説明

CT装置及び較正装置

【課題】 検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減する。
【解決手段】 CT装置において、第一ピン6bをX線に対して横移動させ、横移動の複数の所定の位置で第一ピン6bを透過したX線をX線検出器2で検出して第一透過データとして収集する較正走査部15bと、この第一透過データを用いて複数の検出チャンネルのそれぞれの横方向の配置を求めて記憶する較正処理部15cとを具備し、較正処理部15cにより求められた複数の検出チャンネルのそれぞれの横方向の配置を用いて、スキャンにより検出された透過データに対し検出チャンネルの所定位置からのずれを補正して被検体の断面像を再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断面像を撮影するコンピュータ断層撮影装置(以下、CT(Computed Tomography)装置と記載する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
CT装置は、放射線源から発生する放射線(X線)を被検体に向けて照射し、被検体を放射線の光軸に対し直交する回転軸で放射線に対して相対的に回転させ、一回転中の所定回転位置ごとに被検体から透過してくる放射線を1次元あるいは2次元の複数検出チャンネルを有する放射線検出器で検出し、この検出器出力から被検体の断面像ないし3次元データを得る(断層撮影する)ものである。
【0003】
この断面像ないし3次元データを得るための再構成の方法は、フィルタ処理及び逆投影処理で行なう方法やフーリエ変換法や逐次近似法(ART:Algebraic Reconstruction Techniques法)などが使用されている。
【0004】
このCT装置は、放射線検出器の複数検出チャンネルがそれぞれ定められた配置で整然と並んでいることを前提に再構成を行う。このため、検出チャンネルの配置に誤差があると得られた断面像にアーチファクトなどが発生し断面像が劣化するため、複数検出チャンネルは定められた配置と成るように製造する必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1の技術では、検出器ユニットを円弧状に配置する際、円弧状のフレームにマークを付けておき、検出器ユニットに付けたマークをあわせるように検出器ユニットをフレームに固定することで検出チャンネルの配置の位置合わせを行っている。その結果、検出チャンネルを放射線焦点(放射線発生点)から見て等角度間隔に並べることができる。そして、各検出チャンネルが等角度間隔であることを前提に断面像を再構成する。
【特許文献1】特開2002−71819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のCT装置では、検出器のフレームに付けたマークにより検出ユニットの位置合わせを行っているのでマークを付ける際の機械的誤差、マーク合せする際の機械的誤差等によるユニット配置誤差は避けられない。また、検出ユニット内のチャンネル配置にも誤差がある。さらに、ユニット間に機械的クリアランスを持たせるため、ユニット同士の継ぎ目で検出チャンネル間隔は継ぎ目以外での間隔とくらべて大きめにする必要があり、基本的に等角度配置からのずれが生じる。
【0007】
このため、各検出チャンネルが等角度間隔であることを前提に断面像を再構成するので、配置誤差が大きい場合、生じた誤差の分だけ再構成処理された断面像にアーチファクトの発生や分解能低下等による劣化が生じる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のCT装置は、テーブル上に載置された被検体に向けて放射線焦点より放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を複数の検出チャンネルで検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、前記放射線の中心である放射線光軸と直交する縦方向に平行な回転軸に対し前記放射線と前記テーブルとを相対的に回転させる回転手段と、前記回転によるスキャンにより複数の前記回転の位置で検出された透過データから前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、前記縦方向に延在する第一基準体と、前記第一基準体を前記放射線光軸と前記縦方向の双方に直交する横方向に前記放射線に対して相対的に横移動させる横移動手段と、前記横移動手段を制御し前記横移動の複数の所定の位置で前記第一基準体を透過した放射線を前記放射線検出手段で検出させ第一透過データを収集する較正走査手段と、前記第一透過データを用いて前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を求めて記憶する較正処理手段とを具備し、前記再構成手段は、前記較正処理手段により求められた前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を用いて、前記回転によるスキャンにより複数の前記回転の位置で検出された透過データに対し前記検出チャンネルの所定位置からのずれを補正して前記被検体の断面像を再構成することを特徴とする。
【0010】
この構成により、検出チャンネルの配置が所定の位置から誤差をもって配置されている場合でも、較正走査で第一基準体を横移動させながら第一基準体の第一透過データを収集し、この第一透過データを較正処理して検出チャンネルそれぞれの横方向の配置を正確に求めることができ、検出チャンネルの所定位置からのずれを補正して再構成するので、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することができる。
【0011】
また、本発明の較正装置は、入射する放射線を複数の検出チャンネルで検出して透過データとして出力するCT装置用の放射線検出手段の較正装置であり、前記放射線検出手段に対向して配置された放射線源と、前記放射線源の放射線焦点より前記放射線検出手段に向けて放射される放射線の中心である放射線光軸に対し直交する1つの方向を縦方向とし、前記放射線光軸と前記縦方向の双方に直交する方向を横方向としたとき、前記縦方向に延在する第一基準体と、前記第一基準体を前記横方向に前記放射線に対して相対的に横移動させる横移動手段と、横移動手段を制御し前記横移動の複数の所定の位置で前記第一基準体を透過した放射線を前記放射線検出手段で検出させ第一透過データを収集する較正走査手段と、前記第一透過データを用いて前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を求めて記憶する較正処理手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
この構成により、検出チャンネルの配置が所定の位置から誤差をもって配置されている場合でも、較正走査で第一基準体を横移動させながら第一基準体の第一透過データを収集し、この第一透過データを較正処理して検出チャンネルそれぞれの横方向の配置を正確に求めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検出チャンネルの配置が所定の位置から誤差をもって配置されている場合でも、較正処理により検出チャンネルそれぞれの配置を正確に求めることができ、検出チャンネルの所定位置からのずれを補正して再構成することにより、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一実施形態の構成について図1、図2、図3を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の第一実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(平面図)であり、図2は本発明の第一実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)である。図3は本発明の第一実施形態に係るCT装置の較正治具を示した模式図(正面図)である。
【0017】
第一実施形態のCT装置は、断層撮影として、回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)を採用したCT装置である。
【0018】
CT装置のX線管(放射線源)1とX線検出器(放射線検出手段)2は対向して配置され、X線管1のX線焦点(放射線焦点)Fより放射されスリット3によりファン状に絞られたX線ビーム(放射線)4が1次元の複数検出チャンネルを持つX線検出器2により検出され透過データとして出力される。X線検出器2は検出素子をX線ビーム4のファン面に沿って並べたものであり、チャンネルnで1次元の透過データI(n)を得る。
【0019】
被検体(図示せず)はテーブル5上に載置されるが、図1では被検体の代わりに較正治具6が載置されている。較正治具6(あるいは被検体)を載置したテーブル5は機構部(回転手段、横移動手段)7によりX線ビーム4のファン面に垂直な回転軸RAに対して回転されるとともに、回転軸RAと一緒に回転軸RAと直交しX線ビーム4を横切る(X線光軸Lと直交する)方向である横方向tに横移動される。
【0020】
機構部7は、さらに、テーブル5を回転軸RAの方向に昇降させることができ、被検体の撮影部位をX線光軸(X線ビーム4の中央)Lに合せることができる。
【0021】
図3を参照して、較正治具6は、基台6aの上部に回転軸RA方向に延在するX線吸収の大きい円筒状の第一ピン(第一基準体)6bを配置したもので、下部には第一ピン6bと同軸となる円筒状の突起6cを配している。突起6cをテーブル5中央の円筒溝(図示せず)にはめ込んで載置することで第一ピン6bの軸が回転軸RAに合うようにできる構造である。
【0022】
構成要素として、他に、機構部7を制御し、また、X線検出器2からの透過データを処理する制御処理部15、処理結果等を表示する表示部15a、X線管1を制御するX線制御部(図示せず)等がある。
【0023】
制御処理部15は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク、表示部15a、入力部(キーボードやマウス等)、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0024】
制御処理部15は、機構制御ボードにより、機構部7の動作位置の信号(エンコーダパルス等)を受けて機構部7を制御して較正走査やスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器2に送る。なお、機構部7には図示してないエンコーダが取付けられており、テーブル5の横移動位置tと高さと回転角度とが読み取られ、それぞれ制御処理部15に送られる。
【0025】
また、制御処理部15は、断層撮影時にX線検出器2からの透過データを収集し、記憶し、再構成処理して被検体の断面像を作成し、表示部15aに表示する。
【0026】
また、制御処理部15は、X線制御部(図示せず)に指令を出し、X線管1の管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体にあわせて変えることができる。
【0027】
図1に示すように、制御処理部15はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、検出チャンネルの配置を求めるための較正走査部(較正走査手段)15bと較正処理部(較正処理手段)15c、断層撮影をするためのスキャン制御部15dと再構成部(再構成手段)15e、等を備えている。
【0028】
(第一の実施の形態の作用)
図4、図5を参照して作用を説明する。
【0029】
<チャンネル配置の較正>
断層撮影に先立ち、検出チャンネルの配置を求めるための較正を以下に記載するように行なう。
【0030】
操作者は、第一ピン6bの軸が回転軸RAに合うように較正治具6をテーブル5に載置してから、制御処理部15に較正開始の指令を入力する。
【0031】
制御処理部15は操作者から較正開始の指令を受けると、較正走査部15bがX線制御部(図示せず)と機構部7とX線検出器2に指令を出して制御し、以下のように較正走査を行なう。
【0032】
図4は第一実施形態に係る較正走査の幾何図(平面図)である。
【0033】
まず、テーブル5を昇降させて第一ピン6bを図2に示すようにX線ビーム4の回転軸RA方向の広がりを覆う高さに設定すると共に横移動の始点に移動させる。
【0034】
次に、較正走査部15bは、X線を放射開始させ、図4に示すように、第一ピン6bを横方向tに横移動させながら第一ピン6bがX線ビーム4を横切る間、Δx[mm]の間隔ごとにX線検出器2で第一ピン6bの透過データ(第一透過データ)を収集する。
【0035】
ここで△xは、1チャンネルが検出するX線ビームの幅より小さく(1/5以下が望ましい)決める。
【0036】
図4で、tは横移動したときの透過データの収集番号(整数)でt=0からt=T−1まで収集される。透過データは検出チャンネルn毎にIn(t)、(t=0,1,…,T−1)の形で収集され、適宣な記憶部(図示せず)に記憶される。記憶すると、X線を放射停止させ較正走査を終える。
【0037】
次に、較正処理部15cは較正走査部15bにより得られた第一ピン6bの透過データ(第一透過データ)In(t)から、以下のように検出チャンネルnごとに横方向の配置を求める。
【0038】
まず、透過データIn(t)に対し対数変換、
Pn(t)=LOG(I0n/In(t)) …(1)
を施した透過データPn(t)を得る。ここでI0nはピンの無いときの透過データである。図5は第一実施形態に係る較正走査で得た第一ピンの透過データPn(t)のプロファイルを示す模式図である。Pn(t)はピンが検出される位置以外ではほぼ0で、ピンが検出される位置で+の値となる。このPn(t)のプロファイルより、nごとに第一ピン6bの中央の位置tc(n)を求める。これは、例えばプロファイルの重心を求めればよい。tc(n)は、正確には、第一ピン6bの投影がチャンネルnを横切る横移動位置である。なお、tc(n)は整数でなく実数として収集ピッチより細かく求める。
【0039】
各検出チャンネルでtc(n)が求まると、図4を参照して、X線焦点Fに対する各検出チャンネルnの横方向の配置角θ(n)[deg]を、中央チャンネルncを基準として、式、
θ(n)=ATAN{(tc(n)−tc(nc))・△x/FCD} …(2)
で求める。ここでFCDはX線焦点Fと回転軸RA間の最短距離である。あるいは、X線検出器2位置でのX線光軸Lと直交する検出基準面2a上のチャンネルnの横方向の直線配置xd(n)[mm]を、中央チャンネルncを基準として、式、
xd(n)={tc(n)−tc(nc)}・Δx・FDD/FCD …(3)
で求める。ここでFDDはX線焦点Fと検出基準面2aとの距離である。求めた配置角θ(n)または直線配置xd(n)を適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、チャンネル配置の較正が終了する。
【0040】
なお、チャンネル配置の較正は頻繁に行なう必要は無く、例えば、装置の製造時や、X線検出器の交換や修理をした後、また、メンテナンス時等に行えばよい。<>終了。
【0041】
<断層撮影>
次に、チャンネル配置が記憶された状態で断層撮影を行なう。
【0042】
操作者はテーブル5に被検体を載置し、テーブル5を昇降させて被検体の撮影部位をX線光軸Lの高さに合せる。
【0043】
制御処理部15のスキャン制御部15dは操作者から断層撮影開始の指令を受けると、X線制御部(図示せず)、機構部7とX線検出器2を制御して、以下のようにスキャン(断層撮影走査)を行う。
【0044】
まず、横移動位置tをtc(nc)に合わせる。この状態で回転軸RAがX線光軸L上、すなわちFとncを結ぶ直線上に位置決めされる。
【0045】
次に、X線を放射開始し、テーブル5を回転させながら、一定角度おきに1回転に亘りX線検出器2で被検体の透過データを収集し、適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、X線を放射停止してスキャンが終了する。収集した透過データは回転角をφとして、I(n,φ)で表される。
【0046】
次に、再構成部15eは得られた透過データI(n,φ)に対し以下のように処理を加える。
【0047】
まず、この透過データI(n,φ)に対し、対数変換等の前処理を加え透過データP(n,φ)を求める。
【0048】
次に、前処理後の透過データP(n,φ)に対し、較正で求めた検出チャンネルの配置θ(n)またはxd(n)を用いて、チャンネル配置の誤差補正を加える。この誤差補正は透過データP(n,φ)が配置角θまたは直線位置xdについて等間隔になっていないものを補間計算により等間隔のデータに変換する補正である。この補正により、横方向の配置角θについて等間隔の透過データP(θ,φ)、あるいは横方向の直線位置xdについて等間隔の透過データP(xd,φ)を得る。
【0049】
さらに、再構成部15eは、この等間隔に補正された透過データP(θ,φ)あるいはP(xd,φ)を用いて、以下のように、フィルタ補正逆投影を行なって断面像を得る。
【0050】
図6は第一実施形態に係る断面像再構成の逆投影を説明する幾何図(平面図)である。
【0051】
フィルタ補正逆投影は、透過データPに対しθ方向あるいはxd方向に周波数ωに比例した周波数フィルタ(いわゆる|ω|フィルタ)を掛けた後、透過データPを補正された等間隔の検出チャンネルの位置すべてからX線焦点Fに向けて断面位置に仮想設定した格子20上に逆投影BPして足し込むことで行なわれ、1回転分の足し込みで断面像が再構成される。<>終了。
【0052】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施形態によれば、検出チャンネルの配置が所定の位置から誤差をもって配置されている場合でも、較正走査で第一ピンを横移動させながら第一ピンの透過データを収集し、この透過データを較正処理して検出チャンネルそれぞれの横方向の配置を求めて記憶し、その後断層撮影で得た被検体の透過データに対し、記憶した検出チャンネルの配置を用いて、横方向の配置角θあるいは横方向の直線位置xdについて等間隔の透過データに変換してから、断面像を再構成するので、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することができる。
【0053】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0054】
(変形例1)
第一実施形態では、断層撮影で得られた透過データP(n,φ)を、配置角θまたは直線位置xdについての等間隔データに変換してからフィルタ補正逆投影を行なって断面像を得ているが、等間隔に変換することなくフィルタ掛けを行った後、透過データP(n,φ)を較正で求めた検出チャンネルの位置からX線焦点Fに向けて断面位置に逆投影するようにしてもよい。
【0055】
また、再構成はフィルタ補正逆投影法には限られず、例えばフーリエ変換法や逐次近似法でも、較正で求めたチャンネル配置を反映して再構成でき、同様の効果をあげることができる。
【0056】
(変形例2)
第一実施形態では、1次元の検出チャンネルの1列を持つX線検出器2を用いているが、回転軸方向に多数列の配置とし、一度に多数枚の断面像を撮影するようにしてもよい。この場合、各列それぞれに第一実施形態と同じ較正を行なえばよい。
【0057】
また、第一実施形態で、具体的な検出チャンネルの配置はどのような配置でもよく、例えば円弧配置でも直線配置でもよい。
【0058】
(変形例3)
第一実施形態で、第一ピン6bを回転軸RAに合うように載置したが、合っていなくてもよい。ただし、合っていない場合は横移動位置をtc(nc)に設定した状態で、回転軸RAの投影が中央チャンネルncからずれることになり、回転軸の投影を基準とした配置較正でなくなる。
【0059】
そこで、変形例3として、次のようにすることで第一ピン6bがずれていても回転軸の投影を基準とした検出チャンネル配置の較正ができる。
【0060】
較正治具6をテーブル5に載置した後、較正を開始させると、較正走査部15bは、まず、テーブル5を基準回転位置0°として第一実施形態と同じ較正走査を行なって、n毎に透過データ(0°の第一透過データ)In(t)0を得る。
【0061】
較正走査部15bは、次に、テーブル5を基準回転位置から180°回転させた状態で第一実施形態と同じ較正走査を行なって、n毎に透過データ(180°の第一透過データ)In(t)180を収集する。このときの較正走査は第一実施形態同様t=0から順に収集するが、逆にt=T−1から逆向きに収集してもよい。
【0062】
較正処理部15cは、得られた透過データIn(t)0,In(t)180に対し対数変換(式(1))を加え、透過データPn(t)0,Pn(t)180を得る。
【0063】
図7(a)は変形例3に係る較正走査で得た第一ピン6bの透過データのプロファイルを示す。較正処理部15cは、検出チャンネルn毎に、0°のプロファイルと180°のプロファイルの対称中心tc(n)を求める。求め方は重心計算、相関計算等が使用できる。このtc(n)は回転中心の投影がチャンネルnを横切る横移動位置と言える。
【0064】
次に、較正処理部15cは、第一実施形態と同様に、このtc(n)から配置角θ(n)または直線配置xd(n)を求め、適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、チャンネル配置の較正が終わる。
【0065】
断層撮影については第一実施形態と全く同じである。
【0066】
変形例3によれば、第一ピン6bが回転軸RAに合っていなくても、横移動位置を求めたtc(nc)に設定すると回転軸RAの投影が中央チャンネルncと正確に合致するので、回転軸の投影を基準とした検出チャンネル配置θ(n)またはxd(n)を求められる。
【0067】
なお、この変形例3においては、第一ピンは回転軸RAからずれてもよいのみならず、傾いてもよく、また、形状として円筒でなく不定形であってもよい。
【0068】
図7(b)は第一ピンが不定形であった場合のプロファイルであるが、0°のプロファイルと180°のプロファイルはそれぞれ左右非対称の不定形となるが、互いに左右反転した形となり、その対称中心tc(n)が回転軸RAの位置、正確には回転軸RAの投影がチャンネルnを横切る横移動位置となる。
【0069】
従って、第一ピンは回転軸RAからずれても傾いても、形状として円筒でなく不定形であっても、回転軸の投影を基準とした検出チャンネル配置θ(n)またはxd(n)を求められる。
【0070】
(変形例4)
第一実施形態では、断層撮影としては、回転のみを行うRR方式を採用しているが、所謂TR(Translate Rotate)方式(第二世代方式)で断層撮影してもよい。この場合は横移動tをトランスレート動作として、X線ビーム4の横方向の広がり角度をファン角として、トランスレート中に一定間隔で検出チャンネルnごとに透過データIn(t)を収集し、トランスレートとファン角分のステップ回転を交互に繰り返して180°方向からの透過データを収集する。
【0071】
次に、再構成部は得られた透過データIn(t)に対し以下のように処理を加える。
【0072】
まず、この透過データIn(t)に対し、対数変換等の前処理を加え透過データPn(t)を求める。さらに、再構成部は、この透過データPn(t)を用いて、以下のように、フィルタ補正逆投影を行なって断面像を得る。
【0073】
図8は変形例4に係る逆投影を説明する幾何図(平面図)である。
【0074】
フィルタ補正逆投影は、透過データPn(t)に対しt方向に周波数ωに比例した周波数フィルタ(いわゆる|ω|フィルタ)を掛けた後、透過データPn(t)に対し、較正で得られた横方向の配置角θ(n)を用いて、透過データPn(t)を、(tc(n)位置が回転軸RAに合うようにt方向にずらした後、)角度θ(n)方向から断面位置に仮想設定した格子20上に(全t,nについて)逆投影BPして足し込むことで行なわれ、全トランスレート分の足し込みで断面像が再構成される。
【0075】
較正で得られた検出チャンネルの配置θ(n)を用いて、θ(n)方向から逆投影することで、検出チャンネル配置誤差を補正して断面像を再構成することができ、断面像の劣化を低減することができる。
【0076】
また、変形例4によればスキャンで用いるトランスレート動作を用いて第一ピンを横移動できる。
【0077】
(変形例5)
第一実施形態では、断層撮影としては、回転のみで行うRR方式を採用しているが、RR方式とTR方式を切換えて断層撮影することもできる。すなわち、被検体がX線ビーム4の横方向に収まる大きさのときRR方式で短時間スキャンで断層撮影し、収まらない大きさのときはTR方式に切換えて被検体全体の断層撮影をすることが可能である。
【0078】
この場合、RR方式でもTR方式でも検出チャンネル配置誤差を補正して断面像を再構成することができ、断面像の劣化を低減することができる。
【0079】
また、変形例5によればスキャンで用いるトランスレート動作を用いて第一ピンを横移動できる。
【0080】
(変形例6)
第一実施形態では、第一ピン6bを横移動させるとき、被検体を載置するテーブル5に第一ピン6bを有する治具6を載置してこのテーブル5を機構部7により横移動させているが、テーブル5を横移動させる機構を廃止し、代わりに、第一ピン6bを保持して横移動させる別の機構を設けてもよい。
【0081】
(変形例7)
第一実施形態では1本の第一ピン6bの透過データで較正処理しているが、複数本のピンとしてもよい。この場合、各ピンの透過データのプロファイルを平均してtc(n)を求めることで統計精度を上げて検出チャンネル配置を求めることができる。また、プロファイルを平均する代わりに、各ピンごとにtc(n)を求めてから平均するか、各ピンごとに検出チャンネル配置を求めてから平均しても同様である。
【0082】
(変形例8)
第一実施形態で、第一ピン6bのX線ビーム4に対する横方向の動きは相対的でよい。
【0083】
例えば、テーブル5を横移動する機構を廃止し、代わりに、X線焦点F(X線管1)とX線検出器2を一緒に横移動させるか、X線焦点F(X線管1)とX線検出器2のどちらか一方を横移動させる機構を設けてもよい。
【0084】
(変形例9)
第一実施形態およびその変形で、スキャン制御部15dと再構成部15eを廃止してもよい。この場合、第一実施形態の装置はCT装置でなくX線検出器2の専用較正装置となる。すなわち、X線検出器2の検出チャンネルの配置の較正は必ずしも、CT装置に搭載した後にCT装置を用いて行う必要は無く、搭載する前に上記の専用較正装置で行なってもよい。
【0085】
(変形例10)
以上の変形例を合わせた変形が可能である。
【0086】
(本発明の第二の実施の形態の構成)
以下、本発明の第二の実施形態の構成について図9、図10、図11を参照して説明する。
【0087】
図9は本発明の第二実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(平面図)であり、図10は本発明の第二実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)である。図11は本発明の第二実施形態に係るCT装置の較正治具を示した模式図((a)正面図、(b)側面図)である。
【0088】
第二実施形態のCT装置は、断層撮影として、回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)を採用したCT装置である。
【0089】
CT装置のX線管(放射線源)31とX線検出器(放射線検出手段)32は対向して配置され、X線管31のX線焦点(放射線焦点)Fより放射されたX線の一部であるコーン状のX線ビーム(放射線)33が2次元の複数検出チャンネルを持つX線検出器32により検出され、透過データとして出力される。X線検出器32は検出素子をX線ビーム33と交差する面に沿って2次元で並べたものであり、チャンネルn,mで2次元の透過データI(n,m)を得る。
【0090】
被検体(図示せず)はテーブル34上に載置されるが、図9では被検体の代わりに較正治具35が載置されている。較正治具35(あるいは被検体)を載置したテーブル34は機構部(回転手段、横移動手段)36によりX線光軸(X線ビーム33の中心線)Lの方向に垂直な回転軸RAに対して回転されるとともに、回転軸RAと一緒に回転軸RAと直交しX線ビーム33を横切る(X線光軸Lと直交する)方向である横方向tに横移動される。
【0091】
テーブル34はさらに、機構部(縦移動手段)36により、回転軸RAの方向である縦方向qに縦移動(昇降)される。
【0092】
図11を参照して、較正治具35は、基台35aの上部には、第一ピン(第一基準体)35bと第二ピン(第二基準体)35cを埋め込んだ基板35dを配置している。第一ピン35bは回転軸RA方向に延在する円筒状のX線吸収の大きいピンで、第二ピン35cは横方向に延在する円筒状のX線吸収の大きいピンであり、これに対し、基板35dはX線の吸収の少ない板である。第一ピン35bと第二ピン35cは基板35d内で直交配置されている。基台35aの下部には第一ピン35bと同軸となる円筒状の突起35eを配している。突起35eをテーブル34中央の円筒溝(図示せず)にはめ込んで載置することで第一ピン35bの軸が回転軸RAに合うようにできる構造である。また、載置したとき第二ピン35cの軸を回転軸RAと交差しかつ横方向にあわせるように載置できる構造である。
【0093】
構成要素として、他に、機構部36を制御し、また、X線検出器32からの透過データを処理する制御処理部45、処理結果等を表示する表示部45a、X線管31を制御するX線制御部(図示せず)等がある。
【0094】
制御処理部45は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク、表示部45a、入力部(キーボードやマウス等)、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0095】
制御処理部45は、機構制御ボードにより、機構部36の動作位置の信号(エンコーダパルス等)を受けて機構部36を制御して較正走査やスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器32に送る。なお、機構部36には図示してないエンコーダが取付けられており、テーブル34の横移動位置t、縦移動位置qと回転角度が読み取られ、それぞれ制御処理部45に送られる。
【0096】
また、制御処理部45は、断層撮影時にX線検出器32からの透過データを収集し、記憶し、再構成処理して被検体の断面像を作成し、表示部45aに表示する。
【0097】
また、制御処理部45は、X線制御部(図示せず)に指令を出し、X線管31の管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体にあわせて変えることができる。
【0098】
図9に示すように、制御処理部45はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、検出チャンネルの配置を求めるための較正走査部(較正走査手段)45bと較正処理部(較正処理手段)45c、断層撮影をするためのスキャン制御部45dと再構成部(再構成手段)45e、等を備えている。
【0099】
(第二の実施の形態の作用)
図12、図13、図14、図15を参照して作用を説明する。
【0100】
<チャンネル配置の較正>
断層撮影に先立ち検出チャンネルの配置を求めるための横方向の較正と縦方向の較正を順次以下に記載するように行なう。
【0101】
操作者は、第一ピン35bの軸が回転軸RAに合うように、また第二ピン35cの軸が回転軸RAと交差しかつ横方向に合うように較正治具35をテーブル34に載置してから、制御処理部45に較正開始の指令を入力する。
【0102】
制御処理部45は操作者から較正開始の指令を受けると、較正走査部45bがX線制御部(図示せず)と機構部36とX線検出器32に指令を出して制御し、以下のように横方向の較正走査を行なう。
【0103】
図12は第二実施形態に係る横方向の較正走査の幾何図(平面図)である。
【0104】
まず、テーブル34を縦移動させて第一ピン35bを図10に示すようにX線ビーム33の回転軸RA方向の広がりを覆う高さに設定すると共に横移動の始点に移動させる。
【0105】
次に、較正走査部45bは、X線を放射開始させ、図12に示すように、第一ピン35bを横方向tに横移動させながら第一ピン35bがX線ビーム33を横切る間、Δx[mm]の間隔ごとにX線検出器32で第一ピン35bの透過データ(第一透過データ)を収集する。
【0106】
ここで△xは1チャンネルが検出するX線ビームの幅より小さく(1/5以下が望ましい)決める。
【0107】
図12で、tは横移動したときの透過データの収集番号(整数)でt=0からt=T−1まで収集される。透過データは検出チャンネルn,m毎にInm(t)、(t=0,1,…,T−1)の形で収集され、適宣な記憶部(図示せず)に記憶される。記憶すると、X線を放射停止させ横方向の較正走査を終える。
【0108】
次に、較正処理部45cは較正走査部45bにより得られた第一ピン35bの透過データ(第一透過データ)Inm(t)から、以下のように検出チャンネルn,mごとに横方向の配置を求める。
【0109】
まず、透過データInm(t)に対し対数変換、
Pnm(t)=LOG(I0nm/Inm(t)) …(4)
を施した透過データPnm(t)を得る。ここでI0nmはピンの無いときの透過データである。図13は第二実施形態に係る横方向の較正走査で得た第一ピンの透過データPnm(t)のプロファイルを示す模式図である。Pnm(t)はピンが検出される位置以外ではほぼ0で、ピンが検出される位置で+の値となる。このPnm(t)のプロファイルより、n,mごとに第一ピン35bの中央の位置tc(n,m)を求める。これは、例えばプロファイルの重心を求めればよい。tc(n,m)は、正確には、第一ピン35bの投影がチャンネルn,mを横切る横移動位置である。なお、tc(n,m)は整数でなく実数として収集ピッチより細かく求める。
【0110】
各検出チャンネルでtc(n,m)が求まると、図12を参照して、X線焦点Fに対する各検出チャンネルn,mの横方向の配置角θ(n,m)[deg]を、中央チャンネルnc,mcを基準として、式、
θ(n,m)=ATAN{(tc(n,m)−tc(nc,mc))・△x/FCD} …(5)
で求める。ここでFCDはX線焦点Fと回転軸RA間の最短距離である。あるいは、X線検出器32位置でのX線光軸Lと直交する検出基準面32a上のチャンネルn,mの横方向の直線配置xd(n,m)[mm]を、中央チャンネルnc,mcを基準として、式、
xd(n,m)={tc(n,m)−tc(nc,mc)}・Δx・FDD/FCD …(6)
で求める。ここでFDDはX線焦点Fと検出基準面32aとの距離である。求めた配置角θ(n,m)または直線配置xd(n,m)を適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、チャンネル配置の横方向の較正が終了する。
【0111】
制御処理部45は横方向の較正が終了すると引き続き、較正走査部45bがX線制御部(図示せず)と機構部36とX線検出器32に指令を出して制御し、以下のように縦方向の較正走査を行なう。
【0112】
図14は第二実施形態に係る縦方向の較正走査の幾何図(正面図)である。
【0113】
まず、テーブル34を横移動させて第二ピン35cがX線ビーム33の横方向の広がりを覆う横移動位置に設定すると共に縦移動の始点に移動させる。
【0114】
次に、較正走査部45bは、X線を放射開始させ、図14に示すように、第二ピン35cを縦方向qに縦移動させながら第二ピン35cがX線ビーム33を縦断する間、Δz[mm]の間隔ごとにX線検出器32で第二ピン35cの透過データ(第二透過データ)を収集する。
【0115】
ここで△zは1チャンネルが検出するX線ビームの幅より小さく(1/5以下が望ましい)決める。
【0116】
図14で、qは縦移動したときの透過データの収集番号(整数)でq=0からq=Q−1まで収集される。透過データは検出チャンネルn,m毎にInm(q)、(q=0,1,…,Q−1)の形で収集され、適宣な記憶部(図示せず)に記憶される。記憶すると、X線を放射停止させ縦方向の較正走査を終える。
【0117】
次に、較正処理部45cは較正走査部45bにより得られた第二ピン35cの透過データ(第二透過データ)Inm(q)から、以下のように検出チャンネルn,mごとに縦方向の配置を求める。
【0118】
まず、透過データInm(q)に対し対数変換、
Pnm(q)=LOG(I0nm/Inm(q)) …(7)
を施した透過データPnm(q)を得る。ここでI0nmはピンの無いときの透過データである。図15は第二実施形態に係る縦方向の較正走査で得た第二ピンの透過データPnm(q)のプロファイルを示す模式図である。Pnm(q)はピンが検出される位置以外ではほぼ0で、ピンが検出される位置で+の値となる。このPnm(q)のプロファイルより、n,mごとに第二ピンの中央の位置qc(n,m)を求める。これは、例えばプロファイルの重心を求めればよい。qc(n,m)は、正確には、第二ピンの投影がチャンネルn,mを縦断する縦移動位置である。なお、qc(n,m)は整数でなく実数として収集ピッチより細かく求める。
【0119】
各検出チャンネルでqc(n,m)が求まると、図14を参照して、X線焦点Fに対する各検出チャンネルn,mの縦方向の配置角γ(n,m)[deg]を、中央チャンネルnc,mcを基準として、式、
γ(n,m)=ATAN{(qc(n,m)−qc(nc,mc))・△z/FCD} …(8)
で求める。あるいは、検出基準面32a上のチャンネルn,mの縦方向の直線配置zd(n,m)[mm]を、中央チャンネルnc,mcを基準として、式、
zd(n,m)={qc(n,m)−qc(nc,mc)}・Δz・FDD/FCD …(9)
で求める。求めた配置角γ(n,m)または直線配置zd(n,m)を適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、チャンネル配置の縦方向の較正が終了する。
【0120】
なお、チャンネル配置の較正は頻繁に行なう必要は無く、例えば、装置の製造時や、X線検出器の交換や修理をした後、また、メンテナンス時等に行えばよい。<>終了。
【0121】
<断層撮影>
次に、チャンネル配置が記憶された状態で断層撮影を行なう。
【0122】
操作者はテーブル34に被検体を載置し、テーブル34を昇降させて被検体の撮影部位をX線光軸Lの高さに合せる。
【0123】
制御処理部45のスキャン制御部45dは操作者から断層撮影開始の指令を受けると、X線制御部(図示せず)、機構部36とX線検出器32を制御して、以下のようにスキャン(断層撮影走査)を行う。
【0124】
まず、横移動位置tをtc(nc,mc)に合わせる。この状態で回転軸RAがX線光軸L上、すなわちFとnc,mcを結ぶ直線上に位置決めされる。
【0125】
次に、X線を放射開始し、テーブル34を回転させながら、一定角度おきに1回転に亘りX線検出器32で被検体の透過データを収集し、適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、X線を放射停止してスキャンが終了する。収集した透過データは回転角をφとして、I(n,m,φ)で表される。
【0126】
次に、再構成部45eは得られた透過データI(n,m,φ)に対し以下のように処理を加える。
【0127】
まず、この透過データI(n,m,φ)に対し、対数変換等の前処理を加え透過データP(n,m,φ)を求める。
【0128】
次に、前処理後の透過データP(n,m,φ)に対し、較正で求めた検出チャンネルの配置θ(n,m),γ(n,m)またはxd(n,m),zd(n,m)を用いて、チャンネル配置の誤差補正を加える。この誤差補正は透過データP(n,m,φ)が配置角θ,γまたは直線位置xd,zdについて等間隔になっていないものを補間計算により等間隔のデータに変換する補正である。変換により、横方向は配置角θあるいは直線位置xdについて等間隔で、また、縦方向は配置角γあるいは直線位置zdについて等間隔の透過データとする。この補正により、例えば、θとzdについて等間隔の透過データP(θ,zd,φ)、あるいはxdとzdについて等間隔の透過データP(xd,zd,φ)を得る。
【0129】
さらに、再構成部45eは、この等間隔に補正された透過データP(θ,zd,φ)あるいはP(xd,zd,φ)を用いて、以下のように、フィルタ補正逆投影を行なって断面像を得る。
【0130】
図16は第二実施形態に係る断面像再構成の逆投影を説明する幾何図(平面図)である。
【0131】
フィルタ補正逆投影は、透過データPに対しθ方向あるいはxd方向に周波数ωに比例した周波数フィルタ(いわゆる|ω|フィルタ)を掛けた後、透過データPを補正された等間隔の検出チャンネルの位置すべてからX線焦点Fに向けて被検体位置に仮想設定した3次元格子50上に逆投影BPして足し込むことで行なわれ、1回転分の足し込みで3次元画像(多数の断面像)が再構成される。<>終了。
【0132】
(第二の実施の形態の効果)
第二の実施形態によれば、検出チャンネルの配置が所定の位置から誤差をもって配置されている場合でも、較正走査で第一ピンを横移動させながら第一ピンの透過データを収集し、この第一透過データを較正処理して検出チャンネルそれぞれの横方向の配置を求めて記憶し、さらに、較正走査で第二ピンを縦移動させながら第二ピンの透過データを収集し、この第二透過データを較正処理して検出チャンネルそれぞれの縦方向の配置を求めて記憶し、その後断層撮影で得た被検体の透過データに対し、記憶した検出チャンネルの配置を用いて、横方向は配置角θあるいは直線位置xdについて等間隔で、また、縦方向は配置角γあるいは直線位置zdについて等間隔の透過データに変換してから、断面像を再構成するので、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することができる。
【0133】
(第二の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0134】
(変形例1)
第二実施形態では、断層撮影で得られた透過データP(n,m,φ)を、縦方向と横方向それぞれについて等間隔データに変換してからフィルタ補正逆投影を行なって断面像を得ているが、等間隔に変換することなくフィルタ掛けを行った後、透過データP(n,m,φ)を較正で求めた検出チャンネルの位置からX線焦点Fに向けて断面位置に逆投影するようにしてもよい。
【0135】
また、再構成はフィルタ補正逆投影法には限られず、例えばフーリエ変換法や逐次近似法でも、較正で求めたチャンネル配置を反映して再構成でき、同様の効果をあげることができる。
【0136】
(変形例2)
第二実施形態で、具体的な検出チャンネルの配置は平面配置でも円弧配置でもどのような配置でもよく、X線検出器の種類としてもどのようなものでもよい。
【0137】
例えば、X線検出器としてFPD(フラットパネル検出器)を用いた場合、検出チャンネルの配置は平面状の検出基準面32a上で縦横等間隔の格子状である。FPDは1つの半導体チップから製造する場合はチャンネル配置は極めて正確であるが、通常、検出面の寸法を大きくするため、検出チャンネルを形成したチップを繋ぎ合わせて製造する。このためチップの継ぎ目でチャンネル配置の誤差が生じる。また、FPDの全体配置としてチャンネルの縦方向mを正確に回転軸RAの投影の方向に合わせることは困難で、常に若干の傾斜を含む。第二実施形態によれば、このようなFPDの継ぎ目や全体配置の傾斜を自動的に補正して、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することができる。
【0138】
また、例えば、X線検出器としてX線II(Image Intensifier)とテレビカメラを組み合わせたものを用いた場合、検出チャンネルの配置はX線焦点Fの側に凸の球面で、しかも電子レンズによる収差もあり、かなりの歪を持っている。また、全体配置としても画像の縦方向を回転軸RAの投影の方向に正確にあわせることは難しい。第二実施形態によれば、このようなX線IIの歪や全体配置の傾斜を自動的に補正して、検出チャンネルの配置誤差による断面像の劣化を低減することができる。
【0139】
(変形例3)
第二実施形態で、第一ピン35bを回転軸RAに合うように載置したが、合っていなくてもよい。ただし、合っていない場合は横移動位置をtc(nc,mc)に設定した状態で、回転軸RAの投影が中央チャンネルnc,mcからずれることになり、回転軸の投影を基準とした配置較正でなくなる。
【0140】
そこで、変形例3として、横方向の較正を次のように変更することで第一ピン35bがずれていても回転軸の投影を基準とした検出チャンネル配置の較正ができる。
【0141】
横方向の較正として、較正走査部45bは、まず、テーブル34を基準回転位置0°として第二実施形態と同じ横方向の較正走査を行なって、n,m毎に透過データ(0°の第一透過データ)Inm(t)0を得る。
【0142】
較正走査部45bは、次に、テーブル34を基準回転位置から180°回転させた状態で第二実施形態と同じ横方向の較正走査を行なって、n,m毎に透過データ(180°の第一透過データ)Inm(t)180を収集する。このときの較正走査は第二実施形態同様t=0から順に収集するが、逆にt=T−1から逆向きに収集してもよい。
【0143】
較正処理部45cは、得られた透過データInm(t)0,Inm(t)180に対し対数変換(式(4))を加え、透過データPnm(t)0,Pnm(t)180を得る。
【0144】
図17(a)は変形例3に係る横方向の較正走査で得た第一ピン35bの透過データのブロファイルを示す。較正処理部45cは、検出チャンネルn,m毎に、0°のプロファイルと180°のプロファイルの対称中心tc(n,m)を求める。求め方は重心計算、相関計算等が使用できる。このtc(n,m)は回転中心の投影がチャンネルn,mを横切る横移動位置と言える。
【0145】
次に、較正処理部45cは、第二実施形態と同様に、このtc(n,m)から配置角θ(n,m)または直線配置xd(n,m)を求め、適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、チャンネル配置の横方向の較正が終わる。
【0146】
変形例3によれば、第一ピン35bが回転軸RAに合っていなくても、横移動位置を、求めたtc(nc,mc)に設定すると回転軸RAの投影が中央チャンネルnc,mcと正確に合致するので、回転軸の投影を基準とした横方向の検出チャンネル配置θ(n,m)またはxd(n,m)を求められる。
【0147】
なお、この変形例3においては、第一ピンは回転軸RAからずれてもよいのみならず、傾いてもよく、また、形状として円筒でなく不定形であってもよい。
【0148】
図17(b)は第一ピンが不定形であった場合のプロファイルであるが、0°のプロファイルと180°のプロファイルはそれぞれ左右非対称の不定形となるが、互いに左右反転した形となり、その対称中心tc(n,m)が回転軸RAの位置、正確には回転軸RAの投影がチャンネルn,mを横切る横移動位置となる。
【0149】
従って、第一ピンは回転軸RAからずれても傾いても、形状として円筒でなく不定形であっても、回転軸の投影を基準とした横方向の検出チャンネル配置θ(n,m)またはxd(n,m)を求められる。
【0150】
(変形例4)
第二実施形態で、第二ピン35cを横方向に合うように載置した。第二ピン35cが横方向から傾斜している場合は、縦移動の較正で求めた縦方向のチャンネル配置γ(n,m)、zd(n,m)が、回転軸の投影(と直交する方向)を基準とした配置較正でなくなる。
【0151】
そこで、変形例4として、縦方向の較正を次のように変更することで第二ピン35cが傾斜していても回転軸の投影を基準とした検出チャンネル配置の較正ができる。
【0152】
縦方向の較正として、較正走査部45bは、まず、テーブル34を基準回転位置0°として第二実施形態と同じ縦方向の較正走査を行なって、n,m毎に透過データ(0°の第二透過データ)Inm(q)0を得る。
【0153】
較正走査部45bは、次に、テーブル34を基準回転位置から180°回転させた状態で第二実施形態と同じ縦方向の較正走査を行なって、n,m毎に透過データ(180°の第二透過データ)Inm(q)180を収集する。このときの較正走査は第二実施形態同様q=0から順に収集するが、逆にq=Q−1から逆向きに収集してもよい。
【0154】
較正処理部45cは、得られた透過データInm(q)0,Inm(q)180に対し対数変換(式(7))を加え、透過データPnm(q)0,Pnm(q)180を得る。
【0155】
図18は変形例4に係る縦方向の較正走査で得た第二ピン35cの透過データのプロファイルを示す。較正処理部45cは、検出チャンネルn,m毎に、0°のプロファイルと180°のプロファイルの位置を平均した中央位置qc(n,m)を求める。求め方は重心計算、相関計算等が使用できる。このqc(n,m)は傾斜していない第二ピン35cの投影がチャンネルn,mを縦断する縦移動位置と言える。
【0156】
次に、較正処理部45cは、第二実施形態と同様に、このqc(n,m)から配置角γ(n,m)または直線配置zd(n,m)を求め、適宣な記憶部(図示せず)に記憶し、チャンネル配置の縦方向の較正が終わる。
【0157】
変形例4によれば、第二ピン35cが横方向から傾斜していても、0°の第二透過データと180°の第二透過データの第二ピン35c投影位置を平均することで、傾斜していない場合の第二ピン35c投影位置、すなわち傾斜していない第二ピン35cが検出チャンネルn,mに投影される横移動位置を求めることができ、回転軸の投影(と直交する方向)を基準とした縦方向の検出チャンネル配置γ(n,m)またはzd(n,m)を求められる。
【0158】
(変形例5)
上述した第二実施形態の変形例4では、第二ピン35cを回転軸RAに対して回転させて0°位置と180°位置それぞれで縦方向の較正走査を行なっているが、回転軸RAに対して回転させる代わりに、回転軸RAに直交する方向(横方向)の横軸RAtに対して回転させるようにしてもよい。
【0159】
この場合は、新たにテーブル34上に横軸RAtに対する横軸回転機構を設け、この横軸回転機構で較正治具35を回転させるようにする。
【0160】
変形例5によれば、変形例3で記載したのと同様に、第二ピンは横方向からずれても傾いても、形状として円筒でなく不定形であっても、回転軸RAの投影(と直交する方向)を基準とした縦方向の検出チャンネル配置γ(n,m)またはzd(n,m)を求められる。
【0161】
(変形例6)
第二実施形態では、断層撮影としては、回転のみを行うRR方式を採用しているが、所謂TR(Translate Rotate)方式(第二世代方式)で断層撮影してもよい。この場合は横移動tをトランスレート動作として、X線ビーム33の横方向の広がり角度をファン角として、トランスレート中に一定間隔で検出チャンネルn,mごとに透過データInm(t)を収集し、トランスレートとファン角分のステップ回転を交互に繰り返して180°方向からの透過データを収集する。
【0162】
次に、再構成部は得られた透過データInm(t)に対し以下のように処理を加える。
【0163】
まず、この透過データInm(t)に対し、対数変換等の前処理を加え透過データPnm(t)を求める。さらに、再構成部は、この透過データPnm(t)を用いて、以下のように、フィルタ補正逆投影を行なって断面像を得る。
【0164】
図19は変形例6に係る逆投影を説明する幾何図(平面図)である。
【0165】
フィルタ補正逆投影は、透過データPnm(t)に対しt方向に周波数ωに比例した周波数フィルタ(いわゆる|ω|フィルタ)を掛けた後、例えば、透過データPnm(t)に対し、較正で得られた横方向の配置角θ(n,m)と縦方向の直線配置zd(n,m)を用いて、透過データPnm(t)を、(tc(n,m)位置が回転軸RAに合うようにt方向にずらした後、)角度θ(n,m)方向からX線焦点Fに向けて被検体位置に仮想設定した3次元格子50上に(全t,m,nについて)逆投影BPして足し込むことで行なわれ、全トランスレート分の足し込みで3次元画像(多数の断面像)が再構成される。
【0166】
較正で得られた検出チャンネルの配置θ(n,m)、zd(n,m)を用いて、θ(n,m)方向から逆投影することで、またzd(n,m)位置から逆投影することで、検出チャンネル配置誤差を補正して断面像を再構成することができ、断面像の劣化を低減することができる。
【0167】
また、変形例6によればスキャンで用いるトランスレート動作を用いて第一ピンを横移動できる。
【0168】
(変形例7)
第二実施形態では、断層撮影としては、回転のみで行うRR方式を採用しているが、RR方式とTR方式を切換えて断層撮影することもできる。すなわち、被検体がX線ビーム33の横方向に収まる大きさのときRR方式で短時間スキャンで断層撮影し、収まらない大きさのときはTR方式に切換えて被検体全体の断層撮影をすることが可能である。
【0169】
この場合、RR方式でもTR方式でも検出チャンネル配置誤差を補正して断面像を再構成することができ、断面像の劣化を低減することができる。
【0170】
また、変形例7によればスキャンで用いるトランスレート動作を用いて第一ピンを横移動できる。
【0171】
(変形例8)
第二実施形態では、第一ピン35bを横移動させるとき、被検体を載置するテーブル34に第一ピン35bを有する治具35を載置してこのテーブル34を機構部36により横移動させているが、テーブル34を横移動させる機構を廃止し、代わりに、第一ピン35bを保持して横移動させる別の機構を設けてもよい。
【0172】
また、第二実施形態では、第二ピン35cを縦移動(昇降)させるとき、被検体を載置するテーブル34に第二ピン35cを有する治具35を載置してこのテーブル34を機構部36により縦移動させているが、テーブル34を縦移動させる機構を廃止し、代わりに、第二ピン35cを保持して縦移動させる別の機構を設けてもよい。
【0173】
(変形例9)
第二実施形態では1本の第一ピン35bおよび1本の第二ピン35cの透過データで較正処理しているが、それぞれを複数本のピンとしてもよい。この場合、各ピンの透過データのプロファイルを平均してtc(n,m),qc(n,m)を求めることで統計精度を上げて検出チャンネル配置を求めることができる。また、プロファイルを平均する代わりに、各ピンごとにtc(n,m),qc(n,m)を求めてから平均するか、各ピンごとに検出チャンネル配置を求めてから平均しても同様である。
【0174】
(変形例10)
第二実施形態で、第一ピン35bのX線ビーム33に対する横方向の動きは相対的でよい。例えば、テーブル34を横移動する機構を廃止し、代わりに、X線焦点F(X線管31)とX線検出器32を一緒に横移動させるか、X線焦点F(X線管31)とX線検出器32のどちらか一方を横移動させる機構を設けてもよい。
【0175】
また、第二実施形態で、第二ピン35cのX線ビーム33に対する縦方向の動きは相対的でよい。例えば、テーブル34を縦移動する機構を廃止し、代わりに、X線焦点F(X線管31)とX線検出器32を一緒に縦移動させるか、X線焦点F(X線管31)とX線検出器32のどちらか一方を縦移動させる機構を設けてもよい。
【0176】
一例として、X検出器を横移動させる場合を図20を参照して説明する。
【0177】
図20は変形例10に係る横方向の較正走査の幾何図(平面図)である。
【0178】
第二実施形態で第一ピン35bを横移動させた代わりに、ここでは第一ピン35bをX線光軸L上に固定した状態でX線検出器32を横移動させることで横方向の較正走査を行なう。横移動t=0乃至T−1の透過データを得た後、第二実施形態と同様に透過データからtc(n,m)を得る。次に、このtc(n,m)から、検出基準面32a上のチャンネルn,mの横方向の直線配置xd(n,m)を、式、
xd(n,m)={tc(nc,mc)−tc(n,m)}・Δx …(10)
で求める。また、このxd(n,m)を用いて配置角θ(n,m)を、式、
θ(n,m)=ATAN{xd(n,m)/FDD} …(11)
で求め、横方向の検出チャンネルの配置が求まる。
【0179】
更に、同様にX線検出器32を縦移動させ第二ピン35cを用いて縦方向の検出チャンネルの配置が求まるが、ここで、縦移動させる代わりにX線検出器32をX線光軸L方向の軸に対し90°回転させ、m方向をt方向に合わせた状態で、上述した横方向の較正走査を行なうことで、同様に縦方向の検出チャンネルの配置zd(n,m),γ(n,m)を求めることもできる。
【0180】
また、以上のX線検出器32を移動させる較正は、検出チャンネルを平面状の検出基準面32aに沿って並べたX線検出器、例えばFPD等の場合、ピンの投影が常に検出基準面に垂直になるようにできるので、直線配置xd(n,m),zd(n,m)を精度よく求めることができる。
【0181】
(変形例11)
第二実施形態およびその変形で、スキャン制御部45dと再構成部45eを廃止してもよい。この場合、第二実施形態の装置はCT装置でなくX線検出器32の専用較正装置となる。すなわち、X線検出器32の検出チャンネルの配置の較正は必ずしも、CT装置に搭載した後にCT装置を用いて行う必要は無く、搭載する前に上記の専用較正装置で行なってもよい。
【0182】
(変形例12)
以上の変形例を合わせた変形が可能である。
【0183】
(本発明の第三の実施の形態の構成)
以下、本発明の第三の実施形態の構成について図21、図22、図23を参照して説明する。
【0184】
図21は本発明の第三実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)、図22は本発明の第三実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(側面図)である。図23は本発明の第三実施形態に係るCT装置の較正治具を示した模式図((a)正面図、(b)側面図)である。
【0185】
第三実施形態のCT装置は、断層撮影として、回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)を採用したCT装置である。
【0186】
CT装置のX線管(放射線源)61およびX線検出器(放射線検出手段)62は対向して配置され、X線管61のX線焦点(放射線焦点)Fより放射されコリメータ63によりコーン状に絞られたX線ビーム(放射線)64が2次元の複数検出チャンネルを持つX線検出器62により検出され、透過データとして出力される。X線検出器62は検出素子をX線ビーム64と交差する面に沿って2次元で並べたものであり、チャンネルn,mで2次元の透過データI(n,m)を得る。
【0187】
被検体(図示せず)はテーブル65上に載置されるが、図21では被検体の代わりに較正治具66が載置されている。テーブル65はX線の吸収の少ない材料で作られている。X線管61とX線検出器62は一体で機構部(回転手段)67によりX線光軸(X線ビーム64の中心線)Lの方向に垂直な回転軸RAに対して回転される。較正治具66(あるいは被検体)を載置したテーブル65は機構部(横移動手段、縦移動手段)67により、回転軸RAと直交しX線ビーム64を横切る(X線光軸Lと直交する)方向である横方向tに横移動されるとともに、回転軸RAの方向である縦方向qに縦移動される。
【0188】
図23を参照して、較正治具66は、基板66aの内部には,第一ピン(第一基準体)66bと第二ピン(第二基準体)66cを埋め込んだ配置としている。第一ピン66bは回転軸RA方向に延在する円筒状のX線吸収の大きいピンで、第二ピン66cは横方向に延在する円筒状のX線吸収の大きいピンであり、これに対し、基板66aはX線の吸収の少ない板である。第一ピン66bと第二ピン66cは基板66a内で直交配置されている。基板66aの下部には突起66dを配している。突起66dをテーブル65の溝(図示せず)にはめ込んで載置することで第一ピン66bの軸が回転軸RAに合うようにできる構造である。また、載置したとき第二ピン66cの軸を回転軸RAと交差しかつ横方向にあわせるように載置できる構造である。
【0189】
構成要素として、他に、機構部67を制御し、また、X線検出器62からの透過データを処理する制御処理部75、処理結果等を表示する表示部75a、X線管61を制御するX線制御部(図示せず)等がある。
【0190】
制御処理部75は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク、表示部75a、入力部(キーボードやマウス等)、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0191】
制御処理部75は、機構制御ボードにより、機構部67の動作位置の信号(エンコーダパルス等)を受けて機構部67を制御して較正走査やスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器62に送る。なお、機構部67には図示してないエンコーダが取付けられており、回転角度及び、テーブル65の横移動位置t、縦移動位置qとが読み取られ、それぞれ制御処理部75に送られる。
【0192】
また、制御処理部75は、断層撮影時にX線検出器62からの透過データを収集し、記憶し、再構成処理して被検体の断面像を作成し、表示部75aに表示する。
【0193】
また、制御処理部75は、X線制御部(図示せず)に指令を出し、X線管61の管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体にあわせて変えることができる。
【0194】
図21に示すように、制御処理部75はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、検出チャンネルの配置を求めるための較正走査部(較正走査手段)75bと較正処理部(較正処理手段)75c、断層撮影をするためのスキャン制御部75dと再構成部(再構成手段)75e、等を備えている。
【0195】
(第三の実施の形態の作用)
第三実施形態の作用は第二実施形態の作用と同様であるので記載は省略する。
【0196】
すなわち、第三実施形態の作用は、第二実施形態に対しテーブルを回転させる代わりにX線管とX線検出器を回転させる変更のみを加えたものである。
【0197】
(第三の実施の形態の変形)
第三実施形態で、第二実施形態の変形例1ないし変形例12に記載したすべての変形が可能で、同様の効果をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の第一実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(平面図)。
【図2】本発明の第一実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図3】本発明の第一実施形態に係るCT装置の較正治具を示した模式図(正面図)。
【図4】第一実施形態に係る較正走査の幾何図(平面図)。
【図5】第一実施形態に係る較正走査で得た第一ピンの透過データのプロファイルを示す模式図。
【図6】第一実施形態に係る断面像再構成の逆投影を説明する幾何図(平面図)。
【図7】第一実施形態の変形例3に係る較正走査で得た第一ピンの透過データのプロファイルを示す模式図。
【図8】第一実施形態の変形例4に係る逆投影を説明する幾何図(平面図)。
【図9】本発明の第二実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(平面図)。
【図10】本発明の第二実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図11】本発明の第二実施形態に係るCT装置の較正治具を示した模式図((a)正面図、(b)側面図)。
【図12】第二実施形態に係る横方向の較正走査の幾何図(平面図)。
【図13】第二実施形態に係る横方向の較正走査で得た第一ピンの透過データのプロファイルを示す模式図。
【図14】第二実施形態に係る縦方向の較正走査の幾何図(正面図)。
【図15】第二実施形態に係る縦方向の較正走査で得た第二ピンの透過データのプロファイルを示す模式図。
【図16】第二実施形態に係る断面像再構成の逆投影を説明する幾何図(平面図)。
【図17】第二実施形態の変形例3に係る横方向の較正走査で得た第一ピンの透過データのプロファイルを示す模式図。
【図18】第二実施形態の変形例4に係る縦方向の較正走査で得た第二ピンの透過データのプロファイルを示す模式図。
【図19】第二実施形態の変形例6に係る断面像再構成の逆投影を説明する幾何図(平面図)。
【図20】第二実施形態の変形例10に係る横方向の較正走査の幾何図(平面図)。
【図21】本発明の第三実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図22】本発明の第三実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(側面図)。
【図23】本発明の第三実施形態に係るCT装置の較正治具を示した模式図((a)正面図、(b)側面図)。
【符号の説明】
【0199】
1…X線管、2…X線検出器、2a…検出基準面、3…スリット、4…X線ビーム、5…テーブル、6…較正治具、6a…基台、6b…第一ピン、6c…突起、7…機構部、15…制御処理部、15a…表示部、15b…較正走査部、15c…較正処理部、15d…スキャン制御部、15e…再構成部、20…格子、
31…X線管、32…X線検出器、32a…検出基準面、33…X線ビーム、34…テーブル、35…較正治具、35a…基台、35b…第一ピン、35c…第二ピン、35d…基板、35e…突起、36…機構部、45…制御処理部、45a…表示部、45b…較正走査部、45c…較正処理部、45d…スキャン制御部、45e…再構成部、50…格子、
61…X線管、62…X線検出器、63…コリメータ、64…X線ビーム、65…テーブル、66…較正治具、66a…基板、66b…第一ピン、66c…第二ピン、66d…突起、67…機構部、75…制御処理部、75a…表示部、75b…較正走査部、75c…較正処理部、75d…スキャン制御部、75e…再構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に載置された被検体に向けて放射線焦点より放射線を放射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を複数の検出チャンネルで検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、前記放射線の中心である放射線光軸と直交する縦方向に平行な回転軸に対し前記放射線と前記テーブルとを相対的に回転させる回転手段と、前記回転によるスキャンにより複数の前記回転の位置で検出された透過データから前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、
前記縦方向に延在する第一基準体と、
前記第一基準体を前記放射線光軸と前記縦方向の双方に直交する横方向に前記放射線に対して相対的に横移動させる横移動手段と、
前記横移動手段を制御し前記横移動の複数の所定の位置で前記第一基準体を透過した放射線を前記放射線検出手段で検出させ第一透過データを収集する較正走査手段と、
前記第一透過データを用いて前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を求めて記憶する較正処理手段とを具備し、
前記再構成手段は、前記較正処理手段により求められた前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を用いて、前記回転によるスキャンにより複数の前記回転の位置で検出された透過データに対し前記検出チャンネルの所定位置からのずれを補正して前記被検体の断面像を再構成することを特徴とするCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCT装置において、
前記横方向に延在する第二基準体と、
前記第二基準体を前記縦方向に前記放射線に対して相対的に縦移動させる縦移動手段とを具備し、
前記較正走査手段は、前記縦移動手段を制御し前記縦移動の複数の所定の位置で前記第二基準体を透過した放射線を前記放射線検出手段で検出させ第二透過データを収集し、
前記較正処理手段は、前記第二透過データを用いて前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記縦方向の配置を求めて記憶し、
前記再構成手段は、前記較正処理手段により求められた前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記縦方向の配置を用いて、前記回転によるスキャンにより複数の前記回転の位置で検出された透過データに対し前記検出チャンネルの所定位置からのずれを補正して前記被検体の断面像を再構成することを、さらに有することを特徴とするCT装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のCT装置において、
前記再構成手段は、前記較正処理手段により求められた前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を用いて、前記回転によるスキャンにより複数の前記回転の位置で検出された透過データを少なくとも前記横方向に等間隔の透過データに変換した後、前記等間隔に変換した透過データを用いて前記被検体の断面像を再構成することを特徴とするCT装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記横移動手段は、前記第一基準体を載置した前記テーブルを前記横移動させる手段であり、
前記較正走査手段は、前記第一基準体に対し、前記回転手段により基準回転位置に設定した状態で0°の第一透過データを収集し、前記基準回転位置から180°回転させた状態で180°の第一透過データを収集し、
前記較正処理手段は、前記0°の第一透過データおよび前記180°の第一透過データを用いて、前記回転軸の投影を基準とする前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を求めて記憶することを特徴とするCT装置。
【請求項5】
入射する放射線を複数の検出チャンネルで検出して透過データとして出力するCT装置用の放射線検出手段の較正装置であり、
前記放射線検出手段に対向して配置された放射線源と、
前記放射線源の放射線焦点より前記放射線検出手段に向けて放射される放射線の中心である放射線光軸に対し直交する1つの方向を縦方向とし、前記放射線光軸と前記縦方向の双方に直交する方向を横方向としたとき、
前記縦方向に延在する第一基準体と、
前記第一基準体を前記横方向に前記放射線に対して相対的に横移動させる横移動手段と、
横移動手段を制御し前記横移動の複数の所定の位置で前記第一基準体を透過した放射線を前記放射線検出手段で検出させ第一透過データを収集する較正走査手段と、
前記第一透過データを用いて前記複数の検出チャンネルのそれぞれの前記横方向の配置を求めて記憶する較正処理手段とを具備することを特徴とするCT装置用放射線検出手段の較正装置。
【請求項6】
請求項5に記載の較正装置において、
前記放射線検出手段は、平面状の検出基準面に前記複数の検出チャンネルを配した構成であり、
前記横移動手段は、前記第一基準体を前記放射線光軸上に固定した状態で、前記放射線検出手段を前記検出基準面が前記放射線光軸に対し直交する姿勢で前記横方向に移動させて前記横移動を行うことを特徴とする較正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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