説明

DC/DCコンバータ、制御方法および燃料電池システム

【課題】DC/DCコンバータに関する技術を提供する。
【解決手段】直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータであって、チョッパ動作の1サイクルにおける直流リアクトルの最小電流値に基づいて1サイクルにおける直流リアクトルの平均電流値を算出する算出部と、算出した平均電流値に基づき電力制御を行う制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータの電力制御は直流リアクトルの平均電流値に基づいて制御を行うことが一般的に知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、リアクトルの平均電流は、DC/DCコンバータのチョッパ動作を行うスイッチング素子がオンの状態である期間(以下「オン期間」とも呼ぶ)の中点の時間でのリアクトル電流を測定し、その電流値を平均電流値として用いることで、電力制御を行っている。しかしながら、このようにしてリアクトルの平均電流値を決定する方法では、リアクトル電流が図7に示したような変化をする不連続モードの場合に、正確な平均電流値が得られないと言う課題が指摘されていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、DC/DCコンバータにおける種々の動作モードの場合に平均電流値を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0007】
[適用例1]
直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータであって、前記チョッパ動作の1サイクルにおける前記直流リアクトルの最小電流値に基づいて前記1サイクルにおける前記直流リアクトルの平均電流値を算出する算出部と、前記算出した前記平均電流値に基づき前記電力制御を行う制御部とを備えるDC/DCコンバータ。
【0008】
一般的にDC/DCコンバータでは、直流リアクトルの平均電流の値に基づいて電力制御を行う。その際、スイッチング素子がオンとなっている期間の中点の時間における直流リアクトルの電流値を平均電流値として採用する。しかし、下記に示す不連続モードの場合は、スイッチング素子がオンとなっている期間の中点の時間における直流リアクトルの電流値が実際の平均電流値とは大きく異なる場合がある。
【0009】
適用例1に記載のDC/DCコンバータによれば、直流リアクトルの最小電流値に基づいて平均電流値を算出するので、不連続モードの場合を含め、DC/DCコンバータの種々の動作モードに対応して汎用的に、平均電流値を取得することが可能である。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載のDC/DCコンバータであって、前記算出部は、前記直流リアクトルの前記最小電流値を計測することによって取得し、前記取得した前記最小電流値に基づいて前記平均電流値を算出するDC/DCコンバータ。
【0011】
このDC/DCコンバータによれば、最小電流値は計測により取得することができる。つまり、逆を言えば、計測をしないでも最小電流値を取得することができる場合があり、そのような場合のDC/DCコンバータは、上記適用例1のDC/DCコンバータに含まれる。後述する不連続モードの場合、最小電流値はゼロであるため、計測によって最小電流値を取得することもできるが、計測をせずに予め最小電流値をゼロとして、平均電流値を算出することも可能である。適用例2のDC/DCコンバータは、計測により最小電流値を取得するので、不連続モード以外の動作モードにおいても最小電流値の取得が可能であり、不連続モードを含めた種々のモードで、最小電流値を取得し平均電流値を算出することが可能である。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のDC/DCコンバータであって、前記直流リアクトルに流れる電流の向きが一方向であるDC/DCコンバータ。
このDC/DCコンバータによると、直流リアクトルに流れる電流の向きが一方向である動作モードの場合にも適用可能である。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか記載のDC/DCコンバータであって、前記制御部は、前記スイッチング素子のスイッチングのタイミングを制御することにより、前記直流リアクトルに流れる電流が一定期間ゼロを保持する動作モードである不連続モードによって前記電力制御を行うDC/DCコンバータ。
このDC/DCコンバータによれば、動作モードが不連続モードの場合にも最小電流値から平均電流値を算出可能である。
【0014】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか記載のDC/DCコンバータであって、補助スイッチング素子を備え、前記制御部は、前記補助スイッチング素子のスイッチングのタイミングを制御することによって、前記スイッチング素子をスイッチングする際の印加電圧を制御するソフトスイッチング制御を行うDC/DCコンバータ。
このDC/DCコンバータによれば、ソフトスイッチング制御を行うDC/DCコンバータにも適用可能である。
【0015】
[適用例6]
直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータの制御方法であって、前記チョッパ動作の1サイクルにおける前記直流リアクトルの最小電流値に基づいて前記1サイクルにおける前記直流リアクトルの平均電流値を算出し、前記算出した前記平均電流値に基づき前記電力制御を行う制御方法。
【0016】
このDC/DCコンバータの制御方法によれば、直流リアクトルの最小電流値に基づいて平均電流値を算出するので、不連続モードの場合を含め、DC/DCコンバータの種々の動作モードに対応して汎用的に、平均電流値を算出し、電力制御が可能である。
【0017】
[適用例7]
燃料電池システムであって、負荷に対して電力を供給する燃料電池と、直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータとを備え、前記DC/DCコンバータは、前記チョッパ動作の1サイクルにおける前記直流リアクトルの最小電流値に基づいて前記1サイクルにおける前記直流リアクトルの平均電流値を算出する算出部と、前記算出した前記平均電流値に基づき前記電力制御を行う制御部とを備える燃料電池システム。
【0018】
この燃料電池システムによれば、DC/DCコンバータが、直流リアクトルの最小電流値に基づいて平均電流値を算出するので、不連続モードの場合を含め、DC/DCコンバータの種々の動作モードに対応して汎用的に、平均電流値を取得することが可能である。
【0019】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、ハードスイッチング方法および装置、電力変換システム、それらの方法または装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】燃料電池システム10の構成を説明する説明図である。
【図2】スイッチングコンバータ50の回路構成を示す説明図である。
【図3】スイッチング素子Sがターンオフのときのスイッチングコンバータ50の状態を説明する説明図である。
【図4】スイッチング素子Sがターンオンのときのスイッチングコンバータ50の状態を説明する説明図である。
【図5】リアクトル平均電流算出処理の流れを示す説明図である。
【図6】連続モードにおけるリアクトルL1の電流の変化を示す説明図である。
【図7】不連続モードにおけるL1電流の変化を示す説明図である。
【図8】変形例1を説明する説明図である。
【図9】変形例2の一例であるソフトスイッチングコンバータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)燃料電池システムの構成:
図1は、第1実施例として車両に搭載された燃料電池システム10の構成を説明する説明図である。本実施例においては、車両の一例として、燃料電池自動車(FCHV: Fuel Cell Hyblid Vehicle)を想定しているが、電気自動車やハイブリッド自動車にも適用可能である。
【0022】
燃料電池システム10は、制御ユニット20と、電源装置30と、負荷LOADとを備える。電源装置30は負荷LOADに対して直流電力を供給する。負荷LOADは主に車両走行用モータであり、その他の負荷として、周辺機器(照明やオーディオ等)などの負荷が含まれる。これらの負荷には直流で動作する負荷や、インバータを介して交流で動作する負荷等が含まれる。電源装置30と制御ユニット20とはワイヤーハーネスWHによって接続されている。制御ユニット20は、例えば車両が走行中であれば、ドライバーのアクセル操作に基づいて、車両走行用モータに必要なパワーを演算し、演算結果に応じて電源装置30から負荷LOADに出力する電力を制御する。電源装置30は、燃料電池FCと、スイッチングコンバータ50と、電流・電圧測定器60(以下、IV測定器60とも呼ぶ)を備える。
【0023】
燃料電池FCは、供給される燃料ガス(例えば水素ガス)及び酸化ガスから電力を発生する発電方式を採用しており、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)などを備えた単セルを複数、直列に積層したスタック構造を有している。燃料電池FCとしてはこういった固体高分子型をはじめ、燐酸型や溶融炭酸塩型など種々のタイプの燃料電池を利用することができる。スイッチングコンバータ50は、燃料電池FCから供給される直流電力の電圧を昇圧するDC/DCコンバータ(昇圧コンバータ)である。スイッチングコンバータ50は、後述するスイッチング素子Sを備えており、スイッチング素子Sのスイッチング動作によって負荷LOADに供給する電力を制御するチョッパ回路によって構成されている。IV測定器60は、スイッチングコンバータ50の所定の電流値および電圧値を常時測定しており、その値をリアルタイムで制御ユニット20に送信している。
【0024】
制御ユニット20は、内部にCPU、RAM、ROMを備えたマイクロコンピュータとして構成されている。制御ユニット20は、スイッチングコンバータ50が備えるスイッチング素子Sのスイッチングのタイミングを制御するゲート信号をスイッチングコンバータ50に向けて、上述した加速度等に基づく演算に応じて出力している。具体的には、スイッチング素子Sのスイッチングのタイミングを制御するSゲート信号を、ワイヤーハーネスWHを介してスイッチングコンバータ50に向けて出力している。すなわち、制御ユニット20は、スイッチングコンバータ50にSゲート信号を出力することによって、電源装置30から負荷LOADに供給される電力を制御する。
【0025】
(A2)スイッチングコンバータの構成・動作:
次にスイッチングコンバータ50の構成および動作について説明する。図2は、スイッチングコンバータ50の回路構成を示す説明図である。本実施例におけるスイッチングコンバータは、スイッチング素子Sのスイッチング動作のタイミングを制御することによって、出力電力を制御するハードスイッチングコンバータである。ハードスイッチングコンバータの動作原理については公知の技術であるので詳細な説明は省略する。
【0026】
スイッチングコンバータ50は、リアクトルL1、ダイオードD15、スイッチング素子S、ダイオードD14、フィルタコンデンサC11、平滑コンデンサC13から構成されている。リアクトルL1は、一端が燃料電池FC(図1)である直流電源Eの正極に接続される。ダイオードD15は、アノードがリアクトルL1の他端に接続されるとともに、カソードが負荷LOADの一端に接続される。スイッチング素子Sは、一端がリアクトルL1の他端に接続されるとともに、他端が直流電源Eの負極、および、負荷LOADの他極に接続され、制御ユニット20から送信されるSゲート信号に応じてターンオン・オフ動作をする。本実施例ではスイッチング素子Sは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いる。その他、スイッチング素子Sとしてはサイリスタ、ダイオード等の半導体素子を用いることもできる。スイッチング素子Sには、ダイオードD14がスイッチング素子Sの保護のために並列に接続される。スイッチング素子Sは、特許請求の範囲に記載のスイッチング素子に相当する。フィルタコンデンサC11は、直流電源Eの正極−負極間に接続される。平滑コンデンサC13は、負荷LOADに並列に接続される。フィルタコンデンサC11および平滑コンデンサC13は、それぞれ、スイッチングコンバータ50の入出力を安定化させるものである。
【0027】
IV測定器60は、リアクトルL1の両端と、計測用ワイヤーを介して接続されている。IV測定器60は、リアクトルL1における高電位側の電位であるVinと、リアクトルL1における低電位側の電位であるVout、および、以下に説明するスイッチング処理の1サイクルにおけるリアクトルL1を流れる電流の最小値であるリアクトル最小電流IL1・minを常時測定しており、それら3つの値を制御ユニット20へリアルタイムで送信している。
【0028】
次に、スイッチングコンバータ50におけるスイッチング処理について説明する。スイッチングコンバータ50は、制御ユニット20からのSゲート信号により、スイッチング素子Sがターンオンとターンオフを繰り返すことによって、電圧を昇圧して出力する。図3はスイッチング素子Sがターンオフのときのスイッチングコンバータ50の状態を説明する説明図である。説明の便宜上、図からIV測定器60等は省いた。制御ユニット20からのSゲート信号によってスイッチング素子Sがターンオフのとき、直流電源Eからの電流はダイオードD15および負荷LOADへと流れる。この状態を初期状態とすると、直流電源Eの電圧(以下、入口電圧VLとも呼ぶ)と、電力供給による負荷LOADでの電圧(以下、出口電圧VHとも呼ぶ)は略等しい。
【0029】
そして、制御ユニット20からのSゲート信号によってスイッチング素子Sがターンオンになるとスイッチングコンバータ50における電流の状態が変わる。図4は、スイッチング素子Sがターンオンのときのスイッチングコンバータ50の状態を説明する説明図である。スイッチング素子Sがターンオンになると、直流電源Eからの電流は、リアクトルL1を介してスイッチング素子Sへと流れる。このとき電力がリアクトルL1に蓄積される。その後、再び、図3に示すようにスイッチング素子Sをターンオフにすることで、直流電源Eから供給される電力に、リアクトルL1に蓄積された電力が加わって負荷LOADに流れる。このため、入口電圧VLに比べ、出口電圧VHは昇圧された電圧値となる。このようなスイッチング素子Sがターンオン/オフを繰り返すスイッチングの制御を、制御ユニット20がSゲート信号をスイッチング素子Sに出力することにより行っており、この制御ユニット20による処理をスイッチング処理という。
【0030】
(A3)連続モードにおけるリアクトル平均電流算出処理:
次に、制御ユニット20が行っているリアクトル平均電流算出処理について説明する。制御ユニット20は、負荷LOADに供給する電力の制御(電力制御)及びそれに伴うスイッチングコンバータ50のスイッチング素子Sのスイッチングのタイミングの制御(以下、タイミング制御とも呼ぶ)を行っている。制御ユニット20は、リアクトルL1の平均電流IL1・aveの値を用いて所定の演算を行うことにより、電力制御およびタイミング制御を行っている。DC/DCコンバータにおいて平均電流IL1・aveを用いてタイミング制御および電力制御を行うことは公知の技術であるので説明は省略する。本実施例における制御ユニット20は、IV測定器60が取得したリアクトルL1の最小電流IL1・minを用いて、IL1・aveを算出している。本説明では、制御ユニット20が最小電流IL1・minを用いて平均電流IL1・aveを算出するリアクトル平均電流算出処理について説明する。
【0031】
図5は、制御ユニット20が行うリアクトル平均電流算出処理における演算処理の流れを示す説明図である。図5の各演算処理について、スイッチングコンバータ50における実際の動作モードを例に説明する。
【0032】
図6は、スイッチングコンバータ50の動作モードの一つである「連続モード」におけるリアクトルL1の電流(以下、「L1電流IL1」とも呼ぶ)の変化を示す説明図である。連続モードとは、L1電流が常時変化しているモードである。比較対象として、スイッチングコンバータ50の動作モードの一つである「不連続モード」を図7に示した。不連続モードについては、後で詳しく説明する。
【0033】
図6には、連続モードにおける2サイクル分のスイッチング処理におけるL1電流の変化を示した。連続モードにおけるスイッチング処理の1サイクルは、スイッチング素子SがターンオンとなってL1電流が上昇する期間(以下「オン期間Ton」とも呼ぶ)と、スイッチング素子SがターンオフとなってL1電流が下降する期間(以下、「オフ期間Toff」とも呼ぶ)とからなる。平均電流IL1・aveを算出するにあたり、オン期間TonにおいてリアクトルL1に蓄積された電荷の総和である電荷Q1と、オフ期間ToffにおいてリアクトルL1に蓄積された電荷の総和である電荷Q2とを定義する。Q1は、図6のハッチング部分に示すように、オン期間TonのL1電流とI=0とに挾まれた部分の面積として表すことができる。また、Q2は、図6のハッチング部分に示すように、オフ期間ToffのL1電流とI=0とに挾まれた部分の面積として表すことができる。
【0034】
図5において、制御ユニット20はIV測定器60から最小電流IL1・minを取得する(ステップS105)。具体的には、IV測定器60で常時L1電流を測定しており、IV測定器60が1サイクルにおける最小電流値をホールドすることにより最小電流IL1・minを取得し、その値を制御ユニット20にリアルタイムに送信する。図6に示すように、連続モードの場合、最小電流IL1・minは、スイッチング処理の1サイクルと1サイクルの境界におけるL1電流となる。また、本実施例における連続モードでは、連続する2つのサイクルにおける最小電流IL1・minは略等しいとして説明する。
【0035】
制御ユニット20は、最小電流IL1・minを取得後、最小電流IL1・minを用いて電荷Q1を算出する(ステップS110)。制御ユニット20は、電荷Q1を下記式(1)に基づいて算出する。
【0036】
【数1】

【0037】
式(1)において、オン期間Tonの値は、制御ユニット20が、直前のサイクルにおいて算出した平均電流IL1・aveから、所定の演算によって予め算出した値である。「ΔIon」は、図6に示すように、オン期間TonにおけるL1電流の変化量である。ΔIon、リアクトルL1のインダクタンスHL1、および入口電圧VLは下記式(2)の関係にある。式(2)から下記式(3)が導出できる。式(3)から、リアクトル電流の変化は電圧時間積に比例することが理解できる。制御ユニット20は、オン期間Tonと、インダクタンスHL1と、入口電圧VLとに基づいてΔIon算出し、算出したΔIonと式(1)とを用いて電荷Q1を算出していると考えることができる。実際には制御ユニット20は、上記説明した処理を一連の演算処理として行う。
【0038】
【数2】


【数3】

【0039】
次に、制御ユニット20は、最小電流IL1・minを用いて電荷Q2を算出する(ステップS115)。制御ユニット20は、電荷Q2を下記式(4)に基づいて算出する。
【0040】
【数4】

【0041】
上記式(1)における説明同様、オフ期間Toffの値は、制御ユニット20が予め算出した値を用いる。「ΔIoff」は、図6に示すように、オフ期間ToffにおけるL1電流の変化量である。ΔIoff、リアクトルL1のインダクタンスHL1、入口電圧VLおよび出口電圧VHは下記式(5)の関係にある。式(5)から下記式(6)が導出できる。制御ユニット20は、オフ期間Toffと、インダクタンスHL1と、入口電圧VLと、出口電圧VHとに基づいてΔIoffを算出し、算出したΔIoffと式(4)とを用いて電荷Q2を算出していると考えることができる。
【0042】
【数5】


【数6】

【0043】
Q1とQ2とを算出すると、制御ユニット20は、それら2つの値を用いて下記式(7)に基づいて平均電流IL1・aveを算出する(ステップS120)。
【0044】
【数7】

【0045】
Tcは、スイッチング処理の1サイクルに要する期間を示し、連続モードの場合は、Tc=Ton+Toffとなる。なお、本実施例では、ΔIonとΔIoffとを別個に算出したが、本実施例の場合は、連続する2サイクルの最小電流IL1・minは略等しいとしているので、|ΔIon|=|ΔIoff|として、ΔIon又はΔIoffの一方の値のみを算出するとしてもよい。
上記説明した処理によって、制御ユニット20は連続モードにおいて、最小電流IL1・minから平均電流IL1・aveを算出している。
【0046】
(A4)不連続モードにおけるリアクトル平均電流算出処理:
次に、スイッチングコンバータ50が不連続モードで動作している場合のリアクトル平均電流算出処理について説明する。制御ユニット20におけるリアクトル平均電流算出処理の流れ(図5)は、連続モードの場合と同様である。
【0047】
「不連続モード」におけるL1電流の変化を示す図7には、2サイクル分のスイッチング処理におけるL1電流の変化を示した。不連続モードにおけるスイッチング処理の1サイクルは、スイッチング素子SがターンオンとなってL1電流が上昇する期間であるオン期間Tonと、スイッチング素子SがターンオフとなってL1電流が下降する期間であるオフ期間Toffと、スイッチング素子Sがターンオフの状態を維持したままL1電流がゼロの状態を保持している期間(以下、「ゼロ期間Tz」とも呼ぶ)からなる。
【0048】
不連続モードにおけるリアクトル平均電流算出処理を図5にそって順に説明する。最小電流IL1・minをIV測定器60から取得する(図5:ステップS105)。次に、電荷Q1を算出する(ステップS110)。不連続モードの場合、図7に示したQ1は、連続モードの場合と同様に、式(1)〜式(3)を用いて算出することができる。その際、図7に示すように、不連続モードでは、最小電流IL1・minはゼロとなる。本実施例では、IV測定器60の測定結果より最小電流IL1・min=0を取得する。他の処理方法として、スイッチングコンバータ50が不連続モードで動作する際に、制御ユニット20が予め最小電流IL1・min=0としてリアクトル平均電流算出処理を行うとしてもよい。
【0049】
次に電荷Q2を算出する(ステップS115)。不連続モードでは、図7に示すように、ΔIonとΔIoffとは等しいので下記式(8)が成り立つ。
【0050】
【数8】

【0051】
上記式(3)、式(4)、式(6)、式(8)より、下記式(9)として電荷Q2を算出することができる。
【0052】
【数9】

【0053】
式(9)から分かるように、不連続モードにおける電荷Q2は、オフ期間ToffとΔIoffとを用いずに、オン期間TonとΔIonとから算出することが可能である。制御ユニット20は電荷Q2を算出すると、式(7)に基づいて平均電流IL1・aveを算出する(ステップS120)。
上記説明した処理によって、制御ユニット20は不連続モードにおいて、最小電流IL1・minから平均電流IL1・aveを算出している。
【0054】
以上説明したように、本実施例におけるスイッチングコンバータ50においては、制御ユニット20は、取得したL1電流の最小電流IL1・minの値に基づいて平均電流IL1・aveを算出している。従って、動作モードが連続モードの場合は勿論、不連続モードの場合においても、実際の平均電流IL1・aveと略等しい値の平均電流IL1・aveを算出することができる。
【0055】
一方、仮にオン期間Tonの中点の時間のL1電流を測定し、その値を平均電流IL1・aveとして採用し電力制御およびタイミング制御を行う場合は、連続モードの場合はオン期間Tonの中点の時間のL1電流は平均電流IL1・aveと略等しくなるが、不連続モードの場合は、オン期間Tonの中点の時間のL1電流と、実際の平均電流IL1・aveとの値は大きく異なる。
【0056】
特許請求の範囲との対応関係としては、制御ユニット20が特許請求の範囲に記載の算出部および制御部に相当する。
【0057】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
(B1)変形例1:
上記実施例では、連続する2サイクルの最小電流IL1・minが略等しい場合について、平均電流IL1・aveを算出したが、これに限らず、様々なモードにおいて、最小電流IL1・minに基づいて平均電流IL1・aveを算出することが可能である。
【0059】
図8(A)にその一例として、L1電流が上昇途中である連続モードについて示した。すなわち、連続する2サイクルの最小電流IL1・minが異なる。このような動作モードにおいても、Q1は、測定によって取得した最小電流IL1・minと式(1)〜式(3)に基づいて、連続モードの場合と同様に算出することが可能である。電荷Q2は、式(4)を用いることによって算出可能である。ただし、変形例1における動作モードの場合、連続する2サイクルの最小電流IL1・minの値が異なるので、図8(A)に示すように、Q1の算出に用いる最小電流をIL1・min・Q1、Q2の算出に用いる最小電流をIL1・min・Q2とすると、IL1・min・Q2=IL1・min・Q1+ΔIon+ΔIoffとして算出することができる。よって、Q2を算出する際に、式(4)のIL1・minを、IL1・min・Q1+ΔIon+ΔIoffに置き換えることで電荷Q2が算出可能である。すなわち、下記式(10)に基づいて、制御ユニット20は電荷Q2を算出することが可能である。式(10)においては、IL1・min・Q1をIL1・minと表している。すなわち、Q1の算出に用いる最小電流と同じ値を用いてQ2が算出可能である。そして、算出した電荷Q1および電荷Q2に基づいて、式(7)によって平均電流IL1・aveが算出可能である。
【0060】
【数10】

【0061】
上記具体例で示したように、制御ユニット20は、測定によって取得した最小電流IL1・minに基づいて、種々の動作モードにおける平均電流IL1・aveを算出することが可能である。その他、上記説明した演算処理を用いて、図8(B)や図8(C)の動作モードの平均電流IL1・aveを、最小電流IL1・minに基づいて算出可能である。
【0062】
(B2)変形例2:
上記実施例では、車両に搭載されたDC/DCコンバータ(ハードスイッチングコンバータ)を例に説明したが、これに限ることなく、直流を昇圧または降圧して電力を機器に供給する種々のDC/DCコンバータに適用可能である。図9は、その一例として、上記説明したリアクトル平均電流算出処理を用いたソフトスイッチングコンバータを示す説明図である。ソフトスイッチングコンバータは、上記説明したスイッチングコンバータ50に、補助回路として補助回路52が加わった回路構成をしている。補助回路52は、リアクトルL2、ダイオードD1、スイッチング素子S2、ダイオードD2、スナバダイオードD3、スナバコンデンサC2を備える。リアクトルL2は、一端がリアクトルL1の高電位側に接続される。ダイオードD2は、スイッチング素子S2とスナバダイオードD3との間に接続される。スイッチング素子S2は、一端がダイオードD2のアノードに接続され、制御ユニット20から送信されたS2ゲート信号に応じてターンオン・オフ動作する。スナバダイオードD3は、アノードがスイッチング素子S1の一端に接続されるとともに、カソードがスイッチング素子S2に他端に接続される。スナバコンデンサC2は、一端がスナバダイオードD3のカソードに接続されるとともに、他端がスイッチング素子S1に接続される。ダイオードD1は、スイッチング素子S2を保護するために並列に接続されている。スイッチング素子S2は、特許請求の範囲に記載の補助スイッチング素子に相当する。スナバダイオードD3およびスナバコンデンサC2は、スイッチング素子S1のオフ時に生じる過渡的な逆起電力を吸収するためのものである。
【0063】
ソフトスイッチングコンバータは、回路を構成するスイッチング素子S2のスイッチング動作のタイミングを制御することによって、スイッチング素子S1がスイッチング動作をする際の、スイッチング素子の両端にかかる電圧を低減し、スイッチング素子S1のスイッチングによる電力損失を低減するソフトスイッチング動作を用いたコンバータである。なお、ソフトスイッチングコンバータの詳細な動作原理については、特開2009−165245において開示されている。このようなスイッチングコンバータにもリアクトル平均電流算出処理が適用可能であり、上記実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…燃料電池システム
20…制御ユニット
30…電源装置
50…スイッチングコンバータ
52…補助回路
60…電圧測定器
C1…フィルタコンデンサ
C2…スナバコンデンサ
C3…平滑コンデンサ
C11…フィルタコンデンサ
C13…平滑コンデンサ
D1…ダイオード
D2…ダイオード
D3…スナバダイオード
D4…ダイオード
D5…ダイオード
D14…ダイオード
D15…ダイオード
S…スイッチング素子
S1…スイッチング素子
S2…スイッチング素子
L1…リアクトル
L2…リアクトル
Q2…電荷
Q1…電荷
LOAD…負荷
E…直流電源
FC…燃料電池
VH…出口電圧
VL…入口電圧
WH…ワイヤーハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータであって、
前記チョッパ動作の1サイクルにおける前記直流リアクトルの最小電流値に基づいて前記1サイクルにおける前記直流リアクトルの平均電流値を算出する算出部と、
前記算出した前記平均電流値に基づき前記電力制御を行う制御部と
を備える
DC/DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1記載のDC/DCコンバータであって、
前記算出部は、前記直流リアクトルの前記最小電流値を計測することによって取得し、前記取得した前記最小電流値に基づいて前記平均電流値を算出する
DC/DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のDC/DCコンバータであって、
前記直流リアクトルに流れる電流の向きが一方向である
DC/DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載のDC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記スイッチング素子のスイッチングのタイミングを制御することにより、前記直流リアクトルに流れる電流が一定期間ゼロを保持する動作モードである不連続モードによって前記電力制御を行う
DC/DCコンバータ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載のDC/DCコンバータであって、
補助スイッチング素子を備え、
前記制御部は、前記補助スイッチング素子のスイッチングのタイミングを制御することによって、前記スイッチング素子をスイッチングする際の印加電圧を制御するソフトスイッチング制御を行う
DC/DCコンバータ。
【請求項6】
直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータの制御方法であって、
前記チョッパ動作の1サイクルにおける前記直流リアクトルの最小電流値に基づいて前記1サイクルにおける前記直流リアクトルの平均電流値を算出し、
前記算出した前記平均電流値に基づき前記電力制御を行う
制御方法。
【請求項7】
燃料電池システムであって、
負荷に対して電力を供給する燃料電池と、
直流リアクトルと、スイッチング素子のスイッチングとによる所定のチョッパ動作によるサイクルを繰り返すことによって、入力した直流の電力に対応して電力制御した直流を出力するDC/DCコンバータと
を備え、
前記DC/DCコンバータは、前記チョッパ動作の1サイクルにおける前記直流リアクトルの最小電流値に基づいて前記1サイクルにおける前記直流リアクトルの平均電流値を算出する算出部と、前記算出した前記平均電流値に基づき前記電力制御を行う制御部とを備える
燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−254646(P2011−254646A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127563(P2010−127563)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】