説明

DENSPMを用いて肝細胞癌腫を処置する方法

現行のHCCのための全ての全身性の治療は、一様に乏しい結果を伴い、そして、単独でも、他の処置と組み合せでも、生存率に任意の改善を伴う化学療法剤はない。本開示は、肝細胞癌腫を処置するための方法を提供する。この方法は、肝細胞癌腫の処置を必要とする被験体に、肝細胞癌腫を処置するための有効量のDENSPMもしくはその薬学的に受容可能な塩を、投与する工程を包含し、また、肝細胞癌腫の処置を必要とする被験体に対して28日間の処置レジメンを実施する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月12日に出願された、米国特許出願第60/561,438号(その全体が、本明細書中に参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の説明)
(発明の分野)
本発明は、肝細胞癌腫を処置する方法における、DENSPMの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
肝細胞癌腫(HCC)は、世界中の先進地域においては、比較的珍しい。しかし、HCCには、毎年およそ100万人が罹患し、そして、世界で5番目に最も一般的な新生物を代表する(非特許文献1)。The American Cancer Societyは、17,300の新規な肝臓癌の症例が、2003年に米国において診断され、このうち、およそ2/3が、HCCであると見積もっている。同年に、14,400人が肝臓癌により死亡したと予想され、これらの腫瘍に功を奏する治療がないことを反映している。
【0004】
今までのところ、治療的切除を除いて、HCCのための処置は、生存に対して最小限の効果を有した。不運にも、HCC患者のおよそ90%が、切除不能のHCCを有する。さらに、切除可能なHCCを有する患者において、潜在的に治療的な肝切除を行なった後でさえも、新しいHCCが、これらの患者の70%の硬変レムナントにおいて生じ、そして、しばしば、正位(orthotropic)の肝臓移植の後に、移植された肝臓において生じる。HCCを処置するための他のアプローチ(例えば、病巣内エタノール注入、化学的塞栓形成術(chemoembolization)、高周波切除(radiofrequency ablation)、凍結外科学および放射線療法)は、選択された患者集団における成功を実証している。しかし、これらのアプローチの有効性は、決定的には確立されていない。経皮的な病巣内エタノール注入と、経動脈的な化学的塞栓形成術の両方は、限定的な成功が示されているが、深刻な副作用の危険を伴う。放射線療法は、通常は選択肢とはならない。なぜならば、肝臓は、非常に放射線感受性であるからである。HCCのための全身性の化学療法は、一様に応答率が乏しく、それゆえ、一般には、治療的切除に不適格な患者のための予備とされる。
【0005】
今までのところ、HCCのための全ての全身性の治療は、一様に乏しい結果を伴い、そして、単独でも、他の処置と組み合せでも、生存率に任意の改善を伴う化学療法剤はない(非特許文献2)。さらに、HCCを有する患者の大部分は、根底に肝疾患を有しており、従って、その化学療法レジメンに耐える能力または外科的療法を受ける能力は、しばしば、損なわれる。
【非特許文献1】Alsowmely,A.M.ら、「Aliment Pharmacol.Ther.」、2002年、第16巻、第1号、p.1−15
【非特許文献2】Fuchs,C.S.ら、「Cancer」、2002年、第94巻、第12号、p.3186−91
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
利用可能な処置の選択肢が乏しいことを考慮して、肝細胞癌腫を処置するための新規レジメンに対する明らかな必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、肝細胞癌腫を処置するための方法を提供する。本発明のさらなる局面は、部分的には以下の明細書中に示され、そして、部分的には明細書により理解され、そして、部分的には本発明を実施することによって理解され得る。
【0008】
一実施形態において、本発明は、肝細胞癌腫を処置するための方法を提供し、この方法は、肝細胞癌腫の処置を必要とする患者に、治療有効量のDENSPMまたはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する。DENSPMまたはその薬学的に受容可能な塩は、静脈内にか、病巣内にか、または、肝臓内に投与され得る。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、切除不能な肝細胞癌腫を有する患者が処置される。他の実施形態において、他の処置方法に対して不応性の肝細胞癌腫を有する患者が処置される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、DENSPMは、1日に1回投与される。他の実施形態において、DENSPMは、1日に2回、3回、4回もしくはそれ以上投与されるか、または、注入として連続的に投与される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、DENSPMは、約30mg/m〜約300mg/m(これを含めて)の範囲の用量で投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、DENSPMは、30mg/m、60mg/m、90mg/m、120mg/m、150mg/m、180mg/m、210mg/m、240mg/m、270mg/m、300mg/mの用量、または、これらの間の任意の増加分の用量で投与される。例えば、DENSPMは、30mg/m〜60mg/m、90mg/m〜120mg/m、120mg/m〜150mg/m、150mg/m〜180mg/m、180mg/m〜210mg/m、210mg/m〜240mg/m、240mg/m〜270mg/m、270mg/m〜300mg/mの範囲の用量で投与され得る。
【0012】
上記の本発明のいくつかの実施形態において、DENSPM自体が投与される。上記の他の実施形態において、DENSPMの薬学的に受容可能な塩が投与される。DENSPMの好ましい薬学的に受容可能な塩としては、DENSPM塩酸塩が挙げられる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、DENSPMは、HCCのための他の治療を何も受けていない患者に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、患者は、HCCのための他の治療を受けているが、HCCを処置するための他の抗癌剤は何も受けていない。
【0014】
本発明のさらなる目的および利点は、部分的に以下の明細書に示され、そして、部分的に明細書から明らかであり、または、部分的に本発明を実施することによって理解され得る。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に指摘された要素および組み合わせによって理解され、そして、達成される。
【0015】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明の療法が、単に例示的かつ説明的であり、そして特許請求される本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態の説明)
本発明が、より容易に理解され得るために、特定の用語が本明細書中で定義される。さらなる定義は、詳細な説明全体を通して示される。
【0017】
用語「肝細胞癌腫」および「HCC」は、肝臓の主要な細胞型である肝細胞から生じる癌をいうために、本明細書中で交換可能に使用される。
【0018】
用語「DENSPM」は、本明細書中で使用される場合、N,N11−ジエチルノルスペルミン(これは、N,N’−ビス[3−(エチルアミノ)プロピル],1,3−プロパンジアミンである)を指す。他にはっきりと述べられない限り、用語DENSPMは、DENSPMおよびそのあらゆる薬学的に受容可能な塩を包含する。DENSPMの好ましい塩は、N,N’−ビス[3−(エチルアミノ)プロピル],1,3−プロパンジアミン四塩酸塩である。DENSPMは、公知の機能不全型ポリアミンアナログであり、これは、当該分野で公知の方法を用いて調製され得る。例えば、Bergeronは、米国特許第5,091,596号;同第5,342,945号;および同第5,866,613号、ならびに、J.Med.Chem.1988,31(6):1183−90(各々が、本明細書により参考として援用される)において、DENSPMのようなポリアミンの合成を記載する。
【0019】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、本明細書中で使用される場合、患者に安全に投与され得る塩を包含する。DENSPMの好ましい薬学的に受容可能な塩としては、以下の酸から調製されたものが挙げられるがこれらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酸(acidic)、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスホニン酸(methane dysphonic)、蟻酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。薬学的に受容可能な塩はまた、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウムおよびカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛)のような金属からも調製され得る。薬学的に受容可能な塩としてはまた、例えば、以下の酸を用いて形成された塩が挙げられるがこれらに限定されない:硫酸、ピロ硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸、リン酸一水素(monohydrogenphosphate)、リン酸二水素(dihydrogenphosphate)、メタリン酸、ピロリン酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、プロピオン酸、デカン酸、カプリル酸、アクリル酸、蟻酸、イソ酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、プロピオール酸(propiolate)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ブチン−1,4−ジオエート(dioate)、3−ヘキシン−2,5−ジオエート、安息香酸、クロロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、フタル酸、キシレンスルホン酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニル酪酸、クエン酸、乳酸、馬尿酸、β−ヒドロキシ酪酸、グリコール酸、マレイン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびマンデル酸。
【0020】
用語「処置」、「処置方法」、およびその同族語は、存在する状態の処置、ならびに、予防手段(prophylactic measure)または防止手段(preventative measure)を指す。処置を必要とするものとしては、既にHCCを有する個体、ならびに、HCCの危険がある個体または最終的にはHCCになり得る個体が挙げられ得る。
【0021】
用語「有効用量」、「有効な量」、「有効量」およびその同族語は、本明細書中で使用される場合、HCCの処置および/または管理において恩恵を与える、DENSPMの量を指す。有効量は、当該分野であるか、または、例えば、実施例に記載される方法によって決定され得る。本発明の一実施形態において、肝細胞癌腫を処置するための有効量は、患者においてHCC腫瘍の増殖を阻害するか、または、HCC腫瘍のサイズを減らすために必要な量である。患者に投与される場合、有効量は、HCCの重篤度;個々の患者のパラメータ(例えば、体調、身体の大きさおよび体重);同時に行なう処置(ある場合);処置の頻度;および、投与様式に依存する。付随する療法(存在する場合)もまた、有効量に影響し得る。一般に、治療レベルから最大耐用量までの範囲の用量を投与することが好ましい。
【0022】
「最大耐用量」すなわち「MTD」は、本明細書中で使用される場合、成人患者がHCCを処置するために安全に投与され得る、DENSPMの最大用量をいう。最大耐用量は、慣用的な実験のみを用いて当業者により決定され得る。
【0023】
用語「治療レベル」は、本明細書中で使用される場合、特定の患者において治療的に有効なDENSPMの最小濃度を意味する。当然ながら、当業者は、治療レベルおよびMTDが、処置される個体および状態の重篤度に依存して変動し得ることを認識する。例えば、個々の患者の年齢、体重および病歴が、治療の治療効率に影響し得る。有能な医師であれば、これらの要因を考慮し、そして、用量が所望の治療成果を達成することを保証するために過度の実験を行なうことなく、用量レジメンを調節することができる。臨床医および/または処置医は、どのように、そして、いつ、個々の患者の応答と関連して、治療を中断、調節、および/または終了するかを知っていることもまた、注意される。
【0024】
用語「投与する」およびその同族語は、本明細書中で使用される場合、患者にDENSPMを与える行為を指す。種々の投与経路が利用可能である。特定の投与経路は、HCCの重篤度、ならびに、他の要因(例えば、医師および/または患者に対する便利さ)に依存する。本発明の方法は、一般に、医療的に受容可能な任意の投与様式(臨床的に容認できない有害作用を引き起こすことなく、DENSPMの有効レベルを生じる任意の様式を意味する)を用いて実施され得る。投与様式としては、経口、直腸、舌下、局所、口腔内、経鼻、直腸、膣、経皮、および非経口の投与経路が挙げられる。用語「非経口」は、本明細書中で使用される場合、皮下、静脈内、ボーラス注射、腹腔内、筋肉内、および注入の投与経路を包含する。静脈内投与経路が好ましい。
【0025】
用語「被験体」および「患者」は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタおよびげっ歯類を意味するために、本明細書において交換可能に使用される。ヒト被験体が好ましい。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「切除不能な肝細胞癌腫(unresectable hepatocellular carcinoma)」とは、標準的な外科技術を用いて(例えば、部分的な肝切除によってか、または、正位(orthotropic)の肝移植によって)治癒され得ないHCCを意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「不応性(refractory)」は、障害(例えば、処置に対して抵抗性であるHCC)を意味する。他の処置方法に対して不応性であるHCCを有する患者としては、HCCを処置するための標準的なアプローチ(例えば、病巣内エタノール注入、化学的塞栓形成術、高周波切除、事前手術(prior surgery)、放射線療法または化学療法)に対して正に応答しない患者が挙げられる。
【0028】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、本明細書中で使用される場合、患者への投与に適した、1種以上の適合性の固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、または被包物質(encapsulating substance)を意味する。用語「キャリア」は、天然もしくは合成の、有機成分もしくは無機成分を意味し、適用を容易にするために、活性成分であるDENSPMがキャリアと組み合わされる。
【0029】
用語「薬学的組成物」および「薬学的調製物」は、薬学的に受容可能なキャリアと会合したDENSPMを意味するために、本明細書において交換可能に使用される。賦形剤および/またはアジュバントが、必要に応じて薬学的調製物に添加され得る。DENSPM調製物は、単位投薬形態で簡便に提供され得、そして、製薬学の分野で周知の方法によって調製され得る。静脈内投与に適した処方物が好ましい。その比較的高い溶解性に起因して、DENSPMは、その塩酸塩として、注射用滅菌水(WFI)中に溶解され得る。このような溶液は、個々の用量バイアルに充填され、そして、将来的な再構成および投与のために凍結乾燥され得る。
【0030】
適切な水性および非水性の賦形剤の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、油、注射用有機エステル、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な流動性は、例えば、界面活性剤を使用することによって維持され得る。
【0031】
組成物はまた、アジュバント(例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤)を含み得る。微生物の活動の防止は、種々の抗細菌剤および/または抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなど)を含めることによって達成され得る。また、等張化剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を組成物中に含むこともまた、望ましくあり得る。
【0032】
非経口投与(例えば、静脈内投与)について、DENSPMを含む薬学的組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の、等張な懸濁液、溶液もしくはエマルジョンとして処方され得、そして、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方用の因子(formulatory agent)を含み得る。あるいは、組成物は、滅菌の発熱物質なしの水もしくは等張の生理食塩水などの液体を用いて使用前に再構成するために、乾燥形態(例えば、粉末、結晶または凍結乾燥した固体)で提供され得る。これらは、滅菌のアンプルもしくはバイアル中で使用するために提供され得る。
【0033】
抗癌治療は、しばしば、他の型の化学療法(他の化学療法剤を含む)と組み合わせて与えられる。好ましい実施形態において、DENSPMは、任意の他の抗癌剤を受けていないHCCを有する患者に投与される。これらの患者は、必要に応じて、他の抗癌レジメン(例えば、放射線療法)を受け得る。
【0034】
実施例は、DENSPMがHCCを有する患者に投与される本発明の一実施形態、ならびに、治療用量および最大耐用量の決定方法を例示する。
【0035】
本発明の他の実施形態は、本明細書中に開示される本発明の明細書および実施を考慮すれば、当業者に明らかである。明細書および実施例は、例としてみなされるのみであり、本発明の真の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲により示されることが意図される。
【実施例】
【0036】
(実施例1:処置レジメン)
第1日を、処置の1日目として規定する。以下のベースライン評価は、代表的に、DENSPMの1回目の投薬に先立ち、第1日に行なう:健康診断、生命徴候、臨床検査(例えば、血液検査(hematology)、凝血検査(coagulation)、化学反応(chemistry)および尿検査)、活動状態(カルノフスキー)、有害事象のモニタリング、および、同時の投薬のモニタリング。
【0037】
処置サイクルの長さは、28日である。サイクル1の間、このサイクルの最初の12日間(例えば、第1日、第3日、第5日、第8日、第10日および第12日)に、患者は、毎週3回、月水金もしくは火木土に単回15分のIV注入としてDENSPMを受ける。第12日の処置以降は、患者は、次の処置サイクルを開始する前に、DENSPMなしの処置を16日間受ける。
【0038】
DENSPM処置は、各処置サイクルの第1週と第2週の間に、月水金もしくは火木土のスケジュールのいずれかにて、外来患者ベースで行う。適切な用量が引かれ、さらに、50mLの通常の生理食塩水中に希釈され、そして、1日に1回、末梢静脈内へと、15分間にわたり、静脈内注入される。患者は、DENSPMの投与後90分間は観察のための診療所内に留まる。患者が診療所から出る前に、生命徴候を取る。身長および理想体重を、表面積を計算するために使用する。男性については、理想体重は、50kg+2.3kg(60インチよりも大きい身長(インチ)の各々)として規定される。女性については、理想体重は、45.5kg+2.3kg(60インチよりも大きい身長(インチ)の各々)として規定される。60インチ以下の身長を有する個体については、理想体重は、50kg(男性)または45.5kg(女性)として規定される。
【0039】
処置のスケジュールが中断された場合は、全6用量の処置サイクルを達成するために、処置の経過が5日を超えない限りは、損なわれた用量を補う。次の処置サイクルの開始は、代表的に、最後の投薬から21日以上経過した後に計画され、月曜日もしくは火曜日に開始される。患者が、その後の処置サイクルを開始する前に、回復状態を完全に満たさなかった場合、治療のその後のサイクルの実施を遅らせ、この場合、患者を7日後に再評価する。治療のその後のサイクルの開始は、毒性からの完全な回復を可能にするために、最大14日間遅らせ得る。回復の基準を満たさず、計画された処置期日から14日以内に処置を開始できない、あらゆる患者は、治療を中断され得る。
【0040】
代表的に、サイクルの間には、腎機能検査および肝機能検査が行なわれ、血液検査が評価され、有害作用がモニターされ、そして、同時の投薬がモニターされる。腎機能検査および肝機能検査は、処置の後、このサイクルの最初の12日の間に、月水金のスケジュールで処置を受けている患者については、水金月水金に、火木土のスケジュールで処置を受けている患者については、木土火木土に(例えば、第3日、第5日、第8日、第10日、第12日)、そして、サイクルの第3週の間に1回(例えば、第15日〜第19日)に行なわれ得る。さらなる試験が、任意の異常な結果についての追跡のために実施され得る。血液検査は、このサイクルの第2週の間、金/土(第10日)に、そして、第3週目の間に1回(例えば、第15日〜第19日)評価され得る。さらなる試験が、任意の異常な結果についての追跡のために実施され得る。ヘモグロビンおよびヘマトクリットについて臨床的に有意な減少が観察された場合は、潜血便検査(Stool guiac test)が行なわれ得る。有害な事象および同時の投薬は、代表的に、28日のサイクルを通してモニターされる。DENSPMは、一過的かつ可逆的に血清中クレアチニンレベルを上昇させることが公知であるので、他の腎毒性薬剤をDENSPMと組み合せる場合には注意が必要である。
【0041】
クレアチニンを除いて、全ての処置に関連する毒性は、代表的に、偶数番号のサイクル2、4および6を開始する前に、グレード1以下、もしくは、その患者についてのベースラインまで回復する。処置は、通常、クレアチニンが回復するまで、1.5×ULN(通常の上限)以上の血清中クレアチニンの発生を経験する患者について、最大14日間維持される。これらの患者について、追加の用量は、代表的に、25%下げられ、そして、以下に記載されるように、用量の再増量は可能ではない。
【0042】
以下の安全性評価は、代表的に、投薬前(または、生命徴候を除いて、処置サイクルの最初の日から7日前以内)の回復を評価するために行なわれる:健康診断、生命徴候および臨床検査。上記の回復基準に基づいて、処置に対して適格な患者は、処置のその後のサイクルを受け得る。患者は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上の処置サイクルを受け得る。
【0043】
(実施例2:DENSPM処方物)
DENSPMは、凍結乾燥粉末として、例えば、215mgを含有する10mLの透明なガラスバイアル内に充填されて供給され得る。このような凍結乾燥粉末は、DENSPM塩酸塩を滅菌WFI中に溶解して、5%溶液を提供することによって調製され得る。このような溶液は、2N NaOHを用いて、好ましくは、約5.8〜6.2の間、最も好ましくは、6.0のpHに調節されたpHであり得る。4.3mlのこの溶液は、Millipak(R)0.45ミクロンフィルタおよび0.22ミクロンフィルタを通してガラスバイアル中に滅菌充填され、その後、凍結乾燥される。この形態のDENSPMは、室温で保存された場合、物理的および化学的に安定である。DENSPMは、4.3mLの注射用水(USP)を用いて再構成される。得られる溶液は、50mg/mLのDENSPMを含み、そして、室温でおよそ96時間までは、化学的および物理的に安定である。さらに50mLの通常の生理食塩水に希釈される場合、得られる混合物は、室温で保存される場合、24時間までは、化学的および物理的に安定である。再構成した後、薬物は、通常、8時間以内に使用される。なぜならば、この薬物は、保存料を含まないからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌腫を処置する方法であって、該方法は、肝細胞癌腫の処置を必要とする被験体に、該肝細胞癌腫を処置するための有効量のDENSPMまたはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記肝細胞癌腫が、切除不能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肝細胞癌腫が、他の処置方法に対して不応性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記DENSPMが、1日に1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記DENSPMが、静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記DENSPMが、約30mg/m〜約300mg/mの範囲の用量で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記DENSPMが、約30mg/m〜約60mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記DENSPMが、約60mg/m〜約90mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記DENSPMが、約90mg/m〜約120mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記DENSPMが、約120mg/m〜約150mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記DENSPMが、約150mg/m〜約180mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記DENSPMが、約180mg/m〜約210mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記DENSPMが、約210mg/m〜約240mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記DENSPMが、約240mg/m〜約270mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記DENSPMが、約270mg/m〜約300mg/mの範囲の用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
DENSPM塩酸塩が患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記DENSPM塩酸塩が、患者に、静脈内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記DENSPM塩酸塩が、約30mg/m〜約300mg/mの範囲の用量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記DENSPM塩酸塩が、約30mg/m〜約60mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記DENSPM塩酸塩が、約60mg/m〜約90mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記DENSPM塩酸塩が、約90mg/m〜約120mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記DENSPM塩酸塩が、約120mg/m〜約150mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記DENSPM塩酸塩が、約150mg/m〜約180mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記DENSPM塩酸塩が、約180mg/m〜約210mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記DENSPM塩酸塩が、約210mg/m〜約240mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記DENSPM塩酸塩が、約240mg/m〜約270mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記DENSPM塩酸塩が、約270mg/m〜約300mg/mの範囲の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
肝細胞癌腫を処置する方法であって、該方法は、肝細胞癌腫の処置を必要とする被験体に対して28日間の治療レジメンを実施する工程を包含し、該レジメンは、1日目、3日目、5日目、8日目、10日目および12日目の、DENSPMまたはその薬学的に受容可能な塩の投与を包含し、その後16日間は、該被験体にDENSPMを投与しない、方法。
【請求項29】
DENSPMが、DENSPM塩酸塩として投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記レジメンが、1回、2回、3回、4回、または5回繰り返される、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2007−532574(P2007−532574A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507543(P2007−507543)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012039
【国際公開番号】WO2005/099723
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】