説明

DC−DCコンバータ

【課題】トランスの一次側電流の転流時間に影響されることなく、入力電圧を正確に算出できるDC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】DC−DCコンバータ1は、一次巻線および二次巻線を有するトランス14と、トランス14の一次巻線に接続され、入力電圧をスイッチングするスイッチング回路13と、スイッチング回路13を駆動するドライブ回路20と、スイッチング回路13のスイッチング動作に応じてトランス14の二次巻線に生じた交流電圧を整流する整流回路15と、入力電圧の値を求めるとともに、当該電圧値に基づいて所定の処理を実行する制御部19とを備える。制御部19は、整流回路15の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出し、当該パルス信号のデューティを算出し、算出したデューティに基づいて入力電圧の値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスの一次側で入力電圧をスイッチングし、トランスの二次側に生じる交流電圧を整流して出力するDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッドカーには、走行用モータを駆動するための高電圧バッテリが搭載されるとともに、このバッテリの電圧を降圧して各種の車載部品へ供給する電源装置が搭載される。この電源装置としては、一般に、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号に基づくスイッチング動作により直流電圧を交流電圧に変換するスイッチング回路と、交流電圧を整流する整流回路と、スイッチング回路と整流回路との間に設けられるトランスと、整流回路で整流された電圧を平滑する平滑回路とを備えたDC−DCコンバータが用いられる。特許文献1には、典型的なDC−DCコンバータが記載されている。
【0003】
DC−DCコンバータでは、回路の状態を常時監視するために、入力電圧、入力電流、出力電圧、および出力電流を検出する必要がある。入力電流は、電流センサやカレントトランスなどにより直接検出することができる。出力電流は、入力電流と同様に直接検出することもできるが、入力電流の値を用いて、演算により求めることもできる。特許文献2には、出力電流を演算により求める方法が記載されている。
【0004】
出力電圧は、分圧抵抗によって直接検出することができる。この場合、トランスの二次側の電圧が低電圧であることから、分圧抵抗は許容電力値の小さな抵抗で済む。一方、入力電圧に関しては、これを分圧抵抗により直接検出しようとすると、トランスの一次側の電圧が高電圧であることから、許容電力値の大きな抵抗が必要となる。このため、コストアップを招来するとともに、小型化の障害となる。そこで、特許文献2〜4に記載されているように、スイッチング回路を駆動するパルス信号(PWM信号)のデューティに基づいて入力電圧を推定する方法が知られている。
【0005】
図11は、電気自動車やハイブリッドカーに搭載される、従来のDC−DCコンバータの一例を示している。DC−DCコンバータ50は、高電圧バッテリ52の直流電圧をスイッチングして低電圧の直流に変換し、低電圧バッテリ53を充電する。
【0006】
高電圧バッテリ52の直流電圧は、フィルタ回路51を介して、スイッチング回路53に与えられる。スイッチング回路53は、ドライブ回路60から与えられるPWM信号によりオン・オフ動作を行なうスイッチング素子を有している。スイッチング回路53の出力は、トランス54の一次側に与えられる。トランス54の二次側には、ダイオードD1、D2からなる整流回路55が接続されている。整流回路55の出力側には、コイルLおよびコンデンサCからなる平滑回路56が接続されている。平滑回路56の出力は、降圧された直流電圧であり、この直流電圧によって低電圧バッテリ53が充電される。
【0007】
スイッチング回路53の入力側には、補助電源57と、入力電流検出回路58が設けられている。補助電源57は制御部59の駆動用電源である。入力電流検出回路58は、電流センサ52により入力電流Iiを検出する。この検出値は、制御部59に与えられる。温度検出回路62は、温度補償のために設けられており、その検出値は制御部59に与えられる。
【0008】
平滑回路56の出力側には、出力電圧検出回路61が設けられている。この出力電圧検出回路61は、平滑回路56の出力電圧Voを検出する。この検出値は、フィードバック制御のために、制御部59に与えられる。
【0009】
制御部59は、マイクロコンピュータから構成されている。制御部59は、出力電圧検出回路61からフィードバックされる出力電圧Voの検出値を目標値と比較し、検出値と目標値との偏差に基づいて、出力電圧Voを目標値とするための指令値を生成する。この指令値はドライブ回路60へ与えられる。
【0010】
ドライブ回路60は、制御部59からの指令値に応じたデューティを持つPWM信号を生成し、このPWM信号により、スイッチング回路53のスイッチング素子を駆動する。また、ドライブ回路60は、生成したPWM信号を制御部59にも出力する。
【0011】
制御部59は、ドライブ回路60から入力されるPWM信号を解析して、当該信号のデューティを算出する。デューティは、PWM信号の1周期におけるオン時間の比率である。そして、算出したデューティDと、出力電圧Voとを用いて、入力電圧Viを次式により求める。
Vi=Vo・(N1/N2)/D ・・・ (1)
ここで、N1はトランス54の一次側コイルの巻数、N2はトランス54の二次側コイルの巻数である。
【0012】
さらに、制御部59は、入力電流検出回路58で検出された入力電流Iiを用いて、出力電流Ioを次式により求める。
Io=Ii・(N1/N2) ・・・ (2)
【0013】
以上のようにして、入力電流Iiと出力電圧Voは、それぞれ入力電流検出回路58と出力電圧検出回路61により直接検出される。また、入力電圧Viは、出力電圧VoおよびPWM信号のデューティDを用いて、式(1)により演算で求められ、出力電流Ioは、入力電流Iiを用いて、式(2)により演算で求められる。
【0014】
しかしながら、上述した従来のものでは、出力電流Ioに応じてデューティDが変動することに起因して、入力電圧Viを正確に算出することができないという問題がある。以下、これについて図12を参照しながら説明する。
【0015】
図12において、(a)はドライブ回路60で生成されるPWM信号の波形、(b)は正確なデューティ算出のための理想的な信号の波形、(c)はトランス54の一次側電圧の波形、(d)はトランス54の一次側電流の波形を表している。
【0016】
スイッチング回路53のスイッチング動作に応じて、トランス54の一次側に流れる電流の方向が切り替わるが、トランス54の漏れインダクタンスの影響により、電流方向の切り替わりには、図12(d)に示す転流時間Tを必要とする。この転流時間Tは、出力電流Ioの大きさに比例し、出力電流Ioが増大するほど、転流時間Tは長くなる。そして、制御部59は、この転流時間Tを見込んだデューティの指令値を生成するので、ドライブ回路60で生成されるPWM信号は、図12(a)に示すように、転流時間Tに相当する時間(斜線部分)を含んだデューティを有するものとなる。その結果、PWM信号のデューティが出力電流Ioに応じて変動するので、このデューティを用いたのでは、式(1)による入力電圧Viの演算結果に誤差が生じ、正確な入力電圧Viを求めることができない。
【0017】
入力電圧Viを正確に算出するには、図12(c)に示すトランス54の一次側電圧と同期した、図12(b)のような理想的な信号のデューティを用いる必要がある。しかしながら、トランス54の一次側におけるPWM信号からデューティを取得する従来の装置では、そのようなことが不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】再表2007/000830号公報
【特許文献2】再表2009/011374号公報
【特許文献3】特開2009−205299号公報
【特許文献4】特開平9−135574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、トランスの一次側電流の転流時間に影響されることなく、入力電圧を正確に算出できるDC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るDC−DCコンバータは、一次巻線および二次巻線を有するトランスと、このトランスの一次巻線に接続され、入力電圧をスイッチングするスイッチング回路と、このスイッチング回路を駆動するドライブ回路と、スイッチング回路のスイッチング動作に応じてトランスの二次巻線に生じた交流電圧を整流する整流回路と、入力電圧の値を求めるとともに、当該電圧値に基づいて所定の処理を実行する制御部とを備える。制御部は、整流回路の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出し、当該パルス信号のデューティを算出し、算出したデューティに基づいて入力電圧の値を求める。
【0021】
このようにすると、トランスの二次側における、整流回路の入力側または出力側のパルス信号に基づいてデューティを算出しているので、このデューティは、トランスの一次側電流の転流時間に左右されないものとなる。したがって、当該デューティを用いて算出した入力電圧は、転流時間の影響を受けない正確な値となる。
【0022】
本発明では、制御部は、整流回路の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出するパルス信号検出部と、このパルス信号検出部で検出されたパルス信号のデューティを算出するデューティ演算部と、このデューティ演算部で算出されたデューティに基づいて、入力電圧の値を演算する入力電圧演算部とを含むように構成してもよい。
【0023】
この場合、整流回路の出力を平滑する平滑回路と、この平滑回路の出力電圧を検出する出力電圧検出回路とをさらに設け、入力電圧演算部は、デューティ演算部で算出されたデューティと、出力電圧検出回路で検出された出力電圧の検出値とに基づいて、入力電圧の値を演算するようにしてもよい。
【0024】
また、本発明において、デューティと入力電圧の値とを対応付けて記憶したテーブルを有する記憶部をさらに設け、制御部は、整流回路の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出するパルス信号検出部と、このパルス信号検出部で検出されたパルス信号のデューティを算出するデューティ演算部と、このデューティ演算部で算出されたデューティに基づき、上記テーブルを参照して、当該デューティに対応する入力電圧の値を抽出する入力電圧判定部とを含むように構成してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、トランスの二次側におけるパルス信号からデューティを取得するようにしたので、トランスの一次側電流の転流時間に影響されることなく、入力電圧を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】第1実施形態における入力電圧の算出手順を示したフローチャートである。
【図3】図1の回路における信号の波形図である。
【図4】第2実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図5】整流回路の出力側および入力側のパルス信号の波形図である。
【図6】第3実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図7】デューティと入力電圧とを対応付けたテーブルの図である。
【図8】第3実施形態における入力電圧の算出手順を示したフローチャートである。
【図9】第4実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図10】第5実施形態に係るDC−DCコンバータの回路図である。
【図11】従来のDC−DCコンバータの回路図である。
【図12】図11の回路における信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、電気自動車またはハイブリッドカーに搭載されるDC−DCコンバータを例に挙げる。
【0028】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態を示す。DC−DCコンバータ1は、高電圧バッテリ2の直流電圧をスイッチングして低電圧の直流に変換し、低電圧バッテリ3を充電する。高電圧バッテリ2は、車両の走行用モータなどを駆動する電源である。低電圧バッテリ3は、各種の車載部品(補機)を駆動する電源である。
【0029】
DC−DCコンバータ1の入力端子T1、T2には、高電圧バッテリ2が接続される。高電圧バッテリ2の電圧は、例えば直流220V〜400Vである。高電圧バッテリ2により入力端子T1、T2に印加される入力電圧Viは、フィルタ回路11を介して、スイッチング回路13に入力される。
【0030】
スイッチング回路13は、特許文献1、2に記載されているような、MOS−FETなどのスイッチング素子をブリッジ接続した公知の回路からなる。スイッチング素子は、ドライブ回路20から与えられるPWM信号により、オン・オフのスイッチング動作を行なう。
【0031】
スイッチング回路13の入力側には、補助電源17と、入力電流検出回路18が設けられている。補助電源17は制御部19の駆動用電源である。入力電流検出回路18は、電流センサ12により入力電流Iiを検出する。この検出値は、制御部19に与えられる。温度検出回路22は、温度補償のために設けられており、その検出値は制御部19に与えられる。また、制御部19には、端子T5を介してイグニッション信号IGが入力される。このイグニッション信号IGは、補助電源17にも与えられる。さらに、制御部19は、端子T6を介して、図示しない上位装置と通信を行なう。
【0032】
スイッチング回路13の出力側には、トランス14の一次側コイルが接続されている。トランス14の二次側コイルは、ダイオードD1、D2からなる整流回路15の入力側に接続されている。整流回路15の出力側には、コイルLおよびコンデンサCからなる平滑回路16が接続されている。平滑回路16の出力側は、出力端子T3、T4に接続されている。出力端子T3、T4には、低電圧バッテリ3が接続されている。平滑回路16の出力は、降圧された直流電圧であり、低電圧バッテリ3は、出力端子T3、T4から出力される出力電圧Voにより、例えば直流12Vに充電される。
【0033】
平滑回路16の出力側には、出力電圧検出回路21が設けられている。この出力電圧検出回路21は、平滑回路16の出力電圧Voを検出する。この検出値は、フィードバック制御のために、制御部19に与えられる。
【0034】
制御部19は、マイクロコンピュータから構成されている。制御部19は、出力電圧検出回路21からフィードバックされる出力電圧Voの検出値を目標値と比較し、検出値と目標値との偏差に基づいて、出力電圧Voを目標値とするための指令値を生成する。この指令値はドライブ回路20へ与えられる。
【0035】
ドライブ回路20は、制御部19からの指令値に応じたデューティを持つPWM信号を生成し、このPWM信号により、スイッチング回路13のスイッチング素子を駆動する。スイッチング回路13は、スイッチング素子のオン・オフ動作により、直流電圧を高周波の交流電圧に変換する。この結果、トランス14の二次側には、パルス電圧が発生する。この電圧は、整流回路15により整流され、平滑回路16により平滑される。
【0036】
整流回路15の出力側、すなわち、ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとの接続点は、制御部19に接続されている。この接続点に現れる電圧は、図5(a)に示すような、全波整流されたパルス信号である。制御部19は、このパルス信号を取り込んで、デューティ情報を取得する。
【0037】
制御部19には、パルス信号検出部31と、デューティ演算部32と、入力電圧演算部33とが備わっている。パルス信号検出部31は、整流回路15から出力されるパルス信号を検出する。デューティ演算部32は、パルス信号検出部31で検出されたパルス信号を解析して、当該信号のデューティを算出する。デューティは、パルス信号の1周期におけるオン時間の比率である。入力電圧演算部33は、デューティ演算部32が算出したデューティD’と、出力電圧Voとを用いて、入力電圧Viを次式により求める。
Vi=Vo・(N1/N2)/D’ ・・・ (3)
式(3)は、前述の式(1)と対応している。なお、N1はトランス14の一次側コイルの巻数、N2はトランス14の二次側コイルの巻数である。
【0038】
さらに、制御部19は、図示しない入力電流演算部により、入力電流検出回路18で検出された入力電流Iiを用いて、出力電流Ioを次式により求める。
Io=Ii・(N1/N2) ・・・ (4)
式(4)は、前述の式(2)と同じものである。
【0039】
以上のようにして、入力電流Iiと出力電圧Voは、それぞれ入力電流検出回路18と出力電圧検出回路21により直接検出される。また、入力電圧Viは、出力電圧Voおよびパルス信号のデューティD’を用いて、式(3)により演算で求められ、出力電流Ioは、入力電流Iiを用いて、式(4)により演算で求められる。
【0040】
図2は、上述した入力電圧Viの算出手順を表したフローチャートである。各ステップは、制御部19により実行される。ステップS1では、パルス信号検出部31が、トランス14の二次側(本実施形態では、整流回路15の出力側)のパルス信号を検出する。ステップS2では、デューティ演算部32が、ステップS1で検出されたパルス信号に基づいて、当該パルス信号のデューティD’を算出する。ステップS3では、入力電圧演算部33が、ステップS1で算出されたデューティD’と、出力電圧検出回路21により検出された出力電圧Voとに基づいて、入力電圧Viを式(3)により算出する。ステップS4では、ステップS3で算出された入力電圧Viに基づいて、制御部19が所定の処理を実行する。例えば、制御部19は、入力電圧Viを常時監視し、その電圧値が上限基準値を超えたり、下限基準値を下回ったりした場合に、高電圧バッテリ2が異常であると判断し、端子T6を介して上位装置に異常を通知する。
【0041】
第1実施形態によれば、トランス14の二次側における、整流回路15の出力側のパルス信号に基づいてデューティを算出しているので、このデューティは、トランス14の一次側電流の転流時間に左右されないものとなる。これを図3で説明する。
【0042】
図3において、(a)はドライブ回路20で生成されるPWM信号の波形、(b)は正確なデューティ算出のための理想的な信号の波形、(c)はトランス14の一次側電圧の波形、(d)は整流回路15の出力電圧の波形、(e)はトランス14の一次側電流の波形を表している。
【0043】
第1実施形態では、図3(d)のパルス信号のデューティを用いて、入力電圧Viを算出する。図からわかるように、このパルス信号のデューティは、転流時間Tにかかわわず、図3(b)の理想的な信号の波形のデューティと同じものとなる。したがって、当該デューティを用いて算出した入力電圧Viは、転流時間Tの影響を受けない正確な値となる。
【0044】
このように、第1実施形態によれば、トランス14の一次側電流の転流時間に影響されることなく、入力電圧を正確に算出できるDC−DCコンバータが得られる。また、特別な部品や回路を追加する必要もないので、構成が複雑化したり、コストがアップすることも回避できる。
【0045】
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態を示す。図4において、図1と同一の部分または対応する部分には、図1と同一の符号を付してある。
【0046】
図1の第1実施形態では、整流回路15の出力側が制御部19に接続されていたが、図4の第2実施形態では、整流回路15の入力側、すなわち、ダイオードD2のアノードが制御部19に接続されている。その他の構成については、図1と同じであるので、重複部分の説明は省略する。
【0047】
第2実施形態において、ダイオードD2のアノードに現れる電圧は、図5(b)に示すような、半波整流されたパルス信号である。制御部19は、このパルス信号に基づき、第1実施形態の場合と同様の要領で、デューティを算出し、算出したデューティと出力電圧とを用いて、入力電圧を求める(図2参照)。但し、パルス信号が半波であることから、デューティの算出にあたっては、演算結果を2倍する処理が必要となる。この点、第1実施形態のほうが処理は簡単となる。
【0048】
第2実施形態によれば、トランス14の二次側における、整流回路15の入力側のパルス信号に基づいてデューティを算出しているので、このデューティは、トランス14の一次側電流の転流時間に左右されないものとなる。したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(第3実施形態)
図6に、本発明の第3実施形態を示す。図6において、図1と同一の部分または対応する部分には、図1と同一の符号を付してある。
【0050】
図6では、第1実施形態(図1)の構成に、記憶部23が追加されている。また、制御部19において、図1の入力電圧演算部33に代えて、入力電圧判定部34が設けられている。記憶部23は、図7に示すようなテーブル23aを有している。テーブル23aには、デューティと入力電圧の値とが対応付けて記憶されている。その他の構成については、図1と同じであるので、重複部分の説明は省略する。
【0051】
第1実施形態では、整流回路15の出力側のパルス信号から算出したデューティと、出力電圧とに基づいて、式(3)による演算で入力電圧を求めた。これに対し、第3実施形態では、整流回路15の出力側のパルス信号から算出したデューティに基づいて、テーブル23aを参照し、当該デューティに対応する入力電圧値を求める。したがって、第3実施形態の場合は、式(3)による演算が不要となる。
【0052】
図8は、第3実施形態における入力電圧を求める手順を表したフローチャートである。各ステップは、制御部19により実行される。ステップS11では、パルス信号検出部31が、トランス14の二次側(本実施形態では、整流回路15の出力側)のパルス信号を検出する。ステップS12では、デューティ演算部32が、ステップS11で検出されたパルス信号に基づいて、当該パルス信号のデューティを算出する。ステップS13では、入力電圧判定部34が、ステップS12で算出されたデューティに対応する入力電圧を、テーブル23aを参照して抽出する。ステップS14では、ステップS13で抽出された入力電圧に基づいて、制御部19が所定の処理を実行する。処理の内容は、図2のステップS4の場合と同様である。
【0053】
第3実施形態によれば、トランス14の二次側における、整流回路15の出力側のパルス信号に基づいてデューティを算出しているので、このデューティは、トランス14の一次側電流の転流時間に左右されないものとなる。したがって、このデューティを用いてテーブル23aから入力電圧を抽出することで、入力電圧を正確に求めることができる。また、入力電圧の演算処理が不要となり、制御部19の負担が軽減される。
【0054】
(第4実施形態)
図9に、本発明の第4実施形態を示す。図9において、図6と同一の部分または対応する部分には、図6と同一の符号を付してある。
【0055】
図9では、第2実施形態(図4)の構成に、記憶部23が追加されている。また、制御部19において、図4の入力電圧演算部33に代えて、入力電圧判定部34が設けられている。記憶部23には、図7で示したテーブル23aが備わっている。その他の構成については、図4と同じであるので、重複部分の説明は省略する。
【0056】
第4実施形態においては、整流回路15の入力側のパルス信号を検出する点を除いて、図8と同様の要領で、デューティを算出し、算出したデューティに基づいて、テーブル23aから入力電圧を抽出する。したがって、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第5実施形態)
図10に、本発明の第5実施形態を示す。図10において、図1と同一の部分または対応する部分には、図1と同一の符号を付してある。
【0058】
図10では、第1実施形態(図1)の構成に、電流センサ24と、出力電流検出回路25とが追加されている。その他の構成については、図1と同じであるので、重複部分の説明は省略する。
【0059】
第1実施形態では、入力電流検出回路18で検出された入力電流Iiを用いて、出力電流Ioを式(4)により演算で求めた。これに対し、第5実施形態では、出力電流検出回路25が、電流センサ24により出力電流Ioを直接検出する。この検出値は、制御部19に与えられる。
【0060】
なお、図示は省略するが、第2実施形態(図4)において、図10の電流センサ24および出力電流検出回路25を設けてもよい。また、第3実施形態(図6)と第4実施形態(図9)において、図10の電流センサ24および出力電流検出回路25を設けることも可能である。
【0061】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記実施形態では、記憶部23を制御部19の外部に設けているが(図6、図9)、記憶部23を制御部19の内部に設けてもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、1つの制御部19によって、出力電圧Voのフィードバック制御と、入力電圧Vi等の演算とを行ったが、フィードバック制御を行う制御部と、入力電圧Vi等の演算を行う制御部とを分離してもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、求めた入力電圧Viに基づいて、高電圧バッテリ2の異常有無を監視するようにしたが、入力電圧Viに基づいて、例えば出力電流Ioを演算により求めてもよい。この場合、出力電流Ioは、
Io=Ii・Vi・η/Vo ・・・(5)
により算出することができる。ここで、ηは変換効率である。
【0064】
また、前記実施形態では、DC−DCコンバータ1から出力される直流電圧により低電圧バッテリ3を充電したが、DC−DCコンバータ1の出力を直接負荷に供給してもよい。
【0065】
さらに、前記実施形態では、DC−DCコンバータ1を電気自動車やハイブリッドカーに搭載した例を挙げたが、本発明に係るDC−DCコンバータは、車載以外の用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 DC−DCコンバータ
13 スイッチング回路
15 整流回路
16 平滑回路
19 制御部
21 出力電圧検出回路
23 記憶部
23a テーブル
31 パルス信号検出部
32 デューティ演算部
33 入力電圧演算部
34 入力電圧判定部
D1、D2 ダイオード
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線および二次巻線を有するトランスと、
前記トランスの一次巻線に接続され、入力電圧をスイッチングするスイッチング回路と、
前記スイッチング回路を駆動するドライブ回路と、
前記スイッチング回路のスイッチング動作に応じて前記トランスの二次巻線に生じた交流電圧を整流する整流回路と、
前記入力電圧の値を求めるとともに、当該電圧値に基づいて所定の処理を実行する制御部と、を備えたDC−DCコンバータにおいて、
前記制御部は、前記整流回路の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出し、当該パルス信号のデューティを算出し、算出したデューティに基づいて前記入力電圧の値を求めることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記制御部は、
前記整流回路の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出するパルス信号検出部と、
前記パルス信号検出部で検出されたパルス信号のデューティを算出するデューティ演算部と、
前記デューティ演算部で算出されたデューティに基づいて、前記入力電圧の値を演算する入力電圧演算部と、を含むことを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項3】
請求項2に記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記整流回路の出力を平滑する平滑回路と、
前記平滑回路の出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、をさらに備え、
前記入力電圧演算部は、前記デューティ演算部で算出されたデューティと、前記出力電圧検出回路で検出された出力電圧の検出値とに基づいて、前記入力電圧の値を演算することを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1に記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記デューティと前記入力電圧の値とを対応付けて記憶したテーブルを有する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記整流回路の入力側または出力側に現れるパルス信号を検出するパルス信号検出部と、
前記パルス信号検出部で検出されたパルス信号のデューティを算出するデューティ演算部と、
前記デューティ演算部で算出されたデューティに基づき、前記テーブルを参照して、当該デューティに対応する入力電圧の値を抽出する入力電圧判定部と、を含むことを特徴とするDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−46438(P2013−46438A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180726(P2011−180726)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】