説明

DNAチップ及びそのDNAチップを用いた検査装置

【課題】従来の検査装置をそのまま用いて、多くの検体数の鑑定を行うことができるDNAチップ及びそのDNAチップを用いた検査装置を提供すること。
【解決手段】複数のプローブを備え、検体と反応させるためのDNAチップにおいて、前記プローブに接続されたプローブ電極9と、前記DNAチップからの信号出力用電極10との間に集積回路部14(12、13)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAチップ及びそのDNAチップを用いた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオテクノロジーにおいて、遺伝子検査(或いはDNA鑑定。以下、「鑑定」と称する)を行うのにDNAチップが用いられている。このDNAチップは、鑑定したい検体に対するプローブをDNAチップ内に組み込んだものであり、検体中の所定のDNAに結合(反応)するプローブを用意して、当該プローブに所定のDNAが結合したかどうかを電流値によってDNAの種類を鑑定するものである。このようなDNAチップを用いることにより、従来の電気泳動法などと比較して短時間で鑑定を行うことができる。なお、DNAチップ上に設けられたプローブからの信号は、各プローブに対応して設けられた電極から検査装置に出力され、検査装置で当該信号を増幅して、所定の処理を行っている。
【0003】
現在のDNAチップは、1つのチップ当たりプローブが例えば32個設けられている。この場合に、1種類のDNA鑑定を行うのに3個ほどのプローブを使用するので、10種類(すなわち、10検体)のDNA鑑定しか行うことができない。しかし、1度に鑑定を行う検体数が多いほど検査時間が短縮するので、1度に鑑定を行う検体数を増やすこと、すなわち、DNAチップ上のプローブ数を増やすことが望まれる。このように、DNAチップ上のプローブ数を増やすと、それに応じてプローブに対応する電極数も増えることになる。
【0004】
このように、鑑定したい検体が増えるごとに電極数が増えることになるので、DNAチップの形状を変更することが必要になるばかりでなく、検査装置のDNAチップを取り扱うユニットまで変更しなければならない。加えて、電極数が多くなると信号線の本数が多くなると、微弱な検出電流(ナノアンペアオーダー)同士が、互いに影響を及ぼして誤検出の原因を招くこともありうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の検査装置をそのまま用いて、多くの検体数の鑑定を行うことができるDNAチップ及びそのDNAチップを用いた検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るDNAチップは、複数のプローブを備え、検体と反応させるためのDNAチップであって、前記プローブに接続されたプローブ電極と、前記DNAチップからの信号出力用電極との間に集積回路部を備えたことを特徴とする。また、本発明は、このDNAチップを用いた検査装置にも適用可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の検査装置をそのまま用いて、多くの検体数の鑑定を行うことができるDNAチップ及びそのDNAチップを用いた検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係るDNAチップが適用される検査装置の概略ブロック図である。
図1において、検査装置は、DNAチップを装填するカセット機構部1と、DNAチップに供給する各種試薬をセットする試薬セット部2と、各種試薬をDNAチップに供給するバルブユニット3と、DNAチップから検出した検出信号を増幅したり、外部とのデータ送受信や検査装置全体の制御を行う主制御部4と、検査装置内で使用する各種電源を供給する電源部5とを備えている。なお。カセット機構部1は、温度制御を行うことができるようになっている。
【0009】
上記の検査装置において、その動作を簡単に説明する。
鑑定したい検体に対応するプローブが組み込まれたDNAチップに被鑑定用の検体のDNAを注入し、検査装置のカセット機構部1にセットする。次に、カセット機構部1にセットされたDNAチップを定められた温度シーケンスに従って温度制御部で温度制御を行ったり、試薬セット部2から、バルブユニットや試薬送液部を介して各種試薬をDNAチップに供給する。これにより、カセット機構部1内でプローブの反応を実行させる。プローブ反応の判定は、電極から出力される微弱電流を主制御部4に出力し、主制御部4で当該電流を増幅することにより行うことができる。なお、判定結果は、主制御部4より通信部を介して外部機器へ送信してもよい。
【0010】
図2にDNAチップの概略構成を示す。DNAチップは、鑑定したい検体を量るためのプローブ6と電極7とが1対1の関係で配置されて、DNAチップ8を構成している。従って、鑑定したい検体が増えると、それに応じて必然的に電極数も増えることになる。このため、DNAチップの形状寸法を一定にしようとすれば、電極の形状を小さくし、多数の電極を設けることになるため、この電極の形状を変更により装置側の接点の変更などが必要になる。
【0011】
このため、本発明においては、DNAチップに集積回路を搭載している。図3に本発明の一実施形態にかかるDNAチップの概略ブロック図を示す。
本発明の一実施形態に係るDNAチップ11は、検出用のプローブ9(電極を含む。以下、単に「プローブ」と称する)と、微弱電流を増幅する増幅回路12と、増幅後の信号を検査装置の主制御部4の指示に基づき、どのプローブの信号を送るかなどを切替えて主制御部4に送信する信号切替回路13と、DNAチップと主制御部との接点である電極10(信号出力用電極)とを備えている。このような構成にすることにより、例えば、信号切替回路13により、1つの電極当たり、4つのプローブを切り替えることができれば、従来の32プローブが1つのDNAチップに形成されていたものが、最大で128プローブまで1つのDNAチップで形成可能となる。この場合のDNAチップ11の電極の例としては、電源線1本・接地線1本・プローブアドレス指定線(4本×4本)8本で構成される。なお、増幅回路12と信号切替回路13は、1つの集積回路部14として構成してもよい。
【0012】
上記の実施形態により、下記の効果が得られる。
【0013】
DNAチップについては、
(1)DNAチップの外形寸法から鑑定する検体によるプローブ数の制限つまり設けられる電極数の制限がなくなり、ある程度のプローブまでが同一寸法のDNAチップで製作が可能となる。
(2)鑑定する検体によるプローブ数増加によるDNAチップの種類の増加が防げる。
(3)プローブ数によって異なっていたDNAチップをある程度プローブ数まで共通化が図れ、DNAチップのコスト低下が図れる。
(4)DNAチップに電極数が一定の本数で信号の受け渡しが検査装置と行えることから従来非常に注意をしていた信号の受け渡し方法や電極の接触抵抗なども注意をせずに済み、電極の処理部分が大きく得られ、安定した方法で検査装置と接続できる。
【0014】
また、検査装置については、
(1)DNAチップの種類(すなわち、プローブ数)が異なっていても同一の接続方法でDNAチップと接続が可能となる。そのため、DNAチップの種類による検査装置側での配線などの変更が不要になる。
(2)検出電流の増幅処理をDNAチップで行うので安定した出力が得られ、検査装置側の回路の省略化が図れる。
【0015】
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。例えば、上記の実施形態では、増幅回路などをプローブや電極と同じ面にもうける構成としたが、増幅回路と信号切替回路とをプローブとは異なる面に設けてもよい。さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0016】
また、例えば各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るDNAチップが適用される検査装置の概略ブロック図。
【図2】DNAチップの概略構成を示す図。
【図3】本発明の一実施形態にかかるDNAチップの概略ブロック図。
【符号の説明】
【0018】
1…カセット機構部
2…試薬セット部
3…バルブユニット
4…主制御部
5…電源部
6…プローブ
7…電極
8…DNAチップ
9…プローブ
10…電極
11…DNAチップ
12…増幅回路
13…信号切替回路
14…集積回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプローブを備え、検体と反応させるためのDNAチップにおいて、前記プローブに接続されたプローブ電極と、前記DNAチップからの信号出力用電極との間に集積回路部を備えたことを特徴とするDNAチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のDNAチップにおいて、前記プローブ電極の数は、前記信号出力用電極の数の整数倍であることを特徴とするDNAチップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のDNAチップにおいて、前記集積回路部は、前記プローブからの検出電流を増幅する増幅回路と、前記プローブ電極に対する前記信号出力用電極の接続関係を切り替える信号切替回路とを備えたことを特徴とするDNAチップ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のDNAチップを装着可能であり、温度制御が可能なカセット機構部と、
前記カセット機構部に装着されたDNAチップに、バルブを介して試薬を供給する試薬セット部と、
前記DNAチップからの出力信号の判定を行う制御部と、を具備することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−133080(P2006−133080A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322439(P2004−322439)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】