説明

DAS検出器及びX線コンピュータ断層撮影装置

【課題】X線によるDASの故障を防止したうえで、X線検出器とDASとが一体化されたDAS検出器及びDAS検出器を備えるX線コンピュータ断層撮影装置の提供。
【解決手段】X線検出器は、X線を検出し、前記検出されたX線に応じた電気信号を発生する。基板60は、X線検出器に結合され、電気信号をX線検出器から引き出すための配線パターン90を有する。DAS70は、基板に結合され、電気信号を信号処理するための電子部品80を有する。各X線遮蔽板62は、X線検出器を透過したX線が電子部品80に曝されないように基板60に設けられる。配線パターン90の一部は、複数のX線遮蔽板62の間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、DAS検出器及びX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検出器は、X線を検出し、検出されたX線をアナログの電気信号に変換する。X線検出器は、X線管とともに回転フレームに回転可能に支持されている。X線検出器には、信号ケーブル等を介してDAS(データ収集回路:data acquisition system)が接続されている。DASは、C―ampチップやA/D変換チップ等の電子部品を備えている。電子部品は、X線等の放射線に長時間曝されることにより壊れてしまう。従ってDASは、架台の内部のX線に曝されない位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09―131338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、X線によるDASの故障を防止したうえで、X線検出器とDASとが一体化されたDAS検出器及びDAS検出器を備えるX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るDAS検出器は、X線を検出し、前記検出されたX線に応じた電気信号を発生するX線検出器と、前記X線検出器に結合され、前記電気信号を前記X線検出器から引き出すための配線パターンを有する基板と、前記基板に結合され、前記電気信号を信号処理するための電子部品を有するデータ収集回路と、前記X線検出器を透過したX線が前記電子部品に曝されないように前記基板に設けられる複数のX線遮蔽板と、を具備し、前記配線パターンの一部は、前記複数のX線遮蔽板の間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】図1のDAS検出器に含まれるDAS検出器モジュールの構造を模式的に示す図。
【図3】図2のX線検出器に含まれるX線検出素子の内部構造を模式的に示す分解斜視図。
【図4】図2の基板とDASとを切り離して示す斜視図。
【図5】本実施形態に係る多層構造を有する基板の一例を示す図。
【図6】本実施形態に係る多層構造を有する基板を装備するDAS検出器の一例を示す図。
【図7】本実施形態に係るX線遮蔽板の配列例を示す図。
【図8】本実施形態に係るX線遮蔽板の他の配列例を示す図。
【図9】本実施形態に係るX線遮蔽板の他の配列例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるDAS検出器とX線コンピュータ断層撮影装置を説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。図1に示すようにX線コンピュータ断層撮影装置1は、架台3とコンソール5とを備える。
【0009】
架台3は、円環又は円板状の回転フレーム11を搭載する。回転フレーム11は、X線管13とDAS検出器15とを被検体P回りに回転可能に支持している。DAS検出器15は、撮影領域を挟んでX線管13に対向する。回転フレーム11は、回転駆動部17に電気的に接続されている。回転駆動部17は、コンソール5内のスキャン制御部31による制御に従って回転フレーム11を回転軸回りに回転し、X線管13とDAS検出器15とを被検体P回りに回転する。
【0010】
なお、Z軸は、回転フレーム11の回転軸に規定される。Y軸は、X線管13のX線焦点とDAS検出器15のX線検出面の中心とを結ぶ軸に規定される。Y軸は、Z軸に直交する。X軸は、Y軸とZ軸とに直交する軸に規定される。このように、XYZ直交座標系は、X線管13の回転とともに回転する回転座標系を構成する。
【0011】
X線管13は、スリップリング機構(図示せず)等を介して高電圧発生部19に電気的に接続される。X線管13は、高電圧発生部19から高電圧の印加を受けてX線を発生する。高電圧発生部19は、スキャン制御部31による制御に従ってX線管13に高電圧を印加する。
【0012】
DAS検出器15は、後述するX線検出器50とDAS70(データ収集回路:data acquisition system)との一体構造を実現している。DAS検出器15は、スリップリング機構(図示せず)等を介してスキャン制御部31に電気的に接続されている。DAS検出器15は、X線管13から発生され被検体Pを透過したX線を検出する。そしてDAS検出器15は、検出されたX線に応じたデジタルのデータを、スキャン制御部31による制御に従って生成する。生成されたデータは、スリップリング機構(図示せず)や非接触データ伝送部(図示せず)を介してコンソール5の前処理部33に供給される。DAS検出器15の構造については後述する。
【0013】
被検体Pは、天板21に載置される。天板21は、Z軸に沿って移動可能に天板支持機構23により支持されている。典型的には、天板支持機構23は、天板21の長軸がZ軸に平行するように天板21を支持する。天板支持機構23は、天板移動部25に電気的に接続されている。天板移動部25は、スキャン制御部31による制御に従って天板支持機構23を駆動し、天板21をZ軸に沿って移動する。
【0014】
コンソール5は、スキャン制御部31、前処理部33、再構成部35、画像処理部37、表示部39、操作部41、記憶部43、及びシステム制御部45を備える。
【0015】
スキャン制御部31は、CTスキャンを実行するために、DAS検出器15、回転駆動部17、高電圧発生部19、及び天板移動部25を制御する。前処理部33は、DAS検出器15から供給されたデータに対数変換や感度補正等の前処理を施す。前処理が施されたデータは、生データと呼ばれる。再構成部35は、生データに基づいて被検体に関する画像データを再構成する。画像処理部37は、画像データに種々の画像処理を施す。表示部39は、再構成部35により発生された画像データや、画像処理部37により画像処理が施された画像データをディスプレイに表示する。操作部41は、入力機器による操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。記憶部43は、生データや画像データを記憶する。また、記憶部43は、X線CT装置の制御プログラムを記憶している。システム制御部45は、記憶部43に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0016】
次にDAS検出器15の構造について説明する。DAS検出器15は、複数のDAS検出器モジュールにより構成されている。DAS検出器モジュールは、例えば、2次元状に並べられる。
【0017】
図2は、DAS検出器モジュール150の構造を模式的に示す図である。図2に示すように、DAS検出器モジュール150は、X線管13側から順番にX線検出器50、基板60、及びDAS70が機械的に接続されてなる。
【0018】
X線検出器50は、X線管13から発生され被検体Pを透過したX線を検出し、検出されたX線の強度に応じたアナログの電流信号を生成する。X線検出器50は、1次元あるいは2次元状に配列された複数のX線検出素子を装備する。例えば、1000個のX線検出素子がZ軸を中心とした円弧に沿って配列される。このX線検出素子の配列方向はチャンネル方向と呼ばれる。Z軸方向は、スライス方向または列方向と呼ばれる。例えば、320列仕様では、1000×320個のX線検出素子が設けられる。また、上述のように、チャンネル方向及びスライス方向に沿って複数のDAS検出器モジュールが並べられる(タイリングされる)ことでDAS検出器が構成される。
【0019】
図3は、X線検出素子の内部構造を模式的に示す分解斜視図である。図3に示すように、X線検出素子は、複数のシンチレータ54を有する。シンチレータ54は、X線を受けて光を発生する。複数のシンチレータ54の表面(X線管側の面)には、散乱線を除去するための複数のコリメータ55が設けられている。複数のシンチレータ54の背面には、複数のフォトダイオード56が接続されている。フォトダイオード56は、シンチレータ54により発生された光を電流信号に変換する。フォトダイオード56としては、既存の如何なる構造のものが使用されてもよい。例えば、フォトダイオード56としては、前面照射型フォトダイオード(front-illuminated photodiode)、裏面照射型フォトダイオード(back-illuminated photodiode)等が使用可能である。
【0020】
図4は、基板60とDAS70とを切り離して示す斜視図である。基板60としては、例えば、プリント配線基板が利用される。基板60は、DAS70と一体化されている。基板60は、X線検出器50と信号をやりとりする。DAS70は、複数の電子部品80を備える。電子部品80は、基板60に電気的に接続されている。電子部品80は、DAS70側に搭載されても良いし、基板60側(例えば、基板60の背面)に搭載されても良い。電子部品80は、X線検出器50からの電気信号を信号処理する。電子部品80としては、例えば、X線検出器50からの電流信号を増幅するためのC―ampチップや、アナログをデジタルに変換するためのA/D変換チップ等、既存のDASに搭載可能な電子部品が利用可能である。これら電子部品80は、X線耐性が比較的低く、長時間X線に曝された場合故障してしまう。
【0021】
一方、基板60の表面(基板60のX線管側の面)は、基板60とX線検出器50とが電気接続されるように、X線検出器50の背面(X線検出器50のDAS側の面)に結合される。このように基板60は、X線検出器50と電子部品80とを導通するように構成される。
【0022】
基板60の局所部分には、X線遮蔽板(シールド)62が設けられている。X線遮蔽板62は、基板60の表面、背面、及び内部の何れに設けられても良い。例えば、X線遮蔽板62は、基板60の表面に取り付けられる。X線遮蔽板62は、例えば鉛やタングステン、モリブデン等の重金属により形成される。また、X線遮蔽板62は、アルミニウム等の配線の材料となる金属により形成されてもよい。X線遮蔽板62は、電子部品80がX線に曝されることを防止するために、X線管13から発生されX線検出器50を透過したX線を遮蔽するような位置に設けられる。また、基板60の表面(基板60のX線検出器50との結合面)と背面(基板60のDAS70との結合面)とを導通させるため、基板60の内部に配線パターンが形成され、結果的にX線検出器50と電子部品80とが導通する。配線パターンは、X線検出器50のモジュール毎に、X線検出器50から電子部品80へ電気信号を引き出し可能に設けられる。具体的には、配線パターンは、X線検出器50と電子部品80とが導通するように、基板60の表面と背面とに設けられる。配線パターンは、既存の金属により形成可能である。配線パターンは、X線遮蔽板62と同じ金属で形成されても、異なる金属で形成されてもよい。
【0023】
X線遮蔽板62と配線パターンとは、例えば、エッチングやフォトリソグラフィにより形成される。この場合、基板60の面にアルミニウム等の金属薄膜が被着され、金属薄膜の一部分がフォトリソグラフィにより配線パターンに加工される。配線パターンに加工されない残りの金属薄膜部分がX線遮蔽板62に使用される。基板60の表面と背面とは、基板60の保護・絶縁等のために薄膜でコーティングされる。本実施形態の場合、例えば、基板60の面にX線遮蔽板62と配線パターンとが形成され、その後、X線遮蔽板62と配線パターンとを覆うように基板60の面が薄膜でコーティングされる。このようにして、X線遮蔽板62と配線パターンとは、基板60の内部に設けられることとなる。また、基板60には表面と背面とを貫く貫通孔が形成される。貫通孔には、基板60の表面に設けられた配線パターンと背面に設けられた配線パターンとを導通するための配線パターンが設けられる。
【0024】
このように、配線パターンは、基板60内のX線遮蔽板62が設けられていない部分に限定して形成される。逆に言えば、X線遮蔽板62が基板60全体をカバーしてしまうと、基板60内に配線パターンを形成することができない。これら事情により、X線遮蔽板62は、基板60の局所部位に設けられている。
【0025】
X線遮蔽板62の設置位置や大きさは、電子部品80がDAS70上に占める範囲に応じて設計される。ここで、DAS70の表面上の範囲であって、X線遮蔽板62がX線を遮蔽することによりX線に曝されなくなる範囲を保護範囲73と呼ぶことにする。この場合、X線遮蔽板62の設置位置や大きさは、保護範囲73が電子部品80の設置範囲を包含するように設計される。なおDAS検出器15の軽量化の観点から、X線遮蔽板62は小さい方が良い。従って保護範囲73が電子部品80の設置範囲に略一致するように、X線遮蔽板62の設置位置と大きさとが設計されるとよい。
【0026】
なお基板60に設けられるX線遮蔽板62は、電子部品80がX線に曝されないのであれば、一枚であっても複数枚であってもよい。また、上述においてX線遮蔽板62は、基板60の内部に設けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、X線遮蔽板62は、基板60の外面に設けられていても良い。すなわち、X線遮蔽板62は、基板60を保護・絶縁するための薄膜の外側に設けられても良い。
【0027】
このような構造により、DAS70は、スキャン制御部31による制御に従ってX線検出器50からチャンネルごとに電流信号を読み出す。DAS70は、読み出された電流信号を増幅したり、増幅された電流信号をデジタル変換したりすることによって、デジタル信号である生データを生成する。
【0028】
上記構成において基板60は、単層であるした。しかしながら、本実施形態に係る基板60は、単層のみに限定されず、多層構造を有していても良い。以下、多層構造を有する基板60を装備するDAS検出器15について説明する。
【0029】
図5は、本実施形態に係る多層構造を有する基板60の構造の一例を示す図である。なお、図5の基板60は、YZ断面を示している。図5に示すように、基板60は、5枚のサブ基板(プリント配線基板)60―nがY軸に沿って積み重ねられた5層構造を有している。ここで5層のサブ基板60―nの各々をX線検出器側から順番に1層目のサブ基板60―1、2層目のサブ基板60―2、3層目のサブ基板60―3、4層目のサブ基板60―4、及び5層目のサブ基板60―5と呼ぶことにする。これら5枚のサブ基板60は、X線検出器50とDAS70とを導通するための基板ユニットを構成する。各サブ基板60の表面、内部、及び背面には、1層目のサブ基板60―1の表面と5層目のサブ基板60―5の背面とが複数のサブ基板60―nを介して電気接続されるように配線パターンが形成されている。
【0030】
図5に示すように、X線検出器50を透過したX線がDAS70へ透過しないように、複数のサブ基板60―nに複数のX線遮蔽板62が千鳥(オフセット)で設けられている。Y軸は、各サブ基板60―nの中心軸方向に一致する。換言すれば、複数のX線遮蔽板62により規定される保護範囲がDAS上の電子部品の設置範囲を包含するように、複数のX線遮蔽板62は複数のサブ基板60―n内に設けられる。各サブ基板60―nの少なくとも一部分に配線パターンが形成されなければならないため、各X線遮蔽板62のXZ面に関する面積は、サブ基板60―nのXZ面に関する面積より小面積に設計されるとよい。小面積の複数のX線遮蔽板62は、千鳥配列されることにより、X線検出器50とDAS70との導通を可能にしたうえで、電子部品80をX線から保護することができる。なお、X線遮蔽を確実に行うため、各X線遮蔽板62により規定される各保護範囲の一部分がX線の入射方向から見てオーバラップするように、複数のX線遮蔽板62が配置されるとよい。
【0031】
典型的には、最下層(図5の場合5層)のサブ基板60―nの背面は、DAS70との電気接続に利用される。従って、X線遮蔽板62は、最下層のサブ基板60―nの背面には設けられないほうがよい。また、基板60は5層構造を有するとしたが本実施形態はこれに限定されない。例えば、2枚、3枚、4枚、あるいは6枚以上のサブ基板が積み重ねられても良い。すなわち、基板60は、2層以上の複数のサブ基板からなる多層配線基板により構成されても良い。そして、複数のサブ基板60―nには、複数のX線遮蔽板62が、例えば、基板60の中心軸に沿って千鳥で設けられている。
【0032】
図6は、多層構造を有する基板60を装備するDAS検出器15の構造の一例を模式的に示す図である。図6は、DAS検出器15のYZ断面を示している。図6に示すように、複数のフィトダイオード56の背面には、複数の端子58(BGA(ball grid array))を介して基板60が結合されている。
【0033】
図6の基板60は、7枚のサブ基板60―nから構成される7層構造を有している。ここで7層のサブ基板60―nの各々をX線検出器側から順番に1層目のサブ基板60−1、2層目のサブ基板60−2、3層目のサブ基板60−3、4層目のサブ基板60−4、5層目のサブ基板60−5、6層目のサブ基板60−6、7層目のサブ基板60−7と呼ぶことにする。これら7枚のサブ基板60―nは、X線検出器50とDAS70とを導通するための基板ユニットを構成する。最下層のサブ基板60―7の背面には、電子部品80が電気的に接続されている。
【0034】
複数のサブ基板60―nの局所部分には、複数のX線遮蔽板62が設けられている。X線遮蔽板62は、サブ基板60―nの表面、背面、及び内部の何れに設けられても良い。例えば、X線遮蔽板62は、サブ基板60―n基板60の表面に取り付けられる。X線遮蔽板62は、電子部品80がX線に曝されることを防止するために設けられる。この目的のため、複数のX線遮蔽板62は、X線管13から発生されX線検出器50を透過したX線を遮蔽するように、複数のサブ基板60―nの適切な位置に設けられる。
【0035】
配線パターン90は、複数のX線遮蔽板62を迂回するように複数のサブ基板60―nに設けられる。それに加え、配線パターン90は、1層目のサブ基板60―1の表面と7層目のサブ基板60―7の背面とが電気接続されるように各サブ基板60―nに設けられる。配線パターン90の一部は、X線遮蔽板62に物理的に接触しないように、複数のX線遮蔽板62の間に設けられる。これによりX線遮蔽板62と配線パターン90との導通を避けることができる。なお、配線パターン90の一部は、単一のサブ基板60―n内の二つのX線遮蔽板62の間に設けられたり、異なるサブ基板(層)60―nに亘る二つのX線遮蔽板62の間に設けられたりする。配線パターン90の一部とは、最上層のサブ基板60―1の表面と最下層のサブ基板60―7の背面とを結ぶ全配線経路のうちの一部分という意味である。
【0036】
より詳細には、各サブ基板60―nの表面と背面とには、配線パターン90が設けられる。また、各サブ基板60―nの表面と背面とを導通させるため、各サブ基板60―nの内部に配線パターンが形成される。結果的にX線検出器50と電子部品80とが導通する。配線パターン90は、X線検出器50のモジュール毎に、X線検出器50から電子部品80へ電気信号を引き出し可能に設けられる。配線パターン90は、既存の金属により形成可能である。配線パターン90は、X線遮蔽板62と同じ金属で形成されても、異なる金属で形成されてもよい。
【0037】
X線遮蔽板62と配線パターン90とは、例えば、フォトリソグラフィにより形成される。この場合、サブ基板60―nの面にアルミニウム等の金属薄膜が被着され、金属薄膜の一部分がフォトリソグラフィにより配線パターン90に加工される。配線パターン90に加工されない残りの金属薄膜部分がX線遮蔽板62に使用される。各サブ基板60―nの表面と背面とは、サブ基板60―nの保護・絶縁等のために薄膜でコーティングされる。本実施形態の場合、例えば、一部のサブ基板60―nの面にX線遮蔽板62と配線パターン90とが排他的に形成され、その後、X線遮蔽板62と配線パターンとの両方を覆うようにサブ基板60―nの面が薄膜でコーティングされる。このようにして、X線遮蔽板62と配線パターン90とは、サブ基板60―nの内部に設けられることとなる。また、各サブ基板60―nには表面と背面とを貫く貫通孔が形成される。貫通孔には、サブ基板60―nの表面に設けられた配線パターン90と背面に設けられた配線パターン90とを導通するための配線パターン90が設けられる。
【0038】
図6に示すように、複数のX線遮蔽板62は、X線検出器50を透過したX線がDAS70へ透過しないように、複数のサブ基板60―n内に千鳥(オフセット)で設けられている。例えば、X線遮蔽板62は、X線検出器50と電子部品80との導通の容易さのため、1サブ基板60―nおきに設けられる。例えば、2層目のサブ基板60―2、4層目のサブ基板60―4、及び6層目のサブ基板60―6の各々にX線遮蔽板62が設けられる。1層目のサブ基板60―1、3層目のサブ基板60―3、5層目のサブ基板60―5、及び7層目のサブ基板60―7の各々にはX線遮蔽板62が設けられない。複数のX線遮蔽板62は、電子部品80がX線に曝されないように基板60内において千鳥配列されている。また、X線遮蔽を確実に行うため、異なるサブ基板60―nに配置されたX線遮蔽板62の一部分がX線の入射方向から見てオーバラップするように、複数のX線遮蔽板62が設けられるとよい。
【0039】
次に、X線遮蔽板62の配列のバリエーションについて説明する。図7は、X線遮蔽板62の配列の一例を示す図である。図7の基板60は、図5と同様に5層構造を有しており、5枚のサブ基板60―nを有している。図7の配列の場合、X線遮蔽板62は、サブ基板60―nの短軸方向に関して互い違いに配列される。図8は、X線遮蔽板62の他の配列例を示す図である。図8の基板60は、図5と同様に5層構造を有しており、5枚のサブ基板60―nを有している。図8の配列の場合、X線遮蔽板62は、サブ基板60―nの長軸方向に関して互い違いに配列される。図9は、X線遮蔽板62の配列の一例を示す図である。図9の基板60は、図5と同様に9層構造を有しており、9枚のサブ基板60―nを有している。図9の配列の場合、X線遮蔽板62は、各サブ基板60―nの異なる位置に配列される。
【0040】
図7、図8、及び図9の何れの配列においても、複数のX線遮蔽板62により生じる保護範囲が電子部品80の設置範囲を覆い、且つ、最上層のサブ基板の表面と最下層のサブ基板の背面とが複数のサブ基板60―nを介して電気接続されるように、複数のX線遮蔽板62と配列パターン90とが基板60に設けられる。換言すれば、配列パターン90が複数のX線遮蔽板62の間に設けられることで、また、X線遮蔽を確実に行うため、異なるサブ基板60―nに配置された複数のX線遮蔽板62の一部分がX線の入射方向から見てオーバラップするように、複数のX線遮蔽板62が設けられるとよい。
【0041】
広範囲に分布する電子部品80をX線から確実に保護するために、基板60の広範囲にX線遮蔽板62が設けられなくてはならない。従って、単層構造の場合、基板60の大部分がX線遮蔽板62で占められ、配線パターン90を形成するための区域を確保し難い。しかしながら、多層構造の場合、単層構造に比して小面積を有するX線遮蔽板62を複数のサブ基板60―nに選択的に設ければよい。そのため、多層構造の場合、単層構造に比して各サブ基板60―nにおいて配線パターン90を形成するための区域を確保し易い。また、多層構造の場合、X線遮蔽板62の一部分をオーバラップさせることで、単層構造に比して、電子部品80へのX線の伝播経路において多くのX線遮蔽物を配置することができる。そのため、多層構造の場合、単層構造に比して、電子部品80へ向かうX線のエネルギーを減弱することができる。
【0042】
上述の通り、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、X線検出器50とDAS70との間に、複数のX線遮蔽板62が設けられた基板60を有している。X線検出器50、基板60、及びDAS70は、Y軸に沿って順番に接続されている。複数のX線遮蔽板62は、X線管13から発生されたX線がDAS70上の電子部品80に照射されないように配置される。基板60には、X線検出器50から電気信号を引き出すための配線パターン90が設けられている。配線パターン90は、複数のX線遮蔽板62の間に設けられている。
【0043】
この構成により、X線コンピュータ断層撮影装置1は、DAS70をX線から保護したうえで、X線検出器50とDAS70とが一体化されたDAS検出器15を実現している。DAS検出器15の実現により、X線検出器50とDAS70とが別体であった従来に比して、コンパクトな架台3を製造することが可能となる。また、X線検出器50とDAS70とが信号ケーブルを介して接続されている従来構造の場合、電流信号が信号ケーブルを通る際、ノイズの発生が避けられない。しかしながら、本実施形態に係るDAS検出器15は信号ケーブルを用いないので、X線検出器50からDAS70までの経路におけるノイズの発生を従来構造に比して低減することができる。また、本実施形態は信号ケーブルが不要なので、この信号ケーブル分のコストを減少することができる。
【0044】
また上述のようにDAS検出器15は複数のDAS検出器モジュール150により構成されており、DAS検出器15の機能及び構造はモジュール化されている。DAS検出器モジュール150は、スライス方向やチャンネル方向に並べる(タイリングする)ことができる。タイリングは、X線検出器50とDAS70とがスライス方向やチャンネル方向に沿って接続される場合、構造的に実現することができない。本実施形態においては、X線検出器50とDAS70とがY軸に沿って接続されるので、DAS検出器モジュール150のタイリングが可能であり、X線検出範囲のスライス方向やチャンネル方向に関する拡張が容易となる。また、DAS検出器15が複数のDAS検出器モジュール150に細分化されていることにより、1つのDAS検出器モジュール150が故障した場合であっても、DAS検出器15全体を交換する必要がなく、故障したDAS検出器モジュール150のみを交換すればよい。従って本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、より詳細には、DAS検出器15は、修理が容易なうえ経済的である。
【0045】
かくして本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1とDAS検出器15とは、X線によるDAS70の故障を防止したうえで、X線検出器50とDAS70とを一体化することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1…X線コンピュータ断層撮影装置、3…架台、5…コンソール、11…回転フレーム、13…X線管、15…DAS検出器、17…回転駆動部、19…高電圧発生部、21…天板、23…天板支持機構、25…天板移動部、31…スキャン制御部、33…前処理部、35…再構成部、37…画像処理部、39…表示部、41…操作部、43…記憶部、45…システム制御部、60…基板、62…X線遮蔽板、70…データ収集回路(DAS)、80…電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を検出し、前記検出されたX線に応じた電気信号を発生するX線検出器と、
前記X線検出器に結合され、前記電気信号を前記X線検出器から引き出すための配線パターンを有する基板と、
前記基板に結合され、前記電気信号を信号処理するための電子部品を有するデータ収集回路と、
前記X線検出器を透過したX線が前記電子部品に曝されないように前記基板に設けられる複数のX線遮蔽板と、
を具備し、
前記配線パターンの一部は、前記複数のX線遮蔽板の間に配置される、
DAS検出器。
【請求項2】
前記複数のX線遮蔽板は、前記電子部品を覆うように前記電子部品と前記X線検出器との間に配置される、請求項1記載のDAS検出器。
【請求項3】
前記基板は、複数のサブ基板により構成され、
前記複数のX線遮蔽板は、前記複数のサブ基板に設けられる、
請求項1記載のDAS検出器。
【請求項4】
前記複数のX線遮蔽板は、千鳥で設けられている、請求項3記載のDAS検出器。
【請求項5】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出し、前記検出されたX線に応じた生データを生成するDAS検出器と、
前記X線管と前記DAS検出器とを回転可能に支持する支持機構と、を具備し、
前記DAS検出器は、
前記X線を検出し、前記検出されたX線に応じた電気信号を発生するX線検出器と、
前記X線検出器に結合され、前記電気信号を前記X線検出器から引き出すための配線パターンを有する基板と、
前記基板に結合され、前記電気信号を信号処理するための電子部品を有するデータ収集回路と、
前記X線検出器を透過したX線が前記電子部品に曝されないように前記基板に設けられる複数のX線遮蔽板と、
を有し、
前記配線パターンの一部は、前記複数のX線遮蔽板の間に設けられる、
X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記複数のX線遮蔽板は、前記電子部品を覆うように前記電子部品と前記X線検出器との間に配置される、請求項5記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記基板は、複数のサブ基板により構成され、
前記複数のX線遮蔽板は、前記複数のサブ基板に設けられる、
請求項5記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記複数のX線遮蔽板は、千鳥で設けられている、請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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