説明

DNAおよびRNA検出のためにサンプルを収集および処理するための方法、キットならびにシステム

本発明は、遺伝子配列検出のためにサンプルを回収および処理して、DNAおよびRNAを遊離および処置するための方法、キットならびにシステムに関する。本明細書に記載の方法は、組織および細胞材料からのDNAおよびRNAの迅速かつ簡便な遊離、ならびに回収を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2008年5月19日に出願された米国仮特許出願第61/128238号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、特定のゲノム材料(DNAおよびRNA)の分析または同定(検出)の目的のために生物学的サンプル(例えば、植物および動物組織など)を収集および処理するための方法に関し、そしてさらに、方法およびそのような材料の検出を実施するためのキットならびにシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
昆虫由来の微生物、細菌およびウイルス病原体は、ヒトおよび動物の健康を脅かす有害な因子であり、そして食料生産の費用および経済的リスクを顕著に増加する。これらは、農場および水産養殖において特に当てはまり、ここで、「家畜」は、高度生産施設において増殖される。PCR、RT−PCR(ここで、PCRはポリメラーゼ連鎖反応を意味し、そしてRT−PCRは逆転写PCRを意味する)および遺伝子配列決定を介するゲノム材料によるこれらの因子の検出および同定は、現在、良好に確立されており、そしてこれらの因子の検出および制御のためのストラテジーにおいて有用であることが証明されている。しかし、水産養殖、農業、環境および臨床サンプルに含有される核酸の直接検出のためのこれらの方法の応用については、しばしば、非効率的であり、そして最も多くの場合、不可能であることが証明されている。
【0004】
このような検出の非効率性については、多くの理由が公知である。これらには、標的核酸が、微生物の内側および宿主の組織の内側において高頻度でエントラップまたはコンパートメント化されているという事実も含まれている。このコンパートメント化は、微生物のゲノム材料(「標的核酸」)を直接検出のために利用し得ないようにすることができる。結果として、標的核酸を放出および可溶化するための方法が、検出には必要である。既知の方法では、標的核酸を、インヒビター、ならびに細胞および組織に含有される大量の宿主DNAおよびRNAの両方と混合するため、標的核酸の検出が困難になる。
【0005】
動物、海産および環境サンプルは、固体の堆積物、コロイド、エマルジョン、可溶性および不溶性の塩、生体高分子、生分解された破砕物、不活な材料ならびにサンプル中に混入した産業および天然の化学物質によってさらに複雑になる。これらのサンプルの不均一性および複雑性は、直接的な核酸検出方法を阻害または無効にし得る。色が分析または検出方法の部分である場合、サンプルの着色もまた、試験結果を妨害し得る。
【0006】
サンプルが数コピーの標的ゲノム材料しか含有しない場合、微生物および病原体の直接検出は、多くの場合、さらに複雑になる。さらに加えて、これらのサンプルでは、標的ゲノム材料は、高い頻度で、サンプル中に存在する宿主および非標的生物の両方に由来する多数のゲノム材料と共に存在する。低い標的コピー数および高濃度のバックグランドゲノム材料インヒビターのため、PCR、RT−PCRならびにイムノアッセイのような直接検出アプローチの感度および特異性は、検出における化学的干渉および非効率性に供される。
【0007】
これらの問題を回避するために、サンプル処置のいくつかの形態は、標的ゲノム材料の濃縮、精製および干渉材料からの除去を必要とする。ゲノムのコンパートメント化、インヒビターおよび非効率的なゲノム検出から生じる感度の消失および損なわれた特異性による不正確および誤った結果を取り除くために、多くのサンプル調製アプローチが開発されている。
【0008】
一般的に、これらの処置プロセスは、:i)標的ゲノム材料を放出するための組織破壊および細胞溶解、ii)膜または吸着材料のような固相支持体上へのゲノム材料の吸着、iii)混入物を含まない吸着したゲノム材料を洗浄すること、ならびにiv)検出のために固相支持体からゲノム材料を放出させることに関係する。
【0009】
上記の方法は、ゲノム材料の検出および検出のための同定に有用であることが証明されているが、それらにはなお、分析の前に、ゲノム材料を精製および単離するための多段階プロセスが必要であるという難点がある。そのようなプロセスは、支持装置および材料、(例えば、遠心分離、膜ろ過および/または化学的沈殿)の使用を伴うだけではなく、それらはまた、ゲノム材料を安定化し、そして固相支持体からのゲノム材料の放出を援助するために、毒性の化学物質および溶媒を必要とし得る。これらの方法は、分析に複雑性、コストおよび時間を追加するだけでなく、検査室において減圧または電気的装置を使用して、実施する必要があり得る。
【0010】
結果として、研究室での吸引および電気を必要とせずにフィールド内において実施することができ、使用が迅速かつ簡単であり、非毒性の化学物質を必要とせず、そして低コストであり、そして診断的遺伝子配列に基づく病原体の迅速な検出および同定のために使用することができる、細菌およびウイルス性病原体を含む微生物のような有害な因子の検出のための方法の必要性がなお存在する。「フィールド」とは、例えば、養殖場(水産養殖および農業の両方)、食品加工および包装施設などを含むが、これらに限定されない食品の生育または生産または加工のための施設を意味する。
【0011】
有害な微生物をモニターおよび制御し、そしてそれらが引き起こす疾患を制御するため、微生物の標的核酸の分析のために、微生物が見出されるサンプルからゲノム材料を収集、処理および回収するためのフィールドにおいて使用することができる簡単なサンプル処理技術の必要性がさらに存在する。
【0012】
本発明はこれらの必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、可撓性壁構造容器、およびサンプルから核酸を収集し、そして処理するための方法、キットを含む、方法による使用に適した診断システムを提供することによって、上記の問題を取り扱い、ここで、方法は、低コストで実施することができ、使用が簡単であり、そしてフィールドにおいて使用することができる。方法は、サンプルゲノム材料の精製を要しないサンプルからの、核酸である)ゲノム材料の収集および処理を含む。方法は、動物および植物の液体または組織に含有される細菌およびウイルス病原体の低コストの迅速な現場用(フィールド内の)検出を提供するためのキットによって使用することができる。
【0014】
本発明の目的は、標的核酸、もしくは特定の遺伝子配列の分析または同定のために、サンプルから核酸を収集および回収するための有効で、複雑ではない、迅速かつ安価な容器ならびに方法を提供することである。方法は、フィールド内における使用が可能である。核酸を放出および可溶化し、そしてそれらの検出を阻害または縮小する干渉溶質およびインヒビターからそれらを除去するための方法を提供することがさらなる目的である。上記の目的を達成するための安価なキットおよび診断システムを提供することがさらなる目的である。
【0015】
本発明は、サンプルからの標的核酸の収集、処理および分析のための方法、キットおよびシステムを提供する。方法は、(a)核酸を含むサンプルを提供する工程;(b)サンプルを可撓性壁構造容器に移す工程;(c)容器において、サンプルを抽出液および1つ以上の処置試薬で処理して、サンプルから核酸を放出させ、核酸を可溶化し、そして回収液を生成する工程;ならびに(e)工程(d)由来の回収液または産物の一部を標的核酸の検出に適切な検出システムに移す工程を含む。
【0016】
工程(d)における「処理」とは、本明細書において、サンプルと抽出液および処置試薬とを混合する工程、場合により、例えば、サンプルを抽出液および処置試薬で浸軟させることによって、混合物を処置することを含むことを意味する。
【0017】
場合により、サンプルを容器に移す前に、1つ以上の処置試薬を容器に添加してもよい。1つ以上の処置試薬は、核酸の放出および可溶化ならびに/あるいは標的核酸における遺伝子配列の以後の検出を干渉する阻害物質(「インヒビター」)の取り出しまたは不活化を援助し得る。また、可撓性壁構造容器を加熱または冷却して、インヒビターを不活性にする、および/または核酸を保存もしくは安定化してもよい。
【0018】
場合により、可撓性壁構造容器は、工程(d)の後および工程(e)の前に核酸を放出および可溶化した後、サンプルろ過を容易にして、粒子を排除するためのフィルター媒体を含有してもよい。
【0019】
適切な検出システムは、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術を使用する。
【0020】
また、サンプルを調製し、そしてPCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術を介して診断用標的DNAもしくはRNAを検出または同定するための材料および容器を提供するキットが提供される。キットは、(a)サンプルが処理される可撓性壁構造容器、(b)抽出液、(c)1つ以上の処置試薬、ならびに(d)容器においてサンプルを抽出液および処置試薬で処理することによって生成する回収液を収集および測定するため、ならびに回収液を適切な検出システムに移すためのピペットを含む。キットは、固体サンプルの粉砕を援助するための粉砕デバイス、およびろ過デバイスをさらに含んでもよい。
【0021】
キットは、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション産物の検出および同定のための1つ以上の検出試薬を含む検出媒体をさらに含んでもよい。
【0022】
キットは、典型的に、サンプル調製および診断用標的DNAまたはRNA核酸の検出のためのキットの成分を使用するための方法を説明する取扱説明書をさらに含む。
【0023】
また、サンプル調製およびサンプルに含有される標的核酸の検出または同定の両方を提供する診断システムが提供される。システムは、上記のキット、および検出システムをさらに含む。検出システムは、標的核酸が、DNAもしくはRNA、またはcDNA産物であるかどうかに依存する。検出システムまたはキットは、検出媒体を含み得る。検出システムは、DNAもしくはRNA、またはcDNA産物の検出のためのプロセスを含む。検出は、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術を使用して、達成することができる。検出を達成するためのプロセッサは、サーモサイクラーまたはオーブンヒーターを含む。
【0024】
検出システムは、検出方法をさらに含む。検出方法は、標準的な非変性ゲル電気泳動(例えば、アクリルアミドもしくはアガロース)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動、温度勾配ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、または蛍光検出から選択することができる。
【0025】
用語および略語
特許請求の範囲および明細書の解釈のために、以下の略語および定義を使用する。
【0026】
【表1】

【0027】
定義
本明細書において使用するように、微生物という用語は、分析または検出に適切なDNAもしくはRNAを有する任意の細菌、ウイルス、真核または原核生物細胞を意味する。微生物は、生存していても、死んでいても、または損傷を受けていてもよく、即ち、細胞壁または細胞膜が破砕されていてもよい。特に、エビ水産養殖に関しては、病原体である特に注目すべき微生物として、白斑病ウイルス(「WSSV」)、伝染性皮下造血器壊死症ウイルス(「IHHNV」)、タウラ症候群原因ウイルス(「TSV」)、およびビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)(グラム陰性菌)が挙げられる。特定の病原体の診断に役立つ診断用標的DNAまたはRNAおよび/またはそのフラグメントは公知である。例えば、国際公開第2008/024294号パンフレット(WSSVについて)、国際公開第2008/024293号パンフレット(IHHNVについて)、国際公開第2008/024292号パンフレット(TSVについて)、および国際公開第2008/048673号パンフレット(ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)について)を参照のこと。エビおよび他の家畜の他の病原体についても、当業者に理解されるように、上記の方法、キットおよび診断システムを使用して、同様に検出することができる。
【0028】
本明細書において使用する用語「DNA」は、リボース糖を有する「RNA」とは対照的に、デオキシリボース糖を含む核酸分子を指す。本明細書において使用する用語「DNA」および「RNA」は、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)ならびに調節機能を有する小RNAを含む、それぞれDNAおよびRNAのすべての種を指す。「小RNA種」は、特定の意味を有し、そして細菌においてハウスキーピングまたは調節の役割を伴う翻訳されないRNAを指す。「小RNA種」は、rRNAでもtRNAでもない。
【0029】
本明細書において使用する用語「インヒビター」は、PCRまたはRT−PCRの作用を傷害する能力を有する化学的または他の因子を指す。
【0030】
本明細書において使用する用語「RNaseインヒビター」は、ほとんどの細菌細胞によって産生される内因性RNaseのようなRNase酵素の作用を干渉する能力を有する化学的または他の因子を指す。分類のため、RNaseは、RNAにおけるヌクレオチドの切断を触媒する酵素であるリボヌクレアーゼである。
【0031】
用語「標的核酸」は、本発明の方法、キットおよび診断システムにおいてPCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術を使用する検出のためのDNAもしくはRNA核酸またはDNAもしくはRNAフラグメントを指す。標的核酸は、遺伝子配列であり得る。
【0032】
本明細書において使用する用語「診断用標的DNAまたはRNA」は、それぞれ、特定の微生物、病原体または疾患の診断に役立つDNAもしくはRNA分子またはフラグメントを指す。一般に、標的核酸は診断用標的DNAまたはRNAである。
【0033】
本明細書において使用する用語「診断用標的DNA産物」は、診断用標的RNAから転写されるか、またはテンプレートとして診断用標的RNAの転写されたDNAコピーを使用して合成されるDNA分子またはフラグメントを指す。
【0034】
本明細書において使用する用語「逆転写に続くポリメラーゼ連鎖反応」、または「RT−PCR」は、RNA配列のコピーである配列でDNA分子を合成および増幅するための技術を指す。RT−PCRは、遺伝子発現の定量分析におけるようなRNA種の検出、ならびにクローニング、cDNAライブラリー構築、プローブ合成、およびシグナル増幅インサイチュハイブリダイゼーションに使用するためのRNAのDNAコピーの産生に有用である。技術は2つの部分:逆転写(RT)によるRNAからのcDNAの合成、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による特異的cDNAの増幅からなる。逆転写酵素は、テンプレートRNAまたはRNA:DNAハイブリッド中のRNA分子を使用してヌクレオチドの重合を触媒するRNA依存性DNAポリメラーゼである。
【0035】
本明細書において使用する用語「プライマー」は、相補鎖の合成がポリメラーゼによって行われる条件下に置かれる場合、テンプレート鎖に沿った核酸合成または複製の開始点として作用することが可能な合成または天然に存在するオリゴヌクレオチドを指す。逆転写に関して、プライマーは核酸からなり、そしてRNAテンプレート上でプライムする。PCRに関して、プライマーは核酸からなり、そしてDNAテンプレート上でプライムする。
【0036】
本明細書において使用する用語「増幅産物」は、プライマーによって指令される増幅反応中に産生される核酸フラグメントを指す。プライマーによって指令される増幅の典型的な方法として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT−PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)または鎖置換増幅(SDA)が挙げられる。
【0037】
本明細書において使用する用語「溶解」は、細胞のRNAまたはDNAへのアクセスまたは放出を容易にする細胞壁の擾乱または改変を意味する。細胞壁の完全な破砕も分解も、溶解の概念に必須の要件ではない。
【0038】
本明細書において使用する用語「溶解因子」は、細胞壁の溶解または開口に適切な任意の薬剤もしくは条件、またはそれらの薬剤もしくは条件の組み合わせを意味する。溶解因子は、酵素(例えば、リゾチーム、もしくはバクテリオファージ溶解酵素)または化学物質(例えば、クロロホルム)、界面活性剤、溶解緩衝液、熱を含み得るか、あるいは音波処理、ビーズミル、フレンチプレスなどの使用のような物理的剪断手段に関係し得る。溶解因子は、当該技術分野において周知である。
【0039】
本明細書において使用する用語「熱サイクリング」は、RT−PCRまたはPCRアッセイ中に使用される変化する温度の全パターンを指す。このプロセスは、一般的であり、そして当該技術分野において周知である。例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;ならびに米国特許第4,683,202号明細書(Mullisら)および米国特許第4,683,195号明細書(Mullisら)を参照のこと。一般に、PCR熱サイクリングは、高温での初期の変性工程、それに続く、温度変性を可能にするように設計された反復系列の温度サイクル、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼによるアニールされたプライマーの伸長を含む。
【0040】
本明細書において使用する用語「直接検出」は、診断用標的DNAまたはRNAの単離または精製を伴わない診断用標的DNAまたはRNAの検出および/または同定のためのアッセイを指す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、細菌およびウイルス病原体を含む微生物のような有害な因子を検出するための方法、ならびに方法の使用に適したキットおよびシステムを提供する。特に、本発明は、疾患の原因因子であるか、または原因因子であり得る病原体の検出に適用することができる。方法は、サンプルの精製の必要性を伴わずに、標的核酸(DNAもしくはRNA)の、または有害な因子の存在を表すサンプルにおける収集、処置および検出を含む。方法およびキットおよびシステムは、動物および植物組織に含有されるウイルスおよび細菌病原体の低コストの迅速な現場用(フィールド内の)検出を提供する。
【0042】
本発明は、サンプルからの標的核酸の収集、分析または同定のための方法、キットおよびシステムを提供する。遺伝子配列は、サンプル中に存在する有害な因子を検出および同定するために使用される。方法は、(a)核酸を含むサンプルを提供する工程;(b)サンプルを可撓性壁構造容器に移す工程;(c)抽出液を容器に転化する工程;(d)容器において、サンプルを抽出液および1つ以上の処置試薬で処理して、サンプルから核酸を放出させ、核酸を可溶化し、そして回収液を生成する工程;ならびに(e)工程(d)由来の回収液または産物の一部を標的核酸の検出に適切な検出システムに移す工程を含む。それ故、本発明の方法は、直接検出を提供する。標的核酸を精製する必要はない。
【0043】
工程(d)における「処理」とは、本明細書において、サンプルと抽出液および処置試薬とを混合することを含むことを意味する。核酸の回収は、混合の部分として容器を振盪することによって、援助され得る。処理は、サンプルを抽出液および処置試薬で浸軟させることのようなさらなる処置工程を含み得る。「浸軟」とは、サンプル中の固体を粉砕または分解して、サンプルからの核酸の放出を援助することを意味する。サンプルが生物学的組織のような固体である場合、浸軟は有用であり得る。例えば、容器の壁に外力を適用することによって、浸軟を達成してもよい。浸軟中、容器の壁を接触させて、サンプルを粉砕してもよく、または容器の壁の間で浸軟させてもよい。組織および細胞膜に含有される標的核酸を抽出液中で利用可能にして、溶解することができるように、組織および細胞膜を改変または破砕することができる。それ故、この随意的工程は、核酸の可溶化および回収を援助する。サンプルが均質な血液または血リンパのような液体である場合、粉砕は必ずしも必要ではないかもしれない。
【0044】
処置試薬は、酵素または他の試薬を含んでもよい。処置試薬を使用して、インヒビターを処置または分解してもよい。加えて、処置試薬は、標的核酸のその後の検出後にそれらがネガティブな影響を及ぼさないように、工程(e)の前に不活化してもよい。
【0045】
工程(e)では、工程(d)における回収液の一部を、標的核酸の検出および/または同定に適切な検出システムに移す。適切な検出システムは、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術に基づく。
【0046】
場合により、核酸の回収は、容器中のサンプルおよび抽出液をさらにインキュベートおよび/または加熱することによって、増強することができる。インキュベーションおよび/または加熱の所望される期間は、サンプルに含有されるインヒビターの特性およびタイプに依存する。例えば、インキュベーションおよび/または加熱の程度は、インヒビターを不活化または分解するのに必要な時間および温度に依存する。また、インヒビターを不活化または分解するために使用される酵素のような処置試薬を不活性にするために、加熱を使用してもよい。
【0047】
標的核酸の検出に好適な検出システムは、WSSV、IHHNV、TSVおよびビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)に対する診断用プライマー配列を使用する標的核酸の増幅のために、PCRまたはRT−PCRを使用し、それらは、国際公開第2008/024294号パンフレット(WSSVについて)、国際公開第2008/024293号パンフレット(IHHNVについて)、国際公開第2008/024292号パンフレット(TSVについて)、および国際公開第2008/048673号パンフレット(ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)について)においてより詳細に記載されている。
【0048】
本発明のキットは、サンプルを調製し、そしてPCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術を介して診断用標的DNAもしくはRNAを検出または同定するための材料および容器を含む。キットは、(a)サンプルが処理される可撓性壁構造容器、(b)抽出液、(c)処置試薬、(d)容器においてサンプルを抽出液で処理することによって調製される回収液を収集および測定するため、ならびにまた、容器の内容物を検出システムに移すためのピペットを含む。
【0049】
サンプル、可撓性壁構造容器、抽出液および検出システムについては、以下に記載されている。ピペットは、1つの容器からもう1つの容器へ液体を移すことが可能な任意のデバイスであり得る。有用なピペットの一例は、Poly−Pipets,Inc.(Englewood Cliffs,NJ)より市販のような正確な容量のピペットである。
【0050】
キットは、サンプルの粉砕を援助するための粉砕デバイス、ろ過デバイスおよび/またはろ過媒体ならびに核酸の放出および可溶化および阻害物質の取り出しまたは不活化を援助するための1つ以上の処置試薬をさらに含み得る。
【0051】
キットは、典型的に、サンプル調製のためのキットの成分を使用する方法を説明する取扱説明書をさらに含む。
【0052】
標的核酸の検出のためのキットは、標的およびプローブ核酸のハイブリダイゼーションのため、ならびに洗浄による所望されないおよび非ハイブリダイズ形態の取り出しのための乾燥または液体形態のいずれかの検出媒体を含み得る。キットは、単離された診断用プライマー配列から誘導される非標識核酸プローブが固定化される(またはコンジュゲートされる)固相支持体(例えば、ディップスティック、ビーズなど)を含み得る。キットは、非標識核酸プローブがハイブリダイズする同じDNA鎖の第2のおよび異なる領域に相補的である標識プローブをさらに含み得る。標識プローブはまた、本明細書において開示する単離された診断用プライマー配列から誘導してもよい。
【0053】
キットは、検出システムと共に使用される検出媒体をさらに含み得る。検出媒体は、酵素、デオキシヌクレオチド三リン酸、蛍光薬剤、少なくとも1対の内部サンプルコントロールプライマー、少なくとも1つ内部テンプレートコントロールおよび少なくとも1対の内部テンプレートコントロールプライマー、ならびにキットに含有される診断用プライマー配列によって増幅することが可能な標的核酸の少なくとも1つの領域の部分に対する相補配列を含むプローブを含み得る。検出媒体は、液体、乾燥した、または錠剤のような様々な形態であり得、そしてバイアル、チューブなどのような任意の適切なコンテナまたは複数のコンテナ中に存在してもよい。
【0054】
また、サンプル調製およびサンプルに含有される標的核酸の検出または同定の両方を提供する診断システムが提供される。システムは、上記のキット、診断用標的核酸の検出のための1つ以上の検出試薬を含む検出媒体、およびDNAもしくはRNA、またはcDNA産物の検出のためのプロセッサを含む。検出を達成するためのプロセッサは、サーモサイクラーまたはオーブンヒーターを含む。
【0055】
増幅後、例えば、PCRまたはRT−PCRを使用して、増幅されたヌクレオチド配列を、適切なベクターにライゲートし、続いて、上記ベクターで適切な宿主生物体の形質転換を行うことができる。それによって、増幅配列のより容易に利用可能な供給が確実になる。あるいは、増幅後、増幅配列またはその一部を、下記のハイブリダイゼーションアッセイに使用するためのヌクレオチドプローブとしての使用のために、化学的に合成してもよい。いずれの状況においても、可変領域のDNA配列は、ジデオキシ法(Sanger,F.et al.Proc.Natl.Acad.ScL74:5463−5467(1977))のような方法を使用して、確立することができる。得られた配列は、生物体に対するプローブの選択を誘導するために使用され、そして最も適切な配列が選択される。
【0056】
サンプル
一般的に、サンプルは、食料生産、即ち、食物または食物と接触する液体、水産養殖、農業、食料生産のための産業的プロセス、および環境から提供される。このリストは例示であり、すべてを網羅しているわけではない。養殖された家畜または水産養殖の成長に関連するサンプル由来の標的核酸の回収が特に興味深く、そして応用される。これらには、食料および飼料生産ならびに食物の処理、取り扱いおよび調製が含まれる。病原体の拡大および混入に特にかかわるサンプルは、海面養殖および食物供給に関連する。一般的に、サンプルは、水、飼料、養殖、動物組織、体液および/または生産された食物を含有する。
【0057】
サンプルは、組織または体液を収集すること、固体または半固体サンプルを抽出すること、表面を拭き取ることによって、提供され得る。他の技術は、当業者に公知である。1つの好適な実施形態では、サンプルは、エビ組織、より詳細には、1つ以上のエビの腹肢である。エビの腹肢は、エビにおける共通の病原体を検出するために、本発明において使用することができる。より詳細には、白斑病ウイルス(WSSV)は、本発明の方法、キットおよび診断システムを使用して、エビ養殖場または他のエビ施設もしくは敷地のエビにおいて、検出することができる。
【0058】
可撓性壁構造容器
可撓性収集容器は、標的核酸を、それらの検出または同定のために収集、処理および回収するために、使用される。容器は、一方の端部(頂部)において開口している小袋を形成するために密封される壁を有し、そして液密なコンテナを提供する。
【0059】
容器の主要なおよび本質的な特徴は、壁が可撓性あることである。この可撓性は、以下の機能を提供する。
【0060】
(i)固体サンプル(例えば、生物学的組織)を壁と壁との間で粉砕することができるように、容器の壁に外力を適用することができる。それ故、標的核酸の回収は、サンプル材料の粒度を減少すること、組織構造を浸軟すること、および生物学的サンプル材料の細胞壁を破砕することによって、可能にされ、そして改善される。
【0061】
(ii)容器の可撓性は、サンプル収集の様々な手段を提供する。例えば、外壁が内壁になるように、可撓性の容器を反転させることができる。一旦、壁を反転させると、扱い者は、反転した容器の内側に手を置いて、サンプル材料を拾い出し、次いで、容器の壁をその最初の側に戻し、そのようにして、サンプルを容器にもたらすことができる。それ故、扱い者は、扱い者の手によるサンプルへの混入を回避する。この特定の技術は、海産および農業生物体のサンプリングにおいて、有利に使用することができる。例えば、メスまたはピンセットのような他の収集援助物を使用する必要性を伴わずに、エビの腹肢を、容易に、エビから取り出し、そして容器に配置することができる。
【0062】
(iii)容器の可撓性はまた、抽出液中でサンプル材料を撹拌し、そして懸濁する手段を提供する。壁に外圧を簡単に適応および解放することによって、サンプル材料を、抽出液中で撹拌および懸濁することができる。
【0063】
本発明の方法およびキットおよびシステムにおける有用性を増強するため、方法中に、容器を可逆的に開閉することができるように、可撓性の容器は、好ましくは、容器の頂部に取り付けられた閉塞部を有する。閉塞部は、材料を収集すること、サンプルと抽出液とを混合すること、および処置試薬をサンプルに添加すること、ならびに容器の内容物の漏出および混入を防止することを含み得る方法工程を介して、サンプルおよび回収液の封入およびアクセスの両方を可能にする。様々な閉塞機構を使用することができる。細密なリブおよび溝プロファイルタイプおよびジッパーロック(zipper lock)バッグが好適である。
【0064】
容器の壁は、多様な合成高分子および天然由来の高分子(例えば、セロファン)を使用して、調製することができる。一般的に、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好適である。可撓性を維持し、そして適切な強度を提供するために、壁の厚さは、一般的に、1〜8ミルの間(0.025〜0.20mm)であり、壁の厚さは2〜6ミル(0.51〜0.15mm)が好適である。限定することを求めているわけではないが、容器のサイズは、一般的に、0.5〜1,000mLの間を含有するのに十分に大きく、1〜15mLの容積が好適である。
【0065】
抽出液
抽出液は、容器中に存在する任意の処置試薬を溶解するか、または容器に添加するため、かつサンプル中に含有される標的核酸を可溶化するために、添加される。抽出液は、サンプルを可溶化し、かつ化学的に処置して、核酸(nucleic aid)の回収率を増強することができる。抽出液は、核酸の検出を阻害するサンプルの成分(「インヒビター」)を不活化または分解する1つ以上の処置試薬を含み得る。
【0066】
抽出液は液体である。抽出液は水であってもよい。抽出液は、水および1つ以上の処置試薬を含み得る。抽出液を可撓性の容器に添加して、標的核酸を溶解し、そしてサンプルから回収する。この液体は、検出媒体に移し得るため、その化学組成は、システム中の反応を含む(PCR、RT−PCR、等温増幅、プローブハイブリダイゼーション、または遺伝子配列決定に基づく)検出システムに適合可能であり、そして干渉すべきではない。サンプルと抽出液とを混合して得られる産物を、「回収液」と称する。それ故、回収液は、サンプルから放出され、そして可溶化されている核酸を含む。
【0067】
好適な実施形態では、回収液は、乾燥または凍結乾燥された検出試薬組成物のような1つ以上の検出試薬を含む検出媒体の単独の希釈剤として役割を果たす。この方法では、個別の検出液体を乾燥検出試薬に添加することによって、以後の工程を伴うことなく、簡単に検出を達成することができる。
【0068】
抽出液の容積が、サンプルから効率的に標的核酸を抽出するのに十分である一方、同時に、インヒビターが検出を干渉しないように、サンプル中のインヒビターを希釈するのに十分であることもさらに要求される。一般的に、抽出液の容積は、検出反応容積の25〜500倍の容積の範囲であるべきである。より好ましくは、抽出液の容積は、検出反応容積の50〜200倍の範囲であるべきである。
【0069】
処置試薬
キットはまた、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定、またはプローブハイブリダイゼーションのそれらの検出および同定のために、核酸を可溶化することを支援するための1つ以上の処置試薬を含み得る。2つの異なる機能を実施するために、1つ以上の処置試薬が添加される。第1に、処置試薬を添加して、サンプルから標的核酸を放出および可溶化する。処置試薬の第2の機能は、標的核酸の増幅を支持することである。
【0070】
典型的に、2つ以上の処置試薬が添加される。例えば、第1の処置試薬は、細胞壁を破壊開口して、標的核酸にアクセスするのに十分である溶解因子を含む組成物であり得る。溶解因子は、界面活性剤、酵素、またはそれらの組み合わせであり得るか、これらを含み得る。界面活性剤は、標的核酸の可溶化を援助する界面活性剤であり得る。酵素はまた、タンパク質を沈殿させるか、またはそうでなければ、インヒビターを取り出すかもしくは不活化することによって、抽出液を支援し得る。様々な酵素および他の可溶化試薬を支持体上に固定化して、粒子のろ過に役立ててもよい。それ故、サンプルを処置し、そしてサンプルを検出システムに移す前に、処置試薬を取り出すことができる。さらなる溶解因子については、例えば、米国特許第2005/0266468A1号明細書に記載されており、その教示内容は、本明細書において参考として援用される。
【0071】
第2の処置試薬は、7〜7.8の範囲のpHを有する緩衝液、塩化マグネシウム、および塩化カリウムを含む組成物であり得る。この組成物は、標的核酸の増幅を援助する。
【0072】
処置試薬は、RNaseおよびDNaseを阻害する安定剤をさらに含み得る。
【0073】
制限することを意図するものではないが、回収液の有用な組成物は、50mMのTris−HCl緩衝液、3.0mMのMgCl、28mMのKCl、0.1%TritonX−100界面活性剤(TritonX−100は、Dow Chemical Co.(Midland,MI)より入手可能な界面活性剤である)である。
【0074】
サンプルおよび抽出液を添加する前に、1つ以上の処置試薬を可撓性壁構造容器に添加することができる。加えて、または代替的に、処置試薬を抽出液に添加することもできる。
【0075】
ろ過
場合により、本発明の方法は、この液体を検出システムに添加する前に、回収液をろ過して、不要な粒子を取り出す工程を含む。回収液中の不要な粒子は、インヒビターおよび不均衡な量の標的核酸を含み得る。それ故、ろ過は、インヒビターを取り出し、そして試験の再現性を改善するのに役立ち得る。
【0076】
ろ過は、ろ過媒体を、キット、例えば、可撓性の容器内に組み入れることによって、容易に達成することができる。方法は、可撓性の容器内のフィルターを介して、回収液を引き出す工程を含み得る。あるいは、キットは、トランスファーピペットを含み得、ここで、トランスファーピペットは、ピペット内にろ過媒体を有する。ろ過は、トランスファーピペット内のろ過媒体を介して回収液を移し、そしてろ過された液体を検出システムに移すことによって、行われる。フィルターは、回収液を検出システムに分配する前に、取り出すべきである。
【0077】
キットはまた、吸着剤であってもよく、もしくは吸着剤でなくてもよいろ過媒体および/または粒子を含み得る。ろ過媒体および粒子はまた、容器に添加するか、または方法において使用して、インヒビターを取り出す、および/またはろ過プロセスを援助することができる。
【0078】
ろ過媒体は、加工または非加工天然繊維および不織合成繊維を含む。サンプル適合性および湿潤性を援助するために、これらの材料を処置してもよく、または処置しなくてもよい。例えば、ワタおよびナイロンのような繊維を使用することができる。
【0079】
ろ過粒子は、不要な材料に吸着し、そして回収液から取り出すために使用され得るか、またはろ過を援助するために使用され得る吸着剤および非吸着性の粒子を含む。吸着性および非吸着性の粒子を、ろ過媒体と組み合わせて使用してもよい。吸着剤は、1ccあたり1.0gを超える密度を有するべきである。具体的な吸着剤として、J.T.Baker珪藻土(カタログ番号1939−01)、CELITE4/4、KENITE4/4 200、CELATOM4/4 FW6、CUNO4/4 M−901、CUNO4/4 m802、PERFLO4/4 200、PERFLO4/4 63、PERFLO4/4 30、ALITE4/4 150、ALITE4/4 180、またはそれらの混合物、J.T.Baker珪藻土(カタログ番号1939−01)、CELITE4/4、KENITE4/4 200、CELATOM4/4FW6、CUNO4/4M−901、CUNO4/4m802、PERFLO4/4 200、PERFLO4/4 63、およびPERFLO4/4 30吸着剤が挙げられる。
【0080】
ろ過媒体または粒子の使用量は、サンプルのサイズに依存する一方、1mlの回収液あたり10〜170mgの吸着剤、好ましくは、1mlの回収液あたり10〜60mgが存在すべきである。
【0081】
検出システム
検出システムは、検出するための装置、および装置と共に使用される検出媒体を含む。装置および検出媒体は、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術に基づき得る。検出システムがPCRを使用する場合、検出システムは、標的核酸に相補的な少なくとも1つのプライマーの組を含むプライマー混合物、耐熱性ポリメラーゼ;ヌクレオチド(dNTP);緩衝液および1つ以上の検出プローブを含む検出媒体を含む。検出システムがRT−PCRを使用する場合、検出システムは、標的RNAに相補的な少なくとも1つのプライマーを含むプライマー混合物;熱活性化耐熱性ポリメラーゼ;逆転写酵素;ヌクレオチド(dNTP);緩衝液;およびRNaseインヒビターを含む検出媒体を含む。検出システムが等温増幅を使用する場合、検出システムは、DNAポリメラーゼおよび標的核酸上の合計で異なる6つの配列を認識する4つの特別に設計されたプライマーの組を含む検出媒体を含む。検出システムが遺伝子配列決定を使用する場合、検出システムは、1つ以上のラベリングターミネーター、緩衝液および適切な酵素を含む検出媒体を含む。検出システムがプローブハイブリダイゼーションを使用する場合、検出システムは、標的核酸に有意に相補的であり、そしてそれにハイブリダイズ可能であるオリゴヌクレオチド(合成または天然に存在する)を含む検出媒体を含む。検出システムが等温増幅を使用する場合、検出システムは、DNAポリメラーゼおよび標的核酸上の合計で異なる6つの配列を認識する4つの特別に設計されたプライマーの組を含む検出媒体を含む。
【0082】
本発明の診断システムは、検出の方法に関して限定されず、そしてPCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術の産物を検出する任意の方法によって使用することができる。PCRおよびRT−PCRが好適である。
【0083】
一般に、PCR熱サイクリングは、高温での初期の変性工程、それに続く、温度変性を可能にするように設計された反復系列の温度サイクル、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼによるアニールされたプライマーの伸長を含む。一般的に、最初に、サンプルを、約2〜10分間、約95℃の温度で加熱して、二本鎖DNAサンプルを変性する。次いで、各サイクルのはじめに、サンプルおよび使用する機器のタイプに依存して、サンプルを、約10〜60秒間、変性する。変性後、プライマーを、標的DNAに対して、より低い温度(約40℃〜約60℃)で、約20〜60秒間、アニーリングさせる。ポリメラーゼによるプライマーの伸長は、しばしば、約60℃〜約72℃の範囲の温度で行われる。伸長に使用される時間の量は、アンプリコンのサイズおよび増幅に使用される酵素のタイプに依存し、そして日常的な実験によって容易に決定される。さらに、アニーリング工程を、伸長工程と組み合わせて、2工程のサイクリングを生じることができる。熱サイクリングはまた、PCRアッセイにおけるさらなる温度シフトを含んでもよい。任意のアッセイにおいて使用されるサイクルの回数は、日常的な実験を使用して、当業者により容易に決定することができる。場合により、最後の伸長工程を、熱サイクリングの完了後に追加して、すべての増幅産物の合成を確実にしてもよい。
【0084】
増幅後、増幅されたヌクレオチド配列を、適切なベクターにライゲートし、続いて、上記ベクターで適切な宿主生物体の形質転換を行うことができる。それによって、増幅配列のより容易に利用可能な供給が確実になる。あるいは、増幅後、増幅配列またはその一部を、下記のハイブリダイゼーションアッセイに使用するためのヌクレオチドプローブとしての使用のために、化学的に合成してもよい。いずれの状況においても、可変領域のDNA配列は、ジデオキシ法(Sanger,F.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.74:5463−5467(1977))のような方法を使用して、確立することができる。得られた配列は、生物体に対するプローブの選択を誘導するために使用され、そして最も適切な配列が選択される。
【0085】
RT−PCRでは、逆転写は、典型的に、標的RNAにハイブリダイズして、コピーDNAの合成をプライムするプライマー、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸(即ち、dATP、dCTP、dTTP、およびdGTP)の混合物、MgCl、逆転写酵素および逆転写酵素緩衝液を含む組成物において、行われる。さらに、組成物は、場合により、RNaseインヒビター、例えば、イソチオシアン酸グアニジン、ピロ炭酸ジエチル、SuperaseInTM(Ambion,Inc.(Austin,TX))、RNase Block(Stratagene Corp.(La Jolla,CA))、ヒト胎盤リボヌクレアーゼインヒビター、ブタ肝臓RNaseインヒビター(Takara Mirus Bio Company(Madison,WI))、Anti−RNase(Novagen,Inc.(Madison,WI))、リボヌクレアーゼInhibIII(PanVera Corp.(Madison,WI))、RNAlaterTM(Ambion,Inc.)、またはRNA Protect Bacteria Reagent(Qiagen,Inc.(Valencia,CA))を含有してもよい。適切な逆転写酵素は、当該技術分野において周知であり、そしてHIV Reverse Transcriptase(Ambion,Inc.)、Transcriptor Reverse Transcriptase(Roche Applied Science Corp.(Indianapolis,IN))、Thermoscript Reverse Transcriptase(Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA))を含むが、これらに限定されない。
【0086】
逆転写および増幅が、2工程として行われるかまたは1工程として行われるかにかかわらず、逆転写工程は、最初に行われ、そして典型的に、約37℃〜約70℃の間の温度の単一温度インキュベーションからなる。異なる温度が、異なる逆転写酵素および異なるプライマーに適切であり、当業者に公知である。
【0087】
当該技術分野において周知である多様な検出方法が、本明細書において開示する方法において使用され得る。これらの検出方法として、標準的な非変性ゲル電気泳動(例えば、アクリルアミドもしくはアガロース)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動、温度勾配ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、または蛍光検出が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
蛍光検出方法は、増幅産物の迅速かつ高感度の検出を提供する。蛍光検出はまた、リアルタイム検出の可能性を提供し、ここで、増幅産物の形成が、熱サイクリングプロセスの間、モニターされる。さらに、初期の標的の量を、蛍光検出を使用して、定量してもよい。熱サイクリングプロセスの前または後のいずれかに、核酸結合性蛍光薬剤を反応混合物に添加することによって、蛍光検出を行ってもよい。好ましくは、核酸結合性蛍光薬剤は、核酸の二重螺旋におけるスタックされた塩基対間の非共有結合的挿入が可能なインターカレーティング染料である。しかし、非インターカレーティング核酸結合性蛍光薬剤もまた、適切である。
【0089】
本発明の方法において有用な核酸結合性蛍光薬剤の非制限的例には、臭化エチジウムおよびSYBR GreenI(Molecular Probes;(Eugene,OR)より入手可能である)がある。Higuchi(米国特許第5,994,056号明細書)に記載のように、熱サイクリングの前に核酸結合性蛍光薬剤を反応混合物に添加すると、リアルタイムで増幅産物の形成をモニターすることが可能である。リアルタイムの蛍光測定が可能な熱サイクラーは、Applied Biosystems(Foster City,CA)、MJ Research(Waltham,MA)、およびStratagene(La Jolla,CA)のような会社から市販されている。増幅後、増幅産物の確認は、当該技術分野において公知の方法を使用して産物の融解温度を決定することによって、例えば、蛍光測定を使用して融解曲線を作成することによって、評価することができる。
【0090】
増幅産物の蛍光検出はまた、蛍光標識プローブの使用のような当該技術分野において公知の他の方法を使用して、達成してもよい。プローブは、増幅産物の少なくとも一部に相補的な配列を含む。そのようなプローブの非制限的例として、TaqMan probes(Applied Biosystems)およびMolecular Beacons(Goel et al.,J.Appl.Microbiol.99(3):435−442(2005))が挙げられる。国際公開第2008/024292A1号パンフレットの実施例9および10に詳述されているように、例えば、TSVプライマーと共に使用される蛍光標識プローブの構築のための遺伝子配列は、Primer Express(登録商標)v2.0(Applied BioSystems Inc.(Foster City California))のような市販の分析ソフトウェアを使用するTSV遺伝子および試験アンプリコンの分析によって、選択することができる。国際公開第2008/024294A2号パンフレットの実施例11および12に詳述されているように、本明細書において開示するWSSVプライマーと共に使用される蛍光標識プローブの構築のための遺伝子配列は、WSSV遺伝子および試験アンプリコンの分析によって、選択することができる。プローブ配列は、特定の試験アンプリコンの近位末端内にあるように選択される。プローブは、ハイブリダイゼーションプローブを標識するための下記の方法のような当該技術分野において公知の方法を使用して、蛍光標識してもよい。リアルタイムの蛍光検出のために、プローブを二重標識することができる。例えば、プローブの5’末端は、6FAMTM(Applied BioSystems)のようなフルオロフォアによって標識することができ、そして3’末端は、6−カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)のようなクエンチャー染料によって標識することができる。副溝結合プローブの場合、3’末端を、クエンチャー染料および副溝結合複合体によって標識することができる。蛍光標識プローブは、Applied BioSystemsのような商業的供給源から入手してもよい。
【0091】
一実施形態では、本発明は、サンプル中の標的核酸の量を定量するための方法を提供する。本実施形態では、DNAまたはRNAは、標的核酸を含有することが疑われるサンプルから提供され、そして相補的DNAが作製される。DNAは、核酸結合性蛍光薬剤または蛍光標識プローブの存在下で、少なくとも変性温度と伸長温度の間での熱サイクリングによって、本明細書において開示するオリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対によって、増幅される。核酸結合性蛍光薬剤または蛍光標識プローブによって生じる蛍光の量は、熱サイクリングによって測定される。蛍光測定から、核酸結合性蛍光薬剤または蛍光標識プローブによって生じる蛍光の量が、基準値より上の一定の閾値に達する閾値サイクル数が、決定される。サイクル閾値数を、本明細書において、CT数または値と称する。CT数は、手動によって決定され得るか、または機器によって自動的に決定され得る。CT数を決定するために、基準の蛍光が、初期の増幅サイクル中に、各サンプルについて決定される。次いで、数学的アルゴリズムを用いて、蛍光シグナルがバックグランドを超えるには、どんな統計的に有意な蛍光の変化が必要であるかが確立される。蛍光がこの閾値を超えるサイクル数を、CT数と称する。典型的に、熱サイクリングの開始時にサンプルに存在するDNAが多いほど、閾値に到達するためにかかるサイクル数は少なくなるであろう。
【0092】
従って、CT数は、サンプル中の標的核酸の初期量に反比例する。当該技術分野において周知であるように、サンプルのCT数を決定した後、サンプル中の標的核酸について決定されたサイクル閾値数と、そのサイクル閾値数対既知濃度の標準溶液を使用して決定されたテンプレート濃度の対数の標準曲線とを比較することによって、サンプルに本来存在する標的核酸の量を計算することができる。
【0093】
以下に、WSSVおよびTSVの標的核酸配列について説明する。本発明の方法、キットおよび診断システムを使用して、他の標的核酸配列を検出または同定することができることは、当業者によって明らかであろう。
【0094】
配列の説明
本発明の様々な実施形態は、以下の詳細な説明、および本出願の一部をなす添付の配列の説明からさらに詳細に理解することができる。
【0095】
以下の配列は、米国特許法施行規則第1.821〜1.825条(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則」)に従い、そして世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)ならびにEPOおよびPCTの配列表の要件(規則5.2および49.5(aの2)、ならびに実施細則第208号および付属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列データに使用した記号および形式は米国特許法施行規則第1.822条に記載の規則に従う。
【0096】
配列番号1〜8は、WSSVの検出に有用なWSSV診断用プライマーのヌクレオチド配列である。
【0097】
配列番号9〜12は、実施例の一般的方法のセクションに記載の合成WSSVテンプレートのヌクレオチド配列である。これらの配列はまた、本明細書において開示するWSSV診断用プライマーの対を使用して得られる増幅産物のヌクレオチド配列である。
【0098】
配列番号13〜18は、TSVの検出に有用なタウラ症候群原因ウイルス(TSV)診断用プライマーのヌクレオチド配列である。
【0099】
配列番号19〜21は、実施例の一般的方法のセクションに記載の合成TSVテンプレートのヌクレオチド配列である。これらの配列はまた、本明細書において開示するTSV診断用プライマーの対を使用して得られる増幅産物のヌクレオチド配列である。
【0100】
配列、増幅産物、および診断用プライマーについては、WSSV、IHHNV、TSVおよびビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)に関して説明しており、それらは、国際公開第2008/024294号パンフレット(WSSVについて)、国際公開第2008/024293号パンフレット(IHHNVについて)、国際公開第2008/024292号パンフレット(TSVについて)、および国際公開第2008/048673号パンフレット(ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)について)においてより詳細に記載されている。
【0101】
一般的に、2つのプライマーは、緩衝溶液において、サンプルDNA、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸(即ち、dATP、dCTP、dTTP、およびdGTP)の混合物、Taq DNAポリメラーゼのような耐熱性DNAポリメラーゼと混合される。次いで、この混合物は、熱サイクラー機器を使用して熱循環されて、所望される標的領域を増幅する。熱サイクラーは、多くの供給源(例えば、Applied Biosystems,Inc.(Foster City,CA);Brinkmann Instruments,Inc.(Westbury,NY);MJ Research,Inc.(Waltham,MA);Stratagene Corp.(La Jolla,CA))から市販されている。
【0102】
ウイルスゲノム
白斑桿状ウイルス(WSBV)として公知の白斑病ウイルス(WSSV)は、高い死亡率および広い宿主域を伴う主なエビ病原体である。WSSVの完全なゲノムが配列決定されている(van Hulten,et al.,Virology286:7−22(2001);およびYang,et al.,J.Virol.75:11811−11820(2001))。ゲノムは、305,107の塩基対(bp)および181のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する二本鎖の環状DNAからなる(GenBank AF332093)。タイ国において見いだされた、ORF94の複数の反復長における差異によって区別される、WSSVの少なくとも12の変異体が存在する(Wongteerasupaya,et al.,Dis.Aquat.Org.54:253−257(2003))。
【0103】
タウラ症候群原因ウイルス(TSV)は、高い死亡率および広い宿主域を伴う主なエビ病原体である。TSVの完全なゲノムが配列決定されている(GenBank AF277675)。ゲノムは、10,205の塩基および2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する一本鎖RNAからなる。
【0104】
WSSV診断用プライマー配列
本明細書では、WSSVの高感度検出のための多様なアッセイ形式において有用な診断用プライマー配列を開示する。これらのプライマーは、WSSV検出のための診断に役立つWSSVゲノムの領域に指向されている。
【0105】
プライマー配列を、一連の「インシリカ(in silica)」での(即ち、コンピュータに基づく)配列解析ツールを使用して、実験的に同定した。このプロセスでは、すべての既知のWSSV配列を含有するデータベースを集成した。これらの配列を、はじめにアラインし、次いで、他のWSSV配列、指定されたおよびアンプリコン長、塩濃度、Tm(融解温度)、C+G含有量ならびにヘアピンおよび2次構造パラメータからの自由度との相同性に基づくVector NTI(登録商標)ソフトウェア(InforMax,Inc.(Bethesda,MD))を使用して、プライマー部位について分析した。次いで、GenBank配列に対して、予想されるプライマーをスクリーニングした。他の非標的遺伝子配列との相同性を5塩基未満含有することが確立されたそれらのプライマーを、PCR増幅効率および最小のプライマーダイマー形成の実験的研究のために選択した。高い増幅効率および最小のプライマーダイマー形成の両方を示すプライマーを、様々なエビ病原体に感染したエビから単離されたDNAのパネルおよび疾患を伴わないことが認定されているエビ由来のDNAによる試験について、選択した。すべてのWSSV株を増幅し、そして非WSSV病原体に感染したエビ由来のDNAおよび疾患を伴わないことが認定されている異なる種のエビから単離されたDNAの両方に対して応答を示さないプライマーを、有用なプライマーとして選択した。
【0106】
WSSVの検出において有用なプライマー配列およびWSSVゲノムにおけるそれらの局在を、表1に示す。これらのプライマーは、標準的なホスホルアミダイト化学を使用して合成したか、またはSigma Genosys,LPのような会社から購入し得る。
【0107】
【表2】

【0108】
表1に列挙したWSSVプライマーの組のそれぞれのアンプリコン配列を、表2に示す。ポジティブコントロールとしての使用のために、標準的な方法を使用して、WSSVテンプレートを合成した。合成テンプレート調製物の濃度およびコピー数を、260nmにおける分光光度測定(OD260)から決定した。テンプレートを、精製水中の特定のコピー数に希釈し、そしてポジティブコントロールおよびアッセイ定量化の標準物質として使用した。表2は、テンプレート標的のゲノム局在、配列同定、および長さを示す。WSSV検出に有用なプライマーの配列を、配列番号1〜8に示す。
【0109】
【表3】

【0110】
TSV診断用プライマー配列
TSVの高感度検出のための多様なアッセイ形式において有用な診断用プライマー配列を表3に列挙する。これらのプライマーは、TSV検出のための診断に役立つTSVゲノムの領域に指向されている。
【0111】
プライマー配列を、一連の「インシリカ(in silica)」での(即ち、コンピュータに基づく)配列解析ツールを使用して、実験的に同定した。このプロセスでは、すべての既知のTSV配列を含有するデータベースを集成した。これらの配列を、はじめにアラインし、次いで、他のTSV配列、指定されたおよびアンプリコン長、塩濃度、Tm(融解温度)、C+G含有量ならびにヘアピンおよび2次構造パラメータからの自由度との相同性に基づくVector NTI(登録商標)ソフトウェア(InforMax,Inc.(Bethesda,MD))を使用して、プライマー部位について分析した。次いで、GenBank配列に対して、予想されるプライマーをスクリーニングした。他の非標的遺伝子配列との相同性を5塩基未満含有することが確立されたそれらのプライマーを、PCR増幅効率および最小のプライマーダイマー形成の実験的研究のために選択した。高い増幅効率および最小のプライマーダイマー形成の両方を示すプライマーを、様々なエビ病原体に感染したエビから単離されたDNAのパネルおよび疾患を伴わないことが認定されているエビ由来のDNAによる試験について、選択した。すべてのTSV株を増幅し、そして非TSV病原体に感染したエビ由来のDNAおよび疾患を伴わないことが認定されている異なる種のエビから単離されたDNAの両方に対して応答を示さないプライマーを、有用なプライマーとして選択した。
【0112】
TSVの検出において有用であることが見出されたプライマー配列およびTSVゲノムにおけるそれらの局在を、表3に示す。これらのプライマーは、標準的なホスホルアミダイト化学を使用して合成し得るか、またはSigma Genosys,LPのような会社から購入し得る。
【0113】
【表4】

【0114】
表3に列挙したTSVプライマーの組のそれぞれのアンプリコン配列を、表4に示す。ポジティブコントロールとしての使用のために、標準的な方法を使用して、TSVテンプレートを合成した。合成テンプレート調製物の濃度およびコピー数を、260nmにおける分光光度測定(OD260)から決定した。テンプレートを、精製水中の特定のコピー数に希釈し、そしてポジティブコントロールおよびアッセイ定量化の標準物質として使用した。表4は、テンプレート標的のゲノム局在、配列同定、および長さを示す。WSSV検出に有用なプライマーの配列を、配列番号13〜18に示す。
【0115】
【表5】

【実施例】
【0116】
以下の実施例は、DNA標的核酸およびRNA標的核酸の検出のためのサンプル処理方法の全体的な有用性の例示を援助する。これらの実施例は、例示のみとして示されることが理解されるべきである。当業者であれば、上記の考察およびこれらの実施例から本発明の不可欠な特徴を確かめることが可能であり、また、その技術思想および範囲から逸脱することなく、それを多様な用途および条件に適合させるように本発明の多様な変更および改変をなすことが可能である。
【0117】
略語の意味は次のとおりである:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「hr」は時を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「nM」はナノモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「fg」はフェムトグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「g」はグラムを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mU」はミリ単位を意味し、「in.」はインチを意味し、「U」は単位を意味し、「rxn」は反応を意味し、「OD」は光学密度を意味し、「OD260」は260nmの波長において測定された光学密度を意味し、「OD280」は280nmの波長において測定された光学密度を意味し、「OD280/260」はOD280値対OD260値の割合を意味し、「rpm」は1分間あたりの回転数を意味し、「CT」は検出閾値を超える反応において蛍光を増強するサイクル数を意味し、そして「SPF」は特定の病原体を伴わないことが認定されていることを意味する。
【0118】
一般的方法
ここで使用した標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野において周知であり、そしてSambrook,J.,Fritsch,E. F.and Maniatis,T.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;T.J.Silhavy,M.L.Bennan,and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1984;およびAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,N.Y.,1987により記載されている。
【0119】
ゲノム配列およびプライマー指定物の分析を、InforMax,Inc.(Bethesda,MD)より入手可能なVector NTI(登録商標)Software Suiteを使用して、達成した。
【0120】
本明細書において使用する酵素および試薬は、以下の業者から購入した:
Applied Biosystems,Inc.:AmpliTaq(カタログ番号N808−0160);
New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA):デオキシヌクレオチド溶液混合物(カタログ番号N0447S);
Sigma Genosys,LP:オリゴヌクレオチド;
Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA):4%AgaroseE−gels(カタログ番号G6018−02);
Qiagen,Inc.:ProteinaseK(カタログ番号19131);およびRNaseA,DNase−free(カタログ番号19101)。
【0121】
Kitの要素および試薬は、次の業者から購入した:SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(Applied Biosystems,Inc.;カタログ番号4309155);およびQIAamp DNA Mini Kit(Qiagen,Inc.;カタログ番号51304)。
【0122】
エビサンプル
すべてのエビDNAサンプルを、Donald V.Lightner,Department of Veterinary Science and Microbiology,University of Arizona,(Tucson,AZ85721,USA.)から入手した。これらは、疾患を伴わないことが認定されているエビ(SPF)ならびにウシエビ(Penaeus monodon)型バキュロウイルス(MBV)、タウラ症候群原因ウイルス(TSV)、白斑病ウイルス(WSSV)、ウシエビ(P.monodon)のイエローヘッド病原因ウイルス(YHV)、伝染性皮下造血器壊死症ウイルス(IHHNV)および感染性筋壊死ウイルス(IMNV)を含有する感染したエビ由来のサンプルを含んだ。
【0123】
テンプレートおよびプライマー
エビ組織からのDNAウイルス標的核酸の回収および検出を実証する目的のために、白斑病ウイルス(WSSV)DNAゲノム(GenBank受託番号AF332093、Yang,F.,et al.,J.Virology75(23),11811−11820(2001))のDNAオリゴヌクレオチドゲノムの領域に対するプライマーを開発および合成し、そして標準的なホスホルアミダイト化学を使用して合成するか、または商業的に購入した(Sigma Genosys,LP)。
【0124】
エビからのRNAウイルス標的核酸の回収および検出を実証する目的のために、タウラ症候群原因ウイルス(TSV)ゲノム(GenBank受託番号AF277675);Mari,J.,Poulos,B.T.,Lightner,D.V.and Bonami,J.R.,J.Gen.Virol.83(Pt4):915−926(2002)のオリゴヌクレオチド配列に対するプライマーを開発および合成した。それらを、それぞれ、475〜592の塩基および4953〜5076の塩基および7377〜7495の塩基から合成した。合成TSV標的は、標準的なホスホルアミダイト化学を使用して合成したか、または商業的に購入した(Sigma Genosys,LP)。合成TSV標的を、リアルタイムRT−PCRアッセイにおけるポジティブコントロールおよび定量化のための標準物質として、単一反応において使用した。
【0125】
実施例1
本実施例は、エビサンプルの処理および異なるエビ組織におけるWSSV標的核酸の検出のための本発明の方法ならびに容器の適用を示す。WSSVは、中胚葉および外胚葉由来の組織/器官に感染するため、ウシエビ(P.monodon)の多様なエビ組織を、Lightner博士から入手した。組織を、WSSVに感染したエビおよびWSSVを伴わないことが認定されているSPFエビの両方から収集した。サンプルは、(a)血リンパ、(b)腹肢、(c)エラ、および(d)尾筋を含んだ。同じサンプルの抽出コントロール部分を、対照サンプル抽出方法(QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen,Inc.;カタログ番号51304)で処理した。
【0126】
1サンプルあたりのエビ組織の処理量は、サンプル間でばらつきがあった。エビ組織では、処理したサンプルの重量は、50〜200mg/サンプルの範囲であった。血リンパでは、5〜50μL/サンプルを処理した。
【0127】
各固体組織および血リンパを、可撓性の容器として使用する3in.×3in.(76×76mm)4ミル(0.10mm)ポリプロピレンジッパーロックバッグ(Associated Bag,Inc.(Milwaukee,WI))に添加することによって、サンプルを処理した。血リンパでは、血リンパを直接バッグに添加した。
【0128】
血リンパサンプルでは、粉砕を実施しなかった。腹肢、エラ、および尾筋のサンプルでは、バッグの表面に力を適用するか、またはプラスチック製コンテナの平坦な端部(1in.×1in.、25mm×25mm、直径)を使用してバッグを叩くことによって、バッグ内で組織を破砕した。破砕の動作を、約5回、約10秒間の期間、反復した。
【0129】
次いで、5ミリリットルの抽出液(50mMのTris−HCl、3.0mMのMgCl、28mMのKCl、0.1%TritonX−100界面活性剤)を、室温で各サンプルに添加し、そしてバッグ上のジップロックを閉鎖した。
【0130】
次いで、組織サンプルを混合し、そして抽出液に懸濁して、バッグを振盪するか、または反復的に絞ることによって、回収液を提供した。バッグを約5分間、静置した。この期間中、粒子が沈殿するのを観察した。
【0131】
検出では、バッグを開放し、そして50μLの回収液を、凍結乾燥したPCR試薬処方物(25mMのdNTP、0.005μLのSYBR GreenI(R)、0.24μgのBSA、1.8単位AmplitagTM、賦形剤および18pmole/rxnの順方向および逆方向のWSSVプライマー(3および4)に移した。次の熱サイクリングプログラムを使用して、PCRを実施した:95℃(5分間)の変性、35サイクルの95℃(30秒間)、58℃(30秒間)、72℃(60秒間)、1サイクルの72℃(60秒間)、4℃(無期限)。次いで、試験結果を、Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA):4%AgaroseE−gels(カタログ番号G6018−02)を使用する電気泳動によって分析した。
【0132】
この方法によって処理した組織由来と対照サンプル抽出方法((QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen,Inc.;カタログ番号51304)によって処理した同じ組織との検出結果の比較では、匹敵する結果が示された。WSSVは、ウイルスを含有する各サンプルにおいて検出された。エラ組織では、いくつかのPCR阻害が検出された。それ故、本発明の方法は、白斑病ウイルス(WSSV)に対する従来の方法より短期間かつ簡便に、有利に使用することができる。
【0133】
実施例2
本実施例は、本発明の方法および容器が、検出のための標的RNAの処理および回収において効果的に使用することができることを示す。
【0134】
実施例1に類似の実験を、SPFコントロールエビおよびTSVウイルスに感染したエビによって設定する。TSVは、中胚葉および外胚葉由来の組織/器官に感染するため、ウシエビ(P.monodon)の多様なエビ組織を使用する。TSVサンプルは、Lightner博士から入手する。組織を、TSVに感染したエビおよびWSSVを伴わないことが認定されているSPFエビの両方から収集する。
【0135】
サンプルは、(a)血リンパ、(b)腹肢、(c)エラ、および(d)尾筋を含んだ。同じサンプルの抽出コントロール部分を、対照サンプル抽出方法(QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen,Inc.;カタログ番号51304)で処理した。
【0136】
1サンプルあたりのエビ組織の処理量は、サンプル間でばらつきがあり得る。エビ組織のサンプルの重量は、50〜200mg/サンプルの範囲である。血リンパでは、5〜50μL/サンプルを処理する。
【0137】
各固体組織および血リンパを、3in.×3in.(76mm×76mm)、4ミル(0.10mm)ポリプロピレンジッパーロックバッグ(Associated Bag Inc.(Milwaukee,WI))に添加することによって、サンプルを処理する。血リンパでは、血リンパを直接バッグに添加する。粉砕は実施しない。腹肢、エラ、および尾筋では、バッグの表面に力を適用するか、またはプラスチック製コンテナの平坦な端部(1in.、直径25mm)を使用してバッグを叩くことによって、バッグ内で組織を破砕する。破砕の動作を、約5回、約10秒間の期間、反復する。次いで、5ミリリットルの抽出液(50mMのTris−HCl、3.0mMのMgCl、28mMのKCl、0.1%TritonX−100)を、室温で各サンプルに添加し、そしてジップロックを閉鎖することができる。組織サンプルを混合し、そしてバッグを振盪するか、または反復的に絞ることによって、回収液に懸濁することができる。バッグを約5分間、静置する。この期間中、粒子は沈殿する傾向がある。
【0138】
検出では、バッグを開放し、そして50μLの回収液を、凍結乾燥したRT−PCR試薬処方物に移す。処方物は、25μLのSYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(Applied Biosystems,Inc.;カタログ番号4309155)に、31.3nMのそれぞれの適切なTSV順方向プライマー13および62.5nMの逆方向プライマー14、12.5UのMultiscribe逆転写酵素、20UのMultiscribe RNaseインヒビターを添加することによって、調製する。
【0139】
次の熱サイクリングプログラムを使用して、RT−PCRを実施する:48℃で30分間の初期工程、続いて、95℃で10分間の初期変性工程、次いで、95℃で15秒間および60℃で1分間の温度プログラムを使用する35サイクル。95℃(5分間)での変性、35サイクルの95℃(30秒間)、58℃(30秒間)、72℃(60秒間)、1サイクルの72℃(60秒間)、4℃(無期限)、次いで、48℃で30分間の初期工程、続いて、95℃で10分間の初期変性工程による熱サイクル、次いで、95℃で15秒間および60℃で1分間の温度プログラムを使用する40サイクル、ならびに72℃(60秒間)、4℃(無期限)の最終サイクル。
【0140】
次いで、試験結果を、InvitrogenCorp.(Carlsbad.CA):4%AgaroseE−gels(カタログ番号G6018−02)を使用する電気泳動によって分析することができる。
【0141】
TSVを示すサンプル結果の比較により、本発明の方法によって処理した組織、および対照サンプル抽出方法RNeasy繊維組織Mini Kit(Qiagen,Inc.カタログ番号74704)によって処理した同じ組織が、TSVウイルスを含有する各サンプルにおいて匹敵する結果を示すことが示唆され得る。エラ組織では、いくつかのPCR阻害が検出される。それ故、本発明の方法は、タウラ症候群原因ウイルス(TSV)に対する従来の方法より短期間かつ簡便に、有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル由来の標的核酸の回収、処理および分析のための方法であって:
(a)核酸を含むサンプルを提供する工程;
(b)前記サンプルを可撓性壁構造容器に移す工程;
(c)抽出液を前記容器に添加する工程;
(d)前記容器において、前記サンプルを前記抽出液および1つ以上の処置試薬で処理して、前記サンプルから核酸を遊離させ、前記核酸を可溶化し、そして回収液を生成する工程;ならびに
(e)工程(d)由来の前記回収液または産物の一部を前記標的核酸の検出のために適切な検出システムに移す工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記サンプルは、固体材料を含み、そして前記処理工程(d)は、前記容器において前記サンプルと前記抽出液および処置試薬とを混合し、そして浸軟させて、前記核酸の遊離を援助することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の処置試薬は、
界面活性剤、酵素、またはそれらの組み合わせを含む溶解試薬;
7〜7.8の範囲のpHを有する緩衝液;
塩化マグネシウム;および
塩化カリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルはエビ組織であり、前記核酸はエビ病原体の診断用であって、ここで、前記病原体は、白斑病ウイルス、伝染性皮下造血器壊死症ウイルス、タウラ症候群ウイルス、およびビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
サンプルを調製し、そして診断標的DNAもしくはRNAを検出または同定する材料および容器を提供するキットであって、
(a)サンプルが処理される可撓性壁構造容器、
(b)抽出液、
(c)1つ以上の処置試薬、ならびに
(d)前記容器において、前記サンプルを前記抽出液および処置試薬で処理することによって生成される前記回収液を収集および測定し、そして回収液を適切な検出システムに移すためのピペット
を含む、キット。
【請求項6】
前記容器は、前記容器の頂部に取り付けられた閉止部を有し、ここで、前記容器はポリプロピレンまたはポリエチレンから調製され、1〜8ミル(0.025〜0.20mm)の間の厚さを有し、そして0.5〜1,000mLのサイズを有する、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
ろ過媒体またはろ過粒子をさらに含む、請求項5に記載のキット。
【請求項8】
標的核酸のサンプル調製および検出または同定のための診断システムであって:
(a)サンプルが処理される可撓性壁構造容器;
(b)抽出液;
(c)1つ以上の処置試薬;
(d)前記容器において、前記サンプルを前記抽出液および処置試薬で処理することによって生成される前記回収液を収集および測定し、そして回収液を適切な検出システムに移すためのピペット;ならびに
(e)検出媒体と、PCR、RT−PCR、等温増幅、遺伝子配列決定またはプローブハイブリダイゼーション技術からなる群から選択される技術に基づく装置と、プロセッサとを含む検出システム、
を含む、診断システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、サーモサイクラーまたはオーブンヒーターを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
標準的な非変性ゲル電気泳動、変性濃度勾配ゲル電気泳動、温度勾配ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、または蛍光検出である検出方法をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記検出システムはPCRに基づき、そして前記検出媒体は、DNAである前記標的核酸に相補的な少なくとも1つのプライマーの組、
耐熱性ポリメラーゼ;
ヌクレオチド;
緩衝液および1つ以上の検出プローブを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出システムはRT−PCRに基づき、そして前記検出媒体は、RNAである前記標的核酸に相補的な少なくとも1つのプライマー;
熱活性化耐熱性ポリメラーゼ;
逆転写酵素;ヌクレオチド;
緩衝液;
およびRNaseインヒビターを含む、請求項8に記載のシステム。

【公表番号】特表2011−520467(P2011−520467A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510628(P2011−510628)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/044421
【国際公開番号】WO2009/143089
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】