説明

D4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼ

ONC−T18、D4デサチュラーゼ、D5エロンガーゼ、これらの単離、特性解析、産成、同定、及び脂肪酸生成への使用に関する方法並びに組成物、並びにこれらの組成物を含む生物、及びこれらを発現する生物を開示する。配列番号26と、少なくとも70%、80%、89%、90%、95%、96%、97%の又はこれらを超える同一性を有するD4デサチュラーゼを含む組成物を開示する。また、配列番号26から離脱する任意の変化が保存的変化である組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ドコサヘキサエン酸(DHA)のような(n−3)高度不飽和脂肪酸は、心循環系疾患、慢性炎症及び脳障害に対して好ましい効果を有するという、圧倒的な科学的証拠が存在する。他方、エイコサペンタエン酸(EPA)のような(n−6)脂肪酸は、プロスタグランジン、ロイコトリエン等のようなエイコサノイドステロイドの中間代謝産物として注目されている。
【0002】
現在、これらの高度不飽和脂肪酸の主な原料は魚類であり、EPA及びDHAは、それぞれおよそ20%及び10%の量で、種々の(イワシ及びマグロのような)青魚内に存在するとされている。このような脂肪酸プロファイルは、各種魚類において最適な性能のための最適な比が自然選択されることを通して生じると考えられる。しかし、これらの脂質の唯一の原料として魚油を用いることを意図する場合、風味の悪化、利用可能性における制御不能な変動、及び天然魚油の含量のばらつきの問題のような、いくつかの不利点が存在する。加えて、これらの原料から高度に精製された(n−3)又は(n−6)油を得ることを意図する場合、優先的に分離及び精製することは非常に困難である。
【0003】
真核生物ヤブレツボカビ目(Thraustochytriales eukaryote)、ONC−T18及び関連生物が、大量のDHA及びEPA、並びに他の好ましい脂肪酸を産生できることが既に開示されている。ONC−T18は、国際出願PCT/IB2006/003977号並びに米国仮特許出願第60/751401号及び同第60/821084号に開示されており、これらの少なくともONC−T18及びその中で産生される脂肪酸に関する情報は、参照することにより全て本明細書に組み込まれる。DHA及びEPA経路を操作することが望ましい。これらの経路に関与するONC−T18由来の2種の酵素、D4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼの単離及び特徴付けを本明細書に開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ONC−T18、D4デサチュラーゼ、D5エロンガーゼ、これらの単離、特性解析、産生、同定、及び脂肪酸産生への使用に関する方法及び組成物、並びにこれらの組成物を含む生物、及びこれらを発現する生物を開示する。
【0005】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものであるが、開示する組成物及び方法を例証する記載とともに、いくつかの実施形態を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1はEPA及びDHAの産生経路を示す。
【図2】図2Aは単離したD4デサチュラーゼの系統樹を示し、図2Bは単離したD5エロンガーゼの系統樹を示す。
【図3】図3は単離したD4デサチュラーゼの遺伝的概要図を示す。
【図4】図4は単離したD5エロンガーゼの遺伝的概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本化合物、組成物、物品、装置及び/又は方法を開示並びに説明する前に、それらは、特に定めのない限り特定の合成方法又は特定の組み換えバイオテクノロジー法に、又は特に定めのない限り特定の試薬に限定されるものではなく、したがって、無論それ自体変化してよいことを理解されたい。また、本明細書で用いる用語は、具体的な実施例を説明する目的のためだけのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0008】
A.定義
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈で明示しない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば、「医薬用担体(a pharmaceutical carrier)」は、2種又はそれ以上のこのような担体等の混合物を含む。
【0009】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲を表すとき、別の実施形態は、その特定の値から、及び/又はその他方の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いることにより、近似値として値を表すとき、その特定の値が別の実施形態を成すことを理解されたい。更に、各範囲の端点は他の端点に関連しても、及び他の端点とは独立しても、有効であることも理解されたい。また、本明細書には多くの値が開示され、各値はまたその値自体に加えて「約」その特定の値として開示されることも理解されたい。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。ある値が開示されるとき、当業者は適切に理解するように、その値「以下」、その値「以上」及び値間のあり得る範囲もまた開示されることも理解されたい。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」及び「10以上」も開示される。また、出願全体にわたって、データは多数の異なる形式で提供され、このデータは端点及び開始点を表し、データ点の任意の組み合わせに及ぶことも理解されたい。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点15が開示される場合、10及び15超、以上、未満、以下並びに、それに等しい値も、10と15との間に加えて開示されると考えられることも理解されたい。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されると理解されたい。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13及び14もまた開示される。
【0010】
以下の本明細書及び特許請求の範囲では、以下の意味を有するよう定義される多くの用語が参照される。
【0011】
「随意の」又は「随意に」は、続いて記載される事象又は状況が生じても生じなくてもよく、その記載が、前記事象又は状況が生じる例及び生じない例を含むことを意味する。
【0012】
「プライマー」は、ある種の酵素的操作を支援でき、前記酵素的操作が生じ得るように標的核酸にハイブリダイズできるプローブのサブセットである。プライマーは、酵素的操作に干渉しない、当該技術分野において利用可能であるヌクレオチド、又はヌクレオチド誘導体若しくは類似体の任意の組み合わせから作製できる。
【0013】
「プローブ」は、典型的には配列特異的な方式で、例えばハイブリダイゼーションを通して、標的核酸と相互作用することができる分子である。核酸のハイブリダイゼーションについては、当該技術分野においてよく理解されており、本明細書でも論じる。典型的には、プローブは当該技術分野において利用可能であるヌクレオチド、又はヌクレオチド誘導体若しくは類似体の任意の組み合わせから作製できる。
【0014】
本出願全体を通して、種々の刊行物を参照する。これらの刊行物の開示は、本出願が関連する当該技術分野の状態をより十分に説明するために、その全文を参照することにより本出願に組み込むものとする。開示される参考文献はまた、独立して及び具体的に、その参考文献に依拠する文で論じられる、その参考文献の中に含まれる内容について、参照することにより組み込まれる。
【0015】
本組成物を調製するために用いるべき構成成分、及び本明細書で開示する方法で用いるべき組成物自体を開示する。これらの及び他の材料は本明細書で開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等を開示するとき、これらの化合物のそれぞれの種々の個々の及び集合的組み合わせ、並びに順序への具体的な参照は明示的に開示されない場合があるが、それぞれは具体的に意図され、本明細書に記載されると理解されたい。例えば、特定のD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼを開示し、論じる場合、そのD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼを含む多くの分子に行い得る多数の改変が論じられ、特にそうではない旨の記述がない限り、D4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼのそれぞれ及び全ての組み合わせ並びに順序、並びに可能な改変が具体的に意図される。したがって、ひとつの分類に属する分子A、B及びCという分子、並びに別のひとつの分類に属するD、E及びFという分子が開示され、分子の組み合わせ例である、A−Dが開示される場合、それぞれが独立に引用されない場合でも、それぞれが個々に及び集合的に意図される、すなわち、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E及びC−Fの組み合わせが開示されるとみなされる。同様にこれらの任意のサブセット又は組み合わせも開示される。したがって、例えば、A−E、B−F及びC−Eの部分群が開示されるとみなされる。この概念は、開示する組成物の製造及び使用方法における工程が挙げられるが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実行し得る種々の追加工程が存在する場合、これらの追加工程のそれぞれを、開示した方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせで実行できることを理解されたい。
【0016】
B.組成物
オメガ−3濃縮物(エイコサペンタエン酸EPA、20:5 n−3及びドコサヘキサエン酸DHA、22:6 n−3)の使用は、健康によい食事を増進するための特定の食品の強化において重要性が増している。ヤブレツボカビ目は、そのバイオマスの最大20%、天然にDHAを産生する海洋原生生物である。これらの生物を発酵させる能力は、これらのオメガ−3油の再生可能な、持続的原料を提供する。脂肪酸代謝経路(図1)の特性解析により、EPAのドコサペンタエン酸(DPA、22:5 n−3)への伸長に関与するD5エロンガーゼ、並びにDPAのDHAへの不飽和化に関与しているD4デサチュラーゼの重要性を明らかにする。特定の酵素活性の操作は、市場及び顧客の要求により必要とされる、ONC−T18株により産生されるEPA及びDHAの収量に影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
様々なヤブレツボカビ目株(D4デサチュラーゼについては、Thraustochytrium sp. (CS020087)、Thraustochytrium aureum (AF391546)、Thraustochytrium sp. ATCC 34304 (AF391543)、Thraustochytrium sp. ATCC 21685 (AF489589)及びThraustochytrium sp. FJN-10 (DQ133575);D5エロンガーゼについてはThraustochytrium sp. (CS160897) 及びThraustochytrium aureum (CS 160879))の酵素に由来する遺伝子配列の保存領域から構築した縮重プライマーを用いて、ONC−T18からD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼを単離した。更にゲノムDNAの遺伝子の一部(それぞれ、967bp及び593bp)をPCRで増幅した。ゲノムウォーキング(APAgene GOLD kit, BIO S&T, Montreal, Quebec)を用いて、既知の配列を広げてオープンリーディングフレーム全体を組み込み、更に広げてプロモータ領域とともに両側の隣接する遺伝子を同定した。次いで、完全な配列用にプライマーを構築して、オープンリーディングフレーム全体(それぞれ1758bp及び1099bp)を組み込んだ完全な遺伝子のPCR産物を生成した。PCR産物をpT7−Blue3ベクター(Novagen, San Diego, California)にクローニングし、大腸菌NovaBlue(DE3)(Novagen, San Diego, California)に形質転換し、次いで配列を決定した。
【0018】
得られた遺伝子プラスミドを、UltraClean 6 Minute Mini Plasmid Prep kit (MO BIO Laboratories, Inc., Solana Beach, California)を用いて精製した。遺伝子の挿入断片を、次いで、制限酵素BamHI及びNotIを用いて切り取り、pYES2酵母発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングした。pYDes(D4デサチュラーゼ)及びpYElo(D5エロンガーゼ)として同定された新たなベクターコンストラクトを、次いでS.c. EasyComp Transformation kit (Invitrogen, Carlsbad, California)を用いて出芽酵母INVSc1の、ガラクトースプロモータGal1の下流に形質転換した。負の対照株は、改変していないpYES2を含むINVSc1であり、これらは同時に増殖させた。ベクターの選択は、酵母株のウラシル栄養要求性を用いて行い、ウラシルを含まないSC培地を用いた。
【0019】
D4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼの活性及び特異性を、酵母発現系を用いて決定した。形質転換した酵母を2%のグルコース、1%のTergitol NP-40を含有するSC−U培地で、48時間、150PRM、30℃にて増殖させた。SC−U、2%のガラクトース、1%のラフィノース、1%のTergitol NP-40及び500μMの特異的遊離脂肪酸を含有する基質培地を調製した。形質転換した酵母の培養物を、0.5のOD600で100mLの基質培地に播種し、培養物を20℃で5日間インキュベートした。バイオマスを、2000PRMで5分間遠心分離することにより回収し、100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で1度洗浄し、次いで凍結乾燥させた。続いて、脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィーを実施して、脂肪酸不飽和化及び伸長の効率を測定した。基質の変換百分率を、生成物/(基質+生成物)×100を算出することにより決定した。
【0020】
BLASTxの結果は、ONC−T18のD4デサチュラーゼは、Thraustochytrium sp. ATCC 21685のD4デサチュラーゼと96%類似していることを示した。図2Aは、ONC−T18のD4デサチュラーゼ配列と比較したときのBLASTxサーチの結果を用いたブートストラップ解析(1000×)である、ClustalXを用いて決定した、有根近隣結合系統樹を示す。D4デサチュラーゼ遺伝子は、519アミノ酸タンパク質を転写する、1560bpのオープンリーディングフレームを有する。このタンパク質の解析は、3つのヒスチジンボックスモチーフ及び4つの膜貫通領域を有する、シトクロムb5ドメインを示し、これらの要素は全てデサチュラーゼの前部に特徴的なものである。この遺伝子に隣接するのは、5つの推定上のTATAボックス、複数の反復領域、2つのプロモータ、並びにその上流に同定されたタンパク質キナーゼ及び下流のAP2結合タンパク質である(図3)。
【0021】
逆に、BLASTxサーチで、D5エロンガーゼタンパク質がThraustochytrium sp.のFJN−10多価不飽和脂肪酸エロンガーゼと89%の同一性を有することが確認された。図2Bは、ONC−T18のD5エロンガーゼ配列と比較したときのBLASTxサーチの結果を用いたブートストラップ解析(1000×)である、ClustalXを用いて決定した、有根近隣結合系統樹を示す。更なる解析により、この276アミノ酸タンパク質をコードしている831bpの長さのエロンガーゼが、ミトコンドリアに特異的な4つの膜貫通領域及び1つのヒスチジンボックスモチーフを含むことが確認された。このD5エロンガーゼ領域の上流構成成分は、ミトコンドリア移入受容体より前に、1つのTATAボックス、複数の反復領域、及びプロモータを含み、一方下流では膜占有及び認識ネクサスモチーフの開始が確認された(図4)。
【0022】
n−3及びn−6経路の両方についてのpYDesの特性解析(表1)は、それぞれ、14%のDPAn−3又はドコサテトラエン酸(DTA、22:4 n−6)が、DHA又はDPA n−6に変換されたことを示した。
【0023】
【表1】

【0024】
対応するD4デサチュラーゼ基質ジホモ−g−リノレン酸(DGLA、20:3 n−6)を供給したとき、変換は検出されなかった。pYDes活性を増加させる試みで、クエン酸酸化鉄のような微量金属を培地に添加すると、DPAからDHAへの変換が増加した(表1)。対照的に、ここでpYEloは、EPA又はアラキドン酸(ARA、20:4 n−6)のいずれを供給したときも最小限の変換しか示さない。
【0025】
高脂肪酸産生株Thraustochytrium sp.ONC−T18由来のD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼ遺伝子をを、うまく単離及びクローニングし、続いてS. cerevisiaeで発現させた。
【0026】
更に、D4デサチュラーゼ酵素は、天然型でも、微量金属の補充を介しても、DPA又はDTAをそれぞれの最終産物に変換することが示された。他の脂肪酸の供給試験では、このデサチュラーゼのD4に特異的な活性が確認された。エラープローン(error-prone)PCRのような遺伝子操作技術の使用を通して、この活性は、この株におけるDHAの産生を増加させるために更に強化される。
【0027】
配列番号26と、少なくとも70%、80%、89%、90%、95%、96%、97%の又はこれらを超える同一性を有するD4デサチュラーゼを含む組成物を開示する。
【0028】
また、配列番号26から離脱する任意の変化が保存的変化である組成物も開示する。
【0029】
また、前記D4デサチュラーゼのいずれかをコードする核酸を含む組成物も開示する。
【0030】
また、ベクターを更に含む組成物も開示する。
【0031】
また、前記組成物を含む細胞を含む組成物も開示する。
【0032】
また、前記細胞が真核生物、原核生物、Thraustochytrid、酵母又は大腸菌である組成物も開示する。
【0033】
また、前記組成物のいずれかを含む非ヒト動物を含む組成物も開示する。
【0034】
また、前記組成物が、D4デサチュラーゼの非存在下における組成物よりも多くの多価不飽和脂肪酸を生成する組成物も開示する。
【0035】
また、前記脂肪酸がEPA及びDHAである組成物も開示する。
【0036】
また、前記デサチュラーゼが少なくとも1つのヒスチジンボックスを含む組成物も開示する。
【0037】
また、前記デサチュラーゼが少なくとも2つのヒスチジンボックスを含む組成物も開示する。
【0038】
また、前記デサチュラーゼが少なくとも3つのヒスチジンボックスを含む組成物も開示する。
【0039】
また、前記ヒスチジンボックスが配列HXXHH(式中、Xは任意のアミノ酸である)を含む組成物も開示する。
【0040】
また、前記ヒスチジンボックスが配列QXXHHを含む組成物も開示する。
【0041】
また、前記デサチュラーゼがシトクロムb5ドメインをも含む組成物も開示する。
【0042】
また、前記シトクロムb5ドメインが5’末端に存在する組成物も開示する。
【0043】
また、前記デサチュラーゼがデサチュラーゼ基質の存在下にある組成物も開示する。
【0044】
また、前記基質が少なくとも100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM又は1000μMの濃度を有する組成物も開示する。
【0045】
また、前記基質がドコサペンタエン酸(22:5 n−3)、ドコサテトラエン酸(22:4 n−6)、又はジホモ−γ−リノレン酸(20:3 n−6)である組成物も開示する。
【0046】
また、前記デサチュラーゼが、利用可能な基質の少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%を変換する組成物も開示する。
【0047】
また、前記デサチュラーゼが表1に示す量の基質を変換する組成物も開示する。
【0048】
また、前記組成物が単離されている組成物も開示する。
【0049】
また、配列番号15に対して少なくとも70%、80%、89%、90%、95%、96%、97%、又はこれらを超える同一性を有するD5エロンガーゼを含む組成物も開示する。
【0050】
また、配列番号15から離脱する任意の変化が保存的変化である組成物も開示する。
【0051】
また、D5エロンガーゼのいずれかをコードする核酸を含む組成物も開示する。
【0052】
また、更にベクターを含む、エロンガーゼ又はデサチュラーゼをコードする組成物も開示する。
【0053】
また、前記組成物が、D5エロンガーゼの非存在下における組成物よりも多くの、DHA又はEPAのような、多価不飽和脂肪酸を生成する組成物も開示する。
【0054】
また、前記エロンガーゼがエロンガーゼ基質の存在下にある組成物も開示する。
【0055】
また、前記基質がエイコサペンタエン酸(20:5 n−3)又はアラキドン酸(20:4 n−6)である組成物も開示する。
【0056】
また、前記エロンガーゼが利用可能な基質の少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%を変換する組成物も開示する。
【0057】
また、前記組成物が単離されている組成物も開示する。
【0058】
また、前記開示したデサチュラーゼ組成物のいずれか及び前記開示したエロンガーゼ組成物のいずれかを含む組成物も開示する。
【0059】
また、1種又はそれ以上の前記組成物のいずれかを用いることを含む、多価不飽和脂肪酸を産生する方法も開示する。
【0060】
また、産生される脂肪酸がEPA又はDHAのいずれかである方法も開示する。
【0061】
また、前記組成物のいずれかを単離することを含む請求項1〜37に記載の組成物を産生する方法も開示する。
【0062】
1. 配列類似性
本明細書で論じるように、相同性及び同一性という用語の使用は類似性と同じものを意味することが理解される。したがって、例えば、2つの非天然配列の間で相同性という単語の使用が用いられる場合、それは必ずしも2つの配列の間の進化的関係を示すものではなく、むしろ核酸配列間の類似性又は関連性を指すものであると理解される。2つの進化的に関係のある分子間の相同性を決定するための方法の多くは、進化的に関係するかどうかにかかわらず、配列の類似性を測定する目的のために、任意の2つ若しくはそれ以上の核酸又はタンパク質に対して日常的に適用される。
【0063】
一般に、本明細書で開示する遺伝子及びタンパク質の、任意の既知の変異体及び誘導体又は生じる可能性のあるものを定義する1つの方法は、特定の既知配列に対する相同性の観点で、変異体及び誘導体を定義することによるものである。本明細書に開示する特定の配列のこの同一性についてはまた、本明細書の他の部分でも論じる。一般に、本明細書に開示する遺伝子及びタンパク質の変異体は、典型的には、規定の配列又はネイティブな配列に対して、少なくとも約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の相同性を有する。当業者は、2つのタンパク質、又は遺伝子のような核酸の相同性を決定する方法を容易に理解する。例えば、相同性は、相同性が最大となるように2つの配列を整列させた後に算出することができる。
【0064】
相同性を算出する別の方法は、公開されているアルゴリズムにより実施することができる。比較のための最適な配列の整列は、Smith 及び Waterman(Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981))の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman及び Wunsch(J. MoL Biol. 48: 443 (1970))の相同性整列アルゴリズムにより、Pearson及びLipman(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 2444 (1988))の類似性を探す方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は目視(inspection)により実施できる。
【0065】
同種の相同性は、例えば、Zuker, M. Science 244:48-52, 1989、Jaeger et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 86:7706-7710, 1989、Jaeger et al. Methods Enzymol. 183:281-306, 1989に開示されているアルゴリズムにより、核酸については得ることができ、これらの少なくとも核酸の整列に関する内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。典型的には任意の方法を用いることができ、場合によってはこれらの種々の方法の結果が異なる場合もあるが、当業者は、これらの方法の少なくとも1つで同一性が見出された場合、配列はその提示される同一性を有し、本明細書に開示したものであると言えることが理解される。
【0066】
例えば、本明細書で使用するとき、別の配列に対して特定の百分率の相同性を有するものとして列挙した配列は、上記算出方法のうちいずれか1つ又はそれ以上により算出したとき、列挙した相同性を有する配列を指す。例えば、他の算出方法のいずれかにより算出したとき、第1の配列が第2の配列に対して80パーセンの相同性を有しない場合でさえ、Zukerの算出方法を用いて、第1の配列が第2の配列に対して80パーセンの相同性を有すると算出された場合、第1の配列は、本明細書で定義するとき、第2の配列に対して80パーセントの相同性を有するとする。別の例として、Smith及びWatermanの算出方法、Needleman 及びWunschの算出方法、Jaegerの算出方法、又は他の算出方法のいずれかにより算出したとき、第1の配列が第2の配列に対して80パーセントの相同性を有しない場合でさえ、Zukerの算出方法並びにPearson及びLipmanの算出方法の両方を用いて、第1の配列が第2の配列に対して80パーセンの相同性を有すると算出された場合、第1の配列は、本明細書で定義するとき、第2の配列に対して80パーセントの相同性を有するとする。更に別の例として、各算出方法を用いて第1の配列が第2の配列に対して80%の相同性を有すると算出される場合(実際には、異なる算出方法は、異なる相同性百分率を算出することが多いが)、第1の配列は、本明細書で定義するとき、第2の配列に対して80%の相同性を有するとする。
【0067】
2.ハイブリダイゼーション/選択的ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションという用語は、典型的には、プライマー又はプローブと遺伝子のような、少なくとも2つの核酸分子間の配列による相互作用(sequence driven interaction)を意味する。配列による相互作用は、ヌクレオチドに特異的な方式にて、2つのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体又はヌクレオチド誘導体間で生じる相互作用を意味する。例えば、GのCとの相互作用、又はAのTとの相互作用は、配列による相互作用である、典型的には、配列による相互作用は、ヌクレオチドのワトソン−クリック面又はフーグスティーン面で生じる。2つの核酸のハイブリダイゼーションは、当業者に既知である多数の条件及びパラメータにより影響を受ける。例えば、塩濃度、pH、及び反応温度は全て、2つの核酸分子がハイブリダイズするかどうかに影響を及ぼす。
【0068】
2つの核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションのパラメータは、当業者に周知である。例えば、いくつかの実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件として定義することができる。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション及び洗浄工程のいずれか又は両方の温度並びに塩濃度の両方により制御される。例えば、選択的ハイブリダイゼーションを達成するためのハイブリダイゼーション条件は、Tm(分子の半分が、そのハイブリダイゼーションパートナーから解離する融解温度)を約12〜25℃下回る温度における、高イオン強度溶液(6×SSC又は6×SSPE)中でのハイブリダイゼーションと、それに続く、洗浄温度がTmを約5〜20℃下回るように選択された温度及び塩濃度の組み合わせでの洗浄を含み得る。温度及び塩濃度は、フィルタに固定された対照DNAのサンプルが標識された関心核酸にハイブリダイズし、次いで様々なストリンジェンシー下で洗浄される予備実験で、容易に経験的に決定される。ハイブリダイゼーション温度は、典型的には、DNA−RNA及びRNA−RNAのハイブリダイゼーションではより高い。条件を上記のように、又は当該技術分野において既知であるように用いて、ストリンジェンシーを達成することができる(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989; Kunkel et al. Methods Enzymol. 1987:154:367, 1987、これらは少なくとも核酸のハイブリダイゼーションに関する内容について、参照することにより本明細書に組み込まれる)。DNA:DNAハイブリダイゼーションに好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約68℃(水溶液中)、6×SSC又は6×SSPE中であり、続いて約68℃で洗浄することであり得る。ハイブリダイゼーション及び洗浄のストリンジェンシーは、必要に応じて、所望の相補性の程度が下がることに応じて、更に、変異性が求められる任意の領域のG−C又はA−Tの豊富さに応じて、下げることができる。同様に、全て当該技術分野において既知であるように、ハイブリダイゼーション及び洗浄のストリンジェンシーは、必要に応じて、所望の相同性の程度が上がることに応じて、更に高い相同性が望ましい任意の領域のG−C又はA−Tの豊富さに応じて、上げることができる。
【0069】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別の方法は、他の核酸に結合した、ある核酸の量(百分率)を調べることである。例えば、いくつか実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の制限核酸が、非制限核酸に結合するときである。典型的には、非制限プライマーは、例えば、10又は100又は1000倍過剰である。この種のアッセイは、制限及び非制限プライマーの両方が、それらのkの例えば10倍、若しくは100倍、若しくは1000倍少ない、又は一方の核酸のみが、10倍、若しくは100倍、若しくは1000倍である、又は、一方若しくは両方の核酸分子がそれらのkを上回る条件下で実施することができる。
【0070】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別の方法は、所望の酵素的操作を促進するためにハイブリダイゼーションが必要とされる条件下で、酵素的に操作されるプライマーの百分率を調べることである。例えば、いくつか実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%のプライマーが、酵素的操作を促進する条件下で酵素的に操作されるときであり、例えば、酵素的操作がDNA伸長である場合、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%のプライマー分子が伸長するときである。好ましい条件はまた、製造業者により提案されたもの、又は操作を促進する酵素にとって適切であることが当該技術分野において示されているものを含む。
【0071】
相同性と同時に、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションの水準を決定するための、本明細書で開示する種々の方法が存在することが理解される。これらの方法及び条件は、様々な百分率の2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションをもたらすが、特に規定しない限り、任意の方法のパラメータを満たすことで十分である。例えば、80%のハイブリダイゼーションが必要である場合、ハイブリダイゼーションがこれらの方法のうち任意の1つにおいて必要なパラメータ内で生じる限り、それは本明細書で開示されると考えられる。
【0072】
当業者は、組成物又は方法が集合的に又は単独でハイブリダイゼーションを決定するためのこれらの基準のうち任意の1つを満たす場合、それは本明細書で開示される組成物又は方法であることを理解する。
【0073】
3.核酸
例えば、単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼ、並びに本明細書に開示する任意の他のタンパク質、並びに種々の機能的核酸をコードする核酸を含む、核酸ベースの本明細書に開示する種々の分子が存在する。開示した核酸は、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はヌクレオチド置換体で構成されている。これらの及び他の分子の非限定的な例について、本明細書で論じる。例えば、ベクターが細胞内で発現するとき、発現したmRNAは典型的にはA、C、G及びUで構成されることが理解される。同様に、例えばアンチセンス分子が、例えば外因性送達を通して細胞又は細胞環境に導入される場合、アンチセンス分子は細胞環境内におけるアンチセンス分子の分解を低減するヌクレオチド類似体で構成されることが有利であることが理解される。
【0074】
a)ヌクレオチド及び関連分子
ヌクレオチドは、塩基部分、糖部分及びリン酸部分を含有する分子である。ヌクレオチドは、リン酸部分及び糖部分を介し、ヌクレオチド間結合を形成して相互に連結できる。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン−9−イル(A)、シトシン−1−イル(C)、グアニン−9−イル(G)、ウラシル−1−イル(U)及びチミン−1−イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分は、リボース又はデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、五価リン酸塩である。ヌクレオチドの非限定的な例は、3’−AMP(3’−アデノシン一リン酸)又は5’−GMP(5’−グアノシン一リン酸)である。
【0075】
ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、又はリン酸部分のいずれかに対する、ある種の修飾を含むヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する修飾は、当該技術分野において周知であり、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン及び2−アミノアデニン、並びに糖又はリン酸部分における修飾が挙げられる。
【0076】
ヌクレオチド置換体は、ペプチド核酸(PNA)のように、ヌクレオチドと同様の機能特性を有するが、リン酸部分を含まない分子である。ヌクレオチド置換体は、ワトソン−クリック又はフーグスティーン方式で核酸を認識するが、リン酸部分以外の部分を介して相互に連結する分子である。ヌクレオチド置換体は、適切な標的核酸と相互作用するとき、二重らせん型構造に適合することができる。
【0077】
他の種類の分子(コンジュゲート)をヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に連結させて、例えば、細胞取り込みを強化することもできる。コンジュゲートは、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に化学的に連結することができる。このようなコンジュゲートとしては、コレステロール部分のような脂質部分が挙げられるが、これらに限定されない(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989,86, 6553-6556)。
【0078】
ワトソン−クリック相互作用は、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はヌクレオチド置換体のワトソン−クリック面との少なくとも1つの相互作用である。ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はヌクレオチド置換体のワトソン−クリック面としては、プリンベースのヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はヌクレオチド置換体のC2、N1及びC6位、並びに、ピリミジンベースのヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はヌクレオチド置換体のC2、N3、C4位が挙げられる。
【0079】
フーグスティーン相互作用は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体のフーグスティーン面で起こる相互作用であり、フーグスティーン面は二本鎖DNAの主溝に曝される。フーグスティーン面としては、プリンヌクレオチドのN7位及びC6位の反応基(NH2又はO)が挙げられる。
【0080】
b)配列
例えば、単離したD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼ、並びにGenbankに開示されている本明細書に開示する任意の他のタンパク質に関連する種々の配列が存在し、これらの配列及び他の配列は、その全体及びその中に含まれる個々の配列が、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0081】
種々の配列が本明細書に提供され、これらの及び他の配列はwww.pubmed.govで、Genbankに見出すことができる。当業者は、配列の不一致及び差を解く方法、並びに特定の配列に関連する組成物及び方法を他の関連する配列に適合させる方法を理解する。プライマー及び/又はプローブは、情報が本明細書に開示され、当該技術分野において既知である任意の配列用に設計できる。
【0082】
c)プライマー及びプローブ
プライマー及びプローブを含む組成物を開示し、そのプライマー及びプローブは本明細書に開示する遺伝子と相互作用することができる。特定の実施形態では、プライマーを用いてDNA増幅反応を支援することができる。典型的には、プライマーは配列特異的な方式で伸長することができる。配列特異的な方式におけるプライマーの伸長としては、それにプライマーがハイブリダイズする若しくは他の方法で結合する核酸分子の配列及び/又は組成が、プライマーの伸長により生成される産物の組成若しくは配列を方向づける又は影響を及ぼす任意の方法が挙げられる。それ故、配列特異的な方式におけるプライマーの伸長としては、PCR、DNA配列決定、DNA伸長、DNA重合、RNA転写、又は逆転写が挙げられるが、これらに限定されない。配列特異的な方式でプライマーを増幅する技術及び条件が好ましい。特定の実施形態では、プライマーは、PCR又は直接配列決定のようなDNA増幅反応のために用いられる。特定の実施形態では、プライマーはまた、非酵素的技術を用いて伸長してもよく、この場合例えばプライマーを伸長するために用いられるヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、化学的に反応して配列特異的な方式でプライマーを伸長するよう改変されることが理解される。典型的には、開示するプライマーは、核酸若しくは核酸の領域とハイブリダイズする、又は核酸の相補体若しくは核酸の領域の相補体とハイブリダイズする。
【0083】
d)機能的核酸
機能的核酸は、標的分子に結合する、又は特定の反応を触媒する等の、特定の機能を有する核酸分子である。機能的核酸分子は、以下のカテゴリーに分けることができるが、これは限定することを意味するものではない。例えば、機能的核酸としては、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重らせん形成分子、及び外部ガイド配列が挙げられる。機能的核酸分子は、標的分子の保有する特定の活性のアフェクタ、阻害剤、修飾因子及び刺激剤として作用できる、又は機能的核酸分子は、任意の他の分子とは関係なく新規の活性を有することもできる。
【0084】
機能的核酸分子は、DNA、RNA、ポリペプチド、又は炭水化物鎖のような任意の巨大分子と相互作用できる。したがって、機能的核酸分子は、単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼのmRNA、若しくは単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼのゲノムDNAと相互作用できる、又は単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼのポリペプチド若しくは断片と相互作用できる。機能的核酸は、標的分子と機能的核酸分子との間の配列相同性に基づいて、他の核酸と相互作用するよう設計されることが多い。他の状況では、機能的核酸分子と標的分子との間の特異的認識は、機能的核酸分子と標的分子との間の配列相同性ではなく、特異的認識を起こさせる三次構造の形成に基づく。
【0085】
アンチセンス分子は、基準(canonical)又は非基準塩基対合のいずれかを介して標的核酸分子と相互作用するよう設計される。アンチセンス分子と標的分子との相互作用は、例えばRNAseH媒介RNA−DNAハイブリッド分解を介して標的分子の破壊を促進するよう設計される。あるいは、アンチセンス分子は、転写又は複製のような、通常標的分子上で起こるプロセシング機能を中断するよう設計される。アンチセンス分子は、標的分子の配列に基づいて設計できる。標的分子の最も近づきやすい領域を見出すことにより、アンチセンスの効率を最適化する多くの方法が存在する。代表的な方法は、インビトロ選択実験、並びにDMS及びDEPCを用いるDNA修飾試験である。アンチセンス分子が、10−6、10−8、10−10、又は10−12以下の解離定数(k)で標的分子に結合することが好ましい。アンチセンス分子の設計及び使用を補助する方法並びに技術の代表的な実例は、以下の非限定的な米国特許の一覧中に見出すことができる:米国特許第5,135,917号、同第5,294,533号、同第5,627,158号、同第5,641,754号、同第5,691,317号、同第5,780,607号、同第5,786,138号、同第5,849,903号、同第5,856,103号、同第5,919,772号、同第5,955,590号、同第5,990,088号、同第5,994,320号、同第5,998,602号、同第6,005,095号、同第6,007,995号、同第6,013,522号、同第6,017,898号、同第6,018,042号、同第6,025,198号、同第6,033,910号、同第6,040,296号、同第6,046,004号、同第6,046,319号、及び同第6,057,437号。
【0086】
アプタマーは、好ましくは特異的な方法で、標的分子と相互作用する分子である。典型的には、アプタマーは、ステム−ループ又はG−カルテットのような画定された二次及び三次構造に折り畳まれる、15〜50塩基の範囲の長さの小核酸である。アプタマーは、ATP(米国特許第5,631,146号)及びテオフィリン(theophiline)(米国特許第5,580,737号)のような小分子、並びに逆転写酵素(米国特許第5,786,462号)及びトロンビン(米国特許第5,543,293号)のような大分子に結合できる。アプタマーは、10−12M未満の標的分子からのkで非常に密接に結合できる。アプタマーは、10−6、10−8、10−10又は10−12未満のkで標的分子と結合することが好ましい。アプタマーは、非常に高度の特異性で標的分子と結合できる。例えば、標的分子と、分子の単一位置のみが異なる別の分子との間の結合親和性の差が10000倍超であるアプタマーが単離されている(米国特許第5,543,293号)。アプタマーは、バックグラウンド結合分子のKより少なくとも10、100、1000、10,000又は100,000倍低い、標的分子とのkを有することが好ましい。ポリペプチドを比較するとき、例えば、バックグラウンド分子は異なるポリペプチドであることが好ましい。例えば、単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼアプタマーの特異性を決定するとき、バックグラウンドタンパク質は血清アルブミンであり得る。種々の異なる標的分子に結合するためのアプタマーを作製及び使用する方法の代表的な例は、以下の非限定的な米国特許の一覧に見出すことができる:米国特許第5,476,766号、同第5,503,978号、同第5,631,146号、同第5,731,424号、同第5,780,228号、同第5,792,613号、同第5,795,721号、同第5,846,713号、同第5,858,660号、同第5,861,254号、同第5,864,026号、同第5,869,641号、同第5,958,691号、同第6,001,988号、同第6,011,020号、同第6,013,443号、同第6,020号、同第130号、同第6,028号、同第186号、同第6,030,776号、及び同第6,051,698号。
【0087】
リボザイムは、分子内又は分子間のいずれかの化学反応を触媒することができる核酸分子である。したがって、リボザイムは、触媒核酸である。リボザイムは分子間反応を触媒することが好ましい。ハンマーヘッド型リボザイム(例えば、以下の米国特許第5,334,711号、同第5,436,330号、同第5,616,466号、同第5,633,133号、同第5,646,020号、同第5,652,094号、同第5,712,384号、同第5,770,715号、同第5,856,463号、同第5,861,288号、同第5,891,683号、同第5,891,684号、同第5,985,621号、同第5,989,908号、同第5,998,193号、同第5,998,203号、国際公開第9858058号(Ludwig及びSproat)、同第9858057号(Ludwig及びSproat)、及び同第9718312号(Ludwig及びSproat)であるが、これらに限定されない)、ヘアピン型リボザイム(例えば、以下の米国特許第5,631,115号、同第5,646,031号、同第5,683,902号、同第5,712,384号、同第5,856,188号、同第5,866,701号、同第5,869,339号、及び同第6,022,962号であるが、これらに限定されない)及びテトラヒメナリボザイム(例えば、以下の米国特許第5,595,873号及び同第5,652,107号であるが、これらに限定されない)のような、天然系で見られるリボザイムに基づいた、ヌクレアーゼ又は核酸ポリメラーゼ型反応を触媒する、多数の異なる種類のリボザイムが存在する。天然系では見られないが、新規の特定の反応を触媒するよう操作されている多数のリボザイムも存在する(例えば、以下の米国特許第5,580,967号、同第5,688,670号、同第5,807,718号、及び同第5,910,408号であるが、これらに限定されない)。好ましいリボザイムは、RNA又はDNA基質を切断し、より好ましくはRNA基質を切断する。リボザイムは、典型的には、その後切断される標的基質の認識及び結合を通して、核酸基質を切断する。この認識は、大部分は基準又は非基準塩基対相互作用に基づくことが多い。この特性により、リボザイムは、核酸を標的特異的に切断するための特に優れた候補となる、なぜなら標的基質の認識は標的基質の配列に基づくためである。種々の異なる反応を触媒するリボザイムの作製及び使用方法の代表的な例は、以下の非限定的な米国特許の一覧に見出すことができる:米国特許第5,646,042号、同第5,693,535号、同第5,731,295号、同第5,811,300号、同第5,837,855号、同第5,869,253号、同第5,877,021号、同第5,877,022号、同第5,972,699号、同第5,972,704号、同第5,989,906号、及び同第6,017,756号。
【0088】
三重鎖形成機能的核酸分子は、二本鎖又は一本鎖核酸のいずれかと相互作用できる分子である。三重鎖分子が標的領域と相互作用するとき、三重鎖と呼ばれる構造が形成され、そこにはワトソン−クリック及びフーグスティーン塩基対合の両方に依存して複合体を形成するDNAの3本の鎖が存在する。三重鎖分子が好ましい、なぜなら、三重鎖分子は高い親和性及び特異性で標的領域に結合できるためである。三重鎖形成分子は、10−6、10−8、10−10又は10−12未満のkで標的分子に結合することが好ましい。種々の異なる標的分子に結合する三重鎖形成分子を作製及び使用する方法の代表的な例は、以下の非限定的な米国特許の一覧に見られる:米国特許第5,176,996号、同第5,645,985号、同第5,650,316号、同第5,683,874号、同第5,693,773号、同第5,834,185号、同第5,869,246号、同第5,874,566号、及び同第5,962,426号。
【0089】
外部ガイド配列(EGS)は、複合体を形成する、標的核酸分子に結合する分子であり、この複合体は、標的分子を切断するRNasePにより認識される。EGSは、選択したRNA分子を特異的に標的とするよう設計することができる。RNAsePは、細胞内でのトランスファーRNA(tRNA)のプロセシングを補助する。細菌RNAsePは、天然のtRNA基質を模倣するために標的RNA:EGS複合体をもたらすEGSを用いることにより、事実上全てのRNA配列を切断するよう使用することができる(国際公開第92/03566号(Yale)及びForster and Altman, Science 238:407-409 (1990))。
【0090】
同様に、真核生物のEGS/RNAseP−定方向RNA切断を利用して、真核生物細胞内の所望の標的を切断することができる(Yuan et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:8006-8010 (1992);国際公開第93/22434号(Yale); 国際公開第95/24489号(Yale); Yuan and Altaian, EMBO J 14:159-16* (1995)及びCarrara et al, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 92:2627-2631 (1995))。種々の異なる標的分子の切断を促進するEGS分子の作製及び使用方法の代表的な例は、以下の非限定的な米国特許の一覧に見られる:米国特許第5,168,053号、同第5,624,824号、同第5,683,873号、同第5,728,521号、同第5,869,248号、及び同第5,877,162号。
【0091】
4.核酸の送達
外因性DNAの被験体の細胞への投与及び取り込み(すなわち、遺伝子トランスダクション又はトランスフェクション)を含む上記方法では、開示した核酸は裸のDNA若しくはRNAの形であってよい、又は核酸は、核酸を細胞に送達するためのベクター内にあってよく、それにより、当業者によく理解されているように、抗体をコードしているDNA断片はプロモータの転写制御下にある。ベクターは、アデノウイルスベクター(Quantum Biotechnologies, Inc. (Laval, Quebec, Canada)のような、市販調製物であってよい。核酸又はベクターの細胞への送達は、種々の機構を介することができる。1例として、送達は、LIPOFECTIN、LIPOFECTAMINE (GIBCO-BRL, Inc., Gaithersburg, MD)、SUPERFECT (Qiagen, Inc. Hilden, Germany)及びTRANSFECTAM (Promega Biotec, Inc., Madison, WI)のような市販のリポソーム調製物、並びに当該技術分野において標準的な手順に従って開発された他のリポソームを用いて、リポソームを介したものであり得る。更に、開示した核酸又はベクターは、エレクトロポレーションによりインビボで送達することもでき、そのための技術はGenetronics, Inc. (San Diego, CA)から入手可能であり、それに加えてSONOPORATION machine (ImaRx Pharmaceutical Corp., Tucson, AZ)を用いることができる。
【0092】
1例として、ベクター送達は、組み換えレトロウイルスゲノムをパッケージ化できるレトロウイルスベクター系のような、ウイルス系を介することができる(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 85:4486, 1988;Miller et al., MoI. Cell. Biol. 6:2895, 1986を参照のこと)。次いで、組み換えレトロウイルスを感染に用いて、それにより、広く中和抗体(又はその活性断片)をコードしている核酸を感染した細胞に送達することができる。改変した核酸を哺乳類細胞に導入する厳密な方法は、無論、レトロウイルスベクターの使用に限定されない。アデノウイルスベクター(Mitani et al., Hum. Gene Ther. 5:941- 948, 1994)、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター(Goodman et al., Blood 84:1492-1500, 1994)、レンチウイルスベクター(Naidini et al., Science 272:263-267, 1996)、偽型レトロウイルスベクター(Agrawal et al., Exper. Hematol. 24:738-747, 1996)の使用を含む他の技術が、この手順のために広く利用可能である。リポソーム送達並びに受容体介在及び他のエンドサイトーシス機構のような、物理的伝達技術を用いてもよい(例えば、Schwartzenberger et al., Blood 87:472-478, 1996を参照のこと)。この開示する組成物及び方法を、これらの又は他の一般に用いられている遺伝子導入法のいずれかとも併せて用いることができる。
【0093】
1例として、抗体をコードするDNAがアデノウイルスベクターで被験体の細胞に送達される場合、アデノウイルスのヒトへの投与の用量は、注入1回あたり10〜10プラーク形成単位(pfu)の範囲であり得るが、注入1回あたり最大1012pfuにすることができる(Crystal, Hum. Gene Ther. 8:985-1001, 1997;Alvarez and Curiel, Hum. Gene Ther. 8:597-613, 1997)。被験体は1回注入を受けることができる、又は追加の注入が必要な場合、無期限で及び/又は治療の効果が確立されるまで、6ヶ月の間隔で(又は熟練した施術者が決定するとき、他の適切な時間間隔で)繰り返すことができる。
【0094】
核酸又はベクターの非経口投与は、用いられる場合、一般に、注入を特徴とする。注入物質は、液体溶液又は懸濁液、注入前に溶液を液体に懸濁するために好適な固体形、又はエマルションのいずれかのような従来の形態で調製できる。非経口投与に対する近年改訂されたアプローチは、一定の投与量が維持されるように、徐放又は持続放出系の使用を伴う。好適な処方及び種々の治療用化合物の投与経路についての更なる議論については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed. A.R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA 1995を参照のこと。
【0095】
5.発現系
細胞に送達される核酸は、典型的には、発現制御系を含む。例えば、ウイルス及びレトロウイルス系に挿入された遺伝子は、通常、プロモータ及び/又はエンハンサを含んで、所望の遺伝子産物の発現の制御を補助する。プロモータは、一般に、転写開始点に対して比較的固定された位置にあるときに機能するDNAの1つまたは複数の配列である。プロモータは、RNAポリメラーゼ及び転写因子の塩基相互作用に必要なコアエレメントを含み、上流エレメント及び応答エレメントを含み得る。
【0096】
a)ウイルスプロモータ及びエンハンサ
哺乳類宿主細胞でベクターからの転写を制御する好ましいプロモータは、種々の源、例えば、ポリオーマ、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスのようなウイルスのゲノム、最も好ましくはサイトメガロウイルス等の種々の原料から、又は異種哺乳類プロモータ、例えばベータアクチンプロモータから得ることができる。SV40ウイルスの初期及び後期プロモータは、SV40ウイルスの複製起点も含むSV40制限断片として便利に得られる(Fiers et al., Nature, 273: 113 (1978))。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモータは、HindIII E制限断片として便利に得られる(Greenway, PJ. et al., Gene 18: 355-360 (1982))。無論、宿主細胞又は関連する種のプロモータもまた本明細書で有用である。
【0097】
エンハンサは、一般に、転写開始点から一定していない距離で機能するDNAの配列を指し、転写単位に対して5’(Laimins, L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci 78: 993 (1981)) 又は3’(Lusky, M.L., et al., MoI. Cell Bio. 3: 1108 (1983))のいずれかであり得る。更に、エンハンサは、イントロン内(Banerji, J.L. et al., Cell 33: 729 (1983))及びコーディング配列自体内(Osborne, T.F., et al., MoI. Cell Bio. 4: 1293 (1984))にあり得る。それらは、通常10〜300bpの長さであり、シスで機能する。エンハンサは、プロモータ付近からの転写を増加させるよう機能する。エンハンサはまた、転写の制御を媒介する応答エレメントを含むことが多い。プロモータもまた、転写の制御を媒介する応答エレメントを含み得る。エンハンサは、遺伝子の発現の制御を決定することが多い。哺乳類遺伝子由来の多くのエンハンサ配列が現在既知であるが(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、及びインスリン)、典型的には、普遍的発現のために真核生物ウイルス由来のエンハンサを用いる。好ましい例は、複製起点の後側のSV40エンハンサ(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモータエンハンサ、複製起点の後側のポリオーマエンハンサ、及びアデノウイルスエンハンサである。
【0098】
プロモータ及び/又はエンハンサは、光又はそれらの機能を誘発する特異的化学的事象のいずれかにより特異的に活性化され得る。系は、テトラサイクリン及びデキサメタゾンのような試薬により調節できる。また、ガンマ線照射のような照射又はアルキル化化学療法薬に曝露することにより、ウイルスベクターの遺伝子発現を強化する方法も存在する。
【0099】
特定の実施形態では、プロモータ及び/又はエンハンサ領域は、転写される転写単位の領域の発現を最大化する、恒常的プロモータ及び/又はエンハンサとして作用することができる。特定のコンストラクトでは、特定の時に特定の種類の細胞でしか発現しない場合でさえ、プロモータ及び/又はエンハンサは真核生物細胞の全ての種類で活性である。この種の好ましいプロモータは、CMVプロモータ(650塩基)である。他の好ましいプロモータは、SV40プロモータ、サイトメガロウイルス(完全長プロモータ)及びレトロウイルスベクターLTRである。
【0100】
全ての特定の調節エレメントをクローニングし、メラノーマ細胞のような特定の種類の細胞で選択的に発現する発現ベクターを構築するために用いてよいことが示されている。グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータは、グリア由来の細胞の遺伝子を選択的に発現させるために用いられている。
【0101】
真核生物宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト又は有核細胞)で用いられる発現ベクターはまた、mRNA発現に影響を及ぼす可能性のある、転写の終結に必要な配列も含有してよい。これらの領域は、組織因子タンパク質をコードしているmRNAの非翻訳領域でポリアデニル化セグメントとして転写される。3’非翻訳領域はまた転写終結点も含む。転写単位はまたポリアデニル化領域を含むことが好ましい。この領域の1つの利点は、転写された単位がmRNAのようにプロセシング及び輸送される可能性を高めることである。発現コンストラクトにおけるポリアデニル化シグナルの特定及び使用は、十分確立されている。相同なポリアデニル化シグナルを導入遺伝子コンストラクトで用いることが好ましい。特定の転写単位では、ポリアデニル化領域はSV40初期ポリアデニル化シグナルに由来し、約400塩基から成る。転写された単位が、他の標準的な配列を単独で含む、又は上記配列と併せて含み、コンストラクトの発現形又は安定性を向上させることも好ましい。
【0102】
b)マーカー
ウイルスベクターは、マーカー産物をコードしている核酸配列を含んでもよい。このマーカー産物を用いて、遺伝子が細胞に送達されているかどうか及び送達された遺伝子が発現しているかどうかを判定する。好ましいマーカー遺伝子は、β−ガラクトシダーゼをコードする大腸菌のlacZ遺伝子及び緑色蛍光タンパク質である。
【0103】
いくつか実施形態では、マーカーは選択可能なマーカーであってよい。哺乳類細胞に好適な選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ヒドロマイシン、及びプロマイシンである。このような選択可能なマーカーがうまく哺乳類宿主細胞に移動したとき、形質転換された哺乳類宿主細胞は、選択圧下に置かれた場合も生存できる。選択レジメンには2つの広く用いられている別個のカテゴリーが存在する。最初のカテゴリーは、細胞の代謝及び補足培地から独立して増殖する能力を欠く突然変異細胞株の使用に基づく。2つの例は、CHO DHFR細胞及びマウスLTK細胞である。これらの細胞は、チミジン又はハイポキサンチンのような栄養素の添加無しでは増殖する能力を欠く。これらの細胞は完全なヌクレオチド合成経路に必要な特定の遺伝子を欠いているため、欠失しているヌクレオチドが補足培地に提供されない限り生存できない。培地へ補足に代わるものとしては、インタクトなDHFR又はTK遺伝子を、それぞれの遺伝子を欠く細胞に導入し、それによりその増殖要件を変化させることである。DHFR又はTK遺伝子が形質転換されていない個々の細胞は、非補足培地で生存することができない。
【0104】
2番目のカテゴリーは、任意の種類の細胞で用いられる選択スキームを指し、突然変異細胞株の使用を必要としない優性選択である。これらのスキームは、典型的には、宿主細胞の増殖を抑止するための薬物を用いる。新規遺伝子を有するそれらの細胞は、タンパク質運搬薬物耐性を発現し、選択を生き延びる。このような優性選択の例は、薬物ネオマイシン(Southern P. and Berg, P.,_J. Molec. Appl. Genet. 1 : 327 (1982))、ミコフェノール酸(Mulligan, R.C. and Berg, P. Science 209: 1422 (1980))又はハイグロマイシン(Sugden, B. et al., MoI. Cell. Biol. 5: 410-413 (1985))を用いる。上記の3つの例は、それぞれ、適切な薬物G418若しくはネオマイシン(ジェネテシン)、xgpt(ミコフェノール酸)又はハイグロマイシンに対する耐性をもたらすために、真核生物の制御下にある細菌遺伝子を使用する。他には、ネオマイシン類似体G418及びピューロマイシン(puramycin)が挙げられる。
【0105】
6.ペプチド
a)タンパク質変異体
本明細書で論じるように、既知であり、本明細書で意図される、単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼタンパク質には多数の変異体が存在する。既知の機能的な単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼ株変異体に加えて、開示した方法及び組成物中で機能する単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼタンパク質の誘導体が存在する。タンパク質変異体及び誘導体は、当業者によく理解されており、アミノ酸配列の変更が関与する。例えば、アミノ酸配列の変更は、典型的には、置換、挿入又は欠失変異体の3つの分類のうち1つ又はそれ以上に分類される。挿入には、アミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一若しくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。挿入は、通常、例えば、およそ1〜4個の残基の、アミノ又はカルボキシル末端融合より小さな挿入である。実施例で記載するもののような免疫原性融合タンパク質誘導体は、インビトロでの架橋により、又は融合物をコードしているDNAで形質転換された組み換え細胞培養物により、標的配列に免疫原性を与えるのに十分大きなポリペプチドを融合することにより作製される。欠失は、タンパク質配列から1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が除去されることを特徴とする。典型的には、約2〜6個以下の残基が、タンパク質分子内の任意の1部位で欠失する。これらの変異体は、通常、タンパク質をコードしているDNAにおいてヌクレオチドの部位特異的突然変異を誘発し、それにより変異体をコードしているDNAを生成し、その後組み換え細胞培養物中でDNAを発現させることにより調製される。既知配列を有するDNAの所定の部位で置換突然変異を作製するための技術は周知であり、例えばMI3プライマー突然変異誘発及びPCR突然変異誘発等である。アミノ酸置換は、典型的には、1つの残基について行われるが、一挙に多くの様々な箇所で起こる場合もある。挿入は通常約1〜10アミノ酸残基であり、欠失は約1〜30残基の範囲である。欠失又は挿入は、好ましくは、隣接する対で起こる、すなわち2残基が欠失する又は2残基が挿入される。置換、欠失、挿入又はこれらの任意の組み合わせを組み合わせて、最終コンストラクトに到達する。突然変異は、その配列がリーディングフレームの外に位置してはならず、好ましくは二次mRNA構造を生成できる相補的領域を作製しない。置換変異体は、少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその位置に挿入されたものである。このような置換は、一般に、以下の表2及び表3に従って行われ、保存的置換と称される。
【0106】
機能又は免疫学的同一性における大きな変化は、表3のものより保存的ではない置換を選択する、すなわち、(a)例えば、シート若しくはらせん形状のような置換の領域におけるポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における分子の変化若しくは疎水性、又は(c)側鎖のバルクを維持する効果において著しく異なる残基を選択することにより作製される。一般にタンパク質特性に最も大きな変化をもたらすと予測される置換は、(a)親水性残基、例えばセリル又はスレオニルを、疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル又はアラニルに又は置換する(又は疎水性残基を親水性残基に置換する)、(b)システイン又はプロリンを、任意の他の残基に置換する(又は任意の他の残基をシステイン若しくはプロリンに置換する)、(c)陽電性側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニル、又はヒスチジルを、陰電性残基、例えばグルタミル又はアスパルチルに置換する(又は陰電性残基を陽電性側鎖に置換する)、又は(d)バルク側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンを、側鎖を有しないもの、例えばこの場合グリシンに(又はより)置換する(又は側鎖を有しないものをバルク側鎖を有する残基に置換する)、(e)硫酸化及び/又はグリコシル化の部位の数を増加させることによるものである。
【0107】
【表2】

【0108】
例えば、1つのアミノ酸残基を、生物学的に及び/又は化学的に類似の別のアミノ酸残基と置換することは、保存的置換として当該技術分野において既知である。例えば、保存的置換は、ある疎水性残基を別の疎水性残基に、又はある極性残基を別の極性残基に置換することであろう。置換としては、例えば、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、GIu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrのような組み合わせが挙げられる。それぞれ明示的に開示されている配列のこのような保存的に置換された変異体は、本明細書に提供されるモザイクポリペプチド内に含まれる。
【0109】
置換又は欠失突然変異誘発を使用して、N−グリコシル化(Asn−X−Thr/Ser)又はO−グリコシル化(Ser又はThr)のための部位を挿入することができる。システイン又は他の不安定な残基の欠失が望ましい場合もある。有望なタンパク質分解部位、例えばArgの欠失又は置換は、例えば、塩基性残基の欠失、又はグルタミニル若しくはヒスチジル残基による置換により達成される。
【0110】
【表3】

【0111】
特定の翻訳後誘導体化は、発現したポリペプチドに対する組み換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニル及びアスパラギニル残基は、対応するグルタミル及びアスパリル残基に翻訳後脱アミド化されることが多い。あるいは、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。他の翻訳後修飾としては、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のo−アミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco pp 79-86 [1983])、N−末端アミンのアセチル化、及び場合によってはC−末端カルボキシルのアミド化が挙げられる。
【0112】
本明細書に開示されるタンパク質の変異体及び誘導体を定義する1つの方法は、特定の既知の配列に対する相同性/同一性の観点で、変異体及び誘導体を定義することによるものであることが理解される。例えば、配列番号15はD5エロンガーゼの具体的な配列を記載し、配列番号26は、D4デサチュラーゼタンパク質の具体的な配列を記載する。特に、規定の配列に対して少なくとも70%又は75%又は80%又は85%又は90%又は95%の相同性を有する、本明細書に開示するこれらの及び他のタンパク質の変異体が開示される。当業者は、2つのタンパク質の相同性を決定する方法を容易に理解する。例えば、相同性は、相同性が最大となるように2つの配列を整列した後に算出できる。配列番号15及び26に対して96%及び89%を超える同一性を有する配列を具体的に開示する。
【0113】
相同性を算出する別の方法は、公開されているアルゴリズムにより実施することができる。比較のための最適な配列の整列は、Smith及び Waterman (Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981))の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman 及びWunsch(J. MoL Biol. 48: 443 (1970))の相同性配列アルゴリズムにより、Pearson及びLipman(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 2444 (1988))の類似性を探す方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は目視により実施できる。
【0114】
同種の相同性は、例えば、Zuker, M. Science 244:48-52, 1989、Jaeger et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 86:7706-7710, 1989、Jaeger et al. Methods Enzymol. 183:281-306, 1989に開示されているアルゴリズムにより、核酸について得ることができ、これらは少なくとも核酸の整列に関する内容を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0115】
変異体が保存的突然変異である特定の配列に対して少なくとも70%の相同性を有する実施形態のように、保存的突然変異及び相同性の説明は、任意の組み合わせでともに組み合わせ得ることが理解される。
【0116】
本明細書で種々のタンパク質及びタンパク質配列について論じるとき、これらのタンパク質配列をコードできる核酸も開示されることが理解される。これは、特定のタンパク質配列に関する全ての縮重配列、すなわち、ある特定のタンパク質配列をコードしている配列を有する全ての核酸、並びに開示するタンパク質配列の変異体及び誘導体をコードしている、縮重核酸を含む全ての核酸を含む。したがって、それぞれの具体的な核酸配列が本明細書に全て書かれていない場合もあるが、それぞれ及び全ての配列は、開示されたタンパク質配列を通して本明細書に事実上開示され、説明されていることが理解される。例えば、配列番号15に記載されているタンパク質配列をコードできる多くの核酸配列の1つが配列番号14に記載されている。また、どの具体的なDNA配列が生物内のどのタンパク質をコードしているかを示すアミノ酸配列は存在しないが、開示するタンパク質の具体的な変異体が本明細書に開示されている場合、それからタンパク質が生じる特定の株においてそのタンパク質をコードしている既知の核酸配列もまた既知であり、本明細書に開示され、説明されることも理解される。
【0117】
開示された組成物に組み込むことができる多くのアミノ酸及びペプチド類似体が存在することが理解される。例えば、表2及び表3に示されるアミノ酸とは異なる、多くのDアミノ酸又は異なる機能的置換を有するアミノ酸が存在する。自然発生ペプチドの逆の立体異性体、並びにペプチド類似体の立体異性体が開示される。これらのアミノ酸は、tRNA分子に選択したアミノ酸をチャージし、例えば終止コドンを利用して類似アミノ酸を部位特異的方法でペプチド鎖に挿入する遺伝的コンストラクトを操作することにより、ポリペプチド鎖に容易に組み込むことができる(Thorson et al., Methods in Molec. Biol. 77:43-73 (1991)、Zoller, Current Opinion in Biotechnology, 3:348-354 (1992);Ibba, Biotechnology & Genetic Engineering Reviews 13:197-216 (1995)、Cahill et al., TIBS, 14(10):400-403 (1989);Benner, TIB Tech, 12:158-163 (1994);Ibba and Hennecke, Bio/technology, 12:678-682 (1994)、これらは全て、少なくともアミノ酸類似体に関する内容を参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0118】
ペプチドに類似するが、天然ペプチド結合を介して連結しない分子を生成することができる。例えば、アミノ酸又はアミノ酸類似体に対する結合には、CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−及び−CHHSO−を挙げることができる(これら及び他のものは、Spatola, A. F. in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983); Spatola, A. F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, Peptide Backbone Modifications (一般評論);Morley, Trends Pharm Sci (1980) pp. 463-468; Hudson, D. et al., Int J Pept Prot Res 14:177-185 (1979)(−CHNH−、−CHCH−); Spatola et al. Life Sci 38:1243-1249 (1986) (−CH H−S);Ham J. Chem. Soc Perkin Trans. I 307-314 (1982) (−CH−CH−、シス及びトランス);Almquist et al. J. Med. Chem. 23:1392-1398 (1980) (−COCH−);Jennings- White et al. Tetrahedron Lett 23:2533 (1982) (−COCH−);Szelke et al. European Appln, EP 45665 CA (1982): 97:39405 (1982)(−CH(OH)CH−);Holladay et al. Tetrahedron. Lett 24:4401-4404 (1983) (−C(OH)CH−);及びHruby Life Sci 31 :189-199 (1982) (−CH−S−)に見られ、これらはそれぞれ参照することにより本明細書に組み込まれる)。特に好ましい非ペプチド結合は、−CHNH−である。ペプチド類似体は、b−アラニン、g−アミノ酪酸等のような、結合原子間に1つより多いの原子を有することができると理解される。
【0119】
アミノ酸類似体及びペプチド類似体は、より経済的に産生できる、化学的安定性が高い、薬理学的特性(半減期、吸収性、力価、効果等)が強化されている、特異性が改変されている(例えば、生物学的活性が広域性である)、抗原性が低い、及び他の特性のような、強化された又は望ましい特性を有することが多い。
【0120】
D−アミノ酸を用いて、より安定なペプチドを生成することができる、なぜならD−アミノ酸はペプチダーゼ等に認識されないためである。同種のD−アミノ酸との共通配列の1つ又はそれ以上のアミノ酸の系統的置換(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)を用いて、より安定なペプチドを生成することができる。システイン残基を用いて、2つ又はそれ以上のペプチドをともに環化する又は結合することができる。これは、ペプチドを特定の高次構造にさせるために有用である場合がある(Rizo and Gierasch Ann. Rev. Biochem. 61 :387 (1992), incorporated herein by reference)。
【0121】
7.抗体
(1)抗体全般
用語「抗体」は、本明細書では広い意味で用いられ、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、用語「抗体」には、それらが同定、結合、精製され得る、又は変化した活性を有するように、単離されたD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼと相互作用する能力について選択される限り、これらの免疫グロブリン分子の断片又はポリマー、及び免疫グロブリン分子若しくはその断片のヒト又はヒト化バージョンを含む。D4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼの開示された領域に結合する抗体も開示される。抗体は、本明細書に記載するインビトロアッセイを用いて、又は類似の方法により所望の活性について試験することができ、その後インビボ治療及び/又は予防活性を、既知の臨床試験法に従って試験する。
【0122】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用するとき、実質的に同質な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さなサブセットに存在する可能性のある、あり得る自然発生突然変異を除いて同一である。本明細書ではモノクローナル抗体は、具体的には、所望の拮抗活性を呈する限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一である又は同質であるが、鎖の残りは別の種に由来する又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一である又は同質である「キメラ」抗体、及びこのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. ScL USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0123】
開示するモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する任意の手順を用いて作製することができる。例えば、開示するモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)に記載のもののような、ハイブリドーマ法を用いて調製できる。ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適切な宿主動物は、典型的には、免疫剤で免役されて、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する又は産生できるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球は、例えば本明細書に記載のHIV Env−CD4補助受容体複合体を用いて、インビトロで免役することができる。
【0124】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)に記載されているもののような、組み換えDNA法により作製することもできる。開示したモノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離及び配列決定できる。例えば、米国特許第5,804,440号(Burtonら)及び米国特許第6,096,441号(Barbas)らに記載されているような、ファージディスプレイ技術を用いて、抗体又は活性抗体断片のライブラリを作製し、スクリーニングすることもできる。
【0125】
インビトロ方法もまた一価抗体を調製するのに好適である。抗体の断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当該技術分野において既知である日常的な技術を用いて達成できる。例えば、消化はパパインを用いて実施できる。パパイン消化の例は、1994年12月22日公開の国際公開第94/29348号及び米国特許第4,342,566号に記載されている。抗体のパパイン消化は、典型的には、Fab断片と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片を生成し、これはそれぞれ1つの抗原結合部位と残りのFc断片を有する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有する断片が得られ、それでもなお抗原を架橋することができる。
【0126】
他の配列に結合しようとしまいと、抗体又は抗体断片の活性が、改変されていない抗体又は抗体断片に比べて著しく変化しない又は損なわれないという条件の下で、断片はまた特定の領域又は特定のアミノ酸残基の、挿入、欠失、置換又は他の選択された改変を含むことができる。これらの改変は、ジスルフィド結合できるアミノ酸を除去/付加する、生物寿命を延ばす、分泌特性を変化させる等の、いくつかの追加特性をもたらすことができる。どの場合も、抗体又は抗体断片は、同種抗原への特異的結合のような、生物活性特性を有しなければならない。抗体又は抗体断片の機能的又は活性領域は、タンパク質の特定の領域の突然変異誘発と、それに続く発現及び発現したポリペプチドの試験により同定できる。このような方法は、当業者に容易に明らかであり、抗体又は抗体断片をコードしている核酸の部位特異的突然変異誘発を挙げることができる(Zoller, MJ. Curr. Opin. Biotechnol. 3:348-354, 1992)。
【0127】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」はまた、ヒト抗体及び/又はヒト化抗体を指すことができる。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、又はウサギに由来するもの)は、自然界でヒトにおいて抗原性を示し、したがって、ヒトに投与されたとき、望ましくない免疫反応を誘発する場合がある。それ故、この方法におけるヒト又はヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫反応を引き起こす可能性を低減するように機能する。
【0128】
(2)ヒト抗体
開示するヒト抗体は、任意の技術を用いて調製できる。ヒトモノクローナル抗体を産生する技術の例としては、Cole et al. (Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77, 1985)及びBoerner et al. (J Immunol, 147(l):86-95, 1991)に記載のものが挙げられる。ヒト抗体(及びその断片)はまた、ファージディスプレイライブラリを用いて産生することもできる(Hoogenboom et al., J MoI. Biol, 227:381, 1991; Marks et al., J MoI Biol, 222:581, 1991)。
【0129】
開示するヒト抗体はまた、遺伝子組み換え動物から得ることもできる。例えば、免疫に反応して、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生できる、遺伝子組み換え、突然変異体マウスが記載されている(例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551-255 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol, 7:33 (1993)を参照のこと)。具体的には、これらのキメラ及び生殖細胞突然変異マウスの抗体の重鎖結合領域(J(H))のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生を完全に阻害し、ヒト生殖細胞抗体遺伝子アレイをこのような生殖細胞突然変異マウスにうまく転移させると、抗原チャレンジ時にヒト抗体が産生される。所望の活性を有する抗体は、本明細書に記載のようなEnv−CD4補助受容体複合体を用いて選択される。
【0130】
(3)ヒト化抗体
抗体のヒト化技術は、一般に、組み換えDNA技術を使用して、抗体分子の1本又はそれ以上のポリペプチド鎖をコードしているDNA配列を操作することを伴う。したがって、非ヒト抗体(又はその断片)のヒト化型は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワークに組み込まれる非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部を含むキメラ抗体、又は抗体鎖(又は、抗体のFv、Fab、Fab’若しくは抗原結合部のような、その断片)である。
【0131】
ヒト化抗体を生成するために、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対する特定の水準の特異性及び親和性)を有することが知られているドナー(非ヒト)抗体分子の1つ又はそれ以上のCDRの残基を、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)の残基に置換する。場合によっては、対応する非ヒト残基をヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基に置換する。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体でも、移入されたCDR又はフレームワーク配列でも見られない残基を含有する場合もある。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源から導入された1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。実際に、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基及び恐らくいくつかのFR残基がげっ歯類の抗体の類似部位の残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体は、一般に、抗体の定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト抗体の定常領域の少なくとも一部を含む(Jones et al., Nature, 321 :522-525 (1986), Reichmann et al., Nature, 332:323-327 (1988), and Presta, Curr. Opin. Struct. Biol, 2:593-596 (1992))。
【0132】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、ヒト化抗体は、げっ歯類のCDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによる、Winterとその共同研究者らの方法に従って生成できる(Jones et al., Nature, 321 :522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))。ヒト化抗体を生成するために用いることができる方法はまた、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)、同第5,565,332号(Hoogenboomら)、同第5,721,367号(Kayら)、同第5,837,243号(Deoら)、同第5,939,598号(Kucherlapatiら)、同第6,130,364号(Jakobovitsら)、及び同第6,180,377号(Morganら)に記載されている。
【0133】
(4)抗体の投与
抗体の投与は、本明細書に記載のように行うことができる。抗体を送達するための核酸アプローチも存在する。抗体及び抗体断片はまた、患者又は被験体自身の細胞が核酸を取り込み、コードされている抗体又は抗体断片を産生及び分泌するように、抗体又は抗体断片をコードする核酸製剤(例えば、DNA又はRNA)として、患者又は被験体又は細胞に投与することができる。核酸の送達は、例えば本明細書に開示するような任意の手段によることができる。
【0134】
8.医薬用担体/医薬品の送達
上記のように、組成物はまた製薬上許容できる担体中でインビボ投与することができる。「製薬上許容できる」とは、生物学的に又は他の点で不所望ではない材料を意味し、すなわち、その材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又は含有されている医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な方式で相互作用することなく、核酸又はベクターとともに被験体に投与できる。担体は、当然、当業者に周知であるように、活性成分の任意の分解を最小限に抑え、かつ被験体のいかなる有害な副作用も最小限に抑えるように選択される。
【0135】
組成物は、経口で、非経口で(例えば、静脈内に)、筋肉注射により、腹腔内注射により、経皮的に、体外で、局所鼻腔内投与又は吸入による投与を含む局所的に等で投与してよい。本明細書で使用するとき、「局所鼻腔内投与」は、鼻孔の一方又は両方を通じて鼻及び鼻道に組成物を送達することを意味し、噴霧機構若しくは液滴機構により、又は核酸若しくはベクターのエーロゾル化を通して送達することを含み得る。吸入による組成物の投与は、噴霧又は液滴機構による送達を介して鼻又は口を通じたものであり得る。また、挿管を介して呼吸器系(例えば、肺)の任意の領域に直接送達することができる。必要とされる組成物の正確な量は、被験体の種、年齢、体重及び全身状態、治療されるアレルギー性疾患の重篤度、用いられる具体的な核酸又はベクター、投与方式等に依存して、被験体により異なる。したがって、全ての組成物の正確な量を規定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示によって、日常的な実験のみを用いて当業者が決定できる。
【0136】
組成物の非経口投与は、用いられる場合、一般に、注入を特徴とする。注入物質は、液体溶液又は懸濁液、注入前に液体の懸濁液へ溶解するのに好適な固体形、又はエマルションのような従来の形態で調製できる。非経口投与に対する近年修正されたアプローチは、一定の投与量が維持されるように、徐放又は持続放出系の使用を含む。例えば、米国特許第3,610,795号を参照のこと、これは参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0137】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微粒子、リポソーム又は細胞に組み込まれた)であってよい。これらは、抗体、受容体又は受容体リガンドを介して特定の種類の細胞を標的とすることができる。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化するために、この技術を使用する例である(Senter, et al., Bioconjugate Chem. , 2:447-451, (1991);Bagshawe, K.D., 5r. J Cancer, 60:275-281, (1989);Bagshawe, et al., Br. J Cancer, 58:700-703, (1988);Senter, et al., Bioconjugate Chem., 4:3-9, (1993);Battelli, et al., Cancer Immunol. Immunother., 35:421-425, (1992);Pietersz and McKenzie, Immunolog. Reviews, 129:57-80, (1992);及びRoffler, et al., Biochem. Pharmacol, 42:2062-2065, (1991))。「ステルス(stealth)」のようなビヒクル及びリポソームにコンジュゲートされた抗体(結腸癌を標的とする脂質媒介薬を含む)、細胞特異的リガンドを介した、受容体が介在するDNAの標的化、リンパ球指向型腫瘍標的化、及びインビボでのマウス神経膠腫細胞の高特異的治療用レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化するために、この技術を使用する例である(Hughes et al., Cancer Research, 49:6214- 6220, (1989);及びLitzinger and Huang, Biochimica et Biophysica Acta, 1104:179-187, (1992))。一般に、受容体は、恒常的又はリガンドに誘発される、エンドサイトーシスの経路に関与する。これらの受容体は、クラスリン被覆ピットにおいてクラスタを形成し、クラスリン被覆小胞を介して細胞に入り、受容体が選別される酸性化エンドソームを通過し、次いで細胞表面に再循環する、細胞内に保管される、又はリソソームで分解される。内部移行経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、巨大分子の排除、ウイルス及び毒素の日和見性侵入、リガンドの解離及び分解、並びに受容体濃度の調節のような、種々の機能を果たす。多くの受容体は、細胞の種類、受容体の濃度、リガンドの種類、リガンドの価数、及びリガンドの濃度に依存して、1つを超える細胞内経路をたどる。受容体介在エンドサイトーシスの分子及び細胞機構は概説されている(Brown and Greene, DNA and Cell Biology 10:6, 399-409 (1991))。
【0138】
a)製薬上許容できる担体
抗体を含む組成物は、製薬上許容できる担体と組み合わせて治療用に用いることができる。
【0139】
好適な担体及びその製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed. A.R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA 1995に記載されている。典型的には、適切な量の製薬上許容できる塩を配合に用いて、配合を等張にする。製薬上許容できる担体の例としては、生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液が挙げることが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8であり、より好ましくは約7〜約7.5である。更に担体は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスのような持続放出製剤を含み、このマトリックスは例えばフィルム、リポソーム又は微粒子等の成形品の形態である。特定の担体は、例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じてより好ましい場合があることが、当業者には明らかである。
【0140】
医薬用担体は、当業者に既知である。これらは最も典型的には、滅菌水、生理食塩水、及び生理学的pHで緩衝化された溶液のような溶液が挙げられる、ヒトに薬物を投与するための標準的な担体である。組成物は、筋肉内に又は皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者により用いられる標準的な手順に従って投与される。
【0141】
医薬組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、表面活性剤等を含んでもよい。医薬組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症性剤、麻酔剤等のような1種又はそれ以上の活性成分を含んでもよい。
【0142】
医薬組成物は、局所又は全身治療のいずれが望ましいか、及び治療される領域に応じて、多数の方法で投与することができる。投与は、局所的に(眼科的に、膣内に、直腸内に、鼻腔内にを含む)、経口で、吸入により、又は非経口で、例えば点滴、皮下、腹腔内、若しくは筋肉内注射であり得る。開示した抗体は、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、腔内に、又は経皮的に投与することができる。
【0143】
非経口投与のための製剤としては、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルションが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、エマルション又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝化培地を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー、又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養素補充液、電解質補液(リンガーデキストロースに基づくもののような)等が挙げられる。保存剤、及び、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等のような他の添加剤もまた存在し得る。
【0144】
局所投与用製剤としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液剤及び散剤を挙げることができる。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤等が必須である又は望ましい場合がある。
【0145】
経口投与のための組成物としては、散剤又は顆粒、水又は非水性媒質への懸濁液又は溶液、カプセル、小袋又は錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又は結合剤が望ましい場合がある。
【0146】
いくつかの組成物は、潜在的に、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、及びリン酸のような無機酸、並びに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、及びフマル酸のような有機酸との反応により、又は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムのような無機塩基、並びにモノ−、ジ−、トリアルキル及びアリールアミノ並びに置換エタノールアミンのような有機塩基との反応により形成される、製薬上許容できる酸又は塩基付加塩として投与してもよい。
【0147】
b)治療的使用
組成物を投与するための有効用量及びスケジュールは、経験的に決定することができ、このような決定をすることは当業者の技能の範囲内である。組成物の投与の用量範囲は、症状障害が効能を受ける所望の効果を生み出すのに十分な程大きい。用量は、不要な交差反応、アナフィラキシー反応等のような有害な副作用を引き起こす程多くてはならない。一般に、用量は、患者の年齢、状態、性別及び疾患の程度、投与経路、又は他の薬物がレジメンに含まれているかどうかにより変化し、当業者が決定することができる。用量は、何らかの使用禁忌がある場合、個々の医師により調節できる。用量は、変化し得、1日又は数日間、毎日1回又はそれ以上の投与回数で投与することができる。医薬品の所与の部類に対する適切な用量に関して、文献中に指針を見出すことができる。例えば、抗体に適切な用量を選択するための指針は、抗体の治療的使用に関する文献、例えばHandbook of Monoclonal Antibodies, Ferrone et al., eds., Noges Publications, Park Ridge, NJ. , (1985) ch. 22 and pp. 303-357;Smith et al., Antibodies in Human Diagnosis and Therapy, Haber et al., eds., Raven Press, New York (1977) pp. 365-389に見出すことができる。単独で用いられる抗体の典型的な1日用量は、上述の要因に応じて、体重1kgあたり、1日に約1μgから最大約100mg、又はそれ以上であり得る。
【0148】
特定の医薬機能は有しないが、例えば、細胞の染色体内の変化を追跡するため又は診断用ツールの送達のために用いることができる、単離したD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼと相互作用する他の分子は、医薬品について記載したものと同様の方法で送達できる。
【0149】
9.チップ及びマイクロアレイ
少なくとも1つのアドレス(address)が、本明細書に開示した核酸配列のいずれかに記載の配列又は配列の一部であるチップを開示する。また、少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示したペプチド配列のいずれかに記載の配列又は配列の一部であるチップも開示する。
【0150】
また、少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示した核酸配列のいずれかに記載の配列又は配列の一部の変異体であるチップを開示する。また、少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示したペプチド配列のいずれかに記載の配列又は配列の一部の変異体であるチップも開示する。
【0151】
10.コンピュータ可読媒体
開示した核酸及びタンパク質は、アミノ酸のヌクレオチドから成る配列として表すことができると理解される。これらの配列を示す種々の方法が存在し、例えば、ヌクレオチドのグアノシンはG又はgにより表すことができる。同様にアミノ酸のバリンは、Val又はVにより表すことができる。当業者は、存在する種々の方法のいずれかで、任意の核酸又はタンパク質配列を示し、表現する方法を理解し、その方法はそれぞれ本明細書に開示されると考えられる。特に本明細書で意図されるのは、市販のフロッピー(登録商標)ディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスク、及びビデオディスクのようなコンピュータ可読媒体、又は他のコンピュータ可読媒体にこれらの配列を表示することである。また、開示する配列の二進コード表示も開示する。当業者は、コンピュータ可読媒体が何であるかを理解する。したがって、核酸又はタンパク質はコンピュータ可読媒体に記録、格納又は保存される。
【0152】
配列及び本明細書に記載の配列に関する情報を含むコンピュータ可読媒体を開示する。
【0153】
開示した組成物をスクリーニングすることにより同定される組成物/コンビナトリアルケミストリー
a)コンビナトリアルケミストリー
開示した組成物を、任意のコンビナトリアル技術の標的として用いて、所望の方法で開示した組成物と相互作用する分子又は巨大分子を同定することができる。本明細書に開示する核酸、ペプチド、及び関連する分子を、コンビナトリアルアプローチの標的として用いることができる。また、例えば配列番号14、15、25若しくは26又はその一部に開示する組成物をコンビナトリアル又はスクリーニングプロトコルで標的として用いる、コンビナトリアル技術又はスクリーニング技術を通して同定される組成物も開示する。
【0154】
コンビナトリアル技術又はスクリーニング方法で開示した組成物を用いるとき、阻害、若しくは刺激のような特定の所望の特性、又は標的分子の機能を有する巨大分子のような分子が同定されると理解される。脂肪酸のような、開示する組成物を用いたときに同定及び単離される分子も開示される。したがって、脂肪酸のような、開示する組成物に関与するコンビナトリアル又はスクリーニングアプローチを用いて生成される生成物も、本明細書に開示されると考えられる。
【0155】
例えば、単離したD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼ間の相互作用を阻害する分子を同定するための、開示する方法は、ハイスループット手段を用いて実施できる。例えば、推定上の阻害剤は、相互作用を迅速に同定する、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を用いて同定できる。この技術の根底にある理論は、2つの分子が空間内で近接しているとき、すなわちバックグラウンドを上回る水準で相互作用しているとき、シグナルが生成される又はシグナルが消滅し得ることである。次いで、例えば推定上の阻害剤に添加することを含む、種々の実験を実施することができる。阻害剤が2つのシグナル伝達分子間の相互作用と競合する場合、シグナルは空間内で互いから除去され、これは用いられるシグナルの種類に応じて、シグナルを減少又は増加させる。このシグナルの減少又は増加は、推定上の阻害剤の存在又は非存在と相関させることができる。任意のシグナル伝達手段を用いることができる。例えば、第1分子と第2分子を推定上の阻害剤下で互いに接触させる工程であって、第1分子又は第2分子が蛍光ドナーを含み、第1分子又は第2分子であって、典型的にはドナーを含まない分子が、蛍光アクセプタを含む工程と;推定上の阻害剤の存在下又は推定上の阻害剤の非存在下で、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を測定する工程であって、推定上の阻害剤の非存在下におけるFRET測定値と比べて、推定上の阻害剤の存在下におけるFRETが低いことが、推定上の阻害剤が2つの分子間の結合を阻害したことを示す工程と、を含む、任意の2つの開示した分子間の相互作用の阻害剤を同定する方法を開示する。この種の方法は、同様に細胞系で実施することができる。
【0156】
コンビナトリアルケミストリーとしては、典型的には繰り返し作業で、小分子又は別の巨大分子のいずれかに結合できる小分子又は別の巨大分子を単離する全ての方法が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質、オリゴヌクレオチド、及び糖類が巨大分子の例である。例えば、所与の機能を有する、触媒する又はリガンド結合するオリゴヌクレオチド分子は、「インビトロジェネティクス(in vitro genetics)」と呼ばれているものにより、ランダムなオリゴヌクレオチドの複合体混合物から単離することができる(Szostak, TIBS 19:89, 1992)。ランダム及び定義された配列を有する分子の大きなプールを合成し、例えば、100μgの100ヌクレオチドRNA中の約1015の個々の配列のなどの複合体混合物を、ある選択及び濃縮過程に供する。親和性クロマトグラフィー及びカラム上のリガンドに結合した分子のPCR増幅のサイクルを繰り返すことを通して、Ellington and Szostak (1990)は、1010RNA分子のうち1分子が小分子染料と結合するような方法で折り畳まれると推定した。このようなリガンド結合挙動を示すDNA分子も同様に単離されている(Ellington and Szostak, 1992; Bock et al, 1992)。当業者に既知である小有機分子、タンパク質、抗体及び他の巨大分子について、同様の目標を目指す技術が存在する。小有機ライブラリ、オリゴヌクレオチド、又は抗体のいずれかに基づいて、所望の活性についての分子一式をスクリーニングすることは、広くコンビナトリアルケミストリーと呼ばれる。コンビナトリアル技術は、分子間結合相互作用を定義するために、及び巨大分子が核酸であるとき、アプタマーと呼ばれることが多い、特異的結合活性を有する分子を単離するために、特に適している。
【0157】
新規活性又は改変された活性のいずれかを有するタンパク質を単離するための、多くの方法が存在する。例えば、ファージディスプレイライブラリを用いて、特定の標的と相互作用する多数のペプチドが単離されている(例えば、米国特許第6,031,071号;同第5,824,520号;同第5,596,079号;及び同第5,565,332号を参照のこと、これらは少なくともファージディスプレイに関する内容及びコンビナトリアルケミストリーに関する方法について、参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0158】
所与の機能を有するタンパク質を単離する好ましい方法は、Roberts and Szostakにより記載されている(Roberts R. W. and Szostak J.W. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94(23)12997-302 (1997))。このコンビナトリアルケミストリー法は、タンパク質の機能的能力と核酸の遺伝的能力を合わせる。ピューロマイシン分子がRNA分子の3’−末端に共有結合したRNA分子が生成される。この修飾されたRNA分子のインビトロ翻訳は、翻訳されるRNAによりコードされている正確なタンパク質をもたらす。加えて、伸長できないペプチジルアクセプタであるピューロマイシンが結合しているために、成長しているペプチド鎖が、RNAに結合しているピューロマイシンに結合する。したがって、タンパク質分子は、それをコードしている遺伝物質に結合する。ここでは、標準的なインビトロ選択手順を、機能的ペプチドを単離するために用いることができる。一旦ペプチド機能についての選択手順が完了すると、伝統的な核酸操作を実施して、選択された機能的ペプチドをコードする核酸を増幅する。遺伝物質の増幅後、新しいRNAが3’−末端にピューロマイシンを有して転写され、新しいペプチドが翻訳され、別の機能に関する選択がもう一巡実施される。したがって、タンパク質の選択は、核酸選択技術と同様に、繰り返し方式で実施できる。翻訳されるペプチドは、ピューロマイシンに結合したRNAの配列により制御される。この配列は、最適な翻訳(すなわち、終止コドンを有しない等)のために操作されたランダム配列のいずれからでも得ることができ、又は既知のペプチドの改善された又は変更された機能を探すための既知のRNA分子の縮重配列であってもよい。核酸増幅及びインビトロ翻訳条件は当業者に周知であり、好ましくはRoberts and Szostak (Roberts R. W. and Szostak J.W. Proc. Natl. Acad. ScI USA, 94(23)12997-302 (1997)のように実施される。
【0159】
ペプチドを単離するために設計されるコンビナトリアル方法のための、別の好ましい方法は、Cohenらに記載されている(Cohen B.A.,et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(24):14272-7 (1998))。この方法は、ツーハイブリッド技術を利用し、改変する。酵母ツーハイブリッド系は、タンパク質:タンパク質相互作用の検出及び分析に有用である。最初に出芽酵母において記載された、ツーハイブリッド系は、関心タンパク質に特異的な、新規調節分子を同定するための強力な分子遺伝学的技術である(Fields and Song, Nature 340:245-6 (1989))。Cohenらは、選択した分子に結合する、合成又は操作されたペプチド配列間の新規相互作用を同定できるよう、この技術を改変した。この種の技術の利点は、選択が細胞内環境で行われることである。この方法は、酸性活性化ドメインに結合したペプチド分子のライブラリを利用する。選択したペプチド、例えば、単離したD4デサチュラーゼ及びD5エロンガーゼの一部は、Gal4のような転写活性化タンパク質のDNA結合ドメインに結合する。この種の系でツーハイブリッド技術を実施することにより、単離したD4デサチュラーゼ又はD5エロンガーゼの一部に結合する分子を同定することができる。
【0160】
当業者に周知の手順を用い、種々のコンビナトリアルライブラリと組み合わせることにより、所望の標的に結合又は相互作用する小分子又は巨大分子を単離及び特性解析することができる。これらの化合物の相対結合親和性は比較することができ、当業者に周知の競合的結合試験を用いて最適な化合物が同定される。
【0161】
所望の標的に結合する分子を単離するための、コンビナトリアルライブラリ及びスクリーニングコンビナトリアルライブラリを作製する技術は、当業者に周知である。代表的な技術及び方法は、米国特許第5,084,824号、同第5,288,514号、同第5,449,754号、同第5,506,337号、同第5,539,083号、同第5,545,568号、同第5,556,762号、同第5,565,324号、同第5,565,332号、同第5,573,905号、同第5,618,825号、同第5,619,680号、同第5,627,210号、同第5,646,285号、同第5,663,046号、同第5,670,326号、同第5,677,195号、同第5,683,899号、同第5,688,696号、同第5,688,997号、同第5,698,685号、同第5,712,146号、同第5,721,099号、同第5,723,598号、同第5,741,713号、同第5,792,431号、同第5,807,683号、同第5,807,754号、同第5,821,130号、同第5,831,014号、同第5,834,195号、同第5,834,318号、同第5,834,588号、同第5,840,500号、同第5,847,150号、同第5,856,107号、同第5,856,496号、同第5,859,190号、同第5,864,010号、同第5,874,443号、同第5,877,214号、同第5,880,972号、同第5,886,126号、同第5,886,127号、同第5,891,737号、同第5,916,899号、同第5,919,955号、同第5,925,527号、同第5,939,268号、同第5,942,387号、同第5,945,070号、同第5,948,696号、同第5,958,702号、同第5,958,792号、同第5,962,337号、同第5,965,719号、同第5,972,719号、同第5,976,894号、同第5,980,704号、同第5,985,356号、同第5,999,086号、同第6,001,579号、同第6,004,617号、同第6,008,321号、同第6,017,768号、同第6,025,371号、同第6,030,917号、同第6,040,193号、同第6,045,671号、同第6,045,755号、同第6,060,596号、及び同第6,061,636号に見出すことができるが、これらに限定されない。
【0162】
コンビナトリアルライブラリは、多数の異なる合成技術を用いて、広く多くの分子から作製することができる。例えば、縮合2,4−ピリミジンジオン(米国特許第6,025,371号)、ジヒドロベンゾピラン(米国特許第6,017,768号及び同第5,821,130号)、アミドアルコール(米国特許第5,976,894号)、ヒドロキシ−アミノ酸アミド(米国特許第5,972,719号)炭水化物(米国特許第5,965,719号)、1,4−ベンゾジアゼピン−2,5−ジオン(米国特許第5,962,337号)、環式(米国特許第5,958,792号)、ビアリールアミノ酸アミド(米国特許第5,948,696号)、チオフェン(米国特許第5,942,387号)、三環式テトラヒドロキノリン(米国特許第5,925,527号)、ベンゾフラン(米国特許第5,919,955号)、イソキノリン(米国特許第5,916,899号)、ヒダントイン及びチオヒダントイン(米国特許第5,859,190号)、インドール(米国特許第5,856,496号)、イミダゾール−ピリド−インドール及びイミダゾール−ピリド−ベンゾチオフェン(米国特許第5,856,107号)置換2−メチレン−2,3−ジヒドロチアゾール(米国特許第5,847,150号)、キノリン(米国特許第5,840,500号)、PNA(米国特許第5,831,014号)、含有タグ(米国特許第5,721,099号)、ポリケチド(米国特許第5,712,146号)、モルホリノ−サブユニット(米国特許第5,698,685号及び同第5,506,337号)、スルファミド(米国特許第5,618,825号)、及びベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)を含むライブラリである。
【0163】
本明細書で使用するとき、コンビナトリアル法及びライブラリは、伝統的なスクリーニング方法及びライブラリ、並びに繰り返し作業で用いられる方法及びライブラリが含まれた。
【0164】
b)コンピュータを利用した薬品設計
開示する組成物は、任意の分子モデリング技術の標的として用いて、開示する組成物の構造を特定する、又は可能性のある分子若しくは小分子のような実際の分子を特定することができ、これらの分子は開示する組成物と所望の方法で相互作用する。本明細書で開示する核酸、ペプチド、及び関連する分子は、任意の分子モデリングプログラム又はアプローチで標的として用いることができる。
【0165】
モデリング技術において開示する組成物を用いるとき、阻害若しくは刺激のような特定の所望の特性又は標的分子の機能を有する巨大分子のような分子が同定されると理解される。単離されたD4デサチュラーゼ又はD5エロンガーゼのような開示する組成物を用いるとき同定及び単離される分子もまた開示される。したがって、単離されたD4デサチュラーゼ又はD5エロンガーゼのような開示する組成物に関与する分子モデリングアプローチを用いて生成される生成物もまた、本明細書で開示されると考えられる。
【0166】
したがって、選択した分子に結合する分子を単離する1つの方法は、合理的設計(rational design)を通じたものである。これは、構造的情報及びコンピュータモデリングを通して達成できる。コンピュータモデリング技術により、選択された分子の三次元原子構造の可視化、および分子と相互作用する新規化合物の合理的設計が可能になる。三次元構造は、典型的には、選択された分子のx線結晶学的分析又はNMRイメージングから得られるデータに依存する。その分子力学は、力場のデータを必要とする。コンピュータグラフィックシステムにより、新規化合物がどのように標的分子に結合するかを予測することが可能になり、結合特異性を完全にするために、化合物及び標的分子の構造を実験的に操作することが可能になる。一方又は両方に小さな変化が起こるとき、どの分子−化合物が相互作用するかという予測は、分子力学ソフトウェア及び計算集約的なコンピュータを必要とし、これらは通常分子設計プログラムとユーザとの間のユーザフレンドリな、メニュー方式インタフェース伴う。
【0167】
分子モデリングシステムの例は、CHARMm及びQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, MA)である。CHARMmは、エネルギーの最小化及び分子力学機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング、及び解析を実行する。QUANTAにより、分子相互の挙動の対話的構築、修正、可視化及び分析が可能になる。
【0168】
Rotivinen, et al., 1988 Acta Pharmaceutica Fennica 97, 159-166; Ripka, New Scientist 54-57 (June 16, 1988);McKinaly and Rossmann, 1989 Aram. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29, 111-122;Perry and Davies, QSAR: Quantitative Structure- Activity Relationships in Drug Design pp. 189-193 (Alan R. Liss, Inc. 1989);Lewis and Dean, 1989 Proc. R. Soc. Lond. 236, 125-140 and 141-162のような多数の記事が、特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングについて概説しており、核酸成分のモデル酵素に関しては、Askew, et al., 1989 J. Am. Chem. Soc. I l l, 1082- 1090が概説している。化学物質を選別し、映像的に表現する他のコンピュータプログラムは、BioDesign, Inc., Pasadena, CA.、Allelix, Inc, Mississauga, Ontario, Canada、及びHypercube, Inc., Cambridge, Ontarioのような企業から入手可能である。これらは主に特定のタンパク質に特異的な薬物に適用するために設計されているが、それらは、一旦領域が同定されると、特定のDNA又はRNA領域と特異的に相互作用する分子の設計に適合できる。
【0169】
結合を変化させることができる化合物の設計及び生成に関して上述したが、基質の結合又は酵素的活性を変化させる化合物について、天然産物又は合成化学物質、及びタンパク質を含む生物学的に活性のある物質を含む、既知の化合物のライブラリをスクリーニングすることもできる。
【0170】
12.キット
本明細書に開示する方法を実行するのに用いることができる試薬を引き出すキットを、本明細書に開示する。キットは、本明細書で論じる、又は開示する方法の実行において必要である若しくは有利である任意の試薬又は試薬の組み合わせを含んでよいことが理解されよう。例えば、キットは、方法の特定の実施形態で論じられる増幅反応を実施するためのプライマー、並びに目的とするプライマーを用いるために必要な緩衝剤及び酵素を含むことができる。
【0171】
13.類似機能を有する組成物
本明細書に開示する組成物は、開示した酵素的機能のような特定の機能を有することが理解される。開示した機能を実施するための特定の構造的要件を本明細書に開示し、開示した構造に関連する同じ機能を実施できる種々の構造が存在すること、及びこれらの構造が最終的に同じ結果、例えば、酵素的機能の刺激又は阻害を達成することが理解される。
【0172】
C.組成物の製造方法
本明細書に開示する組成物及び開示する方法を実施するために必要な組成物は、特に断らない限り、特定の試薬又は化合物について当業者に既知である任意の方法を用いて製造できる。
【0173】
1.核酸合成
例えば、プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのような核酸は、標準的な化学合成法を用いて製造できる、又は酵素的方法若しくは任意の他の既知の方法を用いて生成できる。このような方法は、標準的な酵素消化に続くヌクレオチド断片の単離(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989) Chapters 5, 6を参照のこと)から、例えば、Milligen or Beckman System lPlus DNA synthesizer (for example, Model 8700 automated synthesizer of Milligen-Biosearch, Burlington, MA or ABI Model 380B)を用いるシアノエチルホスホラミダイト法等により純粋に合成する方法にまで及び得る。オリゴヌクレオチドの製造に有用な合成法はまた、Ikuta et ah, Ann. Rev. Biochem. 53:323-356 (1984)、 (ホスホトリエステル及び亜リン酸トリエステル法)、及びNarang et al., Methods EnzymoL, 65:610-620 (1980)(ホスホトリエステル法)に記載されている。タンパク質核酸分子は、Nielsen et al., Bioconjug. Chem. 5:3-7 (1994)に記載されているもののような、既知の方法を用いて製造できる。
【0174】
2.ペプチド合成
配列番号23のような、開示するタンパク質を生成する1つの方法は、タンパク質化学技術により2つ若しくはそれ以上のペプチド又はポリペプチドを相互に結合することである。例えば、ペプチド又はポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)又はBoc(t−ブチルオキシカルボノイル)ケミストリー(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA)のいずれかを用いて、現在入手可能な実験設備を用いて化学的に合成できる。当業者は、開示するタンパク質に対応するペプチド又はポリペプチドが、例えば、標準的な化学反応により合成できることを容易に理解できる。例えば、ペプチド又はポリペプチドを合成し、その合成樹脂から切断しなくてもよいが、一方ペプチド又はポリペプチドの他の断片を合成し、その後樹脂から切断し、それにより他の断片で機能的に遮断される末端基を露出させることができる。ペプチド縮合反応により、これらの2つの断片は、それぞれカルボキシ末端及びアミノ末端でペプチド結合を介して共有結合して、抗体又はその断片を形成することができる(Grant GA (1992) Synthetic Peptides: A User Guide. W.H. Freeman and Co., N. Y. (1992);Bodansky M and Trost B., Ed. (1993) Principles of Peptide Synthesis. Springer- Verlag Inc., NY(これらは、少なくともペプチド合成に関する内容が、参照することにより本明細書に組み込まれる))。あるいは、ペプチド又はポリペプチドは、本明細書に記載のようにインビボで独立に合成される。一旦単離されると、これらの独立したペプチド又はポリペプチドは、結合して、同様のペプチド縮合反応を介してペプチド又はその断片を形成することができる。
【0175】
例えば、クローニングした又は合成ペプチドセグメントの酵素的ライゲーションにより、比較的短いペプチド断片が結合して、より大きなペプチド断片、ポリペプチド又は全体のタンパク質ドメインを生成することが可能になる(Abrahmsen L et al., Biochemistry, 30:4151 (1991))。あるいは、合成ペプチドのネイティブな化学的ライゲーションを利用して、より短いペプチド断片から合成的に大きなペプチド又はポリペプチドを構築することができる。この方法は、2段階化学反応から成る(Dawson et al. Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation. Science, 266:776-779 (1994))。第1段階は、保護されていない合成ペプチド――チオエステルと、アミノ末端Cys残基を含有する別の保護されていないペプチドセグメントとの化学選択的反応であり、初期共有生成物としてチオエステル結合中間体が得られる。反応条件を変化させることなく、この中間体は、自然に、急速な分子内反応を受けて、ライゲーション部位でネイティブなペプチド結合を形成する(Baggiolini M et al. (1992) FEBS Lett. 307:97-101;Clark-Lewis I et al., J.Biol.Chem., 269:16075 (1994);Clark-Lewis I et al., Biochemistry, 30:3128 (1991); Rajarathnam K et al., Biochemistry 33:6623-30 (1994))。
【0176】
あるいは、保護されていないペプチドセグメントは、化学的に結合し、そこで化学的ライゲーションの結果としてペプチドセグメント間で形成される結合は非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer, M et al. Science, 256:221 (1992))。この技術を用いて、タンパク質ドメインの類似体に加えて、大量の完全な生物学的活性を有する比較的純粋なタンパク質が合成されている(de Lisle Milton RC et al., Techniques in Protein Chemistry IV. Academic Press, New York, pp. 257-267 (1992))。
【0177】
3.組成物を製造するためのプロセスクレーム
組成物を製造するプロセス、並びに組成物を導く中間体の製造プロセスを開示する。例えば、配列番号14及び25の核酸を開示する。合成化学方法及び標準的な分子生物学的方法のような、これらの組成物を製造するために用いることができる種々の方法が存在する。これらの及び他の開示する組成物の製造方法が具体的に開示されることが理解される。
【0178】
例えば、配列番号14及び25に記載の配列、及び核酸の発現を制御する配列を含む核酸を操作可能な方法で結合させることを含むプロセスにより生成される核酸分子を開示する。
【0179】
また、例えば、配列番号14及び25に記載の配列に対して80%の同一性を有する配列を含む核酸分子、及び核酸の発現を制御する配列を含む核酸を操作可能な方法で結合させることを含むプロセスにより生成される核酸分子を開示する。
【0180】
例えば、配列番号14及び25に記載の配列、及び核酸の発現を制御する配列に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列を含む核酸分子を、操作可能な方法で結合させることを含むプロセスにより生成される核酸分子を開示する。
【0181】
例えば、配列番号15及び26に記載のペプチドをコードしている配列、及び核酸分子の発現を制御する配列を含む核酸を操作可能な方法で結合させることを含むプロセスにより生成される核酸分子を開示する。
【0182】
例えば、配列番号15及び26に記載のペプチドに対して80%の同一性を有するペプチドをコードしている配列、及び核酸分子の発現を制御する配列を含む核酸を操作可能な方法で結合させることを含むプロセスにより生成される核酸分子を開示する。
【0183】
例えば、配列番号15及び26に記載のペプチドに対して80%の同一性を有するペプチドをコードしている配列であって、例えば、配列番号15及び26からの任意の変化が保存的変化である配列、及び核酸分子の発現を制御する配列を含む核酸分子を操作可能な方法で結合させることを含むプロセスにより生成される核酸を開示する。
【0184】
開示する核酸のいずれかで細胞を形質転換するプロセスにより生成される細胞を開示する。非自然発生的な開示される核酸のいずれかで細胞を形質転換するプロセスにより生成される細胞を開示する。
【0185】
開示する核酸のいずれかを発現させるプロセスにより生成される開示する任意のペプチドを開示する。開示する核酸のいずれかを発現させるプロセスにより生成される非自然的に発生する開示するペプチドのいずれかを開示する。非自然的な開示する核酸のいずれかを発現させるプロセスにより生成される開示するペプチドのいずれかを開示する。
【0186】
本明細書に開示する核酸分子のいずれかで動物内の細胞をトランスフェクトするプロセスにより生成される動物を開示する。本明細書に開示される核酸分子のいずれかで動物内の細胞をトランスフェクトするプロセスにより生成される動物であって、哺乳類である動物を開示する。また、本明細書に開示する核酸分子のいずれかで動物内の細胞をトランスフェクトするプロセスにより生成される動物であって、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ又は霊長類である動物を開示する。
【0187】
また、本明細書に開示する細胞のいずれかを動物に添加するプロセスにより生成される動物を開示する。
【実施例】
【0188】
D.実施例
以下の実施例は、どのように本件で請求する化合物、組成物、物品、装置及び/又は方法が製造並びに評価されるのかについて、当業者に完全に開示及び説明するために述べるものであり、純粋に例示を目的とし、本開示を限定することを意図するものではない。数(例えば、量、温度等)に関して正確さを保証するよう努力するが、多少の誤差及び偏差を考慮すべきである。特に断らない限り、部は重量部であり、温度は℃、かつ周囲温度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【実施例1】
【0189】
ThraustochytridのONC−T18からデサチュラーゼ及びエロンガーゼを単離するための縮重オリゴヌクレオチドの設計
【0190】
ThraustochytridのONC−T18の脂肪酸組成の分析により、アラキドン酸(ARA、20:4n−6)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5n−3)、アドレン酸(adrenic acid)(ADA、22:4n−6)、ω6ドコサペンタエン酸(ω6DPA、22:5n−6)、ω3ドコサペンタエン酸(ω3−DPAn−3)及びドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n−3)のような長鎖PUFAがかなりの量存在することが明らかになった。したがって、この生物は、ARAをADAに又はEPAをω3−DPAに変換できる活性Δ5エロンガーゼ、及びADAをω6−DPAに又はω3−DPAをDHAに不飽和化する活性Δ4デサチュラーゼを含むと考えられた(図1)。したがって、目的は、ThraustochytridのONC−T18からこれらのデサチュラーゼ及びエロンガーゼを単離し、最終的に代替宿主で発現させることにより機能性を確認することを試みることであった。
【0191】
機能的デサチュラーゼ酵素をコードしている遺伝子を単離するために、ゲノムDNAを生物から抽出した。ThraustochytridのONC−T18培養物を、常時攪拌しながら26℃で16〜20時間、培養培地(5g/L 酵母抽出物、5g/L ペプトン、40g/L D(+)−グルコース、1.25mL/L 微量元素、1.25mL/L ビタミン、40g/L 海塩;(微量元素:5g/L NaHPO・HO、3.15 g/L FeCl・6HO、4.36g/L NaEDTA・2HO、0.6125mg/L CuSO・5H0、0.0597g/L NaMoO・2HO、0.022g/L ZnSO・7HO、0.01 g/L CoCl・6HO、0.18g/L MnCl・4HO、13μg/L HSeO、2.7mg/L NiSO・6HO、1.84 mg/L NaVO、1.94mg/L KCrO)、(ビタミン:1mg/L ビタミンB12、1mg/L ビオチン、0.20g/L チアミン HCl)中で増殖させた。アダプタSorvall #00436を用いてロータST−H750を備えるSorvall Super T21遠心分離機内で、室温にて5分間、500rpmで遠心分離し、80%の上清を除去し、残りの培地に細胞を再懸濁させ、抽出を続けた。製造業者のプロトコルに従って、Ultraclean Microbial DNA Isolation kit (MO BIO Laboratories, Inc, Solana Beach, California)を用いて、細胞からゲノムDNAを単離した。
【0192】
既知のデサチュラーゼで保存されている縮重オリゴヌクレオチド(すなわち、プライマー)を設計するアプローチをとった。これらのプライマーをPCR反応で用いて、Thraustochytriumから予測されるデサチュラーゼ遺伝子の保存領域を含む断片を同定することができる。Thraustochytrium sp., Thraustochytrium aureum、Thraustochytrium sp. ATCC 34304、 Thraustochytrium sp. ATCC 21685、及びThraustochytrium sp. FJN-IO (それぞれ、EMBO受入番号CS020087、Genbank受入番号AF391546、AF391543、AF489589、DQ133575)から5種の配列が入手可能であった。以下のように、Kodonプライマーデザイナーソフトウェアを用いて、縮重プライマーを用いた:プライマー4desat308(フォワード)(配列番号1)5’−GGRACAGCGASTTTTACAGGG−S’、プライマー4desatl369(リバース)(配列番号2)5’−GTGCTCAATCTGGTGGTTKAG−S’。
【0193】
既知のエロンガーゼに保存されている縮重オリゴヌクレオチド(すなわち、プライマー)を設計するために同じアプローチを用いた。これらのプライマーをPCR反応で用いて、Thraustochytrium sp.から予測されるエロンガーゼ遺伝子の保存領域を含有する断片を同定できる。Thraustochytrium sp.及びThraustochytrium aureum (それぞれ、EMBO受入番号CS160897及びCS160879)から2種の配列が入手可能であった。以下のように、Kodonプライマーデザイナーソフトウェアを用いて、縮重プライマーを用いた:プライマー5elo202F(フォワード)(配列番号3)5’−AAGCCYTTCGAGCTCAAGTYC−3’、プライマー5elo768R(リバース)(配列番号4)5’−GCACGAARAAGTTGCCGAAG−3’。オリゴヌクレオチド配列の縮重コードは、K=G,T、R=A,G、S=G,C、Y=C,Tであった。
【実施例2】
【0194】
Thraustochytrium sp. のONC−T18からのΔ5エロンガーゼヌクレオチド配列の単離
【0195】
Δ5エロンガーゼ遺伝子を単離するために、PCR増幅を、200ng Thraustochytrium sp.のONC−T18のゲノムDNA、10μL ベタイン、10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl、0.001% ゼラチン、200μM 各デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート、1μMの各プライマー及び0.2ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Sigma, Oakville, Ontario)を含有する、50μLの体積中で実施した。熱サイクルを、55.7℃のアニーリング温度で実施し、PCR反応物を、0.8%の低融点アガロースゲルで分離し、約600bpのバンドをゲル精製した。PCR産物を、水でアガロースから溶出し、次いでQIAquick PCR Purification kit (Qiagen, Valencia, California)で精製した。これらのDNA断片を、製造業者の説明書に従って、pT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlueコンピーテントセル(Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンを配列決定した。それにより、既に同定されているΔ5エロンガーゼに対して配列相同性を示す1つのクローンが単離された。このクローンは、以下のように説明される。クローン#600−16(配列番号5)は、これを配列決定し、593bpから推定したアミノ酸配列は、BLASTxサーチでの最高のスコアとして、多価不飽和脂肪酸エロンガーゼ1Thraustochytrium sp. FJN-IOと95%の同一性を示した。
【0196】
3’−末端を単離するために、Thraustochytrium sp.のONC−T18から精製したゲノムDNA、並びにオリゴヌクレオチド3’GSPa(配列番号6)(5’−CGCTGCGCCCGTACATTACTACCATCCA−S’)及び3’GSPb(配列番号7)(5’−GTCGTCCAGTCCGTCTATGAC−S’)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、APAgene GOLD Genome Walking kit (BIO S&T, Montreal, Quebec)を用いて、ゲノムウォーキングを実施した。両方のオリゴヌクレオチドは、推定上のΔ5エロンガーゼの#600−16断片に基づいて設計した。PCR断片を、0.8%の低融点アガロースゲルで分離し、約500〜2000bpのバンドをゲル精製した。PCR産物を、アガロースから水で溶出し、次いでQIAquick PCR Purification kit (Qiagen, Valencia, California)により精製した。これらのDNA断片を、製造業者の説明書に従ってpT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlueコンピテントセル (Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンを配列決定した。クローン3’C2−1(配列番号8)は、358bpの挿入断片を含んでおり、それは既知のΔ5エロンガーゼとの配列の相同性及び「TGA」終止コドンの存在に基づいて、推定上のD5エロンガーゼ遺伝子の3’−末端を含むことが確認された。
【0197】
5’−末端を単離するために、Thraustochytrium sp.のONC−T18から精製したゲノムDNA、並びにオリゴヌクレオチド5’GSPa(配列番号9)(5’−CTCGGCACCCTTCTCCATCGGGTTGCCA−S’)及び5’GSPb(配列番号10)(5’−GTTGCCAAAGAGCTTGTAGCCGCCGA−S’)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、APAgene GOLD Genome Walking kit (BIO S&T, Montreal, Quebec)を用いて、ゲノムウォーキングを実施した。両方のオリゴヌクレオチドは、推定上のD5エロンガーゼの#600−16断片に基づいて設計した。PCR断片は、0.8%を低融点アガロースゲルで分離し、約500〜2000bpのバンドをゲル精製した。PCR産物を、アガロースから水で溶出し、次いでQIAquick PCR Purification kit (Qiagen, Valencia, California)により精製した。これらのDNA断片を、製造業者の説明書に従って、pT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlueコンピテントセル (Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンを配列決定した。新規Δ5エロンガーゼの推定「ATG」開始部位を含む519bpの挿入断片を含む、クローン5’D2−11(配列番号9)が得られた。この断片の推定アミノ酸配列は、既知のΔ5エロンガーゼと整列したとき、89%の同一性を示した。
【0198】
このD5エロンガーゼ遺伝子を、テンプレートとしてThraustochytriumのONC−T18のゲノムDNA、及び以下のオリゴヌクレオチドONC−T18elol(フォワード)(配列番号12)5’−GCTGATGATGGCCGGGACC−3’、ONC−T18elo1099(リバース)(配列番号13) 5’−GGTCCACTCGAATTCGTAGCG−3’を用いて、PCR増幅によりその全体を単離した。
【0199】
PCR増幅は、50μLの体積:100ngのThraustochytriumのONC−T18ゲノムDNA、25mM TAPS−HCl(pH9.3)、50mM KCl、2mM MgCl、1mM β−メルカプトエタノール、1.5μL DMSO、200μM 各デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート、0.5μM 各プライマー及び1ユニットのPhusion high-fidelity DNA polymerase (Finnzymes, Espoo, Finland)で実施した。熱サイクル条件は、以下の通りである。テンプレートを最初に98℃で30秒間変性し、続いて[98℃で10秒間、62℃で30秒間、72℃で30秒間]を30サイクル行い、最後に72℃で5分間の伸長サイクルを行なった。そのようにして得られたPCR産物を、製造業者の説明書に従って pT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlue コンピテントセル(Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンの配列を決定した。プラスミドを、UltraClean 6 Minute Mini Plasmid Prep kit (MO BIO Laboratories, Inc, Solana Beach, California)を用いて精製した。それにより得られたプラスミドを、BamHI/Notlで消化し、酵母発現ベクターpYES2(Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングして、クローンpYEloを生成し、次の発現試験のために用いた。
【0200】
Δ5エロンガーゼ完全長遺伝子挿入断片は1099bp(配列番号14)の長さであり、最初のATGから始まる、276アミノ酸をコードしている831bpのオープンリーディングフレームを含んでいた。完全長遺伝子(配列番号15)のアミノ酸配列は、Thraustochytrium sp. FJN-IO、Marchantia polymorpha、Physcomitrella patens及びMortierella alpina由来のΔ5エロンガーゼに対して相同な領域を含んでいた。
【実施例3】
【0201】
Thraustochytrium ONC-T18からのΔ4デサチュラーゼヌクレオチド配列の単離
【0202】
Δ4デサチュラーゼ遺伝子を単離するために、PCR増幅を、100ng ThraustochytriumのONC−T18ゲノムDNA、20mM Tris−HCl(pH8.4)、50mM KCl、2mM MgCl、400μM 各デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート、2μMの各プライマー及び0.1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, California)を含有する、50μlの体積中で実施した。熱サイクルを、59.5℃のアニーリング温度で実施し、PCR反応物の一部を0.8%の低融点アガロースゲルで分離し、約1100bpのバンドを、QIAquick PCR Purification kit (Qiagen, Valencia, California)で、残りのPCR反応から精製した。このDNA断片を、製造業者の説明書に従って、TOPO TA Cloning kit for Sequencing (Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをTOP10コンピテントセル(Invitrogen, Carlsbad, California)に形質転換し、クローンを配列決定した。それにより、既に同定されているΔ4デサチュラーゼに対して配列の相同性を示す1つのクローンが単離された。このクローンは、以下のように説明される。クローン#10−3(配列番号16)を配列決定し、967bpから推定したアミノ酸配列は、BLASTxサーチでの最高のスコアとして、デルタ−4脂肪酸デサチュラーゼThraustochytrium sp. ATCC21685と96%の同一性を示した。
【0203】
3’−末端を単離するために、ThraustochytriumのONC−T18から精製したゲノムDNA、並びにオリゴヌクレオチド4desat3’a(配列番号17)(5’−TTACGCTTCCAAGGACGCGGTC−S’)及び4desat3’b(配列番号18)(5’−ATGAACAACACGCGCAAGGAGG−S’)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、APAgene GOLD Genome Walking kit (BIO S&T, Montreal, Quebec)を用いて、ゲノムウォーキングを実施した。両方のオリゴヌクレオチドは、推定上のΔ4デサチュラーゼの#10−3断片に基づいて設計した。PCR断片を、0.8%の低融点アガロースゲルで分離し、約500〜2000bpのバンドをゲル精製した。PCR産物を、アガロースから水で溶出し、次いでQIAquick PCR Purification kit (Qiagen, Valencia, California)により精製した。これらのDNA断片を、製造業者の説明書に従ってpT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlueコンピテントセル (Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンを配列決定した。クローン3’D2−92(配列番号19)は、782bpの挿入断片を含んでおり、それは既知のΔ4デサチュラーゼとの配列の相同性及び「TGA」終止コドンの存在に基づいて、推定上のΔ4デサチュラーゼ遺伝子の3’−末端を含むことが確認された。
【0204】
5’−末端を単離するために、Thraustochytrium sp.のONC−T18から精製したゲノムDNA、並びにオリゴヌクレオチド4desat5’a(配列番号20)(5’−CTGGATACACGTGCCCACGAAG−S’)及び4desat5’b(配列番号21)(5’−CACATCCAGTACAACGAGCTCCAGAA−S’)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、APAgene GOLD Genome Walking kit (BIO S&T, Montreal, Quebec)を用いて、ゲノムウォーキングを実施した。両方のオリゴヌクレオチドは、推定D4デサチュラーゼの#10−3断片に基づいて設計した。PCR断片を、0.8%の低融点アガロースゲルで分離し、約500〜2000bpのバンドをゲル精製した。PCR産物を、アガロースから水で溶出し、次いでQIAquick PCR Purification kit (Qiagen, Valencia, California)により精製した。これらのDNA断片を、製造業者の説明書に従って、pT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlueコンピテントセル (Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンを配列決定した。このようにして、新規Δ4デサチュラーゼの推定上の「ATG」開始部位を含む946bp挿入断片を含む、クローン5’−217(配列番号22)が得られた。この断片の推定アミノ酸配列は、既知のΔ4デサチュラーゼと整列したとき、96%の同一性を示した。
【0205】
このΔ4デサチュラーゼ遺伝子を、テンプレートとしてThraustochytriumONC−T18ゲノムDNA、及び以下のオリゴヌクレオチドONC−T184des38OF(フォワード)(配列番号23)5’−CGATTGAGAACCGCAAGCTTT−S’、ONC−T14DES1687R(リバース)(配列番号24)5’−GCAGCACTGCTGTGCTCTGGT−3’を用いて、PCR増幅によりその全体を単離した。
【0206】
PCR増幅は、50μLの体積:300ngのThraustochytrium ONC−T18ゲノムDNA、25mM TAPS−HCl(pH9.3)、50mM KCl、2mM MgCl、1mM β−メルカプトエタノール、1.5μL DMSO、200μM 各デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート、0.5μM 各プライマー及び1ユニットのPhusion high-fidelity DNA polymerase (Finnzymes, Espoo, Finland)を用いて実施した。熱サイクル条件は、以下の通りである。テンプレートを最初に98℃で30秒間変性し、続いて[98℃で10秒間、61℃で30秒間、72℃で30秒間]を30サイクル、最後に72℃で5分間伸長サイクルを行った。それにより得られたPCR産物を、製造業者の説明書に従って pT7Blue-3 Perfectly Blunt Cloning kit (Novagen, San Diego, California)にクローニングした。組み換えプラスミドをNovaBlueコンピテントセル (Novagen, San Diego, California)に形質転換し、クローンの配列を決定した。プラスミドを、UltraClean 6 Minute Mini Plasmid Prep kit (MO BIO Laboratories, Inc, Solana Beach, California)を用いて精製した。それにより得られたプラスミドを、BamHI/NotIで消化し、酵母発現ベクターpYES2(Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングして、クローンpYDesを生成し、次の発現試験のために用いた。
【0207】
Δ4デサチュラーゼ完全長遺伝子挿入断片は1757bp(配列番号25)の長さであり、最初のATGから始まり、519アミノ酸をコードしている1509bpのオープンリーディングフレームを含んでいた。完全長遺伝子(配列番号26)のアミノ酸配列は、Thraustochytrium sp. ATCC21685、Thraustochytrium sp. FJN-IO、及びThraustochytrium aureum由来のΔ4デサチュラーゼに対して相同な領域を含んでいた。それはまた、全ての既知の膜結合デサチュラーゼに見られる3つの保存されている「ヒスチジンボックス」を含んでいた(Okuley, et al. (1994) The Plant Cell 6:147-158)。これらは、アミノ酸181〜185、217〜222、及び454〜458に存在していた。他の膜結合Δ4デサチュラーゼと同様に、ThraustochytriumのONC−T18Δ4デサチュラーゼの3番目のヒスチジンボックスモチーフ(HXXHH)は、QXXHHであることが見出された。この配列はまた、5’−末端にシトクロムb5ドメインを含んでいた。このシトクロムは、これらの酵素で電子供与体として機能すると考えられる。
【実施例4】
【0208】
酵母におけるThraustochytriumONC−T18Δ4デサチュラーゼ及びΔ5エロンガーゼ遺伝子の発現
【0209】
pYES2(Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングされた完全長Δ4デサチュラーゼから成るクローンpYDes及び、pYES2中の完全長Δ5エロンガーゼから成るクローンpYEloを、コンピテント出芽酵母INVSc1に形質転換した。酵母の形質転換を、製造業者に特定された条件に従って、S. c. EasyComp Transformation kit (Invitrogen, Carlsbad, California)を用いて実施した。形質転換体を、ウラシルを欠く培地(SC−Ura)上でウラシル栄養要求性について選択した。これらのクローンの特定のデサチュラーゼ活性を検出するために、形質転換体を、以下に列挙する500μMの特異的脂肪酸基質の存在下で増殖させた。A)ドコサペンタエン酸(22:5n−3)(ドコサヘキサエン酸への変換はΔ4デサチュラーゼ活性を示す)、B)ドコサテトラエン酸(22:4n−6)(ドコサペンタエン酸(22:5n−6)への変換はΔ4デサチュラーゼ活性を示す)、C)ジホモ−γ−リノレン酸(20:3n−6)(アラキドン酸(20:4n−6)への変換はΔ5デサチュラーゼ活性を示す)、D)エイコサペンタエン酸(20:5n−3)(ドコサペンタエン酸(22:5n−3)への変換はΔ5エロンガーゼ活性を示す)、E)アラキドン酸(20:4n−6)(ドコサテトラエン酸(22:4n−6)への変換はΔ5エロンガーゼ活性を示す)。
【0210】
負の対照株は未改変pYES2ベクターを含むINVSc1であり、これらを同時に増殖させた。培養物を激しく攪拌し(150rpm)、500μM(最終濃度)の種々の基質の存在下で20℃にて96時間増殖させた。細胞をペレット状にし、100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、細胞ペレットを凍結乾燥させた。脂質を、次いで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析(GC)のために脂肪酸メチルエステル(FAME)に誘導体化した。エステル交換及び抽出を、100mgの凍結乾燥させた細胞を用いて行い、内部標準としてC19:0を、エステル交換反応混合物(メタノール:塩酸:クロロホルム、10:1:1)に添加し、混合し、90℃で2時間加熱し、室温に冷却した。FAMEを、1mLの水及び2mLのヘキサン:クロロホルム(4:1)を添加することにより抽出し、有機及び水相を分離させた。有機相を抽出し、0.5gの無水硫酸ナトリウムで処理して、微粒子及び残りの水を除去した。有機溶媒をアルゴン流下で蒸発させた。FAMEをイソオクタンに再懸濁させ、GC−FIDにより分析した。変換率は、生成された生成物を(生成された生成物+添加した基質)の合計で除し、次いで100を乗じることにより算出した。表4は、添加した基質の変換率に基づく、単離した遺伝子の酵素活性を表す。
【0211】
【表4】

【0212】
ThraustochytriumのONC−T18由来のΔ4デサチュラーゼ遺伝子を含むpYDesクローンは、14%の22:5n−3基質を22:6n−3に、及び14%の22:4n−6基質を22:5n−6に変換した。これは、遺伝子がΔ4デサチュラーゼをコードしていることを確認する。この場合、バックグラウンド(基質の非特異的変換)は存在しなかった。
【実施例5】
【0213】
クエン酸酸化鉄によるONC−TI8Δ4デサチュラーゼ活性の操作
【0214】
pYES2(Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングされた、完全長Δ4デサチュラーゼから成る、クローンpYDesを、コンピテント出芽酵母INVSc1に形質転換した。負の対照株は未改変pYES2ベクターを含むINVSc1であり、これらを同時に増殖させた。培養物を激しく攪拌し(150RPM)、500μM(最終濃度)のDPA及び0.01%クエン酸酸化鉄の存在下で20℃にて96時間増殖させた。細胞を前記のように処理して、DPAのDHAへの変換率を決定した。クエン酸酸化鉄の存在下における変換率は38.70%であり、この場合Δ4デサチュラーゼ活性は2.75倍増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D4デサチュラーゼが、配列番号26に対して、少なくとも70%、80%、89%、90%、95%、96%、97%又はそれを超える同一性を有する、D4デサチュラーゼを含む組成物。
【請求項2】
配列番号26から離脱するいかなる変化も保存的変化である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のD4デサチュラーゼをコードしている核酸を含む組成物。
【請求項4】
ベクターを更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を含む、細胞を含む組成物。
【請求項6】
前記細胞が、真核生物、原核生物、Thraustochytrid、酵母又は大腸菌である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物を含む、非ヒト動物を含む組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記D4デサチュラーゼの非存在下における組成物よりも多くの多価不飽和脂肪酸を生成する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸がEPA又はDHAである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記デサチュラーゼが少なくとも1つのヒスチジンボックスを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記デサチュラーゼが少なくとも2つのヒスチジンボックスを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記デサチュラーゼが少なくとも3つのヒスチジンボックスを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ヒスチジンボックスが配列HXXHH(式中、Xは任意のアミノ酸である)を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ヒスチジンボックスが配列QXXHHを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記デサチュラーゼがまたシトクロムb5ドメインを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記シトクロムb5ドメインが5’−末端に存在する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記デサチュラーゼがデサチュラーゼ基質の存在下にある、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記基質が、少なくとも100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM又は1000μMの濃度を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記基質が、ドコサペンタエン酸(22:5 n−3)、ドコサテトラエン酸(22:4 n−6)、又はジホモ−γ−リノレン酸(20:3 n−6)である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記デサチュラーゼが、利用可能な基質の少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%を変換する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記デサチュラーゼが表1に示す量の基質を変換する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が単離されている、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
D5エロンガーゼが、配列番号15に対して、少なくとも70%、80%、89%、90%、95%、96%、97%又はそれを超える同一性を有する、D5エロンガーゼを含む組成物。
【請求項24】
配列番号15から離脱するいかなる変化も保存的変化である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項23又は24に記載の前記D5エロンガーゼをコードしている核酸を含む組成物。
【請求項26】
ベクターを更に含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項23〜26のいずれか一項に記載の組成物を含む、細胞を含む組成物。
【請求項28】
前記細胞が、真核生物、原核生物、Thraustochytrid、酵母又は大腸菌である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
請求項23〜28のいずれか一項に記載の組成物を含む、非ヒト動物を含む組成物。
【請求項30】
前記組成物が、D5エロンガーゼの非存在下における組成物よりも多くの多価不飽和脂肪酸を産生する、請求項27〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記脂肪酸がEPA又はDHAである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記エロンガーゼがエロンガーゼ基質の存在下にある、請求項23〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記基質が、少なくとも100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM又は1000μMの濃度を有する、請求項23〜32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記基質が、エイコサペンタエン酸(20:5 n−3)又はアラキドン酸(20:4 n−6)である、請求項23〜33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記エロンガーゼが、利用可能な基質の少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%を変換する、請求項23〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が単離されている、請求項23〜35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物を含み、請求項24〜36のいずれか一項に記載の組成物を含む組成物。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれか一項に記載の組成物のうち1つ又はそれ以上を用いることを含む、多価不飽和脂肪酸を生成する方法。
【請求項39】
前記生成される脂肪酸がEPA又はDHAである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜37のいずれか一項に記載の組成物を単離することを含む、請求項1〜37のいずれか一項に記載の組成物を生成する方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−533003(P2010−533003A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516603(P2010−516603)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004553
【国際公開番号】WO2009/010825
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(505113791)オーシャン ニュートリッション カナダ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】