説明

DC−DCコンバータ

【課題】本発明は、電流検出することなく整流器の短絡状態を確実に検出して、DC−DCコンバータにおけるスイッチ素子を保護とすることを目的とする。
【解決手段】本発明のDC−DCコンバータは、保護回路が、整流器とスイッチ素子との接続点電位を検出し、駆動信号がスイッチ素子をオンさせる状態において、接続点電位が所定電位以上であるとき、スイッチ素子を確実にオフさせるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に直流電圧を供給するDC−DCコンバータに関し、特にスイッチング方式により昇圧可能なDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スイッチング方式のDC−DCコンバータにおける昇圧回路は、高効率な電力変換特性から、電池を直流電源とした多くの電子機器の昇圧回路として用いられている。図5は特許文献1に開示された従来の昇圧回路の構成を示す回路図である。一般に昇圧回路は、図5に示すように、インダクタ202の一端が直流電源201に接続され、インダクタ202の他端には一端が接地された主スイッチ203とダイオード204(アノード)が接続されている。ダイオード204の他端(カソード)には出力コンデンサ205が接続され出力電圧Voが負荷206へ供給されるよう構成されている。
【0003】
出力電圧Voは、誤差増幅器207に入力されて基準電圧Vrefと比較され、制御回路208にフィードバックされている。制御回路208は、出力電圧Voが目標値に安定化するように、主スイッチ203をオンオフ動作させる。この主スイッチ203のオンオフ動作によりインダクタ202におけるエネルギーの蓄積と放出が繰り返され、直流電源201の入力電圧Viより高い出力電圧Voが生成される。このように構成された従来の昇圧回路において、ダイオード204が故障し短絡状態となったとき、出力コンデンサ205に充電された電荷が短絡状態のダイオード204を介して主スイッチ203に逆流して放電される。その放電の際、主スイッチ203までも破損させてしまう危険性がある。
【0004】
上記のようなダイオード204の短絡時における主スイッチ203の保護を目的として、図5に示した昇圧回路には保護回路が設けられている。図5において、230は主スイッチ203に流れる電流を検出する電流検出器、231は主スイッチ203に流れる電流が所定のレベルに達したか否かを判定する比較器、240はダイオード204に流れる電流を検出する電流検出器、241はダイオード204の逆方向に流れる電流が所定のレベルに達したか否かを判定する比較器、242は比較器231及び比較器241の出力の論理和を制御回路208に出力するOR回路である。
【0005】
ダイオード204が短絡した場合、主スイッチ203がターンオンすると、ダイオード204の逆方向に流れる電流が急増するので、比較器241の出力はHレベルとなる。これにより、OR回路242はHレベルの信号を制御回路208へ出力する。OR回路242からのHレベルの信号が入力された制御回路208は、主スイッチ203をオフ状態とし、主スイッチ203を過大電流から保護する。
通常時において、理想的にはダイオードには逆方向の電流は流れない構成であるので、上記のように構成された保護回路208においては、電流検出器230及び比較器231により検出される主スイッチ203の最大ターンオフ電流のレベルに比べて、電流検出器240及び比較器241が検出する逆方向電流の検出レベルを小さく設定することができる。このため、逆方向電流を高精度に検出でき、主スイッチ203の保護を確実に行うことが可能となる。
【特許文献1】特開昭61―92165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように構成された従来のDC−DCコンバータにおける昇圧回路においては、主スイッチ203に流れる電流を検出し、且つダイオード204に流れる電流も検出する構成である。また、応答性を上げるためにはダイオード204の代わりに同期整流回路を用いることが好ましいが、同期整流回路では通常動作時においても逆方向の電流を許容する場合があり、その場合には逆方向電流の検出レベルを大きく設定しなくてはならず、前述のような保護回路を適用することが困難であった。
【0007】
また、近年の携帯機器の小型化に伴い、DC−DCコンバータにおける昇圧回路においても、主スイッチなどのスイッチ素子やダイオードなどの整流器もワンチップの半導体集積回路内に実装されることが多くなっている。このような半導体集積回路では、隣り合う端子間の短絡試験において構成部品の破損等の事故が発生しないことが望ましい。即ち、短絡試験において整流器を短絡させて検査する場合があり、このような短絡試験において他の部品を故障させてしまうことは絶対避けなければならない。このように整流器の短絡状態の発生は整流器自体の故障に限らず他の要因も考えられるため、そのような短絡要因が取り除かれた後は、自動的に通常動作に復帰することが望まれる。
本発明は、電流検出することなく整流器の短絡状態を確実に検出して、DC−DCコンバータにおける構成部品の保護を可能とするDC−DCコンバータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の観点のDC−DCコンバータは、
直列接続された整流器とスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオン期間にエネルギーを蓄え、前記スイッチ素子のオフ期間に前記整流器を介してエネルギーを放出する蓄積素子と、
前記整流器の出力を平滑する容量性素子と、
前記スイッチ素子をオンオフ制御するための駆動信号を生成する制御回路と、
前記整流器と前記スイッチ素子との接続点電位を検出し、前記駆動信号が前記スイッチ素子をオンさせる状態において、前記接続点電位が所定電位以上であるとき、前記スイッチ素子をオフさせるよう構成された保護回路と、を具備する。このように構成された本発明のDC−DCコンバータは、電流検出することなく整流器の短絡状態を確実に検出して、DC−DCコンバータにおける構成部品であるスイッチ素子を保護することができる。
【0009】
本発明に係る第2の観点のDC−DCコンバータは、前記第1の観点における前記保護回路が、前記所定電位を生成する電圧源回路と、前記接続点電位を前記所定電位と比較する比較器と、前記駆動信号が前記スイッチ素子をオン状態とするときであり、且つ前記接続点電位が所定電位以上であることを前記比較器の出力が示す時に所定信号を前記制御回路に出力する論理回路を備え、
前記制御回路は、前記論理回路からの前記所定信号が入力されたとき、前記駆動信号が前記スイッチ素子を所定期間オフさせるよう構成されている。
【0010】
本発明に係る第3の観点のDC−DCコンバータは、前記第2の観点における前記保護回路が、前記論理回路に入力される前記駆動信号を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延回路を具備する。
【0011】
本発明に係る第4の観点のDC−DCコンバータは、前記第2の観点または第3の観点における前記保護回路が、前記スイッチ素子のスイッチング毎に前記論理回路が前記所定信号を出力する期間が所定時間継続すると、前記駆動信号により前記スイッチ素子をオフ状態に固定するよう構成されている。
【0012】
本発明に係る第5の観点のDC−DCコンバータは、前記第1の観点から第4の観点におけるいずれかの観点において、前記整流器と前記スイッチ素子と前記蓄積素子と前記容量性素子と前記制御回路と前記保護回路とを有して昇圧回路が構成されている。
【0013】
本発明に係る第6の観点のDC−DCコンバータは、前記第1の観点から第4の観点におけるいずれかの観点において、前記整流器と前記スイッチ素子と前記蓄積素子と前記容量性素子と前記制御回路と前記保護回路とを有して昇降圧回路が構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るDC−DCコンバータによれば、電流検出することなく、整流器の短絡を確実に検出して、構成部品であるスイッチ素子を過大電流から確実に保護することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るDC−DCコンバータの好適な実施形態として昇圧回路を添付の図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は本発明のDC−DCコンバータに係る第1の実施形態の昇圧回路の構成を示す回路図である。図1において、1はバッテリーなどの直流電圧を出力する直流電源であり、2は蓄積素子としてのインダクタである。第1の実施形態においては直流電源1の直流電圧Viがインダクタ2に供給されている。インダクタ2の一端は、直流電源1に接続され、他端はトランジスタ等で構成された主スイッチ3に接続される。主スイッチ3の他端は接地されている。主スイッチ3とインダクタ2の接続点には整流器であるダイオード4のアノードが接続される。ダイオード4のカソードには、一端が接地された容量性素子である出力コンデンサ5の他端が接続され、出力コンデンサ5の両端が出力電圧Voとなり、負荷6へ出力電圧Voを供給する。
【0017】
負荷6へ供給される出力電圧Voは、誤差増幅器7を介して制御回路8にフィードバックされる。制御回路8は、出力電圧Voが目標値(目標電圧:Vref)に安定化するように、主スイッチ3をオンオフ制御する駆動信号Vgを出力する。駆動信号VgがHレベルの時、主スイッチ3はオン状態となるものとする。
【0018】
制御回路8において、鋸歯波発生回路80は、所定の周波数で増減する鋸歯状波信号Vtを比較器81に出力する。比較器81は、誤差増幅器7の出力Veと鋸歯状波信号Vtを比較してパルス信号Vpをインバータ82とAND回路84に出力する。RSラッチ83は、インバータ82が出力するパルス信号Vpの反転信号によってセットされる。AND回路84は、パルス信号VpとRSラッチ83の出力との論理積を駆動信号Vgとして出力する。RSラッチ83は後述する保護回路9の出力によってリセットされる。
【0019】
保護回路9は、所定の電圧Vxを出力する電圧源回路90と、主スイッチ3とインダクタ2との接続点電位と電圧Vxを比較する比較器91と、比較器91の出力と駆動信号Vgが入力されるAND回路92とを備えている。比較器91は、非反転入力端子に主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位が印加され、反転入力端子に電圧Vxが印加される。AND回路92の出力は制御回路8のRSラッチ83のリセット端子へ入力される。
【0020】
以上のように構成された本発明に係る第1の実施形態の昇圧回路において、まず通常時の動作について説明する。
図1において、主スイッチ3がオン状態の時、直流電源1からインダクタ2と主スイッチ3を介して励磁電流が流れ、インダクタ2にエネルギーが蓄えられる。主スイッチ3がオフ状態になると、直流電源1からインダクタ2とダイオード4を介して出力コンデンサ5を充電する電流が流れ、インダクタ2に蓄えられたエネルギーは放出される。このように主スイッチ3のオンオフ動作の繰り返し、即ちスイッチング動作によって、出力コンデンサ5から負荷6へ直流の出力電圧Voが供給される。主スイッチ3のオン時間が長いほどインダクタ2に蓄えられるエネルギーが増加し、出力電圧Voは高くなる。出力電圧Voは、主スイッチ3の1スイッチング周期におけるオン時間の割合(以後、デューティ比と称する。)Dを用いて、次式(1)のように表される。
【0021】
Vo=Vi/(1−D) (1)
【0022】
次に、出力電圧Voを目標値(目標電圧:Vref)に安定化させるために、このデューティ比Dが制御回路8によって調整される動作について説明する。
誤差増幅器7は出力電圧Voを目標電圧Vrefと比較し、その誤差を増幅した誤差信号Veを出力する。誤差増幅器7では出力電圧Voが目標電圧Vrefより高くなろうとすると誤差信号Veを低下させ、出力電圧Voが目標値Vrefより低くなろうとすると誤差信号Veを上昇させる。
【0023】
制御回路8において、比較器81は誤差信号Veと鋸歯状波信号Vtを比較してパルス信号Vpを出力する。このパルス信号Vpは、誤差信号Veが上昇するとパルス幅が広がり、誤差信号Veが低下するとパルス幅が狭くなる。後述するように、通常動作時においては保護回路9の出力はLレベルであるので、RSラッチ83はリセットされることなくHレベルを出力している。このため、AND回路84はパルス信号Vpを駆動信号Vgとして出力する。出力電圧Voが目標電圧Vrefより高くなろうとすると、誤差信号Veは低下し、パルス信号Vp、即ち駆動信号Vgのパルス幅が狭くなるので、デューティ比Dが小さくなり、出力電圧Voは低下する。逆に、出力電圧Voが目標電圧Vrefより低くなろうとすると、誤差信号Veは上昇し、パルス信号Vp、即ち駆動信号Vgのパルス幅が広くなるので、デューティ比Dが大きくなり、出力電圧Voは上昇する。このような動作の結果、出力電圧Voは目標値Vrefに収斂して等しくなる。
【0024】
次に、ダイオード4の両端が短絡した場合の動作について、制御回路8と保護回路9を中心に説明する。
主スイッチ3がオフ状態の場合は通常時の動作と同様であって、インダクタ2とダイオード4を介して電流が出力コンデンサ5を充電しながら負荷6へ出力電圧Voを供給する。やがて制御回路8からの駆動信号VgがHレベルとなって、主スイッチ3がオンしようとするが、ダイオード4の両端が短絡状態であると、出力コンデンサ5に充電された電荷が主スイッチ3で短絡放電されることになる。この時、主スイッチ3の両端には主スイッチ3の導通抵抗と放電電流による電圧降下が発生する。このため主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位は電圧Vxまで低下せず、比較器91の出力はHレベルとなる。比較器91の出力と駆動信号VgがともにHレベルであるので、AND回路92の出力はHレベルになる。このため制御回路8では、RSラッチ83がリセットされてLレベルの信号をAND回路84に出力する。Lレベルの信号が入力されたAND回路84は、Lレベルの駆動信号Vgを主スイッチ3に出力して、主スイッチ3をオフ状態とする。
【0025】
その後、通常動作時のオン時間終了のタイミングで比較器81の出力がLレベルとなり、RSラッチ83はセットされてHレベルを出力する。比較器81の出力がLレベルであるのでAND回路84の出力、即ち駆動信号VgはLレベルのままである。やがて次のスイッチング周期に入り、比較器81の出力がHレベルになると、駆動信号VgはHレベルとなって主スイッチ3をターンオンする。
【0026】
しかし、その時点でダイオード4の短絡原因が除去されていなければ、主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位は電圧Vxまで低下せず、AND回路92の出力はHレベルになっており、制御回路8は駆動信号VgをLレベルにする。この結果、主スイッチ3はオフ状態のままとなり、過電流が流れない状態となる。以上の動作を繰り返すことによって、主スイッチ3は過大電流から確実に保護される。そして、ダイオード4の短絡原因が除去されれば、主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位は電圧Vxまで低下して、保護回路9は通常動作を行い、Lレベルの信号を制御回路8に出力する。
なお、上述した第1の実施形態では、蓄積素子としてインダクタを用いた昇圧回路の事例を挙げて説明したが、蓄積素子として(フライング)コンデンサを用いた昇圧回路(一般名称はチャージポンプ回路)においても適用が可能である。また、第1の実施形態の昇圧回路においては、整流器としてダイオードを用いた場合について説明したが、同期整流器を用いても保護回路9の構成を適用することが可能である。
【0027】
以上のように、本発明に係る第1の実施形態のDC−DCコンバータによれば、電流検出することなく、同期整流器を含む整流器の短絡を確実に検出して、構成部品である主スイッチを過大電流から確実に保護することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図2は本発明のDC−DCコンバータに係る第2の実施形態の昇圧回路の構成を示す回路図である。図2に示す第2の実施形態においては、図1に示した第1の実施形態の昇圧回路と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付与し、その説明は第1の実施形態における説明を適用する。第2の実施形態の昇圧回路において、図1に示した第1の実施形態の昇圧回路の構成と異なる点は、保護回路9Aの構成である。第2の実施形態における保護回路9Aにおいては、駆動信号Vgが遅延回路93を介してAND回路92に入力されるよう構成されている。
【0029】
図2に示すように、第2の実施形態における保護回路9Aは、所定の電圧Vxを出力する電圧源回路90と、主スイッチ3とインダクタ2との接続点電位と電圧Vxを比較する比較器91と、駆動信号Vgが入力されて所定時間遅延する遅延回路93と、比較器91と遅延回路93の各出力が入力されるAND回路92とを備えている。比較器91においては、非反転入力端子に主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位が印加され、反転入力端子に電圧Vxが印加される。AND回路92の出力は制御回路8のRSラッチ(図1における符号83)のリセット端子へ入力される。
【0030】
前述の第1の実施形態の昇圧回路の構成では、通常動作において、駆動信号VgがHレベルとなって主スイッチ3がターンオンする際、ターンオン速度は有限であるため、主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位が十分に低下するまでに微少ではあってもある程度の時間が経過する。また、主スイッチ3のターンオンの際には、主スイッチ3の両端に等価的に存在する寄生容量の電荷が短絡放電されるための電圧降下も発生する。このため、ターンオン後の微少期間においては、主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位が電圧Vx以上となってしまい、比較器91やAND回路92の応答速度が速ければ、通常動作においても保護回路9が動作する可能性がある。
【0031】
第2の実施形態の昇圧回路においては、ダイオード4の両端が短絡された場合の保護動作は、第1の実施形態の昇圧回路における保護動作と同じであるが、制御回路8の出力する駆動信号Vgが遅延回路93を介してAND回路92に入力されるよう構成されているため、主スイッチ3がターンオンしてから遅延回路93において設定されている遅延時間だけ保護回路9AのAND回路92に駆動信号Vgが入力されるタイミングが遅れるよう構成されている。従って、第2の実施形態の昇圧回路においては、前述のような通常動作時における保護回路の誤動作を回避できる構成となっている。遅延回路93の遅延時間は通常動作時のターンオン時間よりわずかに長くなるよう設定すればよい。
【0032】
以上のように、本発明に係る第2の実施形態のDC−DCコンバータによれば、電流検出することなく、同期整流器を含む整流器の短絡を確実に検出して、構成部品である主スイッチを過大電流から保護することができるとともに、保護回路における通常動作時の誤動作を防止して、信頼性の高いDC−DCコンバータを構築することができる。
【0033】
(第3の実施形態)
図3は本発明に係る第3の実施形態の昇圧回路の構成を示す回路図である。図3に示す第3の実施形態においては、図1及び図2に示した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る昇圧回路と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付与し、その説明は第1の実施形態及び第2の実施形態の説明を適用する。第3の実施形態の昇圧回路において、図1に示した第1の実施形態の昇圧回路の構成と異なる点は、制御回路8Aと保護回路9Bの構成である。第3の実施形態における制御回路8Aは、図1に示したAND回路84における入力が3端子となっており、保護回路9Bから直接入力されるよう構成されている。なお、第3の実施形態における保護回路9Bには、第2の実施形態で説明した遅延回路93が設けられており、通常動作時における保護回路9Bの誤動作を防止する構成を有している。
【0034】
図3に示すように、第3の実施形態における保護回路9Bは、所定の電圧Vxを出力する電圧源回路90と、主スイッチ3とインダクタ2との接続点電位と電圧Vxを比較する比較器91と、駆動信号Vgを所定時間遅延する遅延回路93と、比較器91と遅延回路93の各出力が入力されるAND回路92とを備えている。比較器91は、非反転入力端子に主スイッチ3とインダクタ2の接続点電位が印加され、反転入力端子に電圧Vxが印加される。AND回路92の出力は制御回路8のRSラッチ(図1における符号83)のリセット端子へ入力されるとともに、ダイオード94と抵抗95を介して接続されたコンデンサ96を充電する。コンデンサ96は抵抗97と並列に接続されて並列回路が構成されている。コンデンサ96の電位は、比較器99において電圧源回路98の所定の電圧Vyと比較され、その比較結果である比較器99の出力によりトリガ素子100をオンオフ制御する。トリガ素子100と直流電源1との間は抵抗101を介して接続されており、入力電圧Viからトリガ素子100に保持電流を流すよう構成されている。また、トリガ素子100と抵抗101の接続点は制御回路8のAND回路84の入力端子に接続されている。
【0035】
前述の第1の実施形態及び第2の実施形態の昇圧回路では、ダイオード4が短絡状態となるのは外部要因であって、この短絡要因が取り除かれれば通常動作に自動復帰する構成としていた。
第3の実施形態の昇圧回路においては、ダイオード4の両端が短絡された場合、前述の第1の実施形態及び第2の実施形態の昇圧回路と保護動作は同様であるが、主スイッチ3が僅少オン時間でのスイッチング動作によりダイオード4の短絡状態が検知され、主スイッチ3に対する過大電流から保護される期間が所定期間継続すると、スイッチング動作を停止するよう構成されている。
【0036】
第3の実施形態の昇圧回路においては、主スイッチ3の僅少オン時間でのスイッチング動作において、コンデンサ96は徐々に充電されるよう抵抗95及び抵抗97の抵抗値は予め調整されている。主スイッチ3の僅少オン時間でのスイッチング動作により、コンデンサ96の電位が所定の電圧Vyに達すると、比較器99はHレベルの信号をトリガ素子の制御端子に出力し、トリガ素子100がオン状態とする。トリガ素子100のオン状態により、制御回路8ではAND回路84Aの出力、即ち駆動信号VgがLレベルに固定される。トリガ素子100は一旦オン状態となると、保持電流が存在する間はオン状態を持続する。昇圧回路の入力電圧Viが低下してトリガ素子100への保持電流を供給できなくなるまで、当該昇圧回路はスイッチング動作を再開することができない状態となる。
上記のように、第3の実施形態の昇圧回路においては、ダイオード4の短絡状態がある程度長い期間継続した場合に昇圧回路を遮断するシャットダウン型の保護動作を行う構成である。
【0037】
以上のように、本発明に係る第3の実施形態のDC−DCコンバータにおいては、電流検出することなく、同期整流器を含む整流器の短絡を確実に検出して、構成部品である主スイッチを過大電流から保護することができるとともに、保護回路のよる通常動作時の誤動作を防止して、且つ整流器の短絡状態が所定期間継続したときには確実に遮断するよう構成されている。
【0038】
なお、本発明に係る第1の実施形態から3の実施形態の昇圧回路では、整流手段としてダイオードを用いた例で説明したが、その他のあらゆる整流手段に対して適用可能であり、例えば同期整流器等を用いたDC−DCコンバータにおいても適用することが可能であり、同様の効果を奏する。
上記の第1の実施形態のDC−DCコンバータにおいては、昇圧回路に保護回路を設けた構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば昇降圧回路においても各実施形態で説明した保護回路を設けることが可能であり、同様の効果を奏する。
【0039】
図4は本発明に係るDC−DCコンバータの一例であるブリッジ構成の昇降圧コンバータの構成を示す回路図である。図4において、第1の実施形態の昇圧回路における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その説明は省略する。
図4に示すように、この昇降圧回路には昇圧回路として機能するための第1のスイッチ素子である主スイッチ3aと第1の整流手段であるダイオード4aが設けられており、ダイオード4aの両端を短絡させたときに第1の主スイッチ3aを過電流から保護するために保護回路9が設けられている。なお、この昇降圧回路には降圧回路として機能するための第2のスイッチ素子である主スイッチ3bと第2の整流手段であるダイオード4bが設けられている。また、図4に示した昇降圧回路の保護回路としては、図2に示した第2の実施形態における保護回路9Aや図3に示した第3の実施形態における保護回路9Bを用いて、保護回路としての機能を更に高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、各種電子機器に直流電圧を供給する信頼性の高いDC−DCコンバータとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の昇圧回路の構成を示す回路図である。
【図2】本発明に係る第2の実施形態の昇圧回路の構成を示す回路図である。
【図3】本発明に係る第3の実施形態の昇圧回路の構成を示す回路図である。
【図4】本発明のDC−DCコンバータの別の構成を示す回路図である。
【図5】従来の昇圧回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0042】
1 直流電源
2 インダクタ
3 主スイッチ
4 ダイオード
5 出力コンデンサ
6 負荷
7 誤差増幅器
8 制御回路
9 保護回路
80 鋸歯状波発生回路
81 比較器
82 インバータ
83 RSラッチ
84 AND回路
90 電圧源回路
91 比較器
92 AND回路
93 電圧源回路
94 コンデンサ
95 抵抗
96 ダイオード
97 抵抗
98 電圧源回路
99 比較器
100 トリガ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された整流器とスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオン期間にエネルギーを蓄え、前記スイッチ素子のオフ期間に前記整流器を介してエネルギーを放出する蓄積素子と、
前記整流器の出力を平滑する容量性素子と、
前記スイッチ素子をオンオフ制御するための駆動信号を生成する制御回路と、
前記整流器と前記スイッチ素子との接続点電位を検出し、前記駆動信号が前記スイッチ素子をオンさせる状態において、前記接続点電位が所定電位以上であるとき、前記スイッチ素子をオフさせるよう構成された保護回路と、
を具備するDC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記保護回路は、前記所定電位を生成する電圧源回路と、前記接続点電位を前記所定電位と比較する比較器と、前記駆動信号が前記スイッチ素子をオン状態とするときであり、且つ前記接続点電位が所定電位以上であることを前記比較器の出力が示す時に所定信号を前記制御回路に出力する論理回路を備え、
前記制御回路は、前記論理回路からの前記所定信号が入力されたとき、前記駆動信号が前記スイッチ素子を所定期間オフさせるよう構成された請求項1記載のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記保護回路は、前記論理回路に入力される前記駆動信号を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延回路を具備する請求項2記載のDC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記保護回路は、前記スイッチ素子のスイッチング毎に前記論理回路が前記所定信号を出力する期間が所定時間継続すると、前記駆動信号により前記スイッチ素子をオフ状態に固定するよう構成された請求項2または3記載のDC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記整流器と前記スイッチ素子と前記蓄積素子と前記容量性素子と前記制御回路と前記保護回路とを有して昇圧回路が構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項6】
前記整流器と前記スイッチ素子と前記蓄積素子と前記容量性素子と前記制御回路と前記保護回路とを有して昇降圧回路が構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−92617(P2008−92617A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267187(P2006−267187)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】