説明

DC/DCコンバータ

【目的】 負荷短絡時や出力待機時に出力電流を遮断して電子部品が破損されるのを防止する。
【構成】 入力電圧Viを制御用IC1に供給して、制御用IC1の発振出力に応じてスイッチングトランジスタQ1をスイッチングし、コイルLに蓄積されたエネルギを整流用ダイオードDiを介して出力するDC/DCコンバータにおいて、整流用ダイオードDiと出力端との間にトランジスタQ2を接続し、このトランジスタのオン,オフのしきい値電圧差と入力および出力電圧差を利用し、出力短絡時または待機時にトランジスタQ2を非導通にし、過大な短絡電流が流れるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はDC/DCコンバータに関し、特に、負荷を短絡したときに発振を停止させる保護回路を内蔵した制御用の集積回路(IC)を使用する他励式非絶縁型のDC/DCコンバータに関する。
【0002】
【従来の技術】他励式非絶縁型DC/DCコンバータに使用されている制御用ICは、通常電圧検出型の短絡保護回路を内蔵しているのが一般的である。この保護回路は、出力電圧を常に監視しておき、負荷短絡時に出力電圧が低下したことを検出して、スイッチングトランジスタの発振を停止し、オフ状態にさせるものである。
【0003】図3はそのような他励式非絶縁型DC/DCコンバータの基本回路図であり、入力電圧Viとして、たとえば直流12Vが入力されたとき、出力電圧Voとして、たとえば5Vに降圧させるものである。図3において、制御用IC1の電源入力端子Vccには入力電圧Viが与えられ、接地端子Gは接地される。発振出力端子OUTは、スイッチングトランジスタQ1のベースに接続されており、このスイッチングトランジスタQ1のエミッタには入力電圧Viが与えられ、スイッチングトランジスタQ1のコレクタはコイルLの一端に接続されるとともに、整流用ダイオードDiのカソードに接続されている。コイルLの他端は出力端に接続されるとともに、抵抗R1を介して制御用IC1の入力端子INに接続されている。整流用ダイオードDiのアノードは接地され、コイルLの他端と接地間には平滑用のコンデンサC1が接続されている。また、制御用IC1の入力端INは抵抗R2を介して接地され、制御用IC1のSCP端子と接地間にはコンデンサC2が接続されている。このコンデンサC2は負荷が短絡したときに充電され、充電を終了したときに抵抗R1を介して出力電圧Voが出力されていなければ、制御用IC1の発振出力端子OUTから発振出力を停止させる。
【0004】このように構成された従来のDC/DCコンバータにおいて、たとえば12Vの入力電圧Viが入力されると、制御用IC1は出力電圧Voが5Vとなるような発振出力をスイッチングトランジスタQ1のベースに与え、スイッチングトランジスタQ1がスイッチング動作する。このスイッチング出力は整流用ダイオードDiによって整流され、コイルLと平滑用コンデンサC1とによって平滑され、5Vの直流電圧が出力電圧Voとして出力される。そして、負荷が短絡すると、コンデンサC2が充電され、充電が完了したときに、出力電圧Voが出ていなければ、制御用IC1はスイッチングトランジスタQ1への発振出力を停止させる。
【0005】図4は従来のDC/DCコンバータの他の例であって、たとえば5Vの入力電圧Viに対して、−12Vの出力電圧Voを出力する回路図である。図4において、コイルLの接続位置に整流用ダイオードDiを接続し、整流用ダイオードDiの接続位置にコイルLを接続した以外は、前述の図3と同じであり、入力電圧Viとして5Vが入力されると、出力電圧Voとして−12Vを出力し、負荷が短絡されたときの動作は図3と同じである。
【0006】図5は従来のDC/DCコンバータのさらに他の例であって、たとえば5Vの直流電圧が入力されると、+12Vの直流電圧を出力する昇圧型である。図5R>5において、コイルLと整流用ダイオードDiとを直列接続し、コイルLと整流用ダイオードDiとの接続点にスイッチングトランジスタQ1のコレクタを接続し、スイッチングトランジスタQ1のエミッタを接地した以外は図3と同様にして構成される。この図5に示したDC/DCコンバータは、入力電圧ViによってコイルLにエネルギが蓄積され、制御用IC1の発振出力に応じてスイッチングトランジスタQ1がスイッチングすると、コイルLに蓄積されたエネルギが整流用ダイオードDiを介して出力され、入力電圧Viが昇圧されて出力電圧Voとして出力される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図5に示したDC/DCコンバータにおいては、負荷が短絡すると、前述の図3R>3と同様にして、制御用IC1の発振出力がスイッチングトランジスタQ1のベースに与えられなくなり、スイッチングトランジスタQ1がスイッチング動作を停止する。しかし入力電圧Viが与えられている限り、図6に示すように、コイルLから整流用ダイオードDiを介して短絡電流が流れてしまい、コイルLや整流用ダイオードDiを破壊してしまうおそれがある。
【0008】また、図7に示すように、制御用IC1の制御端子CTLと入力電源との間にスイッチ2を接続し、スイッチ2をオフさせたときには待機状態とし、スイッチ2をオンさせたときのみ、制御用IC1から発振出力をスイッチングトランジスタQ1のベースに与えるように制御することができる。しかしながら、スイッチ2をオフして、制御用IC1の発振を停止させて待機状態にしても、入力電圧Viが供給されているため、出力端に負荷電流に応じた電圧Vo=Vi−VD (VD は負荷電流に応じて変化する)が出力されてしまい、負荷側に接続された機器や装置の誤動作を引起こすなどの不具合を生じる。
【0009】それゆえに、この発明の主たる目的は、負荷短絡時や出力待機時に出力電流を遮断できるようなDC/DCコンバータを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、負荷短絡時に発振を停止できる保護回路を内蔵した集積回路を使用するDC/DCコンバータにおいて、集積回路と負荷との間に接続される出力電流遮断用のトランジスタを含み、負荷短絡時または待機時にトランジスタを非導通にできるように、制御電圧を与えるように構成される。
【0011】請求項2に係る発明は、請求項1のトランジスタのしきい値電圧と入力電圧および出力電圧の電圧差に応じて、トランジスタを遮断する。
【0012】
【作用】この発明に係るDC/DCコンバータは、負荷短絡時または待機時に集積回路と負荷との間に接続されている出力電流遮断用のトランジスタを非導通にするようにしたので、負荷短絡時にDC/DCコンバータを構成する各素子が破壊されるおそれをなくすことができる。
【0013】
【実施例】図1はこの発明の一実施例の電気回路図である。図1において、整流用ダイオードDiのカソードと出力端との間にはトランジスタQ2のエミッタ−コレクタが接続され、トランジスタQ2のベースは抵抗R3を介して接地されるとともに、抵抗R4を介してトランジスタQ2のエミッタに接続される。それ以外の構成は図7R>7と同じである。
【0014】通常動作時においては、制御用IC1の発振動作によってスイッチングトランジスタQ1がスイッチングし、コイルLに蓄積されたエネルギが整流用ダイオードDiを介して出力されるが、整流用ダイオードDiのカソード、すなわちA点の電圧VA は次の第(1)式で表すことができる。
【0015】VA =VO +VCES ≒VO …(1)
また、負荷短絡時には、電圧VA は次の第(2)式で表すことができる。
【0016】VA =Vi−VD ≒Vi …(2)
ここで、VCES はトランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間電圧であり、VD は整流用ダイオードDiのカソード・アノード間によって生じる電圧降下分の電圧である。上述の第(1)式および第(2)式において、VCES ,VD <<Vi,Voであるので無視すると、通常動作時はVA ≒Vo,負荷短絡時はVA ≒Viと置くことができる。よって、通常動作時と負荷短絡時での電圧VA の比はVo/Viとなる。
【0017】また、トランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧VBEはVBE=VA (R3/(R3+R4))となり、通常動作時と負荷短絡時でのVBEの比はDC/DCコンバータの入力電圧Viと出力電圧Voの比Vo/Viと同じになる。
【0018】一方、バイポーラトランジスタのオン状態とオフ状態のしきい値電圧は一般に、VBE(on)MIN.=約0.6Vであり、VBE(off) MAX.=約0.4Vであり、その電圧比はVBE(on)/VBE(off) =約1.5となる。
【0019】実際のトランジスタQ2のベースエミッタ間電圧VBEは、VBE=VA (R3/(R3+R4))であり、電圧VA を抵抗R3とR4とで分圧して得られる。今、入力電圧Vi,出力電圧Voのとき、ベース・エミッタ間電圧VBEがオン状態(VBE=0.6V)になるように、出力電圧Voに応じて抵抗R3とR4とを設定する。また、抵抗R4はトランジスタQ2に負荷電流に応じてベース電流が流せる値とする。次に、この抵抗R3とR4の定数のとき、入出力電圧比(昇圧比)がVo/Vi=1.5以上であれば、負荷短絡時にトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧VBEは、VBE=0.4V以下となり、オフ状態とすることができる。
【0020】ただし、昇圧比が1.5以下の場合、負荷短絡時にVBE=0.4V以上となり、オフ状態にはすることができない。つまり、ベース・エミッタ間電圧VBEのオン/オフのしきい値電圧よりも昇圧比が大の場合においてのみ適用できる。したがって、通常動作時においては、トランジスタQ2がオンし、負荷側へ出力電圧Voを出力することができ、負荷短絡時にはトランジスタQ2がオフし、出力電圧Voを遮断することが可能となる。
【0021】図2はこの発明の他の実施例を示す電気回路図である。この図2に示した実施例は図1のバイポーラトランジスタQ2に代えて、MOS FETQ3を用いたものであり、その他の構成は図1と同じであり、MOS FETQ3のゲートとソース間に与えられる設定電圧VGSのみが異なる。このようにMOS FETQ3を用いても、図1と同様の効果を得ることができる。
【0022】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、集積回路と負荷との間にトランジスタを接続し、負荷短絡時または待機時にトランジスタを非導通にするようにしたので、負荷短絡時または待機時に過大な負荷電流が流れて電子部品が破損するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の電気回路図である。
【図2】この発明の他の実施例の電気回路図である。
【図3】従来の他励式非絶縁型DC/DCコンバータの基本回路図である。
【図4】従来のDC/DCコンバータの他の例を示す回路図である。
【図5】従来の昇圧型のDC/DCコンバータの電気回路図である。
【図6】図5に示したDC/DCコンバータで短絡電流が流れる動作を説明するための図である。
【図7】従来の待機型のDC/DCコンバータの一例を示す電気回路図である。
【符号の説明】
1 制御用IC
2 スイッチ
Q1,Q2 トランジスタ
Q3 MOS FET
Di 整流用ダイオード
L コイル
R1〜R4 抵抗
C1,C2 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 負荷短絡時に発振を停止できる保護回路を内蔵した集積回路を使用するDC/DCコンバータにおいて、前記集積回路と負荷との間に接続される出力電流遮断用のトランジスタを備え、負荷短絡時または待機時に前記トランジスタを非導通にできるように、該トランジスタに制御電圧を与えることを特徴とする、DC/DCコンバータ。
【請求項2】 前記トランジスタのしきい値電圧と入力電圧および出力電圧の電圧差に応じて該トランジスタを遮断することを特徴とする、請求項1のDC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平7−95764
【公開日】平成7年(1995)4月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−236147
【出願日】平成5年(1993)9月22日
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)