、広く使用されている。
【0067】
図18に示す圧力センサ10は、検出される差圧に比例したアナログ信号を出力するものである。本例では、半導体の差圧センサであり、チューブ接続口6、6間の差圧を検出するための差圧検出部と、該差圧検出部により検出される差圧に比例した電圧を出力するための出力端子を備える。なお、本例ではアナログ信号として電圧を出力しているが、これに限らず、アナログ信号として検出された差圧に比例する電流を出力しても良い。A/D変換器11は、アナログ電子信号をディジタル信号に変換するためのものである。本例では、半導体のA/Dコンバータであり、圧力センサ10の出力端子から出力されるアナログ信号を、後述するCPU12において処理可能なディジタル信号に変換して、ディジタル出力端子から出力する。
【0068】
CPU12は、EEPROM13に記憶されているCOPD検査用プログラムをRAM14を作業領域として実行することにより、接続される各構成要素の動作を制御して、あるいは各構成要素からの信号を受信して各種の処理を行うものである。本例では、A/D変換器11からの出力であり前記差圧に比例した値を示すディジタル信号に基づいて呼吸流量を算出する処理を行う。この算出は、予め記憶している差圧と呼吸流量との間の関係式に基づいて行う。即ちディジタル信号から差圧を特定し、該特定した差圧を関係式に入力して呼吸流量を算出する。また、本例ではこの呼吸流量の積分を行うことによって呼吸容量が算出される。
【0069】
これらの計測手段によって、最大吸気位から一気に呼出させて最大呼気位に達したときの容量の差分である努力性肺活量を測定し、さらにこのとき最初の一秒間に呼出された容量である1秒量も測定する。ここで測定されたデータはRAM14に蓄積され、測定が終了するとRAM14に蓄積されたデータがEEPROM13に記憶される。このようにして測定された努力性肺活量及び1秒量、並びに操作キー4によって入力された被験者の性別、年齢、及び身長に基づいて、リスク群(正常)、I期、II期、III期、又はIV期のうち、該当する病期分類がディスプレイ7に表示される。
【0070】
(COPD体感器具の接続)
本発明のCOPD体感装置は、吹込口17に抵抗体32又は可変抵抗部36を通過した呼気が吹き込まれるようにしたものである。本例では、吹込口17に抵抗体32を接続する例について説明する。本例では図20に示すように、前述したキット型のCOPD体感器具30を用いている。即ち、マウスピースと抵抗体保持部とが一体化した筐体35の内部に抵抗体32が設けられている。ここで吹込口17には、I期体感器具34a、II期体感器具34b、III期体感器具34c、又はIV期体感器具34dのいずれかの器具の筐体35が接続される。筐体35の内周の両端近傍には凸部が形成されており、吹込口17は背面側の凸部に係合して接続される。一方、正面側、即ちマウスピース側の凸部にはフィルタ41の接続部材41aが係合して接続される。フィルタ41の正面側には吹込部材40が接合される。
【0071】
このように、吹込部材40及びフィルタ41と、吹込口17との間にI期体感器具34a、II期体感器具34b、III期体感器具34c、又はIV期体感器具34dのいずれかの器具を接続する。これにより、被験者が吹込部材40から吹き込んだ呼気は、上記いずれかの器具の抵抗体32(I期用抵抗体32a、II期用抵抗体32b、III期用抵抗体32c、又はIV期用抵抗体32d)を通過して、吹込口17に吹き込まれることになり、この呼気を対象として呼吸機能検査装置1によって、COPD病期分類が判定され、ディスプレイ7に表示されることになる。これによって、被験者が体感している呼気の困難性とディスプレイ7に表示されている病期分類から、COPD症状の体感度を高めることが可能である。
【0072】
上記の例では、キット型のCOPD体感器具30を接続しているが、組立型のCOPD体感器具の抵抗体32及び抵抗体保持部33を、フィルタ41と吹込口17との間に接続するようにしても良い。この場合にも、抵抗体32を選択することで、所定の呼気抵抗が存在する状態におけるCOPD病期分類を表示させることができる。また、可変抵抗型のCOPD体感器具を、フィルタ41と吹込口17との間に接続するようにしても良い。このような構成とすることで、呼気抵抗を調整つまみ37aによって調整しつつ、呼気抵抗の変化によって、どのようにCOPD病期分類が推移するのかを確認することも可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…呼吸機能検査装置
5…フローセンサ
7…ディスプレイ
10…圧力センサ
17…吹込口
30…COPD体感器具
31…マウスピース
32…抵抗体
33…抵抗体保持部材
36…可変抵抗部
37…操作部
40…吹込部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease(以下「COPD」と称する))を体感させることを可能とするCOPD体感器具、及びそのCOPD体感器具を接続したCOPD体感装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、呼吸器系の病気であるCOPDの患者数が急速に増加している。COPDは徐々に進行していく病気であり、I期の段階では症状を感じ難いが、進行すると僅かな運動で息切れを感じるようになり、次第に安静状態でも呼吸が苦しくなり、さらに悪化すると死に至る。COPDによる死亡率は年々上昇しており、2008年度死亡順位は10位、男性に限れば7位となっている(非特許文献1)。今後、COPDによる死亡率はさらに上がり、死亡順位は3位になるとも推定されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4008953号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】GOLD日本委員会編「COPDに関する統計資料」、Internet URLhttp://www.gold-jac.jp/copd_facts_in_japan/
【非特許文献2】Nippon Boehringer Co.,Ltd著「世界中で増え続けるCOPD」、Internet URLhttp://www.spinet.jp/copd01_world.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1によれば、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人と推定されているが、2005年度の厚生労働省患者調査によると、病院でCOPDと診断された患者数は約22万3千人に過ぎない。これは、COPDという病気が一般市民に未だ認知されていないことが最大の理由である。近年は日本呼吸器学会等によってCOPDの啓蒙活動が積極的に行われているものの、2009年度の調査では80%以上の一般市民がCOPDについて「知らない」と答えている。これはCOPDの死亡率を考慮すると極めて低い数値である。
【0006】
上述したようにCOPDは徐々に進行していく病気であるため、早期検査、早期発見、早期治療が極めて重要である。しかしCOPDに対する認知度の低さから、軽症の段階にあるCOPD有病者が検査を受けるケースは極めて少なく、症状が重度になってから初めてCOPDの検査を受けるケースが多い。また、COPDが進行したときの呼吸の困難性を理解しておらず、当然実感もできていないため、医師から検査を勧められたにもかかわらず、COPDを軽視して検査を受けようとしないケースも多い。さらにCOPDは別名「たばこ病」とも呼ばれており、喫煙と極めて大きな関連がある。健常者であっても喫煙を行うことによりCOPDとなるリスクが高まり、検査の必要性も非喫煙者より格段に高くなるが、COPDに対する不理解から検査を受けないケースが多い。このような状況を放置すると、将来的にCOPD関連の医療費が増加し、経済的、社会的負荷が大きくなってしまう問題がある。
【0007】
本発明は、このような背景のもとになされたものであり、その目的は、被験者にCOPDの症状を体感させ、早期にCOPD検査を行う契機とするためのCOPD体感器具、及びそのCOPD体感器具を接続したCOPD体感装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、次のような手段を採る。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
【0009】
本発明1に係るCOPD体感器具(30)は、被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗が0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期用抵抗体(32a)と、前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期用抵抗体(32b)と、前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期用抵抗体(32c)と、前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期用抵抗体(32d)とを備え、前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から任意の抵抗体を適宜選択可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明2に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1のCOPD体感器具であって、被験者が呼気を吹き込むマウスピースをさらに備え、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)から任意の抵抗体を適宜選択して前記マウスピースに取り付け可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明3に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1のCOPD体感器具であって、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記I期用抵抗体(32a)とが一体となったI期体感器具(34a)と、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記II期用抵抗体(32b)とが一体となったII期体感器具(34b)と、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記III期用抵抗体(32c)とが一体となったIII期体感器具(34c)と、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部(筐体35)と前記IV期用抵抗体(32d)とが一体となったIV期体感器具(34d)と、から構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明4に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれも貫通孔が設けられた板状物によって構成され、各抵抗体を構成する板状物に設けられた貫通孔の開口率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0013】
本発明5に係るCOPD体感器具(30)は、本発明4のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)を構成する板状物の開孔率は概ね8%以上、100%未満であり、前記II期用抵抗体(32b)を構成する板状物の開孔率は概ね8%より小さく概ね4.5%以上であり、前記III期用抵抗体(32c)を構成する板状物の開孔率は概ね4.5%より小さく概ね2.4%以上であり、前記IV期用抵抗体(32d)を構成する板状物の開孔率は概ね2.4%より小さいことを特徴とする。この開孔率とは、板状物の全面積(呼気経路の断面積)に対する孔面積の比率であり、後述する実施例においては、直径25mmの円板状物の全面積490.63mm2に対しての孔面積の比率である。
【0014】
本発明6に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の開孔率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0015】
本発明7に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の積層数を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0016】
本発明8に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれも不織布によって構成され、各抵抗体を構成する不織布の厚さを相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0017】
本発明9に係るCOPD体感器具(30)は、本発明1ないし3から選択される1のCOPD体感器具であって、前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)は、いずれも連続気泡発泡体によって構成され、各抵抗体を構成する連続気泡発泡体の発泡倍率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とする。
【0018】
本発明10に係るCOPD体感器具(30)は、被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と、被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗を可変可能な可変抵抗部から構成されるCOPD体感器具であって、前記可変抵抗部は、前記呼気抵抗が概ね0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期状態と、前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期状態と、前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期状態と、前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期状態に適宜変更可能であることを特徴とする。
【0019】
本発明11に係るCOPD体感器具(30)は、本発明10のCOPD体感器具であって、前記可変抵抗部を回転させる回転操作部(操作部37)を有し、前記回転操作部には、前記可変抵抗部の回転量に対応してI期状態(a)、II期状態(b)、III期状態(c)、及びIV期状態(d)が表示されており、前記表示に基づいて前記可変抵抗部を所定量回転させることによって当該可変抵抗部を通過する呼気の流量を変化させ、前記I期状態、前記II期状態、前記III期状態、又は前記IV期状態に適宜変更可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明12に係るCOPD体感器具(30)は、本発明2又は3のCOPD体感器具と、被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置(1)と、から構成されるCOPD体感装置であって、前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口(17)を備え、当該吹込口には前記I期用抵抗体(32a)、前記II期用抵抗体(32b)、前記III期用抵抗体(32c)、及び前記IV期用抵抗体(32d)から選択される任意の抵抗体が接続され、前記呼吸機能検査装置が、前記抵抗体を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とする。
【0021】
本発明13に係るCOPD体感装置は、本発明10のCOPD体感器具(30)と、被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置(1)と、から構成されるCOPD体感装置であって、前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口(17)を備え、当該吹込口には前記可変抵抗部が接続され、前記呼吸機能検査装置が、前記可変抵抗部を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のCOPD体感器具によれば、被験者にI期、II期、III期、及びIV期のCOPD症状を体感させることができる。健常者であってもCOPDの各症状における呼吸の困難性を体感することができるため、COPDの予防、早期発見、早期治療の重要性を認識させてCOPDの検査を受ける契機とすることができる。また、軽症患者に対してもCOPDが進行したときの症状を体感させることができるため、COPDの早期治療の重要性を認識させ、COPDの進行を防ぐのに役立てることが可能である。さらに、喫煙者には喫煙を継続することのリスクを認知させてCOPDの検査の必要性を認識させること、禁煙の契機を提供することが可能である。
【0023】
本発明によって、COPDの早期検査を促すことができ、COPDの早期発見、早期治療に貢献することができ、将来的なCOPD関連の医療費抑制にも資することになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1はCOPD体感器具の斜視図である。
【図2】図2はマウスピース、抵抗体、及び抵抗体保持部から構成されるCOPD体感器具を分解した状態を示す側面断面図である。
【図3】図3(a)はマウスピース、抵抗体、及び抵抗体保持部から構成されるCOPD体感器具が組み立てられた状態を示す側面断面図であり、図3(b)は同COPD体感器具をマウスピース側から見た正面図である。
【図4】図4(a)は呼気抵抗の測定実験で使用する抵抗体の斜視図であり、図4(b)は正面図である。
【図5】図5(a)は呼気抵抗の測定実験で使用する抵抗体と実験用マウスピースの接続方法を示す図である。図5(b)は呼気抵抗の測定実験で使用する装置の概要を示す図である。
【図6】図6は開口率と流量値の関係を示す図である。
【図7】図7は、差圧が30cmH20となるときの%1秒量と抵抗値の関係を示す図である(横軸:抵抗,縦軸:%1秒量)。
【図8】図8は、差圧が30cmH20となるときの%1秒量と抵抗値の関係を示す図である(横軸:%1秒量,縦軸:抵抗)。
【図9】図9は、抵抗値と開孔率の関係を示す図である。
【図10】図10は貫通孔が設けられた板状物によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図11】図11はメッシュ体によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図12】図12はメッシュ体によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図13】図13は不織布によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図14】図14は連続気泡発泡体によって構成される抵抗体の一例を示す図である。
【図15】図15はI期体感器具、II期体感器具、III期体感器具、IV期体感器具から構成されるCOPD体感器具の一例を示す側面断面図である。
【図16】図16(a)は可変抵抗部を有するCOPD体感器具の側面断面図であり、図16(b)は同COPD体感器具をマウスピース部側から見た正面図であり、図16(c)は同COPD体感器具の平面図である。
【図17】図17はCODP体感装置を構成する呼吸機能検査装置の一例を表す図であり、図17(a)はその平面図、図17(b)は左側面図、図17(c)は正面図、図17(d)は右側面図である。
【図18】図18は図17の呼吸機能検査装置の一例を表す機能ブロック図である。
【図19】図19は呼吸機能検査装置の吹込口にフィルタ及びマウスピースを接続する例を示す図である。
【図20】図20は呼吸機能検査装置の吹込口にCOPD体感装置、フィルタ、及びマウスピースを接続する例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[1.COPD体感器具(組立型)]
以下、本発明のCOPD体感器具の一例を説明する。COPD体感器具30は、例えば図1に示す形状を有している。図1に示すCOPD体感器具30は、図2に示すようにマウスピース31、抵抗体32、及び抵抗体保持部33から構成され、図3に示すようにこれらを組み付けた状態で使用するものである。図3(a)に示す抵抗体32は、抵抗体保持部33の端面の縁部と、マウスピース31内部の凸部壁面に挟まれて支持され、図3(b)の正面図に示すように、マウスピース31側から見たときに中央部周辺を視認できる構成となっている。
【0026】
本例において、マウスピース31及び抵抗体保持部33はエラストマー成分を多量に含む樹脂製又はゴム製であり、柔軟性を有している。また、抵抗体保持部33の外周面の両端近くには、凸部33aが設けられている。凸部33aは外周面の端面に平行である。抵抗体保持部33の凸部33aを含む外周面の外径は、マウスピース31の背面側の内径より僅かに大きい。また、抵抗体保持部33の凸部33aを含まない外周面の外径は、マウスピース31の背面側の内径と概ね同一である。従って、図3(a)に示すように、マウスピース31の内周に抵抗体保持部33の外周を嵌め込むことで、凸部33aをマウスピース31の内周に食い込ませ、マウスピース31と抵抗体保持部33を固定することができる。この嵌め込みの際、抵抗体保持部33の端面と、マウスピース31内部の凸部壁面との間に抵抗体32を挟むことで、マウスピース31、抵抗体32、抵抗体保持部33を一体化することができる。嵌め込み量は、マウスピース31内部に設けられた凸部壁面によって規定される一定量である。一旦嵌め込むとマウスピース31の内周面に凸部33aが食い込み、その摩擦力により、容易に分離しがたい構造となっている。
【0027】
(呼気抵抗と病期分類の相関)
本発明は、所定の抵抗体32を備えたCOPD体感器具30のマウスピース31から被験者が呼気を吹き込むことで、COPDの症状、即ち呼気の困難性を体感することを特徴とする。COPDの症状には、I期、II期、III期、及びIV期の4つが存在するが、COPD体感器具によって被験者は各症状に相当する呼気の困難性を体感することができる。本発明者らは、これら4つの症状を再現させることができるようにCOPD体感器具内部の抵抗体32を設計した。
【0028】
被験者が呼気をCOPD体感器具30に吹き込むと、その呼気が抵抗体32に衝突し、その結果、抵抗体32の前後(正面側と背面側)には差圧が生じる。本実施の形態中、この差圧(cmH2O)を当該呼気の流量値で除した値(L/s)を「呼気抵抗(cmH2O/L/s)」と称することにする。仮に呼気の流量値が一定であるとすると、抵抗体32が提供する呼気抵抗が大きいほど抵抗体32の前後の差圧は大きく、呼気抵抗が小さいほど差圧が小さいという関係がある。COPD病期分類は呼気抵抗と密接な関連性があり、COPDがI期、II期、III期、IV期と進行するにつれ、呼気抵抗は大きくなるという特徴がある。この事実を応用し、本発明者らはCOPD体感器具において抵抗体32が提供する呼気抵抗とCOPD病期分類を対応させることを試みた。その結果、抵抗体32が提供する呼気抵抗を調整することで、COPD病期分類の各症状を被験者に体感させることを可能とした。
【0029】
(抵抗体の開孔率と呼気抵抗の関係)
本発明者らは、抵抗体として孔が設けられた板状物を用いて、当該板状物の前後に生じる差圧に基づいて呼気抵抗の値を測定する実験を行った。図4(a)には、抵抗体32の斜視図を示す。本実験で使用する板状物である抵抗体32は、内部が空洞である円筒状物50と一体化されている。図4(b)は抵抗体32の正面図である。本実験では、表1に示すように孔面積の異なる10の抵抗体を用意し、それぞれについて呼気抵抗の値を測定した。開孔率(%)=孔面積/全面積×100とした。この全面積は、板状物である抵抗体32の孔の面積を含み、円筒状物50の縁部との接合部分を除いた面積である。抵抗体32の直径から円筒状物50の縁部との接合部分を除いた直径Φは25mmであり、これに基づいて計算した全面積は490.63mm2であった。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示した各抵抗体に関して、図5に示す実験装置を利用して呼気抵抗を測定する実験を行った。図5(a)に示すように、抵抗体32と実験用マウスピースを抵抗体固定具によって固定する。図5(b)に示すように、固定した抵抗体32及び実験用マウスピースの前後に擬似的な呼吸流路を設け、抵抗体の一方からブロアーで空気を吸引した。このとき、抵抗体の前後の差圧が30cmH20となるようにブロアーの流量値を調整した。このとき測定された流量値を表2に示す。表2に示すように、開孔率が低くなるほど、これに伴い流量値も低下する。差圧が30cmH20の場合の、流量値(L/s)と開孔率(%)の関係を図6のグラフに示す。また、本実験において抵抗体の前後の差圧(30cmH20)を、当該差圧が生じたときの流量値(L/s)で除した値である抵抗値(呼気抵抗)を、表3に示した。開孔率(%)が低くなるほど、抵抗値は高くなる。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
図7には、%1秒量(%FEV1とも表記される)と抵抗値の関係を示す。1秒量とは、最大吸気位から一気に呼出させて最大呼気位に達したときの容量の差分である努力性肺活量のうち、最初の1秒間に呼出された容量である。%1秒量とは、正常値(予測値とも呼ばれる)である1秒量に対しての測定値である1秒量の割合である。被験者A及びDはいずれも健常者である(%1秒量が100以上)。その後、表1に示した各抵抗体を順次、後述する呼吸機能検査装置1に接続し、抵抗体を接続した状態で被験者A及びDの1秒量を測定して、%1秒量を計算した。
【0035】
上記のようにして計算した%1秒量と差圧が30cmH2Oとなるときの抵抗値との関係を図7に示す。各グラフには被験者Aの%1秒量、被験者Dの%1秒量、被験者A及びBの2者の平均値と、抵抗値の関係が折線グラフによって示されている。COPD病期分類の区分として、%1秒量≧80のときがI期(軽度の気流閉塞)、50≦%1秒量<80のときがII期(中等度の気流閉塞)、30≦%1秒量<50のときがIII期(高度の気流閉塞)、%1秒量<30のときがIV期(極めて高度の気流閉塞)の条件とされている。
【0036】
これら%1秒量と抵抗値との関係から、COPD病期分類と抵抗値とを関連づけることができる。図8には%1秒量を横軸、抵抗値(cmH20/L/s)を縦軸にとり、各抵抗値と%1秒量の計測値を直線で補完したグラフを示す(差圧が30cmH20のとき)。また、被験者A及びDの計測値の平均値を累乗近似で補完した結果を併せて示した。
【0037】
図8のグラフを表にした結果を表4にあらわす。
【0038】
【表4】
【0039】
表4の結果は、%1秒量を10%刻みとしたときの抵抗値の値を示している。各値は実測値から累乗近似により求めた値である。差圧が30cmH2Oの場合、%1秒量が30のときの抵抗値の累乗近似値は40(cmH20/L/s)であり、%1秒量が50のときの抵抗値の累乗近似値は20.7(cmH20/L/s)であり、%1秒量が80のときの抵抗値の累乗近似値は11.2(cmH20/L/s)であった。
【0040】
これらの各抵抗値と、前述した実験例における抵抗体32の開口率を対応させたグラフを図9に示した。上記基準とした抵抗値である11.2(cmH2O/L/s)、20.7(cmH2O/L/s)、40.0(cmH2O/L/s)に対応する開口率は、各々8.3%、4.6%、2.4%であった。
【0041】
これと同様の実験を合計3回行った。その結果、表5に示すように、抵抗体の内径Φが25mmであって差圧が30cmH2Oの場合、%1秒量が30のときの抵抗値の累乗近似値は概ね40(cmH20/L/s)であり、%1秒量が50のときの抵抗値の累乗近似値は概ね21(cmH20/L/s)であり、%1秒量が80のときの抵抗値の累乗近似値は概ね12(cmH20/L/s)であった。そして、これら基準となる抵抗値に対応する開口率は、各々2.4%、4.5%、8%であった。
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果に基づいて、抵抗値が0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるときがCOPD病期分類におけるI期、抵抗値が12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるときがII期、抵抗値が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるときがIII期、抵抗値が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいときがIV期に該当する呼気抵抗を各々提供するといえる。
【0044】
上記基準とした抵抗値である12(cmH2O/L/s)、21(cmH2O/L/s)、40(cmH2O/L/s)に対応する開口率は、各々8.0%、4.5%、2.4%であった。従って、図10(a)に示すように、このように孔を設けた板状の抵抗体32の開口率を概ね8.0%以上、100%未満とすることで健常な被験者にCOPDのI期を体感させることが可能である。また、抵抗体の開口率を概ね4.5%以上、概ね8.0%未満にすることでII期に相当する呼気抵抗を与え、健常な被験者にCOPDのII期を体感させることが可能である。また、抵抗体の開口率を概ね2.4%以上、概ね4.5%未満にすることで健常な被験者にIII期に相当する呼気抵抗を与え、III期を体感させることが可能である。さらに、抵抗体の開口率を概ね2.4%未満にすることで健常な被験者にIV期に相当する呼気抵抗を与え、IV期を体感させることが可能である。なお、I期,II期,III期,又はIV期の患者の呼気時に、上記いずれかの抵抗体によって呼気抵抗を与えることにより、自己の症状よりも重い症状を体感させることができる。
【0045】
即ち、図10に示した抵抗体32として抵抗体32a、32b、32c、32dのいずれかを選択することによって、任意の症状のCOPDを体感させることを可能とする。このように被験者はCOPDの各症状を体感することで、COPDの予防や症状の悪化を防止したいと考えるため、COPDの早期検査を行う契機となる。また喫煙者に対しては、COPDの症状が進行したときの呼気の困難性を体感させることで禁煙を促すことになる。この例では孔径のみを異ならせているが、孔数を異ならせて開孔率を調整するようにしても良い。
【0046】
特に好ましい値としては、I期用抵抗体の開孔率が9.2%程度であり、II期用抵抗体の開孔率が5.8%程度であり、III期用抵抗体の開孔率が3.1%程度であり、IV期用抵抗体の開孔率が2.1%程度である。このような開孔率とすることにより、被験者が各症状の違いによる呼気抵抗を明確に把握することができる。ここで、各症状に対応した所定の呼気抵抗を生じさせる手法は様々である。例えば以下のような手法が存在する。
【0047】
(メッシュ体の開孔率を変化させる方法)
図11に示すように抵抗体32を構成するメッシュ体の開孔率を相違させることによって、呼気抵抗を相違させる方法がある。メッシュ体は、銅、亜鉛、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属の細線により構成されたものであっても良いが、樹脂網であっても良く、材質は問わない。メッシュ体を呼気が通過する量は、メッシュ、線径、目開き、開孔率に関係するが、一定面積中をどれだけ呼気が通過するかが問題となるため、開孔率によって規定することが最も簡潔であり、呼気抵抗との相関が高いと考えられる。
【0048】
開孔率を変化させる方法は多種あるが、図11にその一例を示す。本例では開孔率の高い順に32a、32b、32c、32dの4つのメッシュ体を選択した。図11(a)に示すI期用メッシュ体32aと図11(b)に示すII期用メッシュ体32bの間ではメッシュは変更しておらず、線径を大幅に拡大することによって、開孔率を所定量縮小させている。図11(b)に示すII期用メッシュ体32bと図11(c)に示すIII期用メッシュ体32cの間では線径をやや縮小する一方でメッシュを大幅に増加させることで開孔率を所定量縮小させている。図11(c)に示すIII期用メッシュ体32cと図11(d)に示すIV期用メッシュ体32dの間ではメッシュは変更しておらず、線径を大幅に拡大することによって、開孔率を所定量縮小させている。
【0049】
(メッシュ体の積層数を変化させる方法)
呼気抵抗を相違させる方法として、メッシュ体の積層数を変化させる方法がある。図12にその例を示す。本例では、図12(a)に示すようにI期を被験者に体感させるときにはメッシュ体1枚のみからなる抵抗体32aを使用し、図12(b)に示すようにII期を被験者に体感させるときにはI期に使用するメッシュ体を2枚積層した抵抗体32bを使用し、図12(c)に示すようにIII期を被験者に体感させるときにはI期に使用するメッシュ体を3枚積層した抵抗体32cを使用し、図12(d)に示すようにIV期を被験者に体感させるときにはI期に使用するメッシュ体を4枚積層した抵抗体32dを使用している。この積層方法を採る場合に、積層する角度(メッシュを構成する線の角度)を相違させることでより高い呼気抵抗(差圧)を生じさせることが可能である。例えば図12(b)〜(d)の例では、積層するメッシュ体の角度を各々相違させているため、積層数が同じであっても、同一角度で積層した場合より高い抵抗を生じるようにすることができる。
【0050】
(不織布の厚さを変化させる方法)
呼気抵抗を相違させる方法として、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル等の不織布を変化させる方法がある。図13にその例を示す。図13(a)に示すように被験者にI期を体感させるときには最も薄い不織布32aを使用し、図13(b)に示すように被験者にII期を体感させるときには不織布32aより厚い不織布32bを使用し、図13(c)に示すように被験者にIII期を体感させるときには不織布32bより厚い不織布32cを使用し、図13(d)に示すように被験者にIV期を体感させるときには最も厚い不織布32dを使用する。このように厚さを変化させる方法以外に、所定の厚さの不織布の積層枚数を変化させることによって、呼気抵抗を相違させることも可能である。
【0051】
(連続気泡発泡体の発泡倍率を変化させる方法)
呼気抵抗を相違させる方法として、連続気泡発泡体の発泡倍率を変化させる方法がある。図14にその例を示す。図14(a)に示すように被験者にI期を体感させるときには発泡倍率が最大である連続気泡発泡体32aを使用し、図14(b)に示すように被験者にII期を体感させるときには連続気泡発泡体32aより発泡倍率が小さい連続気泡発泡体32bを使用し、図14(c)に示すように被験者にIII期を体感させるときには連続気泡発泡体32bより発泡倍率が小さい連続気泡発泡体32cを使用し、図14(d)に示すように被験者にIV期を体感させるときには発泡倍率が最小である連続気泡発泡体32dを使用する。なお、連続気泡発泡体32a、32b、32c、32dの体積は概ね同一としているが、発泡倍率と体積を変化させることによって、適切な差圧に調整するようにしても良い。
【0052】
[2.COPD体感器具(キット型)]
図2には、マウスピース31、抵抗体32、及び抵抗体保持部33から構成される組立型のCOPD体感器具が示されているが、これらが一体となった器具を複数備えるようにしても良い。図15には、I期体感器具34a、II期体感器具34b、III期体感器具34c、及びIV期体感器具34dの4つの器具によって構成されるCODP体感器具30の例を示す。各器具は、図1〜3に示したマウスピース31及び抵抗体保持部33が一体化した筐体35と、当該筐体内部に保持される抵抗体32によって構成されている。
【0053】
I期体感器具34aの筐体35内部には、I期用の抵抗体32aが保持されている。II期体感器具34bの筐体35内部には、II期用の抵抗体32bが保持されている。III期体感器具34cの筐体35内部には、III期用の抵抗体32cが保持されている。IV期体感器具34dの筐体35内部には、IV期用の抵抗体32dが保持されている。抵抗体32によって所定の呼気抵抗を生じさせる方法としては、前述した各方法のいずれを用いても良い。図15の例では、不織布の厚さを相違させることにより差圧を相違させる手法を用いている。
【0054】
被験者にI期を体感させるときにはI期体感器具34aを使用し、II期を体感させるときにはII期体感器具34bを使用し、III期を体感させるときにはIII期体感器具34cを使用し、IV期を体感させるときにはIV期体感器具34dを使用する。これら4つの器具を使用することで各症状を被験者に体感させることができる。このようなキット型のCOPD体感器具は、図1〜3に示した組立型と比較すると扱いが極めて容易である。
【0055】
[3.COPD体感器具(可変抵抗型)]
上述した組立型のCOPD体感器具、キット型のCOPD体感器具の他、可変抵抗型のCOPD体感器具を使用することも可能である。図16には可変抵抗型のCOPD体感器具の例を示す。図16(a)及び(b)に示すように、可変抵抗型のCOPD体感器具30は、マウスピース31及び抵抗体保持部33が一体化した筐体35と、可変抵抗部36と、当該可変抵抗部36を所定の回転量回転させるための操作部37によって構成される。可変抵抗部36は平らな円盤状の平板であり、筐体35の内部に呼気の方向と垂直となるよう設置されている。可変抵抗部36を回転させることによって、マウスピース部側から背面側に通過する呼気の量、即ち呼気抵抗を調整することが可能である。
【0056】
筐体35の頂部には平らな操作部37が設けられており、その操作部37の中央には調整つまみ37aが配置されている。円柱形で平板状の調整つまみ37aの上面には指針37bが表示されている。調整つまみ37aの底面は、円柱形で棒状の連結部材36aの上面に固定され、この連結部材36aの底面は、可変抵抗部36の頂部と固定されている。連結部材36aは筐体35の内周面から頂部に貫通した貫通孔を埋めるように嵌め込まれており、当該貫通孔の壁面によって挟持されている。この連結部材36aと、これに固定されている可変抵抗部36及び調整つまみ37aは一体となっており、調整つまみ37aを水平方向に回転させることで可変抵抗部36を鉛直軸を中心に回転させることができる。これによって、可変抵抗部36を通過する呼気の量を調整することができる。
【0057】
従って、調整つまみ37aの回転量に応じて、I期、II期、III期、IV期に相当する呼気抵抗を提供することが可能である。調整つまみ37aの上面には指針37bが表示されている。一方、操作部37の上面には調整つまみ37aの回転量に対応した4つの目盛り(ここでは[a]、[b]、[c]、[d])が表示されている。
【0058】
指針37bを[a]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が4つの目盛り中で最大となり、可変抵抗部36を通過する呼気の量は最大となる。即ち呼気抵抗は4つの目盛り中で最小となり、このとき被験者にI期を体感させるようになっている。指針37bを[b]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が[a]の位置よりも増加し、被験者にII期を体感させるようになっている。指針37bを[c]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が[b]の位置よりも増加し、被験者にIII期を体感させるようになっている。指針37bを[d]の位置に合わせると、可変抵抗部36の回転量が4つの目盛り中で最小となり、可変抵抗部36を通過する呼気の量は最小となる。呼気抵抗は4つの目盛り中で最大となり、このとき被験者にIV期を体感させるようになっている。
【0059】
また、本例のCOPD体感器具では、呼気時の抵抗を可変抵抗部によって調整することも可能であるため、1の器具でI期、II期、III期、及びIV期の全ての症状を体感させることができる。また、本発明のCOPD体感装置によれば、呼吸機能検査装置が所定の呼気抵抗が存在する状態におけるCOPD病期分類を表示するので、被験者が体感している状態が、I期、II期、III期、及びIV期のいずれの症状に相当するのかを実際のCODP検査を介して理解させることができる。
【0060】
本例では、可変抵抗部36として板状体を使用したが、これに限らず球状体を使用するようにしても良い。球を貫通する孔の数を回転角度に応じて相違させ、これにより可変抵抗部36の抵抗値を相違させるようにしても良い。また、目盛りとして[a]の位置に[I期]、[b]の位置に[II期]、[c]の位置に[III期]、[d]の位置に[IV期]と表示すると、判断が容易となる。このような可変抵抗部36を有したCOPD体感器具を使用することで、前述した組立型、キット型のように、複数の抵抗体を用意しておく必要が無くなる。また、呼気を行いながら調整つまみ37aを回転させることで、連続的に複数の症状を体感することができる。
【0061】
[4.COPD体感装置]
前述したCOPD体感器具の例によれば、健常者がCOPDの各症状を体感することができる。しかしながら、被験者が現在体感している症状が、I期、II期、III期、IV期のいずれに該当するのを客観的に提示されていないため、COPDの症状を十分に実感できない場合がある。本発明に係るCOPD体感装置は、COPD体感器具30を使用している状態で実測されるデータに基づいたCOPD病期分類を表示することにより、所謂「COPD症状の体感度」を向上させたものである。本例におけるCOPD体感装置は、以下に説明する呼吸機能検査装置1に、前述した抵抗体32又は可変抵抗部36を接続したものである。
【0062】
(呼吸機能検査装置)
本発明で使用する呼吸機能検査装置は、例えば特許文献1に示すように、被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する機能を有するものである。以下、呼吸機能検査装置を図面に従って説明する。図17(a)〜(d)は、呼吸機能検査装置1の外観を示す外観図であり、図17(a)はその平面図、図17(b)は左側面図、図17(c)は正面図、図17(d)は右側面図である。図18は、呼吸機能検査装置1の機能を示す機能ブロック図である。呼吸機能検査装置1は、筐体である本体部15とこれに着脱自在なフローセンサ5等からなる。本体部15は、操作キー4、ディスプレイ7、プリンタ8、制御回路、電源回路等を備えている。本体部15の上部には、これと一体に形成された持ち運び用の取手18が形成されている。取手18は、これを手で掴んで呼吸機能検査装置1を持ち運びするためのものである。
【0063】
フローセンサ5は、本体部15に着脱自在に搭載されており、使用時に本体部15と切り離して使用される。フローセンサ5は、呼吸流量に比例した差圧を発生させるものであり、被検者の呼気が吹き込まれる吹込口17を備えている。吹込口17から呼気が吹き込まれることにより、フローセンサ5内に差圧が生じ、この差圧が差圧チューブを介して本体部15内の制御回路に伝達される。図18に示すように、制御回路は、フローセンサ5にて発生した差圧を計測してアナログ信号に変換する圧力センサ10、この圧力センサ10から出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器11、このA/D変換器11により変換されたディジタル信号の処理を行うCPU12等からなる。
【0064】
フローセンサ5は、図17(c)に示すように本体外部に設けられており、2本のチューブからなる差圧チューブ16の一端が接続され、他端が本体部15の差圧チューブ接続口6、6に接続されている。このフローセンサ5は本体部15と着脱自在であり、使用していないときには図17(c)に示すように本体部15のホルダに収容されており、使用時にホルダから取り出して被検者によって把持される。
【0065】
フローセンサ5の周辺について図19を用いて詳述する。フローセンサ5は筐体となるフローセンサケース5aによって覆われており、このフローセンサケース5aの側面にはフローセンサ5に呼気を吹き込むための吹込口17が設けられている。この吹込口17には、通常フィルタ41を介して吹込部材40が接続される。またフローセンサケース5aの下部にはフローセンサケース5aを把持するためのハンドル5bが設けられている。被検者がこのハンドル5bを把持した状態で、フローセンサ5に設けられた吹込口17にフィルタ41を介して取り付けられた吹込部材40を口に含み、医師や検査技師の指示に従い呼吸を行うことでCOPDの検査が行われる。
【0066】
このフローセンサ5の流管内には抵抗体が配置されている。この抵抗体は、例えば膜状の抵抗体が流管内の気体の流れを遮るように配置されており、この流管内に気体の流れが生じると抵抗体の前後に差圧が発生する。この抵抗体の前後の圧力は、該抵抗体の前後に配される圧力ポート、及び該圧力ポートの各々と接続される差圧チューブ16を介して、差圧チューブ接続口6、6に伝達される構成となっている。即ち差圧チューブ16を構成する2本のチューブのうち一方が抵抗体前の圧力を当該チューブと接続される一方のチューブ接続口6に伝達し、他方が抵抗体後の圧力を当該チューブと接続される他方のチューブ接続口6に伝達する。本体部15側ではこのチューブ接続口6、6の差圧を検出することにより、流管内を流れる気体の流量、即ち呼吸流量を計測することができる。この呼吸流量は、呼吸流速とも呼ばれる。なお、この方式のフローセンサは、いわゆる差圧式と呼ばれるものであり、広く使用されている。
【0067】
図18に示す圧力センサ10は、検出される差圧に比例したアナログ信号を出力するものである。本例では、半導体の差圧センサであり、チューブ接続口6、6間の差圧を検出するための差圧検出部と、該差圧検出部により検出される差圧に比例した電圧を出力するための出力端子を備える。なお、本例ではアナログ信号として電圧を出力しているが、これに限らず、アナログ信号として検出された差圧に比例する電流を出力しても良い。A/D変換器11は、アナログ電子信号をディジタル信号に変換するためのものである。本例では、半導体のA/Dコンバータであり、圧力センサ10の出力端子から出力されるアナログ信号を、後述するCPU12において処理可能なディジタル信号に変換して、ディジタル出力端子から出力する。
【0068】
CPU12は、EEPROM13に記憶されているCOPD検査用プログラムをRAM14を作業領域として実行することにより、接続される各構成要素の動作を制御して、あるいは各構成要素からの信号を受信して各種の処理を行うものである。本例では、A/D変換器11からの出力であり前記差圧に比例した値を示すディジタル信号に基づいて呼吸流量を算出する処理を行う。この算出は、予め記憶している差圧と呼吸流量との間の関係式に基づいて行う。即ちディジタル信号から差圧を特定し、該特定した差圧を関係式に入力して呼吸流量を算出する。また、本例ではこの呼吸流量の積分を行うことによって呼吸容量が算出される。
【0069】
これらの計測手段によって、最大吸気位から一気に呼出させて最大呼気位に達したときの容量の差分である努力性肺活量を測定し、さらにこのとき最初の一秒間に呼出された容量である1秒量も測定する。ここで測定されたデータはRAM14に蓄積され、測定が終了するとRAM14に蓄積されたデータがEEPROM13に記憶される。このようにして測定された努力性肺活量及び1秒量、並びに操作キー4によって入力された被験者の性別、年齢、及び身長に基づいて、リスク群(正常)、I期、II期、III期、又はIV期のうち、該当する病期分類がディスプレイ7に表示される。
【0070】
(COPD体感器具の接続)
本発明のCOPD体感装置は、吹込口17に抵抗体32又は可変抵抗部36を通過した呼気が吹き込まれるようにしたものである。本例では、吹込口17に抵抗体32を接続する例について説明する。本例では図20に示すように、前述したキット型のCOPD体感器具30を用いている。即ち、マウスピースと抵抗体保持部とが一体化した筐体35の内部に抵抗体32が設けられている。ここで吹込口17には、I期体感器具34a、II期体感器具34b、III期体感器具34c、又はIV期体感器具34dのいずれかの器具の筐体35が接続される。筐体35の内周の両端近傍には凸部が形成されており、吹込口17は背面側の凸部に係合して接続される。一方、正面側、即ちマウスピース側の凸部にはフィルタ41の接続部材41aが係合して接続される。フィルタ41の正面側には吹込部材40が接合される。
【0071】
このように、吹込部材40及びフィルタ41と、吹込口17との間にI期体感器具34a、II期体感器具34b、III期体感器具34c、又はIV期体感器具34dのいずれかの器具を接続する。これにより、被験者が吹込部材40から吹き込んだ呼気は、上記いずれかの器具の抵抗体32(I期用抵抗体32a、II期用抵抗体32b、III期用抵抗体32c、又はIV期用抵抗体32d)を通過して、吹込口17に吹き込まれることになり、この呼気を対象として呼吸機能検査装置1によって、COPD病期分類が判定され、ディスプレイ7に表示されることになる。これによって、被験者が体感している呼気の困難性とディスプレイ7に表示されている病期分類から、COPD症状の体感度を高めることが可能である。
【0072】
上記の例では、キット型のCOPD体感器具30を接続しているが、組立型のCOPD体感器具の抵抗体32及び抵抗体保持部33を、フィルタ41と吹込口17との間に接続するようにしても良い。この場合にも、抵抗体32を選択することで、所定の呼気抵抗が存在する状態におけるCOPD病期分類を表示させることができる。また、可変抵抗型のCOPD体感器具を、フィルタ41と吹込口17との間に接続するようにしても良い。このような構成とすることで、呼気抵抗を調整つまみ37aによって調整しつつ、呼気抵抗の変化によって、どのようにCOPD病期分類が推移するのかを確認することも可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…呼吸機能検査装置
5…フローセンサ
7…ディスプレイ
10…圧力センサ
17…吹込口
30…COPD体感器具
31…マウスピース
32…抵抗体
33…抵抗体保持部材
36…可変抵抗部
37…操作部
40…吹込部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗が0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期用抵抗体と、
前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期用抵抗体と、
前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期用抵抗体と、
前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期用抵抗体とを備え、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から任意の抵抗体を適宜選択可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項2】
請求項1に記載したCOPD体感器具であって、
被験者が呼気を吹き込むマウスピースをさらに備え、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から任意の抵抗体を適宜選択して前記マウスピースに取り付け可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項3】
請求項1に記載したCOPD体感器具であって、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記I期用抵抗体とが一体となったI期体感器具と、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記II期用抵抗体とが一体となったII期体感器具と、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記III期用抵抗体とが一体となったIII期体感器具と、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記IV期用抵抗体とが一体となったIV期体感器具と、
から構成されることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項4】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれも貫通孔が設けられた板状物によって構成され、各抵抗体を構成する板状物に設けられた貫通孔の開口率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項5】
請求項4に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね8%以上、100%未満であり、
前記II期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね8%より小さく概ね4.5%以上であり、
前記III期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね4.5%より小さく概ね2.4%以上であり、
前記IV期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね2.4%より小さいことを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項6】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の開孔率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項7】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の積層数を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項8】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれも不織布によって構成され、各抵抗体を構成する不織布の厚さを相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項9】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれも連続気泡発泡体によって構成され、各抵抗体を構成する連続気泡発泡体の発泡倍率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項10】
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と、
被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗を可変可能な可変抵抗部から構成されるCOPD体感器具であって、
前記可変抵抗部は、
前記呼気抵抗が概ね0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期状態と、
前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期状態と、
前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期状態と、
前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期状態に適宜変更可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項11】
請求項10に記載したCOPD体感器具であって、
前記可変抵抗部を回転させる回転操作部を有し、
前記回転操作部には、前記可変抵抗部の回転量に対応してI期状態、II期状態、III期状態、及びIV期状態が表示されており、
前記表示に基づいて前記可変抵抗部を所定量回転させることによって当該可変抵抗部を通過する呼気の流量を変化させ、前記I期状態、前記II期状態、前記III期状態、又は前記IV期状態に適宜変更可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項12】
請求項2又は3に記載したCOPD体感器具と、
被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置と、
から構成されるCOPD体感装置であって、
前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口を備え、当該吹込口には前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から選択される任意の抵抗体が接続され、
前記呼吸機能検査装置が、前記抵抗体を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とするCOPD体感装置。
【請求項13】
請求項10に記載したCOPD体感器具と、
被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置と、
から構成されるCOPD体感装置であって、
前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口を備え、当該吹込口には前記可変抵抗部が接続され、
前記呼吸機能検査装置が、前記可変抵抗部を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とするCOPD体感装置。
【請求項1】
被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗が0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期用抵抗体と、
前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期用抵抗体と、
前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期用抵抗体と、
前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期用抵抗体とを備え、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から任意の抵抗体を適宜選択可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項2】
請求項1に記載したCOPD体感器具であって、
被験者が呼気を吹き込むマウスピースをさらに備え、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から任意の抵抗体を適宜選択して前記マウスピースに取り付け可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項3】
請求項1に記載したCOPD体感器具であって、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記I期用抵抗体とが一体となったI期体感器具と、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記II期用抵抗体とが一体となったII期体感器具と、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記III期用抵抗体とが一体となったIII期体感器具と、
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と前記IV期用抵抗体とが一体となったIV期体感器具と、
から構成されることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項4】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれも貫通孔が設けられた板状物によって構成され、各抵抗体を構成する板状物に設けられた貫通孔の開口率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項5】
請求項4に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね8%以上、100%未満であり、
前記II期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね8%より小さく概ね4.5%以上であり、
前記III期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね4.5%より小さく概ね2.4%以上であり、
前記IV期用抵抗体を構成する板状物の開孔率は概ね2.4%より小さいことを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項6】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の開孔率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項7】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれもメッシュ体によって構成され、各抵抗体を構成するメッシュ体の積層数を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項8】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれも不織布によって構成され、各抵抗体を構成する不織布の厚さを相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項9】
請求項1ないし3から選択される1項に記載したCOPD体感器具であって、
前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体は、いずれも連続気泡発泡体によって構成され、各抵抗体を構成する連続気泡発泡体の発泡倍率を相違させることによって呼気抵抗を相違させていることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項10】
被験者が呼気を吹き込むマウスピース部と、
被験者の呼気時において当該呼気の経路に配置された抵抗体の前後の差圧を、当該呼気の流量値で除した値である呼気抵抗を可変可能な可変抵抗部から構成されるCOPD体感器具であって、
前記可変抵抗部は、
前記呼気抵抗が概ね0より大きく概ね12(cmH2O/L/s)以下となるI期状態と、
前記呼気抵抗が概ね12(cmH2O/L/s)より大きく概ね21(cmH2O/L/s)以下となるII期状態と、
前記呼気抵抗が概ね21(cmH2O/L/s)より大きく概ね40(cmH2O/L/s)以下となるIII期状態と、
前記呼気抵抗が概ね40(cmH2O/L/s)より大きいIV期状態に適宜変更可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項11】
請求項10に記載したCOPD体感器具であって、
前記可変抵抗部を回転させる回転操作部を有し、
前記回転操作部には、前記可変抵抗部の回転量に対応してI期状態、II期状態、III期状態、及びIV期状態が表示されており、
前記表示に基づいて前記可変抵抗部を所定量回転させることによって当該可変抵抗部を通過する呼気の流量を変化させ、前記I期状態、前記II期状態、前記III期状態、又は前記IV期状態に適宜変更可能であることを特徴とするCOPD体感器具。
【請求項12】
請求項2又は3に記載したCOPD体感器具と、
被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置と、
から構成されるCOPD体感装置であって、
前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口を備え、当該吹込口には前記I期用抵抗体、前記II期用抵抗体、前記III期用抵抗体、及び前記IV期用抵抗体から選択される任意の抵抗体が接続され、
前記呼吸機能検査装置が、前記抵抗体を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とするCOPD体感装置。
【請求項13】
請求項10に記載したCOPD体感器具と、
被験者の努力性肺活量及び1秒量を測定して、その測定値に基づいて当該被験者がCOPD病期分類におけるI期、II期、III期、又はIV期のいずれに該当するかを表示する呼吸機能検査装置と、
から構成されるCOPD体感装置であって、
前記呼吸機能検査装置は被験者が呼気を吹き込むための吹込口を備え、当該吹込口には前記可変抵抗部が接続され、
前記呼吸機能検査装置が、前記可変抵抗部を通過して前記吹込口に吹き込まれた呼気を対象として1秒量を測定し、COPD病期分類を表示することを特徴とするCOPD体感装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−22182(P2012−22182A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160596(P2010−160596)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(597009275)株式会社フクダ産業 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(597009275)株式会社フクダ産業 (4)
【Fターム(参考)】
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