説明

CoQ10の微生物による生成

本発明は、補酵素Q−10の合成に関与する酵素、すなわち、デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素および4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼ、前記酵素をコードする単離DNA、および補酵素Q−10の微生物生成法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補酵素Q−10の合成に関与する酵素、前記酵素をコードする単離DNA、および補酵素Q−10の微生物による生成に関する。
【背景技術】
【0002】
補酵素Q−10は、動物だけでなく、微生物および植物にも認められる。補酵素Q−10が人間の健康および疾患において重要な因子であるという証拠が確立され、増加している。補酵素Q−10は、化学合成、または微生物を用いた発酵により生成することができる。
【0003】
酵素のデカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素および4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼは、補酵素Q−10(2,3−ジメトキシ−ジメチル−6−デカプレニル−1,4−ベンゾキノン)、別名ユビキノン−10の生合成ステップを触媒する。DPP合成酵素は、イソプレノイド中間体のファルネシル二リン酸(FPP)に、イソペンテニル二リン酸(IPP)分子を7回連続して結合することによりDPPを形成する。次に、DDPは、すべてではないが、大部分の細菌のコリスミ酸から誘導される4−ヒドロキシベンゾエートと結合する。4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼによって触媒されるこのプレニル化の結果、3−デカプレニル−4−ヒドロキシベンゾエート(3DP4HP)が生じる。3DP4HPの芳香環は、さらに修飾されて、ユビキノンの還元型であるユビキノールを形成する。
【0004】
イソプレノイド中間体のIPPは、アセチル−CoAから始まる多段階の触媒経路によって合成される。phaAによりコードされる酵素のアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼは、IPP合成の第1段階である2分子のアセチル−CoAの縮合を触媒して、アセトアセチル−CoAを形成する。また、アセトアセチル−CoAは、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)生合成のそれが関与する最初の段階を触媒するphaB遺伝子産物のアセトアセチル−CoAレダクターゼの基質として働く。多くの細菌で、PHA生合成に関わる遺伝子は、いくつかのオペロンに分かれる。Paracoccus denitrificansでは、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼおよびアセトアセチル−CoAレダクターゼをそれぞれコードするphaA遺伝子およびphaB遺伝子は、あるオペロン上でクラスター形成するが、PHA合成経路の最後の酵素をコードするphaC遺伝子はこのオペロンの一部ではない。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、(1)デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素をコードするヌクレオチド配列、および(2)4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたDNAであって、
DPP合成酵素をコードするヌクレオチド配列は
(a)配列番号16で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b)(a)に定義のDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリッド形成し、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c)配列番号17で表されるポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%同一であり、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(d)配列番号17で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリペプチドをコードし、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択され、
4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は
(a’)配列番号23で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b’)(a’)に定義のDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリッド形成し、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c’)配列番号24で表されるポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%同一であり、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(d’)配列番号24で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリペプチドをコードし、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択される
単離されたDNAを対象とする。
【0006】
本明細書で使用する「標準的な条件」下でハイブリッド形成するとは、例えば、Sambrookら著、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,1989、およびAusubelら編、Short Protocols in Molecular Biology(これらはいずれも、ここに参照によって組み込む)に記載されているような、ストリンジェントな条件でのハイブリッド形成を意味する。ストリンジェントな条件は配列に依存的であり、異なる状況では異なる。配列が長くなると、より高温でハイブリッド形成する。通常、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHで、特定の配列の熱的融解温度(Tm)より約5〜10℃低い温度となるように選択される。Tmは、平衡時において、標的に相補的な配列の50%が標的配列にハイブリッド形成する温度(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度下)である(Tmで、標的配列が過度に存在するとき、平衡時においてプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3では、塩濃度は、約1.0M未満ナトリウムイオン、特に0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩類)であり、温度は、短いハイブリダイゼーションプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いハイブリダイゼーションプローブ(例えば、50ヌクレオチドを超える)では少なくとも約60℃である条件である。また、ストリンジェントな条件はホルムアミドなどの不安定化剤を添加することによってももたらされる可能性がある。この開示の目的では、そのようなハイブリッド形成に適したストリンジェントな条件は、37℃の40%ホルムアミド、1M NaCl、および1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の緩衝液中でのハイブリッド形成、ならびに少なくとも約50℃、通常約55℃〜約60℃で20分間、0.2XSSCで少なくとも1回洗浄することを含む条件、または同等の条件とする。バックグラウンドの少なくとも2倍を、陽性のハイブリッド形成とする。当業者であれば、同等のストリンジェンシーの条件を得るために、これに代わるハイブリッド形成および洗浄の条件が利用可能なことを容易に認めるであろう。
【0007】
本明細書で使用する「断片」という用語は約10以上のヌクレオチドの長さの核酸配列を指す。
【0008】
本明細書で使用する2つの配列でヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列を、それぞれ後述のように最大限一致するように並べたとき、同じである場合に、2つの核酸配列またはポリペプチドは「同一」と呼ばれる。2つ以上の核酸またはポリペプチド配列について、「同一」または「同一性」パーセントという用語は、比較ウィンドウ上で比較および最大一致度を見るために並べて、当技術分野で公知の配列比較アルゴリズム、またはマニュアルのアラインメントおよび目視検査で測定したとき、同じか、または特定の割合の同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列または部分配列を指す。配列同一性の割合がタンパク質またはペプチドに関して用いられるとき、同一でない残基位置は、しばしば保存的アミノ酸置換により異なることが認められており、この場合、アミノ酸残基は同等の化学的特性(例、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基の代わりをするので、分子の機能性特性は変わることはない。保存的置換で配列が異なる場合、配列同一性のパーセントは、置換の保存的性質を補正するため、上方修正される可能性がある。この補正方法は、当業者であれば、十分に承知している。特に、このとき、保存的置換は完全な不一致というよりむしろ部分的なものとして採点されることがあり、その結果、配列同一性の割合が高くなる。したがって、例えば、同一のアミノ酸のスコアを1とし、さらに非保存的置換のスコアを0としたとき、保存的置換のスコアは0〜1の間となる。保存的置換の採点は、例えば、Meyers & Miller,Computer Applic Biol.Sci.4:11−17(1988)のアルゴリズムに従って、または例えば、PC/GENEプログラム(Intelligenetics,米国カリフォルニア州マウンテンビュー)で実施されるように算出される。おそらく、同一の配列の中には、ヌクレオチドが同一でないか、アミノ酸残基が同一でないという違いが見られることがある。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、マルチドメイン酵素の1つのドメインの生物活性が減少または変更する修飾により異なるが、酵素の第2のドメインにおいて第2の生物活性が保存されている場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、本発明の範囲内に含まれる。通常、ポリペプチドが配列番号17または配列番号24のような天然のDPP合成酵素または4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも80%同一の場合、本発明の範囲内であると考えられる。核酸配列が配列番号16または配列番号23のような天然のDPP合成酵素または4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードする核酸配列と少なくとも80%、好ましくは90%同一な場合、本発明の範囲内であると考えられる。
【0009】
さらに、本発明は(1)配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号17の1つもしくは少数のアミノ酸の欠失、付加、もしくは挿入を有するアミノ酸配列を有し、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドと、(2)配列番号24のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号24の1つもしくは少数のアミノ酸の欠失、付加、もしくは挿入を有するアミノ酸配列を有し、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドを含むポリペプチドを対象とする。
【0010】
本明細書で使用する「1つまたは少数のアミノ酸の欠失、付加、または挿入」という用語は、1つまたは少数のアミノ酸の欠失、付加、または挿入により、それぞれのポリペプチド配列が突然変異していることを意味する。本出願では、「少しの」という用語は2以上を意味する。
【0011】
さらに、本発明は、本発明の新しいヌクレオチド配列を含む構築体も提供し、また、本発明は制御配列も含み得る。
【0012】
本明細書で使用する「構築体」は、DNA挿入物を有する発現ベクターまたはプラスミドなどの、追加のDNAを挿入または付加されたDNAの断片または配列である。そのような「追加のDNA」は、天然ではこの位置に生じず、当技術分野で公知のクローニング法により挿入または付加されたDNAである。また、この中には、当業者に公知の標準的なDNAの形質転換、導入、または接合の方法により、微生物のゲノムへ挿入するDNA配列も含まれる。したがって、本発明の状況で用いられる構築体は、本書で開示されるような、当技術分野で公知の方法により、プラスミドもしくは発現ベクターへ挿入するDNA配列、または微生物のゲノムへ挿入するDNA配列を含む。適したプラスミドおよび発現ベクターは当業者に公知である。
【0013】
「制御配列」という用語は、コーディングDNAの転写を制御または媒介する配列を含む。そのような配列は、おそらくコーディングDNAに隣接するか、おそらくコーディングDNAの上流または下流に位置する。制御配列は、プロモーター、転写修飾因子、リボソーム結合部位、ターミネーター、mRNA安定化配列、および翻訳または転写エンハンサー要素を含むが、それらに限定されない。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、上記で特定されるDNAを含む微生物が提供される。したがって、本発明は上記のような構築体を含む微生物を提供する。微生物は細菌または酵母菌が好ましいが、Gluconobacter属、Sphingomonas trueperi、Schizosaccharomyces pombe、カンジダ属、シュードモナス属、またはParacoccus denitrificansなどの天然の補酵素Q−10産生株である細菌または酵母菌がより好ましい。最も好ましいのは、細菌種のParacoccus zeaxanthinifaciensまたはRhodobacter sphaeroidesである。
【0015】
本発明は、
(a)DPP合成酵素を有するタンパク質をコードする遺伝子および/または4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼを有するタンパク質をコードする遺伝子の発現を増加させて、前記タンパク質の活性を高めるステップ、
(b)補酵素Q−10が生成される培地および条件下で、微生物または宿主細胞を培養するステップ
を含む、微生物における補酵素Q−10の生成の方法またはプロセスを提供する。DPP合成酵素をコードする遺伝子はddsAとして知られ、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子はubiAとして知られている。一態様において、さらに本方法は、前記微生物のcrtE遺伝子を突然変異させることにより、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)合成酵素の活性を除去するステップを含む。
【0016】
本発明の酵素の活性は、遺伝子のコピー数の増加、より強いプロモーターの使用、mRNAの安定化、翻訳の増加、野生型に比べて活性を上昇および/もしくは安定性を向上させた酵素の突然変異型ならびに/または野生型に比べて阻害に対する耐性および/もしくは基質阻害もしくは生成物阻害に対する耐性を有する酵素の突然変異型の使用、またはその他の当業者に公知の手段を含む方法により増加することができるが、方法はそれらに限定されない。
【0017】
補酵素Q−10生成のための培地および条件は当業者に公知であり、実施例1の培地および条件の部分で詳細に記述している。
【0018】
「突然変異」または「突然変異する」という用語は、ここでは修飾と互換的に使用され、天然のヌクレオチド配列における変化を意味し、この結果、タンパク質のアミノ酸配列でも、これに応じた変化が引き起こされる。そのような変化は、タンパク質の機能または活性などに変化を引き起こす可能性がある。突然変異は、フレームシフト、置換、挿入および/または欠失の1つまたは複数を含む様々な方法で引き起こすことが可能であり、ナンセンス突然変異[アンバー(T/UAG)、オーカー(T/UAA)およびオパール(T/UGA)]もこの1つである。欠失は、全遺伝子の欠失を含め、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失と考えられる。そのような突然変異を起こす方法は、NTG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)またはEMS(エチルメタンスルホン酸)を使用する化学的突然変異生成、ならびに亜硝酸、UV(紫外線)照射、およびトランスポゾン、挿入要素、または細胞の突然変異率を制御する特定の遺伝子(例えば、mutSおよびmutT)のような生物剤を使用する突然変異生成を含むが、それらに限定されない。また、突然変異は、PCRにより作成された突然変異を含むDNA断片の調製物を使用したDNA組換え法、およびそのような突然変異を含むDNA断片を、当業者に公知の標準的なDNAの形質転換法、導入法、または接合法により染色体へ導入する(天然の座位または別の染色体部位で)ことにより起こすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の特別の実施形態は、
(a)配列番号16で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b)(a)に定義されるDNA配列と相補的なDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリット形成し、デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c)(a)または(b)のDNA配列によってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(d)配列番号17のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%の程度まで同一であり、デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(e)配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも80%の程度まで同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択されるデカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素をコードするヌクレオチド配列を含むDNAと、
(a’)配列番号23で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b’)(a’)に定義されるDNA配列と相補的なDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリット形成し、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c’)(a’)または(b’)のDNA配列によってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(d’)配列番号24のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%の程度まで同一であり、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(e’)配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも80%の程度まで同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択される4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列と
を含むDNA
から選択された単離DNAを提供することである。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、ddsAおよびubiAから選択される遺伝子の発現を高めて、DPP合成酵素および4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼから選択される酵素の活性を高めること、ならびに補酵素Q−10が生成される培地および条件で細胞を培養することを含む微生物での補酵素Q−10の生成法を含む。
【0021】
以下の実施例は、本発明の方法をさらに説明するために提供される。これらの実施例は、説明することに限り提供されるのであって、いずれの手法も本発明の範囲を制限することを意図していない。
【実施例】
【0022】
実施例1:菌株、微生物学的方法、および解析手順
【0023】
Paracoccus zeaxanthinifaciensなどの細菌では、イソプレノイド中間体FPPおよびIPPからのゼアキサンチンの合成に、5段階の酵素反応が関与している。第一に、crtEによりコードされるGGPP合成酵素によりゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)が生成される。次に、2つのGGPP分子が、crtBにコードされるフィトエン合成酵素により触媒されて結合し、フィトエンが生成される。次の酵素は、crtIによりコードされるリコペン合成酵素であり、4段階の不飽和化を実施することによりフィトエンをリコペンに変換する。crtYによりコードされるリコペンシクラーゼが、リコペンをβ−カロテンに変換し、次に、crtZによりコードされるβ−カロテン水酸化酵素により水酸化され、ゼアキサンチンが生じる。リコペン、β−カロテン、およびゼアキサンチンは赤またはオレンジであるが、その他の中間体は無色である。
【0024】
P.zeaxanthinifaciens株ATCC21588は、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Blvd.,Manassas VA 20110−2201,USA)より入手可能の天然型の海洋性ゼアキサンチン生成細菌(米国特許第3891504号)である。菌株R1534およびR114は、古典的突然変異誘発およびスクリーニング法により、ATCC21588から誘導されたゼアキサンチン生成変異体である。菌株R1534およびR114は、ブダペスト条約の取り決めに従って、以前にATCCに寄託され、それぞれ、ATCC株番号PTA−3336およびPTA−3335が割り当てられている。菌株R1534intE、UV9−4、およびEMS9−7の構築については、実施例2で詳述する。
【0025】
培地および条件
大腸菌株は、37℃でLB培地(Becton Dickinson、米国メリーランド州スパークス)で増殖させた。組換え菌株でのプラスミドの維持のために、アンピシリン(100μg/mL)および/またはカナマイシン(実験によって25〜50μg/mL)を培地に添加した。寒天(最終濃度1.5%)を固形培地に添加した。液体培地は、200rpmで、回転振盪機で増殖させた。
【0026】
P.zeaxanthinifaciens株は28℃で増殖させた。P.zeaxanthinifaciensに対して使用した培地の組成を以下に記載する(各実験で用いた正確な培地については後の実施例で詳述する)。フラスコで増殖させたP.zeaxanthinifaciensのすべての液体培養は、特記しない限り、回転振盪機において200rpmで振盪した。寒天(最終濃度1.5%)を固形培地に添加した。培地を高圧蒸気滅菌により滅菌した場合、滅菌後にグルコースを添加して(濃縮原液)、所望の最終濃度を得た。
【0027】
F−培地は、トリプトン10g、酵母エキス10g、NaCl 30g、D−グルコース・HO 10g、MgSO・7HO 5gを含む(蒸留水1Lあたり)。pHは濾過または高圧蒸気滅菌による滅菌前に7.0に調整した。
【0028】
362F/2培地は、D−グルコース・HO 33g、酵母エキス10g、トリプトン10g、NaCl 5g、MgSO・7HO 2.5gを含む(蒸留水1Lあたり)。培地のpHは濾過または高圧蒸気滅菌による滅菌前に7.4に調整した。滅菌後、微量元素溶液、NKP溶液、およびCaFe溶液を各2.5mL添加した。後の3つの溶液は、濾過により滅菌した。微量元素溶液は、(NHFe(SO・6HO 80g、ZnSO・7HO 6g、MnSO・HO 2g、NiSO・6HO 0.2g、EDTA 6gを含む(蒸留水1Lあたり)。NKP溶液はKHPO 250g、(NHPO 300gを含む(蒸留水1Lあたり)。CaFe溶液は、CaCl・2HO 75g、FeCl・6HO 5g、濃HCl 3.75mLを含む(蒸留水1Lあたり)。
【0029】
P.zeaxanthinifaciens株の流加培養
すべての培養は、凍結した細胞懸濁液(−80℃で15〜20%グルセロース保存)から開始された。流加発酵の前培養は、2組のそれぞれ200mLの362F/2培地の入った2Lのバッフル付き振盪フラスコで調製した。各フラスコに対して解凍した細胞懸濁液1mLを接種物として使用した。前培養の初期のpHは7.2であった。前培養は、660nmでの光学密度(OD660)が14〜22吸光度(使用される菌株による)となったあと、28℃、250rpmで、28時間振盪培養した。この培養物は、Biostat EDバイオリアクター(B.Braun Biotech International、ドイツ メルスンゲン)で培養し、この中には以下の組成を有する培地を含んだ(蒸留水1Lあたり):D−グルコース・HO 25g、酵母エキス(Tastone900)17g、NaCl 4.0g、MgSO・7HO 6.25g、(NHFe(SO・6HO 0.5g、ZnSO・7HO 0.038g、MnSO・HO 0.013g、NiSO・5HO 0.001g、CaCl・2HO 0.47g、FeCl・6HO 0.062g、ナイアシン0.01g、NHCl 0.5g、泡止め剤0.1mL、KP溶液3.5mL。KP溶液の組成は、KHPO 250g、NaHPO・2HO 200g、(NHHPO 100gである(蒸留水1Lあたり)。カナマイシン(最終濃度50mg/L)をプラスミド保有株の培地に添加した。すべての方法で使用した供給溶液は、D−グルコース・HO 550g、KP溶液18.25mLの組成を有した(蒸留水1Lあたり)。バイオリアクターの初期体積(接種後)は8Lであった。前培養は、例えば、初期OD660値を0.5にするためバイオリアクターに滅菌水50mL加えるというように、必要に応じて希釈した。発酵条件は自動的に、28℃、pH7.2(pHは28%NHOHの添加で制御)、最低撹拌速度300rpm、および通気速度1v.v.m.(最終体積に対して)に制御され、溶存酸素は最低相対値40%に制御された(カスケードで撹拌しながら)。これらの条件下で、培養は約20時間、供給溶液の添加なしに進めた(回分期)。これ以降、撹拌速度の減速、基礎的消費の急激な減少、CO生成の減少が見られ、このことは初期のグルコースが消費され、供給が開始されたことを示していた。標準的な供給プロフィールは(供給の開始時点から)、17時間は50g/hから80g/hへ増加し、7時間は80g/hで持続し、次に、11時間は55g/hへ減少し、残りの発酵期間は55g/hで維持すると定義した。本培養の最終体積は、約10mLであった。
【0030】
補酵素Q−10の分析法
【0031】
試料の調製および抽出。培養物20mLを使い捨ての50mLのポリプロピレン遠心管へ移し、4000rpmで20分間遠心分離した。上澄みは除去して廃棄した。ペレットはアセトン10mLで再懸濁し、試料は20秒間、音波処理した。この遠心管に栓をし、本試料をIKA Vibrax振盪機を用いて20分間混合した。次に、本試料を4000rpmで10分間、室温で遠心分離し、上澄みはきれいな50mLのポリプロピレン遠心管に移した。アセトン10mLおよびtert−ブチルメチルエーテル(TBME)10mLをペレットに加えて、2回目の抽出を行った。1回目の抽出のように、音波処理、混合、および遠心分離のステップを繰り返した。2回目の抽出物から上澄みを除去し、1回目の抽出の上澄みと混合した。脱水を促進するため、エタノール5mLを混合した抽出物に添加した。試料の混合後、SpeedVac蒸発器を用いて溶媒を除去した(外界温度)。残渣はTBME1mL+エタノール1mLで再び可溶化した。次に、溶解を促進するために超音波槽の中で試料に5分間音波処理を行った。最後に、試料を遠心分離し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析のために上澄みをこはく色のガラスバイアルに移した。
【0032】
HPLC。逆相HPLC法は、ユビキノンおよびこれに対応するヒドロキノンを同時に判定するために開発された。本法により、補酵素Q−10からカロテノイドであるフィトエン、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、およびゼアキサンチンを明確に分離することができる。クロマトグラフィーは、サーモスタット調節の自動サンプル採取装置とダイオードアレイ検出器を備えたAgilent1100 HPLCシステムを用いて実施した。本法のパラメータは次の通りであった。
【0033】
カラム:YMCカロテノイドC30カラム;5μ、スチール、250mm×4.6mmI.D.(YMC、特許番号CT99S052546WT)
ガードカラム:Pelliguard LC−18カートリッジ、20mm(SUPELCO、特許番号59654)
移動相:アセトニトリル、メタノール、TBMEの混合液(比率58%、10%、32%)、均一濃度溶離
実行時間:25分
通常カラム圧:開始時48bar
流速:1.0mL/分
検出:紫外部280nm
注入量:20μL
カラム温度:15℃
【0034】
試薬。アセトニトリルおよびTBMEはHPLCグレードのものをFlukaより購入した。エタノール(p.a.)およびメタノール(Lichrosolv)は、Merck(ダルムシュタット)から購入した。アセトン(puriss、p.a.)および補酵素Q−10はFlukaから購入した。
【0035】
計算。定量分析は外部標準を用いて2段階の較正により実施した。算出はピーク面積を基に行った。
【0036】
選択性。本法の選択性は、関連する参照化合物の標準液を注入することにより検証した。標的化合物(補酵素Q−10およびユビキノール−10)は完全に分離し、干渉は見られなかった。選択した化合物の保持時間は、全トランス型ゼアキサンチン8.0分、15Z−フィトエン10.4分、補酵素Q−9 11.0分、β−クリプトキサンチン12.3分、ユビキノール−10 13.8分、補酵素Q−10 14.8分、β−カロテン19.0分である。
【0037】
直線性。TBME/エタノール(1:1)で補酵素Q−10の希釈系列を作成し(最終濃度300、100、30、3μg/mL)、前述のHPLC法により分析した。3μg/mL〜300μg/mLの範囲で直線であることが分かった。相関係数は0.9999であった。
【0038】
検出限界。HPLC法による補酵素Q−10の検出下限は1μg/mLと判定された。
【0039】
実施例2:P.zeaxanthinifaciensのcrtE変異体の構築
【0040】
P.zeaxanthinifaciens株R1534におけるcrtE遺伝子の挿入不活化。P.zeaxanthinifaciens株R1534由来のcrtE遺伝子のクローニングおよび塩基配列決定は、Pasamontesらにより報告されている[Gene185:37〜41(1997)]。5’末端および3’末端にPstI制限酵素認識部位を有するcrtE特異的DNA断片を、プラスミドpRSF1010−Ampr−crt2(米国特許第6291204号)をテンプレートとして用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により作成した。使用したフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、それぞれ配列番号1および配列番号2で示すような配列を有した。PCR反応の条件は、94℃で1分(1サイクル)、94℃で1分、そして72℃で1.5分(30サイクル)、72℃で7分(1サイクル)であった。PCR反応により生成された460塩基対(bp)からなるDNA断片を、PstIにより分解し、QIAquickカラム(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)を用いてアガロースゲルより精製した。単離した断片は、あらかじめPstIにより分解した「自殺」プラスミドベクターpSUP202[Simonら、Bio/Technology1:784〜791(1983)]と結合させた。結合混合物を標準的方法により大腸菌S−17細胞の変換に使用した。形質転換体のスクリーニングにより、crtEの内部断片を含む所望のプラスミドの構築が認められた(プラスミドpSUPcrtEと命名)。プラスミドpSUPcrtEは、米国特許第6291204号で開示される接合法を用いて、P.zeaxanthinifaciens株R1534へ移入した。接合完了体は、リファンピシン100μg/mLおよびテトラサイクリン3μg/mLを含むF−寒天培地上で選択された。この結果、約10のコロニーを得た。これらコロニーの大部分では、菌株R1534(ゼアキサンチン生成のため黄色)と比較して色の変化が認められ(白化)、これはcrtE遺伝子の挿入不活化によるゼアキサンチン生成の減少と一致していた。
【0041】
10の代表的な推定上のcrtE組込み体を、以下のようにコロニーPCRによる分析のために選択した。コロニーを1.5mLのミクロチューブに移した。試料は電子レンジで加熱したあと(900ワットで1分間)、氷冷した。次に、PCR緩衝液、15%グリセロール、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、およびプライマーを含むPCRミックスを加えた。PCRの条件は、94℃で1分のあと、57℃で30秒および72℃で1分(合計25サイクル)、次に72℃で7分(1サイクル)であった。使用されたオリゴヌクレオチドプライマーは、pSUPcrtEプラスミドの所望の組込みがP.zeaxanthinifaciens株R1534染色体のcrtE座で生じる場合だけ、PCR生成物が得られるように設計された。フォワードプライマーpCrtEampF(配列番号3)はcrtE特異的であり、一方、リバースプライマーpCrtEampR(配列番号4)はbla(アンピシリン耐性遺伝子)特異的であった。このコロニーPCR法により、検査した10コロニーのうちの10コロニーでcrtE座に自殺ベクターpSUPcrtEの組込みを有することが発見された(すべてで予測された大きさのPCR生成物が得られた)。さらに、ベクターpSUP202のbla遺伝子における、特定の断片に対応するように特別に設計されたPCRプライマーにより、crtE組込み体の10のうちの8で頭尾方向にpSUPcrtEの多数の複製を含むことが検出された。
【0042】
crtE組込み体のうちの3つ(および対照としてP.zeaxanthinifaciensR1534)を、さらにサザンブロット法により分析した。本菌株を液体F−培地内で増殖させ、染色体DNAを標準的方法を用いて細胞から抽出した。染色体DNA試料を、制限酵素のAlwNI、XhoI、BglII、PvuII、およびBglII+PvuIIにより分解し、アガロースゲル電気泳動を実施した。膜への断片の移入およびプローブによるハイブリッド形成を標準的方法により実施した。P.zeaxanthinifaciensR1534由来のcrtE遺伝子を32Pで標識し、プローブとして使用した。対照の菌株R1534から分解された染色体DNAによるすべてのハイブリッド形成において、crtEプローブとハイブリッド形成させた断片の数量および大きさは、予想したようにR1534の染色体から単離したcrtE遺伝子のヌクレオチド配列に基づいていた。3つのcrtE組込み体から分解されたDNAによるハイブリッド形成の結果は、対照のR1534の結果と著明に異なり、(コロニーPCR分析の場合のように)染色体のcrtE座における、pSUPcrtEの多くの複製の組込みと一致していた。R1534intE(表1に記載)と命名された1つの組込み体は、以降の実験のために保存された(実施例4で記述)。
【0043】
P.zeaxanthinifaciens株R114のcrtE変異体の作成。P.zeaxanthinifaciens株R114に対して、標準的方法(紫外線[UV]照射またはエチルメタンスルホン酸[EMS]による処置)を用いて突然変異を誘発した。簡単に述べると、菌株R114の一晩培養物(F−培地で増殖)は、OD660が0.1になるまで継代培養し、3時間振盪培養した。培養物の一定分量を遠心分離し、得られた細胞のペレットを20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)で再懸濁することにより洗浄し、細胞を集めるために、再度、懸濁液を遠心分離した。次いで、洗浄した細胞ペレットをOD660が0.1となるように20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)に再懸濁させた。UVによる突然変異誘発のために、細胞懸濁液の一定分量10mLを、100mLガラスビーカーに移した。懸濁液は、マグネチックスターラ上で、連続的に、静かに混合した(クリップはビーカー内に置かれた)。混合細胞懸濁液を1450μW/cmの放射束の紫外線で所定時間照射した。EMSによる突然変異誘発のために、EMS 0.1mLを洗浄した細胞懸濁液の一定分量10mLへ添加し、混合液を回転振盪機で最高90分間振盪した。次に、細胞を遠心分離により集め、突然変異誘発物質を除去するために2回洗浄した。
【0044】
平板培養などで、生存率、希釈率に関する突然変異誘発処置を最適化するために、いくつかの予備実験を実施した。一旦これらの条件が確立されたあと、UVまたはEMSにより突然変異を誘発されたP.zeaxanthinifaciens菌株R114細胞を362F/2寒天板で平板培養し、白色(非ゼアキサンチン生成)コロニーを単離した。多くの上記の変異体を得て、さらに、単コロニー分離のためと、復帰突然変異の頻度が低いか、ないことを確認するために、362F/2寒天板の上で再びストリークした。以下の章で記述したように、合計43の安定な変異体についてさらに評価を行った。
【0045】
P.zeaxanthinifaciensのcrtE、crtB、またはcrtI遺伝子の突然変異は、リコペンが可視色を発するゼアキサンチン経路での最初の中間体であるので、白色のコロニーが生じることが予想される。菌株R114の43の白色非ゼアキサンチン生成変異体の中から、crtE変異体を同定するために、2段階のスクリーニング方法を採用した。最初に、crtI遺伝子産物のリコペンシクラーゼの活性減少を示すフィトエン蓄積について、変異体のスクリーニングを行った。フィトエン生成は、crtEで遮断される変異体では不可能なので、フィトエンを蓄積するいかなる変異体もcrtE変異体として除外することが可能であり、したがって、以降の考察から除外した。2番目に、遺伝的相補性を試験するために、第1段階で同定された非フィトエン蓄積白色変異体を、P.zeaxanthinifaciens株R114由来のクローンcrtE遺伝子を有するプラスミドpBBR−K−PcrtE−crtER114により形質転換した。クローンcrtE遺伝子を導入した場合に、ゼアキサンチン生成が回復することは(すなわち、黄色のコロニー)、白色コロニー表現型の基になるのは、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)合成酵素を不活化するcrtEの突然変異であることを強く示している。
【0046】
振盪フラスコ培養で、フィトエン蓄積に関して変異体を検査した。白色変異体(+親対照株R114)を500mLバッフル付きフラスコ内の110mLの362F/2培地で増殖させた。培養物の初期OD660は0.16であった。24、48、72時間後、細胞を集めるために、試料30mLを取り出し、50mLポリプロピレン管に入れて遠心分離した。細胞のペレットを水で洗浄し、再び遠心分離した。最終の細胞ペレットを、補酵素Q−10分析のために実施例1で記述した方法と同様のHPLCによりフィトエン蓄積に関して分析した。フィトエンに関する標準は得られなかったので、フィトエンに対応するクロマトグラムのピークはフィトエンのUVスペクトルと、質量分析で定量された化合物の質量により特定した。フィトエン濃度は、フィトエンおよび補酵素Q−10の特定の吸収係数の比率に基づいて算定した。この方法により、振盪フラスコ培養において、フィトエンを蓄積した、それら変異体を明白に識別することができた。さらに、フィトエンを蓄積しなかった6つの変異体(UV6−1、UV7−6、UV9−4、EMS3−6、EMS3−15、EMS9−7)について、次の段階の試験を実施した。
【0047】
クローンcrtE遺伝子による6つの白色非フィトエン蓄積変異体(UV6−1、UV7−6、UV9−4、EMS3−6、EMS3−15、EMS9−7)の遺伝的相補性に関する試験は以下の通り実施した。変異体ごとに、定常期の培養物1.5mLを使用して、F−培地100mLに接種した。OD660が0.5に達するまで、培養物を28℃、200rpmで増殖させた。次に、細胞を4℃、7,000xgで、15分間遠心分離して集めて、氷冷1mMヘペス緩衝液(pH7.0)100mLで2回洗浄した。最終ペレットは、氷冷1mMヘペス緩衝液(pH7.0)0.1mLで再懸濁し、この電気反応性細胞は、電気穿孔法を行うために直ちに使用したか、グリセロールを最濃終度が15%になるまで加え、細胞を−70℃で一定分量50μL中に保存した。形質転換のため、プラスミドpBBR−K−PcrtE−crtER114 1〜5μL(無塩溶液)を電気反応性細胞0.1mLに加え、電気穿孔法を実施した(条件:氷冷1mmキュベットで18kV/cmおよび129オーム、パルス長は一般に4〜5ミリ秒)。次に、F−培地1mLを加えて、細胞懸濁液を28℃で1時間振盪培養した。懸濁液の希釈液をカナマイシン50μg/mLを含むF−寒天板上に広げ、寒天板を28℃で培養した。
【0048】
変異体UV6−1、UV9−4、EMS3−6、およびEMS9−7のすべてのカナマイシン耐性コロニー(すなわち形質転換体)は濃黄色であったが、変異体UV7−6およびEMS3−15の形質転換体は白色のままであった。本遺伝的相補性試験は、変異体UV6−1、UV9−4、EMS3−6、およびEMS9−7が、GGPP合成酵素を不活化するcrtEに突然変異を含むことを示している。変異体UV9−4およびEMS9−7は、補酵素Q−10生成を評価するために以降の実験で使用した。
【0049】
実施例3:P.zeaxanthinifaciens株R114およびATCC21588由来のddsA遺伝子のクローニングおよび塩基配列決定
【0050】
方法
【0051】
ゲノムDNAの単離。P.zeaxanthinifaciens株R114(F−培地で増殖)の培養物600mLを、4℃、10,000xgで10分間遠心分離し、ペレットは溶解緩衝液(0.1M NaCl、50mM EDTA、10mM Tris−HCl、pH7.5)200mLで1回洗浄し、溶解緩衝液100mLで1回洗浄した。最終ペレットは、リゾチーム50mgとリボヌクレアーゼA(デオキシリボヌクレアーゼ無含有)1mgを含む溶解緩衝液20mLで再懸濁した。37℃で15分間の培養後、20%N−ラウロイルサルコシルNa1.5mLおよびプロテイナーゼK2.25mgを添加した。50℃で30〜60分間の培養後、ゆっくりと、しかし十分に混合された1体積のバッファーを飽和させたフェノール(pH7.5〜7.8)により、ライセートを抽出した。乳濁液は30,000xgで20分間遠心分離し、水相をフェノールで再抽出した。相は前回と同様に分離し、水相を1体積のフェノール:クロロホルム(1:1)で2回抽出した。このステップで、スイング型ローターにおいて、3,200xgで20分間の遠心分離により、十分に満足な相分離を得た。1体積のクロロホルムによる最終の抽出後、0.1体積の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を添加し、溶液を2体積の氷冷エタノールで覆った。沈降したDNAはガラス棒に巻き付け、70%エタノールに5分間浸漬し、クロロホルムで洗浄し、5〜10分間風乾した。DNAはTE緩衝液5mL(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA)に一晩再懸濁した。この溶液は微量のゼアキサンチンのため黄色なので、上記のように有機抽出と巻き付けを繰り返して、清澄な調製物を得た。
【0052】
λ−ライブラリー。ラムダFIX(登録商標)IIのP.zeaxanthinifaciens株R114 DNAをSau3AIで部分分解したカスタムメードのライブラリーをStratagene(米国カリフォルニア州ラホーヤ)から購入した。
【0053】
PCR。PCRは、製造業者の指示通りに、GC含量の高いPCRシステム(Roche Molecular Biochemicals、ドイツ、マンハイム)を用いたGeneAmp(登録商標)PCRシステム9700(PE Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスター)で実施した。一般的には、使用したMgCl濃度は1.5mMであり、最終濃度が1Mになるまで分割して溶液を加えた。
【0054】
DNAの標識および検出。PCR DIGプローブ合成キットおよびDIG発光検出キットを、それぞれDNAの標識と検出のために使用した(2つともRoche Molecular Biochemicals、ドイツ、マンハイムより購入)。
【0055】
λ−DNAの単離。製造業者の指示通りに、Qiagen(登録商標)ラムダキット(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)を使用した。
【0056】
DNA塩基配列決定。塩基配列決定反応は、製造業者の指示通りに、BigDye(登録商標)DNA塩基配列決定キット(PE Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスター)を用いて実施した。塩基配列決定反応生成物はDyeEx(商標)スピンカラム(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)で精製し、断片の分離および検出はABI Prism(商標)310遺伝子分析器(PE Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスター)により実施した。
【0057】
P.zeaxanthinifaciens株R114由来のddsA遺伝子のクローニングおよび塩基配列決定。P.zeaxanthinifaciens株R114のddsA遺伝子(DPP合成酵素をコードする)は、最初、phaAB遺伝子クラスターのクローニングおよび塩基配列決定の間に偶然に同定された。P.denitrificansのphaAおよびphaCの遺伝子配列を基にしたプライマーを使用して、P.zeaxanthinifaciens株R1534由来のphaAの一部、およびP.zeaxanthinifaciens株R114由来のphaCの一部を含むPCR断片を得た。次に、PCR断片を使用して、phaAおよびphaC遺伝子について、P.zeaxanthinifaciens株R114λ−ライブラリーをスクリーニングした。本ライブラリーより、本プローブに対してハイブリット形成するDNA断片を同定し、クローンを作成した。塩基配列決定により、phaA遺伝子およびphaC遺伝子が、確かにクローンの断片上に位置していることが認められた。さらに、phaB遺伝子がphaA遺伝子の下流に位置することがわかった。したがって、P.denitrificansの場合のように、P.zeaxanthinifaciensでは、phaAおよびphaB遺伝子はクラスターを形成し、一方、phaC遺伝子はゲノムの他の場所に位置している。phaABの下流部位の塩基配列決定により、P.denitrificans由来のddsA遺伝子と類似した配列に基づいて、ddsA遺伝子と同定されたオープンリーディングフレームが明らかになった。2002年2月21日、P.zeaxanthinifaciens株R114のddsA遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号5)と、これに対応し、(配列番号6)をコードするDPP合成酵素のアミノ酸配列はEMBLに寄託されて、2002年5月2日より登録番号AJ431695で公的に利用できるようになった。
【0058】
P.zeaxanthinifaciens株ATCC21588由来のddsA遺伝子の塩基配列決定。P.zeaxanthinifaciens ATCC21588由来のゲノムDNAをテンプレートとして使用して、フォワードプライマー7R−01(配列番号7)およびリバースプライマーdds−3(配列番号8)により、ddsA遺伝子を増幅し、得られたPCR生成物を配列決定した。野生株ATCC21588由来のddsA配列とATCC21588から古典的に誘導された変異体R114との比較により、R114のddsA遺伝子は、コード領域内のヌクレオチド698にGからAへの突然変異を含むことが明らかになった。このことにより、コドン233の中央のヌクレオチド(下線部分)はGCからGCに変わり、この結果、アミノ酸233は(ATCC21588の)グリシンから(R114の)アスパラギン酸に変わった。
【0059】
実施例4:P.zeaxanthinifaciensにおける補酵素Q−10生成に対する、P.zeaxanthinifaciens ddsA遺伝子の過剰発現の影響
【0060】
P.zeaxanthinifaciensの過剰発現に関するP.zeaxanthinifaciens由来のddsA遺伝子のクローニング。プライマーddsA/NdeI/for(配列番号9)およびプライマーddsA/BamHI/rev(配列番号10)を用いたP.zeaxanthinifaciens株R114のPCRにより、P.zeaxanthinifaciens株R114のddsA遺伝子のコード領域を増幅した。プライマーddsA/NdeI/forは、Ndel(CATATG)制限酵素認識部位を含み、この後部半分はddsA遺伝子の開始コドンATGと一致するように位置している。プライマーddsA/BamHI/revは終止コドン直後にBamHI部位を含む。PCR断片をNdeIおよびBamHIで切断し、ベクターpXI12のNdeI−BamHI切断骨格と結合させ(Humbelinら、J.Ind.Microbiol.Biotechnol.22:1〜7,1999)、プラスミドpTH36を得た。次に、ベクターpBBR1MCS−2(GenBank登録番号U23751)をBstXIおよびBsu36Iで切断し、このうち大きな断片を、アニーリングしたオリゴヌクレオチドMCS−2上方(配列番号11)およびMCS−2下方(配列番号12)と結合させて、ベクターpBBR−K−Ndeを得た。Rhodobacter sphaeroides由来のリボソームRNAオペロンのrrnBプロモーターを含む、配列番号13の配列を有するEcoRI−NdeI切断断片を、pBBR−K−NdeのEcoRI−NdeI切断骨格に挿入し、プラスミドpBBR−K−PrrnBを得た。最後に、R114株由来のddsA遺伝子をNdeIおよびBamHIでpTH36から切り取り、ベクターpBBR−K−PrrnBのNdeI−BamHI切断骨格と結合させ、プラスミドpBBR−K−PrrnB−ddsAR114を得た。
【0061】
P.zeaxanthinifaciensにおいてP.zeaxanthinifaciensATCC21588由来の野生型ddsA遺伝子を過剰発現するベクターを作成するため、プラスミドpBBR−K−PrrnB−ddsAR114に対して、QuikChange(商標)部位特異的変異導入キット(Stratagene)およびプライマーのdds−wt−1(配列番号14)とdds−wt−2(配列番号15)を用いて突然変異を誘発した。得られたプラスミドのddsA遺伝子(pBBR−K−PrrnB−ddsAwtと命名)は完全に配列決定され、所望の変化が検証された。P.zeaxanthinifaciens株ATCC21588由来のddsA遺伝子の全ヌクレオチド配列を配列番号16に示し、これに対応するアミノ酸配列を配列番号17に示す。組換えP.zeaxanthinifaciens株において補酵素Q−10生成を評価した予備実験では、rrnBプロモーターをプラスミドのpBBR−K−PrrnB−ddsAR114とpBBR−K−PrrnB−ddsAwtで用いた場合、結果に不一致が生じることを示していた。したがって、rrnBプロモーターは、P.zeaxanthinifaciens染色体のcrtE遺伝子の上流に位置するDNA配列と置き換えられた。本配列はcrtEプロモーターを含む。したがって、ddsA遺伝子の上流に配列番号18(配列番号13の代わりに)の配列を有するEcoRI−NdeI断片を保有するプラスミドpBBR−K−PcrtE−ddsAwtおよびpBBR−K−PcrtE−ddsAR114を得た。
【0062】
ddsA遺伝子を過剰発現するP.zeaxanthinifaciens株での補酵素Q−10生成。プラスミドpBBR−K−PcrtE−ddsAwtおよびpBBR−K−PcrtE−ddsAR114を、電気穿孔法によりP.zeaxanthinifaciens株のR114、UV9−4、EMS9−7およびR1534intEに導入した。得られた組換え菌株とそれぞれの親(対照)株を、振盪フラスコ培養(362F/2培地)で増殖(2組)し、補酵素Q−10の生成を測定した。初期の結果は、P.zeaxanthinifaciens ATCC21588(配列番号16)の野生型ddsA遺伝子がP.zeaxanthinifaciens株R114由来の変異体ddsA遺伝子に比べて、より高い活性を有するDPP合成酵素をコードしていることを示していた。したがって、以降は野生型ddsA遺伝子を過剰発現する菌株だけを検討した。表1のデータは、野生型ddsA遺伝子の発現が(多コピープラスミドのクローニングを通して)増加することによって、すべてのP.zeaxanthinifaciens株において補酵素Q−10の生成が著明に増加したことを明らかに示している。補酵素Q−10に特定した生成の増加は、それぞれの検査した菌株で2〜8倍の範囲だった。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例5:P.zeaxanthinifaciens株R114およびATCC21588由来のubiA遺伝子のクローニングおよび塩基配列決定
【0065】
P.zeaxanthinifaciens株R114のubiA遺伝子(4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードする)を、P.zeaxanthinifaciens株R114ゲノム配列と既知の細菌性4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの配列との比較により同定した。P.zeaxanthinifaciens株R114(配列番号19)のubiA遺伝子のヌクレオチド配列を用いて、フォワードプライマーubiA−Nde(配列番号21)およびリバースプライマーubiA−Bam(配列番号22)を設計した。プライマーubiA−Ndeは、後部半分がubiA遺伝子の開始コドンATGと一致するように位置するNdeI(CATATG)制限酵素認識部位を含む。プライマーubiA−BamHIは終止コドン直後にBamHI部位を含む。P.zeaxanthinifaciens株R114またはP.zeaxanthinifaciens ATCC21588由来のゲノムDNAをテンプレートとして使用して、両方のプライマーによりubiA遺伝子を増幅した(ゲノムDNAの単離、PCR、およびDNA塩基配列決定の方法は実施例3で記述)。TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)を用いて、両方のPCR断片をベクターpCR2.1−TOPO内にクローニングし、プラスミドpCR2.1−TOPO−ubiAwt(野性株ATCC21588由来のubiA遺伝子を含む)およびプラスミドpCR2.1−TOPO−ubiAR114(変異株R114由来のubiA遺伝子を含む)を得た。各プラスミドのクローン挿入物を配列決定した。菌株ATCC21588(配列番号23)由来のubiA遺伝子のヌクレオチド配列と菌株R114(配列番号19)由来のubiA遺伝子のヌクレオチド配列の比較から、コドン220が変わる1つのヌクレオチドの相違が明らかになった。この相違について、両菌株由来のゲノムDNAから増幅した非クローンPCR断片の関連部位の塩基配列決定により確認し、このことにより、PCRアーティファクトの可能性は除外された。ATCC21588株由来の野生型ubiA遺伝子では、コドン220はACC(スレオニンをコードする)であるが、R114株由来の変異体ubiA遺伝子では、コドン220はATC(イソロイシンをコードする)である。P.zeaxanthinifaciensR114株およびATCC21588株由来の4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの対応するアミノ酸配列は、それぞれ配列番号20および配列番号24に示す。
【0066】
実施例6:P.zeaxanthinifaciensにおける補酵素Q−10生成に対するP.zeaxanthinifaciens由来ubiA遺伝子の過剰発現の影響
【0067】
P.zeaxanthinifaciensでの過剰発現に関するP.zeaxanthinifaciens由来ubiA遺伝子のクローニング。P.zeaxanthinifaciens株ATCC21588由来およびR114由来のubiA遺伝子を、それぞれ制限酵素NdeIおよびBamHIでプラスミドpCR2.1−TOPO−ubiAwtおよびpCR2.1−TOPO−ubiAR114から切り取り(実施例5参照)、発現プラスミドpBBR−K−PcrtEからNdeIおよびBamHIにより切断されたベクター骨格と結合させた。このことによりubiA遺伝子はcrtEプロモーターの制御下におかれ、実施例4で記述した発現プラスミドpBBR−K−PcrtE−ddsAwtおよびpBBR−K−PcrtE−ddsAR114に類似したプラスミドが作成された。この新しいプラスミドpBBR−K−PcrtE−ubiAwtおよびpBBR−K−PcrtE−ubiAR114を用いて、電気穿孔法によりP.zeaxanthinifaciens株R1534を形質転換した。R1534株は、ddsA遺伝子の野生型染色体を含むために選択した。
【0068】
ubiA遺伝子を過剰発現するP.zeaxanthinifaciens株R1534における補酵素Q−10生成。P.zeaxanthinifaciens株R1534(対照株)、R1534/pBBR−K−PcrtE−ubiAwt、およびR1534/pBBR−K−PcrtE−ubiAR114をバイオリアクターで培養し(実施例1に記述した2重の条件で)、補酵素Q−10の生成を比較した。表2の結果は、P.zeaxanthinifaciensR114またはATCC21588由来のいずれのubiA遺伝子の過剰発現も、P.zeaxanthinifaciensにおける補酵素Q−10の生成を増加したことを示している。
【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素をコードするヌクレオチド配列であって、
(a)配列番号16で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b)(a)に定義のDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリッド形成し、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c)配列番号17で表されるポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%同一であり、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(d)配列番号17で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリペプチドをコードし、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(2)4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列であって、
(a’)配列番号23で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b’)(a’)に定義のDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリッド形成し、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c’)配列番号24で表されるポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%同一であり、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(d’)配列番号24で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリペプチドをコードし、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
を含む単離されたDNA。
【請求項2】
(1)配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号17の1つもしくは少数のアミノ酸に欠失、付加、もしくは挿入を有するアミノ酸配列を有し、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドと、
(2)配列番号24のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号24の1つもしくは少数のアミノ酸に欠失、付加、もしくは挿入を有するアミノ酸配列を有し、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドと、
を含むポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のDNAを含む構築体。
【請求項4】
制御配列をさらに含む請求項3の構築体。
【請求項5】
請求項1に記載のDNAを含む微生物。
【請求項6】
請求項3または4に記載の構築体を含む微生物。
【請求項7】
微生物で補酵素Q−10を生成する方法であって、
(a)DPP合成酵素を有するタンパク質および/または4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼを有するタンパク質の活性を増加させるステップ、および
(b)補酵素Q−10が生成される培地および条件下で、前記微生物を培養するステップ
を含む方法。
【請求項8】
DPP合成酵素をコードするddsAの発現および/または4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードするubiAの発現を増加させる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物のcrtE遺伝子を突然変異させることによりゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)合成酵素の活性を除去するステップを含む請求項7または8に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)デカプレニル二リン酸(DPP)合成酵素をコードするヌクレオチド配列であって、
(a)配列番号16で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b)(a)に定義のDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリッド形成し、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c)配列番号17で表されるポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%同一であり、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(d)配列番号17で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリペプチドをコードし、DPP合成酵素の活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
(2)4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列であって、
(a’)配列番号23で特定されるDNA配列またはその相補鎖、
(b’)(a’)に定義のDNA配列またはその断片と標準的な条件下でハイブリッド形成し、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、
(c’)配列番号24で表されるポリペプチドをコードするDNAと少なくとも80%同一であり、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列、および
(d’)配列番号24で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるポリペプチドをコードし、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
を含む単離されたDNA。
【請求項2】
請求項1に記載のDNAを含む微生物。
【請求項3】
微生物で補酵素Q−10を生成する方法であって、
(a)DPP合成酵素を有するタンパク質および/または4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼを有するタンパク質の活性を増加させるステップ、および
(b)補酵素Q−10が生成される培地および条件下で、前記微生物を培養するステップ
を含む方法。
【請求項4】
前記微生物のcrtE遺伝子を突然変異させることによりゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)合成酵素の活性を除去するステップを含む請求項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−517794(P2006−517794A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501840(P2006−501840)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001380
【国際公開番号】WO2004/074487
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505220217)デーエスエム アイピー アセッツ ベー. ヴェー. (29)
【Fターム(参考)】